※注 再刊にあたって原本の囲み文字等は差し支えのない限り赤色文字などで対処した。2011年11月9日 文責 中澤敬彦
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   戻る        国語科読解の学習技術     再刊 国語教育科学研究所   2011年11月

                         国語科教育全書14


                        国語科読解の学習技術


                         中 沢 政 雄 著
  

                           明治図書


     はしがき                                               1

 最近、国語科教育の進歩への道として、その科学化・工学化が、社会的・教育的要請として大きく取り上げられて
います。
 ところで、わたしどもが、「国語科教育工学」の研究に思いをひそめてから、もう六年にもなります。国科研の同
志と、その実践的研究を始めてからも、もう四年たちました。
 その間、機関誌「国語教育科学」には、その基礎理論、基礎科学、学習理論、学習法などを連載して、それがすで
に四十九回、五首数十ページに及んでいます.また、実践研究の成果についても、これをまとめて毎号記録し続けて
きました。
 ここにまとめた「国語科読解の学習技術」は、その研究の過程で、国語科の学習法として、国科研の同志が、新た
に開発した科学的な学習技術であります。
 申すまでもなく、国語科の学習法としての学習技術は、知識や情報を求め、思想や心情を育成するなど、価値を獲
得し生産する技術であります。それはまた、文化性、社会性、思想性、心情性、芸術性など、人間性の開発伸長を図
る技術でもあります。
 したがって、このような学習技術の学習によって、児童・生徒の主体的学習、個性的学習、自己学習など、自己開
発・自己伸長の学習が可能になります。人間尊重の国語科教育も、そこまでいって初めて、可能になると言っても、
言い過ぎではないと信じます。                                          2
 本書にまとめた「読解学習技術」は、そのような学習技術の体系の中のごく一部にすぎません。しかし、それぞれ
の言語技術にはみな実例を添えて、すぐにも実践できるようになっています。どうぞ、実験してくださって何分のご
批判、ご指導を賜わりたいと思います。
 なお、本書の出版に当たって、格別お世話になった明治国書の江部満氏、たくさんの資料を提供してくださった国
科研の同志、特に貴重な原稿を寄せてくださった中津留喜美男、藤田澄江氏などのみなさんに、厚くお礼を申し上げ
ます。
 終わりに、この本を輿水実先生に捧げます。わたしどもは、国語科教育工学の実践的研究に励みながら、たどたど
しくも、ようやくここまで到達しました。これはひとえに先生のお教えによるものであります。どうぞ忌憚のないご
指導を賜わりますようお願いいたします。

一九七四年十月二六日
                 中沢政雄

               もくじ                                      3
 
         はしがき

        T 読解学習技術とその体系

          一 読解学習技術の,開発は時代的要請である…………………………11
          二 読解技術の開発は、国語科教育の歴史的要請である………………13
          三 読解学習技術の開発は、教育の本質的要請でもある………………16
          四 読解学習は読解技能から読解技術の学習へと向かっ
            ている……………………………………………………………………17
            1 言語社会を処理する技能としての読みの技能…………………17
            2 読解活動を処理する技能としての読解技能……………………18
            3 読解技能と読解技術………………………………………………18
            4 読解技能の養成から読解技術の開発へ…………………………19
          五 読解学習技術にはどんな言語技術があるか…………………………20
            1 読解活動と読解技術………………………………………………20
            2 基礎的言語技術……………………………………………………21              4
            3 基本的言語技術……………………………………………………21
            4 総合的言語技術……………………………………………………23
            5 方法的言語技術……………………………………………………23
          六 読解学習技術の体系はどうなっているか……………………………24
            1 読解学習技術の体系………………………………………………24
            2 基礎的言語技術の系列……………………………………………26
            3 基本的読解鑑賞技術の系列………………………………………28
            4 総合的読解技術の系列……………………………………………32
            5 方法的言語技術の系列……………………………………………33
          七 読解学習技術は、どんな原則のうえに成り立ってい
            るか………………………………………………………………………33
            1 生産性・創造性が高いこと――機能の原則……………………34
            2 操作しやすいこと――方法の原則………………………………34
            3 再現しやすいこと――構造の原則………………………………35
            4 科学性をもっていること――性格の原則………………………36
            5 観察・測定ができること――評価の原則………………………36

        U 説明文の基本的読解学習技術の間発

          一 説明文の読解学習技術…………………………………………………38              5
            l 正確な読み…………………………………………………………38
            2 深い読み……………………………………………………………39
            3 批判的な読み………………………………………………………39
            4 創造的な読み………………………………………………………39
            5 価値的な読み(機能的な読み)…………………………………40
          二 概略を読みとる学習技術………………………………………………40
            1 解説…………………………………………………………………40
            2 だいたいを読みとる技術…・……………………………………41
            3 だいたいを読みとる技術の指導…………………………………41
          三 順序を読みとる学習技術………………………………………………42
            1 解説…………………………………………………………………42
            2 順序を読みとる技術………………………………………………43
            3 順序を読みとる学習技術の指導…………………………………44
          四 要点を読みとる学習技術………………………………………………49
            1 解説…………………………………………………………………49
            2 要点を読みとる学習技術の指導・………………………………53
          五 段落相互の関係を読みとる学習技術…………………………………56
            1 解説…………………………………………………………………56              6
            2 段落相互の関係を読みとる学習技術の指導……………………58
          六 文章の構成を読みとる学習技術………………………………………61
            1 解説………・………………………………………………………61
            2 段落の相互関係を押えて文章の構成を読みとる学習技
              術の指導……………………………………………………………63
          七 要旨(意図・中心事項)を読みとる学習技術………………………70
            1 解説…………………………………………………………………70
            2 要旨を読みとる学習技術…………………………………………72
          八 文・段落・文章を要約する学習技術…………………………………75
            1 解説…………………………………………………………………75
            2 要約の技術…………………………………………………………76
          九 批判的に読む学習技術…………………………………………………83
            1 解説………………………………………………………………・83
            2 事実とことばとの関係を判断して読む学習技術……………・85
            3 事実と感想・意見とを判断して読む学習技術…………………92
          十 言語情報の批判的処理技術……………………………………………100             7
            1 解説…………………………………………………………………100
            2 情報価値を判断して受け入れる学習技術………………………101
            3 情報の信頼性を見抜く学習技術…………………………………102
            4 情報の正否を判断して読む学習技術……………………………105

        V 文学作品の基本的読解学習技術の開発

          一 文学作品の読解学習技術………………………………………………108
            1 想像する……………………………………………………………108
            2 創造する…………‥‥‥…………………………………………109
            3 感動する−感情状態………………………………………………110
            4 鑑賞する……………………………………………………………110
            5 思考する……………………………………………………………112
          二 文学作品の基本的読解学習技術………………………………………114
            1 話の筋の展開を読みとる学習技術………………………………114
          三 場面や情景を想像しながら読む学習技術……………………………127
            1 解説…………………………………………………………………127
            2 挿し絵による場面や情景を想像しながら読む学習技術………132
            3 絵画化による場面や情景を悪化しながら読む学習技術………135
            4 行動化による場面を想像しながら読む学習技術………………138             8
            5 パントマイムによる場面を想像しながら読む学習技術………140
            6 音読・朗読による場面を想像しながら読む学習技術・………142
            7 映像を描きながら場面や情景を読む学習技術…………………147
          四 心理や心情を想像しながら読む学習技術…………………‥………150
            1 感情移入による心理・心情を読み味わう学習技術……………150
            2 想像した心理・心情を補いながら読む学習技術……………‥153
            3 話しかけによる心理・心情を想像しながら読む学習技術……156
            4 想像した心理・心情を人物に語らせながら読む学習技術……159
          五 人物の性格・思想を読みとる学習技術………………………………162
            l 人物の紹介からその性格や思想を読みとる学習技術…………163
            2 人物の行為・行動・ことばなどから、その思想・性格
              を読みとる学習技術………………………………………………166
          六 気分・情調を読み味わう学習技術……………………………………170
            1 場面・情景・心理・心情と気分・情調…………………………170
            2 気分・情調と想像表象……………………………………………171
            3 気分・情調の類型…………………………………………………171
            4 気分・情調を読み味わう学習技術………………………………172

        W 総合的読解学習技術の開発                              9

          一 感動を組織し深化する学習技術………………………………………181
            1 感動を組織し深化する技術………………………………………181
            2 感動を組織し深化する技術の指導………………………………182
          二 クライマックスを読みとる学習技術…………………………………185
            l クライマックスを読みとる技術…………………………………186
            2 「はだかの王様」のクライマックスを読みとる技術の指導…188
          三 ひとりひとりの感想を組織して深める学習技術……………………190
            l 感想を深く、豊かにもつ学習技術………………………………190
            2 感想を豊かにもつ学習技術の指草………………………………191
          四 読みとった内容を構造化して理解を正確にする学習
            技術………………………………………………………………………197
            1 文章の構造…………………………………………………………197
            2 構造化の技術………………………………………………………198
            3 構造化の実際………………………………………………………198

          五 読みとった内容を構造変換し創造性を開発する学習                     10
            技術・……………………………………………………………………203
            1 構造変換の技術……………………………………………………203
            2 構造変換の実践……………………………………………………205
          六 KJ法による要旨・意図を読みとる技術……………………………213

         あとがき
                                                        11

  T 読解学習技術とその体系

     一 読解学習技術の開発は時代的要請である

 現代社会には、新聞・雑誌・図書・広報・広告・宣伝・その他、学会・用体・会社・企業等の研究書・報告書など、
無数の文献が溢れている。まるで、活字に取り巻かれ、埋められているようで、窒息しそうである。
 これらの文献は大別すると、いわゆる情報を提供しているもの、知識を提示しているもの、思想・心情を訴えてい
るものなどに分かれる。
 情報の中にも、世界情報・政治情報・経済情報・企業情報・文化情報・教育情報・自然情報・社会情報などから、
公害情報・交通情報・レジャー情報……に至るまである。毎日毎夜次々と無数に送り出されるこれらの情報をみんな
知らないと、社会から取り残されはしないか、世界の情勢に暗くなりはしないかなどと、いつも不安を感じ、あせり
を覚える。そうかといって、うかつに飛び付いていくと、情報に誤られ、乗せられる。情報の選択に迷いに迷ったあ
げくは、主体性さえも失いかねない。世間で情報公害などと呼んでいるのは、このことをさしているのであろう。
 といって、消極的になって、情報を遠去けていては、確かに時代に後れ、世情にうとくもなり、生存競争にも後れ
をとる。

 しかし、情報は真偽のさだかでないもの、正否のはっきりしないもの、価値のあるものないもの、多様多質、実に
さまざまである。だから、個人にとっては、すべてが必要な情報、価値のある情報とは限らない。とすれば、適切に    12
情報を選択し、収集し、組織して、蓄積したり、適応したりする、情報処理の言語操作ができることは、情報化時代
に生き抜く人間にとっては、欠くことのできない資質で為り、技術である。現代社会は、それを要請している。
 現代は情報化社会であると同時に、知識や科学技術が尊重されている社会でもある。しかも、その知識は、日々の
出版物が示すように、専門的な知識、教養的な知識、社会的・生活的な知識にわたって、あらゆる部門の知識が溢れ
ている。しかも、その知識は日々に進歩し発展してとどまるところを知らない。きのうの知識はもう古い。役だたな
くなる。
 自分の専門の知識一つとってみても、あまりにも多い研究書や報告書に、つねに進歩に後れる不安を禁じ得ない。
教養的知識にしてみても、それらすべてに目を通さないと、教養に欠けるところがありはしないかという不安をもつ。
あれやこれやと、むやみに知識を詰め込めば、使えない知識、役だたない知識ばかりがたまって、物識りの臆病者に
もなりかねない。はては、知識を恐れて逃避したり、知識に無関心になったりする。知的不感症のとりこにもなり、
情報拒否症にもなる。
 真に生産に必要な知識を、真に生活に投だつ知識を、真に教養に役だつ知識を、自由に主体的に選択し、獲得し蓄
積する。それを必要に応じて、自由に、的確に、迅速に使うことができる。生かすことができる。そのような生きた
言語操作の技術を身につけることは、知識人問、創造人間にとって、これまた欠くことのできない資質である。
 われわれは、現代社会、未来社会が要請する情報人間、創造人問であるまえに、人間的人間、つまり、思索的人間
・情意的人間・芸術的人間・宗教的人間でなければならない。
 科学技術時代と言われる現代は、物的生産技術の異常な発達よって、情報化社会とともに、人間を機械化した、人
間性を失わせた、主体性を失わせたと言われる。
 こういう時代に、人間尊重・人間回複・人間性開発の有力な媒体となるものは、宗教や哲学や思想や芸術・自然な
どを主軸とする言語文化・言語作品である。
 ところが、これもまた、情報や知識と同じように、すぐれた読み物、文学作品から、俗悪漫画や俗悪な読み物、低    13
俗な作品・小説に至るまで、限りなく多い読み物が、世に溢れている。
 これらの読み物の中から、真に深い思想を育て、思索的人間に培う読み物を、みずから選んで読む。心情性・芸術
性に豊かに培う作品を選んで読む。こうして、進んで自己開発・自己発展とげることのできる言語操作の技術を身に
つけることは、思索的人間・情意的人間・芸術的人間のもつべき重要な資質である。
 要するに、これからの人間は、これまで以上に、知識・情報・思想・心情を合む言語文化を、主体的に、積極的に
獲得し処理することのできる読解技術を、確実に身につける必要に迫られている。それは、現代社会・未来社会から
の要請である。

     二 読解技術の開発は、国語科教育の歴史的要請である

 読解技術の開発は、時代的・社会的要請だけではない。同語教育の歴史的発展から、必然的に要請されたものでも
ある。
 戦前の国語科教育は、「国民的思考・感動を通して国民精神を養う。」ことや文字の読み書き、語句の理解・獲得
などをめがけて行われた。それは、思想内容の教育であり、言語知識の教育であった。内容主義の教育であった。
 ところが、戦後の国語科教育は、思想内容や言語知識の教育を排して、言語経験・言語活動――聞く・話す・読む
・書く経験や活動の処理の仕方を教育するようになった。いわゆる言語活動主義の教育であった。
 この言語経験・言語活動中心の教育では、言語活動はかっぱつに、効果的に処理できるようになったが、おしゃべ
りの子どもは育ったが、読めない子ども、書けない予どもを育てとたいう批判があった。いわゆる基礎学力が低下し
たと言われた。
 そのころは、国語料教育の目標も言語経験、内容も言語経験、方法も言語経験であると言われた時代である。発音    14
も、文字も、語いも、文法も、技能もすべて経験の中に含めて教育した時代であったからである。
 そこで、昭和三十三年度の学習指導要領国語では、それまで、国語科の内容として示していた言語経験(手紙を書
く、童話を読む、会議に参加するなど)を、要素的に分析して次のように示した。
〔内容〕
  l 言語経験を支持する言語要素
   ○ことばに関する事項−発音・文字・語い・文法
  2 言語経験を処理する言語技能(態度も)
   ○国語技能――読解技能・作文技能・聴解技能・談話技能
  3 言語経験の形態
   ○詩を読む・説明を読む・童話を読む
   ○手紙を書く・記録を書く・詩を作る
   ○説明を聞く・報告を聞く
   ○話合いをする・会議をする
 国語科の内容が、このように、@ことばに関する事項(言語要素――発音・文字・語い・文法)A指導事項(言語
技能――読解技能・作文技能・聴解技能・談話技能)B言語活動(言語活動の形態――説明を読む・童話を聞く・手
紙を書くなど)の三要素に分析されて示されるようになった結果、国語教育はまた進歩した。国語技能中心の国語教
育が展開されて、技能教育が大きく浮かび上がった。技能主義の国語教育と言われた。
 これで、国語科教育の内容がかなりはっきりしてきた。しかし、一般には技能と活動との関係が明確に押えられな
いままに十年を過ぎた。しかし、このように、国語技能が発見され、分析されて、教育内容としての体系をもつよう
になったことは、戦後の国語教育の大進歩であった。
 昭和四十三年度の学習指導要領国語科が出て、国語の技能の学習がいっそう明確になってきた。それは、これまで    15
は国語科の内容と方法との関係がどうもすっきりしなかった。国語の内容の中に、言語要素(ことばに関する事項)
と、言語技能(指導事項)と、言語活動が同居していたからであった。
 ところが、今度の指導要領では、「言語要素と言語技能」を「内容」とし、「言語活動」は「方法」として組織し、
構造化した。これで「内容」と「方法」との関係が明確になった。まだ、「目標」との関係がすっきりしないが、そ
れについては、今は論じない。しかし、これは小学校の指導要領のことで、中学校の指導要領では依然として旧態の
ままである。
 国語教育の歴史的発展のあとをたどってみると、戦前の@思想内容・言語知識など内容中心の国語教育――内容主
義の国語教育が行われた時代、A戦後の言語経験中心の国語教育――言語活動主義の国語教育が行われた時代(十年
間)、Bその後十年、言語能力中心の国語教育――技能主義の国語教育が行われた時代、Cその技能教育がいっそう
明確になるとともに、人間尊重の立場からの言語技術中心の国語教育――技術主義の国語教育が展開されようとして
いる。
 この歴史的発展は、@言語内容教育、A言語活動教育、B言語技権教育、C言語技術教育の方向をたどっている。
 ところで、言語技能の学習の実態をみると、そこにはいろいろな問題がある。
 その一つは、児童・生徒は一般に、技能の学習をさせられていることである。技能の自覚もなく、学習の必要性も
意識せずに、だからなかなか学習能率があがらない。
 その二つは、言語技能の学習を強いられても、その技能をどのように働かせたらいいか、使ったらいいか、その技
能の働かせ方、使い方がわからない。
 その三つは、したがって、技能の働かせ方、使い方、つまり、その技術・学習法の学習が行われていないことであ
る。
 これからの国語学習では、言語技能の働かせ方・使い方――言語技術を学習して、児童が自由に言語技術を使って、
内容的価植の獲得・生産ができるようにすることを、国語教育の歴史が、これを要請しているのである。         16

     三 読解学習技術の開発は、教育の本質的要請でもある

 乳児は、だれからも強いられないが、進んで乳首を舌で巻いて吸う技術を働かせて乳を飲んで生命を維持する。幼
児は、これもみずからことばを習得する。そのことばを使って、ことばを使う技術を働かせて、いろいろな知識や情
報を求めて行動する。ことばを使って家族や友だちとの社会関係を作っていく。こうして、人間は、生命を維持し、
発展させていく。これは人間の本性である。この人間の本性的行動は、人間がこれも本性的にもっている、自主性・
能動性・技能性を働かせて、人間の生命の維持・発展に必要なさまざまな属性を開発し伸長する。それは生命の発展
にともなって、文化性・社会性・思想性・心情性・論理性・芸術性.宗教性・倫理性……などの諸属性を開発してい
く。こうして、人間は無根に発展する可能性をもっている。これが人間の本性である。
 教育は、このような、児童が本性的にもつ無根の可能性を開発し伸長するのを助ける働きである。
 このような教育の営みは、児童に主体的に学習すること、能動的・積極的に進んで学習すること、あらゆる方面に
ついて、技能性を発揮することを要請する。
 この技能性の発揮は、国語教育においては、具体的には、言語を使うこと。言語操作において行われる。つまり、
言語能力を自由に、主体的に駆使することによって、技能性は発揮される。この言語能力の使い方が、すでに述べた
ように言語技術である。したがって、この言語技術の学習は、それによって人間性を開発伸長する技術を開発するこ
とにほかならない。
 それは教育の本質にもとづく、要請であることに思いをいたさなければならない。
 以上、言語技術の開発は、教育の本質からの要請であり、国語科教育の歴史的発展からの必然的要請であり、現代
社会・未来社会からの要請であることを述べた。                                  17
 では、このような講要請に応じる言語技術とは何であろうか。

     四 読解学習は読解技能から読解技術の学習へと向かっている

  1 言語社会を処理する技能としての読みの技能

 現代社会では一般に、研究書を読む、教養の本を読む、生活の本を読む、文学作品を読む、新聞・雑誌を読む、広
報・広告・宣伝を読むなど、多種多様な読みにって、専門的な知識や情報、教養的な知識や情報、生活的な知識や情
報、あるいは、人間的な思想や心情などを獲得している。
 ところで、このような知識や情報や思想や心情などを獲得する場合、必ず頼らなければならないものは、それらを
読みとる力、読む技能、読み方である。
 われわれの回りには、新聞・雑志・図書など、多種多様多質な読み物が溢れている。それらの読み物の中から、必
要に応じて、適切なものを取捨選択して読む必要がみる。また読み物の種類によって、その読み方を変える必要もあ
る。また、本をうのみにするわけにいかないから、その価値や正誤を判断して読む。つまり批判的に読む必要もあろ
う。あるいは、す早く読んで概略をつかむ場合もあるし、詳しく正確にゆっくりと読む場合もある。電車の中で、小
説を読んで楽しむこともある。
 こうして、多くの読み物のなかから、価値のある、真実で正確な知識や情報を選んで受け入れる。さまざまな感覚
や心情や思想に触れて、豊かな人間へと発展する。そのための読み方と、努力と、習慣とを身につけることが、言語
社会の生き方としてたいせつであることは言うまでもない−よほど手際よく読む生活をとりさばいていかないと、言
語社会に流されたり、乗ぜられたり、読み物不信におちいったり、それに背を向けたりすら心配がある。
ところで、そのような生活技術の基本になるのが、言語操作の技術である。                      18

  2 読解活動を処理する技能としての読解技能

 教室で文章や作品を読む学習をする。その学習をとおして、さまざまな知識や情報を獲得する。感覚を育てたり、
心情を育てたりする。あるいは、ものの考え方を深めたり、人生の生き方を考えたり、社会的な生き方を身につけた
りする。
 読む活動は、このように知識や情報を身につけたり、人間性を開発したり伸長したりする機能をもっている。
 このような機能的な読む活動は、すべて書きことばを媒介として行われる。そのことばを操作することによって処
理される。それが読解技能である。つまり、読解活動は読解技能によって処理される。
 たとえば、概略を読みとる技能を働かせて、文章の概略――知識や情報の概略を読みとる。要点を読みとる技能を
働かせて、段落のだいじなところを読みとる。要旨を読みとる技能を働かせて、その文章で筆者が言おうとしている
ことを読みとる。想像しながら読む技能な働かせて、場面の様子や情調を読み味わう。気持ちを想像しながら読む技
能を働かせて人物の心情を読みとって、共感したり、反発したりする。読解活動は、つねにこのように読解技能によ
って処理される。
 読解学習は、文章や作品に内在するさまざまな価値を獲得したり、生産したりして、人間性を開発伸長するととも
に、それに必要なそのとき働く読解技能をも、ともに効果的に身につけようとする。したがって、この時育てられる
技能は、価値を生産し創造する技能、つまり、機能的な技能である。

  3 読解技能と読解技術

 ところで、聞く・話す・読む・書くなどの活動を通して、価値を獲得し生産する力が、言語技能である。それを活
動でとらえれば、聴解技能、談話技能、読解技能、作文技能である。この言語技能を、どのように働かせるか、その
働かせ方、使い方が言語技術である。それを大別すれば聴解技術、談話技術、読解技術、作文技術となる。        19
 この技能と技術の関係を考えてみよう。技能は、人間が生命の維持・発展を図るために本性的に持っている力であ
る。技術というのは、その技能をどのように働かせて価値の獲得生産をするか、その技能を働かせる過程・状況を客
観的にとらえて、法則化し、パターン化したものである。
 つまり、同じ力を、人間の機能、技能性としてとらえた場合、それを技能と言い、その力の働いている状況を客観
的にとらえた場合、それを技術と呼ぶのである。
 そこで、読解技能を有効に、効率的に育てようとすれば、それを読解技術として客観的にとらえて学習することを
考える必要がある。

  4 読解技能の養成から読解技術の開発へ

 従来の国語学習では、価値を獲得し生持する言語技能を、細かく分析し、それらの技能の学習、技能の養成を図っ
てきた。言語技能の開発伸長をめがけて、国語学習は行われてきた。
 しかし、国語学習の過程で、働く技能の自覚、学習する技能の認知はなかなか困難であった。学習者に、学習する
技能の自覚がないから、それをめがけて学習することは思うようにいかない。かりに、学習する技能が自覚されても、
その技能をどのように働かせたらいいか、その働かせ方、梗い方を理解するまでにはいたらなかった。だから技能の
学習が思うようにいかない。したがって、国語の学習法の学習がうまくいかなかった。
 要するに、読解技能の学習に当たっては、その働かせ方、使い方を理解し、読解技術として使うほうが、それを開
発したり、伸長したりしやすいのである。
 たとえば、「朝、暗いうちから、急に雨が降りだした。たいした降りではないが、全く思いがけない雨だった。」
と文章を読んで、短くまとめる、要約する技能を学習する場合を考えてみよう。
 まず、「この文章をできるだけ短く要約しなさい。」といって要約させる。ところが、児童は、要約の技能を使おう
としても、どのような方法で、短くまとめたらいいかわからない。そこで、直観的に何となく短くまとめるというこ    20
とになる。それでは、うまく要約することはむずかしい。そこで、筆者が言おうとしていることを主語・述語の関係
でとらえる。すると前の文は「雨が降りだした」となり、あとの文は、「それは思いがけない雨だった」となる。そ
こで、この二つの文をまとめると、「思いがけない雨が降りだした。」となる。
 また、長い文章だったら、まず段落ごとに要点を押える。それらの要点を含めて短い文章にする。
 これは一例にすぎないが、このように要約する技能の働く過程、状況を押えると、つまり要約の技術を使うと、容
易に要約することができる。と同時に、要約の技能が具体的に明確に意識され、理解されて、技術として身について
いく。要約の技能が要約の技術として学習され、獲得される。それは、技能の具体的・方法的学習と考えてもよい。
 このように、技能の学習は、技術の学習へと発展している。そこに技能学習の進歩があり発展がある。

     五 読解学習技術にはどんな言語技術があるか

  1 読解活動と読解技術

 一般に、文章を読んで、その内容を理解する学習活動は、次のような構造過程をもっている。
(1) 文字面を読む――かな・漢字・ローマ字などを知覚する。
(2) 物語の意味を理解する――単語とその意味を通知する。
(3) 文の意味を理解する――語の係り受けの関係と、文の意味を認知する。
(4) 段落の意味を理解する――段落・場面における文の係り受けの関係と、要点と細部との関係と、その意味構造の
 状況とを認知する。
(5) 文章の意味を理解する――段落の相互関係と構成、要旨・主題と要点との関係、文章の意味構造を認知する。     21
 上のような理解行動・認知行動が、継時的、線条的に行われる一連の行動が、読解活動である。この読解活動は、
別の言い方をすれば、文章・作品の意味構造の理解行動・認知行動であり、文章・作品に叙述され、表現されてい
る内容的価値の生産行動であり、創造行動でもある。
  2 基礎的言語技術

 そこで、これらの理解行動・認知行動としての言語活動(言語行動)を支持し、処理するためには、次のような言
語操作の技術――言語技術が必要である。
@ 文字の読み方――文字を読む技術、読める文字を増す技術(漢字獲得の技術)
A 語句の意味の理解の仕方――語を理鮮する技術、理解語いを増す技術(語い拡大の技術)
B 文法の理解の仕方――文法理解の技術
 上の文字を読む技術、語句を理解する技術、文法を理解する技術の三つの技術は、文章読解の最も基礎になる言語
技術である。この技術が働かないと、読解活動は始まらない。この言語技術が、言語活動をささえないと、支持しな
いと、言語活動は成り立たない。そこでこの言語活動を支持する技術、言語活動の基礎となる技術を「基礎的言語技
術」と呼ぶ。この技術は、学習指導要領国語に、内容としてあげてある、いわゆる「ことばに関する事項」の文字・
語い・文法に関する事項である。

  3 基本的言語技術

 基礎的言語技術の上に立って、文や段落や場面や文章や作品の意味構造を理解し、認知する。つまり、文章や作品
の内容的価値としての、知識や情報や思想や心情などを、理解し、創造し、生産する活動が行われる。この活動を普
通読解活動と言い、読解活動を通して、内容的価値を獲得し生産するとともに、それに必要な言語技能を習得するこ
とを読解学習と呼んでいる。
 ところで、そのような読解活動・読解学習を行うためには、次のような言語技術を働かせなければならない。      22
@ 文章の細かいところ(細部、詳細)を読みとる(認知する)技術
A 文章の大事なところ(要点)な読みとる技術
B 文章のだいたいの意味(あらまし、概略)を読みとる技術
C 文章の中心になる事項や中心になる考え(中心的事項、要旨、意図)を読みとる技術
D 文章の内容を正確に読みとる技術
E 文章の内容の正否、適否を判断(批判)して読む技術
 このほか、なおたくさんの言語技術が必要である。これらの言語技術は、文章の内容としての知識や情報を理解し
獲得するのに必要な基本的な言語技術である。また、次のような言語技術も必要である。
@ 場面・情景・心理・心情などをを想像しながら読み味わう技術
A 気分・情調・感動などを読み味わう技術
B 物の見方・考え方・感じ方・人間の生き方などを読みとる技術
C 作品の訴えているもの(主題)を読みとる技術
D 表現の美しいところを読み味わう技術
 このほかなおたくさんの言語技術がある。これらの言語技術は、感覚を磨いたり、心情を開発したり、豊かにした
り、あるいは思想を深めたり、人間の生き方を考えたりするうえになくてはならない言語技術である。それらは、思
索する人間、心情豊かな人間、社会性を身につけた人間を育成するうえに欠くことのできない言語技術である。
 このように知識・情報・思想・心情などを直接獲得し、創造し、生産する言語技術を、「基本的言語技術」と呼ぶ、
学習指導要領国語に「内容」としてあげてある「指導事項(言語技能)」がこれに当たる。
                                                        23
  4 総合的言語技術

 文章や作品の読解学習の過程では、前にあげた捕捉的言語技術と、基本的言語技術が、それぞれ独自に、あるいは
いずれかが主となり従となって働く場合がある。
 また、それらの言語技術が結合されて同時に、あるいは継時的・連続的に働く場合がある。
 あるいは、共同学習においては、それぞれの言語技術が、相互に関係的に働いたり、また組織されたりして、新し
い言語技術を生み出す場合もある。
 たとえば、要旨を読みとる基本的言語技術を働かせる場合には、直観的に要旨をつかむことができる。ところが、
直観的に要旨を読みとることができない場合には、 まず、 各段落の要点を読みとる。次にその要点を組み立て、大
意・概略をつかむ。その上に立って、それをさらに要約して要旨を押える。この場合には、いくつかの言語技術が、
次々と継時的に働いて、究極において、要旨を読みとることになる。
 また、文章の内容をじゅうぶんに読みとり、理解したうえで、それを記憶し、保存するために、その内容を、記憶
しやすいように、主体的に組織し直す。いわゆる構造変換を行う。このときにも、いくつかの具体的な言語技術が総
合されて、たとえば、新しい構造変換の技術が創造される。
 あるいは、各自が、文章読解の結果をもちよって組織し、それにもとづいて自己評価、自己反省して、新しい観点
に立って再度読解する。そうして、理解を正しくしたり、深めたりする。その結果新しい言語技術が開発され、獲得
される。このような言語技術を「総合的言語技術」あるいは「行動的言語技術」とも呼ぶ。

  5 方法的言語技術

 読解活動は、前に述べたようこ、基礎的言語技術と根本的言語技術によって処理される。その場合、それらの技術
がどのように働いたか、働いた結果はどうであったかを知ることができない場合がある。そのときには、その技術の    24
働きを行動化すると、それを観察したり測定したりすることができる。
 また、総合的言語技術を使って、読解活動を進める場合、その進める手順・方法に従って行えば、自主的に読解活
動を進めることができる。
 たとえば、読みとった文章の内容を表解すると、読みとった内容を組織する技術がどのように働いたか、また、そ
の技術を使った結果、文章がどのように理解され、認知されたか、その認知構造を知ることができる。
 それは、読みとった内容を表解したからである。このように表解する技術は、内容を認知する技術そのものを行動
化する技術である。このような技術を「方法的言語技術」と呼ぶ。
 方法的言語技術の開発は、国語科の主体的学習、自己学習、創造学習を進めるうえに効果があるだけでなく、学習
の生産性を高める。
 以上、読解学習を進めるには、基礎的言語技術、基本的言語技術、総合的言語技術、方法的言語技術を習得する必
要のあることを述べた。

     六 読解学習技術の体系はどうなっているか

 読解学習技術は、前に述べたように、@基礎的言語技術、A基本的言語技術、B総合的言語技術、C方法的言語技
術の四種類に分けられる。次にそれらを構造化した、読解学習技術の体系を示す。

  1 読解学習技術の体系
                                                        25
                 ┌―文字を読む技術     ―┐
                 |―語句を理解する技術   ―|
       ┌―基礎的言語技術―|―文法を理酔する技術   ―|―┐
       |         └―音読・黙読・朗読の技術 ―┘ |          ┌―サイドラインの技術―┐
       |                          |          |―箇条書きの技術  ―|
       |                          |┐         |―表解の技術    ―|
       |         ┌―知識読解の基本的技術  ―┐ ||         |―図解の技術    ―|
読解学習技術―|―基本的言語技術―|―情報読解の基本的技術  ―|―┘|―方法的言語技術―|―行動化の技術   ―|
       |         |―思想読解の基本的技術  ―|  |         |―カード操作の技術 ―|
       |         └―文学読解鑑賞の基本的技術―┘  |         |―学習調節の技術  ―|
       |                           |         |―KJ法の技術   ―|
       |         ┌―構造化の言語技術    ―┐  |         └―フローチャートの技術┘
       |         |―構造変換の言語技術   ―|――┘
       |         └―感動を組織する言語技術 ―|
       └―総合的言語技術―|―感想を深める言語技術  ―┘
                                                        26
  2 基礎的言語技術の系列

 基礎的言語技術は、言語活動を裏からささえている。支持している言語技術で、言語活動の基礎となっている。
1 文字を読む技術
 (1) ひらがな・かたかな・ローマ字の読み方――逐字法・単語法(語形法)・文章法
 (2) 漢字の読み方――言語的文脈法・社会的文脈法・具象法・部首法
  ア 文脈による読み方
  イ 辞書による読み方
  ウ 練習による読み方
 (3) 漢字の増し方
  ア 読むために必要な漢字の増し方
2 語句理解の技術
  ア 言語的文脈による理解の仕方――定義型文脈法・限定型文脈法・抽象型文脈法
  イ 社会的文脈による理解の仕方――視覚的方法(実物・写真・映画・絵画等)、行動的方法(劇化・動作化・
    作業化等)
  ウ 類推法による理解の仕方
  エ 比較対照法による理解の仕方
  オ 構成法による理解の仕方
  カ 辞書による理解の仕方
3 文法理解の技術
 (1) 文型にる理解の仕方
  ア 行動認知の基本文型                                           27
  イ 状態認知の基本文型
  ウ 存在認知の基本文型
  エ 心情認知の基本文型
 (2) 文脈による理解の仕方
  ア 主語・述語の関係の理解――行動認知・状態認知・存在認知・異同認知・関係認知など
  イ 修飾関係の理解――連体修飾・連用修飾
  ウ 接続聞孫の理解――順接関係・逆接関係・囚果聞孫・仮定関係・推量関係など
  エ 並立関係の理解――対等関係・同類関係・対比関係など
  オ 独立関係の理解――応答・感嘆・提示
  カ 陳述の副詞の理解――否定の予測・推量の予測・確信の予測・疑問の予測など
  キ 助動詞の理解――伝聞・様態・推量・断定・使役・受身・尊敬など
  ケ 助詞の理解――比較・念押し・勧誘・疑問など
 (3) 論理・構造による理解の仕方
  ア 文と文の接続関係の理解――順接・逆接・因果など
  イ 段落の構造の理解――要点と細部との関係(抽象・総活・並立・全体・分析など)
  ウ 段落と段落との関係の理解――型の理解(要素型・条件型)、機能の理解(起・承・転・結・例証・提示)
  エ 文章構成の理解――頭括式・尾括式・両活式・要素型・条件型・くり返し型・くさり型・だんだん型・くら
    べ型・事件型・語り型など
  オ 文・文体の理解――常体・敬体・過去形・未来形・現在形・肯定形・否定形・命令形など
                                                        28
  3 基本的読解鑑賞技術の系列

 基本的言語技術は、基礎的言語技術のうえに成り立つ技術である。つまり、読解活動では、文字の読み、語句の理
解、文法の理解のうえに成り立つ基本的読解技術である。この基本的言語技術は、知識・情報の基本的読解技術と、
文学の基本的読解鑑賞技術の二つに大別することができる。

1 知識・情報の基本的読解技術の系列
 (1) 概略を読みとる技術
  @ 話題の読みとり方  A あらましの読みとり方
 (2) 順序を読みとる技術
  @ 作業の順序  A 行動の順序  B 経験の順序  C 事件の順序の読みとり力
 (3) 要点を読みとる技術
  @ 要点の直観的な読みとり方
  A 要点の分析的な読みとり方
   ア 要点が段落の初めにある場合    ウ 要点が段落の中ほどにある場合
   イ 要点が段落の終わりにある場合   エ 要点を示す文がない場合
 (4) 要点と細部との関係を読みとる技術
  @ 抽象的な要点と細部の読みとり方
  A 総括的な要点と細部の読みとり方
  B 話題的な要点と細部の読みとり方
   ア 総括の関係  イ 抽象の関係  ウ 個と全体の関係  エ 順序の関係
 (5) 必要な細部を読みとる技術                                         29
  @ 必要な条件の読みとり方   A 必要な事項の読みとり方  B 必要な情報事項の読みとり方
 (6) 段落にまとめて読む技術
  @ 時間的に段落にまとめる読み方    C 論理的に段落にまとめる読み方
  A 行動的に段落にまとめる読み方    D 小段落を大段落にまとめる読み方
  B 内容的に段落にまとめる読み方
 (7) 段落相互の関係と文章の構成を読みとる技術
  @ 接続語などを手がかりにした段落相互の関係の読みとり方
  A 段落の機能の相互関係にもとづく段落相互の関係の読みとり方
  B 段落の内容を手がかりにして、段落相互の関係や文章の構成の読みとり方
 (8) 要旨、意図、中心的事項を読みとる技術
  @要旨の読みとり方  A 中心的事項の読みとり方  B 情報意図の読みとり方
  C 要旨等の直観的な読みとり方  D 要旨等の総合的な読みとり方
 (9) 読みとった内容を要約する技術
  @ 文の要約の仕方  A 段落の内容の要約の仕方  B 文章の内容の要約の仕方
 (10) 読みとった内容を組織する技術
  @文章の構造にもとづく読みとった事項の組み立て方
  A文章の要旨にもとづく読みとった事項の組み立て方
 (11) 表現に即して正確に深く読む技術
  @ 省いてある通りに読む読み方  A 叙述に即した読みとり方
  B 拡大解訳をしない読み方  C 意味充実の読み方  D 筋道を立てた読み方
 (12) 言語魔術を見抜く読みの技術                                       30
  @ あいまいな叙述の読み方   C 主観的な叙述の読み方    F たとえ叙述の読み方
  A 抽象的な叙述の読み方    D ぼかし叙述の読み方     G ずらし叙述の読み方
  B 誇張した叙述の読み方    E 抱き合わせ叙述の読み方   H そらし叙述の読み方
 (13) 批判的に読む技術
  @ 事象問の異同・関係などの読み分け方      E 事象や思想の表現・叙述の適否・正否の読み分け方
  A 事象や思想の表現・叙述の適否の読み分け方   F 事実とその説明・解説の読み分け方
  B 事実と感想と意見との読み分け方        G 事実の叙述と事実に対する感想との読み分け方
  C 自分の考えや意見と比べながら読む読み方    H 事実の叙述と事実に対する意見との読み分け方
  D 宣伝・情報に乗せられない読み方        I 内容についての正否・真否・価値の判断の仕方
 (14) 感想・意見・批判をもつ読みの技術
  @ 知識・情報の価値・機能に対する感想のもち方
  A 知識・情報の生活的・社会的機能に対する意見のもち方
  B 知識・情報の意図・効用等に対する批判のもち方
2 文学(思想・心情)の基本的読解技術の系列
 (1) 話の筋を読みとる技術
  @ くり返し型の筋の読みとり方   C くらべ型の筋の読みとり方
  A くさり型の筋の読みとり方    D 事件型の筋の読みとり方
  B だんだん型の筋の読みとり方   E 語り型の筋の読みとり方
 (2) 考えの展開を読みとる技術
  @ 問題解決の読みとり方  B 論理展開の読みとり方  D意図の展開の読みとり方              31
  A 思想展開の読みとり方  C 主題展開の読みとり方
 (3) 場面や情景を想像しながら読む技術
  @ さし絵法――さし絵によって場面や情景を想像して読む読み方
  A 絵画化法――絵画化によって場面・情景を想像して読む読み方
  B 行動化法――行動化によって場面を想像する読み方
  C パントマイム法――パントマイムによって場面を想像する読み方
  D 朗読法――音読・朗読によって場面を想像する読み方
  E 映像法――映像を描いて場面を想像する読み方
 (4) 心理や心情を想像しながら読む技術
  @ 感情移入法――感情移入による心理・心情の読み味わい方
  A 補い法――想像した心理・心情を補いながら読む読み方
  B 話しかけ法――人物に話しかけることによって、心理・心情を想像しながら読む読み方
  C 語らせ法――想像した心理・心情を人物に語らせながら読む読み方
 (5) 人物の性格・思想・行動などを読みとる技術
  @ 人物の紹介による、その性格・思想の読みとり方
  A 人物の行為・行動・ことばなどによるその思想・性格の読みとり方
 (6) 心理・心情の移り変わりを読みとる技術
  @ 行動・ことばなどをとおして心理の変化を読みとる方法
  A 場面・行動・ことばをとおして心情の移り変わりを読みとる方法
 (7) 気分・情調を読み味わう技術
  @ 平和なのどかな情調の読み味わい方   C 余韻余情の読み味わい方                    32
  A 無気味な情調の読み味わい方      D にぎやかな気分情調の読み味わい方
  B しみじみとした情調の読み味わい方   E 緊張・静寂・弛緩・ユーモアなどの情調の読み味わい方
 (8) 感動を読み味わう技術
  @ 感動の直観的なとらえ方  A クライマックスの読み味わい方  B 朗読による感動の味わい方
 (9) 主題を読みとる技術
  @ 主題の直観的な読みとり方
  A クライマックスによる主題の読みとり方
  B 事件の展開にもとづく主題の読みとり方
 (10) 感想・意見・批判をもつ読みの技術
  @ 人物の性格・行動・生活・思想などに対する感想のもち方
  A 主題に対する感想・意見のもち方
  B 事件・問題等に対する感想・意見・批判のもち方
 (11) 表現を読み味わう技術
  @ おもしろい表現の味わい方  D 比喩的表現の味わい方   H 味わいのある表現の味わい方
  A 的確な表現の味わい方    E 漸層的表現の味わい方   I 擬声的・具体的表現の味わい方
  B 強意・強調表現の味わい方  F 反複的表現の味わい方   
  C 感動的表現の味わい方    G すぐれた描写の味わい方  

 4 総合的読解技術の系列

 総合的読解技術はいくつかの基本的読解鑑賞の技術を祖み立てて、より高度の技術としたものである。
  @ 段落の要点を押えて文章の概略を読みとる技術  F 感想を組織して深化する技術              33
  A 落の要点を押えて文章を要約する技術      G 読みとったことを構造化する技術
  B 要旨を総合的に読みとる技術          H 読みとったことを構造変換する技術
  C 事件の展開を押えてあら筋を読みとる技術    I 読みとったことを等価変換する技術
  D 事件の展開を押えて生絹を読みとる技術     J KJ法による要旨を読みとる技術
  E 感動を組織して深化する技術          K KJ法を使って読解する技術

 5 方法的言語技術の系列

  @ サイドラインの技術          F ノートの技術
  A 箇条書きの技術            G カード操作の技術
  B 表解の技術              H KJ法の技術
  C 図解の技術(絵画化の技術)      I 学習調節の技術(フィードバックの技術、評価と調節の技術)
  D 行動化の技術(パントマイムの技術)  J フローチャートの技術
  E 理解の技術              K 学習過程の技術
  以上、読解学習に必要な言語技術を体系的に系統的にあげてみた。

     七 読解学習技術は、どんな原則のうえに成り立っているか

 言語技術は、望ましい学習結果を、能率的に生み出す、生産性の高い技術がいい。たとえば、目的に応じて、正確
な知識を、正確に迅速に習得できる技術、そのような技術がいい技術である。したがって、それは、文化を獲得した
り、思想を深化したりする技能的なものであり、しかも、だれでも自由にたやすく操作できる生産性の高いものが望    34
ましい。
 いったい、そのような技術は、どんな原則のうえに成り立っているのであろうか。

  1 生産性・創造性が高いこと――機能の原則

 言語技術は、もともと価値の獲得・生産のために使うものでおるから、生産性の高いもの、創造性の高いものとい
う原則のうえに成り立つものである。
 要約の言語技術、構造変換の言語技術、集団思考の言語技術などのように、それを使うことによって、新しい価値
を生み出し、生産的思考、創造的思考が、開発、伸長されるものである。
 たとえば、語句理解の技術として、「不眠不休」の意味を理解する場合に、すでに知っている「不正」「不利」「不
注意」「不幸」などをもとにして、類推してその意味を知る方法がある。これがいわゆる「類推法」「類推の技術」で
ある。この技術を使って、「不眠不休」の語の意味を理解し、新しい語を獲得することができる。ここには、新しい
意味を生み出すという、生産的・創造的思考が、その裏に働いている。
 このように技術は、生産性の高いもの、創造性の開発されるものであることが、何よりもたいせつなことである。

  2 操作しやすいこと――方法の原則

 言語技術を使う場合には、それが簡単で、わかりよく、使いよく、処理しやすいということが、使ううえの原則と
なる。
 技術は、それ自体簡単なのがいい。あまり複雑でごたごたしているのほ、時間がかかったり、面倒だったりして、
使うのがおっくうになる。そのうえパターン化がむずかしい。
 たとえば、語句理解の技術として、 よく「行動法」が用いられるが、 経験・行動には複雑な他の技術が加わるの
で、能率的でない場合が多い。簡単な技術は、当然わかりやすいはずであるが、そのほかに、筋が通っている、過程    35
が段階的にはっきりしているなども「わかりやすい」の重要な要素である。
 簡単で、筋道が通っていても、必ずしも使いよいとは言えない場合もある。一般に言語活動のなかでは、言語技術
は単独で使われるより、他の技術といっしょに使われる場合が多い。そこで、他の技術とよく結び付きやすいのがい
い。たとえば、要旨を読みとる技術、要点を読みとる技術、細部を読みとる技術は、全体と部分、上位技術と下位技
術などの関係で結ばれる。このような技術は、学習過程に位置づけやすい。
 最後に、処理しやすいというのは、その技術を使えば、容易に対象を処理することができる。目的を達成すること
ができる。言い換えれば、効果的な学習ができるということである。それとともに、技術そのものが処理しやすいこ
ともだいじである。
 このように、操作しやすくて、生産性が高いということが、技術処理の原則である。

  3 再現しやすいこと――構造の原則

 言語技術は、ことばを使う(刺激と反応)うえのパターンであるから、その型が作りやすく、また、その型が、再現
されやすいということが原則になる。使うたびに、その型、構造が変わるのでほ、技術がパターソ化されない。した
がって技術として固定しにくい。
 たとえば、要点を読みとる技術の一つに、「段落の細部をまとめて抽象化する」という技術がある。この技術は、
いつでもこの型、構造をもって再現される。再現することによって、パターソ化され、効果的・能率的に要点を読み
とることができる。
 このように、そのまま再現される技術は、パターン化し、同定化しやすい。つまり、身につきやすく、技術として
安定する。安定性をもった技術は、適用しやすい。
 技術の型が再現されるということは、くり返し使う、くり返し訓練することが可能であるということである。技術
の訓練として、反復練習が、パターン化に有効であることは、周知の通りである。                   36
 このように技術は、一定の型をもって再現される、反複されるということが重要な原則となる。

  4 科学性をもっていること――性格の原則

 言語技術は、主観的な思いつきや、特殊な人だけに使える、いわゆる名人芸でないほうがいい。いつでも、どこで
も、だれでも使える。筋道が通っている、基礎にある考え方、技術をささえる根拠が明確になっている。そういう科
学性・普遍性をもつべきものである。
 したがって、それは国語学習の科学化・工学化を図る場合に、そのまま適用できるような技術である。たとえば、
語句理解の技術として、社会的文脈による学習技術(社会的文脈法)がある。その技術には、まず、実物を示す、次に
ことばを示すという方法と、まず、ことばを提示してから、すぐあとで実物を示すという方法とがある。前者は、逆
行性条件反射による語句学習法であり、後者は、継時条件反射による語句学習法である。前者の方法では、条件反射
を形成しがたいが、後者は、最も条件反射を形成しやすい。だから語句を身につけやすいと言われている。たとえそ
れはささやかな技術の違いであっても、客観性・科学性、したがって普遍性をもつべきものである。

  5 観察・測定ができること――評価の原則

 言語技術は、学習によって強化され、その機能を高めるものであるから、その行使の状況、行使の結果が観察・測
定・評価できるということが原則になる。
 一般に評価は、技術を使う状況や結果を、観察したり、測定したり、テストしたりすることによって行われる。そ
の場合、技術は一定のパターンをもっている必要がある。パターン化していない技術は、それが身についたかどうか
判然としないし、観察も測定も困難である。
それは、技術を使う状況や結果は、一定の言語行動、身体的行動として現れる。その現れを観察し、測定して、その    37
技能が学習されたかどうかを判断し評価する。
 技術は、観察し、測定できることが、その成立の原則となる。
 要するに、言語技術は、@生産性が高いこと、A操作しやすいこと、Bパターン化しやすいこと、Cだれでも使え
ること、D観察・測定しやすいことなどの性格をもっていることがたいせつである。
                                                        38


  U 説明文の基本的読解学習技術の開発


     一 説明文の読解学習技術

 いわゆる説明的文章の読みは、機能的にみれば、知識を与える文章の読み、情報を与える文章の読み、思想を豊か
にする文章の読みということになる。したがって、それぞれの文章の機能に応じた、決のような読みの原則がある。

   1 正確な読み

 知識は、本来客観的で、ある構造をもっているから、知識を与える文章を書く場合には、客観的に、論理的に、構
造的に書くのが普通である。したがって、それを読む場合にも、読み手の主観を交えずに、客観的に、正確に読みと
ることがだいじである。
 正確に読みとるということは、叙述に即して書いてあるとおりに読むことから始まって、書き手の認知構造を読み
とるにいたるまでの冷静な読みである。つまり、叙述に即して客観的に、正確に、構造的に読みとる技術を働かせる
読みである。
 また、情報には、@新聞のニュース記事が代表するような問題、事件、事象を比較的客観的に、構造的に叙述した
もの、A広告や宣伝などが代表するような事象を、意図的・主観的に叙述したもの、B新聞の教養記事や一般図書が
代表するような事象・問題などを、要旨的・要点的に叙述したものなどがある。                    39
 これらの情報を読む場合にも、情報事実を正確に読みとる必要がある。情報を正確に読むことは知識の読みのよう
に単純ではない。それは叙述に即して正確に読むというだけにとどまらない。正確な情報を正確に読みとるという、
正確が二重構造になっているからである。
 いずれにしても、知識や情報は、その性格や機能の上から正確に読む必要がある。

   2 深い読み

 知識は正確に読むだけでなく深く読む。単に知識を知識として表面的に理解したのではじゅうぶんではない。たと
えば、自然事象に対する知識を通して、その事に自然の神秘を読みとる。筋道の通った知識を理解して、論理の美・
合理性の美を読みとる。また、情報を読んで、情報事項を理解するにとどまることなく、情報意図を正確に読みとる
必要がある。このような深い読みが期待される。

   3 批判的な読み

 普通の情報は、意図的・主観的に叙述されている。したがって、その意図や主観に引きずられ、みずからの判断を
誤るおそれがある。また、現代のように情報が多すぎて、その選沢に迷い、情報におぼれ、情報に流される心配もあ
る。したがって、主体性を確立して批判的に読むことは、情報の読みの基本である。情報における批判的な読みとい
うのは、その情報は真実な正碓な情報であるかどうかを判読する、その情報は正確に叙述されているかどうかを判断
する、その情報は価値があるかどうかを判断するの三種類の読みを含んでいる。さまざまな批判読みの技術は、ここ
に根拠をおいている。

   4 創造的な読み

 知識や情報の読みでは、知識や情報そのものを求めるとともに、その読みの過程において、創造的思考を伸ばすこ    40
とが考えられる。
 創造的思考を伸ばす読みは、知識や情報を再組織・再体制化するときに行われる。知識や情報そのものが持つ構造
(筆者の認知構造)を読みとって、それをさらに、読み手の論理に従って再組織・再体制化する。それがいわゆる構
造変換である。そこに創造的思考力が働く。創造の技術の開発が行われる。

   5 価値的な読み(機能的な読み)

 知識や情報の読みは、本来、内容的価値としての知識そのもの、情報そのものを求める読みである。その獲得によ
って、知性を増す、社会性を増す、教養を高めるなど、いわゆる行動の変容をきたす読みである。そのような機能的
な読みである。
 知識・情報の読みは、@正確に読む技術、A深く読む技術、B批判的に読む技術、C創造的に読む技術、D価置
(知識・情報)を読みとる技術などによってささえられている。
 以下、これらの読みの原則にもとづく基本的な読解技術について解説する。

     二 概略を読みとる学習技術

   1 解説

 概略を読みとるというのは、文章の内容を縮図的に読みとることである。古くは、大意と言った。知識や情報を断
片的に読みとらないで、まとめて、構造的に読みとる技術である。これを発達的にみると、決のようになる。
 @ 書いてあることのだいたいを読みとる技術
 A 話題を中心にして概略を読みとる技術                                    41
 B 話題を、要旨に即して構造的に読みとる技術
 @Aは低学年で、Bは中学年以上で学習する技術である。Bは、要点を読みとる技術を必要とするので、要点・要
約の技術のところで解説する。

   2 だいたいを読みとる技術

 一年生の情報は、「だれと何をした」「だれとどこへ行って何を見た」「だれと何を作って遊んだ」というような、
経験情報・生活情報である。また、「働く自動車にはどんなものがある」「ヘリコプターはどんな働きをする」とい
うようなごく簡単な知識や情報である。そこで、次のような技術を指導する。
 @ 何の話か、何について書いた話か、だれの話かを押える――話題の読みとり
 A 何がどうした話か、何がどうなった話か、――だいたいの読みとり
 B だれが、だれと、何をした話か、いつどこで、だれが、どうした話か――だいたいの読み取り
 C 何について、どんなことがわかったか――だいたいの読みとり

   3 だいたいを読みとる技術の指導

(1) 文章の内容に即した課題を決める――指導者と児童と話し合ってきめる。課題は板書。
(2) 課題に即しながら読んで、ノートに書く。あるいは、次のような学習シートを用意して、各自記入させる。
 1 書いてあることのだいたいを読みとる技術 

 だ れ が  だ れ と  な  に を し た か
 はるおさんが  ひろしくんとあやこさんと  ぶらんこにのってあそびました。

 2 話題を中心にして概略を読みとる技術                                    42

 なにには どんなものがあるか
 はたらくじどうしゃには  にもつをはこぶじどうしゃ、人をほこぶじどうしゃ、みちをつくるじどうしゃ、つちをけずるじどうしゃがある。

 3 話題を中心にして概略を読みとる技術

 な に は   ど ん な と き に ど う す る か 
   ぞうのはなは  たべものをたぺるときにつかいます。
 水をあびるときにつかいます。
 てきとたたかうときにつかいます。


     三 順序を読みとる学習技術

   1 解説

 順序を読みとるというのは、文章に書かれている順序・経過・過程・展開・変化・移動などを、叙述に即して読み
とっていく技術である。たとえば、作業の順序、行動の経過、事件の展開、生態の変化、時間の経過、場所の移動な
どを叙述に即して読みとっていく技術である。
 これらの技術は、多くは低学年で指導する。それは、このころの児童は、点的思考から、線条的思考――関係的思
考へと発達する時期に当たっているからである。
 この技術の学習は、物の作り方、実験の仕方、遊び方などを書いたいわゆる指示文、遠足、校庭めぐり、工作など    43
の生活経験を書いた文章などによると効果的に行われる。

   2 順序を読みとる技術

 この学習技術には、次のようなものがある。
l 順序を示す語を押えながら読む技術
 たとえば、「はじめに――つぎに――おわりに」、「まず――それから――そのつぎに――さいごに」、「一ばんめ
――二ばんめ――三はんめ」など。
2 係り受け、展開を示す語などを押えながら読む技術
たとえば、「なにはどうする――また――そのほかに」「そこから――また――それを――とうとう〇〇した」「こ
のように――それから――そうして」など。
3文 脈をたどりながら読む技術
 前に述べた1、2の技術は、主として、段落のまとまりを追って、その順序・経過などを押える技術であった。文
脈をたどりながら読む技術は、段落の中の文と文の係り受けの関係を考えながら、叙述の順序に従って、ことがらの
順序を押えて読む技術である。
 (1) 接続語(接続語や接続助詞)を押える
たとえば、それから、そして、また、しかし、けれども、○○してから○○した、○○たりしていた、○○して○
○してなど。
 (2) 並立語を押える
 たとえば、○○たり○○たり、○○て、○して○してなど
4 書かれていることがらの変化・移動などを読みとる技術
 この技術は、書かれている内容の変化移動を順序的・過程的に読みとる技術である。したがってことがらの変化・    44
移動などを表す語や事実を押える。
 たとえば、春→夏→秋→冬、山→野原→海、卵→子ども→おとな、どこからどこへ、何から何へなど変化・移動を
示す語や事実を押える。

     3 順序を読みとる学習技術の指導

l 作業工程を読みとる技術の指導
    「しんを作る(えんぴつ)」
   しんを作るにははじめに、こくえんとねん土とを、大きなつつのようなきかいに入れます。そして、ぐるぐ
  る回しながら、こまかくくだいてませ合わせます。
   出てきたこなに水をまぜて、よくねってから、つぎのきかいに入れておし出します。すると、さしわたし七セ
  ンチぐらいの太いしんになって、出てきます。
   これをつぎのきかいにかけると、こんどは、ふつうのしんぐらいの太さになって、出てきます。
   これを、えんぴつの長さに切ってかわかします山
   それからやいてかたくしたり、にえたったあぶらの中に入てすべりぐあいをよくしたりしますします。

 この「しんを作る」は、鉛筆の芯の作り方を、その順序(工程)に従って説明している。その順序は、@大きなつ
つのような機械、Aつぎのきかい、Bつぎのきかいの三つの機械と、その機械によって作り出されるもの、@黒鉛と
粘土をまぜた粉、A太い芯、B普通の芯の変化とによって示されている。
 それをさらに、@鉛筆の長さに切る、A焼いて附くする、B油に入れてすべりぐあいをよくするという工程をとっ
ている。
 それらの順序・過程を示す語は、@はじめに、 Aつぎのきかい、 Bつぎのきかい、Cそれからとなっている。な    45
お、前を受けることばとして、@出てきたこな、Aこれを、Bこれをが使われている。
 また、段落の中では、@そして、Aすると、Bこんどは、C……かたくしたり、………よくしたりなどの語を用い
て、その順序・過程を表している。
 これらを判断したうえで、決のように学習する。
 @ 全文を読んで、どんな順序に従って芯を作くるかを読みとる。
 A 読みとったことを順序に従って発表する。――だいたいの順序を押える。
 B 全文を読みながら、芯を作る順序を書き出す。

   ※ 原本では字は囲み文字 字は〜〜傍線

 しんを作るには
  1 はじめに―――こくえんとねん土
     つつのようなきかいにいれる 
     そして―――まぜあわせる
  2     出てきたこな―――よくねる
    つぎのきかいに入れる
     すると―――太いしん
  3       これを
    つぎのきかいにかける
     こんどは―――ふつうのしんぐらいの太さ
  4       これを
    えんぴつの長さに切る―――かわかす                                   46
  5 それから
      やいてかたくしたり
      油に入れてすべりぐあいをよくする
 C 話し合いながら教師が板書する。それといっしょに児童はノートに書く。あるいは児童が書いたものをもとに
  して、全文を読みながら話し合って修正する。
 D 初めに読んで話し合いながら、段落の内容から、全体の順序を押える。次に段落ごとに、詳細に読みとって、
  補う方法をとってもよい。
 E 初めに段落ごとに要点を読みとってカードに書き出し、それを一枚の紙に並べてはるのもよい。

 はじめに、こくえんとねん土を、つつのようなきかいに入れてまぜ合わせる。
 つぎのきかいに入れて太いしんをつくる。
 (これを)つぎのきかいにかけて、ふつうの太さのしんにする
 (これを)えんぴつの長さに切る。
 それからやいてかたくする。
油に入れてすべりぐあいをよくする。

 F この学習の過程で、文章全体の順序――段落の内容の順序を表すことばと、段落の中での順序過程がわかるこ
  とばとに注意をする。
 G 二つの指示語、「これ」を、「太いしん」「ふつうの太さのしん」と置きかえて書かせるとよい。         47
2 成長過程を読みとる技術の指導
    「さけが大きくなるまで」
   秋になるころから、おとなのさけは、たくさんあっまって、たまごをうみに、海から川へやっていきます。そ
  して、いきおいよく川を上ります。(中略)
   やがて、水のきれいな川上にたどりつくと、さけは、おびれをふるわせてすなや小石の川ぞこをほります。
  (中略)そこへたまごをうみつけて、うめてしまいます。
   冬の問にたまごからさけの赤ちゃんが生まれます。(中略)三センチぐらいの小ざかなになります。
   春になるころ五センチぐらいになったさけの子どもたちは、海をめざして、川を下りはじめます。(中略)い
  く日もかかって、川を下ります。
   海に出たさけの子どもたちは、一か月ぐらいの間川口のところでおよいでいます。その間に十センチぐらいの
  大ききになります。(以下略す)
 この文章は、さけが川を上って産卵し、それがかえって幼魚となり、海へ下って成長する過程を習いた文章の一部
である。
 このような文章で、「さけが大きくなるまで」の知識を、得るには、その成長の過程を順序よく読みとる。そのた
めには、ここでは、秋→冬→春という季節の推移、産卵→稚魚→幼魚という成長の事実、川上→川を下る→川口→海
へという場所の移動という三つの要素によって成り立っていることを押えなければならない。
 そこで、その過程を読みとるためには、各段落に書かれている内容に注意する。そこから読みを進める。
 @ 全文を読んで、直観的に、「さけが大きくなるまで」の順序を押える。季節の変化を表すことばを押える。そ
  こでどんなことがあったかを押える。
 o秋になる――海から川上へ
   やがて、川上へたどりつく                                         48
       たまごをうみつける
 o冬の問――さけが生まれる――小ざかなになる
 o春になる――海をめざして川を下る
 o海に出た――川口――十センチぐらいになる
 A 順序を読みとって書いたものをもとにして、季節の推移とともに、さけのいる所が変わり、さけの子どもが成
  長することを押える。
 B 次のような表を作って書きこんでいく。書いた表、あるいは教師が作った表をOHPで投映し検討する。文章
  を読みながら。

いつ  どこへいく   どうする、どうなる
秋になる   海から川上へ  
   川上へたどりつく  川ぞこをほる、たまごをうみつける
 冬の間  (川上)  さけの赤ちゃんがうまれる、三センチぐらいの 小ざかなになる
 春になる  海をめざして川を下る。いく日もいく日もかかる  
   海に出る、川口のところにいる  十センチぐらいの大きさになる

 これは、文章の内容の変化・移動と、それを示すことばを手がかりにして、順序を読みとる技術を使った学習であ
る。
                                                        49
     四 要点を読みとる学習技術

   l 解説

 要点を読みとる技術は、段落の中のだいじなこと、段落の中心になっていること、段落の中で筆者が言おうとする
こと、段落の中に書いてあることを総活したり、抽象化したりしていることなどを読みとるときに働く技術である。
 段落の中の要点と細部
 要点の読みとり方を指導するには、段落の要点とそれをきさえている細部とが、どんな関係になっているかを押え
ておくと、たいへん都合がよい。
 (1) 要点が細部を総括している段落
  五月の野山では、鳥のすがたがよく目につきます。家の回りには、スズメやカラスがいます。ツバメもすいすい
 とんでいます。野原では、ヒバリがさえずっています。山では、ウグイスやカッコウが鳴いています。このころ、
 鳥たちはみな、す作りにはげんでいるので目につくのです。
 この段落の要点は最初のセンテンス「五月の野山では、鳥のすがたがよく目につく。」である。その次に、「鳥の
すがたがよく目につく」というなかに含まれている個々の事実、スズメ・カラス・ツバメ・ヒバリ・ウグイス・カッ
コウなどが飛び、鳴いていることが述べられている。これがいわゆる「細部」で要点をささえている。この細部を総
活した文が、段落の最初の文である。それらを受けて、「鳥たちはす作りにはげんでいるので目につく」と締めくく
っている。
 そこで、この段落は、総括的要点1個々のことがら1まとめという構成になっている。
 (2) 要点が細部を抽象化している段落
  微生物が発見されると、微生物についての研究も盛んになってきました。そして、どんな種類の微生物がいるの    50
 か、微生物はどのように生きているのか、どのくらいの大きさなのかなどがはっきりしてきました。さらに微生物
 とわたしたちの生活との関係も、明らかになってきました。
 この段落の要点は、最初のセンテンス「微生物についての研究がさかんになってきた」である。「研究がさかん」
というように抽象化して述べてあるが(上位概念)そのあとには、微生物の種類・微生物の生態・微生物の繁殖・微
生物の大きさ、微生物とわたしたちとの関係などが明らかになったと、具体的な研究の内容(下位概念)があげてあ
る。これらのたくさんの研究の事実を抽象化して「研究がさかん」と述べてある。
 これは、細部を抽象化した要点で、段落は要点→具体的事実の並列という構成になっている。
 (3) 要点が細部によって解説されている段落
  布地だけでなく、衣服の形についてもくふうしています。えりや袖口の聞いた衣服を着るでしょう。これも、か
  らだの回りの暑くなった空気を外に出すのに、たいへん役立っているのです。
 この段落の要点は、最初のセンテンス「衣服の形についてもくふうしている」である。この要点について、どんな
形の衣服を着るか、それはどんな役めをするかなどについて解説している。これが細部・詳細である。
 したがってこの段落は、話題が要点として提示され、それについて、解説1、解説2がついているという構成にな
っている。
 (4) 要点が細部によって分析され説明されている段落
  雲や霧は、空気中の水蒸気が、そのときのぐあいで、小さな水のつぶに集まり変わったものです。この水のつぶ
 ができるときには、必ず、何かつぶの「しん」になるものが必要なのです。その「しん」がないと、いくら水蒸気
 がたくさんあっても、雲や霧はできません。煙のつぶの中で、とりわけ小さなものが、この「しん」になります。
 つまり、けむりのつぶの回りに水蒸気が集まって、小さな水のしずくができると、これが雲や霧になるのです。
 この段落の要点は、最初のセンテンス「雲や霧は、空気中の水蒸気が、小さな水のつぶの集まり変わったものであ
る」に示されている。この要点は、雲や霧のできる過程を、「小さな水のつぶの集まり変わったもの」というように、   51
まとめて全体的に述べている。そこで、細部は、その過程を分析して、@水のつぶができるには「しん」が必要であ
る、Aとりわけ小さな煙のつぶが「しん」になる。B煙のつぶの回りに水蒸気が集まって小さなしずくができる。こ
れが雲や霧になる、と説明している。このように全体的に述べたことを分析して説明している。
 これは細部を総合的・全体的に述べている要点で、細部がそれを過程的に分析して説明している段落である。
 (5) 要点が細部を要約して示している段落
  眠りの長さは年齢によって大きな違いがある。生まれたばかりのあかんぼうは、ほとんど一日じゅう眠ってい
 る。五才ぐらいの子どもは、 十二時間ぐらい、 小学生で十時間ぐらい、二十才ぐらいの青年で八時間ぐらいで
 ある。このことは、眠りが人間の発育と密接に関係していることを示している
 この段落の要点は、最後のセンテンス「眠りは、人間の発育と密接に関係している。」である。この要点は、細部
を総括したり、総合したり、抽象化したりしているのではない。事例相互の関係を「発育と密接な関係」と要約して
述べている。
 このような段落は、普通事象・事例が細部として述べられ、それを「このことは」「それは」「このように」「こ
うして」「つまり」「要するに」などで受けて、次に要点を述べる構成になっている。
 (5) 要点が示されていない段落
  カモやツグミのなかまは、秋に北方から渡ってきて、日本で冬を越し、春にまた、北へ向かって帰っていきます。
 ちょうど、ツバメやカッコウの渡りと、反対の方向の渡りをするのです。シギやチドリのなかまは、北方の巣作り
 の場所と南方の冬越しの場所との間を往複する途中、ほんのしばらく日本で休んでいきます。
 この段落には、特別に要点が示されていない。渡り鳥の三つの事例が示されているだけである。事実を述べる段落
・事例を示す段落には、このようなものが多い。
 こういう場合には、次の段落でこれを受け「まとめるのが普通である。この段落のあとには、「このように、遠く
離れた巣作りの場所と冬越しの場所との間を、年に一回往複する鳥を渡り鳥と呼びます」という段落がついている。    52
この場合、あとの段落は「こうして」「このように」「要するに」などによって、前の段落を受けてまとめるのが普
通である。
 以上、要点を細部との関係においてとらえ、五つの型をあげた。これは要点の基本的なパターンである。
また、段落内の構造も、この要点と細部との関係によって規定されていることを示した。なお、段落の中の要点は、
ここにあげたもののほか、段落の中ほどにあるもの、段落の初めに話題があり、説明(細部)があり、要点があるも
のなどがある。
 次に、ここに示した要点と細部との関係、それにもとづく段落の構成を図示してみる。

2 要点と要旨との聞孫
 これまでは、要点の性格・特性を細部との関係、段落の構成との閲係において明らかにした。しかし、要点のあり
方を究極において規定するのはその文章の要旨である。
 文章は形式的には、段落を単位として、展開構成されている。意味的には、要旨をささえる要点を単位として展開
構成されている。
 したがって、段落の機能・相互関係を規定するものは文章であり、要点の機能・相互閲係を規定するものは要旨で
ある。段落は要点を規定することはできない。何が要点であり、それがどんな機能を持つかは、文章全体をささえて    53
いる要旨によって決められるのである。この点が明確でないために、段落内の意味構造にこだわって、要点を押え誤
ることがしばしばある。
3 要点を読みとる学習
 一般に生活的な読みにおいては、要点を読みとる必要があるのは、文章全体を通読して知識の概要や情報の概略な
どを求める場合である。したがって、直観的に要点を押えるのが普通である。
 このことは、どのような読みをする場合に要点を読みとる技能が有効に働くか、つまり、要点を読みとる技術の学
習はいつ行うのがいいかを物語っている。また、前に述べたように、要点は要旨に属するもの、支配されるものであ
ることをも物語っている。
 したがって、要点を読みとる技術は、文章全体を読んで直観的に要点を押える場合に働くものであるから、文章全
体を読んで、直観的に知識の概要、情報の概略を読みとる場合に学習するのが原則である。
 また、直観的に要点を読みとる技術を強化するには、要点と細部との関係を明らかにする分析的な読みの技術を学
習するのが有効である。つまり、細部を詳細に理解することによって、要点を明確にする学習である。
 要点を読みとる技術の学習は、この二つの方法を併せ用いるとよい。

   2 要点を読みとる学習技術の指導

1 直観的に要点を読みとる学習技術の指導
 この方法は、すでに述べたように、文章全体を読んで、内容の概略を読みとる場合に学習する方法である。いわゆ
る全容直観の方法である。
 ア 読みの課題・見通しをはっきりさせて読む。
 (ア)象はどんな時に鼻を使うか書き出す。
 (イ)飛行機雲はどのようにしてできるか、その順序を調べて箇条書きにする。                   54
 (ウ)さるはどのように群れを作っているか、その仕れみを表にする。
 (エ)渡り鳥にはどんな種類があるか筒粂書きにする。
  など、読みとる事項・読み取り方を明確にして読む。
 イ 読みながら、要点と思われるところにサイドラインを引く。あるいは、箇条書きにする。
 (ア)要点は段落の初めか終わりにあること。
 (イ)段落をまとめていること、段落の中心になっていること、話題になっていることと、それらについて説明し
   ていることとを区別する。
 (ウ)要点を並べたときに、その間に筋道がたっていること。
 ウ 読みとった要点を並べて読んでみる。
 (ア)筋道が通っているか
 (イ)知識や情報の概要がわかるか
 (ウ)要点の書き表し方が一貫しているか
 エ グループで発表し合って評価する。最初に立てた課題・目標に照らして足りない点、不適当な点を明確にして、
  再び読んで修正する。
2 分析的に要点を読みとる学習技術の学習
 この方法は、段落に即して、要点と細部との関係を明らかにして、要点を確実にし、確認する方法である。
 ア 段落全体を読んで、直観的に要点を押える。――要点を書き出す。
 (ア)この段落で知らせよう(わからせよう、教えよう)としていることを短く書き出す。
 (イ)この段落に書いてあることをまとめている文を書き出す。
 (ウ)段落の初めにある文(あるいは終わりにある文)に注意する。
 イ 書き出した要点の適否を確認する。                                     55
 (ア)細部を正確に読みとる。
 (イ)読みとった細部と省き目した要点との関係を考える。――総括・抽象・話題・総合・要約などの関係を明ら
   かにする。
 (ウ)要点と細部との関係を考えて、要点を修正する。
 ウ 要点を確認する。
  要点を読みとる技能のプログラム学習もこの過程をたどって学習する。
  なお、この方法の過程において、語句の学習、文法の学習なども行われる。細部の読みは、この段階で指導する
 ことになる。
3 要点の学習表、学習シートのくふう
 直観的方法でも、分析的方法でも、その学習の結果を整理し、記録するためにも、学習ノート、学習表、学習シー
ト、あるいは、学習のプログラムを用意するとよい。

                                                        56
 表の中にあらかじめ書き込んでおくことばは、児童の能力に応じて取捨選択する。実際にはわく組みを示すだけで
もヒントになる。


     五 段落相互の関係を読みとる学習技術

   1 解説

 段落相互の関係を理解するということは、文章の段落の個々の内容の相互関係を理解することである。文章は段落
を単位として、主題や要旨をある論理のもとに展開し構造化したものである。したがってその段落相互の問には、展
開する論理にもとづく相互の関係がある。また、段落相互の関係は、文章全体を要旨に即して展開する論理と同じで
ある。だから、文章全体の中で、段落相互の関係がわかることは、文章の全体構造がわかることである。そのような
技術が段落の相互関係、文章構成を理解する技術である。
 ところで、段落と段落との間にはどんな関係があるか、その関係を規定するのが、要旨を展開する論理である。そ
こで、まず、段落自体はどんな機能をもっているかを考えてみる。
 段落の形式的機能
 段落は、形式的に、次のような機能をもっている。
  @ 起こす機能――これは文章を書き起こす、書き始める機能である。したがって文章の最初の段落である。
  A 受ける機能−これは、前の段落を受けて、何かについて述べる機能である。
  B 受けて起こす機能――前の段落を受けて、そこから、次の段落を起こす機能である。したがって、最初の段
   落にも最後の段落にもなり得ない、中ほどにある段落のもつ機能である。
  C 並べる機能――前の段落と、並立・対等の関係をもつ段落の機能である。要素型の文章の前後の段落を除い
   た段落は、みなこの機能をもっている。                                   57
  D 広げる機能――前の段落を受けて、それを展開する段落のもつ機能である。
  E まとめる機能――直前の段落、あるいは、それ以前の全段落を受けてまとめる段落のもつ機能である。これ
   は原則として、文章の最後の段落のもつ機能である。
 なお、これらの段落には、最初に、その機能を表すことばがつくことがある。たとえば、「まず、はじめに、つぎ
に、おわりに」「たとえば、このほか、このように、こうして、要するに、つまり」「また、しかし、ところで、そ
こで、さて」など、起こす、受ける、並べる、広げる、まとめるなどの機能をもった語がそれである。これらの語に
よって、それらの段落の機能を知ることができる。
 文章の中の段落は、右の機能のどれかをもっていて、互いに関係し合っている。
2 段落の意味的機能
 また、段落はその内容によって、次の機能をもつようになる。
  @ 紹介の機能――文章の初めに、主題、要旨、話題、人物、事件などの実情、あらましなどを紹介する段落の
   もつ機能である。この段落は文章の初めにあるのが普通である。
  A 提示、課題提示の機能――「なぜだろうか」「どうなるだろうか」「知っていますか」というように、問題
   や課題を提示する段落のもつ機能である。 この段落は、文章の初めあるいは、中ほどにあるのが普通である。
  B 興味、関心、必要、欲求などを喚起する機能――話題について、あるいは話題に関係ある事象について述べ、
   話題に対する関心・興味を引き起こしたり、読んでみようとする欲求を起こさせたりする機能。この段落は、
   文章の初め、あるいは途中にある。
  C 説明・解説する機能――話題について説明・解説して理解に導く機能。
   この段落は文章の途中にあるのが普通である。
  D 例証する機能――事例をあげたり、引用したりして、説明・解説などの裏付けをする機能。この段落は、文    58
   章の初めや中ほどにある。
  E 結論を述べる機能−文章をまとめて最後に結論を述べる段落のもつ機能である。
  @ 感想・批判を述べる機能――話題・問題についての感想や意見・批判などを述べる段落のもつ機能である。
 要するに、段落は上にあげたように、意味的な機能をもっている。これらの機能を働かせながら文章全体の中に、
相互に関係を保っている。

   2 段落相互の関係を読みとる学習技術の指導

lの解説にもとづいて、段落相互の関係を読みとる技術の指導について述べてみる。
l 文章「新聞とラジオ・テレビ」
 この文章の構成は次のようになっている。その概略を示す。
   ※ 「新聞とラジオ・テレビ」(概略)
  @ ニュースを伝達するという点では、新聞も、ラジオ・テレビも、同じ働きをもっている。……この三者の方
   法のちがいによって、それぞれの伝達機能の特色が生まれてくる。
  A 第一は速報性の差ということである。
   (ア)一九六八年五月十六日……(イ)このような早わざ……
  B 第二は、情報の受け手にとっての制約の差である。
   (ア)新聞の読者は……(イ)また、新聞は……(ウ)さらに新聞なら……(エ)つまり、受け手の自由さ……
  C 第三は、受け手の情感にうったえる力の差である。
   (ア)テレビは……(イ)十勝沖地震のテレビのニュースで……
  D このように、新聞・ラジオ・テレビには伝達の方法のちがいによる伝達機能の特色がある。したがって、そ    59
   れらの特色を……
2 段落相互の関係を読みとる学習技術の指導上の文章は@〜Dの段落によって構成されている。
 ABCは大段落で、その中が、それぞれ二段落・四段落・二段落の小段落によって構成されている。
 まず、この文章全体の中の段落の相互関係を押えるには、第二段落以下の、「第一は」「第二は」「第三は」「こ
のように」という段落の初めのことばを押える。これらのことばの機機を考えて、各段落相互の関係を押える。
 @の段落は、話題提示――「それぞれの伝達機櫨の特色が生まれてくる。」
 ABCの段落は、@の段落を受けて、「伝達機能の特色」を、それぞれ一つずつ並べあげている。ABCは、それ
ぞれ対等の関係、同一の資格で並べられている。
 Dの段落は、「このように」と、ABCの段落を受けて全体をまとめている。総括して、将来への期待を述べてい
る。
 このように@の段落は、起こす、Aの段落は、@を受けた段落、Bの段落は、Aの段落に並列した段落、Cの段落
もAの段落に並列した段落、Dの段落は、ABCの段落を受けて、まとめた段落、総括した段落である。
 次に、大段落の中の小段落の相互の関係を押えてみる。
 Bの大段落は、その中が四つの小段落に分かれている。この四つの小段落相互の関係は、それぞれの段落の最初の
ことばが表している。それを押える。
 (ア)の段落は「新聞の読者は、反復や保存という点で制約がないが、ラジオやテレビには大きな制約がある」と
制約の一つを提示している。
 (イ)の段落は、「また」と述べて「ラジオ・テレビは時間的・場所的な制約が大きい」と第二の制約をあげて並
べている。
 (ウ)の段落は、「さらに」と述べて、「ラジオ・テレビは、受け手の自由を制約する」ことをあげ、第三の制約    60
をあげ並べている。
 エ)の段落は「つまり」と、(ア)・(イ)・(ウ)の段落を受けて「受け手の自由さという点では、ラジオ・テ
レビの方が、新聞よりも制約が大きい」とまとめている。このように、段落の初めのことば「また」「さらに」「つ
まり」を押えると、段落の機能・段落と段落との関係を明確にすることができる。
 以上述べた段落相互の関係を表解してみると次のようになる。

 このように、段落の初めにある接続語などを手がかりにして、段落相互の関係を明確に読みとることができる。     61


     六 文章の構成を読みとる学習技術

   1 解説

 文章は、普通形式的には、段落を単位とし、内容的には、要旨の論理的な展開にしたがって構成されている。した
がって、要旨の展開を裏付ける論理が文章構成の論理になる。
 文章の構成を読みとる技術というのは、この文章構成の論理を、要旨を中心として、段落相互の関係を考えながら、
筋道を立てて読みとっていく技術である。
 したがって、前に述べた段落相互の関係を読みとる技術がその基礎になる。
 ところで、上のように、文章の構成を筋道を立て論理的、構造的に読みとる指導をするには、文章構成の一般的な
パターンを知っていると便利である。
 一般に、文章構成の論理は大別すると二つになる。一つは、要旨が、要旨をささえる要点として、要素的展開によ
って構成されている「要素型」の文章である。
 他の一つは、要旨が要旨をささえる要点の条件的展開によって構成されている「条件型」の文章である。次にその
例をあげてみる。
l 並べ型の文章(並立的構造過程の文章)
 並べ型の基本になる文章の型は、「要素型」である。つまり、各段落は同等の価値、同等の資格、同等の内容をも
って、並立されている文章である。
 たとえば、第一段落は、渡り鳥には三種類あるという紹介、第二段落は、夏鳥の説明、第三段落は、冬鳥の説明、
第四段落は旅烏の説明となっている。この第二、第三、第四段落は、内容的にも形式的にも全く同等の価値、同等の    62
内容・機能をもって順次並立されている。このような構造過程をもった文章が、並べ型の文章である。
2 だんだん型の文章(漸層的構造過程の文章)
だんだん型の基本型は、条件型の文章で、各段落は、その前の段落を受けて、さらに新しい内容をつけ加える。つま
りだんだん詳しく説明されたり、だんだん新しいことが加わったりして、文章が展開される。このような構造過程を
もつ文章が、だんだん型の文章、漸層的構造過程の文章である。
 たとえば、第一段落には、山のしずくを集めて細い谷川になること、第二段落には、谷川が谷川を集めて、岩をか
む激流になること、第三段落には、谷川は、平野へ出て、いくつもの支流を集めて大河となることが書いてある。こ
のように、第一段落からしだいに叙述の内容が増したり、詳しくなったり、発展したりして、段落と段落との関係が、
漸層的に高まり、発展していくような構造過程をもった文章が、だんだん型(漸層的構造過程)の文章である。
3 くさり型の文章(連鎖的構造過程の文章)
 くさり型の文章の基本型は、各段落が、相互に関連しあいながら、くさりのように結びあって展開する文章の型で
ある。
 たとえば、第一段落には、「五月の野山では鳥の姿がよく目につく」、第二段落では、「しかし、ツバメやカッコ
ウは冬の間は見えない。冬いたカモやツグミはどこにいるのか」、第三段落では「今いた鳥が急にいなくなり、いな
かった鳥が急にふえるのは、わたしたちの先祖には全くのなぞで、冬の問ツバメは地面の下にかくれる』などの話を
信じていた。」第四段落では、「しかし、今ではだれもそれを信じない。ツバメやカッコウは、春南から来て、秋南
へ帰ることがわかったから」、第五段落では、「カモやツグミは、秋北から来て、春北へ帰る、……シギやチドリは、
北と南を往復する途中ちょっと日本で休む」、第六段落では、「それらを渡り鳥といい、渡り鳥には三種類ある」と
書いてある文章がある。
 この文章では、第二段落以下全部の段落が、みなその前の段落の内容とからませて、ちょうどくさりがつながって
いるような関係で結び合っている。こうして、文章は段落によって展開している。このような文章が、くさり型の文    63
章である。
4 かかわり型の文章(関連的構造過程の文章)
 この型の文章は、段落の機能を規定する、要旨展開の論理が、いわゆる起承転結の関係、因果の関係、序論・本論
・結論の関係などで組み立てられていろ文章である。
 たとえば、第一段落では「わたしたちの回りには微生物がいる。」と話題を捏示。第二段落では「微生物は今から
二百八十年ほど前発見された。」書き起こす。第三段落は、それを受けて「微生物が発見されると、その研究が盛ん
になった。」と説明する。第四段落では、観点を変えて「微生物の中には有害なものがある。」第五段落では「微生
物の中には有用のものも多い。」と結んでいる。第六段落では「微生物には、まだわからないことが多いが、これか
らの研究によってもっと役に立つようになるだろう。」と総括している。
 この文章の各段落の関係をみると、@話題の提示、A話題について説き起こし、Bそれを受けて研究について述べ、
CDでは、方向を転じて生活との関係について述べ、Eでは、それらを受けて総括し将来に及んでいる。このように
段落相互の関係が、起承転結の論理によって文章が構成されている。このような文章が、かかわり型の文章である。
文章の構造を、頭括式、尾括式、両括式、散叙式などと分類するのは、文章の形式分類に過ぎない。

   2 段落の相互関係を押えて文章の構成を読みとる学習技術の指導

 次に段落相互の関係をはっきりと押えた上で、文章を組み立てている論理を明らかにし、文章の構成を確実に読み
とる技術の指導について述べてみる。
1 文章「とる漁業から育てる漁業へ」の概略
   「とる漁業から育てる漁業へ」
 @(ア)日本は世界で一・二を争う漁獲量をほこっていたが、日本近海での漁獲量がだんだん少なくなってきた。    64
  (イ)たとえば、東支那海では……五百とん足らずになった。原因は底びきあみによるとりすぎである。
 A このままでいけば、日本近海での漁業は成り立たなくなる。これ以上魚の数を減らさない方法が考えられるよ
  うになった。
 B(ア)まず、魚をねだやしにしないために、決のようにとり決めた。
  (イ)一年間にとる魚の量を決めた。
  (ウ)また、魚をとる網の目を小さくしない。
  (エ)それから、卵を産む季節にはとらない。卵を産む場所ではとらない。
 C(ア)これらのとり決めは魚をとるのを少なくする方法だが、人間の手で、魚がふえるのを助ける方法も行なわ
    れている。それは「つきいそ」である。
  (イ)つきいそは使えなくなった船を海底に沈めて魚をたくさん集める方法
  (ウ)沈んだ船などは、小魚たちの隠れ場所で魚のえさも集まりやすく、食べ物に不自由しない。
  (エ)近ごろでは、コンクリートで作った特別な箱を沈める方法が行なわれている。
  (オ)いままで、この方法は成功、つきいそを「魚のアパート」と言っている。
 D(ア)さて、魚がふえるのを助けるだけでなく、人間の手でふやしていく方法も行なわれている。
  (イ)たいていの魚は一度におびただしい数の卵を産むが、成魚になるのは、何千分、何万分の一である。そこ
    で、卵や幼魚を集めて、育てて海へ放してやればいい。
  (ウ)こうした人間の手で育てるやり方を「栽培漁業」という。
 E 自然にふえる魚をとる漁業から、種をまいてそれを育てる漁業になろうとしている。
2 段落相互の関係を押えて文章の構成を読みとる技術
 上のような構造をもった文章の段落相互の関係を読みとる場合に、段落の初めのことばだけに頼っていたのでは、
じゅうぶんではない。そこで、段落のはじめのことばとともに、段落の内容な考えることによって、段落相互の関係    65
を的確に押えるようにする。
 上の文章は、@〜Eの段落によって構成されている。そのうち、@BCDの段落は大段落で、いずれもその中に、
いくつかの小段落をもっている。
 @の段落は、話題提示の段落で、(ア)で提示し、(イ)で、「たとえば」と、(ア)を受けて、例をあげて説明
している。(イ)は受ける段落である。
 Aの段落は、@を受けて、話題を展開している。話題を受けて、広げる没落で為る。
 Bの段落は、何で、「次のようにとり決めた」と、次の段落を書き起こす働きをしている。つまり、前の段落を受
けて次の段落を起こす働きをしている。(イ)(ウ)(エ)は、それぞれ(イ)を受けて、方法方法を書きならべている。並
べる働きをする段落である。
 Cの段落は、(ア)で、前の段落を受けてまとめ、さらに新しい話題を捏示する。受けて広げる働きをしている。(イ)
(ウ)は、(ア)を受けて、話題を説明している没落である。(エ)は、他の方法を述べて、(イ)(ウ)と対応させて、書き
並べる働きをしている。(オ)の段落は、(ア)〜(エ)の段落を受けてまとめる働きをしている。
 なお、Cの大段落ほ、全体として、Bの大段落に対応して、他の方法を書き並べる並列の働きをしている。
 Dの段落の(ア)は、Cの段落を受けてまとめ、さらに新しい方法を捏示している。受けて広げる働きをしている。
(イ)(ウ)の段落は、(ア)を受けて説明している。こうして、Dの大段落は、Cの大段落の方法に対し、新しい方法を
並べ立てて、並列の働きをしている。
 Eの段落は、前の全段落を受けて、文章全体をまとめている。まとめの働きをしている。
 このように、段落相互の関係を押えていけば結局、文章全体の構成を理解することができる。
3 段落相互の関係を押えて文章の構成を読みとる学習技術の指導
 前記の理解にもとづいて、文章の構成を読みとる技術の指導の手続きを述べてみる。
 (1)  文章全体を読んで、@〜Eの段落を押える。                                66
 (2)  それぞれの段落に小見出しをつけて、それぞれの段落相互の関係を考える。
   @の段落――日本近海の魚獲量がへった     Cの段落――魚がふえるのを助ける方法
   Aの段落――魚を減らさない方法を考える    Dの段落――人間の手で魚をふやす方法
   Bの段落――魚をねだやしにしない方法     Eの段落――とる漁業から育てる漁業へ
 このように書き並べると、@は話題捏示で起こす段落、Aは受けて続ける段落、BCDは、方法を紹介し並べる段
落、Eは、全体をまとめている段落というように段落相互の関係が明確になる。
 これで、文章全体の構成もはっきりと押えられる。
 (3) 大段落の中の小段落の要点を書き出して段落相互の関係を考える。
たとえば、
  Bの段落――魚をねだやしにしない方法
   (ア) 魚をねだやしにしないために.次のようにとり決めた。
   (イ) の一年間にとる魚の量を決める。
   (ウ) また、魚をとる網の目を小さくしない。
   (エ) それから、卵を産む季節や場所ではとらない。
 このように小段落ごとに要点を書き出して並べる。その折に、段落の最初の語を書き添える。それによって、(イ)
(ウ)(エ)の段落は、(ア)の段落を受けて、それぞれ、とり決めの例を、「魚の量」「また、綱の目」「それから、卵
を産む季節・場所」と並べあげていることがわかる。
 こうして、小段落相互の関係がわかる。
 (4) 段落相互の関係を考えて、文章の構成を考える。
 「3」までの手続きで、各段落相互の関係を明らかにしたら、それを全体としてまとめてみる。まとめるには、あ
らかじめ段落相互の関係を考えたわくぐみをプリントして与え、それに記入させてもよい。次にその例を二つ掲げで    67
みる。
 (5) 文章構成の例
   「とる漁業から育てる漁業へ」(1)

                                                        68


                                                        69
   「とる漁業から育てる漁業へ」(2)

 l――――日本近海の漁獲量がへった
 ↓    └(1) たとえば、東支那海のタイがとれなくなった
 2――――魚の数をへらさない方法を考えた
 |
 | ┌―3 魚をねだやしにしないとり決めをした
 | |   |―(1) 一年間にとる魚の量を決める
 | |   |―(2) 魚をとる網の目を小さくしない
 | |   └―(3) それから、卵を産む季節・場所ではとらない
 └→|―4 魚がふえるのを助ける方法をくふうした
 ┌―|   |―(1) 船を沈めて魚を集めるつきいそを作るようになった。
 | |   |   └(2) 小魚のかくれ場所、えさも集まりやすい、食べ物に不自由しない
 | |   |―(3) 近ごろは、コンクリートの特別なはこを沈める方法も行なわれている
 | |   └―(4) この方法は成功して、魚のアパートといった
 | └―5 人間の手で、魚をふやす方法をくふうした
 |     |―(1) 卵や幼魚を集め育てて海へ放してやるとよい
 ↓     └―(2) こうした人間の手で魚を育てるやり方を栽培漁業という
 6 魚をとる漁業から、魚を育てる漁業になろうとしている

 (1)(2)と二通りのまとめ方を示した。段落意識を明確にし、その相互関係を理解させるには、 (1)の方がよい。文
章の構造化の過程――論理をはっきりとつかむには(2)の方がよい。 (1)のやり方から、次第に(2)へと進むのがよい
であろう。                                                   70
 このように文章全体を段落相互の関係を考えてまとめると、この文章の要旨の展開を裏付けている論理――筋道が
はっきりしてくる。したがって究極において文章の構成も明らかになる。
 つまり、この文章は、要素型の文章の中の並列的構造過程をとる並列型であることがわかる。

     七 要旨(意図・中心事項)を読みとる学習技術


   1 解説

 筆者が書こうとするねらい、めがけるものが、文章に表現・叙述された場合、それを文学作品では主題という。説
明・論文・論説では要旨(あるいは論旨)という。情報・手紙・宣伝・広告などでは意図という。客観的に書かれた
知識・情報では中心事項という。
 要旨は、文章全体の中に段落の要点として展開されている。言い換えれば、要旨は要点にささえられており、それ
らの要点をまとめて短く要約したものである。したがって、多くは叙述に即して読みとることができる。
 意図は、直接叙述面に現れている場合と叙述面には、具体的に現れず裏に隠されている場合とがある。一般には、
意図は表現の裏にあって、それを実現するために、叔述事項、叙述法を規定し、統制しているものである。そのよう
な意図は、叙述に即して、具体的に、要約的に読みとることはできない。叙述に即して直観的に把握することが多い
 中心事項は、要旨のように、文章全体の中に、段落の基本事項(要点)として展開され組織されているものである。
したがって、この場合も、段落の基本事項を押、それを要約することにょって読みとることができるものである。
 なお、筆者のねらいに関係なく、中心事項や基本事項を認識することによって得られる感覚や感情や意味をさして
特に主意という。たとえば、文章を読んで生物の珍しい生態などを認識するとともに自然の神秘を感じるなどがそれ    71
である。
 要旨や意図や中心事項は、文章全体の中のどこに(どの段落に)どのように(どんな過程をたどって)書かれてい
るかを知ることは、それらの技術を学習する上にたいへん役だつものである。この要旨などが、特に叙述されている
段落を、普通中心段落と呼んでいる。
 そこで、中心段落がどこにあるかを知ることは、要旨・意図・中心事項を読みとる上にたいへん役にたつ。
 (1) 中心段落が文章の終わりにある文章
 中心段落が文章の終わりに、ある文章は、一般に、@話題捏示の段落、A事例の段落、B事例について説明・解説
・検証の段落、@まとめ、結論・総括として、要旨・意図・中心事項を述べる段落というような構成になっている。
 (2) 中心段落が文章の初めにある文章
 これは、文章の最初の段落に、話題の概略、話題の要旨、問題の結論的なものを紹介し、以下の段落で、それを筋
道を立て、順序を追って説明したり、論証したりするような文章構成になっている。これを形式的にみればいわゆる
頭括式の文章であり、論理の展開、筋道を立てる点からみれば、条件型の文章、あるいは要素型の文章になる。
 (3) 中心段落が文章の初めと終わりにある文章
 これは、文章の最初の段落と最後の段落に要旨や意図や中心事項が述べられている文章である。最初の段落のは、
話題や問題としてその概要を述べる形式で、簡潔に、抽象的にあっさりと述べられている。最後の段落のは、別の観
点から、または説明・解説・論証のまとめ・総括として、あるいは、いっそう高い立場や具体化して述べられている。
形式的にみれば、いわゆる両括式の文章である。
 (4) 中心段落が文章の中ほどにある文章
これは、文章の初めに事象を紹介したり問題を損示したりする段落がある。次に事象の説明・解説・論証などの段落
がある。次にそれを受けて要旨や中心事項を述べる段落がある。 更にその要旨や結論にもとづいて、 新しい問題・
新しい事象・別の観点などを提示する段落があり、終わりに全体を総括する段落がくるというような文章構成になっ    72
ている。
 以上、要旨・基本事項を展開する基本的な型を四つあげた。この文章構成を観察すると、要旨はどのような過程を
たどって導きだされているか、あるいは、どのような過程をたどって展開されているか、その筋道(文章の構造過程)
を明確にとらえることができる。そこから要旨を読みとる技術と、その使い方の示唆が得られる。

   2 要旨を読みとる学習技術

 要旨を読みとる技術は二つある。一つは、直観的に要旨を読みとる技術であり、他の一つは総合的に要旨を読みと
る技術である。
 直観的に要旨を読みとる学習技術
 これは、文章全体を読んで、読み終わった段階で、この文章の要旨はこれこれであると読みとる技術である。
 文学作品の主題を読みとるのと逢って、文章の要旨は、直観的に読みとりやすい。それはすでに詳しく考察してき
たように、要旨を中心とした文章構成がはっきり押えられて、要旨を示す中心段落の位置やその叙述の仕方に法則性
のあることが知られているからである。そのような要旨展開の筋道、つまり文章構成の筋道をたどって読 ん でいく
と、その読みの果てに要旨が確認される。そこで、その読みの過程をたどって、要旨読みとりの技術を考察してみる。

   @ 文章を読み始めると、話題・問題などが理解される。(話題・問題提示の段落)
   A 話題・問題についての説明・解説・論証などが理解される。
   B 事例・引例・引用などが読み分けられる。
   C 中心段落がこれだと押えられる。
   D 要旨がわかる。
 というよう段落に即して読み分けながら、筋道を立てていくと、読み終わると同時に要旨を読みとることができ     73
る。
 この読みとる過程は、前にあげたような文章における要旨の位置によって異なってくる。
2 総合的に要旨を読みとる学習技術
 この技術は、次のような過程をたどって行使される。
  @ 直観的に要旨を押える(中心段落を押える――中心段落の付置)。
  A 各段落の要点を書き出す(カード)。
  B 想定した要旨に照らして、要点を取捨する(要旨に関係のないものをすてる)。
  C 押えた要点をまとめて短く要約する。
  D 最初に押えた要旨と、要約して得た要旨とを比較し確認する。
 この過程をたどると、要旨を分析し総合的に読みとることができる。これは、直観的に押えた要旨のプレパターン
を、要点に分析し、確認したうえで、再び総合するという手続きを踏んでパターン化する技術である。
 なお、この要点の取り扱いをどうするかは、@要旨が筋道をたどって過程的にパターン化されている場合、A要旨
が要点を総合してパターン化している場合、B要旨が要点を集めて総活してパターン化している場合など、要旨の形
成される(パターン化される)過程によって異なる。
 @の場合は、要点を過程的に関係判断をして、要旨を押える。
 Aの場合は、いくつかの要点をまとめて要約して要旨を押える。
 Bの場合は、いくつかの要点に共通する事項を押えて抽象化して要旨にする。
 このような技術を使うことになる。あるいは、この逆の方法をとって、要旨を確認し、拡充し、パターソ化するこ
ともある。
3 総合的に要旨を読みとる学習技術の指導
 (1) 文章「動物の能力」                                            74
 次のような文章構成をもった「動物の能力」を例にとってみる。
   「動物の能力」
 ┌―段落@(話題捏示)もし、オリソピックに動物が参加したら……金メダルは、みんな取られてしまうかもしれ
 |  |        ない。
 |  |―段落A(要旨)しかし、動物が実力を発揮するのは、必要せまられた場合に限る。
 |  |
 |  ├―小段落(1)(要点(1)) チーターが、時速百十二キロメートルもの速さで来るのは、えものを追う時である。
 |  |  ↓        る 。
 |  |  小段落(ア) (事例)チーターがかもしかをとって食べること。
 |  |
 |  └―小段落(2) (要点(2))カンガルーが、高い障害物をとび越えるのは危険を感じて逃げる時である。
 |     ↓
 |     小段落(ア) (事例)上野公閏でカンガルーが柵をとび越えて逃げた。
 |     ↓
 |     小段落(イ) カンガルーが天敵犬を発見し危険を感じて逃げたのだ。
 |
 └―段落B(結び)動物をオリソピックに出場させても、えさを見せて走らせるか、後ろからおどかして追いた
          てないと本気にならない。

 (2) 要旨を読みとる学習技術の指導
 次の手順・方法をとる。
  @ 直観的に要旨を押える。(中心段落を押える)――全文を直観的に読む。
   (ア) 「動物の能力」について、書き手が言おうとしていることは、どんなことか、それは、どの段落に書い
     てあるか読みとって書きなさい。
   (イ) 第二段落で「動物が実力を発揮するのは、必要にせまられた場合に限る。」
  A 想定した要旨を分析して、要旨をささえる要点を押える。――全文を分析的に読む。
   (ア) 動物のこのような実力というのは何か、必要にせまられた場合とはどんな場合か調べて書き出しなさい。
   (イ)(1) このような実力                                          75
       oチーターが、時速百十二キロメーターで走ることができること
       oカンガルーが、三メートル十五セソチ高くとぷことができること
     (2) 必要にせまられた場合
       oチーター、えものをとろうとして追うとき
       oカンガルー、危険を感じて逃げるとき
  B 抽象的な要旨を、具体的な要旨に親み立て直す(プレパターンのパターン化)。
   (ア) 「このような実力」とは何か、「必要にせまられた場合」とはどんな場合かを考えて、この文章で筆者
     が言おうとしていることを、わかりやすく、短くまとめなさい。
   (イ) 「動物が、自分のもっている最高の力を出すのは、えものを追う時や、危険を感じて逃げる時のように、
     必要にせまられた場合に限る」
  C 最初に直観的に押えた要旨と、総合的に組み立てた要旨とを比べて確認する。
   (ア) 初めに押えた要旨と調べてまとめた要旨とを比べて、その違いや正しいかどうかを比べてみなさい。
 このように要旨を読みとる技術を身につけると、児童は自分で、主体的に要旨を読みとる学習ができるようになる。


     八 文・段落・文章を要約する学習技術

   1 解説
@ 長い文を、書き表そうとしたことを明確にした。特にだいじなことだけを取り上げたりするために、だいじで
 ないことばを削って短い文にする。                                       76
A 段落の中で、要点・中心になること、だいじなこと、言おうとしていることなどを明確にするために、重要でな
 い文を捨てて短い文にまとめる。
B 文章に書いてある主要な点、要旨などを明確にするために、主要でない部分を削って、文章を縮約的に短くまと
 める。
 このように、文・段落・文章などを、その主たる意味を明確にするために短くまとめるのが要約である。

   2 要約の技術

 要約は、文・段落・文章などを、短くまとめて、その内容の重点・主要なこと、要点・要旨などをはっきりさせる
ための技術である。この技術には二つの型がある。一つは、文章の叙述に即して、重要でない文を削って短くまとめ
る、縮約的な要約である。他の一つは文章の叙述にこだわらず、書かれている内容を理解した上で、その内容を短く
まとめる直観的要約である。
 縮約的要約の学習技術
 (1) の文を、文脈を押え、重要でない語を削って要約する技術の指導――消去法
   石は、木のようにくさることがなく、永久性がある
   石の橋は大きな地震でもなければなかこわれない
   は地面にうつるものの陰が非常に長いのですが、昼ごろになると、そのかげがだんだん短くなります
   大むかし、まだ、橋というものがなかったころ、人々は、川岸に立って、この川を水につからないでわた
   りたいものだと思ったにちがいない
 これらの文を粟約する場合、@何がどうした、何は何だ、何はどんなだというようにして文脈を押え傍線をつけ
る(主語と述語の関係を押える)。A次にその文脈に即して重要でない語(修飾語など)を削る。B短い文にすると    77
いう技術を使う。
 は、「何は何がある」という文腑に即して、「木のようにくさることがなく」という説明の部分(連用修飾語)
を削って、「石は永久性がある」とまとめる。
 は、文脈を「何は何がある」と押え、「大きな地震でもなければ」という説明の部分(連用修飾語)を削って、
「石の橋は、なかなかこわれない」と矩くまとめる。
 は、「何は、何が、どうだが、何ぼ、何が、どうなる」と文脈を押え、その文脈に即して、重要でない語、重な
っている語などを削って「朝は、かげが長いが、昼ごろになると、短くなる」というように短くまとめる。
 は、文脈を「いつ、だれは、どう思った」と押え、この文脈に即して、重要でない修飾語を削って「大むかし、
人々は、水につからないで川を渡りたいと思ったにちがいない」というように矩くまとめる。
 このように要約すると、その文で言おうとすることが、明確になる。このような要約のしかたを消去法と呼ぶ。
 (2) 段落を縮約的に要約する技術の指導
 この技術は、@段落の中の個々の文を要約して書き出す。A書き出した文をさらに縮約する。B縮約した文を総活
して短くまとめる。その場合、箇条書きのままでもよいし、それらを含めた短い文章にまとめてもよい。
 「(1)川のはばが広いと一本の木ではとどかない。(2)そんなときは、川の中の浅い所に大きな石を置い、橋の中つ
 ぎにした。 (3)中つぎの石が何か所も置けるところでは、橋をつぎ足し、つぎ足しして、かなり広い川でもわたる
 ことができた。(4)橋のささえは、自然の石からしだいに発達し、やがて、橋げたをささえる橋きゃくとなった。」
 右の段落を要約してみる。
@ 長い文は消去法を使って短くする。
A 短い文は二つでも三つでも続け、消去法によって一つの文にする。
B 短くまとめた文を二つ合わせて、さらに短くまとめる。
 こうして、しだいに必要な長さの文にまとめる。もし要点を求めるために要約する場合は、さらに短く一つの文に    78
まとめる。次に例示してみる。
(1)(2)の文を要約して@「川はばが広くて一本の木ではとどかない時に、大きな石を置いて橋の中つぎにした」
(3)の文を要約して、A「中つぎを何か所も置いて、橋をつぎ足して、広い川を渡った」
(4)の文を要約してB「橋のささえは、自然の石からやがて橋きゃくになった」
 次に要約してまとめた@ABの文をまとめる。@とAを要約して(ア)「川ははが広い時は中つぎの石をおいて橋を
つぎ足して渡った」、Bを要約して、「この右がやがて橋きゃくになった」とする。そこでこの段落の要約は「川は
ばが広い時は、中つぎの石を置いて、橋をつぎ足して渡った。その石がやがて橋きゃくになった」となる。
 このように叙述をしだいに消去法によって短くまとめていくのであるが、叙述に忠実になって、ことばにこだわる
ようになると、要約しにくい。ことばにあまりこだわらない方がよい。
 (3) 文章を縮約的に要約する技術の指導
 文章を要約する場合には、前記のように段落を要約して、要点を押え、それぞれの要点を並べて、同類のものはそ
れをさらに短くまとめるようにする。その手続きは、文章の構成によって異なる。
 @まず、段落相互の関係を考えて文章構成を押える。A話題紹介、問題提示の段落では話題・問題を押える。B事
例や引例の段落では、事例・引例は捨てる。C説明・解説・論証などのために提示する問題・課題、あるいは対照的
に述べた事項などは捨てる。D論理の展開の各過程を示す段落・要点を押える。E大段落の中にある同質の要点はさ
らに要約する。
 このように、要旨や話題を展開する論理・筋道の各過程の要点をまとめて、文章全体を短くまとめる。要約の長さ
には特別な規定はない。必要に応じた長さにすればよい。たとえば、内容をまとめて紹介するとか、まとめて学級新
聞に書くとか想定して要約してもよい。
  直観的要約の学習技術
 縮約的な要約は、文章の叙述に即して、文章の内容を、縮図的・縮約的に短くまとめる技術であった。         79
 この直観的要約は、叙述面・叙述のことばにこだわらず、読みとった内容を直観的に短く言い換える技術である。
 この二つは画然と区別されるものではない。両方の技術が一体として使われるときに一だんとその力を増すもので
ある。しかし、一つの文章の中で、ある段落は前者で、ある段落は後者で要約するというように入りまじった要約は
適切ではない。要約した結果の抽象度の段階の異なった要点になるおそれがあるからである。
 (1)二つの文を直観的に要約する技術の指導
   (ア) 今でも、田んぼの中の小川や山の中の細い谷川などに、丸木橋がかかっているのを見かける。
     これは、大むかしの人が作ったのとあまり変わらない、最もかんたんな橋である。
   (イ) どこの動物園でも、カンガルーのいる所のさくの高さは、二メートルしかない。これだけあればにげな
     いのだ。
 直観的に読みとった内容を要約する技術、というよりも、内容を直観的に要約して読みとる技術というほうが正確
な解釈であろう。
 この技術を使う場合には、何がどうするのか、どうなるのか、何は何であるのか、何は何にどう連なっていくのか、
文の連接・係り受けの関係はどうなのかなど、いつも課題を持ち、構えをもって読む。そして、二つの文の意味の相
互関係を理解する。と、そこに二つの文の意味を総合した意味が直観的に押えられる。
 (ア)の二つの文で、前の文では、小川や谷川に丸木橋がかかっている。後の文では、それは最も簡単な橋であると
いう意味が述べられている。
そこで直観的に「小川や谷川にかかっている丸木橋は最も簡単な橋である」と要約される。
 (イ)の二つの文で、前の文では、カンガルーの柵の高さは、二メートルしかない。後の文では、これだけあれば逃
げないということになっているそこでそのことが理解されると、「カンガルーの柵の高さは二メートルあれば逃げな
い」と要約される。
 このように、二つの文の意味が理解されると同時に、二つの意味を総合する新しい立場・観点が、突如としてわか    80
って、それに従って文を短くまとめる。この技術が、二つの文を直観的に要約する技術である。
 (2) 段落を直観的に要約する技術の指導
  (ア) 川の探い所や山の中の深い谷に橋を渡す時は、橋きゃくを立てることがむずかしかった。そういう所では、
    けた橋とちがう方法で橋が作られた。さるが、ふじづるなどをつたって、木から木へ移って行くのを見た人
    間は、このさるの方法をまねしてみた。じようぷなつるを編んで張り渡して、つなわたりをするのである。
    だが、つなわたりは人間にはむずかしい。それで、つるに板を取り付けて、板の上を歩くことを考えた。こ
    うしてできたのが、つり橋である。
  (イ) 人間は不可能と思われたことを、つぎつぎと可能にしてきた。たとえば、鳥のように空を飛ぶことは人類
    が大むかしからもっていた願いであったが、今日では、飛行機によって、どんな鳥よりもよく空を飛ぶこと
    ができるようになった。月の世界に行くなどといえば、むかしは、全く実行不可能な空想であったが、今は、
    それがゆめではなくなろうとしている。
 上の(ア)の段落は、つり橋が作られる過程や方法が述べられ、最後にこれがつり橋であると結んでいる。このよう
な段落では、読み終わったときに、「ああ、つり橋はこうしてできたのだな」ということが意識される。そこで、こ
れを要約する場合に、「つり橋はこれこれこうして作られた」というようにまとめると要約しやすい。一般に順序を
たどり、過程を追って、最後にまとめ、結びがくる段落では、そのまとめ、結びを先に立てて、その順序・過程をま
とめるとまとめやすい。
 例をその方法で要約すると、「つり橋は、深い川、深い谷では、橋きゃくが立てにくいので、さるが、ふじづるを
つたって、木から木へ移る方法をまねて、じようぷなつるを張り渡し、そこに取り付けた板の上を歩くように考えた
ものである。」となる。
 これで長さは半分以下になる。もっと短くまとめるには、直接つり橋について叙述している部分だけを短くまとめ
ればよい。「つり橋は、深い川や深い谷の問に、じようぷなつるを張り渡し、そこに取り付けた板の上を歩くように    81
したものである。」とする。これなら約四分の一の長さになる。
 (イ)の段落は、(ア)の段落と反対に、段落のまとめ、要点の文が段落の初めにある。
この要点は、抽象化されて述べられている。そこで、細部は、抽象的な要点の下位概念を具体的に述べている。つま
り、細部に述べられている具体的な事項をまとめて、まず、抽象化して述べているのが要点である。
 このような段落では、一読すると、「ああ、こういう事実から不可能を可能にしたといっているのだな」というこ
とが、直観的にわかる。そこで、この段落では、その構成に従って、「これこれである。たとえばこれこれである」
という組立で要約するよりも「これこれのように、これこれだ」という組立で、要約する方がやさしい。
 この方法で要約すると、「人間は、飛行機によって、どんな鳥よりもよく空を飛ぶことができ、せん水ていなどに
よって、どんな魚よりもよく水をくぐることができ、月の世界に行くこともゆめではなくなろうとしているように、
不可能と思われたことを、可能にしてきた。」となる。これで約半分の長さになる。さらに短く要約するには、実例
の部分をさらに簡略にまとめればよい。「人間は、飛行機で空を飛び、せん水ていで水をくぐり、月の世界へも行け
そうだし、不可能と思われたことを可能にしてきた。」とすれば、約四分の一の長さになる。
 (3) 文章を直観的に要約する技術の指導
 文章を直観的に要約するというのは、文章全体を読んで、内容の概略・筋道の概略を短くまとめることであるその
技術は、大意とか、大要とか、梗概とか、あるいは要点・要旨などを読みとって短くまとめるときに使う技術である。
つまり、直観的思考力にささえられている技術である。
 このように、直観的に文章の内容の概略を読みとるのを、全容直観と呼んでいる。前に述べた、段落を直観的に要
約する技術も、この全容直観の力にささえられている。
 なお、直観的に、文章の主題や要旨などを読みとるのを、本質直観と呼んでいる。
 文章を読んで直観的にその概要を読みとるためには、
  @ 全文を通読する過程で、話題・問題が何であるかを明確にする。                       82
  A 話題・問題に対する説明・解決の見通しをたてる。
  B その見通しを押えながら要点を押える――サイドラインを引く。箇条的に書き出すなど。
  C 話題・問題に従って、要点を、取捨選択して組み立てる。
  D選んだ要点をまとめて、短い文章にする。
 の手続きを踏む。これをさらに具体的にすると、文章構成をたどりながら、その論理に従って要点を押えて、短く
まとめる。次にいくつかの例をあげてみる。
 (ア) 初めに話題があり、次にその説明が続き、終わりに要旨が述べてある文章
  @ 話題を押える。問題を押える。
  A 話題のどんなことについて、どのように説明されているか、予想を立てる。問題は、どのような順序・筋道を
   たてて解決しようとしているか。その論理を追いながら、要点を押える。あるいは書き出す。
  B 事例と説明とを区別する。
  C 過程の説明とまとめとを区別する。
  D 要点を押えて、全文を短くまとめる。
 (イ) 事件的発想によって書かれている文章
  @ 読みの構えを確立する。「だれが」「いつ」「どこで」「なぜ」「どうして」「どうなった」という、いわ
   ゆる五W一Hの観点を立てる。
  A この観点を項目に立てた学習用紙を作る。ノートに項目を立てておいてもよい。
  B 全文を読みながら、項目に該当する事項を読みとって書き出す。
  C 書き出したものをまとめて短い文章にする。
 (ウ )論理的発想によって書かれている条件型の文章
 序論・本論・結論というような構成、起・承・転・桔というような構成、原因と結果というような構成など、筋道    83
を立てて述べられている文章では、読みながら、 その筋道を押える。その筋道の要所要所を書き出す。 たとえば、
「初め――次に――その次に――終わりに」、「問題――なぜか――どうしたよいか」、「間題――初め――どうな
る――次に――どうなる――だからこうする」というように、読みながら小見出しを作る。次にその小見出しに当た
る事項の要点を書き出す、それをまとめて短い文章にする。
 (エ) 何段階的発想で喜かれている指示、説明の文章
 物の作り方・実験の仕方・行動の仕方などを書いた指示文、成長の過程・変化の過程・物のできる順序などを説明
・解説した文章などは、一定の順序・段階・過程を追って書かれている。
 このような文章では、「作る順序」「できる順序」「実験の順序」「変わる段階」「伸びる段階」などの見出しを
作り、その次に「1・2・3」「初め・順序・でき上がり」など、順序や段階を表すことばを書き出し、その下に該
当する事項を記入する。こうして、文章全体を短くまとめる。短い文章に書き直しても、あるいは、箇条書きのまま
でもよい。

     九 批判的に読む学習技術

 1 解 説

 批判的な読みというのは、書き手が書こうとした事実や思想が、どのように書き表されているかを判断する読みで
ある。この読みには二つの面がある。一つは、事実や思想が正確に書かれているかどうか、適切に書かれているかど
うか、 また、どちらが正確に、 適切に書かれているか、書き表し方にどんな違いがあるかなどを判断する読みであ
る。他の一つは、書かれている事実や思想が正確なものかどうか、信頼できるものであるかどうか、真実のものであ
るかどうか、価値のあるものであるかどうか、価値判断をしたり評価したりする読みである。              84
 このように批判的に読むためには、@筆者が書こうとしたことを叙述に即して正確に読みとること、A筆者が書こ
うとしたことと叙述との間の適否・矛盾・異同などを読みとること、B書き手が書こうとした事実や思想の正否・適
否を判断して読みとることなどがたいせつである。そのために必要な技術――批判的な読みの技術をあげてみると、
次のようになる。
 1 事実とことばとの関係を判断して読む技術
  (1) 表現・叙述の不足(情報不足)を見抜く読みの技術(情報不足を見抜く技術)
  (2) 表現・叙述の適否・正否を見抜く読みの技術(言語魔術を見抜く技術)
 2 事実と感想・意見とを判断して読む技術
  (1) 事実の叙述と事実についての説明とを読み分ける技術
  (2) 事実と事実についての感想・意見とを読み分ける技術
  (3) 情報事実と情報意見とを読み分ける技術
 3 自分の考えや意見とを判断しながら読む技術
  (1) 自分の考えとの異同を読み分ける技術 (2) 自分ならどう考えるか考えながら読む技術 (3) 筆者の考えに
   対する判断を加えながら読む技術
 4 情報の言語魔術を見抜く技術
 5 情報の批判的選択の技術
 6 情報の批判的収集の技術
 7 情報の価値を判断して読む技術
 8 情報の共実を見抜く技術
 9 情報の正確さを見抜く技術
                                                        85
 2 事実とことばとの関係を判断して読む学習技術

 ことばは事実ではない。したがって、事実とそれを書き表したことばとの間には隙間がある。その隙間につけ込ん
で、言語魔術が横行する。そこで、うっかりすると、事実でないのに事実のように思い込まされる。事実を誤って認
識させられる。事実を事実以上に考えさせられる。いわゆる言語魔術に乗せられる。
 言語魔術というのは、事実について、抽象的に書いたり、主観的に書いたりすること、誇張したり、その逆に書い
たり、あいまいに書いたり、ぼかして書いたりすることである。また、たとえを使って書いたり、他のことと抱き合
わせて書いたり、ずらして書いたり、そらして書いたりすることである。
 こうして、事実が事実のままに、正確に伝えられることを妨げて、筆者の意のままに事実を、誇大に、あいまいに、
誤るように認識させようとするものである。
 そこで、それらの言語魔術を見技く技術を身につける必要がある。これは別な言い方をすれば、事実とことはとが
どんな関係になっているかを判断して読む、つまり、表現叙述の正否・適否を判晰して読む技術である。
 この技術は、特に情報処理には欠くことのできない基本的技術である。
 また、ことばを通して事実を正しく認識するためには、書き表すべき事実が書かれていないこと、つまり、情報不
足を見抜く技術もまた重要になってくる。それは、ことばに表されていない重要な事実を発見することでもある。
 そのほか、事実とことばとの正常な関係を無視して、勝手に事実を想像して認識する。いわゆる拡大解釈をしない
読みの技術も、事実とことばとの関係を判断して読む技術としてたいせつである。
 叙述不足(情報不足)を見抜く読む学習技術の指導(想定法)
 想定法というのは、省いてある事実を、書いてある通りに、過不足なく読みとって、事実を思い描く(想定する)
方法である。それによって、情報の不足、余分な情報を発見する方法である。情報を読む場合の基礎になる技能であ
る。                                                      86
 (1) 文章「こおりの家」
  こおりの家は、なが四角に切ったこおりをつみ上げ、雪ですき間をふさいで作ります。外のつめたい風がはいら
ないので、中はあんがいあたたかいのです。
 (2) 想定法の技術
@ この文章を読みながら、頭の中にこおりの家を作ってみなさい。
 どんな家ができますか。」という課題でこの文章を読む。
A ところが、この家はどんな形をしているかが書いてないから、家が造れないことに気づく。
B 「家の形について書いてない」こと、情報が足りないことを認識する。
C そこで、「こおりの家は、おわんをふせたようなかたちをしています。」「こおりの家は、ボールをはんぶんに
 切ってふせたようなかたちをしています。」「おわんをふせたようなかたちにつみ上げ」などの文を書き加え、書
 き添えて、こおりの家を想定させる。
 このように、叙述に即して、内容を想定させることによって、情報の過不足を読みとることができる。
 なお、この想定法によると、表現のあいまいさ、不合理、誤りなどことばと事実との関係を明確に見抜くことがで
きる。
 言語魔術を見抜く読む学習技術の指導(表現・叙述の正否・適否を判断する読みの技術の指導)
 (1) の抽象的表現の読みの技術
 抽象的表現は、できるだけ具体化する。
@ その語の下位概念を示す語を押える。
A その語の意味を具体的に説明している部分を押える。
B 事例とその語との関係を押える。
C 文脈に従ってその意味を限定する。                                      87
 (2) 主観的表現の読みの技術
 これは主観的な表現・叙述をいかにも客観性があるかのように思わせる表現であるから次の点を考えて指導する。
@ どのような表現・叙述によって客観化しょうとしているかを押える。――「世間も認めている」「と言われてい
 る」「○○だそうである」「そう思うのはわたしだけではない」「そうなるのは当然である」「いつも、たびたび」
 「思わせる、感じさせる」など、主観的な表現を、客観化、合理化しょうとする叙述に気付かせる。
A 次に、主観的な表現・叙述自体について一般化でき、客観化できるものであるかどうかを判断する。そこに表現
 されているものは、表現者によって、どのようにも変えられるものであるかどうかを検討する。それによって主観
 的なものか客観的なものかを判断する。
 (3) 誇張表現の読みの技術
 これはいわゆる大げさな表現であるから、どの点がどのように誇張されているかを明確にして、その実態を理解す
るようにする。
@ どのように誇張されているかを、明確につかむ。――「だれでもそう思う」「いつでも心から離れたことはない」
 「朝から晩まで考え続けた」「こおどりして喜んだ」「できないことはない」「だれでもすぐできる」というよう
 な事象を誇大に表現していることばを押える。
A どのように誇張されているか、事実と叙述との関係を考える――事実と合わない、事実以上に表現している、特
 殊なことを一般化して述べている、事実を過小に表現しているなどのことを押える。
B 事象と表現との間にへだたりがないように、誇張がないようにするには、どう表現したらよいかを考えてみる。
 それによって誇張表現を見破ることができる。
 (4) あいまい表現の読みの技術
 これは、明確に判断を示さず、どのようにでもとれるあいまいな表現である。次のように指導する。
                       ooo  ××××・・・・  oooo   ×××
@ どこがあいまいな表現なのかを押える。――「やっと席を見つけてすわった」「にわかに空が曇って大つぶの雨    88
  ・・・・・  oo・・・×××××
 が降り出した」「赤い小さいれんげの花」のような修飾語のあいまいな使い方(連体修飾語・連用修飾語)「大きな
 問題でもあり、小さな問題でもある」「できるか、できないかわからない」というようなあいまいな判断などがあ
 る。
A あいまいな修飾被修飾の関係による場合だったら、文脈に従って――前後関係によって判断する。修飾語の

 位置をかえてみて判断する。文を作り変えてみて判断する。句読点を打ってみて判断する。「席を見つけてや

っとすわった」「空が曇ってにわかに大つぶの雨が降り出した」「赤くて小さいれんげの花」「小さな赤いれんげの

花」「やっと、席を見つけてすわった」などのように。
B 判断があいまいな場合には、文と文との係り受けの関係、文章の論理の展間の上に立って判断する。
                                  ・・・・・・・・・・・・・・・・
 たとえば「人間のからだは、鳥のからだのように、空をとぶのにつごうのいいしくみになっていないからです。」
 では、「鳥のからだも……しくみになっていない」ことになる。そこで、このあいまいな判断を正確にするには、
          ・・・・・・・・・・
 「人間のからだは、鳥のからだとちがって、空をとぷのにつごうのいいしくみになっていないからです。」と書き
 直さなければならない。筋道を立てて考えて、このようなあいまいな表現に気付くように指導する。
 (5) 不合理表現の読みの技術
 これは表現が不合理であること、矛盾していることなどを発見し、それを指摘して明らかにすることを指導する。
@ 不合理表現・矛盾表現を見つける。――「この子がいるから教室が明るい」「だれでも、これさえあれば何でも
 できる」「人間ならだれでもが身につけておく必要のある生活態度である」など、あり得ないこと、できないこと
 を、いかにもあるように、できるように表現しているところを押える。
A どこが、なぜ不合理であり、矛盾しているかを考えてみる。こうして、不合理・矛盾などを見抜く。
 (6) 抱き合わせ表現の読みの技術
 これは、表現対象以外のことについての表現を、表現対象についての表現のように思わせる表現であるから、次の    89
ように指導する。
@ 文脈に即して、語句の係り受けの関係、文と文との係り受けの関係を明確にする。
A 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係をはっきりさせる。たとえば、「いろいろな疑問を、実険や調査によっ
 て解決しようとする科学的態度をもった人間にかれはあこがれていた。」という文では、「かれはいろいろな疑問
 を実験や調査によって解決する科学的態度をもっていた。」と読みとりがちである。
 そこで、「かれは、〇〇にあこがれていた」という文脈をはっきりさせる。次に、「いろいろな疑問……をもった」
は、人間にかかっていくことを押える。こうして、人間とかれとの関係を判断させる。
 (7) たとえ表現の読みの技術
 たとえ表現は、たとえられるものを、たとえるもののように、美化したり、強化したり、具体化したり、視覚化し
 たりして、強く、直接的に、感動的に訴える。したがって、表現意図に乗ぜられやすい。そこで、次のような手順
で、事象を的確に解釈するようにする。
@ たとえることばの意味を具体的に理解する。
A たとえられることば(事象)の意味を具体的に考えてみる。
B その上にたって、事象がたとえることばのようになっているか。そのようにすることができるか。そのようにほ
 んとうに感じられるかなどについて考えてみる。
C たとえの抽象性・朧化性・魔術性を考えてみる。
 このようにすることによって、比喩的表現の魔術性を見抜くことができる。
 次に「たとえ表現の読本の技術」の転結について述べてみる。
 ア 文章「本の読み方」の一節
                         ・・・・・・・
 本は遠い国のようすも、はるかむかしのできごとも、まるで手に取るように話してくれます人間の社会のありさま    90
                    oooooooo・・・・・・・・・・
 や、人間の心の美しさ、強さについても、目に見えるようにえがき出してくれます。@ (注□1)
                                ooooooooooooo  ooooo
 ただおもしろい、よかったというだけでなく、何か少し気がかりな、こつんとした種のようなものが、心のおく底
 ooooooo
 にさわるような本、それがほんとうにいい本です。A 注(□2)
  読解技術
 @では、はっきりしない、明らかでない、目に見えないそのような事実――遠い国のようす、昔のできごと、社会
の様子、人間の心など――を、「まるで手にとるように」「目に見えるように」と、つまり、遠い国、音のできごと、
人間の心など、手にもとれない、目にも見えないことを、手にとって見るように、はっきりと、話してくれる、見せ
てくれるという叙述になっている。しかも、比喩だけでなく、「話してくれます」「えがき出してくれます」という
ように主観的事実を客観化して述べている。
 したがって、本を読む者はだれでも、遠い国、昔のできごと、社会の様子、人の心を教えてもらえる。見せてもら
えるものと思い込む。こういう言語魔術にかからないように、「遠い国のようす」「昔のできごと」「社会のありさ
ま」「人の心」というものはどのようなものかを考えてみる。――目には見えないもの、手にはとれないもの、はっ
きりとわからないものである。
次に「手に取る」「目に見える」は、どのようなものであるかを考える。――具体的なもの、形のあるもの、姿のは
っきりしたものである。以上の二つを対比してみる。
 それから、「本は、……話してくれます。……えがき出してくれます」の意味を考えてみる。――本が話してくれ、
えがき出してくれるのでなく、読み手が読みとるものである。読み手の能力、努力を必要とするものである。
 Aでは、本を読んで、心に残る何か気がかりな、はっきりしないものがある。それをさして、「何か少し気がかり
な、こつんとした種のようなもの」それが「心のおく底にさわるような本」と述べている。このように、「こつんと
した種のようなもの」と書かれると、何かはっきりしない、ぼんやりしたことも、はっきりとした、確かなことのよ
うに思い込まされる。そして、何かそんな感じがあるように思う。そこで、そういう本がいい本かと理解する。      91
 このように比喩を巧みに使って、いかにもよくわかったように思わせる。このような比喩では、たとえられるもの
の実態(たとえられる事実の内容)をできるだけ具体的に押えさせるようにする。そうしないと、たとえる事実だけ
が強く印象づけられて、たとえられる事実は、その実態がつかめないままに終わってしまうおそおがある。
 (8) そらし表現の読みの技術
 これは話題をそらして、ぼかしたり、はずしたり、まぎらしたりする表現である。そこで、それを見抜くためには
次の手順を経る。なお、この表現には、意図的でなく、文章表現のまずさから、結果的にそらし表現になる場合が多
い。
@ 文脈をたどり筋道をたてて読みとっていく。
A 叙述の途中に加えられた話題に注意し、それがどう展開されるかを押える。
B 加えられた話題が、文章の論理からはずれている場合にはそれを消去する。
  次に例をあげてみる。
  「案内の人の話によると、石炭は、おもに九州や北海道の炭鉱から運ばれてくるという。また、このごろでは、
 石炭といっしょに重油もたいているそうである。」
 この段落の前のほうには、貯炭場の情景が書いてあり、あとのほうには、石炭倉のことが書いてある。重油のこと
については全くふれていない。ところが、「また、このごろでは石炭といっしょに重油もたいているそうです」と、
新しい話題を提出して、文章の論理・筋道をはずして、まざらわしくしている。
3 拡大解釈をしない読む学習技術の指導
 拡大解釈というのは、ことばが示している意味以上に、意味を添えたり、広げたりして解釈することである。この
ような拡大解釈は、文脈を離れて自由な想像を加えて理解したり書き手の立場、考えなどを推測する、いわゆる書き
手の立場に立って好意的に理解しようとしたりする場合に起こるものである。
      ・・・・・・                                            92
@ 赤、黄、色とりどりに美しく咲いている。
              ・・
A 細かいことによく気のつくいい人であった。
@ の「色とりどりに」の「色」は、この文では、赤・黄の二色である。それを拡大して、赤・黄・青・白――色と
りどりにと解釈する。Aの「いい人」は、この文では「細かいことによく気の付く人」である。それを「やさしい、
親切な人」というようにその示す意味を拡大して解釈する。
 このような場合には、文脈によってその語の意味が具体的に限定されている。そこで、その意味がどのように限定
されているか、そこのところを確実に押えて理解するように指導する。
                                          ・・・・・・・・
B 道はばは広いのだが、トラック、乗用坤、バスがひしめき合っているのだ。この事実が、高速道路の必要性を何
 よりも強く物語っている。
C 東名高速道路のような道路は、自動車の性能をじゅうぶんに生かし、都市間の走行時間をちぢめるのをねらいと
 している。そうして人々の往来の使を図り、人品の物資を速く輸送しょうとするのである。また、道路にそった土
                          ・・・・・・・・・・・・・
 地を開発することにもなるので、新しい道路の建設は、国土に新しい生命をふきこむことにもなる。
B の「高速道路の必要性」も、Cの「新しい生命をふきこむ」も、その意味内容はそれぞれその直前に具体的に叙
 述され限定されている。
 そこを明確に押えてその意味するところを理解するように指導する。その手続きを怠ると、児童はそれぞれについ
て拡大解釈をするようになる。
 要するに拡大解釈は、叙述対象(題材・素材――事象)に対する認識を誤ることになる。「細かいことに気のつく
いい人」なのに「やさしくて親切ないい人」と解釈するのほ、その人に対する認識を誤る結果になる。
 それだけではなく、解釈の態度をあいまいにし、言語魔術のつけ入るすきを作り出すことにもなる。

   3 事実と感想・意見とを判断して読む学習技術

 この読みの技術は、まず、事実についての叙述と、事実についての筆者の判断の叙述とを読み分けるところから始
まる。                                                     93
 これは形式的に見れば、事象に対する客観的叙述と主観的叙述とを区別することである。その場合、二つの叙述の
仕方がある。一つは事象について事実を述べては、そのあとに、それについての考えや判断を述べる。これをくり返
して文章とする場合である。他の一つは、事象について客観的に叙述し、そのあとにそれについての感想や意見をま
とめて叙述する場合である。
 前者は、普通の文葦の場合で、後者は、観察、実験、研究、調査などの記録や報告、あるいは感想や意見を述べる
文章である。
 事実と説明とを読み分ける学習技術
 @ 情報文
 (ア) 「北極に近いグリンランドに住むユスキモー人は、冬になると、雪のかたまりを四角に切り、おわんを伏せ
   たような形に積み上げて家を作ります。」寒い土地で雪のすまいとは、ちょっとふしぎに思われますが、雪は、
   木や石よりずっと熱の伝わりにくいものなのです。雪の家ですから、火をどんどんたくというわけにはいきま
   せんが、わずかな火でも、あるいは体温だけでも、熱が外へにげなければ、そのうちに、へやがあたたかくな
   るというわけです。
 (イ) 「南アフリカに住む・バソツ族は、どろを円とう形に固め、草でやねをおおって、家を作ります。」どろで
   作った家は、きびしい太陽熱をさけるのにつごうがいいからです。
 A 読解技術
 (ア)(イ)の文章では、ともに初めから、「家を作ります」までが、それぞれ事実について述べている部分である。
そのあとの部分は、両方とも、事実についての説明、解説をしている部分である。この事実とその説明・解説との部
分を明確に区別する。
 そのためには、次の手順を踏んで読む。
  どんな事実が書いてあるか。                                        94
  その事実が存在したり、成り立ったりしている、理由・原因・状態・成り立つ順序はどうなっているか。
  右の二つを読み分ける。その場合、事実を述べる語と、説明の語(理由・原因判断などを表す語)などに注意
  する。
2 情報事実と情報説明とを読み分ける学習技術
 これは、送られてくる情報について、情報事実を客観的に述べていることと、情報事実について説明・解説・感想
・意見などを述べていることとを読み分ける技術である。したがって、これは情報の批判的処理の最も基礎的な技術
になる。
 @ 写真を中心とした言語情報
   写真  みなとにたくさんの船があっまっています。しゃしんの中で、こちらがわの大きい船は、海をこえて外
 国からきたきゃくせんです。
  この船は、千人ものきゃくをのせることもでき、うごくホテルといわれています。
 船の中には、図書室やゆうぎ室やプールまであって、長いりょこうでもたのしくすごすことができます。
 A 学習技術
 この情報の、客船についての情報事項は、
  ア 大きなきゃくせんは、海をこえて外国からきたこと
  イ きゃくせんは、千人ものきゃくをのせることができること
  ウ きゃくせんは、うごくホテルといわれていること
  エ きゃくせんの中には、図書室やゆうぎ室やプールまでもあること
  オ 長いりょこうでもたのしくすごすことができること
 の五つの事項になる。このうち、イとエは客船についての情報事実そのものである。アは客船についての説明、ウ
は、客船についての一般の考え、オは、送り手の意見である。                            95
 そこで、イとエの情報事実と、ア、ウ、オの情報についての説明、意見との二つに読み分けて、情報認知をする。
そこで、次のように学習する。
  ア この文章を読んでわかったことをカードに書きましょう。一つのことは一枚のカードに書きます。
    五つの情報事項を五枚のカードに書く。図書室、ゆうぎ室、プールを、それぞれ一枚のカードに書いたもの
   は、三つをまとめて一枚のカードに書き直す。イとウ、エとオを、それぞれ一枚のカードに書いたものは、そ
   れぞれ二枚のカードに書き直す学習をする。
  イ 五つのうち、客船のことについて知らせていることと、客船について、書いた人の説明や考えを知らせてい
   ることとを分けてみましょう。カ
   ードを、イとエの組、アとウとエ
   の組の二組に分ける。
  ウ それでは、客船についてわかっ
   たことをまとめてみましょう。カ
   ードを分類し、見出しをつけて台
   紙にはる。
  エ きゃくせんについて思ったこと
   を話し合いましょう。
3 事実と感想とを読み分ける学習技術
 いわゆる事実と感想とを読み分けると
 いうことは、事実についの叙述と、事

実についての筆者の感じたこと、考えたことなどの叙述とを読んで区別することである。この技術には二通りある。    96
 一つは、事実を述べては感想を述べる。それをくり返して最後に全体のまとめをするようになっている文章を読む
場合である。この場合、一つの文の中で、事実とそれに対する筆者の判断・感想を述べるものと、事実を述べる文の
あとに、それについての判断・感想を述べるものとがある。
 他の一つは、事実を述べたあと、最後の段落にまとめて筆者の判断・感想を述べている文章を読む場合である。
@ 文章の例(1)
 (ア) 湖が入り日に赤く染まるのをながめながら夕食を食べる問も、過ぎ行く時の経過をおしとどめたい思いがす
   
 (イ) もんしろちょうは、たくさんのたまごを葉に産みつけますが、そのたまごがみんなぶじにちょうになるとい
   うわけにはいきません
 (ウ) ハワイには、おもしろい形のかまきりがいます。あと足や中足に、木の葉のようなものをつけているので、
   ちよっと見ると、木の枝に葉がついているようにしか見えません
A 読解技術
 (ア)(イ)(ウ)の文では、いずれも前半は、事実について客観的に述べているが、後半の傍線の部分は、いずれも前
半に述べてある事実に対する筆者の判断・感想を述べている。
 文章を批判的に読むためには、このように事実の客観的な叙述の部分と、事実に対する筆者の判断や感想とを読み
分けていかなければならない。そして、筆者が事実に対してどう考えているかを知る必要がある。それによって、こ
の筆者の部分的な判断・感想が、積み重なって、それが全体の事実に対する筆者の感想となることがわかり、また、
その感想の成り立つ過程がわかるものである。
B 文章の例(2)
  鳥取平野のずっと南には、中国山地の山々がつらなっています。長い年月の間に、この山々の岩石が、くだけて
 すなとなり、鳥取市を流れる千代川に流れこみ、日本海に運び出されてたまっていきます。そして、川口の近く     97
 に、あついすなのそうを作ります。「このすなが、あら波にうち上げられ、北西からふきつける強い夙に飛ばさ
 れて、海岸に精み上げられ、やがて広大な砂丘を作りあげたのです。」どれほどの年月がかかったものかわかり
 ませんが、自然の力の大きさ、ふしぎさを考えないではいられません。
C 読解技術
 この文章では、初めから「……そうを作ります」までは、事実についての叙述になっている。「このすなが」から
「……作り上げたのです。」までは、砂丘ができる過程の解説になっていて、「どれほどの」から最後までには筆者
の感想が述べられている。
 このような、事実と筆者の解説と筆者の感想とを読み分けるためには、次のような手順を踏んで読む。
 (ア) 「どんな事実について、どんな考え、どんな判断・感想を述べているか」という観点に立って読む。(個々
   の文を読む場合の読み方)
 (イ) ・どんな事実が述べられているか。
    ・その事実に対して、書き手はどう判断し、どう考えているか。このように筋道を立てて読む。
 (ウ) 事実を述べる語(客観的に断定する語)と判断・考えを述べる語(判断・意志を述べる主観的な語)とに注
   意する。
D 文章の例(3)
 (ア) 三つの建築物は、それぞれちがった美しきをもち、建てられた目的もことなりますが、いずれも、わが国が
   世界にほこることのできる文化遺産であり、祖先のとおといおくりものだといえるでしょう。わたしは、これ
   らの建築物を見るたびに、新たな感動と喜びとをもって、わたしたち日本民族の、美を作り出す力を思いおこ
   さずにはいられません。(建築の美しさ)
 (イ) すまいは、文化の発達につれて、しだいに変わってきました。そして、これからも、いっそうじょうぶで合
   理的な、そして楽しいすまいを目標にして、くふうが続けられていくことでしょう。(すまいのくふう)      98
E 読解技術
 (ア)は、「建築の美しさ」の文章の最後の段落、(イ)は、「すまいのくふう」という文章の最後の段落である。い
ずれも建築の美、住居のくふうについて事実を述べた後、最後にまとめとして感想を述べたものである。
 このような場合には、事実と感想とを読み分けることはさして困難なことではない。感想の根拠となっている事実
は詳しく述べられているから、筆者の感想に対する読者の感想・批判も成り立ちやすい。まず、まとめて全体に対す
る感想を述べている段落を押える。次には、その感想のもとになっている事実(部分)を押える。それから、その感
想に対する感想・批判をもつという手順をとる。
4 事実と意見とを読み分ける学習技術
 事実とそれに対する意見や主張を述べる文章にも二つの型がある。
 一つは、事実を述べては、それに対する意見や主張を述べる。つまり、随所に、小刻みに意見や主張を述べていっ
て、最後にまとめる型である。
 他の一つは、 事実を全部客観的に述べ尽くしたあとに、それをまとめ、しめくくって意見や主張を述べる。 つま
り、まとめとし、結論として意見や主張を述べる型である。
@ 文章の例
 (ア) 七世紀の初めに聖徳太子がお建てになったと伝えられる法隆寺も、その一つです。ことに、中門をはいって
                 ・・・・・・・・・・・・・・・・
   左にある五重の塔の美しさを、わたしは第一にあげたいと思います。
 (イ) もっとも、鉱物質の材料を使った家にも、通風が悪くなりがちで、しっ気が多くなるとか、見た目にうるお
                 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   いが少ないとか、短所があり、どちらがいいとは簡単に決められません。
                                           ・・・・・・・・・
 (ウ) 絵画・彫刻・詩歌や物語……みんなそれぞれに美しさをもっていますが、その中でも、わたしは、建築の美
   ・・・・・・・・・・
   しさに心をひかれます。
 (エ) しかし、一方、何かを調べたり必要な知識を得たりするために、短い時間の中でなるべく多くの本を読まな    99
                             ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・
   ければならない時もあります。そういうときのために、「速く読む」力を身につけておくことが必要です。
A 読解技術
 これらの段落では、それぞれ事実について叙述し、それについて、 あるいはそれにもとづいて、 自分の主張を述
べ、意見を述べている。これらは、前にあげた判断・感想と違っていずれも、訴える力、説得力をもっている。
 そこで、その主張や意見の内容、その根拠・理由を明らかにし、それに対する読み手の反応−感想・意見・批判を
持つようにする。そのためには、次の手順による。
  筆者はどんな主張をし、どんな意見を述べているか。
  主張や意見はどんな形で述べられているか。――訴える型・すすめる型・決意型・あたりまえ型など。
  主張や意見はどんな根拠・理由・事実などによっているか。
  主張や意見を表す文型、用語に注意する。――思う。必要です。すべきです。はずです。〇〇しなければなら
  ないなど。
 このようにして、主張や意見とその根拠とを明らかに読み分け、それに対する感想・批判をもつようにする。
 なお、意見や主張を中心に書いた文章がある。そのような文章では、次の手続きを踏んで読むようにする。
  まず、主張や意見を述べている段落を押える。
  主張や意見の根拠となっている事実や考えを押える。
  事実と主張や意見とを対比してそれに対する読み手の判断を明らかにする。
  o根拠としての事実は適切だろうか。
  o事実に対する判断が一面的ではないだろうか。
  o事実に対してどんな態度・立場をとっているのだろうか。
  主張や意見に対して、共感共鳴・感想・意見・批判をもつ。
  oなぜその主張・意見に賛成するか。  oそれに対してどんな意見があるか。  oそれに対してどんな批判    100
   があるか。


     十 言語情報の批判的処理技術

   1 解 説

 情報を受け入れ処理する場合に最もだいじなことは、主体的に批判的に受け入れ処理することである。その場合二
つの面がある。
 一つは、情報自体、情報事実を主体的・批判的に受け入れることである。他の一つは、情報意図を的確に見抜くこ
と、情報事実が正確に叙述されているかどうかを見抜くこと、つまり、言語魔術を見抜いて、それに乗ぜられないよ
うにすることである。
 そのためには、情報の批判的選択の技術、情報の批判的収集の技術、言語魔術を見抜く読みの技術、情報意図を見
抜く読みの技術など習得する必要がある。なお、言語魔術を見抜く読みの技術については、すでに詳細に述べたので、
ここでは省略する。
 なお、情報を受け入れる場合に心がけなければならないことが三つある。
 一つは、その情報は自分にとって価値のあるものかどうかを判断して主体的に受け入れることである。
 二つめは、その情報は、信頼できるものかどうかを判断して取捨することである。
 三つめは、その情報は正確なものかどうかを判断して、加工し、修正して受け入れることである。
 この三つの態度・技術は、情報読解の基本的な技術である。
                                                        101
   2 情報価値を判断して受け入れる学習技術

 情報を受け入れる場合、受け手にとって価値のある情報とは何かを考えておかないと、判断の基準が立たない。
1 受け手にとって価値のある情報とは何かを明らかにすること
 情報を選択する場合に、受け手が、関心を示すもの、興味をもつもの、必要なものという観点に立つことがある。
これは情報の第一次選択の判断の基準である。この基準に合ったものは、それなりに受け手にとっては価値のあるも
のである。
 次にその情報を受け入れることによって、@考えを決める、A行動を決める、B生活を営むなどのうえに、いい判
断、適切な判断、処置が得られるものは、受け手にとって価値のあるものである。
 また、その情報を受け入れることによって、すでにもっている情報(内情報という)をいっそう詳しくしたり、正
確にしたり、新しい情報が得られたりするものも価値のある情報である。
2 情報を読む構え、態度を確立すること
 情報を読むときには、特に情報価値を判断して読むためには、情報に対する主体的構え、態度を確立する。たとえ
ば、
  @ 関心・興味・必要に応じた情報かどうかを判断しようとすること
  A 内情報に照らして読もうとする。 つまり、その情報に対して、 すでにもっている情報を思い出し(書き出
   す)それを整理してみる。よく知っていること、知ってはいるがあいまいなことなどを明らかにして読もうと
   すること
  B 新しい情報を得て、価値のある情報を増そうとすること
 など、情報に対する構えを確立して、主体的に情報に立ち向かうようにする。
3 価値ある情報を求める技術の指導  
 たとえば、「雪国の子ども」という、雪国の子どもの生活情報を伝える文章がある。この情報を読む場合を考えて    102
みる。
 @ 読む構えをつくる。
  ア 雪国の子どもの生活について知っている情報を書き出す。本を読んで知っていること、絵や映画を見て知っ
   ていること、人から聞いて知っていることなど。
  イ 知りたいことを書き出してみる。
 A 情報を読む
  ア 読みながら、内情報と同じこと(すでに知っていること)、内情報より詳しいこと、初めて知ったこと(新
   しい情報)を読み分ける。
  イ それぞれについて色分け、記号分けなどの方法によって区別する。
  ウ 内情報に新しい情報を加えて、より価値のある情報に組み立てる。
 B 情報の内容(情報事項)を取拾選択し内情報に新しい情報を加えて組み立てた情報を考えて、なお足りない情
  報・わからない情報を明らかにする。
 C 足りない情報・わからない情報はさらに他の文献情報から求める。
 こうして、自分にとって価値のある情報を収集することができるようにする。

   3 情報の信頼性を見抜く学習技術

 情報の中には、その真偽のはっきりしないものがあるが、情報が信頼できるかどうかは、受け手にとっては重大な
問題である。
 そこで、情報が信頼できるかどうかの判断を正確にすることは、情報学習では、特にだいじである。
1 情報の信頼性を判断する技術
 情報の真偽・信頼性の有無を読み分けるには、二つの面から情報に接近する。                    103
 一つは、情報送りの外の条件によって判断することである。その条件をあげてみると、
  @ 情報の送り手は信頼できるかどうか。
  A 情報の採取、出所は信頼できるかどうか。
  B 情報送りの手順・手続は信頼できるかどうか。
 これらの外部条件を検討してその信頼性の右無を判断する。あるいは、信じられるかどうか、あるいは、疑わしい
点があるとか、信頼するには不十分なところがあるとかいうように判断する。
 他の一つは、情報それ自体、情報内部の諸状況によって判断することである。
 たとえば、
  @ 情報に送り手の主観的判断が加わっているかどうか。
  A 情報に修飾・加工が加えられているかどうか。あるいは叙述不足はないか。
  B 事実の叙述と事実に対する送り手の感想・意見・意図とが明確に書き分けられているかどうか。
などの点から判断することである。
2 情報の信頼性を見抜く学習技術の指導
 (1) 情報の信頼性を判断する根拠の求め方
 「深海をさぐる」という科学情報がある。深海の底の水も流れていること、深海にも生物が住んでいることを発見
した情報である。
 この情報には、最初に「宮城県沖の日本海溝、三千五百メートルの探海」で、「何年何月何日」に、「だれが」「バ
チスカーフによって調査」したものであることが書かれている。これに着目させて、これは信頼できる情報であると
判断する。
 このように情報の送り手・情報の出所・情報採取の手続き・方法(この手続き・方法は.バチスカーフに乗って深
海にもぐり一定の深さごとに、そこでの情報を採取し送っている。)などを読みとって判断すれば、その信頼性を確
かめることができる。                                              104
 しかし、この情報では、海底に連するまでの、何か所かの海中の状況が書かれているが、そこでも海水は流れてい
るという情報はない。ところが、三千五百メートルの海底に達したところで、突如として、海水は流れていると書い
てある。そこで、千メートル二千メートルの所は、流れていないのかという疑問が生じる。情報不足による不安であ
る。
 次には、情報の叙述の仕方に注意して読む。前に述べたように情報事実に対して送り手の主観・意図が強く出てい
るものは、それを見分け読み分けて判断する。情報事実とそれに対する送り手の感想や意図が書き分けてあるものは、
その情報事実を押えて判断する。
 また、情報事実が、具体的に、数最的に、科学的に叙述されているところを押えて(あるいは、その逆も)信頼の
度合いを判断する。
 なお、情報事実の叙述にあたって、いわゆる言語魔術を使っている情報については、「言語魔術に乗ぜられない読
みの技術」の項に詳細に述べてあるので省略する。そこを参照されたい。
 (2) 複数の情報を比較することによって、情報の信頼性を判断する根拠の求め方
一つの情報では、それを信頼していいかどうか、読み分けることがむずかしい。その場合には、同じ情報事実につい
ての二つ以上の文献情報を求めて比べながら読むことによってその信頼性を判断する。
 たとえば、同じ情報話題・情報事実について複数の情報が流される新聞情報について考えてみる。新聞情報は、本
来、客観性をもった、真実を伝えるものとされている。しかし、実際には、同じ情報話題でも、情報伝達の態度が遣
っていたり、時にはある立場に立ったり、また、情報の出所、採取の手順が違っていたりして、かなり違った情報が
流されてくる。そこで、複数の新聞によって比べながら読み、より信頼度の高い情報を求める。
 まずA新聞による情報事項を押える。それを基準にしてB新聞、C新聞の情報事項を読みとって比べる(表解する)。
それによってどの情報がより信頼できるかを判断する。また、各情報に共通な情報事項だけを運んで信頼できるもの
とし、異なっている情報事項については、疑わしい、信頼できない、明確でないというように判断する。         105
 たとえば、教科書に採用されている新出情報を扱うとすれば、日本の南極観測隊が、「南極点の観測旅行をした記
事」が、各教科書に違った形で四編収載されている。これをファックスにとって学習させれば、この技術は容易に学
習することができる。
 また、前にあげた「深海をさぐる」のような深海の状態を伝える情報は、いくつもある。これらの情報を比較する
ことによって、情報の信頼性を読み分けることができるし、それによって、頁実の情報を求めることができる。
 あるいは、教科書の情報教材と、その原典とを読み比べさせるのもよい。たとえば、ある教科書の四年の情報教材
「もっと速いものは」というのがある。これと、その原典「もっとはやいものは(ロバートフローマン、福音館書店
刊)」を比べて読ませると、情報の信頼性を判断するいろいろな技術を学習することができる。

   4 情報の正否を判断して読む学習技術

 情報は、それが真実の情報であると同時に、正確な確実な情報であることが、受け手にとっては重大な問題になる。
たとえ、それが真実な情報でも、あやふやな、不正確な情報であれば、情報価値は半減する。
そこで、送られてくる情報が正確なものであるかどうかを判断する技術の学習もだいじである。なお、正確な情報を
伝えるということと、情報を正確に伝えるということとは別である。前者は、情報自体の正吾の問題であり、後者は、
情報自体に関する問題ではなく、表現、叙述の正否の問題である。
 情報が正確であるかどうかは、送り手の情報認識の正否の問題である。そこで、その情報が正確であるかどうか、
確実な情報であるかどうかを判断する手がかりを、 送り手の認識の方法、 手段と価値判断とに求めなければならな
い。そこでこれも二つの面から考える。
 一つは、送り手がどのように認識した情報かを判断する手がかりを求めるしたとえば、
@「雪がたくさん積もった」という認識より「雪がひざまで積もった」「雪が三十センチメートル積もつた」という
認識の方がより正確である。つまり、後者の方が正確な情報ということができる。このようにまず具体的な情報であ    106
るかどうかを判断する。
A「この家は、こおりをなが四かくに切ってつみ上げ、雪ですきまをふさいで作ります。」というエスキモーの住む
氷の家についての認識よりも、「この家は、おわんをふせたようなかたちをしています。こおりをなが四かくに切っ
てつみ上げ、雪ですきまをふさいで作ります。」という認識の方が、正確である。つまり、後者の方が正確な情報と
いうことになる。
 @は、認識の仕方の問題である。主観的に認識したか、客観的・科学的に認識したかの問題である。情報は本来正
確な客観的・科学的認識を伝えるべきものであるから、客観的・科学的に叙述されている情報の方が正稀な情報と判
断される。したがって、具体的な叙述や数量的な叙述を押えて判断する。
 Aの方は、いわゆる認識不足の間題である。家の作り方の認識が中心になって、家の形の認識が足りなかった。認
識不足は当然ことば不足――叙述不足になる。情報不足になる。叙述不足・情報不足を抑えれば、その情報は正確で
ないことが判断される。
 そこで、叙述不足・情報不足を見つけるには、前にもあげたが、想定法を使うとよい。
 「この家は、こおりをなが四角に切ってつみ上げ、雪ですきまをふさいで作ります」という叙述に従って、文章の
通りに頭の中に家を作る。作ろうとすると、家の形がわからないから作ることができない。それで、家の形の情報不
足に気付く。これを正確な情報にするには、家の形についての情報を補えばよいことがわかる。そこで、不正確な情
報を補うために他の情報を読む。
 この想定法は、表現・叙述に即して行うことが原則である。情報の正杏を判断するには有効な方法技術である。
 他の一つは、情報に対する送り手の価値判断によって、情報の正杏を判断する。情報に対する送り手の価値判断は、
主観的叙述をとるのが普通である。そこで、情報に対する主観的価値判断の部分と、客観的に叙述されている部分と
を読み分けて、その正杏を判断する。たとえは「雪国の子どもたち」という生活情報がある。その中に、次のような
情報事項がある。                                                107
 「家の回りにできた雪の小山や近くのおかがあそび場になります。予どもたちは、雪のさか道をそりやスキーです
べってあそぶのです。いっしょうけんめいすべっていると、からだじゅうが、ぽかぽかあたたかくなります。つめた
い雪の中でも、子どもたちは元気いっぱいです。」
 この情報では、前の部分が情報の客観的認識の部分で、後ろが、主観的判断の部分である。前の部分を読みながら、
その状況を想定してみると、明確に想定できない。あそび場と、「雪のさか道をそりやスキーですべってあそびます」
とが、結びつかないからである。これは、情報を正確に伝えていない。前に述べた情報の正否の問題でなく、表現の
正否・適否の問題である。想定法によるとこういう事実はすぐに発見される。
 後半の部分は、情報に対する主観的判断であって、情報事実そのものではない。情報では、元気いっぱいな事実、
状況を伝達すべきなのである。主観的判断の加わっている場合は、それを裏付ける事実、情報事実を想定して、情報
の正否を判断する。

 以上、 情報の価値、情報の信頼性・真実性、情報の正確性を判断して読む方法技術、 批判的に読む技術を紹介し
た。
                                                        108

   V 文学作品の基本的読解学習技術の開発

     一 文学作品の読解学習技術

 思想・心情につちかう文学作品には、それぞれの作品の機能に応じた読みの原則がある。

   1 想像する

 昔話・民話・童話・物語・小説などは、いうまでもなく、想像による創造の世界を描いたものである。それは、い
わゆる虚構――フィクションと言われている。
 したがって、それらの作品を読むということは、原則的には、作者が描いた想像的創造の世界を、読み手自身のう
ちに再体制化・再生産することであると考えられる。
 その再体制化・再生産をする場合の最も基本的な技術が読みながら想像する技術である。
 「ぼくたちはかべの後ろにかくれて、びくびくしながら、みんなが帰っていくのを見送らなければならなかった。」
 この文を読むと、「ぼくたちが、壁の後ろに隠れて、みんながぞろぞろ帰っていくのを見ている場面の様子」が目
に浮かぶ。いわゆる場面表象が描かれる。それは想像によって読み手の脳裡に描かれた世界、体制化された世界であ
る。
 また、同時に「びくびくしながら、何となく不安な気持ちで見ているぼくたちの心情」が心に浮かぶ。いわゆる心    109
情表象である。これも想像によって読み手の心の中に引き起こされた心情の世界、感動の世界である。
 このように想像によって描き出される世界が、想像表象である。そこで、文学作品を読む場合に描かれる想像表象
には、上にあげた場面表象・心情表象のほかに、情景表象・心理表象・人物表象(性格表象)・行動表象などがある。
 いずれにしても、この想像は、過去に得た知識や経験、あるいは、読んだり聞いたりして得た他人の想像にもとづ
いて働くもので、これを普通再生的想像と呼んでいる。これに対して、過去の経験などを越えた新しい想像の世界を
作り出す。そのような想像を、生産的想像・創造的想像と呼んでいる。
 想像は文学作品を読む場合の最も基本的な有力な技術である。

   2 創造する

 文学作品を読むことは、前に述べたように想像によって、まだ見ない、経験もない、感じたこともない新しい世界
を生み出していく、創造していく、そのような創造的な活動である。
 「ぼくたちは、学校のそばまで行った。が、校門をくぐるわけにはいかなかった。裏のあき地からはいった。ぼく
 たちの教室の窓はあけっぱなしになっていた。ぼくたちが、かべに身をすりつけて窓の下に立っていると、教室か
 ら本を読む声が、はっきり聞こえてきた
ぼくたちは窓の下にかくれてみすぼらしい姿をして立っていなければならなかった。」
 この文章を読むと、これまでに経験したこともない行動・場面・心情の世界が、生き生きと心に描き出される。そ
して、新しい世界、経験したことのない心情として、心に焼きつけられる。
 堂々と校門をくぐることのできないうしろめたさ、こっそりと裏のあき地からはいらなければならない心理、壁に
身をすり付けて、本を読む声を聞いている、みすぼらしくも情けない気持ち、それらがしみじみと心に感じられてく
る。
 このように文学の読みを通して、文学を経験する。 新しい世界を心の中に描き出し、 新しい心情を生み出してい    110
く。そして、読み手の心理・心情に新しいひだやかげを添えて、心情を育てたり、開いたりする。
 文学の読みはこのような創造的な読みである。人間性を開発し伸長する読みである。

   3 感動するー感情状態

 文学作品の読みは、原則的には、感動の感動的読みである。理解する読みではない。読みの根底に感動がなければ
ならない。つまり、心情を動かす、心情を開く、心情を深めるところにつながる――その根底をなす読みである。
 「ほんとうに小さな学校で、ろう下と教室の間には、紙しょうじがはいっていました。運動場は、道を広くしただ
 けのところで、体操をしていると、ときどき年がモーと鳴きながら、車を引いて通りました。(太郎こおろぎ)」
 この作品を読むと、学校の様子が目に浮かび、狭い運動場で体操をしていると牛が鳴きながら車を引いていく場面
が目に見えるように想像される。つまり、学校や場面の想像表象が描かれる。
 すると、いかにものどかな、のんびりした情調が感じられ、自分もそんな気分になる。そのような感情状態になる。
そのような感情状態になりながら読み進めるのが文学の読みの原則である。この感情状態に強く、急激になるのがい
わゆる感動である。世に読みひたるとか、読み味わうとかいうのは、このように感情状態になる読みである。
 文学作品を読んで、感情状態になることがなければ、心情を開く、心情に訴える、心情を動かす、心情を豊かにす
るなどということはできないであろう。
 読み手の心理・心情と比べる、読み手が感想をもつ、あるいは批判をするという場合でも、ここを出発点としなけ
ればならない。

   4 鑑賞する

 文学の読みは、原則として理解の読みではなく鑑賞の読みである。理解を越えて、直接感動に迫る直観的な主体的
な読みである。そのような読みによって鑑賞力は伸ばされると考えられている。                    111
 したがって、鑑賞の読みは、いわゆる読書の読みに通じている。作品に接して、直観的に感動をとらえ、直観的に
主題をとらえ、直観的に間題を発見し、あるいは直観的に全容をとらえる読みである。
 「ランプ、ランプ、なつかしいランプ。
  やがて、巳之助は、かがんで足もとから石ころを一つ拾った。そして、いちばん大きくともっているランプにね
  らいを定めて、力いっぱい投げた。パリーンと音がして大きい火が一つ消えた。
 『おまえたちの時世は過ぎた。世の中は進んだ。』
 と、巳之助は言った。そして、また一つの石ころを拾った。二番めに大きかったランプが、バリーンと鳴って消え
 た。
 『世の中は進んだ。電気の時世になった。』
  三番めのランプを割った時、巳之助は、なぜかなみだがうかんできて、もう、ランプにねらいを定めることがで
 きなくなった。(おじいさんのランプ)」
 この文章を読んで、「ひとつひとつランプを割り、ランプへの強い愛着を断ち切って、古いものを捨てた巳之助の
決意と、その悲しさを感じた」「古いものを思い切り、新しいものを求めて進もうとする巳之助の強い心と、その裏
にひそむさびしさを訴えている。」「巳之助は、なぜなつかしいラソプを割ったのだろうか。その気持を考えてみた
い。」「古くなったものを捨て去らなければ、前へ進めないものだろうか。」など、直観的に感動をとらえたり、主
題をとらえたり、問題を発見したりする。
 このように作品の理解を越えて、直観的に作品の価値を感じとる読みが、鑑賞の読みである。
 ところで、鑑賞が、作品の内容的価値の判断に向かう場合と、表現の美に向かう場合とがある。いわゆる表現のお
もしろいところ、美しいところを味わうなどというのがそれである。
@ いぬは、ねこをよんできました。ねこがいぬをひっぼって、いぬがまごをひっはつて、まごがおばあさんをひっ
 ぱって、おばあさんがおじいさんをひっぼって、おじいさんがかぶをひっぼりました。                112
 「うんとこしょ、どっこいしょ。」
 それでも、かぶはぬけません。  (大きなかぶ)
A 残雪は、あの長い首をかたむけて、とつぜんに広がった世界におどろいたようでありました。が、
 パシッ!
 快い羽音いちばん、一直線に空へ飛び上がりました。
  らんまんと咲いたすももの花が、その羽にふれて、雪のように清らかに、はらはらと散りました。(大造じいさ
んとがん)
B こちらは、地獄の底の血の池で、ほかの罪人といっしょに、ういたりしずんだりしていたカンダタでございます。
 なにしろ、どちらを見てもまっ暗で、たまにその暗やみからぼんやりうき上がっているものがあると思いますと、
 それは、おそろしい針の山の針が光るのでございますから、その心細さといったらございません。そのうえ、あた
 りは墓の中のようにしんと静まりかえって、たまに聞こえるものといっては、ただ、罪人がつくかすかなため息ば
 かりでございます。 (くもの糸)
 @のくり返しからくる緊張の美、リズムの美、漸層の美、Aの力動の美、感性の美、Bの不気味な情調の美、視覚
の美など、それぞれ特徴ある表現の美、描写の美を感じる。
 このように、直観的に美を感じる読みも鑑賞の読みである。

   5 思考する

 思想は思考活動の結果育てられるものである。文章を読むことは、思考することである。つまり、文章は書き手の
思考の過程・結果を叙述したものであるから、原則として、その思考過程をたどって考えることであり、書き手の思
想を再体制化することであると考えられる。要するに思考活動を通して――思考技能を働かせて、文章を読むことに
よって思想は育っていくものである。                                       113
 思考技能を働かせるというのは、文章を読みながら思考表象を描いていくことである。
                     、、、
@ おじいさんは、やさしくて親切で、とてもいい人でした。
 この文を読んで、「やさしくて親切なおじいさん」という具体的な人を、「いい人」というように抽象化し、概念
化する。このような働きを「概念作用」といい、その働きの結果「いい人」という概念表象が描かれる。
A (ア)二十周にかかるころには、トラック走る撰手は、かなり少なくなっていた。(イ)とちゅうでひとりぬけ、ふ
 たりぬけて、十人近い選手が競技をすてていたからである。
(ア)の文を読んで、「トラックを走る選手は少なくなった」というように「何はどうなった」という判断が行われる。
そのような「判断作用」が行われて、「何はどうなった」という「判断表象」が描かれる。ついで、(イ)の文を読ん
で、「十人近い班手が競技をすてたからだ」という判断が行われる。そのような判断作用が行われて、「何がどうし
たからだ」という因果関係の判断表象が描かれる。
つまり、「何はどうなった」、「それは、何がどうしたからだ」というように二つの判断が、因果関係によって結ば
れてより大きな判断表象が描かれたのである。こうして、しだいに大きな判断のまとまりができ、つぎつぎと展開し
ていく。
B 王様は、いばっていた。なぜいばっていたのか、それはわからない。けれども、いばっているような人にろくな
 人がいないから、ひょっとしたら、この王様も、たいしてかしこい王様でないかもしれない。(高い右の柱)
 この文章を読んで、「王様はいばっていた」「なぜいっばっていたか理由はわからない]「しかし,いばる人にろくな
人はいない」という条件の判断が行われる。その条件にもとづいて、「かしこい王様でないかも知れない」と推理す
る。つまり、「これこれだから」「これこれだろう」と「推理作用」が行われて、「推理表象」が描かれる。
 このように、文章を読む場合には、概念作用・判断作用・推理作用が働き、概念表象・判断表象・推理表象などの
思考表象が描き出される。よく、文章を読むことは、書き手とともに考えること、思考することだというのは、この
ことをさしているのである。                                           114
 こうして、文章を読むことによって思考力が伸ばされ、その結果として思想が伸ばされ深められていくのである。
 以上、思想・心情の読みの原則について述べた。この原則をささえる技能・技術が、思想・心情読解の基本的技術
である。


     二 文学作品の基本的読解学習技術

   1 話の筋の展開を読みとる学習技術

 昔話・童話・物語などには、それぞれその話の展閥の型がある。この話の筋の展開を読みとる技術は、話の展開の
型に従って、その事件の展聞の筋道、過程を読みとっていく技術である。
l くりかえし型(反復型)の筋の展開を読みとる学習技術とその指専
 (1) くりかえし型の典型的なパターン
 このくりかえし型の基本になるパターンは、同じ形式の単純なくりかえしによって、事件が展開していくようにな
っているもの。
 (2) くりかえし型の心理
 「白いにわとり」の初めの部分は、「小さい白いにわとりは、みんなにむかっていいました。このむぎだれがまき
ますか。ぶたはいやだといいました。ねこもいやだといいました。犬もいやだといいました。」「小さい白いにわとり
は、 ひとりでむぎをまきました。小さい白いにわとりは、みんなにむかっていいました。このむぎだれがかります
か。ぶたはいやだといいました。ねこもいやだといいました。いぬもいやだといいました。」というように単純な形式
の単純なくりかえしによって、話が進められている。
 このくりかえし型は、くりかえしの単位が簡潔である。くりかえしのパターンも単純である。同じ主題につ    115
いてくりかえし述べる。したがって、くりかえしの意味も、主題も理解しやすい。同じことのくりかえしで強い
印象を与える。次は、次はという期待の心理が働くしたがって、読み手の心をとらえやすい。単純明解なセン
テンスのくりかえしで、リズミカルな表現になっている。したがって、読みやすい。
 (3) くりかえし型の筋の展開を読みとる学習技術の指導
 このくりかえし型では、次の手順に従ってその展開を読みとる。
 @ くりかえしの単位を読みとる。
  くりかえされる一まとまり――くりかえしの単位は、どのよ
 うな組立てになっているかを押える。「にわとりは何と言った
 か。ぶた、ねこ、犬は何と言ったか」を押えて、ノートに書く。
 (板書・OHP・短冊カード)
  これが、くりかえしの単位の構造になる。これをさらにまと
 めて、左のようにする。


 A くりかえしのパターンを読みとる
 「そこで、にわとりは、どうしましたか。何と言いました
 か。 みんなはどうしましたか。」を読みとってノートに書
 く。 (板書・OHP・短冊カードなどによる。)
  これも、「ぶたは、ねこも、犬も」をまとめて「みんな」
 とし、前のように全体をまとめる。
 そこで、[みんないやだ。」と言ったので、にわとりは、「ひ


                                116
 とりでむぎをまいた。」ことを押える。これは前を受
 けて新しく加わったことに注意。以下は、にわとりの
 ことばは違うが、同じくりかえしであることを理解す
 る。
  B 筋の展開を読みとる
  前に述べた方法で、まとめた後、次のように整理し
 て、筋の展開を押える。(OHP・短冊・カードなど
 を利用する。)
  ここでのくりかたしの単位は、 一つは、「にわと
 りの行為」であり、他の一つは、 「にわとりの問い
 に対して、みんな(ぶた・ねこ・犬)がいやだと言っ
 たこと」である。
  くりかえしの要困、話を展開させる動因・契機は、
 「麦をまく」「麦を刈る」「粉にひく」「パンに焼
 く」「パンを食べる」という継起的連続である。こ
 の契機と、くりかえしの単位の中に含まれる「さそ
 いの否定」という要因が、結びついて、話は展開し
 ている
 このように、くりかえし型の展開を読みとるこには、

 (ア) くりかえしの単位を押え、その組立を明らかにする。                            117
 (イ) くりかえしのパターンを押える。
 (ウ) くりかえし・展開の動因・契機を押える。
 (エ) 展開の筋を押える。
 という手順を経る必要がある。児童は、ここで、くりかえしの単位を簡単にまとめる技術、くりかえしのパターン
を押える技術、筋の展開を読みとる技術などを学習することになる。
2 だんだん型(漸層型)の話の展開を読みとる学習技術とその指導
 (1)  だんだん型の典型的なパターン
   これは、ある行為・行動・思考などが、くり返されるたびに、何かがつぎに加わり増していって、しだいに量
  や力や意味が大きくなっていく型である。
 (2)  だんだん型の心理
 だんだん型の物語には、「大きなかぶ」「あわてうさぎ」「子りすとふうせん」などがある。
 「大きなかぶ」では、「おじいさんがかぶをうえました。『あまい、あまいかぶになれ』あまい、げんきのいいび
っくりするほど大きなかぶができました。おじいさんが、かぶをぬこうとしました」ここから話が始まる。「『うん
とこしょ、どっこいしょ』ところがかぶはぬけません。」この「おじいさんがぬこうとしましたした。ところがかぶ
はぬけません。」が基本になって話は進んでいく。かぶを抜く人は、一回ごとに、おばあさん、孫・犬・ねこ・ねず
みとだんだん人数も力も増していく。かぶのほうは、「ところがかぶはぬけません」「それでもかぶはぬけません」
「まだまだ、かぶはけぬません」「まだまだ、まだまだ、かぶはぬけません」「それでも、かぶはぬけません」「や
っと、かぶはぬけました」というように、人数や力の増すのに対応させながら展開していく。そして最後にやっとか
ぶは抜ける。そして、話の発端、「『おいしいおいしいかぶになれ。大きな大きなかぶになれ』おいしそうな大きな
かぶができました。」の、「大きな大きなかぶ、大きなかぶ」に対応させている。力を増す、抜けない。さらにカを
増す、抜けない。このくり返しによって、かぶはいよいよ大きく感じる。                       118
 このように、だんだん型は、力を出し合う。知恵をだし合う。そしてそれが大きな力になる、いい考えになるとい
った主題を展開するのに適切な型である。
 そこで、この型の読みでは、「まだか、まだかという心」「これでもか、これでもかという心」「こんどこそはと
いう期待」「かぶは大きいんだなあという感動」などが得られる。
 (3) だんだん型の筋を読みとる学習技術の指導
 だんだん型の作品は、次の手順に従って、話の筋をたどる。
  @ だんだん型の単位を読みとる。
 まず、「おいしそうな大きなかぶ」ができたことを押える。次にくり返しの単位を左のようにまとめてその構造を
はっきりさせる。「おじいさんが、かぶをぬこうとしたが、ぬ
けない」ということを明確にして、そこから、くり返しが始ま
ることを理解する。

  A だんだん型の基本になるパターンを読みとる。
 かぶは抜けない。そこで引く人を増す。引く力を増す。いっそう大きな声で「うんとこしょどっこいしょ」と引く。
「それでもかぶは叛けない」。ずいぶん大きなかぶだとおどろく。それを次のようにまとめる。

 これで、だんだん型の基本になるパターン――人数を増す(力を増す)それでも抜けない――を確認する。
  B だんだんに力を増してかぶを引く様子を読みとる。
 児童は各自音読しながら、引く人物を書く。掛声の所は、いっそう大きな声のつもりで読みながら書く。まだまだ、   119 
 かぶは抜けません、そんな気持ちで読む。こう
 して、かぶ引きの気分に浸りながら書いてまと
 める。

 以下もこの方法でまとめていく。 最後にねずみ・ねこ・犬・孫・おばあさん・おじいさんの力が合わさって、大
きな力が出てかぶは抜ける。そこで、何かを感じとる。
  C 全体の筋を押える
 「大きなかぶができた」から「やっとかぶはぬけました」までの漸層の段階を押える。
 この学習によって、だんだんと力を増していって、その極限でその効果を発揮することを感じとる。このような指
導は決して、だんだん型の形式を学習させるのではない。つねにパターンを形成する契機を押え、パターンのもつ機
能を感じ、そこから作品の内容的価値に接近する技術を身につけていくのである。
 学習技術として、OHP・短冊カード・人物の顔カード・ノート・学習シートなどを使うといいし、また、行動化
するのもいい。
3 くさり型(連鎖型)の筋の展開を読みとる学習技術とその指導
 (1) くさり型の典型的なパターン
 くさり型の話というのは、前に述べることと、後に述べることとが関係的にくり返され、ちょうどくきりのように
結び合って展開していくパターンをもつ話である。
 (2) くさり型の心理
 くさり型のモデルは「ねずみのよめいり」の話である。いいむすめをもったねずみのおとうさんが、世界中で一ば
んえらいお日様の所へむすめをおよめにしてくださいと頼みに行く。 お日様に わたしより雲の方がえらいと言われ
て、こんどは雲の所へ行く。雲から風へ、風から壁へ、壁からねずみへと展開して、「世界で一ばんえらいのはやは
りねずみだった」という認識に達する。その展開の過程をみると、単純なくり返しではなく、ある理想を求めて、一
つ一つの段階が、ある聞係を保ちながら――鎖の輪と輪のように結び合いながら展開していく。              120
 この場合は、世界一えらいものを求めるのに、えらくないものから、しだいにえらいものへという手法をとらず、
最もえらいものから出発し、それよりもさらにえらいものへと予想外の所にえらさを見つけていく手 法を とってい
る。そして最後に太陽よりもすぐれたねずみ族のえらさを発見する。しかし、不当な高望みを抱きながら所々をたず
ねるねずみは、すべて希望をもたされた形で、それが否定される。それは自己否定でなく、改めて自己を認識させら
れる。そこに作者のヒューマニティがある。ところが、読み手は、太陽からかべ、ねずみへと、しだいに下降線をた
どっていく。そのギャップに大まじめなユーモアがある。
 ところで、このパターンは、 読み手に、 いつも期待をもたせる。その期待がはずれる。さらに大きな期待をかけ
る。それもはずれる。そして思わぬ所に到り着いてことは落着するそのような精神過程をたどらせる。
 (3) くさり型の筋の展開を読みとる技術の指導
 次の手順によって、その筋をたどる。
  @ くさり型の単位とその構造を読みとる。
  「ねずみのおとうさんは、お日様の所へ行って、どんなことを頼んだか、お日様は何と答えたか」を、学習した
後、それを左のようにまとめる。
 これが、くり返しの単位とその構造であり、中に
展開の契機を合んでいる。つまり、「ねずみのおと
うさんが、むすめをおよめにしてくださいと、お日

さまにたのんだ。お日さまは、くものほうがえらいといってことわった」――「AがBをCに頼んだ。Cは、Dをあ
げて、断った。」という構造になっている。
 そこで、この「頼んだが、他を推して断わられた。」が、この話の展開の契機となっている。
  B くさり型の基本になるパターンを読みとる。
 「ねずみのおとうさんが、むすめを、お日様に頼んだが、お日様、は雲のほうがえらいといって断った」これを明    121
確に押える。
 「雲のほうがえらい」と言って断られた。「そこ
で。」と話は展開する。雲のほうがたらいと気付かさ
れたとき、では雲へという志向が生まれる。そこで、
「どこへ頼みに行ったか、その結果はどうなったか」
を押えて、学習した後、左のようにまとめる。
 「お日さまに断られた――そこで――雲のところ
へ行って頼んだ――が、雲に断られた」この筋道を
押える。
  B くさり型の展開の筋道を押える。
 前に述べたように、学習してはまとめる.
 左のように簡潔にまとめさせる。OHP、板書、
短冊黒板、カード、人物の顔絵カードなどを利用す
る。色分けの板書、行動化なども有効である。
 児童はこの学習で、くさり型の話の筋道をたどる
技術を学習する。それは前に述べた「お日様に頼ん
だ――断られた――そこで――雲に頼んだ――が断
られた」という筋道と、「断られた→そこで→こん
どは→こんどは」という形式的な展開を押さえる技
術である。

4 かたり型(物語型)の筋の展開を読みとる学習技術とその指導                          122
 (1) かたり型の典型的なパターン
 かたり型というのは、語り物のパターンによって物語られる話の型である。次のように構成されている。
 紹介(語り)――物語の主人公の名まえ・性格・思想・生活・環境・生業・時などについて紹介する。「南の国
 に、かわいい男の子がいました。名さえをチビクロ・サンボといいました。母の名まえは、マンボ、父の名まえは
 ジャンボといいました。」の類。
 発端(語り)――事件の発端・始まりについて語る部分。「ある日、ある時、ある年、雪の降る晩でした、ある
 月の青い晩、ある秋のことでした」などで始まる。
 展闘(語り)――発端を受けて事件は展開する。この展開の型にはいろいろある。起承転結型、因果型、事件型、
 また、プロローグ・クライマックス・エピローグなど。
 結末(語り)語りの終末。ここの結びのことばは重要。「これでこの話はおしまいです。」「それからみんなな
 かよく暮らしました」などは物語的、「と伝えられています」「今でもみんなそう思っています」などは昔詰、伝
 説的、「海の水がからいのはこういうわけです。」「これがげんごろうぶなの名のおこりです」などは、縁起的、
 「だから友だちはなかよくしなければなりません」「おじいさんのやさしい心がむくいられたのです」などは、教
 訓的、「その後どうなったでしょう」などは、余情的な物語であることがわかる。
 後日談(後日物語)物語られたことが、あるいは人物が、その後どうなったかを語る部分。「まもなく、長岡の
 町に学校が建てられた。また、このことがきっかけとなって、長岡は教育のさかんな町になった。そして、この町
 からは、すぐれた人材が数多く、世の中に送り目された。(米百俵)」「この間、風のたよりに聞きました。太郎
 は、今、村の村長さんになっているということです。そして、二、三年前、りっぱなコンクリートの学校をたてた
 ということです。(太郎こおろぎ)」などがそれである。
 これをいくつかに類型化してみると次のような型ができる。
 紹介――発端――最高潮――結末                                       123
 紹介――起――承――転――結
 紹介――発端――展開――最高潮――結末――後日談
 (2) かたり型の心理
 かたり型は、物語の最も一般的な典型的な型である。いわゆる口承文芸の語り口をそのまま文学化したものである。
 「紹介」では、登場人物とその背景・時・生活・性格などについて述べ、物語のムード、展開への志向、読み手の
構えをもたせる。
 「発端」では、「ある日」「ある年の秋のことです」などと、発端のことばによって、読み手を緊張させる。どん
なことが起こるのか、どんなことがあったのかという期待の心を喚起する。そして、読み手を物語の中に引き入れて
いく。思いがけない事件が起こる。あるいは、小さな何でもなさそうな事件が起こる。
 「展開」では、発端に語られた事件を受けて、それがきっかけになって、次々に展開する。事件が拡大する形の展
開、新しい事件が起こり加わる形の展聞、いずれにしても、どうなるだろう、どう解決するのだろうという興味や期
待にささえられて読み進める。ここでは想像や推理・同感共鳴・感想批判など、さまざまな心的活動が行われる。
 「最高潮――クライマックス」では、精神活動が最高度に高められて、感動の頂点に達する。
 それは、物語の主題・中心思想につながるもの、ささえるものである。あるいは、その具体的な現れである。
 「結末」では、物語についての、世人や作者の感想や批判が述べられる。あるいは、物語の性格が、前に述べたよ
うな形で語られる。
 「後日談」は、読み手が読後にもつ、その後どうなったのだろう、今はどうしているのだろうというような心配や
推理に答えるものである。
(3) かたり型の筋の展開を読みとる学習技術の指導
  次の手順による。
  ア 紹介――中心人物の名まえ、いつか、どこか、どんな人か、どんなことをしている人かなどを押える。(表    124
   に書く)
  イ 発端――発端を示すことばを押える。どんなことが起こったか。どんなことをしたかを押える。(箇条
   書きにする)
  ウ 展開――事件は発端から、どのように展開していったか、その要所要所を押える。事件はどのように発展
   したか。途中どんな事件が新しく起こったか。事件はどんな順序をたどって進んだか。事件の展開を示
   すことばを押える。(箇条書き)
  エ 最高潮(クライマックス)――事件はどうなったか。事件はどう解決したか。その状況はどんなかを読
   みとる。物語によっては、このクライマックスで終わりになっている、結末になっているものもある。
  オ 結末――事件はどんな結末になったか。事件はどのようにまとめられたか。
   結末は、事件の結末と、物語全体の結末を述べる場合とがある。つまり、物語の構成上のまとまりをつける場
   合には、事件の結末と関係なくまとめる。それは、「前書――紹介――発端――展開――最高潮ー―結末――
   後書き」のように物語が構成されている場合である。
  カ 後日談――「その後」「今は」「あの時の」など、後日談の書き出しを押えてまとめる。
   このようにかたり型のパターンに従って、事件の展開を押える。次に「太郎こおろぎ」の例を示す。
   「太郎こおろぎ」
┌―l 紹介
| いつ――――わたしがまだ二、三年生のころ
| どこ――┬―山おくの小学校┐
|     |―小さな学校――|―「しょうじ学校の、運動場」
|     └―せまい運動場―┘
| だれ――┬―太郎というこども                                        125
|     |―いたずらっ子――ゆか板のひみつのあな――まめの皮・えんびつのけずりくず
|     |―がきだいしょう――木の枝の刀で、女の子・弱い子を追い回す
|     └―なんとなく親切――「いじめるやつらは泣かしてやる」
└―┐
  2発端
┌―┘
ある日
| しのちゃん→新しい消しゴム
|          ↓
| 太   郎→「よしよし、使ってやる」手がすべって、ひみつのあなから落ちる
|          ↓
| しのちゃん→なき出しそう
|          ↓
| 太   郎→「弱虫、なくな。取ってきてやる。」
|          |  
└―┐        └―教室をとび出す
  3 展開
┌―┘
| 太   郎→教室のゆか下――なかなか見つからない
|              授業の始まるかねがなる
|              ↓
| しのちゃん→こまって下ばかり見ている
|          ↓
| 先   生→「下ばかり見て何している。」
└―┐
  4 展間
┌―┘
| しかし
| しのちゃん→消しゴムを取りに行ってくれた太郎を先生にいうのは悪い                      126
|          ↓
|       こおろぎが一びきあなから飛び出した

|       「こおろぎが鳴いているんです。」
|          ↓
| 先   生→「何、こおろぎ。なんて鳴いている。先生に教えておくれ。」
|          ↓
| しのちゃん→「リ、リー。」
|          ↓
| み ん な→どっと笑う
|          ↓
| しのちゃん→なみだをためて、下を向いてしまう
└―┐
  5 最高潮(クライマックス)
┌−┘
| ところが
| そ の とき→ゆか下から
l       「リリ、リリ、リリー。」
|         ↓
| 先生・こどもたち→びっくりして耳をすます
|         ↓
| や が て→くすくすとわらいだした
|         ↓
| だ れかが→「太郎こおろぎだ。」
| 今度は     ↓
| 先 生 も→ふき出してしまった
└―┐
  6 結び
┌―┘
| こおろぎが鳴くころになると、いつも思い出す。楽しい山の小学校                        127
└―7 後日談
   太郎→今―村の村長さん
        ↓
      二、三年前−りっぱなコンクリートの学校をたてた
 童話・物語の構成のパターンには、これらのほか、切れ続き型(断続型)、くらべ型(比較対照型)、ひろがり型
(展開型)、小説型などがあるが、いずれもそのパターンにそって筋の展開をたどっていけばよい。

     三 場面や情景を想像しながら読む学習技術

   1 解説

 場面や情景を想像しながら読む技術を学習させるためには、場面や情景についての諸性格を理解していると便宜が
多い。
1 場面・情景と表現法
 物語は、普通サマリーとシーンによって構成されている。場面や情景はそのシーンである。この場面や情景の書き
表し方は、普通「語り」「表現」「描写」の様式をとっている。「語り」は、語り的表現、狭い意味の「表現」は、
象徴的表現・比喩的表現、「描写」は、写生的表現である。
 したがって、場面や情景の表現を、「場面語り・情景語り」「場面表現・情景表現」「場面描写・情景描写」など
と呼んでいる。
 このうち、場面描写・情景描写は、場面や情景を写生的、客観的に表現するものであるから、その場面、情景の想
像による視覚表象が描きやすい。いわゆるイメージが描きやすい。つまり、場面や情景を想像しながら読む技術とい
うのは、場面や情景についての視覚的な想像表象を描きながら読む技術のことである。
2 場面の形式的特性                                              128
 場面を形式的にとらえてみると、次のような特性をもっている。
 (1) 空間性
 場面を成り立たせる最大の条件の一つは、空間性である。場面は必ずある視覚的空間を占めて初めて成り立つもの
である。だから場面を形式的に規定するものは空間である。この視覚的・観念的空間にも、次の三つがある。
 一つは、「いっすんほうしは、おやゆびぐらいの小さなこどもです。みやこへいくことになりました。かたなはは
り、さやはむぎわらです。おわんのふわにのって、はしでこいでいきました。トブン、トプンと、川をこいでいきま
した。」に描かれているような「線条的空間」である。
 二つは、「さるはひろった赤いろうそくをだいじに山へもってかえりました。山ではたいへんなさわざになりまし
た。なにしろ花火などというものは、みんなまだ一ども見たことがありません。その花火をさるがひろってきたとい
うのです。『ほう、すばらしい』『どれはすてきだ。』しかや、いのししや、うさぎや、かめや、いたちやたぬきが
おしあいへしあいして、赤いろうそくをのぞきました。(赤いローソク)」に描かれている「平面的空間」である。
 ところで、「うみのなかで、たいとかにがじゃんけんをしました。たいは、かみをだしました。かには、はさみを
だしました。かにが、「ぼくがかったよ。」といいました。(じゃんけん)」に描かれている場面は、平面的空間に
同時的に組み立てられているものである。ところが、その描写が、時間的経過の上になされている。ここに場面表象
を描く場合のむずかしさがある。
 三つめは、「月のいいばんでした。ごんはぶらぶら遊びに出かけました。チンチロリン、チンチロリンとマツムシ
が鳴いています。(ごんギツネ)」は、立体的空間の上に組み立てられている。
 (2) 時間性
 場面は、形式的には、空間と時間とによって構成されている。
  「(残雪)いきなり、敵にぶつかっていきました。そしてあの大きな羽で、力いっぱい相手をなぐりつけました。    129
   不意を打たれて、さすがのはやぶさも、空中でふらふらとよろめきました。が、はやぶさもさるものです。さっ
  と体勢をととのえると、残雪のむなもとに飛びこみました。
  ぱっ。ぱっ
  羽が白い花弁のようにすんだ空に飛び散りました。(大造じいさんとがん)」
 ここに描かれている場面は、空間の径時的変化の上に構成されている。つまり、場面が時々刻々と変わっていくの
を、その変化に応じて描写している。ここでは、その様子の変化が中心であり、重要であって、時間がたつというこ
とは、意識しなくてもいい。
 このように、(1)ある空間の、ある時刻の場面として構成されているもの、(2)ある空間の継時的な場面として構成
されているもの、(3)移動する空間と、移動する時刻との上に構成されているものがある。
 (3) 完結性
 場面は、時間と空間によって規定される一まとまりである。この場面の完結性は、時間と空間とによって限られる
が、その境界は明らかではない。
 要するに、時間、空間によって区切られ、区分された一場面が、場面の単位である。それが場面表象を描く場合の
一こま、一単位でもある。
3 場面の内容的特性
場面は、その内容によって、次のような特性を表す。
 (1) 情景性
 場面の中には、人物を描く空間を中心に描写・叙述しているものがある。これは、視覚的な想像表象が描きやすい
い。
 「吉兵衛というおひゃくしょうの家まで来ると、ふたりはそこへはいっていきました。ボクボクボクと、木魚の音
がしています。まどのしょうじにあかりがさしていて、大ぜいの人のかげぼうしがうつっていました。          130
 『おねんぶつがあるんだな。』
 と思いながら、ごんは、いどのそばにしゃがんでいました。(ごんぎつね)」
 ここに描かれている場面は、その情景が、聴覚的・視覚的に描写されている。その情景が強く心に訴えるように表
現されている。
 (2) 心理・心情性
 その場面を支配しているものが、人物の心理・心情である場合がある。それについては後に詳しく述べる。
 (3) 行動性
 場面の中には、人物の行動・行為・動作などが中心になって描かれているものがある。
 「そのあくる日も、ごんはクリを持って、兵十の家へ出かけました。兵十は物置きで、なわをなっていました。そ
 れで、ごんは、家のうら口からこっそり中にはいりました。そのとき、兵十はふと顔を上げました。と、キッネが、
 家の中へはいっていくではありませんか。――このあいだウナギをぬすみやがったごんギツネめが、また、いたず
 らをしに来たな。
 『ようしっ。』
 兵十は立ち上がって、物置きに置いてある火なわじゅうを取って、火薬をつめました。そして、足音をしのばせて
 近より、今、戸口を出ようとするごんをねらって、ドンとうちました。(ごんギツネ)」
 この文章には、兵十とごんの行動・動作が中心になって描写されている。
 以上は、場面の内容的特性としての情景(心理・心情)行動を、訴え知らせようとしている。そのためにそこに想
像表象としての、情景表象(心理表象・心情表象)・行動表象を視覚的に描かせるものである。
4 場面の機能的特性
 場面は、全体的な一つのまとまりとして、読み手に訴えたり、読み手に感動を与えたり、読み手にある情調を感じ
させたりする働きをもりている。それが場面の働き、機能である。                          131
 (1) 情調性
 ある場面が、全体的にとらえられると、それからしぜんに、読み手に働きかけてくるものがある。
「月のいいばんでした。ごんは、ぶらぶら遊びに出かけました。チンチロリン、チンチロリンと、マツムシが鳴いて
います。」
 この場面が、「明るい秋の月夜、チンチロリンと松虫が鳴いている。その道をごんがぶらぶら歩いている。」とい
う場面表象が抽かれると、いかにも、明るい、静かな感じがただようのを覚える。つまり、そのような感情状態にな
る。これが場面の情調である。このように場面は、その機能として情調性をもっている。
 (2) 感動性
 ある現面に感動するというのは、その場面の刺激に対して、急激に反応して、ある感情状態になる。いわゆる強く
心を打たれる。しみじみと感じる。思わザ嘆声をもらすというような状態になることを感動と呼んでいる。
 場面は、このような感動を与える働き、機能をもっている。
 「兵十はかけよっていきました。家の中を見ると、土間にくりが置いてあるのが目につきました。
 『おや?』
 びっくりして、兵十は、ごんに目を落としました。
 『ごん、おまえだったのか。いつもくりをくれたのは。』
 ごんは、ぐったり目をつぶったまま、うなずきました。
 兵十は、火なわじゅうをパタリと落としました。青いけむりが、まだ、つつ口から細く出ていました。(ごんぎつ
 ね)」
 こういう場面は、まず、読み方が速くなるのを覚える。心のときめきを覚えながら読み進める。いわゆるクライマ
ックスの場面で、いきを止めたり、からだを固くしたりしながら読む。しまったという兵十の悔恨、呆然としてじゅ
うを取り落とした兵十の気持ちがひしひしと感じられる。                              132
 このように場面は、読み手に働きかける感動性を持っている。

   2 挿し絵による場面や情景を想像しながら読む学習技術(挿し絵法)

1 場面と挿し絵と想像
挿し絵は場面や情景を具体的に、視覚的に表している。しかし、それは、ある瞬間の、ある場面の、静的な表現であ
る。したがって、場面の変化、動きなどを表すことはできない。そこに挿し絵の限界がある。また、挿絵は想像を固
定する。自由な想像のじゃまになる。しかし、場面の想像のできない学習者には、その場面の最も基礎になる想像を
描かせてくれる。経験のないこと、知識のないこと、これまでに表象を描いたことのないことについては、想像は困
難である。そこで、挿し絵は、想像のよりどころ、出発点を教えてくれる。
 そこで、想像学習の最も初歩的なものであるが、ことばによる想像によって、挿し絵に動きを添える。変化を与え
る方法・技術がある。
 また、挿し絵にもとづいて、次々に変わる新しい場面を想像し、創造していく方法、技術もある。
 あるいは、挿し絵をもとにして、想像によってそれをさらに詳しくしたり、足りないことを補ったりして、より豊
かな場面を創造していく方法・技術もある。
2 挿し絵によって場面や情景を想像しながら読む学習技術の指導
 (1) 低学年の例
  @作品
  四じかんめのことです。
  一年二くみの子どもたちが、たいそうをしていると、空に、大きなくじらがあらわれました。まっ白いくものく
 じらです。
  「一、二、三、四。」                                            133
 くじらもたいそうをにじめました。のびたりちぢんだりして、しんこきゅうもしましたし(くじらぐも)
 A 挿し絵
  (ア) 子どもと先生が両手をあげ、上体を右に曲げている絵
  (イ) くじらも両手をあげ、からだを曲げて体操をしている絵
 B 学習技術
  (ア) 「四じかんめのことです。」
    広い揮動場と、広い青い空を想像させる。
  (イ) 「一年二くみの子どもが、たいそうをしていると。」――挿し絵をもとにして上体を左右に曲げる運動を
    していることを想像させる。上体を左右に折り曲げる運動をしていろ想像表象を描く。自分のからだをまげ
    ながら。静的な挿し絵から動的な行動表象を描かせる。
  (ウ) 「空に、大きなくじらがあらわれました。まっ自いくものくじらです。」――どんなくじらが、空に現れ
    ましたか。「まっ青な空に、まっ白な大きな雲のくじらが現れました。」「まっ青な空にそのくじらぐもを
    かいてみましょう。」――挿し絵のくじらをもとにして、青空をゆったりと泳いでいるくじらの雲の様子を
    想像させる。挿し絵をもとにして、新しい場面を創造する。
  (エ) 「『一、二、三、四。』くじらも、たいそうをはじめました。」――「くじらはどんなふうに体操をしま
    したか。その様子を心に思い浮かべてみましょう。」――挿し絵から、一、二、三、四と言いながら、両手
    を上げ、上体を左右に曲げて運動している場面を思い描かせる。静的な挿し絵から動的な場面を創造する。
  (オ) 「のびたりちぢんだりして、しんこきゅうもしました。」――「深呼吸はどのようにしますか。(深呼吸
    をさせてみる。)くじらはどのように深呼吸をしましたか。」――挿し絵をもとにして、伸びたり縮んだり
    して深呼吸をしているくじらの様子を想像させる。くじらが深呼吸をしている場面を創造する。
 このように、静的な瞬間的・場面を描いている挿し絵をもとにして、表現に従って、動的な場両を想像する。新し
い場面を創造する。より豊かな場面を創造する。このような想像の技術を学習させる。これは低学年向きの技術であ    134
る。
 (2) 高学年の例
  @ 作品
  それから先生は、おずおずしている牛を、闘牛場のまん中に連れ出して、いろいろな芸当をやらせました。あと
 足で立たせ、今度は前足で立たせ、おどらせるやら、とばせるやら、ころばすやらです。さらに先生は、牛にひざ
 をつかせて、自身がそのせに上ってさか立ちをしたりしたあと、年の角の上で、いろいろな曲芸を演じました。
  A 挿し絵
  牛にひざをつかせ、角の上で、曲芸をしている絵――背景は闘牛場
  B 学習技術
   (ア) 挿し絵によって、広い闘牛場の表象、牛がひざをついている表象、角をつかんでさか立ちしている先生
     の表象は、はっきりと描ける。
   (イ) この挿し絵によって描ける表象をもとにして、次の想像表象を描く。
     ○おずおずしている牛を闘牛場のまん中に連れ出す情景を想像する。
     ○あと足で立っておどらせたり、とはせたり、ころはせたりする情景を想像する。
     ○前足で立っておどらせたり、ころばせたりする情景を想像する。
     ○牛のせの上でさかだちをする情景を想像する。
     ○牛の角の上で、いろいろな曲芸を演じる情景を想像する。
 このように挿し絵をもとにして、新しい情景を創造する技術を育てる。この情景は、闘牛場のまん中に引き出され
た牛、そのまん中で演じられた次の演技、
                                                        135
                 ┌―おどらせる
        ┌―あと足で立つ―┤―とばせる
        |        └―ころばす              ┌―牛のせの上でさか立ち
 いろいろな芸当┤                   年にひざをつかせる┤
        |        ┌―おどらせる             └―牛の角の上でいろいろな曲芸
        └―前足で立つ――┤―とはせる
                 └―ころばす
によって組み立てられている。
 これらの演技の情景を、想像によって描き出す――想像表象を描き出すことによって、骨組みだけの表現から、豊
かな、詳しい情景を創造することができる。

   3 絵画化による場面や情景を想像しながら読む学習技術(絵画化法)

1 場面と絵画化と想像
 場面や情景は、前に述べたように、描写による写生的表現をとるのが普通である。したがって、場面を想像して描
く表象は、事実そのままのように、目に見えるように描かれる。つまり、視覚表象を描くことになる。視覚表象は、
事実のように、写生的に描かれるものであるから、それをそのまま形に書き表せば絵になる。絵画化できる。ここに
絵画化による場面の想像を豊かにする契機がある。想像によって思い描かれた場面の表象を、そのまま描かれた通り
に絵にかくことによって、その想像を確かにするのである。
 ところが、想像によって描かれる映像は――想像表象は、その輪郭も、その位置もはっきりしない。そのうえ流動
的で、また、すぐ消えてしまう。それが想像表象の特性である。
 したがって、絵画化するといっても、普通に絵をかく、写生をする場合などとちがって、細かに、詳しく、事実そ
のもののようにかくことはむずかしい。また、そのような絵をかくことを望むべきではない。
 ことばから想像されることがら、状態・状況・関係などがわかる程度に描ければよい。                136
 場面における事物や人物の位置関係がはっきりわかればいい場合などは、鉛筆で、円や方形によって示すだけでも
いい。絵をかくことが目的ではないのであるから、できる限り簡潔に、短時間に絵画化できるようにする。
2 絵画化による場面を想像しながら読む学習技術の指導
  @ 作品
  「そのあと、ゼペットは、
 『つかまえてくれ、つかまえてくれ。』
 と言って、おいかけていきました。けれども町の人たちは、だれもつかまえようとしないで、ゲラゲラわらってい
 るだけです。
 うんよくおまわりさんが来ました。道のまん中に、ぐんと足を広げて、立ちふさがりました。ピノッキオは、おま
 わりさんの足の間をくぐりぬけようとしました。おまわりさんは、ピノッキオの長い鼻をつまんでおさえました。
 そして、ゼぺットにわたしました。(ビノッキオ)」
  A 絵画化−鉛筆で、簡単に
   (ア) ゼペットが、「つかまえてくれ、つかまえてくれ。」と言いながら、ピノッキオを追いかけている。
     町の人たちほゲラゲラわらっている絵
   (イ) のおまわりさんが、道に立ちふさがっている。ピノッキオはおまわ
     りさんの足の問をくぐりぬけようとしている絵
   (ウ) おまわりさんが、ピノッキオの長い鼻をつまんで、ゼペットにわたす絵
  B 学習技術
   (ア) 読みながら、鉛筆で絵にかく。ピノッキオが逃げていく。そのあとをゼペットが追っていく、町の人た
     ちには笑っている。ゼペットには「つかまえててくれ、つかまえてくれ。」、町の人たちには、「ゲラゲ
     ラ」の吹き出しをつける。                                       137
   (イ) 「うんよく、おまわりさんが来ました。道のまんなかに、ぐんと足を広げて立ちふさがりました。ピノ
     ッキオは、おまわりさんの足の問をくぐり抜けようとしました。」の場面を絵画化する。これは想像の単
     位である。
     「道のまんなか」「ぐんと星を広げて」「立ちふさがりました」「星の下をくぐり頂けようとしました」
     これらの状況がはっきり描かれ、ゼペットとピノッキオの位置的関係がはっきりとらえられて絵画化でき
     ればいい。
      この場面をことばを手がかりとして想像表象を描き、それをそのまま絵画化する。特に前記の語句がど
     のように絵画化されたかを中心にして評価する。
     絵画化された場面をOHPで投映し、それについて話し合いながら、想像をはっきりさせていく。
   (ウ) 「おまわりさんは、長い鼻をつまんで」「ゼペットにわたしました。」を絵画化する。「鼻をつまんで」
     の表現に注意する。
 このように描いた想像表象を絵にかき、また絵にかくことによって、想像を碓かにしたり、広げたり、深めたりす
る技術を学習する。その場合、特に注意することは、
 (ア) 場面が全体として、とらえられるように絵画化すること。
 (イ) 特に、どの語を手がかりにして想像したことを絵にかくかを明確にする。たとえば、「ぐんと足を広げて」
  「立ちふさがる」という語句を、どのようにとらえ、どのような想像表象を描いたかを押えるようにする。
 (ウ) 特に色彩についての想像、あるいは色彩の美を中心とした場面の想像などでない限り、一色の鉛筆かクレヨ
   ンだけでよい。かく時間を短くするためにも。
 (エ) 絵をかく技術を評価するのではない。絵によって表現された――理解された、感じさせられたことを重くみ
   るようにする。絵そのものの巧拙は問題にしない。
 (オ) 児童が、OHPを使って、絵画化した場面を紹介し、想像したことを説明し、話し合うことをくふうする。    138
 この技術は、中学年以上に適切である。

   4 行動化による場面を想像しながら読む学習技術(行動化法)

1 場面と行動化・動作化と想像
 場面を行動化する(動作化・作業化・劇化など)場合にも二通りある。
 一つは、行動が描写されている描写を、想像して、その想像表象に従って行動する、動作をする場合である。
 他の一つは、ある抽象的なことば、抽象的に書かれている場面を想像し、その想像表象に従って行動化する場合で
ある。
 「安じいさんは、た、た、た、と、尾根から谷間にかけおりていきました。わたしは、こちらからゆっくりとおり
 始めました。」
 この文章は、行動的な場面を描写している。そこで、その行動の状況を想像し、描かれた想像表象に従って行動化
する。
 前の部分では「尾根から谷間に、た、た、た、と、かけおりる様子を想像する。つまり、尾根から谷間へかけての
林の状況を想像する。(それより前に書いてある山の状況をも手がかりにして)そこを、た、た、た、とかけ下りる
姿を想像する。た、た、た、ということばから、軽々とかけ下りる姿が描かれる。
そこで軽快にかけ下りるように行動化する。そして、雪の林の中を軽々とかけ下りる姿をはっきりと描き出す。
 また、後の部分では、ゆっくりおり始めるということばから、その歩き方を想像する。そしてその通りに歩く。
 「わたしは、雪の上にすわって、冷たいにぎり飯を食べ始めました。すると、ワソ、ワン、ワン、ワン、と、クロ
 のはげしい鳴き声がしました。飯どころではありません。わたしは、じゆうを取って立ち上がりました。」この場
 面で、「飯どころではありません。わたしは、じゆうを取って立ち上がりました。」のところを想像する。その場
 合、「飯どころではありません」という抽象的なことばをどのように具体的に押えたらいいか、冷たいにぎりめし    139
 を食べている。犬の鳴き声が聞こえる。じゆうを取って立ち上がる。その様子を想像して、その通りに行動化する。
 それによって、飯どころではなく立ち上がる様子が描かれる。
 つまり、行動化してみることによって、場面の状況が想像できる。また、想像したことを行動化してみて、その想
像の結果を確かめることができる。
2 行動化による場面を想像しながら読む学習技術の指導
 (1) 高学年の場合(1)
  @ 作品
  けれども、先生は、落ち着いたもので、平気でおじぎをすませました。そうして、しかつめらしくうでを組んで、
 額に深くしわを寄せ、つき進んでくる牛を、じっとにらみつけました。(ドリトル先生)
  A 行動化
   (ア) 落ち着いて平気でおじぎをする先生を行動化する。
   (イ) しかつめらしくうでを組み、額に深くしわを寄せ、つき進んでくる牛を、じっとにらみつける先生を行
     動化する。
  B 学習技術
   (ア) 「あぶない、あぶない。……牛だ。殺されるぞ。」という群集のやきもき、さけびを背景にして、「落
     ちついたもので」「平気でおじぎをすませました」の部分の想像表象を描く。そうして、その表象に従っ
     て行動化する。
   (イ) 「しかつめらしくうでを組む」「額に深くしわを寄せ」「じっとにらみつける」の表現を手がかりにし
     想像表象を描く。「つき進んでくる牛」を、じっとにらみつけるところに注意する。
   (ア)(イ)を行動化する場合ともに、試合の前にドリトル先生と牛たちの間に、試合の計画、牛の役わりについ
     て詳しい打ち合わせができていることを思い起こさせ、その上に立って行動化させる。            140
     そうしないと、「落ち着いたもので」とか「しかつめらしく」とか「額に深くしわを寄せ」とかいうこと
     ばの語感が感じられない。
 (2) 高学年の場合(2)
  @ 作品
  安じいさんが、だこうとして手をかけると、クロは、きずのいたさにたえられないのでしょう。ウウウ、と、す
 ごいうなり声をあげて、かみつこうとするのです。どんなにしかりつけても、すかしても、自分のからだに手をふ
 れさせようとしません。
  A 行動化
   (ア) どんなにしかりつけても、すかしてもを行動化する。
  B 学習技術
  「どんなにしかりつけても、すかしても」を想像する。しかりつけることばとしかりつけ方、それから、すかす
 ことばと、すかし方を想像して、それをことばに出して行動化する。その場合、「クロは、きずのいたさにたえら
 れないのでしょう。ウウウと、すごいうなり声をあげてかみつこうとする」事実をよく想像の中に入れて置かなけ
 ればならない。

   5 パントマイムによる場面を想像しながら読む学習技術

1 場面とパントマイムと想像性
 行動化法の中には、一種のパントマイムが含まれていた。
 場面が劇的要素で組み立てられていて、それが、描写されている場合がある。このような場面は、容易に行動的な
視覚表象が描きやすい。したがって、その描かれた視覚表象にもとづいて、それを行動化すれば、パントマイムとな
る。                                                      141
 パントマイムは、表情・手振り・身振り・行動などによって演じるものであるから、ことばによる表現の不備、空
白を想像によって描き出し、補い、それを身振り・行動などによって表現しなければならない。そこに活発な想像力
が働き、場面を豊かに読みとることができるのである。
 つまり、場面をパントマイムによって想像しながら読むということができるであろう。
2 パントマイムによる場面を想像しながら読む学習技術の指導
 (1) 高学年の場合
  @ 作品
  ところが、まもなく不思議なことが起こりました。牛のかけ足は、みるみるおそくなって、まるで、その牛は、
 先生のしかめつらを、ひどくおそれているように見えました。やがて、その足が止まりました。先生は、指を一本
 つき出し、それから、その指を左右にふって見せました。牛はふるえだしました。おしまいに、しつぽを両足の間
 に入れ、向きを変えてにげだそうとしました。(ドリトル先生)
   A パントマイム
    (1) 牛のかけ足はみるみるおそくなる。        (5) しっぱを両足の間に入れ、向きを変えてにげ
    (2) まるで、先生のしかめつらをひどくおそれて     だそうとする。
     いるように見える。                (6) 先生のしかめつら(額に深くしわを寄せ)
    (3) その足が止まりました。             (7) 指を一本つき出し、左右にふってみせる。
    (4) 牛はふるえ出しました。             
  B 学習技術
   (1) 牛と先生(ドリトル先生)が一組になる。他のひとりがゆっくり読む。
   (2) 牛と先生との位置関係を考える。
   (3) 牛のかけ足は、みるみるおそくなる(行動化)先生のしかめつらをひどくおそれているように(表情・目    142
    のつけ所・身振り)見え、その足が止まる(行動化)。
   (4) 先生はしかめつら(表情)をし、指を一本つき出し、左右に振って見せる(行動化)。
   (5) 牛はふるえ出し(身振り)おしまいに、しつぼを両足の間に入れ(動作化)向きを変えて(行動化)にげ
    だそうとした(動作化)。
 パントマイムの場合も、ただ劇化できればいいというものではない。それぞれ身振り化、行動化すべき表現と、想
像によって描き出された表象を、中心にして、それらがうまく行動化できていなければならない。そのようにパント
マイム化することによって、場面の認識を深めようとしているからである。

   6 音読・朗読による場面を想像しながら読む学習技術(朗読法)

1 場面と朗読と想像
 場面の中には、擬声語や擬態語を使って描写されているものがある。あるいは、静かなリズム、強いリズム、軽快
なリズム等々が中心になって表現されている場面もある。
 つまり、聴覚的要素――聞いて感じがよい、聞いて調子がいい、聞いて軽い感じがする、聞いて強い感じがする、
聞いて明るい感じがするなど ――を含んでいる文章、聞いて感覚表象を描きやすい要素 ――聞いて目に浮かびやす
い、聞いて触覚を起こしやすい、開いて動作が浮かびやすいなど――を含んでいる文章がある。これらの文章によっ
て表現されている場面は、音読したり、朗読したりすることによって、想像表象が描きやすくなる。あるいは、音読
や朗読を聞くことによって、場面表象が描きやすくなる。
 たとえば、「小川の水がゴポゴポ流れている」「雨がバラバラ降ってきた」「つばきの薬がつやつやしている」「風車
がくるくる回る」「どっこいしょと腰を下ろす」「書いても書いても書ききれない」などは、音読したり、朗読したり
すると、その様子、状態などが、すぐ想像されて、口に浮かんだり、感じられたりする。想像表象が非常に描きやす
い。                                                      143
 したがって場面の想像表象が、豊かに、確かに描かれる。
 これらのほか、話しことば――会話などが中心になって組み立てられている場面がある。それらは、アクセントや
イントネーション、プロミネンス、間などに注意して、音読あるいは朗読すると(あるいは、それを聞くと)、それ
によって場面の想像表象がいっそう描きやすくなる。
2 音読・朗読による場面を想像する学習技術の指導
 (1) 呼びかけ読み
  @ 作品
  みんなは、大きなこえで、
 「おうい。」
 とよびました。
 「おうい。」
 と、くじらがこたえました。
 「ここへおいでよう。」
 みんながさそうと、
 「ここへおいでよう。」
 と、くじらもさそいました。
  A 学習技術
   (1) みんなと、くじらの位置を考える。
   (2) みんなのところは、みんなで読む。
   (3) くじらのところは、くじらひとりで読む。
   (4) みんなは、くじらの方(士の方)を向いて読む。                             144
   (5) くじらは、みんなの方(下の方)を向いて読む。そのような気持ちで読む。
   (6) みんなが読んだあと、くじらが読むまでの問をできる限り長く置くようにする。それで高い空を想像させ
    る。
   (7) くじらは、できる根り大き声で読むようにする。それでくじらの大きさを思い描かせる。
   (8) 大きな場面を想像させる。
   (9 )青い空にいる大きなくじらを想像させる。
   (10)「大きなこえ」「みんながさそう」「くじらもさそう」などの意味表象をはっきり描かせる。
 (2) 擬声読み
  @ 作品
  小さなディーゼルカーが、
 「ケロロン ロンロン ケロロン ロン。」
 と歌を歌いながら、止まっています。 電気きかん車が、おけしょうをしてもらっています。 とっきゅうが、
 「ラ ラ ラン ラン パーン。」
 とさけんで、止まらずに行ってしまいます。
     ×
 電気きかん車が、
 「やあい、石たん食いのやえもんやあい。石たん食って、おいしいか。びんぼう汽車のやえもんやあい。」
 といって、わらいました。
 それを見ていたディーゼルカーも、「ケラケラケラ、ケラケラケラ。」とわらいました。
 「プッスン、おいしいわい。プッスン、プッスン。」                               145
 やえもんは、まっ黒いけむりをもくもくはいて、おこりました。(きかん車やえもん)
  A 学習技術
   (ア) 「ケロロン ロンロン……」は、ゆっくり読む。止まって歌っている姿を想像させる。
   (イ) 「ラララン……」は、漸層的に音が組み合わされている。そこから走る勢いが生まれる一気に速く読む。
     そうして、走り去る特急の姿を想像させる。
   (ウ) 「ケラケラケラ……」は、明るい同音の単調なくり返しになっている。笑っている姿を想像させる。
   (エ) 「プッスン……」は、怒っている状態を想像させる。あとにプッスンを重ねているところに怒りの強さ
     と、それが続いていることが想像できる。
   (オ) これらの擬声語あるいは擬声語的表現は、感覚的にその状態・状況を想像しやすくしている。
   (カ) 各自くり返し音読することによって、だんだんその状態・状況がはっきりと想像されてくる。
 (3) リズム読み
  @ 作品
  大きなかぶ
  おじいさんが、かぶのたねをうえました。
  「おいしいおいしいかぶになれ大きな大きなかかぶになれ。
  おいしそうな大きなかぶができました。
  おじいさんは、かぶを抜こうとしました。
  「うんとこしょ、どっこいしょ。
  ところが、かぶは抜けません。
  おじいさんは、おばあさんをよんできました。おばあさんがおじいさんをひっぱて、おじいさんがかぶひっ
  ぱりました。                                                146
  「うんとこしょ、どっこいしょ。
  それでも、かぶはぬけません。
  おばあさんは、まごをよんできました。
  まごがおばあさんをひっぱって、おばあさんがおじいさんをひっぱって、おじいさんがかぶをひっぱりました。
  「うんとこしょ、どっこいしょ。
  まだまだ、かぶはぬけません。(以下略)
  A 学習技術
   (ア) リズミカルな文章であるから、そのリズムに乗って音読する。
   (イ) 「おいしいおいしいかぶになれ。大きな大きなかぶになれ己の強調表現のくり返しのリズムに乗って音
     読し、そのおいしくて大きなかぶの表象を描く。
   (ウ) 「うんとこしょ、どっこいしょ。」ところがかぶは抜けません。掛け声のリズムと、掛け声と「ところ
     がかぶはぬけません」との緊密なリズム関係にのって音読し、なかなか抜けない様子を想像する。この一
     つのまとまりがくり返されている。
   (エ) おじいさんが引く。おじいさんとおばあさんが引く。おじいさんとおばあさんとまごというように漸層
     的なリズムになっている。しかも、「おばあさんがおじいさんをひっぱって、おじいさんがかぶをひっぱ
     りました」「まごがおばあさんをひっぱって、おばあさんがおじいさんをひっぱって、おじいさんがかぶ
     をひっぱりました」というように、たたみかけていく、漸層的表現をとっている。したがって緊密な強い
     リズムになっている。このリズムに乗りながら読んで、力いっぱい、一生懸命にかぶをひっぱっている様
     子を表象化する。そしてその境めに、「うんとこしょ、どっこいしょ」の掛け声と、「ところがかぶはぬ
     けません」「それでもかぶはぬけません」「まだまだかぶはぬけません」と人数が増し、力が加わってい
     く様子が、「ところが、それでも、まだまだ」ということばとともにはっきりしていく。それにつれて、    147
     かぶの大きさがいよいよ大きく感じられてくる。
   (オ) このようなリズムの緩急にのって読むと、かぶ引きの場面の様子や、かぶの大きさ、力が加わっていく
     状況などの表象が描きやすくなる。
   (カ) はじめの部分はおじいさんひとりで読む。次の部分はおばあさんが加わってふたりで読むというように
     人が加わるごとに読み手を加えていって、終わりの部分に六人で声をそろえて音読する。こうすることに
     よって、いっそう場面の様子をはっきりと想像することができる。

   7 映像を描きながら場面や情景を読む学習技術(映像法)

1 場面と想像実象と視覚表象
 場面や情景は、主として描写によって書き表されている。描写は前に述べたように、客観的・写生的に対象を描き
出す。したがって、表現対象としての場面や情景を想像して、その映像――想像表象を描き出すことは容易である。
 しかも、その描く想像表象は、場面や情景そのものに対するものであるから、現実に目に見えるような映像として
脳裡に描かれる。
 このように場面や情景を、そのままに、目に浮かべながら、目に見えるように描きながら読んでいく。すると、場
面や情景がかもし出す気分や情調までも感じられるようになる。 ところで、そこに描き出される場面や情調は、い
ま、目の前にある現実の場面や情景ではない。いずれも想像の世界として作られた場面、情景である。たとい現実の
場面や情景にしても、それは純粋客観的にとらえたものではなく、筆者が主観的にとらえた、いわゆる見かけの場面
や情景である。
 したがって、描写を手がかりにし、想像によって、未知・未見の世界を、視覚表象として描いていくことが、その
読みになるその場合、その想像のもとになるものが、読み手の持っているさまざまな経験や知識や本を読んだり話を    148
聞いたりして得た他人の想像などである。それにもとづいて、末知・末見の世界を創造するのが映像を描きながらの
読みである。
2 映像を描きながら場面や情景を読む学習技術の指導   
  @ 場面
  まもなく闘牛場の大ききな戸が開かれると、一頭の牛がまっしぐらにかけこみました。そのあとで、ふたたび戸
 は外側でしまりました。闘牛士が赤い布をふると、牛は、まっすぐにとびかかっていきました。ぺピトがすばやく
 身をかわしたので、観衆は、また声をあげました。(ドリトル先生)
  A 映像を描く
   (ア) 闘牛場の大きな戸が聞かれた。     (エ) 闘牛士が赤い布をふると牛がまっすぐにとびかかる。
   (イ) 一頭の年がまっしぐらにかけこむ。   (オ) べピトがすばやく身をかわす。
   (ウ) 戸は外側でしまる。          (カ) 観衆はまた声をあげる。
  B 学習技術
   (ア) 文章を読みながら、映像を描く部分と知的に理解する部分とを区別する。すべての語について、映像を
     描いていたのでは読み進ない。
   (イ) 想像によって映像を描く場合に、それ以前に学習した事項、表象は、すべて新しい映像を描くことに参
     加する。
   (ウ) 「闘牛場の大きな大きな戸が開かれると」の映像は、挿し絵によってすでに記憶されているので、容易
     に描かれる。
   (エ) 一頭の牛がまっしぐらにかけこむ映像。一頭の牛の映像はすでに前からたびたび描いている。そこで、
     土をけってまっしぐらにかけ込む映像を描く。「まっしぐら」意味がわからない場合は、その映像が描け
     ない。そこでまっしぐらの意味を理解させて、まっしぐらにかけ込む牛を想像させ、その映像を描く。     149
   (オ) 闘牛士が赤い布をふるとという映像は闘牛の絵を見たり、説明を読んだり、闘いたりしたことのないも
     のには、それを描くことができない。
      その場合には、赤い布について説明するとか、闘牛士が赤い布を使仕っている絵を見せるとかする。
      闘牛士が年に向かって赤い布を振る。牛がまっすぐにとびかかっていく姿を想像してその映像を描く。
   (カ) ぺピトがすばやく身をかわす映像は、赤い布目がけ、角をかまえておそいかかる牛を、その直前で、す
     ばやく、身をかわす様子を想像して描く。すばやく身をかわすかわし方は、これもその知識のないものに
     は想像できない。何かおそいかかってきた時に自分はどう身をかわすかを考えて、それにもとづいて想像
     する。
 このようにことばに従って、映像を描きながら読んでいくと、場面や情景を如実に読みとることができる。そのた
めには、映像の描き方、視覚表象を描く技術を学習する必要がある。想像による映像の描き方をまとめて、次に述べ
てみる。
 (ア) 経験にもとづいた想像によって映像を描く場合
   スキーですべる、海で泳ぐ、写生をするというような経験の映像を描く場合には、自分が経験した時のことを
  思い出して想像し、その映像を描く。想記表象・記憶表象などというのがそれである。
 (イ) 知識にもとづいた想像によって映像を描く場合
   炭鉱の内部の映像を描く場合、炭鉱内部の写真を見たことがある。炭鉱の内部を書いた文章をよんで、すでに
  炭鉱内部の映像を描いたことがある。それらの知識、映像にもとづいて炭鉱の内部を想像しその映像を描く。
 (ウ) 他人が描いた想像(表象)にもとづいて映像を描く場合
   火星人の襲来の映像を描く場合に、これまでだれかが想像して描いた火星人の映像をもとにし火星人が地球を
  襲う様子を想像してその映像を描く。
 (エ) 経験や知識を総合した想像によって新しい映像を描く場合
  「富士山頂から見下ろした景観」を想像して、その映像を描く場合、その景観を見たことがない。そのような絵    150
  も、写真も見たことがない。そんな時にどのように想像してその映像を描くか考えてみる。高い山に登って見下
  ろした経験はある。富士山の絵や写真は見たことがある。富士山のある所も知っている。地図もわかっている。
   そのような経験や知識をもとにして、富士山頂からの景観を描写した文章を読む。「雲海のこと、山麓の林の
  こと、伊豆半島のこと、沼津あたりのこと」などが書かれている。そこで、前記の経験や知識にもとづいて、表
  現に応じて想像表象――視覚表象・映像を描き出していく。そうすると、雄大な富士山頂からの景観の映像が組
  み立てられる。
   このように既有の経験や知識を動員して想像を働かせ、未知・未見の世界を組み立てるのである。

     四 心理や心情を想像しながら読む学習技術

 心理や心情を表現する場合に二つの方法がとられている。一つは、心理描写・心情描写と言われるもので、心理や
心情を、客観的に写生的に描き出している。他の一つは、心理表現・心情表現と呼ばれる方法で、心理や心情を直接
に書き表さず、会話や行動や事実や事件を通して、その裏にひそめて、実現している。
 いずれにしても、その心理・心情を読みとるためには、表現を手がかりにして、それを直接的にあるいは想像的に
押えるようにする。その方法を次にあげてみる。

   1 感情移入による心理・心情を読み味わう学習技術(感情移入法)

1 表現と想像と感情移入
 消しゴムを穴に落とされて、「しのちゃんはなきだしそうでした。」という表現がある。この「なきだしそうでし
た」ということばから、「しのちゃんのなきだしそうになっている気持ち」を想像する。すると、「大事な消しゴムを穴    151
に落としてしまって、残念、くやしい、惜しいことをした」というような心情表象が描かれる。すると、読み手もそ
のような感情状態になる。泣き出しそうた気持ちになる。このような感情状態になることを感情移入と呼ぶ。
 このように、文章を読んで、その心理・心情を想像して、心理・心情表象を描き、感情状態になりながら作品を読
んでいく方法が感情移入法である。
この感情状態に強く、急激になるのが、いわゆる感動である。
 よく読み味わうとか、読みひたるとかいうのは、上のような読み方をする読みである。

   2 感情移入による心理・心情を読み味わう学習技術の指導

  @ 心情
  庭にひとり残ったアリョーシャは、また大きなしらかばの木に近寄って、あたりを見回した。小道にはだれもい
 ない。アリョーシャは、こぶの一つ一つ、えだの一本一本につかまりながら、登り始めた。下の方の幹はあまり太
 くて、足でかかえこむことができないのだ。
 「ボロージナはいいなあ、足が長くて
 と、アリョーシャは、はらだたしく思った。
 「でも、ぼくは、ボロージナよりも、もっと高く登ってやるぞ
  そして、もっと高く、もっと高くと、だんだん登っていった。木は、下から見て感じられたようには、なめらか
 ではなかつた。手をかける所も、足をかける所もあった。もう少しだ、もうちょっと……。そうすれば、分かれに
 とどくことができるだろう。そうすれば、そこで、ひと休みすることもできる。(大きなしらかば)
  A 感情移入
   (ア) 庭にひとり残ったアリョーシャが、あたりを見回したが、だれもいなかった時の心情を想像する。
   (イ) アリョーシャがしらかばの木に登り始めた時の心情を想像する。
   (ウ) 「ボロージナはいいなあ足が長くて!」と、はらだたしくなった時のアリョーシャの心情を想像する。
   (エ) もっと高く、もつと高くと登っていく時のアリョーシャの心情を想像する。                152
  @ 学習技術
 文章全体を、(ア)〜(エ)の心情を想像しながら読むと、そのときのアリョーシャの心情表象が描かれ、読み手もそ
のような感情状態になる。そしてアリョ−シャの心深くにはいり込むことができる。
   (ア) 「ただひとりしらかばの木に近寄りあたりを見回す。だれもいない。」と読むと、その情景が日に浮か
     ぶ。そのような情景表象が描かれる。すると、そのきのアリョーシャの気持ちが感じられる。「よし、だ
     れも見ているものがいない。今のうちに登ってみよう。ためしてみよう。ぼくにだって登れる。」そんな
     気持ちで、アリョーシャは木に手をかける。
     ボロージナがしらかばに登るのをうらやましそうに見ていアリョーシャ、ボロージナにからかわれて、ふ
     くれっつらして引っこんで見ていたアリリョーシャの気持ちが背景になっていることを想起する。
   (イ) 「アリョーシャは、こぶの一つ一つ、えだの一本一本につかまりながら、登り始めた」と読むと、こぶ
     や枝にし「かりと、用心深くつかまり、たどたどと登っていく姿が目に浮かぶ。(想像による視覚表象が
     描かれる。)すると、そのときのアリョーシャの気持ちが自然に感じらてくる。読み手もそのような気持
     ちにさせられる。「しっかりつかまって。気をつけろ。あぶないぞ。今度はあの枝か。ようし。」と、用
     心深く、慎重に登って、いくアリョ−シャを感じる。
   (ア) 「下の方の幹はあまり太くて、足でかかえ込むことができないのだ」と読むとアリョーシャが登り悩ん
     でいる姿が目に浮かぶ。するとアリョーシャの心には、「手足で幹をだきかかええるようにして登った」
     ボロージナの姿がすぐ思い出され、目に浮かんだに違いないと想像される。すると、「ボロージナはいい
     なあ、足が長くて」とはらだたしく思ったアリョーシャの気持ちが感じられる。「ボロージナは足が長
     いから、すぐ登れたのに。ぼくにはなかなか登れない。」そんなはらだたしい気持ちが感じられてくる。
 このように、それぞれの行動・場面・情景の想像表象が描かれると、その中にいろ人物、あるいは行動主体の心理
・心情表象が描き出され、読み手もそのような感情状態になる。それによって、人物の心理・心情に同化する。ある    153
いはそれに反ばつする。あるいは、それ対して感想や意見や批判をもつ。

   2 想像した心理・心情を補いながら読む学習技術(補い法)

1 文脈と想像と書くこと
 補い法というのは、作品を読みながら想像した、心理・心情を、その場で書き補いながら読み進める方法である。
作品は、前にも述べたように、筋や説明や展開を書いた部分と、場面・情景・心情・心理などを書き表した部分とが、
全体の筋としてつながっている。その筋や説明や展開などについて書いてあるところは、原則としてそのまま意味表
象を描きながら読んで理解すればいい。心理や心情を表現した部分は、想像を加えながら読んで、心に浮かんだこと、
想像されたことを、書き添えていく。
 その場合、何でも勝手気ままに想像したことを書けばいいのではない。作品を読んで、それまでに得た知識や表象
をもとにして、現に読み進めている文章のことばに即して――表現に即して想像する。それは、文脈に即し作品の構
造に即した想像になる。
 よく、何でも自由に想像させればいいというので、文脈から全く離れ、作品から離れてしまうことは、ここではと
らない。ここで目ざす読みは、作品に沈潜し、作品の底深く立ち入った後に、そこから見返す、そこから反照する、
そこから外へ向かっていく読みなのである。
 もちろん、想像したことを内語によって確認しながら読んでいってもいいのであるが、特に書くことによって、そ
の想像が、いっそうはっきりと確かなものになっていくことをねらっている。
 なお、この方法は、文章全体を読んで、直観的にテーマに接近しようとする場合にはとらない“作品を場面ごとに
心理や心情を確かめとらえようとする場合に適用する。
                                                        154
2 想像したことを補い書く学習技術の指導
  @ 作品
  良子は、広場の石にこしかけて、いっしょうけんめいにかき始めました。赤いクレパスで力強く書いていきまし
 た。よく見ると、山の色は、赤は赤でも、木によってちがいます。そして、いくら色を重ねても、やっぱり、山の
 色のほうがきれいなのです。自然というものは、こんなにも美しいものかと、良子は、いまさらのように感じまし
 た。どのくらい時間がたったのでしょうか、せなかがひんやりするのに気づきました。短い秋の日が、もう、くれ
 ようとしていたのです。と、そのときです。「ほう、なかなかいいできばえだね。」という声が、耳の後ろでひび
 きました。びっくりしてふり向くと、そこには、春のあの学生が、にこにとしながら立っていました。「あ、すみ
 ません。このクレパス、だまって使ってしまって。あんまり山がきれいだったので……。」良子は、どぎまぎしな
 がら、やっとこう言いました。学生は、一しゅんあっけにとられたようでしたが、すぐに思い出したのでしょう。
 「あそうか。あのクレパスか。いいよ、いいよ。それ、よかったらきみにあげよう。きみも絵がすきなんだね。し
 っかり勉強するんだよ。……さあ、また、そばを食べていくか。もう、卒業までは、いそがしくて来られないから
 ね。」良子はほっとしました。そして、店の方へかけだしました。(赤いクレパス)
  A 想像する心理・心情
   (ア) いっしょうけんめいに山の絵を描いているときの心情
   (イ) の学生をふりかえって見たときの心情
   (ウ) 良子のことばを聞いたときの学生の心情
   (エ) 学生の話を聞いたときの良子の心情                                  155
  B 学習技術
   (ア) 良子が山の紅葉を写生している場面
     広場の石に腰かけて,燃えるように赤い山を,赤いクレパスで一生懸命かいてい姿が思い浮かぶ。「よく見
    ると、山の色は、赤は赤でも木によってちがいます、(まっ赤な葉もおれば、薄赤の葉もある黄色味み帯び
    たのもある。木によってみんなちがう。ずいぶん複雑な色をしているものだ。なるべく、その木の葉の色を
    出そう。)」「そして、いくら色を重ねても、やっぱり山の色のほうがきれいなのです。あの色の濃い淡い
    感じがかけない。秋の日に輝いている、燃えるように赤い色が出せない。どんなに一生懸命かいても、とて
    もー吾の山の美しきには及ばない。)」「こんなにも美しいものかと、良子はいまさらのように感じました。
    (秋の山のもみじの美しいことは知っていたが、今、目の前の輝くような紅葉を写生していると、改めてそ
    の美しさが感じられました。)」
   (イ) 良子が学生に気がついたときの心情「せなかがひんやりするのに気づきました。(あら、ひんやりして
    きた。いつの間にこんなに涼しくなったのだろう。」、「短い秋の日がもう暮れようとしていていたのです。
    (ああ、もう夕方になったのか。時のたつのも忘れていた。秋は日暮れが早いんだな。)」
    「『ほう、なかなかいいできばえだね。』という声が耳もとでひびきました。(だれもいなかったのに、不
    意にだれだろう。びっくりした。)」「びっくりしてふり向くと、そこには春のあの学生が、にこにこしな
    がら立っていました。(まあ、おどろいた。春からずっとさがしていた学生だ。赤いクレパスを忘れていっ
    たあの学生だ。いつの間にここへ来たのだろう。)」
    「あっ、すみません。このクレパス、だまって使ってしまって。(ごめんなさい。)あんまり山がきれいだ
    ったので、(ついかきたくなって。まっ赤な山の木を見て、赤いクレパスを思い出したのです。そして、悪
    いと思いながら、ことわりようもなかったので、使ってしまったのです。ごめんなさい。)」「良子は、ど    156
    ぎまぎしながら、やっとこう言いましたし(あまり、突然だったので、胸がどきどきして、つい、口ごもっ
    てしまった。)」
    「学生は、一しゅんあっけにとられたようでしたが、(すみません。赤いクレパス。何のことだろう。)」
    「すぐに思い出したのでしょう。(わかった。わかった。忘れていったクレパスのことか。なあんだ。それ
    ならいいんだ。)」「ああ、そうか、あのクレパスか。いいよ、いいよ。それよかったらきみにあげよう。
    ……しっかり勉熱するんだよ。(きみも、なかなかじょうずだから、しっかり勉強すれば、じょうずになる
    よ。遠慮なく使いなさい。だまって使ったからといって、そんな心配なしなくてもいいよ。)さあ、また、
    そばをたべていくか。……来られないからね。』(あのそばおいしかったね。また、君のうちへよってたべ
    ていくか。)」
    「良子はほっとしました。(だまつて使って悪いなあと思っていたのに、おこられるどころか、わたしにあ
    げるだって。その上、しっかり勉強しろって励ましてくれて。ああ、よかった。)そして店の方へかけだし
    ました。(早く家へ行って、おかあさんに知らせよう。さがしていた大学生にあったことをそれから、また、
    そばを食べていくことを。)」
 このように補い書きなしながら読んでいく。終わったら、各自読み合いながらその心理や心情を感じ味わう。こう
してできるだけ人物の心深くはいっていく。そこから、感想が生まれるようにする。

   3 話しかけによる心理・心情を想像しながら読む学習技術(話しかけ法)

1 想像・感情状態・話しかけの態度
 話しかけ法、語りかけ法などと呼ぶ読みの方法技術がある。この方法は、作中の人物に話しかけ、詰りかけて、そ
の心理や心情を感じ取ったり、理解したりしながら読む技術である。
 作中の人物の心理・心情を想像することができる叙述や表現には、次のようなものがある。              157
 (1) 人物の住んでいる所など、その環境の状況を述べている部分
 (2) 人物の行動や生活についてその状況を述べている部分
 (3) 人物が、何かについて話したり、語ったりしている部分
 (4) 人物の性格・性質などについて述べている部分
 (5) 人物の心理や心情について述べている部分
 これらの部分を読むと、人物の置かれている環境・立場・人物・心理・心情などが、表現に即して感じられたり、
理解されたりする。 すると、 おのずからその入物に対する関心・興味・親しさ・なつかしさなどが湧き起こってく
る。人物に対する認識が深まってくると、しだいに第三者的立場から、相即的立場、同一的立場へと変わってくる。
つまり、作中の人物に対する構え、立場などがはっきりしてくる。
 そこで、読み手は、人物に対して、時には第三者的立場で客観的に接近し、時には、人物とつかず離れず寄りそう
ように接し、時には、人物に同化し、一体化して、おのずから話さずには、語らずにはいられなくなる。
 こうして、人物に話しかけ、語りかけながら作品を読み、その心理・心情を奥深く探ろうとする読みが、呼びかけ
法である。
 つまり、この話しかけは、人物と緊密な関係に立ち得た時におのずから発する声であるようにする。
2 話しかけによる、心理・心情を想像しながら読む学習技術の指導
  @ 作品
  その中山から少しはなれた山の中に、「ごんギツネ」というキツネがいました。ごんは、ひとりばっちの子ギツ
 ネで、シダのいっぱいしげった森の中に、あなをほって住んでいました。そして、夜でも、昼でも、あたりの村へ
 出てきて、いたずらばかりしました。畑へはいってイモをほり散らしたり、菜種がらのほしてあるのに火をつけた
 り、ひゃくしょう家のうらてにつるしてあるトンガラシをむしりとっていったり、いろんなことをしました。
  ある秋のことでした。二、三日雨が降り続いたその間、ごんは、外へも出られなくて、あなの中にしゃがんでい    158
 ました。
  雨があがると、ごんは、ほっとして、あなからはい出ました。空はからっと晴れていて、モズの声がきんきんひ
 びいていました。(ごんギツネ)
  A 話しかけの場
   (ア) (環境)ひとりばっちで森の中に住んでいる   (ウ) (生活)外へ出られないで穴の中にばかりい
     ごんへ。                      るごんへ。
   (イ) (性格)いたずらばかりしているごんへ。    (エ) (環境)穴からほい出したごんへ。
  B 学習技術
 この話しかけは、どこでもかまわず話しかけるというものではない。原則的には、人物に対して何らかの意味で、
認識が深まる、理解が深まる、感動を受けるなどのことがあった場合、そのくぎり(まとまり)くぎりで話しかけを
する。
  (ア) ひとりばっちで森の穴の中に住んでいるごんへ。(ごんの生活環境を述べている部分、物語の紹介の部分)
    「その中山から少しはなれた山の中に、……あなをほって住んでいました。(ごんは、さびしい山の中にひ
    とりでいるんだね。おとうさんも、おかあさんも、兄弟もだれもいないんだね。さびしくないか。だれにも
    相手にされないでつまらないだろう。たいくつではないか。毎日、どうやってくらしているのか。)」と話
    しかけて、ごんの心情を想像する。表現に即して。
  (イ) いたずらばかりしているごんへ。(ごんのいたずらな性格を述べている部分。人物の紹介の部分)
    「夜でも、昼でも、あたりの村へ出てきていたずらばかりしました。……トソガラシをむしりとったり、い
    ろんなことをしました。(ごん、やっぱりさびしいんだな。相手がいなくてつまらないんだな。それでいた
    ずらばかりしているのだろう。そのいたずらをする気持ちはわかるけれど、あんまりひどいいたずらをする
    なよ。村の人にきらわれるぞ。いまにひどいめにあうぞ。でも、こんないたずらをするのが、ごんはおもし    159
    ろいんだろう。ごん、きををつけろよ。)」この話しかけの中に、読み手が、ごんの心情をどのようにとら
    えているかが表されている。また、ごんに対する読み手の心情をも見ることができる。
  (ウ) 外へ出られないで、穴の中にいるごんへ。(ごんの穴の中の生活を述べている部分、物語の発端の部分)
    「ある秋のことでした。……あなの中にしゃがんでいました。(ごん、毎日、外へ出られないで、たいくつ
    で困ったろう。いたずらばかりしているごんのことだから、気持ちがむしゃくしゃしたにちがいない。しょ
    んぼり穴の中でしゃがんでいるごんの姿が見えるよ。)」。穴の中のごんの姿から、これまでのごんの生活
    から、ごんの心情を想像して、話しかける。
  (エ) 穴からはい出したごんへ。(雨があがって外へ出たごんの環境を述べた部分)
    「雨があがると、ごんは……モズの声がきんきんひびいていました。(ごん、お天気になってよかったね。
    むしゃくしゃした気持ちも、いっぺんにふっとんでしまって、急にはればれした気持ちになったでしょう。
    大きくせのびをしてから、目をぱちぱちさせながら、空を見たり、モズの声を聞いたりしているごんの姿が
    目に浮かんできたよ。)」。穴の中にいたときのごん、雨上がりのさわやかな秋空の下にはい出したごんを
    比べて想像表象を描いた上で話しかけるようにする。
 このように、人物を取りまく諸状況を明らかにして、想像表象を描き、その心理・心情をよく感じ、理解した上で
話しかけるようにする。

   4 想像した心理・心情を人物に語らせながら読む学習技術(語らせ法)

 語らせ法というのは、作中の人物に、その心理・心情を語らせる方法である。もちろん、人物に語らせるといって
も、それは読み手が、人物のそのおりおりの心理・心情を想像して、その人物に語らせるような形式をとることであ
る。
l 語らせる場と語らせる内容と語らせる方法                                   160
 作品の中には、人物の心理や心情を、直接語らせずに、「先生にいうのは悪いと思いました。」「心の中でふと思
った」「すっかり感心しました」というように説明したり紹介したりすることがある。
 このような場合には、思ったこと、感心したこと、感じたこし」を、具体的に、その人物のことばとして語らせる。
また、「まよっていたわけものみこめた」「珍しい話をしてくれた」「ぼくは一しゅん耳を疑った」というように、
人物が、他から聞いたことや理解したことなどを、抽象的に表現している場合がある。
 このような場合にも、それらを具体的なことばとして人物に語らせる。
 ところで、その語らせることがらは、作中の人物が、感じたり、考えたり、思ったり、あるいは、他から聞いたり
したことなどである。それらが、具体的に書き表されていないので、読み手がその内容を想像して描いた表象を、作
中の人物の心理・心情として、直接に語らせるのである。
 したがって、この場合も、読み手は、それ以前に得た情報や描いた表象、その場面から描かれる想像表象、文脈な
どにもとづいて、人物の心理や心情を想像することになる。
 こうして、思い描いた心理や心情は、人物のことばとして「心の中でふと思った」というような場合には、「『い
つかも、ころんで泣いたことがある。』と、心の中でふと思った」というように、そのおりおりの心理・心情を語ら
せる。
2 作中の人物にその心理・心情を語らせる学習技術の指導
  @ 作品
  そこで、さるは、花火というものは、どんなに大きな音をたててとび出すか、そして、どんなにうつくしく、空
 に広がるか、みんなに話して聞かせました。
 そんなにうつくしいものなら、見たいものだと、みんなが思いました。
 「それなら、こんばん、山のてっぺんに行ってあそこでうちあげてみよう。」
 と、さるがいいました。                                            161
  みんなは、たいへんよろこびました。夜の空に、星をふりまくようにばあっと広がる花火を、目にうかべて、み
 んなはうっとりしました。(赤いろうそく)
  A 語らせること
  (ア) 「さるは……話して聞かせました。」の場面で、さるが話して聞かせたこと。
  (イ) 「……みんなが思いました。」の場面で、みんなが思ったこと。
  (ウ) 「みんなは、たいへんよろこびました。」の場面で、よろこんだこと。
  (エ) 「……みんなはうっとりしました。」の場面で、みんながうっとりしたこと。
  B 学習技術
  (ア) (ア) では、きるが話して聞かせたことが抽象的に書かれている。この話したことを、きるが直接話したこ
    とばに翻訳してみる。そのためには、大きな音、美しく空に広がる花火を想像してその様子を話すようにす
    る。
    「そこで、さるは『花火というものはね、空高く打ち上げられるとね、ドーンととても大きな音を立てて、
    パアッと火の玉が飛び出すんだよ。そして、赤い火の玉や黄色い火の玉やみどりの火の玉が、さあっと空に
    広がって、すうっと落ちてくるんだよ。』と、みんなに話して聞かせました。」
     このさるの話の部分を、文脈に従って自由に想像させて話させる。その場合、打ち上げ花火やその絵を見
    たことのない児童には、線香花火から想像させたり、打ち上げ花火の絵や写真を見せて想像させたりする。
  (イ) (イ) では、(ア)の話を聞いて、みんなが見たいものだと思った、その心情を想像してみんなに語らせる。
    「『花火って、色がきれいなんだね。』『大きな音でびっくりしない?』『赤い火の玉や黄色い火の玉が空
    にばあっと広がるんだね。』『そんなきれいな花火、早く見たいね』などと話して、そんなにうつくしいも
    のなら、見たいものだとみんなが思いました。」
  (ウ) (ウ) は、「それなら、こんばん山のてっぺんでうちあげてみょう。」というさるのことばで、みんながよ    162
    ろこぶ場面である。そこで、たいへん喜んだみんなの心情を語らせる。
    「『花火を見せてくれるの。ああ、うれしい。』『まだ見たことがないんだから早く見たいね。』『ぼくは
    歩くのがのろいから、明るいうちから山へ登っていくよ。』などと、みんなはたいへんよろこびました。」
  (エ) (エ) は、花火の美しさを想像してうっとりとした場面である。ここでは、そのうっとりとしている心情を
    想像して語らせる。
    「『夜の暗い空に、赤や黄色や緑の火の玉が、ぱあっと広がって消えるなんて、どんなにきれいだろう。』
    『まだ、見たことはないけれど、空にばあっと広がる花火は、きっときれいなんだろうねえ。』などと、花
    火を目にうかペて、みんなはうっとりしました。
 このように、作中の人物にその心理や心情を語らせることによって、的確に心理心情を想像しながら読むことがで
きる。
 なお、この場合、児童は、しかや、いのししや、うさぎや、かめや、いたちなどになったつもりで語らせるとおも
しろいであろう。
 以上、心理・心情を想像しながら読む技術を四つあげた。これらの技術は、作品に応じ、表現に従って、適宜組み
合わせて使うほうが有効である。もちろん、一つの技術でずっと通して読む場合もある。


     五 人物の性格・思想を読みとる学習技術

 人物の性格や思想を表現する場合、大きく分けると二つの方法がある。
 一般に、語り型物語では、その初めに、語られる時、語られる所、語られる人物についての紹介が行われる。
 いわゆる紹介語りである。この紹介の部分で、この人物は、どんな名で、どんな暮らしをしているか。どんな性格    163
をもった人物であるか。どんな思想をもった人物であるかなどについて紹介する。
 その次に、「ある日」「ある年」「秋の日のことです」などとあって、物語が始まる。いわゆる発端になる。
 このように紹介のところで、これから語られる人物の性格・思想などを紹介的に書く場合がある。
 他の一つは、物語の展開の過程に示される人物の行為や行動、人物の考え方や感じ方、人物のことばなどによって
表現する場合である。この場合には、この人物はこんな性格だ、こんな思想をもっているというような直接的な表現
がないから、前記の表現にもとづいて、その性格・思想を推定しなければならない。

  1 人物の紹介からその性格や思想を読みとる学習技術

 紹介語りで人物の性格や思想を紹介する場合には、普通、親切だとか、正直だとか、いたずらだとか、すばしこい
とか、直接その性格や思想を紹介する場合が多い。
 その場合、そこで紹介された性格や思想が、物語の展開の中で、具体的に現れる場合がある。また、紹介の中で、
初め性格などを示し、あとでその具作的事実を書いて紹介する場合もある。
 そのほか、紹介の中で、具体的な行動、生活を述べて、そこからその性格・思想を読みとるようになっているのも
ある。
   @ 作品1
  その学校のわたしの組に、太郎というたいへんないたずらっ子がいました。太郎は、がきだいしょうでいばって
 いましたが、都会から来たわたしには、なんとなく親切にしてくれました。
 「ええか、おまえをいじめるやつがいたら、こっそりおれに言え。そしたら、 おれが、 そいつをなかしてやるか
 らな。」そんなことを、言ってくれたりしました。
  太郎は、しのちゃんという女の子とならんでいましたが、ふたりのつくえの下には、ひみつがありました。つく    164
 えの下のゆか板に、ふしあなをけずったあながありました。もちろん、太郎がけずったものです。
  太郎は、ときどき、いりまめなどをポケットにしのばせてきて、こっそり教室で食べました。まめの皮は、その
 あなに落としますし、えんぴつのけずりかすなども、すてていました。
  また、そのあなには、木のわかえだをけずって作った刀が、何本もかくしてありました。休み時間になると、そ
 の刀をふり回して、女の子や、弱い子を追い回すのです。みんなそれを知っていましたが、こわくて、だれも先生
 に言いつけませんでした。
  ある日、……(太郎こおろぎ)
   A 太郎の性格表象
             ┌―いたずらっ子
  太郎はどんな子どもか―├―がきだいしょうでいばる子
             └―なんとなく親切な子
   B 学習技術
  この作品の紹介の部分は、初めに学校の紹介、次に主人公の太郎の紹介になっている。
 太郎は、どんな子どもだろうと、そのイメージを求めて読んでいくと、初めの部分で、(1)いたずらっ子、(2)がき
 だいしょうでいばる子、(3)何となく親切な子というイメージが描かれる。
  ここで、太郎のおおまかな観念的な性格表象が描かれる。次に、その続きを読んでいくと、その太郎の性格が具
 体的に描かれている。何となく親切なところが、転校していった筆者への心使いとして、いたずら好きのところが、
 床の穴をめぐる行状として、がき大将でいぼるところが、刀を振り回して弱い子を追い回す行状として、それぞれ
 描かれている。
  太郎は、いたずらっ子というがどんないたずらをするのだろう。がき大将でいばる子と言うが、どんないばり方
 をするのだろう。何となく親切というが、どのように親切なんだろうというように、初めに描いた太郎の性格表象    165
 にもとづいて、その行動・行状を追っていくと、太郎の性格表象が、明確に描き出される。
   C 作品2
  むかし、ある山の中に、「ごんぎつね」というきつねがいました。ごんはひとりばっちの子ぎつねで、しだのい
 っぱいしげった森の中に、あなをほってすんでいました。そして、夜でも、昼でも、あたりの村へ出て来て、いた
 ずらばかりしました。畑へはいっていもをほり散らしたり、ひゃくしょう家のうら手につるしてあるとんがらしを
 むしり取って行ったり、いろんなことをしました。
 (ある秋のことでした。)(ごんぎつね)
   D 作品3
  いなかのまちのちいさなきかんこに、やえもんというなのきかんしゃがおりました。
  きかんしゃのやえもんは、ながいながいあいだ、はたらいたので、たいへんとしをとって、くたびれていました。
  「おれだってシャー、わかいころにはシャー、たくさんの人をのせてシャー、すごいスピードでシャー、おおき
  なとかいから、とかいへシャー、はしったものだがシャー。」
  と、やえもんはいばってみせますが、だれもあいてにしてくれません。だから、やえもんきかんしゃは、いつも
   このごろ、きげんがわるくおこってばかりおりました。
   きいてごらんなさい。ほら、やえもんは、えきにとまっているときでも、こんなふうにおこっていますよ。
  「プッスソ、プッスソ、プッスソ、プッスソ……」
  (さて、きょうもやえもんは……)(きかんしややえもん)
  E 学習技術
  これらの作品は,いずれもその紹介の部分である。2では、主人公ごんぎつねの,3では、主人公やえもんの性格
 がそれぞれ紹介されている。                                          166
 2を読むと、ひとりばっちで穴の中で暮らしていて、いたずらばかりするごんぎつねの性格や心情のイメージが描
かれる。いわゆるごんぎつねの人物表象が描かれる。
 3を読むと、年をとってくたびれている、きげんが悪く怒ってばかりいるやえもんのイメージ、いわゆる人物表象
が描かれる。このように、紹介語りの部分で、その作品の中心人物の人物表象が明確に描き出されるようになってい
る。
 その後に展間される物語――事件の過程においては、最初に描いた人物表象が、つねにその行為、行動として、ま
たは挙措動作として、表れにじみ出ている。あるいは、そのことばの中に表されている。
 したがって、紹介の中に描かれている人物のイメージは、明確に読みとっておく必要がある。

  2 人物の行為・行動・ことばなどから、その思想・性格を読みとる学習技術

 これは、物語などの展開の過程における人物の行為・行動や独白・会話などから、その人物の思想や性格を、想像
しながら読みとる技術である。
 この場合は、物語が展開するに従って、人物の物の考え方やその性格が、しだいに明らかになってくる。その点が、
紹介語りで、人物の思想や性格が詳しく紹介されるのと違っている点である。紹介の場合は、紹介されている人物の
思想や性格が、どのように事件の中に表されているか、――ことばや行為・行動として描かれているかが、興味の中
心になる。ところが、この場合は、どんな人物だろうという興味や関心にもとづいて、しだいにその思想・性格が明
らかになっていき、おしまいに、その人物表象が明確に描き出されるというところに、特色がある。
  @作品l
  話が決まったので、ねぎそべとだだはちはもちをかつぎ、あかざばんばがさきに立って、いよいよ、ちょうふく
 山へ登ることになった。
  ねぎそべとだだはちは、ああ、これでおらたちもおしまいだ、やまんばに食われてしまうだべ、と思ったが、な    167
 にしろいつもいばっているもんで、
 「そんなら、行ってくっからな。」
 と、平気なふうをして出かけたと。
  しばらく登ると、星の下にみんなの村が小さく見えて、心細くなってきた。それでも、まずまずがまんして登っ
 ていくと、急に、ゴーッと、気味の悪い風が吹いてきた。だだはちとねぎそべは、へたへたと力もぬけて、
 「おら、もう……。」
 「だめだあ。」と、あかざばんばにしがみついたと。(やまんばのにしき)
  A 学習技術
 ねぎそべとだだはちの思ったことばや行動からその性格を読みとる。
 ふたりはどんな人間であるかがわかる所に線を引く。それらを総合して、ふたりの性格を想定する。
 @ ああ、これでおらたちもおしまいだ。やまんばに食われてしまうだべ。
     ×
 A いつもいばっているもんで
   「そんなら、行ってくっからな。」と平気なふうをして出かけた。
     ×
 B 足の下にみんなの村が小さく見えて心細くなってきた。
     ×
  
 C 気味の悪い風がふいてきた。
   へたへたと力もぬけて、
   「おら、もう……。」                                           168
   「だめだあ。」
   と、あかざばんばにしがみついた。
 この @〜Cを通して、 ふたりはどんな性格の人物かを想定する。人の前ではいばっている。強がっている。しか
し、実際は、気が弱く意気地なしである。
それを、ふたりのことばや行動を押えて確認する。
  B 作品2
  巳之助は、こうして村の人々のせわで生きていくことは、ほんとうを言えば、いやであった。どうかして身を立
 てたい。身を立てるよいきっかけはないものかと、ひそかに待っていた。
   ×
  巳之助は、賃金の十五銭をもらうと、人力車とも別れて、めずらしい商店をのぞき、美しく明るいランプに見と
 れて町をさまよっていた。(中略)
 「ああいうものを売ってくれや。」
 と、巳之助はランプを指さして言った。
   ×
  巳之助の胸の中にも、もう一つのランプがともっていた。文明開化におくれた、自分の暗い村に、このすばらし
 い文明の利器を売りこんで、村人たちの生活を明るくしてやろうという希望のランプが――。
   ×
  「ランプでものはよく見えるようになったが、字が読めないでは、まだ、ほんとうの文明開化じゃないぞ。」と、
 巳之助は考えた。それから、毎晩、区長さんの所へ字を教えてもらいに行った。熱心だったので一年もすると、巳
 之助は、小学校を卒業した村人のだれにも負けないくらい読めるようになった。
   ×
 「ちぇっ。」と、巳之助は舌打ちして言った。「マッチを持って来りやよかつたらこんな火打ちみたいな古くさいも    169
 のは、いざという時、間に合わない。」――そう言ってしまって、巳之助は、ふと自分のことばを聞きとがめた。
 「古くさいものは、いざという時、間に合わない。古くさいものは間に合わない。」
 ちょうど、月が出て、空が明るくなるように、巳之助の頭が、このことばをきっかけにして、明るく晴れてきた。
   ×
  やがて、巳之助は、かがんで、足もとから石ころを一つ拾った。そして、いちばん大きくともっているランプに
 ねらいを定めて、力いっぱい投げた。パリーンと音がして、大きい火が一つ消えた。
 「おまえたちの時世は過ぎた。世の中は進んだ。」
 と、巳之助は言った。そして、また一つの石ころを拾った。二番めに大きかったランプが、パリーンと鳴って消え
 た。
 「世の中は進んだ。電気の時世になった。」
 三番めのランプを割った時、巳之助は、なぜかなみだがうかんできて、もう、ランプにねらいを定めることはでき
 なくなった。
  こうして、巳之助は今までの商売をやめた。それから町に出て、新しい商売を始めた。本屋になったのである。
(おじいさんのラソプ)
  C 学習技術
 主人公巳之助は、独立・進取の気象に富んでいる。次々と起こる事件を、古い物を勇気を振って否定しては、新し
いものを求めて進むことによって解決していく。それぞれの事件の過程に、巳之助の性格が次々と一貫して描かれて
いく。
 まず、巳之助の性格を初めに想定する。@どうかして身を立てたい。A身を立てるよいきっかけはないものかとひ
そかに持っていた。そのような巳之助が、どのような機会を、どのようにとらえ、それをどのように処理して行った
か。そのとき巳之助の持ちまえの性格はどのように働いたかを読みとっていく。                    170
 その場合、前にあげてあるような巳之助のことば、行為・行動を押えて、そこから想定する。

     六 気分・情調を読み味わう学習技術

  1 場面・情景・心理・心情と気分・情調

 「春の日」ということばを読むと、そのことばの意味以外に、そのことばからかもし出される「何となく暖かい感
じ」、「何となくのどかな感じ」が呼び起こされる。そのことばがかもし出す、このようなムード、気分を「語感」と
呼ぶ。語感は、ことばにまつわりついている気分・情調である。(語感は、その語の意味にまつわりつく気分・情調
のほかに、ことばの調子、ことばの使い方、ことばの正否などにまつわる気分・情調としても、かもし出される。し
たがって、ことばの選択、使い方、文法的正否などを判断する場合などの基準になる。)
 「ほんとうに小さな学校で、ろう下と教室の間には、紙しょうじがはいっていました。運動場は、道を広くしただ
 けのところで、体操をしていると、ときどき年がモーと鳴きながら、車を引いて通りました。」
 この文章を読むと、山間のいかにも粗末な小さな学校の感じが漂い、のどかな気分があふれているのを感じる。こ
のような感じがこの場面・情景の気分・情調である。
 この気分や情調は、場面や情景に対して感じられるだけではない。
 「シャ、シャ、しゃくだ、しゃくだ。」という文を読むと、いかにもぷんぷん怒っている感じ、気分が漂っている
のを感じる。このように、ある心情・感情に対してもまた、気分や情調が感じられるものである。
 要するに、ある場面・情景・心理・心情などにまつわりついている、全体的なある感じ(感覚的・感性的な知覚に
まつわりつく一般的・全体的な感じ)を気分・情調と呼んでいる。
                                                        171
  2 気分・情調と想像表象

 このような気分・情調はどのようにして感じられるものであろうか。
 前にあげた文章について考察してみよう。まず、この文章を読んで、学校の様子を知的に理解しただけでは、その
気分・情調を感じない。「ほんとうに小さな学校で、ろう下と教室の間には、紙しょうじがはいっていました。」と
読みながら、その学校の様子を思い描いてみる。つまり、学校の視覚表象を描いてみる。いかにも、小さな、粗末な
学校の姿が目に浮かぶ。それから、「運動場は、道を広くしただけのところで、体操をしていると、ときどき、牛が
モーとなきながら車を引いて通りました。」と読んで、その運動場・体操をしているところ、モーと鳴きながら車を
引いて行く牛の姿などを想像して目に浮かべる。――その場面の視覚表象を描いていく。すると、同時に、いかにも
粗末な小さな学校で体操をしているときの、のどかな感じがかもし出されてくる。そのような気分・情調がひしひし
と感じられる。そして、そのような気分・情調にひたることができる。
 そこで、この過程を整理してみると次のようになる。
 @ 文章を読む。
 A 読みながら、その場面・情景を想像して、その様子を目に浮かべる。――場面や情景を想像して、その視覚表
  象を描く。(心理・心情の場合は、その想像表象を描く)
 B 場面や情景の視覚表象が描かれると、そこにある気分・情調が醸成される。(心理・心情の場合は、その想像
  表象が捕かれると、そのような感情状態になる。)
 このようにして、気分・情調にひたることができる。

  3 気分・情調の類型

 上右のように、@場面にまつわる気分・情調、A情景にまつわる気分・情調、B心理・心情にまつわる気分・情調
の三つに分けられる。                                              172
 また、それらの気分・情調は、前に述べたように感覚的・感性的感情であるから、その内容は多種多様である。
 静かな情調、にぎやかな情調、暖かな情調、寒々とした情調、のどかな情調、あわただしい情調、引きしまった、
緊張した情調、ゆったりした、ゆるやかな情調、明るい情調、暗い情調、楽しそうな情調、さびしそうな情調など、
実にさまざまである。

  4 気分・情調を読み味わう学習技術

1 平和なのどかな情調を読み味わう学習技術の精薄
  @ 作品1
  ある日のことでございます。おしゃか様は、極楽のはす池のふちを、ひとりで、ぶらぶらお歩きになっていらっ
 しゃいました。 池の中にさいているはすの花は、 みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色のずいから
 は、なんともいえないよいにおいが、絶え間なくあたりへあふれております。極楽は、ちょうど朝なのでございま
 しょう。(くもの糸)
  F 気分・情調
  平和で、のどかで、美しい極楽の朝の情調を感じる。
  @ 学習技術
 「極楽の朝はどんな感じがするか、その様子を思い浮かべながら(目に浮かべながら)読んでみょう。」
   ア 極楽の蓮池を目に浮かべ、そのふちをぶらぶら歩いているお釈迦様の様子を目に浮かべる。ぶらぶらとい
    うことばで、歩いている様子を想像する。
   イ 池の中にたくさん咲いている(みんなということばで、それを想像する)白い蓮の花を日に浮かべる。そ
    の花の黄色いずいからは、何ともいえないよいにおいがあたりにただよっている。
   ウ そのような場面全体を日に浮かべる。目に浮かべながら、そのいかにも、平和なのどかな、美しい場面を    173
    感じる。その感じをみんなで話す。あるいは、書く。のどかな、平和な中に朝のすがすがしさが感じられれ
    ばさらによい。
2 無気味な情調を読み味わう学習技術の指導
  @ 作品2
  こちらは、 地獄の底の血の池で、 ほかの罪人といっしょに、ういたりしずんだりしていたカンダタでございま
 す。なにしろ、どちらを見てもまっ暗で、たまにその暗やみからぼんやりうき上がっているものがあると思います
 と、それは、おそろしい針の山の針が光るのでございますから、その心細さといったらございません。そのうえ、
 あたりは墓の中のようにしんと静まりかえって、たまに聞こえるものといっては、ただ、罪人がつくかすかなため
 いきばかりでございます。 これは、 ここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな地獄の責め苦につかれ果て
 て、泣き声を出す力さえなくなっているのでございましょう。ですから、さすがの大どろばうのカンダタも、やは
 り血の池の血にむせびながら、まるで死にかかったかわずのように、ただもがいてばかりおりました。(くもの糸)
  F 気分・情調
 ぞっとするような無気味な情調をひしひしと感じる。
  B 学習技術
 「地獄の氏の血の池はどんな感じがするか、様子を目に浮かべながら読んでみましょう。」
   ア 地獄の底の様子を目に浮かべながら読んで、感じたことを話し合う。
   イ 無気味に感じられたことをあげて、それについての様子を目に浮かべる。
    ○まっ暗やみにぼんやりうき上がっているおそろしい針の山の針の光――暗やみと光の対照
    ○しんと静まりかえったなかにたまに聞こえる罪人のかすかなため息――静まりとため息の対照
    〇地獄の人たちは、血の池でういたりしずんだりしている。地獄の責め苦につかれ果てて声を出す力さえな
     い。血にむせびながら、死にかかったかわずのようにもがいている。                    174
   ウ 朗読する。
3 しみじみとした情調を読み味わう学習技術の指導
  @ 作品3
  まだ、残りの暑さがきびしかった。 日のしずむのを待って、 用光は、二、三人の旅人とともに、屋形の外に出
 た。海をわたってくる夕凪が、はだに快い。行くてに連なる山々の上のほうは、赤い入り日を浴びてまぶしいほど
 だが、それもしだいに下のほうからかき消されていく。その連山の一つは、どこかしら、ふるさとのわが家の庭か
 ら見える山に似ていた。
  用光は、海上に目を移した。きざ波の上を、うすむらさき色の夕もやが流れている。夕もやの果てに、時おり、
 妻子の顔が浮かぶ。(船上の一曲)
  @ 気分・情調
 夕ぐれの船上に、故郷の山を思い、妻子を思うしみじみとした情感を味わう。
  A 学習技術
 「あたりの様子を目に浮かべ、用光の気持ちを想像しながら読んでみよう。どんな感じがするか。」
   ア 文章を読んで、どう感じたかを話し合う。
   イ 船上から眺められるあたりの様子を思い浮かべ、その中で、故郷を思い、妻子を思う用光の心を想像しな
    がら読む。
    ○海を渡る夕凪、ゆく手に連なる山々は赤い入り日を浴びてまぶしいが、それが下の方からかき消されてい
     く。それをじっと見ると、家の庭から見る山にどこかしら似ている。
    〇海上には夕もやが流れ、その果てに、時おり、妻子の顔がうかぶ。
    ○夕ぐれの静かな気分と、その中で、はるかにふるさとの山を思い、妻子を思う用光のしっとりした心とが
     とけ合って、しみじみとした情感を感じる。                               175
   ウ 朗読をする。絵に書き表してもいい。
4 余韻・余情を読み味わう学習技術の指導
  @ 作品4
  やがて、海賊の首領が、頭を上げた。ひげづらが、なみだでぬれている。首領は厳然として命令した。
 「みなの者、船を引きもどせ。」
 海賊船は、夕やみに消えていった。(船上の一曲)
  作品 5
  兵十は、火なわじゅうをバタリと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。(ごん
 ぎつね)
  作品 6
  しかし,極楽のはす池のはすは,少しもそんなことにはとんじゃくいたしません。その玉のような白い花は、おし
 ゃか様のおみ足のまわりに,ゆらゆらうてなを動かして,そのまん中にある金色のずいからは、なんともいえないよ
 いにおいが,絶え間なくあたりへあふれております。極楽も,もう昼に近くなったのでございましょう。(くもの糸)
  A 余韻・余情
 余韻・余情は、表現すべくして、表現しなかったものによって引き起こされる気分・情調である。つまり、表現し
尽くさないものへの想像的反応として感じられる気分・情調である。読み手の自由に任されているのがいい。
 作品4では、「すべてを夕やみの向こうに押しやって」、首領の感動をつつんでしまって、それを余情として感じ
させている。
 作品5では、火なわじゅうを落とした兵十については何ごとも語らず、その銃口から出る青い煙に、その余韻・余
情を語らせている。
  作品6は、この前に、それ相応のばつを受けたカンダタの無慈悲な心をあさましく思われたおしゃか様の様子が    176
 述べられている。「しかし、極楽の白いはすの花は、何ともいえないよいにおいをただよわせている。極楽ももう
 昼に近くなったのであろう。」と、余韻・余情を漂わせている。
  B 学習技術
   ア そこまでに展開された事実を押える。
   イ その事実はどうなるだろう。どうするだろう。どうなっただろう。今はどんなだろうなどと想像しながら
    読んで、そこに構成される気分・情調を味わう。
   ウ 余韻・余情のかもし出される契機となる表現を押える。「海賊船は、夕やみに消えていった」「音いけむり
    が、つつ口から細く出ていました」「極楽も、もう昼に近くなったのでございましょう」などがそれである。
5 にぎやかな気分・情調を読み味わう学習技術の指導
  @ 作品7
  一そうの船が、世界を航海して、帰りの旅をしていました。おだやかな天気で、船じゅうの人が、みんなかんば
 んに出ていました。大きなさるが一びき、みんなの中でふざけ回って、人々を楽しませていました。そのさるは、
 からだをよじったり、飛びはねたり、顔をこっけいにしかめたりして、みんなをからかいました。みんながよろこ
 んでいるのを知っていたのでしょう。だから、ますます、ふざけ回っていました。(飛びこめ)
  作品 8
  山ではたいへんなさわざになりました。なにしろ、花火などというものは、しかにしても、いのししにしても、
 うさぎにしても、かめにしても、いたちにしても、たぬきにしても、きつねにしても、まだ一ども見たことがあり
 ません。その花火をさるがひろってきたというのです。
 「ほう、すばらしい。」
 「これはすてきだ。」
  しかや、いのししや、うさぎや、かめや、いたちや、たぬきや、きつねが、おしあいへしあいして、赤いろうそ    177
 くをのぞきました。すると、さるが、
 「あぶない、あぶない。そんなにちかよってはいけない。ばくはつするから。」
 といいました。みんなはおどろいて、しりごみしました。(赤いろうそく)
  A 気分・情調
 作品7の、のどかで明るく、楽しそうなにぎやかな情調を読み味わう。
 作品8の、ものめずらしさに、花火をめぐって、おしあいへしあいしてさわいでいる情調、さるにおどかされて、
しりごみをするその情調を読み味わう。
  B 学習技術
 「その様子を日に浮かべながら読んでみよう。どんな感じが伝わってくるか。」
 「その感じがよくひびいてくることばや文に線を引きながら読んでみよう。」
  作品7
 帰りの船旅、おだやかな天気、船じゅうの人がみんなかんばんに出ている様子、場面表象をえがく。いかにものど
かな気分を感じる。さるが、ふざけまわって、――からだをよじったり、飛びはねたり、顔をこっけいにしかめたり
している。それをみんなが、のんびりと、笑ったり、はやしたりしよろこびさわいでいる。そんな場面表象を描かせ
る。そうして、いかにものどかな、にぎやかな情調を感じる。
   ア 場面の様子を目に浮かべながら読む。
   イ どんな感じがしたか発表し合う。
   ウ のどかな感じ、にぎやかな感じを受けたことばや文や想像したことがらを発表し合って押える。
   エ 朗読をする。
  作品8
 「たいへんなさわざになったというが、どんなさわざになったのだろう。」「なにしろ、いのししも、うさぎも……   178
まだ一ども見たことがない。それをさるがひろってきた」、そんな気持ちを想像する。そしてそのものめずらしさを、
けものたちに代わってつぶやいてみる。けものたちが日々に珍しがってしゃべっている様子を想像する。
花火を見る。「ほうすばらしい」「これはすてきだ」、けものたちが日々に、感嘆しながら、おしあいへしあいして
いる様子を想像する。その場面の視覚表象を描かせる。花火を囲んで、わいわいさわいでいる情調が感じられる。
 あぶない、あぶないというさるのことばに、はっとわれに返って、驚いてしりごみする。さっと花火から離れるけ
ものたちの様子を想像する。視覚表象を描かせる。こうして、そのものめずらしさにさわいでいるけものたち、さる
におどかされてびっくりしてしりごみをしているそんな情調を感じさせる。
   ア たいへんな様子を想像しながら、目に浮かべながら読む。
   イ 読んで受けた感じを発表し合う。
   ウ ものめずらしさ、さわがしさ、驚きなどの情調を感じたことば、文などを押えて話し合う。
   エ 朗読する。
6 緊張・静寂・弛緩・ユーモアなどの情調を読み味わう学習技術の指導
  @ 作品9
   ア 「しの、下ばかり見て、何してる。」
     しかし、しのちゃんは、自分の消しゴムを取りに行ってくれた太郎を、先生に言うのは悪いと思いまし
    た。そのとき、ゆかの下で太郎に追われたこおろぎが一びき、あなからとび出してきました。
     「こおろぎが、鳴いているんです。」
    と、しのちゃんは、とっさにそんなことを言ってしまいました。
   イ 「何、こおろぎ。なんて鳴いている。先生に教えておくれ。さあー。」
     先生はそう言って、しのちゃんにこおろぎの鳴きまねをさせました。
   ウ 「リ、リー。」                                            179
     と、しのちゃんは言いかけましたが、みんなが、どっとわらったので、目になみだをためて下を向いてし
    まいました。
   エ ところが、そのとき、ゆかの下から、しのちゃんのあとをうけて、
    「リリ、リリ、リリー。」
    と、声がしてきたのです。先生も子どももたちも、びっくりして耳をすませました。やがてくすくすとわら
    いだしました。だれかが、
    「太郎こおろぎだっ。」と言いました。
    今度は先生もふき出してしまいました。(太郎こおろぎ)
  A 気分・情調
 作品9では、ア〜エの場面ごとに、そこにかもし出される情調が異なっている。
 アの場面ではしのの「とまどいの情調」を感じる。
 イの場面では、「緊張の情調」「しーんとした情調」を感じる。
 ウの場面では、「緊張がとけてほっとした情調」を感じる。
 エの場面では、「驚き――笑い――ユーモアの情調の変化」を感じる。
 このように、「とまどい――緊張――静寂――弛緩――驚き――ユーモア」というように、事件の展開にともなっ
て、情調が変化していく。この変化を読み味わう。
  B 学習技術
 「それぞれの場面の様子を思い浮かべながら読んで、その場面ごとに感じの違いを味わってみよう。」
   ア 全体を読んで、それぞれの場面の情調を話し合う。
   イ 場面と情調を対比して書き出していく。
    ○情調をかもし出すことばに線を引く。                                  180
 先 生……「しの、下ばかり見て、付してる。」
 し の……太郎を先生に言うのは悪い
      「こおろぎが鳴いているんです。
       とっさにそんなことを言ってしまった……とまどいの情調
 先 生……「何、こおろぎ。なんて鳴いている。先生に教えておくれ。さあー。」
 し の……せっぱっまった気持ち教室−しいーんとなる……緊張した情調
 し の……「リ、リ―――」と、言いかける
 みんな……どっとわらった
 し の……目になみだ――下を向く
     ……緊張がほぐれ、ほっとした情調
 太 郎……「リリ、リリ、リリー。」
 先生・子ども……びっくり――ふけをすますやがて――くすくす笑う。……驚き、ユーモアの情調
 だれか……「太郎こおろぎだっ。」
      先生もふき出す……ユーモアの情調
   ウ 朗読する。
                                                        181

  W 総合的読解学習技術の開発


     一 感動を組織し深化する学習技術

 読解にしろ、読書にしろ、文学作品を読む場合には、随所で、共感共鳴、感動しながら読み進めていき、読み終わ
った段階で、最も強かった感動が、強く、長く、記憶されるものである。この最も強く、感動するところが、普通作
品のクライマックスであり、主題が具体化されているところである。
 このように作品の各場面から受ける感動を、作品の主題の展開に即して組み立てていく技術が、感動を組織し深化
する技術である。

  1 感動を組織し深化する技術

 この技術は次のように使われる。その一般的な型をあげてみる。
 @ 作品全体を読みながら、感動した部分に線を引く。または、「  」をつける。
 A 傍線をつけた部分、あるいは、その初めの部分と終わりの部分をカードに書く。そのときに、カードに、その
  部分のページと、受けた感動を書き添える。たとえば「17『……』(かわいい)」というように書く。
 B 作品全体の流れ(事件の展開)を、初めから終わりまで一本の線で表す。その線を、「紹介、先端、タライマッ
  クス、終末、後日談」あるいは、「大きな場面」「物語一・二・三」などに区分する。               182
 C 区分した中に(場面の中に)そこで受けた感動を書いたカードをはる。
このようにすると、作品の流れに沿って、受けた感動が組織される。また、教師の側から見れば、一目で、各児童が
どのように作品を読んだかがはっきりわかる。
 この感動の表は、学習のあとで、感想などを書き込むと、そのまま読解・読書の記録になる。なお、それらの感動
のうち、最も強いものに○印をつけさせると、それがクライマックスに集まる。やがて、クライマックスを読みとる
技術の学習へと発展する。

  2 感動を組織し深化する技術の指導

 次に、三年生が「手ぶくろを買いに(新美南吉)」を学習した折の例を示す。
 「手ぶくろを買いに」を読んで感動したことを組織する指導
 @ 「手ぶくろを買いに」の題名を読んで話し合い、次のことを明らかにして板書する。
  ア 親子のきつねが手ぶくろを買いに行くこと。
  イ 手ぶくろを売る店へ買いに行くこと。
 A 「親子のきつね」の似顔を板書し、そこから一本の線を引き、途中に「手ぶくろを売る店」の略画を書き、手
  ぶくろを買って掃ってくるまでを線で示す。
   児童は、一枚のざら紙に鉛筆で、板書と同じ線を引き絵を書く。なお、店の位置を右の方へ寄せてかいておく。
 B 板書した図をたどりながら次のことについて話して板書する。
  ア 親子のきつねはどんなくらしをしていたのだろう。
  イ なぜ手ぶくろを買いにいくようになったのだろう。
  ウ 無事に買いに行けただろうか、途中になにごとも起こらなかったろうか。                   183
  エ 手ぶくろを売る店がうまく見つかっただろうか。
  オ 手ぶくろはうまく買えただろうか。
  カ 手ぶくろを買うときや買ったあとどんな気持ちだったろうか。
などについて想像させながら次のように板書する。
          ┌―親ぎつね
   親子のきつね―┤
          └―子ぎつね
   oどんなくらし―――――――┐
   oなぜ買いに        |
   oとちゅうのようす     |――ようすを目にうかべながら気持ちを考えながら読む
   o店のようす        |
   o買ったときの気持ち    |
   o帰るときの気持ちやようす―┘
 C 読み方を話し合ったあと、そのように読んでいくと、きっと「かわいいなあ」「ああおどろいた」「心配だな
  あ」「ああよかった」「きれいだなあ」などと心にひびくところがある。そこのところに「 」をつけながら読ん

 でいく。読み終わったら、「 」をつけた中でも特に強く心にひびいた
 ところには○印をつけることを話し合いながら、上のように板書する。
D 児童は黙読しながら感動したところに「 」をつけていく。読み終わ
 ったら、ふりかえってみて、一ばん感動の強かったところに○印をつけ
る。
E 読み終わったら、かわいいと思ったところ、心配だなあと思ったとこ
 ろなどがあったかどうかを考えさせてから、板書した図を見させ、店の
  あるところはこれでいいかどうかをたずねる。児童は、店が近すぎるから、もっと遠く黒板の左の方に移せとい    184
  う。そこで、板書の店の位置を左の方に移す。児童も書き直す。これによって、児童が作品を読んで、その全体
  の組み立てを押えていることを知る。
 F 次に作品を読んだ順に、話し合いながら「あそんでいるところ」「手ぶくろを買いにいくとちゅう」「買うとこ
 
 ろとかえるところ」「かえってきたと
  ころ」の四つの場面に分ける。分けな
  がらそれぞれの場面に「 」をつけた
  ところがあるかどうか確かめる。児童
  も自分の書いた図を四つの場面に分け
  る。
 G 児童は、「 」をつけた部分を、次
  のようにカードに書く。「96おかあ
  ちゃんおててがつめたい……さし出し
  ました。(かわいい)」
 H 書いたカードを、左のようにそれぞ
  れの場面のところにはる。
  ここまでで一時間は終わる。児童は、
  読む目的を自覚し、読む方法を具体的
  に
  理解したので(読む技能を自覚して)
  真剣に読み、真剣に考え、真剣になっ
  て作業した。時のたつのを全く忘れて
  いた。

 このようなやり方で、一つの作品を読んでそこから受けるさまざまな感動を組織して、一つの大きな感動をとらえ    185
ることができる。
 第二時には、この感動表をもとにして、それぞれ感動した部分を、表現に即して、朗読したり、説明したり、絵画
化したり、あるいは動作化したりして、それぞれの表現のしかたを学習する。
 なお、この指導の過程は、
 @ 学習の目あてを確立する。
 A 作品の読み方と、感動のとらえ方を考える。
 B 読み方、感動のとらえ方に従って読む。
  ア 黙読する  イ 感動した部分を「 」で囲む
 C 読み終わってから、読みとった事項を確認する。
  ア 作品全体を直観的に押える  イ 作品を大きく場面に分ける  ウ 場面ごとに受けた感動を確認する
 D 感動した部分をカードに書く。
 E 作品の場面ごとに感動を書いたカードを整理してはる。
 F 事件の展開に即して感動を組織する。
 のようになっている。
 なお、この感動表をもとにして修正を加えながら学習を終わったあと、読後の感想を余白に書くと、それがそのま
ま読解記録(読書記録)となる。


     二 クライマックスを読みとる学習技術
                                                        186
 物語は、一般に、紹介、発端、最高潮(クライマックス)、終末(後日談)という構成のパターンをとるのが普通
である。
 紹介は、物語の初めに当たって、時・所・人などについて紹介する部分である。普通、中心人物について、名・性
格・生活などを紹介する。いわゆる紹介語りの部分である。
 発端は、事件の始まり、端緒を物語る部分である。普通、為るとき、ある日、ある年の秋、雪の降る晩でしたなど
のことばで始まる。これから物語は展開する。いろいろな事件が起こったり、状況が生じたりして、だんだん高まっ
ていく。
 クライマックス(最高潮)は、物語の山である。最も緊張したり、感動したり、筋緊張、心緊張を起こす場面であ
る。普通、ここで主題を表す事実が物語られる。
 終末は、事件の結末を語る部分である。ここで、事件はすっかり落着する。いわゆる大団円である。単に事件が結
末を告げるだけでなく、ここで物語の性格――教訓物・縁起物・伝説などや感想・批判などが述べられることも多い。
また、余情を残して終わるものもある。
 後日談は、いわゆる後日物語である。あの時の少年は今はこんなになっているとか、今はどうしているだろうかと
か、その後の事実を述べたり、そのころを追憶したりする部分である。後日談はついていたいものが多い。
 これは物語の一般的な構成のパターンである。このパターンを踏まえながら、クライマックスに感動し、それを感
動の中心として押える技術が、クライマックスを読みとる技術で為る。

  1 クライマックスを読みとる技術

 クライマックスを読みとる技術は、物語の構成のパターンを押えながら、クライマックスに感動する技術である。
クライマックスに感動することによって、それが、作品構成のクライマックスであることを理解する技術である。そ
こで、次の手順によってこの技術は使われる。
 @ 紹介語りの部分を読んで、登場人物――中心人物――の名まえ・性格・生活などを押える。また、展開される    187
  事件の背景――場所とか時とか、社会とか――を押える。
 A 「ある日」「ある年の秋」「雪の降る晩」などによって、ここから話が始まる、事件が起こる、いわゆる発端
  であることを押える。
 B 発端から、話が進み広がり、事件がしだいに展開していく。その道筋をたどりながら場面場面をおさえていく。
 C 展開する場面の中で、最も感動の強かったところを押える。
 D 話の終わり、事件の結末はどうなったかを押える。
 このように、物語の筋・場面をたどって、その展開を理解したり、場面に感動したりしながら読み進めて、特に強
く感動した場面につき当たり、そこから話がまとまっていくことを読みとる。
 この技術を使って物語を読む場合には、次のようにするのも一つの方法である。
 @ 紹介語りを読んで、登場人物やその性格、生活などを表すところに線を引く。あるいはノートに書き出す。一
  枚の紙に物語全体を示す線を引き、その初めの所に、入物・性格・時などを書き出す。
 A 発端を示すことば「ある日」「ある時」「ある年」などに傍線を引く。あるいは、ノート、物語線の下にその
  語を書く。
 B 発端から読み進めて、感動した部分に線を引き、場面のまとまりを押えて、「 」をつける。物語線を場面で
  区切る。そこに「〇〇〇の場面」「〇〇のこと」などと再き添える。
 C 場面にまとめながら読んで、感動の最も強かった場面は、『 』で囲む。物語線の上にも特別なしるしをつけ
  て、それを示す。
 D 物語線の上に、場面の区切り、紹介、発端、クライマックス、結末が見てわかるようにする。
 なお、物語によっては、1、2、3、あるいは、一行あきのところが何か所かあって、物語全体が、いくつかの部
分に区切られているものもある。
 その場合は、1が紹介と発端、2が展開、3がクライマックス、4が結末となっていたり、あるいは、4がなかつ    188
たりするものもある。このような物語では、クライマックスを表す部分を読みとるので、比較的楽に押えることがで
きる。

  2 「はだかの王様」のクライマックスを読みとる技術の指導

 「はだかの王様」は、1が、紹介と発端、2、3が展闘、4がクライマックスという構成になっている。1から4
へと、筋や場面をたどりながら読んで、4がこの作品のクライマックスであることを押える。
 @ 作品を見通して、1、2、3、4の部分からできていることを確認して、次のページのような物語線を引く。
 A 「はだかの王様」の「王様」はどんな人だろうと話し合って、まず、冒頭の三行を読んで(紹介語りを読んで)
  その性格を押えて線の下に次のように書く。
   もう何年も前のこと
   o着物のすきな王様――美しい着物・新しい着物
   o一日じゅう着かえてばかり
 B 「ある日のこと」に傍線を引き、あるいは物語線の下に書かせ、「これからどんな事件が起こり、それがどの
  ように移り変わっていくか、どのようにおさまっていくか、考えながら読んでみよう。途中、読みながら、強く
  心に感じたところ、響いたところには線を引いておこう。」という方法で読む。
 C 読み終わったら、1〜4ごとに、心に強く感じた部分を発表し合って、次のページのようにまとめる。まとめ
  たあとで、1は、「王様がふたりの機おりに、ふしぎなおり物をおらせることにした」ことで、この物語の「起
  こり」「始まり」「発端」である。2は、「王様が、大臣と役人におり物のできぐあいを見させた」こと。3は、
  こんどは「王様が自分でおり物のできぐあいを見に行った」ことで、事件の「移り変わり」「展開」である。4
  は、「織り上がったおり物で作った着物を着て、王様が大行列をした」ことで、この物語の「山」「クライマッ
  クス」であり、同時に「終わり」「終末」「結末」をも表していることなどを押える。               189
 D このように、読み取った感動場面を中心にしてまとめながら、作品全体の仕組を押える。4をまるで囲む。

    はだかの王様
l……何年も前のこと――着物のすきな王様がいた  ある日のことと
|  oふしぎなおり物をおるふたりの槻おりが来た
|  o王様はおり物をおらせることにした
↓  oふたりは機をおるふりなしていた
2……王様は大臣と役人を見にやった
|  o大臣――おり物は見えないがみごとなできとほめた
|  o役人――おり物は見えないがみごととほうこくした
↓       町じゅうおり物のうわさがひろがった
3……王様も
|  o家来をつれて見に行った
↓  o王様も見えないがみごとなできと満足した
4……犬行列の前の夜――ふたりの男は着物をぬうふりをする
|  太行列の日の朝――ふたりの男ははだかの王様に着物を着せるふりをする
|  大行刑が始まる――家来も町の人もみなみごとなおめし物とはめる
|           o「なんにも着ていない。」と小さなチビもがさけぶ
↓           o王様あいかわらず行列を進める
                                                        190

     三 ひとりひとりの感想を組織して深める学習技術

 文学作品を読解鑑賞し、豊かな、深い感想を持つ学習には、二つの方法がある。一つは文学作品をじゅうぶんに読
解鑑賞し、その作品を理解した上で、感想をもつ方法である。
 他の一つは、まず作品を読んで、自由に感動を受けた上で、感想をもつ。その感想を発表し合い、それを組織した
上で、いろいろな感想のあることを知る。次にそれぞれの感想のもとになった感動を再現しながら――その箇所を読
み味わいながら――感想を話し合う。話し合いながら、それぞれの部分について読解・鑑賞する。最後に、各自自由
に全体を読んで改めて感想を話す、あるいは書くという方法である。
 なおここで学習することは、感想自体を取り上げて、その良否・適否を判断し、よりいい感想(感想の内実)を求
めるということではない。あるいは、ある好ましい感想を持つようになるということではない。何についての感想を
持つことが価値があるのか、また、どのような感想の持ち方をすれば、価値のある感想を持つことができるかという
ことについて学習するのである。

  1 感想を深く豊かにもつ学習技術

 感想のもち方は、二つの技術によってささえられている。一つは、作品の主題・主題範囲内の事項について感想を
もつ技術である。よく、感想を書させると、作品の枝葉末節についての感想を述べる児童がいる。作品の発端のこと
や、展開の過程における一小事実などについて感想を述べる児童もいる。これらは、作品の訴えているもの、受けた
強い感動などについての感想を述べることを知らない児童である。
 他の一つは、感想のもち方の技術である。感想の対象に対する見方・考え方、つまり、思考の観点、方法を明確に
して、感想をもつ技術である。                                          191
 前者は、作品を読んで、感動の中心、主題、主題範囲、中心人物、問題などを押え、それに対して感想をもつ技術
である。後者は、読みとった主題・人物・事象・問題などに対して、なぜそうなったか、どうすべきか、もしそうし
なかったらどうなるか、わたしならどうするというように、考える観点・方法を決めて考えてみる。その上で感想を
もつ、技術である。

  2 感想を豊かにもつ学習技術の指導

 前にあげた二つの技術の、一つは、「感想をもつ対象の選び方」であり、他の一つは「感想のもち方」であった。
1 感想をもつ対象の選び方の学習
 この学習には、@作品を読んで、最も強い感動を受けた部分を押える。A作品の主題、訴えていることを押える。
B作品の感動の中心、主題についての感想を短くまとめてカードに書く。C何についての感想か、感想の対象別に、
感想を分類・整理する。D分類・整理した感想のカードを一枚の紙にはる。Eその分類ごとに、何についての感想と
いうように見出しをつける。
 このような学習をすると、@全員の感想が組織される。A感想の対象が分類されていくつかあることがわかる。B
対象の同じ感想でも、感想の内容は、人によってそれぞれ違うことがわかる。C作品の何に対する感想が、作品に対
する感想として価値があるかがわかる。
2 感想のもち方の学習
 ただ感想を話せ、あるいは書けといっても豊かな感想、深いところに根ざした感想は生まれない。そこで、対象に
対する発想・思考の観点・方法――発想法・思考法にもとづいて対象を認知すると、そこに価値のある豊かな感想や
意見が生まれる。
 たとえば、作中の人物に対して、どんな性格の人か、どんな考えをもっている人か、どんな行動をした人かなど、
観点を決めて認知すると、その人物に対する感想が、おのずから生まれる。                      192
 また、ある事件、問題などに対しては、その原因、現状、結末などを押え、なぜだろう、どうしてこうなったのだ
ろう、どうすべきだろうなどと考えていくと、そこにさまざまな感想が浮かぶ。
 あるいは、感激的な行動などに対しては、なぜこうしたのだろう、もしこうしなかったらどうだろう、わたしなら
どうするだろうなどと思いめぐらすところに感想は成り立つ。
 要するに、感想をもつ対象に対する考え方を広げたり、深めたりすることによって感想は豊かにもなり、深くもな
り、価値のあるものにもなるものである。
3 感想を広げ探める学習の指導
 感想を豊かにもつとともに感想を広げ深める技術を学習した実践例を次に掲げる。
 (1) 学年 (第四学年)
 (2) 作品 「月の輪ぐま(椋鳩十)」
 この作品は、次の四部から成り立っている。一は、荒木という案内人と作者は、遠山川の上流で、月の輪ぐまの親
子に出会う。二は、その後ふたりが、子ぐまを見つけ、追いつめて捕えようとする。子ぐまは追いつめられて木に登
り、最後を感づいたか悲しげな鼻声を出している。これを見て怒り狂ったり母ぐまは、子ぐまを助けようとして断崖
から滝つぼめがけてとび込む。水勢に押し流されるようにして岸に着いたが、動かなくなってしまった。ふたりは、
これを見て胸のつぶれる思いがした。三は、やがて、動き始めた母ぐまが、子ぐまを連れて歩き去るのを見て、ふた
りは、生きていた母ぐまに涙の出る思いをする。四は、ふたりは、その後親子ぐまを捜してみたが、二度と婆を見せ
なかったので、丈夫でいるようにと心に祈りながら遠山川を去った。
 (3) 「月の輪ぐま」を読んで感想をもつ学習
◇第一時の学習
 @ 目標
   「月の輪ぐま」を読んで、豊かな感想をもつ学習をすることを確認する。「月の輪ぐま」―「感想」と板書。    193
 A 方法
   どのように読んだらいいかを話し合って、次のように板書する。
┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐
| o読み方――感動の中心を読みとる。                               |
| o感想のもち方                                         |
|  |―どんな考えの人か              |―なぜそうしたか              |
|  |―どんなせいしつの人か            |―もし、そうしなかったらどうなるか     |
|  |―どんな人になったか             |―わたしならこうする            |
| o感想をカードに書く                                      |
└―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┘
 B 読む――各自黙読する
  ア 場面や情景・心理や心情を想像しながら読む。
  イ 読みながら、心に強く響いたところ、感動したところを「 」で囲む。
  ウ 読み終わって、最も感動の強かった部分――感動の中心を押える。
 C 感想をもつ
  ア 感動の強かった部分について、板書してある「感想のもち方」に従って考える。
  イ 感想をまとめる。
 D 感想を短くまとめてカードに書く。
 E 各自の感想をグループごとに組み立てる。
  ア 数人にカードに書いた感想を発表させる。
  イ 発表した感想は、何についての感想か話し合って、母ぐまについての感想、荒木訳、作者についての感
   想、子ぐまについての感想、そのほかというように整理する。                       194
  ウ グループごとに感想カードを集めて、分類整理する。母ぐまに対する感想、作者に対する感想など、それぞ
   れ同じなかまのカードをまとめる。
  エ 分類整理したカードを、なかまごとにまとめて、一枚の紙にはる。なかまごとに見出しをつける。

  オ グループごとに、感想を話す。
   o感想のもとになった感動を受けた部分を紹介し、表現に即して感想を話す。
   oその感想にもとづいて、表現を検討する。
   oその場面や心情などを想像しながら読み、感想のもち方の観点によって話し合う。
  カ グループごとにまとめをする。                                      195
   o人によって感想が違うこと。
   o同じ対象についての感想でも、その内容は人によって違うこと。
   o感想は、物語の主題、主題を表す事実・行動などについてもつのがいいこと。
   o感想のまとめ方  o全員の感想の組み立て方  o感想の話し方  o文章を詳しく読む読み方
◇第二時の学習
 @ 各グループで話し合った感想を、リーダーがまとめて報告する。
  o何についての感想がいくつ。その内容のあらましは、これこれであると発表する。
 A 教師は、報告された感想を聞きながら整理して板書する。
┌――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐
|    月の輪ぐま−全員の感想                                   |
|l 母ぐま 4555245|30人                                 |
| o母ぐまは生きていてよかった。 o母ぐまはたすかってよかった。 o母ぐまは生きていてほしい。 o子|
| ぐまを助けた強い愛情に感心した。 oたきつぼへとびこんで子ぐまを助けたのはりっぱだ。o母ぐまはたき|
| つぼへとびこんで命がけで子ぐまを助けた。 o子ぐまに対する愛情の深さに感心した。         |
|2 作者・荒木君 2121|6人                                  |
| o子ぐまなどつかまえようとしなければよかった。 o親ぐまをにがしてやってよかった。 o親ぐまが助か|
| ったのをよろこんでいるのに感心した。 oはじめ子ぐまを生けどりにしようとしたが、親ぐまに感心してに|
| がしてやったのがいい。                                      |
|3 子ぐま 1121|5人                                     |
| oつかまえられそうになってかわいそうだ。 o計画にかからないでにげてよかった。 oひとりでいたのは|
| ばかだ。                                             |
└――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┘
 B 母ぐまについての感想をまとめて話し合う――その部分の表現を読み味わう。
  o母ぐまの行動について感動した部分を押える。黙読して、その場面や情景を想像する。              196
  o母ぐまはなぜ飛び込んだか。飛び込まなかったらどうだろうかなどについて話し合い、子ぐまの危いのを見て
  いられなかった母ぐまの気持ちを想像する。
  o表現に即して、母ぐまの行動・心情を読みとる。
 C 作者についての感想をまとめて話し合う。――その部分の表現を読み味わう。
  o子ぐまを生けどりにしょうとした、荒木君と作者が、母ぐまの行動に感動して、親子のくまが無事にいてくれ
  るようにと願う気持ちになった変化を押えて話し合ったり、読み味わったりする。
 D 子ぐまについての感想をまとめて話し合う。――子ぐまが追いつめられた部分を読み味わう。
 E 母ぐまが、がけから飛び込んで子ぐまを助けようとする場面(クライマックス)を朗読する。――感動を再現
  する。
 F 母ぐまが、谷川に飛び込んだとき、子ぐまはどうしていたか、その場面を朗読する。――子ぐまに対する感動
  を再現する。
 G そのとき、荒木君と作者はどうしたか、その場面を朗読する。――作者に対する感想を再現する。
 H 全文を黙読して、各自の感想をまとめて文章に書く。
 この学習を通して、児童は次の事項を身につける。
 全員の感想の組み立て方
 感動や表現に即して感想をもつこと。
 物の見方、考え方、感じ方は人によって違うこと。
 いろいろな観点から考えると、豊かな感想がもてること。(感想のもち方)
 感想について話し合うことによって、思いがけないことに気付いたり、心が開かれたり、考えが深くなったりす
 ること。
                                                        197

     四 読みとった内容を構造化して理解を正確にする学習技術

 文章を読んで、直観的にその要旨や概略を読みとる。次に分析的に読んで、内容を詳細に理解する。その上で、全
文を読んで、読みとった内容をまとめる。体制化する。
 この最後の読みは、読みとったことをできるだけ正確に身につける、いわゆる体制化の読みである。そこに読みと
ったことをまとめる技能が働く。この読みとったことをまとめる技能の働かせ方・使い方が、まとめる技術である。
まとめるという場合、内容を要約してまとめるということもあるが、ここでは要約の技術は含まない。ここでまとめ
るというのは構造化する、組織するという意味である。つまり、構造化の技術である。構造化することによって理解
を正確にする技術である。

  1 文章の構造

 文章は、 普通いくつかの段落が、 あるすじみち(論理)に従って組み立てられている。したがって、段落の中に
は、すじみちの展開に、内容的に大事な働きをしているものもあれは、直接内容には関係のない段落もある。書いて
ある内容に読み手の興味を向けるための段落もあれば、問題を提示している段落もある。また、話題を示すにすぎな
い段落もあれば、前の段落とあとの段落とを結ぶ働きだけの段落もある。あるいは、話題を設定するために、何かの
事実・事例をあげている段落もある。
 いずれにしても、基本的には、文章を展開するすじみち(論理)がはっきりと底にあるのが普通である。情報のよ
うに、情報の話題(情報中心・情報意図・情報要旨・情報概略)、情報の詳細、情報のまとめというような構造過程を
もっているものもある。また、要素型の文章のように、各段落が、文章の内容の要素、部分を表していて、並列され
ているものもある。あるいは、条件型の文章のように前の段落があとの段落の展開の条件になって、次々にくさりの    198
ようにつながって展開している文章もある。
 文章は、このすじみちに沿って内容(知識や情報など)が組織されている。したがって、ほんとうに文章の内容を
理解するには、このすじみちをはっきりと押えて、そこに内容を位置づける必要がある。

  2 構造化の技術

 構造化の技術は、構造的思考の技術である。文章を細部にわたって理解した後、文章全体を読んで、文章を貫いて
いる要旨のすじみち(論理)を押える。このすじみちは、構造化の中心になるものであるから、これが押えられない
と構造化できない。
 次に、押えた要旨のすじみちに従って、組み立てることがら(読みとった内容)を、選択する。話題の段落、事例
の段落、問題提示の段落、段落と段落をつなぐ段落など、直接すじみちの展開に必要のない段落の内容は捨てる。こ
の選択は、全文を読んで要旨展開のすじみちを押える過程で行われる。取捨選択しながら読むことになる。実際には、
すでに各段落の要点の読みとりが行われているから取捨選択は容易である。
 次に、すじみちの各過程を示す見出しを作り、そこに必要なことがらを集めて組み立てる。つまり、見出しのもと
に、各段落の要点を箇条書きにする。
 この構造化は、前に述べた表解の技術を使うと容易であり便利である。その方法は、その項に述べてあるので参照
されたい。

  3 構造化の実際

1 教材の構造過程
 ◇教材「とる漁業から育てる漁業へ」
 この文章は、五つの大段落によって組み立てられている。これらの大段落は、それぞれ二〜五の小段落によって構    199
成され、全体で十三の小段落になっている。
 これまでの学習で、各段落の要点を読みとって書き出した結果は、次の通りである。
 @ 日本近海で、魚のとれ高がだんだん少なくなってきた。
 A たとえば、東シナ海でほ、大きなタイが四千トンもとれたのが、今は、小さなタイが五百トンぐらいしかとれ
  ない。原因は、底びきあみによるとりすぎである。
 B そこで、魚の数をへらさない方法をいろいろ考えるようになった。
 C まず、いまある魚を根だやしにしない方法をとり決めた。
 D 一歩進んで、人間の手で、魚がふえるのを助けてやる方法が行われている。それが「つきいそ」である。
 E 使えなくなった船を海底にしずめると、魚がたくさん集まってきたので、あちこちでつきいそを作った。
 F つきいそは、小さい魚のかくれ場所となり、また、プランクトンが集まりやすくなって、食べ物に不自由しな
  い。
 G 近ごろは、コンクリートで作った特別のはこをしずめる方法が行われている。
 H この方法は、たいてい成功して、このつきいそを「魚のアパート」と言っている。
 I さらに進んで、人間の手で魚をふやしていく方法も行われている。
 J 魚をふやすには、卵や幼魚を集め、それを育てて海へ放してやる。
 K 人間の手で魚を育てるやり方をさいばい漁業という。
 L しぜんにふえる魚をとる漁業から、種をまいて、それを育てる漁業になろうとしている。
 上によって、文章全体の構造過程はわかるが、さらに詳しく考えてみる。
 @とAは、まとまって第一大段落となり、@は問題提示、Aはその実例になっている。
 BとCほ、それぞれ問題提示で、Bは総括的な問題Cは、Bに対する問題を提示している。
 DEFGHは、まとまって大段落となり、Dは問題捏示、EとF、GとHは、それぞれ一まとまりになって、問題    200
 に対する実例をあげている。
 IJKは、まとまって大段落となり、Iは問題提示、JとKは、まとまって実例をあげている。
 Lは、全文のまとめとなって、要旨を述べている。
2 構造化の過程
 まず、各段落の要点を押えながら全文を読んで、この文章の要旨展開のすじみち(展開の論理)を押える。押え方
は、間題提示の段落を押え、その要点(問題)を書き出す。
 @ 日本近海で魚のとれ高が少なくなった。
 A そこで、魚の数をへらきない方法をいろいろ考えるようになった。
 B まず、今ある魚を根だやしにしないとり決めをした。
 C 一歩進んで、人間の手で魚がふえるのを助けてやる方法が行われている。
 D さらに進んで、人間の手で魚をふやしていく方法も行われている。
 E 魚をとる漁業から、魚を育てる漁業になろうとしている。
これが、この文章の要旨展開のすじみち(論理)である。このすじみちを運んでいるのは、「そこで」「まず」「一
歩進んで」「さらに進んで」の
ことばである。これらが、要旨
の 「とる漁業から 育てる漁業
へ」の「……から……へ」の展
開を裏付けている。この論理が
押えられたら、左のように整理
する。
 このように整理すると、要旨    201
展開のすじみちが明確になると
ともに、段落相互の関係もいっ
そうはっきりする。これで、構
造化の骨折みができた。
 次には、このすじみちに従っ
て、AEFGHJKの各段落の

要点を書き込むと、文章全体が構造化される。ただし、親み立てる必要のない段落の内容は(文章のすじみちに照ら
し合わせてみて)捨てる。つまり、構造の要素となるものと、ならないものとを選び分ける作業をする。たとえば、
Aは、@の問題を証明する実例を示したものであるから、この文章の要旨の展開には関係がない。とる漁業から育て
る漁業への転換を裏付ける内容ではない。したがって捨てる。Fは、つきいそに魚が集る理由を述べているものであ
り、Hは、コンクリート箱のつきいその別名について述べているものであるから、両方とも削除する。Kは、育てる
漁業の別名を述べているものであるからこれも削除する。
 すると、EGJの要点だけを書き込めば、それで、この文章の内容を構造化することができる。
 最後に、次のように整理する。
  「とる漁業から育てる漁業へ」
@ 日本近海で魚のとれ高が少なくなった。

A そこで、「魚の数をへらさないためのいろいろな方法」
|→B まず、「今ある魚を根だやしにしないとり決め」
|→C 一歩進んで、「人間の手で魚がふえるのを助けてやる方法」――つきいそ
| ↓
| D「船を海底にしずめてつきいそを作る方法」                                 202
| ↓
| E「コソクリートで作った特別のはこをしずめてつきいそを作る方法」
|→F さらに進んで、「人間の手で魚をふやしていく方法」――さいばい漁業
| ├―G 卵や幼魚を育てて海に放してやる方法

H 魚をとる漁業から、魚を育てる漁業になろうとしている。
┌――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐ これで、完全に
|  日本近海で魚のとれ高が少なくなった                       |構造化されたわけ
|  ↓←―(そこで)                                |であるが、左のよ
|  魚の数をへらさないいろいろな方法を考えた                    |うに表解してもよ
|  |(まず)―――――→↓                            |い。いずれにして
|  |   今ある魚を根だやしにしない方法をとり決めた               |も、この場合の構
|  |(一歩進んで)――→↓                            |造化の中心は、こ
|  |   人間の手で魚がふえるのを助けてやる方法――つきいそ           |の文章の要旨展開
|  |(さらに進んで)―→├船を海底にしずめてつきいそを作る            |のすじみち(論理)
|  |          └コンクリートのはこをしずめてつきいそを作る       |であって、それか
|  |   人間の手で魚をふやしていく方法――さいばい漁業             |ら離れることはな
|  ↓←―(今では)   └卵や幼魚を集めて育てて海へ放してやる方法        |い。
|  魚をとる漁業から魚を育てる漁業になろうとしている                |
└――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┘
                                                        203

     五 読みとった内容を構造変換し創造性を開発する学習技術

 文章を読んで、読みとった内容を、文章のすじみち、要旨展開の論理に従って、再構成、再構造化する技術につい
ては、前に述べた。ここで述べるのは、文章の再構成、再構造化の技術ではなく、読みとった内容を主体的に、読み
手の判断にもとづいて再構造化、再体制化する技術である。この技術は、いわゆる創造性の開発につながっている。

  1 構造変換の技術

 文章を読んで、その要旨、その概略を押える。次に、文章の各部分――段落ごとに詳しく読んで正確に理解する。
その上に立って、その読みとった内容を、文章の論理に従ってでなく、読み手が考えついた、読み手が主体的に発見
した論理に従って、再構造化・再体制化する。この読み手の論理に従って、文章の内容を再体側化する技術が、構造
変換の技術である。いわゆる体制的思考・創造的思考にもとづく技能・技術である。
 読みとった内容を、文章の諭理に従って再構成するのが、構造化の技術であった。この場合は、文章の構造過程と、
読みとった内容を構造化したものとは、基本において――その論理においては同じものである。が、文章の構造過程
よりは、簡明によりわかりよく構造化されたものになっていた。
 ところが、構造変換の場合は、これとは違う。読みとった内容を、文章の論理でなく、読み手が考えつき、発見し
た、読み手の論理にもとづいて、再体制化する。つまり、もとの文章の構造過程とは遣った論理によって再体制化す
る。従って、文章の構造過程を、別の構造過程に変換することになる。
 この新しい論理を発見し、それに従って、内容を体制化するところに、体側的思考・創造的思考が働いて、創造性
が開発されるのである。
1 構造変換の論理の発見(発想の転換)                                      204
文章の構造変換で最もだいじなことは、児童各自が、その能力に応じて、主体的に構造変換の新しい論理(発想)を
考えつき、発見することである。
 この新しい論理(発想)は、文章に即して、その要旨を読みとったり、各段落の要点を読みとったり、段落相互の
関係を考えたりして構造的に学習を進めている間に、心の底におぼろげながら醸成されてくるものである。つまり、
文章の内容が構造的にじゅうぶんに理解されると、そこから考えつき、発見されるものである。
 そこで、内容の学習がじゅうぶんに行われたあと、その内容を「めいめいが、覚えやすく、わかりやすく、まとめ
るには、どのように組み立てたらよいか、その組み立て方を考えながら全文を読んでみょう。」というようにして全
文を読ませる。
 こうして、全文を読むと、めいめいの能力に応じて、直観的に、このようにまとめようという、文章の論理とは違
った論理を思いつくものである(発想の転換)。これは直観である。一般には、実にさまざまな論理を思いつくもの
であるが、もちろん、もとの文章の論理から出られないものもいる。
 この論理の発見は全く主体的な、直観的思考力の働きによるものである。
2 構造変換
 組み立ての論理を発見したら、その論理に従って、内容を組織し、体制化する。実際に内容を組み立ててみると、
うまくいかない場合がある。その場合には、論理の修正をする。児童は試行錯誤によって、さらに新しい論理を発見
する。まず、試みることがだいじである。普通、その論理の中に組み入れられないものが出てくる。その場合には思
い切って捨てるか、論理を修正するか、あるいは、別記とするかして処理する。
 組織する内容の取捨選択は、構造化の場合と同じである。
 構造変換は箇条書きでも、表解でもいい。
                                                        205
  2 構造変換の実践

 次に、東京都渋谷区立大和川小学校の藤間澄江教論が指導した構造変換の究践例を掲げる。

   国語科学習指導案
                                  第五学年一組 指導者 藤間澄江
一 単元「ことばの話を読む」
二 学習目標
  日本の文字の種類やその成り立ちを理解し、国語に対する関心を深めるようにする。
三 学習内容
 態度o積極的に知識を求めようとすること。
 技能o「日本の文字」の要旨を読みとること。
   o段落相互の関係を読みとること。
   o要旨と要点との関係、段落相互の関係を考えて、読みとった内容をわかりやすくまとめること。
   o語句の意味を文脈にそって正しく理解すること。
四 学習資料
 l教材「日本の文字」/2教具OHP(TP)
五 学習計画
 l「日本の文字」の概略を読みとり、学習の計画を立てる。(直観読み)………………………………………一時間
 2 日本の文字の種類や日本で同種類の文字が使われるようになった経過を読みとる。(分析読み)………二時間
 3 表意文字と表音文字の性格について読みとる。(分析読み)…………………………………………………一時間
 4 要旨と要点・段落相互の関係などを考えて、読みとった内容を整理し、わかりやすくまとめる。          206
 (体制読み)…・………………………………‥…‥………………………………………………・………………二時間
 5練習………………………………………………………………………………………………………………………一時間
六 学習指
 導参考教材「日本の文字」の構造過程
 1 さまざまな動物の中で、人間だけがすばらしい文化を築いたのほ、ことばを作り出し、文字を考え出したこと
  が、最も大きな原因である。
 2 ことばをもっても、文字をもたない民族は、文字を使う民族のような高い文化をもつことができない。
 3 日本人は、日本語を書き表すのに、漢字・ひらがな・かたかた・ローマ字の四種類の文字を使う。一つの国語
  を四種類の文字で書き表す国は、ほかにはない。
 4 それでは、日本では、どういう経過で四種類の文字を使うようになったか。
 5 日本では、中国から漢字が伝来して、初めて文字を使うようになった。
 6 漢字は、当初漢文の読み書きに使ったが、円本語を書き表すときにも使うようになった。
 7 日本語を書き表す場合に、その意味を漢字の意味に合わせて使ったが、漢字の音だけを使うこともあった。
 8 漢字の音だけを使った文字を「かな」、漢字を「まな」と言った。
 9 万葉集には漢字のかながたくさん使われたので「万葉がな」とよんだ。
 10 万葉がながもとになって、ひらがなとかたかなが発明された。
 11 ひらがなは、漢字をくずした書き方から作った。
 12 かたかなは、たいてい漢字の一部分を用いて作った。
 13 ひらがな・かたかなの考案はすばらしいものである。
 14 ローマ字は、 エジプトで生まれた文字がもとになってできた文字で、 日木で使われるようになりたのは、漢
  字、かなに比べてずっと後のことである。                                   207
 15 漢字は発音と意味を表すので「表意文字」、ひらがな・かたかな・ローマ字は、発音だけを表して意味をもた
  ないので「表音文字」とよぶ。
(1) 構造変換第l時の指導
1 学習目標と学習方法の確認
 T これまで、日本の文字について詳しく調べました。きょうは、前に立てた計画に従って、これまでにわかった
  ことを自分でまとめてみましょう。どのようにまとめたらよいか話し合ってみましょう。
 (板書)              P 前にやったように、自分に一ほんわかりやすいようにまとめる。
 ┌――――――――――――――――┐P おぼえやすいように表解してまとめる。
 |1 まとめかたを考える     |P 文章の中から、おぼえやすい必要のあることだけを選んでまとめる。
 |2 必要なことをえらぶ     |P どういうまとめ方をしたらいいか、まとめ方を考えてきめる。
 |                |T では、まとめる順序を考えて決めてごらんなさい。(話し合った結
 └――――――――――――――――┘ 果、次のような手順を決める。)
  @ 全文を読んで、直観的に、自分にいちばんわかりいいまとめ方を見つける。
  A そのまとめ方に従って、まとめることがらだけをえらぶ。
  B自分の見つけたまとめ方に従ってまとめる。
2 全文を読んで、直観的にまとめの論理を見つける。(構造変換の論理の発見)
 T まず、どんな考えでまとめたらいいか、漢字・ひらがな・かたかな・ローマ字の関係を考えながら読んでごら
  んなさい。きっといい考えが見つかります。
 P 全文を黙読する。要旨と要点、段落相互の関係を考えながら読む。(これらはすでに詳細に学習している)
 P 各自能力に応じ、これまでの学習の効果に応じたまとめの論理を発見する。
 T どんなまとめをするか、いい考えが見つかりましたか。                            208
 P 日本の文字を表音文字と表意文字に分けてまとめます。
 P 日本の文字の種類と、どうして四種類も使うようになったか、その経過を中心にしてまとめます。
 P 日本の文字の四種類と、成り立ちに分けてまとめます。
 P l日本の文字の種類・経過・成り立ちを表意文字と表音文字に分けてまとめます。
 P 日本の文字の経過と成り立ちという要旨を中心にして、表意文字と表音文字に分け、早く書く方法はないかと
  いう人々の願いと表音文字とを関係づけてまとめます。
 P 文字と文化と、種類と、経過と成り立ちの三つに分けてまとめます。
 (二七名全員が、それぞれ自分でまとめの論理を見出している。)
3 どんな形にまとめるか形式を考える。
 T では、どのような形にまとめますか。
 P 一目でわかるような表にします。
 P 文字と文字の関係とか、表音文字と表意文字の関係を線で結んで、一目でわかる表にします。
  (文章の構造過程に従って表にしたもの五名、他は、形式は追うが、そおぞれ独自の表解をしている。)
4 まとめの論理・形式に従ってまとめる。
 T それでは、文章に目を通しながら、わかったことを、親み立ててみましょう。組み立てるときには特に、文字
  と文字の関係をはっきりと押えましょう。いちどで、完全な組み立てはできませんから、読んでは考えながらや
  りましょう。
 P 各自、読みとった内容を組み立てる。
  ここで、組み立てる事項が選択される。内容の選択の状況を、完成した表解にもとづいて見ると、次のようにな
  っている。前に告げた教材の構造過程なお参照されたい。(学級人員二七名)
  @l・2の段落を削除したもの(二三名)  B9の没落を削除したもの(一五名)                209
  A8の段落を削除したもの(七名)     C10の段落を削除したもの(二名)


                                                        210


  D13の段落を削除したもの(十一名)   F事例を削除したもの(二〇名)
  E15の段落を削除したもの(三名)    G15の段落をそのまままとめたもの(四名)
 前頁に、構造変換をした例があげてある。
5 構造変換の自己評価をする                                          211
 T できあがったら、いつものように調べ直してみましょう。
 (板書)
┌――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐
|1だいじなことがもれていないか/2文字のできた経過と成り立ちがわかるか/3組み立てかたはこれでいいか|
└――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┘
 (二) 構造変換第二時の指導
l まとめた表をTPに書く。
2 0HPで投映し、どんな考え(発想)でどのようにまとめたかを発表する。発表にもとづいて討議する。
3 他の発表・討議の結果にもとづいて、各自、加除修正する。
4 「日本の文字」の学習について感想を話し合う。
 (三) 児童の構造変換の実態
 この学習で、児童は、「日本の文字」の文章について、どのような発想の転換、構造の変換を行つたか、その実態
を調べてみる。
1 発想の転換
 「日本の文字」の文章は、次のような発想――文章構成の論理――によって構成されている。
 @ 人間は、ことばと文字によって、文化を築いた。
 A しかし、ことばがあっても、文字をもたないと高い文化はもてない。
 B 日本人は四種類もの文字を使っている。
 C 日本人は、中国から漢字が伝来して初めて文字を使うようになった。
 D 漢字は、漢文の読み書きに使われたが日本語を書き表すのにも使われるようになった。
 E 漢字をくずして書く書き方からひらがなを作った。
 F 漢字の一部分を用いてかたかなを作った。                                  212
 G ローマ字は、エジプトで生まれた文字がもとになって作られ、世界で広く用いられているが、日本では、漢字
  やかなに比べてずっと後のことである。
 H 漢字のように発音と意味をもつ文字を表意文字、ひらがな・かたかな・ローマ字のように発音だけを表す文字
  を表音文字という。
 この文章のこのような論理を児童は学習した。学習したあとで、児童は、主体的にそれをどのように受容したか。
そこから、どのような価値をどのように生み出したか。それは、児童が、この文章に論理的に提示されている内容を、
どのような論理で構造化したかを見ればよくわかる。
 まず、どのように発想の転換をしたかを調べてみる。
 @ 例(1) のように「日本の文字を、表意文字、表音文字に分け、それぞれの文字について経過・成り立ちを述べ
  る。」という発想をとったものがあるしこれと同じ発想のものが八名いる。
 A 例(2) のように「日本の文字の種類・経過・成り立ちを中心とし、これを、文字と文化、文字の種類、
  ウ
文字の経過と成り立ちの三つの柱に立てて組み立てる。」という発想をとったものがいる。これと同じ発想の
  ものが、五名いる。
 B 例(3) のように「日本の文字の種類・成り立ち、経過を、漢字・ひらがな・かたかな・ローマ字をあげて、そ
  れぞれについて、成り立ち、経過を述べて組み立てる。」という発想をとったものがある。これと同じものが七
  名いる。
 C 例(4) のように「日本の文字を、種類・経過・成り立ちの項目を立て、それぞれに該当する事項をあてはめて
  まとめる。」という発想をとったものがいる。こわと同じものが五名いる。
 D 「日本の文字」と同じ発想をとったものが二名いる。
 発想――内容組織の論理――は、以上のように五つの型に分けられた。しかし、その組織の内容については、多種
多様であった。                                                 213
2 構造変換の形式
 発想転換の状況は前の通りであるが、それぞれの発想を、どのように構造化したかを調べてみる。
 @ 例(1)(2)(3) のように、発想とそれにもとづく内容の組み立ての諸関係が一目でわかるような構造過程図にし
  たもの。これが一ばん多い形式であった。
 A 例(4) のように項目を立てて、それを埋めるような表形式にしたもの。これが、@の次に多かった。
 B 「日本の文字」を中心にしていくつもの同心円を書き、その中に、発想と内容の組み立てが視覚的に判断でき
  るような図形形式をとったもの。
 C 「日本の文字」を中心にし、その四方に、漢字・ひらがな・かたかな・ローマ字を配して、発想とその組み立
  てを視覚的にもわかるようにした図表形式をとったもの。
など、さまざまな形式がくふうされていた。

     六 KJ法による要旨・意図を読みとる技術

 要旨・意図の一般的な読解技術については、基本的読解技術の項で述べた。ここでは、KJ法による要旨・意図の
読解技術の指導例を紹介する。なお、この授業は、初めてKJ法を指導する場合の例である。いちど、KJ法を教え
ておけば、あとは児童が自由にこの技術を使って要旨・意図を読みとることができる。
 なお、ここにあげたのは、東京都中央区立明石小学校の中津留喜美男教諭(現中央区立佃島小学校教頭)の指導例
である。
                                                        214
    国語科学習指導案                        指導者 中津留喜美男
一 単元「深海をさぐる」(東書・五年)

二 学習目標
 (一) 深海の水は流れているという筆者の情報意図を直観的に読み取ることができる。
 (二) 深海のようすや生物について、情報意図を考えながら、必要な情報事項を直観的に読み取り、組織すること
   ができる。
三 学習内容
 (一) 態度
    積極的に目的に応じた情報を求めようとすること
 (二) 処理技能
   1 直観的に情報意図を読みとること  2 直観的に情報事項を読みとること  3 情報事項を組織する
   こと
 (三) 支持技能文や文章における語句と語句の照応に注意して読むこと
四 指導過程
 1 夏休みの読書について話し合う。
 2 「深海をさぐる」の文章を読む目標を立てる。
 3 読む方法をあきらかにする。(KJ法について理解させる。)
 4 情報意図を読みとる。
 5 情報事項を読みとり、組織する。
 6 グループごとに発表する。
 7 読書記録に書く方法を話し合う。                                      215
六 指導の実際
 T 夏休みの間に、ずいぶん本を読んだでしょう。どんな本を読みましたか。
 C 伝記類
 C 日本の民話
 C 科学の驚異
 T 読んだあと、どうしていますか。
 C 読書記録につけておく。
 C 読書ノートに書いておく。
 T 読書ノートに記録しておけば、あとになっても、その本がどん本か、どんな点がよかったかわかりますね。
  きょうは「深海をさぐる」という文章で、本を読むとき、どのように読んだらよいか、また、読書記録は、どの
  ようにして書いておいたらいいか勉強しましょう。
  (板書――学習のめあて、本の読み方、読書記録のつけ方)
 T この「深海をさぐる」という文章を、はじめの段落だけ読んでみてください。この文章は、どんな種類の文章
  だと思いますか。
 C ・・・・・・・・・
 T 先生の質問の意味がわかりませんか。では、物語や小説の類か、何かについて知らせたり、説明したりする文
  章ですか。
 C 説明文
 T このような文章は、情報文と言います。このような文章を読むときは、どんなことを読みとればいいでしょう
  か。
 C 筆者の言おうとしていること。                                       216
 C 「深海をさぐる」だから、深海がどうなっているかということ。
 C 深海をさぐって、どんなことがわかったかということ。
 T そうですね。このような文章を読むときは、(といいながら、次のように板書する。)
   「探海をさぐる」文章で、書き手の伝えたいこと(情報意図)
   深海をさぐって、どんなことがわかったかをまとめて読みとること(情報事項)が必要です。
 T では、勉強の方法について、簡単に説明します。きょうは、四人グループで協力して内容を読みとりましょ
  う。
   初めに、全文を読んで、書き手が言おうとしていることを、このカード(KJカード)に書きます。(板書@
  全文を読んで、意図をカードに書く)
   次に、グループでカードを集めます。班長さんは、集めたカードをきって、それをみんなにくばります。(板
  書Bカードを集めて、きって配る)
  三ばんめには、班長さんが自分のカード一枚を読みあげ、次に、そのとなりの
 人が読みあげ、同じことか違うことか話し合い、同じようなことなら、それを一
 つにまとめます。違うことであれば、別のところに置きます。順々にこのように
 して、全部のカードを分類します。(板書Bカードを内容から分類する)
  四ばんめには、同じ山のカードを見て、それらをまとめる簡単なことばをカー
 ドに書きます。これを表札と言います。つまり表札づくりをするのです。(板書
 C表札づくり)それができたら、この模造紙に、まとまりごとにはっていきま
 す。(左のようなKJ法でまとめたものを見せて説明する。)
T このような方法で、まず、書き手の言おうとすることを読みとり、グループで

 T 話し合って、よりよいものにまとめていきましょう。このような方法をKI法といっています。          217
 T では、「深海をさぐる」の文章を読みながら、@から学習していきましょう。
  (児童が学習をはじめたら、各グループをまわって、個別指導、その間に、次のようなことを助言する。)
 T カードは一つのことを一枚に書くこと、意図が二つになってもいい。
   この文章の意図を読みとるには、バチスカーフが、何の目的で深海にもぐったかを考えながら読めばわかる。
   (表札は赤のサインペンを使って書かせる)
 Tだいたいできあがったようですね。では、できあがったものをみんなに見せながら説明してください。
 C ぼくたちのグループは、初めカードが六枚集まりました。それをわけると、
  @ マリンスノーは、まどの右から左へ流れていくので、深海の水は流れている。
  A バチスカーフは、深海の水が流れていることを調査した。
  B 日本海溝の底の水は流れている。
  C 深海の水が流れていること。
  の四枚が、深海の水の流れのことで、あとの二枚は、
  @ 深海にいる生物のようす
  A バチスカーフがせん水するにつれて、いろいろな生物がいた。
    前の四枚をまとめて、「日本海溝の底の水は流れている。」という表札を作りました。
    あとの二枚は、「海溝にいる生物」としました。そして、この二つをあわせて、「日本海溝の底の水の流れ
   と、深海の生物」という表札を作ってまとめました。
  (他のグループも、だいたい同じ)
 T 今度は、深海の水が流れていること、深海にも生物がいることを、どんなことがらをあげて伝えているか読み
  とりましょう。そして、これも同じようにカードに書いて、あとで模造紙にはってみましょう。
 T 情報事項は、段落ごとに要点や、必要な細部を書きぬけばいいのです。                     218
   また、情報ですから、いつのことか、だれがしたか、どこでしたかも大事なことです。では、同じような方法
  でやってごらんなさい。
   (こんどは情報事項であるから、カードの枚数も多くなった。それを情報意図をまとめた模造紙に、分類し、
  表札づくりをしたあと図解させた。それを二つのグループに発表させる。)
 T きょうは、「深海をさぐる」の文章を読んで、書き手の言いたいこと(情報意図)と、どんな事がらをあげて
  伝えているか(情報事項)の読みとりをし、それを、カードに書いて、模造紙にはってまとめてみましたね。こ
  の模造紙を見ると、この文章に書かれていることが、はっきりとわかりますね。読書ノートに書くとき、この図
  解を見て書くと、大事なことほおとさず記録することができます。
   本を読むときも、このようなカードを用意し、読みながら書いていき、あとでこのカードを紙にはって、その
 関係を考えていくと、正しい本の読み方ができるでしょう。これから本を読むとき、こんな方法でも、やってみて
 ください。
次に作成した表を参考にあげておく。
                                                        219
































    220


  あとがき

 読解学習技術の体系は、第二章にその全容を示したが、本書に述べたことは、その一部に過ぎない。はじめ、基礎
的言語技術のうち語句の学習技術についても、また、読解学習における方法的技術についても、それぞれ執筆したが、
ページ数の関係で、両方とも割愛した。
 そんなわけで、首尾整わないような感じもするが、それはそれとして、まとめて一書とした。
 なお、本書の執筆は三年前にさかのぼるので、その後、たくさんのいい読解学習技術が開発されている。特に、フ
ィードバックの技術や、フローチャートによる学習技術のように、児童が自己学習、自主学習をするのに有効な技術
も開発されている。
 それらについても補充したかったが、残念ながらこれも割愛せざるを得なかった。





                   【著者紹介】
                   中 沢 政 雄   国語教育科学研究所長
                   明治40年群烏県に生まれる.小・中・高校教諭,東京都
                   指導主事, 中学校長等を歴任、 著書に「機能的国語教
                   育」「機能的作文指導」「国語教育近代化の理論ど実践」
                   「国語科の発間」などがある.
                   現在国語研究科学研究所,国語教育科学研究1三宰,月刊
                   「国語教育科学」「国語情報」を編集発行.



                   国語科読解の学習技術
                   ―――――――――――――――――――――――――
                   *検印省略    著 者   中  沢  政  雄
                            発行者   藤  原  政  雄
                            印刷所   長野印刷商工株式会社
                            ―――――――――――――――
                            発行所   明治図書出版株式会社
                            東京都中央区入船3一3―11 〒(104)
                  1975年2月初版発行  振替151318電話03(551)8266
                  ――――――――――――――――――――――――――
                                   (分)3337(製)329504(出)8308