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                     国語科教育全書
                         19


               実践国語科教育工学入門


                     中沢政雄編著




                       明治図書





                                                      1
   は し が き


 この本は、教育工学の理論を、国語科教育の実践にうつした国語科教育工学実践の入門書である。
 わたしどもは、最近しだいに科学化されてきたこの国の国語科教育に、明確に分析された学習目標と、科学的に組
織された学習内容と、学習に参加する諸要素を、適切にシステム化した学習方法と、学習を評価調節する学習制御法
とを導入し、それらを目標追求の過程に組織した国語科教育工学の実践システムを作り上げた。これこそ、わたしど
もが、十五年にわたって求め続けてきた機能的国語教育の実践の姿である。
その理論構成、実践・学習のシステム設計はわたしが担当した。授業実践には国科研の東京会員・名古屋会員の全
員が当たった。それはまことに涙ぐましい努力と精進であった。そして、その間五年を要した。単元のシステム化、
教材のシステム化、学習指導過程のシステム化などの基礎的な研究をした時からすれば十五年かかっている。
 今回、国科研創立十五周年記念の研究大会を催すに当たって、その研究成果を急拠上梓して世に問うことにした。
短い期間にいそいでまとめたので、説き及ばなかった事項、意に満たない点もたくさんあるが、いまはそのままにし
た。しかし、国語科教育工学の実践入門書としての役割はじゅうぶんに果たせるものと信じている。
 どうかこの本がたくさん読まれて、国語科教育の科学化・工学化の一助となることを期待したい。なお、この本の
出版に当たっては明治図書の江部満氏・間瀬季夫氏に格別お世話になった。ここにしるして感謝の意を表したい。
 終わりに、国科研の研究をいつもあたたかく見護っていてくださる輿水実先生に、謹んでこの本を捧げたい。

   昭和五十年七月一日
                                            中 沢 政 雄

                                                      2
   この本の読み方


 この本は、これから国語科教育工学の実践を試みようとするかたがたや、すでにその幾分かを実践し、さらにその
実践を広げ深めようとするかたがたのために書いた本である。
 第一章は総論で、国語科教育工学の実践のシステムと、そのあらましが書いてある。第二章以下は各論で、第二章
には教材、第三章には単元・学習、第四章には行動目標、第五章には学習指導過程、第六章には学習技術、第七章に
は学習の評価調節など、第一章で略説したそれぞれの分野の理論とその実例が書いてある。
 これから実践を試みようとするかたがた、あるいは国語科教育工学の実践についての知識を得ようとするかたがた
は、まず、第一章を読んで国語科教育工学の考え方や実践のシステムのあらましを理解する。その上で特に興味を感
じたり、実践してみようとする問題をもったりしたら、各論のそれぞれの章を読む。初めから各章を全部読み通す必
要はない。必要に応じ他の章を読み足していくようにする。
実践の分野を広げ深めようとするかたがたは、各論の中の興味のある問題、研究しようとする問題を含む章を選ん
で読む。それから必要に応じて他の章へと読み広げていく。もちろん、第一章を読んで実践のシステムを頭に入れ直
してから必要な各章を読んでもいい。
 ところで、どのような読み方をする場合でも、各章の初めには、その章を読む手引がつけてあるから、それを読ん
だうえで本論を読むようにする。また、そのあとには、その章の内容を総括するための間題が提示してあるから、そ
れに答えるようにして、その章で理解したことをまとめてみる。いずれにしても、ふだんの自分の授業と比べながら
読むことが、理解への近道である。


                                                      3
   も く 

 は し が き

 この本の読み方


第一章国語科教育工学はどんな実践
      のシステムをもっているか………………………………………… 7
   一 日常の授業を科学化・工学化するにはどうすればい
     いか……………………………………………………………………… 8
    1 単元はこのようにシステム化する………………………………… 8

    2 教材はこのようにシステム化する………………………………… 10
    3 単元の学習計画はこのようにシステム化する…………………… 13
    4 単元の学習指導はこのようにシステム化する…………………… 16
    5 学習法はこのようにシステム化する……………………………… 20
    6 学習評価はこのようにシステム化する…………………………… 22
    7 学習調節(学習制御)はこのようにシステム化する…………… 24
   二 実践国語科教育工学のシステムはどうなっているか …………… 25
    1 実践国語科教育工学とは何か……………………………………… 25
    2 実践国語科教育工学のシステムはどうなっているか…………… 27
                                                      4
第二章 教材のシステム研究はどのよう
      にするか、その考え方と実践……………………………………… 33
   一 教材のシステム研究の考え方・手順とそのモデル………………… 33
   二 文学教材「太郎こおろぎ」のシステム……………………………… 38
   三 知識教材「けむりのゆくえ」のシステム…………………………… 42
   四 情報教材「雪国の子どもたち」のシステム………………………… 46
   五 作文教材のシステム…………………………………………………… 50
第三章 単元の学習はどのようにシステ
     ム化するか、その考え方と実践……………………………………… 55
   一 単元の学習のシステム設計とその考え方…………………………… 56
    1 システムとシステム設計…………………………………………… 56
    2 単元の学習のシステム設計………………………………………… 58
   二 単元とその学習計画のシステム設計とそのモデル………………… 62
   三 授業のシステム設計とそのモデル ………………………………… 66
   四 学習活動のシステム設計とそのモデル……………………………… 70
                                                      5
第四章 行動目標はどのように設定
     するか、その考え方と実践…………………………………………… 75
   一 価値目標・行動目標の考え方とそのモデル………………………… 76
   二 目標分析のシステム設計とそのモデル……………………………… 81
   三 単元の価値目標はこのように立てる………………………………… 83
   四 一時間の学習指導の行動目標はこのように立てる………………… 88
第五章 目標追求の学習指導過程はどのように
     システム化するか、その考え方と実践……………………………… 97
   一 学習指導過程のシステム設計の考え方
     とそのモデル ………………………………………………………… 98
    1 学習指導過程のシステム設計はこのようにする………………… 98
    2 学習指導過程の実践モデル…………………………………………100
   ニ フローチャートによる学習指導の方法………………………………102
   三 文学の読解学習指導過程のモデルと
     そのフローチャート …………………………………………………104
                                                      6
   四 情報処理の学習指導過程のモデルと
     そのフローチャート …………………………………………………107
   五 作文の学習指導過程のモデルと
     そのフローチャート …………………………………………………110
第六章 価値追求の学習技術はどのように
      開発するか、その考え方と実践……………………………………114
   一 学習技術の開発とそのシステム………………………………………115
   二 学習技術の開発とその指導……………………………………………120
第七章 学習調節(学習制御)はどのように
      システム化するか、その考え方と実践……………………………142
   一 学習の評価調節の考え方とそのシステム …………………………143
   二 学習の評価調節(学習制御)の指導…………………………………149
 索 引………………………………………………………………………………166
 会員名簿……………………………………………………………………………167



                                                      7

第一章  国語科教育工学は
どんな実践のシス
テムをもっている
 
 国語科教育工学というのは、実践的には、学習の目標を具
体的に明確に立てる。目標を追求するための教材をシステム
化する。目標に到達する最も適切な学習指導過程のシステム
を作る。目標と教材と技能とをシステム化した学習活動を、
学習過程にしたがってシステム化する。学習活動の結果は、
評価し学習を調節する。これらを有機的に関連づけて組織す
ると、大きな国語科教育工学の実践のシステムが編成されま
す。
 この章は、そのようなシステムのあらましと、それぞれの
分野の実践について具体的に書いてあります。その項目は
 1 単元のシステム化とその展開計画の立て方
 2 教材・一時間の授業のシステム化とその例
 3 学習指導過程のシステム化とその例
 4 学習活動・学習過程のシステム化とその例
 5 学習技能のシステム化とその例
 6 学習評価(学習調節)のシステム化とその例
などとなっています。読み終わったら、日常の自分の授業
を、どのように改造したら、科学化され工学化された授業に
なるか、考えてみてください。それをはっきりさせること
で、この章の読み方を総括することができます。

                                                      8
     日常の授業を科学化・工学化するにはどうすればいいか

   単元はこのようにシステム化する

 この章では、初めに国語科の授業を、どうすれば科学化し、工学化することができるかを考えてみる。その手初め
にまず、単元は、どのように構成すればシステム化できるか。そこからくふうしてみることにする。
 (1) 単元のシステムを発見する

単元
主題
例として、読解の単元「ことばを使って」を構成してみる。この単元の主題(話題)は、「ことばの使い方」
である。それを中心にして構成する。教材には、「ことばのはたらき(光村本・五年下による)」という文章
を使う。教材は、主題の学習に適切なものを選ぶ。
学習
目標
最初に、この単元全体を学習して、児童は何を身につけるかを考えてみる。それが、単元の「学習目標」であ
る。この単元の主題と、教材「ことばのはたらき」の内容とをよく考えてみて、たとえば「ことばはどんな働
きをもっているかを理解し、ことばに対する関心・意識を育てるとともに、日常生活の中で、適切にことばを使うこ
とができる。」というように立てる。このように児童がめがける単元の目標に、内容的な価値をあげたものが、「価値
目標」である。これはできるかぎり具体的に、何時間かの学習の結果、身につけられるものとして掲げる。
学習
内容
児童は、この価値目標をめがけて学習をすすめるから、そのとき、どんな態度で、どんな技能を使うかを考え
る。この態度や技能が、「学習内容」である。つまり、この態度・技能を働かせて、教材に含まれている「こ
とばの働きについての知識や理解」を得たり、ことばを適切に使ったりすることができるようになる。
学習
教材
このように、児童が態度や技能を使って、目標とする内容的価値を生産し創造する材料、つまり、生産財が、
「学習資料・学習教材」である。したがって、この教材の中には、学習の目標とする内容的価値(ことばの働
                                                      9
きや使い方)と、その内容的価値を生産し創造するのに必要な技能とが含まれている。この内容的価値が、どのよう
な過程をたどって、どのように構造化されたかを、技能との関連において研究するのが、教材のシステム研究であ
る。それは、教材研究の新しい方向である。
学習
方法
さて学習の目標と、内容としての態度・技能と、内容的価値をもつ教材とが決まると、次は、その技能を使っ
て内容的価値を読みとる学習活動を考える。この学習活動の中で技能は働き育ち、内容的価値は生産される。
この学習活動が、単元の「学習方法」である。ここでは、「ことばのはたらき」の要旨や概要を直観的に読みとる。
各段落の要点を分析的に読みとる。読みとった事項を、主体的に体制化する。このように、直観読み、分析読み、体
制読みという学習の流れとして、学習活動を組織すると、内容的価値がじゅうぶんに読みとれる。
学習
評価
上のように、目標を目がけて学習活動を進めれば、当然その結果を、目標に照らして評価し、学習に成功した
かどうかを、児童に知らせなければならない。それが「学習評価」である。学習評価は、学習活動の結果を、
学習目標に照らして判定するものであるから、当然、その観点・基準・方法を考えて、システム化する必要がある。
単元の
システム
このように単元の学習目標をめがけ、学習の流れとして学習内容・学習教材・学習活動・学習評価が、そ
れぞれの機能を果たしながら、有機的に組織され、体系化されると、そこに単元のシステムが発見され、
構成される。このように、学習する単元はどんなシステムをもっているかを明確にすることがだいじである。
 (2) 単元のシステムをモデル化する
       
           
話題――→価値目標――→<内容(態度・技能)←→教材(内容的価値)←→方法(学習活動)>―→評価(観点)     
こと
ばの
使い
かた
  
ことばは、どん
な働きをもって
いるかを理解し
ことばに対する
関心・意識を育
てるとともに、
日常生活の中で
適切にことばを
使うことができ
る 
O適切なことばを適
 切に使おうとする
 こと
Oことばの働きに興
 味をもつこと
・要点を押さえて概
 略を読みとること
・要旨を読みとるこ
 と(以下略) 
「ことばのはたらき」
・ことばの結びつき
・結びつきのきまり
・ことばの使い分け
・ことばづかいの心
 構え
 
〇直観的に概略
 要旨を読みと
 る
O分析的に要点
 細部を読みと
 る
O体制的に読ん
 で読みとった
 ことを再組織
 する 
Oことばの働きが
 理解できたか
Oことばについて
 の関心・意識が
 育ったか
O適切なことばを
 適切に使うよう
 に心がけている
 か
 
                                                      10
 上のように単元のシステムをモデル化するには、@システムの流れの方向を示す(矢印)。A流れの過程ごとにシ
ステムの要素を配列する。B要素ごとに所定事項を書くという手順をとる。このようなモデルを作っておけば、どん
な単元にも適用でき、容易に単元をシステム化することができる。

   教材はこのようにシステム化する

 (1) 教材の機能とそのパターンを発見する
人間形成
の機能
 
 この単元の教材「ことばのはたらき」は、単元の目標である「ことばはどんな働きをもっているかを理解
 し、ことばに対する関心・意識を育てるとともに、日常生活の中で適切にことばを使うことができる」よ
うになるためのものである。したがって、この教材で学習すれば、ことばの働きについての理解が得られ、ことばに
ついての興味・関心が増し、ことばを適切に使おうとする意識が育てられ、適切なことばを適切に使うことができる
ようになることが期待されている。この教材はそのような機能をもっている。それは、ことばについての知識・理
解、言語感覚、言語意識などを育て、人間性を開発伸長するものであるから、普通に人間形成の機能と呼んでいる。
要旨と論理
のパターン
 
 ところで、この教材を通読すると、「ことばとことばの結びつきには習慣的なきまりがあり、また、こ
 とばの使い分けによって、自分の態度や感情を伝える力があるから、ことばは生かして使うことがたい
せっだ」という内容の文章であることがわかる。これがこの教材の基本的な機能でありこの文章の要旨である。
                                                      11
 なお、この文章の要旨は、次のような論理にしたがって展開されている(数字は段落の番号を示す)。
@ 「喜びをかみしめて」「なみだを飲んで」と、初めて聞いたとき、変な言い方だと思う人はいないか。
A 変な言い方だと思うのはあたりまえである。
B 飲食を表す「飲む」ということばは、液体のほうを、「かむ」ということばは、固体のほうを受けもっているの
 に、「飲む」が、飲食物でない「なみだ」と、「かむ」が、固体でない「喜び」と結びついているからである。
C ところで、どんなことばでも、結びつきの相手が限られていて、「喜び」のような心の働きを示すことばは、な
 かなかふつうのことばとは結びつかない。
C では、どうして飲食を表す「かむ」と、「喜び」とが結びつくようになったか。
E それは、「かむ」ということばが、「味わう」という意味をもつようになり、それは、「かみしめる」とほとん
 ど同じ意味になって、「喜び」と結びつくようになったからである。
F このように、ことばの結びつきには、習慣からくるきまりがあり、また、それをどういう場合に使うかについて
 も、変えられないきまりがある。
D また、ことばは使う人や相手の人に応じた使い分けをする。
 このように、各段落は、段落を起こしたり、受けたり、展開したり、まとめたりしながら、論理を展開している。
しかも、前の段落は、その後の段落の係り受け、展開の条件になっている。このような展開のパターンをもつ文章が
 「条件型」「係り受け型」の文章である。こうして、文章の人間形成の機能としての要旨と、その展開の論理とを、
明確に押さえる。
 (2) 教材のシステムを発見する
構造化
過 程
 
文章の要旨とそのパターンが押さえられたら、次に「ことばのはたらき」についての知識が、どんな筋道を
たどって組み立てられたか、その構造を過程的に、意味の流れ、展開として押さえてみる。それが、文章の
構造過程(構造化過程)であり、文章のシステムである。それは文章の叙述の過程と、成立の過程とを一体的にとら
                                                      12
えたものである。次にことことばのはたらき」の前の部分をシステム化してみる。
 (型)  (段落)  (段落の相互関係)       (知 識)
問 題―→段落1…………「喜びをかみしめて」「なみだを飲んで」と聞いて変な言い方だと思った人はいないか
 ↓
肯 定―→段落2……↓……変に感じるのはあたりまえである
 ↓
解 説―→段落3…………飲食を表す「飲む」は液体、「かむ」は固体のほうを受けもつ(それなのに)「飲む」
 ↓           が飲食でない「なみだ」と、「かむ」が固体でない「喜び」と結びついているから
展 開―→段落4…………どんなことばでも結びつく相手が限られている。特に心の働きを示す高級なことばは、
 ↓           普通のことばとなかなか結びつかない
問 題―→段落5……↓……では、なぜ「かむ」が、高級な「喜び」と結びつくようになったか
解 説―→段落5…………それは、「かむ」が、「味わい」という意味をもつよりになり、「かみしめる」が、「味
 ↓           わう」と同じ意味になって、「喜び」と結びついたからだ
結 び―→段落6…………ことばの意味が広くなると、本来結びつかないことばにも結びつくようになる
 このように文章をシステム化してみると、ことばの働きについての知識が、だんだんに組み立てられ、システム化
される状況が詳細にわかり、したがって、それを学習する適切な手順・方法が明確になってくる。なお、このように
システム化してみると、論理のとおっていない文章、論理に飛躍のある文章、適切でない叙述、あいまいな叙述、理
解しにくい叙述など、児童の学習をさまたげる要因が、手にとるように見えてくる。
 (3) 教材のシステムと読解技能との結びつきを考える
学習活動の
システム
 
 文章のシステムがわかったら、それをどう読むか、読み方とそれに必要な読む技能(処理技能、支持技
 能)を考える。この場令は、 五年生であるから、単元のシステム設計のところで述べたように計画す
る。たとえば
                                                      13
@ 全文を直観的に読む場合―直観的に要旨を読みとる技能、直観的に概略を読みとる技能
A 部分を分析的に読む場合―段落を要約する技能、段落相互の関係を読みとる技能
B 全文を体制的に読む場合―構造変換の技能、読みとったことを体制化する技能
 このように、読む活動とその過程を、直観・分析・体制のようにシステム化し、そこに働く技能を組織する。つま
り、文章の内容を、読む活動と、読む技能とが、最も適切な状態で組織され、目標追求の学習活動になるように、シ
ステム化する。具体的に言えば、この文章の何を(目標とする内容―知識)どのように(働く技能―要旨とか、要点
とか)読みとる(活動)かを、文章に即して確認する。なお、特にあげなかったが、この文章によって学習する漢
字・語句・文法を、文章に即して確認することは、言うまでもない。この場合、読む活動を処理する技能が「処理技
能」で、読む活動を内面からささえている文字・語い・文法などの技能が、「支持技能」である。これらの技能の働
きをすすめ、保証するのが、「読みの構え、読みの態度」である。
能力形成
の機能
 
 そこで、この文章を読むことによって、上にあげたような読む技能や読む態度が学習される。このように
 教材がもっている、態度や技能を育てる働きが、教材の「能力形成の機能」である。

   単元の学習計画はこのようにシステム化する

 (1) 学習計画のシステム設計
 単元の学習計画を立てるうえに必要な事項を、要素的に分析してみると、次のようになる。
@ 学習に要する時間――時間数とその配分を決める(時間配当)
A 学習する範囲と単位――教材を分析する(教材分析と組織)
B 学習の目標――時間ごとに行動目標を立てる(目標分析と組織)
C 学習する技能――技能を配分し組織する(技能分析と組織)
D 学習活動――基本的な学習活動を設定し組織する(活動分析と組織)
E 学習に必要な資斜――学習に必要な教材・資料・機器・用具(資料配当)
                                                      14
F 学習評価――観点・基準・方法を考える(評価法の分析と組織)
G 教師の指導力と児童の学習能力(実態分析と組織)
学習時間
学習単位
 
 上のことを、単元「ことばの使い方」について考えてみる。@の学習時間は五時間。その配当は、Dを考
 えて、直観読み一時間、分析読み三時間、体制読み一時間。Aの学習する教材の範囲、あるいは単位はァ
全文を読む、ィ第一節を読む、ゥ第二節を読む、ェ第三節を読む、ォ全文を読むとする。
行 勳
目 標
 
 Bの学習目標は、一時間ごとに立てる。それは、それぞれの時間の終わりに、児童が確実に身につけられる
 具体的なものとする。つまり、行動目標とする。行動目標は、その時間に児童が理解する知識や情報、ある
いは変容する行動を、外に表したものである。第一時の直観読みの行動目標は、「全文を直観的に読みとって、次の
ように話す(書く)ことができる。『ことばとことばの結びつきには、習慣的なきまりがあり、また、気持ちに応じ
て、ことばを使い分けたり、相手に応じて、ことばを使い分けたりする。このことばのきまりや使い分けを、うまく
生かして使うのがほんとうだ。』」とする。一時間の学習の終わりに、右のように読みとって理解できれば、その時間
の行動目標を獲得したことになる。第二時の分析読みの行動目標は、「喜びとかむ、なみだと飲むが結びついた理由
を、次のように読みとって説明する(書く)ことができる。『かむと喜びは、本来結びつきにくいことばであるが、
かむの意味が広くなって、味わうとほとんど同じ意味になったので、結びつくようになった。』」となる。
 このように、行動目標は、読みとるべき内容的価値と、それを読みとるのに必要な技能とが一体となった形で記述
する。それは価値を読みとる技能を、読みとった内容的価値として記述することである。しかし、それは児童の内部
行動であるから、それを外部行動化(話す、説明する、書く、具体行動、絵にかく、表解するなど)する必要があ
る。
 なお、この行動目標を分析して、学習活動ごとにさらに下位の行動目標を立てることが多い。
学 習
技能
 
 行動目標を設定したら、次は学習する技能を、各時間に配分する。学習技能を決めるには、教材のどんな範
 囲の、どんな内容を、どのように読みとるか、その読みとる技能を働かせるには、どんな学習活動をするか
を考えそれらの相関関係によって決める。たとえば、全文を読んで直観的に要旨を読みとる技能は、第一時の直感
読みの時間に配当する。段落を要約する技能は、第二時以下の分析読みの時間に配当する。全文を読んで構造変換す
る技能、読みとったことを体制化する技能などは、第五時の体制読みの時間に配当する。
学習活動
学習評価
 
 学習技能の配当ができると、Dの学習活動の設定である。直観読み、分析読み、体制読みなど、高いレベ
 ルでとらえた学習活動は前にあげた。ここでは、それぞれの読みをさらに分析して、それぞれの時間に課
                                                      15
する具体的な学習活動を設定する。たとえば、分析読みの場合、段落全体を読んで要点を押さえる、要点と細部との
関係を読みとる、段落全体を読んで構造化するというように分析し、組織する。
 次に、学習活動に必要な機器・用具・教材以外の資料などを配当する。最後に教師の教育技術・児童の学習技術・
学習興味などの実態を考慮に入れる。
 このように、学習計画に必要な要素を時間・目標・技能・活動・資料・評価・機器用具のように分析してあげた。
 これで、学習計画に必要な要素が明らかになった。
 (2) 一時間の学習のシステム設計
 一時間の学習のシステムの要素は、前に書いた、その時間の行動目標、行動目標を追求するための学習技能・学習
教材・学習活動、行動目標に到達できたかどうかを判断する学習評価、学習活動を能率的・生産的にする学習機器・
学習用具・その他の資料である。これらの要素を、行動目標追求の過程――学習過程に位置づけ、有機的関連をもた
せて適切に組織すると、一時間の学習のシステムができあがる。これを、モデル化してみる。
 (3) 単元の学習計画のシステムモデルとその適用
      
時間    目 標―――― ―→〔技  能〕←―― ―→教 材←― ―→〔方  法〕―― ―→評  価←――― 機器等 
  (行動目標)   (学習技能) (価値)  (学習活動)  (学習評価)  ・OHP 








全文を直視的に読
みとって、その要
旨を、次のように
話す(書く)こと
ができる。(略)
喜びとかむ、なみ
だと飲むが結びつ
いた理由を、次の
ように説明する
(書く)ことができ
る。(略)
・ことばの働きに興
 味をもつこと
・要旨を読みとるこ
 と

・大段落を要約して
 要点を押さえるこ
 と
・段落相互の関係を
 読みとること
(第三時、第四時、第五時は 
「ことばの 
はたらき」
の全文


第一節
ことばとこ
とばの結び
つき

省略する)
・直観的に概略を 
 読みとる
・調節読みをする
・直観的に要旨を
 読みとる
・小段落ごとに要
 点を読みとる
・段落相互の関係
 を考えて要約す
 る
基準・ことばの結 
 びつきのきまり
・ことばの使い分
 け・心構え
方法―自己評価
基準―かむと喜び
 は結びつきにく
 い・かむの意味
 が広くなった
方法―条件法・自
 己評価
・カード
・TPU
・TP


・OHP
・TP
・TPU

 
             



  16











 上のように、一時間ごとに学習のシステムを作って、それを組織すれば、単元の学習計画は容易にシステム化する
ことができる。実際には、上のようなシステムシー卜をプリントしておいて、必要な事項を記入するとよい。
   単元の学習指導はこのようにシステム化する
 単元とその学習計画がシステム化されると、次はいよいよ授業になる。その授業では、児童がほんとうの意味で尊
重され、主体的な学習、個性的な学習、創造的な学習、科学的工学的な学習が保証され、ひとりひとりの人間性が開
発伸長され、しかも、学習の生産性の高いものとすることが要請される。
 (1) 学習の場のシステムとモデル
 一般に国語学習は、教室や図書室や教育機器を備えた特別教室などで行われる。この学習室には、掲示物・展示
物・資料・機器などがあって、それなりに児童に教育的刺激を与える。この中に、教育技術・指導技術を身につけた
人格・教師がいる。また、学習する内容を内にもつ教材・資料が用意され、それらを学習するのに有効な教育機器、
                                                      17
用具などが準備される。いっぽうに学習興味・学習意欲・学習能力をもった人格、児童たちがいる。
 これら四者が、相互に有機的関係を保ちながら、目標追求の学習を進める。ここに授業のシステムが成り立ち、学
習の場が設定される。これら四つの場の要素・授業の要素の間には、互いに結び合い、補い合って、つねに緊張関係
が成り立ち動いている。これが場のゲシュタルトであり、授業の活気である。この緊張感を盛り上げ続けながらやが
て充足感へと落ちつく。そこに創造があり、進歩があり、発展がある。人間性の開発伸長がある。
 (2) 学習過程・学習活動のシステムとモデル
学習過程の
システム
 
 児童は、学習目標をめがけて学習活動を続ける。この目標を追求し獲得する過程が学習過程で、そこに
 基本的な学習活動を組織する。これが学習過程のシステムである。たとえば、「ことばのはたらき」の
読解では、第一時に、文章全体を読んで、直観的に要旨(あるいは概略)を読みとる。これが直観読み。第二時には
第一節を、第三時には第二節を、第四時には第三節を読んで、それぞれその要点や細部を詳細に読んで深く理解す
る。これが分析読み。第五時には全文を読んで、主体的に体制化する。これが体制読みである。つまり、直観読み・
分析読み・体制読みは、それぞれの読みの機能を果たしながら、学習の流れとしてシステム化されている。この直観
読み、分析読み、体制読みが学習過程のモデルである。
学習活動の
システム
 
 読解学習過程は、前に述べたように、基本的な読む活動を組織し編成したものである。そこで、その基
 本的な読解活動を、生態的・要素的に分析してみると、読む興味・意欲・構えと、読む技能とをもって
いる読み手が、内容的価値をもっている文章に対して、読む課題を契機として働きかけるというシステムになってい
る。たとえば、第二時の分析読みで、「第一節の要点は何か」という課題を契機として学習活動をする。この場合、
この課題が、文章の表現・内容の難易と、読み手の興味と技能とに照らして適切なものであれば、読み手は、要点を
読みとる必要を感じ、要点を読みとろうとする構えをもって文章を読む。そこで、要点を読みとる技能を積極的に働
かせて、要点を読みとることができる。つまり、読む興味・意欲・構えと、読む内容と、読む技能とが、読む課題を
追求する過程として、最も適切に、有機的関係をもって組織されると、最も適切な学習活動のシステムが得られる。
                                                      18
と同時に、その学習活動は活発な、生産性の高いものとなる。
 (3) 学習指導過程のシステムとモデル
 前の節で、学習の場、つまり授業形態、その中心となる学習過程、その基本となる学習活動などのシステムを明ら
かにした。次は、これらを統合し、システム化した学習指導過程について考えてみることにする。
学習と指導
のシステム
 
 学習指導過程は、@学習者が、主体的に学習の目標を設定し、それを追求し獲得するための学習活動が
 目標追求の過程にそって組織されて、中央に主流となっている。その右方に、A学習活動ごとに学習者
が試みる学習作業、学習行動が手を出している。左方からは、B学習の過程ごとに、教師がする指導・助言・教授・
情報提示などが、手を伸ばしてかかわり結びついている。そのような全体のシステムをもっている。さらに、この学
習指導過程の要素を分析し、それを適切にシステム化してみると、次のようなシステムモデルが求められる。
@ 学習の目標を決める(目標過程)――学習課題の設定・学習の構えをもつ
 「喜びをかみしめて」「なみだを飲んで」は、なぜおかしく感じるのだろうか。また、なぜ「喜び」と「かむ」が
 結びつくのだろうか。などという学習課題を、話し合って決める。
A 学習の方法を考える(方法過程)――課題読みの方法の決定・計画・範囲・技能・活動・機器などについて読む
 範囲は第一節、読み方は「おかしく感じるわけ」を読みとって書く。次は「結びつくわけ」を読みとって書く。わ
 けのわかる部分に線を引く。グループで話し合って正しいものを決める。
B 学習活動をする(学習過程・能力過程)――方法に従って目標追求の活動をする。能力が形成される
 第一節全体を読んで、おかしく感じるわけのわかる段落、結びつくわけのわかる段落を押さえる。段落の中のわけ
 のわかる部分に線を引く。線を引いた部分を要約してわけをカードに書く。
C 学習の結果を評価する(評価過程)――評価の観点・基準・方法を決める。評価結果を知る
 カードに書いた「おかしく感じるわけ、結びつくわけ」が、正しく読みとれているかどうかを評価する。それは、
 段落の要点が適切に読みとれたかどうかを評価することになる。これが評価の観点である。読みとったわけの中
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 に@飲食を表すかむは固体、飲むは液体に結びつく。A飲食物でないなみだが飲むと結びつき固体でない喜び
 がかむと結びついたという、二つの事項が含まれているかどうかによって、正しく読みとれたかどうかを判断す
 る。この判断の基準が、評価の基準である。この基準を示して、その条件が含まれているかどうかを自分で判断す
 る。あるいは正しいわけを提示し、それと自分のとを比べて、正誤を判断する。これが評価の方法で、前のは条件
 法による自己評価、あとのは、見本法による自己評価である。評価の結果、読みもらし、読み誤り、不適切な読
 み、あるいは正しく読みとれたなど、学習結果の状況を知る。これがだいじである。
D 学習の調節をする(調節過程・制御過程)――調節条件の設定・調節読み、学習のし直し
 学習の結果・学習に成功しないことがわかると、それはなぜそうなったかを反省する。その結果、どんな点に注意
 し、どんな読み方をすればいいか、読み直しの条件を決める。これが読みの調節条件である。そこで、各自その調
 節条件に従って、原点にかえって読み直しをして、正しくことばの結びつくわけを読みとる。この調節条件に従っ
 て読み直しをするのが、調節読み――学習制御である。
E 目標を獲得する(獲得過程)――行動目標を獲得する
 第一節全体を読んで、読みとったことを組み立てる。その結果、この第一節では、なぜ「かむ」と「喜び」とが結
 びつくか、その理由をはっきりと、正しく読みとることができる。そこで、初めてこの時間の行動目標を獲得した
 ことになる。
 この学習指導過程は、学習者が主体的に学習の目標・学習の方法を決める。その方法に従って学習活動をする。学
習活動の結果は自己評価をして、その状況を知る。評価の結果を反省して、学習の結果を自己制御する。そして、目
標を獲得するという自主的学習・主体的学習のできるシステムになっている。この過程によって学習を進めていく
と、児童は、このような学習の手順・方法を身につけて、自己学習ができるようになる。
 (4) 学習指導過程のフローチャート化
 前に述べたように、この学習指導過程は、それをシステム化するのに必要な要素過程――目標過程・方法過程・学
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習過程(直観過程・分析過程・体制過程)・能力過程・評価過程・調節過程・獲得過程――を分析抽出して、組織し
編成したものと、教師の指導とをシステム化したものである。このシステムを、いっそう明確にし、視覚的にもわか
りやすくするには、学習指導の流れを記号化し図形化する。いわゆるフローチャートを作る。このフローチャートに
ついては、第五章を参照されたい。
 なお、このフローチャートは、学習の初めに、その学習の見通しを立て、計画を立てながら児童とともに作成し、
それに従って学習を進めるようにする。やがて、児童はフローチャートによって学習を進めるようになる。

   学習法はこのようにシステム化する

 前の節で述べたように、学習は、目標追求の過程にそって進められる。その各過程で、どんな手順・方法で学習す
るか、その学習の仕方が学習法である。この学習法は、いろいろな立場・いろいろなレベルでとらえることができ
る。

 (1) 学習指導過程の学習法のシステム
 児童が、学習指導過程に従って学習を進める場合、一つは学習の手順を知ってそれに従う。二つには学習の過程で
必要な学習の技術を使う。この二つが適切に組繊されると、学習はなめらかに進められる。
学習の
手 順
 
 読解学習の手順は、目標を立てる、方法を考える、読解する(直観読み・分析読み・体制読み)、学習の評
 価をする、学習を調節する、目標を獲得するという六つの過程から成り立っている。
 情報学習の手順は、目標を立てる、方法を考える、情報を処理する(選択・収集・組織・保存)、学習の評価をす
る、学習の調節をする、目標を獲得するという、これも六つの過程から成り立っている。
 作文学習の手順は、目標を立てる、方法を考える、作文学習をする(題材選択・表現内容の収集・文章構成・表現
叙述・修正)、処理するとなっている。このような手順を理解して学習を進める技術が、学習手順の技術である。
学習の
方 法
 
 上の学習の手順に従って学習を進める場合、その手順・過程ごとに、それに応じた学習法がある。たとえ
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 ば、学習課題、問題の作り方、学習方法の考え方、題材の選び方、情報の選び方、情報事項の収集の仕方、
要旨の読みとり方、要約の仕方、評価の仕方、調節の仕方など、さまざまなたくさんの学習の仕方がある。これらの
中には、それぞれの手順の処理の仕方に関するものと、直接学習に参与するものとがある。この学習の方法と、前に
述べた学習の手順とが、適切に結び合って、学習指導過程の学習法が成り立つことになる。
 (2) 学習活動の処理法のシステム
 学習活動を処理するには、処理技能を使う。その処理技能の使い方が処理技術であり、それが学習法である。たと
えば、「喜び」と「かむ」、「なみだ」と「飲む」が結びついて、おかしく感じる理由が説明してある段落から、「お
かしく感じる理由」を読みとる学習活動をする。この学習活動は、この段落の要点である「おかしく感じる理由」を
読みとるのであるから、要点を読みとる技能を働かせれば、この活動はうまく処理できる。このように、要点を読み
とる技能の使い方・働かせ方が、学習技術であり、学習法である。したがって、学習法の中には、要点の読みとり
方、要約の仕方、要旨の読みとり方、心情の読みとり方、情景の読みとり方、つまり、言語技能の使い方、働かせ方
がある。この言語技能の働かせ方・使い方が、言語技術である。
 また、いっぽうに、この読みとった要点の部分にサイドラインを引く。カードやノートに書き出す。箇条書きにす
るというような方法をとることがある。このような作業・行動は、読みとった要点を確認したり、要点を読みとる技
能を使うことを促し進めたりする働きをもっている。これらは、言語技術の使い方を確実にしたり、進めたりする方
法技術である。これも学習法の一つである。
 そこで、言語技術と方法技術とを適切に結びつけることが、学習活動を有効に処理するうえにだいじである。
 (3) 学習技術のシステム
 「ことばのはたらき」の文章から、「ことばとことばの結びつきには習慣的なきまりがあること、ことばは相手に
応じて適切に使いわけること、それらのことばの使い方を知って、それを生かして使うようにすること」を読みとっ
て理解するためには、いろいろな言語技術や方法技術を使う。そこで、それらの言語技術や方法技術を、学習の流れ
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にそってシステム化する・たとえば、直観読み・分析読み・体制読みの三過程がシステム化されて学習が成り立つの
であるから、それぞれの過程で使う読む技術も当然その過程にそってシステム化される。要旨の直観的な読みとり方
 (概略の直観的な読みとり方)、段落の要点の読みとり方、読みとった事項の再組織の仕方(構造変換の仕方)などが
組織される。このシステムは、細部・要点・要旨、あるいは、細部・要点・概略など系統的に組織される。
 このように、文章全体を読んで正確にあるいは詳しく深く理解するためには、いろいろな言語技術が使われる。そ
れらの言語技術は、いろいろな関係で、適切にシステム化する。それは前提になる技術・関連する技術・発達した技
術などであるが、これらが孤立的になると、自然ないい読みは行われない。
 また、構造変換の技術のような総合的な言語技術では、その技術内のシステムを明確にとらえる。たとえば、@文
章あるいは段落全体の意味構造を理解する。A文章(段落)構成に対する発想転換を行う。B新しい発想に従って文
章の内容を再構成する。C簡潔・明確な価値のある構造を得る。
 なお、要点を読みとる技術・概略を読みとる技術・要旨を読みとる技術・気分情調を味わう技術というような基本
的な言語技術でも、同じように技術内のシステムを明確にする。
 (4) 学習方法のシステム
 また、学習の仕方には、自己学習の仕方、個人学習の仕方、共同学習の仕方、小集団学習の仕方、一斉学習の仕
方、機械学習の仕方などのよりに、学習形態・学習方法・学習手段によっていろいろある。これらの学習法は、一時
間の授業の中で適切にシステム化する。
  学習評価はこのようにシステム化する
 (1) 学習評価のシステムとモデル
 「ことばのはたらき」の第三時の学習の行動目標は「大段落の要点を『うまい結びつきの言い回しでも、そのこと
ばと気持ちがぴったりする場合に使うというきまりがある』と読みとって書くことができる。」である。
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この行動目標を追求するために、大段落の要点を読みとる学習活動をする。学習活動をしたら、その結果どれだけ
目標に近づけたか、あるいは獲得できたかを評価する。その結果によって学習状況を知るという過程をたどる。これ
が学習の評価である。そこで、この学習評価のシステムを考えてみると、次のようになる。
   行動目標(内容的価値)←―学習活動(技能)―→評価(価値生産の評価)
 これをさらに詳細にみると、@行動目標には、その時間に読みとるべぎ内容的価値の構造、つまり「大段落の要点」
が具体的に示されている。A学習活動では内容的価値「大段落の要点」を読みとるのに使う技能――要点を読みとる
技能を使う。B要点を読みとる技能を働かせた結果読みとった内容的価値(大段落の要点)を評価してその状況を知
るというようなシステムモデルになっている。
 (2) 評価法のシステムとモデル
 学習の評価は、目標追求の基本的な学習活動ごとに行うのが原則である。したがって。行動目標に接近できたか、
到達できたかどうかを評価するとともに、それよりも下位に、あるいは前段階において評価する場合がある。いずれ
にしても、評価は、評価の対象・目あて、つまり観点と、目標に到達できたかどうかを判断する基準と、どのように
評価するか、評価の方法とから成り立っている。そのうち、評価の観点・基準は行動目標の中に含まれている。評価
は目標に照らして行うものであるから当然である。
 そこで、前に書いた「大段落の要点を読みとる学習」の例でみると、評価の観点は「要点を読みとることができた
か」(要点を読みとる技能)である。それを判断する基準は、具体的に書いてある、読みとるべき内容である。ここ
に示されている内容のように読みとれたかどうか、これを基準として判断する。評価の方法は、評価の基準の示し方
によって異なる。たとえば、「うまい結びつきの言い回しでも、そのことばと気持ちがぴったりする場合に使うとい
うきまりがある。」というように、正確に読みとったものをそのまま基準として提示すれば、児童は、各自が書いた
ものと比較して、同じである。余分のことがある。足りない点がある。あいまいであるなどと判断する。つまり正し
いものとの対比において判断する。このような評価の仕方を見本法という。また、これは学習者自身が評価するから
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自己評価という。また、評価基準を、分析していくつかの条件を抽出してそれを提示し、その条件によって評価する
場合もある。たとえば、「うまい結びつきの言い回し」「気持ちがぴったりする場合」「使うきまり」、あるいは「言
い回し」「気持ち」「きまり」という条件が含まれているかどうかを提示して判断する。これを条件法という。な
お、自己評価を原則とするけれども、相互評価・グループ評価・教師の評価などがある。
 (3) 評価の結果によって学習活動の結果の状況を知る
 評価は、いずれの場合でも評価のしぱなしでは意味がない。学習者は自分が努力し、くふうして学習したのである
から、その結果を理解して、学習への強化が得られる、励ましが得られるようにする。それがまた次の学習へと発展
し展開する契機となり、力となるものである。
   学習調節(学習制御)はこのようにシステム化する
 (1) 調節過程のシステムとモデル
 行動目標を目がけて学習活動をし、その結果を評価すれば、目標接近の状況がよくわかる。目標接近の状況に応じ
た読み方を考えて、読み直しをする。そして行動目標を獲得する。この過程をたどれば、目標が獲得できて、学習は
完成する。これをさらに単純化してみると次のようなシステムになる。
  行動目標―→学習活動―→学習評価(結果の情報)―→学習調節(読み直し)―→行動目標
 (2) 学習調節(学習制御)のシステムとモデル
 前にあげた「ことばのはたらき」の第三時の学習で、大段落の要点を「うまい結びつきの言い回しでも、そのこと
ばと気持ちがぴったりする場合に使うというきまりがある。」と書くべきところを、「ことばは気持ちとぴったりした
ときに使う。」と読みとってしまった。評価の結果、読み誤りの状況がわかった。それは、「どんなことば」と「ど
んな気持ち」とがはっきりしないことと、「きまり」を読み落としていたこととであった。そこで、今度は、「どんな
ことばのことか」「どんな気持ちか」「きまりがどこにどう書いてあるか」の三点を条件にして、読み直しをする。
                                                      25
 この読み直しの三つの条件を、調節条件といい、調節条件にもとづいて読むことを、調節読み、学習調節という。
このように、学習を調節しながら学習を進めると、容易に目標を獲得することができる。そのシステムモデルを示す
と、次のようになる。
@評価による学習結果の知識・状況―――→A調節条件の設定――――→B学習活動の調節―→C目標到達
 O学習に成功したもの         O課題を再確認して      O捜し読み
 O学習に不適応のもの(一例)     O変化を考えながら      O確かめ読み
  ・あいまい ・足りない ・誤り   O異同を明らかにしながら   O補い読み
  ・不正確 ・多すぎる ・不適切   O理由を考えながら      O正し読み
 O不適応の原因(一例)        O筋道を立てながら      O調べ読み
  ・片寄り ・読み落とし ・判断   O要旨・主題を押さえながら  O筋道読み
  の誤り ・課題に応じない ・学   O構造を考えながら      O関連読み
  習法がわからない、・むずかしい   O過程を考えながら      O部分読み
 読解学習を例にとって、日常の授業をどうすれば、科学化・工学化できるか、その概要について述べた。作文でも
聞く、話すでも、全く同じに考えられる。

     実践国語科教育工学のシステムはどうなっているか

   実践国語科教育工学とは何か
 (1) 日常の授業を科学化・工学化するためにどんな操作をしたか
 日常の授業を科学化・工学化して、実践国語科教育工学のシステムを作るために施した操作は、次の通りである。
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@ 機能的操作――国語学習を、文化の獲得・生産、思想・心情の開発伸長、社会の改造・進歩を促すものとした。
 そのために機能的な学習の場、機能的な話題・題材、機能的な技能、機能的な活動、機能的な教材などを設定し
 た。
A 科学的操作―学習目標・学習態度・学習技能・学習活動・学習資料、学習者の興味・関心・必要・国語能力・
 思想・心情・感覚・知識・思考力・認知力、学習機器・学習用具・教師の教育力などを、科学的にとらえ、その実
 態・発達・パターン・システム・機能などを明らかにした。
B 工学的操作――工学は目標追求の科学である。科学的に目標を設定する。目標の獲得に必要なすべての要素・条
 件を、最も適切な状態・関係においてシステム化した。基本的な学習活動を設定した。学習評価・学習制御のシス
 テムを取り入れた。
C システム化――システムの発見と創造をした。国語教育の事実に内在するシステムを発見し、それにもとづいて
 いろいろなシステムを創造した。
D モデリング――システムやパターンを発見・創造して、それをモデル化して、学習の生産性を高めた。
E 学習評価のシステム――評価過程のシステム、評価法のシステムを作って、学習指導過程に位置づけた。
F 学習制御のシステム――制御過程のシステム、制御法のシステムを作って、学習指導過程に位置づけた。
 (2) 国語科教育工学は科学的・工学的実践の学である
 国語科教育の全面にわたって、前記のような諸操作を施して求めた国語教育のシステムが、実践国語科教育工学で
ある。つまり、国語科教育を科学化し工学化するための実践理論・実践体系・実践方法を究明する実践の学である。
 そのめざすところは、国語科教育のシステムの要素とその機能を科学的に究明する、それらを目標追求の過程に、
適切に組織する実践の理論と、実践のシステムを発見・創造する、その実践によって、国語科教育の生産性を高めよ
うとする点にある。それは、現代社会・未来社会が期待する人間性豊かな国語生活者、国語文化の創造者の育成に寄
与するところが大きいと考えられる。
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 このような国語科教育工学が成り立つ気運・土壌はすでにじゅうぶんに熟している。情報化社会・知識社会・技術
革新時代の言語生活の進歩・革新、近代の人間尊重・科学化・合理化の運動などの社会的背景、機能主義・構造主
義・行動主義などの理論的背景、教育における人間尊重・科学化・合理化・機械化・主体的学習・自己学習・学習法
の学習などの主張、教育工学の成立、人間工学の成立などの教育的背景も、すでに整っている。このような状況の中
で実践国語科教育工学は、しだいにその実践体系を整えてきた。
   実践国語科教育工学のシステムはどうなっているか
基礎理論
 機能主義の立場をとり、機能的言語観に立って、ゲシタルト理論・行動主義理論、教育工学などを援用し
 て、国語科教育の科学化・工学化を図った。この立場、この考え方にしたがって、システム化したのが、
わたしどもの実践国語科教育工学である。
学習目標
 単元の学習目標は、人間性の開発伸長をめがける価値目標を立て、一時間、一時間の学習目標は、人間性
 を開発伸長する技能の学習をめがける行動目標を立てる。そのためには、目標分析を的確に行い、具体的
な到達目標とし、観察・測定・評価できるものにした。
 そこで、この目標の記述に当たっては、特に評価の観点(学習する技能)、評価の基準(学習する技能によって求め
られる内容)が、行動目標から求められるようにした。つまり、行動目標に照らして、具体的に、科学的に評価をす
ることができるようになっている。また、行動目標から、基本的学習活動を設定することや、目標分析の方法のパタ
ーンもくふうした。さらに、学習目標のシステムモデルを作り、目標記述のパターンを作った。
学習内容
 学習内容は、人間性を開発・伸長する態度・技能、価値を獲得・生産する技能というように、機能的に考
 え、科学的に分析処理して、そのシステムとその発達を明らかにした。学習態度は、心構え、身構えと
し、興味・関心・必要などにもとづく本質的態度と、技能を使うときに、その後ろだてとなり、保証となる方法的態
度に分けた。学習能力は、読解鑑賞力、聴解力、作文力、談話力などの処理技能と、発音力、文字力、語り力、文法
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力などの支持技能と、さらに音読・黙読などの機械的技能とに分けた。これもまた、本質的技能・方法的技能に分け
てその発達を押さえた。これらの中から、特に基本的態度・基本的技能を選んだ。
 なお、それらをシステム化した、実践読解法、実践作文法・実践聴解法・実践談話法・実践読書法などがある。
学習資料
 教材・資科は、人間性の開発伸長と、能力の開発、形成の機能をもつ生産財としてとらえる。そのために
 教材の人間形成の機能、能力形成の機能を明らかにする。教材研究の方法として、教材のシステムを発見
し それを構造過程(構造化過程)として、モデル化してある。なお、文学教材のパターン、知識・情報教材のパタ
ーンを発見し、これもモデル化してある。学習過程、学習技能との関連とを明確にする。また、学習機器・学習用具
の機能を考えて教材と関連づける。
学習計画
 単元は、こんな人間性、こんな能力を開発伸長するという機能的場と、機能的話題・題材を選定して設
 定する。その基礎資料として、主題・題材・技能・態度・活動・資料・評価などをシステム化した、学年
別、国語科学習法が編成されている。また、単元の主題・目標(価値目標・行動目標)・内容・資料・方法・評価を
システム化した、単元のモデルを作った。
 単元の学習計画は、学習時間ごとに、行動目標・内容・教材・学習活動・学習評価をシステム化した、一時間の学
習単位を作った。それを、直観過程・分析過程、体制過程の順序に配列し、学習計画のシステムモデルを作った。
学習方法
 ここで学習方法というのは、教育課程の目標・内容・方法という場合の方法のことである。内容というの
 は、単元で学習する態度や技能、ことばに関する事項のことである。その態度や技能や言語要素を学習す
る活動が方法である。そのように態度や技能は学習活動をとおして養成される。そこで、ここでいう方法は、いわゆ
る学習活動をさしている。ここでは、そのような学習活動のさせ方について述べてみる。
@ 機能的方法とシミュレーション
 単元の学習は、機能的な場を設定して機能的に学習することを原則とする。ただし、機能的な具体的な場の設定の
困難な場合にはシミュレーションの方法による。たとえば、「手紙を書く」学習をする場合、手紙を書く経験を分析
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してその要素を抽出する。受取人・差出人・用件・はがき・宛名・手紙の形式・表現その他、それらをシステム化す
れば手紙を書く学習ができるという要素を押さえる。それらをシステム化して、手紙を書く学習のモデルを作る。そ
れがシミュレーションモデルである。モデル学習によって、機能的学習と同様の効果をあげようとする方法である。
A フローチャートによる学習
 学習者が学習目標を設定し、目標追求獲得の見通しを立て、学習方法を考えて学習活動をするというような主体的
学習・構造的学習をするために学習のフローチャートを使う。時間の初めにフローチャートを作りながら一時間の学
習の手順・見通しを明らかにする。その時間の学習の中心を確認する。フローチャートに従って、自己学習・共同学
習、一斉学習、あるいは機器操作、資料操作、学習作業などを進める。学習評価・学習調節を行う。
B フローチャートによる学習指導
 これは教師がフローチャートを作成し、それによって学習指導をする場合である。フローチャートを作ると、視覚
的、直観的に、学習指導のシステム、学習のシステム、学習指導過程のシステムがわかる。特に学習の準備過程・学
習過程・総括(体制)過程が明確になり、学習の中心が確認される。そのために情報提示・助言・指導が適時適切に
行われて、学習・学習指導のシステム化が容易になる。
C 学習指導過程のモデルによる学習
 学習指導過程を構成している要素を分析して、目標過程・方法過程・学習過程・能力過程・評価過程・調節過程・
獲得過程を求め、これをシステム化し、モデル化したのが、基準学習指導過程である。これにもとづいて、読解学習
指導過程、作文学習指導過程、聴解学習指導過程、談話学習指導過程が編成してある。
 これらの学習指導過程は、行動目標を立てる。目標追求の学習法を組織する。その方法に従って目標追求の学習活
動をする。学習活動の結果は自己評価してその結果の状況を自覚し反省する。反省にもとづいて学習調節をする。行
動目標を獲得するというようにシステム化されている。
 このモデルに従って学習を進めると、主体的学習・個性的学習・学習法の学習が可能になる。
                                                      30
D 学習過程のモデルによる学習
 学習過程は、直観過程・分析過程・体制過程というシステムモデルになっている。このモデルに従って、読解では
直観読み・分析読み・体制読みという読解過程モデルが作ってある。作文では、直観的に主題・題材を選ぶ。分析的
に表現内容を収集する。体制的に文章構成・表現をするという作文過程のモデルを作っている。このモデルに従って
学習する。
E 学習のモデルによる学習
 国語の学習は、次のようなシステムをもっている。@文章を読む(知覚)、A意味を理解する(語・文の認知)、B
意味を取捨する(選択)、C意味を組み立てる(組織)、D意味のまとまりを記憶する(体制)、E行動が変容される。
この学習のシステムをモデル化して、ことばの知覚・ことばの認知・ことばの選択・ことばの組織・ことばの体制
化、行動の変容とする。このモデルに従って学習する。要点を読みとる学習、概略を読みとる学習、想像しながら読
む学習、感動の学習など、みなこのモデルによって学習できる。
F 教育機器の活用による学習
 学習機器は、その教育的機能をよく理解し、学習指導過程に適切に位置づけて使う。児童がそれによって学習を進
めるようにすることを本体とする。
学習評価と
学習調節
 評価は、単元の学習前に行う診断的評価、単元の学習中に行う形成的評価、単元の学習の終わりに行う
 認定的評価の三段階に分けて行う。その評価の対象は、そこで学習する態度・技能・知識・思想などで
ある。診断的評価では、それらの発達の実態・実状を、形成的評価では、それらを学習する過程でその形成の状況を
それぞれ評価する。それによって、前者ではいわゆる診断的指導が行われ、後者では学習調節が行われる。最後の認
定的評価では、それらの学習後の習得状況を評価する。この場合、評価のあと、直接に学習につながることはない。
評価は、このような全体的なシステム、いわゆる評価体系をもっている。
 これらのうち、ここでは特に形成的評価、学習の過程における評価を重くみて、そのシステムモデルを作った。一
                                                      31
つは、学習指導過程の中に、評価調節過程として位置づけてシステム化してある。評価があって、調節がない、評価
がなくて調節がある、学習指導の実状に照らして、特に評価調節過程としたところに重要な意味がある。
 学習調節は、学習評価を前提とするものであるから、すべて学習の過程で行われる。したがって、学習過程の中の
ものであるが、便宜的にここにあげた。学習を確実にし、学習の生産性を高め、主体的・自己学習をする上に、学習
調節の技能、学習制御系を確立することは特にたいせつである。

 以上、実践国語科教育工学の概略を説明した。その理論や実際の細かいことについては、あとの各章に述べてある
ので、引き続き読破されたい。



                                                      32
第二章  教材のシステム研究は
どのようにするか
その考え方と実践
 
 教材研究は、三つの面をもっています。一つは、その教材
は、読み手にどんな知識や情報を与えるか、どんな感覚や心
情や思想を育てるかを研究する面です。普通これを人間形成
の機能の研究と言います。二つは、その教材で学習すると、
どんな文字・語句・文法が身につけられるか、どんな読む技
能や態度が育てられるかを研究する面です。これを普通、能
力形成の機能の研究と言います。三つめは、この教材の内容
やこの教材で学習する技能に対して、児童はどんな関心・興
味・必要を感じるか、また、児童の現在もっている技能との
関係はどうなっているかなどを研究する面です。
 この三つの面を総合的に研究するには、その教材の内容が
どんな過程をたどって組み立てられたか、その構造化の過程
を中心にして研究するのがいちばん効率的です。そこで、こ
の章では、その研究の基本的な考え方や手順を述べるととも
に、基本的な文学教材、知識教材、情報教材をとりあげて、
その実例を示しました。そこで、この章を読み終わったら、
次の問題について考えてみてください。
@ 一つの教材をとりあげて、教材研究の三つの面を具体的
 に押さえてみる。
A 教材の構造過程を作る上の要素・条件を取り出してみ
 る。
B 教材の構造過程と児童の学習と結びつく点をあげてみ
 る。
                                                      33


     教材のシステム研究の考え方・手順とそのモデル


 (1) 教材のシステム研究の必要
 教材というのは、単元の目標・内容・方法・資料・評価という場合の資料である。普通、読解教材には、児童の人
間性を開発伸長する内容的な価値としての知識や情報や感覚や心情や思想などと、それらを読みとるのに必要な国語
の技能とが、一体となって含まれている。その中の人間を育てる働きをする内容的な価値について研究するのが、人
間形成の機能の研究であり、国語の技能について研究するのが、能力形成の機能の研究である。
 ところで、この内容的価値としての知識・情報・心情・思想は、それぞれ一つの文章や作品として、構造化されて
いる。その構造化の状況をみると、知識や情報や思想などを説明している文章は、要旨や中心的事項を中心として、
筋道をたてて論理的に構造化されていて、そこにいろいろな構造のパターンがある。また、心情を表現した作品で
は、これも主題を中心にして、たとえば、紹介・発端・クライマックス・結末・後日談などのように構造化されてい
る。これにも、このほかに主題を展開するためのいろいろなパターンがある。読解学習は、一般に、この文章・作品
の論理や事件の展開のパターンにそって行われている。
 そこで、この文章や作品について、何がどんな過程をたどって構造化されたか、つまり、そのシステムを明らかに
することが、学習を効率的にするための最もだいじな仕事になる。
 (2) 教材のシステム研究の手順と方法
教材の機能を
調 べ  る
 教材を読んだら、まずこの教材は読み手に何を知らせようとしているのか、何を考えさせようとして
 いるのか、何を感じさせようとしているのかを考えてみる。すると、この教材は渡り鳥についての知
識を与えようとしている。この教材は、みつばちの生活についての情報を伝えようとしている。この教材は、父親の
                                                      34
子を思う深い愛情に感動させようとしているなどということがわかる。この読み手に知らせる知識、伝える情報、考
えさせる問題、感動させる心情などが、文章や作品のもつ内容的な価値で、それが児童の人間性の開発伸長に培う働
きをする。
 こうして、教材の人間形成の機能を明確に押さえると、単元の学習目標を身近なもの、具体的なものにすることが
できる。それをもっと具体的にすると、「いろいろな道について理解するとともに、だんだん便利な道をくふうして
きた人間の知恵に気づく」「渡り鳥についての知識を深めるとともに、自然の神秘に感動する」などということにな
る。これが、教材(文章・作品)の要旨や主題になり、また、学習の対象になる。
 ところで、この内容的価値の学習が、主体的に、積極的に、効率的に行われるかどうかは、いつに、その題材の要
旨や主題に対する児童の関心・興味・必要などにもとづく態度と、それを学習するのに必要な児童の能力とにかかっ
ている。そこで、この教材の内容的価値について、児童は、どんな興味・関心を示すか、どのように学習の必要性を
感じるか、あるいは、理解できるか、感動を覚えるかなど、学級の児童と比べて考えてみる。
 次には、この教材で、どんな漢字、どんな語句、どんな文法、どんな読解技能、どんな読解態度を理解し育てるか
を明確に押さえる。たとえば、語い抵抗、漢字抵抗はどうなっているか、文章・作品の全体あるいは部分を、どのよ
うな技能によってどのように読むかなどを具体的に、明確に押さえる。
 こうして、この教材のもつ人間形成の機能、能力形成の機能を明らかにし、その上に立って、児童にとって、それ
が適切な学習教材であるかどうかを判断する。
教材のパター
ンを調べる
 教材(文章・作品)の要旨や主題がわかったら、それがどのように筋道をたてて説明されているか、
 どのような過程をたどって展開表現されているかを考える。それが、文章・作品のパターン調べであ
る。まず、知識や情報や思想を説明している文章を見ると、そこに二つの説明の型がある。一つは、「道にはいろい
ろある(段落1)。土の道がある(段落2)。砂利の道がある(段落3)。コンクリート・アスファルトの道がある(段
落4)」というように、文章を組み立てている要素(段落)が、並立しているもので、これが「要素型」あるいは「並
                                                      35
立型』の文章である。他の一つは、「春になると里や野山にはいろいろな鳥が目につく(段落1)。冬になると、春目
についた鳥がいなくなり、春目につかなかった鳥が目につくようになる(段落2)。このように目につぃた鳥が急に
いなくなったり、いなかった鳥が急に現れたりするのは、昔の人には不思議だった(段落3)。しかし、今では、春
渡ってきて巣を作り、ひなを育て、秋帰っていく鳥と、秋渡ってきて春帰っていく鳥のいることがわかっている(段
楽4)。(以下略)」というように、文章を組み立てている段落が、相互にある条件によって結びつぃている、つまり、
段落が係り受けの関係で展開している。このような文章が「条件型」あるいは「係り受け型」の文章である。
 なお、この二つの型を貫いてぃるものは、一貫した筆者の説明の論理・筋道である。したがって、話題―解説―総
括、問題―事実―証明―解決、間題―肯定―解説―展開―問題―解説―結びなどさまざまな論理を展開している。こ
れを筆者の思考過程、認知構造などと呼んでいるが、これが、文章の構造化の過程を示している。この過程の認識が
重要である。
 なお、文章全体の構造化の過程を押さえるとともに、各段落の構成―要点と細部との関係―を明らかにする。文学
作品にもいろいろなパターンがある。「白いにわとり」のような単純な「くりかえし型」、「かずみのよめいり」のよ
うな「くさり型」、「かぶひき」のような「だんだん型」、「ぞうとくじら」のような「くらべ型」、「太郎こおろぎ」の
ように、紹介―発端―クライマックス―結末―後日談となっている「かたり型」・「小説型」などが基本的なパターン
である。この型が、児童の読む興味・心理、読む技能、感動・理解と密接な関係をもってぃる。
教材をシステ
ム化する
 知識教材・情報教材では、@要旨(中心的事項)とその展開のパターンを押さえる。A要旨(中心的
 事項)をささえる段落の要点(基本的事項)を押さえる。B段落の要点(基本的事項)との関係にお
いて細部(詳細)を押さえる。Cそこで学習する技能を押さえる。Cそこで学習する漢字・語句・文法を押さえる。
 これらの要素を、文章のパターンに従ってシステム化する。その場合、段落相互の関係を示す記号を、その段落の
初めに書く。記号は、「・」起こす、「↓」受ける、「」まとめる、「」広げる、「=」並べるなどとする。これ
らの記号は、段落の係り受け、展開、総括など形式的機能を示している。
                                                      36
 文学作品の場合は、の主題とその展開のパターソを押さえる。A展開のパターンにそって、サマリーとシーンを押
さえる・Bシーンごとに表現されていか心理・心情・事実・行動などの関係を押さえる。Cシーンの中心になる思
想、中心になる感覚・心情などを抑さえる。Cそれぞれのシーンを読む技能を押さえる。E場面・情景・心理・心情
など想像の単位を押さえる。F学習する漢字・語句・文法などを押さえる。
 これらの要素を、作品の展開のパターンに従ってシステム化する。
 (3) 教材のシステムモデル
 前に述べた方法で、知識・情報・思想などを説明し伝達する文章をシステム化するモデルを示すと次のようにな
る。

     (文 章)     (大 段 落)        (小 段 落)


 前に述べた方法で、文学作品をシステム化するモデルを示すと次のようになる。(構造過程)
                                                      37
主題  展開の
型 
中心にな
る心情・
思想 
事  実  関  係  の  展  開  想像の単位・場面・技能・語句・漢
字・その他 
      紹 介  人物の性
格 
いつ・どこ・どんな人物・どんな性格・どんな生活な
どを紹介する。 
おじいさん・やさしい・かさうり(人
物表象) 
発 端  心配でた
まらない 
ある日、雪の降るばんのことでした。冬の日のことで
す。こんなことが起こったのです。 
大みそか 雪の日
かさがうれない 

(場面表象)
(心情表象)
 (4) 教材のシステムと学習
 教材の人間形成・能力形成の機能の総合的な効率的な研究法としての教材のシステム化の手順・方法・モデルにつ
いて述べた。このように教材をシステム化すると、次のことがらが明確になる。@要旨・主題が確実に押さえられて
どんな人間性に培うかが明瞭になる。Aどんな国語の技能や態度を育てるかが明確に押さえられる。B要旨や主題の
成立の過程、状況が確実に押さえられる。C教材のどの部分のどのような学習で、どのような技能が育てられるかが
明確になる。C段落や場面の構成・機能が明確になり、その読み方がわかる。要するに、文章・作品の成り立つ過程
が明確になる。したがって、@単元の学習目標を立てる。A一時間の行動目標を立てる。B教材の学習計画を立て
る。C学習の範囲・内容、学習の方法を考える。D学習意欲を喚起する。E基本的な学習活動を設定するなど、学習
計画を立てたり、学習を進めたりする場合の最も基礎的な、最も有効な資料となってくる。もっと具体的に言えば、
発問を構造化したり、学習を構造化したり、構造的な思考力を育てたり、構造変換による創造的思考力を伸ばした
り、心理・心情の変化を押さえたりなどする場合の適切な資料ともなる。二以下に教材のシステム化の具体例を示
す。
                                                      38
       文学教材「太郎こおろぎ」のシステム


 (1) 「太郎こおろぎ」のシステムと学習指導
 文学作品は一般に、主題を中心として、場面や情景、人物の思想や心情や心理などが、一つのの流れとしてシステ
ム化されている。普通それはシーンによって表現され、サマリーによって展開されている。「太郎こおろぎ」は、「が
きだいしょうで、いたずらっ子の太郎のユーモラスな親切」を主題とした作品である。それは「紹介―発端―展開―
クライマックス―結末―後日談」という典型的な「かたり型」のパターンによって表現されている。
 この主題展開のパターンにそって、太郎の性格・事件とそれにまつわる場面のようす、人物の心理・心情がシステ
ム化されてクライマックス・結末へと流されている。このような作品のシステムを明確に押さえると、前節に述べた
ように、どんな心理・心情につちかうか、どのように直観読み、分析読み・体制読みをしたらよいか、その行動目
標、範囲、方法などがはっきりし、学習の評価の基準や方法が明らかになる。また、各場面でどんな想像表象を描き
ながら読んだらいいか、事件の展開とそれにまつわる心理・心情の変化をどう押さえたらいいかなどが明確になる。
 (2) 「太郎こおろぎ」のシステムの作り方
@ 作品の主題を押さえる――作品をすなおによく読んで的確に主題を押さえる。クライマックスを中心にして。
A 作品のパターンを押さえる――主題の展開のパターンを押さえる。前記の通り。紹介語りの押さえ方に注意する。
B 各場面の中心になっている思想・心情を押さえる――主題の流れ、展開・起伏などを明らかにする。
C 事件の展開・事実関係を押さえる――事件や事実は、つねに心理や心情などがからまりあいながら展開している。
 その関係、展開、からまりあいを、「ことばと記号」を使って明らかにする。この作品では、場面の変化、時の推
 移、重要な心情、重要な事実などを、それぞれ記号を使って区別してある。
D 想像読みをする場面を単位ごとに押さえる。場面ごとの特性を押さえる――サマリーは物語の筋の叙述で、シー
 ンは空間的広がりや、時間的経過の中で変化していく場面・心理・心情・行動・人物などの表現・描写である。シ
 ーンの部分は想像表象を描きながら読む。そこで、サマリーとシーンの区別をはっきりさせる。つぎに、場面を想
 像の単位ごとに区分する。さらにその場面でどんな想像表象を描けばいいのか、場面の内容をはっきり押さえ、そ
 の特性から判断して、場面表象・心情表象・行動表象・人物表象などと書き出す。次の構造過程では、想像表象を
 描きながら読む技能を働かせる学習の単位として、点線で囲んだ。
E たいせつなことばを押さえる――想像表象を描くときに、読み落としてはならない重要なことばを書き出す。た
 とえば、次の構造過程の下欄にある「……のあとをうけて」のことばは、太郎がしのちゃんをかばおうとした気持
 ちを、表現しているたいせつなことばである。このことばは、そのまま想像表象を評価する時の基準になる。
 以上の手順を踏んでシステム化する。その実例を次に示す。
 (3) 「太郎こおろぎ」のシステム(構造過程)(語り型)
                                                      39



心情
思想
事  実  関  係  の  展  開  想像の単位・場面・技能・語句・漢
字・その他           






















































          
紹介




 









  

いつ―わたしが、まだ二年生か三年生のころ
どこ―さびしい山おくの小学校
    |
    ├小さな学校
    ├ろうかと教室の間には 紙しょうじ―┬―しょうじ学校の道
    └運動場は、道を広くしただけの所 ―┘ 運動
       └→ときどき、牛がモーと鳴きながら 車をひいて通る
              
だれ―太郎というこども            ┌いりまめの皮
    |                  ├えんぴつのけずりか
    |                  |す
    ├いたずらっ子―ゆか板のひみつのあなに┴わかえだで作った刀
    ├がきだいしょう―木の枝の刀で女の子・弱い子を追い回す
    └なんとなく親切―「いじめるやつがいたら、なかしてやる。」
 oひやかす  がきだいしょう


oしのばせる  わかえだ 
                
40

人物表象
 (性格)











 










   
 ある日 

しのちゃん―小さなブラシのついた新しい消ゴムを持ってきた
        ↓
太   郎―「よしよし、使ってやる」手がすべって、ひみつのあな
        ↓         から落ちる
しのちゃん―泣きだしそう
        ↓
太  郎―「弱虫、泣くな。おれが取ってきてやる。」
        |
        └→すぐ、教室をとび出す

         |
         
o何やら


 場面表象


o手がすべる

 心情表象








 








 
           ↓
太   郎―教室のゆか下に はいっていった
       └→消しゴムがなかなか見つからない
           ↓  
         じゅ業の始まるかねがなる
           ↓
しのちゃん―(こまって)下ばかり見ている
           ↓
先   生―「しの、下ばかり見て、何している。」
           ↓
 



 心情表象



 

              41










 
かし
ばの
うち
|ゃ
緊ん
迫が
・太
弛郎
緩を
  しかし      ↓
しのちゃん―┌自分の消しゴムを取りに行ってくれた太郎を 先生┐
      └に言うのは 悪い               ┘
           ↓
こおろぎが一ぴき、あなからとび出した
           ↓
「こおろぎが泣いているんです。」と 言ってしまう
           ↓
先   生―「何、こおろぎ、なんて鳴いている。先生に教えておく
      れ。さあ―。」
           ↓
しのちゃん―「リ、リー。」と 言いかける
           ↓
み ん な―どっと、わらう
           ↓
しのちゃん―目になみだをためて下を向いてしまう
           | 
 oとっさに

 o言いかける

 







 
か太
ば郎
うが
|し
ユの
|ち
モゃ
ラん
スを
 
 ところが      ↓
そのとき―ゆか下から しのちゃんのあとをうけて「リリ、リリ、
      リー。」
           ↓
先   生┬―(びっくりして)・耳をすます
子どもたち┘
           ↓
や が て―くすくす わらいだず
           ↓
だれかが―「太郎こおろぎだっ。」
           |
今 度 は      ↓
先 生 も―ふき出してしまう
 o………のあとをうけて

 oふき出す
 o耳をすませる
 
             42


 思い
 出
こおろぎが嗚くころになると、いつも思い出す→楽しい山の小学校   こおろぎ←→楽しい山の小学校 





太   郎―今、村の村長さん
          ↓
      二、三年前―りっぱなコンクリートの学校をたてた
 太郎
  

 村長―コンクリートの学校をたてた

 o風のたより    
                                                      
      知識教材「けむりのゆくえ」のシステム

 (1) 「けむりのゆくえ」のシステムと機能
 この文章(光村六上)は、「けむりは空気中に浮かんでいる小さなつぶの集まりで、とちゅうで落ちたり、雲やき
りのしんになり、雨となって落ちたりするものである。」という、けむりについての知識を、四つの大段落、二十四
の小段落に組み立てて説明している。その説明のしかたは、けむりのゆくえの順序を追って、筋道を立て、論理的に
進められている。したがって、条件型(係り受け型)の文章になっている。しかも、論理を展開する場合、読み手の
関心・興味を引き起こすために、課題を出しては、それを解説していくという「心理的論理型」をとっている。説明
はやさしい敬体である。このように、この文章は、論理的な考え方の発達してきた六年生に、科学的な知識を与える
とともに、自然の不思議さや科学者の苦心努力のあとを考えさせずにはおかない。そこに児童の人間性につちかった
り、科学的な考え方、論理的考え方を育てたり、正確に読む力を育てたりする機能がある。
                                                      43
 (2) 「けむりのゆくえ」のシステム(構造過程)の作り方
 次に、「けむりのゆくえ」のシステム(構造過程)を作る手順・方法を述べてみる。
 @まず、全文を直観的に読んで、「けむりは、空気中に浮かんでいる小さなつぶの集まりで、とちゅうで落ちたり、
雲やきりのしんになり、雨になって落ちたりする。これは、科学者によって解明された。」という「要旨」を読みとる。
これは、中心的事項として、図式の中心におく。A次に、この要旨は、四つの大段落の要点(基本的事項I)を柱と
して、課題を設定しながら段階的に述べられていることを読みとる。つまり、ァ「けむりとは何か」ィ「空気中に散
ったけむりのその後」ゥ「けむりの、雲やきり、兩との関係」ェ「解明への努力」という順である。この四つは、要
旨を分析した柱であるから、具体と抽象の関係を示す「――」で結ぶ。また、これら相互は、条件的に展開しているの
で、↓、などで結ぶ。B次に、この大段落ごとにまとめて読み進めると、その要点をささえる柱として、各小段落
の要点(基本的事項U)が読みとれる。これを、それぞれの大段落の下に位置づけ、抽象関係を表す線で結ぶ。この
小段落には、段落の番号をつけ、その形式的機能を表す記号をつける。C次に、各小段落ごとに、要点との関係にお
いて細部を読みとって図式化する。段落3・6・7のように、要点を支えている叙述を押さえ、指示語、接続語など
に注意して、要点との関係を「――」で結ぶことで、段落内もシステム化する。
 このようにして位置づけられた段落は、それぞれ「意味的機能」を持っている。すなわち、基本的事項IのFの要
点が、「けむりは、空気中にうかんでいる固体や液体のつぶの集まりである。」ことを述べるために、段落1では、
「けむりとは何か。」と「話題を提示」し、2・3で、「けむりがつぶであり、小さいこと。」を「解説」する。次に、
4で「けむりのつぶは、固体のことも液体のこともある。」と、次に述べることを「概括」しておいて、5・6・7
でその「説明」をするというぐあいである。この意味的機能をも明確に押さえ、教材のシステム化を完成するのであ
る。
 (3) 「けむりのゆくえ」の学習方法と学習内容
 こうして文章がシステム化されると、その学習方法が明らかになる。それは、文章が構造化された順序、筆者の論
                                                      44
中心的事 基本的事項T  段 意味  基 本 的 事 項 U
項(要旨)(大段落要点)  落 機能  (小 段 落 の 要 点) 詳      細

            45


                                                      46
理の展開に従って読み進めるということである。具体的には要旨―→大段落の要点―→小段落の要点―→詳細とい
うように、直観読みから分析読み、最後に体制読みをするという学習の過程をたどる。この読み方によって、要旨、
要点、細部を関係的に読みとる能力や、事実と意見を読み分ける能力、読みとったことを体制化する能力が学習され
る。この過程で、必要な文字や、語句・文法等の基礎的な支持技能も当然学習されることになる。このように文章の
構造過程は、何を、どう学習するかを示すものである。
 (4) 「けむりのゆくえ」のシステム (構造過程)(条件型)(四四〜四五。ページ参照)


     情報教材「雪国の子どもたち」のシステム


 (1) 「雪国の子どもたち」のシステムと機能
 この情報文は、情報話題「雪国の子ども」を中心にして、情報事項を「雪国の子どもたちはたいへんな生活をして
いる」「雪国の子どもたちはこんな元気な生活をしている」「雪国の子どもたちにはこんな楽しい生活がある」という
ように、大きく三つあげ、その中をさらにいくつかの小さな情報事項に分けて説明し伝えている。その説明の仕方
は、こんなことがある、こんなことがあるというように並立的になっている。要素型(並立型)の文章である。
 こういう情報は線的情報と呼ばれるが、また、文章に書かれている情報であるから、文献情報とも書きことば情報
とも言われている。そこで、この書きことば情報を読むと、雪国の子どもたちの生活についてのさまざまな情報が得
られるとともに、自然に適応しながら生きていく人間の姿、人間の知恵に気がつく。この情報文は、このような人間
性の開発伸長につちかう機能をもっている。また、情報意図を読みとる技能、情報概略を読みとる技能、情報事項を
読みとる技能、情報詳細を読みとる技能、情報事実と情報意見とを読みわける技能(批判読みの技能)などの諸技能
を形成する機能ももっている。
                                                      47
 (2) 「雪国の子どもたち」のシステム(構造過程)の作り方
  「雪国の子どもたち」は、前に述べたように要素型の情報文であるが、次にそのシステム作りの手順を述べてみ
る。
@ まず、全文を読んで、「雪国の子どもたちは、たいへんなこともあるが、雪にまけず元気に楽しく生活している」
 という情報意図を押さえる。
A 次に情報意図をささえている情報事項「通学がたいへんなこと」「雪おろしがたいへんなこと」「家のまわりでそ
 りやスキーで遊ぶこと」「広場で雪がっせんをし、雪だるまを作り、雪のちょうこくを作ることもあること」「かま
 くらを作ること」「黒い土の現れるのを待つこと」を押さえる。(小段落)
B 情報事項ごとに、情報事項と情報細部との関係を押さえる。つまり、小段落内の構成を明らかにする。この関係
 は、さまざまであるから特に注意して読みとる。(詳細)
C 各情報事項を押さえたら、それらを情報意図に照らして、「雪国の子どもたちの生活はたいへんである」「雪国の
 于どもたちは、元気に生活している」「雪国の子どもたちにも楽しい生活がある」というように、意図を分析して
 押さえる。(大段落)
C 情報意図と情報事項との関係を考えてシステム化する。情報意図は、これを「たいへん」「元気」「楽しみ」の三
 つに分析され、この三者は並立の関係になっている。情報事項は、分析された意図に応じて、並立している。情報
 事項と情報詳細との関係は、全体と分析、個と総括の関係などになっている。これらの諸関係は記号によって明確
 に示す。
 上のような手順によると、「雪国の子どもたち」をシステム化することができる。その実例は、次のとおりである。
 (3) 「雪国の子どもたち」のシステムと学習指導
 上のようにシステム化すると、単元の学習目標や一時間の学習目標としての行動目標をたやすく立てることができ
る。また、学習指導の計画を立てたり、学習方法を考えたりすることも容易になる。また、情報事項と情報細部との
                                                      48

        49

                                                      50
関係は、各段落の中に記号で示されているから、その通りに読みとらせればいい。また、情報意図とその分析の結果
や情報事項もそのまま書いてあるから、学習の結果を評価する場合の基準や方法も容易に立てたり、決めたりするこ
ともできる。そのほか、この構造過程の読み方いかんによって、いろいろな学習指導の便宜を得ることができる。
 (4) 「雪国の子どもたち」のシステム(構造過程)(四八〜四九ページ参照)



      作文教材のシステム



 作文教材は、前に述べた読解教材と質が異なるので、この項では、「作文教材はどのようなものが望ましいか。ま
た、それをシステム化するには、どうすればよいか」などの観点で述べる。
 まず、作文教材の構造を概観すると、次の表のようになる。
    (教材の機能)        (作文の目的)  (教材に含まれるべき技能)
 ○作文を書く意欲を起こさせる     ・自己表現    ○題材を選ぶ技能
                    ・伝  達    ○書く内容を想起する技能
 ○ものの見方・考え方をひろげ深める  ・記  録    O書く内容を収集する技能
                    ・説  明    ○アウトラインをつくる技能 
 〇作文の技能を養成する                 〇文章に書き表す技能
                             O文章を修正する技能
 次に、書く目的に応じた作文教材のシステム化について、例をあげながら考えてみる。
 (1) 心情を豊かにする作文の教材――心に残ったできごとを書く――
【教材例1】「飛びばこ」(光村四上)
                                                      51
 この教材は、今まで飛びばこが飛べなかった子が、先生や友だちにはげまされて飛べるようになった喜びを飛
べなかった時の気持ちと対比しながら書いた作文を中心に構成されている。
 教材の機能――身近な生活に取材しているので、自分も書いてみようという意欲をかきたてるものと思われる。し
かし、ここでは、アウトラインをつくる技能・文章に書き表す技能の養成が中心的なものとなる。
 教材の構成――「飛びばこ」の作文で、何を中心に書こうとしているかを囲みの中にまとめ、次に〔組み立て〕と
して、アウトラインを箇条書きにし、そのあとに、できあがった作品をあげている。
 学習過程における教材の位置づけ――この教材は、アウトラインの作り方の学習に有効であると同時に、アウトラ
インをどのようにして作品に仕上げるかという学習にもよくはたらく。また、心情をどのように表現するかの技術の
学習にも役立つ。したがって、この教材は、アウトラインを作る過程、文章に書き表す過程で有効に使われる。
 教材と技能との結びつけ――具体的に、教材のどこを使って、どういう技能を身につけるかという方策を立てる。
   わたしは、「さっきの調子だ。」と、自分に言い聞かせた。思い切りかけて、一気に飛んだ。飛べない。
  走ってきた勢いも、ふみ板の所まで来ると弱まってしまう。ふみ板が代わっただけたのに、もう、さっき
  の勢いが出なくなってしまった。――場面のようすがよくわかるように書き表す技能
   放課後、わたしは、先生に、「あしたの体育も、飛びばこね。飛びばこね。」と、何度も念をおして、た
  のんだ。(飛びばこが飛べたうれしさが短いことばの中によく表現されている。)――心情を豊かに、さな
  がらに書き表す技能
 以上、教科書教材「飛びばこ」を例にシステム化の手順を考えてみた。これをまとめてみると、<教材の機能を明
らかにする><教材の構成や型を調べる><学習過程における教材の位置づけをする><教材と学習技術の関係を明
確にする>のようになる。
 (2) 考えを深める作文の教材――日常生活の事象の中から、社会的な問題をとらえて、解決の方向で、感想や意見
  を書く場合――
                                                      52
 ここでは、教材のシステム化を、教材の選定の仕方とからめて述べる。
教材の機能――ものの見方・考え方をひろげ、深める働きをするものであるかどうか。
作品の主題――社会的なものの見方・考え方がわかるものであるかどうか。
間題のみつめ方――事実をとらえ、亊実にもとづいて、自分の考えを深めているか。
思考法――なぜ、どうしてなどの疑間をもって考えているもの、わけや原因を考えているもの、仮定して問題を考え
ているものであるかどうか。
文章表現技術――感想や意見をのべる場合の文章表現はどうなっているか。文末表現――断定、直接的、婉曲的、推
量的、願望表現など、意志決定を書きわけているかどうか。
 以上のような項目についてまとめてみると、考えを深める作文教材の一つのシステムができあがる。
 【教材例2】「親切ということ」
   (教材の機能)  (作品の主題)   (問題のみつめ方)  (思考法)     (文章表現技術)
 ものの見方・考え方を 親切は、感謝され  事実にもとづいて、自  内省的   ・要旨を明確に書く
 深め・広める     るためにするもの  分の考えを深めている        ・考えをまとめて書く
             ではない                       ・事実に即して感想を書く
                                        ・根拠を明らかにして意見
                                         を書くなど
 「考えを深める作文」の教材として備えていなければならない条件をあげ、それらが、教材の中にどのように具体
化されているかを調べ、組織するわけであるが、組織(システム化)したものが、学習(指導)の各過程のどこで、
どのようにいかされるべきかも明らかにしておきたいものである。
 また、「考えを深める作文」では、題材をみつける目を育てることもたいせつであるから、教材とする作品を一点
とせず、いくつかの異なった作品を与えることも必要であろう。
                                                      53
 (3) 知らせるたに書く作文の教材――説明文・情報文を書く場合――
 この種の作文は、従来おろそかにされてきた・しかし、これからは、どんどんとり入れなければならない分野であ
る。説明文・情報文を書くための教材をシステム化するのに必要な項目をあげてみる。
   (機 能)              (組み立て)      (教材に含まれる文章表現の技術)
説明・正確にわかる          ・情報話題と情報事項、情 ・要点や要件を落とさずに書く技術
  ・その通りに行動や作業ができる   報のまとめがはっきりし ・意図を明確に書く技術
  ・正しい知識が得られる       ていること       ・事実を正確に書く技術
情報・価値のある、真実の、正確な情報 ・情報話題と情報事項の関 ・筋道を立てて書く技術
   を提供する            係がはっきりしているこ ・事実と感想・意見とを書き分ける技術
  ・考えや行動を起こさせる      と           ・箇条的にまとめて書く技術
                                ・表解・図解・絵などを使って書く技術など
 教科書によい教材が見当らない場合は、児童作文を教材化する。児童作文の例としては、「読んだ本の紹介」「おも
ちゃの作り方と遊び方」「動物園でみてきたパンダについて」「学級新聞にのせて知らせるために書いた記事」などい
ろいろ考えられる。情報の文章を教材化する時にたいせつなことは、情報意図をはっきりさせ、その意図によって内
容を取捨選択することである。
 (4) ものごとを正しくみつめる力を伸ばす作文の教材――見学記録・観察記録――
 記録の作文学習のための教材のシステム化の観点は次のようになる。
    (機  能)                    (教材に含まれる文章表現の技術)
 ・学習に役立つ                  ・要点や用件を落とさずに書く技術
 ・生活に役立つ                  ・事実を客観的に書く技術
 ・次の行動の参考になる              ・事実を具体的に書く技術
                                                      54
 ・思い出す、考える、行動するための資料となる   ・主観的認知と客観的認知を書きわける技術
                          ・箇条的にまとめる技術
                          ・表解・図解などの技術


                                                      55
第三章  単元の学習はどのように
システム化するか
その考え方と実践
 この章には、数科書の単元の組み立てはどのようになって
いるか、単元展開の計画はどう立てるか、一時間の授業の学
習活動はどのように組み立てるか、また、一つの学習活勵は
どのように組み立てられているかなどについて。考えたり、
計画を立てたりする場合の考え方や方法やモデルが書いてあ
ります。
 このように、単元や授業や学習活動などのシステムの要素
を選び出したり、それを、どのように組織したら最も適切な
システムができるかを考えたりすることをシステム設計とい
います。
 その結果、一つの標準的なパターンが得られます。この標
準的なパターンが、そのモデルです。
 モデルができていると、それにあてはめて考えたり、計画
を立てたり、授業を進めたり、学習活動を組み立てたりする
ことができるから、たいへん便利です。
 この章を読まれたら、教科書の読解単元を取り上げて、そ
の構成や展開の計画を立ててみてください。
 また、ふだんの授業を、この授業のシステムの方法で、組
み立ててみてください。
 きっと、いい学習が展開されるようになると思います。
                                                      56
     単元の学習のシステム設計とその考え方


   システムとシステム設計

 (1) 日常、単元の学習はどのように行われているか
 わたしたちは、ふだん教科書の単元によって学習している。しかし、「単元はどのように組み立てられているか。」
「何をねらって、どんな技能を働かせて、目標を達成するか。」などということは、あまり考えないで授業をしてい
る。
 また、読解、作文、読書など、新しい単元を作って学習を指導する場合もあるが、この場合でも、単元を組み立て
ている学習目標・学習内容・学習資料・学習方法・学習評価などについて、具体的に考えて、科学的に組み立てて授
業をしてはいない。これでは、効率的な、生産性の高い学習を進めることは困難である。
 だから、単元を計画する場合でも、授業を進める場合でも、学習活動を展開する場合でも、それぞれを組み立てて
いる要素を分析して選び出し、それらを科学的・工学的にシステム化して学習を指導する必要がある。では、単元や
学習をシステム化するにはどうしたらいいか、その考え方、手順・方法などについて考えてみることにしよう。
 (2)  システム・システム化とは何か
システムと
はなにか
 システムというのは、いわゆる構造というよりも、もっと、体系・系統に近い意味をもっている。わた
 したちは、その構造と系統とを同時にとらえて、システムを「構造化過程」として、これまで長い聞研
究を続けてきた。そこで、そのシステムの本質を箇条的に言ってみると、@めがける目標があること。Aその目標を
追求する過程(流れ)があること。Bその過程にそって、システムの要素が、最も適切な関係で組織されているこ
と。Cそれらの要素はそれぞれ独自の働きをしながら、他の要素と有機的に結びついていること、ということができ
                                                      57
る。このような一つの全体的な「目標を追求するための過程としての組織」をシステムと考えている。
システム化
とはなにか
 したがって、システム化というのは、最も適切な生産性の高いシステムを作ることである。たとえば、
 「学習をシステム化する」と言えば、学習目標を立て、それを追求し獲得するための、生産性の高い適
切な学習活動のシステムを作って学習することである。それをもう少し具体的に言ってみると、@まず、科学的な具
体的な学習目標を立てる。つまり行動目標を立てる。A次に、その目標を追求するための学習過程を分析して、目標
過程、方法過程など要素過程を選び出し、それを適切に編成して学習過程を作る。B次には、学習方法を分析して、
基本的な学習活動を選ぶ。さらに学習活動を分析して、下位目標、教材、学習技能、学習態度などを選び出しそれら
を適切に組み立てた学習活動を設定する。C設定した学習活動を、目標追求の過程にそれぞれ位置づけて、組織す
る。このような手順で、システムを作っていく。それがシステム化である。
 (3) システム設計はどのようにするか
 前に述べたようにシステム化するために、システムの要素を分析抽出したり、要素の機能や要素間の関係を考えた
り、それを目標追求の過程に適切に組織したりする。こうしてシステムモデルを作ることが、システム設計である。
システム設計には、二つの手続きがある。一つは、システムモデルを発見することであり、他の一つは、システムを
創造してモデルを作ることである。次に、その手順・方法のあらましを述べてみる。
システム
の発見

 教材(文章・作品)について、それはどんなシステムをもっているかを発見する。これについては、第二
 章の教材研究にくわしく述べてあるので省略する。ここでは、目標を追求する読む活動のシステムの発見
の仕方について考えてみる。
 たとえば、文学作品を読んで、ある場面に感動するという場合、それはどんな過程をたどって成り立つかを分析し
て、システムを発見する。もともと感動は、直観的・瞬間的な行動であるが、それを分析すると、次のようになる。
 @場面を読む。(言語刺激を受ける)。Aことばの刺激によって場面表象が描かれる。B場面表象が描かれるとある
気分・情調を感じる――感動する。これは感動の成り立つ過程、状況を明確に説明している。そうすると感動すると
                                                      58
いう行動は、@言語刺激を受げる。A想像表象を描く。B気分・情調を感じるという過程をたどって成り立つことが
わかる。それをシステム化すると、@作品を読む。A想像表象を描く。B気分・情調・感動を覚えるという感動過程
が得られる。これがシステムの発見である。
 また、文章の段落を読んで、要点を読みとる学習をする場合、その学習行動を分析してシステムを発見し、それを
要点を読みとる学習過程としてシステム化する。その手順を述べてみると、@段落を読んで直観的に要点を読みと
る。A要点を支えている細部を読みとる。B細部と要点との関係を考える。C要点を確認する。このような過程をた
どって要点を読みとる学習行動は進められる。これをシステム化すると、要点の学習過程モデルが編成される。
システム
の創造

 システムの創造というのは、システムの要素を抽出して、それを組み立てて新しいシステムを作り出すこ
 とである・たとえば、単元を構成する場合に、@学習目標を設定する。A学習目標を達成するのに必要な
学習内容(態度・技能)を設定する。Bその態度・技能が活発に働く学習活動を設定する。C目標を獲得するのに必
要な内容的価値、 態度・技能を内にもっている教材を選定する。 D目標・内容に示された内容的価値を獲得する態
度・技能について、評価の観点、基準・方法を設定する。このように、目標・内容・方法・資料・評価の五つの要素
が、それぞれの機能を果たしながら、相互に有機的な関連をもったシステムをつくる。
システム
設計とは

 これまでにたびたび述べたように、システムを作る場合には、@システムの要素を抽出して決める。Aそ
 の要素の機能と構造を明らかにする。B要素相互の関係・関連を考えて、最も適切な状況において過程的
に組織する。そして、システムのモデルを作る。このような手順を経て、最も適切なシステムのモデルを作るための
計画、図引き、組織をすることが、システム設計である。国語科の学習指導に当たっては、単元構成、単元展開、学
習指導過程、学習活動、学習法、学習教材、授業などについて、それぞれシステムを設計しモデルを作ることが考え
られる。次にそれらについてのシステムモデルをあげてみる。

   単元の学習のシステム設計
                                                      59
 (1) 単元のシステムモデルの設計
 単元を構成する要素を分析して、学習目標・学習内容・学習資料・学習方法・学習評価の五つとして、次に示すよ
うに相互に有機的な関連をもつようなシステムモデルを設計する。
  ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐
  ↓                                                     ↓
(学習目標)―→<(学 習 内 容)←――→(学 習 資 料)←―――→(学 習 方 法)>―――→(学 習 評 価)
  
価値目標を
できる限り
具体的に設
定する 
 価値目標を獲得する
のに必要な態度、処理
技能、支持技能を設定
する 
 目標とする内容的価値と内
容とする態度・技能とを含む
教材を選定する 
 上記の態度・技能を使
って、目標を獲得できる
学習活動を設定する 
 目標・内容に示された
価値獲得の態度・技能に
ついて、評価の観点・基
準・方法を設定する 

 このシステムの中では、特に目標と内容と方法の三者の関係の見方に注意する。「学習目標」は「内容的価値」で
その内容的価値を読みとる「技能と態度」が「学習内容」となっている。これは「内容的価値を読みとる技能・態
度」というように、内容的価値とそれを読みとる技能とを一体的に考える、技能を機能的にみる立場である。また、
内容的価値を読みとる技能を働かせる活動が「学習活動」であって、それが「学習方法」となっている。このよう
に、学習活動は、内容的価値を獲得・生産する技能を働かせる方法としてシステム化されている。
 (2) 単元展開(学習計画)のシステムモデルの設計
 単元の学習計画をたてるための要素として、時間・目標・技能・資料・活動・評価・機器用具の七つを抽出し、こ
れらの要素を目標を追求する過程に位置づけ、相互に有機的関連をもったシステムモデルを設計する。
 過程・時   学習目標――→学習内容――→学 習 資 料――→学 習 方 法―――→学 習 評 価   機器・用具 
直観(  )
分析(  )
体制(  )
 
その時間の
行動目標を
設計する 
目標を獲得す
る態度・技能
を設定する 
その時間に学習す
る教材の範囲と内
容的価値を設定す
る 
左記の態度・技能が
働く学習活動を設定
する 
行動目標の到達度
を評価する観点・
基準・方法を設定
する 
活動に必要な
機器・用具・
資料を配当す
る 
                                                      60
 (3) 授業のシステムモデルの設計

 一時間の授業は、普通次のような要素で成り立っている。@学習興味、学習能力をもった学習の主体者としての児
童。A教育技術を身につけた指導者としての教師。B児童に教育的刺激を与える教室という環境。C学習する内容的
価値と技能とを内にもつ教材・資料。D効率的な学習を進めるための授業形態。E授業形態、学習形態に応じて使わ
れる教育機器・用具。Fこれらを大きく包み、授業に志向を与える学習目標と学習の過程などである。
 これらが有機的に結びついて、学習の場と学習の過程とが組み立てられる。たとえば、児童の学習の興味や必要と
教材の内容と学習の目標、児童の学習能力と学習する技能と教材の内容、学習する技能と教材の内容と学習活動、学
習活動と授業形態と教育機器と学習過程、これらが相互に最も適切な条件・状態で結びつくと授業に活気がで、教育
効果があがって、生産性の高い学習になる。これらの授業の要素を抽出し、各要素の機能を明らかにし、授業過程に
そってシステム化する。
 ここでは、特に、教材の内容と、児童の学習意欲、学習能力と、目標の明確な学習活動とが、最も適切な状況でシ
ステム化され、それに教師の指導力がうまく結びつくといい授業が展開される。なお、いい授業、生産性の高い授業
は、いい学習活動――基本的な学習活動が、あとで述べるように、目標を追求する過程に適切に位置づけられ、組織
されて、初めてその機能をじゅうぶんに発揮するものであることを忘れてはならない。
 (4) 学習指導過程のシステムモデルの設計
 学習指導過程は、一時間の授業の中で、児童が主体的に学習を進める過程、教師がそれを指導する過程である。こ
の学習指導過程を組み立てている要素過程を分析し抽出すると、七つの過程になる。@目標過程。A方法過程。B学
習過程。C能力過程。D評価過程。E調節過程。F獲得過程がそれである。これらの要素を組織して学習指導過程の
モデルを編成するのであるが、それは第五章に詳しく述べられているので、参照されたい。
 (5) 学習活動のシステムモデルの設計
 学習活動、たとえば読解活動というのは、児童が知識や情報を求めたり、思想や心情を育てたりするために、文章
                                                      61
や作品を読んで、いろいろな内容的な価値を獲得したり、生産したりするとともに、それに必要な技能・態度を育成
する活動である。そこで、この読解活動を分析してみると、次の要素によって組み立てられていることがわかる。
 @読みとる内容的価値(文章・作品の内容)。A読みとる技能・態度(処理技能)。B活動をささえる文字・語い・
文法(支持技能)。C読みとる活動の形態。D読む目標。E読む興味・意欲。
 これらの要素を、その機能、その発達の状態に応じて適切にシステム化すると、活発な学習活動になる。なお、こ
の学習活動は、理解活動(読解活動、読書活動、聴解活動)と表現活動(作文活動、談話活動)とに分けられる。
理解活動の
システム

 例として、概略を読みとる学習のシステム設計を試みてみる。まず、この学習活動を分析してみると、
 @概略を読みとる学習の目標を確立する(知識のあらましを知る、そのための課題を考える)。A概略
を読みとる文章としての適否を判断する(要素型がいい)。B直観読みの技能の実態を考える。C直観読みの形態を
考える。D概略を読みとる必要性を考える(児童の興味・意欲)。次に、これらの要素をシステム化するわけである
が、もう少し詳細に考えてみる。教材があまりむずかしいと直観的に概略を読みとることができないから、文字抵
抗、語い抵抗を考えてみる。また、各段落の要点と細部との関係を考える。そしてその適否を考える。また、直観的
に概略を読みとる技能の実態をよく考えてみる。さらに直観読みの活動の形態についても、また、その過程について
も考えておく。各段落の要点にサイドラインを引きながら読んで、読み終わった時点で、それらをまとめて概略を読
みとる。書き出す。このようにして、概略を読みとる学習活動のシステムを設計する。実際には、このような手順を
踏んで、概略を読みとる学習活動のシステムモデルを作っておく。
表現活動の
システム

 表現活動は、表現活動の目標と、表現意欲と、表現する内容と、それを表現する技能とが、ぴったり結
 びつかないと、活発な表現活動が行われない。つまり、いい文章が書けない。表現活動のシステム設計
は、いい文章が書けるようにするために、題材の選択から、書く内容の収集、書く内容の組織、つまりアウトライン
作り、それにそって書き表す表現活動、表現の結果を評価し修正する、昔の推考、今の修正活動、表現の結果を処理
する処理活動に至るまでの全体にわたってシステム化することがたいせつである。この表現の全体を分析してみる
                                                      62
と、次のようになる。@何のために何を書くか表現の目的を確立する。Aこの表現の目的にあった題材を選択する。
B表現の目的にあわせて書く内容を収集する。C表現の目的に応じて文章を構成する。D表現の目的が達成できるよ
うに内容を表現する。E書いた文章は、それで表現の目的が達成できるかどうかという点から評価し修正する。F表
現の目的に応じた処理の仕方をする。というように表現学習全体がシステムをもっている。また、その要素としての
学習活動がまたそれぞれにシステムをもっている。それらのシステムを発見し、それぞれのシステムモデルを編成す
る。
 以上、単元、単元の学習のシステム設計の仕方について概説した。以下その具体例について述べることにする。

     単元とその学習計画のシステム設計とそのモデル

 (1) 文学単元「太郎こおろぎ」のシステム設計
 前節の単元のシステム設計の考え方に従って、文学単元「太郎こおろぎ」のシステム設計をしてみる。
 まず、学習目標を第二章第二節の文学教材「太郎こおろぎ」のシステムに従って、その主題をもとに、できる限り
具体的に設定する。次に、それを獲得するのに必要な態度・技能を設定する。さらに、これらを使って感動を得るた
めの適切な学習活動を考え、活動ごとに評価の観点・方法・基準を明らかにする。次にそのモデルを示す。  62〜63
学習目標  学習内容(△態度 ○技能)  学習方法(学習活動)  学   習   評   価 
山奥の学校に
通ういたずら
でがき大将の
太郎のユーモ
テスな親切に
感動し人間性
につちかうこ
とができる 
△期待をもちながら人物になりき
 って読もうとすること
O主題を読みとること
Oクライマックスを読みとること
O情景や場面を想像しながら読む
 こと
O性格を想像しながら読むこと
O心情を想像しながら読むこと
Oユーモアを読み味わうこと
O表現に気をつけて読み、語句の
 意味を文脈の中で考えること 
1 感動の中心を押さえ直観
 的に全文を読む
2 主人公の性格・心情を読
 み味わうために場面ごとに
 分析的に読む
 ・紹介の場面・発端・展開
  の場面・結び・後日談
3 感動したことを確かにし
 ユーモアを味わうために全
 文を体制的に読む
4 主人公の性格・心情に対
 する感想を話す 
O人物になりきって読もうとするよう
 になったか
O感動の中心を押さえて主題を読みと
 ることができたか(自己評価)
O情景や場面を想像しながら読むこと
 ができたか      (自己評価)
〇主人公の性格や心情を想像しながら
 読むことができたか (自己評価)
Oユーモアを読み味わうことができた
 か         (相互・自己)
O主人公の性格・心情が読みとれたか
           (相互・自己) 
 (2) 作文単元「わたしの父」のシステム設計
 これは、父親参観日をひかえ、級友の父親の情報を得たいという児童の欲求に応えて構成した新しい単元である。
前節のシステム創造の手順をふんで、「正確な情報を正確に書く態度」と「事実を具体的に主観を入れないで書く技
能」の養成をねらってシステム設計した。次にそのモデルを示す。
学習目標 学習内容(△態度 ○技能) 資 料 学習方法(学習活動) 学 習 評 価 
父に関する情
報を正確に書
くことによっ
て、父に対す
る認識を深め
ることができ
る 
△正確な情報を正確に伝えよう
 とすること
O事実を具体的に主観をまじえ
 ないで客観的に書くこと
Oできる限り具体的に表現する
 こと(あいまいな表現はさけ
 る)
Oできる限り主観的なことばは
 使わないこと 
教材文
「わた
し の
父」 
1 父に対する情報文を読む
2 父についての情報事項を収集す
 る
3 収集した情報事項に基づいてア
 ウトラインを作る
4 アウトラインをもとに「わたし
 の父」について書く
5 書いた情報を修正する
6 書いた情報を読み合う 
O観点(作品)
 正しい情報が正確に書
 けているか
○方法
 父の情報が伝えられた
 か(自己)
 イメージが浮かぶか
 (相互――評価欄に記入) 
                                                      64
(3) 文学単元「太郎こおろぎ」の学習計画のシステム設計
前節の単元展開のシステム設計の考え方に従って文学単元「太郎こおろぎ」の学習計画のシステムを立ててみる。
過 程
 (時) 
目標(行動目標)  内容(△態度 ○技能)  学習資料  学  習  方  法  学習評価・機器用
具 
直 観
  1 
困っているしのちゃんを
助けるため、床下でこお
ろぎの鳴くまねをした太
郎の心情を想像しながら
読み、いたずらでがき大
将だが、心やさしい太郎
に感動し、それを話す
 (書く)ことができる 
△期待をもちながら人
 物になりきって読も
 うとすること
○クライマックスを押
 さえて主題を読みと
 ること
○情景や場面、性格や
 心情を想像しながら
 読むこと 
教材文
「太郎こ
おろぎ」
の全文 
1 感動の中心を押さえ、直
 観的に全文を読む
2 感動したことをノートに
 書く
3 感動したことを話し、さ
 らに全文を読む
4 主題について話し合う 
O人物になりきっ
 て読もうとする
 ようになったか
O感動の中心を押
 さえ主題に接近
 することができ
 たか(自己)
 
分 析
2/3

1・3
時省略 
太郎をかばって困ってい
るしのちゃんを、太郎が
床下からこおろぎの鳴く
まねをして助ける場面を
想像しながら読み、太郎
の心情を性格とからめな
がら話す(書く)ことが
できる 
〇場面を想像しながら
 読むこと
〇心情を想像しながら
 読むこと
〇ユーモアを読み味わ
 うこと
〇性格や心情を読みと
 ること 
しのちゃ
んが太郎
をかばい
それを太
郎が床下
から助け
る場面 
1 場面表象を描きながら読
 む
2 表象を絵に書いたり、内
 語を書きこんだりする
3 読みとったことを発表し
 合う
4 感動を確かにするために
 再度場面を読む 
O場面を想像しな
 がら読めたか
    (TPU)
O心情が読みとれ
 たか (OHP)
O主題が読みとれ
 たか 
体 制
  1 
いたずらでがき大将だが
心やさしい太郎の性格を
行動を通し感想を含めて
話すことができる 
O感動したことを具体
 的な表現を押さえて
 話すこと
〇朗読すること 
「太郎こ
おろぎ」
の全文 
1 感動を確かなものにする
 ために全文を体制的に読む
2 太郎について感想を話す
3 全文を朗読する 
O主題について感
 想をもっことが
 できたか
 (自己・相互) 
(4) 作文単元「わたしの父」の学習計画のシステム設計                          65〜66
過 程
(時)  
目 標(行 動 目 標)   学   習   内   容  学 習 活 動  学 習 評 価
 (機器・用具) 
内   容 技能(△態度 ○技能) 
目的・
方法
  1 
父についての情報を具体的に
主観をまじえないで、正確に
書く書き表し方やアウトライ
ンの作り方がわかる 
父についての
情報文(教材
文―年齢・外
見・職業・家
庭生活) 
O情報のアウトラインの
 作り方を理解すること
O具体的、客観的に書く
 書き方を理解すること 
父についての情報文
を読む 
情報を具体的に
書く書き方、ア
ウトラインの作
り方がわかった
か  (OHP) 
収集選
択組織
  1 
父に関する情報事項を収集・
選択し、アウトラインを作る
ことができる 
父についての
情報 
O収集した情報を選択し
 アウトラインを作るこ
 と 
父についての情報事
項をカードに書き、
取捨選択してアウト
ラインを作る 
情報事項を適切
に組み立てるこ
とができたか
 (カード・表) 
表 現
  1 
アウトラインに従って、具体
的客観的に書くことができる 
父についての
情報 
△正確な情報を正確に伝
 えようとすること
O事実を具体的に主観を
 まじえないで書くこと 
アウトラインにもと
づいて父についての
情報を書く 
事実を具体的に
主観をまじえな
いで書いている
か(記述中の観
察→作品) 
修 正
 0.5 
あいまいな表現、抽象的な表
現、主観的な表現をみつけて
修正することができる 
父についての
情報文(各自
の作品) 
Oあいまいな表現、抽象
 的な表現、主観的な表
 現をみつけて修正する
 こと 
観点にてらして読み
返して修正する 
あいまいな表
現、抽象的な表
現、主観的な表
現を修正するこ
とができたか
   (相互)
  
処 理
 0.5 
情報文を読み合い、どんな父
か、想像したことを話し合う
ことができる 
各自書いた作

 
  情報文を読み合い、
どんな父を想像した
か話し合う 
                                                      66
     授業のシステム設計とそのモデル

 よい授業をするために、だれでも児童が意欲的に学習に取り組むように、学習環境の設営をくふうしたり、学習内
容が確実に身につくように、学習計画や学習方法に思いをめぐらしたりする。すべての児童が意欲的に学習に参加
し、学習内容が確実に定着する授業がすぐれた授業であり、そのような学習を保証する授業を組み立てることが、授
業のシステム設計の基本的なねらいである。
 ここでは、三年生の児童を対象にした詩の授業(単元名「おや? あれ!」十二月単元)のシステム設計を事例に
して、授業におけるシステム設計の手順と方法を述べる。
 (1) 授業全体のシステム設計とそのモデル
 単元の目標を「運動場の自然物や、そこで見られる自然現象にふれて、発見したおどろきや喜びを感動をこめて短
い文章に書くことにより、感受性を開発し、人間性の伸長に資することができる。」と設定する。
 そこで、児童がこの目標を達成できるように、教師は次のことを計画し、準備する。まず第一に指導すべき内容
は、感動の仕方と感動の書き表し方であることを確認し、そのためのすぐれた教材詩を選ぶ。次に感動の仕方や表現
法を学習し、それを転用して詩を書くという、鑑賞から創作への指導のパターンを押さえる。また取材の手がかりに
なるノートや、書いた詩を修正するときに使うための評価カードをくふうする。さらに感動の仕方や詩的表現の指導
                                                      67
法をくふうするとともに、必要な機器や学習形態を検討する。
 一方、学習する児童の詩を書くことへの興味と関心を高めるために、教室に児童詩集を展示する。校庭の霜柱や花
壇の水仙の芽の動きなど自然の事象を教室の話題にして、自然の事象に対する児童の関心を刺激する。自然の事象に
関心を持ち、感動の仕方や表現法を学習すると、積極的に詩を書こうとする意欲が生まれる。書いた詩は再び目標に
かえって修正され、完成した詩を読みあったり、詩集にまとめて保存したりする。学習の成就感・成功感は、次の学
習への自信となって児童を支えていく。
 このような詩を書く授業のシステムでもわかるように、一般にどのような授業でも、授業全体のシステムを設計す
る場合、学習環境・教材(資料)・児童・教師の四つが中心になる要素である。そこでそれぞれの要素の機能や内容
と相互の関係とを考えながら、学習目標をめがける授業全体のシステムモデルは、次のように編成することができ
る。

o学習意欲を刺激する。興味、関心を持たせる。教育的刺激を与える
o観察する ・飼育する ・経験する ・図書、図鑑類を展示する
o学習内容を的確に含んでいる。人間形成、能力形成の機能をもつ
o興味をそそる題材 ・的確な文章構成と表現 ・明確な言語技能
o学習意欲を持つ ・学習能力を持つ
o学習課題を理解する ・学習方法を知る ・学習の成功感を覚える
o専門的な指導力を身につける ・授業がシステム化できる
o指導内容を押さえる ・指導法をくふうする ・学習形態を考える ・教材機器を整える
 
A 学習過程のシステム設計とそのモデル
 感動表現も価値の生産活動であり、その学習過程は@目的過程、A方法過程、B追求過程、C獲得過程、D検討過
程、E適用過程の六段階の過程を適用して編成することができる。
                                                      68
@ 目的過程――詩を読んだり書いたりした経験を話し合う。感銘を受けた詩を発表する。発見の喜びや驚きの具体
的な経験を話し合う。自然物や自然現象について感動したことを詩に書くことを確認する。
A 方法過程――詩を書くために必要な学習の課題を決める。すぐれた詩を鑑賞して、感動の仕方や表現の仕方を学
習することを決める。書いた詩は詩集にまとめて読み合ったり保存したりすることを決め、学習の見通しを立てる。
B 追求過程――教材詩「もくれん」の詩を読む。「もくれんの芽はあたたかそうだな」という作者の驚きを直観的
に味わう。「やからかそうな毛がいっぱいだ」「ふわふわのもうふをかぶっているようだ」「毛は上向きにかみをとい
たように並んでいる」という、主題をささえる細かい発見の驚きを、表現を通して感得する。比喩表現のおもしろさ
を理解する。さらにいくつかの詩を読むことによって、児童の感受性を磨く。感動の仕方、詩の書き表し方がわか
る。
 次に児童は、取材ノート(発見ノート)を持って冬の運動場へ「発見の旅」に出ていく。運動場の自然物や自然現
象を観察して、発見の驚きや喜びを取材ノートに記録する。取材ノートをOHPで投映して、取材内容の是非を話し
合う。取材ノートをもとに詩を書いていく。
C 獲得過程――運動場の自然物・自然現象に対する発見の驚きや喜びを書いた詩ができあがる。感動表現に必要な
態度・技能が身につく。児童の感受性が開発される。
D 検討過程――書いた詩を読み返す。何についてのどんな感動が伝わってくるか、感動は簡潔、効果的に表現され
ているか、などを学習目標や学習内容に照らして、修正の観点・基準を確認する。修正の観点・基準をもとにして詩
を内容と叙述の両面から検討する。書き加えたり、書き改めたり、削除したりして修正する。修正した詩は清書して
文集にまとめたり、お互いに交換して読み合ったりする。
E 適用過程――身につけた感動表現の技能を使って、さらに詩を書いていく。個人詩集にまとめる。
 以上の感動表現の学習システムを適用して、学習過程のシステムモデルを編成すると次のようになる。
@ 目的過程――学習する課題や目標設定する。学習の態度を確立する。必要な教材を提示する。
                                                      69
A 方法過程――目標追求の手順や方法を考える。学習に必要な機器、用具、資料などを決める。学習の範囲を決め
る。学習に必要な技能を自覚する。
B 追求過程――目的・方法が決まると児童に学習の構えが確立される。目標を追求するために、聞く・話す・読
む・書くなどの学習活動が行われる。
C 獲得過程――追求した結果をまとめて話したり、書いたり、行動化したりして学習目標に到達し、内容的価値を
獲得するとともに、聞く・話す・読む・書くなどの技能や態度が身につく。
D 検討過程――獲得した結果を評価する。評価の観点・基準に従って、組織したり観察したり測定したりして評価
する。自分の学習の到達度が確認される。次に評価結果にもとづいて、それぞれ調節条件を定めて、読み直し、聞き
直し、話し直し、書き直しなどをして学習を調節する。
E 適用過程――身につけた言語技能を使ってさらに聞いたり、話したり、読んだり書いたりして、言語生活を豊か
にする。
 (3) 学習方法のシステム設計とそのモデル
 学習方法には、一斉学習・グループ学習・自己学習・個別学習・機器操作による学習などがある。
 詩を書くという目標の設定や方法の確認をする。また教材詩を鑑賞して感動の仕方や詩の書き方を理解する。取材
した内容を検討する。書いた詩の修正法を学習する。これらの活動は一斉学習が主体になる。
 これにたいして修正の観点や基準を明確にして、書いた詩を自分で読み返して検討したり、グループで読み合って
評価したりする。修正過程は、個別学習やグループ学習などの方法をとる。
 また自然物・自然現象を観察して、発見したことを取材ノートにメモする。取材ノートをもとに詩を書いていく学
習は個別学習ですすめる。自己学習は修正の観点や基準に従って、主体的に自分の詩を修正したり、さらに詩を書い
ていったりする時の学習方法である。機器操作による学習は、詩の書き方を理解したり、詩の修正法を確認したりす
る一斉学習に付随してすすめる。このように学習方法は、その学習のねらいや内容・活動によって変わってくるし、
                                                      70
あるいは修正過程のように、多様な学習方法が組み合わさってすすめられる場合もある。主体になる学習方法は、学
習過程にそって、次のようにまとめることができる。
目的過程  方法過程  追 求 過 程  獲 得 過 程  検 討 過 程  適 用 過 程 
一斉学習
 ・機器操作 
一斉学習
 ・機器操作 
一斉学習
 ・機器操作
グループ学習
個別学習 
一斉学習
 ・機器操作
個別学習 
一斉学習
 ・機器操作
グループ学習
個別学習
自己学習 
自己学習 
 授業のシステム設計について、これまで述べたように、まず授業を構成する要素を的確に押さえて、効果的な学習
の場を設定すること。次に学習過程が児童の主体的な学習を保証し、自己開発をうながすものであること。さらにま
た、児童の主体的学習と効率の高い学習活動に対応する、学習方法をくふうすることが、システム設計の上で、特に
留意しなければならない事項である。そして学習全体のシステム・学習過程・学習方法のシステムは、授業の中で個
別に存在するものではなく、有機的な関連の中で考えていくことがたいせつである。


     学習活動のシステム設計とそのモデル


 (1) 学習活動のシステム設計
 学習活動というのは、いつでも、知識や情報を求めるためとか、近況を知らせるためとか、研究したことを報告す
るためとかいうような学習目標をめがけて、読んだり、書いたり、聞いたり、話したりする活動のことである。つま
り、学習の目標を追求し獲得するための活動である。
                                                      71
 そこで、どんな学習目標をめがけて、どんな学習活動を設定し、それをどのような学習過程に最も適切に配列し、
組織したらいいかを考えるのが、学習活動のシステム設計である。たとえば、単元の目標を追求し獲得するための学
習活動のシステム、一時間の学習目標を追求し獲得するための学習活動のシステム、概略を読みとるための学習活動
のシステム、単位学習活動のシステムなどの設計がそれである。
 (2) 単位学習活動のシステム設計とモデル
 単位学習活動というのは、システムの要素、単位としての学習活動のことで、いわばある一つの学習活動のことで
ある。この学習活動が行われる状況を観察してみると、次のようなシステムをもっていることがわかる。
 @めがける目標がある。A学習の意欲・欲求にささえられている。B学習の対象・教材(内容的価値)がある。C
 学習活動をささえる発音、文字・語い・文法などの力、いわゆる言語要素、支持技能がある。D学習活動をささえ
 る読む、書く、聞く・話す技能、いわゆる処理技能がある。E学習活動が終わると充足感、成功感が得られる。
 これらの@〜Dまでの要素が、それぞれの機能をじゅうぶんに発揮できるような状態で、有機的に組織される。こ
のようにシステム化されると、Eが得られるということになる。こうして、すべての学習活動が、このような内部構
造を持ったとき、学習活動は、意欲的な生産性の高い活動となる。次にこのシステムモデルを作ってみる。

    ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――-┐
                  ┌支持技能┐               |
―→学習目標→学習意欲→学習活動――|    ├―→学習教材(内容的価値)←―┤
                  └処理技能┘               |
    └―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――-┘

 (3) 単元の学習活動のシステム設計とモデル
 単元の学習活動のシステムは、単元の学習目標をめがけて行われるいくつかの学習活動を設定し、それを、単元の
学習計画の中に適切に配列し組織することによって、編成することができる。その手順をあげてみると、の単元の学
習目標を分析して下位目標を立てる。A下位目標ごとに、その目標を獲得するための学習活動を設定する。B学習活
                                                      72
動を学習計画に従って配列する。C学習活動を相互に関連させて、全体的にシステム化するということになる。
 知識の読解単元を例にとってみると、単元の学習目標を獲得するためには、@何についての知識、Aどのような構
造をもった知識か、B知識の構造の細かい部分はどうなっているか、Cその知識をまとめていったらどんな知識にな
るかということがわかればいい。そこでそれらについて読みとって理解する活動は、@は全文を直観的に読んで、知
識の話題、要旨、中心的事項を読みとる活動、Aは、知識の要点を押さえて概略を読みとる活動、Bは要点と細部と
の関係を読みとって部分の仕組みを理解する活動、Cは話題、要旨、中心的事項を中心として読みとったことを組織
する活動ということになる。これらの活動は、知識の直観的読み―→分析的読み―→体制的読みという過程にそって
組織される。このシステムをモデル化してみると、次のようになる。
    ┌―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┐
    ↓           ┌話題・要旨┐         ┌概略―要点┐           |
単元の学習活動→直観読みの活動―┤     ├→分析読みの活動―┤     ├→体制読みの活動―→構造化
                └中心的事項┘         └要点―細部┘
 上は、知識の読解活動のシステムであるが、作文学習の単元のシステムでは、@題材を選択する活動 A題材の内
容を収集する活動、B収集した書く内容を組織する活動――アウトラインを作る活動、C書く内容が書き表す活動、
D書いた文章を修正する活動、E書いた文章を処理する活動などが、作文過程にそって、有機的に組織されると、そ
こに作文の全活動が、文章の制作過程として編成される。それが作文単元の学習過程のシステムである。
 (4) 一時間の学習活動のシステム設計
 一時間の学習目標(行動目標)を追求し獲得するためのいくつかの学習活動を、その追求過程に組織し編成したも
のが、一時間の学習活動のシステムである。たとえば、「三つの大段落の要点を読みとり、その段落相互の関係を考
えて読みとった小段落の内容を、次のように組織することができる。(組織は省略)」という一時間の行動目標が立て
られている。この場合の一時間の学習活動のシステムを考えてみる。この行動目標の前半を押さえて分析すると次の
                                                      73
ような学習活動が設定される。
 @文章を読んで、三つの大段落を押さえその、大段落の要点を読みとって小見出しを作る。A大段落を組み立てて
 いる小段落を押さえ、小段落ごとにその要点を読みとる。B小段落の要点相互の関係を考えて、大段落を組織す
 る。C大段落相互の関係を考えて文章を組織する。この四つが、この時間の基本的学習活動である。
 右の四つの学習活動を、行動目標を追求する過程に有機的に組織すると、一時間の学習過程のシステムが編成され
て、@〜Cの活動を、組織し編成したものが、一時間の学習活動のシステムである。学習活動がこのようにシステム
化されると、目標を追求し獲得する活動が、積極的に、生産的に行われる。
 次に大大段落の要点「ねむりと心のはたらきとの関係」を読みとり、さらに、その中の大段落の要点を読みとっ
て、大段落を組織する一時間の行動目標を分析して、学習活動を設定してみる。
 「大段落の要点を読みとって、その相互の関係を考え、大大段落を次のように組み立てることができる。」

        ┌ねむりと覚えるということの関係――┬つかれていると覚える力が低下する
 |                 └六時間以上ねむると覚える力が回復する
―┤ねむりと忘れるということの関係――┬時間がたつにしたがって忘れる
 |                 └ねむっている時は四十五パーセント以上は忘れない
        └ねむりと意志や気持ちとの関係―――┬目をさまそうとした時間に目がさめる
                          └気になることがあると目がさめる

 上の目標を分析すると、下位目標ごとに、@大大段落の要点を押さえる活動、A三つの大段落の要点を読みとる活
動、B三つの大段落の中の小段落の要点を読みとる活動、C大段落相互の関係(並立の関係)、小段落相互の関係を
考えて、大段落、大大段落を組織する活動の四つの基本的な読解活動が設定される。
 これらの四つの活動が、@〜Cの順に従って――学習目標を追求する過程に従って、全体を読む、部分を読むとい
う関係で組織されると、この行動目標を獲得することができる。また、この学習活動を前に述べたように組織したも
のが、この時間の学習過程――学習の流れとなる。これで、一時間の学習活動をシステム化することができる。
 また、作文で、アウトラインを作る学習の目標が、次のように設定されている場合の学習活動を設定してみる。
                                                      74
 「題材について、書く内容を思い出し、中心のはっきりした文章のアウトラインを作ることができる。」
 この学習目標を分析してみると、@題材を選定する活動、A書く内容を想起して、カードに書き出す活動(メモを
とる活動)、B書く内容を分類整理して、書くことを明確にする活動(小見出しを作る活動)、C中心のはっきりした
文章になるように、書く内容(小見出し)を組み立てる活動、C組み立てた内容を見通して、書き出しの文と、まと
めの文とを、そのあとさきにつける活動など、基本的な学習活動を設定することができる。
 これらの学習活動が、@〜Cの順に、組み立てられると、アウトライン作りの学習活動がシステム化される。




                                                      75
第四章
 
行動目標はどのように
設定するか
その考え方と実践践

 この章には、単元の学習目標と、一時間ごとの学習目標の
考え方や立て方について述べ、そのモデルが示してありま
す。
 単元の学習目標には、普通、学習態度や学習技能が働いた
結果身につく価値的な内容が掲げられます。これが、いわゆ
る価値目標です。一時間ごとの学習目標には、そこで学習す
る技能や、その技能の働きによって、理解、表現される価値
的な内容が掲げられます。これを行動目標と呼んでいます。
 ここでは、その価値目標、行動目標とは何か、それはどの
ように設定するか、その標準的な型、モデルはどうなってい
るかなどについて、くわしく説明してあります。
 また、文学単元、知識・情報単元、作文単元での価値目標
の立て方、文学教材・知識教材・情報教材・作文学習での一
時間の学習の行動目標の立て方も、具体的に説明してありま
す。
 読み終わったら、今学習している単元の価値目標や一時間
の学習の行動目標を立ててみてください。モデルに従って立
ててみると、容易に立てることができます。
                                                      76
     価値目標・行動目標の考え方とそのモデル

 国語科の学習目標を設定するに当たって、基本的に押さえておかなければならない内容は次の三点である。
@ 設定した単元や、学習の対象とした教材・資料から、どのような内容の知識や情報を得たり、思想や心情を豊か
 にしたりすることができるか。
A その学習によって、どのような国語の態度・技能を身につけることができるか。
B 児童が自分で人間性を開発・伸長するうえで、その学習がどのように参与するのか。
 しかし、これらの内容・技能・人間形成にかかわる諸要素は、決して別々にあるものではない。雨の生成について
の知識を身につけるためには、正確に読みとるという技能を働かせなければならない。また、正確に読みとる技能を
働かせて得た雨の生成の知識によって、児童はさらに自然現象に対する科学的な興味や関心を深め、自然の神秘を感
じることができるものである。このように、目標にかかわる三つの要素は、有機的な相互の関連をもっている。この
三つの要素のうち、特に技能を学習の目標にしたのが技能目標、技能と内容を含む人間性を目標としたのが価値目標
である。また、三つの要素を科学的に具体的に組織して、一時間ごとの目標としたのが行動目標である。
 (1) 価値目標の考え方とそのモデル
 三年生の教材に「アリの行列」という情報文がある。この教材で、児童は次のような内容を学習することができ
 る。
@ アリが行列をつくって、巣とえさのところを往復する理由や、アリの習性についての情報を得ることができる。
A アリが行列をつくる習性を正確に読みとっていく過程で、すすんで情報を読みとろうとする態度や、直観的に情
 報概略を読みとる、情報事項を正しく読みとる。情報事項ごとにまとめて読む、情報中心にそって情報事項を組織
                                                      77
 するなどの読みの技能を身につけることができる。
B アリの習性やウイルソンの実験等についての情報を得ることにより、さらに児童は、自然界の事象に関心を持
 ち、科学的に見たり考えたりする気持ちを強め育てることができる。
 では、このような「アリの行列」を学習する目標は、どのように設定したらいいか考えてみよう。
 まず、児童が「アリの行列」の文章を読むときの状態を考えてみると、アリの行列についての興味・関心にもとづ
いて、第一に、アリの行列ができるわけを知りたい。行列ができるわけを検証したウィルソンの実験について知りた
いという欲求にささえられて読んでいく。その結果、そのわけや実験の模様がよくわかって、いまさらのように科学
の力やアリの行列の不思議さに心を打たれ、科学や自然事象に対する目や心が開かれ伸ばされる。
 ところで、そのような情報を求め、科学の力や自然の神秘に対する目や心が開かれていく裏で、実は、それを読み
とるのに必要な態度や技能を苦心して働かせているのである。働かせているからこそ、その態度や技能が児童の身に
ついていく。
 このような児童の読みは、児童が主体的に内容的価値を獲得・生産して、自身の人間性を開発伸長するとともに、読
む態度・技能をも育てていく活動であると考えられる。そこでこの読む活動の全体的なしくみを分析して組織すると
@ 児童の人間性を開発伸長する内容的な価値(知識・情報・思想・心情)…………………学習目標
A 児童が内容的価値を獲得する技能・態度(技能・ことばに関する事項・態度)…………学習内容
B 児童が技能・態度を働かせて内容価値を読みとる活動(学習活動)………………………学習方法
のようになる。これで学習の目標と内容と方法がシステム化される。したがって、単元や教材全体の学習目標は、内
容的価値を押さえたいわゆる価値目標をたてることが適切であることがわかる。まとめると、次のようになる。
  単元や教材に内在する価値技能と共に価値を身につけることによって開発伸長される人間性
  アリの行列」では「ウィルソンがアリを観察して、アリの行列ができるわけを調べた情報を得る(内容的価値)
                                                      78
ことによって、動物の生態のふしぎさに気づくとともに、科学的探究心を育てることができる(人間形成の機能)」
というように、学習目標を設定することがでる。
 (2) 行動目標の考え方とそのモデル
 前に述べた単元や教材の学習目標の例のように「……の情報を得ることによって……科学的探究心を育てることが
できる」といっても、目標への到達度をはっきりと確認することはむずかしい。価値目標は、単元全体の学習の目標
としてかかげるもので、学習の方向・志向を示すとともに一時間ごとの目標を規定するものである。そこで、一時間
ごとの学習目標はもっと到達度をはっきりと観察・測定できるような、具体的なものにするべきだという要請がなさ
れた。それが行動目標である。
 たしかに学習目標をできるだけ科学的・具体的に設定して、その目標への到達度がはっきりわかるようにし、もし
到達できなかったりつまずいたりしたときは、その状況に応じて学習を調節して目標に近づいていくことができるよ
うにすれば、生産性の高い学習指導を展開することができる。
行動目標の
理論的背景
 
 行動目標は行動主義の理論にもとづいている。「行動」というのは、条件反応理論でいえば「刺激に対
 する反応」で、いわゆる行動する、行動を起こすなどの肉体的活動はもちろんのこと、文章を読んで知
識や情報を理解する働きも、観察や実験によってあることがらを認知することも、よい音楽を聞いて感動するなどの
心的活動もすべて行動である。
 ところで行動には、肉体的な活動のように観察可能なあらわな行動と、心的活動のように直接観察できないあらわ
でない行動に大別することができる。しかし、このあらわでない行動も、これを記号や言語・絵画などのあらわな行
動におきかえることによって認知し観察・測定することが可能である。行動目標は、この行動主義の科学的理論をと
り入れて、学習目標を言動行動として記述したものである。
 たとえば「直観的に情報の概略を読みとることができる」という学習目標は、このままでは到達度を客観的に観察
測定することはできない。しかし、直観的に情報の概略を読みとるという理解行動を、言語行動化して「情報の概略
                                                      79
を次のようにまとめてノートに書くことができる。『ウィルソンが観察や研究をして、アリはおしりから特別の液を
出して道しるべにするので、巣とえさの間を行列して行き来することができることを確かめた。』と具体的に記述す
ると、その時間の獲得する目標が明確になり、この目標が評価の観点や基準を示しているから、学習の到達度を直接
に観察したり測定したりして容易に評価することができる。さらに、目標が言語行動として具体的に示されるので、
指導の過程 や方法がはっきりし、筋道の通った明確な授業を能率的にすすめることができる。
行動目標
の内容
 直観的に情報の概略を読みとる学習の行動目標を「ウィルソンが観察や研究をして、アリはおしりから特
 別の液を出して道しるべにするので、巣とえさの間を行列して行き来することができることを確かめた、
のように読みとって、ノートに書くことができる」と設定した場合、
@ 一時間の終わりに獲得すべき内容的価値としての情報概略が具体的にわかる。
B 内容的価値としての、情報概略を読みとるときに働く技能――文章を要約して概略を読みとること――がわか
 る。
B 内容的価値を獲得するための中心的な活動――概略を読みとってノートに書く――がわかる。
 行動目標はこのように、学習して獲得する内容的価値、そのとき働く技能や中心的な活動が具体的にわかるように
示されることが必要である。
 ただ、行動目標の設定に当たっては、教材によって示すべき内容にちがいがあることを考慮しなければならない。
知識教材のように内容が科学的に書かれているものや、情報教材のように情報事項を客観的に収集・選択できるもの
については、具体的に到達すべき目標として内容を記述することができる。しかし、文学作品の読解・鑑賞や、作
文、聞く話す学習の場合は、このように感動しなさいとか、このように書いたり話したりしなさいというように、内
部行動を規制して言語行動化すべきではない。
 そこで、文学作品の読みの場合は、「……の場面や……の気持ちを想像しながら読んで心に感じたことを話す(書
く)ことができる」というように、行動目標の考え方を生かして設定する。この場合は、読む場面や対象と、読む技
                                                      80
能とを決めるけれど、何をどのように読みとるかは、児童の自由にまかされている。こうすれば従来の技能そのもの
やどういう心情を育てるということを掲げた目標よりもはるかに具体的になる。また作文では、「……した時の気持
ちを読み手によく伝わるような文章のアウトラインを作ることができる」「○○の時の気分や情調がよく現れるよう
に情景を描写することができる」というように設定する。この場合は、書き表す対象と書き表す技能と書き表す方向
を示している。児童の認識そのものやその表現については全く自由である。このように行動的な目標を設定すること
で、従来よりも具体的に科学的に設定できる。
 なお、学習の生産性を高めるためには、行動目標は、当然適切に設定しなければならない。しかし、行動目標が、
到達目標を示すことから、学習が結果主義に陥ったり、窮屈でゆとりのない学習になったり、技能中心で、人間形成
の側面が軽視されたりすることのないよう、じゅうぶんな配慮が必要である。
行動目標の
設定と記述
 要するに一時間の行動目標は、その時間に学習する、@何を(知識・情報・思想・心情)、Aどのように
 (働く技能)、B学習する(中心的な学習活動)かが、 はっきりするよう具体的に設定する、そして、 一
時間の学習のあとには、その目標が獲得できるものとする。また、目標が獲得できたか、どれだけ目標に接近できた
かどうかが、観察したり測定したりして評価できるものにする。
 ところで、そのように設定した行動目標は、どのように書いたらいいか、書き方のパターンを考えてみる。たとえ
ば概略を読みとる行動目標は、「……の概略を読みとって次のように書くことができる。『……』」、また「……の概
略を次の事項を含めて書くことができる。@……のこと。A……のこと。B……のこと」のように記述する。これ
は、@読みとる技能、A読みとる内容、B読みとった結果の表し方を示している。したがって、これが評価の基準に
なる。また、文学作品の場合は「……の場面、……の心情を想像しながら読んで心に浮かんだこと、心に感じたこと
を話す(書く、絵に書く)ことができる。」というように書く。これは、@読む対象、A読む技能、B読んだ結果の表
し方を示している。この場合評価の観点は示されているが、基準は作品中のことばや内容に求めなければならない。
 以上、価値目標、行動目標について、その考え方と設定の仕方、記述の仕方について述べたが、次に具体例を示す。
                                                      81


     目標分析のシステム設計とそのモデル

 (1) 目標分析の基本的な考え方
 単元の学習目標は、人間性の開発伸長をめがける内容的な目標、つまり価値目標を立てることは前節で述べた。こ
の目標をめざして、何時間かの学習が行われる。そこで、一時間一時間の学習をすすめていくために、各時間ごとに
さらに細かい学習目標が設定される。この細分化された各時間の学習目標は、単元全体の学習目標を成り立たせてい
  る要素である。言いかえれば、単元の学習目標の分節
である。したがって、各分節の学習目標がひとつひと
つ達成されていくことによって、その総体として、単
元全体の学習目標が達成される。単元の学習目標と一
時間ごとの学習目標とは、このような関係になってい
る。
 この関係を図示すれば、左のようになる。単元の学
習目標と各時間の学習目標とが、ひとつのシステムと
なっているわけである。
 例を、「ふしぎなくもの糸」(学図三上)にとってみる。この文章は、「くものあみ」「くもの糸」「くもの空中
旅行」と小題のついた各章で、くもに関する常識をくつがえすような興味深い事実を挙げ、文章全体としては、「く
もの糸に関するめずらしい知識を得させたり深めさせたりしながら、自然のふしぎへの興味と関心を育てる」という
内容的価値をもっている。これが単元の学習目標にもなるといってよい。この目標の分節として、各章では、
                                                      82
@ (くもの網は、くもの住まいだとばかり思っているが、そうではなくて)獲物をとる道具であったり、それと住
 まいと兼用であったりする。
A (どのくももみんな網を張るのだと思っているが、そうではなくて)網を張らないくももいる。しかし、どのく
 もも糸は出す。その糸の使い方、出すしくみ、種類、利用などについて、おもしろい事実がある。
B (くもは空中を飛んだりしないと思っているが、そうではなくて)くもも空中を飛んで遠くへ行くことがある。
というように、読みとりをすすめることになる。一時間一時間に区切った場合も同様で、「くもの糸に関する意外な
事実を知識として得る。」ことを通して、「自然のふしぎへの興味と関心を育てる」という内容的価値を構成する要素
として、各時間の学習目標が設定されなければならないのである。
 (2) 目標分析のシステム化
 ところで、各時間の学習目標は、文章の内容的価値と、その学習に必要な態度技能(=学習内容)とを一体化した
ものとして設定する。これは前にも述べた。これは言いかえれば、一時間一時間の目標には、内容価値追求の過程で
どんな技能や態度が養われるかを明確にしておかなければならないということである。
 そこで今かりに、縦軸に学習内容としての態度技能を、横軸に学習過程とその過程で学習する作品の範囲(内容的
価値を含む)をとって、マトリックスを作ってみる。そして、縦軸と横軸の交わるところに、その両者を含めて一体
化した学習目標を設定してみる。こうすれば、学習内容と内容的価値とを一体化した学習目標の体系、学習目標のシ
ステムができあがる。しかも、この学習目標を行動目標化すれば、学習評価の体系にもなる。
 こうしておけば、一時間の学習が、単元全体の学習にどのようにつながっているか、どんな学習目標で行われる
か、どんな学習内容を含んでいるか、どこまで到達すればいいか、などということを、一目で構造的にとらえること
ができる。これが「学習目標細目表」である。
 次に掲げるのは、「ふしぎなくもの糸」を例にとった目標分析のモデルで、それが「学習目標細目表」である。
                                                      83
(3) 目標分析のモデル――学習目標細目表――
                                                    83〜84
  目      標 学        習        内        容     
態        度  技                 能   







 
単元の目標
・教材「ふしぎなくも
 の糸」を読んで、く
 もに関するめずらし
 い事実を知ったり知
 識を深めたりして、
 自然のふしぎへの興
 味や関心を深める 
問題意識をも
って、新しい
知識を得るた
めに読もうと
すること 
話題ごとにだ
いじなことを
まとめて、読
もうとするこ
と 
文章のまとまりごと
に話題をとらえるこ
と 
文章の要点を
押さえて読む
こと 
問題提起の
文を見分け
その働きに
気づくこと 
接続語の
働きに注
意して読
むこと 







 





 
くもの糸について
もっと知りたいと
いう問題意識をも
って、教材を読も
うとする 
題名や写真な
どを手がかり
に、くもの糸
についての既
有知識や疑問
を話すことが
できる 
題名や各章の
小見出しに目
をつけて、ま
とまりごとに
読んでいけば
よいと気づく
ことができる 
       








  




 
全文を読んで、自
分が新しく知った
こと、興味深いと
思ったことをカー
ドに書き出し、ま
とめて発表できる
きる 
  読みとったこ
とを、小見出
しごとにまと
めることがで
きる
 
カードに書き出した
ことを、三つのまと
まりに分けて話すこ
とができる
 
読みとったこ
とを、一項目
一カードに、
箇条的に書き
出すことがで
きる 
   







  
「くものあみ」を
読み、おにぐもの
なかまの、それぞ
れの網の役めを、
そう言える理由も
つけて話すことが
できる 
  三種類のくも
における網の
役めを、ノー
トにまとめる
方法について
話すことがで
きる 
この章は、くもの網
の役めについて書い
てあり、それを、@
おにぐも、Aこがね
ぐもなど、Bくさぐ
ものなかま、の三例
で説明していること
を指摘することがで
きる 
三種頬のくも
の例につい
て、その網の
役めをノート
にまとめ、そ
う言える理由
を、教科書を
見ながら、話
すことができ
る 
「このあみ
は〜でしょ
うか」とい
う問いかけ
の文の役め
を話すこと
ができる 
「ですか
ら」とい
り接続語
によっ
て、網の
役めがま
とめて書
いてある
ことに気
づくこと
ができる 
 ===================空白=======================      






 







 
全文を読み返し、
読みとったことを
書きぬいてまとめ
たり、さらに調べ
たいことを挙げて
調べたりすること
ができる 
くもの糸につ
いて、さらに
知りたいこと
を、事典や図
鑑などで調べ
ることができ
る 
    読みとってき
た要点を落ち
なく押さえて
自分なりの観
点でノートに
まとめておく
ことができる 
   
                 
                                                      85

     単元の価値目標はこのように立てる

文学単元の
価値目標
 一に述べた価値目標の考え方と立て方に従って、二、三の作品について価値目標を立ててみる。
 文学作品「つる(江口渙作)」は、つるとたかとの戦いの中で、つるが傷ついた仲間を助ける。そして
あたたかい心でいたわるという事実が表すものを主題としている。このつるの行動や心情が、読み手の心を刺激し感
動を与える。それが読み手の人間性を開発し伸長する。そのような学習の過程で、美しい場面や情景、あたたかいつ
るの心情などを想像しながら読む力や、直観的に感動の中心を押さえる力などが育てられる。そこで、この学習目標
は「仲間の危機に出あって、自分だちより強い相手に一群となって勇敢に立ち向かい、また、傷ついた仲間を助け、
いたわりながら、旅を続けようとするつるたちの行動や心情を想像しながら読んで、感動したことや考えたことを、
まとめて話す(書く)ことができる。」というように、行動的に価値的目標を立てる。
 また、文学作品「てんぐとおひゃくしょう(宇野浩作)」は、てんぐがおひゃくしょうにあやつられて、次々に化
けていく。最後に豆になっておひゃくしょうに食べられてしまうという「くさり型」の作品である。この筋の展開が
読み手に、そのおもしろさや人間の知恵やユーモアを感じさせる。これが、この話の人間形成の機能であり、主題と
なっている。そこで、この学習目標は「強いてんぐが、弱いおひゃくしょうにあやつられて、大木、大石、豆に化け
て、最後におひゃくしょうに食べられてしまうという話の筋をたどり、その場面や気持ちや考えなどを想像しながら
読んで、感じたこと、考えたことをまとめて話す(書く)ことができる。」とする。こうすると、従来の「心情を育
てる」という目標より、科学的な基本的な価値目標が立てられる。
 文学作品の学習目標をこのように立てれば、児童の感じ方・考え方を縛ったり、画一化したりすることがない。そ
れぞれ自由に反応する結果は、これを話したり、書いたりするから、それを観察して評価することもできる。要する
                                                      86
に作品の筋・主題をすなおにとらえ、そこで学習する技能を確実に押さえ、児童の能力を考えて設定するとよい。
知識・情報単元
の 価 値 目 標
 次は、知識や情報の単元の学習目標として価値目標を設定してみる。
 教材単元「体温と衣服(光村四上)」という知識単元がある。この教材を読むと、人間のからだはあ
る程度自然に体温を調節できること、また、人間は暑さ寒さを防いで体温を平均に保つために衣服の材料や形や色を
くふうしていることなどの知識が得られるとともに、生きるために人間がいろいろと知恵をしぼっていることに気づ
かせられる。同時に、漢字や語句や文法、段落にまとめて読む技能、文章を構造変換する技能、正確に読む技能など
が育てられる。そこで、この単元の目標を設定してみると次のようになる。
 「人間のからだはある程度、自然に体温の調節ができること、また、人間は体温を一定に保つために衣服をいろい
ろくふうしていることなどを理解して説明したり、人間の生活の知恵の働きに気づき、進んで、身近な生活に必要な
知識を求めたりすることができる。」
 単元の価値目標は、このように設定するが、そこで育てられる態度・技能は、学習内容として位置づける。また、
教科書に「とる漁業から育てる漁業へ(日書四下)」という情報単元がある。この文献情報を読むと、日本の漁業が、
今以上魚を減らさないために、漁業の取り決めをしたり、つきいそをくふうしたりすることから、人間の手で魚を育
てる栽培漁業へと変わってきているという情報が得られる。と同時に情報意図を読みとる、情報事項を収集する、情
報事実と情報意見とを読み分ける、情報事項を組織する、情報の構造変換をするなどの技能や態度を育てることがで
きる。そこで、このような単元の価値目標は「漁かく量の減ってきた日本漁業が、これ以上魚を減らさないために、
とる漁業から、人間の手で育てる栽培漁業へと変わってきているという情報意図や情報事項を読みとって説明(書
く)するとともに、漁業の動向についての関心を深めることができる。」というように設定する。この場合も、ここ
で育てられる情報処理の技能や態度は、学習内容に位置づけることはいうまでもない。
 このように、知識や情報の内容的価値を確実に押さえ、人間性につちかう面を明確にして、価値目標を立てる。
作文単元の

価値目標
 作文単元の価値目標を設定する場合、これまでの文学単元や知識・情報単元とちがって、特に次の点に
                                                 87
 留意する。作文は、その書く目的、書く文章の機能によって、自己を表現する文章を書く。知識や情報
を伝達する文章・記録する文章・説明する文章を書くなどの領域がある。このうち最近は知識や情報を説明する文章
を書くことが強調されている。ところで、このような文章を書く、文章を書く力を育て伸ばすことによって、思想や
心情を豊かにし、感覚を鋭くし、創造性を伸ばすことができる。思考を正確にし、認識を深めることができる。知識
を正確にしたり、社会性を伸ばしたりすることができる。このように文章を書くことによって人間性が伸ばされる。
 また、いろいろな文章を書くことによって、題材の選び方、書く内容の収集の仕方、文章の組み立て方、文章の書
き表し方、文章の修正の仕方などの技能や態度を育てることができる。
 この二つの面は、「文章を書く」という活動によって一体的に学習されて、現実の「文章」となって示される。そ
こで、行動的に目標を設定するといっても、こういう内容のこういう文章を書きなさいと文章そのものを規定するこ
とはできない。そこで、目標として規定できるのは表現の対象・技能だけで、内容の規定はできない。
 ここに「六年生になって」という作文単元がある。六年になって、下級生とのかかわりのある生活経験を契機とし
引き起こされた心情、感想を経験に即して書くことによって、下級生との学校生活に対する認識を深め、六年生とし
ての自覚を深める。同時に、経験に即して感想を書く技能、書く目的に応じて文章を組み立てる技能を育てるという
単元である。そこで、この単元の学習目標は「下級生との生活経験にまつわる心情や感想を、経験に即して書くこと
によって、下級生との生活に対する認識を深めるとともに六年生としての自覚を深めることができる。」と設定する。
また、「わたしの父」という作文単元で、父についての情報を収集し、それを叙述して、仲間に伝達する。このよ
うな単元の学習目標は「父の生活や人がらなどについて信頼できる正確な情報を収集し、組織して、正確に具体的に
叙述することによって、父に対する認識を深めるとともに父への愛情をいっそう深めることができる。」とする。
 このように作文単元の価値目標は、書く対象と書く技能と人間性を開発する面とを押さえて設定すると、容易に価
値目標を立てることができる。もちろん、これは、自由作文ではなく、計画的にする作文学習の単元目標である。
                                                      88
     一時間の学習指導の行動目標はこのように立てる


文学の読み
の行動目標
 第二章の教材研究、第三章の単元の学習計画の立て方、本章に述べた行動目標の考え方、立て方に従っ
 て、文学教材「太郎こおろぎ」の読みにおける一時間ごとの行動目標を立ててみる。
 この作品は「太郎こおろぎ」の構造過程(第二章)に詳しく書いてあるように、語り型で、紹介・発端・展開・ク
ライマックス・結び・後日談というように展開されている。学習に当たっては、「太郎こおろぎ」の学習計画(第三
章)にあるように、@作品全体を読んで直観的に感動の中心を押さえる直観読み、A場面の展開に従って、場面のよ
うす、人物の性格・行動・気持ちなどを想像して押さえる分析的な読み、作品全体を朗読したり、感想を話したりす
る体制的な読みが計画されている。その学習計画の中に一時間ごとの行動目標が示されているが、ここでは、その立
て方を中心に考えてみることにする。一時間ごとの行動的目標を設定するためには、@学習の範囲(作品全体・場
面・情景・心情・性格など範囲や単位)を押さえる。A範囲内の内容的価値(思想・心情・気分情調・性格・行動な
ど)を押さえる。Bその内容的価値を読みとる技能(直観読みの技能、想像読みの技能など)を押さえる。C読む活
動を押さえる。その上で、行動目標の立て方に従って立てる。なお、作品ごとに「学習目標細目表」を作っておくと
いい。
 第一時の、作品全体を読んで、直観的に感動の中心(クライマックス)を押さえ、主題に接近する学習の行動目標
は「全体を直観的に読んでクライマックスを押さえ、先生にこおろぎの鳴き方を聞かれ、困っているしのちゃんを助
けるために、ゆか下でこおろぎの嗚きまねをした太郎のようすや気持ちを想像して、強く感じた気分や情調を話すこ
とができる。」というように設定する。この目標によって、何を対象に、どんな技能を使って、どんな読む活動をす
るかが明確になるが、どんな心情にどのように感動するかは、全く児童の個性にゆだねられている。しかし、それは
                                                      89
主題への志向を示唆するもので、恣意的な読みを許すことではない。
 第二時の、紹介語りの部分を読んで、場面や太郎の性格を推定する学習の行動目標は、次のように設定する。
  「太郎の紹介の部分を想像しながら読んで、太郎の性格を次のようにまとめて書く(話す)ことができる。
         ┌―いたずらっ子―ゆか板にひみつのあなを作り、食べたまめの皮、えんぴつのかすをすてる。
 太郎のせいかく―┼―がきだいしょう―ひみつのあなから木の枝の刀を出して女の子、弱い子を追い回す。
         └―なんとなく親切―『おまえをいじめるやつがいたら、そいつをなかしてやる』」
 この部分は、客観的に読みとれるから、上のように読みとる内容の中心を規定することができる。
 第三時の発端から、事件の展開の部分を読んで、太郎の性格・心情・行動などの想像表象を描いて、気分情調を感
じる学習の行動目標は「しのちゃんの大事な消しゴムをひみつの穴に落としてしまった太郎が、『おれが取ってきて
やる』と、教室の床下にもぐりこんだときのようすや気持ちや行動を、想像表象を描きながら読んで感じたことや気
分情調などを話す(書く)ことができる。」というように設定する。この場合、どんなようす、どんな気持ちをどの
ように感じるかは、児童の自由に任せて、到達目標としては規定しない。ただ、学習する対象と、学習する技能だけ
が設定される。それは文学を経験すると同時に、その経験の仕方、つまり文学の学習法をも学習するからである。
 第四時の展開からクライマックスにかけて、教室の場面、しのちゃんの心理心情、太郎の心情・行動などを想像し
ながら読んで感動する学習の行動目標は「授業中、下ばかり見ていたしのちゃんが、先生に問いつめられて、ついこ
おろぎが鳴いていると言ってしまい、その鳴きまねをさせられていよいよ困っているときの場面のようすや気持ち
と、それを助けようとして、床下でこおろぎの嗚くまねをした太郎の気持ちや場面のようすとを、想像表象を描きな
がら読んで、感じたこと、気分、情調などを話す(書く)ことができる。」と設定する。これは第三時と同じ型であ
る。
 最後の読みは、直観読み、分析読みの過程を経て体制読みになる。文学をしみじみと経験する朗読をしたり、感想
や批判をもったりしていわゆる体制化する読みである。そこで「太郎の心情や行動から受けた感動を、朗読をとおし
                                                      90
て表したり、また、その感動に対する感想を話し(書く)たりして、いっそう確かに文学を経験し、その感動を深め
ることができる」というように設定する。これら各時間の行動目標を獲得し体制化すると単元の目標が達成される。
知識の読み
の行動目標
 次は、知識教材「けむりの行くえ」(光村六上)を例にとって、一時間ごとの学習の行動目標を立ててみ
 る。この文章は、 四つの大段落から成る条件型(係り受け型)である。初めに「けむりは小さなつぶの
集まりである」「けむりのつぶは、固体のことも液体のこともある」「雲やきりも小さな水のつぶの集まりである」
というように定義や本質を提示してはそれを解説するという型になっていて、それが係り受けの関係で展開してい
る。詳細は、第二章の「けむりの行くえ」の構造過程を参照されたい。
 ところで、この文章を読むと、児童は次のような知識を得るとともに、自然現象や、そのこみいった仕組みに対す
る科学的な興味や関心を深め、科学の研究のおもしろいことや大事なことを痛感する。そこに学習目標が設定され
る。
 第一大段落――┬@ けむりのつぶは、一ミリの一万分の一ぐらいというようなほこりよりも小さなつぶである。
        └A けむりのつぶには、固体のつぶと液体のつぶがある。
 第二大段落―――B けむりが見えなくなったのは消えたのではなく、広がって見えなくなっただけである。
        ┌C 雲もきりも水つぶからできている。
       ┌┼D 雲やきりの水つぶの「しん」に、けむりのつぶのうちのごく小さなものがなる。
       |└E ロンドンや大阪にきりが多いのは、「しん」になるけむりのつぶが多いからである。
 第三大段落―┼┬F 田園にかかるきりや、空に浮かぶ白い雲の水つぶの「しん」には、海の塩がなる。
       |└G ケーラーという科学者が、雲やきりの水つぶの「しん」に海の塩がなることを証明した。
       └―H 雲のつぶが大きくなると雨になる「しん」をまいて人工の雨を降らせることができる。
 第四大段落――けむりと、けむりと雲やきりとの関係がわかった。それは科学者の長い間の協力・努力による。
 上の@ABは、けむりについての知識、CDEは、雲ときり、雲やきりとけむりのつぶとのつながりについての知
                                                      91
識、FGは、雲ときりと塩とのつながりについての知識、Hは、人工雨についての知識となっている。
 そこで、第一時の直観読みの行動目標は「全文を直観的に読みとって、その概略を次のように書く(話す)ことが
できる。『けむりは、空気中に浮かぶ固体または液体のつぶで、ごく小さなものは、雲やきりの水つぶのしんとなる。
また、田園にかかる雲やきりの水つぶのしんには、海の塩がなる。』」というように設定する。この直観的に読みとる
内容は、客観的な知識であるから、このように知識の概略の正確な読みを規定することができる。このような読みが
いわゆる全容直観の読みである。
 次に、第二時の第一大段落を読んで、けむりについての知識を求める学習の行動目標は「けむりについての知識を
段落ごとに正確に、筋道を立てて読みとって、次のようにまとめて話す(書く)ことができる。@煙のつぶは、一ミ
リメートルの一万分の一ぐらいの小さなもので、A工場の煙のつぶのような固体のつぶと、Bたばこや線香の煙のよ
うな液体のつぶがある。C白い湯気は煙とはいわないが、煙の仲間である。」のように設定する。ここでは、段落に
まとめて読む、筋道を立てて正確に読むなどの技能と、正確に読もうとする態度とを学習し、その結果得られる知識
を、外部行動化した言語行動として示したものである。児童は、一時間の学習の中でこのように読みとる。
 第三時の第二大段落の読みでは「小段落ごとに要点を読みとって取捨選択し、煙についての知識を次のようにまと
めて書く(話す)ことができる。『空中にばらまかれた煙の固体または液体のつぶのうち、大きなものは、何かに付
いたり地面に落ちたりするが、小さなものは、空気中にただよっていて、しばしば、きりや雲にすがたを変えて現れ
る。』」のように行動目標を立てる。ここでは、けむりについてまとめるのに必要な知識と必要でない知識とを読み
分ける批判読みの技能が使われる。
 第三、第四大段落の読みは省略して最後の体制読みの行動目標を考えてみる。最後の読みにはいろいろな方法があ
る。筆者の意図に即して構造変換をする。読み手の発想によって構造変換をする。読みとったことを組織するなど。
ここでは、この文章構成のパターンに即して「全文を読んで、煙について得た知識を、問題―解答という形式で、次
のようにまとめて書くことができる。問1=煙とは何か 答=空気中に浮かぶ固体または液体のつぶの集まり 問2
                                                      92
=煙のつぶは空中に出るとどうなるか 答=大きなつぶは……小さなつぶは……(中咯) 問8=人工の雨は降らせる
か 答=しんになる物質をまけば降らせることができる。」のように設定する。このような読みとったことのまとめ
方は、児童に自由に発見させる。この過程で構造的思考力、創造的思考力を伸ばすことができるからである。
情報の読み
の行動目標
 次は、情報教材「雪国の子どもたち」の読みにおける行動目標を設定してみる。これは雪国の子どもた
 ちの生活情報を伝えているいわゆる絵画情報つきの文献情報で、要素型(並べ型)になっている。この
情報の詳しい組み立てについては、第二章の「雪国の子どもたち」の構造過程を参照されたい。
 児童は、この情報を読んで、雪国の子どもたちのたいへんな生活や、楽しい遊びの生活や、春を待つ間の雪国の楽
しみを認識し理解するのであるが、その間に二年生なりの情報処理の仕方を学習することになる。たとえば、雪国の
子どもたちという情報話題から、どんな情報事項をどのようにして集めるのか、どのようにして情報事実と情報意見
とを読み分けるか、どんな情報が不足しているか、情報事項が正しく書いてあるか、収集した情報事項を二年生なり
にどのように組織するか、この情報を受けとめてどう思うかなど、情報を主体的に批判的に受け入れる初歩の技能や
態度を学習する。このことを明確に押さえて、一時間一時間の学習を進めなければならない。したがって、行動目標
も、受け入れる情報の内容と、それを受け入れるときに働く技能とを考えて設定することが大事である。
 そこで、第一時の、全文を読んで、直観的に情報事項を収集する学習の行動目標は「雪国の子どもたちの写真や情
報文を読んで、情報事項を収集し、次のようにカードに書く(話す)ことができる。@雪国ではたくさん雪がつもる
こと、A学校へ行くのがたいへんなこと、B雪おろしのこと、Cそりやスキーであそぶこと、D雪がっせんをするこ
と、E雪だるまをつくること、F雪のちょうこくをすること、Gかまくらをつくること、Hかた雪わたりをするこ
と、I黒い土を待っていること」のように設定する。ここで情報事項を収集する技能の学習をする。
 第二時の大段落の読みでは、情報事項と情報詳細とを読み分ける、情報事実と情報意見とを読み分ける、情報事項
を分類してまとめるなどの学習をする。その場合の行動目標を立ててみると、「小段落ごとに情報事項と詳細、事実
と意見とを読み分けて収集した情報事項を、雪国と子どもとの情報に分けて、次のようにまとめて話す(書く)とと
                                                      93
もに、そのたいへんなことに気づくことができる。『雪国では冬になると田もはたけも山も雪でおおわれる。雪おろ
しをすると、家の回りに雪の山ができる』『ふぶきの朝、雪のふきつける中を学校へ歩いていく。大きな子どもは雪
おろしの手つだいもする』。」ということになる。このように行動目標を立てると、この行動目標を達成するための基
本的な学習活動を容易に選ぶことも、組み立てることもできる。また学習活動ごとに立てる評価の基準も方法も明確
にすることができる。
 第三時の大段落の読みでは、子どもたちの楽しい遊びについての情報事項を押さえる過程で、やはり、情報事項と
詳細、情報事実と情報意見とを読み分ける、あいまいな叙述を見つけるなどの技能の学習をする。そこで、この時間
の行動目標は「小段落ごとに、情報事項と詳細、事実と意見を読み分け、あいまいな叙述をはっきりさせて収集した
情報事項を、次のように組み立てて話す(書く)とともにその楽しさ・元気さを感じとることができる。家の回りの
雪の小山やおかのあそび場―そりやスキーですべってあそぶ。雪の広場――@雪がっせんをする。A雪だるまを作
る。B雪のちょうこくをする。」のように立てる。
 第四時は省略して、最後の体制読みの行動目標を立ててみる。これまでに収集した情報事項全体を整理して組織す
るための学習である。この行動目標は、次のように立てる。
 「雪国の子どもたちを読んで得た情報事項を、たいへんなこと、楽しい遊びのこと、楽しみなことの三つに分けて
 次のように組織して書く(話す)ことができる。
  雪国の子どもたちは、どんな日をおくっているのか。
   の たいへんなこと――ふぶきの朝、学校へ行くこと。雪おろしの手つだいをすること。
   A たのしいあそびのこと―┬小山やおかのあそび場で……そりやスキーですべってあそぶ。
                └雪の広場で……雪がっせんをする。雪だるまを作る。雪のちょうこくをする。
   B たのしみなこと――かまくらを作ってあそぶ。かた雪わたりをする。黒い土があらわれるのをまつ。」
 この組織の仕方はどのようでもいい。カードを使ってもいい。全体を読んで、雪国では子どもたちはどんな毎日を
                                                      94
送っているかという発想転換をさせて、それを課題としてまとめる。そのためにこれまでに得た情報事項の中から、
必要な情報事項と、必要でない情報事項とを区別すること、三つに分類すること、課題への解答の形で組織するとい
うことになる。この場合も、この目標を達成するための基本的な学習活動とその方法を選びだすことができる。
作文学習の
行動目標
 近代的な作文では、作品中心の考え方は後退した。書く題材の選び方、書く内容の集め方、思い出し
 方、書く内容の組み立て方(アウトライン、構成)、文章の書き表し方、書いた文章の修正の仕方など
について、それぞれ時間をとって学習するようになってきた。つまり、作文過程の全過程を学習する、作文学習とい
う考え方に変わってきた。したがって、学習する内容(過程)ごとに行動目標を立てる必要に迫られている。
 ところで、これまでのは理解のための行動目標であったが、作文のは表現のための行動目標であるから、その設定
の仕方、記述の仕方が違ってくる。このことは、すでに前に述べた。
 五年の作文単元「わたしの父」を設定する。自分の父についての情報を友だちに伝える情報創造の作文学習であ
 る。
@ 父についての情報を収集する学習の行動目標は「父の生活・人がらなどについて、面接・観察・想起などの方法
 で、真実で、価値のある、正確な情報事項を収集・選択してカードに書き、情報事項を話題ごとに分類・整理する
 ことができる。」と設定する。情報は真実で価値があり、正確なものを伝えるのが、情報伝達の論理である。
A 収集した情報事項を組み立てて、アウトラインを作る学習の行動目標は「父についての情報を、情報話題――情
 報事項――情報総括という情報のパターンにしたがって組み立てたアウトラインを作ることができる。」と設定す
 る。このアウトラインは、文章構成であるから、どのように組み立てさせるかは、書く目的と、題材に対する構え
 (発想)によって異なる。基本的には経験的発想、紹介的発想、感動的発想、論理的発想などによって決まる。こ
 こにあげたのは紹介的発想による基本的なパターンで、一般の情報はこれによっている。
B このアウトラインに従って情報を叙述するのであるが、必要に応じて、あらかじめ作文教材を使ってその叙述の
 仕方を学習する場合もある。その場合の行動目標は、「情報文を読解することによって、主観をまじえないで、正
                                                      95
 確な、客観的な具体的な情報の書ぎ表し方を理解して、それを例をあげて説明することができる。」というよう
 に設定する。
C 次はアウトラインに従い、学習した情報叙述の仕方によって情報を叙述する時間である。この学習の行動目標は
 「アウトラインに従って、父についての情報を、主観的なことばやあいまいなことばを使わずに、事実をできるだ
 け事実のままに、正確に、具体的なことばを使って書いて、正しい情報を正しく伝えることができる。」と設定す
 る。ここでは、情報のあり方(本質)にもとづいたその書き方、書く技能をも学習する。これによって、父に対す
 る認識はいよいよ深くなっていく。
D 次は、書いた情報を、行動目標に照らして評価し修正する学習であるが、その行動目標は「書いた情報の中から
 あいまいな叙述・抽象的な叙述・主観的な叙述などをみつけて、事実にもとづいて、正確な叙述・客観的・具体的
 な叙述に修正し、正確な情報を正確に伝えることができる。」のように設定する。情報の構成(アウトライン)につ
 いては、アウトラインを作る段階で修正するので、ここでは、書く時の行動目標に照らして、叙述についてだけ評
 価し修正する。
 以上情報創造の作文の例であるが、作文における一般的な行動目標の立て方が理解されたと思う。次に「最近心に
感じたこと」という四年生の自己表現・心情表現の作文学習の行動目標を設定してみる。
@ 題材を選び、書く内容を収集する学習の行動目標は「日常生活の中で特に強く心に感じたことのうち、新鮮な題
 材を選び、書こうすることがら、心情を想起してカードに書き出して整理することができる。」とする。
A 想起した書き表す内容を、組み立ててアウトラインを作る時間の行動目標は「事件や行動や主題を中心にして、
 どんなときに、どんなことを感じたかがわかるような、文章の中心のはっきりしたアウトラインを組み立てること
 ができる。」とする、事件的発想、感動的発想によるアウトラインを作る。
B アウトラインに従って、心情を表現する学習の行動目標は「アウトラインに従って、事件や行動や生活にまつわ
 る感情を、感情をそのままに表すことば、感情の表れている会話を使ったり、感情を触発した事実そのものを客観
                                                      96
 的に書いたりして、感情がよく感じられるように表現することができる。」と設定する。
 このように、作文学習での行動目標は、おおまかな書く対象――認識の対象と、それをどう認識し、どう表現する
か、認識の仕方、表現の仕方だけを規定することになる。ただ、それらの表現技能は、内容的な価値を認識し、表現
する力であり、児童の自己認識、自己開発の技能であることを忘れてはならない。




                                                      97
第五章
 
目標追求の学習指導過程は
どのようにシステム化するか
その考え方と実践

 この章では、一時間の授業の流れの中心になる、学習指導
過程の編成上の原理・原則や、そのシステム化の方法につい
て説明し、そのモデル過程を示しました。この学習指導過程
は、科学的・工学的に編成されていること、特に評価調節過
程を設定して、組みこんでいることが、その大きな特色にな
っています。
 また、この学習指導過程を、児童とともにフローチャート
化して、それによって学習を進める方法についても書いてあ
ります。
 このほか、文学読解の学習指導過程、情報処理の学習指導
過程、作文の学習指導過程について、そのモデル過程も示
し、フローチャートも提示してあります。
 学習指導過程は、フローチャート化すると、そのシステム
が視覚的にもよくわかる、その時間の学習の中心がはっきり
する、学習の準備過程と学習過程と学習の評価調節過程、学
習の終末過程などが、一目でわかるなどのよいところがあり
ます。
 いちど、一時間のフローチャートを作って、学習を指導し
てみてください。また、児童といっしょに、フローチャート
を作って、児童の学習にも使ってみてください。
                                                      98
     学習指導過程のシステム設計の考え方とそのモデル

   学習指導過程のシステム設計はこのようにする
 (1) 学習指導過程の本質は何か
 普通に指導過程と呼んでいるのは、学習指導過程のことである。それを略して指導過程と呼んでいるために、教師
の指導が重く見られ、児童自身の学習が軽んぜられる傾向がある。それは学習指導過程の本質を誤解している。
 学習指導過程は、もともと学習者が学習の目標をめがけて学習を進める過程に即して、教師が必要に応じて示唆
し、助言を与え、時には教えるなどして、学習者の学習を助けたり、指導したりする過程である。
 したがって、学習の主体はあくまで児童である。児童が中心になって、主体的に積極的に学習を進めるのが、ほん
とうの学習の姿である。ところが、それが忘れられて、教師の指導意識、教授意識が先に立つために、教師が中心に
なってしまい、児童があとについていく、従っていく、というのが教室の一般の姿のようである。したがって、教師
がいつも児童の学習の場を奪ったり、主体的な学習を妨げたりすることが多い。
 (2) 学習指導過程はどのような原則を押さえて編成するか
 第一に、学習指導過程は、学習者が学習目標をめがけて学習を進める過程に従って編成する。このことをもう少し
具体的に言うと、学習過程というのは、学習者が学習目標を達成するうえに必要な学習活動を、学習を進める順序・
過程に従って配列したものである。この学習の始めから、学習が成り立って学習が終わるまでの学習活動の配列が、
具体的な学習過程である。これが学習の流れである。流れであるから、どの学習活動も、それぞれの役割を果たしな
がら相互に、ある関係を保って結びついているものである。これらの活動の間の関係は、学習過程をささえる児童の
思考過程・論理・筋道によって規定されるものである。
                                                      99
 第二に、学習指導過程の中には、直接、学習する過程以外に、児童が学習を進める上に必要な条件・要因を組織す
る。たとえば、@学習の目的を確立する。A学習の方法を考える。B学習の意欲を喚起する。C学習の態度を確立す
る。D学習の計画を立てる。E学習の結果を評価する、などである。これらの条件・要因を学習過程の前に準備過程
として組み入れたり、学習過程の中や終わりに組み入れたりして、学習が主体的に積極的によどみなく流れるように
配慮する。このようにして、児童の学習過程を中心とした学習指導過程が編成される。
 第三に、児童の学習を指導するに当たって、教師のなすべき仕事を考え、それを学習過程にしたがって配列し組織
する。学習指導に当たって教師がなすべき仕事には、次のようなものがある。
@ 学習について、指示を与えること、示唆を与えること、助言すること、補助をすること
A 学習課題、学習方法、学習教材などについて説明すること、知識を与えること
B 学習に必要な情報を提示すること(学習の資料、学習法、学習評価の基準の提示など)
C 学習の結果を評価すること、評価の結果を知らせること
D 学習を組織すること、展開すること、総括すること
 これらは教師の教育的機能であり、具体的に言えば指導技術であるから、学習指導過程の中に適切に組織する。
 (3) システム化に必要な要素過程を分析抽出して学習指導過程を編成する
 いよいよ学習指導過程の編成である。前に述べた学習指導過程の本質と、編成する上の原則三つをしっかり押さえ
る。その上で、一般に教室で、学習が始まってから終わりまでの学習の流れ(過程)全体を分析してみる。すると、
学習はどんな過程をたどって進められているか、その要素過程が抽出される。その分析の結果をあげてみると、
 @その時間の学習の目標を立てる(目標過程)。A学習の計画や方法を考える(方法過程)。B学習を進める(学習
過程)。C学習の過程で国語の能力が育てられる(能力過程)。C学習活動の結果を評価する(評価過程)。E学習の
評価にもとづいて学習し直す)評価過程)。F学習目標が達成される(獲得過程――体制過程)。E学習の結果を適用す
る(適用過程)。これだけの過程をたどると、学習が、主体的に、確実に、生産的に行われる。
                                                      100
 これらの要素を、行動の基本様式(モデル)「目標――計画――行動――評価――達成」にそって編成すると、そ
こに、目標追求の科学的、工学的学習指導過程を編成することができる。
 @ 目標過程――学習目標を立て(課題)学習態度を確立する過程――――――┐
 ↓                                   |
 A 方法過程――目標を達成するための学習計画・学習範囲・学習能力・   ├準備過程
 ↓       学習方法・学習機器・学習用具などを決める過程――――――┘
 B 学習過程・能力過程――学習活動を進め、技能・態度を身につける過程――┐
 ↓                                   |
 C 評価過程――学習活動の結果を評価する過程――――――――――――――├学習過程―学習指導過程
 ↓                                   |
 D 調節過程――評価の結果にもとづいて学習し直す過程――――――――――┘
 ↓
 E 獲得過程――めがけた学習の目標を獲得する過程――――――――――――┐
 ↓                                   ├体制過程
 F 適用過程――学習の結果、身につけた技能を他に適用する過程――――――┘
 この学習指導過程は、学習行動の基本過程を示したものであるから、読解・作文・談話・聴解など、どの領域の学
習指導過程も、これを基準として編成することができる。
   学習指導過程の実践モデル
 以上のようにして編成した学習指導過程に従って学習を進める場合の実践モデルを次にあげてみる。もちろん、こ
れは基準学習指導過程であるから、教科・領域の違いによって、学習過程の部分が、それぞれ独自の過程になる。
1 目標(過程)――@学習課題を設定する。A学習の興味・意欲を喚起する。B学習の構え(態度)をもつ。
2 方法(過程)――@学習の範囲を決める。A学習の計画を立てる。B学習の方法を決める。C学習技能の使い方
          を知る。D学習の資料を集める。E学習機器や学習用具を用意する。
3 学習(過程)――@目標を追求する学習活動をする(学習過程は、読解・作文・談話などによって違ってくる)
                                                      101
  能力(過程)  O読解――直観読みをする。分析読みをする、体制読みをするなどの学習活動をする。
          O作文――題材を選択する。表現内容を収集する。表現内容を組織する。表現叙述する。修正
               する。処理するなどの学習活動をする。
          A学習活動の中で学習技能を使い、学習態度を育てる。B学習の結果を発表し組織する。
4 評価(過程)――@学習活動の結果を話す、書く、絵にかく、行動に移すなどして外部行動化する。
          A評価の観点を明確にする。評価の観点は、行動目標に示されている技能とする。
          B評価の基準を示す。基準は、行動目標に示されている内容、文学の場合は内容を示している
           ことばとする。作文の場合は、技能行使の状況による。(評価表・学習ノート・カード)
          C方法は、見本法、条件法、選択法、比較法などによる自己評価・グループ評価・教師の評
           価。
          D評価は、学習過程に示された学習活動ごとに行う。評価の結果は児童に知らせる。
5 調節(過程)――@評価の結果にもとづいて調節の条件を決める。A調節条件にもとづいて学習し直しをする。
          B調節読みの結果によって修正する、補正する、削除する。C調節条件の類型化、個別化を考
          える。D学習ノートによる、書いたものによる、絵による。E作文の場合は、内容収集、文章
          構成、文章表現について行う。
6 獲得(過程)――@その時間の行動目標を達成する。A読解では、朗読・感想・構造変換・総括などによる。B
          作文の場合は、その目的・機能を果たす。
 以上は、学習指導過程のモデルである。これに準じて、読解・作文・談話などの学習指導過程を編成する。
                                                      102
     フローチャートによる学習指導の方法


 児童たちが、一時間の学習の初めに、どんな学習の課題を、どんな手順・方法で学習するかを話し合って、その時
間の学習の見通しを立て、それをフローチャート化して学習を進める。そうすると、その時間に何を目がけて学習す
るか、どんな順序で学習するか、その時間の学習の中心は何かなどがはっきりして、主体的な積極的な学習を進める
ことができる。また、そのフローチャートが、前面に掲げてあるから、教師は、どこでどのような助言・指導をした
らいいか、どこで説明をしたり教えたりしたらいいか、いつ情報を提示したらいいかなどが、一目ではっきりわか
る。また、どこは一斉学習、どこは個人学習、どこはグループ学習をするか、また、どこで、どんな教育機器を使う
かなどもはっきりして、容易に授業も、学習もシステム化できるようになる。
フローチャート
の 作 り 方
 そこで、フローチャートを作るためには、まず、使う記号を教える。課題を立てる記号、学習の方
 法を考える記号、読む記号、書く記号、話す記号、話し合いの記号、評価の記号、学習し直しの記
号、学習の流れを示す記号、ノート・カード・OHP・サインボックス・テープレコーダーなどの記号、要するに、
学習を進める上に基本になる活動や機器・用具を記号化する。児童は記号を読むのがじょうずである。すぐ覚える。
教師は、これらの記号を二〇センチ×二五センチぐらいの記号板にする。学習の初めに「勉強する課題を作ろう」と
言って、その記号板を黒板上におく。「次は勉強の仕方を話し合って考えてみよう」といって、その記号板を次に並
べて流れを示す記号で結ぶ。このようにして話し合いながら学習指導過程にそって、それぞれの記号板を並べてい
く。こうすると、容易にフローチャートができあがる。これを繰り返すと、児童は、授業の計画や見通しを立てるこ
とがじょうずになって、自分でフローチャートを作ることができるようになる。記号は一〇六ページ以下を参照され
たい。
                                                      103
フローチャート
による学習
 学習のフローチャートができると、それによって学習を進める。まず、きょうの学習の中心は何か
 を確認する。その上で、フローチャー卜に従って学習を進める。課題を決める過程では、設定され
た課題のうち、最も適切なものを話し合って決める。教師は課題を板書してやる。学習方法を決める過程では、児童
はすでに学習した方法を思い出したり、それを組み合わせたりする。適切な方法が見つからないと、教師に助けを求
める。教育機器などは、すぐに児童に使えるように準備しておく。決まった学習法は、板書したり、OHPで投映し
たりしてやる。学習をする過程では、教師は学習状況を観察したり、指導したりする。児童は、学習方法に従って学
習する。個人学習やグループ学習が行われる。学習の結果はノートに書き出したり、カードに書いたりする。学習に
つまずいている者は、個人指導をする。学習ノートによって自己学習を進める場合もある。学習活動の結果は、でき
る限り説明ができる、発表ができるようにさせておく。また、箇条書きにしたり、説明を書いたり、サイドラインを
引いたりして外部行動化しておく。これは、次の評価の過程に備えてである。学習には速い遅いの差があり、できふ
できの違いがあるが、教師はころあいを見て学習をとめたり転換したりするための助言をする。また、速くできたも
めのために学習資料を提示してやる。次は、学習活動の結果を評価する過程である。教師は評価の基準を板書あるい
はOHPで投映する。見本法でやるか、条件法でやるか、選択法でやるかは教師が決める。自己評価が原則ではある
が、時にはグループで評価し合ったり、全体で評価し合ったりする。また、全員あるいはグループでの学習の結果を
組織してやって、全員、学習に参加させ、その喜びを感じさせるのもこの過程である。そこから児童は自己評価をす
る。学習が評価されたら必ずその結果をひとりひとり自覚させる。次は評価の結果にもとづいて学習し直しをする過
程である。学習し直しの条件は、自分で考えるのが原則であるが、必要に応じてこれもグループや教師が助言する。
この学習・評価・調節の学習こそ児童が最も主体性を発揮する時である。こうして学習は体制化されていく。
フローチャート
による学習技術
 このようなフローチャートによる学習によって、児童は、フローチャートによる学習技術、さまざ
 まな学習法、評価調節の技術、学習過程の技術など、自己学習に必要な技術を学習する。そうして
学習の見通しの立て方、学習の中心の押さえ方、自分たちで解決できることとできないことの見分け方、どんな場合
                                                      104
に教師の指導を受けるべきかの判断の仕方などがわかり、学習意欲が高まるとともに主体性がいっそう確立されてく
る。


     文学の読解学習指導過程のモデルとそのフローチャート

 (1) 文学の読解学習指導過程を編成する
 前に述べた、学習指導過程のモデルに従って文学作品の読解学習指導過程を編成してみる。まず、文学の読みを考
えてみると、だれしも最初ある感動を受ける。同感、共鳴したり、ときに反発したりすることもある。そして、しだ
いにその感動が何であるかがわかってくる。それは人生の生き方であったり、ものの見方・考え方であったりする。
美へのあこがれであったり、美への志向であったりする。それがよくわかってくると、自分の生き方や考え方や感じ
方と対比される。そこから感想や批判が生まれる。そして、自分への同化・異化がはっきりして、いわゆる作品の機
能としての内容的価値が身につく。体制化される。つまり、それが行動の変容である。
 この文学の読みの過程を分析してみると、@感動をする過程(感動過程)。A理解をする過程(理解過程)。B感想
や批判をもつ過程(感想過程)。C行動化する過程(行動過程)の四過程になる。さらにこの過程を、読む活動にあ
てはめてみると、@直観読みの過程、A分析読みの過程、B体制読みの過程ということになる。ここに文学の読みの
特性がある。この感動――理解――感想――行動というのが文学の読みの学習過程である。この文学の学習過程を中
心にして、文学の読解学習指導過程を編成してみると、次のようになる。
1 目標(過程)――作品を読む目標を明確にし、読む課題・構えをもつ。
    「かあさんライオンがコロンにけもののつかまえ方を教えている場面を、想像しながら読んで、その真剣さ、
   かわいらしさに感動したことを話すことができる。」というような一時間の行動目標が達成できるような読む
                                                      105
   課題を設定する。
2 方法(過程)――課題に答えるための読みの範囲・方法・技能などを話し合って決める。
   @読む範囲を確認する。(全体・場面)。A読む技能の使い方を考える(想像しながら読む、筋をたどりながら
   読むなど)。B読む方法を考える(サイドラインを引く、絵に書く、書き込むなど)。C読んで感じたことを話
   し合う(気持ち、様子、気分、情調など)、D一時間の学習の見通しを立てる EOHPなど機器の準備。
3 学習(過程)――能力(過程)――課題に答えるために、方法に従って読む活動をする。
   (1) 感動(過程)――@全文を直観的に読んで感動をとらえ、主題に接近する。A全文を直観的に読んで感動
       (直観)  をとらえる。B全文を直観的に読んでおもしろいところをとらえる。
   (2) 理解(過程)――@全文を分析的に読んで作品のパターンをとらえる。Aあらすじをとらえる。B場面の
       (分析)  ようすや情景をとらえる。C人物の性格や気持ちや行動をとらえる。D場面の気分や情
             調をとらえる。E想像したことを説明する、絵にかく、行動化する、書き込む。FOH
             Pで投映する。
   (3) 感想(過程)――@全文を読んで感想や批判をもつ。A主題に対する感想や批判をもつ。B事件や人物の
       (体制)  行動・性格などに対して感想や批判をもつ。C感動したことに対する感想をもつ。
   (4) 行動(過程)――@全文を朗読する。A特に感動の深かった場面を朗読する。B感想を書く。C紙芝居を
             作る。
4 評価(過程)――学習過程の活動ごとに評価する。評価の観点・基準・方法を決める。評価の結果を知らせる。
   @学習活動の結果を組織しそれによって自己評価する。A学習活動の結果の説明、絵画化、具体行動化、書き
   込みなどによって評価する。B観点は学習する技能、基準は行動目標に示されている内容(ことば)、方法は
   条件法、チェック法、比較法などによる、自己評価を原則としグループ評価、全体評価、教師評価を加える。
5 調節(過程)――学習過程の活動ごとに評価の結果にもとづいて読み直しをする。
                                                      106
   @学習活動の結果の組織を見て読み直す。A話し合い、説明を聞いて読み直す。B評価の結果を知って読み直
   す。
6 獲得(過程)――その時間の学習目標を獲得する、体制化する。

過 程   指 導  学     習  作業 その他 



目 標
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方 法
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学 習
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評 価
調 節
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学 習
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評 価
調 節
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学 習
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評 価
調 節
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獲 得


      
                                                      107
   @全文を朗読する。A学習した場面を朗読する。B全文を読んで感想を話す。C学習した場面について感想を
   話す。Dその時間に学習したことをまとめて話す。E学習の評定をする。
 (2) 場面のようすや人物の気持ちを想像しながら読む一時間の学習指導過程のフローチャート(一〇六ページ参照)
 本時の行動目標 かあさんライオンがコロンに、けもののつかまえ方を教えている場面のようすを想像しながら読
         んで、その真剣さ、かわいらしさに感動したことを話すことができる。


     情報処理の学習指導過程のモデルとそのフローチャート


 @ 情報処理の学習指導過程の編成
 国語科で扱う情報は、書きことば情報(文献情報)と話しことば情報である。「雪国の子どもたち」という情報話
題の文献情報がある。情報の送り手は、「雪国の子どもたちの生活はたいへんであるが楽しいことも楽しみもたくさ
んある」ことを伝えようとしている。これが情報意図である。そのような意図をもった情報話題で、伝えている事実
は、学校へ通うことや、雪おろしがたいへんなこと、スキーやそりで楽しく遊ぶことなどである。情報話題に含まれ
ているこれらの事実を情報事項(情報分節)という。情報の受け手は、これらの情報事項を読みとってカードに書き
出す。情報事項が集められると、それを分類整理する。どんな事実がたいへんなことか、どんな事実が楽しいこと
か、どんなことが楽しみにしていることかというように整理される。それを情報意図に照らして全体を組み立てて記
憶したりあるいは、ファイルしたりして保存する。こうして、雪国の子どもたちの生活情報を受け入れる。
 ところで、このように情報を受け入れる場合には、その情報は価値があるか、信頼できる情報か、正確な情報か、
また正確に書かれているかなどを判断する。情報事実と情報意見とを判別する。情報不足は何か、どうもこれは疑問
だというような情報事項を明らかにする。このような処理の仕方が情報の批判的処理、主体的処理である。
                                                      108
 こうして「雪国の子どもたち」を読んで、その青報を受け入れるのであるが、この文献情報で求められなかった情
報事項や、不正確な疑問のあった情報事項については、他の文献情報を読んで補ったり、修正したりして、前の情報
に組み入れる。それで雪国の子どもの生活情報の処理が終わることになる。これが情報処理の過程である。
 いまここでは、一つの情報教材から情報を受け入れ処理する過程を分析して、情報処理の学習過程を編成してみる
ことにする。まず前記の情報処理の過程から要素過程を分析抽出してみると
 @情報意図をとらえる過程、A情報事項を収集・選択する過程、B情報事項を整理する過程、C情報事項を組織す
る過程、D情報を蓄積・保存する過程となる。これが情報処理過程である。この過程を中心にして、学習指導過程を
編成してみると、次のようになる。
1 目標(過程)――情報受け入れの目標を立てる。
2 方法(過程)――情報受け入れの方法を考える。
3 処理(過程)――情報を受け入れ処理する。
   @意図――情報話題について送り手の意図を押さえる。情報の価値・真否・正否を考える。
   A収集――情報話題を組み立てている情報事項を書き出す。情報事実と情報意見とを判断する。足りない情
        報・疑問のある情報を書き出す。伝え方があいまいか、正確か、誤りかなどを判断する。カード・
        ノートに書く。
   B整理――収集した情報事項を分類する。仲間ごとに見出しをつける。足りない情報・疑問のある情報を取り
        出す。情報事実と情報意見とを区別する。
   C組織――情報事項を情報意図を中心にして組織する。記憶しやすいように発想を転換して組織する(構造変
        換を行う)。表解する。箇条書きにする。カード操作をする。
4 評価(過程)――処理の各過程で評価する。情報事項が適切に組織されたかなどについて評価する。
5 調節(過程)――評価の結果にもとづいて調節読みをする。
                                                      109
過 程   指 導  学     習  作業 その他 
 
情 報

目 標|

方 法

収 集


評 価
調 節

(見本)


評 価
調 節

(意図)


評 価
調 節


組 織


獲 得

  

6 獲得(過程)――情報ファイルを作る。他に求めるべき情報、さらに確かめるべき情報をつけ加える。情報につ
          いての感想・意見・批判・所見などを書き添える。
 以上、情報処理の学習指導過程のモデルを編成した。上に「雪国の子どもたち」から情報事項を収集し整理する学
                                                      110
習指導過程をフローチャートによって示してみる。(情報教材「雪国の子どもたち」は、第三章を参照されたい。)
 (2) 情報事項を収集・整理する学習指導過程のフローチャート(一〇九ページ参照)
 本時の行動目標 「雪国の子どもたち」の前半を読んで四つの情報事項を収集して、雪国の情報事項と子どもたち
         の情報事項とに分けることができ、また、雪国の生活のたいへんさを説明することができる。

     作文の学習指導過程のモデルとそのフローチャート

 (1) 作文の学習指導過程の編成
 作文学習の領域は、感動を書く、心情を書く、感想や意見を書くという自己表現、手紙を書く、情報を書く、報告
を書くという情報伝達、記録を書く、日記を書く、説明を書くという記録説明の三領域になっている。それぞれの文
章は書く目的や機能によって多少の違いはあるが、基本的にはどれも、@書く題材(主題)を決める。A書く内容を
集めたり思い出したりする。B書く内容を組み立てて文章を構成する。C構成に従って書き表す。D書いた文章を直
す。E書いた文章を目的に応じて処理するという過程をたどって制作処理される。これが作文の一般的な制作過程で
ある。したがって指導に当たっては題材の選び方、書く内容の収集の仕方・思い出し方・文章の組み立て方・文章の
書き表し方、文章の修正の仕方それ自体についての学習も計画される。それぞれの学習を指導する過程が一時間の学
習指導過程である。次に前に述べた学習指導過程のモデルに従って作文の学習指導過程を編成してみる。
1 目標(過程)――作文を書く目的を確立し、書く構えをもつ。
   O感動したことを詩に書こう。O近況を知らせるために手紙を書こう。Oアウトラインを作ろう。O情報の書
   き方を知ろう。O書いた文章を修正しようなどのように、その時間に学習する目標を確立する。
2 方法(過程)――目標を達成するための方法を決める。
                                                      111
   O題材の選び方、書く内容の収集の仕方、アウトラインの作り方、文章の書き表し方などについて決める。
   O題材ノート、取材メモ、取材カード、構成メモなどに書く、 Oカード操作をしてアウトラインを作るな
    ど。
   O教材によって、題材の選び方、アウトラインの作り方、表現の仕方などを理解する。
3 制作(過程)――文章の制作過程             (情報の処理過程)
  @ 主題(過程)――書く主題題材を選ぶ     @ 話題――情報意図、話題を選ぶ
  A 取材(過程)――書く内容を集める      A 収集――情報事項を収集・選択する
  B 構成(過程)――アウトラインを作る     B 組織――情報事項を組織する
  C 表現(過程)――表現・叙述する       C 叙述――情報を叙述する
  B 修正(過程)――書いた文章を修正する    D 修正――情報叙述を修正する
4 評価(過程)――制作過程の活動ごとに評価する       (評価)
5 調節(過程)――評価の結果によって調節する        (調節)
6 処理(過程)――目的に照らして処理する     E 伝達――情報を伝達する
 上は文章を書く目的を立ててから書き終わるまでの全過程を編成したものである。したがって、実際には、45の
評価、調節過程は、制作過程の@ABのそれぞれに入れる。なお、ABCDの過程で、教材を使ってそれぞれの方法
を学習する場合には、それをそれぞれの過程の前に入れる。次に二年の情報創造の作文単元「近所の店」の「アウト
ライン作り」の学習指導過程を編成してフローチャート化してみる。
 (2) アウトライン作りの一時間の作文学習指導過程とそのフローチャート(一一二ページ参照)
 本時の行動目標――近所の店についての情報事項を収集し、情報話題・情報事項・情報総括の組み立てで、アウト
          ラインを作ることができる。
 この目標を達成するための基本的な学習活動は、@情報事項を収集してカードに書くこと、A収集した情報事項を
                                                      112

過 程   指 導  学     習  作業   その他 
 


目 標|
方 法

学 習
(収集)

選 択
分 類




評 価
調 節

学 習

評 価
調 節

獲 得

                                                      113
仲間ごとに分類すること、B仲間ごとに見出しカードを作ること、C見出しカードを情報話題・情報事項・情報総括
の順に並べ、その下に情報事項を並べること、B書き出しの文、まとめの文を書き添えることの五つである。この活
動を、学習指導過程の中に位置づける。これらの学習は、すべてカード操作によって行われる。教師は、それぞれの
活動ごとに観察・評価し、指導助言する。





                                                      114
第六章
 
価値追求の学習技術は
どのように開発するか
その考え方と実践

 いま、国語抖で関心を集めている間題に、学び方の学習と
か学習法の学習とかいうことがあります。
 国語科で、学び方とか学習法とかいうのは、国語の学習の
仕方です。国語の技能をどのように使って、いろいろな知識
や情報を求めるか、ものの見方・感じ方を深めるか、心情を
育てるか、その技能の使い方・働かせ方が、国語科の学習法
です。それが、国語科の学習技術です。
 この章では、そのような学習法、学習技術をどのようにし
て開発するか、また、それをどのようにして学習するかとい
うことについて、詳細にわかりやすく説明しています。
 そのほか、読解の学習技術、作文の学習技術、それから、
直接読解や表現にかかわりのない方法技術についての具体例
があげてあります。それはごくわずかの学習技術しか取り上
げていませんが、それでだいたいを推しはかることができる
と思います。
 こうして、児童はいろいろな学習技術を身につけて、必要
な時に、必要な知識や情報を求め、思想や心情を育てること
ができるようになると信じます。
 ここでは、ふだんの授業の中でそれぞれの学習技術を確実
に押さえて、学習させることを考えてみてください。
                                                      115



     学習技術の開発とそのシステム



 (1) 国語科で学習法というのは、言語技能の働かせ方・使い方である。
学習法
の学習
 現在の学校教育の中で、学習法の学習ということが新しい問題になっている。今日のように新しい知識がつ
 ぎつぎに生まれ、新しい技術がどんどん開発されている時代には、学校教育でどんなに知識を詰めこんでも
技術を教えても、未来に生きる役にはたたない。それよりも基本的な知識、基本的な技術を学習する過程で、知識の
求め方・学習の仕方・技術の学び方・開発の仕方を学習することがより大事だと考えられてきた。そうして、身につ
けた学習法を、自由に使って、目的に応じ、必要に応じて、主体的に知識を獲得したり、生産したり、技術を開発し
たり、改革したりすることのできる人間を育成することが、社会的にも教育的にも要請されている。
国語科の
学習法
 では、国語科で学習法というのは何であろうか。国語科の学習は、昔から文章を読んでその内容である知
 識や情報を求めたり、思想や心情を育てたりする。また、何かについて文章を書いて、表現対象について
の認識を深めたり、感覚や心情を育てたりする。その活動を普通に学習活動と言い、前者を読む活動、読解活動、後
者を書く活動、表現活動などと呼んでいる。
国語科では、このような聞く・話す・読む・書くという学習活動によって、知識や情報を求めたり、思想や心情を
育てたりして、人間性を開発したり伸長したりする。それと同時にその知識や情報を求めるのに必要な国語の態度や
技能、思想や心情を育てるのに必要な国語の技能や態度を学習する。この場合の、国語の技能や態度を適切に働かせ
て使って、知識・情報や思想・心情を求めたり、育てたりする。その技能や態度の働かせ方・使い方が、国語科の学
習法である。言い換えれば、知識や情報、思想や心情を求めたり、育てたりするための国語の技能(言語技能)や態
度(言語態度)の働かせ方・使い方が学習法ということになる。
                                                      116
学習法として
の言語技能
 してみると、国語科で学習法というのは、文章を読んで、知識や情報を求めるための、要旨を読みと
 る技能、要点を読みとる技能、情報を収集する技能、事実と意見を読み分ける技能などの学習技能の
働かせ方、使い方であることがわかる。また、文学作品を読んで感覚をみがいたり、心情を育てたりするための、主
題を読みとる技能、場面や情景を想像しながら読む技能、人物の性格を読みとる技能、心理や心情を想像しながら読
む技能などの学習技能の働かせ方・使い方も学習法である。前者は文章(知識・情報)の学習法、後者は文学(感
覚・心情・思想)の学習法である。また、作文学習で、情報を書くための、主観と客観を書き分ける技能、正確に書
く技能、また、生活感情を書くための、場面のようすを書き表す技能・気持ちが感じられるように書き表す技能など
の表現技能の働かせ方・使い方もまた作文の学習法である。
学習技術
の開発
 ところで、その学習技能としての言語技能の働かせ方・使い方というのは何であろう。たとえば、ここに
 「概略を読みとる技能」というのがある。 この技能を使って文章の概略を読みとる状況を考察してみる
と、@文章を読みながら、段落の要点を次々に押さえていく。A読み終わった段階で、これまでに押さえて記憶して
いた要点をまとめて概略を押さえるという過程をとる。そこで、概略を読みとる技能は、@要点を読みとる、A読み
とった要点をまとめて文章にするという過程をたどって働くことがわかる。これが概略を読みとる技能の働かせ方・
使い方である。このように言語技能の働かせ方・使い方をパターン化したものが言語技術である。
 なぜこのように学習技能を学習技術としてとらえることが大事かというと、これまで児童は、概略を読みとれ、要
点を読みとれ、想像しながら読めと言われても、それらの技能をどのように使ったらいいか、使い方・働かせ方がわ
からなかった。それを前記のようにそれらの技能の働かせ方・使い方をパターン化して学習すれば、児童は容易に概
略を読みとる技能、要点を読みとる技能、想像しながら読む技能の使い方・働かせ方、つまり言語技能を身につける
ことができるからである。
 このようにして、いろいろな言語技能の働かせ方・使い方を発見してパターン化することが、言語技術(学習技
術)の開発であり、このような言語技術を学習して身につけることが、学習法の学習なのである。
                                                      117
 (2) 国語科の学習技術にはどんなものがあるか
 前に述べたような、知識や情報、思想や心情など、内容的な価値を獲得し生産するための国語科の学習技術にはど
んなものがあるか、聞く、話す、読む、書くなどの言語活動を分析して選び出してみよう。
基礎的な
言語技術
 まず、文章を読んだり、書いたりする活動は、文字を読み書く技能、ことばを理解する技能、使う技能、
 文法を理解する技能、使う技能によってささえられている。普通、これを基礎技能とも支持技能とも呼ん
でいる。これらの基礎技能の使い方・働かせ方が、基礎的言語技術である。
基本的な
言語技術
 この基礎的言語技術にささえられて文章を読んだり書いたりするのであるが、何をどう読みとるか、何を
 どう書き表すかによって、そのときに働く技能が違ってくる。たとえば、知識の概略を読みとる技能、要
点を読みとる技能、要点と細部との関係を読みとる技能、あるいは、心情を想像しながら読む技能、人物の性格を想
像しながら読む技能というように、読みとる内容によって使う技能が違ってくる。また、作文の場合を考えてみる
と、情報を正確に書く技能、事実と意見を書き分ける技能、心情がよく感じられるように書く技能、場面のようすが
よくわかるように書く技能などいろいろな技能を使う。これらの技能は、基礎技能に支えられて、読む、書く活動を
処理する技能である。これを普通、基本的技能あるいは処理技能と呼んでいる。これらの基本的技能の働かせ方・使
い方が基本的言語技術である。
総合的な
言語技術
 普通、文章を読んだり書いたりする場合には、基礎的技能にささえられた基本的技能が単独にあるいは組
 み合わされて働く。しかし、読みとったことを組織する技能や、構造変換をする技能などは、いくつかの
技能が複合して一つの技能になっている。作文で、アウトラインを作る技能などもそれである。また、文章の制作過
程や読解の学習過程を理解していて、その過程に従って文章を読んだり書いたりする。いわゆる学習過程を使う技能
もそれである。このような複合された言語技能を総合的言語技能と呼ぶ。この総合的言語技能の使い方・働かせ方が
総合的言語技術である。
                                                      118
方法的な
学習技術
 前にあげた言語技術は、どれもみな直接価値の獲得、生産にあずかる技術である。しかし、サイドライン
 の技術、箇条書きの技術、表解の技術、カード操作の技術、KJ法の技術、学習調節の技術、メモの技
術、フローチャートの技術、想起法の技術などは、直接、理解・表現に参与することはない。これらの方法技術は、
言語技術の使用を確実にしたり、その結果を確認したり、それを促したりする働きをもっている。そこに言語技術と
方法技術とを適切に結合することの意味と必要とその価値がある(中沢政雄者『国語科読解の学習技術』明治図書参照)。
 これらの学習技術をシステム化すると、国語科学習技術の体系ができる。
 (3) 学習技術をどのようにシステム化するか
 文章を読む場合でも、文章を書く場合でも、その初めから終わりまでの間にずいぶんたくさんの言語技術が使われ
る。しかも、それらはばらばらには働かない。相互に最も適切な状態で結びついて、目標追求の一連の活動となる。
その時にこそ、それぞれの技術がじゅうぶんにその機能を果たすことができる。そのように目標に向かって、それぞ
れの技術がその機能を果たしながら、相互に最も適切な状態で構造化される。それが学習技術のシステムである。
言語技術の
パターン
 そのように言語技術をシステム化するには、まず、個々の言語技術のパターンを押さえる。たとえば、
 概略の技術は、@段落の要点を押さえる。A押さえた要点を組み立てて概略をつくる。要点の技術は、
@直観的に要点を押さえる。A細部を読みとる。B細部と要点との関係を考える。C要点を確認する。感動の技術
は、@言語刺激を受ける。A想像表象を描く。B気分・情調を感じる。想像読みの技術は、@ことばの刺激を受け
る。A表象を描く。B描いた表象を組み立てる。C場面表象が描ける。このようにいろいろな言語技術の働かせ方を
パターン化する。そして、たくさんの言語技術を開発する必要がある。
言語技術の
システム
 そこで、これらの言語技術が、どのようにシステム化されるか、前に書いた「けむりのゆくえ」を例と
 して考えてみる。まず、全文を直観的に読んで、その要旨を「煙は空気中に浮かぶ固体、または液体の
つぶで、ごく小さなものは、雲やきりの水つぶのしんとなる。また、田園にかかる雲やきりの水つぶのしんには海の
塩がなる」というように読みとる。そこでは、「要点を読みとる技術」が使われる。次には、この要旨をささえてい
                                                      119
る知識(事実)を読みとる。@けむりはごく小さなつぶで、固体のつぶと液体のつぶがある。A煙は消えるのでなく
広がって見えなくなる。B煙のつぶのごく小さなものが水つぶのしんになり、それが集まってきりや雲になる。C田
園のきりや雲の水つぶのしんには海の塩がなる、というように、小段落の要点を押さえ、それをこのようにまとめて
読みとる。この読みでは、「段落にまとめて読む技術」が使われる。さらに次には、読みとったそれらの知識を確認
するために、小段落ごとに、要点と細部との関係を明らかにする。すると、ここでは、「要点と細部との関係を読み
とる技術」が使われる。最後に、読みとって理解した煙についての知識をまとめて構造化する。ここでは「読みとっ
たことを組織する技術」が使われる。
 このように、「けむりの行くえ」を読んで内容を読みとって理解するために、要旨を読みとる技術、段落にまとめ
て読む技術、要点と細部との関係を読みとる技術、読みとったことを組織する(構造化する)技術の四つの言語技術
が一つの過程、流れとしてシステム化されている。このように適切に言語技術がシステム化されないと、生産性の高
い効率的な学習活動は行われない。文学の読みの場合でも、作文学習の場合でも同じである。
言語技術と
方法的技術
 次に大事なことは、言語技術とその働きを確実にしたり、それを保証したり促したりする方法的技術と
 の結びつきを適切にすることである。たとえば、読みとったことを組織する技術、構造変換の技術、要
点と細部との関係を読みとる技術などと、表解の技術とを結びつける。要旨を読みとる技術とKJ法の技術とを結び
つける。要点を読みとる技術とサイドラインの技術や箇条書きの技術、アウトライン作りの技術とカード操作の技
術、文章修正の技術と想起法の技術などと、両者を適切に組み合わせた学習活動を計画する。
 以上、国語科の学習技術とは何か、どのように開発するか、どのようにシステム化するかなどについて述べた。こ
れから多くの言語技術が開発されることを期待したい。なお、これは、児童が身につける学習技術であって、教師の
指導技術ではない。その点を明確にしておきたい。
 以下、いくつかの言語技術について、その使い方と学習の仕方について紹介したい。
                                                      120
     学習技術の開発とその指導



 (1) 読解学習技術とその指導
 ここでは、これまでに述べた、基本的言語技術、総合的言語技術、方法的言語技術のうち、いくつかの技術につい
て解説し、その学習の仕方について述べてみる。
知識の概略を
読みとる技術
 概略を読みとるというのは、文章の内容の一部をぽつりぽつりと断片的に読みとるのでなく、文章全
 体に書いてあることを、縮図的に、構造的に短くまとめて読みとることである。次に、概略を読みと
る技能を発達的に押さえて、その働かせ方・使い方をあげてみる。
 技術1……@全文を読んで話題を押さえる。A話題について説明していること(ことがら・行動・順序・方法・仕
    事など)を押さえる。B話題を中心に説明していることをまとめる。低学年でも中学年でも使える言語技
    術。
 技術2……@全文の話題(何か)を押さえる。A何がどんなか(状態)、B何がどうするか(行動)、Cどんな働き
    (役目)をするか、D話題を中心にしてまとめる。中学年で使う言語技術。
 技術3……@何が(だれが)、Aいつ、Bどこで、Cなぜ、Dどうして、Eどうなった、F話題を中心にして短く
    まとめる。情報の概略を読みとる場合の技術。直観的に読んで押さえる。中・高学年向きの言語技術。
 技術4……@全文を読んで段落ごとに要点を押さえる(小見出しをつける)。A押さえた要点(小見出し)をまと
    めて短い文章にする。高学年向きの言語技術。この場合、二段階に分けずに、読み終わった段階で、直観的
    に要点をまとめて概略を作ると、一段と高度な技術となる。これは、全容直観の技術である。
 これらの技術を、サイドラインの技術、箇条書きの技術、学習シートの技術などと組み合わせて次のように使う。
                                                      121
1 何について、どんなことが書いてあるか、何には、どんなものがあるか、全体を読んで、押さえ、再度読みなが
ら学習シートに書き込んでいき、書き込んだら、それをまとめて説明させる例(低学年)
  なにには    どんなものがある 
はたらくじどうしゃには  @人やものをはこぶじどうしゃ、Bこうじにつかうじどうしゃ、Bじけんがおきたときつか
うじどうしゃ、(説明の時に、や・と・などの並立助詞を使う) 
2 作り方、作業工程、行動、事件などの概略を読みとる場合、課題に従って全文を読みながら、順序、工程、行動
 などに従って、作業や仕事やことがらにサイドラインを引く。それを確かめるために再度読みながら、カードに箇
 条書きにする。それを並べて概略を説明する。あるいは学習シートに書いて説明する。(中学年)
  鉛筆のしんの作り方の概略を読みとる場合の例 
@ こくえんとねん土をきかいに入れてまぜ合わせる
A きかいに入れて太いしんを作る
B つぎのきかいに入れてふつうの太さのしんにする 
C えんぴつの長さに切る
D やいてかたくする
E 油に入れてすべりぐあいをよくする 
3 話題について、要旨に即して構造的に概略を読みとる場合には、@課題に即して全文を読み、話題と要旨を押さえ
 る。A要旨に即して、小段落、あるいは大段落の要点にサイドラインを引く(書き出す)。B押さえた要点を拾い
 出して(ならべて)、話題について概略がわかるか検討し、加除修正する。C要点をまとめて概略を話す(書く)。
 Dグループで評価し合う。E評価の結果によって、調節読みをして完成する。(高学年)
4 新聞のニュース記事、筋道のたっている論理的な文章・事件的発想で書いてある文章などの概略を読みとる場合
 には、直観的に読みとる技術を使う。ニュース記事は見出しとリードを読めば、そのまま概略になるが、本文をも
 含める場合、いわゆる5W1Hを基準にして必要な事実を押さえる。その他の場合は、@話題に即して、大事なこ
 とをチェ。クしながら読む。A読み終わった段階で、チェックした事項をまとめて概略を話す(書く)。B基準に
                                                      122
 照らして評価し合う。Cはみ出たものは削る。D足りない点は補充する。Eあいまいな点は修正する。F概略を完
 成する。この技術は、直観的に読みとった概略のプレパターンを、評価調節しながらパターン化する技術である。
想像しながら
読む技術
 想像しながら読む技術は、文学作品を読む場合の最も基本的な技術である。文学作品を読むというこ
 とは、原則的には、作者の描いた想像的創造の世界を、読み手自身の上に再現することによって、新
しい感動をうみ出すことである。その場合、作者が描いた主題展開の場面・情景、人物の行動・性格・心理・心情を
読み手は、自分が過去に得た知識や経験、あるいは読書や映画などから得た表象をもとにして想像する。その際、脳
裡に描き出される表象――イメージが、想像表象である。したがって、想像しながら読むということは、作品の中の
ことばによって、場面表象・情景表象・心理表象・心情表象・性格表象・行動表象などの想像表象を、つぎつぎに描
きながら読むことである。
 では、想像表象を描きながら読むというのはどうすることであろうか。「月のいいばんでした。ごんは、ぶらぶら
遊びに出かけました。チンチロリン、チンチロリンと,まつむしが鳴いています。」という表現がある。「月のいいば
んでした」と読むと、よく晴れた空に丸い月が黄色く照っている明るい月夜の表象が描かれる。次に「ごんは、ぶら
ぶら遊びに出かけました」と読むと、明るい月夜の野道を、これというあてもなくぶらぶら歩いているごんの表象が
描き出される。さらに「チンチロリン、チンチロリンと、まつむしが鳴いています」と読むと、明るい野道をごんが
ぶらぶら歩いていると、ちょっと間をおいては、チンチロリン―チンチロリンという聴覚表象が描き出される。こう
して、ことばの刺激を受けて、想像表象を描きながら、それを組み立てていくと、そこに前記のような場面全体の表
象―場面表象が描き出される。このように場面表象が描き出されると、そこに「何と明るい静かな晩だろう」と感じ
る。つまり、場面の気分や情調を感じる。これを感情状態になる、感動するという。
 この場面は、ことばの刺激を受けて、月夜の情景表象、ごんの行動表象、まつむしの聴覚表象が描き出され、それ
らが組み立てられて場面表象が描かれ、場面の気分、情調が感じられる。この過程が想像しながら読む技術である。
 ところで、想像しながら読んでも、どのような想像ができたか、第三者にはわからない。したがって指導のしよう
                                                      123
がない。そこで、想像したことを外に表すために、説明をする。書き表す、絵にかく、動作にうつす、パントマイム
をする、朗読をするなどの方法をとる。これらの方法は、ただ想像の結果を外に表すだけでなく、外に表そうとする
ことで、いっそう想像をうながすことにもなる。
 次に「心理や心情を想像しながら読む技術」について、具体的に考えてみよう。文学作品で、心理や心情を表現す
る場合、二つの方法がとられる。一つは、客観的に写実的に心理や心情が描かれている(心理描写・心情描写)場合
で、他の一つは、行動や会話、事実や事件を通して、心理や心情を表現している場合である。どちらも、その心理・
心情を読みとる手がかりは、ことば・表現である。この表現の違いによって想像表象の描き方が変わってくる。
@ 作品を読みながら想像した心理・心情を、その場で書き補いながら読み進める技術(方法技術との組み合わせ)
 「せなかがひんやりするのに気づきました。(いつのまに、こんなに涼しくなったのだろう)短い秋の日がもう暮
れようとしていたのです。(ああ、もう夕方になったのか。時のたつのも忘れていた。秋は日暮れが早いんだなあ)」
というように、読みながら想像した心理や心情を補い書きしながら読む。
A 人物に話しかけることによって、心理・心情を想像しながら読み進める技術(方法技術との組み合わせ)
 「夜でも、昼でも、あたりの村へ出てきていたずらばかりしました。……トンガラシをむしりとったり、いろんな
ことをしました。(ごん、やっぱりさびしいんだな。相手がいなくてつまらないんだな。それでいたずらばかりして
いるのだろう。その気持ちはわかるけれど、あんまりひどいいたずらをするなよ。村の人にきらわれるぞ。でも、ご
んはいたずらがおもしろいんだろう。ごん、気をつけろよ。)」というように話しかけることによって想像表象を描
き、自分もそんな感情状態になる。そして、ごんに対する読み手の心情もそそられてくる。
B 想像した心理・心情を人物に語らせながら読み進める技術(方法技術との組み合わせ)
 「……みんなが思いました。」「みんなは、たいへんよろこびました。」「……みんなはうっとりしました。」などで、
思ったこと、喜んだこと、うっとりしたことを想像してその心理や心情を、みんなに語らせることによって豊かに想
像させる。このように作中の人物に、感じたこと、思ったこと、考えたことなどを語らせる技術がある。
                                                      124
 上にあげたのは、想像しながら読む技術と、補い書、話しかける、語らせるというような方法技術とを組み合わ
せたものであるが、そこに、いろいろな想像読みの技術が開発されている。
情報を批判的
に読む技術
 情報を批判的に読むというのは、この情報は自分にとって価値のある情報かどうか、信頼できる情報
 かどうか、正確な情報かどうか、また、情報が正確に書かれているかどうかを読んで判断し、選択し
て受け入れる読みである。このような読みの技術が、批判読みの技術である。本来情報は、価値のある、信頼できる
正確な情報を、正確に伝えるというのが原則であるから、批判読みは、情報を受け入れる場合の最も基本的な技能で
ある。が、ここでは特にその中の情報が、正確に書かれているかどうかを判断して読む技術について述べる。
 まず、批判的に読む技術を具体的にあげてみると、@叙述不足(情報不足)を見抜く技術、A誇張している叙述、
あいまいな叙述を見抜く技術、B叙述の誤りを見抜く技術、C主観的叙述を見抜く技術、D事実と意見とを読み分け
る技術、E判断の誤りを見抜く技術などがある。以下それらの技術の学習の例をあげてみる。
1 情報不足を見抜く技術――この技術は、書いてあるとおりに事実を想定してみて見抜く。(想定法)
 「こおりの家は、なが四角に切ったこおりをつみ上げ、雪ですきまをふさいで作ります。外のつめたい風がはいら
ないので、中はあんがいあたたかいです。」という情報を読む場合、@書いてあるとおりに読みとって、こおりの家
を頭の中に描かせる。(作ってみる)Aするとこおりの家ができない。B家の形が書いてないことに気づく。C家の
形について情報不足を見抜く。そこで「おわんをふせたようなかたちに」を補ってやると、こおりの家ができる。
2 あいまいな情報叙述を見抜く技術――情報事実――書かれている事実を想定してみて見抜く。(想定法)
 「わかさぎのあなづり」という情報に「湖に氷がはって、人がその上を歩いてもわれないようになると、いよいよ
わかさぎのあなづりがはじまります。」という叙述がある。「『人が歩いてもわれないようになると』と書いてあるが、
氷がどのくらいの厚さになったときだと思うか」と発問する。児童は、湖水の氷を想定して、三十センチ、五十セン
チなどという。そこで、書き方があいまいであることに気づいて、正確な情報を得ようとする。こうして、「五セン
チ以上」という情報を得て、あいまいな情報を正しく組み立てる。
                                                      125
3 情報事実に対する判断の誤りを見抜く技術――事実とその判断とを対応させてその誤りを見抜く。(対比法)
 「とる漁業から育てる漁業へ」という情報の中に「まず、今ある魚を根だやしにしないために、次のようなことを
とり決めています。(次に三つのとり決めが書いてある。それを受けて)これらのとり決めは、魚をとるのを少なく
しようとする方法ですが……」という部分がある。
 この部分の学習で、@この三つのとり決めは何のためのものかと発問する。A魚を根だやしにしないためと、魚を
とるのを少なくするためという二つの答が出る。B三つのとり決めの一つ一つについて何のためかを考える。Cする
と、「今ある魚を根だやしにしないため」であることがわかる。Dそこで「魚をとるのを少なくする方法」という情
報の送り手の判断は誤りであることに気づく。そこで事実にもとづく正しい判断、「魚を根だやしにしない方法」と
いうように直す。実は、そのように直さないと、筋道がとおらず、文章が展開しないように書かれている。
4 情報事実と情報意見とを読み分ける技術――事実についての説明と、事実についての主観的判断とを見分ける。
 「船のいろいろ」という写真(写真情報)つきの文献情報がある。この情報の中の客船についての情報を読んで、
 大きなきゃくせんは、海をこえて外国からきた。

 きゃくせんは、千人ものきゃくをのせることができる

 きゃくせんは、うごくホテルといわれている。

 きゃくせんの中には、図書室やゆうぎ室やプールまである。

 長いりょこうでもたのしくすごすことができる。 
@わかったこと(情報事項)を一つずつカードに書い
て並べる。Aきゃくせんのことについて書き手の、思
ったことと考えたことが書いてあるもの()を拾
い出す。Bきゃくせんについて事実が書いてあるもの
を拾い出す。( )C二組に分けた後、と、
をそれぞれ結び合わせたものを説明する。
これは低学年の例であるが、これをくり返すことによ
って、事実と意見とを読み分ける技術が身につく。 
 これらの批判読みの技術は、情報が正確に伝えられているかどうかを判断するもので、いわゆる言語魔術を見抜く
技術と言われている。なお、この技術の学習は、知識を与える文章の読みにおいても学習する機会が多い。
                                                      126
 なお、信頼できる情報かどうかは、@情報の送り手がはっきりしている。A情報の出所が確実である。B惜報の得
方(いつ、だれが、どこで、どのようにして調査した、研究した、実験した、収集したなど)がはっきりしている。
C叙述が具体的客観的であるなどによって判断する。
構造変換の
読みの技術
 書き手が、筋道をたてて組み立てた知識や情報の仕組みを、読み手が、自分の考えで、その仕組みを組
 み替えて、もっといい構造に組み立て直すことを構造変換と呼んでいる。そのように構造を替えて、よ
りよい構造にする技術が、構造変換の技術である。この構造変換をするには、次の手続きが必要である。
1 直観読みや分析読みによって、書かれている知識や情報が、どのように組み立てられているか、よく理解する。
 それは、書き手の論理によって組み立てられたもので、書き手の認知構造と呼んでいる。これが原構造である。
2 原構造のじゅうぶんな理解の上に立って、読み手がその構造をどのように組み立て直すか、組み立ての芯になる
 論理を見つける。つまり、組み立てについての発想転換をする。これが構造変換でいちばん大事な手続きである。
3 転換された考え――論理にしたがって、読みとった知識や情報の仕組みを組み替える。こうして新しい構造が得
 られる。これは原構造よりもねうちのある構造になることが原則である。これが読み手の認知構造になる。
 こうしてみると、構造変換の技術によって、読み手が新しい認知構造を形成するのであるから、これは、読解学習
の最後の読み、つまり知識や情報を体制化する読みになる。児童はこのような発想転換の読み、構造変換の読みによ
って、創造的思考、体制的思考の力を伸ばすことができる。次に具体的にその学習法を考えてみる。
 「日本の文字」という知識教材がある。児童は、この文章を学習して、次のような知識の組み立てを理解した。
 @ 人間は、ことばと文章によって、文化を築いた。
 A しかし、ことばがあっても、文字を持たないと高い文化はもてない。
 B 日本人は、四種類もの文字を使っている。
 C 日本人は、中国から漢字が伝来して、初めて文字を使うようになった。
 D 漢字は、漢文の読み書きに使われたが、日本語を書き表すのにも使われるようになった。
                                                      127
 E 漢字をくずして書く書き方からひらがなを作った。
 F 漢字の一部を用いてかたかなを作った。
 G ローマ字はエジプトで生まれた文字がもとになって作られ、日本では漢字・かなに比べてずっと後に使われ
  た。
 H 漢字のように発音と意味をもつ文字が表意文字・ひらがな・かたかなのように発音だけを表す文字が表音文字、
  そこで、最後に、学習した日本の文字についての知識をまとめる、体制化する学習をする。
1 「これまでに学習したことを、めいめいが覚えやすく、わかりやすくまとめるには、どんな考えで、どのように
 組み立てたらよいか、考えながら全文を読んでみよう。」ということで全文を読む。
2 各自、こんな考え方で組み立てようという考え方を見つける。この組み立ての中心になる考え方は、これまでの
 構造的な学習をしている間に、しだいに醸成されるが、全文を読んでいる間に直観的に感じとる。(発想転換をする)
3 「日本の文字を表音文字と表意文字に分けてまとめる」「日本の文字の四種類を成り立ちに分けて組み立てる」
  「どうして四種類もの文字を使うようになったか、その経過を中心にしてまとめる」など、いろいろな組み立ての
 論理を発見する。これが発想の転換で読み手自身が主体的に構造変換をする中核となる論理である。
4 その考え方で、どんな形に組み立てるかを自由に考える。表解するものが多くいろいろな形式が考え出される。
5 組み立ての考え方とその形式によって簡明に組み立てる。その場合、@Aの内容は捨てるなど、内容を取捨す
 る。
      ┌表意文字――漢字―中国から伝来、日本語を書き表すのに使われるようになった―春、波、流など
日本の文字―┤     ┌かたかな――漢字のへんやつくりなどの一部を用いて作った―伊―イ、宇―ウなど
      └表音文字―┼ひらがな――漢字をくずして書く書き方から作った―安―あ、宇―うなど
            └ローマ字―エジプトでうまれた文字がもとになった。日本では漢字、かなのあと
これは一例であるが、読み手独自の発想、論理によって、もとの構造が変換されている。しかも簡明で、筋道がた
                                                      128
っていて覚えやすい構造になっている。これを見ると、日本の文字について書いてあることをよく理解しているこ
と、発想を転換することで、読み手の創意、創造的思考が育てられていること、また、新しい構造を作ることによっ
て、構造的思考、体制的思考が育てられていることなどがよくわかる。
 この構造変換の技術は、能力の発達に応じて、文の構造変換(低学年)、段落の構造変換(中学年)、文章の構造変
換(高学年)のように段階的に学習させる。このような読みが、創造的・生産的な読みである。
 (2) 作文学習技術とその指導
アウトライン
作りの技術
 文章を書く題材が決まると、書く内容を思い出したり、集めたりして書き出す。その内容を組み立て
 て文章の骨組みを作ることが、アウトライン作りである。一般に構想を立てると言われているが、そ
れは、文芸的な作文が盛んだったころ、主題・構想・叙述という文芸研究の方法論を、作文に取り入れたものであ
る。現在のように、記録を書く、説明を書く、報告を書く、心情を書く、感動を書くというように、作文の領域や書
く文章の形態が、広くなっていると、構想を立てるという考え方だけでは、どれにも応じられない。筋道がとおっ
て、よくまとまった文章、機能のよく発揮できる文章を書くには、書く内容を、書く目的や文章の働きに応じて文章
を組み立てる、構成するという考え方に立ったほうがいい。どんな文章にも適用できるし、わかりやすい。そのう
え、学習する技能がはっきりしていて、パターン化しやすい。
 ところで、アウトライン作りの技術は、文章を書く目的(発想)や文章の働き(機能)に応じられるように適切に
文章を組み立てる技術である。したがって、中心のはっきりしている文章とか、筋道のとおっている文章とか、説得
力のある文章とか、感動のよく伝わる文章とか、読み手の心理に応じた読みやすい文章とかいうような、さまざまな
文章の根幹を作る、創造する技術である。その技術をいくつか、次にあげてみる。
@ 論理の展開、筋道を考えて文章を組み立てる技術(論理的発想)――意見を書く、説明を書く、考えを書くなど
 筋道のとおった文章を組み立てる技術
A 事件の展開をおさえて文章を組み立てる技術(事件的発想)――できごとを書く、事件を書くなど、発端・クラ
                                                      129
 イマックス・結末などのはっきりした文章を組み立てる技術
B 経験・行動の順序、中心をおさえて文章を組み立てる技術(経験的発想)――経験したこと、経験にまつわる生
 活感情を書く、遠足のこと、運動会のことなどを書く場合に文章を組み立てる技術
C 伝達・報告・紹介が正確に効果的に行われるように文章を組み立てる技術(紹介的・伝達的発想)――情報を書
 く、紹介を書く、報告を書くなどの文章を組み立てる技術
D 感動や心情がよく伝わるように文章を組み立てる技術(感動的発想)――感動を書く、心情を書く場合などに文
 章を組み立てる技術
 アウライン作りの技術をこのようにとらえると、それは、単なる形式的技術ではなく、創造的思考、構造的思考
の働くことがわかる。アウトライン作りは思考訓練であると言われるのもそのためである。
 次にアウトライン作りの学習の例をあげてみる。
1 文章を書く目的や文章の形態を考えて、中心のはっきりした文章のアウトラインとか、経験の順序によって書く
 文章のアウトラインとか、論理的に展開する文章のアウトラインとかを決める。
2 中心のはっきりした文章のアウトラインを作る場合は、次のような大見出しのカードを作って並べる。
  @ 書き出し文  A あらまし  B 中心  C まとめ  D 終わりの文
3 前のカードの下に、その中に入れる小見出しカードを作って並べる。
4 小見出しごとに、仲間のカードをさらにその下に並べる。
5 カードを並べて文章の組み立てが終わったら、前に書き出しの文、最後に終わりの文を書き添える。
6 全体を見通して、文章の構成・展開を想定する。その際に段落のまとまり、段落の係り受け、内容の多少、適否
 などを検討して、アウトラインの評価をする。
7 評価にもとづいて修正するものは修正する。なお、この段落で、段落の係り受けや順序などを示す語を段落の初
                                                      130
 めに書くとよい。また、心情表現の文章なら、表現する事項の下に、それにまつわる・心理・心情などを思い出して
 メモしておくこともよい。
 このような過程をたどることによって、アウトライン作りの技術が身についていくのである。
情調表現
の技術
 作文で、場面や情景を書いて、そこから、なごやかだ、静かだ、にぎやかだ、緊張している、喜んでい
 る、楽しそうだというような気分や情調が感じられるように書く技術が、情調表現の技術である。この技
術には、@場面の気分、情調を感じさせる事実を的確におさえて写生的に表現する技術、A気分・情調を感じさせる
ことば、会話などを押さえてそのままに表現する技術、B気分・情調に応じて、ですます体、である体、だ体などを
選んで書く技術、C気分・情調に応じて、名詞止めの文、ぽつりぽつり短く切った文、ふつうの長さの文などを織り
まぜて書く技術の四つの基本的技術がある。
 ところで、これらの技術の学習が行われるのは、経験・できごと・事件・思い出・自然事象などに対する感覚・心
情・感動を書いたり、あるいは、それらを客観的に、描写したりするときである。また、そのような文章を書くに当
たって、その書き表し方を理解する場合である。次にその例をあげてみる。
 作文単元「学校生活の思い出(六年)」を設定する。感動的発想にもとづくアウトライン作りをしてから、それぞ
れの場面のようす、気分情調が感じられるような表現の仕方を学習することを決める。
1 書き表し方を考える。
 @ 「机上の花びんがこわれ、花が飛び散っている場面の絵」をOHPで投映する。どんな場面か話し合う。
 A 教材「学校から帰ってみたら、わたしの花びんがこわれていました。わたしは、『だれがこわしたの。』といい
  ました。」をOHPで投映。話し合う。場面描写の不足、緊張・驚き・怒りなどの情調が感じられない。
 B 教材「『あっ、花びんが……。』机の上には、わたしがいちばん好きだっただいじな花びんがこなごなにくだけ
  ている。野菊の花は、コップに投げこまれている。『だれっ。花びんをこわしたの。』わたしは大きな声でさけん
  だ。」をOHPで投映。話し合う。感動的発想による表現のことばから、驚き、怒りの情調が感じられること、場
                                                      131
  面の情景が詐しく描写されていること。文が短くて緊張感が出ていることなど。
 C 教材「毋が一心に原稿を書いている場面の絵と文章(略)」をOHPで投映。話し合う。毋が心配している、困
  っている、緊張しているなどの感じられることと、その表現とを結びつけて考える(省略)。 
2 書き表し方をまとめて理解する。
 1で学習したことを(板書)を整理して、次のようにまとめた上で確認する。
@ 場面のようすが目にうかぶように書く
 ・ようすをくわしく書く
 ・ようすを写生するように書く 

A 気持ちがよく感じられるように書く
 ・気持ちを動作で書く
 ・気持ちと動作と結びつけて書く
 ・そのとき話したことばで書く 
B 文体を考えて書く
 ・短い文で書く、短く切って書く
 ・ていねいなことばで、ぞんざいなことばで。
  ふつうのことばでなど選んで書く
 ・ですます体で書く―┐
 ・である体で書く ―┤ などを場面や気持ちに
 ・だ体で書く   ―┤ よって決める
 ・名詞どめで書く ―┘ 








3 思い出し方(想起法)もまとめておく。
  前のように書き表すために、その場面・情景の思い出し方を、前の学習と関連して次のようにまとめる。
 @その時の感動・情調を思い出す、Aそこに何があったか、だれがいたか、Bだれが何をしたか何を言ったか。C
 何がどんな状態・状況であったか、D自分はどうしたか、どんな気持ちだったかなど経験の原点を思い出す。E思
 い出す資料・事実などを見て思い出す。この想起法は、表現する場合のほか、表現修正の場合にも役だつ。
4 書き表し方に従って書く練習をする。
 @ 「教室で男子がすもうをとっている所へ先生が現れた場面の絵」をOHPで投映する。
 A その場面を見て、その驚き、あわてる、こまるなどの情調を各自自由に短い文章に書く。発表し評価しあう。
                                                      132
 こうして、気分情調を書き表す技術をよく理解した上で、その技術を使って文章を書いてみる。これで一時間の学
習が終わる。いよいよ次の時間には、アウトラインに従って、この表現技術を使って自由に書くことになる。
説明文を 説明文を書くというのは、普通、研究したこと、観察したこと、実験したこと、または、何かの作り方、
書く技術 遊び方、あるいは自然事象、家族のこと、学校のこと、自分の性格、勉強したことなど、さまざまな知識
や事実や行動や状態や状況などを、読み手によくわかるように、納得させるように書いて説明することである。
 したがって、その説明は、主観をまじえないこと、客観的であること、正確であること、筋道が立っていること、
事実の説明と書き手の感想や意見とが明確に区別されていることがだいじである。また、読み手が納得するように、
例をあげたり、図示したり、表解したり、資料を使ったりして、説明の仕方をくふうすることも必要である。
 それらのことを考えて、説明文を書くときに必要な技術をあげてみると、次のようになる。
 @客観的に書く技術、A正確に書く技術、B筋道を立てて書く技術、C主観と客観を書き分ける技術、D小見出し
をつけて書く技術、E絵・図・表などを使って書く技術、F文・段落の係り受けの関係の明確な文章を書く技術。
 これらの技術は、学年の発達に応じて配当する。また、必要に応じて下位技術を設定することも考えられる。
 次に、三年生が「生物について観察したことを説明する文章」を書くことを例として、説明を書く技術の学習の仕
方を考えてみることにする。
 三年生が、説明文を書く技術として学習することは、@ことばや文、段落の係り受けの関係を正しく書く技術(文
法的正確さ)。A事実や現象などを具体的に書く技術(正確な叙述)。B見たとおり、観察したとおりに書く技術(状
態・状況の正確な叙述)。C事実と思ったこと・感じたこととを書き分ける技術(事実と意見の書き分け)。D小見出
しをつけて書く技術。E絵・図・表などを使って書く技術などである。以下学習指導の手順を書いてみる。
1 金魚・ふな・かまきり・かめ・かになどの生物について、その静態・動態・習性などについて自由に観察する。
2 観察しながらメモをとる。図を書く。動かしてみる。さわってみる。はかるなどする。
3 観察したメモを整理して、見出しカード、事項カード・図・表などを作る。
                                                      133
4 観察事項を組み立てて、アウトラインを作る。中心のはっきりしたアウトラインを作る。
5 アウトラインに従って観察したことを説明する。
 @ 書く技術を理解する
・形・色・手ざわりなどをそのまま書くこと ・動くようすを動きのままに書くこと ・くわしく細かに書くこと
・観察したことと思ったことや感じたこととを区別して書くこと ・図や表を入れて書くこと ・説明の文体で書く
ことなどについて、作文教材を使うなどして学習し理解する。
 A 学習した技術を使って説明を書く
6 書いた文章を、基準に従って評価し、その結果にもとづいて修正する。
以上の手続きを踏んで書いた説明文と学習した技術との関係を考察してみる。
 @ 説明図を使ったり、動態・状況を正確に説明したりしている例
 「虫を食べるとき、最初は虫をよせると、かまをのばし、虫をにぎるように強くつかみ、ゆっくりと口をよせてか
 ら、ちをすうようにかおを左右にふって食べます。口は、虫をよせると下の図のように、1ばんのしょっかくのよ
 うなものを動かし、2の部分で食べます。口を動かすときは、下の図のように1の部分が上下に動きます。」
  「そのつぎは横に歩かせました。しばらくそれをくりかえしていたら、歩くときの足のじゅんばんがきまってい
 ることに気がつきました。そのじゅんばんは、下の図のようになっています。そして、歩くときは、からだを立た
 せて歩くこと、はさみをとじて歩くこと、足をまげて歩くこと足先の細いつめのようなもので歩いていることがわ
 かりました。」
 A 静態や動態を感覚や数量を表すことばで客観的に書いた例
 「おこるときは、ひげをうしろにして、はさみを三センチぐらい上げ、大きく開く。しっぽをまるめる。口からあ
 わを出して、目をぎょろぎょろ動かす。」「起き上がるとき、下図のように、前二本の足を上に向けて、ぐにゃぐに
 ゃと動かして、あとの六本の足は下にやったり上にやったり……」「大きなはさみを下にたたきつけて、はんどう
                                                      134
 で起き上がろうとするのです。起き上がるときは、かならず尾をまるめ左にかたむけます。」
 一部しか紹介できないが、どの児童もそれなりに学習した技術を働かせて、ゆきとどいた説明をしている。
情報文を
書く技術
 児童は、日常の経験や読書やテレビや学習などから得たたくさんの情報を記憶し蓄積している。これがい
 わゆる内情報である。この情報を必要に応じて適切に組み立てて書いて伝えるのが情報の作文である。し
かし、そのような消極的な情報だけでなく、積極的に外情報を求めてきて、それを伝えてやるという場合もある。い
ずれにしても、情報は、受け手に対してわからせる、気持ちを起こさせる、考えを決めさせる、行動を起こさせると
いうような働きをもっている。そのような大事な働きをもつ情報を書くのであるから、真実の情報・信頼できる情
報・正確な情報を、正確に伝えるように書く必要がある。情報を、事実よりもおおげさに書いたり、逆にうちわに書
いたり、あいまいに書いたり、誤って書いたりしたのでは、たとえ真実な情報・正確な情報でも正しく伝わらない。
 そこで、見たとおりに書く、したとおりに書く、あったとおりに書く、想像をまじえないで書く、自分の考えを入
れないで書くということが大事になってくる。これは情報の送り手、書き手が体得しなければならない倫理である。
 そのように情報を叙述する技術を分析してみると、@事実を客観的に書く技術、A事実を具体的に書く技術、B事
実を正確に書く技術、C事実と意見とを書き分ける技術などの基本的な技術をあげることができる。これらの技術は
児童の能力に応じて、さらに下位の、あるいは具体的な技術に分析することができる。
 ところで、そのような情報叙述の技術は、低学年では主として、経験情報、中学年では生活情報・自然情報・学校
情報、高学年では、文化情報・社会情報・科学情報などによって学習される。
 次に低学年の情報文を書く学習として、経験情報をアウトラインに従って、正確に、詳しく書く技術の学習をとり
上げてみた。単元は「わたしが作ったおもちゃ」を設定した。
 この単元は、各自がくふうして作ったおもちゃの製作過程・製作法を、受け手によくわかるように伝え、受け手に
も。そのおもちゃを作ってもらおう、作ろうという意欲をもたせようというのが、学習のねらいである。その中で、
情報を書く技術を二年生なりに学習させようというのである。そこで、ここで児童が学習する情報叙述の技術は、
                                                      135
 @おもちゃを作った順序に従って書く技術、A作り方がよくわかるように詳しく書く技術、B長さ、大きさなどは
 数字を使って具体的に書く技術、Cことばで書ききれないときには絵や図を入れて書く技術、Cメモや実物を見な
 がら書く技術などである。このほかに、D作った過程ごとに行をかえて書く技術の学習も計画した。
 次にその学習の手順・方法を書いてみる。
1 「おもちゃの作り方」の情報文を書くという学習目標をもつ。
2 読んだ人が、おもちゃを作ってみようという心を起こさせるように書くには、どんな書き方をしたらいいか、考
 え合う。
 O書き表し方についてすでに学習した経験を思い出す。
 Oここでは、前に書いた情報作文を思い出し、目標と照らし合わせて書き表し方を各自決める。
 O作った順序で、「まずはじめに、それから、つぎに」ということばを使って書く。
 O文ではわかりにくいところは絵を使って説明する。
 O注意やくふうしたことを書く、O大きさはセンチメートルを使って書く。
3 各自書き方をくふうしながら叙述する。
4 書いた情報を評価し修正する。
 @ 教材文により、教材の書き表し方を理解する。――これが評価の観点・基準となる。
  〇正確な情報文の書き方を理解させる。――絵と文とが照合できるような叙述の仕方、製作のまとまりごとに段
   落が構成されていること、大きさははっきりした数字で書いてあること、くふうしたことが書き加えられてい
   ること。
 B 児童作品を資料として相互評価する。
  児童作品をOHPで提示、教材文で理解した書き方を評価の観点として相互評価し、自分の作品を読み直す観点
  を押さえさせる。評価の場合、筆者が知らせたいことがよくわかるかどうか、わからなければ、どの書き方を使
                                                      136
  えばよいかを考えさせる。
 B 観点を押さえて、自己評価し、修正する。
 (3) 方法的学習技術とその指導
カード操作
の 技 術
 アウトラインを作るとき、書くことがらをカードに書き、カードによって、アウトラインを組み立て
 る。文章の要旨を読みとるとき、段落の要点をカードに書き、同類のカードをまとめては要約していく
と、要旨が求められる。文章の内容を読みとって、事項ごとにカードに書く。それを使って構造変換をする。
 このように、いろいろな関係判断の思考、要素を有機的に組織する構造的思考、体制的思考、共通点を抽出してま
とめる抽象化の思考など、本来概念操作によって行う思考をカードに託して行う操作技術が、カード操作の技術であ
る。このようにカード操作という行動を通して思考するところにこの技術のよいところがある。
 したがってカード操作は、@どの学年の児童でもできる。A作業・行動による学習になる。Bノートに書くのと違
って、関係づけることも、関係を変えることも容易にできる。C組織するのが容易である。D分類整理が容易であ
る。E試行錯誤が容易にできる。Fシートにはって関係・組織を固定することも容易にできるなどの利点がある。
 そこで、カード(記入されている事項)は、二つの機能を持つことになる。一つは、見出しとか、題目とか、共通
点とかいうように、部分、要素を規定する、総括する、代表する働きをもっている。他の一つは、要点とか、細部と
か、情報事項とか、基本的事項とかいうように、全体の分節・部分・要素などを示す働きをもっている。この二つの
機能をもつカードを作ったり、操作したりして、関係判断の思考・総括の思考・分析の思考・構造化の思考・体制化
の思考などの思考活動を行うことになるのである。このようにカード操作の技術は、思考技術なのである。
 ところで、カード操作の技術が使える学習には次のものがある。
 @要点と細部との関係を判断する場合、A段落の構造や段落相互の関係を押さえる場合、B文章の構造過程を押さ
 える場合、C読みとった内容を組織する場合、D構造変換をする場合、E文章の概略を読みとる場合、F題材選択
 の場合、G書く内容を収集する場合、H文章のアウトラインを作る場合。
                                                      137
1 文章の構成を読みとる学習にカード操作の技術を使う例
 @ 小段落(形式段落)ごとの要点を、カードに書く。
 A カードを並ベ、意味の上からまとまるカードをまとめて、大段落(意味段落)を作る。
 B 大段落に見出しのカードをつける。見出しのカードは、赤鉛筆などで書き、色を変えるとよい。
 C 大段落の関係を考え、文章の要旨、情報意図、要点、情報事項の関係を押さえる。
 D 要旨と要点、情報意図と情報事項の関係を押さえ、カードを移動して文章構成を理解する。
2 表現内容の収集・整理にカード操作の技術を使う例
 @ 題材・主題文にもとづいて表現事項をカードに書く、思い出すままにカードに書く(特に注意することは、い
  つでも題材の内容や主題・意図に即して表現事項を選んで書く)。
 A 同じ仲間のカードを集めて一まとめにする。
 B 同じ仲間、同じまとまりのカードごとに見出しカードを作る。
 C カードを整理した上で、題材・主題にそわないカード、題材の内容として適切でないカードは捨てる。
 D 表現不足の場合は、カードを補充する。
3 アウトライン作りの技術にカード操作の技術を使う例
 @ どんなアウトラインを作るか決める(中心のはっきりした文章のアウトライン、ニュース記事のパターンによ
  るアウトライン、経験の順序によって書く文章のアウトライン、論理的に展開する文章のアウトライン等)。
 A 大見出しカードを作り、書き出し文・あらまし・中心・まとめ・終わりの文のように並べる。
 B その下に、その中に入れる小見出しカードを並べる。
 C 小見出しごとに、仲間のカードをさらにその下に並べる。
 D カードを並べて文章を組み立てる。
 E 前に書き出し文、終わりにまとめの文を書き加えてアウトラインを作る。
                                                      138
表解の
技術
 表解の技術は、文章や作品の内容を読みとって、わかりやすく簡潔にまとめて、構造的に理解する技術であ
 る。したがって、文章や作品の@要旨・意図・主題・中心思想・中心的事項などと、A要点・情報事項・細
部・場面・事件などとの相互の関係を明確に押さえることがだいじである。そこで、押さえたそれらの関係を、どの
ような記号で、どのように示すかが、表解の技術になる。次にそれらの関係の表し方・表解の仕方を示す。
1 線による内容の相互関係の表し方(三年生のころより、やさしいものから順次指導していく。)
  ァ全体と部分  ィ具体と抽象  ゥ全体と分析 ェ並立の関係 ォ変化の方向 ヵ同一の関係 キ間接的な関係

2 位置や記号による内容の相互関係の表し方
 ァ主従関係(上位概念と下位概念)   ィ中心と周辺の関係        ゥ前後・上下の関係

3 色分けによる内容の相互関係の表し方
 @ 内容の質の違いによる色分け――事実と感想・意見、見たことと聞いたこと、原因と結果などの関係
 A 内容の性格の違いによる色分け――要旨と要点と細部、事件の展開と心情の変化などの関係
 B 内容の区別、境界などを明確にしたり、ある事項を際立てるための色分け――注意を喚起するなど
                                                      139
 このような表解の技術は、OHPが児童の学習機器として使われるようになった今日、特に大事な技術である。
4 段落の要点と細部との関係を表解する技術の学習例
 「び生物の中には、たいへん
有害なものがあります。食物に
有害なび生物がついてふえると
食物はくさります。それを食べ
ると、食中毒を起こします。も
っとこわい病気もあります。ジ
フテリヤ、しょうこう熱、日本
のうえん、腸チフスなどの伝染
病です。伝染病はすべてび生物
によって発生し広がっていくの
です。」(一段落)
 左の例は段落の内容を詳細に
読みとりながら、文章の論理
 (書き手の思考過程・認知構
造)をたどって学習する過程
で、しだいに組み立てていく表 


 び生物の中には有害なものがある
  ├→有害なび生物が食物につく
  | └→くさる→食べる―┐
  | ┌―――――――――┘
  | └→食中毒を起こす
  └―→もっとこわい病気もある
     |
     └→ジフテリヤ・猩紅熱・日本
       脳炎・腸チフス→伝染病┐
   ┌――――――――――――――┘
   |
伝染病は、び生物によって
発生し広がる 
   |
   └―→

  
(左の表解は、要点と細部との関係を、書き
手の思考過程に従って「全休と分析」との関
係としてとらえて、読みながら表解したもの。
下の表解は、その理解の上に立って、読み手
が発想転換して「全休と部分」の関係として
とらえ、構造変換したもの。読み手の思考過
程に従って形成した認知構造がわかる。)
 
び生物
の中に
は有毒
なもの
がある
 
 ┌→食中毒を起こさせるび生物
―┤  └→食物をくさらせる
 └→伝染病を発生させるび生物
   |
   └→ジフテリヤ・しょうこう
     熱・日本脳炎・腸チフス
   中の
 は色分け
 
である。右の例は、前のように学習しながら組み立てた後に――段落の内容の諸関係をよく理解した上でさらに、一
段と高い立場(文章全体の上から)に立って、簡明に、主体的に、再組織する場合の表である。いわゆる文章の構造
変換をする場合の例であって、これによって構造に対する発想の転換が行われ、創造的思考が働くと考えられてい
                                                      140
る。

KJ法の
技 術
 KJ法というのは、川喜田二郎氏が考案した発想の技術である。問題解決学とも言っている。これは技術
 であるから、訓練を受けなければできないと著者は言っている。簡単にその手順・方法について述べると
次のようになる。
 @ まず、グループを作る。これは四〜六人ぐらいが適当である。
 A 問題について、各自考えたことをカードに書く。一枚のカードに一つの事項を書く。何枚書いてもよい。
 B そのカードを集め、グループの成員で話し合って、同じものと違うものとを分類する。
 C 分類したカードのそれぞれの山に、表札をつける。表札はそれぞれのカードに書かれた内容・要点を含んだこ
  とがらを短い文で表したものである。
 D さらにそれぞれの表札の関係を考え、大きな表札を作る。
 E このようにして、分類し、関係づけたものから図解をする。
 筋道だけでわかりにくいが、このような手順・方法によって、ひとりひとりの思考が尊重され、それをグループ全
体の思考にまで高めていくことができる。
 ところで、このKJ法の精神と技術とを国語科学習に取り入れることによって、@児童ひとりひとりの発想が尊重
される。Aひとりひとりの学習の結果が組織されるから、児童は全員学習に参加する喜びも感じる。Bいわゆる衆知
を集めて英知に高めることができる。それを集団のものとすることができる。C学習が行動化されるなど、国語学習
を活発にし、生産的・創造的にする契機がたくさんある。
 このKJ法が取り入れられる国語学習には、要旨・意図・主題などを読みとるとき、文章を要約するとき、児童全
員の読書の感想・感動などをまとめるとき、情報を収集し組織するときなどいろいろな場合がある。前に述べたよう
に、たびたびくり返して、児童の学習技術として身につけることがたいせつである。
 なお、KJ法は、グループ学習の場合だけでなく、自己学習、個人学習の技術として適用することもできるもので
                                                      141
ある。
 次に、情報教材「深海をさぐる」(東書五年)の情報意図を直観的に読みとる学習をした際に、KJ法を適用した
例をあげてみる。
1 学習の目あてを持つ。深海をさぐるを読んで、書き手の伝えたいことを理解する。
2 全文を読んで、書き手の伝えたいことだと思ったことを画用紙・更紙を適当な大きさに切ったカードに書く。伝
 えたい中心が二つあると考えたら、二枚に書いてもよい。
3 書いたカードを班長が集める。班長は、カードをよく切って、班の人たちにまた配る。配られたカードを読み、
 友だちが考えた書き手の伝えたいことを知る。
4 班長から順に、配られたカードを読み上げながらカードを出し、次の人が出したカードと同じようなことが書い
 てあるか、違うことが書いてあるかで分類する。
  たとえば、「@マリンスノーは、まどの右から左へ流れているので、深海の水は流れている。Aバチスカーフは、
 深海の水が流れていることを調査した。B日本海溝の底の水が流れている。C深海の水が流れている。D深海にい
 る生物のようす。Eバチスカーフがせん水するにつれて、いろいろな生物がいた。」の六枚のカードを、@〜Cを
 同じグループにDとEを同じグループに分類する。
5 同じ仲間のカードを読み、それらのカードに共通する点から、表札のカードを書く。表札のカードには、赤のサ
 インペンなどを使い、他のカードと区別がつきやすいようにする。
  たとえば、前の@〜Cには、「日本海溝の底の水は流れている。」D〜Eには、「深海にいる生物」というように
 表札のカードを書く。
6 模造紙に、表札を上にし、それぞれのカードを下に並べてはる。表札の左右から線を出し、その表札に関係する
 カードを囲む。
7 二つの表札から、さらに大きな表札を作る。例えば「深海の底の水の流れと生物」これが情報意図になる。
                                                      142
第七章
 
学習の評価調節(学習制御)は
どのようにシステム化するか
その考え方と実践

 この章には、ひとりひとりを生かし伸ばすために、主体的
な学習法を身につけるために、いちばんだいじな学習過程で
の学習の評価と学習の調節について、その考え方や方法が書
いてあります。
 これまで、学習の過程での評価や調節は、きわめてあいま
いな、非科学的な考え方や方法で行われてきました。それを
ここでは科学的な、工学的な評価調節という過程を設定し、
それが学習指導過程の中に明確に位置づけられています。言
ってみれば、学習の制御過程が設定されているのです。
 何ごとによらず、目標―計画―行動―評価というのは、行
動のモデル過程です。学習活動も学習目標を追求する活動で
すから、学習活動を行えば、その結果、目標にどれだけ近づ
けたか、目標が獲得できたかを評価するのは、当然です。ま
た、評価すれば、その結果に応じて学習を調節するのも当然
のことです。ここには、そのような学習の評価と調節の考え
方や方法について、文学や知識や情報の学習、作文の学習な
どを例にあげて詳しく説明しています。
 日常の授業の中で、この評価と調節などを実際に試みてく
ださい。

                                                      143


      学習の評価調節の考え方とそのシステム



 (1) これまでの学習の評価調節とこれからの学習の評価調節
 普通の国語の授業で、たとえば、文章の概略を読みとる場合には、@文章全体を読んで概略を書き出す、Aそれを
何人かの児童が発表する、B児童がそれを聞いて、いいとか、適切でないとか、これを入れて、あれをけずるなど話
す。それを聞いて教師が評価する、Cそこで、もう一度読み直して、適切な概略に直すというような手順・方法がと
られている。この学習では、それなりに学習の結果も評価し、その結果によって読み直し、調節をしている。
 しかし、この学習の評価や調節の仕方をみると、特に何を評価するか、どんな基準を立てて評価するか、どんな方
法で評価するかなどということが、はっきりしていない。多くは、児童の挙手や答えやノートに書いてあるものなど
を見て、教師の長年の経験や勘にたよって判断して学習を進めている。しかも、ひとりひとりの児童は、自分の学習
の結果がよいのか、ふじゅうぶんなのか、明確に知らされない。これではひとりひとりの児童をだいじにし、ひとり
ひとりを生かし伸ばすことはむずかしい。授業は、一部の児童の学習状況を判断することで進められてしまう。
 このような、教師の経験や勘にのみたよっている評価調節を止揚して、学習の目標を明確に立て、目標を達成する
ための学習活動を計画的に配列し、児童が学習活動をするたびに、その結果を、基準を立て、方法を考えて児童に評
価させ、その状況に応じて学習のし直しをする。そうして学習目標を達成するというような科学的な評価調節をさせ
て、児童が主体的に自己開発をする力を伸ばしてやる。それが、ここで考えている学習の評価と調節である。
 (2) 学習の評価と学習の調節
学習中
の評価
 何ごとによらず、一般に、目標―計画―行動―評価というのが、行動のモデル過程である。学習活動
 も例外ではない。一時間の授業の中では、いくつかの学習が行われるが、どの学習活動もみな、その時間の
                                                      144
学習目標(行動目標)をめがけている。だから、原則的にどの活動もみな目標の追求活動だと言える。したがって、
一つの学習活動が終わったら、その結果、どれだけ目標に近づけたか、あるいは、めがけた目標が獲得できたかどう
かを、よく調べて評価するのは当然のことである。このように、学習の過程で、学習活動の結果を、学習目標に照ら
して、観察したり測定したりして判断し、児童の学習の現状を的確に認識する。それが学習中の評価である。
学習の
評 価
 そこで、前に述べたような学習中の評価が的確に行われれば、どの児童が学習に成功したか、どの児童は学
 習に失敗したか、学習活動の結果の状況がひとりひとりはっきりする。そして、 その結果を児童は確実に
知ることができる。そこで、学習がうまくいかなかった児童は、改めて学習のし直しをする。それが学習調節であ
る。
 ところで、学習のし直しが、最初の学習活動と同じでは意味がない。読みの課題を再認する。要点に注意して読
む、気持ちの変化を押さえながら読むというように、条件をつけて学習活動をし直す。この条件を調節条件とい
う。
 このように、学習の評価の結果にもとづいて、調節条件を決め、学習調節をしながら、学習目標に近づいていき、
やがて完全に目標を獲得し、学習を成功させる。このような仕組みが学習調節(学習制御)である。
 (3) 評価調節過程のシステム
 前に述べたように、学習活動が行われると、当然学習評価が行われ、学習調節が行われる。したがって、学習の過
程では、学習評価と学習調節とを切り離すわけにはいかない。そこに学習指導過程の要素として、評価調節過程を設
定する意義があり必要がある。次に評価調節過程を設定してみる。
 評価調節過程を設定する基本的な手順は、@学習目標を設定する、A目標追求の学習活動を設定する、B学習活動
の結果を評価する、C評価にもとづいて学習を調節する、D目標を獲得するということになる。この過程の中の、学
習評価と学習調節とを結びつけた過程が評価調節過程である。しかしながら、この過程は、前にあげた@〜Dの過程
のすべてに有機的な関連を持っていることに注意しなげればならない。次に、その全体のシステムをあげてみる。
                                                      145
         評価調節過程
@ 学習目標の設定学習目標
A 目標追求の学習活動学習活動
B 学習活動の結果の評価学習評価
C 評価にもとづく学習の調節学習調節
D 学習目標の獲得学習獲得 
 上の表は、学習の評価、調節を過程的に書いたも
のであるが、これを右のようにフローチャートにし
てみると、そのシステムが明確にわかる。
 (4) 学習評価のシステムとその計画 
 
行動目標

 次に、一時間の授業の中で、どのように学習評価を計画し実施したらいいか、その手順・方法を述べてみ
 る。ここに「段落の要点と細部との関係を読みとって、段落の構成を理解する学習」の行動目標がある。

 段落の要点と細部との関係を読みとって、次のように組み立てることができる。
名まえには物の形
によってつけたも
のがある
 ┌ひとで人間の手をひろげたような形をしているから
―┼いもむしいもの形ににているから
 └こうもりがさこうもりが羽をひろげたような形をしているから

 この行動目標を見ると、一時間の学習の終わりに、段落の内容を読みとって、右のように組み立てられれば、それ
でこの時間の学習目標が獲得できたということがわかる。したがってこれは一時間の学習の全体の目標である。
学習活動・学習技能
と評価の観点
 そこで、この目標を獲得するために、@要点を読みとる技能(活動)、A要点と細部との関係を
 読みとる技能(活動)、B要点と細部との関係によって段落を組み立てる技能(活動)の三つの
                                                      146
基本的技能を働かせて、三つの基本的活動を、順次行うことになる。したがって、一時間の授業の中で、この三つの
学習活動ごとに、その結果を評価する。この場合、その技能が身についたかどうかが「評価の観点」である。
学習目標と
評価の基準
 ところで、この三つの学習活動がめがける目標は、@の活動は要点、Aの活動は細部、Bの活動は組み
 立てということになる。この@Aの目標は、いわゆるその時間の学習の下位目標で、行動目標の分析に
よって設定される。そこで、@ABの目標を達成するための学習活動によって、それぞれの技能がどれだけ身につい
たかを、観察したり測定したりして判断する。そのときの尺度が「評価の基準」である。この場合で言えば、@の基
準は「名まえには、物の形によって、つけたものがある」であり、Aの基準は「ひとで―人間の手……、いもむし―
いもの形……こうもりがさ―こうもりが……」であり、Bの基準は最後だから行動目標に示された組み立てである。
 してみると、評価の基準は、行動目標に示されている内容的な価値――技能を働かせた結果得られる知識や情報や
思想や心情――によって設定されることがわかる
評価基準
の提示法
 評価をする場合の基準は、児童が話し合いによって設定し、それを提示して各自評価をするのがいいが、
 実際にはなかなかできないので教師がかわって、設定し、提示する。その提示の仕方にはいろいろある。
 見本法――基準をそのまま見本として示す。学習の結果と見本とを照合して、過不足、適否、正否を判断する。
 条件法――基準を分析し、要素、条件を抽出して示す。学習の結果をその条件によってチェックして判断する。
 選択法――基準を児童の能力を考えて類型化し、選択肢として提示し、児童に選択させる。
評価の
方 法
 評価の観点が決まり、評価の基準とその提示法(OHP・板書・学習シート・カードなど)が決まると、次
 は評価の方法である。評価は原則としては、学習者自身が行う自己評価による。しかし、場合により事情に
よって、相互評価、グループ評価をし、教師の評価をも加える。が、できるだけ教師は評価法を指導するようにす
る。なお実際には、評価表やチェックリストや学習シートなどを使ったり、話し合いによったりする。そこで、条件
法によるチェックリストを使った自己評価とか、条件法によって話し合うグループ評価とかいうように、明確な学習
評価の計画を立てておくとよい。こうして評価した結果は、必ず児童に知らせる、自覚させることを忘れてはならな
                                                      147
い。
内部行動の
外部行動化
 ところで、評価の対象は、学習した知識・情報・思想・心情や技能・態度であるから、それはすべて児
 童の内部行動である。したがって、そのままでは、それを観察・測定し評価することはできない。そこ
で、その内部行動を何らかの方法で外部に表す、外部行動化する必要がある。たとえば、学習の成果を、説明する、
例をあげる、文章に書く、記号や絵で表す、行動・動作・作業等で表すなどがそれである。あるいは、その内部行動
を推定して、それを文章化し、絵画化、記号化して、それを選択させたり、修正させたりする。この二つの方法を講
じておかないと、評価は成立しない。
 (5) 学習調節のシステムとその計画
 学習評価の結果がわかると、次はそれに応じて、学習の調節を行うことである。その手順・方法を述べる。
つまずき
の要因
 児童は、評価の結果がわかると、なぜ学習に成功しなかったか、その原因を考える。たとえば、課題がは
 っきりわかっていなかった。学習が片寄っていた。読み落としていた。課題の受けとめ方が誤っていた。
学習の仕方がよくわからなかった。前後の関係を考えなかったなど。必要により、場合によっては教師が気づかせ
る。
調節条件
の設定
 学習に成功しなかった原因がわかると、それに応じた調節の条件を各自考える。これが調節条件の個別化
 である。しかし、同じようなつまずきをもつものはグループを作って、グループごとに調節条件を設定す
る。これが、調節条件の類型化である。なお、児童に調節条件が設定できない場合は、教師が設定して提示する。提
示の仕方は、OHP・カード・板書・面接などによる。また、評価調節条件を含む学習シートを用意し、それによっ
て学習を進めることも考えておく。
 設定する調節条件の内容は、原則的には、@学習の結果がじゅうぶんでない場合は、そのふじゅうぶんを補うため
の条件を設定する。A学習が誤っていた場合は、その誤りを直す条件を設定する。B学習が適切でなく、多すぎた
り、余分のものがあったりする場合はそれを取り除く条件を設定する。具体的にあげてみると、@課題や技能を再確
                                                      148
認して読む、A足りなかった事項を搜しながら読む、B前後の関係をおさえて読む、C細部に注意して読む、D事件
の展開を押さえながら読む、E気持ちの変化をたどりながら読むなど、適切な条件を設定する。
 なお、調節条件は、原則として、そこで働かせる技能に強化を与えるものでなければならない。つまり、その技能
の働かせ方をしだいに正しくし、確実にするための条件を設定する。また、学習調節は、学習活動の直後に行うのが
最も効果的であることも心得ておく必要がある。
学習活動
の調節
 調節条件が設定されたなら、それに従って学習のやり直しをする。読解の場合は読み直し、調節読みをす
 る。作文の場合は、アウトラインの作り直し、修正、文章の書き直し、修正をする。
 読解の場合、学習調節を計画した学習シートを使って、読み直し、修正をする。自由に調節読みをして、既習事項
を加除修正する。グループで、同じ調節条件によって調節読みをした場合は、その結果によって、前に学習したこと
を各自加除補正する。その結果を発表しあって、評価・検討し、適切なもの、正確なものを作り上げ、それによって
さらに修正する。なお、一回の調節で成功しない場合は、さらに条件を考えて調節する。しかし、実際には、学習単
位を適切にして、一回ぐらいの調節ですむようにすることもだいじである。
学習目標
の獲得
 前に述べたように、この学習の評価調節は、学習活動ごとに行うものであるが、学習活動によっては、大
 部分のものが学習に成功し、調節を必要としない場合もある。いずれにしても、一時間の中に配列された
いくつかの学習活動が、評価調節によって、次々に下位目標を獲得しては、その時間の行動目標に接近する。やがて
最後の学習活動が終わると、そこで初めて、行動目標が獲得されて学習は終わることになる。
 以上、学習の過程における学習評価、学習調節を、評価調節過程として、学習指導過程の中に位置づけた。その上
で、学習の評価・調節の考え方や評価調節過程実践の手順・方法について述べた。評価調節過程を取り入れた学習指
導過程については、第五章に詳細に述べられているので参照されたい。
 なお、このあと、読解と作文の学習過程における評価調節の指導について、具体例をあげて述べてある。
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      学習の評価調節(学習制御)の指導


 (1) 要点を読みとる学習における評価と調節の指導(五年)
 知識教材「旅だつ種子(日書五上)」による第二時の学習の計画は、次の通りである。
行 動
目 標
 「大段落『種子を自分の力ではじきとばす植物』を小段落ごとに要点を読みとって、次のように書きだして
 組織することができる。@マメの類はさやが強い勢いで割れて、種子をまき散らす。A力タバミは、さや
を強い勢いでそりかえらせて種子をはじき出す。Bゲンノショウコは、さやが破れがさのようにはねあがるときに種
子もはじきとばす。」が、この時間の終わりに到達する学習目標になっている。
学習活動と
評価・調節
 そこで、この時間の学習活動は、@大段落を読んで小段落ごとに要点をカードに書きだす。A書きだし
 た要点を各自発表し合う。B評価基準に照らして自己評価をする。C調節条件を設定して、調節読みを
する。D調節読みの結果によって要点を修正する。E読みとった要点を組織するというように配列される。
この要点の読みとりの評価の基準は、「○○はさやを○○して、種子を○○○する」であるから、これを分析して、
@○○は、Aさやを○○して、B種子を○○するという三つの条件として設定する。その条件法により自己評価をす
る。
 以下、その指導の実際について述べる。
1 話し合って、読みの課題を、「どんな植物は、どんな方法で、種子をはじきとばすか」と設定する。
2 課題に従って、小段落ごとに、課題にあわせて要点を組み立てるだいじなことばにサイドラインを引く。
3 サイドラインを引いたことばを組み立てて要点をカードに書きだす。
  要点をカードに書きだす場合、課題に応じた書き方をするように指導する。
                                                      150
4 書き出した要点を各自発表させる。教師は発表を聞きながら、要点の類型を見出して板書する。
  @マメの類は天気のよい日に、じゅくしたさやが強い勢いで割れて、中の種子をまわりにまき散らすの類
  Aかたばみの種子は五つのさやの一つ一つがとつ然強い勢いでそり返っで種子がはじき出されるの類
 @は、だいじなことばとだいじでないことばの判断ができないで短くまとめられない例、Aは、課題に応じて、
 「カタバミの種子は」を「カタバミは」と読み替えられない例である。児童は、自分のと比較しながら聞く。
5 評価基準をOHPで提示し、「○○は、さやを○○して、種子を○○○する」について、話し合い、含めるべき
 条件を明確にする。また、余分なことはどういうことかも理解させる。
6 評価基準に照らして自己評価する。
  @要点ごとに基準の条件と照合する。足りない条件をカードに書き出す。余分なことばに線を引く。
  A「○○の種子は」は「○○は」とすることに気づく。こうして自分の学習の結果の状況を知る。
7 調節条件を設定する。
  @落ちている条件を満たす。A余分なことをどのようにするか、B細部を捨ててだいじなことを読みとる。
  C「カタバミの種子は」を、「カタバミは」とすれば、それに続く文をどう読み替えたらいいかなど、各自調節
   条件を設定する。要点のAとBについては、大部分がこの順になるので、特にこの条件について明確にする。
8 調節読みの結果によって要点を修正する。修正できない児童の分はグループで話し合って修正する。
9 読みとった要点を組織する。どのように組織するかは、大段落の要点に気づかせて考えさせる。
自分の力で種子
をはじきとばす
植物 
 ┌―マメの類は、さやが強い勢いで割れて、種子をまき散らす。
―┼―カタバミは、さやを強い勢いでそりかえらせて、種子をはじき出す。
 └―ゲンノショウコは、さやが破れがさのようにはねあがるときに、種子をはじきとばす。

10 上のように要点を組織する。上の組織を説明させて、大段落の内容をまとめる。
次は、一年生の情報読みにおける評価調節の指導例を紹介する。
                                                      151
 (2) 情報の収集、組織の学習における評価と調節の指導(一年)
 情報教材「はたらくじどう車(教出一下)」の第二時の学習の計画は次のようになっでいる。
教 材

 キャリアカーは、車を はこぶ じどう車です。この じどう車は、車を つむ ところが、たいてい、二
 だんに なって います。こうじょうで、つくった あたらしい 車を なんだいも のせて はしりま
 す。
行 動
目 標
 情報話題と情報事項とを読みとっで、次のように組み立てることができる。

           ┌―車をはこぶじどう車です。
   キャリアカーは―┼―車をつむところがたいてい二だんになっています
           └―あたらしい車を、なんだいものせてはしります。
学習活動と
評価・調節
 上の行動目標に到達するための、この時間の学習活動は、@段落を読んで情報話題を読みとる。A評価
 調節をする。B情報事項を読みとってカードに書く。C読みとった情報事項を評価する。D評価の結果
によって調節読みをする。E情報事項を修正する。F話題を中心にして情報事項を組織する。G情報をまとめて説明
する、のように設定され配列される。
 これらの学習の評価の観点は、@話題が読みとれたか、A情報事項が読みとれたか、B情報事項が組み立てられた
かの三つの技能である。評価の基準は、@は「キャリアカー」Aは、「車をはこぶ」「車をつむところが二だん」「あ
たらしいじどう車をなんだいものせてはしる」、Bは、行動目標の組織である。評価の方法は、見本法によって自己
評価したり、話し合って評価したりする。
 以下、その指導の実際についで述べでみる。
1 学習課題を設定する。「何についての話ですか」「どんな自動車の話ですか」などの課題を設定する。板書して、
                                                      152
 課題を明確に意識させる。」これは情報話題を読みとるための課題である。
2 課題に従っで読み、話題をおさえてカードに書く。カードには、下方に「は」をあとで書きこめるように線を入
 れでおく。
3 カードに書いた話題を発表させる。@「キャリアカーの話です」A「キャリアカーは車をはこぶじどう車です」
 B「車をつむところがたいてい二だんになっています」「あたらしい車をなんだいものせてはしります」などいろ
 いろ発表する。AやBに対しでは必ず「何が」と問い返しておく。
4 評価基準「キャリアカー」を提示する。各自書いたものとくらべさせる。正しいものには○をつけさせる。違っ
 でいるものについては、みんなで考える。前記のABもキャリアカーについての話であることを確認する。その
 際、連体詞「この」とその機能に気づかせる。
5 カードを「キャリアカー」と修正して、学習を進める。話題カードは机上の前の方に置く。
6 次の学習課題「キャリアカーのことで、どんなことを知らせていますか」を設定、板書し、一つのことを一枚の
 カードに書くことを約束する。キャリアカーはわかっているから、カードには書かないことを確認する。
7 読みながらカードに書く。書いたものを発表させる。教師はそれを聞いていてその状況を把握する。
8 評価基準を順次一つずつOHPで示し、話し合いながら修正する。
 @ 何を運ぶ自動車かを書いたカードを拾い、基準と照合させる。適切でないものは、その文を読ませて、基準の
  ように修正する。修正したカードは、話題カードの下に並べる。以下も同じ。
 A 積む所はどうなっているかを書いたカードを拾い、基準と照合させる。「たいてい」の語句を指導する。「こ
  の自動車」と書いた児童については、改めて、「キャリアカー」をさしていることを確認させる。
 B 何を載せるかを書いたカードを拾い、基準と照合し修正する。「こうじょうでつくった」を削る。
9 読みとった情報事項を組織する。話題カードの下に三枚の情報事項を並べる。評価基準をOHPで投映し、正し
 く直す。組織したカードを見ながら読むようにして「キャリアカーは○○です」「キャリアカーは○○します」と
                                                      153
 いうように話させる。その折に、題材カードに「は」を書くといいことに気づかせて書かせる。話す段階で説明の
 文型を身につけることができるし、学習内容を総括組織することができ、本時の学習目標を獲得する。
 (3) 主題を読みとる学習における評価と調節の指導(四年)
 文学教材「飛びこめ(光村四上)」の第一時の直観読みの学習の計画は、つぎのようになっでいる。
行動的
目 標
 第一時は、作品全体を読んで、直観的にクライマックスを押さえ、クライマックスの場面における感動をと
 らえ主題に接近する読みの学習をするのであるが、その一時間の学習目標は、次のようになっている。
 作品を、想像しながら直観的に読んで、クライマックス「船長が、マストの横げたを渡り始めた危険な少年を見つ
 けて、銃を向け、海に飛び込ませて、その命を救った場面」を押さえ、船長・父親の行動と心情に感動したことを
 話すことができる。
行動的目標
と学習活動
 上のような学習目標を獲得するための方法として、@作品全体を読んで、各自の感動を押さえる。A各
 自の感動を短いことばでカードに書く(感動した場面でもよい)B各自の感動をグループで話し合っ
でから、感動の違いによって分類し、組織する。C各グループの感動の状況を発表し、教師は、それを黒板上に組織
する。D各自の感動について自己評価する。E自己評価にもとづいて調節読みをする。F新たな感動を押さえて発表
するという学習活動が編成され、学習過程が成り立つ。
学習活動と
評価・調節
 これらの学習活動によって育てられるのは、@直観読みの技能(直観的に中心思想、主題を読みとる技
 能)、A感動を組織する技能、B自己評価の技能、C自己調節の技能などである。この一時間の学習活
動の中で評価するのは、直観的に中心思想、感動の中心を読みとる技能で、評価の基準は、形式的には、クライマッ
クスであり、内容的には「感動の中心」である。評価法は、感動の組織による自己評価、話し合い評価である。
 以下、一時間の学習指導の概要を示す。
1 作品全体を読んでいちばん強く心を打たれたところを押さえる。
 @読みながら強く心に感じた場面を次々にチェックする。A読み終わったところで、感動の中心になるところを押
                                                      154
  さえる。B読みとった感動の中心を簡単なことばで書く。
2 グループごとに、読みとった感動を組織する。
 @ 各自の感動について、どんな場面の、どんなことで、どんな感動を受けたかを話す。
 A 各自の感動を聞いて、いろいろな感じ方があることを知り、それぞれのカードを分類し組織する。
  ァ船長が少年の命を救ったこと、ィ少年が勇気のあること、ゥ船員たちがみんな心配したこと、ェさるがふざけ
  て少年がむきになって行動したことに分類・整理される。
3 グループの発表によって、教師が学級全員の学習の結果を組織する。(板書)感動の型を書き、その数を示す。
 @ 学級全員の中での自分の感動の位置づけを知る。(学習に参加している喜びを味わう。)
 A それぞれの感動の型について、全員で話し合う。(自己評価の基準を作り上げていく。)
  ァ事件の展開の上での位置づけ、ィ作品の意図の上での位置づけ、ゥ感動の内容・質についての比較。
4 学習の結果を自己評価し、調節条件を設定する。
 @ 感動について全員で話し合っている間に、自己評価の基準が、しだいにできてくる。(個別的に)
 A 評価基準をOHPで提示する。ァ事件の盛り上がりについての感動か、ィ作者が訴えていることについての感
 動か。
 B 基準に照らして自己評価する。事件の途中のことの感動だった。主人公についての感動でなかった。読み方が
 浅かった。表面的な感動だった。父親が、とつ然大きな声でうめき出したを読み落としたなど、さまざま。
5 各自、調節読みの条件を設定して直観的に読む。
 @ 調節条件を設定する。ァ父親に視点をあてて読む、ィ少年が海へ飛びこむ時のようすをもっと深く読む、ゥ少
 年を見つけた時の父のこと、少年が助けられるのを見ている父のことをもっと深く読むなど、さまざま。
6 各自調節読みをして、改めて深く心に感じたところを押さえる。
 @ 改めて感じたことを発表し合う。
                                                      155
7 作品全体を読みとおす。朗読する。こうして、この時間の学習目標を獲得する。
 (4) 想像しながら読む学習における評価と調節の指導(三年)
 文学教材「五色のしか(光村三下)」の場面や人物の姿・性格・気持ちなどを想像しながら読む学習における評価
と調節の実際について述べてみる。教材は、次のとおりである。
  それから数年たちました。ある日のことです。町や村に、王様の知らせとして、立てふだが立てられました。そ
 れには、「五色のしかをさがし出せ。さがし出した者には、ほうびとして、金や銀のたからものをあたえる。」と
 書いてありました。
  王様は、その話を聞くと、「それは、めずらしいしかだ。どこかにいるにちがいない。さっそくさがさせてみよ
 う。」と言っで、国じゅうにおふれを出したのでした。@この立てふだの前で、うで組みをしているひとりの男が
 ありました。それは五色のしかに助けられた男でした。男は、それまでに、だれにも五色のしかのことを話したこ
 とはありませんでした。Aところが立てふだを見ているうちに、男の心は次第にかわっていきました。「よし、王
 様に知らせてほうびをいただこう。」男は、ごでんに向かって歩き出しました。B歩いているうちに、男は五色の
 しかのことばを思い出しました。「いやいや、わたしは、あのしかとやくそくしたのだ。」男は、自分の家へ帰っ
 ていきました。
  二日、三日、日がすぎました。C男の頭の中には、五色のしかと、金や銀のたから物が、入れかわり立ちかわり
 うかんでは消えていきました。四日めになって、男は、とうとうごてんにかけこみました。そうして、王様に向か
 って言いました。「申しあげます。わたしは、五色のしかのいる所を知っております。かりゅうどをおかしくださ
 い。かならずさがし出してまいります。」王様は自分も行っでみたくなりました。(以下略)
行動的
目 標
 この時間の学習目標は、次のように設定されている。「自分の欲望が押さえぎれず、命を助けてもらったし
 かとの約束を破った男の気持ちの変化を想像しながら読んで、想像したこと、感動したこと、考えたことを
書いたり話したりすることができる。」この目標は、学習の対象と、学習の技能とを規定している。
                                                      156
学 習
活 動
 上の学習目標を達成するための学習活動は、@想像しながら読んで、サマリーとシーンを読み分ける。Aシ
 ーンごとに、ようすや男の気持ちを想像して、書き込みをする。Bグループで、場面のようすや男の気持ち
について想像したこと、感動したこと、考えたことを話し合う。C話し合いながら必要に応じて調節読みをして確か
める。Dグループで話し合ったことを発表し、全体で評価し調節する。E朗読をするとなる。
学習評価
学習調節
 また、この時間に学習する技能は、@場面のようすを想像しながら読む技能、A人物の気持ちを想像しな
 がら読む技能である。また、基礎的にはサマリーとシーンを読み分ける技能も働いている。@の技能で、
サマリーを受けて立て札の場面を鮮明に描く。この場面表象が描けないと、男が孤立してしまう。Aの技能で、立て
札の前に立つ以前の男の心、立った時の男の心、王様の前に出た男の心を葛藤として描き出す。したがって、そこに
描かれた場面表象を評価する基準は、立て札は王様の望みと褒賞を表していること、他の人々にまじるうで組みの男、
町(村)かどである。描き出した男の心情表象を評価する基準は、立て札の前に立つ以前のは、しかに助けられた事
実、しかとの約束とその場面であり、立て札の前に立ってからのは、「よし」と「いやいや」である。王様の前に出
るまでのは、「しか」「たからもの」「入れかわり立ちかわり」「とうとう」「かけこむ」である。これらについて
の想像表象が描かれているかどうかで、想像の広さや深さを判断する。
 想像表象は、過去に得た経験・知識、読書や映画・絵画などから得た表象によって描き出されるものである。した
がってことばの刺激によって想像の描けない場合は、ことばの意味を説明する、絵を見せる、実物を見せるなどして
学習させなければならない。そこで想像読みの調節は、描けるはずの表象が、読み落とし、気がつかないなどのため
に描けない場合に限られる。なお、このような想像表象を描きながら読むことで、実感的に読む、感動的に読むこと
ができるのである。そこで初めて立場交換・役割交換も可能になる。以下学習指導についで述べる。
1 全文を想像しながら直観的に感動的に読んで、サマリーとシーンを押さえる。
 @ 初めから、おふれを出したのでした。までがサマリー、立て札を立てるいきさつと、立て札の内容の説明、A
 立て札の前に男が立ってから帰るまでの場面、B男が王様に申し出る場面に区切られる。
                                                      157
2 サマリーを確認し、感動をもとにしながら、場面のようす、男の気持ちを想像して、書き込みをする。
 ア 立て札を中心とした場面は、視覚表象を描きながら、それを書き込む。立て札の意味、場所、見でいる人た
  ち、その中にうで組みをしている男、人々のささやきなど。(場面表象)
 イ @の立て札の前に立つ以前の男の心を想像して書く。語らせ法によって、男にこれまでの心をつぶやかせるよ
  うにして書く。しかに助けられたこと、しかとの約束を中心にして。(性格表象)
 ウ Aの立て札の前に立ってから家へ帰るまでの男の心も想像して書く。立て札を読んでいる時の緊張、驚き、喜
  び、「よし」、はずむ心、しかのことば、「いやいや」、やくそくなどを中心にして、これも内心の葛藤を男に
  つぶやかせる語らせ法による。(心情表象)
 エ 王様に申し出るまでの男の心を想像して書く。しかとたからもの、入れかわり立ちかわり、浮かんでは消え、
  とうとう、かけこみましたなどを中心に。心情表象はこれも語らせ法による。かけ込んで行く行動表象、王様の
  前の場面表象は、視覚表象を描いて書き込む。(場面表象・心情表象)
3 グループで、場面のようすや男の気持ちについて想像したこと、それによって感じたこと、思ったことなどを話
 し合う。OHPで、話し合う基準を提示する。話し合いがすんだらその部分を読んで確認する。場面や気持ちがじ
 ゅうぶんに想像できたら、どんな人間かについて感じたこと、考えたことを話し合う。(評価・調節)
4 グループで話し合ったことを報告する。それを教師が組織する(板書)。黙読する。朗読する。
 ア 王様の望みと、褒賞とのさそいの中で、しかとの堅い約束と欲望との戦に破れていった男の心情をありありと
  再体験するために読む。(黙読)
 イ 朗読する。(評価)
 この学習をとおして、男の心のまよいについて読みとり、初めの単純に悪い男というように感じたところから、心
の弱い男、むしろ哀れな男といった感じを抱いていったようである。
                                                      158
 (5) アウトライン作りにおける評価と修正の指導(六年)
 題材(主題・意図)が決まり、それを書き表すための内容が収集されると、そこで、書く文章のアウトラインを作
ることになる。そのアウトラインが、主題や意図を展開するのに適切に組み立てられているかどうかを判断し、修正
するのが、アウトライン作りの評価と修正である。
行動目標と
評価の観点
 六年生の三学期の作文単元「卒業文集」のアウトライン作りの学習の行動目標は、
 「主題が適切に展開するように文章の柱立てをしたアウトラインを作ることができる。」となっている。
 この行動目標を分析してみると、次のようなアウトラインを作る観点(技能)が抽出される。
 @主題を具体的に展開する。A内容の重み(価値づけ)と、その配列を適切にする。Bアウトラインを使って、そ
  のまま表現に移行できるようにする。
 これらの技能が、評価の観点になる。
評価の
基準
 そこで評価の基準は、@主題が具体的にわかるように展開されているか。A内容の選択や重みづけが適切に
 なっているか。Bアウトラインに従って、そのまま表現できるような資料が整えられているかということに
なる。これらの基準に照らして、自己評価、あるいは、相互評価、時には教師の評価をする。
修正の
方 法
 そこで、できたアウトラインを、通して読みながら、主題がどこにどのように具体化されているかを考える。
 次にアウトラインの柱ごとに、その内容が具体化されているか、必要な材料が集められているかどうかを考
えてみる。その結果、足りない点は補足し余分な点は削る。その場合、記憶捜査、経験捜査の結果によって修正する。
評価・修正
の 実 際
 次に例をあげてみる。文題は「学校とのお別れ」で、その主題は「わたしを見守ってくれた校門とお別
 れするのはとてもつらい。」である。表現内容は、次のとおり。番号はカード番号を示す。
@校門は一日に二度元気づけてくれた。A晴れた日は笑顔で。B雪の日は寒くなんかないぞと元気づけた。C雨の日
は交通事故にあわないように。D風の日は吹きとばされるな。E校門よさようなら。Fありがとう学校の門。
                                                      159
1 最初のアウトライン教師の評価調節
     ┌―A
紙面の都
合で、カ
ード番号
で表す 
     ├―B
 ┌―@―┼―C
 |   └―D
 └―E―――F
 
 ・主題と一致していない……注意
  (「わたしの成長」がどこにも
   でてこないことを指摘)
 ・頭で考えたことが多すぎて、具
  体的でない……指摘(ABCD
  の扱いについてA子に質問) 
 児童の自己評価と調節
・目で見た校門の姿が必要
・校門をとおした学校との別れのさびし
 さが必要。
・ABCDは、同じようなことのくりか
 えしだから、Dをはぶく。 
2 新しく書き足したカード――教師の評価、児童の自己評価の結果、補足した事項は、次の通りである。
 G一年生のときは、校門がとても高かった。H今では、手をのばすとらくにとどく。I校名を深くきざんだ、まっ
黒な二本の柱。Jランドセルを背負って、この門をはいることはないんだ。J朝日をあびてぴかぴか光っていた。K
こんもりと雪のぼうしをかぶっていた。L大つぶの雨のなみだをこぼしていた。
3 作りなおしたアウトライン最初のアウトラインに、上の事項を加えて組織したアウトライン
 ┌―I―――G
 |   ┌―I―A
 ├―@―┼―K―C
 |   └―K―B
 └―E―┬―H―J
     └―F 
新しく書き出した事項(カード)を操作して、アウトラインを組み立て直す。その際、
特に、主題の展開を具体化する。内容の重みづけをはっきりさせるようにすることを忘
れないようにする。こうして前にあげた観念的で、具体性に乏しかったアウトラインが
カード操作の段階で修正されて、上記のようなアウトラインができた。これで、児童の
書きたかったこと(主題)が具体的になり、表現に移るときにもスムーズに行くように
なった。 
1 問題点――操作の段階での評価調節は比較的やりやすいが、構想の段落や表現への移行の段階ではむずかしい。
それは、教師の指導過多になったり、書こうとする意欲をそいだりするおそれがあるからである。そこで、児童に自
己評価と自己調節の技能を習得させておく必要がある。
                                                      160
 (6) 文章表現における評価と修正の指導(三年)
 アウトラインに従って文章を書く。書いた文章を、表現の目標に照らして、そのように書けているかどうかを、自
己評価する。つまり、書いた文章を読み返しながら、目標どおり書けていないところを見つけてチェックする。その
チェックした部分を、表現内容に応じて適切に書き直して、文章を修正する。このようにすることが、文章表現の評
価と修正である。従来、作文では推考ということが言われているが、主として、表記の訂正、わずかに字句の修正を
行っているにすぎない。そのような表現形式の書き直しを中心とした推考という考え方ややり方から抜け出す。そし
て表現の原点に立ちかえって、表現内容を再認し、それに応じた表現をくふうすることによって、表現形式を修正す
る。そこに表現の評価、修正の新しい意味がある。
行 動
目 標
 ここに、三年生の「観察したことを説明する文章を書く」作文単元がある。この単元の学習目標は、「虫、
 魚、動物などの自然物をよく観察して、正確に、詳しく書いて説明することによって、自然物を正確に、客
観的に認識する力を増すとともに、自然物に対する興味を増すことができる。」となっている。
 この単元の学習目標を分析して、アウトラインに従って、説明を書く時間の学習目標は、「観察したことを、正確
に詳しく、具体的に、感覚や数量を表すことばや図・表などを使って、説明を書くことができる。」のように設定さ
れている。この行動目標から、表現の評価の基準は、次のように設定される。
評価の
基 準
 @はっきりしない、あいまいに書いてあるところ、Aどんな動きか、どんな色や形かはっきりしない書き
 方、B数えたり、測ったりして書いたほうがいいところ、C図や表を使ったほうがいいところ。
 上の基準は、児童に評価しやすいように、消極的な面、つまり修正する点だけを見つけるようになっでいるが、積
極的な面、正確に書けている、詳しく書けている、感覚的なことばや数量を表すことばが使ってある、図や表が使っ
てあるという点の自覚を持たせることはいうまでもない。
修正の
方 法
 評価の基準にもとづいて、文章を読み返して修正する事項、部分がわかったら、次はその修正にかかる。
 そのためには、修正する箇所の内容を再認する方法を次のように考える。
                                                      161
 @ 記憶捜査―ァ再認する点、内容についで、記憶を捜す。周辺記憶を思い出す。 ィ経験の原点にもどって想
         起する。どのように観察したか、どんな動き方をしたか、どんな状態だったかなど。
 A 原点捜査――メモを見る。資料を見る。図や表を見る。観察し直す。さわってみる、動かしてみるなど。
 上の想起法によって書き表すことを再認する。内容が再想起され、再認されたら、その内容にふさわしい書き表し
方をくふうする。その場合、当然、その時間に学習する書き表し方に従って書き直す。修正が終わったら、全文を読
み直して、改めて評価基準に従って再評価する。
修正の
実 際
 次に、評価、修正の実際について述べてみる。まず、書いた文章を読み返しながら、評価基準(板書して、
 提示する)の@については、青鉛筆でチェックする。Aについては、赤鉛筆でチェックする。BCについて
は、「 」でくくる。このようにしるしをつけた箇所を修正する。その例を次に二、三あげてみる。
 @ 足先であるいでいることがわかりました。――「足先の(細いつめのようなもので)あるいていることがわか
  りました。」と修正。
 A かまをのばし虫を強くつかみ――「かまをのばし(虫をにぎるように)強くつかみ」と修正。
 B 歩くときの足のじゅんばんがきまっていることに気がつきました。そのじゅんばんは、前足右左、後足右左、
  となっでいます。――「そのじゅんばんは、(下の図のように)なっています(図省略)。」と修正。
 C 口を動かすときは、あごのようなところが、上下に動きます。――「口を動かすときは、(下の図のように○
  の部分が)上下に動きます。」と修正。
 上のように、記憶捜査、原点捜査の方法によって修正したが、次のような、正確で、詳細な表現がたくさんある。
 @ 大きなはさみを下にたたきつけて、はんどうで起き上がろうとするのです。起き上がるときは、かならず尾を
  まるめて左にかたむけます。
 このようにたくみに修正ができたのは、評価基準の立て方が適切であったことを物語っている。
                                                      162

      白紙

                                                      163
内容的な価値………………… 8,9,88

        〔に〕

人間形成の機能………………10,34,78
認定的評価……………………………30
能力過程………………………………18
能力形成の機能………………… 13,34

        〔は〕

発想転換…………………………94,127
場面表象……………………39,122,157

        〔ひ〕

批判読みの技能………………………91
表解の技術………………………… 138
評価過程………………………………18
評価基準…………… 23,146,158,160
評価体系………………………………30
評価と修正 …………………………158
評価調節過程…………………………31
評価の観点……………………………23
評価の方法 …………………………146
評価法のシステム……………………23
表現活動のシステム…………………61

        〔ふ〕

フローチャート……………………102
フローチャートによる学習………103
フローチャートの学習技術………103
フローチャートの作り方…………102
文学単元の価値目標…………………85 
文学の学習指導過程……………… 104
文学の行動目標………………………88
文学のフローチャート…………… 106
文章表現技術…………………………52
文章表現の評価と修正…………… 160
文章を組み立てる技術…………… 129
文章構成のカード操作技術……… 136
分析読み……………………………… 9

        〔へ、ほ〕

並立型……………………………34, 46
方法過程…………………………18, 70
方法技術…………………………21,119

        〔み、も〕

見本法……………………………23,146
目標過程…………………………18, 67
目標分析のシステム…………………81
日標分析のモデル……………………83
モデリンダ‥…………………………26

        〔よ〕

要素型……………………………34, 46
要点と細部の表解………………… 139
要点読みの評価と調節…………… 149
読みの構え……………・・……………13

        〔わ〕

「わたしの父」の学習計画……………65
「゛わたしの父」のシステム設計……63
 
                                                      164
条件型…………………………11,35,42
条件法………………………19, 24,146
情調表現の技術 ……………………130
情報意図…………………………46, 47
情報事項…………………………46, 92
情報事項と情報細部…………………47
情報事実と情報意見を読み分ける
 技術 ………………………………125
情報判断の誤りを見抜く技術…… 127
情報処理の学習指導過程………… 107
情報の読みの行動目標………………92
情報の収修、組織の評価と調節… 151
情報不足を見抜く技術…………… 124
情報文を書く技術………………… 132
情報の学習指導過程のフローチャ
 ート……………………………… 109
情報の批判的読みの技術………… 124
情報話題…………………………46, 92
処理技能………………………………12
人物表象………………………………39
心情表象……………………39,122,157
心情表現の行動目標…………………95
診断的評価……………………………30
心理や心情の想像読みの技術…… 123
        〔せ〕
性格……………………………………89
制御過程………………………………19
性格表象……………………… 122,157
生産財………………………………… 8
説明文を書く技術………………… 132
選択法……………………………… 146
線による相互関係の表し方……… 138
        〔そ〕
想起法……………………………… 131
総合的言語技術…………………… 117
相互評価…………………………… 146
想像表象…………………………… 122 
想像読みの技術……………………122
想像読みの評価と調節……………155
想定法………………………………124
        〔た〕
対比法………………………………125
体制読み……………………………9,17
体制読みの行動目標…………………91
単位学習活動のモデル………………71
単元展開のシステムモデル…………59
単元の学習活動のシステム…………71
単元の学習計画のモデル……………15
単元の学習目標………………………81
単元の価値目標………………………86
単元のシステムモデル……………9,59
「太郎こおろぎ」のシステム…… 38,62
「太郎こおろぎ」の学習計画…………64
だんだん型……………………………35
        〔ち〕
知識の概略読みの技術…………… 120
知識・情報読みの行動目標……86, 90
調節過程………………………………20
調節過程のシステム…………………73
調節条件………………………………25
調節条件の設定…………………… 147
調節読み………………………………25
直観読み ………………………………9
直観読みの行動目標…………………92
        〔つ〕
追求過程……………・……………… 70
つまずきの要因…………………… 147
適用過程………………………………68
読解学習技術……………………… 120
        〔な〕
内部行動………………………………14
内部行動の外部行動化…………… 147 
                                                      165
基礎的言語技術…………………… 117
基礎理論………………………………27
機能的操作……………………………26
機能的方法……………………………28
技能目標………………………………76
基本的機能……………………………12
基本的言語技術……………………117
教材の機能………………… 10,33,51
教材の構成……………………………51
教材のシステム化……………………35
教材のシステムモデル………………36
教材のパターン………………………34

        〔

くさり型………………………………35
くらべ型………………………………35
くりかえし型…………………………35
グループ評価……………………… 146

        〔

KJ法の技術……………………… 140
形成的評価……………………………27
「けむりのゆくえ」のシステム……43
言語技術…………………………21,119
言語技術のシステム……………… 118
言語技術のパターン……………… 118
言語技能………………………………21
言語行動………………………………78
言語行動化……………………………78
検討過程………………………………70

        〔

工学化…………………………………25
工学的操作……………………………26
構造化…………………………………37
構造過程………………………………11
構造化過程………………………11,56
構造変換………………………………91
構造変換の読みの技術…………… 126 
行動の基本様式…………………… 100
行動表象…………………………39,122
行動目標…………14,76,153,149,160
行動目標の記述………………………80
行動目標と学習活動……………… 153
行動目標と評価の観点…………… 158
行動目標の考え方……………………76
行動目標の設定………………………80
行動目標の内容………………………79
行動目標の分析………………………73
行動目標の理論的背景………………78
国語科の学習法…………………… 115

        〔さ〕

作文教材のシステム…………………50
作文学習指導過程のモデル ………110
作文学習の行動目標…………………94
作文単元の価値目標…………………85
サマリーとシーン……………… 36,39

        〔

思考過程……………………………… 35
思考法………………………………… 52
自己評価………………………………146
システム……………………………… 56
システム化…………………… 26,56,57
システム設計………………………… 58
システム化の手順…………………… 43
システムの創造……………………… 58
システムの発見……………………… 57
支持技能……………………………12,13
シミュレーション…………………… 28
修正の実際……………………………161
修正の方法………………………158,160
授業のシステム設計………………… 66
授業のシステムモデル……………60,67
主題…………………………………… 89
主題読みの評価と調節………………153
情景表象………………………………122
 
                                                      166
索   引 
        〔

フウトライン作りの技術………… 128
アウトライン作りの行動目標………94
アウトライン作りの評価修正…… 158
アウトライン作りのフローチャー
 ト………………………………… 111
あいまい叙述を見抜く技術……… 124

        〔

1時間の学習のシステム………72, 15
1時間の学習目標……………… 72,81
1時間の授業…………………………60
位置や記号による相互関係の表し
 方………………………………… 138
色分けによる相互関係の表し方… 138

        〔

補い書き…………………………… 123

        〔

カード操作の技術…………… 136,137
外部行動化……………………………14
下位目標…………………………14, 73
科学的操作……………………………26
係り受け型……………………… 11,35
学習活動……………………18, 59,156
学習活動と評価・調節…………… 149
学習活動のシステム……………12, 17
学習活動のシステム設計……………71
学習活動のモデル……………………30
学習活動と評価・調節……… 151,153
学習活動と評価の観点…………… 145
学習過程のモデル……………………30
学習過程のシステム……………17, 67
学習技術の開発…………………… 116 
学習技術のシステム………………… 21
学習技能……………………………… 14
学習計画……………………………… 28
学習計画のシステム設計……………131
学習指導過程の原則………………… 98
学習指導過程のシステム…………18,98
学習指導過程のモデル……… 29,60,98
学習指導過程のフローチャート…… 19
学習指導過程の本質………………… 98
学習指導過程の要素………………… 99
学習資料……………………… 9, 28,59
学習制御のシステム………………… 26
学習単位……………………………… 14
学習中の評価…………………………143
学習調節………………………24,30,143
学習調節のシステム…………… 24,147
学習内容………………………8, 27, 59
学習の場のシステム………………… 16
学習評価…………… 9,30,59,143,144
学習評価・学習調節…………………156
学習評価のシステム…………24,26,153
学習方法………………………… 28, 59
学習方法のシステム………………… 22
学習方法のシステム設計…………… 71
学習法の学習…………………………115
学習目標………………………8, 27, 59
学習目標細目表……………………… 82
学習目標と評価の基準………………146
獲得過程……………………………19,70
語らせ法………………………………123
語り型…………………………… 35, 38
価値目標………………………8, 76, 77
価値目標の考え方…………………… 78

        〔

基準学習指導過程……………………100
 
                                                      167
 この研究にたずさわった会員
         (〇印 執筆者)

 東京会員
O中沢 政雄(主催・国語教育科
        学研究所長)
 渡辺  正(顧問・武蔵野市境
        幼稚園長)
 高木 正三(顧問戸川区中小岩
        小)
 飯田  清(顧問・目里区鷹番
      小)
O相川 正志(会長・文京区柳町
       小)
O中津留喜美男(副・中央区佃島
         小)
 小高 偉子(副・北区王子小)
 多田三重子(副・江戸川区船堀
        二小)
O熊谷 芳子(副・練馬区開進二
       小)
 松本 幸夫(副・豊島区目白小)
 佐々木トシエ(副・中野区中野
        昭和小)
O斉藤  文(葛飾区松上小)
O三浦 ミ ヨ(葛飾区東堀切小)
O遠山 静子(大田区池上二小)
O堀口 和正(渋谷区大和田小) 
 渡辺志げ子(江戸川区東小松川
        小)
O飯塚 米子(葛飾区酉渋江小)
 林  武男(港区麻布小)
O弓家 靖絵(板橋区板橋一小)
O小畑多恵子(中央区阪本小)
 桜井 愛子(中央区阪本小)
 堀口 由美(中央区阪本小)
O船越 コト(墨田区言問小)
 杉本 三苗(江戸川区二松江小)
 加藤 譲治(北区滝野川一小)
O鏑木 純子(中央区明石小)
 猊倉 義勝(江戸川区篠崎二小)
O伴  定子(文京区大塚小)
O岡田  脩(文京区柳町小)
O佐藤 甲子(北区八幡小)
O津波 清子(北区清水小)
 三角 スミ(北区王子一小)
O関口 寿子(葛飾区中之台小)
O根本 祥子(江戸川区平井東小)
O二村 陽子(千代田区小川小)
O舘林 静江(千代田区永田町小) 
 下鉢 徳子(中央区有馬小)
O岩川 益子(渋谷区富谷小)
O川崎タヅヱ(目黒区烏森小)烏
O金子 伸子(目黒区宮前小)
O堀越 玲子(町田市南一小)
 奥山 博子(中野区新山小)
O小川 捷寿(国立市国立一小)
O古川 良馨(北区稲田小)
O藤倉 文子(北区滝野川一小)
 永田 清子(北区第三岩渕小)
O松本 昭子(北区袋小)
O稲葉 光子(葛飾区白鳥小)
 中村佳ほる(江戸川区上一色南
        小)
O八田 洋弥(学芸大附大泉小)
O中島 紀子(学芸大附大泉小)
O安達  衡(学芸大附大泉小)
 塚田 正宏(学芸大附大泉小)
O佐藤 久弥(練馬区八坂小)
O鈴木美智子(練馬区関町小)
O長谷川恵美子(練馬区上石神井小)
 高橋 深雪(練馬区豊玉東小) 
                                                      168
 石 井 千家子(練馬区豊玉東小)
O岸   源 三(武蔵野市一小)
O斉 藤 洋 子(小金井市南小)
  名古屋会員
 青 山 清 和(一柳中)
 清 野 順 子(名塚中)
 伊 藤   隆(山田中)
 今井田 弥 生(大曽根中)
 大 崎 純 代(南光中)
 岡 本 博 行(市教委)
 梶 山 孝 雄(教育大・附中)
 黒 川   稔(汐路中)
 黒 宮 直 子(南光中)
 児 島 興 治(干種台中)
 小 柳 一 達(南陽中)
 斉 藤 洋 子(菊井中)
O篠 辺 孝 雄(円上中)
 佐 藤   敬(山田中)
 高 岡 弘 之(南光中)
 竹 田   巌(あずま中)
 野 田 和 義(若水中) 
 早 瀬 憲 一(本城中)
 福 井 貞 雄(丸の内中)
 藤 田 真寿美(守山中)
 牧 野   司(菊井申)
 松 山 勇 夫(守山中)
 山 田 明 夫(守山中)
 山 本 晴 夫(港北中)
 浅 井 俊 宏(御劔小)
 岩 崎 浩 樹(荒子小・分)
O宇佐美 幸男(御劔小)
 木 平 絹 子(白沢小)
 久 保 禎 子(山田小)
 久 米 稔 彦(西養護)
 栗 本 靖 久(一宮千秋小)
 後 藤 和 子(中川小)
 後 藤 茂 男(常磐小)
 後 藤 昌 司(船方小)
 小 山 剛 司(中川小)
O近 藤   章(二城小)
 清 水 稼 吉(常磐小)
 柴 山 貴美子(蓬来小) 
 杉 江 孝 子(山田小)
 鈴 木 和 人(光城小)
 鈴 木 千 鶴(山田小)
 鰥 和 元 美(植田小)
 高 橋 敏 明(長根台小)
 滝   良 恵(星ヶ丘小)
 武 田 清 次(愛知小)
 竹 本 啓 子(豊岡小)
 築 山   潔(高見小)
 永 井 正 昭(明正小)
 長 坂 啓 夫(成章小)
 中 村 光 男(比良小)
 中 村 元 彦(矢田小)
 中 村 泰 夫(御器所小)
 丹 羽 鉄 雄(小碓小)
 長谷川 正 代(白金小)
 服 部   裕(柳小)
 林    甫(稲沢下津小)
 樋 口 俊 雄(豊臣小)
 舟 橋 裕 子(稲西小)
 山 本 静 夫(ナイジェリア日本
  人学校)
 横 地 鈴 也(教育大・附小) 

   【編著者紹介】
 中沢 政雄  国語教育科学研究所長
 明治40年群馬県に生まれる.小・中・高校教諭,東京都
 指導主事,中学校長等を歴任.著書に「機能的国語數
 育」「機能的作文指導」「国語教育近代化の理論と実践」
 「国語科の発問」「国語科読解の学習技術」などがある.
 現在国語教育科学研究所,国語教育科学研究会主宰,月
 刊「国語教育科学」「国語情報」を編集発行.

実践国語科教育工学入門
*検印省略  著 者 中 沢 政 雄
        発行者 藤 原 政 雄
        印刷所 長野印刷商工株式会社

        発行所  明治図書出版株式会社
          東京都中央区入船3―3―11 (〒104)
1975年10月初版発行   振替東京151318電話03(551)8266

          (分)3337(製)3 336 02(出)8308