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                     国語科授業の新展開 4



                        小学校

                  基本的文法事項の指導









                       中沢政雄著








                        明治図書

                                                        1

   は し が き


 戦後「文法ブーム」と言われるほど、文法・文法指導研究の盛んな一時期があった。昭和三十年前後だったと思う。
当時は「機能文法の機能的指導」ということが提唱されて、にぎやかに論議されていた。それは、戦前、文法の体系
的知識を教えていて、何ら怪しむことのなかったわたしにとっては、まったく革新的で、まさに青天のへきれきとも
言うべきものであった。
 それ以来二十余年、文法指導のあり方や進め方に思いをひそめ続けてきた。が、その間現場では、国語教科書に断
片的に提出される文法教材による文法知識の指導をして、わずかにその命脈を保っていたというのが、実情であった。
 ところが。新学習指導要領国語が編成されで。国語科教育を言語の教育として見直すべきことが強調されると、文
法指導もまた、再び現場の問題として大きく取り上げられるようになった。
 そこで、戦後到達した文法指導研究の成果をもとにして、さらにそのあり方、その目標、その内容、その方法、児
童の文法能力の発達などの観点から検討を加え、新文法指導システムを編成して世に問うことにした。
 ここに編成した新文法指導システムは、戦後の文法指導の歴史を踏まえ。
 @ 児童の文法力の発達(認識・思考の発達)に応じて発達的、段階的に指導する。
 A 文法知識の教授ではなく、ことばの用法。学習基本文型の指導を中心として、文法感覚・文法能力を養成する。
 B その立場から、基本的文法事項を精選して、文法指導内容の新しいシステムを編成する。
 C 表現学習・理解学習を通して機会的、機能的に指導する方法と、シミュレーションによる系統的、段階的に指
  導する方法とをシステム化する。
 D 言語教育の一環として、文法感覚をみがき、文法意識を高め、言語感覚・言語意識を養う。
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を原則とし、原理として編成した。それは、長年心に描いていたわたしの科学的な新文法指導の実践体系でもある。
本書では、その実践体系を、具体的に詳細に示すことができたと、あえて自負している。文法指導に関心を持つおお
かたのご批判を仰ぎたい。
 ところで、一般に現場の問題になるのは、文法指導のあり方よりも、むしろ具体的な指導法である。そこで、「読
解における新文法学習の実践」「作文における新文法学習の実践」の機会的、機能的方法と、「シミュレーションに
よる新文法学習の実践」の系統的、段階的方法とをシステム化して示した。その実践指導は、すべて文法事実・文法
教材をあげて、科学的、具体的に、しかも詳細に述べてあるから、いつでも、だれでも実践できる普遍性をもってい
る。どれも、現場の実験を重ねたものばかりである。特にシミュレーションによる文法指導は、文法知識の形式的な
指導に流れるのを防ぐためにくふうした、新しい文法指導法である。どうか、実践してみて、ご批判をいただきたい
と切に思う。
 終わりに、長い間実験指導にご協力くださった国語教育科学研究会の会員のみなさん、とりわけいい実践例を提供
していただいた金子伸子、斎藤文、高沢知恵、堀口由美、大竹有喜子、二村陽子のみなさんに厚くお礼申し上げたい。
また、本書の出版に当たっては、明治図書の江部満・間瀬季夫のおふたりに格別お世話になった。記して感謝の意を
表したい。
 なお、いちいち書き添えなかったが、この新文法指導システムを編成するに当たっては、與水実先生のお考えに負
うところが多かった。まことに小著ながら、先生に捧げで心からお礼を申し上げたい。

    一九七九年七月五日
                                            中 沢 政 雄

                                                        3

   目   次


 はしがき

I 新文法指導はどう考えたらいいか
   一 文法指導を新しい目で見直す ……………………………………9
   二 読解のための文法か読解における文法か………………………11
   三 体系文法の系統的指導か機能文法の機能的指導か……………15
   四 表現文法としての用法と学習基本文型…………………………18
   五 文法指導の目標――論理的思考か文法感覚、
     文法意識か…………………………………………………………22

U 新文法指導の原則は何か
   一 文法指導とは何か…………………………………………………24
    1 文法事実…………………………………………………………24
    2 文法感覚…………………………………………………………24
                                                        4
    3 文法意識…………………………………………………………25
    4 文法知識――文法体系…………………………………………26
    5 文法力――文法技能……………………………………………26
  二 文法指導の原則は何か………………………………………………27

V 新文法指導の内容は何か
  一 新文法指導の内容の精選……………………………………………30
    1 基本的文法事項の精選…………………………………………30
    2 新文法指導の内容――基本的文法事項………………………34
  二 新文法指導の内容のシステム………………………………………36
    1 理解における文法学習の内容とそのシステム………………36
    2 表現における文法学習の内容とそのシステム………………40
    3 各学年内容の指導の重点………………………………………45

W 新文法指導の方法とそのシステム
  一 機能的文法の機能的指導の考え方…………………………………49
  二 読解における新文法指導の方法……………………………………51
                                                        5
    1 読解における文法事実と文法事項の選択……………………51
    2 読解における新文法指導法の開発……………………………54
    3 読解における文法の学習指導過程モデル……………………63
  三 作文における新文法指導の方法……………………………………64
    1 作文における新文法指導の考え方……………………………64
    2 作文における文法事実・文法事項の選択……………………66
    3 作文における新文法指導法の開発……………………………70
    4 作文における文法学習の機会と新文法学習の指導過程……75
  四 シミュレーションによる新文法指導の方法………………………79
    1 シミュレーションとは何か……………………………………79
    2 シミュレーションのモデル指導過程…………………………80
    3 シミュレーションによる文法学習法、指導法………………81

V 読解における新文法学習の実践
  一 主語・述語の照応に注意して読む指導……………………………82
    1 「くじらぐも(なかがわりえこ)」のなかで………………84
    2 「じどう車のなかま(説明文)」のなかで…………………86
                                                        6
  二 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係を明
    確にして読む指導……………………………………………………88
    1 「人間とチンパンジー(説明文)」のなかで………………89
    2 「人間とチンパンジー(説明文)」のなかで………………91
  三 文と文との接続の関係に注意して読む指導………………………94
    1 「深海にすむ魚(説明文)」のなかで………………………95
  四 文や文章の中の指示語の機能に注意して読む指導………………97
    1 「このびん」「そのびん」の指導……………………………97
    2 指示語の指示する事柄・範囲を限定する指導………………99
    3 様態を指示する指示語の指導 ………………………………102
  五 文の中の並立語の機能に注意して読む指導 ……………………105
    1 「一つの花(今西祐行)」のなかで ………………………106
    2 「くぬぎの木(平塚武二)」のなかで ……………………109
    3 並立語「たり たり」の指導法 ……………………………111
  六 読解学習を通して段落の構成を理解する指導 …………………112
    1 段落の構成はどうなっているか ……………………………112
    2 段落の構成を理解する学習の指導法 ………………………114
                                                        7
Y 作文における新文法学習の実践
  一 基本文型によって話す・書く学習の指導 ………………………121
  二 接続語を使って文と文とを続ける学習の指導 …………………125

Z シミュレーションによる新文法学習の実践

  一 学習基本文型の指導法 ……………………………………………130
  二 接読語の系統的指導法 ……………………………………………135
  三 修飾語の系統的指導法 ……………………………………………139
    (一) 修飾語の働きと修飾語の用法の指導法 …………………139
    (二) 連体修飾語の指導法 ………………………………………144
    (三) だんだんくわしくする修飾語の指導法 …………………148
  四 指示語の系統的指導法 ……………………………………………152
  五 文の構成を理解する学習の指導法 ………………………………158
  六 長い文における主語・述語の照応感覚を育て
    る指導法 ……………………………………………………………167

                                                        9
  I 新文法指導はどう考えたらいいか




     一 文法指導を新しい目で見直す

 新学習指導要領は「従来の国語科教育は、読解や作文を通して、内容の理解・内容の認識に重点をおく傾向があっ
た。これからの国語科教育は、内容の理解・認識よりも、どんなことばで、どのように表現されているか、どんなこと
ばを、どのように使って表現するかについての学習に重点をおく。つまり、国語科教育を言語の教育として見直す。」
という立場で編成されたと言われている。
 そのために、これまで「ことばに関する事項」としてあげてきた「発音・文字・語い・文法・表記・その他」を、
新しく「言語事項」として規定した。そのうえで、国語科の内容の組織を「言語事項・表現・理解」というように、
「言語事項」を初めにもってきた。これは、言語事項指導重視の具体的な現れだとも考えられている。
 確かに、国語科教育が内容そのものの教育に向かうのは適切ではないが、内容の理解・表現を通しての言語能力、
言語事項の学習を重視するのは当然のことである。
 ところで、言語事項の指導をもっと重視しろといっても、学習指導要領は、その性格上、言語事項指導の内容を、
基準としで提示するだけで、言語をどう考え、どう指導するか、どのように重視するかなどについては、すべて現場
の自由に任されている。しかし、この言語事項の記述の仕方を細かに見ると、言語・言語指導をどう考えでいるかを
                                                        10
推定することはできる。
 いずれにしても、この言語をどう見るか、言語の見方・考え方を確立しておかないと、その指導の考え方も、方法
も出てこないし、その改善進歩の道も開かれない。したがって、言語事項重視の掛け声だけに終わってしまったり、
あらぬ方向にもっていったりする恐れがないとは言えない。
 この言語の考え方について、輿水実氏は、『小・中「言語事項」の実践的検討』のはしがきで、「現代は言語の問
題が、コミュニケーションの問題として重大な間題と考えられるようになった。」「言語事項に重きをおき、言語中心
に考える場合は、どうしても『言語コミュニケーション』の考え方が必要である。」と述べている。ことばを機能と考
える立場である。
 というわけで、現代は、言語事項の中の文法事項の指導――文法指導もまた、新しい立場に立って、その考え方、
その指導法を考え直し、改めていく必要に迫られている。
 このことばを機能と見る、言語機能観に立って、ことばの一面を、コミュニケーションの機能としてとらえ、こと
ばを通してお互いに意志を通じ合ったり、ことばを通して感覚・感情を表現することによって、自己を理解したりす
る。それは、とりもなおさず表現と理解のかかわり合いであり、通じ合いである。とすれば、表現・理解相互の間に
支障や矛盾や衝突のないことが望まれる。
 そのためには、すでに長い間かかって作り上げられた国民的・社会的習慣としての「ことばの用法」「表現のパタ
ーン(文型)」が形成されている。この用法・文型をささえ、規定している法則性が、いわゆる「文法」である。
 してみると、このことばの用法・文型を、コミュニケーションの基礎的事項・基礎技能と考えることが重要になっ
てくる。また、この用法・文法に従った表現は、当然無理なく理解される可能性をもっているし、相互に正しく通じ
合える、理解し合えるという信頼性をもつ。その上に初めて言語コミュニケーションは成り立つものと考えられる。
 このように、言語によるコミュニケーションは、真実を正確に伝える、それを信頼して受け入れるという人間関係
                                                        11
の間に成り立つものであり、それをささえ、保証する基礎的事項の一つが、ことばの用法であり、文法である。
 また、いっぽうコミュニケーションの立場では、正しく適切にということとともに、効果的にということが望まれ
る。つまり、どんなことばを選んで、どのように表現すれば、効果的に伝えられるか、表現効果の点からも工夫され
る。しかし、これは文法の問題ではなく、レトリック(修辞法)の問題として考えるべきものである。
 たとえば「雨が降ってきましたよ。」「遅れるから急いで行きなさい。」を、強調して、より効果的に表現するために
は、「降ってきましたよ、雨が。」「急いで行きなさい、遅れるから。」と、いわゆる倒置法を用いるのもその一つであ
る。そのほか、比喩法、漸層法、反復法、その他さまざまな方法があるが、これらはすべて修辞法の問題として、文
法とは区別して考える。
 要するに、これからの新しい文法指導は、これまでたどってきた文法指導に、新しい光をあて、新しい目で見直し
て、その改善・進歩を図るべきであろうと思う。以下その麼史のあとをたどりながら考察を加えていきたい。


     二 読解のための文法か読解における文法か


 昭和二六年度の学習指導要領国語が出てから、文法指導の研究が盛んに行われて、いわゆる「文法ブーム」を生ん
だのは、昭和三〇年ごろから数年の間であった。たくさんの文法指導の記録や、文法指導の研究書や文法講座などが
発表され、刊行されてにぎやかであった。
 そのころ、現場の文法指導で大きく取り上げられた問題の一つに「読解のための文法か」「読解における文法か」
ということがあった。新学習指導要領国語でも、小学校では「A及びBの指導を通して、次の言語に関する事項につ
いて指導する。(筆者注、Aは表現、Bは理解)」とあるが、中学校では、「表現と理解に役立てるため、次の事項に
ついて指導する。(「次の事項」は言語事項)」となっている。前者は、「読解における文法学習」の立場をとり、後者
                                                        12
は、「読解のための文法」の立場をとっているものと思われる。
 当時すでに、文法知識――形式文法と、読解を正しく深くすること、文章を正しく書くこととは、相関関係がきわ
めて低いことが紹介されていた。つまり、文法知識をどんなに体系的に理解していても、それで文章の内容が、正確
に深く理解できるものでもないし、文章が正しく書けるようになるものでもない。このことは、ふだんの読解学習や
作文学習を通しても、明らかに証明されている。
 であるから、読解を正しくし、深くするために文法を役だてると考えるよりは、読解をより正しくし、より深くす
る過程で、ことばの意味や働き、ことばとことばの続き方、文と文との係り受けの状況、あるいは、段落の組立、段
落相互の関係、つまり、文章構成などを理解し、そこに働いている法則性を、感覚的、意識的に押さえて、文法感覚
を育て、文法意識に培うほうが、より本質的であり、より実践的であると考えられる。
 このように、読解学習を通して、文法事実を押さえ、そこに働いている法則性を、文法感覚として受け止め、それ
を意識化して、文法意識を高める学習が、「読解における文法学習」であり、読解を通して行う文法学習である。し
たがって、この文法学習を過程的に押さえてみると、@文法事実を押さえる。Aその意味・機能を考える。Bそこに
ある法則性に気づく。C文法感覚に培う。D文法意識をもつ。という過程をたどることになる。
 もともと読解活動は、表現面、文章面から直接意味を読みとって理解する活動である。それは本来心理的なもの、
生理的なもの、内面的なものであって、過去に積み重ねた知識や経験などの助けによって行われる。過去における言
語経験、言語学習によって磨かれた言語感覚・文法感覚が、意識化されないままに、内面的に理解を助けている。が
一見眠っているかに見える言語感覚、文法感覚も、いったん誤っている文、筋の通らない文、理解しにくい文などに
出会うと、たちまち頭を持ち上げて、違和感・不快感・不審感などをいだかせる。誤っている、わかりにくいという
自覚はそこから生まれる。
 では。文章を読んでいる間に。このような文法感覚が働いて、文法的自覚が高められ、文法意識が引き起こされる
のは。どんな場合であろうか、次にそのおもなものをあげてみる。
                                                        13
 1 理解が困難な場合
@ 文が長かったり、組立が複雑だったりして、文脈がつかみにくい文
   例 Oわたしは、山の木こりが、山の木を切っているうちに、こういうやまどりのすを見つけては、自分の着
      ているはんてんで、親鳥をかぶせてつかまえてしまうことを思い出した。(やまどりのおかあさん)
A 文脈が乱れていて主語・述語の照応していない文
   例 O見なれない人の目には、海の水は、まるで生きているもののような気がすると言います。(夏の小半日)
     Oわたしとすみこちゃんで、そのおばさんのたんぼへいきました。(たにしとり)
G まだ感覚化されない新しい文脈の文(並立語をふくむ文)
                                            oo    oo
   例 Oこんなさむいふゆのよるだというのに、みんな、とてもたのしそうに、うたをうたったり、ふざけたり
      していました。(ゆめのきしや)
                            oo        oo
     Oじんべいさんは、しばらく、じぶんの目をこすったり、あたまをたたいたりしていました。
 2 理解があいまいになる場合
@ ことばの係り受けの関係で一つの文の意味がいく通りにもとれる文(連体修飾語・連用修飾語をふくむ文)
           oooo
   例 Oすなの上にきれいなさざなみのようなもようが現れた。(夏の小半日)
      ooooo
     Oあしたの朝見学に行くかどうかを、おかあさんとそうだんしてからもうしこみます。
A ことばの係り受けの関係で、意味を取りちがえやすい文(「……ように……ない。」の文型)
                    、、、                oo
   例 Oやまどりは、ほかの小鳥たちのように、あわてて飛び立つようなことはしない。(やまどりのおかあさ
      ん)
 3 理解がじゅうぶんにできない場合
@ 指示語のさすものがとらえにくい文
                                             oo
   例 Oちかづいてよく見るとすから出てくるありは、小さな土のかたまりをくわえています。その土をすてる
                                                        14
                          oo
     とまたいそいで、すの中にもどっていきます。これは、すを大きくしているのです。(ありのせかい)
                         oo
     Oさいしょのしごとは、トンネル作りです。そのトンネルをとおって、地上に出るのです。それがおわる
     と、す作りやえささがしです。(ありのせかい)
                                            oo
     Oまた。あみとすまいとをうまく組み合わせて作るくももいます。くさぐものなかまがそれです。
A 助詞の微妙な意味がとらえにくい文
               o o                         o
   例 Oじょろうぐもは、昼も夜も、あみのまん中にいて……。 Oあみを自分のすまいにも、えものをとる道
        o             o
      具にもしています。 O百本あまりもの糸を出すくだがあります。 Oくもの糸はかいこのまゆからと
            o                      o
      るきぬ糸よりも細くて強い。 O遠くはなれた島へとぶことさえもあります。(以上くものあみ)
          o
      〇一時間もするとでき上がります。
B 微妙な気持ちを表す終助詞を含む文
              o                        o
   例 〇「おもしろいくつね。はけるかしら。」 〇「まあ、軽い。とっても軽いわ。」 〇「これ、ぽっくりみた
         o                  o                    o
      いな音ね。」 〇「あなたは日本人ではありませんか。」 〇「このぽっくりをはかせてみるのですよ。」
                       o                  oo
     〇「もうすぐ、われわれは消えうせますぞ。」 〇「やーい、おじさーん、帰ったよー。」 〇「これでぼく
                        o                  o
      のぼうしだということは、すぐわかるのさ。」 〇「え? だれが乗っでいるんですか?」 〇「たのみ
             oo               o              o
      がいのない人だなあ。」 〇「そいつばかりは、だめだね…。」 O「ああ、なるほど……ね。」(学図三上)
 以上のように、意味が正しく読みとれなかったり、意味をとりちがえたり、つまずきを起こしたりするときが、そ
れを正しく理解しようとして、言語感覚、文法感覚、文法意識が引き起こされ、育てられ高められるときであろうと
思う。こういう時こそ読解の過程で文法指導をする最もいい機会である。しかも、こういう文法学習の対象・機会は
想像以上に多いものである。それらをあらかじめ調べて、計画的、系統的。段階的に指導できるようにする必要があ
ると思う。
 ところで、前記のような機会をとらえて指導できる内容は、次の通りである。
                                                        15
@ 助詞、助動詞、接続詞、副詞、こそあどことばなどの用法に対する理解と感覚・意識
A 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、並立の関係、独立の関係など構文に対する理解と感覚・意識
 このほか、段落意識を育てたり、段落構成についての法則性を理解させたり、また、段落相互の関係を明らかにし
て、文章構成の法則性を押さえて理解させたりする学習も、この読解を正しくしたり、深めたりする過程で学習する
ことが可能であり、有効であると考えられる。
 たとえば、段落構成の法則性は、段落の話題とその説明・解説との関係、段落の要点と細部との関係(抽象と具体
との関係、総括と個との関係。全体と分節との関係、また、抽象・総括・全体などの段落内での位置関係)などを読
解し、その関係を表示することなどを通して、読解を正しくし、深めていく過程で効果的に学習することが可能であ
る。
 また、文章構成法についても、段落相互の関係(段落の起こす・受ける・広げる・並べる・まとめるなどの形式的
機能と、課題、話題、事例・引例、説明・解説、要旨・意図などの内容的機能とにもとづく構成)を押さえ、そこに
示される法則性を、読解学習を正確にし、論理的にしていく過程で理解させることもじゅうぶんに可能である。
 要するに、小学校での文法学習の有効な一つの方法として、文章を理解する過程で、文法感覚を育て、文法意識を
高めていくことは、小学校における文法学習の目標に迫るきわめて適切な、本質的な考え方であり方法であることを
確認したい。


  三 体系文法の系統的指導か機能文法の機能的指導か


 戦前の文法指導については、中学校では文部省の『中等文法口語編』その他の文法教科書を使って体系文法を系統
的に指導していた。それはそのまま戦後にも持ち越されて、主として中学校では体系文法の指導が強調されていた。
                                                        16
 ところが、『昭和二六年度試案学習指導要領国語科編』が出されて「機能文法の機能的指導」ということが言われ
出した。小学校でも、文法を体系や知識として、言語活動から孤立させで学習させるべきでなく、国語を正しく効果
的に使いこなすために、文法的事実を児童に自覚させてやる指導が主となるべきであると考えられるようになった。
 本来、児童は国語を無意識に使っている場合でも、ある程度文法上の規制に準じているものである。それを自覚さ
せ意識化させて、国語を正しく効果的に使いこなせるように導くことが文法指導のおもなねらいである。そのために
文法指導は特に話すこと、書くことの学習指導に有機的に取り入れることの必要性が説かれた。
 このことは、表現(話す、書く)における文法指導のあり方と方法を示唆しており、当時その研究も進められた。
特に遠藤嘉基博士の試案の発表もあったが、一般化するまでにはいたらなかった。しかし、言語の用法の指導が見直
され、強調されている現在では、表現における文法の指導としては、最も本質的な実践的な考え方であると言える。
 ところで、機能文法というのは、われわれの日常の話し方や文章の書き表し方の中に生き生きと働いている法則で、
その法則のことばによる具体的な現れ、つまり文が、文法事実である。ところが、この文法事実は、経験的、感覚的
に文法に従っているものであるから、必ずしも文法的に正しいものばかりではない。じゅうぶん熟していないものも
あるし、誤っているものもある。
 そこで、実際の話や作文の中から、話し誤り、書き誤り、不適当な表現を抽出し、それを正しく話し、正しく書け
るように指導する。それが機能文法の機能的指導である。前に述べた読解における文法指導の中にも、機能文法の機
能的指導に当たるものが含まれている。
 もちろん、機能文法の機能的指導は、その指導の対象を児童の具体的な話や文章の中に求めなければならないから、
勢い出たとこ勝負で機会的になりやすい。それを防ぐためには、あらかじめ、児童の実際の話や作文の中から、話し
誤り・書き誤りの文、不適当な表現の文などを抽出する。それを分類整理して、系統的、段階的に各学年に応じた指
導ができるように計画する必要がある。次にその一例をあげてみる。
 @ 主語の重なっている文(ぼくはうちへかえってぼくは本をよみました。)
                                                        17
 A 述語の重なっている文(はじめは地下鉄に乗ってしゅうてんまで乗りました。)
 B 主語・述語の照応しない文(わたしの学校はことしで五十周年大運動会でした。)
 C 助詞の使い方を誤っている文(ぼくとはやしくんでいきました。)
 D 助詞・助動詞の使い方を誤っている文(次の日の朝お毋さんにつれて八幡様でおまいりをしました。)
 E 並立語の使い方を誤っている文(本を読んだりテレビを見ていました。)
 F 接続語の使い方の適切でない文(中央公園にいきました。まだくらくて月が出ていました。だけどまだくらく
   てもがまんをして走りました。)
 G 修飾語の使い方の適切でない文(赤い大きいチューリップの花がさきました。)
 H ことばの係り受けの誤っている文(雨が降ってくれば、みんな教室へはいりました。)
 I 文の係り受けの関係が適切でない文(次は、花ふだをやりました。こんどは、ぼくが負けました。また、花ふ
   だをやって、こんどはぼくが勝ちました。)
 J 文が長すぎて意味のわかりにくい文(それで王子のほうに行ったらおじいちゃんが道を知らないので。おとう
   さんが「左です。」といって、おじいちゃんは左にまがって十分ぐらいいくと、新荒川大橋が見えてわたりまし
   た。)
 K 敬語の使い方の正しくない文(校長先生がきて「お早よう。」と言ったのでみんな「お早よう。」と言いました。)
 L 段落に区切ってない文章。段落の区切り方が適切でない文章
 M 文章の組立が適当でない文章
 以上、児童の作文から、語句の用法上問題のあるもの、文の組立上問題のあるもの、文と文との係り受けの関係に
問題のあるもの、段落の組立に問題のあるもの、文章の組立に問題のあるものを取り出して例をあげてみた。これは
ほんのわずかの例であるが、各学年で指導する文法事項と照合して適切な文例を選んで、系統的、段階的に配列する
と、機能文法の機能的指導の計画が立てられる。
                                                        18
 このように児童のことばの誤用の類型を求め、それを正すことを通して(「誤用の文法」とも言う)正しいことばの
用法を身につけるとともに、ことばの正しい用法、文型に対する感覚、つまり、文法感覚を育て、文法意識を高める
ことができる。この考え方、方法は、だれでも考えられる、だれでもできる、表現における文法指導の方法である。


     四 表現文法としての用法と学習基本文型


 文法学習は、初め読解における文法学習から始まったが、しだいに最も本質的な、作文学習における文法学習へと
発展していった。それは、前に述べたように。小学校の文法指導は、文法知識の指導ではなく、ことばの使い方。用
法の学習であるべきだという考え方が、しだいに力を得てきたからである。
 昭和二六年度の学習指導要領で「文法の指導は特に話すことと書くことの学習指導に有機的に取り入れることが必
要である。」と述べているのは。まことに正鵠を得ていると思う。以後の学習指導要領もみなこの考え方を踏襲してい
る。
 とにかく、児童は日常話したり、書いたりする場合には、別段文法知識に頼ることはない。すでに模倣によって、
あるいは学習によって、感覚的に身につけていることばの使い方、用法にもとづいて、話したり書いたりしている。
それで、社会的に決まっていることばの使い方、用法に従っているし、文法にかなっている。
 もし、このことばの使い方・用法が。感覚的に正しく身についていないと、前にあげた児童の文例のような、誤っ
た文、不適当な文を書くことになる。そこで、それらの誤りを正し、適当な文に書き直して、文法に従った正しいこ
とばの使い方ができるように指導する。その指導を通して、文法感覚・文法意識を育てることは、「機能文法の機能
的指導」の項に詳しく述べた。
 しかし、それはことばの用法指導の、本質的ではあるが、消極的な方法である。実際に児童が経験的に、感覚的に
                                                        19
ことばの用法を身につけることに任せないで、積極的に正しいことばの用法を学習させる必要がある。つまり、こと
ばの用法を、積極的、計画的に、段階的、系統的に学習させることを考えるべきであろう。
 ところで、この指導すべきことばの使い方・用法をささえる文法の、具体化、パターン化したものが、いわゆる
「文型」であり、文法事実である。したがって、表現における文法学習の積極的な方法は、文型、基本文型の学習か
ら入るのが適当である。
 筆者は、昭和三三年発行の『国語講座5 文法の理論と教育』(朝倉書店)の「文法教育の体系と方法(小学校)」
で「学習基本文型」による文法学習を提唱した。その中で、「学習基本文型」というのは、
 1 ある場面で、あることがらを表現する場合。一般的に用いられる文
 2 正しいことばのきまりに従って構成されている文
 3 構造の上でも基本的な文であり、その使用範囲、使用頻度の上でも基本的な文、言い換えれば。構造的にも、
  社会的にも基本的な型の文
であると規定し、この学習基本文型の学習を通して、
 1 「正しい言語感覚」を育て「正しい表現・理解の基礎」を養う。
 2 「ことばの機能」「ことばの用法」を理解し、ことばに対する「関心・意識」を高める。
 3 ことばに対する知識・理解を深める。
とし、その文法指導の体系を提示した。この学習基本文型は、一年から六年までの作文から採集し、それを発達段階
的に整理したものである。
 ここで「文型」についてもう少し言ってみると、それは。何かをことばによって表現しようとするとき、その何か
を限定し、規制する言語表現(言い表し方、ことばの用法)の一般形式である。したがってこの表現の型は、次の点
によって規定される。(前掲論文二七三ページ)
 1 言語活動の場(話し手と聞き手、書き手と読み手の関係、言語表現の対象など)―尊敬体、ていねい体など
                                                        20
 2 話し手、書き手の意図――命令、疑問、誘い……など
 3 言語表現に対する社会的習慣(ことばのきまり)――ことばの切れ続き、係り受けなど文の一般的な構造
 たとえば、遅刻した児童に先生が注意をする。
  「君はまた遅刻したの。もう、あしたからは、決して遅刻してはいけませんよ。わかったね。」
 このような言い方は、遅刻したという事実、先生と児童との関係、注意しようとする先生の意図。さらに社会的な
言語習慣(文法)によって、自然このような文章構成になったわけである。終助詞の「の」「よし」「ね」は、おの
ずから先生の意図と心情を表しているし、修飾語「もう」「あしたからは」「決して」なども、おのずから決められ
た位置を占めて、その機能をじゅうぶんに発揮している。
 もし、この場合、先生の意図が、もっと強く注意してやろうというのであれば、
  「君だめではないか、また遅刻などして。こんど遅刻したら教室へ入れないぞ。」
 こんな言い方をするかも知れない。終助詞が「ぞ」になったり、倒置法(これは修辞法の問題)が使われたりして
話し手の意図がはっきりと強く現れてくる。そして、このようなことばの使い方・用法は、社会的な習慣として、あ
る場合の、ある意志の表し方として、感覚的に身についているものである。
 前の文章は、「君はまた遅刻したの」「もう、あしたからは、決して遅刻してはいけませんよ」「わかったね」の
三つの文で組み立てられている。このような個々の文を集めて分類整理してみると、いくつかの基本的な型のあるこ
とがわかる。それが基本文型である。たとえば、小学校一年生の二学期の文章表現についてみると、次のようにな
る。
 一年生の大部分は、自分が経験したことを中心にして文を書く。したがって、そこに用いられる文は、経験を表現
するのに適当な文型である。しかもその中には、共通的に広く、しばしば用いられる文型がある。そのような文型
が一年生の二学期までに指導すべき「学習基本文型」である。次に一年生の経験を書いた作文から、延ベ一七二例の
文をとって、使用頻度の高いものから順に、おもな文型をあげてみる。
                                                        21


頻度
(%)
文           型               
 1 26
(15)
「きのう、みさおさんとひろこさんとわたしとままごとをしました。」〔一般に「きのう、○○と
○○と、○○を○○ました」という型〕 
 2 21
(12)
「ぼくはがまんしました。」〔一般に「○○は(が、も)○○ました」という型〕 
 3 19
(11)
「すぐやめました。」〔一般に「修飾語十〇〇〇ました」という型〕 
 4 15
(9)
「そしてそとであそびました。」〔一般に「そして、○○で(へ、に、と)○○ました」という型〕 
 5 12
(7)
「ぼくはそとへでました。」〔一般に「○○は(が)○○へ(に、と、で)○○ました」の型〕 
 6 8
(5)
「おかあさんが『だめよ。』といいました。」〔一般に「○○が『○○』といいました」の型〕 
 7 8
(5)
「はなこさんがなわとびをしました。」〔一般に「○○が(は)○○を○○ました」の型〕 
 8 8
(5)
「こうえんであそびました。」〔一般に「○○で(を、から、と、に)○○ました」の型〕 

 以上八つの文型だけで、全体の六八%を占めている。この八つの文型は少なくとも一年生二学期の初めにおける経
験表現の最も基本的な文型と考えてよいと思う。
 このような文型は、児童の認識力、思考力の発達に応じて発達するが、基本的には、大きく分けると、@行動認識
 (思考)の基本文型――「風が吹く」「本を読む」など、A状態認識(思考)の基本文型――「心がやさしい」「雨
が降っている」など。B存在認識(思考)の基本文型――「犬がいる」 「机がある」など。C心情認識(思考)の基
本文型――「いやだと思う」「とてもうれしい」など、D事実認識の基本文型――「くもは昆虫です」など五つの型
になる。また、それぞれの型の中で、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、指示・被指示の関係、接続の関係、
並立の関係、独立の関係など、構文の法則性に従って、具体的に組み立てられた文型が押さえられる。
                                                        22
 また、指示語使用の発達、接続語使用の発達、修飾語使用の発達、助詞使用の発達、ですます型・でしたました型
・行くする型・だである型の使用の発達、単文・重文・複文の発達なども、それぞれ押さえることができる。
 要するに、こうした学習基本文型を、系統的、発達的に指導し、表現理解の基礎としての文型感覚・文型意識(し
たがって文法感覚、文法意識)を、理解学習、表現学習を通して、じゅうぶんに育成することができる。


     五 文法指導の目標――論理的思考か文法感覚、文法意識か


 言語の教育の目標は、昭和四三年度の学習指導要領国語に「国語に対する関心を深め、言語感覚を養い、国語を愛
護する態度を育てる。」とあり、それが、新学習指導要領では「国語に対する関心を深め、言語感覚を養い、国語を尊
重する態度を育てる。」となっている。「国語を愛護する態度」が「国語を尊重する態度」に変わっただけで、他は同
じになっている。
 そこで、文法指導の目標も、当然この目標に通じるものでなくてはならない。これまで、文法は国語におけるただ
一つの科学であるとし、文法指導によって、科学的思考を育てることを説いた文法学者もいた。今でも、文法指導を
通して、「子どもの考える力を論理的なものに育てる」ことを主張している向きもある。
 確かに、語や文や文章を構成する法則性、文法は論理である。しかし、実際のことばの使い方、言語使用は、論理
的であるより、はるかに感覚的であり、心理的であり、生理的である。また、場のゲシタルトに左右されるもの、支
配されるものである。
 「残雪が残っている」「全部網羅されている」「大きく大別すると……」「朝の朝会」「一泊どまり」「乗り降り
お早く」などの言語使用は、論理的であるより、心理的であり、感覚的である。かつて、国鉄では、「乗り降り」を
不合理とし、「降り乗り」という合理的・論理的な呼び方をすすめたが、ついに定着しなかった。「何にする。」「ぼ
                                                        23
くはてんどんだ。」式の話しことばは全く非論理的で、場の論理を離れては、コミュニケーションの用をなさない。
 文法は、内容の表現・理解を離れて全く論理的形式として存在するが、実際の話し・書く・聞く・読む言語活動、
言語使用では、内容の論理を離れては存在しない。
 とにかく、小学校での文法学習のねらいを、文法の体系的学習を通して、文章を読解する力、文章を正しく書く力
を伸ばして、子どもの論理的に考える力を育てるとする考えは適切ではない。児童は二、三年になれば、日常の言語
の中で、文法的事実――それを支配している法則・文法を、感覚的に習得している。意識こそしていないが、文法感
覚をもっていて、それで話したり、書いたり、聞いたり、読んだりしている。
 もちろん、文法感覚は、いわゆる文型として身につけているのであるが、必ずしも正確なものばかりではない。ま
た、確実に身についているものばかりでもない。
そこで文法学習は、読解や作文、聞く、話す学習を通して、必要な文法感覚を育てたり、それを意識化したりする
ことが、小学校の文法指導の目標であるべきことは、しばしば述べてきた通りである。それが、言語教育の目標とし
ての「国語に対する関心を深め、言語感覚を養い、国語を尊重する態度」につながるものと確信する。

 以上、新文法指導の考え方を、戦後の文法指導の問題点をたどりながら、読解のための文法か、読解における文法
か、体系文法か機能文法か、文法知識の指導か、用法指導、基本文型の指導かなどについで述べ、最後に文法指導の
目標に触れた。
 こうして、文法指導を歴史的に本質を求めて考察してみると、新文法指導は。ことばの用法の学習を中心として、
文法感覚を育て、文法意識を高めることを目がけて行うべきことは明白である。
                                                        24


  U 新文法指導の原則は何か


     一 文法指導とは何か

 1 文法事実
 「雨が降る」「涼しい風が吹く」という文は、主語・述語の関係によって、また、修飾・被修飾の関係によって組
み立てられている。そして、原則として、述語は主語のあとに、修飾語は被修飾語の前に立つという法則に支配され
ている。それは、「何がどうする」「どんな何がどうする」という判断・思考の形式でもある。
 このように文の中に存在する法則が、文法であり、その法則・文法によって、規正されている文の存在がそのまま
「文法事実」である。文法指導は、この文法事実の認識から始まる。
 この文法事実を「文型」と呼んでいる。それは、ことばを使って意志を伝え合う社会、いわゆる言語社会における
共通の、一般化したパターンとして流通している。このことについては再三述べできた。

 2 文法感覚
 文型は、日常の生活の中で模倣して使っている間に、あるいは国語科の学習によって、感覚的に身につく。ある事
実、ある考えを、示したり、伝えたり、表したりする場合、いつも同じ文型を使っていると、それと異なった文型に
出会うと、違和感を覚えるようになる。何を表そうとしているのか理解がなだらかにできないで不安感を抱くように
                                                        25
なる。このように、正しい文型を正しいと感じ、正しくない文型に違和感を覚えるようになったとき、文法感覚が育
てられたと考えられる。たとえば
 @ 涼しい風が吹いてきた。 A 風が涼しい吹いてきた。 G 涼しい風に吹いてきた。
この三つの文型を読んだとき、@に適応し、ABに対して違和感を覚える。そうなったとき、@に対する文法感覚が
身についていると判断される。
 また、ある文型(例 一、二、三と、ごうれいをかけました。)に対する感覚が正しく育てられていないと、その
文型や、自分がもっている不正な文型(文法感覚 一、二、三とごうれいかけました。)によって読んだり、書いたり
するから、読み誤ったり、書き誤ったり、すらすらと読めなかったりする。
 わたしたちが、話をしたり、文章を書いたりするときに、特別に文法を意識しなくても、正しい文型で話ができ、
文が書けるのは、文法感覚に従って。ことばを使っているからである。だから、文法感覚を正しく磨いたり。いろい
ろな文型に対する感覚を増したりしておくことは、話す、書く表現の場合でも、聞く、読む理解の場合でも、たいせ
つなことである。それは、表現・理解の基礎だからである。
 ところで、読解における文法学習、作文における文法学習、読解・作文の関連学習における文法学習などを機能的
文法などと呼ぶのは、児童がすでに身につけている文法感覚を、文章理解・文章表現の過程で意識化したり、いっそ
う確かにしたり、広げたりすることである。

 3 文法意識
 文法意識は、感覚として身についている文法を、意識にのぼせて、文型を成り立たせている法則性のあることを自
覚することによって育つものである。つまり。文法意識は、文型を成り立たせている法則性の自覚によって生まれる
ものである。
 たとえば、「テレビを見たり、えをかいたりしました。」という文を読んで、テレビを見ることと、絵をかくこと
                                                        26
と、二つのことをしたことを理解する。しかも、それは時間的順序を示すものではなく、二つのことを並べ立ててい
ることを理解する。それが、「……たり、……たり」という言い方によってわかったこと、同時にそのように言う
(書く)約束になっていることを意識する。
 こうして、文法事実を規制している法則性を意識化すると同時に、その文型が感覚的に身につくようにする。もち
ろんこの法則性は、叙述されている事項の相互関係を深く理解することによって、いっそう意識化されるものである。
 なお、この「……たり、……たり」の文法感覚が育てられたかどうかは、「テレビを見たり、えをかきました。」を
読ませて、そこに、変だという違和感を感じるかどうかによって判断することができる。

 4 文法知識――文法体系
 ことばの使い方、表現の仕方をささえている法則性を抽象化して、一般的、客観的に説明したものが、文法であ
り、それについての認識の結果が文法知識である。したがって、前にも述べたように、この文法によって規制された
言語表現が、文法事実であり、文型であり、用法である。
 この文法知識の体系がいわゆる文法体系である。形式文法とか、体系文法とか呼ばれるものである。文法知識の学
習は、いろいろな語や文や文章の中にある(それをささえている)一般的法則を取り出して整理し説明して記憶す
る。それは文法的法則の認知・認識であるから、構造的、体系的でなければならない。
 そのような学習は、ことばの使い方さえもじゅうぶんにはできない、したがって文法感覚も、文法意識も確かでは
ない小学校の段階では、適切に行われるとは考えられない。

 5 文法力――文法技能
 文法を文法知識として形式的に、抽象的にとらえて、その学習を考えるよりも、文法力として、談話、作文の基礎
技能、ことばの法則的な使い方、用法としてとらえ、その学習を考えるほうが、小学校の文法指導としては、一歩進
                                                        27
んだ考え方である。
 それは、リンデの言う「母国語の正しい使用」の技能であり、話す・書く表現の基礎としての「表現文法技能」で
ある。たとえば、「主語と述語の照応した文を書く(話す)技能、接続語を使って文を続けて書く(話す)技能、要
点と細部との関係を考えて段落を組み立てる技能、イントネーション、プロミネンスの技能、ポーズ(pause)を適
切に使って話す技能」などがそれである。この文法技能は、系統的に学習させる必要がある。

     二 文法指導の原則は何か

 1 機能文法・用法・言語感覚の指導が文法指導の原点である
 小学校の文法教育に対する、ドイツの言語学者エルンスト・リンデの発言には傾聴すべきものが多い。その著『国
語教育方法論』(熊沢龍訳・リンデ言語教育論・昭一六・育英書院発行)に、次の記述がある。
 「小学校における文法授業の主要目的は、実際的な目的、すなわち母国語の正しい使用を助成することである。」
「文法授業は、即席的授業でなければならぬ。機会を逸しないようにしなければならぬ。すなわち、児童の誤れる表
現とか、標準語に対する方言的な妨害とか、語構成に現れてくる不確実とか、ある読み物、詩歌における流暢ならざ
る文の結合とか、または、児童の作文練習の時の誤りとか、これらすべてのことは、文法の時間を有効にするために
妨害となるものである。この場合に前提となるのは。教師が文法的な諸材料の総体を概観することができるというこ
と。および、教師が一定の組織を頭の中に有しているということである。」「文法は、言語についての知識を伝達すべ
きではない。その最もたいせつな任務は、言語感情を育成するという点に求むべきである。それゆえに、あらゆる概
念の説明や分類なんかは不要である。」「文法は母国語の実際的使用に役だつ、口述に役だつものである。」
 リンデのこれらの発言は「機能文法の機能的指導」「文法学習はことばの用法の学習」「文法学習の任務は文法知
                                                        28
識(形式文法)の学習ではなく、言語感覚の育成である」という、現代の文法学習のあり方を示唆している。

 2 文法の学習は、表現・理解の学習の過程で機会的に、機能的に行われる
 文法学習は、児童が身につけている、あるいはつけようとする文法感覚を、文法事実を通して確かにし、正しく
し、広げることから、それを意識化するまでの過程であると考えられる。
 しかも、それは文章の読解を正確にし、深め、広げることを通して行われる。したがって、それは(今の教科書の
読解教材では、系統的に、段階的に文法事実が提出されていないから)系統的、段階的であるより機会的な学習にな
る。だから、教師は、このような文法学習の前提となる文法事実の総体を概観し(教材研究を通して)それらを系統
立てて、段階的に学習できるようにしてやることが望まれる。これがいわゆる読解過程における文法学習である。
 作文における文法学習には二つの面がある。一つは、書いた作文の中から、文法的に誤っている事例、不適当な表
現の例を取り出して整理し、それを正しく書けるように指導し、文法感覚、文法技能を育てる。前に述べた機能文法
の機能的方法による学習の面である。
 他の一つは、文章を書くための基礎技能としての文法技能を取り出して系統的、段階的に学習する面である。
 表現学習でいわれるのは前者である。したがって機会的な学習になることは、読解の場合と同じである。が、そこ
で指導する文法技能は、すべて、児童の書いた作文の中のものであるから、文法能力の実態に即した学習ができる。

 3 文法意識・文法技能の学習は系統的、段階的に行う
 前に述べたような読解過程における文法学習、作文を書く過程で行う文法学習は、そのままでは、断片的で、しか
も機会的で。系統性や段階性を持たせにくい。そこで、具体的な内容の理解・表現の学習を離れて、文法技能を取り
出して系統的に、段階的に学習させる必要がある。文法技能は、段階的に発達するものだからである。つまり、児童
の文法能力の発達に応じることになる。
                                                        29
 たとえば、児童の談話、作文を分析してみると、文型の発達、段落の発達、文章の発達、文末の語の発達、接続詞
の発達、修飾語の発達、指示語の発達など、それぞれ段階的に押さえることができる。

 4 文法感覚は地域の言語社会の中で育つ
 いわゆる言語形成期は小学校の五、六年、一二、三歳のころまでと言われている。つまり、その地域の発音や語い
や文法などを習得して、それが固定する時期である。したがって、児童が感覚として身につけている文法は、方言文
法である。いっぽう、読解学習過程で身につける文法感覚は共通語の書きことばの文法である。
 共通語で話すことができるようになり、さらに共通語で書くことができるようになるためには、この方言文法の感
覚を、共通語でのことばの使い方、共通語の文法感覚にかえていかなければならない。そのような方言の文法感覚
を、共通語の文法感覚にまで高めていくのは、読解学習、聴解学習の過程での仕事である。
 方言地域では、改まった場で共通語を使うという機会は、非常に少ないから、共通語での話しことばの文法感覚を
育てることは容易ではない。ラジオ、テレビなどに頼ることが相当多いことであろう。勢い共通語で書かれている文
章を読解する過程で、共通語の文法感覚を育てるようになる。また、共通語の文法技術を使って文を書く過程で、共
通語の文法感覚を育てるということになる。

 5 文法感覚、文法技能はことばの働きに即して学習する
 文法学習は、ことばが具体的に生き生きと働いている、文法事実――何かについて具体的に書いてある文、あるい
は、何かについて具体的に表そうとする話や文章――を通して行う。機能的な場で機能的に学習する。抽象化した言
語形式、形式だけの文例を取り上げて学習しても、生きた文法技能の学習にはなりにくい。ある事実、現象、ある思
想を表現する文を取り扱う。「春が泣いた」という文は、形式的(文法的)には、主語・述語の照応した正しい文で
あっても、概念的、意味的には妥当ではない。こういう形式だけの文による文法学習は否定されるべきである。
                                                        30



  V 新文法指導の内容は何か



     一 新文法指導の内容の精選

 1 基本的文法事項の精選
 小学校の文法指導の考え方や方法については、かなり詳しく考察した。それは、この国の文法指導、特に戦後の文
法指導の歴史の跡をたどってみれば、これからの文法指導のあるべき姿を想定することは、すでに詳述したように、
さほど困難ではない。しかし、小学校の文法指導の内容を具体的に設定することは容易ではない。初めてその内容が
示されたのは昭和二二年度試案学習指導要領国語科編からである。それも、次のように「小学校・中学校」としてあ
げてある。(同書一四三ページ)
  小学校・中学校の国語科学習を通じ、文法については、次のようなことについて理解を深める。
 (一) 国語・ことばと文字・敬語・かなづかい
 (二) 文・文節・単語。(自立語と独立語)
 (三) 文の構造(主語と述語・修飾語、独立語)
 (四) 文節と文節との関係
 (五) 品詞分類
                                                        31
 (六) 動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の活用、動詞の種類と用法等
 これが、昭和二六年度改訂版小学校学習指導要領国語科編(試案)になると、特に文法の学習指導を独立の章節と
してあげず、「小学校で学習指導の予想される文法の内容としては、だいたい次のことが考えられる。」として
 1 国語の使い方にはきまりがあること。
 2 発音には正しいと考えられているものがあること。
 3 単語には正しいと考えられているものがあること。
 4 単語はいくつかの種類に分けられること。
 5 単語の組立にはある程度のきまりがあること。
 6 文における単語の役割はだいたいきまっていること。
 7 文を組み立てるには単語の並べ方に一定の順序があること。
 8 文を表現するときにはだいたい決まったきまり(句とう法)によること。
 9 漢字やかなの使い方にはだいたい決まった習慣があること。
 10 日常生活に使う漢字の範囲やかなづかいには、一応決められた基準があること。
の一〇項目があげてある。これは、後の「ことばに関する事項」、新学習指導要領の「言語事項」に当たるものである。
 次の昭和三三年度の学習指導要領国語は、国の基準として作られたものであるが、各学年の内容に「ことばに関す
る事項」として、発音・文字・語い・文法・文体・敬語・方言と共通語・句読点・かなづかい・おくりがな等に関す
る事項があげてある。その中から、文法に関する事項だけを取り出しでみると、次のようになる。
 三年 O語句への関心をもつこと。
    O文の中の意味の切れ目やことばのかかり方に注意すること。
 四年 O語句の組立について注意を向けること。
    O文の中の意味の切れ目やことばのかかり方にいっそう注意すること。
                                                        32
 五年 O語句には使い方のうえでいろいろな種類のあることに気づくこと。
    O文における主語・述語の関係、修飾の関係に注意し、また、文と文との接続、文章における段落相互の関
     係などにも注意を向けること。
 六年 O語句の由来などにも関心をもつこと。
    O文と文との接続、文章における段落相互の関係などに注意すること。
 これを要約してみると、@語句に関する事項 A文の構成に関する事項 B文と文との接続に関する事項 C文章
の構成に関する事項となる。これで、文法事項は右の四つの事項に分けられたが、なお、具体的な内容になると明確
さを欠いていた。これが、昭和四三年度の学習指導要領になると、「ことばに関する事項」を、言語活動別に掲げた。
そのうちの文法事項を、読むことと書くことに分けてあげてみると、次のようになる。

学年 読  む  こ  と(読解)  書  く  こ  と(作文) 
o主語と述語との照応に注意すること  o主語と述語との照応に注意すること 
o語句への関心をもつこと
o主語と述語との関係、修飾と被修飾との関係に注意する
 こと
o文と文との続き方に気づき、また、指示語や接続語の役
 割に気づくこと 
o主語と述語との関係、修飾と被修飾との関係が正確であ
 るように注意すること
o文と文との続き方について考えること
o指示語や接統語の使い方に気づくこと 
o語句への関心を増すこと
o文の中での語句のかかり方に注意すること
o文と文との接続の関係に注意すること 
o文の中で語句のかかり方をはっきりさせて正しく書くこ
 と
o文と文との接続の関係に注意すること
o指示語や接統語の使い方に注意すること 
o語句の組み立て方がわかること
o文の中での意味のまとまりや語句のかかり方に注意する
 こと
o文と文との接続の関係に注意し、また、文章における段
 落相互の関係にも注意すること
 
o文と文との接続の関係に注意し、また、文章における段
 落相互の関係にも注意すること
o文と文との意味のつながりを考えながら、指示語や接続
 語の使い方に注意すること 
o語句は使い方のうえでいろいろな役目をしていることに
 気づくこと
o文の中での語句のかかり方を理解し、文の組み立てに注
 意すること
o文と文との接続の関係、文章における段落相互の関係な
 どを理解すること 
o文と文との接続の関係、文章における段落相互の関係な
 どをはっきりさせて書くこと
o指示語や接続語を正しく使うこと 
o語の由来などに関心をもつこと
o文や文章における語句と語句との照応などに注意するこ
 と
o文と文との接続の関係、文章における段落相互の関係、
 それぞれの段落と文章全体との関係などを正しく理解す
 ること 
o文章における段落相互の関係、それぞれの段落と文章全
 体との関係などをはっきりさせて書くこと
o指示語や接続語などを適切に使うこと 












   33
 

 ここにいたって、ふじゅうぶんであいまいだった文法事項も、しだいに具体化され、精選されて、ほぼその全容を
整えた。しかし、これを系統的、発達的に見ると、なお、問題は残されている。その点から、特に三年の内容につい
ては、さらに検討する必要がある。が、ここに選ばれた基本的な文法事項は
 @ 語句の組立、役割、機能、係り方等に関する事項
                                                        34
 A 指示語、接続語に関する事項
 B 文における主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係など文の構成に関する事項
 C 文と文との接続に関する事項
 D 文章における段落相互の関係など文章構成に関する事項
に分類・整理されている。
 ところで、文法事項をこのように、理解と表現に分けて設定し、それを対比してみると、理解(読解)における文
法の指導事項と、表現(作文)における文法の指導事項との違いがよくわかるし、両者の学習目標の違いも明白にな
る。具体的に考えてみると、理解(読解)における文法事項については、文法事実・文型を通して、それを規定して
いる法則性(文法)に気づき、注意し、理解し、意識化することを示している。また、表現(作文)における文法事
項については、文法にのっとった表現の仕方、ことばの用法、文型等に気づき、考え、注意し、使用することによっ
て、文法技能を身につけることを示している。そこに小学校における文法指導のあり方への示唆がある。

 2 新文法指導の内容―基本的文法事項
 これまで四回にわたる学習指導要領の改訂を通して、文法指導の内容の変遷、整理の状況を考察してきた。が、い
っぽうには、いわゆる民間の研究として、その立場からの、小学校における文法指導の内容と方法との提案がある。
 それを見ると、従来の形式文法の体系をそのまま、考え方を変えたり、用語を代えたり、説明を平易(?)にした
りして指導している。それは、戦前の中学校の文法指導の内容と全く変わっていない。いわゆる品詞論・文論中心の
内容で、文章論にまでは及んでいない。
 それは、小学校の文法指導を強化し、体系化しようとして、あまりにも高度な、あまりにも複雑な文法知識をたく
さんに持ちこんで、児童の能力を越えた文法学習を強いている面がある。国語科の学習内容の精選を図ろうとすると
き、文法学習が、威儀を正して、ひとり歩きするのは、一考を要する問題であろう。
                                                        35
 ところで、小学校の文法指導の内容は、どのような手続きをとって設定したらいいか考えてみたい。
 @ 児童のことばの使い方の発達は、児童の認識、思考の発達と密接に結びついているから、その発達を段階的に
  押さえて、それを基準とする。
   たとえば、判断のパターン――全体と分節、個と総括、具体と抽象、原因と結果というような関係の判断、順
  序・序列の判断、比較・対照の判断、構成・総括の判断、また、行動の認識、状態の認識、存在の認識、事実の
  認識。本性・本質の認識などの発達段階を押さえる。
 A 具体的には、児童の作文などによって、ことばの使い方、文型を発達的に押さえ、それをささえている法則性
  を抽出して、具体的なものさしを作る。
   たとえば、単文・重文・複文と文の種類を考えて、その順序で段階的に指導する考えがあるが、実際には、単
  文・複文・重文の順序に発達し、その出現率も重文はごく少ない。文末の型も、ました型、です型、でした型、
  た型、書く・思う型、である型などと発達する。行動認識の文型も、一語文、テレビを見ました。弟とテレビを
  見ました。きのう弟とテレビを見ました。きのう学校から帰ってテレビを見ましたなどというように発達する。
 B 児童の言語生活に必要なことばの用法にはどんなものがあるか、その種類と範囲を考えて選択の基準とする。
   たとえば、行動の表現、経験の表現、状態の表現、場面情景の表現、感覚の表現、心情の表現、思想の表現な
  ど、その表現対象と表現法とを考える。
 C 体系文法の内容と、前記の諸条件によって選ばれた文法事項とを対照して、基本的な文法事項を選択する。
 D 国語科の内容の組織(言語事項・表現・理解)の中で、文法事項はどんな位置を占めているか、どの程度の価
  値と学習時間とを保証されるかを考える。
 E 文法知識の指導を中心とするか、ことばの用法、文章の構成などの指導を中心とするかなどを考えて選ぶ。
 以上の諸事項を考慮して、小学校における文法指導の内容を箇条的にあげてみると、次のようになる。
1 文・文章における語句の類別、役割、係り方などに関する事項
                                                        36
2 文における主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、並立の関係、接続の関係など、文の構成に関する事項
3 文と文との間における順接の関係、逆接の関係、因果の関係、指示・被指示の関係など、文と文との承接に関す
 る事項
4 段落における話題と説明・解説との関係、要点と細部との関係など、段落の構成に関する事項
5 文章における段落、段落相互の関係など、文章の構成に関する事項
 以上、小学校における文法指導の内容を五事項とし、この点から、新指導要領の文法事項を見直して、その詳細を
明らかにする。

     二 新文法指導の内容のシステム

 小学校の文法指導は、主として理解学習(読解・聴解)の過程で行う場合と、主として表現学習(作文・談話)の
過程で行う場合と、文法事項を取り出して、シミュレーションによって行う場合とがある。
 そこで、文法指導の内容も、理解学習の過程で指導するものと、表現学習の過程で指導するものとを分けて提示す
るほうがわかりやすい。また、その文法指導が何を目標として行うか、それも明確になる。
 そのうえ、さらに基本的文法事項を、学年別・事項別に、系統的・発達段階的に配列すると、文法指導の内容のシ
ステムが、明確になるばかりか、各学年の指導の重点もはっきりする。

 1 理解における文法学習の内容とそのシステム
 理解における文法学習は、文法事実を成り立たせている事実関係を理解する。それによって、そこに内在する法則
性を意識化し、感覚化する学習であゐ。したがって、ここにあげた文法事項は、表現における文法指導と違って、そ
                                                        37
れを取り上げて、直接学習させるものではない。したがって、文法事実を通して法則性に気付く、注意する、あるい
は、法則性を知る、理解する、理解を深めるというものである。

文法事項 1    年 2    年 3    年 4    年 5    年 6    年
1 語句
 に関す
 る事項
 ・類別
 ・役割
 ・係り
  方
 
    o文章の中にお
 ける語句の役
 割や係り方を
 知るとともに
 語句には性質
 の上で類別の
 あることに気
 付くこと 
o文章の中におけ
 る語句の役割や
 係り方について
 理解を深めると
 ともに類別ごと
 の語句のもつ特
 質がわかること 
o文章の中におけ
 る語句が使い方
 の上でいろいろ
 な役割を果たし
 ていることを理
 解すること 
o文章全体の中で
 照応して使用さ
 れている語句相
 互の関係に注意
 して読むこと
o文中の助詞・助
 動詞の役割の理
 解を深めること 
2 文の
 構成に
 関する
 事項
 ・主語
  述語
 ・修飾
  語被
  修飾
  語


 ・並立
  語










 ・指示
  語
 ・接続
  語




 ・構成
o文における主
 語と述語の照
 応に気づくこ
o単文における
 主語・述語の
 照応に気付く
 こと
o複文における
 主語と述語の
 関係に注意す
 ること
o複雑な文でも主
 語と述語の関係
 がわかること 
oいろいろな種類
 の文の中で主語
 と述語の関係を
 理解すること 
o主語と述語の関
 係を正しくとら
 え文と文の構成
 を理解すること
  o単文における
 修飾と被修飾
 との関係に注
 意すること
o複文における
 修飾と被修飾
 との関係をは
 っきりさせる
 こと
o修飾語の中の連
 体修飾語・連用
 修飾語の働きの
 違いに気付くこ
o文の中には、連
 体修飾節、連用
 修飾節のあるこ
 とに気付くこと
 と
o複雑な文でも修
 飾と被修飾の関
 係について理解
 すること
 
o並立語に気付
 くこと
 (OとOと、
 OもOも、O
 OたりOOた
 り)
 に気付くこと
 
o並立語の働き
 (○や○や、
 ○と○と、○
 ○たり○○た
 り、○○し○
 ○し、○もあ
 れば○もあ
 る) 
oいろいろな並
 立語の働きに
 注意すること
 (○たり○た
 り、○○にも
 ○○にも、○
 ○なのか○○
 なのか、○○
 か○○か、○
 ○でも○○で
 も、○○し○
 ○し) 
     
  o文や文章の中
 における指示
 語や接続語の
 役割と使い方
 に気付くこと
 
o文や文章の中
 における指示
 語や接続語の
 役割と使い方
 に注意するこ
 
o2年 指示語・接続語「この、その、あの、どの」「こ
 れ、それ、あれ、どれ」「そして、それから、それで、
 そこで、そしたら、ですから、だから、さて」「けれど
 も、ところが」
o3年 指示語・接続語「ここ、そこ、あそこ、どこ」「こ
 んな、そんな、あんな、どんな」「こう、そう、どう」
 「また、しかも、すると、そうして、そうすると」「だ
 が、しかし」  
(4年「文にお
ける主語・述語、
修飾・被修飾の
関係を押さえて
単文の構成に気
付くこと」) 
(5年「文にお
ける主語・述語・
修飾語の関係を
押さえて複文の
構成がわかるこ
と」) 
(6年「文にお
ける、主語・述
語・修飾語の関
係を押さえて文
の構成について
理解を深めるこ
と」) 
o文の構成につい
 て初歩的な理解
 を持つこと 
o文の中での語句
 の係り方や照応
 の仕方を理解し
 ていろいろな文
 の構成があるこ
 とを理解するこ
 と
o文の構成につい
 ての理解を深め
 ること 
3 文と
 文の接
 続に関
 する事
 項 
  o文と文との続
 き方の関係を
 考えながら文
 章を読むこと
 
o文と文との接
 続の関係を考
 えながら文章
 を読むこと
 
o文と文との接続
 の関係を理解す
 ること
 
o文と文との接統
 の関係について
 理解を深めるこ
 
 
4 段落
 の構成
 に関す
 る事項
  o文章には段落
 のあることに
 気付くこと
 
o段落は要点と
 細部、話題と
 説明によって
 組み立てられ
 ていることに
 気付くこと 
o段落には、話題
 と説明、要点と
 細部との関係に
 よっていろいろ
 な組立があるこ
 とを理解するこ
 と
   
5 文章
 の構成
 に関す
 る事項
 
    o文章は段落に
 よって組み立
 てられている
 ことに気付く
 こと 
o文章は段落相互
 の関係によって
 構成されている
 ことを理解し、
 初歩的な構成法
 を理解すること
 と 
o文章における段
 落相互の関係に
 対する理解を深
 め文章構成の在
 り方についての
 理解を深めるこ
 と 
 




















  38























 39 

                                                        40
 2 表現における文法学習の内容とそのシステム
 表現における文法学習は、理解における文法学習と違ってことばを文法に従って正しく使うことができるようにす
る。つまり、文法力の学習を通して、ことばの用法を身につけ、文法感覚・文法意識を高めるものである。
 したがって、ここにあげた各学年の文法事項は、理解学習の過程で身につけた文法感覚・文法意識にささえられて
ことばを使う技能、文法力を育てる場合と、直接表現活動を通して文法力を育てる場合とがある。いずれにしても、
ここにあげた文法事項は、表現学習を通して機能的に、あるいは、シミュレーションによって育成するものである。
 表現において指導する文法事項の系統と段階

文法事項  1    年  2    年  3    年  4    年  5    年  6    年 
1 文を書
 くこと
(1) 主語と
 述語の照
 応した文
 を書くこ

 ・基本文
  型(行
  動・状
  態・事
  実・存
  在)



(2) 修飾と
 被修飾と
 の関係を
 考えて文
 を書くこ
 と
 ・連体修
  飾語
 ・連用修
  飾語
 ・連体修
  飾節
 ・連用修
  飾節









(3) 接続語
 を正しく
 使って文
 を書くこ
 と
 ・基本文
  型
 ・順接の
  文型
 ・逆接の
  文型
 ・仮定の
  文型
  原因理
  由の文
  型
 ・継起の
  文型









(4) 並立語
 を正しく
 使って文
 を書くこ









(5) 陳述の
 文型
o主語と述語の
 照応に注意し
 て単文を書く
 こと
 ・何がどうし
  た
 ・何がどんな
  だ
 ・何が何だ
 ・何がある
   (いる)
 ・だれが何と
  いった
 
o主部と述部の
 照応に注意し
 て単文を書く
 こと
 ・どんな何が
  どうした
 ・何がどのよ
  うにどうし
  た
 ・だれがどう
  いったので
  どうした
  
o主語と述語の
 関係に注意し
 て複文を書く
 こと
 ・何がどうし
  たので、何
  がどうした
 ・何がどんな
  だから何が
  どんなだ
 ・何とだれが
  いったので
  だれがどう
  した
 
o主部と述部の
 関係をはっき
 りさせて複文
 を書くこと
 ・赤くてきれ
  いな花が、
  庭いちめん
  にさいたの
  で、ぼくは
  さっそく絵
  にかいた
 
o重文や複雑な文
 でも主部と述部
 の関係をはっき
 りさせて書くこ
 と
 ・強い風が急に
  ふき出し、大
  つぶの雨もザ
  アーッと降り
  出した
 ・男の子も見て
  いたし女の子
  も見ていた
 
o主部と述部の関
 係をはっきりさ
 せ、文の組立に
 注意して書くこ
 と
o主語の省かれた
 文でも述語が正
 しく照応するよ
 うに書くこと
 
  o連体修飾語・
 連用修飾語と
 被修飾語との
 関係に注意し
 て文を書くこ
 と
o連休修飾語・
 連用修飾語と
 被修飾語との
 関係をはっき
 りさせて文を
 書くこと
 
o連体修飾語・
 連用修飾語と
 被修飾語との
 関係を明確に
 して文を書く
 こと
 
o連体修飾節・連
 用修飾節と、被
 修飾語との関係
 に注意して文を
 書くこと
 
o連体修飾節・連
 用修飾節と披修
 飾語との関係を
 明確にして文を
 書くこと
 
o連体修飾語
 ・赤い・早い・せまい(形容詞) ・大きな・小さ
  な・この・どの(連体詞) ・まっ白な・にぎやか
  な・へんな(形容動詞) ・泣きそうな・たおれ
  そうな(助動詞) ・動くおもちや・乗る自動車
  (動詞) ・多くの・秋の・帰りの(動詞)その
  他。
o連用修飾語
 ・とても・すぐ・もっと(副詞) ・早く・長く・
  まるく(形容詞)・静かに・急に・きれいに(形
  容動詞) ・おいしそうに・うれしそうに・とぶ
  ように・すべるように(助動詞) ・きらきら・
  のろのろ・ふわふわ(擬態語) ・バタバタ・カ
  チカチ(擬声語) ・いそいで・並んで・にこに
  こしながら・笑いながら(助詞)その他
  
o連体修飾節
 ・赤いきれいな花・黒くて重いはこ・明るいにぎやか
  なばん・遠い遠い山・いまにもたおれそうな家・親
  切でやさしい友だち・早起きで働きもののお母さん
 ・涼しい秋の風・帰りの早い父、その他
o連用修飾節
 ・とても早く・もっともっとゆっくり・そよそよと暖
  かく・急ににぎやかに・ふわふわと空高く・ほんと
  うに楽しそうに笑いながら・急いで行かないと・ど
  こからどこまでとはっきり決めて仕事をする・建物
  の前を通りすぎると急に目の前が開けて、さん橋に
  横づけになった大きな船が、目に入りました・あま
  りいそで歩いたので、ぼくは石につまずいて、すっ
  てんころりんところんだ・その他
  
o接統助詞を使
 って文を書く
 こと
 ・べんきょう
  してから…
oいたかった
 ので……
 いそいでいく
 と……
o学校へいって

oふたりで……
 (順接・逆接
 ・継起) 
o接続の関係を
 はっきりさせ
 て文を書くこ
 と
 ・いやだと言
  っても……
 ・かけて行っ
  たけれど…
 ・ぼくがたの
  んだのに…
oよく知ってい
  ながら……
o笑いながらか
 けて……
o早く行けば…
 …(逆接・継
 起) 
o接続の関係を
 はっきりさせ
 て筋道の通っ
 た文を書くこ

o順接
 ・雨が降ると
 ・風が吹くと
 ・夏が来れば
 ・大きくなれ
  ば……
o逆接
 ・かけて行っ
  ても……
 ・行こうと思
  ったけれど
  ……
 ・まっていた
  のに……
 ・歌を歌いな
  がら……
o継起
 ・本を買って
  ……
 ・本を読んで
  …… 
o接続の関係を明
 確にして主語・
 述語の照応した
 文を書くこと
o順接の助詞
o逆接の助詞
o仮定の助詞
o原因の助詞
o継起の助詞
 ・遊んでから…
 ・かしてやった
  のに……
 ・雨がふれば…
 ・試合にまけた
  ので……
 ・風が吹いてき
  たから……
 ・本を買ってき
  て、読んでね
  た。 
 
o並立助詞「と」
 を正しく使っ
 て文を書くこ
 と
 ・おとうさん
  とぼくとお
  とうとと…
  クレヨンと
  えんぴつを
 ・パンとぎゅ
  うにゅうを
 
o並立助詞「と」
 「や」「も」
 などを正しく
 使って文を書
 くこと
 ・ともだちと
  ぼくと……
 ・犬やねこや
  ……
 ・行きもかえ
  りも)……
 ・ぼくもおと
  うとも 
o並立助詞の照
 応に注意して
 文を書くこと
 ・行ったり来
  たり
 ・大きいのや
  小さいのや
 ・雨か雪かど
  っちか
 ・春か秋か 
o並立助詞の照
 応を正しくし
 て文を書くこ
 と
 ・みかんだの
  りんごだの
 ・いいのやら
  わるいのや
  ら
 ・大きいのも
  小さいのも
 ・犬にねこに
 
oいろいろな並立
 助詞の照応を正
 しくして文を書
 くこと 
 
oました型
oです型 
oでした型
oです型
oます型 
oでした型
oました型
oです型
oます型
oていた型
oた型(だ型)
 
oている型
oである型
o終止型
oだ型
oた型 
o書く文章に応じ
 て適切な陳述の
 型を選んで書く
 こと 
o適切な陳述の型
 を使い分けて効
 果的に書くこと
 
2 文と文
 との続き
 方を考え
 て書くこ
 と
 (1) 接続
  語
 (2) 指示
  語  
o文と文との続
 き方に注意し
 て書くこと
 ・そして
 ・それから
 ・それで 
o文と文との接
 続の関係を考
 えて書くこと
 ・それから
 ・そして
 ・そしたら
 ・それで 
o文と文との接
 続の関係を適
 切にして文章
 を書くこと
 ・けれど(け
  れども)
 ・それでも
 ・でも 
o文と文との意
 味の続き方を
 考えて接続語
 を適切に使う
 こと
 ・それでも
 ・それなのに
 ・だから
 ・それだから
 
o文と文との意味
 のつながりを考
 えながら接続語
 を的確に使うこ
 と
 ・ところが
 ・そこで
 ・そうだから
 





 ・そうして
 ・しかも
 ・それどころか
 ・しかし 
  o指示語を、気
 をつけて使っ
 て書くこと 
o指示語を、指
 事する事項と
 の関係を考え
 て使うこと 
o指示語を、指
 示する事項と
 の関係を考え
 て適切に使う
 こと 
o指示語を、指示
 する事項との関
 係、範囲を考え
 て的確に使うこ
 と 
o指示語を、指示
 する事項との関
 係、範囲を考え
 て効果的に使う
 こと 
3 段落の
 構成を考
 えて書く
 こと 
    o適切に段落に
 くぎって書く
 こと
 ・段落の話題
  を中心にし
  て 
o話題と説明と
 の関係を考え
 て段落を構成
 すること
 ・話題とその
  説明・解説
  との関係を
  考えて 
o要点と細部との
 関係を考えて段
 落を適切に構成
 すること
 ・要点と細部と
  の関係を考え
  て 
o文章の機能に応
 じて段落の構成
 を考えて書くこ
 と
 ・段落の展開を
  考えて 
4 段落相
 互の関係
 を考えて
 文章を構
 成するこ
 と 
o文章の構成は
 発想の展開と
 密接に結びつ
 いているので
 参考に書いて
 おく 
@ 経験的発想にもとづく構成
A 事件的発想にもとづく構成
B 紹介的発想にもとづく構成
C 説明的発想にもとづく構成
D 論理的発想にもとづく構成
E 感動的発想にもとづく構成
F 思索的発想にもとづく構成
o段落相互の関
 係を考えて文
 章を構成する
 こと 
o段落の機能、内
 容を考え、係り
 受けの関係をは
 つきりさせて文
 章を構成するこ
 と 
o文章の目的、内
 容に応じ、段落
 の機能、内容を
 考え、係り受け
 の関係を明確に
 して文章を構成
 すること 















  41
























  42


























  43





















  44
























  45
 

 3 各学年内容の指導の重点
 各学年の文法指導の内容を、便宜上「理解学習(読解)の過程で指導する基本的文法事項」と、「表現学習(作文)
の過程で指導する基本的文法事項」とに分けて、そのシステムを、発達的、系統的に配列し。かなり具体的に記述し
た。各学年とも
 @ 語に関する事項    A 文の構成に関する事項    B 文と文との接続に関する事項
 C 段落の構成に関する事項    D 文章の構成に関する事項
を柱として系統立て、発達段階的に配列してある。したがって、それぞれの事項について、各学年で指導する文法事
項を一覧することができる。また、そこに例示した事項は、いずれも児童の作文、教科書教材を分析抽出したもので
信頼できるものである。
 この内容のシステムは、縦の系列が中心になっているが、横の系統、つまり、学年内のシステム、指導の中心をも
押さえることができる。次に、それぞれの学年での指導の重点をあげてみる。
 (1) 一年の指導の重点
@ 「文における主語・述語の照応に気付き(読解)、主語・述語の照応した文を書くこと(作文)」の学習を通して、
 主語・述語照応の文型感覚・文法感覚を育てる。この場合の主・述の照応は、行動認識の基本文型「ぼくはまんが
 をよみました」、状態認識の基本文型「ねこがねていました」、事実認識の基本文型「これはぼくがかいたえです」、
 存在認識の基本文型「犬がいました」などの基本型の学習を通して行う。
                                                        46
A 「文と文との続き方に気付き(読解)接続語を使って正しく文と文とを続けて書くこと『ぼくはおやつをたべまし
 た。それからそとであそびました。』(作文)」の学習を通して、文と文との連接感覚・連接意識を育てる。
 (2) 二年の指導の重点
@ 「文における主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係などに気付き(読解)、修飾語、接続語(助
 詞)、並立語などを使って、主語・述語の照応した単文を書くこと(作文)『あかいチューリップがきれいにさいて
 いました』『かみひこうきがすうっととんだけれど、すぐおちました』」の学習を通して、文型感覚・文法感覚を育
 て、文法意識に培うようにする。
A 「文と文との接続の関係、指示・被指示の関係に気付き(読解)、接続語、指示語を使って、文と文とを続けて書
 くこと(作文)『雨はやみました。けれども、まだそらはくもっています』『赤い花がさいています。それはチュ
 ーリップです。』」の学習を通して、文と文との連接意識を育て、文法感覚・文法意識を育てる。
 (3) 三年の指導の重点
@ 「語句には、主語となる語(体言)、述語となる語(用言)があって、それぞれ違った役割を持っていることに気
 付くこと」
A 「文における主語・述語の関係、修飾の関係、並立の関係、接続の関係などに気付き(読解)、それらの関係を考
 えて、単文や複文を書くこと(作文)『あたたかい春が来たので、いろいろの花が急にさき出した』」の学習を通し
 て、文法感覚・文法意識を育てる。
B 「文と文との続き方(順接、逆接、因果、承接等)を理解し(読解)、適切な接統語を使って文と文とを続けて書
 くこと(作文)」の学習を通して、文と文との連接に対する感覚・意識を育てる。
C 「文章は段落によって構成されていることを理解し、段落は、話題と説明、要点と細部との関係によって構成さ
 れていることに気付き(読解)、段落ごとにまとめて書く(作文)」学習を通して段落意識を高める。
 (4) 四年の指導の重点
                                                        47
@ 「語句には、修飾語、接続語、指示語などがあって、それぞれの役割、係り方のあることに気付くこと(読解)」
A 「文は、主語、述語、修飾語、被修飾語、並立語、指示語などによって構成されていることを理解し(読解)、そ
 れらを適切に構成して複文を書くこと(作文)」の学習を通して、文法感覚・文法意識を高め文法力を育てる。
B 「文と文との接続の関係(順接、逆接、因果、承接、その他)を理解し(読解)、文と文との意味の続き方を考え
 て、適切な接続語を使って、文と文とを続けて書くこと(作文)」の学習を通して、文と文との接続に対する感覚を
 確かにし、その意識化を図る。
C 「段落は、話題と説明、要点と細部との関係によって構成されていることを理解し(読解)、段落を話題と説明と
 によって、構成すること(作文)」の学習を通して、段落意識・段落構成力を高める。
D 「文章は、段落が相互に関係し合って構成されていることを理解し(読解)、段落を並べて(並立型)文章を構成
 すること(作文)」の学習を通して、段落意識を高め、文章構成力を育てる。
 (5) 五年の指導の重点
@ 「語句が使い方の上でいろいろな役割を果たしていることを理解すること(読解)」
A 「文の中での主語、述語、修飾語、接続語、並立語などの係り方や照応の仕方があって文は構成されていること
 を理解し(読解)、それらの係り方、照応の正しい文を書くこと(作文)」の学習を通して、文法感覚・文法意識を
 確かにし、文法力を育てる。
B 「文と文との意味のつながりを考えて、その接続の関係を理解し(読解)、適切な接続語を用いて文と文とを続け
 て書くこと(作文)」の学習を通して、文と文との連接感覚、連接意識を高める。
C 「要点と細部との関係を考えて段落を構成して書くこと(作文)」
D 「段落の機能、内容を考え、係り受けの関係(並立型、条件型)を考えて、文章構成のアウトラインを作ること
  (作文)」
 (6) 六年の指導の重点
                                                        48
@ 「文章の中の語句相互の関係、助詞、助動詞などの機能を理解し(読解)、助詞、助動詞を正しく使って文を書く
 こと(作文)」の学習を通して文法意識を育てる。
A 「文の構成についての理解を深め(読解)、主語、述語、修飾語、接続語、並立語等の関係を明確にし、筋道の通
 った文を書くこと(作文)」の学習を通して、文法感覚・文法意識を高め文法力を育てる。
B 「段落の機能・構成を理解し(読解)、段落を構成して文章を書くこと(作文)」の学習を通して段落意識を育て
 る。
C 「文章の目的に応じ、段落の機能、内容を考え、係り受けの関係を明確にして文章を構成すること(作文)」の学
 習を通して、文章意識を育て、文章構成力を育てる。
 以上、各学年の文法事項を整理し、その指導の重点をあげた。


                                                        49

  W 新文法指導の方法とそのシステム



     一 機能的文法の機能的指導の考え方
          ――生きた文法の生きた指導――

 「桜の花がひらひらと散っている。」という文を読むと、「桜の花がひらひらと舞い散っている様子」がそのまま目
に浮かんでくる。樹下一面に散り敷いている花びらさえも想像される。それはだれでも持っている「桜の花が(主
語)十ひらひらと(連用修飾語)十散っている(述語)」という法則にささえられ、社会的に決まっている文型によ
って表現されているからである。つまり、その表現―文章の裏には、社会的に決まっている、したがってだれでも感
覚的に持っている法則性、文法が生き生きと働いているからである。
 もし、これを「散っている(述語)十ひらひらと(連用修飾語)十桜の花が(主語)」というように語順を変える
と、読み手は、文の脈絡、文脈に対してぎこちなさ、違和感を覚え同時にその表す意味が、直ちに理解できなくな
る。文脈に対して違和感を覚えるのは、読み手の中に、「主語のあとに述語が来る。修飾語は被修飾語の直前に来
る」、つまり、「主語十連用修飾語十述語」という法則的な組立、文法が感覚的にでき上がっているからである。そ
して、それは、読み手の認識・思考のパターンでもある。
 このように、文法感覚として持っている法則性を、「桜の花がひらひらと散っている。」という文の意味を正確に、
深く理解する過程で、意識化する学習が、文法学習である。この場合は、文法感覚の意識化が、文法学習の基本であ
                                                        50
る。このように、文や文章の中に具体的に、したがって機能的に、生き生きと働いている文法――機能的文法を、そ
の文や文章の表す意味を、正確に深く理解する過程で、確かに意識化する学習の方法が「機能的文法の機能的指導の
方法」である。
 また、「空が曇って、雨が急にパラパラと降り出した状況」を認識して表現する場合には、すでに感覚的に特って
いる文型・文法に基づいて、たとえば「空が曇って、大つぶの雨が急に降り出した。」と話したり書いたりする。
 その場合、書き手、話し手は、いちいち文法を考えて、文法知識をたどって書いたり話したりすることはない。潜
在的に持っている文法感覚に従って、文法を意識することなく、書いたり話したりする。文法感覚に頼って文脈を作
っていく。
 もし、その場合の書き表し方、話し方、文法感覚がじゅうぶんに育てられていないと、(不確実な文法感覚、あや
ふやな文法感覚)「雨が大つぶの急に降り出した」「空が曇るから雨が急に降り出した」などと、誤った文で話した
り書いたりするかも知れない。そんな場合には、その誤った文を正しく直すことによって、文法に従った正しいこと
ばの使い方、用法を学習させる。その学習を通して、文法感覚をいっそう確かにし、文法意識を高めていく。
 このように、実際に文を書いたり話したりする中に、生き生きと働いている文法を、書こうとする事柄、話そうと
する事柄を、適切に表現する中で指導する方法もまた「機能的文法の機能的指導の方法」である。
 この二つの指導の方法のうち、前者が「読解における機能的文法の機能的指導法」であり、後者が、「作文におけ
る機能的文法の機能的指導の方法」である。

     二 読解における新文法指導の方法

 小学校での文法指導は、前にも述べたように「読解に役だてるための文法指導」から、「読解学習を通して文法の
                                                        51
学習をする――読解における文法学習」という考え方に変わっている。それは「文法知識を身につけ、それを働かせ
て読解学習を効果的にするという考え方」から、「読解を正しくしたり。深めたりする学習を通して、文法感覚を育
て、文法意識を高めるという考え方」への転換であった。したがって、文法学習・文法指導の方法も、それに応じた
新しい方法が創造されなければならなくなった。

 1 読解における文法事実と文法事項の選択
 そこで、読解過程で文法学習を計画的に実施するためには、教材研究の段階で「どんな文法事実の学習を通して、
どんな文法事項を指導するか」を明確に押さえる必要がある。以下、その例をあげてみる。
 (1) 文章の中で、くり返し用いられている文法事実を押さえて指導する例
@ 指示語 「それぞれ」
 ア しょうぼう自動車やきゅうきゅう車、パトロールカーなどは、それぞれちがったサイレンを鳴らして走りま
  す。
 イ 町のこうさ点に光っているしんごうきや、鉄道のシグナルには、青や黄や赤の電燈がついて、それぞれ「進
  め」「注意」「止まれ」をあらわします。
 ウ ゆうびん番号や電話の市外局番も、それぞれどこの土地のどこの局かを表しています。
 このように、指示語「それぞれ」の用法、文法事実がしばしば出てくる文章では、「指示語のさす働き」や「指示
語のさす事柄」を明確に理解する学習を通して、指示語の機能の学習をする。
A 並立語 「○○たり○○たり」
 ア 燈台の光は、ぐるぐる回っていますから、船の方から見ると、ついたり消えたりしているように見える。
 イ このようにいろいろのものを、整理したり分類したりするのに数字がよく使われます。
 このように、並立語「○○たり○○たり」を含む文法事実の読解学習を通して、「並立語の働き」と「並立語『た
                                                        52
り』の用法」の指導をする。
B 文型「○は、○を、○で、どうする」
 ア とりは、小さな虫を、くちばしで、つついてとります。にんげんは、小さなごみを、手でつまんでとります。
 イ にんげんは、あかちゃんを、手でだいてはこびます。うまは、せなかのはえを、しっぽではらいます。
 ウ にんげんは、からだにとまった虫を、手ではらいます。
 このように、同じ文型がたくさん出てくる文章では、文型感覚・文法感覚を育て、文法意識を高めるのにいい機会
が得られる。このほか、文型の指導に必要な教材は、一、二年の教科書にたくさん出ている。
 以上。ごくわずかの例をあげたにすぎないが、各学年で指導すべき文法事項を含む文法事実は、読解教材の中に豊
富にあるから見落とさないようにする。段落の構成、文章の構成に関する学習事項も、読解教材の中にじゅうぶんに
求めることができる。
 (2) その文章に初めて出た文法事実を押さえて指導する例
@ 接続語 (それとも)」
 ア 金魚は、赤えびの赤い色に目を引かれたのでしょうか。それとも、えびのにおいをかぎわけるのでしょうか。
  それとも、投げこんだときのかすかな音を聞きつけたのでしょうか。
新しく学習する接続語「それとも」の働きやその用法について指導する。
A 文と文の接続語 「因果関係による接続」
 ア じめんにうえて、水をやると、やがてげんきになりました。たんぽぽが、ねから、水をすいあげたからです。
 イ たんぽぽは、じめんの下に、ふといねを、ながくのばしています。ですから、なかなかぬけません。
 アは、理由や原因を示す接続助詞「から」を使っている例、イは、理由や原因を示す接続語『ですから』を使って
いる例、ともに初めて出てきた文である。ここでは、両者を比べて指導する。
 (3) 文が長くて文脈の押さえにくい文を指導する例
                                                        53
@ 主語、述語、修飾語、接続語などの係り受けの関係のわかりにくい例
 ア 空高く元気よくたこをあげて、ゆかいな気持ちになる子どもたちの心までは、いくらとのさまでも、押さえき
  れなかったのです。
 イ はじめはとのさまのおふれで、さむらいの子しか、たこをあげてはいけない、と決められたこともありました
  が、だんだん、日本じゅうでたこあげがさかんにおこなわれるようになりました。
A 春か秋の、天気のいい暖かい日、たまごのふくろから出てきた子どもたちは、思い思いに、高いえだや葉の先へ
  登っていきます。
 このような文では、その複雑な意味を正しく理解するなかで、主語、述語、修飾語、接続語、独立語などの係り受
けの関係をはっきりと押さえて、文法意識を高める指導をする。Aは独立語のある文。
 (4) 文と文の接続関係について指導する例
@ 逆接の関係「しかし」・累加の関係「しかも」
 ア アンリは本を読む楽しさやだいじさを知った。しかし、アンリの家は、次々に本を買ってもらえる家ではな
  い。
 イ あひるをかおうというそうだんだ。しかも、アンリに世話をさせることに決まった。
 このような逆接・累加の関係で、文と文とを接続している接続語の働きとその意味機能を学習させる。このほか、
さまざまな接続語があるから、その基本的なものについて指導する。
 (5) 段落の構成について指導する例
 知識教材・情報教材(いわゆる説明文)の中から、次のような段落を選んで、その搆成を理解する。
 ア 段落の要点、話題の文が、段落の初めにある段落
 イ 段落の話題とその説明との関係がはっきりしている段落
 ウ 段落の要点と細部との関係(抽象と具体の関係、総合と分節の関係、総括と個との関係など)がはっきりして
                                                        54
  いる段落
 (5) 文章構成について指導する例
 文章構成の理解の指導は、できるだけ単純な構成の文章、基本的には並立型(要素型)の文章で指導する。並立型
の文章というのは、知識教材の中に多いパターンで、段落が並立の関係で組み立てられている文章である。並立型の
文章の構成を理解させたら、次は、条件型の文章の構成について指導する。条件型の文章というのは、段落が係る受
けるの関係で、論理的に展開する文章である。
 以上のように、教材研究の際、その教材の中の適切な文法事実を選択し、その学習を通して文法事項を指導する。
その際、特に注意することは、
@ それぞれの学年で指導する文法事項と照らし合わせて、教材の中から文法事実を選択する。
A 文法能力の発達に応じて、文法事項を選択する。
B 一教材から、あまり多くの文法事実を取り上げない。
C 文法事実を取り出して、意味の学習から離れて、形式的な文法指導をしない。
D 内容を理解するなかで、どんなことばがどのように使われているのか、どのように働いているのか、そこにどん
 な法則があるのかを重点において指導する。
E したがって、文法は、内容の正確な理解、深い理解を求める分析的な読みの学習において指導するのを原則とす
 る。

 2 読解における新文法指導法の開発
 読解における新しい文法指導は、文法感覚を育て、文法意識を高め、文法力を養成することを目標とする。したが
って、新しい文法学習の方法、文法指導の方法を創造すべきことは言うまでもない。
 (1) 此べる(比較対照法)
                                                        55
 同じ文章の中で役割は同じであるが、ことばの意味機能が異なっている語が使われている場合には、それを比較対
照することによって、両者の働きの違いがよくわかり、それぞれの文法感覚・文法意識を高めることができる。
 ア 逆接の接続語(しかし)
  Oアンリは、本を読む楽しさやだいじさを知った。しかし、アンリの家は、次々に本を買ってもらえる家ではな
   い。
 イ 累加の接続語(しかも)
  Oアンリは、父と毋のそうだんを聞いた。あひるをかおうというそうだんだ。しかも、アンリに世話をさせるこ
   とに決まった。
 この「しかし」と「しかも」はともに接続語である。「しかし」は、逆接の関係によって文と文とを続ける働きを
しているが、「しかも」は、累加の関係によって文と文とを続ける働きをもっている。この両者をそれぞれの文章の
中で、意味を正しく深く考えることを通して、比較対照してみると、それぞれの役割と意味機能との違いを明確に知
ることができる。それとともに、逆接の文法感覚と、累加の文法感覚とを育て文法意識を高めることができる。
 ウ 連体修飾語(節)
  o雨あがりなど、水玉をつけて銀色に光っている、くものあみは、ほんとうに美しいものです。
 エ 連用修飾語(節)
  oこがねぐもや、じょろうぐもは、昼も夜も、あみのまん中にいて、えものがかかるのを待っています。
 このウとエの文を比較対照してみると、連体修飾語と連用修飾語の役割の違いを明確に理解することができる。も
っと初歩的には、「草や木のめが、ぐんぐんのびていきます。野原いちめん、赤や黄色の花がさきます。みがなりま
す。たねがおちます。どうぶつたちのごちそうは、そこらじゅうにあふれています。」のような教材を使って、修飾語
と被修飾語を指摘し、修飾語に二つの種類があることに気付かせる。
 オ 存在認識の基本文型(無生物)
                                                        56
  o学校のにわにすなばがありました。
 ヵ 存在認識の基本文型(生物)
  oすなばのそばに犬がいました。
 両者を比べることによって、「生きものには『いる』」「生きものでないものは『ある』」という、存在表現の基本
文型、「いる・ある」が意識化される。
 以上、数例を示したにすぎないが、このように文法事実を比較対照することによって、文法事項を学習する方法が
 「比べる(比較対照法)」である。
 (2) のぞく(消去法)
 文の中で、ある役割を果たし、ある意味を表している語がある。その語を取り除いて、取り除く前と、取り除いた
あとの文の意味の違いやあいまいさや矛盾や通じないことなどを考えると、その語の役割や意味機能を、容易に理解
することができる。そのようにして、その語の役割や意味機能を知る方法が「消去法」である。次にその一例を示
す。
  Oしょうぼう自動車や、きゅうきゅう車、パトロールカーなどは、それぞれ ちがった音のサイレンを鳴らし
   て走ります。
 上の文から、複数の事項を指示する指示語「それぞれ」を取り除いて、その意味を考えてみると。文の意味がはっ
きりせず、「ちがった音」の表す意味を確定することができない。そこで、「それぞれ」を当てて。その指示する事
項を考えると、その前に書いてある、しょうぼう自動車、きゅうきゅう車。パトロールカーを指示していることがわ
かる。したがって、「ちがった音」というのは、前記の三者三様の音であることがわかる。
 こうして、「それぞれ」の果たす役割をはっきりと押さえ。その用法を理解することができる。このように、いろ
いろの役割を持ち、意味を表す語を一応取り除いて、その表す意味の変化を考えてみると。その語の役割、意味機能
を明確にすることができる。この方法の適用範囲は広い。
                                                        57
 (3) いいかえる(言換え法)
 ある事象を表す文型を、いろいろな文型に変形することによって、事象に対する理解を確かにし深める。と同時に
文型感覚・文法感覚を育て、文法意識を高めようとする方法が、この「言替え法」である。次にその一例をあげてみ
る。
  ア・さとうやしおをすくうどうぐは、スプーンです。・ねんどをけずるときにつかうどうぐは、竹べらです。
    ・いたをけずるときにつかうどうぐは、かんなです。
  イ・スプーンは、さとうやしおをすくうどうぐです。・竹べらはねんどをけずるときにつかうどうぐです。
    ・かんなは、いたをけずるときにつかうどうぐです。
  ウ・スプーンは、さとうやしおをすくうときつかいます。・竹べらは、ねんどをけずるときにつかいます。
    ・かんなは、いたをけずるときにつかいます。
  エ・さとうやしおをすくうときはスプーンをつかいます。・ねんどをけずるときは竹べらをつかいます。
    ・いたをけずるときは。かんなをつかいます。
 右のアは、文章の中に出てくる基本文型であるが。このほかにもまだたくさんの例がある。イ・ウ・エは、アを変
型した文型である。このように、言い方を変えることによって、その内容をいっそう確かに、深く理解することがで
きる。と同時に、表現内容は同じでも、表現意図によって(道具の説明、道具の機能の説明、道具の用法の説明、道
具を使う機会の説明など)いろいろな言い方、文型があることに気づく。こうして、文型感覚・文法感覚を育て、文
法意識に培うことができる。なお、このような変形文法の指導をする基礎として耳をそうじするときつかうどうぐ
は、耳かきです。ペンチ・ピンセット・カナヅチは、みんなどうぐです。山の土を一どにたくさんけずりとると
きは、ブルドーザーをつかいます。などの文型が、この文章の中にあって、児童がそれを学習していることが前提に
なっている。
 この言替え法は、理解度を評価する方法としても用いられるし、文法力を伸ばす方法としても使われる。それは発
                                                        58
想転換による構造変換につながっているからである。
 (4) くみかえる(組替え法)
 主語、述語、修飾語、接続語などが、ある意図のもとに文法に従って構成されているのが文である。その文を組み
立てている要素の位置を替えて、つまり、組み替えて、微妙な意味の変化を理解することを通して。文型感覚、文の
構成についての理解を深め、意識を高めようとするのが、この「くみかえる(組替え法)」である。
 ア 七才になって、アンリは、父母のところへ帰ってきた。
 イ この絵本のおかげでアンリは、本を読む楽しさやだいじさを知った。
 ウ 何日か歩き続けて、少年は、山犬といっしょに、火の山の広いふもとにつきました。
 エ 二日三日かかって、九十九人の少年たちを集めると、少年と山犬は、いよいよ、火の山の火を取りに出かけま
  した。
 ・アンリは、七才になって、父母のところへ帰ってきた。・七才になって、父母のところへ、アンリは帰ってき
   た。・アンリは、父母のところへ、七才になって帰ってきた。
 ・アンリは、この絵本のおかげで、本を読む楽しさやだいじさを知った。・この絵本のおかげで、本を読む楽し
  さやだいじさを、アンリは知った。
 ・少年は、山犬といっしょに、何日か歩き続けて、火の山の広いふもとにつきました。
 ・少年と山犬は、二日三日かかって、九十九人の少年たちを集めると、いよいよ、火の山の火を取りに出かけま
  した。・二日三日かかって、少年と山犬は、九十九人の少年たちを集めると、火の山の火を取りに出かけまし
  た。
 上のア、イ、ウ、エの文の構成を、のように組み替えた。このように文を組み替えると、意味もまた微妙
に変わってくる。アでは、「七才になって」、イでは、「この絵本のおかげで」、ウでは、「何日か歩き続けて」、エでは、
「二日三日かかって、九十九人の少年たちを集めると」が強調されている。では、それぞれ「アンリは」
                                                        59
「アンリは」「少年は」「少年と山犬は」が強調されている。そのような微妙な違いが感覚的にわかることが、その
まま、文型感覚・文法感覚を育てることになる。児童は、このような操作を通して、文の構成についての理解を深め
構成力を伸ばすことができる。
 この「組替え法」と、前の「言替え法」との違いは、前者が、文の構成要素の組み替えによって、文構成力の養成
をねらっているのに対し、後者は、発想転換による意味の創造。文型の創造をめがけるところにある。
 (5) たどる(文脈法)
 長い文、複雑な文では、節道をたどって、その意味を正確に深く理解する中で、基本的な文脈(主語・述語の関係
――何が〜どうする、何が〜どんなだ、何が〜何だ、何が〜いる(ある))を押さえ、それを中軸にして、文の組立
を明らかにしていく。その学習を通して、文型感覚・文法意識を高め、文の構成を理解する方法が、この「たどる
(文脈法)」である。文の中にある脈絡、文脈を発見し、文を構成する学習が、この文法学習の中心になる。次にそ
の一例をあげてみる。
 ア シャンアルは。おとうさんが愛したこのこきゅうの中には、おとうさんの音楽がねむっているにちがいない。
  熱心にけいこすれば、きっとその音楽をよびさませる――、と思いました。
 イ 残雪は、このぬま地に集まるがんの頭領らしい、なかなかりこうなやつで、なかまがえさをあさっている間
  も、油断なく気を配っていて、りょうじゅうのとどく所まで、けっして人間を寄せつけなかった。
   大造じいさんは、このぬま地をかり場にしていたが、いつごろからか、この残雪が来るようになってから、一
  わのがんも手に入れることができなくなったので、いまいましく思っていた。
 ウ 毎朝母さんに起こされたり、一人で目がさめた朝はもうすっきりと朝顔がさいてしまっていたりで、めずらし
  いことも、昨日とちがったところもないので、新しいノートへ同じ文字ばかり、ほんのわずかずつ書き記すこと
  も、いやになってしまいました。
 アは、四年の教材から、イ・ウは五年の教材からとった。いずれも長く、複雑で、理解しにくい。特にウは、理解
                                                        60
困難である。そこで、筋道をたどって内容を説明すると、アは、「シャンアルは(主語)十〇〇と(修飾語)十思い
ました(述語)」、イは、「残雪は(主語)十〇〇で十〇〇ていて十〇〇まで十〇〇を(修飾語)十寄せつけなかった
(述語)」、「大造じいさんは(主語)十〇〇いたが十〇〇ので(修飾語)十いまいましく思っていた(述語)」ウは、
「〔わたしは(主語)〕十〇〇ので十〇〇も(修飾語)十いやになってしまいました(述語)」という基本的な文脈に
なっていることがわかる。これは、「シャンアルは(主語)―思いました(述語)」「残雪は(主語)――寄せつけ
なかった(述語)」「大造じいさんは(主語)――いまいましく思っていた(述語)」「〔わたしは(主語・省略されて
いる)〕――いやになってしまいました(述語)」という主語・述語の関係を中軸にして、そこにさまざまな修飾語を
関係的に挿入し、それぞれを構成したものである。
 このように、内容を正確に深く理解することを通して、文脈を発見し、文を再構成することによって、文法感覚・
文法意識を高めようとするものである。また、次のような場合も、この方法を適用するといい。
 エ 青くすんだ水の流れる谷川の岸に、一けんの古いみすぼらしい小屋が立っていました。おとうさんをなくした
  シャンアルという男の子が、おかあさんと二人で、この小屋に住んでいました。
 この二つの文相互の関係は、あとの文の終わりまで読まないとはっきりしない。つまり、文と文との係り受けの関
係が正確でない。文と文との関係は、それを示す語が、文と文との間に来るのが普通であるし、そのほうが思考がス
ムーズに進む。
 そこで、「この小屋に」を、前の文の終わりに「……小屋が立っていました。この小屋に……」とすれば、文脈も
すっきりと通る。
 (6) くみたてる(構成法)
 段落や文章を読んで理解した内容を組み立ててみて、段落や文章は、どのように構成されているかを理解する方法
が「くみたてる(構成法)」である。
 ア みなさんは、海にいる「ひとで」というものを知っていますね。「ひとで」は、ちょうど、人間の手を広げた
                                                        61
  ような形をしています。そこで、「ひとで」と言われたのです。「かぶとむし」という虫がいます。頭の形が、
  むかし、さむらいがかぶったかぶとの形ににているから、そう言われたのです。「こうもりがさ」は、動物のこ
  うもりが。はねを広げたときのように見えるので、こういう名前をつけたのです。このように、ものの形によっ
  てつけた名前がたくさんあります。
 イ また。ものの色によってつけた名前もあります。「からすがい」というのは、貝がらの色がからすのように黒
  いので、このような名前がついたのです。生まれたばかりの子を、「あかんぼう」とか「あかちゃん」とか言う
  のも、体全体が赤みがかっているからでしょう。
 このアとイの段落の要点と要点をささえる細部とを読みとってみると、アでは、段落の前の方から、「ひとで」「か
ぶとむし」「こうもりがさ」と順に、具体的に細部が書いてあり、段落の終わりに、細部を抽象化した要点が書いて
ある。したがって、初めの具体的な細部と、終わりの抽象化した要点との関係は、「具体と抽象の関係」になってい
る。そのような関係で内容は組み立てられており、それに応じて段落も組み立てられている。
 また、イの段落では、段落の初めに抽象的な要点が書いてあり、そのあとに、「からすがい」「あかんぼう」の順
に、細部が具体的に書いてある。この段落でも、要点と細部との関係は、「抽象と具体の関係」になっており、その
内容の組立も、段落の組立もやはり、抽象と具体の関係になっている。
 そこで、右のように段落の内容を理解した上で、段落を組み立ててみると、次のページのようになる。
 このように段落の内容を読みとって組み立ててみると、段落がどのように組み立てられているかが、視覚的にもよ
く理解できる。段落の中での要点と細部との位置関係、要点と細部がどんな関係で組み立てられているかが、一目で
わかる。
 なお、要点と細部との関係には、具体と抽象の関係、分節と総合の関係、個と総括の関係、全体と分析の関係、話
題と説明・解説の関係などがあるが、その関係を表す記号を決めておくと、それらの関係を記号で処理できるので便
利である。ここに示したのは、具体から抽象へ、抽象から具体への関係を表す記号である。
                                                        62
   アの段落の構成                   イの段落の構成

     

 文章構成の理解の場合は、段落相互の関係を表す記号を定めておくと、これも視覚的に文章の展開・論理を理解す
ることができる。たとえば、段落の形式的な機能を、起こす段落、前を受ける段落、前と並べる段落、広げる段落、
まとめる段落として、それぞれその機能を記号化しておく。また、内容的な機能を、話題(問題・課題)を提示する
段落、事例(引例)を提示する段落、説明・解説する段落、要旨(意図)を述べる段落などのように押さえ、それら
を記号化することも考えられる。文学作品の場合は、主題展開のパターンによって、くり返し型(反復型)、くさり型
(連鎖型)、だんだん型(漸層型)、くらべ型(比較対照型)、起承転結型、かたりがた(語り型)など、それぞれのパ
ターンによって、主題が展開されている。それを記号化しておくと、視覚的にもその展開の相を理解することができ
る。
 このように、理解した内容を、組み立てることによって段落の構成や文章の構成を理解することができる。以上、
おもな文法学習の方法についで述べた。これらの文法学習法を指導する技術については、実践例のところで具体的に
述べることにする。
                                                        63
 3 読解における文法の学習指導過程モデル
 読解における文法学習は、原則として、分析的に正確に詳しく深く理解する過程で行う。したがっで、文法の学習
指導は、一時間の読解学習の指導過程の中に位置づけて行われる。そこで、ここには、読解過程に位置づけた「文法
学習の指導過程」のモデル過程を編成してみる。前にあげたいろいろな文法の学習法、指導法は、この文法学習の過
程に適用する。
 読解過程にける文法の学習過程モデル
 1 学習する文法事項を確認する。
 2 文法事項を学習するための文法事実(その時間に学習する範囲)を確認する。
 3 読解における文法学習の過程

(1) 直観読み
 ・事実の読み


(2) 分析読み
 ・深い読み
 ・正確な読み
 ・文法の学習







(3) 体制読み
 ・まとめの読
  み
 ・文法の練習
(1) 叙述・表現に即して、書いてある事実を読みとる。
 @ 発表する。
 A 書き出す。
 B 学習シートに書く。
(2) 読みとった事実が、どんなことばで、どのように書かれでいるかを調べて、読みを正しくし
 たり、深めたりする。
 @ 書き出す。
 A 学習シートに書く。
  oことばの役割や働きを確認して書く。
  (指示語、修飾語、接続語、並立語、主語、述語など)
  oことばや文の係り受けの関係を図示する。
  (主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係、並立の関係など)
  ・要点と細部との関係を図示する。
  (段落の構成など)
 B 文型の確認(文法感覚)、法則性の確認(文法の意識化)
(3) 正しい意味、深い意味を確認する。
 @ 音読する。
 A 朗読する
 B 文法の練習をする 











  64
 


     三 作文における新文法指導の方法

 1 作文における新文法指導の考え方
 このごろの文法学習では、一般的には、読解学習のあとで、「ことばの研究」「ことばの学習」など、単元学習の
あとに計画されている文法について指導するのが普通である。だから、作文学習を通して、文法指導をするというこ
とは、ほとんど顧みられでいない。しかし、いちばん文法力が有効適切に働くのは、話す書く表現活動をする場合で
ある。したがって、文法力を有効に伸ばすには、かっぱつな表現活動をさせるのがいちばんいい。
 たとえば、「文の中における主語と述語との照応に注意しで書くこと」「文の中における主語と述語との関係及び
修飾と被修飾との関係をはっきりさせて書くこと」「文と文との意味のつながりを考えながら、指示語や接続語を的
確に使うこと」「内容が読み手によく分かるようにするため、段落のはっきりした文章を書き、また、段落と段落と
の関係が論理的に理解しやすい文章を書くこと」というような文法事項は、実際に文や文章を書く活動を通さなけれ
                                                        65
ば、学習することは困難である。また、実際に文や文章を書いてみないと、そのような文法力が、身についているか
どうかさえも判断することはできない。
 ところで、児童の書いた文章を見ると、正しい文型で書いているところもあれば、主語・述語の照応しない文もあ
る。主語が二つ重なった文、述語が二つ重なった文もある。文と文とが適切に続いている文もあれば、適切でないの
もある。修飾語を適切に使ったものもあれば不適当なものもある。と、いうのが児童の作文の実状である。
 それらの文のうち、文法的に正しい文が書けているというのも、文法についての知識があって、それを頼りにして
文を書いているわけではない。文法についての何らの知識も理解もないのに、文法的に正しい文が書けるのである。
それは、児童が日常の表現方法の中で、聞いたり、話したり、読んだり、書いたりしている間に、文法を知識として
ではなく、感覚として(いわゆる文法感覚、ことばの使い方として)身につけているからである。
 そこで文法学習としては、その文法感覚をいっそう確かにするとともに、それを意識化していくところに、学習の
ねらいを立てる。
 また、主語・述語の照応していない文を書いている児童は、まだ、文における主語・述語の照応についての感覚が
確かに身についていないことを物語っている。そんな場合には、その文の誤りを直すことを通して、文法に合った正
しい文の書き方、ことばの用法を学習する。それを通して文法に合った文の脈絡の感覚―文法感覚が育てられてい
く。と同時に文法意識が高められる。つまり、誤った文を直すことによって文法意識を高め、正しい文法感覚を育て
るところに、また、別の文法学習が行われる。
 以上二つの文法学習は、いずれも消極的な学習法であるが、もっと積極的に、児童の文法力の発達に応じながら新
しい文法感覚も積極的に育てでいく学習も考えられる。いわゆる基本文型の計画的な学習指導というのがそれであ
る。
 このように考えてくると、作文学習の過程での文法学習の機会と場には、@既得の文法感覚を意識化して、文法意
識にまで高める。A誤った文を直して正しい文法意識を高め文法感覚を育てる。B積極的な基本文型の書き方を学習
                                                        66
して、新しい文法感覚・文法意識を獲得する、という三つの場が考えられる。

 2 作文における文法事実・文法事項の選択
 作文指導の過程で指導する文法事実・文法事項(ことばの用法・文型)は、二つの面から選ぶことができる。一つ
は、作文に当たって積極的に指導する文法事項を、児童の認識・思考の能力の発達に応じて、選択する。これらの文
法事項は、本書の「2 新文法指導の内容」(三〇ページ)の項に系統的・学年別にあげてある。
 二つは、児童の作文を分析して、誤ったことばの使い方、誤りあるいは、不適当な文と文の続き方、不適当な構成
の段落、段落相互の関係の不適切な文章などを系統的に選択する。どのような誤った文法事実を選択するか、その内
容については、本書の「二 体系文法か機能文法の機能的指導か」(一五ページ)に書いてある。
 (1) 学習基本文型
 児童が学習する基本文型は、児童の認識・思考の発達に応じたものでなければならない。また、児童が表現しよう
とする対象を具体的に考えて、その表現に必要な文型でなければならない。そのように考えると、学習基本文型は、
前にも述べたように児童が書く作文の中に現れる文型を、発達的に押さえて、それを参考にして決める必要がある。
 それらの文型は、形式的には
 @ 主語・述語の関係に立つ文  A 修飾・被修飾の関係を含む文  B 接続語を含む文
 C 並立語を含む文       D 指示語を含む文
などであり、その文の種類から言えば、単文・複文・重文であり、肯定文・否定文・命令文などである。
 また、表現対象からみれば、「経験」「感情」「思想」「知識」「情報」などである。それらの対象を表現するの
に必要な認識・思考・感覚・感情の基本になる事項は、「事実」「行動」「存在」「状態」「心情」「思想」である。
 したがって、前記の文法事項に裏付けられた次の文型を指導することになる。
 @ 事実表現の基本文型――「○○は○○です」を基本とし、修飾語・接続語・並立語・指示語等を含む文型
                                                        67
  ・弟はいたずらです。 ・ぼくの弟は、とてもいたずらです。 ・弟は、あぼれんぼうですが、心は親切です。
  ・弟は元気で、ぼくは健康です。のような文型。(「何は、何だ」の文型)
 A 行動表現の基本文型――「○○は○○する」を基本とし、修飾語・接続語・並立語・指示語等を含む文型
  ・チューリップがさきました。 ・赤いチューリップが三本さきました。 赤と白のきれいなチューリップが、
  花だんにそろってさきました。 ・あたたかい春が来たので、クロッカスやチューリップやいろいろな花が、に
  わいっぱいにさきました。 ・さくらの花はちってしまい、タンポポの花がいちめんにさき出した。
  ・めだかがあつまってきた。 ・かわいいめだかが、すうっとよってきた。 ・めだかは、すいすいとあつまっ
  てきたけれど、すぐにまたぱっと散っていった。 ・どのめだかも、みんな大きな目を持っていて、まるで目が
  およぎ回っているようだ。 ・めだかは水面に集まってきてはまた、さっと散らばり、かすかな波もんが広がっ
  ていく。(「何はどうする」の文型)
 B 存在表現の基本文型――「○○がある(いる)」を基本とし、修飾語・接続語・並立語・指示語等を含む文型
  ・犬がいる。机がある。 ・机の上に、本とえんぴつがある。・大きな強そうな犬が、道のまん中にいた。
  ・図書館から借りてきたまんがの本が、二さつ弟の机の上においてあり、エジソンの伝記は、ぼくの机の上に置
  いてある。(「何が、ある(いる)」の文型)
 C 状態表現の基本文型――「○○が○○ている」を基本とし、修飾語・接続語・並立語・指示語等を含む文型
  ・雨が降っている。 ・大つぶの雨が、ざあざあ降っている。 ・きのうから降り続いている雨は、まだ、やみ
  そうもなく降っでいる。 ・雨が急にざあざあ降ってきたので、池の水があふれ出ている。 ・雨も降っている
  し、風もふいている。(「何はどんなだ」の文型)
 D 心情表現の基本文型――心情の直接表現・心情の行動表現・行動を通した間接表現などの文型
  ・ぼくはうれしくなりました。 ・(ぼくは)うれしくて、うれしくて、思わずとび上がりました。 ・心がそ
  わそわしておちつきません。 ・ぼくはあわててかけ出しました。 ・一人になると、急に静かになったので、
                                                        68
  いそいでテレビのスウィッチを入れました。
 E 思想表現の基本文型――積極的な判断・消極的な判断・推理などの文型
  ・自動車で行くより、歩いたほうが、体のためにもいい。 ・よく考えて決めることがたいせつだ。 ・ぼくは
  それがいいと思う。 ・だまっているよりは、進んで発言するほうがりっぱだとぼくは思う。 ・犬だってしか
  られるよりは、ほめられるほうがいいらしい。 ・あれだけ努力したのだから、きっと合格するだろう。
 以上、それぞれの文型について、単文・複文・重文の例をあげてみた。実際には、それぞれの学年の発達に応じた
文型を選択する。
 (2) 誤った文、不適当な文
 ここでは、二、三年の作文を通して、誤った文、不適当な文について考察してみる。もともと、主語・述語の照応
した文が書けないというのは、「何が(は)どうする」「何が(は)どんなだ」「何が(は)何だ」「何がある(い
る)」というように、一つ一つのまとまった、包括的な判断(思考・認識)の型が、明確に成り立っていないことに原
因があると考えられている。したがって、そのような法則的な判断(主語・述語の照応)が、いわゆる文法感覚とし
てまだ成り立っていないと考えられる。だから「どこまでも長々と続いて断ち切れない文」を書いてしまう。
 また、一つ一つまとまりのある判断(主語・述語の関係判断・概念)が、次々に関係し合ってさらに大きなまとま
りの判断(概念)が組み立てられていく。その判断と判断との結びつきの状況は、児童の関係的思考の発達に応じて
いる。このころの関係思考は、順序の前後(時間的に、空間的に、行動的に、経験的に、作業的に)、いわゆる「そ
れから」中心の順序思考の発達する段階から、いわゆる「相即」「順接」「逆接」「因果」「累加」「比較」などの
関係思考へと発達している。
 だから、この段階では、長くだらだらと続ける不適当な文が目立って多い。それは、事象を小さく区切り、それを
適切に関係づけて続けて書くこと、つまり、そのようなまとまりとその接続の関係がよく把握できていないし、その
ような文の書き方が身についていないからである。
                                                        69
 ところで、選んだ誤った文、不適当な文は、次のように修正する。
 @ 主語と述語が照応するように修正する。
 A 主語あるいは述語の重複をそれぞれ修正する。
 B 文の筋道が通るように直す。
 C 文と文とを続けて一つの文にする。
 D 文と文との続き方の誤り、不適当なものを修正する。
 E 長い文を、いくつかの、主語・述語のまとまりのある文に区切る。
 以上の学習を通して、次のような文法感覚・文法意識を高める。
 @ 主語・述語の照応に対する感覚・意識
  o「何がどうする」の型 o「何が何だ」の型 o「何がどんなだ」の型 o「何がいる(ある)」の型
 A 主語・述語・修飾語・接続語・並立語を含む文(単文・複文)に対する感覚・意識
 B 文と文との続き方(接続語を含む)に対する感覚・意識
 次に参考に、二、三年の児童の書いた作文の中から、誤りの文、不適当な文をあげてみる。
 @ こぞうさんたちは、おしょうさんが食べてるのを知って、へんな名前をつけておしょうさんが、おもちをふう
  ふうといったので、一番小さいこぞうさんがきて、おもちをもらい、次にパクパクとこなをおとしました。
 A わたしはだいぶ頭にだいぶつけられてしまいました。
 B 急行に乗ったのは上野から乗りました。
 C やった人は、おばあちゃんとお父さんと重子ねえちゃんとわたしでやりました。
 D 行っ人は、いとことおじちゃんと行きました。
 E つぎにオーバーの売っている所に行きました。
 F ふじさわのおばあさんのうちには、校庭のちびっと小さいです。
                                                        70
 G うちへ帰ってからも、竹馬の練習がしたくてたまりません。
 H わたしとおねえちゃんで、にわに出て行ったらおじいさんにたこをもらいました。
 I さいしょわたしは、みつこしへ行くと思っていました。でも、いけぶくろのセーブでした。
 J 中でおねえちゃんの友だちがいたのでいっしょに高おにをして先生をまっていていすをはこびました。
 K タクシーに乗って、水戸のおばあさんにあまいお茶がしをかってバスに乗って次におりました。
 L マイクロバスで帰って温泉にはいってだれもいなかったのでかずみねえちゃんとおよぎました。
 M ぼくはじゆ業中にみんなと話しをしないこととリレーのせん手になれるようにかんのん様におまいりしまし
   た。
 N わたしのお父さんが、八ミリでそのお兄さんたちがけんこんした。
 O 時間は六時半におきてみんなはもう行ったと思ってもうねてしまいました。
  以上は、普通学校の普通の児童の作文の中にしばしば書かれる、典型的な誤りの文、不適当な文である。

 3 作文における新文法指導法の開発
 作文指導の過程での文法指導は、積極的に文法指導をする場合の方法と、消極的に用法指導をする場合とに分けて
考えられる。
 (1) 文作り(作文法)
@ 「何が――どうした」かを書く指導を通して、「主語・述語の照応した文」を書く指導
 学習する文型と文例
  ア 「だれが十何を十どうする」 イ 「だれが十だれと十何を十どうする」 ウ 「だれが十だれと十どこで
   十何を十どうする」
    ぼくは、でんしゃごっこをしました。
                                                        71
    ぼくは、あきらさんとはるおさんと、でんしゃごっこをしました。
    ぼくは、あきらさんとはるおさんと、うんどうじょうで、でんしゃごっこをしました。
    ぼくは、えをかきました。
    ぼくは、じどうしゃのえをかきました。
    ぼくは、じどうしゃとでんしゃのえをかきました。
    ぼくは、きょうしつで、じどうしゃとでんしゃのえをかきました。
A 修飾語の使い方
   「詳しく見て詳しく書く」指導を通して修飾語の正しい使い方を指導する方法
 学習する文型
  ア 「どんな十何が十どうする」 イ 「何が十どのように十どうする」 ウ 「どんな十何が十どのように十
   どうする」    (「どんな」――連体修飾語 「どのように」――連用修飾語)
 学習する文例
  ・みどりいろをしたかわいいめが、出ました。 ・赤と白ときいろのチューリップがさきました。 ・くろい
    小さいありが、すから出てきました。
  ・ありが、すのまわりをいそがしそうにあるいていました。 ・ありが、あっちへ行ったりこっちへ行った
    り、すのまわりを、いそがしそうにあるいていました。
  ・くろい小さいありが、すのまわりをいそがしそうにあるいていました。
G 接続語の使い方(接続助詞)
   「何がどうして、どうなった」かを書くことを通して接続語(接続助詞)の正しい使い方を指導する方法
 学習する文型
  ア 「何がどうしたから、どうした」 イ 「何がどうしたのでどうなった」 ウ 「何がどうしたけれど、
                                                        72
   どうなった」 エ 「何はどうしたし、何はどうした」
 学習する文例 
  F 雨がふってきたから、教室にはいりました。
  C 風がふいてきたので、教室にはいりました。
  F 朝ねはしたけれど、ちこくはしなかった。
  C 弟は自動車を作ったし、ぼくは電車を作った。
C 接続語の使い方(接続詞)
   「文と文とを続ける」学習を通して、接続語の正しい使い方を指導する方法
 学習する文型
  ア 「順序」の接続  イ 「順接」の接続  ウ 「因果」の接続  エ 「逆接」の接続
 学習する文例
  ア 三時ごろ学校から帰ってきました。それから、野球をやりにいきました。
  イ まわりの線を引きました。そうして、その中をクレヨンでぬりました。
  ウ 熱い牛にゅうをコップに入れました。そうしたら、コップが急にわれてしまいました。
  エ 門の前で春子さんをまっていました。けれども、春子さんは出て来ませんでした。
 以上「文作り」による文法学習の例を二、三あげた。この方法は、形式的に文を作って、文型・文法の学習をする
ことを意味しない。必ず、具体的な見聞、行動、経験などについての認識、思考の結果を文で書くように指導するの
が原則である。詳細は実践例を参照されたい。
 (2) 文直し(修正法)
@ 主語・述語の誤りを修正する方法
  主語・述語の照応していない文を正しく修正することを通して、主語・述語の照応のさせ方を理解し、主語・述
                                                        73
 語の照応に対する感覚を育てようとする方法である。
 ア 修正する文例
   oやった人は、おばあちゃんとお父さんとしげ子ねえちゃんとわたしでやりました。
 イ 修正の基本になる文型
    「何は――何だ」の文型にあたることを確認する。
 ウ 修正した文
   oやった人は、おばあちゃんとお父さんとしげ子ねえちゃんとわたしです。
A 修飾・被修飾の関係の誤りを修正する方法
  「修飾・被修飾の関係」が適切でない文を正しく修正することを通して、連体修飾語・連用修飾語の正しい使い
 方を理解し、修飾・被修飾の関係に対する感覚を育て、文法意識を高める方法である。
 ア 修正する文例              ゛
   oわたしはだいぶ頭に、だいぶつけられてしまいました。
 イ 修正の基本になる文型
    「何が十どのように十どうした」の文型に当たることを確認する。(「どのように」――連用修飾語)
 ウ 修正した文
   oわたしは、頭にだいぶ(すみを)つけられてしまいました。
B 接続の(接続助詞)関係があいまいな文を修正する方法
  「接続の関係」が明確でない文を修正して、接続のさせ方を理解し、正しい接続関係に対する感覚や意識に培う
 方法である。
 ア 修正する文例
   oマイクロバスで帰って温泉にはいってだれもいなかったので、かずみねえちゃんとおよぎました。
                                                        74
 イ 修正の基本になる文型
    「○○したが十〇〇だったので十〇〇と十〇〇しました」・の文型に当たることを確認する。
 ウ 修正した文
   oマイクロバスで帰って、温泉にはいりましたが、だれもいなかったので、かすみねえさんとおよぎました。
C 文と文との続きがあいまいな文を修正する方法
   「接続語」の働きに合わせて、前後の文を修正することを通して、接統語の機能を理解し、文と文との正しい
   承接関係に対する感覚や意識に培う方法である。
 ア 修正する文例
   oさいしょわたしは三越へ行くと思っていました。でも、いけぶくろの西武でした。
 イ 修正の基本になる文型
    「逆接の接続語『でも』を中心にして、前の文とあとの文が照応する」ような文型
 ウ 修正した文
   oさいしよ、わたしは三越へ行くのだろうと思っていました。でも、行ったのは。いけぶくろの西武でした。
D 助詞の誤用を修正する方法
  主語・述語の照応を基本として、修飾語・接続語・並立語などを含む文脈を通して、違和感を覚えるところから
 修正して、正しい助詞の使い方を感覚的にわかるように指導する方法
 ア 修正する文例
   o次にオーバーの売っているところへ行きました。 oふじさわのおばあさんのうちのにわは、校庭のちょび
    っと小さいです。
 イ 修正の基本になる文型
   「何を――どうする」の文型に当たること、「何は――何より――どんなだ」の文型に当たることを確認する。
                                                        75
 ウ 修正した文
   o次にオーバーを売っているところへ行きました。 oふじさわのおばさんのうちのにわは、校庭より、ちょ
    びっと小さいです。
E 文を区切って修正する方法
  文が長すぎて、その構成がはっきりしない、筋道が通らない場合は、文を短く区切って、筋道の通った文に書き
  直す。その指導によって文の構成を明確にする方法である。
 ア 修正する文例
   o時間は六時半におきて、みんなはもう行ってしまったと思って、もうねてしまいました。
 イ 修正の基本になる文型
   文を読んで、内容のまとまりごとに区切る。@六時半におきました。Aみんな行ってしまったと思いました。
   Bまたねてしまいました。この三つのまとまりを続けて文に書く。
 ウ 修正した文
   o朝は六時半におきました。(少しおそかったので)みんなはもう行ってしまったと思いました。(そこで)
    またねてしまいました。 ・おきたのは六時半でした。(少しねすぎたので)みんなはもう行ってしまった
    と思いました。(もうあきらめて)また、ねてしまいました。
 これらの文法学習法で大事なことは、文字面だけを見て、形式的に修正しようとするのでなく、それぞれ経験の原
点にもどったり、記憶をたどったりして、表現事項(書こうとした事柄)を確認した上で、修正することである。と
いうことは、例にあげたように、このような文型をよりどころにして修正する、つまり、そのような文型感覚・文法
感覚をよりどころにして修正するというように指導することが大事である。

 4 作文における文法学習の機会と新文法学習の指導過程
                                                        76
  (1) 作文における文法学習の機会
 作文学習は、一般に@題材を選択する。A書く事柄を収集する。B書く事柄を組み立てる。C組立をたどって叙述
・表現する。D叙述・表現を修正する。E文章を完成処理する。この五つの過程をたどって指導するのが普通である。
この作文の学習指導過程の中で、文法学習ができる過程を考えてみる。
 その一つに、前記Bの書く事柄(表現内容)を組み立てて、文章のアウトラインを作る過程がある。書く文章のア
ウトラインというのは。題材(主題)を中心にして、書く内容をいくつかの段落にまとめる。その段落相互の関係を
はっきりさせ、筋道の立った文章の骨組を作る。そうして作った文章の組立のあらましである。
 段落の構成や文章の段落相互の関係については、読解の過程で理解する学習が行われている。そこで得た理解にも
とづいて、段落を組み立てる。段落相互の関係を正しくして、文章を組み立てるなどの学習は、このアウトラインを
作る過程で、最も生産的な学習が行われる。この学習を通して、段落の構成力、文章の構成力を伸ばすとともに、そ
こに働く法則性、論理性に対する感覚・意識を高めることになる。
 第二の機会は、前記Cの、アウトラインをたどって文章を書く――叙述・表現する過程である。ここで学習できる
文法事項は、主語・述語の照応した文の書き方、修飾語・接続語の用法、指示語の用法、それらと結びついた助詞の
用法など、語の用法に関する事項、文の構成に関する事項、文と文の接続に関する事項、段落相互の関係に関する事
項などである。
 第三の機会は、前記Dの叙述・表現を修正する過程――書いた文章の誤りや不備や不適当な事項を修正する過程で
ある。ここでは、ことばの用法の誤り、文の構成の誤りや不適当なもの、文と文の接続の誤りや不適当なものなどに
ついて、文法感覚・文法意識にもとづいて修正する。
 以上三つの機会は、作文における文法指導の好機で、生産的な文法学習が期待される。
  (2) 新文法学習の指導過程
 前記の文法学習の機会は、一般に計画的にまとまった文章を書く場合のことである。一年生のような初歩的な作文
                                                        77
指導では、それがそのまま文法学習になっている。というのは、一年生の作文は、語と語とを続けて文を書く、文と
文とを続けて簡単な文章を書く、事柄の順序をたどって文章を書くことなどについて指導することになっている。
 そのように文や文章を書くためには、当然「ことばの用法」「主語・述語の照応した文の書き方」「文と文との続
け方」についての学習・指導をしなければならないからである。児童は、そのような学習を通して基本的な文型に対
する感覚、文法感覚を身につけていくことになる。その場合の文法学習の指導過程をあげてみる。
  見たこととしたことを、基本文型で書く学習指導過程
 1 学習目標
   見たこと、したことを「だれが(は、も)――何を――どうした」の文型で話したり書いたりする学習を通
  して、主語・修飾語・述語の照応した文を書くとともに、その文型感覚・文法感覚を養うことができる。
 2 学習指導過程
  (1) 学習の目あてを決める。
    図工の時間にどんな絵を書いたか、話したり書いたりして文の書き方を勉強する。
  (2) 図工の時間にどんな絵を書いたかを話す。
     (例)o自動車をかきました。 oチューリップの花をかきました。
       oぼくは、ひこうきをかきました。 oぼくも、ひこうきをかきました。
       oわたしは、花とちょうちょをかきました。 oぼくは自動車と人をかきました。
  (3) 話した文を板書して、「だれが」「何を」「どうした」に分ける。
   @ 話の中から基本的な文型を選んで板書する。
   A 書いた文を、話し合いながら、「だれが」「何を」「どうした」の三つの部分に色別に区切る。
     (例)  「だれが」――ピンク  「何を」――みどり  「どうした」――白
   B みんなで音読する。
                                                        78

   だれがなにをどうした
    |    |    |
   ぼくはひこうきをかきました

   ぼくもひこうきをかきました

   わたしははなとちょうをかきました

       ぼくはじどうしゃとひとをかきました 

  (4) 各自どんな絵をかいたかを学習シートに書く。
   @ めいめい基本的文型を使って文を書く。
   A 書いた文を読み返して、適当でない文は直す。
  (5) 絵はどのようにかけたかを続けて書く。
   @ 絵はどのようにかけたかを話す。
    (例)oじょうずにかけました。 oきれいにかけました。 oとでもきれいにかけました。
   A 前の文に続けてかく。
    (例) ぼくは、ひこうきをかきました。じょうずにかけました。
        わたしは、はなとちょうちょをかきました。とでもきれいにかけました。
  (6) 書いた文を音読して紹介し合う。
 この学習過程の基本は、@文を書く。(適切な文型、書き方を確定する)A書いた文をささえる法則性(文法)を
発見する。(文法を意識化する)B発見した文法を適用して文を書く。この三過程になっている。
                                                        79

     四 シミュレーションによる新文法指導の方法

 1 シミュレーションとは何か
 シミュレーション(simulation)というのは、いわゆる模擬学習である。戦前からよく行われていた「ごっこ遊び」
「ごっこ学習」を、科学化し工学化した新しい国語科学習法である。わたくしどもは、七、八年前から、この学習法
を開発し、以来たえず実践検討を加え今日にいたっている。
 これまで述べてきた機能的文法の機能的指導、それは、読解学習の過程、作文学習の過程で行う文法学習であるか
ら、機会的、機能的で、いわゆる「出たとこ学習」の孤立学習に終わるおそれがある。したがって、現状では、文法
学習に絶対必要な、児童の文法力の発達に応じた段階的、系統的学習を計画することはほとんどできない。
 そこで、文法学習の原則と考えられる、読解・作文を通して行う機能的方法より、はるかに生産性が高く、しか
も、段階的、系統的学習を可能にする学習法、それがこのシミュレーションによる文法学習法である。
 この方法では、まず複雑な経験的学習を分析して、システム要素を抽出し、それを簡明にシステム化して、シミュ
レーションモデルを編成する。たとえば、読解学習の過程で行う文法学習を分析しでみると、
 の 内容を理解するために文章を読む。
 A その内容を理解する過程で、いろいろな文法事実に出会う。
 B その文法事実をささえている法則性(文法)に気づく。
 C 法則性を文法感覚として具体的に確かめる。
 という過程をたどって文法学習は行われる。この過程を要素的に分析してみると、次のようになる。
 @ 文法事実を経験する。
                                                        80
 A 文法事実をささえている法則性を発見する。
 B 法則性を文法として意識化する。
 シミュレーションモデルは、この三つのシステム要素を含めたシミュレーションモデルを編成する。

 2 シミュレーションのモデル指導過程
 前に書いたように、シミュレーションモデルは、経験的、機能的に行う文法学習の過程を分析して得た、その過程
を成り立たせている要素を選び出してシステム化したものである。したがって、シミュレーションモデルによって行
う文法学習は、読解や作文を通して行う文法学習より、はるかにむだがなく、簡明で筋道が通っていて、しかも、だ
れでもまちがいなく指導できる、科学性、経済性、したがって生産性の高いものである。
 また、従来取り出して行う、あるいは系統的に行う文法学習の多くが、形式的な文法知識の詰め込み指導に終わっ
ていて、児童に文法学習の興味を失わせている。それに対して、この方法のよさは、前に書いたほかに、児童が自分
で、文法事実の中にある法則性、文法を発見する、驚きと喜びとを満足させる点にある。したがって、文法の自己学
習ができて、生きた文法の力を自分で身につけることができる。次にそのシミュレーションのモデル指導過程をあげ
る。
  @ 文法的事実を経験する。
    (例)oテレビを見た。それから、本を読んだ。o友だちを迎えに行った。けれども、友だちはいなかった。
  A 文法的事実の共通点に気づく。
    (例)文と文の間にことばがある。「それから」と「けれども」。
  B 文法的事実の共通点を整理する。
   (例)「それから」「けれども」は、前の文の意味を受けて、あとの文に続ける働きをする。このように、文
      と文を「続ける」働きをすることばを「続けることば」「接統語」などとよぶ。
                                                        81
  C 文法的事実を貫く法則性(文法)に気づく。
   (例)「続けることば」は、どれもみな文と文とを続ける働きをし、その続け方は、続けることばによって異
      なる。
  D 法則性(文法)を、感覚的に記憶する。
   (例)「続けることば」の「働き」と、「続け方」に対する感覚(文型感覚・文法感覚)を育てる。文を読み、
      書くこと、聞き、話すことを通して。
  E 法則性(文法)を言語行動に適用する。
   (例)接続語を使って文と文とを続ける。
 要するに、この学習指導過程は、ていねいに細かく区切って示してあるが、@文法事実を経験する、A法則性(文
法)を発見する、B文法を適用して文を書くの三過程にまとめることができる。

 3 シミュレーションにおける文法学習法、指導法
 (1) 組み立てる(組立法)――文の構成
 文を組み立てている要素(主語・述語・修飾語・接続語など)をカードに書く。そのカードを操作して文を構成す
る方法。文の構成要素は同じでも、表現意図に応じて、いろいろな文を構成する場合に用いると便利である。
 (2) 比べる(比較法)――文法感覚
 正しい文と正しくない文、いろいろな接続語を使った文、いろいろな指示語を使った文などを読み比べて、正誤、
適否を感覚的に判断する方法。文法感覚の評価にも使われる。
 (3) 続ける(完成法)――文法感覚、語の用法
 「いそいで学校へ行った。けれども、……」「ぼくは、けっしてどこへも……」というような文のあとを続けて文
を完成する方法。接続語に応じて、あとの文を作る。文の中におけることばの呼応関係に応じたことばを使うなど。
                                                        82
文法感覚が成り立っているかどうかわかる。
 (4) うめる(充当法)−文法感覚、語の用法
 「いそいで学校へ行った。  、遅刻してしまった」「学校から帰るといつも、マンガを読んだりテレビを  
る」のような空白にことばを当てはめて文を完成する方法。穴埋め法とも言われている。
 (5) 作る(作文法)――文型の学習、語の用法
 「机の上に漫画の本が置いてある絵」「庭でなわとびをしている絵」などを見て、「机の上に漫画の本がある」「漫
画の本が机の上にのっている」「○○さんが、庭でなわとびをしている」「庭で○○さんがなわとびをしている」な
どのように文を作る方法。絵によって文法事項を簡潔に示す。基本文型、修飾語の用法、接続語の用法、並立語の用
法、文と文との続け方などの学習に使われる。
 (6) 順序を直す――文の構成
 文を組み立てている要素を、その係り受けに関係なく語順を変えて並べる。その順序を正すことによって、係り受
けの関係の正しい文にする方法。
 (7) 文の中での語の係り受けの関係の示し方
 文の中での主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係、並立の関係など、文節や連文節の係り受けの関
係を、視覚的にもわかるように示す方法。@ことばのまとまりごとに四角で囲む方法(関係は色分けで示す)、A係り
受けの関係を図で示す方法、B係り受けの関係を線で示す方法、C係る、受ける、並べる、まとめる、広げるなどの
関係を記号で示す方法などがある。
 これらの学習法、指導法は、具体的には、あとの実践例によって示す。
                                                        83


  V 読解における新文法学習の実践




     一 主語・述語の照応に注意して読む指導

 主語・述語の照応に注意して読むことは、一年で指導する文法事項である。「何が―→どうする」「何が―→どん
なだ」「何が―→何だ」「何が―→いる(ある)」というような単純な文型は、それが最も基本的な主・述関係を示す
ものであるから、確固たる文法感覚を育てなければならない。したがって、一年の初めごろに、話す・書く表現学習
の際に文法技能として確実に身につけるようにする。
 しかし、読解の際に出会う主・述照応の文は、単文ばかりでなく、かなり複雑な構成の複文にしばしば接すること
になる。そこで、「どんな十何が―→どのように十どうした」とか、「どんな十何が―→どのように十どうしたので
―→何が―→どうなった」とかいうように、主語・述語の関係を正しく押さえて読まないと、正しく、あるいは、深
く読みとることはできない。ただ、しかし、たとえそのように正しく深く理解したとしても、それだけでは文法学習
にはならない。
 内容を正しく深く理解することを通して、つねに「何か」に対応する「どうする、どんなだ、なんだ、いる(あ
る)」があることを意識し、その文法感覚をいっそう確かにすることが重要なのである。
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 1 「くじらぐも(なかがわりえこ)」のなかで
(1) 教材(光村本、一年下)
  四じかん目の ことです。
  一年二くみの 子どもたちが たいそうを して いると、空に、大きな くじらが あらわれました。まっ
 しろい くもの くじらです。
         ×
  みんなが かけ足で うんどうじょうを まわると、くもの くじらも、空を まわりました。
  せんせいが ふえを ふいて、とまれのあいずを すると、くじらも とまりました。
(2) 学習目標 
  場面の様子が目に浮かぶように読みとるとともに、「何が、どうすると、何がどうした」というような、主語
 と述語の照応に気づくことができる。
(3) 学習指導

@ 場面のだいたいの様子を読みとる。
 T どんな様子が目に浮かびましたか。
 C 一年二組の子どもがたいそうをしているところが
  目に浮かびました。
 C 大きなくじらが出てきました。
 C まっ白いくじらの雲があらわれました。
A 場面を組み立てて、その様子をはっきりさせる。
 T それでは、二組の子どもの体操と、雲のくじらは
  別々に現れたのですか。
 C いっしょに現れました。
 T どこでそれがわかりますか
 C 「一年二組の子どもたちがたいそうをしている
  と」と書いてあります。
 C 体操をしているときくじらが現れました。
 T それでは、「だれがどうしている」ときですか。
 C 「一年二組の子どもたちが体操をしているとき、
 

                                                        85
                                                       

  いっしょにくじらが現れました。
 T それがよくわかるように書いてみましょう。
 たいそうをしていると
 ―あらわれました。
 T 「だれが、何が」の所は赤いチョークで囲みまし
  た。「どうする」の所は、白いチョークで囲みまし
  た。こうすると、「だれが――どうすると、何がど
  うした」かがよくわかります。
  (主語・述語の照応を、意味的にも視覚的にもわか
   るようにする。)
B 「だれが、どうすると――何が、どうした」かをた
 どって、場面の様子を想像しながら読む。
 T それでは、様子をよく思い浮かべながら読んでみ
  ましょう。(教師、「運動場では」「空には」と助
  言をする。)
 C めいめい自由に微音読する。
 T 今度はどんな様子が目に浮かびましたか。
 C 一年二組の子どもたちがはりきって体操している
  と、空に、大きな雲のくじらが、体操を見ようと思
  って、現れました。 
 C 運動場で、一年二組の子どもたちが、手を上げた
  り下げたりして、一生けんめい体操していると、空か
  ら体操を見ようと思って、雲のくじらが現れました。
C 「何がどうする」の主語と述語の照応を感覚的に身
 につけるとともに、主・述の照応を意識化する。
 T みんなよく場面の様子がわかりましたね。「だれ
  がどうしたのだろう」と、様子を思い浮かべながら
  読んだからですね。今度は、次の場面を読んでみま
  しょう。(以下同じように指導して、次のように板
  書する。)
 かけ足で|うんどうじょうを|まわると
 ―空を|まわりました。
 ―ふえをふいて|とまれのあいずを|すると
 ―とまりました。
 以上のように。内容の理解を正しくし、深めていく過
程で、主語・述語照応の感覚(文法感覚)を育て、意識
化(文法意識)する。なお、学習シートを用意し、児童
にも書かせると、意味的に、視覚的に、行動的に文法学
習を行うことができる。
 

                                                        86
 2 「じどう車のなかま(説明文)」のなかで
 (1) 教材 (各段落の初めに、その自動車の機能の説明、そのあとに構造の説明がある。構造の部分は省略)
   それぞれのじどう車をくらべてみると、はたらきやつくりがちがいます。
   バスやじょうよう車は、人をのせてはこぶじどう車です。
   トラックは、たくさんのしなものをのせてはこぶじどう車です。
   タンクローリーは、ガソリンやとうゆなどをはこぶじどう車です。
   ミキサー車は、コンクリートがかたまらないようにかきまぜながらはしるじどう車です。
   クレーン車は、おもいものをつり上げるじどう車です。
   しょうぼうじどう車は、火じのときにはたらくじどう車です。 (光村本・一年下)
 (2) 学習目標
   いろいろな自動車の機能や構造のあらましを、正確に理解する能力を伸ばすとともに、「何は――何だ」の基
  本文型に対する感覚(文法感覚)を確実に育て、また、意識化(文法意識)することができる。

 (3) 学習指導
@ 学習課題を決める。
 T 「じどう車のなかま」の最初のでページを読んで
  みましょう。どんなことと、どんなことが書いてあ
  りますか。
 C 町の通りにいろいろな自動車が走っでいること。
 C 自動車を比べると、自動車のはたらきやつくりが
  違うこと。
 T 自動車の「はたらきやつくり」は何のことか。
 C 何に使うかと形のこと。
 T いろいろな自動車を比べてみると、自動車の働き
  と組立が違うということですね。それでは、
  どのじどう車はどんなはたらきをするか
  を読んで調べてみましょう。

                                                        87

A 「どの自動車は――どんな働きをする自動車か」を
 調べて、学習シートに書き出す。
 T どの自動車は、どんな働きをしますか。
 C バスやじょうよう車は、人を乗せて運びます。
 T バスやじょうよう車は、人を乗せて運ぶ自動車で
  すねと言って黒板上にカードを並べて示す。
 人をのせてはこぶ
  はピンク、   は白いカード)
 T バスとじょうよう車と別々に言うとどうなります
  か。
 C バスは、人を乗せて運ぶ自動車です。
 C じょうよう車は、人を乗せて運ぶ自動車です。
 T その二つをいっしょに言うときには、「バスやじ
  ょうよう車は、人をのせてはこぶじどう車です」と
  言います。それでは、シートの「―」のところに書
  いておきましょう。
 C 各自シートに書く。
 T 今度は、「何は」「どんなじどう車ですか」を調
  べて書きましょう。



 この「何は、どんな何だ」という主語・述語の照応し
た文型が六回も提出されている。このように内容の理解
 C 読んで
 たくさんのしなものをのせてはこぶ
 自動車です。
 とシート「2」に書く。
 T(書いたものを何人か読みあげさせた後)「たくさ
  んの品物をのせで運ぶ自動車」は何ですか、と聞
  く。
 C トラックです。
 T それを文に書くとどうなりますか。
 C 「たくさんの品物をのせて運ぶ自動車は、トラッ
  クです。」と書きます。
 T あとは、自分で「何は」「どんな何か」を調べて
  シートに書きましょう。(以下同様にして次のよう
  にシートに書き出す。)
  ガソリンやとうゆなどをはこぶ
  自動車です。
  コンリートが|かたまらないように
  かきまぜながら|はしるじどう車です。




学習をしている間に、この文型、主・述照応の文法は感
覚化されて身につくと思われる。
 




















  88 


     二 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係を明確にして読む指導

 文の意味を理解する場合、単文では「どんな十何が―→どのように十どうする」という主語・述語の関係は一回限
りであるから、かなり長い文でも、主語・述語の関係を明確に押さえて理解することができる。
 また、修飾・被修飾の関係にしても、修飾語(くわしくすることば)のうち、連体修飾語(どんなのことば)の被
修飾語は、「主語になることば(なにのことば・名前のことば)」であり、連用修飾語(どのようにのことば)の被
修飾語は、「述語になることば(どうするのことば・どんなだのことば・なんだのことば・ある(いる)のことば)」
であるから、修飾語の区別も、被修飾語の区別もはっきりしていて、誤ることはまずない。したがって、理解困難を
起こすことはあまりない。
 ところが、複文になると、主語・述語の関係を含んでいる修飾語(修飾語節のほか、接続語節もこの中に含めて考
える。連文節の考えを取り入れてもいい)を含めて、さらに主語・述語の関係が成り立っている。つまり、二回以上
主語・述語の関係が成り立っているから、それらの関係を明確にしていかないと、理解困難を引き起こしたり、あい
まいな理解、不徹底な理解におちいったりする恐れが多分にある。
 だから、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係を明確に押さえることによって初めて、意味の理解を正確にした
り、深くしたりすることが可能になる。そのような手だてを講じて、正しく、詳しく、深く理解する中で、主語・述
語の関係、修飾・被修飾の関係に対する感覚をより確かにし、より意識化していくところに文法学習があることは、
前にも述べた通りである。
                                                        89
 1 「人間とチンパンジー(説明文)」のなかで
 (1) 教材 (指導する文法事項が適切に含まれている部分のみあげる) (光村本・三年下)
   チンパンジーは、このありづかの小さなあなを見つけると、近くの木の皮をはいできて、歯と手をうまく使っ
  て、長さ二十センチメートルぐらいの細いぼうを作ります。そして、そのぼうを、ありづかのあなにさしこみま
  す。シロアリたちは、てきが入ってきたと思って、大さわぎでぼうにかみつきます。しばらくすると、チンパン
  ジーは、ぼうをそっと引き出して、いっぱいついているシロアリをペロリと食べるのです。チンパンジーは、何
  度もこれをくり返します。
 (2) 学習目標
   チンパンジーが、知恵を働かせてシロアリを取って食べる事実を、筋道を立てて正確に読みとるとともに、単
  文における、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係に対する感覚を育て、文法意識に培うことができる。

 (3) 学習指導
@ 学習課題を設定する。
  「チンパンジーは、どんなやり方を工夫して、シロ
  アリを取って食べますか。」
A 方法・手順を読みとって話す。
 T チンパンジーは、どんな方法で、どうやってシロ
  アリを取って食べますか。順に話してください。
 C チンパンジーは、ありづかの小さいあなを見つけ
  ると、木の皮で細いぼうを作ります。それから、そ
  のぼうを穴にさしこみます。すると、シロアリたち
  は、敵が入ってきたと思って、ぼうにかみつきま
  す。そのぼうを引き出してシロアリを食べます。
 C チンパンジーは、ありづかの穴を見つけると、木
  のぼうを作って、穴にさしこみます。ありが大さわ
  ぎをしてぼうにかみつきます。そのぼうを引き出し
  てシロアリを食べます。
 T 次のように板書する。児童はノートに書く。
  @ チンパンジーは。ありづかの小さいあなを見つ
   ける。
  A 木の皮で細いぼうを作る。

                                                        90

  B そのぼうを、ありづかのあなにさしこむ。
  C シロアリたちが、ぼうを敵と思ってかみつく。
  D チンパンジーは、ぼうを引き出して、ついてい
   るシロアリを食べる。
  E それを何度もくり返す。
B 方法・手順をたどって正確に詳しく読みとる。
 T それでは、チンパンジーが、ありづかのシロアリ
  を取って食べるまでの方法と、順序を詳しく調べて
  みましょう。チンパンジーが見つけた「このありづ
  かの小さなあな」の「この」というのは、何をさし
  ていますか。
 C シロアリが、ありづかのあちこちに作った小さな
  出口です。
 T 板書 ありづかのあちこちにある小さな出口
 T (次のように、カードを並べてから)それから、
  何で、どうやって、どんな、何を作りましたが。
 C 近くではいできた木の皮で、自分の歯と手をじょ
  うずに使って、二十センチメートルぐらいの長さ
  の、細いぼうを作りました。
 T 次のように板書する。
  oだれが――チンパンジーが.
  oどうすると――ありづかの小さなあなを見つけると
  oなにで――近くではいできた木の皮で、
  oどうやって――自分の歯と手をじょうずに使って、
  oどんな――二十センチメートルぐらいの長さの
  oなにを――細いぼうを
  oどうした――作りました。
 T この段落には、このように「だれが」「どうする
  と」「なにで」「どうやって」「どんな」「なにを
  「どうした」ということが書いてありますね。それ
  がよくわかるようにカードに書いて並べてみましよ
  う。
   (話し合いながら、次のように組み立てる)

                                                        91


C 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係を明確にす
 る。
 T 並べ終わったら、それを読んでみましょう。
  「何が」と「どうする」を読んでみましょう。
  「どのように」 「どうする」を読んでみましょう。
  「どんな」 「何を」を読んでみましょう。
  全体を読んでもう一度意味をはっきりと読みとりま
  しょう。
 こうして、長い単文の意味を正確に読みとるとともに
主語・述語の関係、修飾・被修飾に対する感覚を確かに
し、意識化するようにする。


 2 「人間とチンパンジー(説明文)」のなかで
 (1) 教材 (光村本・三年下)
   この二つのことでも分かるように、チンパンジーは、道具を作って、それを使っているのです。シロアリとり
  のぼうも、水飲みのスポンジも、わたしたち人間からみると、道具とはよべないようなものかもしれません。人
  間の道具は、たいへんこみいっているし、くり返し使えるように作られていますが、チンパンジーのは、形もか
                                                        92
  んたんだし、そのとき使って、それきりすててしまうのです。道具のしゅるいも、ごくわずかで、道具ときかい
  にとりまかれている人間とは、くらべものになりません。けれども、外の動物が、水たまりにじかに口をつけ、
  えものにじかに食いつくだけのと比べると、チンパンジーは、かんたんながらりっぱに道具を作り、それを使い
  こなしているのです。
   この文章は、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係などが、複雑だからよほど、しっかりと筋
  道を立てて読んでいかないと、理解できない。本来、このような理解困難を起こす文章こそ、児童の文法意識を
  刺激し、喚起するものであるが、それにしても、三年生には少しむずかしすぎると思う。
   特に「たいへんこみいっているし」「形もかんたんだし」「人間とは」は、それぞれ「たいへんこみ入ってい
  て」「形もかんたんだから」「人間のとは」とすべきであろう。したがって、筋道をたどる程度にとどめておい
  た。
 (2) 学習目標
   複雑な構成の文章を筋道をたどって理解し、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係などについ
  ての意識を高めることができる。

@ 文章を読んで大体の意味を理解する。
 T 文章の中の「何が(は)」を押さえて、それが「ど
  うなっでいるか」を考えながら読んでみよう。どん
  なことが書いであるか箇条的に書き出してみる。
 C チンパンジーは道具を作って使う。
 C シロアリとりのぼうも、水飲みのスポンジも、道
  具とは呼べないのかも知れない。
 C 人間の道具は、こみ入っていてくり返し使えるが
  チンパンジーの道具は、簡単で使うと捨ててしまう。
 C 道具の種類はわずかで、人間のとはくらべものに
  ならない。
 C 外の動物に比べると、チンパンジーは簡単だけれ
  ど道具を作って使っている。
A 箇条的に板書して筋道をたどる。
 T 板書する。
  1 チンパンジーは道具を作って使う。


                                                        93

  2 シロアリとりのぼうも、水飲みのスポンジも道
   具とはよべないないかもしれない。
  3 人間の道具はこみ入っていてくり返し使うが、
   チンパンジーのは、かんたんで使うとすてる。
  4 道具の種類もかんたんで、人間のとはくらべも
   のにならない。
  5 外の動物のと比べると、チンパンジーは、りっ
   ぱに道具を作って使っている。
 T ずっと読み通して筋道をつかんでみよう。
 C チンパンジーは、道具を使うが、簡単で道具とは
  言えないものかもしれない。
   人間の道具は、こみ入っていてくり返し使うが、
  チンパンジーのは簡単で使うと捨ててしまう。
   道具の種類も人間のとは比べものにならない。
   しかし、外の動物のと比べると、チンパンジーは
  りっぱに道具を作って使っている。
 T そういう筋道になりますね。
B 主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係を押さえて
 正確に意味を理解する。
 T 特に「何は」「どのように」「どうする」が、「何
  は」「どのように」「どうする」というように、正
  確に読みとって書いてみよう。(話し合いながら次
  のようにまとめる。)

                                                        94

             
C 全体の意味を押さえながら、主語・述語の関係、修
 飾・被修飾の関係を明確にする。
 あまり単純な文では、文法感覚が身についているから
文法意識は喚起されない。実際には、もう少しやさしい
もので、児童の文法意識を喚起するものを選ぶといい。



     三 文と文との接続の関係に注意して読む指導


 「文と文との接続に注意して読むこと」は、三年生で指導する文法事項になっている。が、実際には、二年生のこ
ろからしばしば接して、感覚的には接続語の働きがわかっていると思う。
 文と文とを接続するには、普通接続語(接続詞)を使う。その接続語の働きを理解し、いろいろな接続の仕方のあ
ることを、文章を理解する過程で、接続語を通して具体的に指導する。実際に読解学習で児童が出会う接続語は、機
会的で、ばらばらで、系統的ではない。したがって、随時、随所で指導する。それらをまとめて、系統立てて、指導
するには、シミュレーションによる。
 文と文との接続は、前の文を受けて、あとの文に係っていくのが、本来の機能である。そのあとの文への係り方を
限定するのは、接続語(続けることば)であって、そのことばによって係る状況が異なる。
 三年生ごろに出会う接続語は、普通「順序(それからなど)」「順接(そしてなど)」「逆接(けれども、しかしな
ど)」「累加(しかもなど)」である。
 なお、文の中で使われる接統詞、接続助詞についても、ここで取り扱うことにする。また、接続助詞を含む接続語
節は、接続語としで扱わず、修飾語の中に含めた。
 接続語は、機会的に随時出てくるので、ここでは、文例をあげて、その指導の一例をあげることにする。したがっ
                                                        95
てまとまった文章よりも、接続語を含む文法事項をあげるにとどめる。

 1 「深海にすむ魚(説明文)」のなかで
 (1) 教材 (教出本・三年下)
  @ おどろくほど水の重さがかかっている世界には、生物は何もすめないと考えていたのです。しかし、今で
   は、深海にもたくさんの魚がいることがわかっています。
  A 深海魚は、黒っぽい体をしています。なかには、体がすきとおっているものや自分で光を出すものもいま
   す。これらは、たぶん、太陽の光がとどかないためでしょう。また、大きい口やいぶくろを持っているものも
   います。
  B 馬のたてがみのような赤いせびれを持っています。そして、すきとおった体を銀色に光らせながらゆうゆう
   と泳ぎ回っています。
  C カイアズマドンという魚は、いぶくろがたいへん大きくて、しかも、自由にのびたりちぢんだりするので
  す。
 (2) 学習目標
  前後の文の意味の関係を正確に理解するとともに、接続語「しかし・また・そして・しかも」の機能をそれぞ
  れ理解し、文法感覚、文法意識に培うことができる。
 (3) 学習指導
@ 「しかし」の指導(逆接の指導)
  前の文の意味を「日光が届かず、水圧の高い世界には、生物は何も住めないと考えていたこと」を確実に押さえ
 させる。それに反して「今では、深海にもたくさん魚がいることがわかっている」事実を押さえさせる。この前文
 と後文との意味の違いを――前文の意味を受けて、それとは逆な後文の意味を引き出す働きをしているのが「しか
                                                        96
 し」であることをわからせる。「しかし」は、前文とは逆な関係にある後文とを接統する働きをしている。
A 「また」の指導(追加の指導)
  前に書いてある、深海魚には、黒っぽい体をしているもの、体がすきとおっているもの、自分で光を出すものな
 どがいることを理解させる。そのほかに、大きい口やいぶくろをもっているものもいることをわからせる。その上
 で、「また」は、前に書いてある事柄にさらにつけ加える働きをすることを理解させる。
B 「そして」の指導(順接の指導)
  前の文の意味を受けて、あとの文に続ける働きをしている。「せびれを持っている」「そして」「ゆうゆうと泳
 いでいる」この前の文と後の文との関係を押さえる。
C 「しかも」の指導(累加の指導)
  いぶくろが大きくて、その上に、伸びたり縮んだりする。いぶくろが大きいだけでなく、その上、伸びたり縮ん
 だりもするという意味を理解させる。このように「だけでなく、その上に」加える、つけ足す、働きをすることば
 が「しかも」である。「また」と比べて使い方の違いを理解させる。                  
 このように、同じ文章の中に、何語か異なった接続語がある場合には、最後にまとめて、それぞれの機能を比べさ
 せる。
  次に接続助詞を含む接続語、文の中の接続語の例をあげてみる。
 oまた、おじぎそうの葉は昼間は開いていますが。夕方暗くなる、とじてしまいます。
 oそのようすが、まるでねむっているように見えるので、ねむの木という名まえがつきました。
 oとても小さな犬だったので、ねずみという名をつけました。
 oねずみは、ワンと一声小さくほえてから、トンネルを下っていきました。
 oしも柱がたって、麦の根がういてしまうといけないから、軽くそれをおさえてやるのさ。
 oおばあさんの足がひとりでに止まり、それから、ゆっくりと一歩だけ道ばたの雪の中へふみこみました。
                                                        97
 oそれから少し行くと、また、だれかやってきます。
 o雨が降ってきたけれども、外で遊びました。
 oもっと大きなせきばらいをしましたが、それでも、ききめはありません。


    四 文や文章の中の指示語の機能に注意して読む指導


 指示語は、いわゆる「こそあどことば」と言われることばによって代表される。品詞的にみると、これ、それ、こ
こ、そこなどの代名詞、この、その、こんななどの連体詞(形容動詞とも)、こう、そうなどの副詞を含んでいる。
 もちろん、それらの指示語を、読解学習の中で、系統的に学習することはむずかしい。しかし、できるだけ一つの
文章の中で、いろいろな指示語が学習されることが望ましい。
 指示語の学習は、単なる指示語の定義や指示語の体系的知識の習得をめがけて行うものではない。指示語の指示機
能の理解と、指示する事柄、指示する事柄の範囲の限定が重要な学習事項になる。一般の読解学習では、指示語の指
事する事柄の範囲の限定があいまいであったり、適切でなかったりすることが、読解を妨げる、読解を不正確なもの
にする要因になる。

 1「このびん」「そのびん」の指導

  (1) 教材 「三びきのめだか」 (教出本・三上)
    しばらく考えでいたまさみは、とうとう、思いきって言いました。
    「そんなら、このびんごとあげるよ。」
     そして、めだかんのびんを、きぬ子の手にもたせようとしました。
                                                        98
     そのびんは、ガラスせいで、赤と緑の花もようがついていました。まさみは、お母さんがもうなんべん
    か、このびんに花をさしたのを知っています。
  (2) 指導
    この文章では、同じめだかのびんを、「このびん」と言ったり、「そのびん」と書いたりしている。指示す
   る対象は同じであるが、「この」と指示し、「その」と指示する。その理由はどこにあるかを考えることによ
   って、場面の様子がよくわかる、言い換えれば、イメージを描きやすくする。とともに、「この」「その」の
   機能を明らかにし、その感覚を確かにすることができる。
   @ めだかのびんを、「このびん」と言っているのは、主人公の「まさみ」である。
   A めだかのびんを「そのびん」と書いているのは、作者であり、作者の目である。
   B あとの「このびん」は、作者が「まさみ」の立場に立って書いている。
   この三様の指示の仕方を基礎において、場面の様子、そこに表されている「まさみ」の心情を想像する。その
 学習を通して、「この」「その」の形式的な指示機能だけでなく、それにまつわる。まさみや作者(あとでは
 母親の心情をも含めて)の感覚・心情にまで及ぶことがだいじである。
  そこで、学習に当たっては、
   @ 「しばらく考えていたまさみは、とうとう思いきっていいました。」に表されているまさみの覚悟のほど
    を想像させる。
   A その想像にもとづいて「そんなら、このびんごとあげるよ」ということばにこもるまさみの心情を想像さ
   せる。「このびんごと」ということばの裏に、びんに対する、まさみの心情が感じられる。この心情は、こ
    のあとの表現によって、しだいに明らかになる。
   B この場面(緊張を感じる場面、まさみが、何とかしてきぬ子にめだかをやろうとして一生懸命になってい
   る場面)の中の「めだかのびん」を、作者はじっと目を注いで、的確にとらえている。客観的にとらえて、
    まず「そのびん」は「ガラスせいで、赤と緑のもようがついている」美しいびんだと表現する。まさみの心
                                                        99
    を象徴しているようでもある。このびんが契機になって、この後の話は展開する。
   C 次に、作者は、本来なら第三者として「そのびん」と書くべきところを、「まさみは、お母さんがもうな
    んべんか、このびんに花をさしたのを知っています」と、まさみの立場になって、「このびん」と書いてい
    る。
   D このようにして、同じびんを、「この」と指示し、「その」と指示するのは、ここでは近称・中称・遠称
    という指示者からの指示物の遠近の差によるものではなく、表現者の立場の差、心理的な差によるものであ
    ることに気づかせる。

 2 指示語の指示する事柄・範囲を限定する指導

(1) 教材 「ふえをふく岩(物語)」(教出本・三上から)
 @ おじいさんはよろこんで、かわりに、竹の子をさし出し、
  「これを植えるのじゃ。大きくなったら、この竹で、魚をとるかごと、ふえを二本作るがよい。」
  と言って、ふっときえてしまいました。
 A ふえふきは、すぐさま、ふえをふきはじめました。
  ピュー、ピュー、ピュー
  けれども、波はもう家の中までおしよせてきました。
  ピュー、ピュー、ピュー。
  ふえふきは、休まずにふきつづけました。三人は、もう海の水につかっていました。
  むすめはそれを見ると、急いでもう一本の竹のふえをとり出し、ふえふきに合わせて、ピューピューピュー
  と、ふきだしました。
                                                       100
 B ふえふきと、むすめはかたをならべて、ふえをふきながら、一歩一歩、前へ進みました。それにつれて、波が
  あとへあとへとひいていきます。
 C はまのりょうしたちは、二人があまりいつまでもふいているので、しんぱいになり、あつまってきて、声をか
  けました。けれども、二人は、ふり向きもせず、ふきつづけています。みんなは近よってみて
  「あっ!」
  とおどろきました。
  それは、ふえふきとむすめではなかったのです。
(2) 指導
  指示語の指示するものは、さまざまである。ある特定の事物・事象をさす場合、ある場面・状態・行動をさす場
 合、ある事項・条件・考え・情調などをさす場合、ばくぜんと何かをさす場合などがそれである。
  したがって、指示される事柄は、指示語の前に書いてあるのが原則であるが、時には「一郎はこう言った。「す
 ぐやめなさい。」というように、指示する事柄が指示語のあとにくる場合もある。
  ところで、指示語の指導では、その指示機能を明確に意識させるために、指示する対象が何であるかを、明確に
 する必要がある。そのためには、指示する対象そのものを明確に理解しておかなければならない。指示する対象が
 はっきりしでいなければ、当然指示する語の働きも明確に意識されないからである。
 @の指導
   この例は、最も単純で理解しやすい。直前に書いてある「竹の子」をさしている。単に指示するものを明確に
  する場合には、「これ」の代わりに「竹の子」を入れて「竹の子を植えるのじゃ」とすればいい。が、「竹の
  子」と置き替えたのでは、一般的などれでもいい竹の子になってしまって、おじいさんが差し出した特定の竹の
  子ではなくなってしまう。そこで、この場合は、特定の竹の子を指示する「これ」でなければならないことを意
  識づけ、「これ」の機能をいっそう明確にすることもできる。
                                                       101
 Aの指導
   この例の「それ」は、その前に表現されている場面、緊張したすさまじい場面をさしている。そこで、この場
  面の情景をじゅうぶんにイメージ化できるように読ませることが、指導の前提になる。
  o竜王が大波を起こして押し寄せてくる。家のそばまで迫っている。
  o笛吹きが、おじいさんに教えられたように笛を吹き続ける。
  oけれども、大波は家の中まで押し寄せる。
  o笛吹きは休まず吹き続けたが、三人(竜王のむすめ、母親、笛吹き)はもう海の水につかってしまった。
  このようなすさまじい場面、「むすめはそれを見ると」と、話は展開する。そこで、むすめが見た情景、恐ろし
  い場面が、「それ」であることを、はっきりと意識させる。すると、「急いでもう一本の竹のふえをとり出し、
  ふえふきに合わせて、ピューピューピューと、ふきだしました。」とある、むすめの真剣な姿が想像できる。
   このような指導を通して、「それ」の機能―「それ」によって場面表象が喚起される―が感覚化させる。
 Bの指導
   この例の「それ」は、対照的に起こる二つの行動の一方を指示して、他をこれに応じさせる働きをしている。
  荒れ狂う大波を前にして「ふえふきとむすめはかたをならべて、ふえをふきながら、一歩一歩、前へすすみまし
  た」とあるように、二人は肩を並べ、自信をもって、一歩一歩しっかりと足を踏みしめながら進んで行く。その
  きりっとした姿が想像される。この情景を、特に「一歩一歩、前へすすむ」その状能を確実にイメージ化させ
  る。
   その状態をとらえて「それ」と指示している。しかも、その動きに対応させるために「それにつれて」と表現
  している。したがって、前進する二人の行動につれて。「波があとへあとへと引いていきます」と、波の動きを
  対応させている。だから、「それにつれて」によって、「一歩一歩、前へ進む動き」と、「波があとへあとへと
  引く動き」とが、みごとに対照的に表現されている。指導の結果。次のように板書するのも、「それ」の指示す
                                                       102
  る機能を、感覚的・視覚的にも、はっきりさせることができる。
    ふえをふきながら一歩一歩、前へすすみました。
       |
     それにつれて
       ↓
    波があとへあとへと引いていきます。

 Cの指導
   この例の「それ」は、形式的には、「二人」であるが、漁師だちの目には、「いつまでも笛を吹いている二人」
  「振り向きもせず笛を吹いている二人」「笛吹きと娘と信じていた二人」として映っている。このことが「みん
  なは(漁師)ちかよってみて、『あっ!』とおどろきました。」と表現されている。そして、「それは」「ふえふ
  きとむすめではなかったのです」と説明している。したがって、ここで「それ」と指示しでいるのは、単なる二
  人ではなく、さまざまな感情の結びついている二人であることに気づかせる。
  以上、四例をあげて、指示語の指示機能と、その指示する対象について考察し、その指導法についても触れてき
 た。文学作品における指示語は、説明文などにおける指示語と違って、指示する事柄だけでなく、それにまつわる
 感覚・感情をも指示するものであることを、児童たちに認識させることがだいじである。

 3 様態を指示する指示語の指導

(1) 教材 「雪の一本道(物語)」 「おいしいパンはいつできる(物語)」(教出本・三下から)
 @「おやおや、また、だれか来るようだよ。」
  おばあさんは、そのまま立ち止まります。「あれは高校生かしらん。まあまあ、あんな短いくつをはいて、ズボ
  ンが雪だらけじゃないか。わかい人は、しょうがないねえ。」そう思って見ていると、その高校生は……。
                                                       103
 A 高校生は、ちょっとためらいましたが、すぐ、長い足をのばしてすっとんできて、ぴょこんと頭を下げなが
 ら、おばあさんの横を、風のようにかけぬけました。
  「すみませえん。」
  「なんの、なんの。そんなに急いで、ころびなさんな。」
 そうあいさつを返した時は、高校生のすがたは、もうはるかかなたでした。
 B お百しょうは。パンのはしをちぎって、おおかみに分けてやりました。おおかみは、それをぱくりと口にほう
  りこむと、あっという間に飲みこんで、したなめずりをしながら言いました。
  「うまい。なるほど、これはうまいものだ。おまえさんたち人間は、こんなものを、ときどき食べるのかね。」
  「ああ、毎日食べているよ。一日に何度も食べることだってあるさ。」
  「へえっ。こんなうまいものを毎日食べるなんて、いいもんだろうな。おれもやってみたいな。」
  「そんなに、気に入ったかね。おまえさんにだって、やれないことはないと思うよ。麦をまけばいいのさ。そう
 すりや、おなかがすいた時、いつでもパンぐらい食べられるよ。」
 C しかし、おおかみは、
  「そうか。」
  と言ったきり、深い深いため息をついて、だまりこんでしまいました。それから、おこったように言いました。
  「いらない。おれはいらないよ。そんなパンなどほしくない。」
  「どうしてかね、おおかみ君。さっき、あんなにうまいと言ってたじゃないか。」
(2) 指導
  ここで指導するのは、指示語の中の、「こう、そう。ああ、どう」などの副詞、「こんな、そんな、あんな、ど
 んな」などの連体詞(これは、「こんな」「こんなに」「こんなだ」などによって形容動詞とする説もある)が、
 本来もっている指示機能と、指示する対象についてである。
                                                       104
  「こう、そう」などはもともと副詞であるから、その用法は「そうする、そう思う、そうなっている、そう早く
 ては、そうにぎやかだと」というように、用言を修飾している。しかし、その修飾の仕方は、それらの副詞には実
 質的な意味内容を含んでいないから、すべて他にある事項を指示し、それを借りて、実質的意味を与えることにな
 る。
  また、連体詞「こんな、そんな」などは、体言にのみ接続するが、「こんなに、そんなに」は、用言に接続する。
 形容動詞説が出るゆえんであろう。しかし、いずれにしても、「こう、そう」と同じように。実質的な意味内容を
 もっていない。やはり、その指示機能にもとづいて指示する対象に、その意味内容を求めている。
  ところで、指示する対象は、事象の様態に関するものである。したがって、これらの指示語の指導は、指示語が
 指示する事項、事象の様態を理解することを前提として指示機能と、その対象を明らかにするところにあると思
 う。
 @の「あんな」の指示しているのは、高校生のはいている短いくつで、その「短い様態」をさして「あんな」と言
  っている。したがって、高校生のはいているたいへん短いくつを想像することになる。
 Aの「そんなに」は、「急いで」を限定しでいるのであるが、「そんなに」が指示する「急いでいる様態」は、そ
  の前の部分に書かれている。それは「長い足をのばしてすっとんできて」「おばあさんの横を風のようにかけぬ
  けた」その様態である。その急ぎの様を、「そんなに急いで」と表現している。したがって、ここでは、高校生
  が、急いでいる様態をよく想像させ、イメージ化することを前提としで、「そんな」の機能を意識化する。
 Bの「こんな」は、その前に書かれている。自分が食べたうまいパンをばくぜんと、全体的に、包括的にさしてい
  る。その次の「こんな」は、特に、したなめずりをしながら言った、「これはうまいものだ」という、「うまさ
  加減、うまさの様態」をさしている。それが「毎日食べるなんていいもんだろうな。おれもやってみたいな」と
  いう願望を導き出す。
   次の「そんなに」は、「気に入った」の様態をさしているが、それは、直前のおおかみの「いいもんだろうな」
                                                       105
  というあこがれと、「おれもやってみたいな」という願いとによって組み立てられている。それがじゆうぶんに
  想像されないと、「そんなに」の指示している意味内容がはっきりしない。
 Cの「そんな」は、具体的に指示している事項が限定されない。が、「なかなか時間のかかる、めんどうのかかる
  ことをして作る、パン作りのわずらわしさ」をさしている。要するに、最初からパンができ上がるまでのめんど
  くささ」を総括的にさして「そんなパン」と言っている。
   最後の「あんなに」は、おおかみが前に「うまいと言っていた」その様態をさしている。
  以上考察したように、連体詞の「こんな。そんな、あんな」は、いずれも、事象の様態を指示していることがわ
  かる。

     五 文の中の並立語の機能に注意して読む指導

 並立語は、「犬とねこ」「泣いたり笑ったり」などのように、並立助詞によって並べられた語である。語と語とを
並べ立てる、いわゆる並立助詞には、「と」「や」「か」「やら」「だの」「たり」などあるが、それらは、並べ立
てたり、重ね合わせたり、向かい合わせたりする働きをもっている。しかし、一つ一つの語についてみれば、そこに
微妙な機能の違いがある。
 たとえば、「犬とねこを飼う」と言えば、犬とねこと両方を飼うことになる。「犬やねこを飼う」と言えば、家に
飼われる動物には、犬の種類やねこの種類があることを意味する。つまり、犬の類やねこの類を飼うというように選
別の意味になる。「犬やらねこやらいろいろな動物がいる」と言えば、それらが入り交っでいる意味になる。「犬だ
のねこだのだくさんいる」と言えば、それらを並べあげることになる。「犬なりねこなり飼いなさい」と言えば、ど
れでも自由に一つを選ばせる意味になる。前の「犬かねこか」と比べてみると。その違いがよくわかる。「犬を飼っ
                                                       106
たり、ねこを飼ったりした」と言えば、二つのことを並べ立てて言ったことになる。
 このように比べてみると、同じ並立、列挙の機能を持ちながら、そこに微妙な意味の違いがあることがわかる。こ
のような微妙な意味機能の違いは、文や文章中で、それがいきいきと働いている状況の中でないと、はっきり認識で
きない。また、それを単独で取り出してみても、なかなかその微妙な違いを感じとることはむずかしい。
 そこで、実際に指導する場合には、同じ文章の中に、いく種類かの並立語が出できたときに、それらを比較対照し
て学習させるのが効果的である。

 1 「一つの花(今西祐行)」のなかで

 (1) 教材
  @ まだ戦争のはげしかったころのことです。そのころは、おまんじゅうだの、キャラメルだの、チョコレート
   だの、そんなものは、どこへ行ってもありませんでした。食べる物といえば、お米の代わりに配給される、お
   いも、まめ、かぼちゃしかありませんでした。
  A ゆみ子はいつもおなかをすかしていたのでしょうか、ご飯のときでも。おやつのときでも、もっともっと
   と、言って、いくらでもほしがるのでした。
  B ゆみ子お母さんのほかに見送りのないお父さんは、プラットホームのはしのほうで、ゆみ子をだいて、そ
   んなばんざい軍歌の声に合わせて、小さくばんざいをしていたり歌を歌っていたりしていました。まるで
   戦争になんか行く人ではないかのように……。
  C ゆみ子はお父さんの顔を覚えていません。自分にお父さんがあったことも、あるいは知らないのかもしれま
   せん。でも、今、ゆみ子のとんとんぶきの小さな家は、コスモスの花でいっぱいに包まれています。
    そこからミシンの音が、たえず速くなったりおそくなったり、まるで何かお話をしているかのように聞こえ
   てきます。それはあのお母さんでしょうか。
                                                       107
    「お母さん、お肉お魚、どっちがいい。」
   と、ゆみ子の高い声が、コスモスの中から聞こえてきました。
 (2) 学習目標
   並立語に注意しながら読んで、場面の様子を豊かに想像するとともに、並立語の機能に対する感覚を育て、そ
  の用法を理解することができる。
 (3) 学習指導
@の「だの」「や」の指導
  ゆみ子が「一つだけちょうだい。」ということばを、最初に覚えた背景、食べ物がなくてひもじい思いをしたころ
 の回想的な表現の部分である。まず初めに、子どもたちのほしがる代表的なまんじゅう、キャラメル、チョコレー
 トを、「だの」の並立助詞によって列挙して、「そんな子どものほしがるもの」は、何もない、全くないことを表
 している。食べる物といえば、お米の代わりに配給される、おいもや、まめや、かぼちゃしかないと、配給される
 ものを「○や○や」と列挙している。わずかに食べられるものの仲間、類別を示しているに過ぎない。
  この「だの」は。代表的な例をあげて、全般的にそういう傾向のあることを表す機能、「や」は、似ている事物
 を並べあげて、類別を表す機能をもっている。この二つの並立語を実に適切に使っている。
  そこで、指導に当たっては、まんじゅう、キャラメル、チョコレートは子どもの欲しがる代表的なものであるこ
 とに気づかせ、その代表的なものを並べあげるときには「○○だの○○だの」と言い表すことを感覚的にわからせ
 る。そして「そんなものはどこへ行ってもない」という表現を通して、食べるものは何もなかったのだと気付くよ
 うにする。それに対して、食べる物といっては、わずかに配給される、いもの類、まめの類、かぼちゃの類を、「○
 ○や○○や」と言っで並べあげて、それしかない、この三種類しかなかったと言っている。
  このように、書かれている内容を深く理解することを通して、「だの」と「や」の機能を知識としてでなく、感
 覚的に身につけるようにする。
Aの「でも」の指導
                                                       108
  「でも」は、本来副助詞で「極端な場合を示して、それ以外の場合でも同じであることを指示する機能」をもっ
 ている。それが、「○○でも、○○でも」と、その極端な場合を並べあげるのに使われている。その極端な場合と
 いうのは、この文章では、「何かを食べる場合」である。その食べる場合を「ご飯のときでも」「おやつのときで
 も」と列挙している。そうすると、このご飯やおやつを食べる時以外でも同じであることを暗示している。つま
 り、その時だけではなく「いつでもそうである」ことを示している。この文章の中で「でも」はそのような働きを
 している。
  そこで、この文章を読んで、ゆみ子は「いつもおなかをすかしていたのでしょうか」の「いつも」に注意する
 と、「ご飯のときでも」「おやつのときでも」、それは言うまでもなく、それ以外の時、「いつでも」、(もっとも
 っと、と言って、いくらでもほしがるのでした」という文脈が無理なく、すっきりと通る。
  こういう文脈の中で、「ご飯のときでも」「おやつのときでも」「いつでも」という、「○○でも、○○でも」
 の機能が感覚的に身についていく。
Bの「たり」の指導
  「たり」は、「泣いたり笑ったり」「テレビを見たり本を読んだり」などのように、「ある事柄が、同時にでな
 く交互に行われることを表す機能」また、「ある事柄を例示的にあげて、そのほかの関連する他の事柄を言外に暗
 示する機能」をもっている。
  この場面のイメージを描きながら読む。駅では、ときどきばんざいの声が湧き起こる。また、別の方からは、絶
 えず勇ましい軍歌が聞えてくる。そんな声の聞こえてくるプラットホームの端の方に、ゆみ子とお母さんのほか見
 送りのないお父さんがいる。ゆみ子をだいたお父さんは、ときどき万歳の声が聞こえてくるごとに、小さく万歳を
 する。また、勇ましい軍歌の声に合わせて歌を歌っている。まるで戦争になんか行く人ではないかのように、静か
 にしばしの間の親子の別れを惜しんでいる。
  その万歳を、歌を歌う様子を、「そんなばんざいや軍歌の声に合わせて、小さくばんざいをしていたり、歌を歌
                                                       109
 っていたりしていました」と表現している。万歳が聞こえてくれば、それに合わせて万歳をしていたり、軍歌の声
 に合わせて歌を歌っていたりして、それをくり返し続けている様子が想像される。
  このようなイメージを描きながら読むなかで、「○○たり○○たり」の機能が感覚的にわかってくる。
Cの「たり」の指導
  この「たり」は、Bの「たり」と違って、「ある事柄が、同時にでなく交互に行われることを表す」働きをして
 いる。ミシンの音が交互に速くなったり、おそくなったりするからまるで何かお話をしているかのように聞こえて
 くる。速くなったり、おそくなったり、リズミカルに、軽快に、コスモスの花でいっぱいに包まれている家の中か
 ら聞こえてくる。そういう情調を感じさせる「○○たり○○たり」である。この「たり」の機能は、この情調を味
 わうなかで、感覚化され、意識化されると思われる。

 2 「くぬぎの木(平塚武二)」のなかで

 (1) 教材 (日書本・四年下)
  @ ぼく、ぼくの弟、毎年、夏休みには、山のいなかのおじいさんのうちでくらした。
  A 朝早く、草はまだ、つゆにぬれてうなだれ、鳥たちはやっと目を覚まして、米つぶをあさったり、はえをと
   ったりしているとき、ぼくたちは、もう、小川のところへ走っていた。
  B その辺には、 うさぎもいなかった、きじもいなかったが、ぼくたちがかりをやれば、 うさぎでも、きじ
   でも、しかいのしし、くまだってつかまえられた。
  C 夜には本を読んだ。すばらしい大ぼうけんがいっぱい書いてある本は、ぼくたちを勇ましい少年にしてくれ
   た。ぼくたちはぞくぞくしながら、本の中のジャングルを歩いたり、本の中の夜ふけの森で、まもののさけび
   声を聞いたりした。
  D したくはいつだってできていた。ぼくは、小さなさびたおのをこしに差してぱちんこをもっていた、弟は
                                                       110
   竹のぼうと、まるめたなわを持っていた。
  E あるところでしかを、あるところではとらを、ぼくたちはうった。ぼくと弟は、かわるがわるくまになり
   ひょうになり、わしになり、ぞうになった。
  F 自分のした悪いことを、人の前で大声で話すのはつらいことだ、つらくても話さなければならなかった
   、ぼくたちに代わって、話してくれたおじいさんも、話はうまくなかったので……。
  G そして、それから何年かたった。何年か何年かたった。おじいさんもなくなった、おばあさんもなくなっ
   た。今は何もかも、なつかしく思い出されるばかりとなった。
 (2) 学習目標
   並立語「も」「たり」「し」「でも」「や」などの用法を理解し、その機能を感覚的に身につける。
 (3) 学習指導
@の「も」の指導
  並立助詞の「も」は、「犬もねこも」「山も川も」などのように、「似ているもの、同じ仲間のものを並べあげ
 る機能」、「きりんもぞうもいる」「春も夏も山へ登る」というように「同類のものを列挙して、言外になお同類の
 もののあることを表す機能」をもっている。それは「とらもひょうもいる」「秋も冬も山へ登る」ということを言
 外に感じさせる働きである。
  この「も」は、「ぼくも」「ぼくの弟も」と並べあげて、ともに行くということを強調しているように感じられ
 る。それは、「ぼくも弟も」と書かないで、「ぼくの弟も」という表現で弟を強調していることにも関係がある。
Aの「たり」の指導
  この「たり」は、行動の主体が「鳥たち」と複数になっていることに注意する。それで、「米つぶをあさったり」
  「はえをとったり」が対応する。そこに行動の主体が同一である場合との違いがある。
Bの「し」「でも」「や」の指導
                                                       111
  その辺には、うさぎもいないし、きじもいなかったが、うさぎでも、きじでも何でもたとえぼ、しかの類や
 いのししの類や、くまだって、ぼくたちがやればつかまえられた。という表現である。要するに。うさぎもいな
 い、きじもいないところであるが、ぼくたちがかりをすれば、どんなけものでもつかまえられることを強調して。
 次へと展開するようになっている。
  ところで、並立助詞の「し」は、「からだも弱いし、気も弱いしいいところはない。」「春もいいし、秋もいい」
 などというように、「条件や事柄を累加的にあげることを表す機能」をもっている。ここでは、「し」と「でも」
 と「や」の違いが感覚的にわかり、文章を書くときに使い方を誤らないようにする。
  このあとは、Cは「たり」、Dは「し」、FGは「し」で、これらはすでに解説したので、ここでは省略する。
 ただし、Eの「なり」は、並立語の「行くなり、帰るなり」「山なり川なり」などの「なり」ではない。動詞「な
 る」の連用形の「なり」である。したがって、この文章の「なり」は、いわゆる連用中止形によって、「くまにな
 り」「ひょうになり」「わしになり」と列挙しているものである。したがって、並立語を用いれば、「くまになっ
 たり、ひょうになったり、わしになったり」と言うべきところであろう。

 3 並立語「たり たり」の指導法
 (1) 教材
  ひばりは、空に上ったり、地上におりたりするときには、ふつうの鳥と少しかわったとび方をします。
 (2) 学習目標
   並立語「たり たり」の並立の関係に対する感覚をみがき、その用法を理解することを通して、文法意識を高
  めることができる。
 (3) 学習指導
                                                       112

1 内容の理解を深める。
 T ひばりはどんな時に変わった飛び方をしますか。
 C 空に上る時と、地上におりる時です。
 T それはどこでわかりますか。
 C 「空に上ったり、地上におりたり」でわかります
  (そこで、教師は、次のようにカードを並べる。)
       ┌―空に上ったり ―┐
  ひばりは┤          |
       └―地上におりたり―┘
 T それでは、横に飛ぶ時はどうですか。
 C 変わった飛び方をしません。普通の飛び方をしま
  す。なぜかというと、「空に上ったり、地上におり
  たりするときには」の「には」と書いてあります。
2 文法感覚・文法意識を高める。
  (こうして、「ひばりは、空に上る時と、地上にお
  りる時だけ、普通の鳥と変わった飛び方をすること
  が明確に理解される。と同時に「たり たり」と「に
  は」に対する感覚・意識が確かになる。)

       ┌―空に上ったり ―┐
  ひばりは┤          ├するときには
       └―地上におりたり―┘
  ふつうの烏と―少しかわったとびかたをする

 教師は、上のようにカードで文を組み立てて視覚化し
て文法感覚を確かにし、文法意識を高める。

     六 読解学習を通して段落の構成を理解する指導

 1 段落の構成はどうなっているか

 段落の内容を読みとる学習を通して、段落の構成を理解する指導は、段落の要点を読みとる指導をする三年のころ
から始まっている。そのためには、まず、段落の内容は、どのように構成されているか、また、その内容をどのよう
                                                       113
な手順によって読みとるか、その読みとり方を明らかにする必要がある。
 もともと段落の内容は、内容の要点と、その要点をささえている細部とによって構成されている。あるいは、段落
の話題と、その説明と、説明の要点とから成り立っている。したがって、内容を理解するためには、まず、直観的に
その要点を読みとる。次に分析的に読んで、要点と、要点をささえている細部との関係を読みとる。そうすると、段
落の内容を構造的に、正確に理解することができる。そこで、読みとった要点と細部とを、両者の間に成り立ってい
る関係にもとづいて組み立ててみれば、段落の構成がはっきりわかってくる。
 ところで、段落の中で、要点を示す文は、段落のどこに書かれているかを調べてみると、格の正しい、整った文章
では、普通次のようになっている。
 @ 段落の初めにある。 A 段落の終わりにある。 B 段落の中ほどにある。
が、中には、C段落の要点を示す文が特にないものもある。その場合には、次の段落の初めにその要点が書かれてい
るのが普通である。また、話題は、段落の初めにあるのが普通である。
 この要点の前かあとに、その要点をささえている細部が書かれている。そこで、その要点と細部とがどのように関
係し合っているかを知ることが、段落の構成を知るうえに、最も重要になってくる。次に段落の要点と細部との関係
を考えてみると、次のようになっている。
 @ 初めに要点が抽象的に書かれていて、そのあとに細部が具体的に書かれている。(抽象と具体の関係)
 A 初めに細部が具体的に書かれていて、そのあとに細部を抽象化した要点が書かれている。(具体と抽象の関
  係)
 B 初めに総括的な事項が要点として書かれていて、そのあとに細部として個々の事項が書いてある。(総括と個
  の関係・あるいは、全体と部分の関係)
 C 初めに細部の個々の事項が書かれていて、終わりのほうに要点として総括的な事項が書かれている。(個と総
  括の関係・あるいは部分と全体の関係)
                                                       114
 D 初めに細部が書かれ、それらを総括、あるいは抽象化して要点をまとめ、さらにそのあとに細部がつけ加えら
  れて書かれでいる。(細部・総括・細部の関係)
 E 話題が初めに提示され、説明・解説が分析的に書かれ、終わりに要点が書かれでいる。
など、さまざまな構成をもっているが、そこに一定の法則性が貫いている。その法則性に気づかせ、段落の構成につい
て理解を与えるのが、段落構成の理解学習の指導である。次に前記の諸構成が、視覚的にわかるように構成してみる。

 (要点――   細部――   線は相互の関係を示す) 

 @抽象と具体
 
 A具体と抽象
 
 B総括と個
 C個と総括
D具体・抽象・具体

 上の@ADの線のつなぎ方は、抽象と具体の関係、BCの線のつなぎ方は、総括と個の関係を表している。
 このように、各段落の要点と細部との関係を押さえて、段落の内容を読みとるときに、読みとった要点と細部を上
のように図示するか、カード操作によって組み立ててみれば、段落の構成は明確になる。
 ところで、読解の過程で。段落の構成を理解させるには、段落が明確に組み立てられている文章。つまり基本的教
材を選ぶ必要がある。複雑な構成の段落や論理的に構成されていない段落はさけるべきである。

 2 段落の構成を理解する学習の指導法

 (1) 教材 「ものの名前(説明文)」から(東書本・四上)
                                                       115
  @ みなさんは、海にいる「ひとで」というものを知っていますね。「ひとで」は、ちょうど、人間の手を広げ
   たような形をしています。そこで、「ひとで」と言われたのです。「かぶとむし」という虫がいます。頭の形
   が、むかし、さむらいがかぶったかぶとの形ににているからそう言われたのです。「こうもりがさ」は、動物
   のこうもりが、はねを広げたときのように見えるので、こういう名前をつけたのです。このように、ものの形
   によってつけた名前がたくさんあります。
  A また、ものの色によってつけた名前もあります。「からすがい」というのは、貝がらの色ががらすのように
   黒いので、このような名前がついたのです。生まれたばかりの子を、「あかんぼう」とか「あかちゃん」とか
   言うのも、体全体が赤みがかっているからでしょう。
  B ものには。音をたてるものがあります。そこで、その音をもとにしてつけられた名前もあります。例えば、
   あかちゃんのおもちゃの「がらがら」は、ふるとガラガラ音をたてるからです。「みんみんぜみ」「つくつく
   ぼうし」などのせみの名前も、鳴き声をもとにしてつけたものです。「かっこう」という鳥の名前も、その鳴
   き声からつけられたのでしょう。
  C そのほか、ものの持っている、いろいろなせいしつをもとにしてつけられたものもあります。鳥の「きつつ
   き」は、くちばしで木をつついて、みきにあなをあけて虫を食べたり、すを作ったりするので、この名前がつ
   きました。「かたつむり」を、土地によって「でんでんむし」とか「でえでえむし」とか言います。かたつむ
   りは、からの中にかくれたり、からの中から半分体を出したりします。そこで、「からの中から出て来い」と
   いう意味で、「出よ出よ虫」と言ったのが、「でえでえむし」となり、「でんでんむし」となったものと思わ
   れます。「みつばち」は、花のみつを集めるからそう言うのでしょう。「たけのこ」は、ゆくゆく大きく育って
   竹になるということで、「竹の子」の意味でできた名前です。
 (2) 学習目標
   「ものの名前」を読んで、各段落の要点と、要点と細部との関係を理解するとともに、読みとった要点と細部
                                                       116
  とを組み立てて、別記のように段落の構成を理解することができる。
 (3) 学習指導
@ 各段落の要点を読みとって色カードに書く。
 @の段落 名前にはものの形によってつけたものがある この段落の要点は、段落の終わりのほうに書かれている。
  終わりのほうにある「このように」に気付かせる。これは前の部分を受けてまとめる働きをしている。
 Aの段落 名前にはものの色によってつけたものもある この段落の要点は段落の初めに書いてある。@の段落と
  対照的に書かれている。それは、前の段落の要点が段落の終わりに書いてあるから、それを受けて「また」こん
  な方法もあると、自然に展開されている。
 Bの段落 名前にはものの音によってつけたものもある この要点も、段落の初めのほうに書いてある。
 Cの段落 名前にはものの性質をもとにしてつけたものもある この要点も段落の初めに書いてある。
  このように各段落の要点を読みとってカード書き、名前のつけ方には、ものの形、ものの色、ものの音、ものの
  性質(以下は省略してある。)などによってつける方法があることを理解する。
A 各段落の要点と細部との関係を読みとり、読みとった細部を白カードに書く(またはノートか学習シートに書
  く)。
  各段落ごとに、読みとった要点をささえている細部を読みとる。具体的に言うと、どんな名前がどのようにつけ
 られたかを、読みとって、それをカードに書く。
 @の段落 この段落では初めに、名前のつけ方の実例があげてある。それを読みとって短くまとめる。
   「ひとで」は、その形が人間の手を広げたような形をしているので「ひとで」とつけた
   「かぶとむし」は、頭がかぶとの形ににているので「かぶとむし」とつけた
                                                       117
   「こうもりがさ」はこうもりがはねをひろげた形ににているので「こうもりがさ」とつけた
 Aの段落 この段落では、初めのほうに要点、あとのほうに。名前の具体例があげである。
   「からすがい」は、貝がらの色がからすのように黒いので「からすがい」とつけた
   「あかんぼう」は、体全体が赤みがかっているので「あかんぼう」とつけた
 Bの段落 この段落では、要点のあとの「例えば」に目をつけさせて、具体例を書き出す。
   「がらがら」は、ふるとガラガラ音を立てるから「がらがら」とつけた
   「みんみんぜみ・つくつくぼうし」も鳴き声をもとにしてできた
   「かっこう」も、鳴き声をもとにしてつけられた
 Cの段落 この段落では要点が初めのほう、細部の具体例はあとの方に書かれている。
   「きつつき」は、くちばしで木をつついて穴をあけるから「きつつき」とつけた
   「でんでんむし」は、「からの中から出て来い」という意味の「出よ出よ虫」から変わった
   「みつばち」は、花のみつを集めるから「みつばち」とつけた
   「たけのこ」は、大きく育って竹になる「竹の子」という意味でつけた
  以上のように、段落の細部を読みとって白カードに書く。カードは入り交じらないように段落番号をつけさせ
                                                       118
 る。
  要点カードと、細部カードをひとまとめにする。
B 要点と細部との関係を考え、要点カードと細部カードを並べて段落を組み立てる。
  段落の内容に従って、要点カードと、細部のカードを組み立でる。要点が段落の初めにある場合には、要点カー
 ドを先にし。そのあとに細部カードを並べる。並べ終わったら、段落の叙述に即して細部の内容を詳しく調べ、カ
 ードに書き出したものを評価し、正しくないものは修正する。
  学習シートの段落ごとに、要点カードと細部カードをはる。その上で、細部の中で名前をつけるもとになってい
 る事項を細部のカードの下に書く。書き出した事項の共通点を考えて決める。それと要点と比べる。つまり、
 @ 要点カードと細部カードを並べてはる。
 A 細部は要点の具体例であることを確認する。
 B 細部の中で、名づけのもとになっている事項をカードの下に書き出す。
 C 細部から書き出した事項の共通点を考える。
 D その共通点と要点を比べる。
 E 要点と細部との関係を考えて、相互に線で結び、段落の構成を考える。
  上のCは、たとえば、@の段落で書き出した「手の形・かぶとの形・こうもりの形」の三つの具体的な事柄の共
 通点を押さえて抽象化すると、「ものの形」になる。それと要点「名前にはものの形によってつけたものがある」
 とを比べてみると一致する。ということで、@の段落は「具体と抽象の関係」で構成されていることがわかる。A
 の段落では、それとは逆に、抽象的な「ものの色」を「貝がらの色・体の色」と具体化する学習になっている。
  なお、段落の要点、細部をノートか学習シートに書いた場合は、それを評価し修正した後、要点を緑カード、細
 部を白カードに書く。そのカードを操作して、学習シートあるいは台紙にはって、段落の構成の学習をする。次に
 その例を書いてみる。
                                                       119
  @の段落を組み立ててみて、その構成を視覚的にも理解させる例



Aの段落を組み立ててみて、その構成を視覚的にも理解させる方法


Bの段落を組み立ててみて、その構成を視覚的にも理解させる方法
                                                       120


C ・段落は、要点と細部との関係によって構成されることを理解する。
  ・段落は、要点と細部との関係という法則性によって構成されることを理解する。
 以上で読解学習の中で、段落が、ある法則性のもとに構成されていることを理解する学習の概要について述べた。
この段落の構成についての理解が、実際に段落の構成を考えて文章を書く技術の基礎になる。
 ところで、このように構成されている段落が、相互に並立的な関係、あるいは論理的な関係などにもとづいて構成
されているのが文章である。並立型の文章、条件型の文章はこうして構成される。
                                                       121

  Y 作文における新文法学習の実践


      一 基本文型によって話す・書く学習の指導

 (一) 題材について
 入門期の児童は、聞かれたことや話したいことを、「○○したの」「○○へ行ったの」というように話すものが多
く、話も断片的である。したがって文章を書いても、その通りになっている。この期の児童に、基本文型を使って話
したり書いたりする学習をさせることは、ことばの使い方を感覚的にわからせたり、いわゆる文法感覚を育てる上に
適切な方法と考えられる。この単元では、見たことを認識する文型を指導し、すでにもっている文型感覚をいっそう
確かなものにしたり、正しくない文型感覚・文法感覚を正しくしたり、新しい文法感覚を育てたりすることをめがけ
ている。
 (二 行動目標
  見たことを「何がある(いる)」「どこに、何がある」の存在認識の基本文型で話したり書いたりすることがで
 きる。(二時間分)
 (三) 学習過程
  1 見つける。……………………………………(事物の存在を認識する)
                                                       122
  2 見つけたことを話す。………………………(存在認識の基本文型「何がある」「どこに何がある」で話す)
  3 話したことを書く。…………………………(存在認識の基本文型「何がある」「どこに何がある」で書く)
  4 書いたものを読む。…………………………(存在認識の基本文型「何がある」「どこに何がある」を読む)
  5 「何がある」「どこに何がある」の文型を知る。(存在認識の基本文型を意識化する)
 (四) 学習指導

1 学習の目標と方法を確認する。
 T きょうは、見つけたことを話したり書いたりする
  ことができるようにしましょう。(カード提示)
  ○○が|あります。
  このカードのように話したり書いたりする勉強です
  よ。できますか。
 C できます。 C やりたいです。
  (目で見たこと、見つけたことを、他の児童に正し
  く話したり書いたりすることを、はっきりと意識づ
  ける。)
2 基本文型「何があります」で話す。
 T 教室の中には、何がありますか。
 C 黒板  C テレビ  (板書する)
 T みんなに教えるには何と言って教えてやればいい
  ですか。言ってごらんなさい。
 C 黒板があります。(板書する。)
 C テレビがあります。
 T さあ、たくさん見つけで話してください。
 C つくえがあります。
 C いすがあります。
 C オルガンもあります。 (板書する。)
3 基本文型「何があります」で書く。
 T たくさん見つけました。さあ、だれが何と言った
  かわかりますか。
 C  ……。
 T わからなくなりましたね。どうすればいいでしょ
  う。
 C ノートに書く。 C 黒板に書く。
 T それでは、一人で五つぐらい見つけてノートに書
  きましょう。
   (児童の進行状況を見ながら、五つ板書する。)

                                                       123

 T さあ、書けましたか。
 C 五つ以上書きました。
 C 三つしか書けない。(かっぱつに発言する。)
4 書いた文を読む。
 T みなさんがたくさん書きましたから、読んで教え
  てあげましょう。
   (できるだけ多くの児童に発表させる。)
5 基本文型「何があります」を確認する。
 T 先生も黒板に書きました。読んでみましょう。
   (読みながら、「何が」「あります」を線で囲む)
   つくえが|あります。
   ほんが|あります。
 T このカードと、今読んだ文と比べで、気がついた
  ことはありませんか。
 C 同じです。
 T 何があるかを教えるには、「何があります」と言
  ったり書いたりすればいいんですね。
  (第二回)
1 学習の目標と方法を確認する。
 T きょうは、見つけたものがどこにあるかを話した
  り書いたりする勉強をしましょう。(カード提示)
   どこに|なにが|あります。
  (目で見たこと、見つけたことを、それがどこにあ
  るかを、他の児童に正しく話したり書いたりするこ
  とを意識づける。)
2 基本文型「どこに、何が、あります」を使って話す。
 T 教室の中には何がありますか。
 C 黒板があります (板書する)
 C 机があります
 T これでは、どこにあるのかわかりませんね。何と
  言って話せばいいですか。
 C 教室にあります。
 C 教室に黒板があります。(板書)
 T そう話せば黒板がどこにあるかよくわかります
  ね。それでは話してください。
 C 教室にかびんがあります。
 C 教室にいすがあります。
 C 教室に小鳥がいます。(板書する)
 C 教室に子どもがいます。

                                                       124

 T 小鳥や人のときは、「います」と言うんですね。
 C 教室に先生がいます。
3 基本文型「どこに、何があります」「どこに何がい
 ます」を使って書く。
 T 今度は、教室の中で見つけたものを三つ、ノート
  に書きましょう。
 C きょうしつに、つくえがあります。
   きょうしつに、ほんがあります。
   きょうしつに、ことりがいます。
4 書いた文を読みあう。
 T それでは、みんなが見つけたものを、読んで教え
  てあげましょう。
 C 各自読んで知らせる。 
 C きょうしつに、テレビがあります。(板書)
   きょうしつに、まどがあります。(板書)
   きょうしつに、せんせいがいます。(板書)
5 「どこに、何が、あります」の基本文型を確認する。
 T 今度は、先生が黒板に書いた春夫君のをみんなで
  読んでみましょう。
   (読みながら文型を確認する)
   きょうしつに|テレビが|あります。
   きょうしつに|まどが|あります。
   きょうしつに|せんせいが|います。
 T これは「どこに(きょうしつに)なにが、ありま
  す」という書き方ですね。
 (板書を押さえながら確認する。)

 (五) 考察
 存在認識の基本文型の指導をした。教室から、学級園、校庭、学校の外と広げていくと、子どもたちの見つける目
も育っていった。いつも少ししか見つけられなかった子どもも、少しずつ早くたくさん見つけられるようになってき
た。口が重く話さなかった子どもも、楽しんで見つけて話すようになってきた。「一つしか見つからないの。」「見つ
けたのはそれだけ。」「もっと何かあるでしょう。」などと、発問してやることによって、「何があります」の文型から
「何もあります」「何と何があります」というように発展した。また、「金魚がいます。」と答えた子どもに、「どんな
金魚がいましたか。」と聞いてやると、「赤い金魚がいます。」と修飾語をつけて話すこともできるようになってきた。
                                                       125
 子どもたちは、一つの文型から、次々と認識を広げて、いろいろな文型で書けるようになってきた。こうして。書
くことによっで、表現の仕方も確かなものにしていくことができた。つまり、一つの文型感覚を身につけると、それ
をもとに新しい文型を広げたり、複雑な文型を作っていくことができるようになった。認識の仕方も広がり、確かな
ものになってくると、書く内容も豊かになった。       (東京都目黒区立宮前小学校 金子伸子教諭指導)


     二 接続語を使って文と文を続ける学習の指導

 (一) 接続語の指導について
 普通に文と文とを接続する方法には二つある。一つは、「それから」「そうして」というような接続詞を使って接
続する場合である。他の一つは、「少し行くと」「歩いていくと」というように接続助詞「と」を含む接続語を使っ
て文と文とを続ける場合である。「それから」「そして」などの接続語は、思考力のじゅうぶんに発達しない小学校
の一、二年生は、特別に指導されなくても、自由に使い出して、関係的思考の未発達をそれで補っているようにさえ
思われる。むしろ乱用されて、それを直すのに苦心するほどである。
 そこで、ここでは、それから・そしてなどの指導よりも、接続助詞を含む接続語を使って文と文とを続ける指導を
してみた。いわゆる接続語の指導が、とかく形式的な指導におちいりやすい上に、真の児童の思考と結びつかないお
それがある。この方法だと。児童の自由な思考を働かせ。したがって自由な方法で文と文とを接続することができる
ようになると考えられる。
 (二) 行動目標(一年)
   経験したことの順序をたどって書くことを通して、行動・状態・存在などを表す基本文型を身につけるととも
  に、接続語を使って文と文とを続けることができる。
                                                       126
 (三) 学習内容(指導事項)
  1 主語・述語の照応した文を書くこと(行動・状態・存在を表す基本文型)
  2 接続語を使って文と文とを続けること(接続詞を含む接続語)
 (四) 学習計画
   第一時 1 父母参観日の行動の順序を思い出し、その順序を確認する。
       2 場面ごとに、文章を書く。(基本文型を使って書く)
   第二時 1 歩け歩け大会で新宿御苑へ行った時のことを思い出し、その順序を確認する。
       2 場面ごとに、基本文型を使って文章を書く。
   第三時 1 場面ごとの文章を続ける適切な語句を考える。
   (本時)2 場面ごとの文章を続けてまとまった文章を書く。
 (五) 学習過程
  1 学習目標を確認する。
  2 前時に書いた場面ごとの文章(カード)を読む。
  3 場面の文章と場面の文章とを続けることばを考えて、カードに書く。
  4 場面を続けて文章を書く。
  5 書いた文章を読み返す。
 (六) 学習指導

1 前時に書いた場面ごとの文章(カード)を整理する。
 T (掲示(次ページ)のカードをさしながら)きの
  うは、歩け歩け大会で、「新宿御苑」へ行ったこと
  を思い出して、したり見たりした順番に、カードに
  文章を書きましたね。それを今この黒板にはりまし
  た。
  みんなも、カードを持っていますね。それを、机
  の上に順序よく並べて読んでみましょう。
C 各自、自由に読んで、書いたことを確認する。

 @




 A



 B




行きの絵   ○○○○○、○○○○○○。○○
○○○○○○○、○○○○○○。○
○○○○○○。○○○○。………… 

花畑の絵   (             )
 ○○○○○○、○○○○○○○○
○○、○○○○○。…………… 

どんぐり
の絵 
 (            )
 ○○○○○○○○、○○○○○。
○○○、○○○○○。……………

帰りの絵   (            )
 ○○○○○○○○。○○○○○、
○○○○○。………………………… 
2 学習の目あて、学習の方法を確認する。 
 T きょうは、そのカードの文章を四つ続けて一つの
  文章を書きましょう。
  やり方は、初めに、カードの(  )のところに、
  四つの場面を続けるのにちょうどいいことばを考え
  て書きます。それができたら、作文を書く紙に、四
  つの文章を続けて書きます。
3 場面と場面を続ける語句を考えて書く。
 (1) @とAをつづける語句を考える。
 T @とAを読んで、続けるのにちょうどいいことば
  を考えて、Aの(  )の中に書きましょう。
 C 各自考えて書く。
 T じょうずに続けられましたか。読んでください。
 C (@とAを続けた文章を読みあげる)
   「わたしたちは、しんじゅくぎょえんにいきまし
   た。いいてんきでした。すこしあるくと、花ばた
   けがありました。赤いばらがきれいでした。きい
   ろいばらもきれいでした。」
  (児童がここで使った接続語をあげてみる。
  oすこしあるくと(17人)oすこしあるいていくと
  (4人)oあるいていくと(2人)oしんじゅくぎ
  ょえんにつくと(3人)oしんじゅくぎょえんのな
  かにはいると(1人)o中にはいると(1人)など
  が使われている。)
 (2) AとBを続ける語句を考えて書く。
 T のとAとBを続けて読んで、AとBを続けること
  ばを考えて書きましょう。








  127
 

                                                       128

 C 各自書いた文章を読みあげる。適切でないものは
  話し合って直してやる。
   「はなばたけをみながらあるいていくと、どんぐ
   りがいっぱいおちていました。いろんなおちばも
   おちていました。」
   (ここで、児童が使った接統語は
  o花ばたけをみながらあるいていくと(3人)o花
  ばたけをみながらいくと(3人)oあるいていくと
  oそれからあるいていくと(10人)oまたすこしい
  くと(2人)oしばらくいくと oまたちょっとあ
  るくと o花をみてからすぐ oちょっとあるいた
  らなどである。)
 (3) BとCを続ける語句を考えて書く。
 T BとCを読んで、BとCをつづけることばを考え
  て書きましょう。
 C 各自読んで考えて、Cの(  )に書く。
   「かえるときになって、わたしたちは、どんぐり
   をもってかえりました。かえってから、おかあさ
   んにどんぐりをおみやげにあげました。」
   (ここで児童が使った接続語は、
  oうちへかえるとき(16人)oそれから(4人)
 oおべんとうをたべてから(4人)などである。)
4 作文を書く。
 T カードにみんなじょうずに、続けることばを書き
  ました。今度は四枚のカードに書いてあることを全
  部続けて作文に書きましょう。「o」を忘れないよ
  うに書きましょう。
5 書いた文章をみんなで「接続語」を中心に評価する。
 T 野口さんの作文をOHPで映しますから、四つの
  文章がよく続いているかどうか読んでみましょう。
  どんなところを気をつけて読みますか。
 C 四つのカードの文がじょうずに続いているかをみ
  る。
 OHP投映
                  のぐち ひろこ
  わたしたちは、しんじゅくぎょえんにいきました。
 いい天きでした。すこしあるくと、花ばたけがありま
 した。赤いばらがきれいでした。きいろいばらもきれ
 いでした。
  花ばたけをみながらあるいていくと。どんぐりがい
 っぱいおちていました。いろんなおちばもおちていま
 した。

                                                       129

  かえるときになって。わたしたちは、どんぐりをも
 ってかえりました。かえってから、おかあさんにどん
 ぐりをおみやげにあげました。

 T 四つの文章の続け方はどうですか。どんなことば
  で続けていますか。
 C 「すこしあるくと」です。
 C 「花ばたけをみながらあるいていくと」です。
 T よく続いていますね。行きのところと、花畑のと
  ころは、どう続けていますか。
 C  「すこしあるくと」です。
 T そうですね。(赤まるをつける)それは、花畑と
  どんぐりのところはどう続けていますか。
 C 「花ばたけをみながらあるいていくと」です。
 T これもよく書けましたね。(赤まるをつける)そ
  の次のどんぐりのところはどうですか。
 C 「かえるときになって」です。
 C 「かえってから」です。
 T これはむずかしいから教えましょう。「かえると
  きになって」は続けることばではないんです。ここ
  で続けることばは、「かえってから」です。
 T とてもじょうずに書けていますね。今度は、自分
  のを読んでごらんなさい。よく書けていると思った
  ら◎をつけましょう。「o」も気をつけで調べてみ
  ましよう。
 C 各自読み返し評価する。「o」をつけ足す。
6 まとめる、(三人紹介読みをして終わる)
  作品例            あべ なおこ
  わたしたちはしんじゅくぎょえんにいきました。い
 いてんきでした。みんなでならんでいきました。
  すこしいくと花ばたけがありました。赤いばらがき
 れいでした。小さいえだがかわいかったです。いろい
 ろなお花もきれいでした。
  あるいていくと、どんぐりがいっぱいおちていまし
 た。どんぐりをいっばいひろいました。どんぐりをひ
 ろうときおもしろかったです。
  うちへかえるとき、みんなはどんぐりをもってかえ
 りました。わたしは、わすれてもってかえりませんで
 した。
        (東京都葛飾区立松上小学校 斎藤文教諭指導)

                                                       130


  Z シミュレーションによる新文法学習の実践



     一 学習基本文型の指導法

 (一) 一年生の基本文型
 文の構成指導では、低学年の単文の文型から、中・高学年の複文・重文など、複雑な文型へと段階を押さえて指導
しなくてはならない。
 一年の児童の場合は、一語文で答えたり、「何が」に対しで述語が続かないことがよく見られる。こうしたことか
ら、何がどうしたのかがわからなくなったりすることも多い。主語・述語の照応をはっきりさせて書いたり話したり
するのは、自分の考えを確かに書く、伝えるという点で大切なことである。
 一年生は、作文をかかせると、「何は、何をしました」「だれは、どこへいきました」という文型をよく使う。こ
こでは、子どもの作文の中から、おもに「○○は、○○と、○○をしました」という基本文型を取り上げて、主語・
述語の照応した文が書けるように、文法感覚を育て、文法意識を高めていきたいと思う。
 ところで、児童は、個人差がいちじるしく、かなり長い文を書く子もいれば、ひらがな五十音が、じゅうぶんに書
きこなせない児童もいる。主語・述語の照応については、おかしい文を書いても、直すことができない子がほとんど
である。「きのうは、てっちゃんと○○と○○と○○とぼくとこうえんにいってふんすいがありました」というよう
                                                       131
な文が見られる。また、重要なところで、主語がぬけることもある。
 読み手にわからない文やおかしい文は、自分でおかしいとわかるような文法感覚が身につくよう指導していきたい
と思う。
 (二) 学習目標(一年)
  主語・述語の照応をしっかり押さえて、「だれは、だれと、何をしました」という行動認識(表現)の基本文型
 に対する感覚を育て、文法感覚・文法意識を高めることができる。
 (三) 学習指導過程――シミュレーションモデル
  @ 基本文型を提示する。
  A 基本文型を組み立てる。
  B 基本文型の感覚の成否を評価する。
  C 基本文型を構成する。
  D 基本文型を使って文を書く。
 (四) 学習指導の方法

1 学習の目あてを知る。
 T きょうは、だれが読んでもわかる文の書き方を勉
  強しましょう。
2 学習基本文型を提示する。
 T これは、みんなが書いた作文の中から先生が選ん
  だ文です。(と言っで短冊カードを提示する。)
  ぼくは いもうとと こうえんで あそびました。
3 意味を理解し文型を組み立てる。
 T さあ、読んでみましょう。
 C いっせいに音読する。
 T 妹と公園で遊んだのはだれですか。
 C ぼくです。
 T いいですか。 C いいです。
 T ぼくは と書いたピンクのカードを、提示した短
  冊カードの上にはる。

                                                       132

 T ぼくは、だれと遊びましたか。
 C 妹と遊びました。
 T いもうとと書いた黄色のカードを、提示した短
  冊カードの「いもうとと」の上にはる。
 T 「ぼくはいもうとと」どこで遊びましたか。
 C 公園で遊びました。
 T こうえんで あそびましたと書いた緑色のカードを、
  提示した文型の上にはる。
  ぼくは いもうとと こうえんで|あそびました。
 T では、読んでみましょう。
 C 文節に区切りながらいっせいに読む。
 T このように文を書くと、「だれが」「だれと」「ど
  こであそんだ」かがよくわかりますね。もう一度考
  えながら読んでみましょう。
 C いっせいに読む。
 T これも、みんなの書いた作文の中から、先生が選
 んだものです。と言って提示する。
  
  これも、前と同じように @読む A意味の理解
  B文型の成立 C文型の確認の過程をたどって学習
  する。
4 文型感覚を確認する――文型を完成する。
 T みんなの作文の中にはこんなのもありました。
  二十分やすみにともだちとごむとびをしました。
 T 読んでみましょう。
 C いっせいに音読する。(意味を理解する)
 T では聞きます。「二十分休みに」友だちと遊んだ
  のはだれですか。(作文型感覚を呼び起こす)
 C わからない。
 C ぼくだ。 C ぼく。(気付いたものもいる).
 T この文では、だれとだれが遊んだのかわかりませ
  んね。何か足りないものはありませんか。
 C わたしは。   (文型感覚の再生)
 C ぼくはと書くの。
 T そうですね。こうすれば、「だれか」がよくわか
   りますね。と言って、わたしは と書いたピンクの
   カードを、一ばん上にはる。これを忘れたのですね
   とつけ加える。
 T それでは、この三つの文を読んでみましょう。

                                                       133

 C 三つの文型をいっせいに音読する。
 T 「だれが」「だれと」「どこで」「なにをした」
  か、読む人によくわかる文の書き方がよくわかりま
  した。今度は、みんなによくわかる文を書いてもら
  います。
  (だれは)――(どこで)――(だれと)―→(どうした)
  ぼくは いもうとと こうえんで|あそびました
  ぼくは ぶんかさいで おにいちゃんと
  うどんを|たべました。
  ぼくは 二十分やすみに ともだちと
  ゴムとびを|しました。
5 基本文型を組み立てる。

  
  (1) 問題のやり方を理解する。
 T (1)と(2)を読んでみましょう。
 C いっせいに読む。(助詞を入れて読む者もいる)
 T これではだれが何をしたのかよくわかりませんね
  どうしたらいいでしょう。(問題(1)を書いた短冊力
  ードを提示する)
  ぼく□ゆたかくん□ でんしゃごっこ□ しました
  この□の中に入れることばを考えて書いてください
  (2) 問題をやる。
 C 各自読みながら考えて書き入れる。
 T 書いたのを読んでください。
 C 「ぼくは、ゆたかくんと、でんしやごっこをしま
  した。」
 C 同様に音読する。
  (3) 評価し修正する。
 T 助詞を短冊カードに書き込む。これと同じ人。
 C ほとんど全員挙手。
 T まちがった人は直しましょう。
 T いっしょに読んでください。
 C いっせいに音読する。
 T では、○をつけましょう。
  (4) (2)(3)問の問題をやる。

                                                       134

 T それでは、(2)と(3)をやってください。できたら何
  回も読んでください。
 C 各自問題をやる。(教師は個別指導をする)
  おつきさま□ ちゅうすけくん□ 見ていました。
  わたし□おとうさん□うち□かるた□ しました。
 C 自分が書いたのを読み上げる。
 T 短冊カードに助詞を書き入れた後、各自評価修正
  する。できた人は○をつける。
 T (1)の文で「ぼくは」だれと何をしましたか。
 C 「ぼくは、ゆたかくんと、でんしやごっこをしま
  した。」
 T (2)の文で、「お月さまは」どうしましたか。
 C 「お月さまは、ちゅうすけくんを、見ていまし
  た。」
 T (3)の文で、「わたしは」「どこで」「何を」しま
  したか。
 C 「わたしは、おとうさんと、うちで、かるたをし
  ました。」
 T で(1)(2)(3)を読んでみましょう。
6 基本文型を使って文を書く。
 T 「だれは」「だれと」「何をした」かよくわかる
  文ができましたね。今度はこの絵を見て文を作って
  もらいます。これは、ちゅうすけくん、これはちゅ
  う子さん。書けたら読んでもらいます。
  絵の
  提示 

 C 各自絵を見ながら、学習シートに書く。
 T 観察しながら個別指導をする。
 T 書けましたか。書けたら読んでもらいます。
 C 「ちゅうすけくんは、ちゅう子さんとなわとびを
  しました。木のそばで遊びました。」
 C 「ちゅうすけくんは、木のそばで、ちゅう子さん
  となわとびをしました。」
 T よく書けました。みんな自分の書いたのを読んで
  みましょう。よく書けなかった人は、書き直しまし

     (東京都品川区立城南第二小学校 高沢知恵教諭指導)

                                                       135

     二 接続語の系統的指導法


 (一) 接続語の系統的指導
 文章に出てくる接続語は、恣意的で、そこに何の系統性もない。したがって、読解学習の中で行う機能的な文法指
導では、断片的に、それが整理されないまま無秩序に学習されやすい。文法は、本来系統性をもち。社会的に、発達
的に自然に学習されるものである。
 そこで、いろいろな接続語を断片的に、出たとこ学習をしたあとで。それらを整理し系統立てて、接続語の機能と
ともに、読解学習を離れて、系統的に学習させる必要がある。
 小学校児童が学習する接続語には、
 @ 「それから」 「そして」のような順接の関係を示す接続語
 A 「けれども」 「ところが」のような逆接の関係を示す接続語
 B 「だから」のような原因・理由・結果の関係を示す接続語
 C 「それとも」のような選択を示す接続語
 D 「しかも」のような累加を示す接続語
などがある。これらの接続語をまとめで系統的に学習させる。なお、ここでは、接続助詞を含む接続語は除いてあ
る。
 (二) 学習目標(二、三年)
   接続語の機能・用法について系統的に学習し、文と文との間にはいろいろな続け方のあることを理解するとと
  もに、接続語に対する感覚・意識を育てることができる。
                                                       136
(三) 学習事項
 ここで学習する文法事項は次の通りである。
 @ 文と文との接続は、文の意味の展開を考えて使うこと。
 A 前の文の意味を受けて、そのままあとに続けること。
 B 前の文の意味を受けて、逆に続けること。
 C 前の文の意味を受けて、その結果を示すこと。
 D 前の文の意味を受けて、選択を示すこと。
 E 文と文との意味上の関係は続けることばによって表されること。
 F 文と文との意味上の関係の表し方を練習すること。
(四) 学習過程――シミュレーションモデル
 @ 接続語を提示する。
 A 接続語の機能に気付く。
 B 接続語はそれぞれ異なった機能をもっていることに気付く。
 C 接続語の機能を確認する。
 D 接続語を使う。
 E 文法感覚を確かめる。
(五) 学習指導


 シミュレーションモデルによる学習
 1 つぎの@からEまでは、それぞれ二つの文で
  一つのまとまった意味を表しています。意味が 
  よくわかるのに○をつけましょう。
 @ いそいで学校へ行きました。ちこくしてしま
  いました。
 A いそいで学校へ行きました。けれども、ちこ 

                                                       137

  くしてしまいました。
 B いそいで学校へ行きました。すると、大木くん
  がないていました。
 C いそいで学校へ行きました。大木くんがないて
  いました。
 D いそいで学校へ行きました。ところが、まだ、
  だれも来ていませんでした。
 E いそいで学校へ行きました。だれも来ていませ
  んでした。
  2 意味がよくわかるわけを考えてみましょう。
   意味がよくわかるのは、AとBとDです。なぜ
   ですか。そのわけを、つぎの@ABの中から選
   びなさい。
 @ 文と文が続いているからです。
 A 文と文との間に。「けれども」「すると」「と
  ころが」ということばがあるからです。
 B 「けれども」「すると」「ところが」ということ
  ばを使って。文と文を続けているからです。この
  ように。「文と文を続けることば」を使うと「前
  の文の意味とあとの文の意味」とが、「どんな関
  係」でむすびついでいるかがよくわかります。 
   このようなことばを「つづけことば(接続語)」
  といいます。
  3 つぎの文をくりかえし読んで、どんな「つづ
   けことば」が、どんな意味を表しているかを考
   えて、あとの問題に答えましょう。
 @ きのう本やへ行きました。そして、まんがの本
  を買いました。
 A きのう本やへ行きました。すると、山田くんも
  来ていました。
 B ことしはあさがおにひりょうをやった。だから
  大きな花がさいた。
 C ことしは、あさがおにひりょうをやった。けれ
  ども、あまりきれいな花はさかなかった。
 D わたしはなんどもなんどもころんだ。しかし。
  走るのをやめなかった。
 E ももを食べますか。それとも、すいかを食べま
  すか。
 F やくそくどおり青木さんの家へ行った。ところ
  が、青木さんはいなかった。
 G 水がたくさん流れていました。しかも、きれい
  にすんでいました。 

                                                       138

 ア 前の文の意味とぎゃくな意味を表しているの
  はどれですか。
 イ 前の文の意味にそのまま続いていくのはどれ
  ですか。
 ウ どちらかをえらぶ意味を表しているのはどれ
  ですか。
 エ 前の文の意味の結果を表しているのはどれで
  すか。
 オ 前の文の意味に、ほかの意味をつけたしてい
  るのはどれですか。
 4 つぎの二つの文を意味をよく考えてつづけて
  みましょう。どんな「つづけことば(接続語)」
  でつづけますか。
@ いっしょうけんめい漢字を書くれんしゅうをし
 た。  、漢字のテストがよくできた。
A ぼくは教えられたとおり歩いていった。  
 ゆうびん局の前に出た。
B わたしはくだものやへ行きました。  、みか
 んを買いました。
C ぼくは大きな声でよんだ。  、聞こえないの
 か、春男くんはへんじもしなかった。 
D 海へ行こうか。  、山へ行こうか。
E 二時間も休まず歩いたのでつかれました。
   、ぼくはがんばって歩きました。
F 秋一くんが来たなと思っでげんかんへ出てみ
 ました。  、来たのはひさしくんでした。
 できたら、なんかいもくりかえし読んでみましょ
 う。つづき方が、へんだなあと感じたら、また考
 えて書き直しましょう。
 5 つぎの文と文とのつづけ方で正しいのに○を
 つけましょう。
@ きのう本々へ行きました。すると、まんがの本
 を買いました。
A 地めんにあなをほりました。すると、小さな虫
 が出てきました。
B 毎日、あつい日がつづきます。だから、プール
 でおよぎたくなります。
C 雨がふってきました。だから、外であそべま
 す。
D 本を読もうか。それとも、テレビを見ようか。
E ごはんを食べようか、それとも、パンを食べ
 る。 

                                                       139

F 野球がすきだ。けれども、じょうずにならな
 い。
G よく本を読む。けれども、はやく読める。
H 字をまちがえて書いています。しかも、書き方 
 がらんぼうです。
I 春が来ました。しかも、まださくらはさきませ
 ん。 

 これはプリントによって学習を進める。1・2と順に学習をしては評価・調節して前へ進むようにする。問題だけ
をプリントして、授業を進めてもよい。

     三 修飾語の系統的指導法

 (一) 修飾語の働きと修飾語の用法の指導法

 「雨が降る」「風が吹く」などの文で、雨が」「風が」のように、「何が」に当たることばが主語(「なに」のこ
とば)で「降る」「吹く」などのように「どうする」に当たることばが述語(どうするのことば)である。
 したがって、「雨が降る」「風が吹く」は、主語と述語の関係で成り立っている文である。主語と述語の関係で成
り立っている文には、この「何が――どうする」のほかに、「花がきれいだ」のような「何が――どんなだ」、「さ
くらは春のシンボルだ」のような「何が――何だ」、「犬がいる」のような「何が――いる(ある)」などがある。
 ところで、「春の雨がしとしと降る」「暖かい風が静かに吹く」という文がある。これらの文の「春の」は、「ど
んな」雨かを詳しく説明しているし、「暖かい」は「どんな」風かを詳しく説明している。
 この「春の」「暖かい」は、それぞれ、主語の「雨が」「風が」を「くわしくする働き」をもっていることばであ
る。この「くわしくすることば」を「修飾語」と呼んでいる。
 また 「しとしと」は、「どのように雨が降るかを、「静かに」は、「どのように」風が吹くかを、それぞれ詳し
                                                       140
く説明していることばである。したがって、「しとしと」も「静かに」も「降る」「吹く」をそれぞれ、「どのよう
に」「降る」か、「吹く」かを、「詳しく説明する働き」をもっている。これも「くわしくすることば」で、「修飾
語」である。
 しかし、同じ「くわしくする働き」をもったことばでも両者はその性質を異にしている。前のは「どんな」を表す
ことばで、あとのは、「どのように」を表すことばである。そこで、「どんな」のことばは、いつも「何が」を詳し
くし、「どのように」のことばは、いつも「どうする(どうだ・どんなだ)」のことばを詳しくする。しかも、この
二つのことばは入り交じることがない。前者を普通「連体修飾語」、後者を「連用修飾語」と呼んでいる。
 ここでは、「どんな」「どのように」のことば・修飾語は、詳しくする働きをもっていること、この詳しくする働
きには、「何が」に対するものと、「どうする」に対するものとがあって、両者は入り交じらないことを理解した上
で、修飾語の用法を身につける。
 (1) 学習目標(三年)
  修飾語の機能、修飾と被修飾との関係を理解し、連体修飾語・連用修飾語の用法(使い方)を身につけることが
 できる。
 (2) 学習事項
  1 修飾語は詳しくする働きをもっていること。
  2 修飾語には「何が」を詳しくする働きと。「どうする」を詳しくする働きがあること。
  3 修飾語の働きを知って正しく使うこと。
 (3) 学習過程――シミュレーションモデル
  1 修飾語の機能を発見する。
  2 連体修飾と連用修飾との機能の違いを理解する。
  3 連体修飾語・連用修飾語を使う。
                                                       141
  4 修飾語を使って文を書く。

 (4) 学習指導法
  学習の目あてを決める。
 T 「赤い美しい花」とか、「いちめんにたくさん咲
  いている」とかいうように、「花」や「咲く」を、
  詳しく表していることばがあります。こういうこと
  ばも)、「詳しくすることば」あるいは「修飾語」と
  言います。きょうはその「くわしくすることば」の
  使い方の勉強をしましょう。
2 修飾語の機能に気付く。
 T (次のカードを提示する)
  @ 小鳥が|ないている。
  A かわいい小鳥が|ピチピチと ないている。
  B 雨が|ふっている。
  C 大つぶの雨が|はげしく ふってきた。
 T @とA、BとCを比べて様子がよくわかるのはど
  の文ですか。
 C AとBが、@とAよりも、様子がよくわかりま
  す。
 C AとCは、様子が目に浮かんできます。
 T なぜですか、そのわけを考えてみてください。
 C @では、ただ小鳥と書いてあって、どんな小鳥か
  わからないけれど、Aでは、かわいい小鳥と書いて
  あるから、かわいい小鳥だということがわかりま
  す。
   それから、鳴いている方も、ただ鳴いているとい
  うのでは、どのように鳴いているのかわからないけ
  れど、ピチピチと鳴いていると書いてあるから鳴き
  声が聞こえてくるように感じます。
 C 雨のはうも、大つぶの雨が激しく降ってきたとい
  うのだから、どんな雨が降っているのかわかるし、
  はげしく降っている降り方もわかります。
 T (「かわいい」「ピチピチと」「大つぶの」「はげ
  しく」の語に、赤でサイドラインを引く。)
  そうすると様子がよくわかるのは、なぜですか。
  だれかまとめて言ってください。
 C 「かわいい」「ピチピチと」「大つぶの」「はげ

                                                       142

  しく」ということばがついているからです。
 C 様子をくわしくすることばがついているからで
  す。
 T そういうことばを「くわしくすることば」とか、
  「修飾語」と言うのでしたね。
  そうすると、こういうことばは、どんな働きをもっ
  ていますか。
 C 様子を「くわしくするはたらき」です。
 T その様子を「くわしくするはたらき」を持ってい
  ることばが「修飾語」ですね。(板書する)
   くわしくするはたらき―→修飾語
3 連体修飾語と連用修飾語の機能の違いに気付く。
 T それでは、この文を読みながら、修飾語の次の勉
  強をしましょう。(カード提示)
  いろいろな|小鳥がにぎやかに|ないている
  つ め た い|雨 がしとしとと|ふっている
 T この二つの文は、「何が」「どうしている」文で
  すか。
 C 「いろいろな小鳥が」「にぎやかに嗚いている」
  という文です。
 C 「つめたい兩が」「しとしと降っている」文で
  す。
 T (カードの主語の下に赤線を二本入れる)この二
  つの文で、どのことばは、どのことばを詳しくして
  いるか考えてみてください。
 C 「いろいろな」は「小鳥」を詳しくしていて、
  「にぎやかに」は、「鳴いている」を詳しくしてい
  ます。
 C 「つめたい」は「雨」を詳しくしています。「し
  としと」は。「降っている」を詳しくしています。
 T (修飾語と被修飾語の間に青い線を一本入れる)
  そのことからどんなことがわかりますか。
 C 「小鳥」と「雨」をくわしくしていることばと、
  「鳴いている」と「ふっています」をくわしくして
  いることばと、二種類あることがわかります。
 T よくわかりました。それでは、「小鳥」と「雨」
  は、文の中で、何を表していましたか。
 C 「何が」の「何」を表しています。
 T 「鳴いている」と「降っています」は、文の中で
  どういうことを表していましたか。

                                                       143

 C 「何が」「どうする」の「どうする」を表してい
  ます。
 T だれかまとめてください。゛
 C 「詳しくすることば」の中には、「何が」を詳し
  くすることばと、「どうする」を詳しくすることば
  があります。
 T じょうずにまとめましたね。(と言って、次のよ
  うに板書する)
 ┌(       )→(何  が)
―┤
 └(       )→(どうする)
  みんな、なかなかよくわかりますね。それでは、こ
  のかっこの中にどんなことばがはいるかわかるでし
  ょう。考えてごらんなさい。
 C (あれこれと考え合った末に)「どんな」と「ど
  のように」が、それぞれ入ることに落ち着く。
 T (かっこに書き入れて)これで、詳しくすること
  ばには、「どんな」なにと、「どのように」どうす
  ると二つの詳しくするやり方があることがわかりま
  したね。これで、みなさんは、ほんとうによくわか
  っていて、二つをまちがえて使うことはありませ
  ん。
4 連体修飾語・連用修飾語を使って、使い方をはっき
  りと理解する。
 T それでは、今度は、先生が開題を出しますからや
  ってごらんなさい。まず、初めは、詳しくすること
  ばを一つずつ使って、意味のよくわかる文にしでみ
  ましょう。(次のように板書する)
          
  どんな 自動車が―どのように 走っている。
 C それぞれ、考えて書く。
  (書いた結果は、次の通り)
 oいろいろな自動車が、びゅんびゅん走っている。
 oたくさんの自動車が、はげしいスピードで走ってい
  る。以上、二七人中一五人
 o大きな自動車が、高速道路を走っている………七人
 o道路を自動車が、たくさん走っている。………二人
 T それでは、今度は、「どこを」走っているか、走
  っている場所を入れて、書いてごらんなさい。
 C それぞれ考えで書く。
  (書いた結果は、次の通り)
 o高速道路をいろいろな自動車が、ピュンピュンと走

                                                       144

  っている。…………………………………………五人
 oいろいろな自動車が、高速道路をピュンピュンと走
  っでいる。………………………………………一六人
 oいろいろな自動車が、ピュンピュンと、高速道路を
 走っている。………………………………………三人
   (備考、学校のすぐそばに高速道路がある。)
5 修飾語を使って自由に文を書く。
 T 今度は、見たことを、修飾語を使って自由に書い
  てください。
 C (思い思いに書く。)
    (その結果は、次の通り)
  oホッチキスがはいぜん台の上にのっています。
                     (四人)
  oぎん色の大きいホッチキスが、はいぜん台のまん
   中においてあります。       (一九人)
  oはいぜん台のふろしきの上に、大きいホッチキス
   が、おいてあります。
  o白いカバーのかかっているはいぜん台の上に、ぎ
  ん色の大きい・ホッチキスが、のっています。
                     (四人)
  oようち園の子が、先生と水あそびをしている。
  oこうていでは(ようち園の人たちが、たのしそう
   に水あそびをしでいる。
  o四年生の人たちが、プールで、すいすいとおよい
   でいる。
  o二年生の男の子が、こうていでおもしろそうにや
  きゅうをしている。
  O一年生の人が、プールのそとで、うらめしそうに
   見ていた。
6 学習のまとめをする。
 T きょうの勉強はどうでしたが。
 C 詳しくすることばの使い方がよくわかりました。
 C 自分で勉強ができたので楽しかった。
     (東京都中央区立阪本小学校 堀口由美教諭指導)


 (二) 連体修飾語の指導法

 1 学習目標(四年)
連体修飾語のはたらきを理解し、それを正しく使うことができる。
                                                       145
2 学習過程――シミュレーションモデル
 (1) 連体修飾語の意識化        (3) 連体修飾語の用法の理解
 (2) 修飾・被修飾の関係の理解     (4) 連体修飾語を使って文を書く
3 学習指導の展開

学  習  活  勵  指導上の留意点 
@ 児童の書いた「山にささげ
 た一生」の感想文を音読す
 る。
A スクリーンを見ながら、
 「風・岩かべ・案内人・注意」
 の修飾語(どんな)を考え発
 表する。
B 他の児童文の感想文の中か
 らも修飾・被修飾の関係を見
 つける。
C 「ことばのきまりCbP」
 に_ _ _(修飾語)  (被修
 飾語)を書く。
D 「ことばのきまりCbQ」
 に適切な連体修飾語を書き入
 れる。
E グループで、OHPシート 
oOHP使用
o勉強することを確認
 する。
oOHPシートに、
   
 _ _ _ _  の関係を
 図示し、係り方を明
 確にする。
o連体修飾語がつくと
 体言がわかりやすく
 なることに気付く。
oカードにより修飾・
 被修飾の関係を明確
 にする。


oOHP投映
oみんなで評価する。
に書いて投映し、連体修飾語
が適切に使われているかどう
かを評価する。  
oこれらの学習を作文
 に生かすようにす
 る。  
 4 学習指導法
  (1) 連体修飾語の意識化
@ 感想文の中から、「どんな」「なに」に当たること
 ばを選び出す。
 T きょうは、「どんな」「なに」のことばの勉強を
  します。初めにAさんの書いた「山にささげた一
  生」の感想文を読んでみましょう。
   (OHP投映、男生音読する)
 T この感想文の中から、「どんな」「なに」に当た
  ることばを抜き出してみましょう。
 C 風速二十メートルの―風
 C 大きな―岩かべ
 C りっぱな―山案内人
 C 細かい―注意
 T 今度はみんなの書いた感想文の中から「どんな」

                                                       146

 「なに」を捜して発表してもらいます。
C 強い―風
C なつかしい―山
C 勇気のある―山案内人
C 五人の大学の―人たち
C 近所の山案内人の―話
C 慶応大学の三田さんの―荷物
T みんなは、作文の中で、「どんな」「なに」にあ
 たる文をたくさん使っでいることがわかりました
 ね。
  (2) 修飾・被修飾の関係の理解
T 今までの勉強で、「どんな」を表すことばがある
 と。「なにが」がよくわかることがわかりました
 ね。今度は、その「どんな」と「なに」とは、どう
 いう関係があるか考えてみましょう。
 「どんな」と「なに」との関係は、このように書き
 ます。(以下板書する)
o「どんな」は「_ _ _ 」で表し、「なに」は「 」で表す。
oその関係は「―→」で表します。
   
 _ _ _ _ (どんな)       (なに) 
T それでは、問題が六つありますから、順にやって
 ください。中には「どんな」を捜す問題と、「なに」
 を捜す問題とあります。
 ことばのきまり C bP  四年 (     )
   
 _ _ _ _   の関係を考えてみましょう。
1 つくえの上にきれいながかざってある。
2 先週の学級会で、火曜日の二十分休みにはクラ
 ス全員で遊ぶことに決めた。
3 ぼくはプールより広い大きなで泳ぐほうが
 すきだ。
4 お母さんが、かぜをひいてねてし
 まった。
5 校庭の南側の花だんにさくらがある。
6 学級委員は、みんなの選挙によって決
 められる 
T 調べてみましょう。
 o問題を書いた短冊カードを提示する。
 o話し合いながら修飾語は黄のカード、被修飾語は
  青のカードにおきかえる。
 o修飾・被修飾の関係は記号で示す。
 oその上で、各自自己評価させる。誤ったものは修

                                                       147

  正する。
       
 机の上にはきれいな がかざってある。 
       
先週の 学級会で、火曜の 二十分休みにはラ
クス全員で遊ぶことに決めた。 
 以下同じようにして検討し。評価して処理する。
  (3) 連体修飾語の用法の指導
T 「どんな」と「なに」の関係がよくわかりました
 ね。今度は、「どんな」「なに」がよくわかるよう
 に文章を書いてみましょう。
  それでは、プリントbQの_ _ _ _や   よくあて
 はまることばを書きましょう。
  ことばのきまりC bQ  四年 (   )
 _ _ _ _ __や  のところにことばを入れましょう。
 ぼくは日曜日に_ _ _ _と公園へ行った。そこで、小さ
   を見つけた。その近くには、子ども用の毛糸の
   がおいてあった。きっとだれかがわすれていった
のだろう。
 しばらくたつと_ _ _ _ 子どもがいきおいよく走って 

きた。その子はわすれ物をひろうやいなやぼくには目
もくれず、二つのシーソーの  を通って走っていっ
た。
 ふと、わすれ物がおいてあった場所を見ると、そこに
は_ _ _ _の_ _ _ _のしるしがあった。 
C 各自自由に書く。
T できたら発表してもらいます。まず、グループで
 調べでください。
C 四人のグループを作る。グループごとに検討す
 る。グループごとに一枚のTPを書く。
T 各グループごとに投映し、全員で「なんの」「な
 に」が適切に書かれているかどうか評価する。
  (4) 学習のまとめ
T 今まで勉強したように「どんな」=「なに」「と
 ころ」「とき」というように書くと「なに」がよく
 わかります。
 (東京都品川区立城南第二小学校 大竹有喜子教諭指導)

                                                       148
 (三) だんだんくわしくする修飾語の指導法

 (1) 連体修飾語・連用修飾語の使い方
 具体的な言語行動の中で、修飾語が自由に使えるようになるのは、三年生のころからである。事象を客観的に正確
に認識する力が、しだいに伸びてくる。それにつれて、客観的な叙述・描写もしだいにできるようになる。
 「ぼくは、赤くて、黒っぽい、はさみの長さが、なんと九センチメートルもある、とってもでっかく、目はちょこ
んととび出ている、アメリカザリガエをかんさつしました。」「初めは後ろに歩くときです。はさみを横にふり上げ
て、後ろの足をそろえながら、よたよた歩いていく。」
 「向きを加えるときは、顔を動かして、ほうこうを決めて、首をまげて、体をもっていきます。首をまげるときは、
前足をむねにそろえて、とぶような感じにしてまげます。そのつぎは、なめるときです。なめる物は、前足、しょっ
かく、中足です。前足をなめるときは、だいだいっぽい赤いしたを、くるくるまわしながらなめて、ひざのあたりか
ら先のほうまでなめます。しょっかくをなめるときは、しょっかくをゆみなりにまげて、口にもってきて、まんなか
のあたりまでなめます。」                 (東京都小金井市立南小学校 斎藤洋子教諭指導)
 これは、二人の三年生の、観察したことを書いた文であるが、実に的確に、描写している。適切な指導をすれば、
三年生でも、ここまで正確な認識ができ、そのまま的確に表現できることを示している。しかし、これはだれでもこ
ういう表現ができるというものではない。しかし、的確な表現は、的確な認識から出発することは言うまでもない。
 このような的確な修飾語を使うことができるようになるためには、ふだんから物の見方を育てる必要のあることは
言うまでもない。と言って、絶えず観察指導をし、それを表現させることばかり計画するわけに行かない。そこで、
シミュレーションによる修飾語の指導をする必要性が出てくる。
 ここでは、児童の経験を生かし、平素の認識の結果に素材を求めて、修飾語の用法を碓実に身につけようとするも
のである。
                                                       149
(2) 学習目標
  連体修飾語・連用修飾語の用法を確実に身につける。
(3) 学習指導

1 連体修飾語を使ってだんだん詳しくする。
 T 次の文をだんだん詳しく書いてみよう。最初は、
  金魚を観察したときのことを思い出して、金魚につ
  いて詳しく書いてみましょう。
  基本の型―金魚がおよいでいる。
 C 赤い金魚がおよいでいる。
 C 赤と白のぶちの金魚がおよいでいる。
 C まっ黒で、目が大きくでっぱった金魚がおよいで
  いる。
 C おなかの丸くふくらんだ。ボールのような赤い金
  魚がおよいでいる。
 C 体はまるくて、おをはたのようにひらひらさせて
  いる金魚がおよいでいる。
 T よく書けました。今度は、かぶと虫を観察したこ
  とを思い出して書いてみよう。
  基本の型―かぶと虫がはっている。
 C 二本の角を持つたかぶと虫がはっている。
 C 赤黒い固い羽でつつまれたかぶと虫がはってい
  る。
 C 固いよろいを着たような大きなかぶと虫がはって
  いる。
 T それでは、今まで書いた文を見ながら、金魚とか
  ぶと虫をだんだん詳しくしていることばを押さえて
   「どんな」を表すことばをまとめてみよう。
 @ 赤い金魚がおよいでいる。
 A 赤と白のぶちの金魚がおよいでぃる。
   赤と白のぶちの金魚がおよいでいる。
 B おなかのまるくふくらんだ、ボールのような赤い
  金魚がおよいでぃる。
  おなかのまるくふくらんだボールのような
  赤い金魚がおよいでぃる。
 C 体はまるくで、おをはたのようにひらひらさせて
  いる金魚がおよいでぃる。

                                                       150

 からだはまるくて
 おをはたのようにひらひらさせている金魚がおよい
 でいる。
 T 金魚を詳しくしていることばは「どんな」を表す
  ことばでしたね。それをまとめてみましょう。
  @ 「赤い」「赤と白の」「ぶちの」などのことば。
  A 「おなかのまるくふくらんだ」「ボールのよう
   な」「からだはまるくて、おをはたのようにひら
   ひらさせている」などのことば。
 T かぶと虫を詳しくしていることばもまとめてみま
  しよう。
  @ 二本の角を持つたかぶと虫がはっている。
  二本の角を持ったかぶと虫がはっている。
  A 赤黒い固い羽でつつまれたかぶと虫がはってい
   る。
  赤黒い固い羽でつつまれたかぶと虫がはってい
   る。
  B 固いよろいを着たような大きな
   →かぶと虫がはっている。
  @ 「大きな」
  A 「二本の角を持った」「赤黒い固い羽でつつまれ
   た」「固いよろいを着たような」などのことば。
 T 金魚やかぶと虫などのことばは、「何が(は)」に
  あたることばでしたね。その「何が(は)」を詳しく
  することばは、「どんな」を表すことばです。それ
  は、どんなことばかまとめてみましょう。
  @「どんな」を表すことばは、「何が(は)」を詳し
   くする。
  A「どんな」のことばは、「何が(は)」に続くこと
   ばである。
  B「どんな」のことばには、短くて、そのまますぐ
   「何が」に続くことばと、長いことばでは、最後
   のことばが「何が」に続く。
  C「何が」に続かないことばは、「何が」を詳しく
   することばではない。
2 連用修飾語を使ってだんだん詳しくする。
 T 今度は、「何だ」「どうする」「どんなだ」など
  を詳しくすることばを使って文を書いてみましよ
  う。
 C 金魚が、ゆっくりおよいでいる。

                                                       151

 C 金魚が、静かにおよいでいる。
 C 金魚が、おびれを動かしながらおよいでいる。
 C 金魚が、ゆったりと、口をぱくぱくさせながらお
  よいでいる。
 C 金魚が、ものかげにかくれたり出たりしておよい
  でいる。
 C 金魚が、口から水をはいたり吸ったりしながらお
  よいでいる。
 C 金魚が、池の中で、からだをほとんど動かさず、
  じっとしているようにおよいでいる。
 T それでは、「どうする」「どんなだ」などを詳し
  くしていることばを考えてみよう。
   @ 金魚がゆっくりおよいでいる。
   金魚が→ゆっくり およいでいる。
   A 金魚が静かにおよいでいる。
   金魚が→静かに およいでいる・
   B 金魚がおびれを動かしながらおよいでいる。
   金魚が→おびれを動かしながら およいでいる。
   C 金魚がゆったりと、口をぱくぱくさせながら
   およいでいる。
   金魚が→ゆったりと口をぱくぱくさせながら
   およいでいる。
   D 金魚がものかげにかくれたり出たりしておよ
    いでいる。
   金魚が→ものかげにかくれたり出たりしておよ
   いでいる。
   E 金魚が、口から水をはいたり吸ったりしなが
    らおよいでいる。
   金魚が→口から水をはいたり吸ったりしながら
   およいでいる。
 T このように、「どうする」を詳しくすることばを
  何と言いましたか。
 C 「どのように」を表すことばです。
 T 「どのように」を表すことばをまとめてみましょ
  う。
   @「ゆっくり」「静かに」「ゆったりと」など。
   A「おびれを動かしながら」「口をぱくぱくさせな
    がら」「のかげにかくれたり出たりして」など。

                                                       152

 これらのことばは、どれも「どうする」に続くこと
 ばです。
T「かぶと虫がはっている」も詳しくして書いてみま
 しょう。
 この指導は一例である。修飾語の機能、詳しくするを
生かした学習法は、いろいろ考えられるから、工夫して
みる必要がある。



     四 指示語の系統的指導法

 (一) 指示語の機能とその系統
 指示語というのは、「指し示す」「指示する」機能をになっている語の総称で世に「こそあどことば」と言われてい
る。したがって、いわゆる品詞分類の基準によって分類した語類ではない。が、指示機能をその本質とする、いわゆ
る指示代名詞がその中核となっている。指示語の概念の中に含まれる語は、指示代名詞と言われる、「これ、ここ、
こちら、こっち、こいつ」など、連体詞と呼ばれる「この、こんな」など、副詞の「こう」などである。
 これらの指示語の指示する機能は二つの面から考えることができる。一つは、「指示者と指示する対象との位置関
係」による面である。他の一つは、「指示者が指示する対象の性質」によるものである。
 まず、指示者と指示する対象との位置関係から言えば、@最も近いもの、時には指示者に所属するもの。それは距
離的にも精神的にもである。最も主観性の強い指示である。A指示者から少し離れた位置にあるもの。距離的にも精
神的にもである。やや、客観性をもった冷たい指示である。B指示者から最も遠くにあるもの。距離的にも精神的に
もである。それは全く客観的であり、傍観的指示である。C指示者がこれと明確に指示できないもの。不定のもの、
これと判断し得ないものである。
 文法は、全く意味内容を離れた形式的、抽象的な判断であるから、それを、近称、中称、遠称、不定称というよう
                                                       153
に、全く形式的にのみ位置づけるべきものであろうが、実際的な言語使用の場では、そこに精神的な遠近感、親近感
をも含めて考える必要があろう。それについては、文法学習の機能的方法の中で、しばしば言及した通りである。
 次に、指示する対象からいえば、@指示する事物、A指示する場所、B指示する方角、C指示する人(生物)、D指
示する状態、E指示する行動・動作などに分類され、それに応じて指示語の類別が変わっている。

 指こ
 そ示あ
 ど
語こ
 と
 ば
 
品 詞 指示機能 ・こ(近)  ・そ(中) ・あ(遠)  ・ど(不)
代名詞  物・事柄場  所
方  角

人 
こ れ
こ こ
こちら
こっち
こいつ 
そ れ
そ こ
そちら
そっち
そいつ 
あ れ
あそこ
あちら
あっち
あいつ 
ど れ
ど こ
どちら
どっち
どいつ 
連体詞 指  定
様  態
こ の
こんな 
そ の
そんな 
あ の
あんな 
ど の
どんな 
副 詞 様  態 こ う  そ う  あ あ  ど う 
 ここで注意すべきことは、「これ、ここ、
こちら、こっち。こいつ」というような一連
の指示代名詞である。これらは、代名詞であ
るから、「これがいい」「こっちが近い」と
いうように、そのまま主語となることができ
る語である。
 ところが。「この、こんな」は、連体詞で
あるから、そのまま主語となることはできな
い。「この幸せ」「この美しい花」「こんな
ところ」「こんなさびしいところ」というよ

うに、直接体言に結びつくか、あるいは、他の語の連体形を介して体言に結びつくかして、これと指定したり、その
状態を指示することしかできない。
 また、「こう、そう」などは、副詞であるから、体言に付くことはできない。これは、用言にだけしか接続しな
い。だから、動態や行動などを指示する働きしかない。
 実際に、このような指示語の機能と、指示する対象とを、読解学習の中で、系統的、体系的に指導することは困難
である。次に参考に指示語の体系をあげてみる。
                                                       154
(二) 指示語の指導法
1 学習目標
  指示語の指示する機能を自覚し、指示する対象についての理解を深めるとともに、指示語の用法(使い方)を
 身につけることができる。
2 学習過程――シミュレーションモデル
 (1) 指示語の機能を自覚する。(指示する機能、指示語の効用)
 (2) 指示語の指示する機能と指示する対象とを理解する。(物、事柄、指定、様態を中心にして)
 (3) 指示語の使い方を理解する。
 (4) 指示語を使って文を書く。
3 学習指導

(1) 指示語の機能を自覚する。
 T 次の@とA、BとC、DとEは、それぞれ同じ意
  味のことを二つの文に書いたものです。どちらがわ
  かりいいですか。(学習シートに印刷してある)
 @ 春子は、赤いかわいいはこをもってきて、これを
  秋子さんにあげてといった。
 A 春子は、赤いかわいいはこをもってきて、赤いか
  わいいはこを、秋子さんにあげてと言った。
 B 池が黒くなるほどおたまじゃくしが生まれた。池
  が黒くなるほどたくさんのおたまじやくしは、これ
 まで見たことがない。
 C 池が黒くなるほどおたまじゃくしが生まれた。こ
  んなたくさんのおたまじやくしはこれまで見たこと
  がない。
 D 毎日、三十度をこえる暑さである。こういう暑さ
  では、水不足になるだろう。
 E 毎日、三十度を越える暑さである。毎日、三十度
  をこえる暑さでは、水不足になるだろう。
 C @とAでは、@です。
 C BとCでは、Cです。

                                                       155

 C DとEでは、Dです。
 T なぜですか、わけを考えてごらんなさい。
 C AとBとEでは、同じことが二度書いてあるから
  です。
 C @とCとDは、同じことを二度書くかわりに、
  「これ」と「こんな」と「こう」ということばが使
  ってあるからです。
 T 「これ」「こんな」「こう」ということばがあれ
  ばなぜわかりいいのですか。
 C 同じことを言うのと、同じ役めをしているからで
  す。
 C 前に書いてあることを、「これ」と言ったり、「こ
  んな」といっているからです。
 T そうですね。「これ」「こんな」「こう」のように、
 前に書いてあることを指していることばを、「指す
 ことば」(指示語)と言います。
 T それでは、「これ」「こんな」「こう」は、何を
  指しているか考えてみましょう。
 C @の「これ」は、「赤いかわいいはこ」を指して
  います。
 C Cの「こんな」は、「池が黒くなるほど」を指し
  ています。
 T 「これ」の指す物と、「こんな」の指すものはど
  う違いますか。
 C あっ、わかった。「これ」は、「赤いかわいいは
  こ」というように形のあるものを指しています。
  「こんな」は、「池が黒くなるほど」というように、
  様子を指しています。
 C 「これ」は、「もの」で「こんな」は様子を指し
  ます。
 T よくわかりましたね。Dはどうですか。
 C 「こう」は、「毎日、三十度をこえる」を指して
  いて、「こう」も、様子を指しています。
 T これまでにわかったことを、だれかじょうずにま
  とめてください。
 C (板書を見ながら)
oこれ・こんな・こう――「さすことば」
oさすことば ―――――「さすはたらき」
oこれ―――――――――「もの」
oこんな――――――――「ようす」
oこう―――――――――「ようす」 

                                                       156

  一つ、「これ」「こんな」「こう」のようなことば
  をさすことばと言います。
  二つめ、さすことばは、さすはたらきをもっていま
  す。
  三つめ、「これ」は「もの」をさします。「こんな」
  と「こう」は「ようす」を指します。
 T じょうずにまとめましたね。指すことばは、この
  ほかにもたくさんあります。あとで、教科書の文章
  の中から捜し出して、分類してみましょう。いろい
  ろとおもしろいことがわかります。このような指す
  ことばをひきくるめて「こそあどことば」と言いま
  す。なぜそう言うのかもわかります。
(2) 指示語の指示するものを考える。
 T 次にあげた文章の中の「さすことば」の「さすも
  の」を考えてみましょう。
  @ おじぎそうの葉は、鳥のはねのように、左右に
   向き合った小さな葉があつまって一つの葉になっ
   ています。その葉は、ふつう一つのえに四枚つい
   ています。
  A 「すぐに、開けてください。」荷ふだには、
   んなことが書いてあったのです。
  B りょうしたちは、ふえふきの家に行きました。
   ところが、そこには、家のかげもありませんでし
   た。
  C 「ほんとに、どうしたっていうんだろうねえ。
   急にねつなど出したりして。」おばあさんがそう
   小さい声で言いました。
  D えみ子は、手にかわいい人形を持っていまし
  た。たくさんのおもちゃの中でも、それがいちば
   んすきだったのです。
 C @の「その」は、「鳥のはねのような……一つの
  葉」をさしています。
 C Aの「そんな」は、「すぐに、開けてください。」
  を指しています。
 C Bの「そこ」は、「ふえふきの家」を指していま
  す。
 C Cは、おばあさんの言ったことを指しています。
 C Dは、「かわいい人形」を指しています。
(3) 指示語を選んで使う。
 T 次の文の   の中に、指すことばを入れましょ
  う。
  @    がぼくが作った自動車ですと言って、春

                                                       157

   男くんは、ぼくの前にさし出した。
  A 「たなの上にまんがの本がのっている。   
   を取ってくれ。」
  B えきの前にパンヤができました。   は、大
   木くんの家のみせです。
  C 三まいの絵のうち、   を買いますか。
 T どんなさすことばを入れましたか。わけも言って
  ください。
 C @は、春男君が手に持っているものを指している
  のだから「これ」にしました。
 C Aは、自分から少し離れたたなの上の本を指すの
  だから「それ」にしました。
 C Bは。駅の方の遠くのパンやを指すのだから「あ
  れ」にしました。
 C Cは、よくわからないけれど、買うのがまだ決ま
  っていないのを指すのだから「どれ」にしました。
 T 指すものが、近くにあるか、遠くにあるか、ま
  た、決まっていないものを指すかで、指すことばの
  使い方が違いますね。まちがえないようにしましょ
  う。
(4) 指示語の使い方の誤りを直す。
 T 次の五つの文の指すことばは、使い方がまちがっ
  ています。正しいのに直しましょう。
  @ 赤、青、黄、緑の四色があります。どっちの色
   にしますか。
  A 明るい色か、暗い色か、どれにしますか。
  B 向こうから歩いて来る人がいます。この人は、
   ぼくのおじさんです。
  C となりのへやから話し声が聞こえてきたが、
   の声を聞くと、だれだかすぐわかる。
  D 一郎くんの家は五十メートルぐらいの所にあっ
   た。そんな近いところにあるとは思わなかった。
 T 直せましたか、直して理由を言って話しでくださ
  い。
 C @は、「どっち」を「どの」に直しました。「ど
  っち」は、二つあるときに使うのだと思います。
 C Aは、「どれ」を「どっち」に直しました。二つ
  の色のうち一つを選ぶのだから「どっち」にしまし
  た。
 C Bは、「この」を「あの」に直しました。遠くか
  ら来る人だから「あの」です。
 C Cは、「この」を「その」に直しました。わけは

                                                       158

  少し離れているから「その」です。
 C Dは「そんな」を「こんな」に直しました。歩い
  て行ってそこにいるのだから「こんな」にしまし
  た。
(5) 指示語を使って文を作る。
  指示語が使えるような状況の絵を二、三示して、そ
 の中から素材を求めて自由に指示語を使った文を書か
 せる。


     五 文の構成を理解する学習の指導法


 文は、主語・述語の関係を基本として成り立っている。主語は述語に係り、述語は主語を受ける。いわゆる係り受
けの関係で、相互に照応し合っている。その照応の仕方に
  @ 何が(は)←→どうする  (水が流れる)
  A 何が(は)←→ どんなだ  (海は静かだ)
  B 何が(は)←→ なんだ   (桜は国花だ)
  C 何が(は)←→ ある、いる (机がある、犬がいる)
の四通りある。その@は、動作についでの判断、そのAは、状態についての判断、そのBは、事物についての判断。
そのCは、存在についての判断を、それぞれ示している文である。この「何が」が主語であり、「どうする」「どん
なだ」「何だ」「いる、ある」がそれぞれ「述語」である。
 文を書く場合でも、文を理解する場合でも、この基本のパターンに対する感覚を、確実に身につけておくことが、
何よりも大切である。それは、これが主語で、これが述語だという単なる形式的な知識にとどまるべきものではな
い。主語・述語の照応しない文に出会った場合には、直ちに違和感を覚え、それを正しく照応させようとする意識を
喚起され、持っている文法感覚に従って、その誤りを正すことができるようにすべきものである。
                                                       159
 この基本的な主語・述語の関係で成り立っている文は、さらに、次のように詳しくすることができる。
  @ 大川の水が ゆるやかに 流れる。「どのように」 「どうする」
  A 春の海は いかにも  静かだ。「どのように」 「どんなだ」
  B 美しいさくらは 日本の 国花だ。「どんな」 「何だ」
  C 大きな犬が ねころんでいる。――「どんな」 「何が」 「どうして」 「いる」
 これらの文の「大川の」「春の」」美しい」「大きな」は、それぞれ、主語「水が」「海は」「さくらは」「犬が」
を詳しくしている。この「どんな」にあたる語を「詳しくする語」「修飾語」と呼ぶ。これらの修飾語は、主語を詳
しくする働きをもっているから、「修飾語は、主語を修飾し、主語は修飾語に修飾される関係」に立つことになる。
 同じように、「ゆるやかに」「いかにも」「ねころんで」は、述語「流れる」「静かだ」「いる」などをそれぞれ修
飾している。だから、これらもまた、修飾語として、述語を修飾し、また、述語は修飾語に修飾される関係になる。
 このように、主語を修飾する語は、「どんな」を表す語であり、述語を修飾する語は、「どのように」を表す語で
ある。この「どんな」を表す語を「連体修飾語」といい、「どのように」を表す語を「連用修飾語」と呼ぶことは、
前に述べた。そこで、前の文をパターン化してみると、
  の 「どんな」十「何が」←→ 「どのように」十「どうする」
  A 「どんな」十「何が」←→ 「どのように」十「どんなだ」
  B 「どんな」十「何が」←→ 「どんな」十「何だ」
  C 「どんな」十「何が」←→ 「どうして」十「いる」
このパターンは、「連体修飾語」十「主語」←→「連用修飾語」十「述語」というようにパターン化される。文の構
成要素はこのほかに、並立語・接続語なども加わって、いっそう複雑な構成になっていく。たとえば、
  雨が降ってきたので、ぼくは、いそいで家へ帰ってきた。
という文についてみれば、この「雨が降って来たので」は、接続語(節)である。が、この連文節の中には、「雨
                                                       160
が」という主語、「降って来たので」という述語を含んでいる。つまり、主語・述語の関係を含んだ接続語として、
「ぼくはいそいで家へ帰ってきた」に続いていく。この中にも、「ぼくは」という主語、「帰ってきた」という述語
を含んでいる。だから、この文では、一つの文の中に、主語・述語の関係が二回含まれることになる。このような文
がいわゆる複文である。
 また、こんな文もある。
   雨も降り、風も吹いている。
 この文では、「雨も(主語)」十「降り(述語)」←→「風も(主語)」十「吹いている(述語)」というように、「雨も
降り」と「風も吹いている」が、対等の関係で、対立的に結合している。このように、主語・述語の関係に立つ二つ
の文が対等の資格で、対立的に結合している文が、いわゆる重文である。
 しかし、小学校の段階では、この単文・複文・重文などの文の種類についての知識は、特に教える必要はないであ
ろう。文には、いろいろな構成の文があることに気付く程度でじゅうぶんであろう。
 この文の構成についての指導でだいじなことは、どんな文にしろ、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、接続
の関係、指示・被指示の関係などに対する感覚を磨く、いわゆる文法感覚を正しく育て、文法意識をしだいに高めて
いくことである。ややもすると、文の構成要素を指摘したり、選び出したりすることに、指導の重点が置かれ、要素
相互の係り受けの関係への感覚的理解が忘れられる傾きがある。そうならないためには、要素相互の関係を指摘する
に止めず、文を分解したり、構成したり、文を作ったりする学習を中心に進める必要がある。
 (一) 学習目標
   文は、主語、述語、修飾語などが、相互に係り受けの関係で構成されていることを理解する。
 (二) 学習過程――シミュレーションモデル
  @ 四種の基本文型を提示する。
  A 文には意味の表し方に四つのパターンがあることに気づく。
                                                       161
  B 文は、基本的には、主語・述語の関係を中心にして構成されていることを理解する。
  C 文は、主語・述語の関係を中心にして、修飾・被修飾の関係を含めて構成されていることを理解する。
  D 文をその構成要素の相互関係に従って分解する。
  E 文を構成要素の相互関係にもとづいて構成する。
  F 主語、述語、修飾語を使って文を書く。

1 基本文型を提示し、その意味を考えさせる。
 T 次に四つの文があります。よく読んで、意味の表
  し方の違いを考えてみましょう。
 @ ねずみは、ねこにおいかけられると、しっぽを動
  かしながらにげます。
 A 子どもたちが、たくさんにわに集まって、にぎや
  かだ。
 G 上野の動物園は、さくらの花ざかりです。
 C 山のぼり人形というおもちゃがあります。人形は
  二本の糸につかまっています。
 T わかったら説明してください。
 C @の文は、前に習った「何が」「どうする」とい
  う型の文で、「ねずみ」が「どうする」かというと。
  「ねこに追いかけられると」こわくて、「しっぽを
  動かしながら」 「にげる」という意味です。
 C Aは、「何が」「どんなだ」という形の文で、「子
  どもたちが」「たくさん庭に集まって」とても「に
  ぎやかだ」という意味を表しています。
 C Bは、「上野の動物園」は、「さくらの花盛りで
  す」というのだから、「何は」は「動物園は」で、「何
  だ」は「花盛りです」になります。だから「何は」
   「何だ」という形の文になります。.
 C Cは、おもちゃがある。人形がいるという文です
  から、「何が」「ある」「何が」「いる」という言
  い方の文です。
2 文の基本型「主語・述語の関係」を確認ずる。
 T よくわかりました。文は、この四つの意味の表し
  方が基本になっていますね。それをまとめてみまし
  ょう。(話し合いながら、次のように板書する。)
    (何は)          (どうする)
   @ねずみはにげます。

                                                       162

    (何が)           (どんなだ)
   A子どもたちが にぎやかだ。
    (何は)           (何だ)
   B動物園は 花ざかりです.
    (何が)           (ある)
   Cおもちゃが あります。
    人形は います.
 T このように、「何が(は)」←→「どうする」「ど
  んなだ」「何だ」「ある」という文の型が、「文の
  基本型」です。この「何が」を、これからは「主
  語」と言います。「どうする」「何だ」「どんなだ」
  「ある」をいっしょにして「述語」と言います。だ
  から、(板書する)
    主語述語
  「主語」と「述語」の関係が、文の中心線になりま
  す。そこで、主語は述語に係り、述語は主語を受け
  る、つまり、「係る」「受ける」関係になります。
  それを、「←→」で表します。
3 主語、述語、修飾語が文を構成していることを確認
 する。
 T それで、もう一度、前の文を、主語と述語を押さ
  えて読んでみましょう。(主・述関係の感覚化)
 T 読みながら主語と述語を  で囲みましょう。
 T これで、主語・述語以外のことばがはっぎりしま
  す。今度はそのことばについて考えてみましょう。
  そのことばは、今まで何と言いましたが0.
 C @の「ねこにおいかけられると」「しっぽを動か
  しながら」は、「どのように」を表すことばで、述
  語を「くわしくすることば」です。
 C Aは、「たくさんにわに集まって」が「どのよう
  に」にあたることばで。述語の「にぎやかだ」を
  「くわしくすることば」です。
 C Bは、「上野の」と「さくらの」が詳しくするこ
  とばで、両方とも、「どんな」にあたるととばです。
 C Cは、「山のぼり人形という」が、「おもちや」
  を詳しくしていることばで。「どんな」にあたるこ
  とばです。
 T そうすると、主語・述語以外のことばは、全部、
  主語や述語を詳しくすることばだということがわか
  りました。

                                                       163

   そして、そのことばは、「どんな」か「どのよう
  に」を表すことばでしたね。
  このように、「どんな」 「どのように」を表すこ
  とばを、これからは「修飾語」と呼びます。
   それでは、修飾語にはどんな働きをするものがあ
  りますか。
 C 一つは、「どんな」を表すことばで、主語を詳し
  くする役めをもった修飾語です。
 C もう一つは、「どのように」を表すことばで、述
  語を詳しくする働きをもった修飾語です。
 T そうですね。修飾語は、その二つの働きをします
  ね。それでは、この文を、主語と述語と修飾語に分
  けて、文はどのように組み立てられているかを考え
  てみましょう。主語を修飾することばには「――」
  述語を修飾することばには、「----」を引きましょ
  う。
 @ねずみは
  にげます。
 A子どもたちが――
  →にぎやかだ。
 B上野の動物園はさくらの花ざかりです。
 C山のぼり人形というおもちゃがあります。
  人形はいます。
 T このように、文を組み立ててみると。それぞれの
  ことばの役めや働きが目で見てもよくわかります
  ね。それとともに、文の意味が正しくわかります。
  @の文は、このように組み立ててもよくわかりま
  す。
       
  ねずみは―           ├にげます。
       

4 文を、主語、述語、修飾語に分けて、その関係を示
 す。
 T 次の文を、主語、述語、修飾語に分けて、前にや
  ったようにして、組立を考えてみましょう。
  @ おばあさんは、あみものをベンチにおいて立ち
   上がりました。
  A おにぐもは、昼の間は、やねのかわらの下や、
   木の葉のかげに、じっとかくれています。

                                                       164

  B たまごのふくろから出てきた子ぐもたちは、高
   い枝や葉の先へ登っていきます。
  C 昭さんをよく知っている駅長さんは、昭さんの
   ようすをうれしそうに見ています。
 T できた人は、説明してください。
 C @は、「おばあさんは」は主語で、「あみものを
  ベンチにおいて」は、述語の修飾語で、「立ち上が
  りました」が述語です。
 C Aは、「おにぐもは」が主語で、「昼の間は」と
  「やねのかわらの下や」と「木の葉のかげに」と
 「じっと」は、述語の修飾語で、「かくれています」
  が述語です。
 C 今の説明で、「やねのかわらの下や」と「木の葉
  のかげに」は、二つに分けないほうがいいと思いま
  す。
 C 賛成。前に並べることばのところで習ったように
  「何と何」とか「何や何」は、何と何の両方で、一
  組になることばだから、分けないほうがいいです。
 C 「やねのかわらの下や」は、「かくれています」
  に続きません。だから、述語の修飾語にはなりませ
  ん。
 T みんなの言う通り。それが正しい考え方ですから
  二つに分けないほうがいいのです。みんないいこと
  に気がついて、感心しています。では、その次を。
 C Bは、「たまごのふくろから出てきた」が、主語
  の修飾語で「高いえだや葉の先へ」が、述語の修飾
  語です。「登っていきます」は述語です。
 T ここにも「高いえだや葉の先へ」というのがあり
  ますね。これも前と同じ理由で、二つに分けません
  ね。
 C Cは、「昭さんを知っている」が、主語の修飾語
  で、「駅長さんは」が主語です。「昭さんのようす
  を」と「うれしそうに」が、述語の修飾語です。
 上の説明のもとになっている文の構成は、次のように
 とらえている。
  @おばあさんは→あみものをベンチにおいて→
   立ち上がりました。
  Aおにぐもは→昼間の間は→やねのかわらの下や木
   の葉のかげに→じっと→かくれています。

                                                       165

   
   
   
   
5 主語、述語、修飾語を組み立てて文を構成する。
 T ここに、四組の主語、述語、修飾語の順序を変え
  た文があります。これを、カードに書き込んでから
  正しく並べて文を作りましょう。
  oつぎつぎと 庭に面した へやの 消えていった
   明りが
  oたった一人で おもちゃの自動車を 遊んだ
   走らせて ぼくは
  oかすかにゆれて のきの すずが カランと
   大きな 鳴りました
  o町を しばらくぶりに さんぽしました。
   おじさんは 土の上が歩きたくて
 T できたら発表してください。
 C 庭に面したへやの――明りが――つぎつぎと――
  消えていった。
 C ぼくはこうしました。つぎつぎと――庭に面した
  へやの――明りが――消えていった。
 T どちらがいいですか。話し合ってください。
 C ぼくは両方いいと思う。
 C 両方いいけど、意味が違っている。前のは、普通
  の言い方だけれど、あとのは、「つぎつぎと」を強
  く言っている。
 T なかなかいい勉強ができますね。文の構成の基本
  の型は。決まっていても、それを実際に使うときに
  は、意味の表し方で、順序は変えられます。今度
  は、そのことも考えて組み立ててください。
 C Aです。「ぼくは――たった一人で――おもちゃ
  の自動車を――走らせて――遊んだ。」
 C 「おもちゃの自動車を――走らせて――ぼくは―
  たった一人で――遊んだ。」
 C 「ぼくは―おもちゃの自動車を―走らせて―たっ

                                                       166

  た一人で――遊んだ。」
 T 三つの言い方のうち、たった一人で遊んだことを
  強く言っているのはどれか。
 C 「ぼくは、たった一人で」を先に言ったA君のです。
 T おもちゃの自動車を強く言ったのはどれですか。
 C 「おもちゃの自動車」を最初に言ったのだと思い
  ます。
 T 次のBはどうなりましたか。
 C 「のきの大きなすずが――かすかにゆれて――カ
  ランと鳴りました。」
 C 大きな――のきの――すずが――かすかにゆれて
  ――カランとなりました。
 T 「のきの大きなすず」と言うのと。「大きな――
  のきのすず」と言うのとでは、感じが違いますか。
 C 前のは、「のきの」を強く言い、あとのは、[大き
 な」を強く感じます。いかにも大きそうに感じます。
 T 最後のCはどうですか。
 C 「おじさんは――土の上が歩きたくて――久しぷ
  りに――町を――さんぽしました。」
 C 「土の上が歩きたくて――おじさんは――ひさし
  ぶりに――町を――さんぽしました。」
 C 「ひさしぶりに――土の上が歩きたくて――おじ
  さんは――町を――さんぽしました。」
 C 「おじさんは――土の上が歩きたくて――ひさし
  ぶりに――町を――歩きました。」
6 文は基本的な主語・述語の関係、修飾・被修飾の関
 係さえ、こわさなければ、意味の表し方によって、語
 順を変えてもいいことを理解する。
 T この勉強でわかったことをまとめてください。
 C 文の構成の基本的な型は、
  @ 主語の修飾語十王語←→述語の修飾語十述語と
   いうように構成されている。
  A この基本的な関係(主語・述語の関係、修飾・
   被修飾の関係)を破らなければ、ことばの順序は
   変えてもいい。
  B ことばの順序は、意味を表すときの気持ちによ
   って変わってくる。
 T よくまとめました。
 (ここでは、学習の筋道を中心にして書いたので、ノ
  ートの使い方、学習シートの使い方、カード操作の
  仕方などには触れなかった。それぞれ工法して欲し
  い。)

                                                       167

      六 長い文における主語・述語の照応感覚を育てる指導法
 
 

 (一) 主語・述語の照応感覚
 主語・述語の照応を誤るのは、「何がどうする」「何はどんなだ」「何は何だ」「何がある」というような、基本
的な判断の仕方が、感覚的にじゅうぶんに体得されていないためだと考えられる。だから、「花が咲いた」「波は静
かだ」というような、単純で、直線的で、屈折のない判断では、誤ることはまずない。
 ところが、表現内容が多くなり、それが線条的に、長く続いている場合には、それを適切に区切って、判断をする
ことは困難になる。すると、どこまでも長く続く文になり、いつの間にか、筋道をたてた判断ができなくなって、主
語・述語が照応しなくなる。これは低学年の文に多い現象である。
 また、表現内容が豊富になり、多岐にわたってくると、それを適切に区切ったり、まとめたり、筋道を立てて判断
することが困難になる。そんな場合には、文も複文になったり、長くなったりで、いよいよ主語・述語の照応しない
文を書くようになる。
 この現象は、書く思想内容が豊かであっても、それに応じた判断の困難な、中・高学年の文章に現れる。中・高学
年では、短い文の主語・述語の照応を誤ることはほとんどない。しかし、少し複雑で長い文になると、主語・述語の
照応しない文を書くようになる。したがって意味の通じにくい文を書くようになる。

 ところで、主語・述語の照応した、正しい文を書くようにするには、主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係につ
いて、知識としてではなく、言語感覚・文法感覚として体得しなければならない。そのためには、そういう文法感覚
を育てる方法を工夫する必要がある。本来、文法感覚は、長い間の言語行動を通して育てられるものであるが、実際
の言語行動の中では、適切な言語刺激を与えて、文法感覚を刺激し、意識化していくことが困難である。そこで、こ
                                                       168
こでは、時間さえとればいつでもくり返せるシミュレーションの方法によって、生き生きと学習させる一例をあげて
みることにする。
 (二)学習目標(五年)
   主語・述語の照応感覚(文法感覚)を刺激して、長い文でも、主・述の照応した文が書けるような文法感覚を
  育てることができる。
 (三) 学習過程――シミュレーションモデル
  1 主語・述語の照応関係を感覚的に判断する。
  2 主語に合った述語を選択肢から選ぶ。
  3 主語に合った述語を自分で考えてつけ加える。
  4 「何は」に当たる部分に適合するように、述部全体を書き直す。
  5 規定された書き出しの主部に続けて一五〇字以内の文を書く。
 (四) 学習指導

1 主語・述語の関係の正否を感覚的に判断する。
 〔問題 1〕
   次の二つの文のうち、主語と述語の関係のおかし
  い文はどれですか。正しいほうに○、まちがいに×
  をしなさい。また、おかしいところに――を引きな
  さい。
 A この物語を読んで、わたしが感じたことは、自分
  だけ助かろうとすると、自分まで救われないという
  ことや、人はみんな欲ばりなんだ、自分のことばか
  りしか考えられないんだ、ということがわかった。
 B この物語を読んで、私は、自分のことだけでな
  く、他人のことも考えなければいけないし、また、
  ある時だけやさしくて、ある時には少しも思いやり
  のないような、いいかげんな心を持ってはいけない
  のだと思った。
 T どちらが○、どちらが×でしたが。
 C Aが×で、Bが○です。
    (各自評価)

                                                       169

 T おかしいところはどこですか。
 C Aの「考えられない人だということがわかった」
  です。 (各自、自己評価)
 T 正しいか、正しくないかをどうやって決めました
  か。」
 C………
 C 主語と述語の係り受けの関係を考えました。
  Aの文の主語は、『この物語を読んで、わたしが感
  じたことは』の中の「感じたことは」です。述語は
  「わかった」です。そうすると、「感じたことは」
  「わかった」で何だかおかしいと感じました。
 T そうですね。ずっと意味を考えながら終わりまで
  読むと、何だかおかしいと感じますね。そうしたら
  今A君がやったように、主語と述語を捜してみま
  す。それから、「何は」―→「どうする」、「何は」
  「どんなだ」、「何は」―→「何だ」、「何が」―→ 
  「ある(いる)」に充てはめてみると、なぜおかしく
  感じるかがわかってきます。同じように、Bの文も
  考えてごらんなさい。
 C Bの文の主語は「私は」です。述語は、「思った」
  です。だからで「私は」「思った」と続けてみると、
  変ではありません。正しいことがわかりました。
 T では、次をやりましょう。
2 主語にあった述語を選択肢の中から選んで充てる。
  〔問題 2〕
   次の文の述語を、主語にあうようにつけ加えたい
  と思います。最もいいと思うことばを、ア、イ、ウ、
  エの中から選んで( )の中に書き入れなさい。
  この物語全体を通して言えることは、自分のことだ
 けを考えず、人のことも考えなければ、自分も救われ
 ない(    )
  ア (と)いえる。
  イ (ということを)感じさせられた。
  ウ (ということで)ある。
  エ (に)ちがいない。
 T どれを入れましたか。        士
 C ウの「ということである」を入れます。
   (自己評価)
 T だれか、また、その理由を説明してください。
 C この文の主語は、「言えることは」です。ですか
  ら「言えることは」に続けてあとの文を読んでいく
  と、ウの「ということである」に結び付きます。

                                                       170

  「何は」「何である」というようにあいます。
 T 誤った人は直してから、文をずっと続けて読んで
  みましょう。
3 主語にあった述語を考えて書く。
 〔問題 3〕
   次の文の( )のなかに適当なことばを書いて、
  主語と述語がつり合う文にしなさい。
   この本のあらすじは、カンダタというひとりの男
  と罪人が地獄へ来て、血の池で死にかけでいるとこ
  ろへ、極楽からおしやかさまが、くもの糸をたらし
  て助けてあげる(            )
 T 書けたら、発表してください。(板書する)
 C 「ということである。」
 C 「ことだと、書いてあります。」
 C 「という話になっている。」
 C 「話です。」
 T では、この四つを順に( )の中に入れて問題文
  を読んでみてください。どれがよく書けていますか。
  主語はどれかを決めてから読みなさい。
 C 主語は「あらすじ」です。
 C 「話です。」は少し変です。「あらすじは」「話で
  す」ではうまくあいません。
 T そうですね。これは主語にあいませんね。
 C 「ことだと書いてあります」も少しあっていない
  と思います。これだと「あらすじ」が書いてあるこ
  とになります。
 C 「ということである。」はいいと思います。
 C 「という話になっている。」もいいと思います。
 T よく勉強しました。次をやります。
4 主語にあうような述語を書き加える。
 〔問題 4〕
   次の文の筋が通るように( )の中に書きなさい。
  この場面が心に残ったのは、カンダタが、どうして
  も地獄から抜け出したいという考えをすてきれない
  ことを知って、人間というものは、とても弱いもの
  なんだと(               )
 T 書けたら発表してください。
 C 「感じさせられたからである。」
 C 「感じさせられたからであろう。」
 C 「感じたからである。」
 C 「思ったからである。」
 C 「思ったからかも知れない。」

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 T たくさん発表がありましたが、みんなで考えてみ
  ましょう。何にあうように書けばいいのですか。
 C 「この場面が心に残ったのは」です。
 T それにあうかどうか読んでごらんなさい。
 C みんないいと思う。 C みんなあっている。
 T 主語と述語がよくあった文が書けるようになりま
  したか。また、あっているかどうかの見分け方もわ
  かりましたか。
 C わかりました。
      (東京都千代田区立小川小学校 二村陽子教諭指導)



中 沢 政 雄(なかざわまさお)

 明治40年群馬県に生まれる。小・中・高校教諭,東京都指導
 主事,中学校長、等を歴任。現在 国語教育科学研究所長。
 主著は、『機能的国語教育』(明治図書) 『国語教育近代化の
 理論と実践』(三省堂)、『国語科の発問』『国語科読解の学習
 技術』(明治図書)などである。
 現住所(〒154)東京都世田谷区梅ヶ丘1 ―26―12






<国語科授業の新展開・4>
小学校基本的文法事項の指導

1979年7月初版刊
        ○著 者 中  沢  政  雄
         発行者 藤  原  政  雄
         印刷所 新興印刷製本株式会社

                 
         発行所 明治図書出版株式会社
            東京都中央区入船3 ― 3―11〒104
 検印省略       電話(03・551)8266振替東京6-151318

             (分) 3337R) 3 474 08(出)8308