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    国語科の発問

    その科学的・実践的研究


         中沢政雄


    明治図書








                                           (1)
       は し が き

 私が発問の研究を思いたったのは、今から六年ほど前である。それ以来今日まで、国語の研
究授業を見せていただくたびに、その指導案の裏面に、指導過程と教師の発問、児童の応答と
を忠実に採録してきた。それが今では相当な数にのぼっている。こんどの研究のまとめに、直
接使ったものだけでも、一四二学級・一四二時間分の発問、それはどんなに少なく見積っても
二、〇〇〇以上にのぼることであろう。
 私は、この採録した発問を、指導過程・指導法とともにじっとながめ暮らした。そこからこ
の研究は始まったのである。
             ※
 私は、この研究で、発問について、(1)その実態を確実にとらえ(2)その本質、機能、構造、
形式等を明らかにし、(3)さらに、発問と学習との関係を考え(4)指導過程、指導法の中に、発
問を適切に位置づけることを考えた。特に、機能的国語教育の実践を容易にし、確実にするた
めの発問の構造については、その基礎理論とともに、実践形態をも明らかに示した。
 もとより、この研究は、あわただしくまとめたものであるから、不備の点、未熟の点も多
い。それは今後の研究をまって補いたいと思う。おおかたのご批判とご指導を仰ぎたい。
             ※
 本書は、「機能的国語教育(明治図書)」を書いてからちょうど一年、国語教育科学研究会の


                                           (2)
みなさんの激励によって、やっとできあがった。この研究は、機能的国語教育論を基礎理論と
して、その上に築きあげた実践論の一部をなすものである。できるかぎり実例を多くし、具体
的にわかりやすく述べたつもりである。
 終わりに当たって、この研究にたくさんの資料を提供してくださった先生がたに心からお礼
を申し上げたい。また、みごとな索引を作ってくださった国科研一年グループのみなさん、出
版に当たって、何かとお世話になった、明治図書の三枝久明さん、園田桂子さんに感謝の意を
表わしたい。

    昭和三八年九月
                            中  沢  政  雄






                                           (3)
              も   く   じ



                                           (4)
はしがき………………………………………………………………………………………………… 1
    序   論
     ――発問の歴史と機能――

一 「裸の王様」から――人間性の開発……………………………………………………………11
二 古代ギリシアの弁証法――真理の探求…………………………………………………………15
三 明治時代国語教授における問答法――知識の獲得・理解の深化……………………………18
四 ある日の国語教室――発問と学習………………………………………………………………22

    第一章 発問の科学的研究

一 国語学習指導における教師の指示・発問・助言・説明・評価………………………………26
二 発問と思考力…………………………………………………‥…………………………………30
 (一) 発問は思考活動を誘発する…………………………………………………………………30
 (二) 思考を正確にする発問………………………………………………………………………31


                                           (5)
 (三) 思考を深める発問……………………………………………………………………………32
 (四) 思考を発展させる発問………………………………………………………………………34
 (五) 思考法を身につける発問……………………………………………………………………36
 (六) 思考を形式化する発問………………………………………………………………………38

三 発問と言語能力……………………………………………………………………………………39
 (一) 発問と内容主義の国語教育…………………………………………………………………39
 (二) 発問と技能主義の国語教育…………・……………・……………………………………40
 (三) 発問と機能的国語教育………………………………………………………………………40
 (四) 発問と言語能力………………………………………………………………………………42

四 発問とコミュニケーション………………………………………………………………………46
 (一) 知識・情報のコミュニケーションと発問…………………………………………………46
 (二) 思想・心情のコミュニケーションと発問…………………………………………………46

五 発問の機能…………………………………………………………………………………………47
 (一) 課題のための発問……………………………………………………………………………47
 (二) 分析のための発問……………………………………………………………………………48


                                           (6)
 (三) 総合のための発問……………………………………………………………………………48
 (四) 関係判断のための発問………………………………………………………………………49
 (五) 想像・推理のための発問……………………………………………………………………50
 (六) 比較したり、異同を明らかにしたりするための発問……………………………………51
 (七) 感覚・感動・情景などを明らかにするための発問………………………………………52
 (八) 感想・意見・批判のための発問……………………………………………………………52
 (九) 知識・情報のための発問……………………………………………………………………54
 (十) 技能のための発問……………………………………………………………………………55
 (十一) 復習のための発問…………………………………………………………………………56

六 発問の全体構造……………………………………………………………………………………57
 (一) 発問の構造……………………………………………………………………………………57
 (二) 発問の全体構造………………………………………………………………………………67

七 発問の形式…………………………………………………………………………………………80
 (一) 発問の機能からみた形式……………………………………………………………………80
 (二) 発問の内容からみた形式……………………………………………………………………85
 (三) 発問の表現からみた形式……………………………………………………………………88


                                           (7)
  第二章 発問と学習の研究

一 発問と国語科の授業………………………………………………………………………………94

二 発問と児童の主体的学習…………………………………………………………………………96

三 発問と教材研究……………………………………………………………………………………99
 (一) 教材の機能―価値の構造と発問……………………………………………………………99
 (二) 学習事項(知識・技能・態度)と発問……………………………………………………101
 (三) 教材研究と発問の例…………………………………………………………………………105

四 発問と学習…………………………………………………………………………………………110
 (一) 学習の成立しない発問………………………………………………………………………110
 (二) 発問のくふう…………………………………………………………………………………116

五 発問とコミュニケーションの成立………………………………………………………………125
 (一) 問答はコミュニケーションの基本形態である……………………………………………125
 (二) コミュニケーションは国語学習の基本形態である………………………………………126


                                           (8)
 (三) コミュニケーションと発問…………………………………………………………………128

六 発問と学習指導過程………………………………………………………………………………130

 (一) 目的を持たせるための発問…………………………………………………………………131
 (二) 学習計画を立てる指導と発問………………………………………………………………141
 (三) 目的追求(価値追求)のための指導と発問………………………………………………150
 (四) 目的達成(価値獲得)のための指導と発問………………………………………………156


    節三章 発問と学習指導の実践的研究


一 発問の実態とその考察……………………………………………………………………………159
 (一) 学習にはいる最初の発問……………………………………………………………………159
 (二) 学習の過程における発問……………………………………………………………………167
                           
             
二 発問と学習指導……………………………………………………………………………………175
 (一) 低学年の発問と学習指導……………………………………………………………………175
 (二) 中学年の発問と学習指導……………………………………………………………………187


                                           (9)
 (三) 高学年の発問と学習指導……………………………………………………………………198



終 わ り に…………………………………………………………………………………………209



索  引…………………………………………………………………………………………………213





                                           11

        序 論

         ――発問の歴史と機能――

 問いと答えのくり返し、組織は、ある時には知識の一方的な教授、注入の手段として用い
られ、ある時は、相互の思想交通、真理追求、人間性の開発等の手段として用いられてきた。
 私はここで、問いと答えの組織、つまり問答法の歴史的発展のあとをたどり、それが、それ
ぞれどのような役割を持ち、機能を果たしてきたかを明らかにし、発問研究の重要性を強調し
たいと思う。

      一 「裸の王様」から

         ――人間性の開発――

 開高健の「裸の王様」のなかに、次のような一節がある。

 二十人ほどの画塾の生徒のなかに、ひとりかわ
った子がいた。彼には奇妙な癖があり、なにを描
いてもきっちり数字を守らねば気がすまなかっ
た。学校から遠足に行くと、何人参加して何人休 
  んだかということをおぼえていて、つぎに画を描
くとき、それをそのまま再現するのである。五十
三人なら五十三人の子供が山をのぼるところを彼
はひとりずつ指折りかぞえて描きこむものだか
 

12
ら、この子が遠足を描くんだといいだすと、ぼく
は一メートルも二メートルもつぎたした紙を用意
してやらねばならない。
 ある日、兄といっしょに小川でかいぼりをし
た。そして、その翌日、酔ったままぼくのところ
へ紙をもらいにきたのである。おむすび型をした
彼の頭の中では二十七匹のエビガニが足音たてて
ひしめいていた。
「お兄ちゃん、二十七匹だぜ。エビガニが二十七
匹だぜ!」
 彼はぼくから紙をひったくると、うっとりした
足どりでアトリエの隅へもどっていき、床にしゃ
がみこむと、鼻をすすりながら画を描き出した。
彼は一匹描きあげるたびにため息ついて筆をお
き、近所の仲間にそのエビガニがほかの一匹とど
んなにちがっていたか、どんなに泥穴の底からひ
っぱりだすとおかしげに跳ねまわったかと雄弁を
ふるった。          
「……なにしろ肩まで泥ンなかにつかったもんな
あ」
 彼はそういって、まだ爪にのこっている川泥を
鉛筆のさきでせせりだしてみせた。仲間はおもし
 
  ろがって三人、五人と彼のまわりに集まり、口ぐ
ちに自分の意見や経験をしゃべった。アトリエの
隅はだんだん黒山だかりに子供が集まり、騷ぎが
大きくなった。
 すると、それまでひとりぽっちで絵筆をなぶっ
ていた太郎がひょいとたちあがったのである。み
ていると彼はすたすた仲間のところへ近づき、人
だかりのうしろから背のびしてエビガニの画をの
ぞきこんだ。しばらくそうやって彼は画を見てい
たが、やがて興味を失ったらしく、いつもの遠慮
深げな足どりで、自分の場所へもどっていった。
ぼくのそばをとおりながらなにげなく彼のつぶや
くのが耳に入った。
「スルメで釣ればいいのに……」
 ぼくは小さな鍵を感じて、子供のために練って
いたグゥッシュの瓶をおいた。ぼくは太郎のとこ
ろへゆき、いっしょにあぐらをかいて床にすわっ
た。
ねえエビガニはスルメで釣れるってほんと
かい
?」
 ぼくは単刀直入にきりこんだふいに話しかけ
られたので太郎はおびえたように体を起した
。ぼ
 

13
くはタバコに火をつけて、一息吸った。
「ぼくはドバミミズで釣ったことがあるけれど、
スルメでエビガニというのは聞きはじめだよ」
 ぼくが笑うと、太郎は安心したように肩をおと
、筆の穂で画用紙を軽くたたきながらしばらく
考えこんでいたが、やがて顔をあげると、キッパ
リした口調で、
「スルメだよ。ミミズもいいけれど、スルメなら
一本で何匹も釣れる」
「へえ。いちいちとりかえなくっていいんだ
ね?」
「うん」
「妙だなあ」
 ぼくはタバコを口からはなした。
「だって君、スルメはイカだろう。イカは海の魚  
   だね。すると、つまり、川の魚が海の魚を食うん
だね……」
いってからしまったとぼくは思ったこの理
窟はにがい潮だ
貝は蓋を閉じてしまう。やりな
おしだと思って体を起しかけると、それよりさき
に太郎がいった。
『エビガニはね』
 彼はせきこんで早口にいった。
「エビガニはね、スルメの匂いが好きなんだよ。
だって、ぼく、もうせん田舎ではそうやったんだ
もの」
 太郎の明るい薄茶色の瞳にははっきりそれと
わかる抗議の表情があった
ぼくは鍵がはまって
カチンと音をたてるのを聞いたような気がした

 (傍線筆者)  

 ここに出てくる太郎は、「無口で内気で神経質」で、たいていの子どもが目を輝やかせる児
童画に対してもまったく興味を示さないような少年である。
 この少年の絵の指導を引き受けた画塾の先生は、「フォルムや均衡や遠近法の意識はぼくが
手をとって教えなくても彼らのなかにちゃんと埋れているのだ。ぼくはそれを蔽う破片の山を
とりのけ、彼らに力をわかせる助けをするだけだ。彼らが自分で解決策を発見するまでぼくは
詩人になったり、童話作家になったりして彼らの日常生活の中を歩きまわり、ときどき暗示を


                                           14
なげるのである。」という考えで、まずこの太郎の人間性の開発に心をくだいている。
 画家はつねに、ひどい歪形をうけている太郎の心のうちを洞察しながら注意深く、慎重に、
その心を問く鍵を捜し求めている。たまたま見つけた小さな鍵をきっかけに、「ねえ。えびが
にはスルメで釣れるって、ほんとかい?」画家は単刀直入にきりこんでいく。こうしたことば
をなかだちとして、画家と太郎の間にコミュニケーションが成立する。「スルメだよ。ミミズ
もいいけれど、スルメなら一本で何匹も釣れる」。太郎の心は次第に開かれる。こうした注意
深い問答――コミュニケーションによって、太郎の人間性は開発されていく。
 私は、ここに人の心を開くことばの働きを認める。発問・問答の大きな力を認める。人の心
を掘り起こし、無限に伸ばし広げることばの大きな力を感じる。
 このことばは、子どもの生活の実態、思想の動向、物の見方、考え方の傾向、感情の触発など
の洞察、把握から生まれる。しかも、子どもの思考の過程、感情の動きなどに沿って生々発展
を期して展開される。それは、子どもの心の琴線に触れるものでなければならない。心を揺り
動かし、ふるい立たせるものでなければならない。注意深い画家のことばは堅く閉ざした子ど
もの心を開き、内に深く蔵された感情を表現させ、過去の経験を想起させ、身につけた知識、
教養を確かにしていく。画家のととばは、子どもの心の開拓者の役割を果たす。子ども自身の
伸びる芽を育て、力を助ける。
 私は、この画家を見るにつけ、古代ギリシアの哲人たちが開拓した弁証法を思い出す。


                                           15
       二 古代ギリシアの弁証法

            ――真理の探究――

 ソクラテス、プラトンなど、古代ギリシアの哲人たちは、真理の探究に、人間性の開発に好
んで弁証法、つまり問答法、対話を用いた。ソクラテスはアテネの町に出て、だれかれの別
なく、市井の人々を相手とし、耳をかすものがあれば、これと問答をかわして飽くことを知ら
なかったという。また、かのプラトンの対話編は、教授法の芸術的表現として、不朽の価値を
持つといわれている。
 そもそも、問答法は、問いと答えのやりとりによって、しだいに主題に接近し、ついにはそ
の真理を明らかにする、つまり「対話」による、真理探究、教育の手段として広く用いられた
ものである。
 この対話で扱われるテーマは「勇気とは何か」「正義とは何か」というような倫理的問題で
ある。このテーマに対して、まず「それは何であるか」が問われる。つまり主題に対する解
釈・定義を求める質問が発せられる。相手はそれに答えて自分の考え、意見を述べる。その答
えについて検討し、その中に含まれている欠陥・矛盾を、あるいは無知を指摘し、それを自覚
させる。こうして、物事の正しい道理、正しい概念、正しい定義を得させる。
 これは、知識の注入でもなく、理解の押しつけでもない。発問によって、相手が持っている
知識・理解・思想をことばとして引き出す。その不備・欠陥・矛盾を指摘し、自覚させ、相手自


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身が自らの力で、自らの思想を深め、真理を追求し、発見し、生み出すことを助けるものであ
る。つまり、相手の自己創造をかたわらから助けてやる。相手の価値生産を補助してやる。そ
こにこの問答法対話の教育的意義がある。
 ソクラテスは、この事実を強調し、産婆であった彼の毋の職業に名をかりて、「産婆術」と
称している。
 それは産婆が、産婦を助けて、赤子を生ませる、産婆と産婦の協力によって赤子が生み出さ
れる、その姿に似ているためである。だから、彼は真理の探究は、協同事業でなければならな
いとも主張する。
 私は、この問答法(対話)の中から学ぶべき多くのものを発見する。
 その一は、発問によって、相手の知識・思想内容等を把握することができる。
 その二は、発問によって相手を評価することができる。
 その三は、発間によって、相手の思考を秩序づけ、発展・展開させることができる。
 その四は、発問によって、相手に自分自身を正しく認識させることができる。
 その五は、注入でも教授でもなく、自発活動によって、自己発展・自己創造をさせることが
できる。                 J
 これらのことは、いずれも私どもが、国語学習を進める過程で、質問を発する場合に特に考
えなければならないことである。
 このような問答法は、わが国でも入信のための問答、切瑳琢磨のための問答など仏道修業の
一方法として広く行なわれていた。例の禅問答・念仏問答などと称するのがそれである。次


                                           17
に、道元禅師の正法眼蔵弁道話の中の問答の一部をあげてみる。

 第一問 いまこの主禅の功徳高大なることをき
きをはりぬ。おろかならん人、うたがふていは
ん、仏法に多くの門あり。なにをもてかひとへに
坐禅をすすむるや。
 答 しめしていはく。これ仏法の正門なるをも
てなり。
 第二問 とふていはく、なんぞひとり正門とす 
  る。
 答 しめしていはく、大師釈尊、まさしく得道
の妙術を正伝し、また三世の如来、ともに坐禅よ
り得道せり。このゆゑに正門なることをあひつた
へたるなり。しかのみにあらず西天東地の階祖、
みな坐禅より得道せるなり。ゆゑにいま正門を人
天にしめす。(以下略) 

また、法然上人の念仏往生要義抄の中のいわゆる念仏問答の一例を次に示す。

間うていわく。心の澄んだときの念仏と、忘念の
 なかでの念仏と、その優劣はどうであろうか。
答えていわく。その功徳はおなじであってけっし
 て差別はない。
疑うていわく。このことは、なお、納得がゆきか
 ねる。なんとなれば、心の澄んだときの念仏
 は、余念もなく、ひたすらに極楽世界のことの
 みを思い、阿弥陀仏の本願のことのみを心にか
 け、雑念をまじえないのであるから、清浄の念
 仏である。しかるに、心の散乱するときは、身
 ・口・意の三業がみだれて、ただ、口に名号を
 となえ、手に数珠をつまぐるのみである。これ 
   は不浄の念仏である。どうして、おなじであり
 えようか。
答えていわく。そのような疑いの存するのは、ま
 だ、阿弥陀仏の本願の真意をしらないからであ
 る。阿弥陀仏は、悪業をになう人々を救おうが
 ためにこそ、まよいの大海に大いなる本願の舟
 を浮かべたもうたのである。たとえば、重い石
 と軽いおがら(麻幹)を、おなじ舟に積んで、
 むこうの岸にはこぶとおなじことである。どの
 ような人でも、ただ名号をとなえさえすればよ
 いのであって、そのほかには何もない。それが
 本願のすぐれたゆえんである。 

                                           18
 要するに、古代ギリシアの哲人たちが試みた弁証法(問答法)が、真理探究、人問性開発の
すぐれた方法としていっそうの改善を加え、今後もなお生き生きと国語教育の中に取り入れら
れていくべきことを再認識したいと思う。                  


        三 明治時代国語教授における問答法

            ――知識の獲得・理解の深化――

 山下厳麗編輯小学教授法(明治八年四月菜黄麦翠舎蔵版)に、「教授概論」のうち、「教授之
則」として「読書・摘書・講義・問答・書取・作文・算術・習字」があげてある。この教授の
方法は、「東京師範学校附属小学ニ於テ現今施行スル所ロノ教授ノ方法ヲ目撃スル儘二具陳シ
テ毫モ私意ヲ交ヘザル者」で、しかもこれは、米国「コツペリヲル」「オハイヲ」の人「スコ
ッ卜氏」が大成したものであると述べられている。
 ところで、この問答は、「児童ノ知覚ヲ開達スルノ良法ニシテ最トモ緊要ナルコトナレ(教
師ノ意ヲ用ヰルモ亦此ヨリ大ナルハナシ而シテ其法タル独り文面上ノ義理ノミニ止マラス類ニ
触レテハ其意ヲ伸シ彼ヲ キテハ此処ヲ推シテ疎ヨリ密二入り細ヨリ巨二渉り以テ其ナ夫ヲ扶
ケテ万物ノ理ヲ考究セシメンコトヲ要ス」と述べられているように、万物の理を究める方法と
して用いられたのである。(傍線筆者)
 しかし、実際に行なわれていたものはきわめて浅薄幼稚なもので、一方においては、文字・
語句・文章を教師がまず読み、生徒がこれに従って読誦し暗誦するという方法がとられてい


                                           19
た。次に当時行なわれた問答を、前記の小学教授法から引用してみる。

間曰 草木二潅木喬木ノ区別アリ松ハ何レニカ属
  ス
答曰 喬木ナリ
間曰 其の種類ハ如何ナリヤ
答曰 男松女松唐松五葉霜降等其他種類アリ
間曰 松ハ如何ナル土地ニ生スルモノナルヤ
答曰 世上最モ多キハ松ナリ故二何レノ地ニモ皆
  コレナキハナシ
間曰 他樹卜異ル所ロアリヤ
答曰 有 
  間曰 他樹卜異ル所ロアリヤ
答曰 有
間曰 其異ル所ロハ如何
答曰 松ハ四時ヲ撰ハス其葉青々トシテ雪霜ヲ犯
  シ欝々トシテ歳後二遣在ス是レ人ノ常盤木卜
  称スル所以ナリ
間曰 何ノ用ヲカ為ス
答曰 功用甚夕多シサレトモ多分ハ板柱二用ヰテ
  家作ノ如キハ最モ要用ナリ。 

 この問答の過程で「一生ノ終ル毎ニ教師其答ヲ簡文ニ綴り之ヲ塗板状ニ記載シテ一斉ニ同章
ヲ誦読セシメ以テ言語文字ノ用法ヲ教フルモ」また良法であると述べている。この問答法はそ
の後、イギリスのスペンサー、アメリカのジョホノットなどの教育学、教授術が翻訳紹介され
るに及んで次第に広く用いられるようになって、明治も中期になると、問答法としての形式が
完成した。また、当時の開発主義の主張とあいまって、国語教授の方法として長くわが国の国
語教育界を支配していたように思う。
 また、当時紹介されたヘルバルト学派の五段階法または三段階法と結びついて、問答法は次
第に発展していったように思う。次にその一例を、松山栄次氏「各科教授法」(明・二三)か
ら抜粋して示してみる。


                                           20
読本の教授例

 本教授例(新撰小学読本巻八第二十一課ノ一部
ヲ授クルモノナリ。此文章中ニ包含スル実質即チ
ニ関シテハ児童が家庭ニ於テ知得シ居ルモノト
仮定シテ立案シタルモノナリ。其ノ本文ハ左ノ如
シ。
 鶏ノ種類ハ甚ダ多ケレドモ皆一目シテ其雌雄ヲ
区別シ得ベシ。雄鶏ハ其体大ナルノミナラズ其頭
ニハ大ナル冠ヲイタダキ、且ツ尾ハ雌鶏ニ比スレ
バ遥二長シトス。
 第一段 予備
教(鶏卜板書シテ其読方ヲ教ヘ)今日ハ第二十一
 課鶏ノ処ヲ授クベシ、汝等鶏ヲ見タルコトアラ
 ン。雌鶏卜雄鶏卜ハ如何ナル差異アルカ。
生 雄鶏ハ大キク雌鶏ハ小ナリ。
教 其他二異ル所ナキカ。
生 雄鶏ノ頭ニハ冠アレド雌鶏ノ冠ハ小ナリ。
教 前ヨリ言ヒタルコトヲマトメテ言へ。
生 雄鶏ハ雌鶏ヨリモ大キク其頭ニモ雌鶏ヨリモ
 大ナル冠ヲイタダキ又尾モ雌ヨリ長シ。
 第二段
一、摘書 種頬 一目 雌雄 冠 
   右ノ文字ニ就キテ読方及意義ヲ教フ。
二、読方(「鶏ノ種類云々」ヨリ「長シトス」マデ
 教師先ヅ範読ヲ示シ然ル後各生徒ヲシテ之ヲ読
 マシム。
三、意義
教 今読ミタル所二就キテ講義ヲ授クベシ。(講
 義)鶏ニハサマザマノ種類ガアルケレドモ、ド
 レデモ、一目見レバ其雌鶏デアルカ雄鶏デアル
 カヲ見分ケルコトガ出来ルモノデアリマス。
  雄鶏ハ雌鶏ニ比ベルト其体ノ大キイバカリデ
 ハナク、其頭ニハ雌ヨリモ大イナル冠ヲイタダ
 イテ居リマスシ、又尾モ雌鶏ニ比スレバズット
 長イモノデアリマス。
教 今ノ講義ニテ鶏ニハサマザマノ種類アリト言
  ヘリ。汝等ノ知レルモノヲアゲヨ。
生 (答略ス)
教 鶏ノ冠(如何ナル形ヲナシ居ルカ、又如何ナ
 ル色ナルカ。
生 (答略ス)
 (右終リテ各生徒ニ講義セシム)
四、熟読 

  注 鶏の字は原文では  の字を使っている。                            21
 (二、三ノ生徒ヲシテ之ヲ読マシメ読振ノ惡シ
 キ所(此際之ヲ正ス)
 左ノ文章ヲ黒板上ニ書シテ其読方及意義ヲ言ハ
 シム。 
   白犬卜黒犬卜ハ一目シテ区別シ得ベシ。雄鶏ハ
 其頭ニウツクシキ冠ヲイタダクモノナリ。
 オトナハ子供ヨリモ其体大ニシテ且ツ長シ。 

 この頃の問答はやはり、知識教授・文字教授のためのものであって、読みの中心はやはり講
義を聞き、それを暗誦することであった。
 読みとった内容を明らかにしたり、それを適当にまとめたり、児童の考えを進めたり、深め
たり、発展させたりするための問答にはなっていなかったのである。
 こうした発問・問答も大正期にはいるとずっとその様相が変わって、一段と広く、深く児童
の心性と結びついてきた。そして今日の発問・問答と近いものになってきた。たとえば、あの
有名な、芦田恵之助の「冬景色」の授業に当たって発せられた質問を「読み方教授」から抜粋
してみる。

 次に作者の工夫について、各自に発見した個所
をいはせた。それぞれに所見をいったが、まとめ
ていふことは出来なかった。余は、「皆さんのう
ちに、山水画の掛物があるだろう。」といふと、
「あります。」と答へた。「その山水の景色には、
遠くに山などの景色が書いてはなかったか。」「中
程にややはっきりと書いた景色はなかったか。」
「極手近なところに、きはめて鮮明に画いた景色 
  はなかったか。」と問ふと児童は悉く「書いてあり
ました。」と承認した。「景色を書いた絵には、こ
の遠中近の用意があるが、冬景色にはこれに似寄
つた点は見つけなかったか。」ときくと、「見えま
す。見えます。」といふ。さながら追分で道に迷
っている旅客が、行くべき道を見出したやうに喜
んだ。「一段が遠、二段が中、三段、四段五段が
近。」と児童が説明した。「さらに工夫のあとは見
 

22
えぬか。」ときくと、「銃声の所が面白いやうで
す。」といふ。「勿論かういふ実景に接して書いた
ものであらうが、最後に銃声をおいたことは、作
者の工夫である。万物悉く死せるが如き寂寞を、  
   一発の銃声で破った所は、実に巧妙に出来てを
る。」といふと、児童は「そのいはんと欲する所
を指摘された。」といふやうに、非常に喜んだ。
(以下略す)  

 ここで行なわれた教師の発問は、明治のころの発問と比べてみれば、ずいぶん進んできた。
この発問によって、児童の読みは次第に深められて行ったことが想像される。しかし何といっ
ても、まだ教授という考えが中心であったように思う。この文章をいかに理解させるかという
ことが中心であった。児童が、みずから、目的をもって、この文章に接近し、解釈し、理解す
る、主体的な学習を助ける、指導するという立場での発問にはなっていなかった。
 しかし、その発問が、単なる文字教授、語句教授、知識教授のためのものでなく、いっそう
児童の心性に触れ、各自の経験に即し、心情に即して読解させようとする考慮は払われていた
と思う。そこに、やはり一つの進歩があったことを確認しなければならない。
 いずれにしても、ここで行なわれた教師の発問説明が児童の読解学習を進める上に大きな役
割を果たしていることがわかる。

       四 ある日の国語学習

          ――発問と学習――

 ある日の国語教室。二年生の読解学習が行なわれている。


                                           23

単元「田うえ」
  たねまき
  春がくると、 なわしろにいねのたねをまきま
す。なわしろは、日あたりがよくて、水の出しい
れのべんりなばしょをえらびます。このなわしろ
で、なえがすくすくとそだっていきます。
  しろかき
 なわしろでなえがそだつあいだに、ほかの田ん
ぼでは田うえのじゅんびをします。田の土をほり
おこしてこまかくくだきます。それから水をいれ
ます。つぎに土をたいらにします。この土をたい
らにするしごとをしろかきといいます。このしろ
かきのすんだ田になわしろからなえをはこんでき
てうえるのです。
先 さあ、これから国語の勉強しましょう。きの
 うは「たねまき」のところを勉強しましたね。
 うちで読んできましたか。きょうはゆっくり、
 はっきり読んでもらいましょう。(児童手をあ
 げる)Aさん
児 立って音読する。
先 今のどうだった。
児 よかった。
  先 もうひとり。
児 立って音読する。
先 きのう、このところですけれど、どんなこと
 がわかった、なんのことがわかったの。
  (先生、「たねまき」と板書する。)
先 坂田君何がわかったの。
坂 わからない。
 (他にふたり指名して答えさせる。ふたりとも
 わからないと答える。)
先 それでは、何の種をまくの。
児 いね。
先 いつまくの。
児 春。
先 どこへまくの。
児 なわしろです。
先 それでいい?(児童「いい」と答える。)
先 なわしろということばは、みんなは使わない
 が、どんな所がよかったか。
児 日当たりがよくて、水の出し入れが便利なと
 ころ。
先 そういう所がいいのですね。そこへ種をまく
 と、種が、 

24
児 すくすくとそだつ。
先 (だばねた苗を見せながら)これがなえです
 よ。こんなにすくすくと育っていくからこんど
 はどうしてやらなければいけない?
児 植え替えをする。
先 植え替えをするにはどうするか、きょうは、
 それを勉強しましょう。「しろかき」が読める
 人。
児 (男女各ひとり立って音読する。)
先 (音読が終わると)しろかきというのもみん
 なはあまり聞いたことがない。しろかきという
 のはどんな仕事か、こんどは声を出さないで、
 ゆっくり、話ができるように読んでごらんなさ 
   い。
児 (めいめいだまって読む。)
先 さあ、わかった。よく考えて、わかった人?
 どんな仕事があるか。
児 この土を平らにする。
先 (「土をたいらにします」と書いたカードを
 掲げて)ほかの人、どんな仕事が書いてあるか
 言ってごらんなさい。
児 田の土を掘り起こします。
先 (「田の土をほりおこして。こまかくくだき
 ます」と書いたカードを掲げて)それでは、今
 の答と先生のこれ(カードをさす。)と比べて
 どこがちがうか考えてごらんなさい。 
     

 こうして、教師のことばを中心として読解学習は進められていく。これらの教師のことばの
中には、
 (1) 児童に学習活動を課する指示
 (2) 児童の学習効果を評価する質問
 (3) 児童が読み取ったものを総合したり、分析したりする質問
 (4) 児童の思考を秩序づける質問
 (5) 児童の思考を発展・展開させる質問
 (6) 児童に課題状況を明らかにしてやる説明解説


                                           25
 (7) 児童の思考・学習を助け導く助言
 (8) 児童の知識・理解を増す説明講義
などさまざまなことばが含まれている。
 つまり、指示・質問・説明・解説・助言・講義などを学習目標、学習内容に応じて、適切に
組織し、編成し、それらに対する児童の反応を的確につかみながら学習を進めている。
 そこには、課題があり、学習があり、評価があり、指導がある。
 このように、児童の学習の過程において発せられる教師のことばはつねに児童の興味・欲求
・心情・思考・想像・感覚等を刺激し、学習を成立させる契機・要因となっている。
 わけても教師の発する質問は、児童の国語学習を左右する働きをもっている。教師の発問は、
 1 児童に学習活動を課する。
 2 児童の人間性を開発する。
 3 児童の思考力を伸ばす。
 4 児童の知識の習得・理解の深化を促す。
 などの働きを持っている。それだけでなくさらに、
 (1) 経験処理のしかた
 (2) 思考の進め方
 (3) 認識のしかた
をも左右するようになる。私どもは学習指導における発問の重要性をじゅうぶんに知らなけれ
ばならない。


                                           26
    第一章 発問の科学的研究


 最近、発問の重要性が認識されて、多くの国語教室で、発問を大事にし、気をつけるように
なった。発問についての研究も発表されるようになった。しかし、発問が、国語学習指導の上
で、どのような位置を占め、どのような役割を持ち、どのようなはたらきをしているか、発問
はどのような性格を持ち、どのような構造形式を持っているか、発問が、人間性の開発、言語
能力の養成にどのような働きかけをしているかなどについては、まだ、じゅうぶんに研究され
ていない。
 私はここで、発問の性格・機能・機構・形式などについて、科学的に考察し、その基礎理論
を明らかにし、その本質を究めたいと思う。

      一 国語学習指導における教師の指示・発問・
        助言・説明・評価

 国語学習が完全に機械化され、個別化されて、教師の助けを借りずに行なわれるような時代
は、少なくともわが国では、当分の間来ることはないであろう。
 国語学習は、現在教師と児童との協同作業として行なわれている。教師の、指示・発問・助


                                           27
言・説明・批判・評価と児童のそれに対する反応としての、聞く・話す・読む・書く・学習活
動・理解活動・表現活動との相互関係の上に成り立っている。

1 指 示
 児童の聞く・話す・読む・書く学習活動は教師の指示に従って行なわれる場合が多い。
 「だれか、アカという犬はこういう犬だとまとめて言ってごらん。」「読み終わった人は、わ
かったことをノートに個条書きにしなさい。」「そこを読んでください。」
など、その指示に積極的・婉曲的な相違はあっても、児童は、それによって、話したり、書い
たり、読んだりする学習活動を始める。

2 発 問
 もちろん、児童の学習活動は、いつも教師の指示によってのみ行なわれるものではない。
「見せてやりたいという気持ちの現われている所はありませんか。こういうわけだからたぶ
ん見せたかったのだろうと説明しているところ。」「賢治の態度の現われている所はないか。」
などという質問によって、児童は文章を読む活動を始める。
 また、「書いた人はどう思っていますか。」「みなさんならどうしますか。」などの質問によっ
て、児童は、読みとったことを話したり、読みとったことについての感想を話したりする。

3 助 言
 教師からの指示があっても、質問があってもそれに反応できないで困っている。どうしたら
よいかわからない。どんな考え方をしたらよいのか見当がつかない。また、指示や質問に答え
はしたが、その意図に合っていない、あるいは誤っている、言おうとして立ち上がっては見た


                                           28
が、思うように発言できない、というようなことで学習が進まない。そんな時には、教師の助
言が行なわれる。
 「国語の勉強であることを忘れないで考えてごらんなさい。そうすればよくわかります。」
「各地でどんな歓迎を受けたかということを考えながら読めばいいんです。」「とちゅうでつか
えてしまった人は、始めから書いた所までを読み返してみると、その次に書くことがわかって
きます。」のような助言を得て、考えあぐんでいた児童は考える観点が示唆されてさらに考え
を進める。なかなか内容が読み取れずに困っていた児童は、読みの目あてがはっきりして、新
たな読みにはいる。想が展開せず思案していた児童は、前の部分を読み返しながら書き進めて
いく。
4 説 明
 知識を明らかにする、理解を深めるなどのために教師が加える説明はできるだけさけて、読
んでわかる、話し合ってわかる、考えてわかる、書いてわかることが、国語科では大事であ
る。ここでいう説明は、児童が学習の過程において、ちょっとつまずいている、一言話してや
ればすぐに学習が進むというような場合に加える説明である。
 また、質問し、指示して課題を与える、その課題状況を簡潔に説明して、反応しやすくす
る、そんな場合の説明である。
 「一応、話し方で口調を考える時は、場を考えなければならない。相手によって違うからで
す。」「この文章には、事実を書いてある所と意見を書いてある所があります。そこの所を読ん
で調べるのです。」このような説明は必要に応じて適切に加えると学習を効果的にすることが


                                           29
できる。
5 評 価
 国語学習の過程で、教師の指示・質問・助言などに対して、児童が答えていく。その助言な
どに対して、児童が答えていく。その答えに対して、教師はその正誤・適否の判断を明確に、
迅速に下す。不正確・あいまいがあってはならない。その判断・評価がことばとなって児童に
伝えられる。
「よくできました。」「合っています。」「それはちがっています。ほかに。」など明確に評価
が下される場合がある。
「ほかに。」「それでいいですか。」「別に考えた人はありませんか。」などと婉曲に否定する
場合がある。
 「もっとつけ加えることはありませんか。」「それで全部ですか。」など、それではまだじゅ
うぶんでないことを暗示している場合もある。
 「半分だけ言えましたね。」「前に言ったことは合っているけれど、あとの方は違っていま
す。」などはっきりと正誤・適否の度合を示す場合もある。
 いずれにしても、児童は、教師のこれらの評価に対して、あるいは喜び、あるいはがっかり
する。また自己の学習の結果の評価反省の手がかりとする。この評価のことばの適切な使い分
けは、児童の学習意欲・学習態度に大きな影響を与える。
 国語学習の過程における教師のさまざまな発言について、その概略を述べた。これによっ
て、以後取り上げる発問がどのようなものであるかを、だいたい明らかにした。


                                           30
       二 発問と思考力

 発問は思考にどのように働きかけるか、つまり、発問によって思考をどのように変えること
ができるか、どのように伸ばすことができるか、また、発問はどのように思考を形式化させる
かなど、発問と思考との関係を考察してみよう。
 (一) 発問は思考活動を誘発する
 発問の本質は課題性にある。「どういうことが、はなやかな美ですか。」「賢治が病気なのに
起きてきて指導してやったそのことについてどう考えますか。」「始める前のアカの気持ちはど
うだったか。」「その時、あこちゃんはどんなことを考えていましたか。」「初めて上陸したのは
どこですか。」「各地でどんな歓迎を受けましたか。」などの発問に対して、児童は何とか答え
なければならない。つまり、児童は発問によって課題を与えられたのである。そこで、その課
題を解決するために、課題に答えるために進んで考えなければならない。読まなければならな
い。あるいは話さなければならない。
 ところで、課題性ということは、思考の特性でもある。思考は、課題がなければ、問題が提
示されなければ、また、そのことに興味や関心を持たなければ働かない。ただ考えろ考えろと
言ったところで、思考活動は行なわれない。
 つまり、発問は課題を提示することによって、児童に思考活動を誘発する働きをもってい
る。思考活動の契機・思考のよりどころ、思考の目標となって、児童に思考活動を営ませる。


                                           31
そこで、このような発問は次の条件を備えていなければならない。
 (1) 課題に対して積極的に思考活動を営むようになるもの。
 (2) 課題、課題状況が明確に簡潔に示されるもの。
 (3) 関心や興味を喚起するもの。
 (4) 思考の方向を明確に示しているもの。
 (5) 児童の精神発達・言語能力の発達等に応じているもの。
 (二) 思考を正確にする発問
 児童は、発問による課題状況に適応するために思考活動をする。その結果をまとめて答え
る。こういう過程をたどって、児童のあいまいだった思考が、しだいにはっきりしてくる。明
白になってくる。つまり、児童の答えを確実にし、正確にするための質問が次々となされる。
それに従って児童の思考は正確になってくる。たとえば、

教 読書会で話したり、四年の終わりになって、
 読んだ本がわかったりしますね。それでは読書
 記録の勉強をしましょう。どういうふうに読書
 記録を書けばよいか。
児 木を読めばわかる。
教 どの本を?(本を示して)この本を読めばわ
 かりますか。
児 自分の持っているお話の本を読めばわかりま
 す。  
   教 それで、読書記録の書き方がわかる?
児 童話を読めばわかります。
教 どういうことと、どういうことを書けばいい
 かわかりますか。
児 教科書の五十一ページから六十一ページです。
教 題は?
児 六十一ページに野口英世が書いてあります。
教 六十ページに題目が書いてあるでしょう。
児 「私たちの読書」  

                                           32

 読書記録の書き方について、児童は、ばくぜんと「本を読めばわかる」と言い、ある児童は
「お話の本を読めばわかる。」と答えている。このあいまいな、ばくぜんとした考えを手がか
りとして、次々に質問をくり返しながら、教科書の「私たちの読書ノート」を読めばよいこと
に思いいたらせる。こうして、児童の思考は、しだいに明確になっていく。
 (三) 思考を深める発問
 読むことは書き手とともに考えることである。書き手の思考の順序過程に従って、読み手が
考えることである。書き手が組み立てた思考を、読み手が再び自己の中に組み立てることであ
る、書き手が体制化した意味を読み手が再体制化することであるなどと言われている。
 しかしながら、読み手はそうやすやすと書き手と共に考えることができない。書き手の思考
過程の中にはいりこむことはできない。そこにはさまざまな抵抗がある。
 教師の発問は、その抵抗を、児童の思考過程に沿って、しだいに排除し、そこに思考の筋道
を立てながら次第に深めていく。たとえば、

教 これを書いたおじさんは、みんなにどういう
 ことを知ってもらいたいのでしょう。
児 あのね、くじらとぞうのちがい。
敝 くじらとぞうの何のちがい。
児 重さのちがい。
児 くじらはさかなではない。
児 ぞう二十五ひきぶんぐらい。
敦 どこに書いてあるか捜してごらん。
  児 「くじらは赤ちゃんを生みます。」
 (そこの所をさす。)
教 「くじらは赤ちゃんをうみます。おちちをの
 んで大きくなります。」くじらは何でしょう。
児 動物
教 どこの所に動物ですと書いてありますか。
児 くじらはさかなではありません。
教 くじらがさかななら。

 33
児 たまごを生みます。
教 ところが、さかなではないから、どうだとい 
  うのですか、そこを読んでみましょう。
   

 こうして、児童の思考の過程を考えながら「くじらはさかなではない。」という方向に発問
していく。児童の考えは、文章に即しながら、つまり書き手の思考に即しながら、次第に整理
され深められていく。また、次のような場合もある。  

教 信号機がどこでどんな役目をしているのか読
 んで調べてごらん。(読み終わると)
教 信号機はどこにありますか。
児 都市の四つかど。
教 どういう都市の四つかどですか。
児 にぎやか
 (「にぎやかな都市の四つかど」と板書)
教 では、信号機はどんな色に変わりましたか。
 それで人や車はどうしましたか。
児 赤い色に変わりました。そうすると、人々が 
   立ち止まりました。
  (「人々が立ちどまりました」)
  (「車もつぎつぎにとまりました」と板書)
教 青い色に変わった方では、人や車はどうしま
 したか。
皃 人々がぞろぞろ通っています。車も通ってい
 ます。
  (「人々がぞろぞろ通っています」「車も通って
 います。」と板書)

 こうした発問によって、赤信号と人および車との関係を明確に判断させる。さらに、青信号
と人および車との関係も正しく判断させる。ことばを変えて言えば事実関係を正しくことばを
通して認識させる。次に、

教 では、信号機の光はどんなはたらきをして
 ますか。 
  児 交通のさしずをしています。
  (「交通のさしずをしています。」と板書)

 34
教 それでいいかどうか、本を読んで確かめてみ    ましょう。考えながら読んでごらんなさい。

 このような発問によって、先に読みとった、考えをまとめた二つの事実とその相互関係が表
わしている意味、つまり、それらの二つの事実関係に共通な法則性、――「光が赤く変われ
ば、人も車も止まる。光が青く変われば人も車も進む」という二つの事実の中に共通に働いて
いる法則性(共通性)を理解するための思考が働く。そして、光が人と車の行動を左右する。
光が人と車をさしずするという抽象的理解に到達する。
 ここにおいてはじめてこの文章の読解が成立する。それは、表現されている事実間の諸関係
の背後にあって、それを支配している法則性の認識、つまり理性的認識である。
 発問は、このような理解・認識に向かって発せられる。
 (四) 思考を発展させる発問
 発問は、思考活動の契機となったり、思考を正確にしたり、深めたりする。そればかりでは
なく、思考に筋道を立てたり、それを発展、展開させたり、新しい思想を生み出したりする。
つまり生産的思考を可能にする。
 たとえば、信号機の光の変化によって、人も車も動いたり止まったりするという事実を読解
する。その事実から、信号機の光は交通のさしずをする働きを持っていることを読解する。同
様にして、駅での合図燈・燈台の光その他の光が果たす役割・機能を読解する。
 一方においては、ことばによって、指示しさしずする。歩けと言われれば歩き、止まれと言
われれば止まる。右と言われれば右へ、左と言われれば左へ行く。そう事実を知っている。そ
こで、光とことばとの関係について新しい判断を生み出す。つまり、新しい知識・理解・思想
を生み出す。


                                           35

教 それでは、光とことばとは、どんな点で同じ
 働きをしていますか。
児 光は人に教えたり、さしずしたりします。こ
 とばも人にいろいろなことを教えたり、さしず
 したりします。そこのところが同じ働きです。 
  教 そうすると、光とことばとはどんな関係があ
 りますか。
児 信号の光とことばは同じ働きをします。
児 信号の光はことばです。

 こうした発問によって、児童はすでに読解によって新たに得た「信号・合図などの光が人に
いろいろなことを教えたり、人を指図したりする。」という判断と、すでに得ている「ことば
は人にいろいろなことを教えたり、人をさしずしたりする。」という判断とに基づいて、そこ
に思考を働かせ、推理することによって「信号、合図などの光とことばは同じ働きをする。」
という新たな判断を生み出す。つまり生産的思考によって、新しい概念・思想を生み出してい
く。
 また、ある鉱夫がけがをする。それを救うためには血清が必要である。バス・汽車・飛行機
等の乗員や関係者たちが互いに協力して血清を送り届ける。多くの人々の善意の協力によって
鉱夫の命は救われる。そういう事実を読み取った時、教師は
  「なぜ多くの人々がこんなに協力したのですか。」
という問を投げかけた。児童は、
  「鉱夫を助けようと思って」
  「鉱夫の命はたいせつだから」


                                           36
  「人の命はたいせつだし、だいじにしなければならないから」
と答える。こうした児童の思考活動の結果、「人命救助」という事実判断から、「人命尊重」と
いう新しい判断・思想を生み出していく。
 このように、発問は、新しい思想を生み出す契機となる。生産的思考をそだてる働きをもす
る。
 (五) 思考法を身につける発問
 発問によって課題が与えられる。話題・題材が提供される。その課題を解決するために、聞
く、話す、読む、書くなどの学習活動が営まれる。また、話題題材に対する知識や理解を深め
るために、聞く、話す、読む、書くなどの学習活動が営まれる。
 そのような学習活動は、また、教師の発問に導かれて展開する。あるいは、学習活動の結果
を整理し、まとめる場合においても、教師の発問によって導かれることが多い。
 つまり、発問の順序・構造は、その課題・問題を解決するのに適切な筋道をたどり、課題・
問題を解決するのに必要な学習・思考を進める上に必要な要素によって組織されている。
 たとえば、買物に行った経験を話すという場合、

教 きのう何をしましたか。
児 買物にいきました。
教 どこへ買物に行きましたか。
児 近所のお店へ行きました。
教 だれといきましたか。
児 おかあさんと行きました。
教 何を買いましたか。
児 おとうさんのしゃつと私の靴下を買いまし
 た。

                                           37

 こういった問答が行なわれると、児童は、買物の経験をまとめる場合、(1)いつ (2)どこへ
(3)だれと (4)何を買いに行った。というような観点に立ってまとめる、考えることを理解す
る。つまり課題への接近のしかたがわかるようになる。
 また、新聞記事を読む場合、ある報道事実に対して、「いつ、どこで、だれが、なぜ、どう
して、どうなったか。」という問が発せられると、児童はこのような六つの観点に立って、読
み、考えればよいことを理解する。
 また、「虫を食べる植物」という文章を読解する。この文章には、
 (1) 虫をたべる植物、もうせんごけの生態の説明
 (2) もうせんごけの虫をとる構造の説明
 (3) もうせんごけの虫の捕え方、食べ方の説明
 (4) 同類の他の植物の紹介
が書かれている。読解したことをこのように整理する発問を組織していけば、そこに、もう
せんごけの生態・構造・機能・同類というような観点に立って、まとめていくまとめ方が理解
される。「虫を食べる植物」という文章への接近のしかたがわかってくる。
 このように、発問によって、課題・問題・話題・題材にどんな点から切りこんでいったらよ
いか、接近していったらよいか、それをどのように展開していったらよいか、どんなまとめ
方、整理のしかたをしたらよいかがわかってくる。
 したがって、発問は、児童の精神発達・思考の発達・言語能力の発達に応ずるようにくふう
しなければならない。また、問題解決の手順・過程に応じ、問題解決のための発問の組織につ


                                           38
いて考えなければならない。(このことについては、「発問の構造」のところに詳しく述べてある。)
 (六) 思考を形式化する発問
 すでに述べたように、発問は、児童の思考の観点を示したり、思考の順序を規定したり、思
考の秩序、組織化を助けたりする。したがって、発問は、児童の思考を形式化したり、思考の
型はめをしたりするようになる。また、国語科学習で取り上げる課題・問題・話題・題材・主
題等に対する発想――構えや接近のしかた、解決のしかた、思考のしかたなどに、一定の方向
を与えたり、一定の形式を与えたり、一定の方法を与えたりする。
 その形式や方法が、課題に応じ、能力に応じて、進歩、発展する場合は別に間題はないが、
教師の発問のくせ(つねに発問は教師の課題解決の構えや方法過程や考え方等によって規定さ
れる。)や、発問に対する無関心、無理解からおのずから起こる片寄り等が、そのまま児童の
思考の形式化を促すとしたら、これは間題である。
 つねに、一問一答式の発問しかしない教室では、児童はそのような考え方にならされてい
く。「いつ、どこで、だれが、どうした」という発問に慣れている児童たちは、そのような観
点に立って思考するようになっていく。「結果はどうなったか、それはどんな理由によるのか」
という発問に慣らされている教室では、結論はどうなったか、その理由は何であったか、そう
いう構えで課題に接するようになる。「事実関係はどうなっているか、それはどんな意味を表
わしているか。」というような発問によって学習が進められていくと、児童は、そういう構え
で課題に接近していく。まず、事実関係を明らかにしてから、その背後にある意味・原則・法
則性を考えようとする。


                                           39
 また、「これに対してどう思うか。」という発問に対しては、「わたしはこう思う。」「ぼくは
こう考える。」といった多くの答が得られて、その多様性に目が向けられる。思考の種々想に
よって、心が開かれる。
 このように、発問が、児童の思考を形式化するについては、二つの面が考えられる。一つ
は、課題への接近のしかた、構えの形式化であり、他の一つは思考の内容(思想内容)の形式
化である。
 思考に型を与え、形式を与えることはきわめてたいせつなことであるが、それは、課題に応
じ、児童の能力に応じた適切な型、形式でなげればならない。つねに、発展成長する型、形式
でなければならない。

       三 発問と言語能力

発問によって課題が与えられ、課題を解決するために、聞く・話す・読む・書く等の学習活
動が営まれる。これらの活動によって、課題が解決され、同時に、課題処理に必要な言語能力
が養成される。ここに、発問と言語能力との関係が問題となって浮かび上がってくる。
 (一) 発問と内容主義の国語教育
 戦前の内容主義の国語教育では、文章の内容を理解させることを中心にして授業が進められ
た。文章の内容(題材・主題)をいかに読解させるかということが、国語教育最大の関心事で
あった。したがって、そこで行なわれた問答――質問・応答――は、すべて、文章の内容を理


                                           40
解させるためのくふうであった。
 さきにあげた、芦田恵之助の「冬景色」の問答をみるとそれをはっきりと知ることができ
る。
 (二) 発問と技能主義の国語教育
 戦後の技能主義の国語教育は、国語技能の養成を目標として進められた。国語科では、人間
形成は二次的な意味しか持っていない。もっぱら、国語の能力を養成することが国語教育であ
ると考えられていた。
 したがって、発問も直接技能に結びついていった。技能をむき出しにした発問が考えられ、
実践されるようになった。
 「この文章はいくつの段落に切れるか。」「この段落の要点は何か。」「それはのそれは何をさ
しているか。」「しかしという語はどんな働きをしているか。」など、発問は、そのまま技能と
結びついていった。
 しかしながら、このようにある一技能を掲げて読解指導をしたのでは、じゅうぶんに内容を
理解させることは困難であると言われている。読解力というのは、想像・感情・思考等の裏づ
けを持ったいろいろな技能・複雑な技能によって組み立てられている。それなのに、ある単独
の一技能をもって、文章に接近していっても、それだけでは読解学習は成立しないと思われ
る。
 (三) 発問と機能的国語教育
 機能的国語教育は、知識や情報を得るため、経験を広め心情を豊かにするために話を聞いた


                                           41
り、文章を読んだりする。また、記録して生活に役だてるため、相手を動かすため、相手に訴
えるため、個性を伸ばすため、社交のために、話をしたり、文章を書いたりする。つまり、人
間性を開発し、人間を作っていく過程で、それに必要な国語の能力を養成することをねらって
いる。話題・題材・主題に内在する価値、あるいはそれによって形成される価値を追求する過
程で国語の能力を身につけることをねらっている。
 したがって、機能的国語教育における発問は、文章(話)の内容を理解させるためのものだ
けではない。また、技能の養成のみをねらったものでもない。内容の理解とそれに必要な能力
とが同時に身につく発問でなければならない。
 たとえば、世界各国の事情を述べた文章を読解する場合。
  「世界各国の特色を読み取って個条書きにしてください。」という発問をする。児童は、文
章を読みながら各国の特色(文章の内容)を読み取って理解する。同時にその要点を読み取っ
て個条書きにする。つまり、この発問の中には、文章の内容要点を読みとるという技能と、文
章の内容を理解するという二つの面が含まれている。
 また、「世界各国の特色を読みとって、次の表に書き入れなさい。」という発問がある。この
場合も前と全く同じように、文章の内容を読み取って理解するという面と、表に記入すること
によって、事実関係を確実に押えて読む技能を身につけるという面との二つがある。あるい
は、読解の結果を表解することによって、文章の内容を正確に理解するとともに要点を押えて
読む技能を身につけることを考えている。
 そこで、このような発問をくふうするためには、ある文章の内容を理解させるには、どんな


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順序・段階を追って発問すればよいか、また、その文章の内容を読解する過程で、どんな技能・
態度・知識が身につけられるかを明確にとらえて、内容を理解することと、内容を理解するた
めに必要な能力とが同時に身につくような発問をくふうすべきである。
 このように、発問と言語能力とは密接に結びついているものである。
 (五) 発問と言語能力
 前に述べたように、発問の中には、課題を与えるものがある。その課題を解決するために聞
く・話す・読む・書くなどの学習活動をする。その学習活動を営む、つまり、学習活動を処理
するためには、ことばの能力が必要である。だから、発問によって与える課題は、それによっ
て児童の言語能力を伸ばすものでなければならない。したがって、発問は、児童の認識・思考
の発達・言語能力の発達に応じたものでなければならない。また、学習させようとする能力を
含む発問でなければならない。
1 発問と態度の養成
 発問は、児童の態度――言語活動を営む態度を育てるのに役だつ。
 (1) 発問の難易の使い分け――児童の言語能力の発達を考え、また、児童の能力差を考慮し
て、意識的・計画的に、発問の難易を適切に使い分けることによって、児童の言語活動を営む
態度を養うことができる。比較的やさしい発問を加えて、児童にその解決・応答に成功させ、
満足感を与えて、言語活動に対する意欲を高め、積極性を増すこともできる。
 分析的な小さな発問から、しだいに、総合的な大きな発問へと進んでいく。一問一答的な発
間から、しだいにいわゆる一問多答的な発問へと発展する。そのような発問の全体構造の中


                                           43
で、児童の学習態度を育てることができる。たとえば、童話を読んだあと、「いつごろのお話
か。」「だれについてのお話か」「どこにあったお話か」「何をかわいがったお話か」というよう
に、童話の諸要素を分析して、小さなやさしい発問をする。その小さな発問に成功させてか
ら、「では、いつどこにあったお話か」「だれがどうしたお話か」というように、だんだんまと
めて、総合的に発問をする。
 また、それとは逆に、総合的なやさしい発問から、しだいに分析的な深い発問へと進めてい
く場合もある。いずれにしても、発問の難易を適切に使い分けて、つねに、児童が積極的に学
習に参加するような態度を育てることがたいせつである。
 特に、低学年の話すことの学習で、経験したことを話させる場合など、こうした考慮を払う
ことによって、積極的に、意欲的に話す態度が、しぜんに育てられていく。
 しかし、次のような場合には、むしろ態度をそこなう結果になるから注意したい。よく「ど
んなことが書いてあるか考えながら読んでごらんなさい。」「どんなお話かよく聞いていてくだ
さい。」などという発問(課題を与える)をする。児童は、どんなことが書いてあるか一生懸
命に読む。また、一生懸命に耳を傾けて聞く。読み終わったり、聞き終わったりすると、「さ
あ、読める人は手をあげて、」といって児童に音読させる。また、「今の話の声の大きさはどう
だったか。」といって、声の大小について言わせる。こういう教室が非常に多い。このような
やり方では、児童の読む態度・聞く態度はしだいにくずされていく。先生の発問に応じてせっ
かく一心に読み、熱心に聞いていたのに、その結果については何の処理もされず、考えもしな
かったことを聞かれる。これはよくない。発問をしたら、必ずそれに応じた処理をしなければ


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ならない。
 要するに、発問のくふうをすることによって、言語活動に対する態度を育てることができる
のである。
2 発問と技能の養成
 児童が目的をもって、積極的・意欲的に言語行為をするときに、その活動を処理するのに必
要な能力が、最も効果的に身につくものである。
 したがって課題を与える発問は、児童が、それを解決するために、積極的に、意欲的に言語
活勁を営むものがよい。たとえば、教室でよく使われる「きょうのところが読める人」「じょ
うずに読める人は手をあげて。」「次の人読んでごらんなさい。」「きのうのことを話してごらん
なさい。」「みんなに聞こえるような声で話してごらんなさい。」「何でもいいからきのう見た
り、聞いたりしたことを書いてごらんなさい。」などというような発問では、児童に、かっぱ
つな言語活動をさせることはできないであろう。
 そこで、目的の明確な発問、何のためにどうするのだということがはっきりわかるような発
問がいい。また、児童の心をとらえて、児童が進んで言語活動をしようとするような気持ちが
引き起こされる発問がいい。
 次には、そこで指導しようとする能力が身につく活動が行なわれるものがいい。つまり、指
導しようとする技能が、効果的に身につくような活動をさせる発問がいい。
 たとえば、段落に書いてある内容や話そうとする内容をまとめて、読み取らせたり、話させ
たりする技能を身につけようとする場合、「あかえいは、どんな形や色をし、どのように動く


                                           45
と書いてあったか、まとめて言ってごらんなさい。」というように、読みとったことがらをき
ちんとまとめて話すようにする。それを、「どんな形をしていますか。」「どんな色をしていま
すか。」「どのように動きますか。」というように発問して、一つ一つ答えさせるのでは、段落
の内容をまとめて読みとったり、まとめて話したりする技能は養成されない。
 また、その場合、Aが形について答え、Bが色について答え、Cが動きについて答えるとい
うように三人が一つずつ答え、それを総合して課題の解答にするというようなやり方では、段
落にまとめて読む技能は身につかない。Aひとりで、この三つのことがらをまとめて読みと
り、まとめて話すのでなければだめである。
 このように、発問と技能は密接に結びついている。このようにして学習した技能をさらに確
実に身につけるために練習が必要である。その場合ですら、ただ「はい」という字を三回書き
ましょう、というような課題では、「皆さんが名前を呼ばれた時、はいと返事をしましたね。
そのはいという返事を書きましょう。」「こんどは、となりに並んでいる人のはいを書いてあげ
ましょう。」「きょう、じょうずにできた返事を、書いていって、うちの人に見てもらいましょ
う。」というようにして練習させれば、文字を書くごとに、それぞれ目的を持ち、書く意味を
自覚して、積極的に、意欲的に、いつもじょうずに書こうという意識のもとに練習することが
できる。したがって、技能も確実に、能率的に身につけることができる。
 このように発問と技能とは、直接に結びついているものであるから、つねに、指導すべき国
語の能力と、児童の持っている国語の能力とを確実に押えたうえで、発問すべきである。


                                           46
       四 発問とコミュニケーション

 (一) 知識・情報のコミュニケーションと発問
 児童は、知識や情報を求めるために、文章を読んだり、話を聞いたりする。しかし、そこに
は、ことばや文字の抵抗があったり、技能の抵抗があったりして、そのままでは、文章や話と
児童との間にコミュニケーションが行なわれにくい。そこで、発問は文章や話と児童との間に
あって、両者のコミュニケーションを成り立たせる働きをする。知識を深める、情報を正しく
つかむことを目標として、発問によって、読みや話を聞く観点を示したり、事実関係を明らか
につかませたり、亊実の裏にある意味を考えさせたりして、児童を文章や話へとしだいに接近
させる。そして、知識や情報のコミュニケーションが成立するようにする。
 (二) 思想・心情のコミュニケーションと発問
 読むということは、文章の内容と読み手との間にコミュニケーションが成立することである
ともいうことができる。すでに述べたように、発問は文章と読み手との間にあって、両者の間
にコミュニケーションが成立するように働きかけている。たとえば、文章を読んだあとで、
「どう思ったか。」 「どう感じたか」 「どんなことがわかったか。」「それに対してどうしよう
と思うか。」というような発問が出される。それに対する応答によって、文章の内容・主題・
書き手の意図に、どれほど接近できたかを考える。その児童の応答をもとにして、さらに、文
章について深く理解させ、感動させ、考えさせる発問をする。そして、一歩一歩、文章の主題


                                           47
書き手の意図に接近させる。時には、この点はどうか、ここはどう感じるか、そこをさらにこ
ういう点から考えてみようというような発問によって、いっそう深く、確実に文章の内容に迫
っていく。
 こうして、文章に表わされている思想・感情と読み手との問に、コミュニケーションを成立
させる。発問はそのような働きをする。

       五 発問の機能

 発問の機能については、これを価値的に見ればすでに述べたように、(1)人間性の開発、(2)知
識の獲得、(3)真理の探究などがあげられる。また、教育方法的にみれば、(1)課題のため、(2)評
価のため、(3)学習のため、(4)練習のためなどが考えられる。
 また、個々の発問に即して考えれば、次のようなものがある。
 (一) 課題のための発問
 課題のための発問は、児童にある学習活動を与える発問である。児童は、その課題を解決し
たり、それに答えるために、言語活動を営んだり、思考活動をしたりする。また、感情移入が
行なわれたり、生産的想像を働かせたりする。たとえば、
 (1) 「どの文がだいじか、読んでいってサイドラインを引きなさい。」
 (2) 「みなさんが由子さんのおかあさんになったつもりで読んでみましょう。」
 (3) 「何について言おうとしているのか、よく黙読してごらんなさい。」


                                           48
 (4)「一行あきのあとのところには、何が書いてありますか、読んでごらんなさい。」
 (5)「読んでいいなあ、何となくいいなあという、全体から受ける感じをノートに書きとめ
  ておきましょう。」
 (二) 分析のための発問
 分析のための発問は、主題や要旨、あるいは書き手の意図などを全体的、直観的に読み取っ
たり、聞き取ったりした場合、それを確実にしたり、深めたりなどするときに用いられる発問
である。つまり、全体的、直観的に把握し、認識したものを、さらに分析的に確認したり、深
めたりするときに用いられる発問である。また、全体的に把握し、認識することができない場
合、それをいくつかの部分に分けて、少しずつ、順序立てて発問して理解させる。つまり、発
問を小さくして、わかりやすくする。そういう場合もある。たとえば、
 (1)「ねえさん思いの気持ち(主題)がどこのとこと、どこのとこに感じられたか。」
 (2)「この手紙は、だれが、だれに、何について書いたものか。」
 (3)「何のたねをまくの。」「いつまくの。」「どこへまくの。」
 (4)「はじめどこへ行きましたか。」「その次にはどこへ着きましたか。」「それからどうしま
   したか。」
 (5)「きのうおうちでどんなことをしましたか。」「だれとしましたか。」「どこでしました
   か。」
 (三) 総合のための発問
 全体的・直観的に読み取ったものを分析して確かめ、それをさらに総合させる場合の発問で


                                           49
ある。また、いくつかの観点に立って読解し、総合的に理解させるという場合もある。
 知識・情報等を全体的・総合的に理解させる。つまり、いくつかの事実を累加的にまとめ
る。いくつかの事実間の諸関係を全体的に統一する。いくつかの事実間に共通の原則・原理に
よってまとめる。いくつかの事実を要旨によってまとめる。原因・結果の関係等によってまと
める。
 また、文学的な文章で、主題・場面・情景・心理等を読解鑑賞する場合に用いられる。たと
えば、
 (1)「だれかまとめて、アカというのはこういう犬だと言ってごらんなさい。」
 (2)「リボルノからローマまでの道順をまとめて言ってごらんなさい。」
 (3)「ハワイについて、いろいろなことがわかったが、それをまとめて言うと、どういうこ
   とになるか。」
 (4)「ここに書いてあることをまとめて言えばどういうことになるか、この段落に見出しを
   つけてごらんなさい。」
 (5)「1の段落・2の段落・3の段落に書いてあることがわかりましたか。この三つの段落
   に書いてあることは、「もうせんごけ」の何と何と何について書いたのか、まとめて言い
   なさい。」(「もうせんごけ」の生態・構造・機能)
 (6)「残雪は結局まとめて言うとどういう動物だということになりましたか。」
 このことは、話を聞く場合にも、通じて言えることである。
 (四) 関係判断のための発問


                                           50
 この発問は、話題・題材等に対する知識・理解・認識などを深める場合に用いられる。書か
れている事実と事実との関係を明確にする。各段落の内容相互の関係を明らかにする。書かれ
ている事実とそれに対する意見との関係を理解させるなど、いろいろな場合における関係を判
断させる発問である。
 また、文章の表現面に即して言えば、段落と段落との関係、文と文との関係、主語・述語の
関係、修飾・被修飾の関係、指示と被指示との関係などを明確にして、表現を正確に、深く理
解させるための発問でもある。たとえば、
 (1) 「宮沢賢治はどんな考えを持っていたか、その賢治の考えと、賢治が実行したこととの
   関係を考えてみましょう。」
 (2) 「信号の色が赤になると、人や車はどうするか、信号の色が青になると人や車はどうす
   るか、信号の色と人や車との関係を言いなさい。」
 (3) 「土地の利用と水が流れ出ないこととどうしてつながりがあるか。」
 (4) 「『その』は何をさしていますか。」
 (五) 想像・推理のための発問
 この発問は、語句の意味を文脈の中で考えさせる。文脈がどのように発展・展開するかを、
推理し判断させる。ことばを手がかりにして、場面・情景・心情などを想像させる。また、そ
れをもとにして感情移入が行なわれる。
 このように、新たに考えを生み出したり、新たな想像をえがいたりする。つまり、生産的思
考・生産的想像・感情移入等に導くためのものである。それは、判断力・推理力を高め、想像


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力・感情を育てるための発問である。たとえば、
 (1) 「『ところが』が出てくると、意味はどうなりますか。」
 (2) 「みなさんが由子さんのおかあさんになったつもりで読んでから考えてみましょう。」
 (3) 「どんなことを考えているでしょうか。」
 (4) 「どんなことを思っているでしょうか。」
 (5) 「みなさんて、いくつぐらいですか。」
 (6) 「『秋の日は美しく輝いていました。』なぜこんなことを書いたのか。」
   などがこれに属する。
 (六) 比較したり、異同を明らかにしたりするための発問
 この発問は、たとえば、軽快・落ち着き・明るさ・おごそかさなど詩や歌のリズムを対比さ
せて、リズム感を育てる。表現の微妙な相違、語句の意味の違いなどを比較・対比させて、理
解・鑑賞させる。読解の結果を比較してその正否・適否を考えさせる。段落の内容を比較させ
て、その内容の変化・推移・相互関係などを理解させる。などの場合に用いられる。たとえ
ば、
 (1) 「Aさんの言ったことと、Bさんの言ったことは、どっちがよくあっていますか。」
 (2) 「朝、どんな生活をしたか、午後は、どんな生活をしたか比べてみましょう。」
 (3) 「石塚君が、『田の土を掘り起こします』と言ったのと、『田の土を掘ってこまかくく
   だきます。』とは、どこが違っていますか。」
 (4) 「『海』の詩と、『山頂』の詩を読み比べて、感じの違いを話し合ってみましょう。」


                                           52
 などがこれに属する。
 (七) 感覚・感動・情景などを明らかにするための発問
 童話を聞く、放送劇を聞く、劇を演ずる。童話・物語・小説・脚本・伝記などを読む。詩を
味わう。短歌や俳句を味わうなどの学習の過程で行なわれる発問がある。それは、具体的に言
えば、表現のよい所を味わう。情景・情感・場面等を読みとる。心の動きをとらえる。感動に
ひたる。感覚をみがく。また、文章や談話の内容に同感共鳴したり、反ぱつしたりする。そう
いうところに働く発問である。
 ここでは、どう感じたか、どんな気分・気持になったか、どう心を動かされたか、どんなこ
とに感心したか、どんな情景・場面が思い浮かべられるか、どんな様子が想像されるか、どん
なことにその通りだと感じたかなど、感覚・感動・情景・情感・心理・共感共鳴等が問われる。
たとえば、
 (1) 「いちばん気に入ったところはどこか。」
 (2) 「その緊張している場面はどこか。」
 (3) 「どんな情景が目に浮かびますか。」
 (4) 「この詩を読んでどんな感じがしましたか。」
 (5) 「いちばん強く心に感じたことはどんなことですか。」
 (6) 「めいめい声を出して読んでみてあとから感じた好きなところを話し合ってもらいま
   す。」
 (八) 感想・意見・批判のための発問
 読み取ったこと、聞いたことに対して、感想・意見を述べたり書いたりする。また、いろい


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ろな事実・現象・問題など――学級や学校や家庭や社会や自然などで目に見、耳に聞き、ある
いは経験する――に対する感想・意見を話したり書いたりする。そのような学習の過程で行な
われる発問がある。これらの場合には、主として、どう感じたか、どう思うか、どう考えるか、
どう対処するか、どうあるべきかなどが問われる。つまり、諸事象に対する個人個人の構え・
態度・思想・感情等、物の見方や考え方、感じ方、処理のしかた、人生観・社会観・自然観な
どが明らかにされる。
 ここで問題になるのは、相手の立場に立つ、――君ならどうするか、相手のつもりになって
考えるなど――立場の交替、いわゆる役割交換における発問である。役割交換が可能になる、
成立する上の条件、限界を考えた後にこの問は発せられなければならない。これらの発問には
次のようなものがある。
 (1) 「これから、みなさんが賢治に対してどんなことを考えたか、書いてもらいましょう。」
 (2) 「どういうことがはなやかな美人の美か、めいめいの意見を言ってください。」
 (3) 「では、こういうことについて意見のある人は。」
 (4) 「もし、みなさんが賢治だったらどうしますか。」
 (5) 「みなさんが由子さんのおかあさんになったつもりで読んでみましょう。」
 (6) 「『アカ』について、思ったとおり、感じたとおり言ってごらんなさい。」
 (7) 「賢治が病気なのに農民を指導してやった、そのことについてどう考えますか。」
    「みなさんならどうしますか。」
 (8) 「事実について書いてあるところと、意見を書いている所がある。それはどこか。」


                                           54
 (9) 「そこのところをもう一回読んでもらいましょう。感想をまとめながら。」
 (10) 「どんな感想だったか、ノートに書いてあるのを言ってください。」
 (11) 「暮の大売り出しの様子を見て、どんなことを感じたか、きょうはそれを書いてもら
   いましょう。」
 (12) 「こういうことについて意見のある人は言ってください。」
  というような発問がある。
 (九) 知識情報のための発問                        
 知識や情報を求めるために読んだり聞いたりする。理解を深めるために読んだり聞いたりす
るなどの学習の過程で使われる発問がある。文章や談話の内容――書かれていることがら、話
されていることがら、つまり、題材や話題について知識を得たり、理解を深めたりする。具体
的に言えば、記録・報告・説明・解説・報道・掲示・広報などを読む。説明・解説・指示・伝
達・放送・ラジオなどを聞く。このような学習活動の中では、知識を正確に身につける、理解
を深める、情報を正確にとらえることなどが要求されるから、発問もまたそれに応じてくふう
しなければならない。ここで問われることは、主として、何を知ったか、何かわかったか、ど
んなことがあったか、どうすべきかなどである。したがって、文章や談話に対して、知的な構
えで接近していくことになる。客観的に、論理的に接近していくことになる。これに属する発
問には、次のようなものがある。
 (1) 「ふつうは斜めの坑道を掘るが、縱の坑道を掘るようになったわけは何か。」
 (2) 「乳牛はどういう役目をしていますか。」


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 (3) 「写真の説明の文章を読んで、どんなことを説明しているか、ノートに書いてごらん
   なさい。」
 (4) 「ここを読んで、どんなことがわかったか、わかったことを言ってごらんなさい。」
 (5) 「ここを読んで、ハワイはどんな所だということがわかったか。)
 (6) 「何のたねをまきますか。」「いつごろまきますか。」「どこへまきますか。」「ま
   いたたねはどうなりますか。」
 (十) 技能のための発問
 発問の中には、学習活動の中に技能を含めている。つまり、知識や情報を求める、心情を豊
かにするなどの学習活動をすることによって、その活動を処理するのに必要な技能を身につけ
ることをねらっているものがある。また、ある技能をそのままむき出しにして、指導しようと
する場合の発問がある。ここでは、後者について述べる。この形の発問は、主として技能の練
習、あるいは、学習活動を離れて、直接技能養成(技能の系統的段階的養成)をねらって発せ
られるものである。したがって、ここでは、直接技能そのものが問われる。
 (1) 「この段落の要点は何ですか。」
 (2) 「段落はいくつに分かれますか。」
 (3) 「つなぎことばを見ていくと、もう一つだいじなことばがあります。さがしてごらん
   なさい。」
 (4) 「あらすじをつかむにはどうしたらいいでしょうか。」
 (5) 「この『それ』というのは何をさしていますか。」


                                           56
 (十一) 復習のための発問
 学習の始めに当たって、その前に学習した事項について復習してから、新しく学習にはいる
場合がある。その中で、すでに学習した事項を、思い出させる。整理し組織だてる。あいまい
だった事項を明確にする。そして、新たな事項を学習しやすくする。また、すでに学習した亊
項を話させたり、書かせたりして、測定・評価し、その実態をじゅうぶんにつかんで、それに
応じて新しい事項の学習にはいる。そのような学習の過程で発する問がある。つまり、知識理
解の整理・組織・確認、学習したことと学習しないこととの区別の明確化、知識・理解の実態
の評価、認識などのための発問である。そこで、ここでは、学習事項について思い出す。知っ
ていること、わかっていることを話す、書く。知っていることと、知らないこととの区別を明
らかにすることなどが問われる。この発問には次のようなものがある。
 (1) 「きのうの国語の時間にはどんなことを勉強しましたか。」
 (2) 「この前の時間に話し合ったおもなことはどんなことですか。」
 (3) 「前に習った残雪のあらすじを話してごらんなさい。」
 (4) 「きょうはどんなことを勉強することになっていましたか。」
 (5) 「この前の国語の時間に読んだ『みぶり遊び』ではどんなことがわかりましたか。」
 (6) 「田うえで勉強したことを、プリントを渡しますから、その表の中に書きこんでくだ
   さい。」


                                           57

       六 発問の全体構造

 学習の過程で発せられる個々の問について、それぞれその機能・構造を明らかにすること
は、どんな場合にどんな発問をしたらよいか、また、発問の結果に対する(発問に対する児
童・生徒の反応)予想を立てたり、評価したりする場合に役だつ。それは発問の本質を明らか
にすることになるからである。
 ところで、実際の学習指導の場においては、個々の発問ももちろん大事であるが、ある学習
内容についての発問全体のまとまり、組織、あるいは、一時間の問に発せられる問全体の組
織・構造を適切にすることはさらにだいじなことである。
 (一) 発問の構造
 発問の構造・機能については、これまでに随所で述べてきたが、ここで一応まとめて考察し
てみることにする。
1 機能的にみた発問の構造
 発問はどのようなものであってもすべて、学習者にある課題を与えるが、その課題の内容に
よってその性格やねらいが異なってくる。しかも、どのような発問であっても、与えた課題に
対し、つねに学習者が、その課題を解決するための言語活動、精神活動を営んで、それに答え
ることを予期し、期待して発せられる。
 その課題の内容、期待するものの内容は、(ァ) 知識・理解・思想・感情等いわゆる内容の


                                           58
価値であったり、(ィ)言語知識・言語技能・言語態度等いわゆる言語能力であったり、(ゥ) 
内容価値と言語能力の両方であったりする。
 また、課題の内容を学習者の活動の性質からみれば、原則として、(ァ) 聞く話す読む書く
などの言語活動であったり、(ィ) 考える・想像する・感じるなどの精神活動であったりす
る。
 これらの点からの発問の構造を考えてみると次のようになる。
 1 内容の追求を中心とした発問(一)



 この型の発問では、まず価値的な課題(内容価値を求める)が与えられる。
 たとえば、次のような発問がある。


                                           59
 (1) 「とき子さんはどんな身ぶり遊びをしたか、読んでみましょう。」
 (2) 「信号機がどこでどんなことをしているか読んで調べましょう。」
 (3) 「いま話されたことはそれでいいかどうか、本を読んで確かめてみましょう。」
 この(1)・(2)・(3)の発問では、「どんな身ぶり遊びをしたか。」「信号機がどこでどんな
ことをしているか。」「話されたことがらの適否を確かめる。」という課題が与えられている。
つまり、それは「ある事象を知る、理解する」「話題・題材の内容を知る、理解する」ことを
条件とした課題である。すなわち価値の追求をめざした課題・(価値的な課題)である。
 さらにこの発問は、その課題を解決するための方法をも規定している。課題を解決するため
に「読んでみましょう」「読んで調べましょう」「本を読んで確かめてみましょう」というの
がそれである。これは、課題が示す価値(内容価値)を追求するための方法としての言語活動
である。
 この発問によって、児童に、何のために、どうするかが明確に示される。そこで、児童は、
その課題を解決するために、価値を追求するために、文章を読む。そして、「こんな身ぶり遊
びをした。」「信号機はここでこんなことをした。」「その事実は文章に書いてあることと同
じである。」ことを知る、理解する。それによって、課題は解決され、価値は獲得され、形成
される。
 学習の過程においては、この発問のあとに、文章を読んで知ったこと、理解したことを、話
す・書くなどの発表が行なわれ、話し合いや評価がそれに続くのが普通である。
 2 内容の追求を中心とした発問(二)
 すでに、聞く・話す・読む・書くなどの学習活動をした結果を確かめたり、整理したり、深


                                           60
めたり、発展させたり、あるいは評価したりするための発問がある。つまり、学習の結果につ
いての発問である。また、それとは反対に、学習前に、すでに持っている知識・経験・思想・
心情等についてその実態を明らかにするための発問もある。それらの発問は、主として、文章
・談話の内容や過去の経験・知識等について行なわれるのが普通である。
 この場合の発問の構造は次のようになる。

 この型の発問には次のようなものがある。
 (1) 「オランダと聞いてどんなことを思い出しますか。」


                                           61
 (2) 「陽明門はなぜ日ぐらしの門というのですか。」
 (3) 「では考えてみましょう。主人公はどんな人ですか。」
 (4) 「大造じいさんは最初どうしようと思いましたか。」
 (5) 「世界の人が目を見はったのはなぜか。」
 (6) 「この前の国語の時間に話し合ったおもなことはどんなことですか。」
 これらの発問と、「内容追求を中心とした発開(一)と違うところは、課題解決の方法であ
る。(一)では、課題に答えるために、聞く・話す・読む・書くなどの言語活動をする、言語活
動を通して課題に答えることが必要であった。ところが、(二)では、課題に答えるために、思
い出す・考える・想像する・感じるなどの精神活動をする。直接生産的思考・生産的想像・感
情移入等が行なわれる。いわゆる内語、内言する。その結果が話されたり、書かれたりし、発
表される。読んでから答える。聞いてから答えるというものではない。
 3 技能の養成を中心とした発問
 この発問では、まず、技能的な課題が与えられる。児童は、技能的課題を解決するために、
技能を直接の目的として言語活動をする。たとえば、研究発表に対して、話の組立てはどうか、
順序正しく話せるか、図表などがじょうずに使って話せるか、声の大きさはどうか、話の速さ
はどうかなどに気をつけて聞きましょうなどという課題が与えられる。児童は評価表を手許に
置き、それらの技能を頭において聞いている。発表が終わると、今の発表はどうでしたか、話
の組立は、話の順序は、話の速さは、声の大きさはなどと問われる。児童はこれに答える。
 これが技能中心の発問である。この型の発問には次のようなものがある。


                                           62

 (1) 「『そして』はどんなやくめをしていますか。」
 (2) 「『であるから』はどんなとき使いますか。」
 (3) 「段落はいくつに分かれていますか。」
 (4) 「この段落の中心文はどれですか。」
 (5) 「この段落の要点を言ってごらんなさい。」
 (6) 「順序よく話せましたか。」


                                           63
 (7) 「話の速さや声の大きさはよかったですか。」
 この種の発問では、学習の関心が言語技能に集中する。したがって、技能養成、技能練習の
ために適した発問であって、知識や情報を求めたり、思想や心情を豊かにしたり、思考力を伸
ばしたりするための学習においては適切ではない。児童の関心、志向が言語技能に向かって、
話題や題材の内実に向かわないからである。また、思考はつねに価値的、内容的課題に対して
働き、それを中心にして思考を進め、そこに新しい思考を生み出す。つまり、思考は課題性・
即物性・一貫性・生産性を持っているものであるから、言語技能を学習の直接対象としたので
は、一貫した思考が働かないからである。また、話を聞く場合でも読解の場合でも、このよう
な発問による学習では、ほんとうの、話を聞く態度、文章を読む態度は養成されない。
 4 内容的価値・言語技能の養成を中心とした発問。
 この発問では、内容的(価値的)技能的課題が与えられる。つまり内容的価値を追求する過
程で、それに必要な言語能力を養成する。内容的価値を追求する中に、指導すべき技能・態度
を含めた発問である。その構造を次に示す。
 この発問は言語内容(内容的価値)と言語能刀とを切り離さず一元的に、機能的に身につけ
ることをねらっている。文章や談話の内容的価値(知識・情報・思想・心情等)を身につける
とともに、それに必要な言語能力を身につけるための発問である。たとえば、
 (1)「進水式がどんな順序に行なわれたか、書き出してみましょう。」(進水式の行なわれた
  順序、様子を読みとって理解することによって、進水式の順序を基準にしてその要点を読
  み取る力をつける。)


                                           64

 (2)「この手紙でおとうさんが主として知らせようとしたことはどんなことか。」(手紙の内
  容を読みとる中で、その要件を読みとる力を養う。)
 (3)「春雄は、どんなことを例にあげて、どんな意見を述べたか。」(事実と意見とを聞きと
  ったり、読みとったりして理解するとともに、事実と意見とを聞き分け、読み分ける力を
  養う。)
 (4)「家に飼われている動物にはどんなものがいるか、まとめて言ってごらんなさい。」(段
  落の中に書かれている事実を読みとって、段落をまとめて読む力を養う。)
 このように、文章中読話の内容を読み取ったり、聞き取ったりして理解するとともに、それ


                                           65
に必要な能力が養われるような言語活動を課するくふうをする。つまり、指導しようとする能
力が含まれるような価値追求のための言語活動をさせるようにすればよいのである。
 従来の発問においては、このようなくふう、考慮が払われなかったから、内容の理解と言語
能力とが一体的に学習されなかったのである。内容は理解されても技能が身につかず、技能を
身につけようとすると内容の理解がともなわなかったのである。
2 内容的にみた発問の構造
 発問の中に、その内容がどのように含めてあるか、課題の中にどんな内容が含まれている
か、言い換えれば、どんな観点に立って価値を追求するか、発問の内容の構造について考えて
みる。
 1 一発問一事項
 発問の内容が一事項の場合。いわゆる一問一答式の発問というのはこれに属する。たとえば
 (1) 「なえはどこに植えますか。」(たんぼです。)
 (2) 「たんぼに植えたなえはどうなりますか。」(すくすくと育ちます。)
 (3) 「さるはどうしましたか。」「それからどうしましたか。」
 (4) 「お日さまと風はどんな競争をしましたか。」
 (5) 「ぶらんこはどんなふうにゆれましたか。」(大きくゆれました。)
 このような発問は、いろいろな事項を関係的にとらえることが困難だったり、いくつかの事
項をまとめたり、いくつかの事項の問にある共通性・法則性などを理解したりすることが困難
だったりする低学年向きの発問である。


                                           66
 2 一発問多事項
 発問の内容・課題の内容が多事項の場合。いわゆる一問多答などといわれる発問がこれに属
する。一つの発問に対して、いくつかの事項に答える。課題解決のための言語活動の観点が複
数の場合である。これには次のような二種類がある。
 (1) (ア) 「いつ・どこで・だれが・どうしましたか。」
   (イ) 「いねの種は、いつごろ、どこへまきますか。」
   (ウ) 「だれとだれがどんなことをしましたか。」
   (エ) 「手紙を書くときには、どんなこととどんなことに気をつけますか。」
   (オ) 「それはどんな船か、何をする船か。」
   (カ) 「日本海号はどこを通ってどこに着いたか読んでみましょう。」
 答える事項・考える事項が、発問の中にはっきり示されている。したがって、答える事項を
自分で考え出し、それを整理し、組織だてる必要はない。そのための思考を働かせなくてもよ
い。したがって答えやすい。課題の内容が分析的に示された発問でもあるし、また個々の事項
を総合させる発問ともなるものである。
 (2)(ア) 「おじいさんの気持ちはどう変わりましたか。」
   (イ) 「宮沢賢治はどんな考えを持っていたか。」
   (ウ) 「いま読んだところにはどんなことが書いてありましたか。」
   (エ) 「動物園の白くまは暑い時はどうしますか。」
   (オ) 「兄弟の愛情がよく現われているところはどこですか。」


                                           67
 答える事項、考える事項が(課題の内容)が要素的に分析されて示されず、それらを包括する
概念で課題される。前の例で言えば、場面場面に応じたそれぞれの気持ちを{気持ちの変化」、
目常生活上のできごとに対するそれぞれの考えをまとめて「どんな考え」、書かれているいく
つかの事項をまとめて「どんなこと」、区分されたいくつかの行為をまとめて「どうする」、随
所に現われているものをまとめて「愛情の現われているところ」というように、包括的に、あ
るいは上位概念で、あるいは共通性法則性によってまとめて課題する。したがって、児童は、
課題に答える場合、その課題の内容を要素的に分析して聞きとり読みとって、それらを総合
し、統一し、秩序だてて答えなければならない。そこにこの発問のむずかしさがある。たとえ
ば、場面場面におけるおじいさんの気持ちをそれぞれ読みとって、それがこのように変わって
いったというように、それぞれの気持ちを変化するという観点で総合し、統一し、秩序づけて
答えなければならない。
 児童に答えられないのは、この種の発問に多い。また、注意しないと、児童は、何を問われ
ているのかわからない、問われている事項はわかっていても、具体的にはそれをどのようにと
らえていいのかわからない、ばくぜんとした発問になるおそれがある。
 要するに、発問の中に、その内容構造が明確に組織化されて示されているものと、内容の要
素を包括し、総合し、統一した、包括概念・上位概念で示されているものとがある。
 (二) 発問の全体構造
 一時間の学習の過程で発せられる問の数は多い。その多数の発問は、個々ばらばらのもので
はない。何らかの関係・系統・原則等にしたがって、組織化され、係系化されて、一つの全体


                                           68
構造をもっている。そして全体としてまとまって、一時間の学習にまとまりをつけ、学習内容
を学習者に秩序づけ、既有の体系の中に組み入れやすいようにしむけていく。
 ここでは、そのような「発問の組織化・体系化」の基礎理論を明らかにし、その実例をあげ
てみたいと思う。
1 学習内容の構造と発問の全体構造
 1 知識・情報の学習における発問の全体構造の理論
 知識や情報の学習においては、聞いたり、読んだりしてある知識や情報を身につける。その
知識や情報の内容は、それ自体体系を持っている。たとえば、三年生の教材として食虫植物に
ついて書いた文章がある。その文章の内容を見ると(ァ)もうせんごけの生態、(ィ)もうせんご
けのしくみ、(ゥ)もうせんごけの虫の食べ方、(ェ)同類の他の植物について書いてある。する
と、ここで、もうせんごけについて学習させようとする知識は、(ァ)生態、(ィ)構造、(ゥ)機
能、(ェ)同類を要素として成り立つ全体構造、体系をもっている。そこで、この文章の読解過
程で、
 (1) 「もうせんごけというのはどんな植物ですか。」
 (2) 「もうせんごけの虫をとって食べるしくみはどうなっていますか。」
 (3) 「もうせんごけはどのようにして虫を食べますか。」
 (4) 「もうせんごけと同じなかまの植物にはどんなものがありますか。」
 のように発問する。すると、(ァ)(ィ)(ゥ)(ェ)の四つの発問は、「もうせんごけの知識の体
系」に從って発せられたことになる。つまり、学習する知識の体系を基礎として発問を組織化
し体系化したことになる。


                                           69
 これは、三年生の場合であるから、発問を四つにし要点をおさえて読む力をつける学習をす
るようになっているが、この文章を五年生や六年生に読ませる場合だったら、その読解力の発
達に従って四つの発問を二つにし、あるいは一つにすべきである。たとえば、
 (1) 「もうせんごけはどんな植物で、どんなしくみになっていて、どのようにして虫を食べ
  ますか。」
 (2) 「もうせんごけと同類の植物にはどんなものがありますか。」
 のようにし、その中には、やはり、知識の体系を明確におさえた発問事項を含めておくとよ
い。もちろん、「もうせんごけというのは、どういう植物ですか。」という発問にし、児童が、
課題に対して、先にあげた四つの観点にたって読解し、答えるようにしてもよい。
 また、情報を読む場合でも同じである。たとえば、新聞記事は、見出し、要約・本文の構成
になっているが、


    お早ようおばさん     大田区の
                 丸山さん

   夏休みこども会12年
       お陰でみんな早起きに
 毎年、夏休みになると近所のよい子どもだものために「おはよう子ども会」を開い
て、楽しく遊ばせながら指導しているおばさんがいる。(以下本文省略)
 

                                           70
 この記事では、見出しで、(ァ)だれが、(ィ)何をして、(ゥ)どうなったということがわか
り、要約・本文でその詳細が報ぜられている。すると、この情報は、(ァ)だれが、(ィ)いつ、
(ゥ)どこで、(ェ)何を、(ォ)どのようにして、(ヵ)どうなったという体系をもっている。
 そこで、この記事を読解したあと、
 (1) 「どんな人のことですか。」
 (2) 「どんなことをしたのですか。」
 (3) 「その結果どうなりましたか。」
 (4) 「いつのことですか。」
 (5) 「どこにあったことですか。」
 (6) 「どんな目的でこのことをしたのですか。」
 (7) 「どのようにしたのですか。」
と発問する。すると、これらの発問は、「情報の内容と構造」に従って、その構造を要素要素
に分析して発問したことになる。つまり、「情報の内容の構造」の上に立って、「発問を組織し
た」ことになる。いわゆる情報の構成要素、五W一Hは、同時に個々の「発問の構成要素」と
なり、また、それらの発問を組織する場合の基礎理論ともなるものである。
 また、経験的情報を話したり聞いたりする場合でも同じである。その経験の内容を要素的に
分析し、それを順序だて、秩序づけて話す、聞く。たとえば、「私は動物園へ行った」という
経験的情報は、(ァ)いつ、(ィ)だれと、(ゥ)どこへ行って、(ェ)何を見て、(ォ)どうだったと
いうような内容の組織、構造をもって話される。そこで、聞いた結果について


                                           71
 (1) どこへ行った話ですか。
 (2) それはいつのことですか。
 (3) だれと行きましたか。
 (4) どんな動物を見ましたか。
 (5) 動物の様子はどんなでしたか。
 (6) 動物園を見てどう思いましたか。
などが発問される。これらの発問は、全体として組織、体系を持っている。相互に関係を持ち
ながら全体として、経験的情報が正確に、組織立てて学習できるように組み立てられている。
 2 知識・情報の学習における発問の構造の例
 ア 「たねまき」の読解――(二年)

教 きのう、このところ(「たねまき」)ですけれ
 ど、どんなことがわかった、なんのことかわ
 かったの。
  (児童三人指名したが答えられない。)
教 それでは何のたねをまくの。
児 いね。
教 いつまくの。
児 春。
教 どこへまくの。
児 なわしろです。
教 なわしろということばは、みんな使わない
 が、どんな所がよかったか。
児 日当たりがよくて、水の出し入れが便利なと
 ころ。
教 そういう所がいいのですね。そこへ種をまく
 と種が。
児 すくすくと育つ。

この五つの発問は、「たねまき」の文章の内容の構造に従って組織されている。この文章は


                                           72
たねまきについて、(ァ)何のたねを、(ィ)いつ、(ゥ)どこへまく、(ェ)それがどうなるの四
つの事項について知らせようとしている。そこで、発問もその四つの事項を抑えている。
 イ 「建築の美しさ」の読解(六年)

教「東照宮」の美しさをこの文章ではどのよう
 に言っているか。わかった人はノートに書いて
 ください。
教 東照宮の陽明門はどんな美しさですか。
児 日本古来の美しさとは違った、はなやかな美
 しさがあります。
教 どういうことがはなやかな美しさ、人工の美
 しさですか。
児 目立つ色を使った。柱にも模様がついてい
 る。
教 陽明門の美しさと目本古来の建築の美しさは
 どう違いますか。
児 日本古来の建築の美しさはあっさりしている
 が、陽明門ははでな、はなやかな美しさです。
教 簡素な建築を見たことがあるか。
児 円覚寺の舎利殿。
教 陽明門はなぜ日ぐらしの門と言われるか。
児 一日じゅう見ていてもあきないから。

 これは、「建築の美しさ」のうち、日光東照宮について書いてある部分の学習における発問
の体系である。陽明門については、(ァ)はなやかな美しさ、(ィ)人工の美しさ、(ゥ)古来の建
築美とは異なった美しさ、(ェ)日ぐらしの門というように、陽明門の美を、はなやかな美とし
て全体的にとらえ、それを分析して人工の美、古来の建築美とは異なった美としてとらえ、さ
らにそれらを総括して一日じゅう見てもあきない美――日ぐらしの門――としている。発問も
この知識の体系に従って、陽明門の美を全体的にとらえさせ、さらにそれを分析して、人工の
美を明らかにし、簡素の美と比較させ、それらを総合して、一日じゅう見ていてもあきない美
としてとらえさせている。つまり、「陽明門についての知識の体系」に従って、「陽明門につ


                                           73
いて知識を与える発問の体系」としている。しかも、それを、全体――分析――総合の思考過
程の上に組織している。
 3 主題・要旨・意図の構造と発問の全体構造の理論
 童話・説話・物語・小説・伝記・詩・脚本・論説・評論等の学習においては、その主題・要
旨・意見等を読み取ることが最も重要である。しかし、低学年では、主題を読み取ることは困
難である。そこで、童話や物語の筋のくり返し、展開の過程で、それぞれのことがらのおもし
ろさを中心にして順序に従って読んでいく。つまり、書かれていることがらを書かれている順
序にしたがって読みとっていく。意味が、あるいはことがらが線条的に展開されているから―
―多くの場合、単純な意味やことがらのくり返し――その意味の構造に従って線条的に読み進
むのが普通である。従って、発問も、一問一答式に、あるいは、それからどうなったか、どう
したか、次にはどうしたか、こんどはどうなったかというように、童話、物語の筋道、線条的
な意味の展開の上に組織される。いわば線条的な発問の構造を持つところに低学年の発問の構
造の特色がある。
 中学年になると、ある場面・ある心理の叙述など、いわば平面的・説明的に読み取ってはそ
れを関係づけ、関連づけて、筋の展開のおもしろさとして読み取っていく。個々のことがら自
体のおもしろさを読みとった低学年児童の読みに対して、事件の展開のおもしろさ、対立関係
・主従関係・綿々とした連統関係のおもしろさを中心として読んでいく。しかも、そのことが
ら、現象の意味するものが次第にわかってくる。主題なども、表現を頼りにして。次第に読み
取ることができるようになってくる。従って、発問もそのような意味構造を基礎として、組織


                                           74
化する必要がある。
 高学年児童は、主題的に作品に接近していく。児童の読みの興味は、主題にいかにして接近
するかということである。まず、全体的に主題を読みとり、それを深める、確実にする、明ら
かにするための分析的な読みがそれに続く。そして、それに同感共鳴、感想批判という形で反
応を示す。主題から主題へというのが高学年児童の読みの進め方である。発問もこの読解の過
程にそって組織する。主題が構想としてどのように展開しているか、その展開の型に従って組
織する。
 論説的な文章では、論理がどのように展開されているか。考えがどう発展・展開している
か、つまり、論旨がどのように組織されているか。その組織に従って発問も組織しなければな
らない。書き手とともに考えることができるように、筋道を正して読み手が考え得るように発
問を組み立てていく。
 要するに、書かれている意味の構造をどのように解釈し、どのようにとらえるかによって発
問の全体構造も変わってくる。つまり、意味を過程的構造体――反復的構造・連続的構造・平
面的構造・関係的構造――としてとらえれば、発問もその意味構造に即した全体構造をとる。
意味を層的構造体――叙述層・表現層・象徴層の三層、叙述・構想・主題の三次元――として
とらえれば、発問もまた、層別・次元別に組織され、さらにそれらを総合し、統制した全体構
造をとらなければならない。
 4 主題・要旨・意図等の学習における発問の全体構造の例
 ア 童話「もうくろ」の学習(二年)


                                           75

  第四時間めの取り扱い。――「てるお君の気
  持ちがどんなふうに変わったか」を調べる。
教 てるお君は何をしているか。
児 窓の外を見ている。
教 てるお君、次を読んでと言われて、てるお君
 はどうしたか。
児 まごまごしたの。
教 ほかの人は。
児 くすくす笑いました。
教 どうして。
児 まごまごしたから。
教 てるお君はどうしたか。
児 まちがわないように、できるだけゆっくり読
 みました。
教 みんなはどうしたか。
児 ひそひそ声で何か話した。
教 てるお君はどうしたか。
児 ぼんやりしていたので、まちがったのかと思
 つた。よけいゆっくり読んだ。
教 てるお君はどうしたの。
児 そっと先生の顔を見たの。
教 心配になったんだね。牛はどうしたの。
児 牛がないたので、みんながどっと笑い出し
 た。
教 牛はどこにいるの。
児 木の下。
教 それからどうした。
府 てるお君の牛だといったの。
教 てるお君はどうした。
児 まっかになった。
教 どうしてだろう。
児 はずかしくなった。
教 みんなはどう思う。
児 かわいい。てるお君はまごまごして、心配に
 なった。おとなしくついてくるのでおもしろい
 と思った。

 これらの発問は、事件の展開、それに応ずる心理の変化を関係的線条的にとらえ、その要所
要所をおさえて組織されている。つまり、表現されていることがら、場面の変化――心理の変
化を中心として、忠実にそれに即しながら、表現の順序に従って発問を組織している。


                                           76
イ 伝記物語「富士山頂」の学習(六年)
 第一時の取り扱い。野中到の人間を読み取る学習。

教 このお話の中心になっている野中到とはどん
 な人か考えながら一回読んでみましょう。(児
 童黙読する。)
教 野中到はどんな人か考えてみよう。
  (「どんな人」と板書)
児Oがんばりのきく人。
 Oたいへん研究熱心な人
 〇がんこな人。
 Oりっぱな人。
  (「がんばりづよい」「研究ねっしん」「がん
  こ」「りっぱな人」と板書)
教 がんばり強いというのは、本のどこに書いて
 ありますか。
児「四七ページ二行目、なにくそ、これぐらい
 の病気にまけるものか、春までがんばろう。」
教 もう一つは。
児「だれが迎えに来ようと下山するものでない。
 千代子とそのつもりでいる。」
教 ほかにありますか。
児 おれがする。動けるうちはおれがする。
  (以下省略)
教 野中到はどんな人か、それがどこに書いてあ
 るか調べましたね。
 この日の野中到の気持ちはどんなだったでしょ
 う。読んでみましょう。

 これらの発問は、すべて野中到の人間性の探求を目ざしている。野中到はどんな人か。それ
が、どこにどう書いてあるか。その中の到の気持ちはどんなであったか、という点について発
問は出されている。つまり、主題(人間性)がどのように展開されているか、どのように組織
されているか、主題の構造を基礎として発問は構成されている。
2 学習過程の構造と発問の全体構造
 学習過程は、課題解決のための学習活動を組織、編成したものである。したがって、学習活


                                           77
動の配列に応じて発問も組織される。だから、学習過程に応じた発問をくふうしなければなら
ない。
 1 思考過程と発問の全体構造
 話題や題材について、話したり聞いたり、読んだり書いたりする場合、言語活動は、つね
に、その話題、題材を中心にして、思考したり、認識したりすることによって行なわれる。そ
こには一つの筋道がある。一貫した課題解決のための道がある。思考はつねに課題によって活
動を始める。だから、思考の課題性に即した発問、つまり、課題を与える発問がまず最初に発
せられなければならない。しかも思考は、物に即して働く。だから、思考の即物性に応じた質
問、つまり思考が働くような、具体性をもった発問をくふうする。しかも、思考はばらばらに
働くものではない。つねに、一貫した話題なり題材なりに沿って働く。つまり、思考の一貫性
に即した発問、すなわち、どの発問も同一の話題・題材に(学習内容)ついて発せられる。こ
うした思考過程を基礎にして発問は組織される。
 たとえば、物語の読解において、中心人物の心理の動ぎ、変化を読み取る場合、(ァ)まず、
心理の変化を読みとる課題――主人公の愛犬カヤに対する気持ちはどのように変化しました
か。(ィ)主人公の心理がどこにどのように表現されているか。カヤに対する主人公の気持ちは
どこにどのように表わされていますか。(ゥ)主人公の心理はどのように変化したか。――主人
公のカヤに対する初めの気持ちはどうでしたが、それがどのように変わりましたか。(ェ)主人
公の心理は結局どこに落ち着いたか。――主人公は、現在カヤに対してどう思うようになった
のかなどが問われる。これは、「主人公の心理はどう変化したか。」という課題の解決を目ざ


                                           78
して、発問はつねに、「主人公の心理の変化」に即し、(即物性)終始一貫して(一貫性)思
考が進められ、最後に主人公の心理が確実に理解される(生産性)ように組織されている。
 また、読むことは書き手とともに思考することだと言われている。書き手が体制化した思考
を、読み手が自己の内に再体制化することであるとも言われている。したがって、論旨がどう
展開されているか。その展開のあとをたどって、その要所要所を押えた発問をする。つまり、
その論旨展開の構造過程――書き手の思考過程――に従って発問を組織する。たとえば、(1)
問題を提示する。(2)問題を説明して問題点を明らかにする。(3)第一の問題について意見を述
べる。(4)第二の問題について意見を述べる。(5)第三の問題について意見を述べる。(6)総括
して結論を述べるというようにして論旨を展開している。発問もこの構想に従って組織し展開
される。
 また、読むことの学習が、全体的な読み(意味の全体的把握)分析的な読み(意味の分析的
確認)総合的な読み(意味の総合的深化)という過程に従って行なわれる場合、発問もまた、
全体的な読みを促す発問、分析的な読みを指導する発問、総合的深化を図る発問が、全体とし
て組織されなければならない。
 また、読むことは、事実認識から理性的認識への発展過程であるという考えがある。叙述を
通して、書かれている事実を認識する。さらに、その事実に含まれる、あるいは統制してい
る法則性、原則性あるいは意味を認識する。そこでは、事実を正確に認識させる発問、その事
実から、その意味・法則性を発見し、認識させる発問が組繊されなければならない。
 また、読むことは、題材に内在する価値を獲得・生産することであると考える立場では、価
値の全体的認識、価値の分析的認識・価値の総合的認識の発展的過程に即して発問が組織され


                                           79
なければならない。
 2 学習指導過程と発問の全体構造
 学習指導過程は、戦後、導入・展開・終末という過程が取られて一般化した。戦前は主とし
て、通読・精読・味読という指導過程が取られた。そして、発問もまた、それらの指導過程に
従って組織しなければならない。導入のための発問(生活経験・知識・既習事項・思想・心情
等が扱われる)展開のための発問(学習課題・学習事項等が扱われる)終末のための発問(学
習事項のまとめ。発展・展開・感想・練習等が扱われる)等が、全体として組織される。
 また、指導過程編成の原則を、話題・題材の価値追求・価値生産に置くものもある。すなわ
ち、機能的国語教育の立場では、聞く・話す・読む・書くという言語行為を、話題・題材に内
在する価値の生産行為とみる。そこで、学習指導過程も価値の生産過程を基礎として編成す
る。
 そこで、一般的学習指導過程を(1)目的、(2)追求、(3)獲得、(4)適用の四過程として編成
する。さらに詳しく考えれば、(1)価値的な目的を持つ、(2)価値的な目的を追求する、(3)価
値を獲得し目的を達成する、(4)適用するとなる。
 そこで、発問も、(1)価値的な目的を持たせるための発問、(2)価値的な目的を追求するため
の発問、(3)価値を獲得し目的を達成するための発問、(4)適用・練習のための発問が全体とし
て組織される。具体的な例については、「発問の実践的研究」の項を参照されたい。


                                           80
       七 発問の形式

 これまで発問の機能、構造等について述べたが、ここでは、発問はどんな形式をもっている
か、分類整理してみる。
 発問が学習者にどんな課題を与えるか、どんな思考活動――精神活動を促すか、あるいは、
どんな答を求めるか、反応を期待するかという立場から発問の形式をみる。
 (一) 発問の機能からみた形式
1 思考・心情・感覚等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。

(1) 「何を言おうとしているか。何を考え
 させようとしているか。」(主題・意図)
(2)「どう思うか。どう思われるか。」(感
 想)
(3) 「どう考えるか。どう考えられるか。
 どう考えたらよいか。」(意見)
(4)「どう感じるか。どんな感じがするか。」
 (心情・感覚)
(5)「どんな気持ちか。」(心情)
(6)「どう感心したか。」(感動)

これらの型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「何について言おうとしているのでし
 ょうか。」
(2) 「作品を読んでどんな感じがしたか。」
(3)「この文章はいいなあと感激して心に残
 るところはありませんか。」
(4)「どんな気持ちが伝わってきたか。」

  81
(5) 「この先生は何か言いたいのですか。」     (6) 「感想を話してごらんなさい。」 

2 知識・理解等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。

(1) 「何を知らせようとしているか。」「何
 をわからせようとしているか。」(意図・
 要旨)
(2) 「どんなことがわかったか。」(理解)
(3) 「どんなことが書いてあるか。」(知識)
(4) 「何か。」(知識)
(5) 「何をしたか。」(行為)
(6) 「何を学習したか。」(知識)
(7) 「どんなことをしたか。」(経験)

この型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「どんなことを説明している文章か。」
(2) 「一日のうちで、一ばん知らせたいこ
 とはどんなことか。」
(3) 「作者は、読む人にどういうことを知
 らせようとしているか。」
(4)「読んでどんなことがわかりました
 か。」
(5) 「どんなことが書いてあったか。」
(6) 「朝はどんな生活をしたか。午後はどん
 な生活をしたか。」
(7)「切羽というのは何をするところか。」
(8)「君たちの大敵とは何か。」

3 心理・場面・情景・行為等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。

(1) 「どんな情景か。どんな様子か。」(場面)
(2) 「どうするか。どうしたか。」(行為)
(3) 「どう心が動いたか。」(心理)
(4) 「どんな状態か。どんな人か。」(性格)

                                           82

 この型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「朝起きた時の様子はどうだったか。」
(2) 「地引きあみの様子はどうだったか。」
(3) 「その時の様子を言ってごらんなさ
  い。」
(4) 「どんな情景が頭の中に浮かんできた
 か。」
(5) 「残雪がやってきたが、どういうふうに
 やってきましたか。」

4 判断・批判・選択等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。

(1) 「いいか、悪いか。」(二者択一・判断)
(2) 「賛成か、反対か。」(二者択一・判断)
(3) 「亊実はどれで、意見はどれか。」(判断)
(4) 「どんなところが足りないか。」(批判)
(5) 「誤っているところはどうか。」(批判)
(6) 「どれか、どちらか。」(判断)
(7) 「どう違うか。」(比較)

 この型に属する発問には、次のようなものがある。

(1) 「理由を先に言ってから結論をいうの
 と、結論を言ってから理由を話すのとど
 っちかいいか。」
(2) 「どっちかよくわかるか。」
(3) 「成功したか、失敗したか。」
(4)「日本古来の芸術の美と日光東照宮の陽
 明門の美とはどう違うか。」
(5)「事実が書いてあるのはどこか、意見が
 書いてあるのはどこか。」

5 分析・総合等(要点・要約)に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。


                                           83

(1) 「まとめるとどうなるか。」(総合)
(2) 「どう分けてあるか。いくつに分けら
 れるか。」(分析)
(3) 「どんなこととどんなことが書いてある
  か。」(分析)

この型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「この手紙は、だれがだれに書いた手
  紙か。」
(2) 「らくがきは、いつ・だれが・どこへ
  書いたのか。」
(3) 「残雪は結局どういう動物だというこ
  とになったか。」
(4) 「どのようにしてまとめましたか。」
(5) 「段落はいくつに分かれていますか。」
(6) 「要点をまとめるとどういうことになり
  ますか。」
(7) 「もっと短くまとめるとどういうことに
  なりますか。」
(8) 「朝から晩までのことが時間によってま
  とまっていますが、一日がどう分けられま
  すか。」

6 連続・変化・関係・比較等に関する発問の型
 この型には、次のようなものがある。

(1) 「どう変わったか。」(変化)
(2) 「それからどうしたか。」(筋)
(3) 「ほかにあるか。もうないか。」(類似)
(4) 「どんな関係があるか。」(関係)

  この型に属する発問には次のようなものがある

(1) 「その気持ちはどう変わりましたか。」
(2) 「大造じいさんの気持ちがどう変わっ
  たか調べてみよう。」
(3) 「ほかに何と書いてあるか。」

84
(4) 「それからどうしましたか。」
(5) 「もう一つ大事なことがあります。」 
  (6) 「その次は。もうないか。」 

7 理由・原因・結果等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。 

(1) 「なぜか。」(原因・理由)   (2) 「どうなったか。」(結果)

この型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「世界の人が目を見はっだのはなぜか。」
(2) 「赤い旗の所までなぜ行ったか。」
(3) 「その結果成功したか。」
(4) 「普通は斜めの坑道を掘るが、たての
  坑道を掘るようになったわけは何か。」  
(5) 「賢治の気持ち、精神がわかったが、賢
  治はなぜこんな考えをもったか。」
(6) 「隊長が自分でいかなかったのはなぜ
  か。」

8 役目・機能等に関する発問の型
 この型には次のようなものがある。

(1) 「どんな役目をしているか。」(役目)
(2) 「どんなはたらきをしているか。」(機能)  
(3) 「どんな意味をもっているか。」(機能)

この型に属する発問には次のようなものがある。

(1) 「『そして』はどんな役めをしています
  か。」
(2) 「ことばのところで、『であるから』は  
  どんなとき使いますか。」
(3) 「乳牛はどういう役に立ちますか。」
(4) 「風車の役めはなんですか。」 

85
(5) 「『早めに切り上げる』というのはどう      いう意味ですか。」

 (二) 発問の内容からみた形式
 発問の内容――発問による課題の内容、それは児童の答えの内容であると考えてもよい。ま
た、児童が発問によって行なう活動、作業と考えてもいい。――によって、その形式を分類し
てみると次の四つの型に分げることができる。
1 単一型
 これは俗にいう一問一答式の発問の型であって、一つの発問に対して、単一の事項について
答えればいい発問である。一問一事項である。たとえば
 (1) 「もう一つだいじなことばがあります。それはどれですか。」(「それからです。」
 (2) 「『ですから』を省いて読んでごらんなさい。うまく続きますか。」(続きません)
 (3) 「ナイフで何をしましたか。」(鉛筆をけずっていました。)
 (4) 「そこへ出てきた動物は何という動物ですか。」(しろくまです。)
 (5) 「その違いは何のちがいですか。」(重さの違いです。)
2 多項型
 これは一つの発問の中にいくつかの項目を含んでいるもの。発問に対してこのことと、この
ことというように、いくつかの事項について答えなければならないもの。つまり、発問の内容
がいくつかの項目にわたっている発問の型である。たとえば、
 (1)「日本海号は、どこを通って、どこへ着いたか。」(七月六日新潟港を出発して、能登半
  島沖・富山沖・佐波沖を通って、八月三日あじか沢に着きました。)


                                           86
 (2) 「いねの種は、いつ、どこへまきますか。」(春先に、苗代へまきます。)
 (3) 「らくがきは、だれが、いつ、どんなことを書いたか。」
などのように、発問の中に含まれている課題――内容項目が複数になっているものである。
3 総合型
 この型は、発問による課題――発問の内容が総合された形で含まれているものである。課題
がいくつかの項目を総合(あるいは高次の概念)した形で示されるから、答えは、その課題の
内容をいくつかの項目に分析したり、それを整理したりして答えなければならない。あるい
は、分析的に、要素的に聞きとり、読みとっているものを、総合したり、整理したり、秩序だ
てたりして答えなければならない。そのような発問の形式が、総合型である。たとえば次のよ
うなものかおる。
 (1)「野中到はどんな人ですか。」(研究に熱心な人、がまん強い人、妻をだいじにする人で
  す。)
 (2)「宮沢賢治は、農民のためにどんなことをした人ですか。」(肥料についての知識を広め
  た。農民のための芸術を作った。協同組合のような組織を作った。)
 (3)「緊張している場面がどのように書き表わされていますか。」(頭を低くかまえ……静ま
  りかえっている。こわさにたちすくんだ。…………。)
 (3)「この文章では、何をさして芸術と言っているか。」(絵・彫刻・建築などの美術、音楽、
  小説などの文学をさしています。)
 (1)は「どんな人」で、その人の心情・性格などを総合して示している。したがって、その課


                                           87
題に答えるためには、「どんな人」を、態度・性格・心情などに分析して、それぞれについて
答えなければならない。あるいは、すでに読みとったそれらの事項を「どんな人」という観点
で総合して答えなければならない。
 (2)は「どんなこと」という語で、いろいろ農民のためにしたことを総合して示している。こ
の場合にも、どんなことに当たる個々の事項をはっきり押え、分析しあるいは整理して答えな
ければならない。
 (3)は「緊張している場面」で、その場の諸要素を総合して示している。したがって、緊張し
ている場面を構成している諸要素を表現の上で押えて答えなければならない。
 (4)は「芸術」という上位概念(抽象度の高い語)で、その下位概念を総合して示している。
したがって、芸術の下位概念(抽象度の低い語)に分析して、答えなければならない。
4 複合型
 この型は、一つの発問によって行なわれる言語活動が複合している場合の形式である。一つ
の発問の中に、聞く・話す・読む・書くという言語活動のいくつかが含まれていて、有機的
に、総合的に組織されている型である。たとえば、次のようなものがある。
 (1) 「校内放送のお知らせをよく聞いていて、復唱してごらんなさい。」
 (2) 「先生のお話をメモしてから、それを見ながら話してください。」
 (3) 「発表のあらすじを書いてから、それを見ながら発表してください。」
 (4) 「この文章を段落に分けて、要点を読みとってから、それをノートに個条書きにしてく
   ださい。」


                                           88
 (5) 「読んだ感想をノートに書いてください。」
 (6) 「読んで意味のわからないことばがあったらしるしをつけておいて、読み終わったら聞
  いてください。」
 これらの発問は、いずれも単一の言語活動ではなく、二つ以上の言語活動が、有機的・総合
的に複合した形で行なわれる型である。
 (三) 発問の表現からみた形式
 発問は、その言い方、表現のしかたによってまたいくつかの型に分けることができる。
1 標準型
 発問の内容が明確に示されている。簡潔でしかも理解しやすい。いろいろな意味にとれな
い。直接的に、そのものずばり聞いている。児童の能力に合っている。そのような発問をかり
に標準型と名づける。表現の形式は、だいたい、(1)どう思うか。(2)何がわかったか。(3)ど
こに書いてあるか。(4)どんな様子か.(5)どう変わったかというような形をとるのが普通であ
る。たとえば、
 (1)「読んでわかったことを言ってごらんなさい。」
 (2)「航海の途中どんな苦しみがありましたか。」
 (3)「イタリヤはその時どんな時代でしたか。」
 (4)「遠足のことをどんな順序で書くか話してごらんなさい。」
 (5)「農民と相談したことと詩との関係はどうなっていますか。」
 (6)「とき子さんはどんなことをしましたか。」


                                           89
 などがある。
2 説明型
 これは、説明、解説付きの発問である。発問につく解説や説明は、課題の内容について行な
われたり、課題に答える方法について行なわれたり、あるいは、課題に対する注意事項であっ
たりする。
 また、その説明解説が初めにきて、発問事項があとにつく場合と、発問事項が先にあって、
その説明・解説があとにくる場合とがある。
 たとえば、説明・解説が先につく場合
 (1)「文章には、書きたいなあと思うことがたくさん書いてある所がある。そういうところ
  を文章の何といいますか。」
 (2)「正しく勉強するには、どんな計画を立てたらよいか、どのように学習したらよいかを
  考えることがたいせつですが、この文章はどのように読んだらいいでしょうか。」
 (3)「信号機が、どこでどんなことをやっているのか、それを、読んで調べましょう。」
 次には、解説・説明があとにつく場合の例
 (1)「この中心点のぼやけた文章はどのように直したらよいか、秋を中心に書いたのだから、
  秋について特に何を書いたらよいかを考えてみるとよい。」
 (2)「この文章に出てくる人物の性格を話してください。たとえば、入道雲はどんな性質
  か、雨つぶはどんな性質かというように分けて話してください。」
 (3)「もし文字がなかったら、どんなことに困りますか、手紙が書けないという人が二、三


                                           90
  人いましたが、このほかに気のついたことはありませんか。」
 (4)「見せてやりたいという気持ちの現われているところはありませんか。こういうわけだ
  からたぶん見せなかったんだなって説明しているところ。」
3 だらだら型
 説明型の発問は、初めか後かに筒潔な発問があって、それについて説明・解説したものであ
るが、この型の発問は、発問それ自体がだらだらと説明されたり解説されたりしたものであ
る。このような型の発問では――何を聞こうとしているのか――が理解しにくい。内容が不明
確になりやすい。したがって、児童に答えられない発問はこの種のものに多い。たとえば、次
のようなものがある。
 (1)「いままで勉強したことをまとめてみると、物語のしくみを調べたり、登場人物はどん
  な性格を持っていたか、行動をしたかだったが、きょうは、この物語の主題は何か、作
  者はどういう考えでこの文章を書いたか、主題についてどう考えるかを発表してくださ
  い。」(六年)
 (2)「この組も五十人、お隣りの組も五十人、合わせて百人、この学校の生徒がみんな集ま
  ると千人ぐらい、千人もたくさん乗せるお船、大きい船、それほどたくさん乗せてくれる
  お船ということがわかりますか。」(二年)
 このような発問は、多くの場合、児童のほうでは、先生が何か説明をしている、お話をして
いるというようなつもりで聞いていると、最後になって、「わかった人」「知っている人」「ど
んなですか」「どう思いますか」などと質問に変わってしまう。したがって、発問――課題――


                                           91
への構えがなかなかできにくい。また、発間者の意図が明確につかみにくい。このような発問
は案外に多いものである。
4 あいまい型
 この型は、発問の意味――課題がきわめてわかりにくい。計画的でない、思いつきや、その
時勝負の発問にこの傾向が強い。また、教材研究が不足していたり、学習指導事項が具体的に
しっかり押えられていなかったりする場合が多い。たとえば次のようなものがある。
 (1)「こんどは二段めはどんなことが書いてあるか読んで、どんなお話だろうなあと考えな
  がら読んで、何のことでまとまっているのだろう。そこを読んでしまった人は、ノートに
  それを書いてください。」(四年)
 (2)「田んぼで田植えが終わりました。終わった田んぼどうですか、稲は植えたままで育っ
  ていくのですか。」(二年)
 (3)「みんなを丈夫に育てるのに、おかあさんはどんなことをする、おかあさんはいっしょ
  うけんめい育ててくれたのだけれど、どんなことをした。」(二年)
 このあいまい型の中には、指導者の思考・認識があいまいなために、何を言おうとしている
のかが――どんな内容の発問をするのか――はっきりしない、つまり、話そのものが首尾一貫
しなかったり、だらだら続いたりしてあいまいになるものがある。まだ、あれもこれも、たく
さんのことを整理しないままに含めて発問するところからくるものもある。
5 継ぎ穂型
 この型は、上の句と下の句を相唱和する連歌のように、指導者の発問のことばに、児童のこ


                                           92
とばをつけると解答になるような発問である。最も幼い発問である。しかし、案外この発問は
広く用いられている。たとえば、
 (1) 教「外国へ行くには広い広い海を」児「渡ります。」
 (2) 教「苗代の苗が大きくなるとたんぼへ」児「植えます。」
 (3) 教「車はどうですか。」児「とまりました。」
 (4) 教「人はどうですか。」児「とまりました。」
などがそれである。教師が「外国へ行くには広い広い海を」と言って、ちょっと休んで聞いて
いるのだ。という気持ちを見せると、児童が「渡ります。」と答える。
6 選択型
 この型は、二者択一型といっていい。二つの相反する事項、相対する事項あるいは単なる二
つの事項を出してその一つを選択させる型である。
 (1)「外国は遠いか、近いか。」(児――遠い)
 (2)「その時の信号機の色は赤か青か。」(児――赤)
 (3)「どこで虫をつかまえますか。葉ですか、毛ですか。」(児――毛です。)
 このような型の発問には、児童に考えさせる余地がない。また、二者択一だから、まぐれ当
たりの率も五〇パーセントになる。ひとりが答えてしまえば、誤っていても、他の一つが正統
に決まっているから、それで終わりである。この場合には、その一つを選んだ理由などを言わ
せるか、書かせるかしてみればよい。
7 接続型


                                           93
 これまでに述べた発問は、すべて具体的な内容をもっていた。課題を持っていた。児童の答
えの内容を規定していた。ところが、この型の発問は、全く内容を持っていない。ただ、形式
だけがある。答えを引き出すだけの働きしか持っていない。具体的な内容を、それ自体の中に
含んでいない。そういう発問である。答えようとする構えを作る。答えようとする気持ちを起
こさせる。まだほかに答えがあるという示唆を与える。答えることを促す。そのような働きを
する発問である。たとえば
 (1)「ほかになんと書いてありますか。」「ほかにはもうありませんか。」「ほかにはどうです
  か。」「ほかにありますか。」「そのほかに。」「ほかに。」「ほかの人は。」「もっとほかに。」
 (2)「それからどうしたの。」「それから。」「それだけ。」
 (3)「次は。」「その次は。」
 (4)「もうないか。」「もうない?。」
 (5)「まだある。」「もっとあるよ。」
などである。このほかに、応答に対して、その理由や原因などをたずねる。その結論を考え
させ促す。その続きを考えさせ話させる。そのような継ぎに使うことばもある。たとえば、児
童が答えると、それに対して、「なぜ」と問いかけて、その理由、法則などをさらに考えて答
えさせる。また、ある事項を児童が述べる。それを受けて、「だから」とことばをはさんで、
「どうした」「どうなのだ」「どうする」というように考えていく筋道を立ててやる。


                                           94
     第二章 発問と学習の研究



       一 発問と国語科の授業

 現在の国語教室では、そのほとんどが、発問応答、つまり問答法を中心にして学習が進めら
れている。読解指導をしている教室でも一時間(四五分)のうち一〇〜一五%ぐらいが、読む
のに費す時間で、あとの七、八〇%は教師中心の問答の時間にあてられているのが普通であ
る。作文の時間でさえ、書く前の指導と称して、一五分も二〇分も書こうとする内容について
問答をするという教室だって決して珍しくない。
 それほど、問答法は国語科の指導法として大きく取り上げられ、大事にされ、重要視されて
いる。
 しかし、このことはよく考えてみると、よく教室の授業の実態を観察してみると、決して喜
ばしいことではないことがわかる。それは、一つには国語科の指導法の貧困を物語っている。
問答法の上にあぐらをかいているといった批判をも受けかねないような実情に見える。また、
一つには、現在の国語授業は、どうも教授――知識教授といった傾向が強い。児童の学習を指
導するというよりは、教えこむ教授、教師中心の授業が多いからのようにも思われる。だか


                                           95
ら、児童の学習における主体性の確立などということよりも、教師に引きずられている教室が
多いことを物語っているとも思われる。
 すでに、現実の発問についで、歴史的にも、科学的にも考えたり、調べたりした。実態もい
ろいろな角度から分析もしてみた。実際の授業の中でできる限り広く、深く観察もした。そう
した結果、学習指導における発問の重要性というよりも学習の成否の鍵であるとも考えられる
ことを確認した。
 だからこそ、発問をおろそかにしてはならない。乱用してはならない。学習過程の適切な場
で、適切な問を発して、学習効果を確実にし、能率的にすることを心がけなければならない。
それが、児童・生徒の人間性の開発、知識の獲得等に大きな役割を果たしていることをじゅう
ぶんに知って、巧みに生かして使う努力を惜んではならない。
 そこで、まず学習指導の各過程に発問を適切に位置づけることがたいせつである。
 読解指導においても、(1)まず、みんなで考え合い、話し合って何について調べるかを決め
る。学習の課題を選んで決める。(2)課題を解決するためにめいめい読む。(3)読んでわかったこ
とを発表する。発表を中心にしてそれを確かめるために再び読んだり話し合ったりする。(4)話
し合った結果を、各自読みながらまとめる。というように、学習を進めていくことができれば、
教師の発問は、今よりずっと少なくなるであろう。教師はただ、児童たちが進んでする学習を
指導すればよいのである。助言を与えてやればよいのである。「その点をもう少し詳しく読ん
でごらん」「それは大事なことだから、もっと考えて意見を出し合ってみなさい」「その二つの
ことばの働きを比べて考えてごらん。そうすれば、気持ちの変化がもっとはっきりします」な


                                           96
ど、児童たちの気のつかないところ、考えの及ばないところを指摘したり、批評してやったり
するだけで、学習は広まり、深まり、発展していくであろう。
 私どもは、もっと学習指導法の科学化・合理化をはからなければならない。十年一日のよう
に、非科学的な考え方、非論理的な考え方に従った学習指導法の上にいすわっていてはならな
い。そうした科学的、論理的にくふうされた学習指導の中に、発問を明確に位置づけ、その効
果がじゅうぶんにあがるように心がけるべきである。
 今は、国語教室の実情に応じて、学習指導における発問の諸問題について、できるだけ実情
に即して考えていきたい。

       二 発問と児童の主体的学習

 発問を中心とした学習は、教師が主導権を握っている学習である。(1)教師の指導の計画に従
って学習が進められる。(2)課題は発問によって教師から与えられる。(3)課題解決の方法も教師
に指示される。(4)学習の結果の発表・確認も教師の発問によって行なわれ、確認され、評価さ
れる。
 ちょっと国語教室をのぞいてみよう。

 五年生の教室。「文字のいろいろ」の読解学習。
教 最初二、三分だけ、この前四時間にどんなこ
 とを勉強したか、ずっと目で読んでごらんなさ 
 い。
児 黙読する。(唇読一名)
教 やめて本を伏せなさい。簡単に復習しましょ

                                           97

 う。何と何を習いましたか。
児 象形文字。
教 象形文字というのは何ですか。
児 (1)形をそのまま字にしたもの。(2)物の形
 をかたどったもの。
教 みんなが使っている文字では、漢字とかな
 を習った。漢字のでき方は?
児 象形文字と字を二つ組み合わせて作ったも
 の、一つの字に。
教 もう一度本をあけて、漢字はどうしてでき
 たか読んでごらんなざい。はい、だれか。
児 (1)符号を用いた。(2)組み合わせた。(3)発
 音のしるしと意味の組み合わせ。
教 漢字はどこから伝わってきたか、何年前。
児 約千五、六百年前、中国から伝わってきた。
教 かなを見てください。かなはどうしてできま
 したか。
児 漢字の一部を省いて作ったものと、一部をと
 ったものと、そのままのもの。
教 漢字のような文字を表意文字、かなのような
 文字を表音文字といいます。
教 今まで習った文字のほかに文字らしいものを
 見たことはないか。
児 ローマ字
教 四年生からローマ字を習ったからみんなはよ
 く読めるが、先生はよく読めない。いちばん目
 にふれるのはどんなローマ字でしょう。
児 (1)額の絵の所に小さく書いてある。(2)絵を
 かいた人の名前。(3)駅。
教 中野駅と書ける人。

 こうして前の時間に学習した漢字、かなについて復習し、新しくローマ字の学習にはいって
いく。
 こうしてみると、児童は、つねに読まされ、話をさせられ、書かされている。児童みずから
の必要に立ち、欲求にもとずいてする言語活動――国語学習はどこにもない。すべて、教師の
指示・発問によって学習は進められている。児童の主体的学習などということは、ここではち
ょっと考えられない。


                                           98
 そこで、指導法のくふう改善を当然しなければならないが、その前に、これらの発問のうち
どの発問をどのように変えれば、児童の主体的学習に一歩接近できるかを考えてみよう。
 (1) 課題を与える発問のしかたをくふうするか、またはそれをさけるくふうをする。そのた
めには、課題を児童に設定させることを考える。教師と児童との話し合いで、または、児童た
ちの話し合いで(教師指導)課題を決める。
 (2) 評価のための発問を中心にする。
 このことをくふうするだけで、児童が、必要や欲求にもとずいて、つまり、目的を持った学
習活動をすることができるようになる。発問によって、児童の主体性を押えてしまってはなら
ないのである。こんな教室もある。

 四年生の教室。物語「少年の使者」の学習。小
黒板にこの時間に学習する問題が次のように書い
てある。児童と教師とで話し合って決めたもので
ある。
 1 なぜ三日間にらみ合っていたか。
 2 なぜ使を出すのに四日もかかったか。
 3 なぜ水をもっていなかったか。
 4 なぜ白旗を持っていったのか。
 5 一度も振り向かなかったのはなぜか。 
 6 隊長が自分で行かなかったのはなぜか。
教 きょうは、前の国語の時間に決めた間題を調
 べて発表し合いましょう。
児 黙読
教 調べられたら、いつものように、グループで
 話し合ってみましょう。
児 グループ内で話し合う。
教 なぜ三日間にらみ合っていましたか。

 このように、研究問題を自分たちで話し合って決める。教師が指導する。こうして、児童
は、学習活動の目標を明確に知る。課題を解決するために読む。話し合う。その結果をみんな


                                           99
に発表する。こうして、教師の発問は数少なくてすむ。しかし、大事な、適切な発問を準備し
ておかなければならない。発問は主として、学習結果の評価に、あるいは、もっと深める、も
っと明確にするなど重要な学習を進める上には、欠くことのできないものである。
 このように、計画的に、意図的に、いつどこでどんな発問をするか、――学習過程の中に適
切に位置づけ、適切な発問をくふうし、用意する。いわゆる発問計画をしっかりと立てること
によって、児童の主体的な学習をいっそう進めることができるのである。

       三 発問と教材研究

 国語科の内容として課する言語経験は、教材を介して行なわれるのが普通である。しかもそ
の場合に、児童は興味・関心にささえられ、必要に応じ、目的を持ち、課題をもって教材に接
近する。そして、教材のもつ内容的価値と自己の持つ価値体系との間にコミュニケーションを
成立させる。このコミュニケーションの成立過程が学習であり、そこで国語の能力が養成され
る。この、教材と児童との問にコミュニケーションを効果的に、能率的に、しかも正確にある
いは広く深いところで成立させようとするのが発問である。
 したがって、発問を効果的にし、適切にするためには、教材の本質、教材の機能――価値と
能力――と、児童の言語能力(学習能力)とをじゅうぶんに知っておく必要がある。
 (一) 教材の機能――価値の構造と発問
 言語活動との関連において考えてみれば読解教材・作文教材・聞くこと・話すことの教材な


                                           100
どいろいろな教材があるが、いずれの場合でも、まずその教材の本質、機能を明らかにする。
説明教材・記録教材・物語教材・詩教材・劇教材・伝記教材など、教材そのものの形態によっ
て分類した場合でも全く同じである。いずれの場合でも、第一にその教材が学習者に何を知ら
せようとしているか。何を訴えようとしているか、何を考えさせようとしているか、何を感じ
させようとしているか、つまり、その教材が学習者にどのような働きかけをするか、また、学
習者がどのような構えをもって教材に接近し、働きかけるかを明らかにする。それが、教材の
機能の研究である。従来ややもすると教材の形態にのみ心を向け、形態に応じた学習を考えよ
うとする傾向か強かった。そのために、その教材の生命・機能をじゅうぶんに認識し得ないま
まに、形式的な、技術的な学習にはしりやすかった。
 第二には、教材の持つ機能的な構造、つまりその機構を明らかにする。たとえば、作者が、
学習者に知らせ、与えようとする知識や情報の組立て・機構はどうなっているかを教材に即し
て明らかにする。さらに具体的に言えば、「雪国」という読解教材がある。この文章では、「雪
国についての知識」を読み手に与えようとしている。それが、この文章の機能である。その文
章の形態は何であってもよい。では、「雪国の知識]についてどのように書かれているか。「雪
国の知識」の構造はどうなっているかを調べてみる。
 (1) 雪国の風土
 (2) 雪国の生活
   ア 雪国の苦しい生活  イ 雪国の楽しい生活
 (3) 雪国の文化


                                           101
 (4) 雪国の人々の心情の特色
 のように、「雪国の知識」が組織されている。これが、この教材で学習させようとする知識の
構造である。
 この知識の構造が、発問の全体構造の基礎になることはすでに述べた通りである。このよう
な雪国についての知識を求めるために読む場合、次のような発問をすることによってその学習
を成立させる。これらの発問はそれぞれ相互に関連をもっており、全体として一つの組織・体
系をもっている。つまり、その発問に答えることによって、雪国の知識が身につくのである。
まず、文章を読ませて後こう発問する。
 (1) 「雪国の風土についてどんなことがわかったか。」
 (2) 「雪国の人々はどんな生活をしているか。」
 (3) 「雪国の文化にはどんなものがあるか。」
 (4) 「雪国の人々の心情の特色はどんなことか。」
 これら四つの発問によって、雪国について理解させることができる。つまり、これらの四つ
の発問は、相互に関連があって、一つの全体構造をもっているのである。
 しかし、この発問は、雪国についての知識だけを身につけるための発問であって、この文章
を読解させて、どんな国語の能力をつけるかを考えに入れていない。このことについては、次
の節で述べる。
 (二) 学習事項(知識・技能・態度)と発問
 教材研究に当たっては、教材の内容的価値、つまり、教材の内容としての知識・情報・心情・


                                           102
思想等がどのような構造をもっているかを明らかにするとともに、その教材を読むのに必要な
国語の能力をも併せて明らかにすることがたいせつである。その教材を読む活動を処理するの
に必要な国語能力――文字力・語い力・文法力・読解の技能・態度等――が、どこに、どのよ
うに働くかを明確にしておく必要がある。具体的に言えば、新しく学習する漢字・主要語句・
文法事項・要点を押えて読む技能・細部を読み取る技能等が、教材のどこに、どのように位置
づけられているかを明らかにする。
 つまり、教材を読むことによって、どのような能力が身につくかを明確にする。
 さて、学習に当たって、(一)の教材の内容的価値を身につけることばかり考えていたのでは
国語の能力が身につきにくい。また、国語の能力だけを学習したのでは、教材の内容的価値を
身につけることはむずかしい。そこで、教材の内容的価値の学習と、教材に含まれている知識
・技能・態度等の学習とを切り離さずに学習させる。具体的にいえば、教材の内容的価値を読
み取るなかで、必要な技能・態度の養成を図るようにする。
 このような考え方で、さきにあげた「雪国」の文章を読解する場合の発問を考えてみること
にする。「雪国」は四年の教材であって、この文章を読解することによって、「要点を押えて
読む技能。」「段落にまとめて読む技能。」等を身につけようとする。「雪国の生活」につい
て書いてある段落を例にとってみよう。
 (1)「雪国の生活について書いてあるところはどこか。」(何。ページ何行めから何ページ何
  行めまで)または、「雪国の生活について書いてある段落はどれか。」――段落を明らかに
  する。


                                           103
 (2) 「雪国の生活についてわかっただいじなことを個条書きにしてみよう。それから雪国
  のどんな生活について書いてあるか二つにまとめてみよう。」(段落の要点を読みとっ
  て、――書かれている亊実の要点を読みとって――それを、苦しい生活、楽しい生活の二
  つにまとめる。)または、「雪国の生活はどんな生活か、要点がよくわかるように、次の
  表に書きまこんでみよう。あとで、表を見ながら雪国の生活について話し合ってみましま
  しょう。」(形式をプリントあるいは板書する。)



 このような発問によって、雪国の生活を読み取るとともに、段落をまとめて読む技能・段落
の要点を押えて読む技能が身につくような読む活動をさせる。つまり、内容(雪国についての
知識)について理解する過程で読解の技能が養成されるような発問をすることがたいせつであ
る。この場合の要点を判断する基準は「それによって雪国の生活がわかる」ということであ
る。このことは、あとで要点の適否を検討する場合の基準になる。


                                           104
 この発問によって、児童は、段落の要点をおさえて読む活動、段落にまとめて読む活動をす
る。そして、段落の要点を個条書きにする。(あるいは、表に書きこむ。)その結果を発表し合
って、その適否を検討する。ここで、要点を抑えて読む技能について共同学習が行なわれる。
要点が押えられなかった者は、さらに読み直してから訂正する。こうして、この段落の要点を
確認する。ここで、児童は、雪国の生活がはっきりとわかるとともに、段落にまとめて読む読
み方、要点を押えて読む読み方を身につけ、理解する。ここで養成した技能をさらに次の段落
を読む場合に適用する。技能はしだいに定着する。
 この要点の適否の検討は、児童の話し合いによって行なう。その際教師は、話し合いの実情
に即し、必要に応じて助言する。あるいは発問して指導する。
 学級の児童が、まだ、そこまで学習訓練を受けていない場合、あるいは、読解力がもっと低
い場合には、次のように発問してもよい。
 (1) 「雪国の生活のことはどこに書いてありましたか。」(段落を確認する。)
 (2) 「その段落を読んで、雪国の人々はどんな生活をしているか、わかったことを書き出
  してみましましょう。」(要点を書いてみましょう。)または、「その段落を読んで、雪
  国の人々はどんな生活をしているか、調べてみましましょう。」
 (3) 「雪国の人々はどんな生活をしているかわかったことを言ってください。」(読み取
  ったことをなるべくたくさん答えさせる。教師は、児童の答えを板書する。主要なものを
  書き出してから、その適否を検討する。)
 (4) 「ここに書き出したことは、それでよいかどうか、『それで雪国の生活がよくわかる


                                           105
  かどうか』を考えながらみんなで調べてみましょう。」(文章を読んでは検討する。ここ
  で、要点の読み取り方を指導する。要点を確認して、正しく板書する。)
 (5) 「それでは、雪国の生活でわかったことをまとめてみましょう。いくつにまとめられ
  ますか。」
 (6)「こんどは、雪国の生活でわかったことを表にまとめてみましょう。」
   
 このように、文章の内容に即し、そこで身につける技能や態度を考えに入れて発問する。発
問を組み立てていく。これらの発問に答えることによって、雪国についての知識が得られ、そ
れを読むのに必要な技能や態度が身についていく。
 (三) 教材研究と発問の例
 次に、教材研究の実際に即して、発問について考えてみよう。
 二年の単元「田うえ」。この単元には、次のような教材が用意されている。

    ※
  たねまき
 春がくると、なわしろにいねのたねをまきま
す。なわしろは、日あたりがよくて、水の出しい 
れのべんりなばしょをえらびます。このなわしろ
で、なえがすくすくとそだっていきます。
    ※
  しろかき

  106
 なわしろでなえがそだつあいだに、ほかの田ん
ぼでは田うえのじゅんびをします。田の土をほり
おこしてこまかくくだきます。それから水を入れ
ます。つぎに土をたいらにします。この土をたい
らにするしごとをしろかきといいます。このしろ
かきのすんだ田になわしろからなえをはこんでき
てうえるのです。 
       ※
  田うえ
田植えの様子を書いた文章。(省略する)
     ※
  草とり
田の草とりの様子を書いた文章。(省略する) 

1 資料の全体構造
 四編の教材がどのような関連をもっているかを調べる。
 (1)「たねまき」「しろかき」「田うえ」と、種まきから田植えまで一連の仕事が説明されて
  いる。
 (2)「たねまき」は、「春がくると……」と書き出し、「なえがすくすくとそだっていきます」
  で結んで、次の「しろかきへ」と関連づけている。
 (3)「しろかき」は、「たねまき」の結びの語句を受けて、「なわしろでなえがそだつあいだ
  に……」と書き出し、「このしろかきのすんだ田になわしろからなえをはこんできてうえ
  るのです。」と結んで、次の「田うえ」と関連づけている。
 (4)「田うえ」は「しろかき」を受けて書いている。
 (5)「草とり」は「田うえ」を受けて書いている。
 各教材間のこのような内容的な関連、表現上の関連を考慮して扱う。この考慮のあるなし
で、学習のさせ方が変わってくる。


                                           107
2 教材の機能
 (1)「たねまき」は、たねを、いつ、どんなところへまくか、まいたたねはどうなるかを説
  明して、それを知らせようとしている。たねまきについての知識を与える。
 (2)「しろかき」は、田植えの準備がどのように行なわれるか、また、しろかきというのはどん
  なことかを説明して、それを理解させようとしている。しろかきについての知識を与える。
 (3)この二つの教材は、それぞれ知識を与える教材であるから、知的に接近させる。
3 教材の内容の構造(知識の構造・価値の構造)
 (1) 「たねまき」「しろかき」の内容の構造は次のようになっている。
                               しろかき
                          なわしろでなえがそだつあいだに
   たねまき                      
春がくる(いつ)                  ほかの田んぼでは
  ↓          ┌日あたりがよい           田の土をほりおこす
なわしろに(どこに)→どんな┤水の出しいれに               ↓
  ↓          └ べんり               こまかくくだく
いねのたねをまく(どうする)                      ↓
  ↓                       田うえのじゅん_ それから
なえがすくすくとそだつ(どうなる)         びをする      ↓
                           │      水をいれる
                           │        ↓ 
                           │       つぎに
                           │        ↓
                           │      土を平らにする
                           ↓        └→しろかき
                        なわしろからなえをはこんできてうえる


                                           108
 このような内容の構造―知識の構造を正確に速く読みとる。次に、どのことばを、どのこと
がらを手がかりにして読ませればよいか、どんな順序に読みとっていけばよいか、書き手は、
どのように思考を進めているか、言いかえれば、どんなことがらを、どんな順序・段階に従っ
て読み手にわからせようとしているかを考える。
  「しろかき」では、
 (1) なわしろでなえがそだつあいだに  (3) 田うえのじゅんびをする
 (2) ほかの田んぼでは         (4) じゅんびができるとなえをうえる
のように、一貫した説明になっている。この大筋の中に、田植えの準備の説明が挿入されてい
る。そこで、まず(1)(2)(3)(4)の大筋を読み取らせて思考の展開を明確にする。その上に立
って、田植の準備を読み取らせる。そのように整理し学習させる――あるいは学習したことを
整理する――こともできる。
 (1)「苗代で苗が育つ間にほかのたんぼではどうするか。」(田植えの準備をする。)
 (2)「田植えの準備ができると、その次にはどうするか。「(苗代から苗を運んできて植える。)
 (3)「田植えの準備はどのようにするか。」(田の土を掘り起こす。細かく砕く……)
 (4)「土をたいらにすることを何と言いますか。」(しろかきという。)
 しかし、この発問、この学習は、二年生にはむずかしい。二年生では、やはり書かれている
順序に従って、書き手の思考の過程に従って読み取らせなければならない。そこに、この文章
を読み取るのに必要な能力、この文章によって学習させようとする能力を明らかにする必要が
起こってくる。


                                           109
4 読解に必要な能力
 次に、この文章を読むのに必要な能力は何か、また、この文章を読ませて学習させようとす
る能力は何かを明らかにする。この文章を読ませて、次の能力を身につける。
 (1) 順序に従って意味を理解すること。
 (2) 文章に即して書いてあるとおり読みとること。
 (3) 順序を表わすことば「それから、つぎに」のはたらきを理解すること。
 (4) 読むために必要な語句を増すこと。
5 教材の機能に即した発問
 以上述べた教材の内容の構造―知識の構造に即し、しかも、読解の能力に応じた発問を考え
てみる。

教 苗代で苗が育っている間に、ほかの田んぼで
 はどんなことをするか調べてみましょう。(児
 童読む)
教 ほかの田んぼではどんなことをしますか。(田
 植えの準備をします。)
教 田植えの準備・したくは、どんなじゅんばん
 にやりますか。「いちばんはじめは。」(児童の答
 えを板書する)
児 土をほりおこしてこまかくくだきます。
教 (答えを板書して)それから(それからと板書
 しながら)
児 水を入れます。
教 (答を板書)つぎに(板書しながら)
児 土をたいらにします。
教 (答を板書)この土をたいらにすることを何
 といいますか。
児 しろかきといいます。(板書)
教 これで田植えの準備ができました。これでい
 いかどうか、本を読んでみましょう。

                                           110
 読んで確かめる。このときにも、「それから、つぎに」を意識させる。特別に取り出して学
習させなくてもよい。それから、つぎにとその順番を具体的に確認させればそれでよい。この
部分をノートに書かせてもよい。
 この場合、田植えの準備のしごとは、ひとりでできるだけたくさん言わせたほうがよい。
 これは、二年生の一学期であるから、発問を小さく、一発問一事項にしてある。児童の能力
に応じてもう少し大きな発問にしてもよい。また、準備の順序を、読みながらノートに書く、
話し合ってはノートに書くのもよい。こうして、田植えの準備についての知識を得ながら、順
序に従って意味を理解することにし、文に即して意味を理解すること、接続することばのはた
らきを理解することなどの能力を身につけることができる。
 ここでは、説明の便宜上、文章の内容の構造を表現したが、実際には、文章を読んで、その
構造を埋解し、能力を考えれば、適切な発問を構成することができる。

       四 発問と学習

 現在の国語教室では、発問応答・問答法によって学習が進められることが多い。そこで発問
と学習との関係を考えてみたい。
 (一) 学習の成立しない発問
1 どんな発問が学習を成立させないか
 学習の成立しない発問というのは、発問によって課題を与えてくれても、発問がむずかしす


                                           111
ぎたり、発問の意味がわからなかったりなどして、児童がそれに応じられない発問である。ど
んな発問のとき学習が成立しないかというと、
 (1) 発問の程度が高すぎる。
  ア 能力的に程度が高い。        イ 知的内容的に程度が高い。
 (2) 発問の意味がわからない。
  ア 用語がむずかしい。         エ あいまいである。
  イ 応答事項をその上位概念の語できい  オ だらだらと長くて中心がつかめない。
   ているのでわからない。        カ 説明・解説がじゃまになる。
  ウ 抽象的にすぎてわからない。     キ 筒潔すぎてわからない。
 (3) 発問による学習活動がむずかしい。
  ア 復合された学習活動である。     ウ 程度の高い学習活動である。
  イ 未経験の学習活動である。      エ 学習活動の方法がわからない。
 (4)発問による課題が大きすぎる。
  ア 課題が大きくて手がつかない。
 (5) 児童の思考力の発達にあわない。
  ア 思考に飛躍がある。         イ 高度の思考力を要する。

 このような発問は、多くの場合学習が成立しないか、または成立しにくい。二、三例をあげ
てみる。
1 学習を成立させない発問の例


                                           112
 (1) 用語がむずかしくて理解できなかった例

 二年生、「しょうぼう犬」の学習――消防犬が
火事の中に飛びこんで「あかんぼう」を助け出し
た話を読んだとき。
教 このお話でおもしろいなあと思ったことがあ
 ったら言ってごらんなさい。(児童の答なし。)
教 このお話ですごいなあと思ったところがあっ
 たら話してごらんなさい。(児童の答なし。)
教 このお話で感心だなあと思ったことがあった
 ら言ってごらんなさい。(児童の答なし。)
教 このお話を読んで、えらいなあと思ったこと
 があったら言ってごらんなさい。
児o火事の中へとびこんだの oあかんぼうをた
 すけたの oかじの中へとびこんであかんぼう
 をたすけた。

 火事の中へ飛びこんで行って赤んぼうを助けた行為をおとなの感覚で、「おもしろい」「す
ごい」「感心な」ことと言ったのでは、二年生にはわからない。それにようやく気付いて「え
らい」と言い換えたら、とたんに児童の応答がかっぱつに始まった。児童の物の感じ方を理解
していないと、とかくこのようなことが起こりやすい。用語には特に注意しなければならな
い。
(2) 学習活動が複雑であり、言語能力の発達にあっていなかった例

 二年生、田植えを中心とした生活を書いた文章
 「田うえ」の読解学習。
教 何ページから何ページまではどんなことが書
 いてあるか、ここからここまでが一かたまりと
いうように分けてから、そのかたまりの中にど
んなことが書いてあるか、ノートに書いてごら
んなさい。

 この課題に対しては、児童はどうしてよいのかわからない。この発問では、(1)段落に分ける
こと、(2)段落の要点を読みとること、(3)段落の要点をノートに書くことの三つの活動が課され


                                           113
る。その上段落の要点を読み取って書くことは、二年生には実際むずかしすぎる。ずいぶん無
理な発問であった。
 (3) 発問の内容が、高度に抽象化・総合化されていて、学習できなかった例

 二年生、「みぶりあそびの」読解学習。
教「みぶりあそび」を読んで、どんなことがわ
 かったか。(児童の答なし。)
       ※
 二年生、「たねまき」の読解学習。男女ひとり
ずつ音読させたあと。
教 きのうここのところですけど、どんなことが
 わかった。何のことがわかったの。
児 答なし。
教 坂田君何がわかったの。
児 わかっていない。
教 わたなべ君、伊藤君。
児 わかんない。

 この例は二つとも「どんなこと」がわかったかを聞いている。応答すべき事項はいずれも具
体的ないくつかのことがらである。それを総合し抽象化した「どんなこと」として聞くところ
にむずかしさがある。多くの場合低学年では「どんなこと」として聞くと答えられないのが普
通である。物ごとを抽象的に考えること、抽象化することは、低学年児童にはむずかしいから
である。
 (4) 発問の内容がむずかしくて無理だった例

 二年生、「しろかきの」学習。接統詞の機能を
理解させようとした指導。
「田の土をほりおこしてくだきます。」
「水を入れます。」
「土をたいらにします。」
 こう書いた三枚の短冊黒板を下げる。それをさ
しながら
教 これとこれの間に何と書いてあるか。

  114
児 それから。
教「田の土をほりおこしてこまかくくだきま
 す。」「それから」「水を入れます。」(「それから」
 を入れて読みあげる。)
教 このことば(それから)がないときと入れた
 ときと、どっちがいいかな。 
  児 (1)入れたとき (2)入れなくてもわかる。
 (3)それでもわかる。
教 (「それから」を入れて読んだ)後これがは
 いったのとはいらないのとどっちがいいか。
児 入れたほう。
教 どうして入れたほうがいいか。 

 この一連の発問によって、接続詞「それから」の機能を理解させようとして苦心したのであ
るが、学習が成立しなかった。「それから」を入れなければならない必然性、条件がないのに、
設定しないで、その適否を判断させようとした。だから、入れなくてもよくわかるという児童
もいた。その通りである。
 このように、「それから」の意味機能を知的に理解させようとしても、それは高度の抽象化
であるから二年生には無理だったのである。
 (5) 発問の内容がばくぜんとして理解できなかった例

 二年生、草とりの学習。「あつい夏の日をあび
ながら、田の草とりをなんべんもする」ところで、
「あつい夏の日をあびながら」の「あびながら」
という語句に気づかせようとした指導。
教 いねの間に草が生えている。この草を取るの
 が、いねをじょうぶに育てるのに大事です。こ
 れを草とりというのですが、いつごろするので
 すか。
児 夏します。
教 夏、この宇ずいぶんむずかしい字ですね。草
 取りですから外でするんですか、木のかげです
 るのかな。どんな所でするのかな。
児 (何を聞かれているのかわからない。読みと
 ったこととこの発問とどんな関係があるのか理
 解できない。考えようとしない。)
教 では、草取りのところをもうI度読んでごら
 んなさい。

 


                                           115
 「あびながら」の意味を理解させる。そのためにまず「あびながら」に気付かせる。「あびな
がら」に気付かせるために、「夏の日なた」で草取りをすることに気付かせる。そのために「外
でするのか、木のかげでするのか」と問いただしてみた。あまりに回りくどい、間接的な発問
なので、「あびながら」と「外か、木のかげかが」結びつかなかった。考え過ぎ、くふうしす
ぎてかえって学習の成立しない発問になってしまった。
 (6) 用語の意味が理解されていたいため学習困難であった例

 六年生、「分銅屋のえんとつ」の学習。この文
学作品の主題を読みとって、それに対する感想を
話させようとする指導。
教 いままで勉強したことをまとめてみると、物
 語のしくみ、登場人物の性格行動について調べ
 たが、きょうは、この物語の主題は何かを調べ
 てから主題についてどう考えるかを発表しても
 らいます。
児 (各自黙読)
教 一応まとまった人。
児 (まとまったものはいない。何を読みとって
 いいのかわからない。)(1)悲しい気持ちでこの
 文章を書いたということですか。
教 それでいい。
児 問題の意味がつかめないから、どうまとめて
 いいかわからない。
  (こんな間答の後、読みとったことを発表させ
 る。)
児 @いんきょ A場面場面のおじいさんの気持
 ちを書いたもの。Bいんきょを中心にして、分
 銅屋はどう変わったかということ。Cなんでも
 ないことを観察していって、いろいろなこと
 を、いんきょが処理して解決した。

「主題」の意味するものが、理解されていないために学習が核心に触れていない。何につい


                                           116
て書いてあるか、児童は素材をあげて答えている。指導者のほうも主題の意味を明確につかん
でいないようであった。
 主題・意図・要点・要約・段落・文段・心情・情景・心理などの用語がなまのまま使われて
いる。そのためにその概念がはっきりせず、学習が進まない場合か非常に多い。これらの用語
は、具体的な事実と結びつけて解釈させる――用法をわからせるようにすべきである。
 (二) 発問のくふう
 教師の発問に対して児童が応答できない場合、その原因の八、九〇%は、発問の側にあると
いってもよいであろう。応答できない児童を責めるまえに、発問の適否を反省してみる必要が
あろう。
 ここでは、学習が成立しなかった発問、児童に応答できなかった発問をどう処理したらよい
か、発問のくふうについて考えてみたい。
1 発問の内容を分析して示す(総合型の発問)
  「どう思うか」「どんなことがわかったか」「気持ちはどう変わったか」など、応答事項を総
合したり、抽象化したりして発問すると児童がこれに答えられない。そんな場合のあとの処置
はどうしたらよいか。
 まず、総合されている事項を分析して発問する。たとえば、二年生で「たねまき」の文章を
読んだ後、教師が次のように発問した。
 教 この文章を読んでどんなことがわかりましたか。
 児童は、これに答えられない。文章は、「春になると苗代に稲の種をまく。苗代は日当りの


                                           117
よい、水の出し入れに便利な所がいい。稲はここですくすくと育つ。」という内容を含んでい
る。そこで、発問事項「どんなこと」の内容を分析して発問した。

教 何の種をまきますか。(いね)
教 いつまきますか。(春)
教 どこへまきますか。(苗代)
教 どんな所へまきますか。(日当たりのよい、
 水の出し入れに便利な所)
教 まいた稲はどうなりますか。(すくすくと育
 ちます)

というように、五つの事項に分析して発問したら、難なく答えてくれた。同時に児童の思考を
整然と秩序立ててやることができた。
 このような処置は一年生や二年生に対して有効な処理であるが、中学年や高学年では適切で
はない。これでは、読解力・思考力は進まないからである。そこで、児童の能力の発達に応じ
て、次のように処理することもできる。

(1) 何のたねを、いつごろ、どこへまきますか。
 (稲の種を春、苗代にまきます。)
(2) 苗代はどんな所がいいのですか。(日当たり
 がよくて、水の出し入れの便利な所)
(3) 苗代の稲はどうなりますか。(すくすくと育
 ちます。)

 二年生では、この程度の分析がよいであろう。三年生では、

(1) 何のたねを、いつ、どんな所へまきますか。 (2) 苗代の稲はどうなりますか。

あるいはまた、

(1)「たねまき」を読んで、(ァ)何のたねを
 (ィ)いつ (ゥ)どんなところ まいて、そ
 れが、 (ェ)どう
 なりますか、この順にノートに書いてごらんな
 さい。

のように、処理してもよい。要するに、発問の内容(どんなこと)を分析して、具体化し、児


                                           118

童に考えやすく、読みやすくする。その場合、分析の程度、その表現のしかたは、児童能力の
発達に応ずるようにする。
2 発問の内容を分解して示す(複合型の発問)
 「この文章を読んで段落に分け、その要点を読み取ってノートに書きましょう。」というよう
な発問。つまり、いくつかの言語経験(学習活動)が複合されている発問で、学習がすらすら
と進まない場合。
 この場合には、学習活動が複雑すぎるのだから、モれを単純化すればいい。複合されている
言語経験を分解して与えればよい。
 (1) 段落に分けて読む    (2) 読み取った要点を書く活動
に分けてもいい。
 段落の要点を読み取る場合でも、四段落も五段落も一度に扱うのでは困難が伴なう。一段落
ずつ分けて学習させてもいい。第一段落では、要点の読み取り方を協同学習にして、理解さ
せ、第二段は個人学習で、第三段以下は練習として扱ってもよい。
 学級児童の実態に即して、発問(課題)をくふうすべきである。
3 ヒントや助言を与える
 発問はそうむずかしいものではない。複雑なものでもない。また、生活経験から離れたもの
でもない。しかし、児童はすぐ反応を示さない。応答しにくい。しきりに考えてはいるが考え
るきっかけが得られないらしい。手がかりがつかめない。
 こんな場合には、課題に答えるヒントを与えるとよい。助言を与えるとよい。たとえば


                                           119

教 きのうの日曜にはどんなことをしましたか。
 話してごらんなさい。
 児童は、どんなことをしたか思い出せない。ど
のように話したらよいかはっきりしない。
教 たとえば、買物に行ったとか、友だちと遊ん
 だとか、テレビを見たとか、いろいろあるでし
 ょう。

などとヒントを与える。思い出すきっかけを作ってやる。児童は、発問に答えて話し出す。話
す内容は貧弱、順序も人もあいまい。そんな場合には、いつ、だれと行ったの、何を買った
の、楽しかったなどと助言をする。
 また、
 教 主人公の気持ちはどのように変わっていきましたか。
 と発問する。児童は容易に反応しない。変わっていく様子をどう説明してよいのかわからな
いのである。
 教 はじめ出会った時の気持ちは。それから争っ   ちは。
  た時の気持ちは、最後に仲直りをした時の気持
と考える手がかり、きっかけを暗示してやる。あるいは、考える道筋・順序などについてヒン
トを与える。児童は急に活気づいて学習が展開される。また、「ノートの上段に場面を書いて、
下段にその時の気持ちを書いていけば……「などと整理・思考の方法について暗示し、助言し
てもいい。
4 説明・解説を加える
 一度つまずいた発問を生かすために説明や解説を加える。発問に答えるために学習を進めて
いくうちに間題にぶつかる。その問題について説明・解説をする。あるいは、児童に考えさせ


                                           120
話し合いをさせて、それを明らかにする。たとえば、

教 宮沢賢治が実行したことから、どんな考えが
 わかるかを研究して発表してもらいましょう。
児 (調べたことを小黒板に書いておいて発表す
 る。中に作者が述べた意見が出てくる。)
教 いまの発表にまちがいはないか。
児 いまの発表の『農民の生活をよくするために
 ……』というのは作者の意見ではないか。
児 最初に『彼は』とあるから、宮沢賢治が教え
 たことだと思います。
教 賢治がした事実から考えて読み収ったとする
 と、今の所は何でしょう。亊実について書いて
 あるところと、意見が書いてあるところがあ
 る。今は、何を読み取っているのか。作者の意
 見は書き入れたほうがいいのか。
児 入れないほうがいい。
教 今の読み取りは、事実と考えを読み取るのだ
 から、他にも作者の意見を書いたところがある
 が、入れないほうがいい。

 そこに起こった、発問の問題点を、児童と問答しながら、巧みに説明して、問題を解決して
学習を進めている。こうした問題は、前もって考えて、その扱いを明確に示すほうがいい。そ
のほうが学習が混乱したり停滞したりしない。
5 観点を変えて発問する
 ある角度・観点に立って発問する。児童はなかなか反応しない。学習が進まない。そんなと
き、同じ事項に対して別な観点から発問すると、すらすらとわかることがある。児童の経験・
知識・思考等を考えて、それに適した発問にするのである。たとえば、
 教 この物語の主題は何ですか。
 この発問に対してすぐに答えられない。そこで、

教 この物語の主人公はだれですか。 教 この主人公は、どんなに犬をかわいがっていまし

121
 たか。
教 その犬が急にいなくなったとき、主人公はど
 んな気持ちになりましたか。 
  教 作者は、この主人公に対してどう思っていま
 すか。みんなはどう思いますか。 

 物語の主題は何かと聞かれると、わからない、とまどいする。何だかあいまいで、はっきり
しない。そんなとき、まったく主題から離れて、「主人公はだれか」「主人公はどんなに犬をか
わいがっていたか」などと、違った観点から主題に接近していく。これで、学習はすらすら運
ぶ。このような思い切った観点の転換がはかれるようになるには、実際にはやはり研究を要
する。熟練を要する。多くの場合、最初の発問にこだわって、それを何とかしてわからせよう
とあせる。思い切って発問を捨てるなどということはできにくいのである。
 あるいはまた、こんな場合もある。

教 今からね、アカはどんな犬か、わかったこと
 をできるだけまとめて言ってごらんなさい。
児 (手が全然あがらない。)自信がないんだよ。
 まとめられないんだよ。
教 何でもかまわない。思ったとおり、感じたと
 おり言ってごらん。

 教師は、最初の発問にこだわっている。撤回できない。むずかしいなとは思っても、処置が
ない。とうとう「何でもかまわない」と言い出してしまった。何でもかまわないのでは困る。
とにかく、全体的に、総合的に犬の性格を読み取らせようとしたからむずかしいのだと悟っ
た。そこで、観点を百八十度転回させて、分析的に、要素的に犬の性格をつかませてから、そ
れを総合させようと考えついた。

教 どこかにアカの性質のわかるところはない
 か。
児 根性の悪い犬です。
教 どういうところが。

  122
児 アカは人をばかにしているようである。えん
 の下から………。
教 ほかに。
児 がんこな根性を持った犬で、あこちゃんが好
 きです。 
  教 根性を持っているというのは。
児 最後までやりとげるから。
児 人の愛情を信じない犬。
教 どういうところで、そう感じたの。 

 観点を変えて、別な角度から発問し始めてから、学習はおもしろいように展開した。アカの
性格は、次から次へと明らかにされていった。
6 児童の能力に応じた発問をする
 発問の程度が高すぎて学習が進まないという例は非常に多い。特にいわゆる研究授業などに
なると教材研究もふだんよりは詳しく、深くする。そのためについむずかしい、程度の高い発
間をしがちである。児童の言語能力・知識・理解・思考力・認識力などの実態を知って、それ
に応ずる発問をくふうすることはいうまでもない。しかし、いったん高い発問をしてしまった
ら、何とかそれに対する処置を考えなければならない。三年生の教室、

教 はじめにこの文章を段落に分けてから、その
 段落の中に書いてあることを短い文で書いても
らいます。

 段落の内容を要約して、短い文にまとめさせようというわけである。これは、まだ一学期、
三年生には程度の高すぎる課題である。たとえ一ページか二ページにわたる段落であっても、
それを要約してワンセンテンスにまとめさせようというのだから、三年生には手が出ない。

児 (ほとんど全部の者が、教科書を見ながら、
 抜き書きをしている。全文を視写しているもの
 もいる。要点さえとらえていない。)
教 ちょっとやめて。みんなだめじゃないか。本

  123
の通り書くのじゃない。そんなに長く書くのじゃ
ない。書いてあることを長く書くのじゃない。 
  書いてあることをまとめて一つの文で書くん
だよ。 

 教師はやっきになっているが、児童はいっこうに思うように動かない。途方にくれて、頭を
あげてしまった児童もいる。しかし、教師はこの課題に答えるには、高い読解力を必要とする・
ことに気がつかない。
 こんな場合には、学習を段落の要点を読みとることに切り換えなければならない。もっとや
さしい経験をさせるようにくふうしなければならない。三年の一学期であるから、一段落の中
に書かれていることがらを全部読み取らせて理解させる。 その読み取った中から、 一つの観
点・基準を示して、それによって、読み取った事項の中からだいじなことを選び出す、読み取
る。そうして、段落の要点の読み取り方を指導する。
 このように、児童の能力の発達に合わせて程度を下げて学習させることがたいせつである。
 ところが、それとは逆に、発問がやさしすぎる、程度が低すぎる発問がある。児童の能力よ
りもいろいろな意味でずっと程度の低い発問もまた、しばしば行なわれる。それでは、児童の
能力は発達しない。思考力も伸びない。
 たとえば、四年生で、段落にまとめて読む力をつけようとする学習で、

教 この段落に書いてあることを調べてみましょう。何のことと何のことが書いてありますか。

 こんな発問に答えて、児童が五人で五つの事項をそれぞれ一つずつ読み取って話す。このよ
うに五人の答えの総和として書いてある事項が全部取り上げられれば、それで終わりである。
これでは、段落にまとめて読む能力はつかない。ひとりで、この五つの事項を読みとって、そ


                                           124
れを組み立てて話すことができるようになって、はじめて段落にまとめて読む力が養成される
のである。そんなときには。
 教 では、もう一度読んで、今読みとったことをまとめて言ってごらんなさい。
のような学習活動を課す必要がある。高学年における、いわゆる一問一答式の単一型の発問で
は、思考を秩序づけたり、思考を発展させたり、思考を深めたりすることは困難である。つま
り、思考力を養成することはむずかしい。
7 用語について説明する
 用語がむずかしくて、学習が成立しない発問のあることは前に述べた通りである。用語がむ
ずかしすぎた場合には、当然それについて説明したり、言い換えたりしてよく理解させること
はいうまでもない。もちろん、単にことばの言い換えをしたところで、わからない場合もある
し、かえって概念があいまいになったり、その結果誤りを犯したりすることもある。むずかし
いと思うのは、それを、解釈・説明したりする場合である。たとえ説明・言い換えをするのが
むずかしい語であっても、つねにそれに、それが表わす、示す、具体的事象が正確に対応でき
るように取り扱われるならば、むしろそのほうがいいと思う。もちろん、その事実と用語とを
対応させて理解できるという限定をつけてである。
 主語を文の「頭」、「述語」を文の「からだ」、修飾語を文の「着物」などと置き換えて指
導するなどは、主語・述語・修飾語の機能・概念を誤らせるものであると思う。
 だから、ことばの置き換え、言い換え、説明には特に注意しなければならない。主題を「書
き手が言おうとしていること」「書き手が読み手に訴えていること」「作者が書き表わそうと  


                                           125
したこと」などと言い換えている。
 このように、主題を客観的にとらえさせる場合もある。それに対して、主題を、具体的、経
験的に、知識・理解として、あるいは感動として受け止めていく。たとえば、「心に残ってい
ること」「感激したこと」「感心したこと」「心に感じたこと」「その通りだと思ったこと」
「目に浮かんでくること」などそこから出発して主題に接近していく。ここに文学教育の岐路
があるように思う。文学教育は、文学の教育なのか、文学経験の教育なのかの別れ目がある。
 発問も、それらの点を考慮する必要がある。
 以上は主として、国語教育用語の取り扱いについてであるが、それらとは関係のない、むず
かしい語を使う場合がある。この場合はそれが困難だと悟ったら、直ちにわかりやすい語に置
き換えるようにする。

       五 発問とコミュニケーションの成立

 発問とコミュニケーションとの関係についてはすでに、第一章において述べたので、ここで
は、主として学習の成立――コミュニケーション――の成立と発問との関係について、考察し
たい。
 (一) 問答はコミュニケーションの基本形態である
 発問に対する応答の計画的・継統的連続、つまり問答は、コミュニケーションの基本形態で
ある。教師(送り手)は発問によって課題を提出し、児童(受け手)は課題に答えることによ


                                           126
って、課題の内容についての知識を得、理解を深め、思想を獲得し、心情を養い、感覚をみ
がき、真理を求め、知性をみがくなど、人間性の開発・発展を招く。
 この問答の機構は、コミュニケーションの機構と一致する。
 この問答の成立・発展・展開・連続の契機となるのが発問である。問答は、発問によって成
立し、発問によって、発展・展開し、発問によって連続する。問答は目的の達成、発問の停止
によって、完結する。
 また、発問は知識の獲得、思想の発展、真理の探求への方向を示し、道を開いて道程を教
え、その内容を示し、内容の広さ深さを明らかにして、その歴史的現実を教え、さらに無限の
将来への発展を暗示する。
 つまり、発問が取り上げる課題の内容、課題解決の過程が人間性を開発し、同時にその取り
上げ方が国語教育の契機となる。
 発問の教育的意義、機能もそこにある。
(二) コミュニケーションは国語学習の基本形態である
 国語学習は、教材を介して行なわれる。教材に含まれる価値を生産する過程で国語の能力を
養成することによって成立する。つまり、話題・題材(教材)(送り手)と児童(受け手)と
のことばによるコミュニケーションによって、価値を生産するとともに、その生産過程におけ
る言語の獲得、思考力の養成をはかるところに国語学習は成立する。
 だから、コミュニケーションは、国語学習の基本形態と考えることもできる。
 教材に対する児童の反応――これを教材の側から見れば教材の児童への働きかけ(機能)と


                                           127
見られ、それは、コミュニケーションにおける送り手とも考えられる。ところが、教材それ自
体は、積極的な送り手となれない。そこで、教師が――教材の機能を理解し、作者の意図をじ
ゅうぶんに知り、教材に対する児童の反応を予測することのできる教師が――教材に代わっ
て、作者に代わって、送り手の役めを果たす。つまり、発問によって、教材の内容を提示し、
児童の関心、興味を刺激し、必要欲求を感じさせる。児童の教材接近への構えをつくり、方法
を考えさせる。こうして、教材と児童とのコミュニケーションの場を構成する。このコミュニ
ケーションの場は、教材とそれをめぐる多数児童との関係および、教材を介して行なわれる児
童相互間の関係、さらにユミュニケーションを指導する教師とによって成り立っている。
 児童と教材との問に読む活動を通して、直接コミュニケーションが行なわれる。その過程で
コミュニケーションの障害、困難を除去し、あるいは、間題点を発見しては解決し、しだいに
コミュニケーションを深め広めていく。こうして、児童は、教材の内容的価値を自らの手で獲
得しつつ、ことばの機能を身につけ(学習し)思考を深めていく。
 このようなコミュニケーションを指導し成立させる契機となるのが発問である。
 どんなことがわかったか。AとBはどんな関係があるのか、どんなしくみになっているか。
どんな気持ちがわかるか。もっと他の亊情、条件を考えてみてはどうか。作者の立場で考えて
みてはどうか。どんな感じがするか、それはどこから受ける感じか、どう思うか。その結論は
どんな事実から考えたものか。など、必要に応じ、場に即し、コミュニケーションの内容を考
えて、発問が行なわれる。これらの発問によって、さらに調べるために読む、考えを進めるた
めに読む、事実を確かめるために読む、心情を想像し深めるために読むなど、目的を持った読


                                           128
む活動が行なわれる。そして一だんと高度のコミュニケーションを成立させる。また、コミュ
ニケーションの結果を紹介し、確かめ、比較し、検討して、さらに深め、高めるために児童相
互の話し合い――コミュニケーションが行なわれる。あるいは、作者の立場に立つ。文章の中
の人物の立場に立って考え、感じ、想像し、行動してみる。すなわち、いわゆる役割交換も行
なわれる。
 このように、発問を契機として、コミュニケーションは発展する。
 (三) コミュニケーションと発問
 このコミュニケーションで扱われる内容は、教材の内容である。知識・情報のコミュニケー
ション、思想のコミュニケーション、心情のコミュニケーションなどさまざまであるが、それ
らによって発問の内容、発問の形式、発問のしかたなどが決まってくる。
 一例として、知識・情報のコミュニケーションの場合を考えてみょう。
 知識・情報のコミュニケーションでは、それが、読む場合でも聞く場合でも、ともに、知識
は正確に、深く、情報は正確に、速くということが要求される。
 知識を求めるためには、主として、説明・解説・報告・記録などの読みがある。情報を求め
るためには、新聞・雑誌・掲示・報告・宣伝・広報などの読み、校内放送・ラジオ・テレビ放
送などの、伝達・お知らせ・報告・ニュースなどを聞くことがある。
 そこで、学習としては、書かれたもの、話されたものとの間に(書き手、話し手)コミュニ
ケーションが行なわれる。
 そこで発問は、教材に対して知的に接近させる契機をつくる。


                                           129
 (1) 何が、どこが、どれが、だれがなどがわかったかを問う。
 (2) どんなこと、どんなところ、どんな人、どんな様子などがわかったかを問う。
 (3) どのようになったか、どのようにしたか、どのようにすべきかなどを問う。
 (4) なぜ、どうしてそうなったかを問う。
 (5) 誤っている、あいまいである、はっきりしないなどの点を指摘する。
 (6) 順序・筋道・段階・組織・秩序・変化関係などが指摘され問われる。
 たとえば、
 (1) 「読書するときの注意は、どこにどのように書いてありますか。」
 (2) 「特別な方法というのはどんな方法ですか。」
 (3) 「切羽というのは何をするところですか。」        
 (4) 「では、○さんは、本が好きになるのがいちばん先だ。読んでいると、いい本と悪い
   本の区別がつくといっていますが、いい本というのはどんな本ですか。」
 (5) 「鉄砲魚はどんなさかなか、なぜそういう名まえがつけられたか。」
 (6) 「では、ほんとうにそれが誤りないかどうか。もう一度読んで調べてみよう。」
 このような発問を契機として、課題に答えたり、調べる、確かめるために読んだり、話し合
ったりして、しだいに教材の内容に接近していく。発問を契機としてコミュニケーションが行
なわれる。


                                           130
      六 発問と学習指導過程

 戦前くふうされた指導過程(実は、教授過程であったと思う。)は今日の新しい多くの研究を
加えた国語学習の学習指導過程として、それを適用することはできない面が多い。それは、教
材を中心とし、教師を中心とした教授過程であったからである。私どもは、学習の本質を理解
し、児童の思考過程を考慮し、教材および教材に示された書き手の思考過程を研究して、そこ
に、児童を学習者として理解する、学習指導過程を編成しようとしている。そして、基本的
な、すべての国語学習に適用できる学習指導過程を次のように編成した。
 1 学習の目的を持つ。(目的)       3 目的を達成する。(達成)
 2 目的を追求する。(追求)
 この三過程をさらに具体化すると
 1 生活的・価値的な学習の目的を持つ。  4 目ざした価値を獲得する(生産する)
 2 目的を達成する方法を考える。     5 獲得した価値を適用する。
 3 その方法に従って価値を追求する。
 この五過程になる。(1)目的 (2)方法 (3)追求 (4)獲得(達成) (5)適用の五過程を学
習指導過程の基本的な型とする。このうち「適用」は、場合によって省いてもよい。
 この指導過程は、単元の指導計画の基礎にもなる。また、教材全体の指導過程でもあり、一
時間の指導過程でもある。


                                           131
 そこで、学習指導の各過程で当然教師の発問も行なわれる。次に各過程で行なわれる発問に
ついて考えてみたい。
 (一) 目的を持たせるための発問
 目的を自覚した学習活動をすることは、学習成立の第一条件であり、それ以後の学習の方法
を規定し、学習効果を左右すると考えられる。そこで、目的を持った学習活動をさせる、つま
り、目的を持たせるためには、どのように指導すればよいかが問題になる。
1 いつ目的を持たせるか
(1) 学習の始め。
 ア 単元の学習にはいるとき(単元の第一時)
 イ 教材の学習にはいるとき(教材による学習の第一時)
 ウ 学習の始め。(毎時間の学習の始め)
(2) 学習の過程で
 ア 学習中個々の学習活動の始め。
2 どんな目的を持たせるか
(1) 生活的・学習的な目的を持たせる。
 生活的な目的は、言語生活(言語行為)をするときの目的である。言語行為をしなければな
らない理由・条件等に基づく目的である。言語の本質・機能から言えば、間接的な目的であ
る。人間性に培う、人間性を開発するということを直接めがけた目的ではない。しかし、言語
行為から見れば直接的な目的である。したがって、この目的は、言語行為の方法、形式等に関


                                           132
係することが多く、随って国語能力の学習と深いつながりがある。たとえば、
 ア 宿題をやるために読む。        ケ 話の材料を得るために読む。
 イ 研究をまとめるために参考書を読む。  コ 書く材料を求めるために読む。
 ウ わからないことを明らかにするために  サ 確かめるために読む。
  辞書を使う。              シ 比較するために読む。
 エ すらすら読めるようにするため(練習) ス 楽しむために読む。
  に読む。                セ 余暇をつぶすために読む。
 オ 紹介するために読む。         ソ 書き残すために書く。
 カ 朗読して聞かせるために読む。     夕 備忘のために書く。
 キ どれが読めない漢字、新しく習う漢字  チ 話すためのアウトラインを書く。
  かを調べるために読む。         ツ 学習したことを整理するためにノートに
 ク 段落に分けるために読む。        書く。
など、そのほかいろいろな目的が考えられる。
(2) 価値的な目的を持たせる。
 この目的は、ことばの機能に即して考えられる目的である。したがって、究極においては、
人間性に培う、人間性を開発することがめがけられる。しかし、実際には、児童に、わかる、
その興味や必要を呼び起こし、直接意識できる程度の目的を持たせればよい。奥深い、人間性
の開発の志向、欲求を持ち得る程度でよい。たとえば
 ア 知識を求めるために読んだり、聞いたりする。


                                           133
 イ 情報を求めるために読んだり聞いたりする。
 ウ 思考を深めるために、思想を豊かにするために読む。
 エ いい意見、いい問題解決をするために話合いや会議を開く。
 オ 気持ちを落ちつけたりやわらげたりするために読む。
 カ 心情を豊かにするために読む。
 キ 自然の不思議さ神秘さを知るために読む。
 ク 働く人の苦労や喜びを知ったり感じたりするために読む。
 ケ 人々はどう考え、どう感じ、どう見ているのかそれを理解するために読む。
 コ 世間の姿は、世界の動きはどうなっているのかを知るために新聞を読んだり、ラジオ・
  テレビを視聴する。
など、すべて、価値追求、価値獲得のための言語行為であることを意識させる。このような、
ことばの機能に即した価値を追求することが言語行為の目的であることをわからせて、そのよ
うな価値的な目的を持って、学習活動を行なうように指導する。
3 どのようにして目的を持たせるか
 前に述べた、生活的、価値的な目的をどのようにして持たせたらよいかを考えてみる。
(1) 低学年
 学習活動の目的を自ら意識し、自覚することは、低学年ではむずかしい。そこで、教師は、
学習活動をさせるときには、つねに学習活動の目的を明らかに示してやるようにする。そうし
て、目的をだんだん意識して学習するようになったら、目的を持たせる場合少しずつその理由


                                           134
や意義を簡潔に、わかりやすく説明してやる。
(2) 中学年
 低学年では、教師が目的を与えることが中心であった。そして、与えられた目的をいかにし
て、児童が自らの目的として意識し、自覚するかというところに、指導が加えられた。
 中学年では、教師と児童が話し合いによって目的を決めることを中心にして指導する。話合
いによって決められた目的は、板書するなり、ノートに書くなり、あるいはプリントするなり
して、それをはっきりと意識し、自覚して学習を進めるようにする。この段階では、何につい
て勉強するか。どんなことについて調べるか。どんなことについて話し合うか等をはっきりさ
せる。そこで出させるたくさんの問題を話合い、指導によって整理する。
(3) 高学年
 高学年では、学習内容全体の見通しをつけるとか、どんな学習活動が組織されるか、そのだ
いたいをつかむなどのことができるようになっている。だから、学習の目的を自ら立て、目的
に従って学習することができるように指導する。また、学習過程における個々の学習活動の目
的もじゅうぶん自覚して学習することができるようになっている。
4 目的を持たせるための発問の例
 学習活動の目的について、(1)いつ (2)どんな目的を (3)どのような順序段階を経て持た
せたらよいか、ごく簡潔に述べた。そこで、これらのことを考慮して、発問をくふうしなけれ
ばならない。
 (1) 低学年の例


                                           135
 ア 読めばわかる――わかるため、知るために読む。

 一年生、「ぶらんこ」の読解指導。初めて文章
を読む場合。
教 (さしえを見て話す)何をしているところか。
児 ぶらんこにのってるの
教 ゆれているのか、いないのか。どんなふうに
 ゆれているのか。
児 (あれ、これと話している。)よくわからな
 い。
教 それでは、下に書いてある文を読んでみまし
 ょう。それを読むと、どんなにゆれているかよ
 くわかります。
児 (めいめい音読する)
教 さあ、ゆれていましたか。
児 ゆれてる。
教 どんなにゆれているか。
児 小さくゆれるの。大きくゆれるの。
児 まえへゆれるの。うしろへゆれるの。
教 絵を見てはわからなかったけれど、下の文を
 読んだらよくわかりましたね。
教 では、また読んでみましょう。こんどは、ぶ
 らんこのほかにも何かゆれています。読んで、
 それをさがしましょう。

 こうした、発問による学習によって、児童は、読めば何かがわかるということに気付いてい
く。これが、目的を意識して読む第一歩である。教師はたえずこうした、何かを知るために読
む――目的を明らかにして読ませることがたいせつである。
 イ 話せばわかる。――知らせるために話す。

 一年生、見学してきたことを話す。
教 きのう見学にいきましたね。何を見てきまし
 たか。見てきたことを話してください。
児 おみや・花・からすのうち・すばこ・とり。
教 お話してくれたから、何を見てきたかよくわ
 かりましたね。
  こんどは、見学に行って楽しかったことおも
 しろかったことを話してください。
児 矢口とぼくと、春木君と田村君とお弁当を
 ね、みんなでわかれて、ふたりずつ食べたの。

136
教 矢口さんそうだったの。
児 ちがうよ。それはね新宿御苑のこと言った 
   の。
教 ではまちがえたわけね。 

 このように発問することによって、話せば何かを知らせる、わからせることができることを
意識するようになる。ここに話すこと聞くことの機能がある。それをしだいに意識するよう
に、発問によって指導する。
 ウ 目的を持たせるいろいろな発問

 一年生
(ァ) きょうは、お話をするとき、話す人は、話
 すときどういうふうに話したらよいか、聞く人
 はどういうふうに聞いたらよいかを勉強しま
 す。(単元の始め)
(ィ) きょうは、ラジオ遊びの最後の時間です。
 録音の中にいろいろな声がはいっていますか
 ら、だれの声か考えながら聞きましょう。(一
 時間の始め)
(ゥ)教 きょうはなんのお勉強。
 児「おどるかげえ」
 教 おどるかげ絵のどんなことを勉強するの。
 児 作り方。
 教 おどるかげ絵の作り方を勉強するのです
  ね。
 教 では、どんなふうに作ったらよいか読んで
  調べてみましょう。(教材の始め)
(ェ) きょうは、テレビごっこをするんですね。
 どんなテレビが好き。(教材の始め)
(ォ) ご本を出して、すなあそびのところをお話
 をするように読んでみましょう。これはだれと
 だれのお話でしたか。(一時間の始め)
(ヵ)教思い出袋を出しなさい。プログラムも出し
  なさい。プログラムを見て、きょう何を勉強
  するかわかる人。
 児 友だちの作文です。(教材の始め)
 二年生の例
ア きょうは、今まで習った、たねまき、しろか
 き、田うえ、草とりを読んで、どんな仕事をし
 たか、先生がプリントを渡しますから、それに

137
 書いてください。(一時間の始め)
イ きょうは、ゆっくり、はっきり読む勉強をし
 ましょう。読んでください。(一時間の始め)
ウ しろかきというのは、どんなお仕事があるの
 か、こんどは声を出さないで、ゆっくり話がで
 きるように読んでください。(学習の過程で)
エ 今からみんなに読んでもらいますが、何のた
 めに読むのか考えながら読まなければいけな
 い。この人は何のために田んぼへ行ったのだろ
 うか。たんぼへ行ったらどんな人に会ったか。
 (教材の始め)
オ 九九ページを、どんなことが書いてあるか考
 えながら読んでみましょう。大事なことは何だ
 ろうと考えながら読んでもらいましょう。(学
 習の過程で) 
  カ どんなお話が書いてあるか考えながら読んで
 ください。(一時間の始め)
キ きょうは、(四)の場面をくわしく調べてみま
 しょう。どんなことに気をつけて読んだらいい
 か。だれが、どんなことを、どうしたかを考え
 ながら読んでみましょう。(一時間の始め)
ク 昔のお話を書いた本を用意しましたからそれ
 を読んでみましょう。みんなの考えたお話と同
 じか、どこが違うか比べながら読んでくださ
 い。(教材の始め)
ク 先生は少しは知っているが、細かいことはわ
 からない。それを教えてもらいたい。だれか、
 おうちのにいさんのことをお話してくれない
 か。(学習の過程で) 

 (2) 中学年の例

 三年生
ア リレーが始まった様子、終わった様子がわか
 るところを読みとって線を引いてください。
 (一時間の始め)
イ それではね、リレーが始まってから、終わる
 までに出てくる橋本さんの気持ちを読みとっ
 て、そこに赤線を引きましょう。(学習の過程
 で)
ウ教 きょうは何の勉強。
 児 国語。
 教 どこを。
 児「五色のしか」。

138
 教「五色のしか」のどこ。
 児 (三)ばん
 教 どんなことを勉強する。
 児 気持ちです。
 教 しかは、つかまって最後に悪かったことに
  気がついたか。
 児 ついた。
 教 きょうは、しかの気持ちとある男の気持ち
  を詳しく勉強します。(一時間の始め)
エ 「町へ行ったカシム」には、どういうことが
 書いてあるか。だれが何をやったか、それはど
 こでやったかを考えながら読んでみなさい。(教
 材の始め)
オ 紙版画の苦心・紙版画の作り方はどうか、そ
 のことを考えながら読んでごらんなさい。(一
 時間の始め)
カ たぬきもは、もうせんごけと同じように虫を
 取るか読んで比べてごらんなさい。(学習の過
 程で)
キ この子はどんなことをしたか、おしまいにど
 うなったか考えながら読んでみましょう。(学
 習の過程で) 
   四年生
ア ローマ宇はどんなふうにしてできたか読んで
 調べてみましょう。(学習の過程で)
イ 美しい文を確かめていく。どういうところが
 きれいか、いちばんきれいだと思うところをよ
 く読んで書き出します。声を出して読んでごら
 んなさい。(一時間の始め)
ウ どんなことばで、大阪が説明してあるか読ん
 でみましょう。(学習の過程で)
エ 宿題で調べたことを考えながら読んでもらい
 ましょう。(学習の過程で)
オ それぞれの場所で、どんなことが起こった
 か、さち子さんの気持ちはどうだったか、場所
 ごとに分けて、ノートに書いてください。(学
 習の過程で)
カ きょうの目あて。前に書いた遠足の文につい
 て、僕だったらこう書く。友だちと作文を取り
 換えて、読んで感じたこと、気のついたことを
 下へ書いておきましょう。(一時間の始め)
キ きょうは、メモを使っていい作文を書くには
 どうしたらいいか。さっき返した作文とメモと
 を比べて、どんなことを書いたか調べてみる。 

139
 そして、メモを使わない時の作文と比べてどこ
 が違うか考えてみましょう。(一時間の始め)
ク きょうは、ふたりの人の作文をもとにして、
 メモをどのように使っているかを勉強する。い
 つものように始めに感想や何かを言ってもらい
 ます。(一時間の始め)
ケ それから、この前書いた、つばめを助けた人
 々の感想文と比べながら読んでみましょう。あ
 とで、そのちがいを話してもらいます。(一時
 間の始め)
コ 読書記録を書けば、読書会で話したり、四年
 の終わりに読んだ本がわかったりすることがわ
 かりましたね。それでは、これから読書記録の
 勉強をしましょう。(学習の過程で)
サ (小黒板に調べる問題が書いてある。)
 oなぜ三目間にらみ合っていたか。
 oなぜ使いを出すのに四日もかけたか。 
    (以下省略)
 この問題を読んで調べましょう。大事なことば
 があったらノートに書き出しておきなさい。(一
 時間の始め)
シ この間ずっと読んで、感想を書いてもらいま
 したね。きょうは、その感想をお互いに発表し
 合ってみましょう。そして、それをもとにして
 話し合ってみましょう。(一時間の始め)
ス「不思議な魚の話」がたくさん出ました。教
 科書にも、不思議な魚のことが出ていますか
 ら、それを読んで勉強しましょう。不思議な魚
 はどんな魚か、どんなところが不思議なのか読
 んで調べてみましょう。(単元の学習の始め)
セ もう一度、ここにこう書いてある、だから鉄
 砲魚というのだというところをさがして読んで
 ごらんなさい。(学習の過程で) 

 (3) 高学年の例

 五年生
ア教 きょうから勉強する単元の名は何と言いま
  すか。
 児「文字のいろいろ」
教「文字のいろいろ」という単元の勉強をし
 ます。「文字のいろいろ」について、どんな
 ことを勉強しますか。
児 文字には、こういう種類があるというこ

  140
  と。
 児 文字のでき方。
 児 文字の歴史。
 教 この単元では、文字について、そういうこ
  とを勉強しましょう。(単元の始め)
イ教 今までどういうことを勉強したか。
 児 小さい段落に、どういうことが書いてある
  かを勉強した。
 教 きょうは、どういうことを勉強するか。
 児 小さい段落に書いてあったことを大きくま
  とめる。
 教 きょうは、この前十一に分けて調べた段落
  を大きくまとめて勉強します。どの段落とど
  の段落が結びつくか。予想を言ってごらんな
  さい。
 児 (予想を話す。)
 教 では、そのうちのどれがいいか、読んで調
  べてみよう。(一時間の始め)
ウ教 きのうの国語の時間にはどんなことを勉強
 しましたか。
 児 登場人物の行動。
 教 どういう行動をとりましたか。 
   児 (次々に発表する。)
 教 きょうは、どういうところを勉強します
  か。
 児 むずかしいことばを勉強したらいい。
 児 フランツの心の動きを勉強したらいいと思
  います。
 教 それでは、きょうは、「フランツの心の動
  き」を勉強しましょう。(「フランツの心の動
  き」と板書)
  それでは、フランツの気持ちがどう変わった
  かを考えながら読んでみましょう。(一時間の
  始め)
エ教 きのうの国語の時間にはどんな勉強をしま
  したか。
 児 わかったことを発表しました。
 教 話し合ったおもなことはどんなことか。
 児 ローマ宇のために正しい道を歩いたこと。
 教 ローマ字のために、ただ一筋の道を歩い
  た。そのただ一筋の道というのはローマ字を
  広めるための道であった。ローマ字を広める
  ための道はたやすい道だったか。
 児 けわしい道だった。 

 141
 教 きょうは、北村さんのただ一筋の道がどん
  なにけわしかったか。どんな苦心をしたか。
  それを調べてもらいましょう。その時自分だ
  ったらどうするかも考え合わせて読んでごら
  んなさい。(一時間の始め)
 六年生
ア教 きょう勉強することは何か。
 児「富士山頂」
 教 このお話に出てくる人はだれか。
 児 到とその妻千代子さん。和田技師。
 教 その外おおぜいですね。三人の中でお話の
  中心はだれ。
 児 野中到。
 教 この人がお話の中心になっている人です
  ね。きょうは、野中到とはどんな人か、それ
  を読んで調べましょう。(教材の始め)
イ教 私はこんなことを勉強したいということを 
    言ってください。
 児 なぜ漂流したのか。
 児 何を観測したのか。
 児 乗組員の様子。
 児 いかだ「日本海号」はどんな船か。
 教 (板書する。)それでは、今、発表してもら
  ったことを本を読んで調べましょう。読みと
  れたら、それをノートに書いてみましょう。
  (教材の始め)
ウ教 きょうは何を勉強するのですか。
 児 宮沢賢治の考えを調べます。
 教 宮沢賢治はどんな考えを持っていたか。
 児 実行をどうしたか。
 教 きょうは、宮沢賢治の実行したことから、
  どんな考えがわかるかを研究するのでした
  ね。さあ、みんな本を読んで考えてみましょ
  う。(一時間の始め) 

 一年から六年まで、目的を持たせるための指導とその折の発問を具体的にあげた。これらを
通じてみると、目的の持たせ方にそれぞれ特徴があり、発達があることがわかる。もちろんこ
こにあげたものは、すべてすぐれた発問だというのではない。これまでに採集した発問を、整
理してみただけである。これらを参考にしてくふうされたい。


                                           142
 (二) 学習計画を立てる指導と発問
 学習の目的に従って、学習の計画を立てる。計画に従って学習を進める。
 計画には、単元の学習の計画・教材の学習の計画・一時間の学習の計画がある。この計画に
は、学習の順序次第を定めるものから、学習の方法にまで及ぶものもある。だいたい教師と児
童との話し合い、あるいは教師の指導によって立てられるのが普通である。
1 単元の学習計画と発問(一年)

一 単元 おもいでぶくろ
二 学習目標
  思い出袋を作って、これまでの作品を整理し
 たり、思い出になるものを考えて取材し、絵や
 文にかいて、一年生の思い出とし、二年生にな
 る心の準備をする。
三 学習内容
学 習 活 動  学 習 亊 項 
技能・態度  言語要素
1思い出袋を作る。
2思い出袋にはどん
 なものを入れたら
 よいかを話し合い
 カードに書く。 
1何を言おうと
 しているかが
 相手にわかる
 ように話すこ
 と。 
1「、」
 に注意
 し、ま
 た「。」
 をうつ 
3これまでの作品で
 思い出袋に入れた
 らよい物を整理す
 る。
4友だちの絵を書
 く。
5友だちの作文を書
 く。
6思い出袋をカード
 と比べて整理す
 る。
7思い出袋を交換し
 て読む。 
2話の内容をだ
 いたい聞きと
 ること。
3はっきり返事
 をすること。
4何を言おうと
 しているかが
 わかるように
 書くこと。
5書こうとする
 気持ちを養う
 こと。 
 ように
 するこ
 と。
2文字の
 形に注
 意し、
 筆順に
 従って
 書くこ
 と。 
四 学習計画(六時間)

  143
 1 学習の目あてを決め、思い出袋を作る。(一
  時間)
 2 思い出袋に入れるものを決め、カードを作
  る。(一時間)
 3 これまでの作品を整理し、思い出袋に入れ
  るものを選ぶ。(一時問)
 4 仲よしの友だちの絵を書く。(図工二時間)
 5 絵を見ながら友だちの作文を書く。(一時
  間)
 6 思い出袋を整理しカード(目次)と内容を
  照らし合わせる。(一時間)
 7 思い出袋を交換して友だちと読み合う。(一
  時問)
五 学習指導
o本時の目標 ともだちの作文を書き、一年生の
 思い出とする。
o本時の学習活動
 1 学習の目的を持つ。
  教 思い出袋を出しなさい。カード(目次)
   も出しなさい。カードを見て、きょう何の 
    勉強するかわかる人。
 児 友だちの作文です。
 教 きょうは友だちの作文を書きましょう。
2 学習の方法を考える。
 教 カードをしまって、きのう書いた友だち
  の絵を出しなさい。
 児 (友だちの絵を出す。)
 教 これは神谷さんがかいた絵です。何の絵
  かよくわかりませんね。みんなの絵は何の
  絵か、お隣りの人に教えてあげなさい。
 児 (隣りどうし絵を見せて話し合う。)
 教 お話したいことがいっぱいありますね。
  この絵にかいたことを作文に書いてもらい
  ましょう。お友だちのことをどう書くか考
  えてください。だいは、ひとりひとり考え
  て書きなさい。
 児 (各自絵を見ながら作文を書く。)
    (東京都文京区立真砂小学校伴定子さ
    んの指導記録) 

 この単元指導の特徴は、大きな思い出袋を用意し、思い出になるものを入れて保存する。何
を入れるかを話し合って、学習活動を計画する。すなわち、今までの作品を整理して入れる。


                                           144
友だちの絵をかいて入れる。友だちの作文を書いて入れる、というようにして、単元の学習計
画を児童とともに話し合って立てたところにある。しかも、それを目次としてカードに書きこ
み、そのカードによって、毎時の学習の目的・計画が立つようにくふうされている。本時の学
習も、そうした全体計画の上に立って計画されている。
2 学習の方法の計画と発問(二年)

一 単元 かぐやひめ
二 学習目標 月の世界を背景にした美しく幻想
 的な古典童話に親しみ、ゆたかな心情を養う。
三 学習内容
学習活動 学 習 亊 項 
1 「かぐや
 ひめ」を読
 む。

2 童話を話
 す。 
1 童話などを話すこと。
2 順序に従って意味を読み
 とること。
3 順序に従って話すこと。
4 みんなに聞こえるように
 はっきり話すこと。 
四 学習計画
 1 全文の読みと話し合い。(二時問)
 2 段落にくぎって深く調べる。(七時間)
 3 絵によって物語のあらすじを話す。(一時
  間)
 4 文字・語句の練習。(一時間)
 5 まとめ。(一時間)
五 学習指導
 1 本時の目標 童話のあらすじを話して楽し
  む。
 2 本時の学習
  教 お友だちのかいた絵(かぐやひめ)です。
   よく見ていてね。(絵を黒板上に並べる。)
   たいへんよくかけているでしょう。これは
   だれかがかいた絵。
  児 米田さん。
  教 (絵と米田さんを見比べながら、)どこが
   むずかしかった?
  児 (米田さん)竹のところ、かぐやひめの着

145
   物、手のところ。
  教 きょうは絵を見ながら、かぐやひめのお
   話をしましょう。お話をするときは、どん
   なことに気をつけてたらいいでしょう。よ
   く考えてみましょう。
  児 はっきり話す。
  教 それから。
  児 口をあける。
  教 それから。
  児 o下を向かないで前を向く。o切るとこ
   ろはちゃんと切る。oたいせつなことを忘 
     れないで。
  教 (板書する。)この五つの事に気をつけて
   話せばいいのですね。本の通り話さなくて
   もいいですよ。(始めのほうを少し話して
   聞かせる。)
   さあ、お話のしかたがわかりましたね。
  児 (絵に従って、九場面を、場面ごとに、
   前へ出て話す。)
    (東京都北区立滝野川第一小学校、並木
    田鶴子さんの指導記録) 

 この指導では、説話を絵に従って、場面ごとに区切って話させた。話す前に、話し方につい
て、児童といっしょにまとめて板書した。板書事項に気をつけながら、児童に話させた。条件
をあまりたくさんつけるとかえって児童は話しにくくなるから注意を要する。しかし、児童と
いっしょに話し方を相談しながら考えていく方向をとっているところがよい。
3 目的に応じた方法の計画と発問(四年)

一 単元 楽しい読書
二 学習目標
  読書会を開き読んだ本を知らせあって、読書
 の楽しさを感じとるとともに、自分の読んだ本
 を記録して読書生活を高めることができる。
三 学習内容
学習活動  学 習 事 項 
1「読書会」を
 読む 
1 要点を読みとること
2 考えをまとめながら 

146
2 読書会の計画
 をたてる
3 よい本を選ん
 で読む
4 「わたしの読
 書ノート」を読
 む
5 読書ノートを
 書く
6 読書会を開く
7 よい本をロー
 マ宇で掲示する 
 話すこと
3 知るため楽しむため
 に本を読むこと
4 書こうとすることを
 まとめて書くこと
8 常体で書くこと
6 横書きに慣れること
7 意味のまとまりごと
 に区切りをつけて話す
 こと
5 簡単なローマ字書き
 の文が読めること
四 学習計画(「読書ノート」の指導の部分だけを
 あげる。)
 1 目的を持つ――読書ノートの必要性を明
           らかにする。
 2 計画をたてる――何について書くか。
           どのように書くか。
           何を記録するか。
           「読書ノート」を読む。
 3 目的を追求する――読書ノートを書く。 
   4 目的を達成する―読書ノートによって本を
           紹介する。
 5 検討―読書ノートを比べる。
五 学習指導
 1 本時の目標 読書ノートの書き方を理解す
  る。
 2 本時の指導
  教 きのう読書会の計画をたてましたね。ど
   んな順序で読書会をしますか。
  児 ハイ、出席番号順です。
  教 出席番号順に、読んだ本を紹介してくれ
   るんですね。どうしたらうまくできるだろ
   うね。
  児 o一生懸命やる。o学校から帰ったら、
   童話の本などを読んで、どう話したらよく
   わかるか、まとめておくといい。o童話の
   本などを読んで練習して発表する。(その
   他意見あり。)
  教 何かを見て話してもいいんだよ。
  児 oノートを見て。o本を見て。
  教 ノートに書いておいて話す。ノートに書
   くことを何というか知っている? 

147
児 日記です。o記録です。o読書記録です。
教 ノートに書くのは読書記録ですね。
 (板書・読書記録)
教 読んだことをまとめて書いておいて、話
 すなら話せるか。
児 はい、できます。
教 読書記録を書いて、それを見て話せば読
 書会で話せますね。このほか、読書記録を
 書くといいことがありますか。どんないい
 こと。
児 o終わりになると、ぼくもこういうこと
 があったんだなということがわかります。 
 o四年生の終わりにノートを調べると、ぼ
 くもこんな本を読んだんだな、こんなこと
 を考えたんだなということがわかります。
  教 読書会で話せたり、四年の終わりになっ
 て読んだ本がわかったりしますね。それで
 は、その読書記録の勉強をしましょう。
教 どういうふうに読書記録を書けばいいだ
 ろうか。
児 o本を読めばわかります。o国語の本の
 六一ページを読めばわかります。
教 題目は?
児「わたしの読書ノート」です。
教 それを読めば、読書記録は、どんなこと
 をどう書けばいいかがわかりますね。それ
 を勉強しましょう。
   (東京都墨田区立言問小学校中津留喜美
  男さんの指導記録 記録者 中沢) 

 児童たちが考えて計画した読書会に備えて読書記録の学習をする。その計画に従って、この
時間は、目的を持つ、計画を立てる、目的を追求する、目的を達成するという指導過程をとっ
て学習指導が行なわれている。読書記録の必要性、機能を明らかにし、読書記録の書き方を調
べる方法を考え、それによって書き方を研究する。それを発問によって、巧みに指導した。
4 目的に応じた方法の計画と発問(六年)

一 単元 のびる航空路 二 学習目標

  148
  世界各地の様子を説明した文章や紀行文を読
 んで各地の特色を知り、世界に目を向けること
 ができる。
三 学習内容
学習活動  学 習 事 項 
1「のびる航空
 路」を読む
2 読み取ったこ
 とを説明する
3 その他の国の
 特色を図書館で
 調べる。 
1 目的に応じて必要な
 細部を読みとること
2 要点を抜き出したり
 全体を要約したりする
 こと
3 調べるために読むこ
 と
4 話の順序を決めて話
 すこと。
5 文と文の接読・段落
 相互の関係に注意して
 読むこと。 
四 学習計画(総時数一一時間)
 1 世界の国々について話し合い、学習計画を
  立てる。(目的を持つ)
 2 どんな所へ行ってみたいか読む。(目的追 
    求)全体的な読み(以上二時間)
 3 各地の特色を読んでノートに記録する(目
  的追求)分析的な読み(四時間)
 4 ローマ宇文を読む。(目的追求)(一時間)
 5 全文を読んで記録を確かめる。(目的追求)
  総合的な読み。(一時間)
 6 記録をもとにして各地の特色を説明する。
  (目的達成)(一時間)
 7 図書室で、他の土地の特色を調べて記録す
  る。(適用)(二時間)
五 学習指導
 1 本時の目標
  ハワイ、サンフランシスコの特色を知ること
 ができる。
 2 木時の学習
  (1) 学習目標を話し合う。
 教 きょうはどんなことを学習しますか。学習
  計画ですね。
 児 国ごとの特色を調べる。
 教 何のために調べるのか。
 児 ほかの国と比べてわかりやすくするため。
  o私たちの考えていた国とどう違うかを調べ 

149
  る。
  (2) 学習方法を話し合う。
 教 それを、どんな方法で調べるか。
 児o個条書きに書いて。o見出しをつけて大事
  なことを個条書きにする。
 教 みんなが見やすい方法でまとめなさい。
  (3) その方法に従って学習する。
 教 はじめにどこの国へ行ったかを調べる。そ
  して、プリントに書いてもらいます。
 児 (各自読みながらプリントに読みとった事
  項を記入する。)
 ハワイの段落だけを読んで、プリントに記入す
る。読解がすむと、それを発表し合って検討し、
正しいものを板書する。こうして、ハワイの段落
の要点の読み取り方を理解させ、以下の段落で
は、プリントの項目(読解の観点)を次第に大き
くしたり、省いたりし、四段落めには、自分の力 
  で要点が読みとれるようにする計画になってい
る。板書は次のとおり。
 学習の目あて
  国ごとの特色を調べる。
 方法
  見出し
  小見出し
 例
  ハワイ(見出し)
   アメリカ合衆国五十番めの州
   住民の四〇パーセソトが日本人系
   さいばい\
        >従事
   漁  業/
  オアフ島(小見出し)
   ハワイ諸島中央部(以下省略)
     (東京都墨田区立言問小学校中津留喜美
    男さんの指導記録 記録者 中沢) 

 整然とした指導過程によって、学習が進められている。特に、段落の要点を押えて読む学習
が計画されており、その点では新しい試みがなされているが、それは省略して、今は、目的・
方法の確立を中心とした発問だけを掲げた。


                                           150
 学習の目的を明確にし、目的追求の方法を確立して学習にはいるというような教室は少な
い。ここに掲げたものは、数少ない事例のなかから特に選んだものである。一時間を通して詳
細な記録があるが、必要な個所だけを摘録した。
 (三) 目的追求(価値追求)のための指導と発問
1 目的追求ということと発問

 学習の目的を立て、目的追求への方法を考える。その方法に従って目的を追求する。目的と
いうのは、すでに述べたように、生活的学習的な目的と価値的な目的とに分けられる。それ
は、いずれも児童が学習活動を営むときに目がけるものである。このような生活的価値的な目
的を追求する過程で国語の能力を養成するのが国語教育の本道である。たとえば、文章を読ん
で、その内容を理解する、その内容的価値を身につけると同時に、その文章を読むのに必要な
文字力・語い力・文法力・読解の諸技能を養成するのが、読解学習の本道である。
 したがって、目的を追求するための発問は、必然的に内容的価値を追求するための発問とな
る。しかも、内容的価値を追求する過程で国語の能力を養うのであるから、その発問は、内容
的価値だけを追求する、国語能力だけを追求するものであってはならない。内容的価値の追求
とともに国語能力の養成も考慮した発問でなければならない。すでに指摘したように従来の発
問は、価値か技能かいずれかの一方に偏しやすかった。この両者を統一した発問のくふうがた
いせつであるし、これからの国語教育をより確実にし、より合理化し、より機能化する上にお
おいに役だつと考えられる。
2 目的追求の方法と発問


                                           151
 目的を追求する。つまり、内容的価値を追求するためには、当然、聞く・話す・読む・書く
言語活動を営む。その言語活動を営むときに国語の能力を養成する。
 そこで、価値追求のための言語活動の方法を考えておくと便利である。たとえば要点を押え
て読む技能養成の方法にはどんなものがあるか、段落にまとめて読む技能養成の方法にはどん
なものがあるか。主題を読みとる技能養成の方法にはどんなものがあるかというように、技能
養成の方法を考えておくとよい。
 そのような技能養成の方法と価値の追求とを結合すれば、そこに、価値・技能一体となった
発問が考えられるのである。たとえば、要点を押えて読む技能養成の方法をあげてみると、
(1) 段落に書かれていることがらを全部書き出す。その書き出した事項について、要点を選
 ぶ基準に照らして大事であることと大事でないことを判断し区別する。そして、要点を抑え
 る。
(2) 段落の要点を読みとって個条書きにする。
(3) 表(要点を読みとる観点を含んでいる)に読みとったことを記入する。表解する。
(4) 読みとるべき要点の数を示して、読みとらせる。
 などいろいろな方法がある。また、文章の内容に即して考えると、
(1) 順序を読みとる。        (5) 経過を読みとる。
(2) 要素を読みとる。        (6) 特色を読みとる。
(3) 変化を読みとる。        (7) 異同を読みとる。
(4) 構造を読みとる。


                                           152
などが考えられる。つまり、順序はどうなっているか。どのように組み立てられているか。何
と何によって組み立てられているか。だれがどこでどうしたかというような観点に立って読ん
でいくと要点を読みとる基準が出てくる。次に例をあげてみる。

 三年生、返事の手紙の要件を読みとる指導。
 問い合わせの手紙――夏休みにおじゃましたい
が、何日におじゃましたらよいかを問い合わせ、
依頼する手紙。おじさんに当てた手紙。
 返事の手紙――いつおじゃましたらよいかとの
問い合わせに対する返事。近況を知らせた上、何
日にくるようにと期日を指示した手紙。
 上のような返事の手紙の用件を読みとる。
 教 これはだれがだれに出した手紙ですか。ど
  んな手紙ですか。
 児 夏休みに、いつ行ったらいいかと聞いた手
  紙の返事。おじさんが出した。
 教 おじさんが知らせてきたことをみんな書き
 出してごらんなさい。
児 (各自、おじさんが知らせてきたことを全
 部書き出す。)
教 書き出したことを言ってごらんなさい。
児 (発表する。)
教 おじさんが知らせたことのうちで、いちば
 んだいじなことは、どんなことですか。
児 七月二十八日にいらっしゃいということで
 す。
教 なぜですか。
児 いつおじゃましたらいいかと問い合わせた
 手紙の返事だから。

 こうした指導によって、手紙の内容がじゅうぶんに理解されるとともに、手紙の要件の読み
取り方がわかり、要件を読み取る技能が身につく。
 五年の読解教材に「進水式」という文章がある。この文章で進水式の模様を読み取るととも
に要点を押えて読む技能を養成しようとする。その場合、進水式の模様も理解され、要点を読


                                           153
み取る技能も身につくような学習活動を課す発問をくふうしなければならない。この文章に
は。進水式の次第を順を追って述べている部分がある。そこで次の発問をする。
 教 進水式はどんな順序で行なわれたか、式の順  しょう。
  序とその様子がわかることばを書き出してみま
 児童は、発問に従って、ノートを二段に区切り、上の段には、式の順序を、行なわれた順に
書き出す。その下にその時の様子を表わしている大事な語句を書き出していく。進水式の状況
を想像し、推量しながら。
 書き出した式の順序を示すことばが要点である。この要点の適否を児童とともに判断する。
その判断の基準は、「進水式の順序を表わしている」ということである。
 このようにすると、児童は、進水式の順序や状況を読みとって理解するとともに、要点の読
み取り方がわかり、要点を読み取る技能を身につけることができる。
 さきにあげた、中津留喜美男さんの「伸びる航空路」の指導においても、すでに指摘した
が、「各国の特色を読み取って比べる」という発問――読解活動によって、各国の特色を知る
とともに、要点を押えて読む力を身につけることができた。その方法は、第一段落は、さきに
述べた方法で共同で要点を読み取り、第二段は、第一段で学習した、要点の読み取り方と要点
を読みとる技能を生かして各自要点を読みとる試みをし、さらに共同作業で要点を整理し、第
三段、第四段は左の表に各自書き込ませたのである。


                                           154


三段 oサンフランシスコ
 太平洋岸の       
 市の中心部―ビルディングが   している
 都心をはなれる―      
                美しい
               
 (1) 金門橋
           を結ぶ
   長さ       
 (2) ベイブリッジ
         の橋
               をつなぐ
   上             
四段   oニューヨーク
           の大都市
           
           ├代表する都市
          
(1) ナイアガラのたき(そのとちゅう)
       にかかる     のたき
 はば     高さ         
(2)        
                 の建物
(3)       
                   

次に、東京都板橋区立下赤塚小学校の笛木興治さんの【光とことば】の指導記録を喝ずる。

三年 単元「光とことば」の読解指導
本時の学習
1 学習目標
  第一の場面を詳しく読んで、信号機の光の働
 きを理解する。
2 学習指導
(1) 目的 目的を確認するために話し合う
(2) 追求 信号機の役めを知るために読む
(3) 獲得 読み取ったことを整理するためにカー
     ドに書く。

155
(4) 確認 この時間に学習したことを確認するた
     めに読む。
教 この前「光とことば」を読みましたね。どん
 な光のことばが書いてありましたか。
児 o信号機o合図燈o鉄塔の光o飛行機o赤ラ
 ンプの光o燈台の光(児童次々に答える。)
教 まだありますか。小川さん全部まとめて言っ
 てください。
児 (全部まとめて話す。)
教 そういういろいろの光がどうしているのです
 か。
児 o注意をしている。oことばと同じ役割をし
 ている。
教 本には何と書いてありますか。
児 やくめ。
教 きょうは、四九ページを調べましょう。ここ
 には、何の光のことが書いてありますか。
児 信号機。
教 信号機が、どこでどんなことをやっているの
 か読んで調べてみましょう。 
  児 (黙読。)
教 信号機はどこにありますか。
児 都市の四つかど。
教 どういう都市の四つかどですか。
児 にぎやか。
教 では信号機は、光と同じようにどんな役めを
 していますか。
児 交通のさしず。
教 どんなふうにさしずをしているのか、よく読
 んで調べましょう。いま、カードをあげますか
 らそれに書いてください。
〔しんごうき〕
   人  
   人  
 車
やくめ   
 

このような学習によって、「信号機」のやくめが理解され、同時に要点の読み取り方、要点


                                           156
を読みとる技能が養成される。
 この学習では、「小川さん、全部まとめて言ってください。」「信号機がどこで、どんな役
めをしていますか。」「どんなふうにさしずしているか読んで調べましょう。」などの発問が
重要である。
 以上は、文章の内容を理解するとともに要点を押さえて読む技能の養成を考えた発問であ
る。                    
 このように文章の読解においては、内容的に接近する(主題的接近法)ことを原則として技
能養成を考えることがたいせつである。
 四 目的達成(価値獲得)のための指導と発問
 学習の目的を立てて目的を追求し、達成する。たとえば、文章を読んで、その内容を理解す
る。主題や意図を読みとる。つまり、文章を読むに当たって、その内容としての知識や情報・
思想や心情を読みとろうとする。そのような価値的目的を持つ。その目的を達成するためにい
わゆる読解学習をする。その結果、知識・情報・思想・心情等が身につく。つまり、文章の内
容的価値を身につけることになる。そこで、はじめて目的(価値的な目的)が達成されたと言
える。
 このことは、学習の成立・学習の完成を意味する。そこでこの段階では、知識をまとめる。
理解を深める。それを自己知識体系の中に組み入れる。思想を整理する。心情を豊かにする。
それに対する感想をまとめる。批判をする。それを自己の思想体系の中に位置づける。そのた
めの発問は、


                                           157
 (1) 知識をまとめ、整理する。
 (2) わかったことをまとめて、確認する。
 (3) 読みとったことに対して感想を持つ。
 (4) 読みとっだことについて批判する。
 (6) 読みとったことがらの意味を明らかにする。
 (6) 読みとったことがらの表わす意味をまとめる。主題を深める。
 (7) 読みとったことがらの共通点、原則等を理解する。
 (8) 分析的に読みとったことを総合する。
などの学習活動・思考活動・精神活動などに対して発せられる。次に、その際の発問の例を掲
げる。
 (1)「これまでに調べたことを、もうせんごけの虫を取るしくみ、虫の捕え方に分けてまと
  めてごらんなさい。」
 (2)「Aさんが動物園へ行って見たものを見た順に書いて、その様子を話してごらんなさ
  い。」
 (3)「ひらがなはどのようにしてできたか、またその長所・短所をまとめて言ってごらんな
  さい。」
 (4)「読書について、言おうとしていることを書き出し、それに対する感想をまとめてごら
  んなさい。」
 (5)「作者が、読み手に知らせようとしていることをまとめて言ってごらんなさい。」


                                           158
 (6)「心に背景を思い浮かべてごらんなさい。」
 (7)「宮沢賢治はどういう人であったか、今まで調べたことをまとめて書いてごらんなさ
  い。」
 (8) 宮沢賢治についてどう思うか、感想を話してごらんなさい。」
 (9) なぜ多くの人々が協力して鉱夫の命を助けたのか考えてみよう。」
 以上読解の場合について述べたが、作文の場合だと文章が書き上がったあとで、書く時の目
的に従ってそれを処理をすることによって目的を達成することになる。手紙ならそれを投函す
る。掲示文は書いて掲示する。記録はそれを保存して、次の研究や生活に役だてる。家の人に
知らせるために書いた文章だったら、家に持ち帰って読んでもらう。友だちに訴える文章だっ
たら互いに読み合うか紹介し合う。読書紹介文だったら綴じて回覧する。読書記録はそれを書
き続けて、読書生活の反省改善に役だてる。感想文は文集にしてお互いに読み合う。
 このように、文章を書く時の目的に従ってそれが達成できるように、児童が処理することに
よって学習は完了する。
 発問は、このような見通しの上に立って、それが積極的に計画的に行なわれるようにすると
ころにくふうがある。 


                                          159

     第三章 発問と学習指導の実践的研究


       一 発問の実態とその考察

 国語教室で、発問はどのように行なわれているか、その実態を明らかにすることは、発問と
学習指導との関連を考え、さらに発問のくふうをする上にきわめてたいせつなことである。
 採集した発問を、分類整理する場合、いろいろな方法が考えられる。
 (1)学年別に整理する。(2)形式別に分類整理する。(3)機能別に分類整理する。(4)学習活
動の類型別に整理分類する。(5)内容別に整理する。などがあるが、ここでは、主として、機
能別に分類整理した一部を紹介し、現在の国語教室で行なわれている発問の実態を知る参考に
したいと思う。
 (一) 学習にはいる最初の発問
1 発問の実態
 低学年の発問

(1) (「すなあそび」と板書し)きょうはきのうの
 続きをやろうと思います。(「おはなしをするよ
うによむと板書)ご本を出してすな遊びのとこ
ろをお話をするようによみます。これはだれと

160
 だれのお話でしたが。
(2) 国語の勉強をしましょう。きょうの勉強は
 ね、(「おはなし」と板書)お話をするとき、話
 す人はどういうふうにしたらいいか、聞く人は
 どう聞いたらいいか、考えてごらん。(児童、
 知ってる。知ってるという。)このごろかぜが
 はやって休んでる、かぜの時のお話、日曜のお
 話、そのお話をしてもらいたい。
(3) 今までラジオ遊びを続けてきましたが、おも
 しろかったですか。きょうは最後のラジオ遊び
 です。しっかり勉強しましょう。この間のお話
 を録音しましたから聞いてみましょう。録音の
 中には、いろいろな人の声がはいっているか
 ら、どの子のお話がじょうずなお話か、言って
 もらいますからよく間いてください。
(4) この間見学にいきましたね。何を見てきまし
 たか。(おみや・花・からすのうち・すばこ。)
 見学に行って楽しかったこと、おもしろかった
 ことをお話してもらいます。
(5)(掛図を示して)何をしているのでしょう。
 にこにこしているね。これは(うさぎ・ひろこ
 さん)みんなはなにをしているの?(見ている   
   の。あてっこしているの)あてっこ?(動物の
 まねをしてあてるの.)名まえをあてるの?(名
 まえをあてるの、書いてある。)名まえあてとい
 う遊びなのね。みんなもやりますか。(やる。)
(6) きょうは何の勉強?(おどるかげえ)おどる
 影絵のどんなことを勉強するの。(作り方)お
 どるかげえの作り方を勉強するのですね。(以
 上は一年)
(7) きょうはどこでしたか。(きせん。「(三)きせん」
 と板書)では読んでもらいましょう。読める人。
(8) それではお勉強を始めましょう。ご本を開い
 てくだざい。土曜日までにお勉強したことはど
 ういうことだったでしょう。こういうことを勉
 強したということをお話してください。
(9) きのうはね、お勉強した「もうくろ」のお話
 でしたね。もうくろのお話で、おもしろいなあ
 と思ったとこはどこだった。
(10) どんぐりだんごのところをずっと勉強しまし
 たね、今まで勉強したのを思い出してみます。
  絵を掲げる)これはどういう場面ですか。初
 めの場面から簡単にお話してください。(以上
 二年生)

                                           161
 中学年の発問

(1) きのうみんなに書いてもら。たでしょう。な
 に書いたっけ。(児童いっせいに、感想)みん
 なの感想をまとめたらこのようになりました。
 どんなことに感心しましたかということで、
  「雨つぶたちがお百姓さんのために降ってや
  った。勇気を出した」が二四人。(以下省略)
 この感想によって、出てくる人の性格を考えて
 みましょう。
(2) きょうは、この前の時問に何を勉強しました
 か。(「にいさんのとこや」)一度読んでみたらど
 うだったの。(おもしろかった。)おうちで読ん
 できた読める人。
(3) 不思議な草や木について勉強しましたね。そ
 の中で何について勉強しましたか、(いっせい
 に、「もうせんごけ」)どうやって虫をとって食
 べるか絵に書いてもらいました。その絵を見な
 がら、どうやって虫をとるか、どうやって食べ
 るかを、どんな順序で話したらよいか、グルー
 プごとに調べてみましょう。
(4)(板書「町へ行ったカシム」)どういうことが
 書いてあるか、だれが何をやったか、それはど   
 こでやったかを考えながら一度読んでみましょ
 う。
(5) みなさんは、ドッジボールを喜びますね。ド
 ッジボールはどうしてそんなにうれしいのです
 か。(なんとなくうれしい。ぶっつけるとすご
 くいい気持ちなど)(ドッジボールと板書)主
 人公はだれ。(以上三年)
(6)
ファーブル
文の組み立て――だんらく四つ 
  一だん
 板書後、では、まゆみさんの列ちょっと言っ
 て。(児童、「ファーブルの性質は」と発表)
(7) 最初二、三分だけ、この前の時間にどんなこ
 とを習ったか、ずっと目で読んでごらんなさ
 い。
(8)「手ぶくろを買いに」はどういうお話が、書い
 てあるか、言ってください。だいたいでいい。
 (答なし。)ではこの前まとめたノートを出して。
(8)「児童が調べた話の表」が黒板にはってある。)
 きょうは、さされたお話をしてください。どん

162
 なことに気をつけて話したらいいか。(児童・話
 すとき・聞くときの注意をあげる。)では「雪の
 女の子」の話をしてください。
(10) きのうは、物の名まえを、どんなことをもと
 にしてつけたかを調べましたね。復習してみま
 しょう。発表してみましょう。
(11) この文では、どんなことばで大阪が説明して 
   あるか、読んでみましょう。
(12) きょうは、メモを使っていい作文を書くには
 どうしたらいいか。はじめに、さっき返した作
 文とメモを比べて、自分でどんなことを書いた
 か、一応考えてみる。メモを使わないで書いた
 ときの作文と、どこが違うか、自分の作文だか
 らわかるな。(以上四年生)

 高学年の発問

(1) きょうこれから勉強する単元の名は何といい
 ますか。単元というのは勉強のまとまりのこと
 です。(「文字のいろいろ」) 「文字のいろいろ」
 という単元の勉強をします。読んできた文章に
 はどんなことが書いてあったか。
(2) この文で(「関門トンネル」)「しまった」と思
 ったことがある。あててごらん。一度黙読して
 もらいます。わからない字があったらノートに
 書いておきなさい。
(3) きょうは、国語の本はいりません。どんなお
 勉強するか、昨日はグループに分かれて相談し
 たことは何ですか。朝の自習のことで、みんな
 で相談したときのことを録音しましたね。これ
 からその録音を聞いて、どういう話し方が相手
 にわかるかということを勉強します。わかりま
 したか、録音を聞く時にはよくそういうことを
 考えて聞きます。そのほかに何か気のついた人
 は言ってください。
(4)(第一段落を黙読している。)きのう読んだこ
 とを思い出す。きょうは、プリントによって勉
 強します。第一印象についてのプリント、一番
 を読んで。(音読)これについてどう思う。
(5) きのうの勉強は何?(「海より低い国」)「低
 い」が書けるか。(空書する。)オランダで何を
 思い出すか。(風車)作者は読む人に何を知ら
 せようとしたか。
(6) 土曜日に書いて下さったのを分けてみまし
 た。全部読み通して短い文で題名をつけてもら

163
 いました。それを整理して、同じようなのをま
 とめて書きました。どれがよさそうでしょう
 ね。本の中味を一ばんよく言い表わしている、
 そういう意味でつけたのですね。きょうは、読
 書はどうしたらいいかを作者が述べていること
 を調べたいのです。(「読書の何についてどうし
 たらと作者が述べているのでしょうか。」と板
 書)何について言おうとしているか、文をよく
 黙読してください。
(7) きょうは「らくがき」という作文の勉強をし
 ます。みなさんはらくがきをしたことがありま
 すか。どんならくがきをしたかお話できる人。
  (以上、五年)
(8) きょうはどんなことを学習しますか、学習計
 画ですね。(国ごとの特色を調べる)何のため 
   に調べるのか。
(9) まず、最初から読んで、漢字・語句に注意し
 て音読してみましょう。(音読)読みやアクセ
 ントでまちがったところはありませんか。
(10)「日本の芸術」の勉強のしかたを相談して、
 「日光」からはいることになりましたね。建築
 の美しさの四つの特徴を調べるのですが、はじ
 めに、「日光東照宮」のその文をよく読んで、
 東照宮の特色をつかんでほしい。初めてだから
 読んでもらいます。
(11) きょう勉強するところを読んできた人(挙
 手)きょう勉強することは何。
(12) 長い文章をまとめるときにはどんな方法を
 とるか。(文章を切ってやる。)どういう考え
 方で切るか。(以上、六年) 

2 発問の実態の分析
 学習を始める最初にどんな発問をするか、その実例を一年から六年まで、代表的なものをあ
げた。できるだけ重複を避けたから、普通の教室――ただし、いわゆる研究授業の際の――で
は、どのように学習を開始するか、その実態がよくわかるように思う。発問のことばは、実際
のままで、手が加えてない。
 もちろん、これは発問の間題だけでなく、学習指導の考え方や方法と密接に結びついてい 


                                          164
る。この初めのころの発問は、その一時間の学習の目的・内容・方法等についての構え、発想
を示すものと言える。そういう点から考察してみたい。
 (1) 学習の主導権は教師がにぎっている。
 どの学年のどの国語の時も、児童はつねに学習させられているという感じである。学習の目
的も内容も計画も方法も教師が考え、くふうし、判断し決定している。児童は、そのレールに
ただのせられて動いていく。もちろん、中には、児童と協議の上で、あるいは児童たちが中心
になって学習にはいる学級もある。しかし、それは、きわめてまれな例である。
 したがって、一般に学習が消極的である。児童も、教師が考えた、教師に与えられた間題、
課題を考え、解決するのであるから、いきおい、消極的にならざるを得ない。
 (2) 児童の主体性を尊重する。
 学習者は児童である。教師は児童の学習の補助者、指導者である。このわかりきった事実を
実現することに努力したい。
 児童の主体性の確立した学習でありたい。一年生は一年生なりに、六年生は六年生なりの学
習のはいり方がある。その時間の学習の目標を、児童にはっきりと認識させ、確立させたい。
目的を自覚した学習、目的に応じた方法を理解した学習、積極的に、意欲的に行なわれる学習
を望みたい。発問も、そこから出発し、それを基礎として、そのような学習が行なわれるよう
にくふうすべきである。そして、児童の意欲的な積極的な構えを作ってやらなければならな
い。
 (3) 最初の学習のさせかたと発問   


                                           165
 最初の契機となる発問がどのように行なわれているかを分類・整理してみると次のようにな
る。
 ア 復習型
 この型は、前の国語の時間に学習したことを復習するところから学習を開始する。従って学
習の記憶をたどり、それを思い出すところから学習が始まる.この型のねらいは、(1)記憶を介
して、前時の学習と本時の学習とをその限りにおいて結びつける。(2)前時に学習したことをさ
らに整理し、体系化しておいて、そこに新しい学習事項を結びつける。つまり、一つには前時
の学習事項を想起させて、新しい学習への精神的な橋渡しをする。――興味・関心・親しみ・
意欲などを喚起する。二つには、既習の学習事項を整理する。既習の学習事項と新しい学習事
項との関連をはかる。既習事項と、新しい事項とを組織化、体系化する。このように学習内容
の関連を考える。そこに復習型のねらいがある。
 そこで、発問も、(1)前時の学習を思い出させる、(2)前時の学習はおもしろかったか、楽
しかったか。(3)学習がよくできたかどうか、というようなことと、(4)どんなことを学習した
か。(5)学習したことをまとめてみる。(6)学習したことを再現してみるというようなことにつ
いて発せられるのが普通である。
 ところが、実際には、このような発問には案外答えられない。よく指導案に「前時の復習五
分」などと書いてあるが、予定通り進むのはごくまれである。たいていは五分が一〇分になり
一五分、二〇分になってしまうことも決して珍しくはない。
 そこで、いろいろなくふうがなされるから復習をさせるのにも自然いく通りかの型ができ


                                           166
る。
 (ァ) 学習したことを思い出させて言わせる型
 (ィ) 学習したところを読ませてから言わせる型
 (ゥ) 学習したことを絵に書いておいて、それを見ながら思い出して言わせる型
 (ォ) 学習したことについて問答しながら言わせる型
 (ヵ) 学習した題材・主題を板書して思い出させて言わせる型
 このような形で行なわれる復習は、実は、記憶のテストをするようなものである。社会科や
理科などのような知識を体系的に学習する教科では重要であろうが、国語科のように、ことば
やことばの機能を中心に学習する教科では、さほど重要ではない。もし、前時に学習したこと
ばや技能がどれだけ身についたかを知ることができるならば、それを知って、そこから学習は
出発すべきであろう。
 イ 経験型
 学習することがらについて経験したことがあるかないかについて話し合うことを学習の出発
点とする型である。
 この場合にも二つの型がある。一つは、経験したことを契機として学習を始める場合であ
り、他の一つは、経験そのものが学習の内容となる場合である。
 ウ 説明型
 この型は、学習の目標・内容・学習事項や学習の方法について、説明・解説して学習にはい
る型である。


                                           167
 エ 問題型 
 この型は、学習の始めに当たって、課題を出し、それを解決するために学習を進める型であ
る。この場合にも、問題を教師が与える場合と、児童と話し合って、問題を設定する場合とが
ある。また、課題の内容が、知識である場合と、学習の方法や技能である場合とがある。
 オ 感想型
 この型は前時に書いた感想を契機として学習にはいる型である。書かれた感想を分類・整理
して感想の実態を明らかにしておいて、それについて話し合ったり、考え合ったりして学習を
始める型である。
 カ 問答型
 この型は、学習事項について問答しながら、しだいに学習へとはいっていく型である。この
場合にも教師との直接問答によって学習にはいるときと、掛図、写真などを介した問答によっ
て学習にはいるときとがある。
 キ 直接型
 この型は、遠回しの発問、くだくだしい説明、不正確な記憶、長い問答などをさけ、直接学
習にはいる型である。「どんなことが書いてあるか読んでみましょう。」「きょうは○○の勉
強をしましょう。」などというのがそれである。
 (二) 学習の過程における発問
 学習の過程で発せられる問は複雑で、さまざまな型と機能をもっている。
1 知識を求め理解を深めるための発問 


                                           168

(1) なぞなぞ遊びはどのようにしますか。
(2) きょうのお話は何のお話ですか。
(3) このわくはどういうふうに作ったらよいか。
(4) 紙人形は何で作りますか。
(5) 日本の国ではたくさんみかんがとれます。と
 れたみかんはどうしますか。(一年)。
(6) いねをじょうぶに育てるために何をします
 か。
(7) お客を運ぶ舟を何と言いますか。
(8) どんなときぐったりしていますか。
(9) だれがどうしたのですか。
(10) うさぎはどういうことを心配しましたか。
  (二年)
(11) 命の恩人だということがいつわか。たので
 すか。
(12) この子はどんなことをしたか、おしまいに
 どうなったか、考えながら読んでみましょう。
(13) とらの所へ行って、リスはどうしました
  か。(三年)
(14) 鉄砲魚はどんなさかなか。
(15) 漢字はどのようにしてできたか。(四年)
(16) かなの長所・短所・特徴について調べてみ
 ましょう。
(17) なぜそんな苦しい、危険なことをやったの
  か。(五年)
(18) 賢治がしたことから、賢治のどんな心がわ
 かりますか。
(19) それはどんな船か。どんなことをする船か。
(20) 日本海号の動き.――どこを通っどどこへ行
 つたか。ずっと読んで調べてみましょう。(六年)

 この種の発問では、一年から六年へと学年を追って、
 (1) 問われる事項が単純なものから複雑なものへ。
 (2) 一事項から多事項へ。
 (3) 経験的・具体的事項から抽象的・思索的事項へ。
 (4) 直接的な事項から間接的な事項へ。
 (5) 直接判断事項から、想像・推理を働かせる事項へ。――考えを働かせる事項へ。


                                           169
 (6) 事実判断から価値判断へ。
 (7) 事実の認識から事実が表わす意味の理解へ
という方向をとって、学年に応じて発展している。それぞれの学年に応じてどんな事項をどの
程度に理解させたらよいか、児童発達に応じて考えてみる。
 とかく、この種の発問では、知識・理解のみが大きく取り上げられて、それを求めるのにふ
さわしい国語能力の養成ということがつい忘れられがちである。国語教育では、ただ知識が得
られればいいのではない。当然、国語の能力が養成されることを前提としなければならない。
2 心理・心情を理解するための発問

(1) おばあさんのやさしい、親切なことがどうい
 うところに書かれていますか。(すずめのけが
 を見つけてかいほうしてあげた。あのね。ひょ
 うたんがなったでしょう。近所の人に分けてあ
 げた。oまあ、かわいそうと言って助けてあげ
 た。)
(2) うさぎがどういうことを心配したかな。
 (大地がこわれたら私たちはもしかしたら死ん
 でしまうかも知れないから心配したの。)(二
  年)
(3) それではね。リレーが始まってから、終わり
 までに出てくる橋本さんの気持ちをさがしてみ
 ましょう。そこに赤線を引きましょう。(もう
 気が気ではありません。おいのりしました。リ
 レーに出ました。はらはらしながら、もう安心
 と思いました。)
(4) 王様はどんな気持ちで見つめているのでしよ
 う。(鹿と約束したのに約束を破った男だと知
 らなかった)(三年)
(5) それぞれの場所でどんなことが起こったか。
 さち子さんの気持ちはどうだったか場所ごとに
 分けてノートに書いてみましょう。(四年)
(6) 学校へ行く前の気持ちは?(いやでいやでた。
 まらなか。た。)なぜ?(不得意の文法の時間
 があったから)
(7) 大造じいさんの気持ちが、変わったかどうか。

170
 もし変わったとすれば、どこかどのように変わ
 ったかメモを取りながら読んでみましょう。
(8) どんな気持ちでらくがきを書いたかわかりま
 すか。(五年)
(9) おじいさんの気持ち、心の動きがどこでわか
 るか。 
  (10) けんかを始める前のあかの気持ちはどうだ
 ったか。
(11) きょうのところで、レオナルドはどういう
 人がら、どういう性質の人か。
(12) 見せてやりたいという気持ちの現われてい
 るところはどこですか。(六年) 

3 情景・感動・主題・意図などを読みとるための発問

(1) この文全体から考えて、この文はいいなあ、
 感激した、心に残るというところはありません
 か。(富士山頂)
(2) 作者は何を書き表わしたかったか。
(3) その緊張している場面がどこにどう書いてあ
 るか。(六年)
(4) 作者は何について言おうとしているのか。
(5) 作品を読んでどんな感じがしたか。
(6) 全体を通して、始めから終わりまで、一貫し
 ている意味を考えてみよう。(五年)
(7) 一般的に情景・様子などについての発問は、
 次のような形式をとっている。
 ・朝起きた時の様子はどう? ・海岸へ行った
 時の様子は? ・その時の様子を言ってごらん
 ・地引網の様子はどうだったか。・けい光燈が
 何本も下がっている、それはどんな天井から下
 がっているのか。
(8) 感覚・感情・感動などについての発問は一般
 的にいって次のような形式をとる。
 作品を読んでどんな感じがしたか。・作品を
 読んでどんなことに感心したか。・全体から受
 けた感じ、好きな所はどこか。・読んでいいな
 あ、何となくいいなあという全体から受ける感
 じをノートに書きとめておきましょう。めいめ
 い声を出して読んでみて、あとで、感じた好き
 なところを話してもらいましょう。・工場全体
 が生き物のように感じたのは何によってか。
(9) 意図・主題の読みとりについての発問は一般
 に次の形式をとる。
 ・一日のうちで一ばん知らせたいことはどうい

171
うことか。・作者は読む人にどういうことを
知らせようとしたか。何について言おうとして 
  いるのでしょうか。 

 これらの学習は一般に言ってむずかしい。それは多くは事実、ことがらそのものを知ろうと
するのではなく、事実やことがらの意味するものを対象とするからである。事実・現象の裏に
ある意味をさぐるからである。その場合でも、心情・感覚・主題・意図などが、ことばの上に
表わされている場合と、全くことばの上に示されず、いつもその裏にある場合とがある。そし
て、それらの多くの場合、微妙なことばによって、語感として、ふんい気として、気分として
表現されているからである。したがって、特に、児童の精神発達・能力発達を考慮しなければ
ならない。
4 ことばに関する事項の学習のための発問

(1) 話のようにカードを並べましょう。並べた
 ら読んでみましょう。「せんせいやまにきを
 うえました。」(文型指導)(一年)
(2)「ぐったり」というのはどういうこと?ぐっ
 たりしてごらん。
(3)「くすくす笑う」というのは、どんなふうに
 笑うこと?(二年)
(4)「ぞろぞろ」とおってはどういうこと。「つぎ
 つぎ」はどういうとき使いますか。(三年)
(5) どんなところに「o」をつけるか。(ました、
 ますにつける。文の終わりにつける)(四年)
(6)「その」は何をさしているか。
(7)「いげん」というのは何ですか。
(8) つなぎことばを見ていくとどんなのがある
 か。
(9) 基本というのは何のことですか。(五年)
(10) 意味のわからないことばを聞きなさい。
 「手のしぐさ」「神聖」「おごそかな儀式」
(11) 「ここ」というのがあるがどこのことか。
 (六年)
(12) 一般に、ことばに関する事項の発問は、次
 のように行なわれている。

172
・「書いてあるそうです。」というのはだれか
ら聞いたととばですか。・「ところが」が出て
くると意味はどう変わりますか。・「そして」
はどんなやくめをしていますか。・「であるか 
  ら」はどんな時使いますか。どこに続いていき
ますか。・「ですから」を省いて読んでごらん
意味が続くかどうか。・木村さんたちの「たち」
と書いてあるのは? 

 ことばに関する事項の学習については問題が多い。低学年の文型の指導、語の意味の正確な
理解・用法に慣れること。文脈における語句の指導など研究を要する面が多い。従って発問の
しかたもくふうを要する点がある。
5 技能を主とした発問

(1) 段落はいくつに分かれていますか。
(2) 段落をまとめる文がはいっています。それを
 さがしなさい。
(3) いくつに分けたか。大きく分けると。
(4)要点をまとめると、どういうことになります
 か。
(5) 短くまとめると。
(6) もっと簡単に言ったら。

 このような発問は、表現内容の読解と結びつかない。つまり、内容の理解がじゅうぶんに行
なわれにくい。児童の関心は、技能に集中するからである。すでに述べたように、内容の学習
と結びつけて考えるほうがよい。こうした技能は、語活動の処理能力として働くものであり、
そのときに最もよく、効果的に養成されるものである。従って、すでに述べたように、価値―
―内容的価値を獲得する活動の中に含めておくべきである。
6 形式的な発問

(1) 質問を誘う発問
 o疑問点はありませんか。o質問はありません
 か。oわからない所があったら聞きなさい。
(2) 課題を展開する発問

173
 oそのほかにoほかにはどうですか。oほかに
 oほかにありませんかoほかの人はoもっとほ
 かにoそれからo次はoもうないかなど。
(3) 応答を促す発問
 oだれかoひばりはoどこへoこれはo丸いの
 はoありはo夜はo午後はなど。
(4) 問いかけの発問
 ア なぜ――なぜこんな絵を出したか。なぜ大
  造じいさんは一生懸命になっているのか。赤
  い旗の所までなぜ行ったか。
 イ だれ――だれかが作ったか。だれか。らく
  がきはだれが、いつ、どんなことを書くか。
 ウ どんな――どんなことがわかったか。どん 
   なことが書いてあったか。どんなことがあっ
 たか。どんな手紙でしたか。気になりますっ
  てどんなこと。どんな様子か。
エ「何を」――何を知らせようとしたか。何に
 ついて言おうとしているか。何と書いてある
 か。
オ どこ――どこに書いてありますか。どこで
 わかるか。どこに?
ヵ どう――大造じいさんの心はどうだろう。
 どうすればよかったか。どうしてまとめまし
 た。どういう方法ですか。
キ どっち、どれ、――ここではどっちのこと
 を言ったのですか。 

 発問それ自体が内容を持っている実質的発問に対して、発問自体は内容を持っていないもの
がある。それが形式的発問である。形式的発問は実質的発問のなかに適宜織りまぜて、学習を
発展・展開させたり、停滞する学習を円滑に流したり、そこから学習を出発させたりする。そ
ういう意味で、常に学習の方向・学習の実態・学習者の心理などをよくつかんでいて、適切に
使うようにする。
 この形式的発問は、児童の思考の内容・過程等に依存している。つまり、思考のよりどこ
ろ、手がかりとなることをなんら提示することなく、ただ思考を要求するからである。児童
は、この発問によって、自ら思考内容を設定し、方向づけ、整理しなければならない。


                                           174
 ページ数の関係で、じゅうぶんに発問を採録することができなかった。しかし、現在の国語
教室における発問の実態を誤りなく伝え得たと思う。なお、ここに採録した発問は、すべて、
東京都内の小学校における、いわゆる研究授業から、私が直接採集したものである。
 現在の国語教室では、そのほとんどが問答法を中心にして学習を指導している。それにもか
かわらず、一般に発問の重要性がまだじゅうぶんに認識されていない。研究もされていない。
したがって、あまりくふうされることもなく、この分野は、未開拓のまま放置されているのが
現状である。今後研究すべき間題も数多くある。
 (1) 発問の機能が考えられていない。
 (2) 発問と国語能力との関係が考えられていない。ほとんど無関心といっていい状態であ
  る。
 (3) 発問と思考との関係を考えていない。特に発問によって、児童の思考の方法、型を身
  につけることと、それの形式化、停滞化との関係など、発問の重要な面が見落とされてい
  る。
 (4) 発問の全体構造に注意が向けられていない。
 (5) どのような発問に対して児童のどのような応答・反応があるのかが予測されていない。
 (6) もっと児童相互の問答、話し合いのくふうをしなければならない。
 (7) 特に、内容(内容価値)とそれを獲得する能力とが一元化された発問のくふうが第一
  であることを強調したい。このような発問のくふうによって、現在の国語教育を一歩も二
  歩も前進させることができると考えるからである。


                                           175
 こうした発問の実態に対して、今後いっそうの科学的研究が行なわれることを期待したい。

       二 発問と学習指導

 すでに述べたように、わが国の現状では、何といっても問答法が国語指導法の中核となって
いる。どんな教室でも多かれ少なかれ問答法を用いないということは考えられない実情にあ
る。しかも、学習の内容も方法も、問答の中の発問に左右され、また、学習が成立するかしな
いか、思考が進むか、進まないかなども、発問によって決定づけられることが多い。
 ここでは、学習指導過程の適否・学習の成立――内容的価値の獲得・言語技能の習得――学
習効果の判定その他について、発問の側から見ていきたい。
 (一) 低学年の発問と学習指導
 低学年の発問は特に重要である。学習過程も、学習内容も学習方法も、思考活動も、みな発
問によって規定されていくからである。入門期の話しことばの指導にしても、その話す経験に
よって、発問のしかたによって、話される文型も思考の型も変わってくる。発問の可否、適否
が児童の学習に与える影響は大きい。特に低学年の発問で注意することを次にあげてみる。
 (1) 児童の思考、認識の実態に応ずること。たとえば、関係、異同の判断の思考――ことが
  らを関係的にとらえてまとめること、ことがらを関係的にとらえて並列すること、ことが
  らを関係的にとらえて対照すること、ことがらを包括的・部分的にとらえること、ことが
  らを主語述語の関係でとらえること、ことがらを修飾・被修飾の関係でとらえることなど


                                           176
  を考えて発問する・またこの頃の児童の思考の過程を知って、それに応じて発問し、思考
  の発展を促すことはさらに大事なことである。
 (2) 児童の国語能力の実態に応ずること、児童の能力に応じた――能力の発達を助ける発
  問をくふうすること。低学年の場合はいっぱんにむずかしい発問をしがちである。だか
  ら、児童の能力の実態を考え、その発達の方向を確実にとらえて発問することがたいせつ
  である。学習指導要領に示された技能――たとえば、書かれた順序に従って意味をとらえ
  ること、ことがらの順序に従って書くこと、何を言おうとしているかがわかるように話す
  こと、書くこと、その他――が、身につくとともに内容が理解される、そのような学習活
  動を与える発問をくふうすべきである。
 (3) 児童の興味、関心、欲求等を考え、積極的・主体的な学習活動が営まれるような発問
  をすること。
   学習の成否は、特に低学年では児童の学習意欲いかんによるところが多い、かっぱつな
  学習活動が展開されるような発問によって、興味を持って学習させるようにする。
 (4) 発問を小さくすること。
   発問の内容があまり大きすぎるとかえって学習が成立しない。ことに一年の一学期ごろ
  は、発問を小さくし――一発問一事項――短時間に応答できるようにする。発問を小さく
  して、学習の切れめ、切れめがはっきりした学習をさせる。それは学習の効果が児童にわ
  かるようにもなったり、個別的な学習がしやすくもなる。それによって、教師は学習の効
  果を確認しては、学習を進めることができる。


                                           177
 (5) 具体的に発問すること。
   低学年では、あまり抽象的な、総括的な発問では反応できない。たとえば「どんなこと
  がわかりましたか。」「どうして、どうなりましたか。」などという発問は最も答えにくい。
   「どんなこと」「どうしてどうなる」の内容を具体化したり、分析したりしてもっと具体
  的に発問する。
 (6) 簡潔に発問すること。
   発問がだらだらと長いのは、児童には苦手である。発問そのものの意味、何を聞いてい
  るのかが聞き取れないことが多い。できる限り簡潔に、短く、何を聞いているのかが明確
  にわかるようにする。低学年は、長い説明のついた発問や、発問のあとに長い説明や解説
  のついた発問はできる限り避けたほうがよい。
 (7) やさしいことばで発問すること。
   やさしいことばで、わかりやすく発問する。だいたい低学年では、問いただす内容があ
  まり簡単なため。に、かえって発問の用語に苦心する。だから、たずねようとする内容よ
  り、発問を理解することのほうがむずかしくなってしまうような発問も決して少なくはな
  い。
1 経験したことを話す指導と発問(一年)

( 話題 運動会
 指導 経験したことを話す。
 五月六日、「運動会」についてしたこと、おも
 しろか。たこと、思ったこと、気持ちなどを思
 い出して話させた。
@
教 きょうは、運動会のお話をしましょう。運動

178
 会はいつあったのですか。
児 oきのうです。oおとといです。
A
教 おととい、どこでありましたか。
児 運動場でやりました。
B
教 そうでしたね、では、運動会のお話をしまし
 ょう。だれか運動会のお話のできる人から話し
 てください。
児 玉なげをやりました。
  (以下六人、同じ発言がつづく。)
児 つなひきをやりました。
児 競争をやりました。
児 玉入れをやりました。
児 運動会や玉入れをやりました。
児 運動会で玉投げをやったら赤が二回勝ちまし
 た。
児 玉入れをして、最初に赤が勝って、二ばんめ
 にも赤が勝ちました。
児 はとぽっぽをやりました。
C
教 だれが、
児 二年生が、
D
教 何を
児 はとぽっぽ 
  E
教 では初めから続けて言ってごらんなさい。
児 二年生がはとぽっぽをやりました。
F           ※
教 つぎに、いちばんおもしろかったことをお話
 しましょう。宇田川さんは、玉入れをしなかっ
 たでしょう。だから、どんなにおもしろかった
 かを教えてあげましょう。
児 玉入れでね、白も赤も五対五になりました。
児 玉入れの前は、みんなが玉を一つずつ持って、
 笛がなったら玉を投げて、笛がまた鳴ったら、
 元の所へもどって、玉を拾って元の所へもどっ
 て、きをつけをしました。
児 みんなで玉を入れましたが、四対二で赤のほ
 うが負けました。
G
教 あのね。玉がいくつはいったか数えたでしょ
 う。その時、一組に二組が勝ってしまいました
 ね。その時、みんなはどう思いましたか。
児 嬉しいと思いました。
H
教 そして、どうしました?
児 ばんざいをやりました。(以下略)
I
教 そうでしたね、みんなでばんざいをしたので
 すね。その時、どんな気がしましたか。 

179
児 うれしかったです。(以下略)
J
教 ではね、玉入れの時、投げた玉が、うまくは
 いったかどうか、宇田川さんに話してあげまし
 ょう。
児o何回やってもはいらなかった。
 o六回はいりました。o一個もはいりませんで
 した。(以下略)
K
教 はいったとき、みんなどんな気がしたの。
児 えいと思ったの
L
教 投げる時、どう思ったの。
児oもうちょっと、もうちょっとと思ったの。
 oどのくらい力出せばはいるかなと思ったの。
 
   o何も言わないで投げた。
M
教 何か思って投げた人。
児o白勝つようにと思いました。
 oどうぞ神様、はいるようにといいました。
 oかあぜの玉なら、えいこうらと言ったの。
 o胸がどきどきしました。
 o負けるかも知れないと言いました。
 oこんどこそはいりますようにと思ったらはい
  りました。
 o負けると思って一生懸命やったら帰ちまし
  た。(以下賂)
  (東京都文京区立真砂小学校、伴定子さんの指
 導記録、録音による。) 

 この指導は、五月四日の小運動会のあと五月六日に指導した授業の一部である。運動会とい
う経験を、主として、同級生、宇田川さんに教えてあげるという形になっている。このこと
は、話す目的を規定したもので、この授業のなかで最も重要な指導である。この「宇田川さん
に話して聞かせる。」という目的がそれ以後の話の内容や文型を規定している。
 この部分の授業だけで発問が一四ある。この発問のなかには、話を展開する発問が一二思
考を整える(文型を指導する)ための発問が三ある。目的を追求し、達成するための課題を与
える発問によって、授業は展開され、発言内容が規定され、文型が決められ、思考の型・過程
が規定されている。


                                           180
 そこでまず、発問の内容の全体構造を見ると次のようになっている。
 (1) 運動会でしたこと(話題の提示)
 (2) 運動会でおもしろかったこと(話題を深める)
 (3) 運動会で思ったこと(話題を深める)
 (4) 運動会での気持ち(話題を深める)
 したがって、発問は、これらのことを明らかにするようにくふうされている。
 次に発問の機能を分類してみると次のようになっている。
 (1) 話題を提供する発問(@B)
 (2) 話題を展開する発問(FGIJKLM)
 (3) 思考を整える発問(CDE)
 (4) 話題を続ける発問(AH)
 また、これらの発問が、相互に結びついて、発問の全体構造をなしており、それが、学習過
程を規定している。
 ここで、注意すべきことは、「まとめるため思考を整えるための発問」である。児童が「は
とぽっぽをやりました。」答えたのに対して、「だれが」と発問し、児童が「二年生が」と答え
る。そこでもう一度「何を」と聞く。児童は、再び「はとぽっぽ」と答える。そこで、「それ
を続けて言わせた。この発問は、文型指導(思考の型)思考をまとめるための指導の発問とし
て適切である。

 また、教師の発問、HIは、文末が、「気がしたの」「思ったの」となっている。すると児童


                                           181
はすぐにこれに対応して、やはり、「思ったの」「言ったの」と答えている。このことは、教師
の発問の文型がすぐに児童に影響を与えることを物語っている。
2 説明を読む指導と発問(二年)

 教材  説明文
   (三) きせん
 きゃくせんは、おきゃくをはこぶふねです。か
たちが きれいで、はやくはしります。千人もの
おきゃくを のせて、外国へ 行くのが ありま
す。
 外国へ 行く 大きな ふねには、おみせも、
プールも、テニスコートも、あります。
 かもつせんは、にもつを はこぶ ふねです。
せきたん、ざいもく、トラック、うまなど、なん
でも はこびます。ふねには、大きなきじゅうき
があって、それで にもつをあげたり おろした
り します。
 タンカーは あぶらを はこぶ ふねです。ふ
ねぜんたいが、あぶらを 入れる タンクに な
って います。きせんには、このほか、しゅるい
が たくさん あります。
 指導 三時間扱いの第二時、「きせん」を説明
 の順序にしたがい、正確に読みとることによっ
 てその特徴をつかみ、知識を豊かにする。
@         ※
教 きょうはどこでしたかね。
児 きせん(「(三)三きせん」と板書)
A
教 では、読んでもらいましょう。よく聞いてい
 ましょう。読める人。
児 音読する。(速い。)
B
教 よく読めましたね。
児 音読する。(はっきりしている。「かもつせん
 には」の「に」を読み落とす。)
C
教 どんなことが書いてあるのでしょうね。わか
 る? 何のこと?
児 ふね
D
教 どんなおふね?
児 きせん。
E
教 きせんのこと? どんなきせんのことかな。
 どんなきせん?
児 お客をのせる。
F
教 そうね。

182
児 にもつをはこぶ。
G
教 それから?
児 がいこくへ行くふね。
H
教 そうね、はい、それから。
児 あぶらをはこぶふね。
I
教 お客を運ぶ船を何というの?
児 きゃくせん。
J
教 客船、お客を運ぶ船、そう書いてある?
児 ある。
K
教 荷物を運ぶ舟は?
児 かもつせん
L
教 荷物を運ぶ船は?
児 かもつせん
M
教 油を運ぶ船は?
児 タンカーです。
N
教 客船のところだけもう一度だれか読んでもら
 いましょう。
児 音読する
O
教 客船てどんなおふね。
児 おきゃくさんをつれてってくれる。
 (「おきゃくをはこぶふね」と板書)
P
教 お客を運ぶのだからどんなお舟がいい? 
  児 きれいではやいおふね。
Q
教 みんなそう思う。
  (「きれいではやい」と板書)
R
教 どうしてきれいではやいほうがいい?
児 お客さんにめいわくかけない。
児 あのね、外国へ行くとき、いそぐ人がいけな
 いから。
S
教 そういう客船て、お客がどのくらい乗れる
 の。
児 千人
21
教「千人のせてくれます。」そう書いてある?
 そうじゃなく書いてある人、いない。
児o千人もの o千人ものおきゃくをのせて、外
 国へ行くのがあります。
22
教 そこをいっしょに読んでみましょう。
児 (一斉に読む。)
  (「千人ものお客をのせて」と板書)
23
教「千人もの」って何でしょう。
児 千人ぐらい。(以下一部略す。)
24
教「外国」って何だろう
児 oにほんではないくに にほんではなくてほ
 かのくに。 

183
教 日本ではない、よその国たくさんあります
 ね。知っている? 
  児 oローマ、アメリカ、フランス、インド(以
 下省略、記録者、中沢) 

(1) この教材の内容の構造(知識の構造)
                    ┌かたちがきれい
   ┌きゃくせん―おきゃくをはこぶふね┤
   |   |            └はやくはしる
   |   └千人ものおきゃくをのせて外国へ行く
   |                │       ┌おみせ
   |                └外国へ行くふね┼プール
   |                        └テニスーコート
   |               ┌せきたん┐
きせん┤               ├ざいもく┤
   ├かもつせん―にもつをはこぶふね┼トラック┼なんでもはこぶ
   |               └う  ま┘
   |
   |    大きなきじゅうき―にもつをあげたりおろしたりする
   |
   ├タンカー――あぶらをはこぶふね―ふねぜんたいがあぶらをいれるタンク
   └このほか―しゅるいがたくさんある。
 このように、汽船の種類と各種類ごとにその機能・形態等について説明してある。
 そこで、この教材の内容を読み取らせ、それに必要な能力をつけるにはどんな発問(課題)
をしたらよいかを考えてみると、次のような発問の例が考えられる。


                                           184

(1) みなさんは、汽船を見たことがありますか。
 この本の絵のように、汽船にはいろいろな種類
 の船があります。いろいろの(いく種類の)船
 があるか、読んで調べてみましょう。
 ア 汽船には、いろいろな船がありましたね、
  何をはこぶふねと何を運ぶ船がありました
  か。
 イ「おきゃくを運ぶ船」「荷物を運ぶ船」「油
  を運ぶ船」を何と言いますか。
 板書(発問(1)による学習、数字は板書の順を示
  す。)
  @
  きせん
   E     A
   きゃくせん―おきゃくをはこぶふねで
   F     B  す。
   かもつせん―にもつをはこぶふねです。
   G     C
   タ ン カー―あぶらをはこぶふねです。
         D
   このほか――しゅるいがたくさんありま
          す。
(2) こんどは、「お客を運ぶ客船」はどんな船か
 調べてみましょう。形やお客や船の中にあるも
のなどを調べてみましょう。
ア 客船の形や速さはどんなですか。(文型、
「○○で○○ます」の指導)
イ 客船の中には、どんな船がありますか。(語
 句、千人もの。外国。行くのか。の指導)
ウ 外国へ行く船には何と何がありますか。(文
 型、「○○には、○○も、○○も、○○も、あ
 ります。」の指導)
板書(発問(2)による学習。数字は板書の順を示
 す。)
きゃくせん――おきゃくをはこぶふねです。
  @
 oかたちがきれいで、はやくはしります。
  A
 o千人ものおきゃくをのせる。
  B
 o外国へ行くのがあります。
  C
 o外国へ行く大きなふねには、
   おみせも   ┐
   プールも   ├あります。
   テニスコートも┘
(以下省略、貨物船、タンカーの学習の発問も
上に準じて作ればよい。)

 これは、文章の内容の構造(知識の構造)に基づく発問の全体構造の一部を示したものであ
る。発問の全体構造は次のようになっている。


                                           185
 (1) 汽船にはどんな種類があるかを読みとったり、読みとった結果をまとめる発問(課題と
  評価・思考の秩序化)
 (2) 客船・貨物船・タンカーの機能・形態等を読みとったり、読みとった結果をまとめる発
  問(課題と評価・思考の秩序化)
 (3) 読みを正確にし、深めるための、語句の意味充実・語の機能・文型を身につける発問
 これらの発問の相互関係・発問と読みの深さ広さとの関係、発問と読解技能との関係、発問
と語句・文型等との関係については、前にあげた、発問の全体構造(一部)の例によって見て
いただきたい。
 上にあげたのは、発問の一例であるが、これによって学習を進めていけば、文章内容(内容
的価値)が二年生なりに理解できると同時に、その内容理解(価値追求・獲得)に必要な読解
技能態度が身につく。つまり、この文章の内容のだいたいを読みとる技能・文章に即して意味
を読み取る技能、ことばの意味の理解・文型の理解などことばに関する事項の理解等が確実に
身につく。さらに、このような文章の読み方、読む態度が身につく。さらに、思考活動がかっ
ぱつに営まれて、思考の秩序化・整理が二年生なりに行なわれて、いわゆる思考力が養成さ
れる。
 なお、ここでの発問は、二年生だから、できるかぎり具体的にした。一例をあげると「どん
な種頬の船」を「いろいろな種類の船・いろいろの船・いく種類の船三種類の船」というよ
うに具体化した。さらに、それらを「何を運ぶ船」とすればさらに具体化される。これ以上具
体化する必要はない。「○○を運ぶ船」は全部の段落に共通して使われている、船の機能を表


                                           186
わすことばであるから、このことばに目をつけると発問が生きてくる。
 このように発問を具体化するとともに、できるかぎり簡潔に、わかりやすくした。また発問
が小さくしてあるから、学級の実態によってもうすこし大きな発問にしてもよいが、それは、
よほど学習訓練を積んだ教室でないと無理であろう。
 これらの発問は全部口頭で答えるようになっているが、課題を与える発問のなかに、書くこ
とを加えてもよい。簡単なことがらであれば、読み取ったことを書いて整理させることも困難
ではない。そうすれば学習の個別化・個別学習の集団学習化をはかる上にもよいであろう。
 二年生も二学期以降になれば、問答法中心でなく、課題を文章で与え、それを解決するため
に学習活動をし、その結果を話し合う。それを指導するという方法も考えられる。それは望ま
しい方向である。

 さて、ここまで読まれたら、前に返って、「きせん」の指導事例を次の点から読み直してみ
ていただきたい。
 (1) 課題を与える発問は、その課題の目的をはっきり持たせるようにくふうがしてある
   か。(目的のない読む活動をさせてはいないか。)
 (2) 発問の内容が総合的で、ばくぜんとしたものになってはいないか。
 (3) 発問の内容が大きすぎたりあるいは小さく分析されすぎたりしてはいないか。
 (4) 児童の思考を進めたり、まとめたり、秩序化したりするくふうがなされているか。
 (5) 発問に対する児童の応答をみて、文章に即して読む技能・文章の内容のだいたいを読 


                                          187
  みとる技能などが身についたと思われるかどうか
 (6) 語句の意味機能・文型の指導などが適切に行なわれているか。
 それから、それを自分の国語教室にあてはめて考えてみていただきたい。
 (二) 中学年の発問と学習指導
 低学年においては、問答法がほとんど国語学習の中心になっている。問答によって学習が進
められている。従って学習のなかで、発問は重要な位置を占めている。
 中学年においても、現状では全くそれと同じことが言える。しかし、くふうさえすれば、指
導さえすれば、中学年では、児童が主体的に学習することができるようになっている。つま
り、児童が自ら学習の目的を立て、目的を追求するための計画・方法・学習計画・学習方法を
考え、それに従って学習を進めていく。それがだんだんできるようになってきている。
 そこで、問答法も、それに応じて、しだいに追求すべきであろう。教師の発問によって学習
を進める部面を、しだいに少なくし、児童が自主的主体的に学習する部面をもっと多くしてい
くべきであろう。
 そのような学習指導の方向をめざすなかで発問の間題を取り上げていく。そのような位置に
おいて発問を考察し、研究していくことがたいせつである。そうしないと、今の問答法中心の
学習を是認し、その限りにおいて、その範囲内においてだけの発問のくふうしかできないから
である。
 中学年の発問で、注意すべきことを次にあげてみる。
 (1) 特に研究すべきことは、しだいに、児童を自主的、主体的な国語学習に接近させるため


                                           188
  には、どんな発問(課題)をしたらよいかということ。
 (2) しだいに、学習の目的を明らかにし、計画を立てさせるようにするためにはどんな発問
  を用意したらよいかということ。
 (3) 発問の内容をしだいに複雑にし、いくつかの事項を自分で選択し、組み立てて応答する
  ような発問をくふうすること。
 (4) 思考の発達に応じて、思考の型・思考の方法が身につくような発問をくふうすること。
 (5) 要点を押えて聞く話す読む書く技能・段落にまとめて読む・書く技能など中学年で指
  導すべき技能が身につくような発問をくふうすること。
 (6) ことがらの表わす意味、表現の裏にある意味などを理解することができるようになって
  くるから、それに応じた発問をくふうすること。
 (7) 一問一答式の発問をさけること。
 (8)「それから」「それから」など、一つずつ応答事項を考えるような発問をさけるようにす
  ること。
 (9) 発問が全体としてまとまりのあるようにすること。
 (10) 大きな発問から小さな発問へと段階的に進めること。
 (11) 継ぎ穂的発問・二者択一的発問・裏返し的発問を避けること。
 その他、発問の一般的な注意は省略する。
l 手紙の要件を読みとる指導と発問(三年)


                                           189

口教 材
 ただし君のはがき
 ずいぶん暑くなってきました。夏休みにい
つものように、おかあさんがむかえに来てく
ださるのでしょうね。ぼくは、うちへ帰る日
を楽しみにまっています。むかえに来てくだ
さる日を、早く知らせてください。さような
ら。 
おとうさんの返事
 はがきを読みました。今月の中ごろおかあ
さんがむかえに行くはずです。かい物もある
ので、四、五日そちらにとまることになるで
しょう。船のびんをみていっしょに帰って来
なさい。海水よくができるのを楽しみにまっ
ていなさい。
 おじいさんもおばあさんもお元気ですか。
よくお手つだいをして、心配をかけないよう
にしなさい。 さようなら。
  七月八日         父より
 ただし君へ 
 指導 ただし君が出した、「いつ迎えにきてくれ
 るか。」というはがきに対する、父親の返事の手
 紙を読んで、その要件を読み取る。六時間扱い
 の第三時。(あとで、手紙を書く指導を予定し
 ている。)
  指導の順序は、次のとおりである。
 (1) 前時についての話し合いから、本時の目あ
  てを話し合う。
 (2) ただし君のはがきを読んで、どんな目的で
  このはがきを書いたか話し合う。
 (3) おとうさんからの返事を読む。
        ※
 次のとおり板書してある。
ただしさんのはがき
 うちへ早くかえりたい。
  oむかえに来てくださる日を知らせてく
   ださい。
  oかえる日が楽しみだ。 
教 おとうさんの返事は、どんなことをただし君
 に教えているか、読んでごらん。
児 熟読する。

  190
教 (読み終わるのを待って)一つ見つかった人。
 (「一つじゃないよ」という児童あり。)
児 海水よくができるのを楽しみにまっていなさ
 い。
児 船の便をみて、いっしょに帰ってきなさい。
教 だれと?
児 おかあさんと。
教 もっと見つけてごらん。
児 よくおてつだいして心配かけないようにしな
 さい。
児 今月の中ごろおかあさんがむかえに行くはず
 です。
児 買物があるので四、五日とまる。
教 だれが?
児 おかあさん
 この問に次のような板書が行なわれた。
おとうさんの返事  七月八日
 O海水よくができる。
 Oいっしょに帰っていらっしゃい。
 Oおてつだいしなさい。
 O今月の中ごろおかあさんがむかえに行く
 O四、五日とまる。 
  教 いま、みんなが答えたことを黒板に書いたら、
 みんなで読んでみよう。
児 (いっせいに音読する。)
教 では、ここに書いてある順序はばらばらだ
 ね。どれがいちばん始めに書いてあるか。
児 (手紙の順序に合わせて決める。)
教 この一つ一つが、ただし君にとって大事なこ
 とです。しかし、よく考えてください。この中
 でも、ただし君にとっていちばん大事なことは
 どれでしょう。
児 おてつだいをする。
児 今月の中ごろおかあさんがむかえに行く。
児 いっしょに帰ってきなさい。
教 もしこのことが書いてなかったらどうする。
児 むかえにくることがわからない。
教 ただし君が、いつ迎えに来るかって出したは
 がきの返事だから、おかあさんが、むかえにい
 く日がいちばん大事なことですね。
教 ではね、ちょうめんにおとうさんの返事を整
 理してください。
児 (板書を視写する。)
 視写が終わると、教科書に出ている、ただし君 

191
のはがきを見て、何か感じたことはないかと発
問する。宇がうまい。むだなことが書いてない
でたいせつなことだけ書いてある。ていねいな
ことばが使ってある。点やまるがきちんと書い
てある。などの応答がある。最後に、ではあな 
  たがたも気をつけて手紙を書きましょうという
教師のことばがあって授業を終わる。
 (東京都江戸川区立小松川小学校渥美欣三さん
の指導記録、記録者 中沢) 

(1) この手紙の内容の組織と要件
 この手紙の内容は次のように組織されている。
 ア 今月中ごろおかあさんが迎えに行く。
    (ァ) かい物のため四、五日とまる。
    (ィ) 船の便をみていっし。に帰りなさい。
    (ゥ) 海水よくを楽しみに待っていなさい。
 イ おじいさん、おばあさんはお元気ですか。
    (ァ) お手伝いをして心配をかけないように。
 このように、今月中旬迎えに行くということと、おじいさんおばあさんの安否を問うことが
中心になっている。これらの事項の中で、「今月中ごろおかあさんが迎えに行く」ということ
が要件になっている。
 この要件を読みとるのが、この時間の指導である。
(2) 要件(要点)を読みとる指導と発問
 三年で要件(要点)を読み取る指導をするには、次の二つの段階を経る。


                                           192
 ア 書いてあることがらを全部読みとる。
 イ 読み取ったことがらのうち、どれが要件であるかを判断する。判断の基準に従って、要
  件(要点)を決める。
 この順序で読ませると、要件(要点)の読み取り方がわかり、要点を読みとる力がつく。こ
の場合、要件(要点)がどのように書かれているかによって、指導方法・過程が異なってく
る。たとえば、段落のなかにいくつかの事項が併記されている。そのいくつかの事項のなかか
ら、別にある選定の基準に従って、要件(要点)を読み取る場合がある。判断する場合があ
る。つまり事実の読み取りと読み取った事項の価値判断とが行なわれることになる。
 また、段落の中にいくつかの事項が書かれている。その中には、その事項が意味するもの、
あるいは、各事項に共通にある原理・法則・統一性について書いた事項が含まれている場合が
ある。
 また、段落の中に書いてある事項が書き進められるに従ってその意味するものが明らかにな
り、最後にそれを抽象化した事項が述べられている場合もある。(前に述べた、「光とことば」
参照)
 これらの場合には、各事項がだんだんと結論を導き出すに必要な論理を追いながら要点を読
み取らなければならない。
 そこで、この手紙の要件を読み取るための学習の過程は、まず、手紙で知らせてきたことを
全部読み取って理解する。その次にその読み取ったものの中から、ある基準に従って要件を読
み取るということになる。


                                           193
 次に、それが要件であると判断する基準は何か、それは、この手紙の機能――書き手の目
的、この場合は読み手の期待も含めて――が基準となる。つまり、「いつ迎えに来るか、その
日を知らせてほしい」というはがきに対する返事であるから、この返事の中で大事なことは、
迎えにいく日取である。それは、読み手の最も期待していることがらでもある。すると、この
返事では、「迎えに行く日を表わしている文」が要件を表わしていることになる。
 要件・要点を読みとる指導では、この基準を明らかにすることが最もたいせつである。それ
がわがらなければ、要件(要点)を読み取りようがない。一般に、この基準は、本質的には主
題・要旨・意図であり、それを受けてその段落で言おうとし、表わそうとしていることである。
それぞれの段落で言おうとしていることに照らしてどれが大事か大事でないかを判断して決め
る。
 以上の点を考えて次に発問の例をあげてみる。

(1) おとうさんは何と何のことを知らせてきまし
 たか。
(2) ただし君は、おとうさんの返事を読んで、ど
 んなこととどんなことがわかりましたか。
(3) ただし君が、おとうさんの返事を読んで、ほ
 っと安心したことは、どんなことでしょう。
 (それはなぜですか。)
(4) おとうさんの返事の中で、ただし君にとって、
 いちばん大事なことは、どんなことですか。(そ
 れはなぜですか。)
(5) おとうさんの手紙には、いろいろなことが書
 いてありますが、そのなかで、いちばん大事な
 ことはどれですか。(それはなぜですか。)

 要するに、事実を認識させるための発問とそれらの事実についての価値判断をするための発
問とが用意されればよいのである。


                                           194
 以上のことを考えたうえで、さらに、前にあげた指導事例を読み返し、そこに展開されてい
る学習と、発問とを検討してみよう。
2 物語のあらすじを読み取る指導と発問(四年)

 教材「争い」(物語)
 指導 物語のあらすじを読みとる指導
 物語「争い」の学習における発問の全体構造に
ついての考察――この物語の第二時間めの学習、
 「全文を読んで話のすじをとらえさせ、あらすじ
を発表しまとめる。」における発問は次のように
なっている。
        ※
@
教 コレッティとエンリーコは何がもとで争った
 の。
児 コレッティがひじで、エンリーコのインキを
 こぼしてノートをよごしたので、エンリーコが
 わざとインキをこぼしたの。
A
教 エンリーコは何をしたの。
児 しかえしをしたの。
B
教 そうしたら、どうなったの。
児 コレッティがおこった。
C
教 そして何をした?
児 手をふりあげて、ぶとうとした。
D
教 ぶったの。
児 ぶたなかった。
E
教 なぜぶたなかったの。
児 先生に見られたから。
F
教 そのあと、どうなったの。
児 そのあとコレッティは、エンリーコにあやま
 りました。そしてコレッティとエンリーコは。
 仲なおりをしました。
  (指導記録。記録者 中沢)

1 この物語の内容の構造
 指導者がこの物語で読み取らせようとするあらすじ(内容)の構造は次のようになってい
る。
 ア 争いの原因


                                           195
  コレッティがインキをこぼしてノートをよごしたしかえしとして、エンリーコがわざとイ
  ンキをこぼしたこと。
 イ 行 為
  コレッティが怒ってぶとうとしたが先生に見られたのでぶたなかった。
 ウ 結 果
  ふたりがなかなおりをした。
2 発問の全体構造
 この物語のあらすじを読みとるためには、発問によってどんな課題を与え、その結果を、ど
んな発問によって評価するか、処理するか、発問の全体構造を考えてみる必要がある。
 もし、「コレッティとエンリーコは、なぜ争ったのか。そしてどうしたのか、その結果どう
なったかを読んで調べてみよう」ということであれば、その結果に対する発問も、その三つの
点について行なわれなければならない。また、「『争い』のあらすじを読みとって話してごらん
なさい。」という課題であれば、その結果に対して、どんな発問をすれば、読みとったあらす
じが明らかになるかを考えてみる。そこに評価のための発問がある。
3 四年生の読解力
 四年生の文学作品を読む能力はどうなっているかを考えてみる。東京都内の児童の読解の調
査によると、四年の二学期ごろから、物語の主題を読みとる能力が、発達してくる時期があ
る。また、段落の要点をおさえて、内容を読みとったり、段落にまとめて読む力がつく頃であ
る。したがって、読解指導に当たっては、それらのことを考えて発問すべきである。このよう


                                           196
な、養成すべき技能や態度の点から、指導事例の中の発問を見ていくと、それらの発問の不適
当なことがよくわかる。
4 発問と指導法の改善
 ところが、この発問では、いわゆる一問一答式になっている。このやり方では、四年生にふ
さわしい読解力思考力は伸びない。児童たちが、児童にふさわしい読解力を働かせ、思考を働
かせる余地がないからである。それは内容をあまりにも細かく分析して聞いているからであ
る。たとえば (3)(4)(5)(6)などの発問はほとんど四年生の指導として価値のない発問であ
る。そこで、児童の思考が働くほどの大きさに課題を整理する。たとえば、
 (1) コレッティとエンリーコは何がもとで争ったか。
 (2) エソリーコはどうしたか、コレッティはどうしたか。
 (3) その結果はどうなったか。
 この三点について発問すれば、あらすじがとらえられるとともに、あらすじを読みとる力が
養成される。これによって、発問の数を半分以下に減らし、それと同時に、それだけ高い能力
を養成することができる。この三つの質問では、あらすじを三つの観点に立って読みとり、整
理し、秩序立てて理解する。
 また、すでに読みとったことがらを、三つの観点に立って整理することになる。これがも
し、「争い」の物語はどんな物語かあらましを読みとってみようという発問であれば、読みな
がらい各自が、読みとったことがらを整理し、秩序立ててあらすじとして組み立てなければな
らない。そこで、いっそう読解力思考力を働かせることになる。もう四年生であるから、これ


                                           197
らの事項を読みとって筋としてまとめられるように指導すべきである。
 なお、最後に注意したいのは、教師の発問の文型、「何をしたの」「どうなったの」「何をい
た?」などと、これに答える、児童の文型「こぼしたの」「したの」「おこった」などとの関係
である。問答は、教室の中の改まった場での応答であるから、特に注意して正しいことばで問
答が行なわれるようにくふうすべきである。
 これは、指導者の計画した「あらすじを読みとる」という立場に立って指導法を考えている
が、実は、四年生の二学期ごろでは、主題を読み取る力が急激に伸びるという報告がある。そ
こで、この程度の物語では、あらすじを読みとるよりは、「主題的」にこの物語に接近してい
く方法を取ったほうがよいのである。たとえば
 (1) 通読して主題を読みとる。(全体的読み――主題の全体的読み取り)
 (2) 主題を表現に即して分析して読みとる。(分析的読み――主題の分析的読み取り――
  確認)
 (3) 主題を表現に即して総合的に読みとる。(総合的読み――主題の総合的読み取り――
  深化)
の学習過程をとって、主題に接近していくと、児童は、つねに、自ら読みとった主題を中心と
して主体的に学習を進めることができる。(興味深い、意欲的な学習になる)また、主題を中
心にして思考を展開するから、思考が深められる。(思考の課題性・即物性・一貫性・生産性
が生かされる。)
 もし、そのような読解指導を行なうとすれば、発問の全体構造が全く変わったものとなるこ


                                           198
とはいうまでもない。すべての発問が、主題を明らかに読みとることを中心としてくふうされ
るからである。
 (三) 高学年の発問と学習指導
 高学年では、児童の主体的な学習を指導することを中心に考えていきたい。児童が、学習の
目的を自覚し、学習の計画・方法を考え、それに従って、積極的・意欲的な学習を進める。つ
まり、生活的・価値的な目的を持つ。価値的な目的を追求する。価値的な目的を達成する。こ
の学習過程の中に発問を位置づける。それぞれの過程における学習が効果的に行なわれるよう
な発問をくふうする。
 そこで、高学年における発問は、次の点を考慮する。
 (1) 抽象化する能力、事がらを総合する能力が伸びる時期であるから、低・中学年の具体的
  な発問をさらに進めた、総合的・抽象的な発問を加えるようにすること。
 (2) 児童が、応答すべき事項を自ら選択し、組織するような発問をくふうすること。
 (3) 課題のための発問とその結果を評価する発問との関係を明確にすること。課題を解決す
  るために学習したその結果を言わせたり書かせたりする場合、総合的な課題に対し、その
  結果を分析的な細かい観点で言わせたりすることのないようにする。
 (4) 発問の全体構造を考えて、それぞれの発問を生かすようにすること。ある発問に対し、
  それをさらに発展させる、展開させる、深める、確実にするなど、つねに他の発問との関
  係を考えること。
 (5) 主題や意図を読み取る、聞き取る技能、要約する技能、場面や情景を読み取る技能、鑑


                                           199
  賞する技能など、高学年で特に指導する技能が内容の理解内容的価値の獲得とともに身に
  つくような発問をくふうすること。
 (6) 発問の数をしだいに少なくして学習を能率化するようにくふうすること。むだな発問は
  しない。やさしすぎる発間はしない。細かすぎる発問はしないようにする。
1 詩を読み味わう指導と発問(五年)

 教材 詩「草かり」
  ザク、ザク、ザク、ザク、
  山の下の草かりをしているぼくと父。
  草をかる手に朝つゆがはらりとおちる。
  山の中から小鳥の声が
  静かに聞こえてくる。
  チルル、チルル、チルル。
  きのうの朝も鳴いていた小鳥。
  けさも同じように鳴いている。
  山は静かだ。
  風がそよそよと吹いている。
  チルル、チルル、チルル。
  まだ鳴いている小鳥の声。
  草をかるぼくのむねのなかに
  飛びこんで来るようだ。
  ザク、ザク、ザク。
  ザク、ザク、ザク。
  ぼくは小鳥の声をききながら
  力をこめてかっていく。
  父のかる手に合わせるように。

  まだ、太陽も出て来ない。
  ぼくと父とふたりきりで、
  せっせと草をかっている。
口指導 詩を味わって読むこと、詩を朗読するこ
 とを指導する。
       ※
教 プリント(子どものための詩が二五編印刷し
 てあるもの)をうちで読んできたと思うが、み
 んなで読んで味わいましょう。まず、どうやっ
 て勉強したらいいか、話し合ってみよう。
児 好きなのだけやる。

  200
教 それでは、先生のほうで、一つは決めてやっ
 てもらうのがあります。六ページの「草かり」
 の詩。これを読んでみよう。
児 微音読
教 読んでいいなあ、何となくいいなあという全
 体から受ける感じをノートに書きとめておきま
 しょう。
児 (ノートに書く。)
教 では、読んでもらいましょう。
児 (「草刈」を読む。)
教 どうですか。気持ちが出ていたか。気持ちが
 伝わってきたか、もうひとり読んでもらいまし
 ょう
児 (ふたり読む。)
教 ほかの人が読むときどうしていたらいいか
児 o目をつむって聞いている。oどういう様子
 か想像しながら。(読む。)
教 今の朗読は感じが出ていたか。
児oザク、ザク――カをこめている。
 o飛びこんでくるようだのところ。
 o山は静かだ。
教 もうひとり。 
  児 (読む。)
教 だんだんあとにいくほどよくなった。もう一
 度
児 (読む。)
教 めいめい声を出して読んでみて、あとから感
 じた、好きなところを話し合ってもらいます。
児 各自読む。
教「草かり」を読んで、どんな気持ちがしまし
 たか。
児o全体的にすがすがしい感じです。
 o小鳥にはげまされているような感じ。
 o楽しそうに鳥の鳴いているところで、おとう
  さんといっしょに草かりをして楽しそうだな
  あという感じ。
 o木がざわざわ嗚っているような感じ。
 o薄暗いような感じ、太陽が出ていないから。
 o静かな感じ。
 o小鳥が励ましているような感じ。
 o仕事を楽しくやっている感じ。
 o小鳥がたくさんいるような感じ。
教 では、めいめい今のことを想像しながらもう
 一度読んでごらんなさい。 

 201
児 各自朗読する。
 この詩の鑑賞はこれで終わり、次に「はばと
び」「冬の夜道」「かわら」を鑑賞して学習を終お
った。「冬の夜道」を読んで、児童が感じとった
ことを次にあげてみる。
o静かだ。「小砂利を踏んで」のところ。
oこの家庭は明るくやさしい家庭だ。
o[私の心には、ろうそくがもえていた。」のとこ
 ろがすきだ。 
  o空がきれいだったと思う。
o静かだ。
o自分までうれしい、その気持ちを書いたのだと
 思う。
oつかれている人があたたかい心で迎えられる。
o子どもが寝ていたので静かに戸をあけた。
 (東京都目黒区宮前ふ学校、井上潤さんの指導
 記録、記録者 中沢) 

(1) 詩の鑑賞指導と発問
 国語教室では、一般に詩は指導しにくいと言われている。それは、詩それ自体がむずかし
い。容易にそれぞれの詩の心がつかめないからだという。詩精神がわからないからだともい
う。また、詩はどう指導したらよいのか、指導の過程がわからない。何を指導したらよいのか
指導の内容もわからないとも言う。また、ともかく、詩を読ませた。しかし、そのあとをどう
処理したらよいのか、何といって発問したらよいのか、発問のことばがわからない。そのため
に、ついあれこれと知的に詩を扱って、ますます、詩をきらいにしてしまったりするとも言
う。
 詩にどう児童を近づけたらよいか、詩に対してどんな構えをとらせたらよいかは、詩の指導
の第一歩であり、究極である。詩の学習が、理解から鑑賞へという方向を取っていた時代に
は、発問もおのずから、理解させる発問が先に立って、味わわせるための発問がそのあとに続


                                           202
いた。従って、児童も、まず、詩に知的に接近することをよぎなくされた。詩を理解しようと
して知的に接近すれば、詩は逃げてしまい、あじけないものになってしまう。そうなったとき
に、味わおうと努力しても効果はあがらない。
 戦後は、鑑賞から理解へという方向が確立された。従って、発問の全体構造も、鑑賞するた
めの発問が先に立ち、理解のための発問がそれに続くようになってきた。
 詩を読み味わう、鑑賞するというのは、言語刺激に対して、感覚的・心情的に反応すること
だと考えられる。「こどもが、はずみでどんとたおれ」ということばを読んで(言語刺激を受
けて)「きずは浅いか深いか」「どこの子どもか」「なぜたおれたか」などと知的に接近する場
合(人)と、「痛かったろう」「あぶない」と感じ「思わず目をおおう」とする衝動にかられ、
あるいは、「リズム感」を持つなど音的感覚的に接近する場合(人)とがある。鑑賞は、後者
のようにことばに対して感覚的・心情的に反応することであろう。
 感覚的・心情的に詩に接近するということになると、詩に対する読み手の反応は十人十色で
ある。生活の違い、人がらの違い、歴史の違いなどさまざまな条件の違いの中で育成された、
感覚・心情は歴史的・社会的に異なっている。つまり個性的である。それを一定の感覚、一定
の心情で統制するなどということは不可能である。だから、詩に対する反応も種々であって、
これを指導によって統制することはできないし、またすべきことではないと思う。
 そこで、発問に従って(課題に従って)読み味わった結果については、できる限り多くの児
童に言わせるようにする。その様々な鑑賞と比較対照して、自分の見方や感じ方を確認したり
広げたり、深めたりする。そのために、さらにくり返し読み味わってみる。


                                           203
 そのような個性的な鑑賞を成立させ、それを話させるための発問はどうしたらよいか。
 鑑賞は、詩の心に触れる、詩に表現されている感動を感得することによって成立する。
 そこで、表現されている詩の心・詩精神・感動の正体を見きわめてそれに触れさせればい
い。詩の心・感動は、次のような成立過程、構造をもっている。




このように、詩の心・感動は、外在的世界の刺激に対して、情的に、感覚的に、思索的に反


                                           204
応した結果生まれたものである。従って、詩の心・感動は、情的特性・感覚的特性・思索的特
性をもっている。それらの特性が、表現されると、おのずから、ある背景・場面・経験・行為
行動・思索等になる。
 そこで、それらの表現を鑑賞させる手がかりとなる発問のことばとして、次のことが考えら
れる。
 (1) どんな感じがしますか。
 (2) どんな気持ちがしますか。
 (3) どんな気分になりますか。
 (4) どんな様子がわかりますか。
 (5) どんな背景が目に浮かびますか。
 (6) どんな場面が組み立てられますか。
 (7) どんな考えがわかりますか。
 このうち、(1)(2)(3)は、感動の情的特性をとらえさせるための、(4)(5)(6)は、感覚的特
性をとらえさせるための、(7)は、思索的特性をとらえさせるための発問である。
 こうした発問を契機として、直観的に、全体的に、詩心を感得させる。その詩心・感動の内
実は、自然美であったり、感情美であったり、感覚美であったりする。それは、たとえば、自
然を愛しいとおしむ心、自然の風景の美しさ、自然のさけび、働く喜び、親子の愛情、生活の
楽しさなど、人の心の奥底に響き、しみとおり、沈み付くものである。そこで鑑賞が成り立
つ。


                                           205
 こうして感得した詩の心、感動を、さらに、表現に即し、ことばに即して、確かめ、自覚
し、認識するところに、詩の理解指導があり、ことばの学習がある。たとえば、
 (1) この詩の明るさ、心がはずむような感じは、どのことば、どの書き表わし方から感じ
   るか。
 (2) 朝のさわやかさは、この詩のどこでどう感じるか。
 (3) 働く楽しさ、喜びは、どのことばで、そう感じるのか。
 (4) いかにものどかな様子はどこでわかるか。
 これらは、詩のなかのあることば、ある表現・詩全体・リズムなどによって表わされてい
る。それを意識し、確認し、認識することによって、詩に対する理解はいっそう深まってい
く。同時に、ことばの意味機能が明らかになっていく。
 こうして鑑賞し、理解したら、これを朗読する。それによって、鑑賞・理解の結果が評価さ
れる。
 ところで、詩の鑑賞学習には三原則がある。(1)すぐれている詩を読む。(2)読んでわかる
詩を読む。(3)たくさん読むということである。
 さきにあげた井上さんの指導は、この三原則に従って行なった鑑賞指導である。特に理解指
導を行なわないところに特徴がある。味わうために声を出して読む。その結果を発表し合う。
さらに朗読をするという学習過程がとられている。発問はごく少ない。そこで、鑑賞した児童
たちのことばを拾って分類し、分析してみるといい。それによって、児童たちの鑑賞の実態が
わかる。感じ方の発達がわかる。その児童の鑑賞のことばを参考にして、発問のことばを決め


                                           206
るとよい。たとえば、「草かり」の詩を鑑賞した児童のことばをあげてみると次のようになる。
 (1) 楽しそうだ              (4) 静かな感じ
 (2) すがすがしい感じ           (5) 薄暗い感じ
 (3) 励まされている感じ          (6) 小鳥がたくさんいる感じ
 (1)は草をかる人の心を感じ、(2)は詩全体にただよう朝の感じをとらえ、(3)は、小鳥の声
と草かる人とを総合的に見、(4)は詩全体にただよう感じを感じ、(6)は小鳥の声に強く反応
し、(5)は、まだ太陽が上がらぬという一事象にとらわれた感じを述べている。
 これらのことばを手がかりにして、理解指導が行なわれる。
2 伝記物語を読む指導と発問(六年)

 教材「富士山ちょう」(伝記物語)
 第一時の指導。主人公、野中到の行動と、思想
 のだいたいを読みとる指導、主題的接近法によ
 る。
       ※
教 きょう勉強することはなに?
児「富士山ちょう」
  (板書、「富士山ちょう、出てくる人」)
教 このお店に出てくる人はだれか。
児 o野中到とその妻千代子さん。o和田技師、
教 おもな人三人、ちゃんと言える人。
児 野中到とその妻千代子、和田雄治
  (板書、野中到、千代子、和田雄治)
教 そのほかおおぜいですね。三人の中で話の中
 心はだれ。
児 野中到
教 この人がお話の中心になっている人ですね。
 野中到というのは、どんな人か、考えて一回読
 んでみましょう。
児 (七人、次々と音読する。)
教 本をおいて、(板書、どんな人)このお話の
 主人公の野中到はどんな人か、どんな感じの人
 か考えてみよう。
児 oがんばりがきく。oがんばりづよい。

207
  (板書、「がんばりづよい」)
教 ほかに考えのある人はいないか。
児 たいへん研究熱心な人
  (板書、「研究ねっしん」)
児 すこし、がんこな所もある。
  (板書「がんこ」)
児 人々のためには、自分の財産を投げ打って尽
 くす人
  (板書、「りっぱな人」)
教 みなさんの中からこのような考えが出てき
 た。本のどのことばからこういうことが言える
 か考えてみましょう。
  「がんばりづよい」というのは本のどこでわか
 りますか。
児 四七ページの二行め。――なにくそ、これく
 らいの病気にまけるものか、春までがんばろ
 う。
  (板書、「なにくそ……がんばるぞ」)
教 もう一つは?
児 五〇ページ――だれがむかえに来ようと下山
 するものでない。千代子もそのつもりでいる。
  (板書、「だれが……下山するものか……」) 
  教 ほかにありますか。
児 四七ページ――おれがする。動けるうちはお
 れがする。
児 それは、がんこではないか。
児 研究熱心にはいるのではないか。
児 少しずつ全部はいっているのではないか。
教 これはことばは違うが、ことばの中味は似て
 いるところがある。このことばは、(板書、「お
 れがする。」(がんばり強いことを表わすことば
 と考えていいでしょう。
教 ほかにありますか。
  (以下、省略する。)
教 みなさんの言ったことをだいたい書いた。見
 てごらん。みんなみどりで書いたが、最後は茶
 色で書いた。それは何か?
児 言ったことばでわかることと、様子でわかる
 こと
教 (板書、「考え」「したこと」)先生は、このつ
 もりで書いておいた。緑で書いた所は、到の考
 えが現われている。茶色は、到の行動を書いた
 ところ。この人はどんな人でしょうというとき
 には、その人の考えやしたことによってわかる 

208
 わけです。
教 では、この文章をそういう考えで、よく読ん
 でいきましょう、一ばん終わりの所、五二ペー
 ジの終わりから三行目、この日の到の気持ちは
 どんなだったでしょう。読んでみましょう。 
  児 音読
教 では、これで終わります。
  (東京都中野区立多田小学校、小関了三さんの
 指導、記録者 中沢) 

(1) この授業の指導過程と発問
 この授業は、この教材の第一時の扱いである。指導過程は次の通りである。
 ア 全体を読んで、野中到の性格(人間性)を読みとる。
 イ 読み取った性格を表現と結びつけて確認する。
 ウ 野中到の「考え」と「したこと」とを読み分ける。
 つまり、主題的接近法によって、全体的な読みから分析的確認の読みへという方向で学習さ
せた。この過程をさらに細かく分析してみると次のようになっている。
 ア 物語の簡単な構造――人物を中心にして――を押える。(家庭学習に基づいて)
 イ 読む目的を持つ。(野中到はどんな人か。読んで調べる。)
 ウ 目的を追求するために全体を読む。(音読)(全体的な読み)
 エ 読み取ったことを発表して、到の人格を想定する。(がんばりづよい。研究ねっしん。
  がんこ。りっぱな人)
 オ 到の人格を確認するために読む、発表する。(人がらがどこにどのように書き表わされ
  ているか。)(分析的確認の読み)


                                           209
 カ 読みとったことをまとめる。(総合的な読み)
 このように指導過程が確立されており、教材の研究もじゅうぶんにできていたので、発問の
全体構造が、簡潔に、適切に組織された。発問の数は少なく、児童の主体的学習の余地が残さ
れていた。したがって、むだな発問は全くなかった。


        終 わ り に


1 研究資料について
 この研究に使った発問の資料は、全部東京都内の小学校で行なわれた国語の研究授業から、
私が直接採録したものである。採録した期間は約六か年にわたっている。次に、この研究に直
接使った資料をあげてみる。
   一年  二一学級  二六時間
   二年  三二学級  三二時間
   三年  二三学級  二三時間
   四年  二一学級  二一時罰
   五年  二六学級  二六時間
   六年  一九学級  一九時間
    合計  一四二学級  一四二時間
 採録したのは、その時問内の教師の発問・助言・指示と児童の応答であって、すべて、学習


                                           210
指導案の裏面に記録した。ここに採録された発問は、少なくみても二、000は下らないであ
ろう。

2 この研究の構想
 私は、次の構想を立てて研究に着手した。もちろん、その全部にわたって、満足するほどの
研究はできなかったが、一応、現在考えている私の発問に対する理論体系実践体系を示したつ
もりである。
 (1) 「発問の機能」の研究
      ┌人間性の開発   ┌発問と思考との関係
      |真 理の探 究   ├発問と言語能力との関係
 発問の機能┤知 識の獲 得―学習┼発問とコミュニケーションとの関係
      └能 力の養 成   ├発問と指導過程との関係
                └発問と学習内容との関係

 (2) 「発問の構造」の研究
 構造の基礎理論と構造改革
       ┌機能的にみた構造┐  ┌機能からみた形式
 発問の構造―│        ├形式┼内容からみた形式
   |   └内容的にみた構造┘  └表現からみた形式
   ↓
 発問の全体構造――学習内容の構造と発問の全体構造
          学習過程の構造と発問の全体構造
 (3) 「発問と学習」の研究


                                           211
  発問と授業┐ ┌発問とコミュニケーションの成立
  発問と児童┼―┼発問と学習過程の成立
  発問と教材┘ └発問と学習の成立

 (4) 「発問と学習指導」の研究
  発問の実態とその分析――実態の把握
  発問と学習指導法との関係の究明
3 この研究で提示した問題
 私は、この研究で次のような新しい問題を提示し、それに対する私の見解を述べた。
 (1) 発問と思考力の発達・養成の問題
 (2) 発問と言語能力の発達・養成の問題
 (3) 発問の機能の問題
 (4) 発問の構造と全体構造の基礎理論とその改革の問題
 (5) 内容的価値の獲得と国語の技能養成とを一元的に学習させる発問の問題
 (6) 発問と学習の成立の問題
 (7) 発問と指導法との関連の問題。
 これらの問題のうち、特に(4)と(5)は重要である。(5)は、機能的国語教育の実践を容易に
可能にするための主張である。
4 これからの研究
 私は、さきにあげた諸問題について今後さらに研究を惜しまないつもりである。これからは
 


                                          212
採録した多くの発問を、分類整理してその実態を明らかにする。科学的分析を加えて、発問の
本質を明らかにする。発問の機能を明らかにする。学習過程における発問の全体構造を明らか
にする。学習内容・児童との関係を明らかにし、学習過程の中に発問を適切に位置づける。特
に内容的価値の獲得とそれに必要な能力との関係を明らかにし、内容的価値と言語技能とが一
体的・同時的に身につくような発問の研究に努力を傾けたいと思う。
                              (昭三八・八・二二)




                                           (5)

目的に応じた方法の計画と発問
             145,147
目的追求の方法と発問     150
目的追求ということと発問   150
目的追求(価値追求)のため
 の指導と発問        150
目的を持たせるための発問   131
目的を持たせるための発問の
 例             134
物語のあらすじを読み取る指
 導と発問          194
問答           19, 21
問答型            167
問答法       15,16,18, 94
問答の機構          126
問答はコミュニケーションの
 基本形態である       125
      ヤ  行
役目・機能等に関する発問の
 型             84
要件(要点)を読みとる指導
 と発問           191
用語がむずかしくて理解でき
 なかった例         112
用語が理解されていたいため
 学習困難であった例     115
用語について説明する     124
      ラ  行
理由・原因・結果等に関する
 発問の型          84
連続・変化・関係・比較等に
 関する発問の型       83
(4)
発問と技能主義の国語教育   40
発問と機能的国語教育     40
発問と技能の養成       44
発問と教材研究        99
発問と言語能力      39, 42
発問と国語科の授業      94
発問とコミュニケーション   46
発間とコミュニケーションの
 成立            125
発問と思考力         30
発問と指導法の改善      196
発問と児童の主体的学習    96
発問と態度の養成       42
発問と内容主義の国語教育   39
発問の機能        47,180
発問の機能からみた形式    80
発問の教育的意義       126
発問のくせ          38
発問のくふう         116
発問の形式          80
発問の構成要素        70
発問の構造          57
発問の実態          159
発問の実態の分析       163
発問の順序・構造       36
発問の条件          31
発問の全体搬造    67, 74,101
             184,195
発問の体系          73
発問の内容が高度に抽象化
 総合化されていて、学習で
 きなかった例        113 
  発問の内容がばくぜんとして
 理解できなかった例     114
発問の内容がむずかしくて無
 理だった例         113
発問の内容の全体構造     180
発問の内容を分析して示す 116,118
発問の難易          43
発問の難易の使い分け     42
発問の表現からみた形式    88
発問の本質          30
発問は思考活動を誘発する   30
発問を中心とした学習     96
判断・批判・選択等に関する
 発問の型          82
比較したり,異同を明らかに
 したりするための発問    51
評価             29
評価のための発問       98
標準型            88
ヒントや助言を与える     118
複合型            87
復習型            165
復習のための発問       56
分析・総合等(要点・要約)
 に関する発問の型      82
分析のための発問       48
弁証法           15,18

      マ 行
目的達成(価値獲得)のため
 の指導と発問        156
目的の明確な発問        44 
(3)
禅問答             16
総括的な発問         177
総合型             86
総合のための発問        48
想像・推理のための発問     50

      夕  行
対話              15
多項型             85
だらだら型           90
単一型             85
単元の学習計画と発問     142
知識・情報の学習における発
 問の構造の例         71
知識・情報の学習における発
 間の全体構造の理論      68
知識・情報のコミュニケーシ
 ョンと発問          46
知識・情報のための発問     54
知識の獲得           18
知識の構造     108, 109, 183
知識の体系       68, 69, 72
知識・理解等に関する発問の
 型              81
知識を求め理解を深めるため
 の発問           167
中学年の発問         161
中学年の発問と学習指導    187
直接型            167
継ぎ穂型            91
低学年の発問         159
低学年の発問と学習指導     175 
  手紙の要件を読みとる指導の
 発問            188
適用・練習のための発問     79
展開のための発問        79
伝記物語を読む指導と発問   206
問いかけの発問        173
導入のための発問        79
読解に必要な能力       109
どのようにして目的を持たせ
 るか            133
どんな発問が学習を成立させ
 ないか           110

      ナ  行
内容的(価値的)技能的課題   63
内容的価値・言語技能の養成
 を中心とした発問       63
内容的にみた発問の構造     65
内容の構造    71,108,109,194
内容の組織          191
内容の追求を中心とした発.
 間(一)            58
内容の追求を中心とじた発
 間(二)           59
人間性の開発        11,14
念仏問答            16

      ハ  行
発問       16, 22, 25, 27
発問と学習        22,110
発問と学習指導        175
発問と学習指導過程       130 
(2)
経験型            166
経験したことを話す指導と発
 問             177
形式的な発問       172,173
研究資料           209
研究の構想          210
高学年の発問         162
高学年の発問と学習指導    198
心を開く鍵          14
後続型            92
ことばに関する事項の学習の
 ための発問         171
コミュニケーションと発問   128

       サ  行
最初の学習のさせかたと発問  164
産婆術            16
思考過程と発問の全体構造   77
思考・心情・感覚等に関する
 発問の型          80
思考の一貫性         77
思考の課題性         77
思考の生産性         78
思考の即物性         77
思考法を身につける発問    36
思考を形式化する発問     38
思考を正確にする発問     31
思考を発展させる発問     34
思考を深める発問       32
指示           24, 27
思想・心情のコミュニケーシ
 ョンと発問         46 
  質問              24
質問を誘う発問        172
実質的発問          173
児童の能力に応じた発問     22
詩の鑑賞指導と発問      201
詩を読み味わう指導と発問   199
終末のための発問        79
主体性の確立          95
主体的学習           97
主題・要旨・意図の構造と発
 問の全体構造の理論      73
主題・要旨・意図の学習にお
 ける発問の全体構造の例    74
情景・感動・主体・意図など
 を読みとるための発問    170
情報の構成要素         70
情報の内容と構造        70
助言            25, 27
資料の全体構造        106
心理・心情を理解するための
 発問            169
真理の探求         15,16
心理・場面・情景・行為等に
 関する発問の型        81
生活的・学習的な目的     131
説明            25, 28
説明解説            24
説明解説を加える       119
説明型           89,166
説明を読む指導と発問     181
線条的な発問の構造       73
選択型             92 
(1)
       ┌この索引は,「発問に┐
索     引|関する事項」を中心に|
       └して作成してある。 ┘

      ア  行
あいまい型          91
−発問一事項       65,110
一発問多事項         66
一問多答           66
一問一答式          38
−問一答式の発問       65
意味構造           73
意味の過程的構造体      74
意味の層的構造体       74
応答を促す発問        173

      カ  行
書き手が体制化した思考    78
学習過程の樹造と発問の全体
 構造            76
学習が成立しない発問   110,124
学習計画を立てる指導と発問  142
学習事項(知識・技能・態度)
 と発問           101
学習指導過程と発問の全体構
 造             79
学習内容の構造と発問の全体
 構造            68
学習にはいる最初の発問    159
学習の過程における発問    167
学習の方法の計画と発問    144
学習を成立させない発問の例  111 
  課題のための発問       47
課題を展開する発問      172
価値的な目的         132
価値的な目的を追求するため
 の発問           79
価値的な目的を持たせるため
 の発問           79
価値を獲得し,目的を達成す
 るための発問        79
感覚・感動・情景などを明ら
 かにするための発問     52
感想・意見・批判のための発問  52
感想型            167
関係判断のための発問     49
観点を変えて発問する     120
機能的国語教育における発問  41
機能的にみた発問の構造    57
技能的な課題         61
技能のための発問       55
技能の養成を中心とした発問  61
技能を主とした発問      172
教材研究と発問の例      105
教材の機能          106
教材の機能一価値の構造と
 発問            99
教材の機能に即した発問    109
教材の内容の構造    107. 183
教材の本質・機能       100
教材の持つ機能的な構造    100 



 著者略歴
中沢政雄 明治40年群馬県に生まれ,群馬県立工業学
       校卒業。小学校,中学校,高等学校教諭等
       を歴任,現在東京都教育委員会指導主事。
       著書に「これからの国語教育(三省堂)」
       「学習指導要領の展開国語科編,輿水実共
       著(明治図書)」「機能的国語教育(明治図
       書)」「機能的作文指導三巻 與水実共編著
       (明治図書)」等がある。



国語科の発問 ―その科学的・実践的研究―
         著  者  中  沢  政  雄
         発行者 藤 原 政 雄
         印刷所 西 田 整 版 所
         発行所 明治図書出版株式会社
             東京都中央区入船町3〜3
             振替東京 1 5 1 3 1 8
1963年10月刊               ¥460