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  国語科授業の新展開(20)




国語科の
完全習得学習


中沢政雄
国語教育科学研究会






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     は し が き

 この本は、教師ならだれでも望んでいる「すべての児童が完全に学習目標に到達できる」ことをめがけて行った、
実験研究の成果をまとめたものである。
 わたしどもは、この研究を通して、すべての児童が、学習の喜びを体験し、自己開発・自己形成の力を伸ばし、進
んで価値の獲得に自信をもってのぞむことができるようにと念願した。
 研究に当たっては、基礎理論を拙著「完全習得をめざす読解指導の展開」[完全習得をめざす作文指導の展開」(と
もに国語教育科学研究所刊)の二書に求めた。実験研究は、五か年にわたり、実験授業は、毎月二回土曜日の午後か
ら夜にかけて、八十数回に及んだ。その実験の成果は、その都度月刊の機関誌「国語教育科学」に掲載して大方の批
判を仰いできた。
 研究の内容は多岐にわたっているが、その根幹をなすものは、何といっても、学習の過程に、学習評価・学習調節
のコントロールシステムを内蔵した「学習指導過程」の編成にある。その過程は、学習単位ごとに、到達基準を明確
にした学習目標を具体的・行動的に設定する(行動目標))。その学習目標を追求する過程を、@学習課題の設定、A
学習方法の工夫、B学習活動の展開(自己学習・共同学習)、C自己評価の実施、D自己調節の適用、E学習目標の獲
得というようにシステム化してある。したがって、この過程によれば、いつでも、だれでも完全習得をめざす学習指
導を展開することができるようになっている。
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 なお、この研究を進めるに当たっては、二十年来研究し続けてきた、単元のシステム、単元展開のシステム、文
章・作品の構造化過程、学習目標の分析、行動目標の設定、基本的・基礎的技能の分析、自己学習・共同学習・学習
指導の調和、学習評価・学習調節法、学習法の学習などについて、くり返し実験研究を行ってきた。この本に載せた
実践例は、すべてこれらの研究の上に成り立っている。
 もちろん、ここに載せたものは、研究の一部ではあるが、それは、ただ一途に、夜を日についで研究に精進した会
員の、血のにじむような努力の記録であり、執心の結晶である。それを思うと、まことに感慨にたえないものがある。
 と、言っても、これで研究がし尽くされたわけではない。まだまだ研究の余地も、不十分な点もたくさん残されて
いる。幸い賢明な読者の実践によって補っていただくことを期待し、その指摘・批判を仰ぎたいと思う。
 終わりに、この本の編集、その他いっさい会員、特に編集委員の手をわずらわせた。さだめしたいへんなことだっ
たろうと思う。また、出版に当たっては、明治図書の間瀬季夫氏に格別お世話になった。あわせ記してお礼を申し上
げたい。
   一九八五年五月 端午の日に
                                     中 沢  政 雄




                                                        3
           目   次

       は し が き……………………………………………………………………………………1

     第1章 国語科の完全習得学習――その考え方と方法

         一 国語科の完全習得学習とは何か ……………………………………………………7
           l 完全習得学習は教育社会の諸要請に応じてる…………………………………7
           2 完全習得学習はどのようにしてシステム化されているか……………………9
           3 完全習得学習の学習指導過程はどのように編成されているか………………12
           4 完全習得学習は何をめがけているか……………………………………………17
         二 完全習得学習はどのように研究するか――その手順と考え方……………………18
           1 診断的評価は何についてどのように行うか……………………………………18
           2 単元のシステムを編成する………………………………………………………19
           3 教材の機能・システムを研究する………………………………………………20
           4 学習目標を分析して学習目標細目分類表を作成する…………………………21
           5 単元展開のシステムを編成する…………………………………………………23
           6 実験授業を展開する………………………………………………………………24
                                                        4
         三 完全習得学習の指導はいつでもだれでもできる……………………………………25

     第U章 完全習得を保障する学習指導――その設計の実際

         一 知識・惰報の読解完全習得学習はこのように設計する……………………………29
           ・教材「魚の身の守り方」
         二 文学の読解完全習得学習はこのように設計する……………………………………50
           ・教材「大造じいさんとがん」
         三 作文の完全習得学習はこのように設計する…………………………………………76
           ・題材「初めて経験したこと」

     第V章 完全習得をめざした学習指導――その展開の実際

         一 知識・情報の読解完全習得学習はこのようにすすめる……………………………96
           1 筋道をたて内容を正確に読みとり段落相互の関係を理解する授業…………96
             教材「火の話」
           2 要旨を読みとる授業………………………………………………………………106
             教材「またとない天敵」
                                                        5
         二 文学の読解完全習得学習はこのようにすすめる……………………………………119
           1 場面の様子や登場人物の気持ちを読みとる授業 ……………………………119
             教材「海をあげるよ」
           2 感動の中心を一層深く読み味わう授業…………………………………………130
             教材「ごんぎつね」
           3 情景や登場人物の心情を読みとる授業…………………………………………141
             教材「大きなしらかば」

         三 作文の完全習得学習はこのようにすすめる…………………………………………152
           1 順序をおさえて書く構成過程の授業……………………………………………152
             題材「はんがづくり」
           2 感想を書く叙述過程の授業………………………………………………………163
             題材「「チロヌップのきつね」を読んで」
           3 意見・感想を深める叙述過程の授業………‥…………………………………172
             単元「六年生に向けて ― 自分を考える」
                                                        6
         四 シミュレーションの完全習得学習はこのようにすすめる…………………………184
               シミュレーションとはどんな学習か
           1 主語・述語の照応に注意して読むシミュレーション…………………………185
             単元「ぶんのよみかた」
           2 根拠を明らかにして意見を述べるシミュレーション…………………………195
             単元「根拠を明らかにした意見の述べ方」

         会員名簿………………………………………………………………………………………206







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  第1章 国語科の完全習得学習その考え方と方法


     一 国語科の完全習得学習とは何か

  1 完全習得学習は教育社会の諸要請に応じている

 国語科教育とは限らないが、現代の教育社会からさまざまな要請が出されている。
 その一つは、「主体的に学習することができるようにする」ということである。教師や父母から強制されて学習す
るというのではなく、自分で学習目標をたて、学習方法を考え、積極的・意欲的に学習し、学習結果に対しては、自
己評価して、学習の結果の状況を自覚し、認識した上で、学習を調節して、学習目標に到達することができるように
するというものである。
 その二つは、「落ちこぼれをつくらない」ということである。昭和五七年一二月に、総理府の「子供の意識に関す
る世論調査」の発表があった。それによると、授業内容、つまり、児童が学習する内容について、「ほとんど理解で
きる」が、わずか二六%である。残りの七四%は、程度の差はあるが、何らかの指導、手当てを加えなければ授業に
ついていかれない、落ちこぼれていく児童であることを物語っている。それでは、実質的に児童の学ぶ権利を保障す
ることもできないし、教師の指導の責任を果たすこともできない。落ちこぼれをつくるな、すべての児童を学習目標
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に到達できるようにしようというのである。
 その三つは、「わかる学習の指導」ということである。わかる学習というのは、児童が、それぞれ何のために何を
学習するのか、学習目標がよく分かって、その学習の仕方を工夫する。その上に立って、何について、どこまで学習
すればいいのか、学習の到達度を理解して、主体的に、積極的に学習することができるようにすることである。
 その四つは、「自己学習・自己教育ができるようにする」ということである。これは、古くして新しい問題である。
かつて、プログラム学習が提唱されたのも、自己学習への道としてであった。自己学習を可能にするためには、自己
学習の仕方を習得しなければならないから、学習法の学習、学習技術の学習ということが強調された。それが、いま
また改めて要請されている。
 これらの要請のすべてに応じているのが、完全習得学習である。また、それらに応じられないようでは、完全習得
学習は成立しないであろう。
 ところで、児童は、一人一人異なった性格や感覚・感情、異なった思考・認識の力をもっている。学習態度も、学
習能力も、学習スタイルも、それぞれ異なっている。しかし、そのような児童のすべてに基本的な学習能力を、完全
に学習・習得させようというのが、いわゆる完全習得学習である。
 そのためにはどの児童も、自主的に、積極的に、自分の能力のすべてを発褌して、主体的に学習を進める必要があ
る。また、そのような主体的な学習を可能にするためには、児童自身が何のために、何を、どんな方法で、どこまで
学習すればよいかを知って学習する。つまり、わかる学習が進められなければならない。そうすれば、当然落ちこぼ
れる児童も救われ、完全学習法も習得され、自己教育の力も養われていくことは明らかである。
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  2 完全習得学習はどのようにシステム化されているか

 (1) 学習目標――行動目標
 そのような完全習得学習が行われるためには、児童は自主的に積極的に、持っている国語の能力を十分に発揮して、
すべての児童が、その時間における学習目標に到達しなければならない。
 ところで、その学習目標というのは、読解学習にしろ、作文学習にしろ、それぞれ、その時間の学習の終わりには、
ここまで到達させようという目標を、具体的に行動的に設定する。それは、普通に行動目標といわれている。
 この行動目標の中には、その時間に学習する基本的な技能と、その技能を働かせることによって身につく内容的価
値が含まれている。この基本的技能と内容的な価値が、あとで述べる学習目標に到達したかどうかを評価する場合の
基準、評価基準となるものである。
 児童たちは、この行動目標を追求するための学習課題を設定し、意欲に燃えて学習活動を始める。
 (2) 学習内容――基本的技能・基礎的技能
 ところで、児童たちが、その学習課題に従って、積極的に自主的に学習活動を進めるといっても、その学習活動を
適切に進めるためには、その時間に指導し学習させる基本的な読解技能・作文技能が的確に十分に働かなければなら
ない。と同時に、それらの技能を内面的にささえる発音力・文字力・語い力・文法力(いわゆる言語事項)などの基
礎的技能が、また有効に働かなければならない。
 児童たちが、読解・作文の学習を通して、完全に習得しようとするものは、これらの基本的・基礎的技能と、それ
らが働くことによって学習される内容的価値である。
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 なお、これらの技能は、学習目標を追求するための学習活動を処理するための技能であり、また、その学習活動を
通して身につくものである。
 (3) 学習方法――学習活動
 そこで、児童たちは、学習課題を解決するための方法として、どんな学習活動をするか、また、学習活動を遂行す
るためには、どんな基本的技能をどのように働かせればいいかを考える。
 その上で、適切な基本的な学習活動を設定する。たとえば、概略を読みとる活動・要点を読みとる活動、要旨を読
みとる活動、粗筋を読みとる活動・場面の様子を想像しながら読む活動、人物の性格・心情などを想像しながら読む
活動、感動の中心を読みとる活動、主題を読みとる活動など、学習目標・基本的技能に応じた読解活動を設定する。
 また、題材を選択する活動、書く内容を収集する活動、文章を構成する活動、表現・叙述する活動など、これも学
習目標・基本的技能に応じた作文活動を設定する。
 これらの学習活動は、いずれも学習課題にもとづいて、学習目標を追求し、基本的技能を身につけ、内容的価値を
習得するための、最も基本的な活動である。しかも、それは、児童たちが、何のために(学習目標)、何を(内容的価
値)、どのようにして(学習技能)、どこまで(到達基準)学習するかを。はっきりと意識し自覚したうえで行う活動
であるから、主体的な、自己学習であることは言うまでもない。
 それらの学習活動の結果は、それぞれ学習シートに記録する。このことは特に重要である。学習活動の結果、内部
行動が変容されるといっても、その実状・実態は、外部からうかがい知ることはできない。具体的に言えば、どんな
に主体的に学習活動をしたからといって、学習のしばなしでは、どのように内容を理解したか、どのように基本的技
能が働いたかを知ることはできない。そこで、外から知ることのできない、内部行動の変容の状況を外部行動化する
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つまり、書かせる、記録させることが重要なのである。ここまでの過程が、自己学習である。
 (4) 学習評価――自己認識・学習意欲の喚起
 内容の理解、あるいは内容の表現をめがけて、基本的な読解技能・表現技能を働かせて、主体的に学習活動を行っ
た児童たちが、いちばん知りたいのは、学習活動の結果の状況である。どこまで学習課題に応じられたか、学習に成
功したのか、失敗したのかということである。それを知るために学習活動の結果を評価することになる。
 学習活動の結果は、すでに学習シートに記録されている。それができたかどうか、適切かどうかを、観察したり測
定したりして評価する。その評価をするときの基準は、行動目標の中に書かれている基準、基本的技能の働きによっ
て身につく内容的価値である。
 児童たちは、この評価の基準に照らして、自分の学習の結果(学習シートに記録されている)を自分で評価する。
いわゆる自己評価である。この自己評価によって、学習に成功した、学習に失敗した、ここまで学習目標に近づいた、
どこがよくて、どこが惡かったというように、自分の学習の結果の状況を詳しく知ることができる。
 そこで、学習に成功したものは、渮足感にひたり、学習に自信を持ってさらに学習を進めようとする。学習に失敗
したものは、失敗した理由・条件を教えて、今度こそ成功するぞという、自己完成の意欲を持たせる。いずれにして
も、ここで、さらに学習意欲・学習動機が喚起される。
 (5) 学習調節――学習のコントロール・学習目標に到達
 学習評価の結果の状況が明らかになると、児童たちは、それを基にしてさらに学習を進める。
 学習に成功したものは、一応その時間の学習目標に到達したのであるが、それにさらに習熟したり、発展させたり
するために、新しい課題を設定して学習を深め進める。
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 学習に失敗したものは、学習の結果を反省して、失敗の理由や条件を考える。どのように学習の仕直しをして、成
功に導くか、その読み直し、書き直しの条件を設定する。これが、学習の調節条件である。この調節条件に従って学
習の仕直しをする。これが調節学習である。
 このように、調節条件に従って調節学習を進めることによって、今度は学習に成功する。つまり、その時間の学習
目標に到達する。そこで、一度学習に失敗したものも、自己完成の意欲を満足させ、学習に自信をもつことができる
ようになる。
 完全習得学習は、これまで述べてきたように、学習目標・学習内容・学習方法・学習評価・学習調節が、相互に有
機的関連をもった、目標追求のシステムである。このシステムの中で、学習評価・学習調節を含む学習のコントロー
ルシステムを有効適切に生かすことが、完全習得学習を成功に導くただ一つの道である。

  3 完全習得学習の学習指導過程はどのように編成されているか

 前記の完全習得学習のシステムを、実践に移すためには、それに応じられる学習指導過程を編成しなければならな
い。そのためには、一つは、主体的学習を保障する、目的・計画・学習・評価の過程、二つは、児童の思考・認識の
過程にもとづく学習過程、つまり、直観的思考(認識)、分析的思考(認識)、体制的思考(認識)の三過程による学
習過程、三つは、学習目標・学習内容・学習方法・学習評価・学習調節のシステム、この三者を、学習目標を追求す
るための科学的・工学的な組織として、有機的・総合的に組織する、つまり、システム化する必要がある。
 これらの操作をしたうえで、編成したのが評価・調節過程を内蔵した次の学習指導過程モデルである。わたしども
の実験によれば、この学習指導過程に従って、忠実に学習指導をすれば、八五%から九五%のものが基本的な技能と
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その働きによって身につく内容的価値を、完全に習得することが可能である。
 (1) 完全習得をめざす読解学習指導過程モデル
 まず、次に読解学習指導過程モデルをあげてみる。
@ 目標――学習目標を設定する。(児童は学習課題を設定する)
A 方法――学習方法を工夫する。
B 活動――学習活動を行う。
 自己学習┐┌ア 直観――直観読み――全文を直観的に読む┐
   ↓ ├┤イ 分析――分析読み――全文を分析的に読む├評価基準の設定
 共同学習┘└ウ 体制――体制読み――全文を体制的に読む┘
C 評価――学習評価(自己評価)
D 調節――学習調節(自己調節)
E 獲得――学習目標の達成
 @の学習目標は、その時間の学習の終わりにここまで到達させるという目標を行動目標として設定する。行動目標
は、その時間に学習する範囲と、そこで学習する基本的技能と、基本的技能によって習得される内容的価値とを、具
体的に行動的に記述する。児童は、この行動目標を獲得するための学習課題を設定する。それによって、何のために
何を学習するかを自覚し、課題意識・学習意欲・学習態度が確立される。
 Aの学習方法は、学習課題に即して、学習範囲を確認し、基本的技能を自覚し、その学習方法を考えて決める。こ
の過程で、課題意識はさらに強化される。
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 Bの学習活動は、学習課題を、学習方法に従って追求するための基本的な学習活動である。したがって、この読解
活動を通して、基本的技能と、基本的技能の働きによる内容的価値が習得される。この学習活動は、児童の思考・認
識の過程に従って、直観読み・分析読み・体制読みの三過程をたどって行っている。
 なお、この学習活動は、学習課題、学習方法に従って行う主体的な自己学習と、自己学習の結果を持ちよって学習
する共同学習から成り立っている。この共同学習では、主として、基礎的事項(言語事項)についての知識や用法に
ついての理解、内容的価値についての理解を深める。が、基本的技能の学習にはつながらない。
 また、この共同学習を通して、児童は自己の立場や自己学習の結果についての見通しを立てる。と同時に、評価の
基準の理解・設定が行われる。
 Cの学習評価は、自己学習の結果(学習シートに記録されている)について、共同学習で理解し設定した評価の基
準に照らして、自己評価する。この自己評価によって、児童たちは。自分の学習結果の状況を自覚する。つまり、学
習結果に対する自己認識ができる。
 なお、この評価は、基本的な学習活動ごとに行われる。したがって、前記の直観読み・分析読み・体制読みのそれ
ぞれの過程で、学習評価を行うことは言うまでもない。
 Dの学習調節は。学習評価の結果の状況に基づいて、各自が反省し、学習を調節する条件を設定する。その調節条
件に従って読み直しをする。これが調節学習である。それによって、自己学習の結果を修正する。それによって行動
目標に到達する。
 Eの学習目標を達成する。これは、単元の学習目標・価値目標に到達することである。
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 (2) 完全習得をめざす作文学習指導過程モデル
 次に、作文学習指導過程モデルをあげてみる。
@ 目的――書く目的を確立する。
A 題材――題材を選定する。
B 収集―┬書く内容を収集する。
     評価――行動目標の基準に照らして評価する。
     調節――行動目標の基準に合うように調節する。
C 構成―┬文章を構成する。(アウトラインを作る)
     評価――行動目標の基準に照らして評価する。
     |
     調節――行動目標の基準に合うように調節する。
D 表現―┬文章を書く。
  叙述 評価――行動目標の基準に照らして評価する。
     |
     調節――行動目標の基準に合うように調節する。
E 処理―目的に応じた評価をする。(機能評価)
    ―目的に応じて処理する。
 @の目的は、学級をよりよくするために意見を書くというように、何のために何を書くかを明確にする。
 Aの題材は、目的に合った題材を選ぶ。
 Bの収集は、題材についてどんなことを書くか、書く目的に合わせて想起法・思考法・観察法・調査法などを使っ
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て書く内容を収集する。収集した内容については、行動目標の基準に照らして評価し、調節して、すべての児童が適
切な内容を収集することができる。ここで、題材に対する認識が深まり、書こうとする意識・意欲もさらに確かにな
る。それは、題材に対する分析的認識である。
 Cの構成では、収集した内容を目標に合わせて文章の大体を組み立てる。いわゆる書く文章のアウトラインを作成
する。ここで、どんな構成の文章を書くか、その見通しがたつから、児童は安心して、書くことに自信を持つように
なる。これは、体制的認識の第一段階である。ここでも、評価・調節によってすべての児童が適切なアウトラインを
作成することができる。
 Dの表現・叙述は、アウトラインに従って文章を書く段階である。行動目標に示された表現・叙述の仕方によって
書く。児童の思考・認識の力に応じた表現法・個性的な表現・叙述が行われる。児童は、書く内容も十分に収集され
ており、アウトラインもできているので、安心して、自信を持って書く。したがって意欲的で、書く速度も速い。
 ここでも、行動目標に照らした評価・調節を行うから、すべての児童が、表現・叙述法を身につけると同時に、内
容的価値を確実に習得することができる。これは、アウトラインをさらに強化した体制的認識である。
 Eの処理では、一つは、書き上がった文章について、単元の目標に照らして評価する。つまり、文章が書く目的を
果たすことができたかどうか、文章の機能について評価する。これが、最も重要な、文章の機能評価である。
 二つは、書いた文章を、書く目的に応じた処理をする。
 以上、読解と作文の学習指導過程モデルをあげたが、これが、完全習得学習指導の根幹である。この学習指導過程
は、前に述べたように、完全習得に必要な諸要素を、有機的に関連づけた目標追求のシステムである。
 この学習指導過程を視覚化し、図式化したのが、学習のフローチャートである。
                                                        17

  4 完全習得学習は何をめがけているか

 (1) 人間性を開発伸長する基本的技能・基本的学習法を習得することをめがける
 前述のような完全習得学習に成功すると、それぞれの過程でめがけてきた、基本的読解技能・基本的作文技能が習
得される。この基本的技能の学習を通して、基本的な読解法・作文法が理解され習得される。また、その学習指導過
程を活用する技能も育てられる。したがって、自己学習法・共同学習法も学習される。さらに、自己評価法・自己調
節法の学習を通して、学習のコントロールシステムを強化することもできる。
 こうして、児童は、主体的学習の方法、態度を習得するとともに、認識・思考の力が伸ばされる。
 (2) 人間性を開発伸長することをめがける
 ところで、読解技能・作文技能が働くことによって、内容的価値が理解され、内容的価値が創造される。つまり、
技能は、内容的価値を理解したり創造したりする働きをする。したがって、読解技能・作文技能の働きによって人間
性が開発伸長される。
 文学作品を読んだり、生活感惰を書いたりすることを通して、感覚・感情、物の見方や感じ方が育てられ、文学性
や感性が育つ。説明・記録の読み書きを通して、知識や思想が育てられ、論理性・文化性等の知性が磨かれる。また、
情報や手紙を読み書きすることを通して、社会的な物の見方・考え方を理解し社会性を伸ばすことができる。
 (3) 児童が未来を開く自己教育への道を開き、自信をもって学習に当たることをめがける
 児童は、毎時の学習において、学習内容を完全に習得していくから学習に対する自信を持つ。また、主体的な学習
法を身につけ、それを適用して、新しい学習を処理していく。こうして、未来を開く自己学習・自己教育力が育つ。
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     二 完全習得学習はどのように研究するか――その手順と考え方

 完全習得学習をどのように展開するかについては、第二章以下に具体的に詳細に書いてある。ここでは、完全習得
学習について研究する場合の手順と、その考え方の基本的な事項について書いておきたい。

  1 診断的評価は何についてどのように行うか

 診断的評価は、単元の学習に入る前に、学習する話題・題材・主題等についての児童の関心・興味・必要や、その
単元で学習する基本的技能が、どの程度身についているかを評価し、学習準備ができているかどうかを診断するもの
である。これによって、児童の学習前の実態を明らかにし、そこから学習指導を展開することをめがけている。
 (1) 診断的評価の対象――何を評価するか
 @学習する話題・題材・主題に対する興味・関心・必要など、学習態度形成に関する事項、A話題・題材・主題等
についての経験・知識・情報(内部情報)など、内容の理解・表現を助ける人間形成に関する事項、B学習する基本
的な読解技能・作文技能など、能力形成に関する事項、C学習態度・学習スタイル・音読・黙読などに関する事項等
について評価する。
 (2) 診断的評価の方法――どんな方法で評価するか
 前項の@Aについては、質問紙法(アンケート)によるのが便利である。Bについては診断テストによる。Cにつ
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いては、チェックリストを用意した観察法による。なお、Bの作文能力については、直前に書いた作文の分析調査に
よるのが便利である。
 (3) 診断的評価の活用――どのように活用するか
 診断的評価の結果、個人別に、また学級の傾向として、次の事柄が明らかになる。
 学習の対象に対する興味・関心・必要などの状況が確認される。学習の対象についての経験・知識等の内情報
の有無・状況がわかる。学習に必要な技能の度合いや技能についての知識が確認される。学習に対する困難度や
問題点がわかる。要するに、個人にとっては、学習興味・学習能力・学習スタイルなど個性的な実態がわかり、学級
では、それらについての全体的な傾向・発達の状況がわかる。
 そこで、単元のシステム・単元展開のシステム・一時間の学習計画を立てる。能力の実状に応じた指導法を工
夫する。到達目標・到達基準を設定する。学習指導の結果と比較して進歩の状況を知るなどの場合に活用するこ
とができる。

  2 単元のシステムを編成する

 診断的評価の結果に基づいて、単元のシステムを編成する。単元は、単元〔名〕・単元の学習目標[価値目標]・学
習内容[目標を達成するための学習態度・学習能力(基木的技能・言語事項)]・学習資料[学習教材・その他の資料]
・学習方法〔基本的技能を働かせて、目標を追求するための学習活動〕・学習評価〔学習活動の結果を目標・内容に
照らしての評価の観点〕等の要素を相互に有機的関連をもたせてシステム化する。
 そのためには、教科書の単元を右のシステム要素にあてはめて、学習目標・学習内容・学習教材・学習方法・学習
                                                        20
評価を設定し相互に有機的関連をもたせてシステム化する。それらの要素がばらばらでなく、相互に有機的に関連し
ていることを明らかにするには、表解するのが便利である。(実践例参照)

  3 教材の機能・システムを研究する

 単元のシステムが編成されると、次は、単元の学習の契機となる教材(説明文・情報文・文学作品)は、児童に対
して、学習に対して、どのような働きかけをするかを考えてみる。
 この教材を媒介として行われる学習活動を通して、人間性が開発伸長され、それを保障する読解技能が開発養成さ
れることは言うまでもない。そこで、教材の研究に当たっては、まず、直接人間性を開発伸長する文章、作品の内容
的価値は、どのようなものであるか、また、人間性を開発伸長する国語の基本的技能はどのようなものであるか、あ
るいは、この教材の学習を通して、学習される基礎的技能(言語事項)はどのようなものであるかなどを、児童の関
心・興味・必要と国語能力の発達とに関連させて考察する必要がある。前者が、教材の人間形成の機能、後者が、能
力形成の機能の研究である。
 次には、この教材を直観読み・分析読み・体制読みの学習過程に即して、全文・段落・全文、あるいは、紹介・発
端・展開・クライマックス・結果(後日談)などのようにまとまりごとに分節して、学習単位を作る。そのために
は、この教材が、どのような過程をたどって構造化されているか(要旨の論理的展開・主題の心理的展開)、その構
造化過程を明確にする必要がある。
 この構造化過程を明確にすれば、その教材の内容を学習過程に即して分節し、学習範囲を区切ることができるから
学習単位の設定は容易である。また、学習単位ごとに行動目標を立て、学習技能(基本的技能・基礎的技能)を押さ
                                                        21
えることも容易である。と同時に、段落の要点・段落相互の関係、あるいは、ストーリーの展開におけるサマリーと
シーン、場面の情景と心理、心情の変化等も容易に押さえることができる。
 それは、文章の構造が、要素型(並立型)か条件型かを知ることであり、また、作品のストーリーの展開の型、プ
ロット(反復型・連鎖型・漸層型・語り型等々)を明らかにすることでもある。
 以上の諸事項をシステム化したのが教材の「構造化過程」である。その実践的記述は、第U章を参照されたい。

  4 学習目標を分析して学習目標細目分類表を作成する

 国語科の単元の目標は、何時間かの学習の後に到達する目標として、価値目標が設定してあるから、この目標を直
接分析して細分化することはできない。つまり、要素分析の方法をとることができない。
 読解学習では、普通、読解教材の学習過程を前記のように、直観読み(全文の読み)・分析読み(段落の読み・場面
の読み)・体制読み(全文総括的読み)の三過程に分析し、さらにその三過程を一時間あるいは、二時間ごとの学習
のまとまりに分析して細分化する。これを「学習単位」という。この学習単位ごとに行動目標を設定し、それらを順
次達成することによって、単元の学習目標に到達することができる。この学習単位ごとの目標が、分析された目標群
である。この学習単位の設定は、文章・作品の構造化過程に即して考えれば容易にできる。
 作文学習では、文章の制作過程を題材選定過程、表現内容収集過程、文章構成過程、文章表現・叙述過程、文章処
理過程のように編成し、順次指導することになっている。この制作過程を分節して、その一つ一つの過程を「学習単
位」とすると便利である。作文の場合には、学習時間を考慮して分節するのではなく、学習の小さなまとまりごとに
分節し、その分節に対して時間を割りあてるという考えに立ったほうがいい。この場合も、学習単位ごとに行動目標
                                                        22
を設定し、それを順次達成していくことで、最後に単元の目標に到達する。したがって、この学習単位ごとの目標が
単元の目標を分析した目標群である。以上のような目標分析の方法を、条件分析という。
 左のようにして設定した目標群を、単元の目標・内容・方法と有機的に関連づけてシステム化したものが、われわ
れの「学習目標細目分類表」である。次にその形態・様式を示す。実践例は、第V章を参照されたい。
口学習目標細目分類表モデル(読解) ※備考 作文もこれに準じて作成する。
                       【空欄】は表作成の制約から設けた余白です。 中澤敬彦

学   習   目   標 学 習 内 容
 単  元  の  目  標 態 度 技  能  言語事項
(方法的態度)

(本質的態度) (基本的技能@) (基本的技能A) (基本的技能B) (文  字) (語  い) (文  法)
学 習 方 法 学習過程  学習活動   学習範囲 時間 行動目標
直感過程 直感読み 全  文 目標・基準 ○  
 分析過程 分析読み 段落 1  1  目標・基準  ○  ○
 段落 2 目標・基準   ○  ○
 段落 3 目標・基準   ○  ○
 段落 4 目標・基準   ○  ○
 段落 5 目標・基準  ○  ○
 体制過程  体制読み 全  文 目標・基準 ○           

                                                        23
 このマトリックスは、単元の学習目標を原点として、横軸に、学習内容としての態度・技能・言語事項をとり、縦
蚰に学習方法としての学習過程・学習活動・学習範囲・学習時間・行動目標をとり、その座標によって、相互に有機
的関連をもたせてシステム化したものである。
 これを見ると、行動目標を上から下へ学習過程に従って順次達成していけば、最後に単元の学習目標に到達するこ
とがわかる。そのように行動目標は系統化されている。条件分析によって分析された目標だからである。
 こう考えてくると、これは、単元の具体的なシステムでもあり、単元展開の具体的・実践的システムでもある。そ
の作成にあたっては、単元のシステムと文章・作品の構造化過程とを照合しながら、このモデルの中に所要事項をあ
てはめていくと、容易に作成することができる。たとえば、学習単位の行動目標は、学習範囲の「段落2」と、その
段落を読むときの基本的技能「基本的技能A」と、さらに基本的技能によって習得される段落2の「内容的価値(内
容事項)」とを組み立てれば、機能的な行動目標を設定することができる。それは、「学習範囲」+「基本的技能」
+「内容事項」という行動目標編成のモデルである。

  5 単元展開のシステムを編成する

 学習目標細目分類表ができると、今度は、単元展開のシステムを編成する。それは、一時間一時間の授業のシステ
ムを編成し、それを単元展開の過程に沿って配列し、システム化したものである。一時間ごとの授業のシステムは、
すでに、単元を分節して、学習単位を設定し、その行動目標を立て、学習する態度・基本的技能・言語事項を押さえ
てシステム化されているから、それを充当すればよい。ただし、学習評価の観点・基準・方法・学習調節の条件をつ
け加えなければならない。次に、そのシステムモデルをあげてみる。
                                                        24

学習過程  行 動 目 標  態度・技能・言語事項  学習活動  学 習 評 価 
 直観分析体
制の過程と時
間 
 その時間の行動目標とし
て細目分類表の中の行動目
標を書く。 
 その時間に学習する基本的態
度・技能・言語事項を具体的に
書く。 
 その時間の学習指
導過程に沿って、学
習活動を書く。 
 評価の観点・基準・方
法、調節の条件を具体的
に書く。 

 ここに示す評価の観点は、行動目標に示されている基本的技能、評価の基準は、内容事項、作文の場合は、そこに
書かれている条件、評価の方法は、見本法・条件法などと、自己評価・全体評価・教師評価などである。
 単元展開のシステムができると、それで、授業展開の準備は完了する。

  6 実験授業を展開する

 実験授業を展開する場合、最も重要なことは、学習指導過程の編成である。が、完全習得をめざす学習指導過程は、
すでに、そのモデルが提示してある。このモデルに従って忠実に授業を展開する。
 とにかく、すべての児童の完全習得をめざすのであるから、何といっても、学習範囲をできるだけ少なくし、学習
時間を十分にとって、主体的に積極的に学習させること、自己学習と共同学習をうまく調和させること、学習法を身
につけること、特に、自己評価・自己調節の方法を習得させることなどを心がける必要がある。
                                                        25
     三 完全習得学習の指導はいつでもだれでもできる

 完全習得学習の研究の手順について、その概要を述べたが、そのすべてをたどることは容易なことではない。そこ
で、以下、いつでもだれでもできる完全習得学習の指導について述べておきたい。
 (1) 学習単位を決める
 授業を展開する場合には、いつでもだれでも、必ずこの時間には全文を扱う、何段落と何段落をやる、粗筋の読み
とりをする、どの場面とどの場面とをやるというように学習する範囲を決めている。それが、学習単位である。
 (2) 学習内容を決める
 学習単位が決まれば、そこで、どんな読解技能を身につけようか、どんな語句・どんな文法事項を学習させよう
か、また、どんな内容を理解させようか、どんな情景・どんな気持ちを想像させようかと、だれしも考える。これが
その授業で身につけてやる技能であり、児童に理解させ、想像させようとする内容である。
 これを具体的にすれば、要点を読みとる技能、筋道を立てて読む技能、場面の様子を想像しながら読む技能、気持
ちを想像しながら読む技能というような読解技能である。また、場面の様子とか、登場人物の心惰とかいうような、
児童たちの心を育てる内容である。
 (3) 行動目標を立てる
 学習する範囲(段落・場面)が決まり、そこで児童たちが身につける技能が決まり、子どもたちに理解させようと
                                                        26
する内容、味わわせようとする心情が決まれば、それをそのまま、具体的に記述すればそれが行動目標になる。
 たとえば、「○○段階の要点を正確に理解して次のように書くことができる。○○○○○(要点の内容)」とか、
「○○場面で、○○の気持ちを想像しながら読み、次の条件を押さえて、○○のことばで書くことができる。○○が
○○したときの気持ち。」とか、具体的に行動的に記述すればいい。
 (4) 授業を実践する
 学習範囲が決まり、行動目標が立てられ、そこで子どもたちが学習する基本的技能と内容が決まれば、あとは、そ
れを授業として展開すればいい。ただ、そこで大事なことは、完全習得学習をめがけて編成した、学習指導過程をた
どって授業を実施することである。次にその学習指導の展開の要領を述べてみる。
すべての子どもが「要点を正確に理解する」学習指導過程をたどる。
@ 何のために何を学習するか、学習目標を明確にする。そのために、子どもたちは、学習範囲を読んで、学習課題
 を設定する。ここで、学習態度・学習認識(課題意識)が確立する。主体性が確立する。
A 学習方法を考える。学習課題を解決するためには、どんな読み方をすればよいかを考え合って決める。
 要点文に  を引く。具体的事実(細部)を表している部分に線を引く。要点と細部の関係を考える。
 学習シートに書く。この段階で、学習意欲・課題意識がさらに高まってくる。
B 学習方法に従って自己学習をする。それぞれ能力に応じて自己学習をし、その結果をシートに書く。
C 自己学習の結果を基にして共同学習をする。
  各自学習した結果(学習シートに書いてある)を出し合って話し合う。
  話し合う過程で、どのように理解するのが正しいのかを理解し合う。
                                                        27
  話し合う過程で、語句の意味・用法・文法事項などを文脈の中で理解する。
  どのように理解するのが正しいか、その条件を理解する。つまり、評価の基準を理解する。この基準は、行動
  目標に書かれている内容事項である。この評価基準の理解が特に重要である。理解しないと評価ができない。
D 自己学習の結果を自己評価する。
  共同学習の結果、立てた評価基準を確認する。
  この評価基準に照らして、各自の学習の結果(学習シートに書いてある)を評価する。見本法の場合は、どこ
  がどのように誤っているか。余分なことが書いてあるか、足りないことはないかなどを確認する。条件法の場合
  は、条件を満たしている状況を調べて評価する。評価の結果は、○・口・×など記号を決めて書く。
  評価の結果の状況を各自自覚する。ここで、よし今度こそという自己完成の意欲が高まる。
E 自己評価の結果の状況に応じて自己調節をする。
  自己評価の結果を確認する。学習に成功したものと失敗したものとを明確にする。データを出す。
  学習に成功したものは、新しい課題を設定して学習を進める。
  失敗したものは、読み直しの条件(調節条件)をきめて、読み直し(調節読み)をして、学習シートを加除修
  正する。
  調節読みの結果を確認し、行動目標に到達したかどうかを明らかにする。
F 行動目標に到達する。
 (5) 授業実践を反復する
 このような主体的な授業は、初めのうちはなかなかできない。時間がかかる。しかし、くり返すうちに子どもたち
                                                        28
は、学習指導過程に従った学習になれ、さまざまな学習法を身につけ、主体的に積極的に学習するようになって、学
習を楽しむとともに、学習に自信をもって取り組むようになる。そして、毎時八、九〇%のものが、そこで学習する
基本的技能を完全に習得することができるようになる。                     <中沢政雄>



                                                        29
  第U章 完全習得を保障する学習指導――その設計の実際


     一 知識・情報の読解完全習得学習はこのように設計する

 (1) 単元「海にすむ魚」  教材「魚の身の守り方」(教出三年上)
 (2) 児童の実態
 三年生という時期は、客観的に見る目が育ってくるので、知識欲が旺盛になり、自然科学的な読み物を積極的に読
もうとする。
 この教材を学習する前に、「動物の身の守り方」に対する興味・関心・知識の実態をアンケート法で調べた。設問
は、「動物が敵におそわれた時、身の守り方を知っているか」「身近な動物を挙げ、それらは何で身を守るのか」「動
物が敵から身を守る仕組みを持っているのはなぜか。それをどう思うか」である。その結果、ほぼ半数の児童は、動
物が敵におそわれた時の身の守り方を知っていた。それは、「牛はつので身を守っている」「馬は足でけることで身を
守っている」「青虫は色で身を守っている」などである。
 このように、身近にいる動物の身の守り方の知識はある程度持っているが、体系的知識はない。だから、児童は、
「魚も敵におそわれた時、身を守る仕組みを持っているという。いったいどのようにして身を守るだろう」という疑
                                                        30
問を持つ。この疑問を解決しようという知的好奇心に支えられて積極的に読み進めていくことが期待される。
 また、三年生で学習する基本的技能は、@ 要点を読みとる技能、A 文章の要点と細部の関係を読みとる技能、
B 文章の叙述に即して細部を正確に読みとる技能である。これらの実態を明らかにするために、@ 要点が前にあ
る文章、後にある文章を挙げ、要点にサイドラインを引く、A 要点とその具体例を書き出す、B 細部を課題に応
じて答える、診断テストを行った。その結果、正答は、@は38%、Bは21%、Bは32%の児童にとどまった。
 そこで、「行動目標を余り難しくたてない」「児童の思考が働き、@ABの技能が習得できるような課題を設定す
る」「要点と細部の関係が視覚的にわかるような学習シートを工夫する」などして、@は62%、Aは79%、Bは68%
の児童がそれぞれの技能を完全に習得できるように指導する。
 (3) 教材のシステム
<「魚の身の守り方」の教育的機能>
@ 人間形成の機能
 「魚の身の守り方」は、読み手に「魚はいろいろな方法で敵から身を守っている」ということを知らせ、魚の身の
守り方に改めて関心・興味を持たせ、知識を得ることの喜びを感じさせる教材である。その知識というのは、「いわ
しやさんまなどは、体の色によって身を守っている。かれいやひらめは、まわりに合わせて、自分の体の色を加える
ことによって身を守っている。はりせんぼんのなかまは、体をふくらませるだけでなく、はりを立てることによって
身を守っている。魚の中には、子どものころ、がんじょうもんによって身を守っている」というようなものである。
読み手は、魚の身の守り方の知識を得ると共に自然の仕組みの不思議さに感動し、生物の生き方について興味・関心
を持つことができる。これが人間形成に役立つ内容的価値であり、学習目標として設定する。
                                                        31
A 能力形成の機能
 「魚の身の守り方」は、第一段落に児童の興味・関心をひくような話題がある。それを受けて、二〜六段落は、そ
れぞれ要点と細部の関係がはっきりした段落構成で魚の身の守り方について書かれている。七段落は結論である。
 そこで、この文章全体を黙読しながら直観的に「いわしやさんまなどは体の色によって身を守っている」などと読
みとって、「文章の内容の要点を読みとる技能」を学習する。次に、直観的に読みとった要点をより深く確かに理解
するために、細部との関係で具体的に魚の身の守り方を読みとる。この学習を通して、「文章の叙述に即して正しく
内容を読みとる技能・態度」「文章の要点を正しく理解する技能・態度」を学習する。各段落ごとに内容を読みとっ
ていく過程で、文法・語句などの言語事項を学習する。
 これが「魚の身の守り方」で学習する内容である。
<「魚の身の守り方」の構造過程>(次ぺージ参照)
 論理がどのように展開しているか構造過程を作成してみる。すると、要素型の文章であり、要点と細部の関係がは
っきりしていることがわかる。二段落の構成は、背中が青緑色、腹が銀色と具体的な色を出し(細部)、要点はそれ
らを抽象化して、「体の色によって身を守る」となっている。つまり要点と細部の関係は、抽象と具体の関係である。
そして、筋道を立てて読むために必要な言語事項(そのため、ですから、このように)も明らかになる。
 要点と細部の関係がはっきりしているので直観的に要点を読みとる指導が可能である。また、分析過程では、直観
的に読みとった要点をより深く碓かに理解させるために細部との関係で指導する。学習シートも要点と細部の関係が
わかるように作成する。要点をより深く、碓かに理解するために視覚に訴える方法をとるなど、授業展開の見通しが
たつようにする。
                                                        32
                                                        〜
                                                        33
<「魚の身の守り方」の構造過程>

文章の
中心的事項
段落の要点 論理の展開  (段落の要点と細部との関係) 学習する
言語事項

      


・おそう
・身を守る

◎そのため
・くべつがつき
    にくい
◎ですから
◎このように
o表面
o青緑色
o銀色
・まわりに
   合わせて
・見分けが
   つかない

◎そのすな
◎それで
・こうげき
o岩
・おどす
◎また
・はりを立てる
◎ですから
・のみこまれる

o上手
◎このもよう
・ずっと大きく
・はっきり
◎そのため
・じっさい
・しりごみ
・じょうしき
・こうげきを
  そらす
・見当をつける
◎また
◎そのため





◎このように
 ・ほうほう

                                                        34
 (4)単元のシステム設計
@ 学習目標
 単元の目標は、価値目標を立てることとし、「魚の身の守り方」の学習の終わりには到達できる、いわゆる到達目
標として立てる。この単元の中心技能は、「文章の内容の要点を正しく理解する技能」である。そこで、その技能を
働かせて正しく内容を読みとった結果、身につく魚の身の守り方の知識とその知識を得ることで喚起される知的感動
―-―自然の仕組みの不思議さに対する感動―-―を具体的に書く。そして、この学習を通して広く生物の生き方に興
味・関心を持つことが期待される。それらも目標に書く。
A 学習内容
 学習内容は、教材「魚の身の守り方」を媒介として、単元の学習目標に到達する過程で学習する態度・技能・言語
事項である。魚の身の守り方の知識を得ようとする態度に支えられて児童は文章にかかわっていく。そこで、教材
「魚の身の守り方」の内容を正しく読みとるためには、三年生では「段落ごとに要点を押さえて読もうとすること(態
度)」「文章の内容の要点を正しく理解すること(技能))」「叙述に即して内容を正しく理解すること(技能)」「語句の
意味を文脈に沿って考えること(技能)」の態度・技能が必要である。まず、これを学習内容として設定する。
 次に学習する言語事項を押さえる。「要点を正しく理解する」ために「新出語句・重要語句の意味や働きを具体的
に理解すること」「指示語の指示している事柄を理解すること」が大事であるから学習内容として選ぶ。また、筋道
だてて読むために接続語の働きを意識させることも大事である。
B 学習資料
 学習資料は、学習内容を学習するための資料、教材をあげる。教材は「魚の身の守り方」である。「要点を正しく
                                                        35
理解する」ために、要点と細部の関係がわかるような学習シートを用意する。要点と細部の関係は抽象と具体の関係
である。それらが視覚的にわかるようなTPシート・カラーシートも用意する。
C 学習方法
 学習方法は、単元の学習目標に到達する過程で、態度・技能・言語事項を習得するための学習活動を書く。読解の
過程を直観過程、分析過程、体制過程としているので、それぞれの過程で指導する基本的な学習活動を次のように選
択し、組織する。直観過程では、直観的に要点を読みとる。分析過程では、要点をより深く確かに読むために要点と
細部の関係を読みとる。体制過程では理解した内容を組み立てて書き、説明する。
D 学習評価
 ・形成的評価
 単元の学習の読解過程の学習活動ごとに評価する。直観過程では「直観的に要点が読みとれたか」、分析過程では、
「叙述に即して内容が正確に読みとれたか」。「段落ごとに要点と細部が読みとれたか」、体制過程では「理解した内容
が組み立てて書けたか」が評価の観点である。
 ・機能的評価
 単元の学習目標が到達できたかどうか評価する。「価値目標が達成できたか」が評価の観点となる。
 単元のシステムは@からDまでの目標・内容・資料・方法・評価が有機的関連を持って組織されていることが一見
してわかるように一覧表であらわす。
 それを次にあげる。
                                                        36

学習目標  学習内容 (△態度○内容・言語事項) 資料 学 習 方 法  学 習 評 価 
 「魚の身の守り
方」を読んで内容
を正しく理解し、
魚の身の守り方に
ついての知識を得
るとともに自然の
仕組みの不思議さ
に感動し、生物の
生き方について興
味・関心を持つこ
とができる。 
△文章を読んで知識を得ようとすること
△段落ごとに要点を押さえて読もうとするこ
 と
○文章の内容の要点を正しく理解すること
○叙述に即して内容を正しく理解すること
○語句の意味を文脈に沿って考えること
・新出語句・重要語句の意味や働きを具体的
 に理解すること
・指示語の指示する事柄を理解すること
・接続語の働きや用語を理解すること
・新出漢字・読替漢字を読み書きすること 
教材
「魚の
身の守
り方」。
学習シ
ート。
TP。 
1 全文を直観的に読
 んで要点を学習シー
 トに書く。
2 段落ごとに分析的
 に読んで要点と細部
 の関係を理解する。
3 全文を体制的に読
 んで理解した内容を
 組み立て、書いて説
 明する。 
o直観的に要点が読みとれ
 たか。
o叙述に即して内容が正確
 に読みとれたか。
o段落ごとに要点と細部が
 読みとれたか。
o理解した内容を組み立て
 て書けたか。
o値目標が達成できたか。 

 (5) 学習目標のシステム設計
@ 学習目標のシステム
 この単元の学習目標は「『魚の身の守り方』を読んで内容を正しく理解し、魚の身の守り方についての知識を得る
とともに自然の仕組みの不思議さに感動し、生物の生き方について興味・関心を持つことができる」という価値目標
である。この目標は、この単元の究極の目標であるから、いっきにここまで到達するわけにはいかない。究極の目標
に到達するまでの過程をいくつかに分節し、学習単位を設定する。直観過程では全文、分析過程では、二段落、三段
                                                        37
落、四段落、五・六段落、体制過程では全文を学習単位とする。その学習単位ごとに到達基準をはっきりさせた行動
目標を立てる。そして、それらの行動目標を順次達成していって、最後に究極の単元目標に到達することになる。
A 行動目標の設定
 完全習得をめざすには、まず、児童に何をどこまで学習させ習得させるかという到達すべき目標と、そこまで到達
できたかどうか、評価し判断する基準、いわゆる到達基準を明確に設定しなくてはいけない。
 「魚の身の守り方」では究極の目標に到達するまでの過程を、直観過程では全文、分析過程では四つに分節し、体
制過程では全文を学習単位(範囲)とした。その学習単位ごとに到達基準のはっきりした行動目標を立てる。行動目
標は、「学習範囲」+「学習すべき基本的技能」+「外部行動化」+「その基本的技能を働かせることにより身につ
く内容的理解事項」をシステム化したものである。
 例えば、「魚の身の守り方」の二段落の行動目標は、次のようになる。
 二段落(学習範囲)を、要点と細部の関係を考えながら読んで叙述に即して内容を正しく理解し(学習すべき基本
的技能)、次のように書くことができる(外部行動化)。

  
                                                        38
                                                       〜39
「魚の身の守り方」学習目標細目分類表
拡大図

                                                        40
 (この行動目標は、基本的技能を働かせることにより身につく内容的理解事項で到達基準となる。)
 (6) 単元展開のシステム設計
@ システム設計の留意点
 単元展開のシステムは二つのねらいを持っている。一つは、単元全体の学習がどのように展開するか、そのシステ
ムを明らかにすることである。二つめは、一時間一時間の授業のシステムを明らかにすることである。単元展開のシ
ステムを設計する上で次のような点を留意する必要がある。
 o単元展開のシステムは、学習目標細目分類表に準拠する。
 o単元全体の読解学習の過程を、直観過程(直観読み)、分析過程(分析読み)、体制過程(体制読み)とする。
 o細目分類表を作成する際に、直観過程では全文、分析過程では四つに分節し、体制過程では全文を学習単位とし
  た。それぞれ学習単位ごとに、行動目標を立て、指導する態度・技能・言語事項を押さえ、学習時間を割り出し
  てあるから、それを基に一時間一時間のシステムを編成する。一時間一時間の読解学習の過程も、直観過程(直
  観読み)、分析過程(分析読み)、体制過程(体制読み)の過程をたどる。
A システム設計の手順・方法
 o行動目標、学習内容は細目分類表を基にして書く。
 o学習方法は、完全習得をめざす学習指導過程にそって基本的な学習活動を設定する。
 o単元展開のシステムで新たにつけ加えることは学習評価である。評価の観点は行動目標に示されている技能、基
  準は行動目標に示されている内容事項である。二段落の評価の方法として条件法をとる。自己学習の結果が、
  「どこがどうなっているからどんな敵から身を守ることができるか」の条件を満たしているかどうか自己評価を
                                                        41
                                                       〜43
  する。だから、評価の方法は、条件法で自己評価と書く。
B 単元展開のシステム(△態度 ○技能 ・言語事項)

過程 行   動   目   標  学 習 内 容  学  習  方  法  学習評価 
  直 感 読 み   (2時間)   全文を直観的に読んで要点を次のように書く
ことができる。
・いわしやさんまなどは体の色によって身を守
 っている。・かれいやひらめはまわりに合わ
 せて自分の体の色をかえることによって身を
 守っている。・ふぐのなかまは体をふくらま
 せることによって身を守っている。・はりせ
 んぼんのなかまは体をふくらませるだけでな
 く、はりを立てることによって身を守ってい
 る。・にせねったいすずめだいやたてじまき
 んちゃくだいはがんじょうもんによって身を
 守っている。 
△文章を読んで知識
 を求めようとする
 こと。
○全文を直観的に読
 み各段落の要点を
 押さえること。
・次の漢字の読み方
 を理解すること。
    
 表面 青緑色
    
 銀色 岩 見当 
1 一段落を読んで学習課題
 を設定する。
2 課題に従って直観的に要
 点を読みとって学習シート
 に書く。
3 各段落ごとに要点を確認
 し。評価基準を決める。
4 自己評価する。
5 自己調節する。
6 各段落の要点を確認し、
 概略をまとめて書いたり話
 したりする。 
 観点要点を
押さえて概略が理
解できたか。
 基準行動的
目標の基準による
 方法条件法
 (どんな魚がどん
な方法で身を守っ
ているか)自己
評価。 
分   析   読   み(5時間)  二段落を要点と細部の関係を考えながら読ん
で叙述に即して内容を正しく理解し、次のよう
に書くことができる。
 

△段落ごとに要点を
 押さえて読もうと
 すること。
○文章の内容の要点
 を正しく理解する
 こと。
○叙述に即して内容
 を正しく理解する
 こと。
○語句の意味を文脈
 にそって考えるこ
 こと。
 ・重要語句の意味
  や働きを具体的
  に理解すること
 ・指示語の指示す
  る事柄がわかる
  こと。
 ・接続語の働きや
  用語がわかるこ
  と。
1 読みとった要点をより深
 く確かに理解するための課
 題を設定する。
2 要点を細部との関係を押
 さえて読む。
3 読みとったことを学習シ
 ートに書く。
4 要点の理解を深めるため
 に話し合いながら評価基準
 を決める。
5 自己評価をする。
6 自己調節をする。
7 学習の結果を確認するた
 めに読んだり話し合ったり
 する。 
 観点二段落
の要点と細部の関
係が読みとれたか
 基準行動的
目標の基準による
 方法条件法
(どこが、どうな
っているから、ど
んなてきから身を
守ることができる
か)。
自己評価。 
 
体  制  読  み (1時間)   全文を体制的に読んで理解した内容を次のよ
うに組み立てて書き説明することができる。

  
△文章の内容をまと
 めて理解しようと
 すること。
○大段落の要点を理
 解すること。
○理解した内容を組
 み立てて書くこと。
  
1 文章の内容をまとめるた
 めの課題をもつ。
2 全文を読んで中心的事項
 を読みとる。
3 読みとった中心的事項を
 学習シートに書く。
4 要点と細部を確認し、組
 み立てる。
5 組み立てたことを説明す
 る。
6 評価し、調節する。  
 観点理解し
た内容が組み立て
られたか。
 基準行動的
目標の基準による
 方法見本法
自己評価。  

 (7) 本時の学習指導のシステム設計
@ 単元展開のシステムに基づいて本時の学習指導の展開のシステムを設計する。
 ア 本時の学習単位を明らかにする。   ・本時の学習単位(二段落)


                                                        44
 イ 本時の行動目標を設定する。   ・本時の行動目標
 二段落を要点と細部の関係を考えながら読んで叙述に即して内容を正しく理解し、次のように書くことができる。
    
 ウ 本時の行動目標を達成するための学習内容を取り上げる。
  ・本時の学習内容
△段落ごとに要点をおさえて読もうとすること ○文章の内容の要点を正しく理解すること ○叙述に即して内容を
 正しく理解すること ○語句の意味を文脈に沿って考えること ・新出語句、重要語句の意味や働きを具体的に理
 解すること(くべつがつきにくい)・指示語の指示する意味がわかること(そのため・このように) ・接続語の
 働きや用法がわかること(ですから)
A 本時の学習指導過程を編成する。
 完全習得をめざすためには「目標・方法・学習、評価、調節、獲得」の過程をたどる。この中でもっとも大事なの
は、評価・調節の過程である。行動目標をめがけて学習活動を行ったら、その学習の結果を一人一人自己評価する。
評価の結果、行動目標に到達できない場合は、それぞれの調節条件に従って調節読みをする。このように、評価して
                                                        45
は調節することにより学習する技能「要点を正しく読む技能」が完全に習得できる。
 次に、学習指導過程をあげてみる。
 ア 学習目標を設定する。
 学習目標は、学習課題として設定する。直観読みの学習で三段落の要点を「いわしやさんまなどは、体の色によっ
て身を守っている」と読みとっている。ここから出発して、二段落の要点を詳しく読むための学習課題を話し合いで
設定する。学習課題は「いわしやさんまなどは、体の色がどうなっているからどんなてきから身を守ることができる
か」とする。
 イ 学習課題に即した学習方法を考える。
 一文の中に背中と腹の二つの事柄が書かれている。これらを二つに分けて筋道立てて読み、要点と細部の関係を理
解させなくてはならない。そのためには、学習方法の「2」のような手だてをとる。
   
 ウ 学習課題・学習方法に従って一人一人が自己学習をする。
 エ 自己学習の結果をOHPに投映し、それを基に話し合いをし学習を深化する。(共同学習)
 「どんな色」「どうなっているから」を読み落としている児童の学習シートを投映して、読み落としに気づかせる。
次に、「どんな敵から身を守ることができるか」を読み落としている児童の学習シートを投映して、読み落としに気
づかせる。評価基準になる語句を板書したものに、「そのため」「ですから」のカードを貼り、筋道を立てる。そうす
                                                        46
ると文と文を続ける接続語の働きもわかる。こめような話し合いの中で課題に答えるためにどのように書けていれば
よいかがわかってくる。
 オ 評価基準を設定する。
 「どんな色」「どうなっているから」「どんな敵から身を守ることができるか」の三つが書けていて、文と文がうま
く続いていればよいという評価基準を、次のように設定する。

 評価基準に照らして自己評価する
 背中には、腹にはをつけて三つのことが書け、文と文がうまく続いているかどうか調べる。三つのことが
書け、文と文がうまく続いている人は「○」、この中の大事なことが抜けている人は「□」をつける。
 カ 自己評価の結果を確認する。
  「○」の人……16人  「□」の人……16人
 キ 調節条件に従って調節読みをする。
  「□」の児童は、読み直しカードに基づいて自己調節をする。
 <「□」の人の調節条件>

                                                        47
 <「○」の人――深化学習>

 ク 調節の結果を確認する。
 OHPに投映して、「ぼくは「□」でどんなふうに身を守るかが書けていなかったので、「空から見た海の色と区
別がつきにくい」「水中から見た海面の色と区別がつきにくい」をつけ加えました」と言わせる。14人は調節ができ
た。
 ケ 学習の結果を確認する。
 細部(背中と腹)の共通点を考える。共通点は、「体の色で身を守る」ということがわかる。「体の色で身を守る」は
どこに書いているかと発問すると要点と答える。OHPに投映して、次のように図示する。細部と要点の関係が具体
と抽象の関係であることを押さえる。
   
                                                        48
 (8) 実践上の留意点
@ 完全習得学習をめざすためには診断的評価を生かす
 診断的評価が未記入、文章に書かれていないことを日常の生活経験で読んでいる児童に対する手だては、完全習
  得学習につながる。
 文章に書かれていないことを日常の生活の経験で読んでいる児童、課題に答えられない児童は、何を聞かれている
のかわからないのである。つまり、低学年の包括的思考が残り、課題を分析する力がないのである。そこで課題を分
析した次のような学習シート(A)を作成する。完全習得学習では、まず主体的に学習することが前提である。この
ような学習シート(A)で学習し、学習に成功した自信が次の学習の動機づけとなり主体的な学習態度の形成につな
がる。
 自己学習での個別指導は完全習得学習につながる。
 診断テス卜で学習する基本的技能についての個人の実態が明らかになっている。座席表に個人の実態、学習スタイ
ルなどを書く。その実態からつまずきが予想できる。それに基づき、効果的な個別指導をする。
 診断的評価を生かした調節条件の設定は完全習得学習につながる。
 どのように課題に答えているか診断的評価で明らかにされている。だから、第二段落の自己学習の結果が予想でき
パターン化できる。そのパターン化に応じて調節条件をあらかじめ用意しておく。この調節条件に従って調節学習を
することが完全習得学習につながる。
A 学習シートの工夫
 完全習得学習をめざすためには、自己学習の結果一人一人どのように読みとったか外部行動化させなくてはいけな
                                                        49
い。そのためには、本時で指導する「要点と細部の関係」が視覚的にわかるような学習シート(B)を工夫する。更
に、この学習シートは段落構成の理解の糸口にもなる。

  <学 習シート(A)>                           <学 習シートB)>
  



B 自己完成の意欲を喚起する
 自己評価の結果、行動目標に到達できなかった児童は調節学習をする。その時に「『□』の人はちょっと足りなか
ったので、もう少しがんばるとすぐできます」などと助言して、自己完成の意欲を大いに喚起する。そうすると、児
童は、「がんばるぞ」という気持ちを奮いたたせる。これが完全習得学習につながる。       <藤井英子>
                                                        50
     二 文学の読解完全習得学習はこのように設計する

 (1) 単元「場面の情景や人物の心情を想像しながら読む」  教材「大造じいさんとがん」(学図五年上)
 (2) 児童の実態
 これまでの文学の国語教室では、個性的な読みの尊重ということばのもとに、一握りの教師の意を汲んだ児童のみ
が作品の世界に遊ぶことができた。次の大部分の児童は、積極的に作品の世界に浸ることもなく、聞いて理解するだ
け、読まされて学習のたいくつさを味わっただけではないだろうか。こういうところからは、はらはらどきどきして
感情移入して読んだり、自分の価値観と作品の内蔵する価値観、あるいは、作品の中の人物同士の持つ価値観のちが
いに激しく葛藤したりという読みは期待できない。従って、人間形成に大きく資することは難しい。
 この現状に鑑み、本単元の学習に当たっては、全ての児童が「場面の情景や人物の心情を想像しながら読む」こと
ができるよう、次のような観点で、まず、児童の読みの力の実態を調べた。これは、本単元の学習に必要な技能の診
断であり、これを明らかにすることによって、無理・無駄・むらのない学習計画を立てることを意図した。
 診断に当たっては、調べたい技能が働きやすい文章を吟味して選ぶことが大切である。ここでは、次の条件を含む。
@ 直観的に場面の情調(場面全体をおおっている感じ)が読みとれるもの。
A 場面の様子が想像できて、それが情景として立体的に組み立てられるもの(場面構成ができる)。
B 心情が想像できるもの。
                                                        51

 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

 「海の家」の一日、昼すぎの自由時間のことだった。
 「おうい おうい 先生っ
 「正助君がたいへんだあっ
 とつぜん、うら山のぜっぺきのほうから、こういうさけび声がひびいてきた。それを聞きつけた女の子たちが
北山先生をゆすり起こした。北山先生は、ひるねのまっさい中だった。
 海の家のうら山は、びょうぶを立てたような岩のぜっぺきであった。そのいただきに近い所に、正助のすがた
が見えた。かれは、両手・両足を広げて、まるでせみのように、岩はだにかじりついていたのである。
 北山先生のねぼけまなこは、いっぺんにさめてしまった。小山正助は、上へも行けず、下へも下がれず、右へ
も左へも動けず、じっとかじりついているのである。 

@ この場面は、どんな感じがしますか。
 ○ 大変だ・危ない・はらはらどきどき・こわい緊迫感がとらえられている…………………61%
 ○ (正助の)いっしょうけんめいさ、真剣さ場面を全体的にとらえていない………………16%
 △ かわいそう・気持ち悪い感想になっており、感動ではない……………22%
A 場面の様子を想像して、自分のことばで書きなさい。
 ○ 想像したことを自分なりに構成し、ことばで情景が説明できている………19%
   正助・先生・友達の様子が説明できている(絵にかいたもの 10%)
                                                        52
 ○ 正助の様子のみ正助にのみ焦点化……………41%
 △ ことばでも絵でも的確に説明できない場面構成ができない……37%
B 岩はだにかじりついている正助を見て、先生はどう思ったでしょう。先生のことばで書きなさい。
 ○ 危ない。助けに行くよ。驚きと助けねばという気持ち…………………………47%
 ○ 危ないということだけ。又は、驚きだけ。瞬間的に驚きのみ………………………………………25%
 △ 昼寝していて惡かった。とんでもない所へ登って……、どうしてそんな所に登ったんだ、等。
                      道徳的・客観的判断で心情に迫らない…………27%
 @は、場面の情調を読みとる技能である。分析的に場面ごとに読む時、いきなり、だれのどんな気持ちが分かりま
すかと知的に接近するのでなく、場面全体の感じを捉え、そういう感じはどこからくるのか表現に戻る読み方が大切
である。この直観的な鑑賞の読みの力は、六割の児童が身につけている。従って、直観的に情調を読みとり、それに
基づいて児童自らが読みの課題を設定し、その解決に向けて主体的に取り組む学習が十分に成り立つ。
 Aの場面構成する力は、極めて不十分である。構成要素は抽出できても、それを組み立て、自分のことばで説明す
ることができない。これは、今までの学習で心情の想像を重視、強調する余り、情景をしっかり想像する学習が不足
していた結果であろう。従って本単元の学習では情景を想像する学習技術を開発し、身につけさせることが大切であ
る。なぜなら、心情は、場面の情景がしっかり想像できてはじめて知的にでなく、想像豊かなものが生まれると考え
られるからである。
 Bの心情を想像し、内言として書く力は、約七割の児童が身につけていると考えられる。これは、児童が楽しんで
とり組む学習でもある。ただ想像した中身がストーリーの連続性・展開性にそっているか、叙述や描写をおさえてい
                                                        53   
るかどうかなど、この短い診断テストの文章からは推し測れないので、その点に留意し、いっそう学習技術が駆使で
きるよう、指導を徹底したい。
 (3)教材のシステム
@ 「大造じいさんとがん」の内蔵する教育的機能
 ここに描かれている世界は、単に頭領としての雄々しさと風格とを身につけた残雪の知恵や勇気でもなければ、残
雪を捕えることに執念を燃やし、生活をかけ、知恵をしぼる大造じいさんの狩人としての誇りでもない。これらを下
地として、決して交わることのない人間と動物の生きていく厳しさ、ぎりぎりのところで対峙する哀しさであろう。
従って、この作品では、残雪の頭領らしさや大造じいさんの人間らしさに共感・共鳴し、生きることについて考えさ
せることができる。
 このためには、全ての児童が場面の情景や人物の心情を想像しながら読むことが不可欠である。想像しながら読む
ことは、文学作品を読むための基本的技能であり、児童自らが作品の中に入って人物と一体になってその世界に浸る
(文学経験をする)ことを容易にする。想像するための様々な学習技術を使って豊かにイメージを描き、そこに新た
な想像の世界を創造することができる。これができて初めて、主題が確かに理解される。語り型の「大造じいさんと
がん」は、本来ならばじっくりと想像させ、イメージを描かせたい心情や情景を、親切に解説・補説している箇所が
幾つもある。語りすぎているのである。それだけに、ことばの裏にある真実や、より深い心情を追求して読解してい
くことになり、情景や心情を想像しながら読む力・主題を理解する力を伸ばすことができる。
A 構造過程
 大造じいさんとがんは、どんなパターンで、どのような筋道をたどって書かれているか、主題は何か、展開に従っ
                                                        54
                                                       〜60
て読んでいく過程でどのような言語事項が身につくか等、明らかにして、構造過程の一覧表を作成する。
<「大造じいさんとがん」の文章構造過程>

主題  型 
心 情  ス ト ー リ ー(事実関係)の  展  開  表象単位 場面 技能 言語事項 








































































































































 




















































  









対決の
必然性

先を読
みたい
心理の
喚起






























































意欲に燃
える大造
じいさん
  ↓
成功の
 予 感
  ↓
.........
  │
  ↓
期待感
  │
  ↓
やったぞ
 歓 声
  |
  │
  │
  │
  │
  ↓
見くびり
新たな
意  欲
....↓...
成功疑い
な し

余裕の
じいさん
  │
  │
  ↓
みごとに
やられた
じいさん
  ↓
思わず感
嘆の声
 ↓
































































































今年こそ
はなんと
しても





うまく
いったぞ
 ←
もう少し
だよしよし
成功だ
 ↓
さあこれ
でよし

 ↓
頃はよし
じっと
一晩まつ
 ↓
戦闘開始

 ↓
来たぞ
 ↓
玉の届く
所まで早
く来い

見ていろ
今度こそ
はしとめ
てやるぞ





おやつ

 ↓
ええいも
う少しだ
ったのに
 ↓
またわし
の負けだ

しかしな
んという
やつだ!
残雪は!






























































    突



















 









 










姿


































そろそろ
こいつの
出番だ。
今年当り
使って
 みよう




きっと
うまく
 いくぞ
いや必ず
つかまえ
てやるぞ
 ↓
さあ
 来るぞ
 ↓
きたきた
今にみて
いろ
 ↓ 
よしよし
計画どお
りだ








ころは
 よし
 いざ
 ↓
どうした
んだ何が
起こった
んだ
 ↓
あ、あい
つだ!
しまった
 ↓
早く早く
にげろ
 ↓
何ていう
やつだは
やぶさめ
 ↓
あ、
やられた
 ↓
あ、
 残雪だ


よ し
 今 だ



どうして
うてよう
残雪を!



がんばれ
残雪!





残雪よ!




おお!
なんとい
う力だ
なんとい
う立派な
態度だ!



完全に
わしの
 負けだ 
結                  末
 
































さあ仲間
のところ
へお帰り









 ↓
堂々と
戦うぞ

また
 来いよ

元気でな

わしも
ちえをし
ぼってお
くぞ 
 

                                                        61
 (4)単元のシステム設計
 単元のシステムは、次のような内容・手順で設計する。
@ 学習目標(児童の人間性を開発伸長する内容的な価値―思想・心情)
 学習目標は、児童が最終的に到達する単元の究極的目標として設定する。このためには、学習技能や学習態度が有
効に働いた結果「大造じいさんとがん」に内在する価値が身につくように設定した価値目標を立てることが適切であ
る。この学習目標は、次の三点を必ず入れて有機的に関連させて設定する。
 学習することによって、どのような思想や心情を豊かにすることができるか(内容的)
 どのような国語の態度や技能が身につけられるか(技能・態度面)
 児童が自分で人間性を開発・伸長する上で、この学習がどう参与するか(人間形成に培う面)
A 学習内容(児童が内容的価値を獲得する技能・態度・言語事項)
 児童の実態・教材のシステムに基いて、学習目標を追求する過程で身につく態度・技能・言語事項を明らかにす
る。例えば、児童ひとりひとりの人間性が触発され、開発され、伸ばされるには、残雪の行動や大造じいさんの人
間味・心情に共感・共鳴することができなければならない。これは、主題を正確に理解することにほかならない。そ
こで、主題を理解することを基本的技能の一つとして使わせる。この学習は、直観読みで見通した主題を理解しよう
という学習態度に支えられて進められる。また、言葉の意味の理解は、内容の理解に比例するので、主題を理解する
過程では、言語事項の学習は落とせない。このように学習目標達成を目ざし、三者を関連づけて学習内容を設定して
いくが、碓かな国語能力として身につくよう、基本的なことにしぼることが大切である。
B 学習資料
                                                        62
 目標追求のために必要な基本的な教材・資料を整える。
 教材「大造じいさんとがん」
 学習シート
   完全習得をめざしているので、どの子も学習方法が分かり。具体的な学習行動を通して学習に取り組み、自己
  評価・学習調節をして目標に到達するよう、学習シートを使う。
 TP(トラベンアップ)評価基準を理解する過程で、児童の学習結果をTPにとり、投映して話し合いをする。
C 学習活動(児童が技能・態度を働かせて内容価値を読みとる活動)
 学習内容を身につけるための基本的な学習活動を決める。読解の学習は、直観過程→分析過程→体制過程に従
って進められるので、各過程ごとに主な活動を組む。
D 学習評価
 学習の最終段階で身につくことを期待している事項の評価である。観点は、学習目標の達成を目がけて設定した学
習内容に照らして決める。

学 習 目 標 学習内容(△態度技能・言語事項) 資料 学 習 活 動 学習評価
 残雪の知恵や勇気・責
任感のすばらしさと、そ
れに心打たれる大造じい
さんの人間らしさや正義
感・愛情を、場面の情景
や心情を想像しながら読
んで、主題を理解し、愛
情や勇気、生き方につい
て考えることができる。
△主題を正しく理解しようとすること
△場面の情景や人物の心情を想像しなが
 ら読もうとすること
主題を正しく理解すること
場面の情景や人物の心情を想像しなが
 ら読むこと
心情や情景が伝わるように朗読するこ
 と
主題に対して感想を持つこと
描写や表現の優れている箇所を読み味
 わうこと
・理解・鑑賞するために必要な語句の量
 を増すこと
・語感や言葉の使い方に対する関心が深
 まったか 

大造
じい
さん

がん












TP
1 直観過程
  全文を直観的に読み、感
 動の中心をおさえて主題を
 見通す
2 分析過程
  場面ごとに情景や心情を
 想像しながら読んで大造じ
 いさんと残雪とのかかわり
 合いや残雪の行動や態度に
 打たれるじいさんの心情を
 理解する
3 体制過程
  全文を体制的に読んで、
 感動をいっそう深めて主題
 を確実に理解する
  主題に対する感想を書く 
直観的に主題範囲
 囲が読みとれたか
主題を見通すこと
 ができたか
場面表象・心情表
 象が描けたか
主題が理解できた
 か
主題に対する感想
 が持てたか
語句の量が増せた
 か 

                                                        63
 (5) 学習目標のシステム設計
@ 学習目標のシステム
 単元の学習目標は。各学習単位ごとの学習目標が確実に身についていくことによって、最終的に達成される。従っ
て各学習単位ごとの目標は、単元の学習目標と質的にも学習順序の上からも密接に結びついている。殊に文学作品の
読解においては、ストーリーの展開性や連続性に鑑みた各学習単位の目標の積み上げがなければ、学習目標への到達
はあり得ない。
                       ┌場面の情景・ストーリーの展開
 単元の学習目標←―→学習単位ごとの学習目標―┼残雪・大造じいさんの行動・心情
  (総括的・抽象的)  (具体的・行動的) └大造じいさんの心情、など読みとる
A 行動的目標の設定
                                                        64
                                                       〜65
 <学習目標細目分類表> 

学   習   目   標  学    習    内    容
態    度 技        能     言 語 事 項
残雪の知恵や勇気・責任
感のすばらしさと、それ
に心打たれる大造じいさ
んの人間らしさや正義感
愛情を場面の情景や心情
を想像しながら読んで、
主題を理解し愛情や勇気
生き方について考えるこ
とができる。
主題を
正しく
理解し
ようと
するこ

場面の
情景や
人物の
心情を
想像し
ながら
読もう
とする
こと
 
主題を
理解す
ること

場面の
情景や
人物の
心情を
想像し
ながら
読むこ

心情や
情景が
伝わる
ように
朗読す
ること
 
主題に
対して
感想を
持つこ

 
描写や
表現の
すぐれ
ている
箇所を
読み味
わうこ

 
理解鑑
賞する
ために
必要な
語句の
量を増
すこと
 
語感・
言葉の
使い方
に対す
る感覚
などに
ついて
関心を
深める

 
新出漢
字や読
みかえ
漢字を
読んだ
り書い
たりす
ること
 


























































































































































行動的目標  

















2







全文を直観的
に読み残雪の
持つ知恵や勇
気・責任感の
すばらしさと
それに感動す
る大造じいさ
んの人間らし
さ、正義感・
愛情に心打た
れそれを書い
たり話したり
できる  
(直感的に)
 ○

  
(直観的に)
 ○
  

  

  

  

  

  

  
 ○
 


















































































































































































 0.5






紹介語りの場
面を読んで、
次のことを理
解し、書いた
り話したりで
きる
・残雪の名前
 とその由来
・残雪は頭領
 らしいりこ
 うなやつで
 あること
・大造じいさ
 んはりょう
 しで残雪を
 いまいまし
 く思ってい
 ること



 



 

頭領

いまいま
しい
 

率いる

混じり毛
 
1




















特別なしかけ
でがんをいけ
どりにした場
面の様子や、
大造じいさん
の心情を想像
しながら読ん
でそれをじい
さんのことば
で次の条件を
含めて書いた
り話したりで
きる
・うまくいき
 そうだとい
 う予感
・歓声をあげ
 るじいさん
 の喜びの心
 情
・もっととっ
 てやろうと
 意気ごむじ
 いさんの心
 情 

 





 

たかが〜
 
 ○
危 険
 
0.5



















たにしをまい
てえさ場を作
る場面の大造
じいさんの心
情を想像しな
がら読んで、
じいさんのこ
とばで次の条
件を含めて書
いたり話した
りできる
・気長に待と
うと作戦を実
行する心情
・なんとして
でもがんをと
りたい心情 

 

 

 

 

 

 

 
とりわけ

案の定

あんばい
 

 
案の定
 
2
 





















がんの群れが
近づいてくる
のを待ちかま
える場面を読
んで、場面の
情景や大造じ
いさんの心情
を想像し、次
の条件を含め
てじいさんの
ことばで書い
たり話したり
できる
・もう少しの
 しんぼうだ
 とはやる心
 をおさえて
 待ち続ける
 緊張した心
 情
・今年こそは
 と意気ごん
 で待ちかま
 える心情

 

 

 

 

 

 

 
会心の
えみ

目にもの
みせる

あかつき
の光
 

 
会心

着陸
 
















またしても残
雪のために作
戦が失敗に終
わる場面を読
んで、場面の
情景や大造じ
いさんの心情
を想像、次の
条件を含めて
じいさんのこ
とばで書いた
り話したりで
きる
・緊張しきっ
 ていたのが
 かわされ、
 がっかりす
 る
・残雪のりこ
 うさにまい
 ってしまっ
 た心情

 

 

 

 

 

 

 
本能

してやら
れる

 

 
1
 
























また堂々と戦
おうと語りか
けながら、残
雪を大空へ返
す大造じいさ
んの心情や場
面の情景を想
像しながら読
んでそれを大
造じいさんの
ことばで次の
条件を含めて
書いたり話し
たりできる
・一直線に北
 へ飛び去る
 残雪に今年
 の冬も来い
 よ、堂々と
 戦おうと語
 りかける心
 情
・残雪をはれ
 ばれとした
 気持ちでい
 つまでも見
 送る心情

 


 
 ○

 

 

 
快い 
一直線

えらぶつ

羽音いち
ばん

らんまん
と 

はればれ
とした
 

 
快 い
 






















2
 












全文を体制的
に読んで主題
を理解し、次
の点について
感想を持ち、
それを書くこ
とができる
1大造じいさ
 んについて
 人間らしさ
 ・愛情
2残雪につい
 て責任感
・ちえ頭領ら
 しさ
3大造じいさ
 んと残雪の
 かかわり合
 いそこに生
 まれるじい
 さんの心情 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                        66
 単元全体を学習しやすい小さな分節にし、そのまとまりごとの学習の終わりに到達すべきところを具体的に、系列
化したものが行動的目標である。文学教材では知識・情報文のように、こんな内容をこのように、とか、このように
感動しなさい、想像しなさいというように内容そのものを明示できないので、行動目標の考え方を生かして働く技能
をおさえて具体的に設定する。この行動目標を設定することによって、各時間の獲得する目標が明確になり、この目
標は評価の基準にもなっているので容易に測定・観察でき、評価することができる。
 行動目標は次の四点を含めて設定する。
  学習単位――学習する場面や対象
  働かせる技能――情景や心情を想像しながら読む、などの読解技能
  言語行動化のしかた――内面に思考したものをあらわな行動として表す、書く、話すなど中心的な活動
  をした結果、そこに表される内容――どんな条件を含めた情景、心情というようになるべく具体的に習
  得すべき言語事項もあわせて記しておく。
B 細目分類表の作成
 学習目標細目分類表は、学習目標に到達するための学習方法を縦軸に、追求する過程で身につく、働く態度・技
能・言語事項を学習内容として横軸に表したものである。従って、この細目分類表を見れば、どこで(学習単位)ど
んな技能や態度で、どんなことを(行動的目標に示した内容)どのように(学習方法)外部行動化されることができ
るか、各時間の学習目標・学習内容の体系が一目瞭然である。このように、単元の価値目標・学習内容がシステム化
されたものが、学習目標細目分類表である。
 細目分類表(六四ページ・六五ページ参照)は次の手順で作成する。
                                                        67
  「大造じいさんとがん」の文章構造過程をもとに、学習単位を決める――完全習得をめざすので、小間切れに
  ならない程度に可能な限り、小さな学習単位にする(分析読みの場合)
  学習目標が達成されるように、学習単位ごとに行動的目標を設定する。
  学習方法を考える――直観、分析、体制の三つの過程による
  学習内容を考える――ここで学習する基本的な態度・技能・言語事項を○印で表す
 (6) 単元展開のシステム設計
@ システム設計の留意点
 単元展開のシステムは、細目分類表を手がかりにして、各時間ごとの学習計画を具体的に示したものである。つま
り、細目分類表で行動的目標・学習内容・学習に要する時間が明らかになっているので、ここではそれをどんな学習
活動を組んで追求するか、また、目標に完全に到達するために何をどう評価するか、その観点・方法を明らかにする
のである。大切なことは、何を(行動的目標)どんな技能・態度(そこで習得される言語事項も含め)で、どんな学
習活動をすることによってどの子も完全に習得できるか、これらを有機的に関連させて設定することである。また、
学習評価し、習得状況を明らかにして過不足、誤りを補い、完全習得しながらそれらを積み上げて単元の学習目標に
到達するようシステム化することである。
A システム設計の手順・方法
 「大造じいさんとがん」は、十八時間の学習で目標を達成するよう、展開のシステムを組んでいる。これは直観・
分析・体制の三つの読解過程に位置づけられ、次のように学習が進められる。
  直観読みの過程――文章全体を読んで感動の中心を押さえ、主題範囲に接近する。ここで「大造じいさんとが
                                                        68
     (二時間)  ん」のあらすじをおさえて直観的に主題を読みとる。ストーリーの展開がわかるので場面
            分けし、学習計画・学習方法が決められる。従ってそれらに応じた学習活動・学習評価を
            設定する
  分析読みの過程――場面ごとに情景や心情を想像しながら詳しく読んでいく。ストーリーの展開を楽しみなが
    (十四時間)  ら、残雪の知恵、頭領らしさ、勇気、大造じいさんのかりゅうどとしての意地、あたたか
            さなど、直観読みで感動したことを表現に即して読み味わう。従って、展開のシステム作
            成にあたっては、基本的な学習活動を行うための学習技術まで示す必要がある。また、児
            童の多様な能力に応じるための工夫もしたい。文章全体では十分に能力が働かせられない
            児童も、場面ごとの学習には積極的に取り組むことがある。この意味からも学習方法を工
            夫し、活動化したい。そして学習評価をし、誤りや過不足を補う調節学習を活動として位
            置づけて、行動的目標に到達させて完全習得させる。毎時間のこの積み上げによって学習
            目標の達成に近づくのである。
  体制読みの過程――分析読みで場面ごとに読んできたものを、文章全体を読み通して体制化し、主題について
     (二時間)  自分なりの感想をまとめる。これまでの学習が集大成されるわけで、読みの深さ(理解の
            程度)は感想に表れる。従って、感想を持つ活動が中心となる。ここでは、観点に照らし
            て評価はするが、調節学習は行わない。もう一度、全体を学習し直すことは不可能だから
            である。
 以上のことをよく理解した上で、単元展開のシステムを編成する。
                                                        69
                                                       〜71
B 単元展開のシステム


行動的目標 学習内容(△態度技能・言語事項) 学 習 活 動 学 習 評 価 




(



)
 全文を直観的に読ん
で、残雪の知恵や勇気
責任感のすばらしさ、
それに感動する大造じ
いさんの人間らしさ、
正義感、愛情に心打た
れ、それを話したり書
いたりできる 
△直観的に主題を正しく理解しよう
 とすること
直観的に主題を理解すること
・新出漢字や読みかえ漢字を読むこ
 と
1 全文を読んで感動したこ
 とを書き出す。感動したこ
 とが書けない場合は感動し
 た場面を書き出す
2 感動したことを発表し類
 別して、主題を見通す
3 単元全体の学習課題を作
 り、学習方法を考えて学習
 計画を立てる 
観点 ・方法
 基準は行動的目標に示さ
れた内容事項である
直観的に主題範囲内のこ
 とに感動できたか、それ
 に基づいて主題が見通せ
 たか
・自己評価・全体評価条件
 法 

 

 

 

 
(



)
 
(二時間続きの前半)
 がんの群れが近づい
てくるのを待ち構える
場面を読んで、場面の
情景や大造じいさんの
心情を想像し、次の条
件を含めてじいさんの
ことばで書いたり話し
たりできる
・もう少しのしんぼう 
 だとはやる心をおさ
 えて待ち続ける緊張
 した心情
・今年こそは、と意気
 ごんで待ちかまえる
 心情
△場面の情景や人物の心情を想像し
 ながら読もうとすること
場面の情景や人物の心情を想像し
 ながら読むこと.
情景や心情が伝わるように朗読す
 ること
・表現や描写の優れた箇所を読み、
 味わうこと
 ・ほおがひりひりするほど
 ・あかつきの光がすがすがしく流
  れこむ
 ・かなたの空に 点々と
・理解に必要な語句の量を増すこと
 ・目にもの見せる
・語感・ことばの使い方に対する感
 覚などについて関心を深めること
1 P116下段〜P117三の前ま
 でを読んで、直観的に場面
 全体の感じ(情調)をとら
 える
2 前半・後半二つの情調を
 とらえ、前半を読む課題を
 設定する
3 課題に従って前半を読み
 想像した情景・心情を学習
 シートに書く
4 場面の情景を表現に即し
 て発表し、場面構成をする
5 じいさんの心情を発表し
 緊張感、意気ごみが想像で
 きていればよいことを理解
 する(評価基準の理解)
6 学習結果を自己評価し、
 誤り、過不足を自覚する
7 読み直しの必要のある児
 童は調節学習をする。他の
 児童は場面の感想を書く
8 調節結果を発表する
9 朗読したり聞いたりして
 読み浸る
10 行動的目標に到達する 
前半の緊張してどきどき
 した情調・後半の感心し
 がっかりした情調が捉え
 られたか
・自己評価・条件法


場面の情景からじいさん
 の心情が想像できたか
・自己評価・条件法
※条件法とは、行動的目標
 に示された内容事項を分
 析していくつかの条件と
 して提示する方法。この
 学習単位ではじいさんの
 心情を二つに分析し提示
 する。 




(



)
 
 全文を体制的に読ん
で、主題を理解し、次
の点について感想を持
ち、それを書いたり話
したりできる。
 1 大造じいさんの
  人間らしさや愛情
 2 残雪の頭領らし
  さやその知恵
 3 大造じいさんと
  残雪とのかけひき
  と、そこに生まれ
  るじいさんの心情 
△主題を正しく理解しようとするこ
 と
主題を理解すること
主題について感想を持つこと
・新出漢字や読みかえ漢字を書くこ
 と 
1 これまで学習してきたこ
 とを頭の中で続けながら全
 文を読み、主題を捉えて書
 く
2 主題を発表し、見通した
 主題と比べ、正しく理解す
 る
3 感想を書く
4 感想を読み合う 
主題が理解できたか
・自己評価・全体評価
 (条件法)

主題について感想が持て、
 書けたか
・自己評価、条件法 
         

 (7) 本時の学習指導のシステム設計
 完全習得をめざす読解学習では、児童が主体的に学習に取り組むことが原則である。そのために、@目的を持つ、
A学習方法を考える、B課題にそって自己学習する、C評価基準を設定して評価する、D評価の結果に基づいて調節
学習をする、E獲得する、以上六つの過程をたどって学習を行う。この学習過程にそって学習すれば、どの児童も目
標に到達し、学習に成功する喜びを味わうことができる。そこで、単位時間の学習が終わるごとに学習に成功した過
程としておさえ、意識づけてやる。それによって自ずと学習過程が身につき、主体的に一人学習ができるようにな
る。
 以下、大造じいさんが残雪の群れを待ち受ける場面の分析読みを、先の六つの学習過程にそって具体的に述べる。
@ 目的過程
 今年こそうまくいくぞとばかり、会心のえみをもらした大造じいさんを想い起こし、本時の読みの構えを確立す
る。場面全体を直観的に読んで、場面の感じをとらえ、それをもとにしてこの時間に学習する基本的技能「情景や心
情を想像しながら読むこと」を合わせて、学習課題を設定する。
                                                        72
 「がんの群れが近づいてくるのを、大造じいさんはどんな気持ちで待ち受けていたか」この場合、心情を想像する
刺激源になることを先に出し、後に技術をつけるというように、課題の書き方を約束しておく。完全習得学習では、
児童が自ら課題を設定することが大切である。
B 方法過程
 じいさんの心情を想像するにはどう読んだらよいか話し合って決める。読み方はこれまでの学習経験から思い出さ
せる。
 がんの群れの様子・大造じいさんの様子が分かるところにのサイドラインを引きながら読んで場面の様子を
  想像する。
 じいさんの待っている心情が分かる所にのサイドラインを引きながら読んで気持ちを想像する。
 これまでの失敗し続けてきたじいさんの気持ち、今年こそと期待し自信をもっているじいさんの前の場面の気持
  ちに続けて想像する。
 想像したことは、じいさんに同化してじいさんのことばで学習シートに書く。
B 学習過程
 課題意識が明確な時、能力は百パーセント発揮されるので課題に従って場面を読み、想像したことを書く。想像は
いつでもどこでも自由に浮かぶがすぐ消えてしまうので記録にとどめておくことが大切である。また、書くことによ
っていっそう想像が広がることもあるので、ぜひ書く活動を採り入れたい。
 完全習得学習なので、学習シートは易しいものと普通のもの二通り用意する。易しい方は、学習の成り立ちにくい
児童に先に与え、できたらもう一方のシートで学習する。その児童が劣等感を抱いたり、他の児童が偏見を持たない
                                                        73
           (一斉シート)               (特別シート)
 

よう、ふだんの学級経営に留意し、みんなができるようにという使用の意図を理解させておく。こうすることによっ
て、易しいシートの児童は意欲的に学習し、成就感を味わうことができる。
 各自、自分の力で学習したら、次に話し合いによって、どんなことが想像できていればよいかを明らかにする(評
価基準の理解・設定)。想像したことを発表する時は、どんな表現、ことばから想像したのか根拠を明らかにするこ
とによって言語の学習が併せて行われる。

<場面の様子>  <大造じいさんの気持ち>  <心情が分かる言葉>
 ぴーんと緊張した空気が漂っている。
その空気はひんやりして冷たい。この中
で大造じいさんが体を堅くして待ち構え
ている。そこへがんの群れが黒く点々と
やがてぐんぐん近づいてくる。 
さあ、今日こそはしとめてやるぞ。
 きっとうまくいくぞ。やってやるぞ。
わくわく、どきどきした。
あと少しのしんぼうだ。鉄ぽうの届く所まで早く来い落ち
 (
 基 つけ落ちつけ。うまくいくぞという期待・自信。
 準 じっとがまんして緊張して待っている気持ち。
 )
・あかつきの光が〜
・すがすがしく〜
・目にもの見せて〜
・一発ぶちこんで〜
・今年こそは、
・ぐんぐん近づいて
 くる 

                                                        74
C 評価過程
 話し合いによる共同学習によって評価基準が理解できたので、今度は自分の学習結果に照らして自己評価する。こ
の場面では、@期待・自信の分かる想像、A緊張して待っている想像ができていればよいので、この二つが書けてい
るかどうか評価し、学習状況を明らかにする。明らかになると、何ができていないか、不足なのかしっかり自覚す
る。そして、よし、直してやろうという自己完成の意欲がわく。また、評価によって本時の目標に到達した児童は、
さらに発展的な学習に取り組む意欲をもつ。このように、完全習得をめざす学習における評価の位置づけは極めて重
要である。学習したら確かめる。その当然のことを児童自らがきめられた手順・方法にしたがってすすめていく。
D 調節過程
 評価によって、児童は読み直しの必要を自覚しているので、次に読み直しの観点・方法を提示してやる。例えば、
評価基準@じいさんの期待・自信が想像できていなかった児童は、次のことばに気をつけて読み直し、想像してごら
んというように、具体的にその言葉を提示してやる。これは、板書してあれば、それと分かるように色チョークで示
すとか、評価基準のAに応じて書き出したものをOHPで投映するなど工夫する。いずれにしても、どう読み直せば
よいかを各自理解することが大切である。大部分の児童はこのような手だてで調節学習ができるが、自己の力だけで
は学習のし直し不可能な児童もいる。その場合、まず精神的に支えてやることが大事である。つまり、あとこれこれ
ができればいいんだよ。もう少し。がんばろうなどと励まし、個別に指導をする。また、読み直しの必要がない児童
は、「大造じいさんヘ一言」というように、登場人物にあてて感想を書くなどの学習をし、時間を有効に生かす。読
み直したら、赤でその結果をシートに書きこみ、どう直したか発表して確かめる。そして、どの子も学習目標に到達
させる。
                                                        75
E 獲得過程
 緊張した場面の情景や大造じいさんの心情が想像によって十分理解できたので、場面全体を気分・情調に浸りなが
ら読む。多くの場合、情景・心情が伝わるように朗読できる児童に指名読みさせる。他の児童は目を閉じて聞く。
 最後に、本時の学習に成功した学習過程を振り返る。第二シートまで用意すると全員本時の目標に到達する。(第
ニシートを用意しない場合は、80〜85%ぐらいの到達度である)各自満足感を味わっているところで、なぜ学習に成
功したかを板書をもとにたどることによって、学習過程が身につく。この積み重ねにより、やがて学習過程を使える
児童が育ち、自己教育力に資することができる。
 (8) 実践上の留意点
@ 学習シートについて
 学習シートは、読みを規制する。自由な思考を妨げる、などと批判が多い。しかし、五年生の内容を理解する能力
が十分身についていない時は、まずそれを補うことが先決であり、読み方を身につけさせねばならない。そのため
に、ストーリーの展開と読みの実態に応じてリードをつけた学習シートの使用は、学習経済の面からも活用したり、
シートによるくり返し学習により読み方が身についてから自由に各自の能力に応じた読みをさせても遅くはない。シ
ートによって児童は、学習法が分かり意欲的に取り組むが、シートを学習するのではなく、シートで学習するのだと
いうことを忘れてはならない。シートは学習目標達成の資料である。
A 学習に要する時間の問題
 完全習得学習は、これまで述べてきたとおり多くの時間を要する。指導書に示された時間の倍近い時間を要する。
そこで心情豊かに読み浸らせたい文学作品の読解・鑑賞学習では、時間を気にせずじっくり学習させるために、年度
                                                        76
当初にこの作品だけは時間をかけるというように、年間の指導計画を見通した計画的な取り組みが大切である。
                                              <立尾保子>

     三 作文の完全習得学習はこのように設計する

 (1) 単元「感動したことを書く」  題材「初めて経験したこと」(四年)
 (2) 児童の実態――診断的評価の実施
@ 調査のねらい
 作文の学習においては、特に題材の選定が以後の学習を左右する。従って、題材「初めて経験したこと」は、児童
が興味・関心を持って意欲的に臨めるものであるか、感情表現が十分にできるか、表現技能の実態はどうか等を診断
するために行うものである。
A 調査の観点・方法
 「初めて経験したときのことをよく思い出して書いてみましょう」という設問で、簡単な文章を書かせてこの作品
を分析した。
B 題材の選定について
<経験の直前>――不安と期待の入り交じった感情 迷い 心配 こわい 希望 あきらめ
<経験しているとき>――緊張 不安から安堵へ 迷いから安心へ 希望 意欲 決意 成功の喜び
                                                        77
  おどろき あきらめ
<経験の後>――安心安堵 成功の喜び 希望と次への期待 反省 落たん 次への決意
 経験と感情との関係を見ると上のようになっている。初めての経験では、全ての児童が豊かな感情を表現している。
 感情表現の題材としては、「初めての経験」は、効果的、機能的な題であることがわかった。
C 表現技能の決定について
 「ぼくはうれしくなりました」の類(概念的表現)…二七 「「楽しかったけど、めんどうくさいなあ」と思
いました」の類(感情的表現)…二七 「エレベーターは混んでいてびっくりしました」の類(説明的表現)…
 一六 「しぶしぶ遠まわりをして帰りました」の類(具体的表現)…一五 「急に胸がどきどきなってきまし
た」の類(間接的表現)…二三 「弟はすべれるのでくやしくてたまりませんでした」の類(因果的表現)…九
「お父さんのにおいが残っているだけであたりはしいんと静まって、とてもさびしかったです」の類(状況的表現)
…三(数字は頻度を表す)
 感情表現の技能を分析してみた結果は以上のようになった。のような概念的な幼い表現が、三分の一近くもあ
る。そこで、「感情的な内言を書くこと」「感情を誘発した事実・行動を添えて感情を書くこと」を含めた感情表現の
仕方を指導する必要のあることがわかった。
 (3) 単元のシステム設計
 この期の児童の感情生活をみると、急に感情が発達・分化し、その感情を表す語も豊かになってきている。客観的
感性的な認識も急激に発達し、客観的に書くこともできるようになって、日常の経験にまつわる生活感情を書くこと
もできるようになってくる。こうした時期に感情表現の指導をすることは、効果的・能率的な学習が期待できるもの
                                                        78
と思われる。診断的評価の結果からも、「生活経験にまつわる生活感情を豊かに書く」学習指導は適切である。
感情は、行動・経験・場面など、環境の刺激によって誘発されるものであるので、感情を誘発した環境やその状況を
適切に認識させ、その結果誘発された感情を書くよう指導する。また、文章表現を通して、経験に対する認識を深め
豊かな生活感情に培うことができる。
@ 学習目標
 文章表現を通して人間性を開発伸長することが究極の目的であるので、ここには価値目標を設定する。この記述は、
表現・叙述の対象(初めての経験)、表現・叙述の技能(感情を豊かに表現する)、興味・関心や知識と感情な
どの人間性を育てる価値(経験に対する認識を深め、豊かな感情に培う)の三つの要素を含んでいることである。
A 学習内容
 @の学習目標を獲得するために題材を契機として文章表現を行う。表現活動を処理し、支持するものである。それ
らは、表現態度と表現技能と言語事項である。先ず、児童が生活感情を書くんだという構えが基盤になる。それが表
現態度である。書く題材を選択すること、書く内容を収集すること、文章を構成すること、感情を豊かに書き表すこ
と等は、実際に表現活動をする技能である。文字・語い・文法などの言語事項は、表現技能と関連しておさえる。
B 学習方法
 単元の目標を追求するために行う学習活動が学習方法である。つまり、作文の学習指導過程に従って行われる学習
活動を組織した全体である。
C 学習評価
 作文の制作の各過程で基本的活動を通して学習する基本的技能に対して行われる。また、単元の目標に照らして書
                                                        79
く目的が達成されたかどうか評価する。
 @からCをまとめて表示すると次の通りになる。

学習目標 学習内容(△態度○技能・言語事項) 資料 学  習  方  法  学 習 評 価 
 初めての
経験を通し
てひき起こ
された感情
を豊かに表
現し、経験
に対する認
識を深め、
豊かな生活
感情に培う
ことができ
る。 
△日常の生活経験にまつわる生活感情を書こ
 うとすること
○生活経験にまつわる感情を豊かに書き表す
 こと
○書く題材を選択すること
○書く題材について書く内容を収集すること
○書こうとする中心が明確になるように文章
 を構成すること
・感情や感覚を書き表すための連体修飾語や
 連用修飾語を使うこと
・感情や感覚を表す語句の量を増すこと
・習っている漢字を使って書くこと 
カー


アウ
トラ
イン

教材 
1経験にまつわる生活感情を書
 く目的をもつ
2生活の中から題材を選ぶ
3主題に従って書く事柄と気持
 ちをメモする
4メモを整理して、アウトライ
 ンを作る
5アウトラインに従って文章を
 書く
6書いた文章を評価し調節する
7書いた文章を清書し、読み合
 い、個人文集にとじこむ 
適切な題材を選んで書く
 ことができたか
中心のはっきりした文章
 を構成することができた
 か
感情や感覚を豊かに書き
 表すことができたか
生活経験に対する認識を
 深め、生活感情をいっそ
 う豊かにすることができ
 たか 

 (4) 学習目標のシステム設計
@ 学習目標のシステム
 学習目標の設定については、単元のシステム設計の項で述べた通りである。
 一つの作品は、題材・収集・構成・表現・評価・処理の各過程を通って完成し、有効に作文意図を達成する。した
                                                        80
                                                       〜81
     <「初めて経験したこと」細目分類表>

学   習   目   標  学     習    内     容
態度   技  能 言 語 事 項     
 初めての経験を通
してひき起こされた
感情を豊かに表現し
経験に対する認識を
深め、豊かな生活感
情に培うことができ
る      
日常の生
活経験に
まつわる
生活感情
を書こう
とするこ

   
書く題材
を選択す
ること

 
書く題材
について
書く内容
を収集す
ること
     
書こうと
する中心
が明確に
なるよう
に文章を
構成する
こと
 
生活経験
にまつわ
る感情を
豊かに書
き表すこ

 
感情や感
覚を書き
表すため
の連体修
飾語や連
用修飾語
を使って
書くこと
 
感情や感
覚を表す
語句の量
を増すこ
習ってい
る漢字を
使って書
くこと
  













































間 
行 動 的 目 標





0.5   経験にまつわる感情を書く目的
を明確にし学習計画を立てること
によって書こうとする意欲をもつ
ことができる
               






   






1.5   書く題材について次の観点に従
って書く内容を想起してメモし、
経験に対する認識を確かにするこ
とができる
@ 想起した事柄
  ・したこと・あったこと
  ・見たこと・聞いたこと
   など
A 事柄にまつわる気持ち
  ・その時の気持ち
  ・動作・状況・場面など 
         




















  










 
2   収集した内容を整理し、次のよ
うな中心の明確な文章を組み立て
文章構成についての知識理解を深
め、構成的思考力を伸ばし、文章
全体のイメージを描く事ができる

             


     現
 
3   構成に従って生活経験にまつ
わる感情を次の条件を含めて書
き表し、生活経験についての認
識をいっそう深めることができ

生活経験にまつわる感動を豊か
に書き表すこと
 ・感情的内言を使って書くこ
  と
 ・「感情を誘発した事実や行
  動+感情を表すことば」を
  使って書くこと 
 ○        ○  ○  ○ ○ 







 
 1  書いた文章を読み返し
て次の事項に照らして評
価し書く目的が達成され
ているかどうか判断する
ことができる
@ 生活経験にまつわる
 生活感情が豊かに書き
 表されているか
A 経験に対する認識が
 深まり、生活感情が豊
 かになったか 
               







 1   書いた文章を次のよ
うに処理することによ
って生活経験に対する
認識を深め、生活感情
をいっそう豊かにする
ことができる
@ 清書する
A 相互に読み合い、
 感想を発表する
B 個人文集にとじこ
 む  
                       

                                                                                                     82
がって、作文の完全習得学習では作文の各制作過程で、必要な学習が十分に満たされていなければ成就することはで
きない。
 そこで、単元の学習目標を受けて、作文の制作過程ごとに達成する学習目標を具体的に、行動的目標として設定す
るとともに、それぞれの過程の学習内容を明らかにする。そして、各過程ごとに学習結果を評価し、調節する。その
ように目標のシステム化を的確にすすめていく。
A 学習目標細目分類表の作成
 作文の各過程の学習目標がシステム化されると、それが一目でわかるように細目分類表にまとめる。これによって
学習目標・学習内容の全体構成が明らかになり、無理・無駄・むらのない完全習得学習が可能になる。
 (5) 単元展開のシステム設計
@ システム設計の留意点
 細目分類表によって、学習単位ごとの学習目標(行動的目標)と学習内容(学習態度・学習技能・言語事項)が明
確になった。次は、行動的目標に到達するための学習方法と学習に必要な資料、学習評価が必要になってくる。単元
のシステムに於ける学習方法は、単元全体の学習方法を示した。ここでは、学習単位ごとの学習方法を明記する。ど
のように学習するのか、学習の流れに従って記述する。資料は、そこで実際に使用する教材・教具などを書く。評価
は、当然行動的目標に照らして行うものである。従って、ここには、評価の観点や基準を明記する。また、評価の方
法も教師が評価する場合、児童が共同でやる場合、各自がやる自己評価の場合のいずれであるかを明記する。
 以上の点に留意して、作文の制作過程から評価・処理の過程までの単元展開のシステムを設計すると次のようにな
る。
                                                        83
                                                       〜85
A 単元展開のシステム


行  動  的  目  標  学習内容  資料  学 習 方 法  学 習 評 価








(
0
.
5


) 
 経験にまつわる感動を書く目的を明
確にし、学習計画を立てることによっ
て書こうとする意欲をもつことができ
る 
○書く目的を持つこ
 と
 
  1 経験にまつわる感動を
 書く目的を立てる
2 メモの取り方、構成・
 叙述など書く手順を考え
 る
3 学習計画を立てる 
<観点>
 ・書く目的が明確に
  理解できたか
 ・書こうとする意欲
  が喚起されたか
 ・目的に従って計画
  が立てられたか
<方法>教師評価 





(
1
.
5


) 
 書く題材について次の観点に従って
書く内容を想起してメモし、経験に対
する認識を確かにすることができる
1 想起した事柄(経験の事実)
 ・したこと ・あったこと
 ・見たこと ・聞いたこと…など
2 事柄にまつわる気持ち
 ・その時の気持ち
 ・動作・状況・状態・場面など 
△生活経験にまつわ
 る生活感情を書こ
 うとすること
○想起した事柄とそ
 れにまつわる感情
 をメモすること 
メモ
カー
ド 
1 想起した事柄をカード
 に書く
2 事柄にまつわる感情を
 カードに書く
3 必要な事柄を整理する
4 評価の観点に照らして
 自己評価する
5 評価の結果に即して自
 己調節する
6 学習結果を確認するた
 め、カードを読む 
<観点>
 ・書く内容を落とさ
  ずメモをとること
  ができたか
<基準>
 ・行動的目標の基準
  による
<方法>
 自己評価 



(



) 
 収集した内容を整理し、次のような
中心の明確な文章を組み立て、文章構
成についての知識理解を深め、構成的
思考力を伸ばし、文章全体のイメージ
を描くことができる。 
△中心のはっきりし
 た文章を組み立て
 ようとすること
○収集したカードを
 整理して、中心の
 はっきりした文章
 を構成すること
アウ
トラ
イン

教材
「る
す番」
1 収集カードを段落ごと
 に整理する
2 段落を組み立ててアウ
 トラインを作る
3 評価基準を確認し、基
 準に従って自己評価する
4 評価の基準に照らして
 自己調節する
5 書き出し、終わりの段
 落を書く
6 アウトラインを読んで
 文章全体のイメージをう
 かべる 
<観点>
 ・中心のはっきりし
  た文章を組み立て
  ることができたか
<基準>
 ・行動的目標の基準
  による
<方法>
 自己評価 





(



)
(


2
/
3
) 
 構成に従って生活経験にまつわる感
動を次の条件を含めて書き表し、生活
経験についての認識をいっそう深める
ことができる。
 生活経験にまつわる感動を豊かに書
 き表すこと
 ・感情的内容を使って書くこと
 ・「感情を誘発した事実や行動+感
  情を表すことば」を使って書くこ
  と
 
○生活経験にまつわ
 る感動を豊かに書
 き表すこと
・感情や感覚を書き
 表すための連体修
 飾語や連用修飾語
 を使って書くこと
・感情や感覚を表す
 語句の量を増すこ
 と 
教材
「こ
わか
った
マッ
チす
り」

アウ
トラ
イン 
1 生活経験にまつわる感
 動を「豊かに書く」書き
 表し方を理解する
2 アウトラインに従って
 豊かに書き表す
3 評価・調節の仕方を理
 解する
4 基準に従って自己評価
 する
5 評価の結果に即して自
 己調節する
6 各自作品を読む 
<観点>
 ・生活経験にまつわ
  る感動を豊かに書
  き表すことができ
  たか
<基準>
 ・行動的目標の基準
  による
<方法>
 自己評価 



(



) 
 書いた文章を読み返して、次の事項
に照らして評価し、書く目的が達成さ
れているかどうか判断することができ

1 生活経験にまつわる生活感情が豊
 かに書き表されているか
2 経験に対する認識が深まり、生活
 感情が豊かになったか 
△書く目的が達成し
 ているかどうか判
 断しようとするこ
 と
○単元の目標に照ら
 して書く目的が達
 成したがどうか判
 断すること 
作品  1 作品全体を評価する
  基準を確認する
2 基準に従って自己評価
 する 
<観点>
 ・書いた文章を単元
  の目標に即して評
  価することができ
  たか
<基準>
 ・行動的目標の基準
  による 

 

(



) 
 書いた文章を次のように処理するこ
とによって、生活経験に対する認識を
深め、生活感情をいっそう豊かにする
ことができる 

・1 清書する
・2 相互に読み合い、感想を発表す
   る
・3 個人文集にとじこむ
・習った漢字を使っ
 て書くこと 
作品  1 清書する
2 読み合い、感想を発表
 する
3 個人文集にとじこむ 
 

 (6) 本時の学習指導のシステム設計
@ 学習単位――叙述過程
                                                        86
A 学習目標(行動的目標)
 構成に従って生活経験にまつわる感情を次の条件を含めて書き表し、生活経験についての認識をいっそう深めるこ
とができる。
 生活経験にまつわる感情を豊かに書き表すこと
 感情的内言を使って書くこと
 「感情を誘発した事実や行動+感情を表すことば」を使って書くこと
B 学習内容(・技能・言語事項)
 生活経験にまつわる感情を豊かに書き表すこと
 ・感情や感覚を書き表すための連体修飾語や連用修飾語を使って書くこと
 ・感情や感覚を書き表す語句の量を増すこと
C 完全習得をめざす叙述の学習指導過程
 学習目標を確認する。                評価基準に照らして自己評価する(結果を確認す
 感情を豊かに書く書き表し方を理解する。        る)。
 感情表現の方法に従って経験を書く(自己学習)。   評価結果にもとづいて自己調節する。
  (共同学習)評価基準を確認する。          自己調節の結果を確認する。
 書いた文章にもとづいて評価法・調節法を理解する   行動的目標に到達する。
 (7) 本時の学習指導

@ 前時との関連  T この前には、どんなことを勉強しましたか。 

  87
C 「初めての経験」を書く時の気持ちの書き表し方を
 勉強しました。
C 自分たちの気持ちをどう書けばうまく書き表せるか
 ということです。
A 学習目標の確認
T きょうは、その気持ちの書き表し方を考えながら、
 この前作ったアウトラインをもとにして、みんなが初
 めて経験したことを書いてみましょう。
B 感情表現の方法を確かめる
T それでは、どんな書き方をしたらいいですか。

 どのように書くと、気持ちを豊かに書き表せる
でしょう。 



C 心の中で思ったことを書いて表します。
「心の中で思ったこと」を書き表す      
<板書>

T 例えばどんな書き表し方ですか。
C 「こんどこそやるぞ。」と思いきってやりました。
 というように書きます。
C 「『やけどしそうだな。』と思うと、心配でたまりま
   せん。」もそうです。
 C 行動や事実に、気持ちを表すことばをつけ加えて表
 します。

「行動や事実に気持ちを表すことば」をつけ加え
て書き表す




T 例えば。
C 「何回も何回もするかっこうをしましたが、こわく
 てどうしてもすれません。」です。
C 「わたしは、「あっ」とびっくりして、もう少しでマ
 ッチのぼうを投げ出しそうになりました」は、先にび
 っくりした気持ちを書いて、後で、行動を書いていま
 す。
T こういうふうに書くと、気持ちがよく書き表せるの
 でしたね。ほかに、特に強く書く書き方には、どんな
 書き方がありましたか。
C 「心配で心配でたまりません」があります。
C 「何回も何回も」では、どんなにたくさんやったか
 がわかります。

88
C 「こわくてこわくて」も、とてもこわいことがわか
 ります。
T そうですね。同じことばをくり返すと、どんなに気
 持ちなどが強いかがわかりますね。
C 書き方を工夫する
T それでは、どんなことに気をつけて書きますか。
C 段落に分けて書きます。
C 中心になる段落をくわしく書きます。
C 書こうとする事柄をよく思い出して書きます。
C その時の様子や気持ちをよく思い出して書きます。
C アウトラインをもとにして書きます。

・アウトラインをもとにして書く
・その時の様子や気持ちを思い出して書く 



D アウトラインに従って文章のイメージを思い浮かべ
 る
T それでは、自分のアウトラインに目を通して、どん
 な文章を書くか見通してごらんなさい。
C 各自、アウトラインをたどりながら、書く文章の大 
   体を見通す。
 <各自、アウトラインにもとづいて書く>
C 各自、二十五分間、非常な勢いで一気に書く。
T 机間を回りながら個別に指導する。
 (この間、上、中、下の三段階の児童を選んで、綿密
 な観察記録をとる。書く速さ・感情表現の方法・アウ
 トラインのたどり方などを記録する。)
C 大体書き終わったところで授業を終わる。
E 書いた文章について自己評価する
 書いた文章をOHPで投映し、感情表現の仕方につ
 いて話し合う。
 どんな感情が、どのように書かれているか。
 ・豊かな気持ち
 ・学習した感情の書き表し方
 評価基準を決める。

アウト
ライン 
どんな
気持ち 
書  き  表  し  方  
思った
こと 
事実や行動
+気持ち 
ことばの工夫な
ど 

 89
  基準を共同学習(話し合い)によって、学習の目標
 に照らして上のように決める。
 評価の基準に従って自己評価する。
  カードによって評価する。
  (自分の書いた文章がどのように書けているかを知
 る。この自己評価の結果を自覚することがあいまいで
 あると、次の調節が出来ないのでここでしっかりと自
 覚させることが大切である。)
 自己評価の結果にもとづいて調節する。
 ・その時の気持ちを思い出して書き加える。
 ・概念的な気持ちの書き表し方を具体的に書く
 ・気持ちを起こさせた事実や行動を書き加える
 書き終わった文章をお互いに確かめ合う。
 ※書きあがった文章は、表記を正した後で清書してか
 ら、単元の目標に照らして機能評価をし処理する。
 (評価及び処理過程の行動的目標参照)
F 児童の書いた作品

…………「さか上がりができた」  (男児)……………   
 
 ぼくは、さか上がりが出来ないので、「れん習して出来
るようになってやるぞ。」と、思って練習を始めました。
 一人じゃ心細いので、井出さん、岩城さん、中島君に先
生になってもらいました。
 毎日毎日、いっしょうけんめい練習をしても、なかなか
うまくできません。「どうして出来ないのだろうなあ」と、
思うととてもくやしくて、がむしゃらにやりました。手に
あせが出てきて、鉄ぼうがぬるぬるしてたまりません。
 そんな練習をしていた井出さんが、初めてこつを教えて
くれました。
 「そうやればできるの?」
と聞くと、井出さんは、
 「たぶん。」
と、返事を返してきました。
 そのこつを使って、ぼくは何回も何回も手がちぎれるく
らい練習しました。一回一回やっていくごとに、心のはず
みが大きくなるように感じました。
 そこで、さか上がりの練習の一つに、うで立てふせを入
れて、うでの力を強くしようと考えました。毎日毎日やる
のはつらかったけど、さか上がりのためだと思っていっし
ょうけんめいやりました。「いやだなあ。」と思う時もあっ 

  90
たし、「やめようかなあ。」と思った時もありました。
 そのうで立てふせを生かすため、また、さか上がりの練
習を始めました。「手が痛いなあ。」と思って手を見たら、
豆が三つも出来ていました。何回も何回も、鉄ぼうにさわ
ろうと思ったけど、「もし、手が痛かったらどうしよう。」
と思うと、どうしても鉄ぼうにさわれません。さわろうと
しても、手がさけてしまうのです。それでもいっしょうけ
んめいやりました。
 まるくなった白色の豆が、どんどんやっていく間に、赤
くなって、だんだんかたくなっていくのです。それでもや
ると、ジンジンと伝わってとても痛かったでず。
 「いやだなあ。やめて、みんなと遊びたいなあ。」と思っ
た時もありました。
 二つの形をだんだん覚えて、もうそろそろ出来そうにな
りました。だから、ゆっくりと頭で教えてもらったことを 
 
 を、何回もやってみましたが、なかなかできません。
「よし、こんどこそ」と、もう一度、最初にいきおい
をつけて、おなかを鉄ぼうにまきつけて、つま先を鉄ぼう
の外がわに向けてやりました。その時に、もう一つ足を曲
げてやるということも思い出しながらやりました。
 その時です。し然に足が回り、おなかが鉄ぼうにまきつ
けられ「くるくるっ」と回ったのです。それは、さか上が
りができたのです。鉄ぼうを持ち上げるくらい、何回も何
回も鉄ぼうをひっこぬきそうになりました。
 「やったあ。」
 「ぼくも出来るようになったんだぞ」と思うと、うれ
しくてうれしくてたまりませんでした。
 「やっぱり、こつを教えてもらってよかったなあ。こん
どは、ぼくが先生になって教えられるといいなあ。」と思
いました。 

 (8) 実践上の留意点
    <本時にいたるまでの学習指導の経過>
@ 題材の選定・表現技能の決定まで
 「児童の実態」のところで述べた通り、診断的評価の結果、感情表現の題材としては、「初めての経験」は、効果的・
機能的な題材であることがわかった。また、感情表現の技能も「感情的な内言を書くこと」「感情を誘発した事実・
                                                        91
行動を添えて感情を書くこと」を含めて指導すればよいことが判明した。文章の構成についても、大部分の児童が、
@経験するまでの感情、A経験している時の感情、B経験が終わった後の感情の順(自然な経験の過程にそって)に、
感情を表現している。しかも、経験をしている時の感情表現が、文章の中心になっている。従って、文章は、経験の
過程にそって構成することにした。
A 目的・方法の過程
 初めての経験にまつわる感動を書く目的を明確にし、学習計画・学習方法を決める。ここでは、児童が書く目的を
明確に理解し、書こうとする意欲を喚起することが大切である。殆んどの児童が興味を持ち、意欲を見せた。
B 題材を選定し書く内容を収集する過程
 書く題材について、次の観点に従って書く内容を収集してメモし、経験に対する認識を確かにすることができる。
 初めての経験をたどって
 経験に従って誘発された感情
  ・経験をする前 ・経験しているとき ・経験が終わったとき
 経験の過程をたどりながら、その都度喚起された感情を思い出してカードに書く。この時期に、図工で糸のこを使
うこととタイミングが合い、「糸のこ」を題材に選んだ児童が多く、内容収集もうまくできた。想起して書くことに
よって、今までぼんやりとしていた経験が明確になる。つまり、経験に対する認識が確かになる。そこで、経験にま
つわる感惰も明確になり、豊かに想起されるということになる。収集した内容は観点に従って評価調節する。経験の
再認識が出来ない児童については、経験想起の手だてを構じてやる。
C 文章を構成する過程――アウトライン作り
                                                        92
                                                       〜93
 収集した内容を整理し、中心の明確な文章を組み立てて、構成的思考力を伸ばし、文章全体のイメージを描くこと
ができる。アウトラインは単元展開のシステムの所で述べてあるので略す。
 ここでは、教材「るす番」をもとに中心の明確な文章構成の学習をし、観点(@経験の前、A経験の過程、B経験
の後)を決めて構成をする。評価・調節をし、アウトラインができる。全体のイメージを描かせて、見通しを立てさ
せる。このことによって、文章の見通しが立ち、どこで、どんなことを書けばいいのかの位置付けが明確になってく
る。
D 感情表現の方法を学習する過程
 感情は、さまざまな事実や行動によって引き起こされることを理解し、それによって喚起される次のような感情表
現の方法を身につけることができる。
 生活経験にまつわる感情を豊かに表現すること
 ・感情的内言にもとづいて感情を表現すること
 ・事実や行動+誘発された感情の型で表現すること
 感情表現の方法を学習するための教材(教師作成)

         ・「こわかったマッチすり」
 理科の時間に、マッチのすり方の勉強をすることになりました。先生の説明が終わると、いよいよわたしたちがマッチをする
番です。練習のあいては由美ちゃんです。
 わたしは、マッチをするのは初めてなので、胸がどきどきしてきました。その上、「やけどしそうだな、こわいなあ。」と思う
と、もう心配で心配でたまりません。由美ちゃんを見ると、由美ちゃんも心配そうです。由美ちゃんに、
 「先にやっていいよ。」
と言うと、由美ちゃんも、
 「わたしも後でいいよ。」
と言って、なかなか決まりません。しかたがないので、じゃんけんしたら、とうとうわたしが先にやることになりました。「い
やだなあ。」と思いましたが、始めることにしました。
 左手にマッチの箱を持ち、右手でマッチぼうをしっかり持ちました。そして、何回も何回もマッチをするかっこうをしまし
た。でも、こわくてこわくてどうしてもすれません。
 「よし、こんどこそやるぞ。」と、思いきってやってみたけど、すり方が弱かったので、火はつきませんでした。
 こんどは、手に少し力を入れてすってみました。すると、
 「チャッ。」
という音がして、火がつきました。わたしは、「あっ。」とびっくりして、もう少しでマッチぼうを投げ出しそうになりました。
 でも、「ああ、やけどしなくてよかったな。」と思うとやっとおちついてきました。そして、
 「だいじょうぶよ、由美ちゃん やってっ。」
と少しとくいになって言いました。
 由美ちゃんは、こわそうにマッチを取りました。でも、なかなかすれませんでした。
 この次に、マッチをするときがあったら、一回で成功させようと思いました。 

 表現法の学習指導
 学習目標の確認
 「初めての経験」の感情表現の方法を学習すること
 学習方法の確認
 「こわかったマッチすり」を読んで、どんな気持ちをどのように書き表しているかを調べる。
                                                        94
 表現法の学習
(ア) 全文を読んで、マッチすりをしたときの複雑な気持ちが豊かに表現されているところを理解する。
(イ) マッチをするときの気持ち
  マッチをする前、マッチをすったとき、マッチをすった後、の三つの部分に分けて表現していること、「マッチ
  すったとき」の気持ちを中心にして表現していることを理解する。
(ウ) それぞれの部分で、気持ちを表現している部分にサイドラインを引く。
(エ) サイドラインを引いた部分について、どんな気持ちがどのように表現されているかについて話し合う。
(オ)次の表現法を理解する。
 ・「○○は○○なので、胸がどきどきしました」
  (事実・行動・なので+胸がどきどきしました)
 ・ 「事実・行動・でも+こわかった」の型
  (「やけどしそうだな、こわいなあ」と思うと心配で心配でたまりません)
  (「内言」+と思うと+心配でたまりません)
  (「内言」+思ったが+事実・行動)の型
 ・「何回も何回もするかっこうをしました。でも、こわくてどうしてもすれません。」
  (事実・行動十感惰)の型
 ・「あっ。」とびっくりして、もう少しでマッチのぼうを投げ出しそうになりました。」
  (感情十事実・行動)の型
                                                        95
(カ) 理解した表現法を使って感情表現の短い文章を書く。
 ※書く内容と文章構成が明確になり、書き表し方の確認も出来たので、「これなら書ける」という安心感があって、
 実際の叙述では意欲的に取り組んだ。                            <岩川益子>







                                                        96
  第V章 完全習得をめざした学習指導−その展開の実際


     一 知識・情報の読解完全習得学習はこのようにすすめる

  1 筋道をたて内容を正確に読みとり段落相互の関係を理解する授業

 (1) 単元「組み立てを考えて」  教材「火の話」(日書四年下)
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 <内容的価値について>
 この単元の教材では、「火と生活・文化の歴史」を述べることを通して、「火は、人類の幸福のために正しく使うべ
きこと」を説いている。そこに人間性開発伸長のよりどころを求めた。また、この教材は、児童にとって興味・関心
のあることで、「火について」の診断的評価(質問紙法)の結果によると、ほとんどの児童が、火についてのたくさ
んの情報をもっていることがわかる。
 <学習する能力について>
 教材の構造過程から四年の基本的技能である「筋道をたてて正確に理解する技能」「段落相互の関係を理解する技
                                                        97
能」「要約して要点を読みとる技能」などを適切に学習することができる。
B 児童の実態
 診断的評価の結果、学習能力は、「基本的事項(要点)とその例(細部)の関係を読みとる技能」…四六%、「段落
相互の関係を理解する技能」…五九%、「要約して要点を読みとる技能」…五七%であった。
 教材「火」についての興味・関心・知識は、二、三の例をのぞいて、約九〇%であった。
 (3) 単元のシステム

学 習 目 標 学習内容(△態度○技能・言語事項) 資 料 学 習 方 法 学 習 評 価
 火の話を筋道をた
てて正確に理解し、
火に対する興味・関
心を増すとともに、
火を作り出して利用
した人間の知恵に感
動し、人類の幸福の
ために火を正しく使
おうとする態度を養
うことができる 
△進んで知識を求めようとすること
△課題にそって内容を正しく理解しよ
 うとすること
○叙述に即し筋道をたてて正確に理解
 すること
○段落の要点と細部の関係を理解する
 こと
○段落相互の関係を理解すること
・指示語・接続語の働きや用法を理解
 すること
・新出漢字や読みかえ漢字を読んだり
 書いたりすること
・読むために必要な語句を文脈にそっ
 て理解すること
教 材
「火の
話」

学習シ
ー卜

TP

カード 
1 全文を直観的に読んで中
 心的事項を読みとって学習
 シートに書く (一時間)
2 段落ごとに分析的に読ん
 で要点と細部との関係を読
 みとる    (四時間)
3 全文を体制的に読んで、
 理解した内容や筆者の考え
 を筋道をたててわかりやす
 く書いたり組み立てたりす
 る      (二時間)
4 読みとったことについて
 感想を書く  (一時間) 
○直観的に中心的事項が
 読みとれたか
○筋道をたてて内容が読
 みとれたか
○段落ごとに要点と細部
 の関係が読みとれたか
○段落相互の関係が理解
 できたか
○読みとった内容や筆者
 の考えが組み立てられ
 たか

                                                                                                                                                                              98

 (4) 本時の学習指導システム(3/8)
@ 学習単位(本時分教材・一、二、三段落)

 火を自分のものにすることができるようになってから、人のくらしは、それまでとどう変わってきたでしょうか。
 まず、夜になると真っ暗になっていたすみかが、ほのおに照らされて明るくなりました。そのため、おそろしいけものたちも
近づかなくなり、安心してねむることができるようになりました。次に、火をたくと、うちの中が温かくなって、冬のきびしい
寒さにも、もうこごえなくてすむようになりました。それから、物を焼いて食べることができるようになりました。今まで食べ
られなかった物も、焼くことで食べられるようになりました。新しい食料ができたのです。
 火を使うようになってから、人は、やっと人間らしい生活を始めることになったのです。 

A 学習目標
 一、二、三の小段落相互の関係、大段落の要点と細部との関係を押さえ、筋道をたてて内容を正確に理解し、次の
ように組み立てて書くことができる。


                                                        99
B 学習内容(△態度 O技能 ・言語事項)
 △課題にそって内容を正しく理解しようとすること   O大段落の要点と細部との関係を理解すること
 O筋道をたてて読んで内容を正確に理解すること    O段落相互の関係を理解すること
C 本時の学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 授業の実際

@ 前時との関連・学習単位の確認
T きのうは、火の話全体を読んで、大事なことのあら
 ましをまとめました。黙読してください。
  (前時に、全文を直観的に読んでまとめた、つぎのカ
 ードを掲示しておく。)

(

D 


)
火を使うようになってから、人間らしい生活が始まった。 

人間は、さまざまに火を役だてて栄えてきた。 
火は大事だから、正しく使わなければならない。

火を作りだしてから、人間の生活は進歩した。
わたしたちは、火を正しく使わなければならない。

T きょうは、さらに詳しく知るために、段落ごとに読
 んでいきましょう。初めの大段落は、どこからどこま
 でですか。
C 最初から、「始めることになったのです。」までの三
 つの段階です。
A 学習課題を設定する
T そこのところを詳しく勉強します。どんな課題で読
 んだらいいか、その大段落を読んで考えてください。
C 第一段落が課題だから、それを課題とします。
C 火を使うようになってから、人のくらしはどう変わ
 ってきたか。
T そうです。第一段落が課題の段落になっていますね。



 
火を使うようになってから、人のくらしはどう変
わったか。
 (児童が学習課題を考えることは、学習目標の自覚に

100
   <本時の学習指導過程>

指導 学           習  評価・作業・その他  







 



 







調








調




 
   
                     

  101
 なり、主体的学習をするかまえもできる。)
B 学習方法を考える
T この課題で勉強しますが、どのように読んだらいい
 ですか。
C 読んで、大事なところに線をひいて、それを短くま
 とめて書きます。いらないことは消します。
C 接続語に気をつけて読みます。
C 課題をよく読んでから考えて読みます。
C どういうことからどうなったかに気をつけて読む。
T   大事なところに線をひく
   いらないことばはけずる 
   接続語に気をつける   
   どうなったから、どうなったかを考えて読む
(児童に学習課題から学習方法を考えさせると、いま
 までの学習で使ってきた学習方法を思い出し、さらに
 新しい学習方法も考えだすようになる。)
T それでは、学習シートに課題を書きいれましょう。

C 筋道をたてて内容を正確に読みとる(自己学習)
T (課題をさして)この課題を(方法をさして)この方
 法でよく読んで、学習シートに書いてください。
C 各自読みとったことを学習シートに書く。
T (机間巡視しながら)
 O二段落は、要点がなくて例だけ書いてあると気づい
  た人がいます。いいですよ。課題と方法を合わせて
  読みとってください。
 Oなるべく短く大事なことだけを書くのですよ。
 O終わった人は、課題によくあっているか確かめてく
  ださい。
 ○座席表にまとめた診断テストの結果をみては、個別
  指導をする。
 O全員が学習を終わるまで指導する。

102
D 話し合って学習を深める(共同学習)
T 全員終わりましたね。これから、みんなで勉強した
 ことをもとに話し合っていきましょう。

T Aさんのを映しました。調べてみましょう。例がい
 くつ書けていますか。
C 三つです。
T 順番はいいですね。なぜ正しく書けたのですか。
C 接続語に気をつけて読んだからです。
T どんな接続語ですか。印をつけてごらんなさい。
C まず、次に、それからです。
 <板書>  まず――次に――それから
T いいですね。ここまでで意見のある人?
C 「火」がぬけています。
C 照らし出されてでは、何だかわからないから、火に
 照らし出されてとします。
T 真っ暗になっていたすみかが、ほのおで明るくなっ
 た そのために けものたちも近づかなくなった。と
 ありますが、そのために というのは、どういうこと
 ですか。
C 「真っ暗だったすみかが明るくなった。」ということ
 です。



 
T そのあと、「けものたちが近づけなくなった。」でい
 いですか。
C そうではなくて、「安心して眠ることができるよう
 になった。」の方がいいです。
T どっちが大事ですか。
C 課題が、人の生活はどう変わったかというのですか

103
ら、「けものが近づけなくなった。」より、「安心して
眠ることができるようになった。」の方がいいと思い
ます。
 <板書> すみかが明るくなる。安心して眠れる。
T 二ばんめはどうか読んでみましょう。
C 各自読む。(火をたくと、うちの中が温かくなって、
 寒さにもこごえなくなった。)
T 「火をたく」というのは、どういうことですか。
C 「火をもす」ことです。
 <板書> 火をたく――(火をもす)
T 「こごえない。」というのはどういう意味ですか。
C ふるえなくてすむということ。
C 寒さで死ななくていいということです。
 <板書> こごえない――(寒さで死ぬ)
T そうすると、こうなりますね。
<板書> うちの中が温かくなった寒さにこごえない
T それでは、三ばんめをみましょう。読んでください。
C 黙読する。(物を焼いて食べることができるように
 なった。今まで食べられなかったものも食べられるよ
 うになった。)
T これは、どうまとめましたか。
C 物を焼いて食べるようになったから、今まで食べら
 れなかった物も食べられるようになった。
 <板書> 物を焼いて食べるようになった
      
T これでいいですね。これで例は全部調べました。そ
 れで、これらの例をまとめているのは、どれですか。
C 第三段落です。
C 第三段落の「火を使うようになってから、人は、人
 間らしい生活を始めることになったのです。」
T それを短くまとめると?
C 火を使うようになって、人間らしい生活が始まった
 ということです。こういうふうに変わったのです。
T そうすると、課題の答えは、
 <板書> 火を使うようになった――人間らしい生活

  104
 が始まったということですね。さあ、できましたか。
 これで課題の勉強は全部できました。
 (語句の意味・用法なども指導しながら、内容を深め
 ていく。)
E 評価基準を設定する
T それでは、自分のはできているかどうか調べてみま
 しょう。まず、今まで話し合ったことをもとにして、
 どう書けていればいいかを考えてみましょう。
 (これまでの学習をふりかえりながら、次のようにま
 とめる。)

T みんなの課題は、「火を使うようになってから、人
 のくらしはどう変わったか」というのでしたね。その 
   課題を考えてみると、三つの例と、その例から、この
 ように変わったというまとめがあることがわかりまし
 た。ですから(赤カードをさして)このように読みと
 ればいいんですね。
  それでは、みんな自分のを読んで調べてみましょう。
 ア 三つ全部読みとれて、どうなったからどうなった
  と書けているのは○。
 イ 三つ書けているけれど、続いていないのは△。
 ウ くわしすぎたり、大事なことがぬけているのは×。
  この三つの印をつけます。
F 評価基準に照らして自己評価する
T やり方はわかりましたね。それでは、自分でこの四
 つのことを考えて、○△×の印をつけてください。
C 各自、自己評価する。
 八評価の結果▽ ○……八名  △……十二名
         ×……十七名
B 評価の結果に基づいて自己調節する
T 全部できた人(児童挙手)は、これをやりましょう。 

  105
   (新しい課題を渡す。)…八名

T 続いていなかった人(児童挙手)は、これで読み直
 して書きなさい。(調節条件)…十二名

T 読みとっているけれど、詳しい人(挙手)は、これ
 で読み直しなさい。…九名

T 読みとったことがたりない人(挙手)は、これをや
 りなさい。よく本を読んで。…六名

T あとの人は、これで勉強しましょう。…二名
 
   
 (学習調節は個別に考えねばならない。しかし、学習
 時間を考えて、診断的評価の結果からいくつかのパタ
 ーンにわけられたので、あらかじめ調節条件を示すカ
 ードを作成しておいた。)
B 調節の結果を確認する
T 全部直せましたか。
  (OHPで投映した修正の例について話し合う。)
T このように直せましたね。(以下、各自修正したも
 のを確認させる。完全にできたものを調べる。)
 <調節の結果> ○…三十二名(八六%) ○八名
  △十二名がO十一名へ、×十七名が○十三名へ
I 段落相互の関係を考える
T それでは、この大段落の中の小段落の関係を、いつ
 ものように線でつないでください。

  106
    <学習シート>
T (できたのをOHPで投映)よくできました。
 <評価の結果> ○…二十二名
 <調節の結果> ○…三十七名(百%)
T それでは、全文を読んで終わります。 
                   <斎藤洋子>


  2 要旨を読みとる授業

 (1) 単元「説明文を読む」  教材「またとない天敵に」(光村六年上)
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 この教材は、ヒキガエルが、非常に素速い動作で。農作物や家畜に害を与える生物を――しかも生きている生物だ
けを食べ、人間にとって利用価値の高い「またとない天敵」であることを言おうとしている。この教材から、自然の
生態系に対する不思議さに感動させたり、自然を大切にしていこうとする気持ちを持たせたりしたい。
 そのため、本単元では、筆者の言おうとしていることを確実に理解させたい。しかも、抽象的に要旨をとらえるだ
けでなく、具体的に深く理解させたい。要旨を支えている各段落にある「筆者の意見」と「論証するためにあげた事
実」を区別しながら、要旨と関係づけて理解させていきたい。
                                                        107
                                                       〜108
A 児童の実態
 要旨のとらえ方を診断的に評価してみる。(「動物の能力」《東書五下》を利用)本文を要約しようとした者五%
(要約をとらえる技能を理解していない)、本文の内容に自分の考えをふくめて要旨をまげて理解した者一二%(筆
者の論理にしたがって読みとれない)、要旨ではない部分、具体的事実をとらえた者一五%(筆者の意見・感想・
事実の読み分けができない)。残り六八%の中にも、要旨の部分をそっくりに写した者、語句を適切に変化できなか
った者などが見られた。多くの児童は、本質直観的に読んで要旨を押さえられるが、総合的に要旨を読む学習体験が
少ないので、抽象的な要旨を具体的な要旨に組み立て直すことが難しいものと考えられる。これを指導上のポイント
としたい。
B 指導上の留意点
 事実と意見を区別して読み、各段落ごとの事実に対する筆者の判断(意見)が、どのように要旨に結びついていく
かを指導の中心として、総合的な要旨の読み取りを学習させたい。のような児童には、「要旨」とは何かを明らか
にしたい。さらに能力に応じてシートを工夫したり、適切な助言をしたりしたい。
 (3) 単元のシステム(△態度 ○技能 ・言語事項)(五時間扱い)

学 習 目 標 学   習   内   容 資 料 学 習 活 勁 学 習 評 価 
「またとない天敵」
の要旨を、次のよう
に確実に理解して、
自然の仕組みの不思
議さに感動し、自然
愛護の心に培うこと
ができる。
 「ヒキガエルはさ
まざまな害虫に対す
るまたとない天敵で
人間に幸福をもたら
す動物である。」
△すじ道を立てて読もうとすること
△科学的なものの見方、考え方を知
 ろうとすること
○要旨を確実に理解すること 
○事実と感動・意見を判別しながら読
 むこと
○筆者のものの見方・感じ方などにつ
 いて自分の考え方をはっきりさせて
 読むこと
・文章の構成について理解を深めるこ
 と
・文章の中で、語句相互の照応関係に
 注意して読むこと
・理解するために必要な語句の量を増
 し、その範囲を広げること
・新出漢字、読み替え漢字を読み書き
 すること
教 材
「また
とない
天敵」

学習シ
ート

カード
1 全文を直観的に読んで要
 旨をつかむ  (一時間)
2 全文を分析的に読んで要
 旨を磑実に理解するために
 事実と意見とを判別しなが
 ら筋道を立てて読む
        (三時間)
3 全文を体制的に読んでヒ
 キガエルに対する筆者の考
 えを確実に理解しそれに対
 する感想を加えてまとめる
         (本時)
○文章の要旨が直観的に
 押さえられたか
○事実と意見とを判別し
 ながら読めたか
○要旨が確実に理解でき
 たか

○要旨に対する自分の考
 えをまとめることがで
 きたか
 

 (4) 本時の学習指導システム(5/5 体制読み)

@ 学習単位 「またとない天敵」(全文)
 右に、この教材の構成を簡単に表した。九段落
で組み立てられている、双括型の文章である。
 第一段落では話題を提示している。これから説
明することの概要を、簡潔に、抽象的に述べてい
る。第二段落では、課題を提示し、それを観察し 
 

 109
ようとした方法が第三・四段落である。
 第四段落でいう「早わざのひみつ」「その謎」
を、第五段落では、「武器は舌である」と解き、
第六段落では「すばらしい射手である」と解いて
いる。この二つの段落は、課題の解説をするとと
もに、ヒキガエルの能力をくわしく説明している。
 第七、八段落では、ヒキガエルの利用例をあげ、
ヒキガエルが人間に幸福をもたらす動物であるわ
けを説明している。
 第九段落は、結論であり、要旨が示めされてい
る。
 要旨の「さまざまな害虫に対するまたとない天
敵」であるわけは、第五・六段落にヒキガエルの
能力として書かれている。また、「人間に幸福を
もたらす動物」であるわけは、第七・八段落に、
ヒキガエルの利用として書かれている。これらの
組み立てを理解することが、直観的にとらえた抽
象的な要旨を具体的に理解することである。これ   
     

                                                        110
が、本時の学習の中心である。だから。次のように学習目標を設定する。
A 学習目標
 全文を体制的に読んで要旨をささえている次の具体的な事実と意見とを組み立てて、要旨をいっそう確実に理解し、
感想を交えて三百字程度の文章に書くことができる。
<意 見>
 ○ヒキガエルの武器は舌である。
 ○ヒキガエルはすばらしい射手である。
 ○ヒキガエルは害虫に対するまたとない天敵で、人間に幸福をもたらす動物である。
<事 実>
 ○ヒキガエルの舌は十センチ離れた所にあるえものを十五分の一秒でとることができる。
 ○えものが舌の届くきょりに入るとすばやく動く動物でも一ぱつで仕留める。
 ○ヒキガエルの働きを世界の国々で利用している。
 ○果樹や野菜の害虫退治、コガネムシの幼虫退治など大活やくをしている。
B 学習内容
 △要旨に関係のある事項を押さえて文章を読もうとすること
 O要旨をささえる事実や意見と要旨に係わりのない事柄とを判別しながら読むこと
 O要旨をいっそう確実に理解すること
 O要旨に対して感想を持つこと
C 学習指導過程(次ページ)
 (5) 授業の実際
                                                        111

@ 前時までの学習との関係
 教室の前面に、これまで学習してまとめた事実と意見
が掲示してある。(内容は前ページの構成とほぼ同じ)
児童の机上には、事実と意見を書き分けた二色のカード
がある。
T 最初に「またとない天敵」の要旨を読みとりました。
 それから、事実と意見を読み分けて、文章のすじ道を
 たどって読んできました。みなさんは、もう要旨が言
 えますね。
C ヒキガエルは、害虫に対するまたとない天敵であっ
 て、人間に幸福をもたらす動物です。これが要旨です。
A 学習課題の設定
T そうですね。でも、もし他の人が聞いたら何のこと
 か分かりますか。それだけを覚えていても、あとになっ
 たら何のことか自分でも分からなくなりそうですね。
 今日は、文章を読んでいない人にも、要旨がよく分か
 るように説明できるように勉強をしましょう。 
 
 (体制化の課題設定では、特に児童にその学習の必要
 性を感じさせることが大切である。ここでも、実際に
 要旨を説明させてみたり、事実と意見と要旨の全体の
 関係を問いかけたりして課題に導いた。)
B 学習方法を考える
T すぐに書き始められるかな。書く前にすることは?
C カードを選ぶ。例えば、「人間に幸福をもたらすの
 が書いてあるのは、どの事実かな?」と選ぶ。
C 選んだら、例えば、ヒキガエルの害虫の退治の仕方
 の事実と意見を、作文のアウトラインのように組み立
 てて書くと良い。

 (方法過程が形式的に流されると、学習しにくい。特 

  112

   <学習指導過程>
過程  指 導  学           習  作業・評価基準 



目標



方法



学習







評価
調節

達成
 
  




 
・次のような組み立てか。
 要旨←ヒキガエルの能力
    ヒキガエルの利用
・組み立てに基づく筋道の立
 った文章か。(約300字)
・感想を加えてあるか。 
調


件 
@ 天敵である訳は? 幸福をもたら
 す訳は? その事実をさがす。
B 要旨のどこを具体化するか。
B 要旨と事実・意見の関係を明確に。
 

  113
 に「要旨を支える」ということを具体的に示す必要が
 あったので、「例えば…」と言わせ方法をまとめた。
 「要旨を支える」とは、具体的な事実・意見が、抽象
 的な要旨に対して持つ働きを示すために用意した言葉
 である。)
C 要旨を支えている事実・意見を選び組み立てる
T それでは、みなさんが持っているカードと文章を
 比べながら読んで、カードの内容を確かめてから選ん
 で組み立てましょう。
C 各自、カードと全文を黙読し、台紙にカードを組み
 立てる。
 (児童の作業を観察する。初めは学習課題や学習方法
 の確認などをしていたが、三分以内には全員集中して
 取り組んだ。次に、カードが偏っている者、多すぎる
 者を観察し、「要旨を支えるということ」「要旨を中心
 に組み立てること」などを助言した。さらに、診断的
 評価から、また前時までの学習の様子からみて、学習
 が困難であると予想された五名に、次のシートを見な 
 がら、カードを選ぶように助言し、シートを渡す。)
 
D 組み立てをもとに文章を書く
C 各自、組み立てをもとに感想をふくめて文章を書く。
  (上のシートで学習している者の中の三名は、特にシ
 ートの中に直接記入させて学習を達成させようと考え
 た。能力の不足をこんな形で補った。)
E 学習結果を話し合い要旨を深く理解する
T それでは、菅野君のを調べてみましょう。(OHP)

  114

C 五、六段落は、ヒキガエルが害虫の天敵であること
 に関係するので選びます。(教師がTPにサイドライ
 ン)
C ヒキガエルがどのように生きものをとるかというこ
 とが書いてあるので要旨に関係があります。
C 七、八段落には、ヒキガエルが利用されていること
 が書いてあるので、幸福をもたらすということと関係
 があるので選びます。(教師がTPにサイドライン)
C 人間に幸福をもたらすということは、人間に役に立
 つということで、七、八段落は要旨に関係があります。
T これはどうですか。組み立てが全くちがいますが。
                       図−2
 

  115
C 組み立てはちがっても、要旨と関係する事実と意見
 を選んでいるから良い。
T では、要旨とどう関係があるのか、線で表せますか。
C (図中の実線の部分を書く)
T どのような文章が書けたかみてみましょう。
 
 (児童から次のようなことが出された。アEに接続語
を入れる。イGとEで改行する。ウEを句点にする。
エBまでに要点を入れる。オGに感想を加える。力要
旨がよくわかる組み立ての文章である。これをもとに、
 組み立てにもとづいて、筋道の立つ文章を書くことを
 確認する。また、このようなヒキガエルの働きをどう
 思うか、「またとない」の意味は?など感想を持つ指
 導をする。)
F 評価の基準を決める
T それでは、学習課題にもどって、どのように書けれ
 ばよいのかまとめてみましょう。(児童と話し合いを
 ふりかえりながら次のように設定する)

 (組み立てにおいて、要旨の位置が前でも中でも良い。
また、筋道の通った文章については、話し合いの中で
明らかにしておく。文章は上手でなくとも体制化され
ていればよい。この評価基準をよく理解させることが 

116
 必要である。)
B 基準に照らして自己評価する
T 今まで勉強してわかったことをよく考えて、自分の
 書いたものができているか考えてみましょう。
C 各自、評価基準に照らして、どこをどう誤ったか明
 らかにする。ヒキガエルの能力について書いた部分、
 利用について書いた部分を線で囲むなどの作業を加え
 て評価する。(図−12の点線)
T ヒキガエルの能力がおさえられた者……C 六四%
  ヒキガエルの利用がおさえられた者……C 八七%
  余分なものを書いてしまった者  ……C 一六%
  感想が加えられた者       ……C 四〇%
  文章に手直しが必要な者     ……C 八〇%
 (余分に書いたものは、四段落の事実を書いた者がす
 べてである。各自に、自分の学習の結果の適否の実態
 を自覚させ、調節意欲を持たせる。)
H 調節条件を設定する
T 自分の誤っているところ、余分なところ、書き足り 
 ないところなどがはっきりしましたね。よく考えなが
 ら文章を読んで書き直しましょう。
  学習調節の仕方
 ア 意見と事実がおさえられなかった者
  ○書き手はどういう事実から(害虫の天敵だ)とか
   (人間に幸福をもたらす)と言おうとしているか。
 イ 余分なものを書いた者
  ○要旨を具体的にしなくてはならないのはどこか。
   必要なところだけをかんたんに書く。
 ウ 感想がない、すじが通っていない者
  ○自分の組み立てた事実と要旨の関係がわかるよう
   に書く。○ヒキガエルの働きについて感じたこと
   や動物と人間の関係について感じたことを書く。
I 調節学習をする
C 各自、自分の評価の結果を調節するのに適切な調節
 条件に従って学習し直し修正する。(学習に成功して
 いる者は、全文を読み返し、自分の文章の内容を確か
 めさせる。) 

117
H 学習目標に到達する
T それでは、学習課題に答えられたか調べてみましよ
  う。

 (図−2の児童の作文、題は「役に立つヒキガエル 
 十分体制化された例、約四百字、トラペンアップで)
T (OHPに投映したものについて、評価基準に照ら
 して、正しく学習されたことを確認して)今度は、同
 じように自分のものを確かめてください。
C 各自確かめる。
T みんなよくできたようですね。みんながどんな感想
 を持つたか発表してください。
C 私は人にきらわれている動物が人の役に立つなんて
 ひにくだなと思った。
C ヒキガエルの能力は人間の役に立つと気付くまで
 は、誰にも知られずにいたのがもったいない。それな
 のに俗説では悪者にされているのがかわいそう。
C わたしたちの身近かにいる、気持ち悪がっている動
 物の中にどんな能力がかくされているかわからない。
C 私はヒキガエルのことを俗説と同じように考えてい
 た。でも、この勉強で、自然の中にいる動物はいろい
 ろな働きをしているのだなと思った。
T そうですね。私たちはもっと自然を理解し、これか 

  118
らも、もっと自然を大切にしていかなければなりませ
んね。今日の学習で筆者の言いたいことがよりはっき
りとわかりましたね。「またとない天敵」をおわりま
す。
(この学習をした結果三名の者が調節できずに終わっ
た。一人は、理解力の高い児童だが学習方法を取りち
がえ自分の感想を中心に組み立ててしまい、調節した
が及ばなかった。二人は、ヒキガエルの能力の事実を
二段落めからとったり、不足していたりした。他の九
○%の児童は学習に成功した。) 
  ┌―ヒキガエルの能力 (組み立て方はIの型が三
I ↓―ヒキガエルの利用 ○%、Uの型は五三%、V
  要旨         の型が六%、Wの型が六%
  要旨         となった。VWの型は自分
U ↑―ヒキガエルの能力 なりによく考えて再構成し
  └―ヒキガエルの利用 ている。たいへん技能の高
  要旨         い児童である。Uの型が最
V ↑―ヒキガエルの利用 も多く、これも、再構成し
  └―ヒキガエルの能力 ているのがよくわかる。I
  ┌―ヒキガエルの能力 の型にはシートで学習した
  ↓          者もふくまれている。)
  要旨               <青木 勉>
W ↑
  └―ヒキガエルの利用 

                                                        119
     二 文学の読解完全習得学習はこのようにすすめる

  1 場面の様子や登場人物の気持ちを読みとる授業

 (1) 単元名「どうわ」 教材「海をあげるよ」(光村二年上)
 二年生の児童は、読む力が伸び、童話や物語を好むようになる。しかし、大部分の児童は、叙述から離れてしまっ
たり、経験的に読んだり、夢の世界に遊んでしまったりする傾向が強い。いわば個人的な狭い読みに終わってしまう
のである。
 ここで取り上げた、場面の様子や人物の気持ちを想像しながら読む学習は、文脈に即して、児童が豊かなイメージ
を描くための方法を身に付けさせることである。そのために、本時では、「頭の中に、へびにおそわれてにげるかえ
るの様子を思い浮かべて読む」「かたずをのんで見ているわたるになったつもりで読む」などの学習技術を使い、想
像力をふくらませたい。また、児童ひとりひとりが描いた想像が適切であるかどうかを話し合い、自己評価の手がか
りとさせる。さらに、評価の結果、不適切な場合は、学習のやり直しをさせ、全員が本時の学習目標に到達できるよ
うにする。
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 この教材は、二年生の児童にとって、自分の幼い日を思い出させてくれる童話である。ストーリーの面からは、共
                                                        120
感や驚きや楽しさを十分味わわせることができるであろう。したがって、児童の人間性に訴え、心情を豊かに育てる
機能をもっている。また、この内容的価値を効率的に学習させるためには、場面の様子や人物の気持ちを想像しなが
ら読む技能が十分働かなくてはならない。
A 児童の実態
 この教材で開発される主な技能についての児童の実態を診断テストによって調べてみた。(調査人員三八名)

ア 場面の様子を想像する技能について ― 短い場面を読ませ、場面の様子を想像させるテスト
 ○適切な場面の様子を描いていると思われるもの…三四%(一三名)
 ○部分的に場面の様子を描いていると思われるもの…三二%(一二名)
 ○勝手な想像をしたり、場面の様子を描けなかったと思われるもの…三四%(一三名) 
イ 人物の気持ちを想像する技能について ― 場面の様子を描き、人物の気持ちを想像しているかを調べるテスト
 ○場面をおさえて心情を想像しているもの…五三%(二〇名)
 ○場面全体をおさえられないで、心情の想像が不完全なもの…二六%(一〇名)
 ○場面がまったくおさえられず、心情の想像が不適切なもの…二一%(八名) 

 以上の診断テストの結果から、二年生の文学作品を読ませる学習の中で身に付けさせるべき、アとイの技能が不十
分であることが分かった。
B 指導上の留意点
 本教材は、現実 ― 非現実 ― 現実という構成と、バスタオルが中心になって、主人公の気持ちが変わっていく物
語の展開が特質といえよう。二年生の児童にとっては、楽しく読みすすめることができ、自然に主人公に同化したり
共感したりすると思われる。その読みの学習をすすめる中で、この作品の内容的価値と基本的技能や態度を身に付け
                                                        121
させることを具体的に考えなければならない
 (3) 単元のシステム(総時数十二時間)

学 習 目 標 学習内容(△態度○技能・言語事項) 資 料 学 習 方 法 学 習 評 価
「海をあげるよ」の
話の場面の様子や登
場人物の気持ちを想
像しながら読んで、
かけがえのないバス
タオルをかえるたち
にあげるわたるの行
動に共感し、さらに
他の童話を楽しんで
読もうとする意欲を
持つことができる。 
△童話を楽しんで読もうとすること
△話の筋をたどりながら読もうとする
 こと
○文章のおもしろいところを読み取る
 こと
○粗筋を読み取ること
○場面の様子や登場人物の気持ちを想
 像しながら読むこと
○場面の様子や気持ちを想像しながら
 音読すること
・読むために必要な語句を増すこと
・新出漢字や読み替え漢字を読み書き
 すること 
教材
「海を
あげる
よ」

学習シ
ート

TP

場面の
絵(教 
師作成
1 全文を直観的に読んで、
 おもしろいところや粗筋を
 つかむ    (二時間)
2 粗筋に従って場面の様子
 や気持ちを想像しながら分
 析的に読む  (八時間)
3 童話のおもしろさを味わ
 いながら体制的に読む
        (一時間)
4 おもしろい童話を楽しん
 で読む    (一時間) 
○おもしろいところを読
 み取って話したり書い
 たりすることができた
 か
○粗筋を読み取って話し
 たり書いたりすること
 ができたか
○場面の様子や登場人物
 の気持ちを想像しなが
 ら読むことができたか
○場面の様子や気持ちを
 想像しながら音読する
 ことができたか
○新出漢字や読み替え漢
 字を読んだり書いたり
 することができたか 

                                                        122
 (4) 本時の学習指導のシステム(7/12時)
@ 学習単位(「海をあげるよ」の第四場面、本時はその前半にあたる。)

 「うふふ。」わたるくんは、思わずわらいだしました。
 そのときです。三かくあたまのながいへびが赤いしたを出しながら、海にちかづいてきたのです。
 「あぶない、にげろ。」わたるくんはさけびました。
 二ひきのかえるは、いそいでとびこみ、タオルの下にかくれました。へびは、ゆっくりタオルのそばをよこぎって、森のお
くへきえていきました。
 「ああ、よかった。」わたるくんは、おかあさんの手をにぎりしめました。
 「どうする。あのバスタオル、もってかえる。」おかあさんが、わたるくんのかおをのぞきこみました。
 「いいよ。あの海、夜までかえるくんにかしてあげる。」わたるくんは、そういって、そっと森からはなれました。 

A 本時の学習目標(行動的目標)
 わたるのバスタオルが、へびにおそわれたかえるを救った場面で、
 ア かえるをおそうへびのおそろしい様子やわたるの気持ちを想像しながら読んで、次の条件を含めて話したり書
  いたりすることができる。
  ・おそろしいへびだ、早くかえるをにがさないとのまれてしまうという気持ち
 イ かえるがへびから助かったときのわたるの気持ちを想像しながら読んで、次の条件を含めて話したり書いたり
  することができる。
  ・かえるが、自分のタオルで助かって安心した気持ち
  ・かえるが、タオルの下ににげて本当によかったという気持ち
                                                        123
B 学習内容(△態度 ○技能 ・言語事項)
 △わたるやかえるたちはどうするだろうと、期待をもって読もうとすること
 ○場面の様子を想像しながら読むこと
 ○登場人物の気持ちを想像しながら読むこと
 ○場面の様子や気持ちを想像しながら音読すること
 ・次の語句の意味を文脈に即して理解すること
    ・思わず……  ・そのときです  ・三かくあたまのへび  ……しながら……する  ・よこぎる
    ・きえていく  ・にぎりしめる
C 本時の学習指導過程(次ページ)
 (5) 授業の実際

@ 前時との関連と学習課題の設定
T この前勉強したのは、どんな場面でしたか。絵を見
 て思い出してごらんなさい。(粗筋を学習したときの
 教師作成の絵を教室に掲示しておく。)
C 三番目の絵です。(多数)
T お話のあらすじから言ってください。
C かえるがつりをしていた場面です。
C すもうをとったりしていた場面です。 
C 歌を歌ったりした場面です。
C かえるおよぎをした場面です。
T 楽しい歌がありましたね。だれか歌ってみてくださ
 い。
C つりたいな、つりたいな。大きな魚つりたいな。船
 よりでっかい、海よりでっかい、大きな魚、ケロッ、
 ケロッ、ケロッ。(リズミカルに歌うように読むので、
 全員に拍手される。) 

124
      <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  



目標


方法


学習










評価
調節










獲得
   

  125
T あれ、すごいですね。覚えちゃったのですね。
T みんなで、もう一回歌ってみようか。
C やりたい、やりたい。(多数)
C (全員で、大合唱になる。)
T とっても楽しそうでしたね。さあ、このあと、どん
 な課題で勉強していけばいいですか。
C わたるくんはどうするでしょう。
T わたるだけでいいかな。
C かえるはどうするでしょう。
T では、「わたるやかえるはどうするでしょう」とい
 う課題で勉強しましょう。(カードで掲示)
A 学習方法を考え、学習範囲を確認する
T 勉強のやり方はどうすればいいでしょう。
C 本を読んで、学習シートに書いていきます。
C わたるくんの気持ちや、ようすを想像しながら読ん
 でいきます。
T そうですね。わたるくんの気持ちになれるといいの
 ですね。どんな場面か、頭のテレビに写してみるとい
 いですね。
T では、どこまで読めばいいですか。
C 八二ページの七行目までです。
B 直観的に読んで、学習単位の粗筋をつかむ
T わたるくんが森からはなれたところまでですね。そ
 こまでを、自分で読んでみましょう。(微音読)
T 読み終わりましたね。わたるやかえるはどうするで
 しょう。(課題カードを指しながら)
C かえるたちがあそんでいるのを見て、わたるがわら
 った。(カードで掲示)
T そうでしたね。わたるくんは、どんなふうにわらっ
 たのですか。
C うふふ。
T そう。では、Aくんわらってみて。Bさんもわらっ
 てみて。じょうずですね。わたるくんの気持ちが出て
 いますね。
T ところで、わたるくん、今。どんな気持ちですか。
C かえるくんたち、楽しそうだなあ。

126
C おもしろそうだな。ぼくもやってみたいなという気
 持ち。
T みんなも、わたるくんになって、わらってみましよ
  う。
C うふふ。(各自楽しそうに笑う。)
T わたるくんは、思わずわらったのですね。
  (「思わず」を板書)
 (その後、かえるがへびにおそわれたが、わたるがた
 すけた。」「わたるがバスタオルをかえるにかしてあげ
 て、かえった。」の粗筋を発表させ、カードによって
 掲示する。)
C 分析的に読む。学習シートで自己学習をする
T さあ、楽しくあそんでいたかえるたち、それを見て
 思わずわらってしまったわたるくん、ところが、きゅ
 うにどんなことがおこったのですか。
C へびが出てきました。
C かえるを食べようとしました。
T わたるくんはどうしましたか。 
C 「あぶない、にげろ。」とさけびました。
T だから、わたるくんは、どんなことを思って、「あ
 ぶない、にげろ。」と言ったのでしょう。へびの様子
 を想像しながら読んで、わたるくんのことばで書いて
 ごらんなさい。(リード(1))
T そして、かえるは、ぶじに助かったのですね。その
 とき、わたるくんは何と言いましたか。
C 「ああ、よかった。」と言いました。
T わたるくんは、どんなことを心の中で思いながら、
 「ああ、よかった。」と言ったのでしょう。そのときの
 様子をよく想像しながら読んで、わたるくんのことば
 で書きましょう。(リード(2))
 (シートのリード文を確かめ、本文を読みながら、自
 己学習に入る。約五分で全員書き終わる。)
D 自己学習によって書いたことを基に共同学習し評価
 基準を設定する。描いた場面表象や心情表象について
 話し合う。
T K君のシートをOHPで見てごらん。 

127
 (トラペンアップによって、TPにとる。)
   へびが、かえるにたべられちゃう。かえる、はやくに
  げろ。(児童TP) 
T わたるくんが、こういうことを思いながら、「あぶ
 ない、にげろ。」と言ったのだと同じように想像した
 人は手を挙げてごらんなさい。
C (挙手 一三名) 
T ずいぶんいますね。では、このシートのK君、どこ
 の場面のどんな様子を読んで、こう思ったのですか。
C そのときです。三かくあたまのながいへびが赤いし
 たを出しながら、海にちかづいてきたのです。
T なるほど。みんなでそこを読んでみましょう。
C (一斉に音読)
T どんなへびだったのですか。 
   <学習シート>
(1) へびが海にちかづいてきたとき、わたるくんは、どんなこ
 とを思って、「あぶない、にげろ。」とさけんだのでしょう。
  わたるくんのことばで書きましょう。


(2) へびがきえていったあと、わたるくんは、どんなことを思
 って、「ああ、よかった。」と、おかあさんの手をにぎりしめ
 たのでしょう。わたるくんのことばで書きましょう。


 

  128
C 三かくあたまのながいへび。
T まるいのではなくて三かくのあたまだね。ながいへ
 びだね。どうやって近づいてきたのですか。
C 赤いしたを出しながら近づいてきた。
T そうですね。赤いしたを出しながら近づいてきたの
 ですね。ぺロぺロしたを出しながら、スルスルと近づ
 いてきたへびの様子を、目をつぶって思いうかべてご
 らんなさい。
 (「……ながら……する」のカードを掲示)
T どんな気持ちですか。
C こわい。かえるがのまれそう。
T さあ、K君や、ほかの人が書いていたことは、わた
 るくんの気持ちになっていることかな。
C わたるくんの気持ちになっています。
T だから、わたるくんの気持ちでは、こういうことが
 入っていないといけないね。(評価基準の設定)
  たべられてしまう こわいな こわされてしまう
 (カード掲示) 
T では、このシートはどうですか。
  あぶない、海ににげろ、へびがいるぞ(TP)
C わたるは、海ににげろなんて今思っていないし、わ
 たるの気持ちと少しちがう。
T では、K君のように、わたるの気持ちが書けた人は
 ○印を、ちがうように書いた人は□印をつけましょう
T それから、もう一つこのようなシートはどうですか。
  そのときです。三かくあたまのながいへびが赤いしたを
  出しながら、海に近づいてきたのです。(TP) 
T あれ。Sさん自分で気がついたのですか。えらいで
 すね。
C (S子)私は、わたるくんのことばになっていませ
 んでした。
○ 評価の基準を理解して自己評価する。
T では、自分のシートをよく読んで手をあげてくださ
 い。まず、○印の人は(一七名)、口の人は(八名)。
 それから、課題に合ってなかったSさんのような人は
 △印ですね。(一名) 

  129
F 評価の結果に基づいて調節する。
T O印の人は、もう一度本を読んで、わたるくんの顔
 の絵を、目や口をつけて、完成させてください。
  □印の人は、このように、「へびが海に近づいてき
 たときの様子を思いうかべながら読んで」書き直して
 ください。(「  」のカードを掲示)
  △の人はSさん一人でしたが、わたるくんのことば
 になるように、もう一度本を読んで書き直してごらん
 なさい。
C (調節条件に従って調節読みをして書き直す。)
T それでは、みんながうまく書き直せたようですから、
 Y君のシートをみんなで見てみましょう。 
T Y君に自分で読んでもらいましょう。
C (Y)
T どうですか。Y君の直し方は。(Cから拍手)
この後、以上のような学習方法によって、リード(2)の「へ
びがきえていったあとのわたるの心情について」想像さ
せた。
G へびの様子やわたるの心情を想像しながら、体制的
 に本文を読む。
T へびの様子やわたるくんの気持ちを考えながら読ん
 でみましょう。(指名音読)
D 学習目標に到達する。 

 (6) 授業の考察
 この授業を通して明らかになった点をまとめておく。
 第一に、文学教材の読みが、とかくムード的に流れ、表面的な学習に終わりがちであることを改めることができた。
 第二に、場面の様子を十分想像させることによって登場人物の心情や言葉や行動が想像され、理解されるものであ
ることが明確になった。つまり、場面の様子や情景のイメージを描かせることが真の心情の想像の原点になるという
ことである。
                                                        130
 最後にこの授業によって、児童は、文学教材を読む方法を身に付け、積極的に書く活動を取り入れ、読み深める喜
びを感じていることを付記したい。                             <長谷川 清>




   2 感動の中心を一層深く読み味わう授業

 (1) 単元「人物の気持ちになって」 教材「ごんぎつね」(光村四年下)
 (2) 単元構成上の配慮
 教材「ごんぎつね」は、ごんと兵十が心の交流ができないままに兵十にうち殺されてしまうという、人間と動物の
心の通い合いを描いた物語である。巧みな文章表現を手がかりにして、情景や人物の気持ちを想像豊かに読み、登場
人物の気持ちや行動に同感・共鳴することによって心情を豊かにすることができる。
 本単元で学習する技能は、「物語の展開をたどり明確に感動の中心を読みとること」である。第一時の直観読みで
は、クライマックスをおさえ、一番感動したことはとらえることができるが、それは、表現を詳細におさえて感動し
たわけではない。そこでストーリーの展開をたどりながら、場面の情景や状況の中での人物の行動や気持ちを想像し
ながら読むことによって、感動の中心が更に明確になり、主題を読みとる足がかりになると考えて授業を構成した。
 児童の実態をとらえるために診断テストを行った結果、「@ 感動の中心をおさえる」では物語「レナド」の一部
を使用してテストをした。クライマックスをおさえることが出来たのは、四四%であり直観読みでの指導を的確にす
る必要があることがわかった。「A 場面の情景を想像して読み、場面全体からの情調を感じとる」では物語「かさ
                                                        131
こじぞう」の「町のにぎやかさと、くれの町のいそがしさ」を感じとれたものが、九一%あった。しかし、本単元で
は、場面や心情が語りつくされているので、その言葉の理解を通して場面表象を描き、心情はその前後の場面に着目
して想像させることが大切であるということがわかった。
 (3)単元のシステム

学 習 目 標 学習内容(△態度 ○技能 ・言語事項) 資 料 学習方法(学習活動) 学 習 評 価
 「ごんぎつね」のストーリー
の展開をたどりながら感動の中
心を読みとって次のように感動
することができる。
 ひとりぼっちのさびしさゆえ
にいたずらばかりしていたごん
が兵十と出会い人間的な同情や
愛情にめざめていく過程と、兵
十を思うごんの心が通じないま
まに兵十にうたれてしまう非情
さをかわいそうに思う。
 このような感動を通して心情
を豊かにすることができる。 
△感動的な物語を選んで読もうとすること
△物語の展開をたどり的確に感動の中心を
 読みとろうとすること
○感動の中心を読みとること
○場面の情景を想像しながら読むこと
○心情を想像しながら読むこと
○感動の中心に対して感想をもつこと
・文学作品を読むために必要な語句の量を
 増すこと
・場面の情景や人物の心情が巧みに描かれ
 ている所に気づくこと
・語感・言葉のつかい方に対する感覚等に
 ついて関心を持つこと
・新出漢字や読み替え漢字を読むこと 
 「ご
んぎつ
ね」


学習シ
ート




TP 
1 全文を直観的に読
 み感動の中心をおさ
 える  (二時間)
2 場面ごとを分析的
 に読み、場面の情景
 や人物の心情を想像
 する  (十時間)
3 全文を体制的に読
 んで感動を深める
     (一時間)
4 感動の中心に対す
 る感想をもち、感想
 文を書く
     (一時間) 
○直観的に感動
 の中心がおさ
 えられたか
○情景表象や心
 情表象が描け
 たか
○クライマック
 スに感動でき
 たか

○感動の中心に
 対して感想が
 もてたか 

                                                        132
 (4) 本時の学習指導のシステム(10/14)
@ 学習単位

(1) その明くる日も、ごんは、くりを持って、兵十の家へ出かけました。兵十は、物置でなわをなっていました。それで、ご
 んは、家のうら囗から、こっそり中へ入りました。
(2) そのとき兵十は、ふと顔を上げました。と、きつねが家の中へ入ったではありませんか。こないだ、うなぎをぬすみやが
 ったあのごんぎつねめが、またいたずらをしに来たな。
  「ようし。」
  兵十は立ち上って、なやにかけてある火なわじゅうを取って、火薬をつめました。そして、足音をしのぼせて近よって、
 今、戸口を出ようとするごんを、ドンとうちました。
(3) ごんは、バタリとたおれました。兵十はかけよってきました。家の中を見ると、土間にくりが固めて置いてあるのが、目
 に付きました。
  「おや。」
 と、兵十はびっくりして、ごんに目を落としました。
  「ごん、お前だったのか、いつもくりをくれたのは。」
  ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
  兵十は、火なわじゅうをバタリと取り落としました。青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。 

A 本時の学習目標(行動的目標)
 そのあくる日も、くりを持ってきたごんを、兵十がうってしまうクライマックスの場面の情景や兵十とごんの心情
を読み味わい、次の条件にしたがって話したり書いたりすることができる。
 (1) なわをなっている兵十に気づかれないように、そっと入るごんの様子と心情(こっそり気づかれないように)
                                                        133
  ・こっそり、気づかれないようにつぐなおう。
 (2) 「また、いたずらをしに来たな。」と思い、火なわじゅうでごんをうってしまう場面の情景と兵十の心情(殺意)
  ・あのにくいごんぎつねめ、こらしめてやる。「ようし」と立ち上って火なわじゅうでドンとうった。
 (3) たおれたごんにかけよる兵十は、土間のくりがごんのつぐないであることを知って、じゅうを取り落としてし
  まう場面の情景や兵十とごんの心情(しめしめ・半信半疑・後悔や無念・通じ合えたうれしさ)
  ・バタリとたおれたごん ・かけよった兵十は、くりが固めて置いてあるのが目に付いた。
  ・「お前だったのか、くりをくれたのは。」ごんはうなずいた。 ・兵十はバタリとじゅうを取り落とした。
B 本時の学習内容(△態度 O技能 ・言語事項)
 △クライマックスを読んで感動を深めようとすること
 ○場面の情景を想像しながら読むこと
 ○兵十やごんの心情を想像しながら読むこと
 ・次の語句の意味・用法を理解すること
 ・ぬすみやがったあのごんぎつねめ・火薬をつめた・足音をしのばせて・固めて置いてあった・目を落とした
 ・「お前だったのかくりをくれたのは」 ・目をつぶったままうなずいた
C 学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 授業の実際

@ 学習場面と直観読みの感動を再確認する
T 今日勉強する場面はどこですか。 
C 六の場面で兵十がごんをうってしまった場面です。
T みなさんが一番最初に読んだ時に感じたことを思い 

  134
      <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  



目標


方法


学習






評価
調節



評価
調節



獲得

        
  

135
 出してみましょう。



 
 いたずらのつぐないのためと、兵十をかわいそうと
思って、くりを持ってきたごんを、それとも知らずに
兵十がうってしまった。そのごんのいっしょうけんめ
いさと。ごんをうってしまった兵十のこうかいの気持
ちに感動し、胸があつくなった。  
T ごんがっぐないをしようという気持ちと、兵十のこ
 うかいの気持ちをくわしく読んでいきましょう。
A 学習課題を設定し、学習方法を決める
T それでは六の場面を読んで課題を作ってもらいま
 す。
 <各自が読んで課題をつくりシートに書く>
C 兵十がごんをうった時、どんな気持ちか。ごんがう
 なずいた時、兵十はどんな気持ちだったか。
C 兵十は、なぜごんをうったのか。兵十は何がわかっ
 てこうかいしたのか。
T 兵十の行動や気持ち、ごんの気持ちを考えて、みん
 なでまとめてみましょう。 
  <話し合いながら、教師がまとめた>



 
「おれは引き合わないなあ。」と言っていたのに、明
くる日も、くりを持ってきたごんの気持ちと、そのご
んの気持ちに気づくまでの兵十の気持ちはどうだった 
でしょう。
T この課題を解決するには、どんな方法で読めばよい
 でしょうか。
C 場面を頭に描いたり、ごんや兵十の気持ちになって
 想像します。
C 大事な言葉に線を引きます。
C 学習シートに書きます。
B 場面の情調をとらえる 
 


 
o場面を頭に描く
oごんや兵十の気
 持ちになる
o線をひく 
T この六の場面は、いくつの場
 面がうかびますか。またその場面からはどんなかんじ
 がつたわってくるか読んでください。
C 場面は、ごんがこっそりうら口から入る場面と、兵
 十がごんをうってしまう場面と、くりを持ってきたの
 がごんであったとわかって兵十が後悔する場面の三つ 

136
 です。
C ごんが「ひき合わないなあ。」と
 言ったのに、またくりを持ってき
 てあげたところから、ごんのいっ
 しょうけんめいさを感じました。
C こっそり入ったから、あぶない
 なという感じです。
C 兵十がごんをうとうとするので、
 たいへんだという感じ、兵十のに
 くしみも感じます。
C ごんは、必死に兵十にくりを持
 ってきたのに殺されてざんこくな
 感じがします。
C 最後までくいちがって、最後に
 はわかったけれど、兵十は後悔し
 ている。兵十もごんもかわいそう
 という感じがします。
C 場面の情景や人物の気持ちを想 
 

137
 像する
T それでは、場面の感じをおさえて、ごんのいっしょ
 うけんめいさや、兵十の後悔している気持ちを、くわ
 しく読みとってみましょう。
 八場面全体を読んで学習シートに記入する▽
               (一三六ページ参照)
D 想像した場面の情景や人物の気持ちについて話し合
 い、評価基準を理解する
T シートに書いたことをもとにして、どう書けたら良
 いかを話し合いましょう。(1)の場面です。
C ごんは、「くりを持ってきたのはぼくだよ。」「でもわ
 からなくてもいい。」つぐないを続けようという気持
 ち。
C みつからないように、つぐないをしよう。
T まず、ごんと兵十はどこにいるのでしょう。ごんの
 気持ちは、「そっとみつからないようにつぐなおう。」
 というのが強いのですね。それは、どんなことから、
 わかりますか。 
C ごんは、うら口から、こっそり中へ入ったというと
 ころからわかりました。
C 兵十は、物置にいます。ごんは、家のうら口の所に
 いるのです。
  そっとみつからないようにつぐなおう
<板書> 兵十〜物置
ごん〜家のうら口 
E 教師評価・自己評価をし調節をする
T 兵十とごんの位置と、ごんの気持ちがあっているか
 自分のを調べてみましょう。まちがっている人は、も
 う一度、文章を読みなおして直してください。
 <調節 三人…兵十とごんのいる位置を直した。>
T 次は(2)の場面ですが、兵十が家に入ったきつねを見
 つけた場面です。その兵十の気持ちを兵十の行動や言
 葉から想像してみましょう。この人のを見てください。

OHP
 
 このあいだのきつねだな。もうゆるさない。お前の
せいで、おっかあはうなぎを食べなかったんだ。ころ
してやるぞ。 

138
C 兵十は、にくしみの気持ちだと思います。
C うなぎをぬすみやがったきつねめ、またいたずらに
 きたな。ようし、そうはさせないぞという気持ちだと
 思います。
T どうして、そんな気持ちだと思ったのですか。
C 火なわじゅうに火薬をつめてドンとうってしまった
 のだから、にくんでいると思います。
C 足音をしのぼせて近よっていくところから、ころし
 てやるという気持ちがあると思います。



 
ぬすみやがったあのごんぎつねめ・ようしと立ち上が
る・火なわじゅうに火薬をつめた・足音をしのぼせて
・ドンとうった
こらしめてやる  にくんでいる  ころしてやる 
T 兵十は、ごんをにくんでいる気持ちが読みとれてい
 ればいいのです。目分のを基準に合わせてみましょう。
 <基準に合っていないと思う児童…四人>

調

 
・兵十の言葉に書き直す。行動に続けて兵十の気持ち
を書き加えて直す。 
C 「またいたずらにきたな。ようし、殺してやる。」と
 直しました。
T さあ、いよいよ(3)の場面です。兵十もごんも、かわ
 いそうという感じが強かった場面です。ごんは、どう
 なったでしょうか。
C ごんは、兵十にうたれて倒れました。そして兵十は
 かけよりました。
T 兵十がかけよるとき、どんな気持ちだと思いますか。
C どうなっているか見にきた。
C くりを持ってきたことを知らないから、もうだまさ
 れないぞと安心した気持ち。
C しめたと思ってかけよったと思います。
T 「しめしめ」という気持ちでかけよりました。する
 とどうでしたか。
C 家の中に、くりが固めて置いてあるのに気がつきま
 した。
T くりが固めて置いてあるのに気がついた兵十の気持
 ちはどうだったでしょうか。この人のを見ましょう。  

139

OHP
 
 つい、さっきまでなかったのが置いてあったので、
「おや、今日もおいてある。今までなかったのに。も
しかして、ごんかな。」
まだ、まっきりしていない。 
C まだ、ごんに聞いてないけれど、固めて置いてあっ
 たので、ごんかなと、ふしぎに思ってると思います。
C 「おや、へんだな。こんなところにくりがある。も
 しかしてごんかな。」とごんに目を落としました。
T まだはっきりしない。へんだな。どちらかよくわか
 らない。
T そこで兵十はふしぎに思って、どうしましたか。
C 兵十は、「おや、へんだな。」と思って、ごんに直接
 聞いてみました。「ごん、お前なのか。」もしそうなら、
 おれはとんでもないことをしてしまった。ゆるしてく
 れ。後悔していると思います。
C 「ごん、お前だったのか。くりを持ってきてくれた
 のは。」と聞いたら、ごんがうなずきました。兵十は
 「とりかえしのつかないことをしてしまった。どうし 
 よう。」という気持ちだと思います。おどろきと後悔
 の気持ち。
C 「ゆるしてくれ。」とあやまっているのだと思います。
C 固めて置いてあるくりを見て「へんだな。もしかし
 てごんかな。」と思って聞くと、ごんがうなずいた。
 兵十は、「わるかった、ゆるしてくれ。ごめんよ。」と
 あやまっている気持ちと、後悔の気持ちですね。
T くりをみつけたときの兵十の気持ちと、ごんがうな
 ずいたときの兵十の気持ちが書けているか自己評価を
 し、場面を読んで直しましょう。

調

 
・半信半疑の兵十の気持ちを付加した児童八人
・兵十の驚きをつけ加えた児童三人
・ 「お前が惡いからこんなことになったんだぞ。」と
 いう兵十の気持ちを素直に表した児童一人 
C 次のように直しました。
 「ごん、毎日くりをもってきたのに、知らないでうっ
 てしまって、おれはとりかえしのつかないことをして
 しまった。ゆるしてくれ。」 

140
T それでは、兵十とごんの気持ちの変わってきたよう
 すをもう一度読みとってみましょう。
 <調節条件>
(兵 十)  (ご ん) 
・またいたずらにきたな
・こらしめてやろう
・しめしめ 
・くりがある。なぜ?
・もしかして
・お前だったのか
・ゆるしてくれ
・とりかえしがつかない 
・こっそり、くりでつぐ
 なおう




・わかってもらったから
 よかった 
T ごんは、目をつぶったままうなずきました。そのと
 きのごんの気持ちを想像してみましょう。
C ごんは、「おれが毎日、くりを持ってきたんだ。」と
 いうことをわかってもらったから、つぐないはできた。
C 兵十、ごめん。あれは、おれのつぐないのくりだ。
 食べて元気を出してくれ。
C いいんだよ。おれがわるかった。おっかあも死んで 
 しまったからおあいこだよ。
C 兵十、ゆるしてやるよ。おれも、いたずらをしたか
 らしかたがないよ。
T ごんは、兵十と心が通じたことをうれしく思ってい
 る。つぐないができたという気持ちがあればいいので
 すね。

調

 
・ 「うなぎをにがしてごめんね。」  一人
・兵十にわかってもらったことが書いてない。二人 
C 「ひどいなあ。うたなくてもいいのに。」をけずりま
 した。「やっとわかってもらって、つぐないができて
 よかった。」としました。
T どうして、そう直したのですか。
C ごんは、初めは、いたずらをしていたけれど、だん
 だん兵十がかわいそうになって、つぐないをしようと
 思っていたからです。
F 学習の確認をする
T 兵十とごんの気持ちがなかなか通じ合わないまま
 に、ごんはとうとう兵十にうたれてしまいました。最 

141
後になって、やっと、ごんのつぐないだということが
わかり兵十も、それがわかったとたん、火なわじゅう
をバタリと取り落としてしまいました。 
G 体制的に学習単位を読む
T ごんと兵十の気持ちを想像しながら、もう一度読ん
 でみましょう。<全員学習単位を読み味わう> 

 (5) 授業の考察
 文学作品の場合、場面を分析的に読み深めていくことで、感動が寸断されてしまうと思っていたが、最後の感想文
によると、場面の情景がよくわかってくると、主人公の気持ちがよくわかってきたとあり、登場人物に対しても親近
感がわいてきていることがわかった。また、場面を追うごとに、次はどうかと興味関心が強まり感動も次第に高くな
ってきた。直観読みで感動したことでは、ごんはいたずらばかりしたのだからばちがあたって当然と否定的なもの、
こんないいことをしたんだから、幸せだという肯定的なもの、道徳的なもの、観念的なものと様々に出てきたが、自
己評価をして調節をくり返していくと、ほとんどの児童が物語の主題に迫ることができた。    <高橋 深雪>

  3 情景や登場人物の心情を読みとる授業

 (1) 教材「大きなしらかば」(東書五年上)
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 しらかばの木に登ったアリョーシヤの姿に気づき、母親はおどろくが、おちついて冷静に判断し思慮深い行動でわ
                                                        142
が子を無事におろす愛情に、児童は感動し共感をおぼえると思う。そして、日頃なにげなく接している母親の偉大さ
に気づくにちがいない。
B 児童の実態
 この物語の主題について、「高い所まで木登りしたアリョーシャの勇気」と、とらえる児童が多く、アリョーシャ
に視点を向けて読まれがちである。それに、木登りについては興味・関心をもって読むと思うが、都会の子なので、
実際に経験している子は少なく、緊迫した情景のイメージが描きにくい。
B 指導上の留意点
 学習のシートは、母親の心情をイメージ豊かに思い描けるよう配慮し、児童に主題把握が可能なようにしたい。ま
た、児童が未経験の内容については、シートに記入後。本文にもどり、場面の情景と人物の心情を読みかえしたり、
難語句をしっかりおさえて指導したい。それに、シートに書いた結杲にもとづいて、不適応の場合には、話し合いや
読みをもとに納得いくまで理解させ、すべての児童が目標に到達できるよう配慮したい。
 (3) 単元のシステム(△態度 O技能 ・言語事項)(総時数十時間)

学 習 目 標 学 習 内 容 資 料 学 習 方 法 学 習 評 価
 「大きなしらかば」を
想像しながら読んで、場
面の情景と人物の心情を
イメージ豊かに思い描き
自分の力をためそうと大
きなしらかばの木のてっ
ぺんまで登ってしまい、
めまいを感じたアリョー
シャに対し、無事おろそ
うとする母親の冷静な判
断と思慮深い行動に基づ
く愛情に感動し、共感す
ることができる。 
△主題を正しく理解しようとす
 ること
△場面や心情の変化を想像しな
 がら読もうとすること
○場面の情景と人物の心情を想
 像しながら読むこと
○主題を読みとること
○主題に対して感想をもっこと
○描写や表現のすぐれている箇
 所を読み味わうこと
・言葉の遣い方に対する感覚な
 どにつき関心を深めること
・理解するために必要な語句の
 量を増すこと 
教 材
「大き
なしら
かば」



学習シ
ート


TP 
1 全文を直観的に読み、感動の中
 心をおさえ、主題を読みとる
           (二時間)
2 場面ごとに分析的に読み、アリ
 ョーシャの行動と心情、そして、
 それに対して、息子に冷静な助言
 をする母親の愛情を読みとる
           (五時間)
3 全文を体制的に読み、感動した
 ことを確かにし主題を理解する
           (一時間)
4 主題に対する感想を書く
           (二時間) 
o直観的に主題範囲
 が読みとれたか
o場面の表象や登場
 人物の心情表象が
 描けたか
o母親のアリョーシ
 ャに対する深い愛
 情が読みとれたか
o読むのに必要な語
 句が理解できたか
o主題が理解できた
 か
o主題に対し感想が
 もてたか 

                                                        143
 (4) 本時の学習指導システム
@ 学習単位(時間5/10)

 アリョーシャのお母さんは、台所で、かたに大きなふきんをかけて、最後の茶わんをふいていた。とつぜん、開け広げたまど
に、ボロージャのおびえた顔が現れた。
 「ジーナおばさんジーナおばさん
と、ボロージャは大声でよんだ。
 「どうしたの?」
 「おばさんとこのアリョーシャが、大きなしらかばの木に登ったんだ 落ちるかもしれないよ。」
 茶わんがお母さんの手からすべり、ゆかにくだけて音をたてた。
 「どのしらかばなの?」
 「大きいのだよ 木戸の向こうの
 お母さんはテラスにとび出し、木戸の外へ走り出た。
 「どこ?」
 「ほら、あそこだよ、あのしらかば!」
 お母さんは、白い幹の二つに分かれている辺りを見上げた。アリョーシャのすがたは、そこに見えなかった。
 「何じょうだん言うの、ボロージャ。」
と、お母さんは言った。
 「ううん、ちがうよ、ほんとうだよ。」
と、ボロージャはさけんだ。
 「ほら、あそこ、あそこ、いちばんてっぺんにいる! えだのかげにかくれているんだよ。」
 お母さんも、今度はアリョーシャのすがたに気がついた。お母さんは、そのえだから地面までのきょりを目で測った。お母さ
んの顔は、まるで、そのすべっこいしらかばの幹と同じくらい白くなった。

                                                        144
B 学習目標
 アリョーシャが、しらかばの木に登ったのを見て、母親がおどろく場面の情景と母親の心情とを想像しながら読ん
で、次の条件を含めて、話したり書いたりすることができる。
<条 件>
 ○「茶わんがお母さんの手からすべり、ゆかにくだけて音をたてた」時の驚きの心情
 ○「テラスにとび出し、木戸の外へ走り出た」母親の驚きの心情
 〇「何じょうだん言うの、ボロージャ」の半信半疑な気持ち
 ○「お母さんは、そのえだから地面までのきょりを目で測った。お母さんの顔は、まるで、そのすべっこいしらか
  ばの幹と同じくらい白くなった」時の恐怖感
                                                        145
B 学習内容(△態度 ○技能 ・言語事項)
 △場面の情景や登場人物の心情を想像しながら読もうとすること
 O場面の情景と心情を想像しながら読むこと
 ・語感、言葉の遣い方に対する感覚などについて関心を深めること
 ・次の語句を理解すること
   ・おびえた顔  ・手からすべる  ・まるで……と同じくらいに  ・テラス  ・木戸
C 学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 授業の実際

@ 学習課題の設定
T 今日勉強する箇所は、八七ページの四行目から八九
 ページの五行目ですが、この場面でアリョーシヤが木
 に登ったのはどこまでですか。
C しらかばの木のてっぺんの緑の上までです。
T しらかばの木に登るということについて、お母さん
 に何と言われましたか。
C 登るより下りる方がむずかしいと言われていまし
 た。
T それでは、場面全体を読んで、どんな感じがするか 
 場面全体の感じをとらえてみましょう。
C ボロージャも、こわかったろう。
C お母さんは、すべっこいしらかばの幹と同じくらい
 白くなったというのだから、おどろいたろう。
C 茶わんが手からすべりゆかにくだけたなんて、どき
 っとしたろう。
C 木戸の外へ走り出るなんてびっくりしてあわててい
 たのだろう。
T みんながとらえたおどろいたり、びっくりした感じ
 がどういうところに表現されているかよく読んで、課 
 
146
      <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  



目標


方法


学習





評価
調節








獲得

  147
 題をつくってください。
T それでは、どんな課題か発表してもらいましょう。
C ボロージヤからしらかばに登ったことを聞いたお母
 さんのびっくりした気持ちについて学習します。
C 大きなしらかばに登ったアリョーシャと下で見てい
 たお母さんの二人はどんな気持ちだったか。
C お母さんがしらかばの所にかけつけて、木の上のア
 リョーシャを見九時の気持ちはどうだったろう。
T みんなの発表を整理してみましょう。

調

 
 ボロージャからアリョーシャが大きなしらかばに登
ったことを聞いて、お母さんはどんな気持ちになった
でしょう。 
A 学習方法の確認
T どんな学習方法で勉強していきますか。
C 登場人物の行動やことばに気をつけて読みます。
C その人になったつもりで読んだり書いたりします。
C サイドラインを引きながら読んだことを学習シート
 に書きます。 

調


 
母親の行動やボロージャの行動、ことばに気をつけ
 て読む。
母親になったつもりで読む。
学習シートに書く。  

B 物語の展開にしたがって分析的に読む
T お母さんはどんな気持ちだったかというのですから
 お母さんの気持ちがあらわれている所を黙読してみつ
 け、サイドラインを引きましょう。
C 八八ページの最初の「茶わんが、お母さんの手から
 すべり、ゆかにくだけて音をたてた」ところです。
C 八八ページ四行目、「お母さんはテラスにとび出し、
 木戸の外へ走り出た」という文です。
C 八八ページの最初から四行目、「何じょうだんいう
 の、ボロージャ」のところです。
C 八九ページの四行目、「お母さんの顔は、まるで、
 そのすべっこいしらかばの幹と同じくらいに白くなっ
 た」ところにお母さんの気持ちがよくでています。
T 児童の発表を聞き、カードで整理、掲示 

148

 二つひけた人−六人。三つひけたひと−四人。
 四つともひけた人−九人。
T シートを出してください。サイドラインを引いたお
 母さんの気持ちをもっと深く想像しながら読んで、お
 母さんになったつもりで書きましょう。
 

  C 学習の結果を話し合い、読みを深める
T 最初、茶わんがお母さんの手からすべり、ゆかにく
 だけて音をたてたところですね。
C あんなところに登って
C まさか、アリョーシャがしらかばの木に登ったの。
T みんなが言ってくれたのは、お母さんのどんな気持
 ちでしょう。
C まだ、ボロージャの言ったことが信じられない。
C 心配している気持ちです。
T 今度は本を見て、どのようなことから、茶わんが、

149
 お母さんの手からすべったのか読んでみましょう。
C 「おばさんとこのアリョーシャが、落ちるかもしれ
 ないよ。」といわれたからです。
T 田中さん、もっと前のほうではないかな。
C 「ボロージャのおびえた顔があらわれた」からです。
C 「ジーナおばさん ジーナおばさん」とボロー
 ジャが大声でよんだからです。
T そんなわけでびっくりして、茶わんが手からすべっ
 てしまったのですね。ところで、どのしらかばに登っ
 たのですか。
C 大きい。
T どこの?
C 木戸の近くの大きなしらかばです。
T 次にシート(2)ですが、お母さんは、どんな気持ちで
 テラスにとび出し、外へ走り出たのでしょう。
C だいじょうぶかな、助かってほしい、という気持ち。
C びっくりして、ものすごくあわてていた。
C えっ、ほんとうかしら。あの子にかぎってという気 
 持ちです。
T 「何じょうだんいうの。」とお母さんはいいました。
 お母さんになったつもりで、つけ加えてください。
C 「何じょうだんいうの。びっくりしたじゃない。」
C 「何じょうだんいうの。大きなしらかばの木に登っ
 たなんてうそよ。」
C 「何じょうだんいうの。どこにもいないじゃないの。
 びっくりさせないでちょうだい。J
T アリョーシャはどこにいたのですか。
C いちばんてっぺんの枝のかげにかくれていました。
C お母さんは、ボロージャより小さいアリョーシャは
 そんなに高くまで、登れないだろうと思ったにちがい
 ない。
B 評価基準を知り、自己評価をする
T 三人のシートを見てください。(OHP投映)
あぶないわ、落ちたらたいへん、早く助けないと、ほん
とうに落ちてしまうわ。なぜ、あんなたかい木なんかに
登ったのかしら。             (井出) 

150
しらかばの二つに分かれている所よりも、高く登ってし
まうなんて、なんてことを。落ちたら大へんなことにな
るわ。どうしよう。            (豊田) 
あんな高い所へ登ったりして落ちたらどうするの。早く

下りていらっしゃい。           (山田) 
T しらかばのようになったお母さんの気持ちから考え
 て、そこまでいかないのはどのことばですか。
C 「早く下りていらっしゃい。」というところまでは、
 ゆとりがなかったのではないか。
C 「なぜ、あんな高い木なんかに登ったのかしら。」な
 んて考えているゆとりはなかったと思います。
T しらかばのように白くなったのは、瞬間的なことな
 ので、あれこれ考える時間はなかったはずですよね。
T それでは、この三つのシートから考えて、どのよう
 な気持ちが書けていればよいでしょう。
C どきっとしたと思います。
C 落ちたらどうしようという気持ちです。  
    ┌心配な気持ち―落ちたらどうしよう
評価基準┤
    └おどろいたこと

T 基準をもとに評価し、書けていたらサイドラインを
 引きましょう。(自己評価)
 ・お母さんの心配している気持ちが書けた人 二一人
 ・びっくりした気持ちが書けた人 一〇人
E 自己評価の結果、書いた文が不じゅう分だった場合
 には、本文を読み直し、条件に従い書き直す(調節読
 み)
T 二つとも入っていて想像しながら書けた人は、お母
 さんについて一言書いてみましょう。
T 二つとも入っていたけれど想像がじゅう分できなか
 った人はつけたしましょう。
T 一つ書けた人、まだ一つも書けなかった人は、よく
 読んで、お母さんの行動を考えつけたしましょう。
T 関係ないことを書きすぎた人も書き直しましょう。
F 体制的に読む
C 本時の学習範囲を朗読する。  

                                                        151
 (6) 授業の考察
@ 課題づくりを主体的にやらせることにより、授業のめあてをしっかり把握させることができたし、学習に対する
 興味・関心を喚起し、意欲づけることができた。
A 学習シートに、個々の児童が読みとったものを、それぞれ書き表すことにより、一部の児童が活躍する話し合い
 に比べ、おのおのの児童が読みとりの力相応に学習に参加でき、主体的な学習が展開された。
B 読みとりの力がじゅう分育成されていない子でもシートに書いたものをもとに評価し、不じゅう分な答え方の場
 合には、本文にもどって、文章を再度読んで書き直し、最終的には目標にみんなが到達し、成就感を味わうことが
 できた。
C シートに正しく書けた子については、さらに課題を与え、読みの力を深化させることができ、個を大切にする授
 業実践ができた。                                   <小野寺侑希子>




                                                        152
      三 作文の完全習得学習はこのようにすすめる

  1 順序をおさえて書く構成過程の授業

 (1) 単元「説明の文章を書く」  題材「はんがづくり」(二年)
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 この単元では、図工の時間に作った「かみはんが」の作り方を家の人に知らせようということで説明文を書き、順
序を整理して書く技能を身につけることをねらいとした。この教材は、共通体験をしているために共同学習が容易で
あり、順序を整理して書く技能を身につけるための手始めの教材として適切である。また、家の人に知らせるという
ことで相手意識を持たせ、書く意欲をうながすことができる。
 この作文を書くことによって、順序を整理して書く技能を身につけるとともに、かみはんがを作った経験をより確
かに認識させたい。
A 児童の実態
 一年から作文ノートや日記などで、書く機会を多く作ってきた成果もあって、一年から比べると書くことに抵抗の
ある児童は少なく、その量も増え、原稿用紙二、三枚という児童が大半である。しかし、書く量は増えたが、文のつ
づけ方、順序を整理した書き方は、まだ、身についていないため、だらだらと経験をたどった文章になっている。
                                                        153
                                                       〜154
B 指導上の留意点
 この教材は、図工との合科教材である。図工の時間に「かみはんが」を作る際には、作る順序をしっかりおさえた
指導が大切である。書く段階では、まず、みんなで思い出して発表し合うこと。そして、書くことがメモできた時点
では、すぐそれを見て書くのではなく、メモをみながら口に出してお話しをさせることがもっとも大切である。話す
ことによって、自然に、はじめの文やつづけることば、おわりの文がくわわり(アウトラインができてくる)、児童
は、文章のイメージを作ることができる。
 (3) 単元のシステム(八時間扱い)(△態度 O技能 ・言語事項)

学 習 目 標 学 習 内 容 資 料 学 習 方 法  学 習 評 価
 「はんがづくり」
の製作過程を父母に
知らせるためにその
順序を整理して正確
に書く技能を育て、
順序思考の力を伸ば
し、経験認識を確か
にすることができ、
あわせて版画作りの
楽しさを、再体験す
ることができる。
 
△書いて知らせることに興味を持
 つこと
△事柄をはっきりさせて文章を書
 こうとすること
○書きたい題材について必要な事
 柄を選ぶこと
○メモをとること
○事柄の順序を整理して組み立て
 ること
○簡単な説明の文を書くこと
○文と文との続き方の関係を考え
 ながら書くこと
○文章を読み返してまちがいを直
 そうとすること
・接続語の役割と使い方に気づく
 こと
・読点の打ち方に注意し、句点を
 正しく打つこと 
はんが
づくり
の製作
過程を
表す絵

でき上
がった
作品

カード

アウト
ライン

1 版画作りの経験を思い出して話
 し合う
2 製作過程の順序のメモをとる
   (1と2をあわせて二時間)
3 書く事柄を順序に従って整理し、
 アウトラインを作る (二時間)
4 アウトラインに従って文章を書
 く         (二時間)
5 書いた文章を評価し、調節する
           (一時間)
6 書いた文章を目的に応じて処理 
 する        (一時間)

┌書いた文章を版画にそえて、家┐
└の人に知らせる。      ┘
o書いて知らせること
 に興味がもてたか
o事柄の順序をはっき
 りさせて文章を書こ
 うとしたか
o書く事柄を選び出し
 整理して、アウトラ
 インを作ることがで
 きたか
o適切な語句を使って
 文章をつづけること
 ができたか
o文章のまちがいに注
 意できたか 


 (4) 本時の学習指導システム(3/8 アウトライン作り)
@ 学習目標(行動的目標)
 知らせたい事柄を製作過程に従って整理して、次のようなアウトラインを作り、構成的思考力をのばすことができ
る。
<はじめの文>
 (つづけることば)

 1 
 

(        )    

 2 
 

(        )

 3 
 

(        )
                                                        155

 4 
 

(        )

 5 
 

<おわりの文>

A 学習内容(△態度 ○技能 ・言語事項)
 △事柄の順序をはっきりさせて文章を組み立てようとすること
 ○事柄の順序を整理して組み立てること
 ・接続語の役割と使い方に気づくこと
B 本時の学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 指導の実際 ― 構成過程を中心にして

<本時までの学習指導のあらまし>
  題材の選択過程
 紙版画を作ったときの楽しかったこと、工夫したこと、
難しかったことなどを話し合う中、紙版画を家に持って
帰るときに、ただ紙版画を持って帰るのではなく、家の
人に作り方や、苦心したことを文章にして、いっしょに 
持って帰ろうということで、書く目的をもつ学習指導を
した。
  収集過程
@ 作ったときのことを話し合って思い出させ、版画の
 製作過程を示す五枚の絵を手がかりに、次の五つの過
 程をみどりのカードに書いた。(図工の時間でも、こ 

  156
   <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  




目標

 
方法


学習








 
評価
調節

目標

方法

 
学習



 
評価
調節

 
獲得

   
  

157
 の五つの過程をおさえて指導した。)
  ・下えをかいた
  ・下えをきった
  ・下えをだいしにはった
  ・インクをつけてローラーをかけた
  ・下えの上にかみをおいてバレンでこすった
A 五つのそれぞれの過程で、自分がしたこと、気をつ
 けたこと、工夫したことを考え、それをきいろのカー
 ドにメモし、みどりのカードの下にはりつけた。
 (メモの指導にあたっては、一つの事柄を一枚のカー
 ドに書くことを指導した。)
 例(みどりカード)(きいろカード)
    下えをかいた かけっこ
           ていねいにかいた
<本時>
  構成過程 ― 授業の実際 
@ 学習目標を確認する
T 今、勉強していることは、何でしたか。
C 紙版画の作文を書くことです。
C 版画の作り方が家の人にわかるように。
C 版画をどんなふうに作ったかがわかるように。
T そうですね。前の時間には、どんなお勉強をしまし
 たか。
C カードに書きました。
C みどりときいろのカードに書きました。
T 何を書いたのかしら。みどりのカードには……。
C 紙版画の作り方。
T きいろのカードには……。
C 工夫したこと。気をつけたこと。難しかったこと。
T そうですね。紙版画の作り方をカードに書いたので
 すね。今、みんな、持っていますね。
  では、きょうは、このバラバラのカードのままでは
 書きにくいので、家の人によくわかるように書くため
 に、カードを整理して、書く順序をはっきりさせまし 

158
  ょう。
A 事柄の順序を整理して組み立てる方法を理解する
T どんなふうに並べたら、家の人によくわかりますか
C 順番に並べます。
T 何の順番ですか。
C 作った順序どおりに並べればいいです。
T そうですね。
  では、よく思い出して、カードを、みずいろの画用
 紙の上に並べてみましょう。
B 理解した方法に基づいて組み立てる
 (児童作業)
C 学習評価をする
T では、黒板に出て、並べてもらいましょう。
C (カードを並べる)
  下えをかいた              
  下えをきった              
  下えをだいしにはった           
  インクをつけてローラーをかけた       
  下えの上にかみをおいてバレンでこすった   
T どうですか。作った順序どおりですか。
C いいです。
T 同じように並べられましたか。(挙手する)できな
 かった人は、もう一度見直して、作った順序どおりに
 並びかえましょう。
T では、みずいろの画用紙に、カードとカードの間を
 少しあけて(そこに、あとで、つづけることばを、か
 きこませます。)今、並べた順序どおりに、セロテープ
 ではりましょう。
 (児童作業)
T できた人は、このカード表をみながら、お話ができ
 るように、小さな声を出して読んでいましょう。
 (せっかくカード表を作っても、ここで、「さあ書きま
 しょう。」とすると、児童は、ただカードに書いてある
 ことを羅列してしまうことが多い。そこで、カードを 

159
 見ながらお話をすることが大切になる。というのは、
 お話をすることによって、必然的に、自然に、カード
 とカードをつづけることばが入ったり、はじめの文や
 おわりの文が必要なことがわかるからである。さらに
 子どもの頭の中で、文章のイメージも作ることができ
 る。)
T では、お話をしてください。
C むずかしいよ。はずかしいよ。
T OOさん、お話をしてください。
C はじめに、下えをかきました。おねえさんとてつぼ
 うをしている絵です。
T すぐ「はじめに」として、家の人は、何のお話をす
 るのか、わかるかしら。
C おかあさん、はんがの作り方をおしえてあげます。
  はじめに、下えをかきました。おねえさんとてつぼう
 をしているえです。
  つぎに、下えをきりました。切りすぎないように気
 をつけました。 
  そのつぎに、下えをだいしにはりました。丁寧には
 りました。
  そして、インクをつけてローラーをかけました。イ
 ンクをつけすぎないようにしました。
  おわりに、下えの上に紙をおいてバレンでこすりま
 した。よくこすりました。
T OOさんのお話をきいてよくわかりましたか。
C わかりました。
T どんなところでよくわかったのでしょう。
C はじめにとか、つぎにとか。入っていたからです。
C つづけることばが入っていました。
T カードには書いていないけれど、カードとカードを
 つづけることばが、入っていましたね。ではみなさん
 も、自分でお話をしながらカードとカードのあいて
   
 いる所に、つづけることばを入れましょう。
 (児童作業)
T それをみながら、お話をしてください。
C おかあさんに、はんがの作り方をおしえます。 

160
 はじめに下えをかきました。………
 つぎに 下えをきりました。………
 そして 下えをだいしにはりました。………
 こんどはインクをつけてローラーをかけました。……
 さいごにバレンでこすりました。………
T つづいていましたか。よくわかりましたか。
C つづいています。
C よく順序がわかりました。
T (発表の中で、つづけることばをぬき出し、色紙の
 カードに書いて黒板にはる。)
 <ピンク色>

 はじめに |  T このほかに、つづけることばを
 つぎに  |   工夫した人はいますか。
 そして  |
 こんどは |
 さいごに  |
C (話す)……水色のカード
 はじめに     |   T どこか、前の人とち
 つぎに      |    がっていましたか。
 そのつぎに    |   C だいしにはったあと
 だいしにはったあと|     というところです。
 おわりに     |
T このように、だいしにばったあとというようなつづ
 けることばもあるのですね。ほかにまだありますか。
C 一番目に、下えをかきました。………
T 一番目に、二番目に、というつづけることばもあり
 ますね。では、これでどうでしょう。
 (そして、そして、そしての多いつづけ方を示す。)
C そして、そしてばかりでよくわかりません。
B 評価調節する
T そうですね。これではよくわかりませんね。こんな
 人はいませんでしたか。自分のを見直して、うまくい
 っていないところは直しましょう。 

161
T では、はじめの文は、どうしたらいいでしょう。
C おかあさんにはんがの作り方をおしえます。
C 図工の時間に、はんがを作りました。その作り方を
 おしえてあげます。
T それを白いカードに書いて一番前につけましょう。
T 一番最後は、どうしたらいいでしょう。
C おわりの文がいります。
T 何を書いたらいいでしょう。
C 作ったときの気もち。
C 一番難しかったこと。
C 一番簡単だったこと。
T では、それも白いカードに書いて、一番後ろにつけ
 ましょう。
E 自己調節し結果を確認する
T 並べたカードを見ながら、ひとりひとり小さな声を
 出してお話をしてみましょう。
 (児童、ひとりひとり話す)
T では、次の時間に、そのカード表をみながら作文を 
 書きましょう。
<以後の学習指導>
  叙述過程
 でき上ったアウトライン(カード表)に従って文章を
書いた。
  評価過程
 書いた作文を読み合って、読み手によくわかるように
書けたか、お互いに評価した。
  処理過程
@ 書いた文章を清書した。(誤字・脱字・句読点のあや
 まりに注意して、丁寧に。)
A 版画といっしょに家にもちかえった。
B 家の人に感想を書いてもらった。
C それを持ちよって、紹介し合った。(次への書く意
 欲につながる。) 

                                                        162
 (6) 授業の考察
Oよくカードを使用した作文指導の場合、文章が画一的になるのではと懸念されるが、そのようなことはない。内容
 のふくらみに差はみられるが、普段あまり書けない児童、文章のまとまらない児童などを含めて、全員原稿用紙二
 枚にわたって書くことができた。カードの使用は、表現能力のおとる児童には特に効果的であり二年での順序を整
 理して書くことの指導では、こうした指導が必要である。また、カードを使ったアウトライン作りは、三年での段
 落指導につながる。
〇低学年の場合、書く意欲を持たせるために、誰に書くのかという相手意識をもたせることが大切である。今回の授
 業でも、常に家の人に書くのだという意識をもたせた。たとえば、前書きというと、いつも「いつ、どこで、だれ
 が、何を、どうした」と書くのだと考えることは危険である。今回のように、「お母さん、版画の作り方をおしえ
 てあげるよ。」と、児童の自然な言葉を大切にすれば、児童は、お母さんに教えてあげようという意欲をもって書
 きすすむことができる。
○家の人に読んでもらうことによって、児童は、わかってもらう喜び、満足感を味うことができる。それが、次への
 書く意欲につながる。また、作文を通して、家の人とのコミュニケーションが成り立ち、父母の子どもや学級指導
 への理解も深まってくる。                                <瀧澤八重子>

                                                        163
                                                       〜164
    2 感想を書く叙述過程の授業


  (1) 単元「読書感想文を書く」  題材「「チロヌップのきっね」を読んで」(四年)
  (2) 単元構成上の配慮
 学級のほとんどの子は、図書の時間が大好きで、よく本を読んでいる。しかし、感想文を書くことを大変いやがる。
何を書いたらよいかわからないと言うのである。また書いたものを見ると、粗筋だけしか書いてないものや、「おも
しろかった」とか「かわいそうだった」と一言、観念的な感想をつけ加えてあるものが多い。感想の持ち方も、思っ
たことしか書かれてなく、自分と比べたり、相手の立場に立って考えてみる子は、二、三人であった。
 そこで、「チロヌップのきつね」を読んで、自分たちの生活と比べたり、相手の立場に立ってみたりし、多様な感
想を持ち、読み手にそれがよくわかるように感想文を書く学習をするために、本単元を設定した。また、感想文を書
くとともに、自分の生き方を反省し、よりよい生き方をするよう努力する態度も育てたい。
 なお、この指導は読書感想文を書くことを目標としたため、読書教材には読み方学習の必要のない文章を選んだ。
 (3) 単元のシステム(六時間扱い)

学 習 目 標 学習内容(△態度 ○技能 ・言語事項) 資 料 学 習 方 法 学 習 評 価
 「チロヌップ
のきつね」を読
んで、人間と動
物のふれあい、
親ぎつねの愛に
ついて感想を書
き、自分の生き
方を反省すると
ともによりよい
生き方をするよ
う努力すること
ができる。
△物語から受けた感動にもとづいて感想を書こ
 うとすること
△自分の生き方と比べながら書こうとすること
○感想を書こうとする事柄を選ぶこと
○相手の立場に立ったり、自分の生き方と比べ
 たりしながら感想を持つこと
○段落相互の関係を考えて文章を構成すること
○事実と感想・感想と根拠を分けて書くこと
○事実の書き方と感想の書き方を区別すること
・学習した漢字を適切に使うこと
・表現に必要な語句の範囲を広げること
・指示語や接続語を適確に使うこと 
教材文

カード





TP 
1 作品を読み、感想文を書
 く目的を持つ(〇・五時間)
2 書こうとする事柄を選ん
 でカードに書く
      (一・五時間)
3 感想文のアウトラインを
 作る     (一時間)
4 アウトラインをもとに感
 想文を書く  (二時間)
5 清書し、文章にして読み
 合い、感想を書く
        (一時間)
事実と感想とを書
 き分けることがで
 きたか
自分の生き方と比
 べて感想が書けた
 か
相手の立場に立つ
 て感想が書けたか
感動の中心に対す
 る感想が書けたか

                                                        164
 (4) 本時の学習指導システム(5/6 叙述)
@ 学習目標
 収集した事柄を、アウトラインに従って読み手によくわかるように次のように書くことができる。
 ○場面と感想を分けてあること
  ・場面の中に感想が入っていないこと
 ○事実と感想を書き分けられていること
  ・事実は読みとったものを簡単にまとめて書いてあること
  ・感想は感想らしい文末表現になっていること
   思ったこと  自分だったらどうするか  相手の気持ちになって
                                                        165
A 学習内容
 △自分の生き方と比べながら書こうとすること
 ○事実と感想・感想と根拠を分けて書くこと
 O事実の書き方と感想の書き方を区別すること
 ・学習した漢字を適切に使うこと・
 ・表現に必要な語句の範囲を広げること
 ・指示語や接続語を的確に使うこと
B 本時の学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 授業の実際(叙述過程 本時はそのうちの二時であったが、前半の部分も簡単に紹介しておく。)

@ アウトラインに従って、感想文を書くことを確認す
 る。
A 事実と感想を区別した書き方を発見する。
 (児童は、アウトラインはできていても、実際どのよ
 うに書けばよいのかがまだはっきりとはわかっていな
 い。そこで書き方を学習するために、教材文を示し、
 それについて、どのように書かれているかを学習し、
 これから書こうとする感想文の書き方を発見させる。)
 アウトラインの一部と、それに従って書かれた感想文 
 を掲示する。
 
(CD) ごんが兵十のうなぎをとってしまい、それでつぐない
をする場面 
(CD) いたずらをした時は悪いきつねだと思ったが、つぐな
いをした時は、いいきつねになったと思った。 
(CD) 兵十が神様にお礼を言ったのにつぐないを続けたのは
えらい。私だったらやめてしまうかも……。 

166
      <学習指導過程>
過程  指 導  学           習  作業・評価基準 



 

  

167
<感想文>(OHPで提示)
 ごんは、兵十がせっかくとったうなぎをにがしてしま
った。そのため兵十のおっかあは、うなぎが食べられな
いで死んでしまった。ごんは、つぐないのために、毎日
くりやまつたけを持っていった。兵十が、神さまのおか
げだと思っているのを知っても、くりを持っていった。
 私は、ごんがいたずらをした時、なんて悪いきつねな
んだろうと思った。でも、おっかあが死んでから、悪か
ったと思いつぐないをした時は、いいきつねになったん
だと思う。きっと本当は、心のやさしいきつねだったん
だろう。
 その上、兵十が神さまにお礼を言ったのに、ごんは、
「ひきあわないな。」と言いながらもやめなかったのは、
えらいと思う。私だったらいくらつぐないのためでも、
「ああ、やめちゃおうかな。」って思ったかもしれない。 
 この教材文を読み、どんなふうに書いてあるか、話し
合いによって共同学習し、感想文の書き方について次の
ようにまとめた。
ア 事実と感想が分けて書いてある。
イ 事実は読み取ったことをそのまま書いてある。 
      ┌してしまった。
   文末が┤
      └ いった。
ウ 感想の書き方
 ・思ったことが書いてある。
      ┌ と思った。
   文末が┤
      └ だろう。 かもしれない。
 ・自分の生き方と比べて書いてある。
   わたしだったら
 ・相手の立場に立って書いてある。
      ┌だったにちがいない。
   文末が┤
      └だから――だろう。
B アウトラインに従って、感想文を書く。
 (書き方の学習で理解したことを使って、各自感想文
 を書く。)
C 叙述後の評価・調節(以下本時)
T みなさんに、感想文を書いてもらいました。その作
 文を読んだら、とてもよく書けているもの、もう少し
 直せばもっとよくなるものがありました。今日は、も 

168
 う少し工夫すると、もっとよくなるというところを直
 す勉強をしましょう。(本時の目標を持つ。)
T この感想文を書く時、どんなことに気をつけて書き
 ましたか。(評価の基準となる感想文の書き方を思い
 出す。)
C 場面と感想を分けて書きます。
C 場面には、思ったことを書きません。
C 場面には、読んだことをそのまままとめて書きます。
T 感想は、どんなふうに書くのでしょうか。
C 思ったことを書きます。
C 相手に話しかけるように書きます。
C 相手の気持ちになって書きます。
C 自分だったらどうするかを考えて書きます。
T 感想と場面は、どちらが大切ですか。
C 感想です。
T すると、場面は簡潔に書くことも大切ですね。
T それでは、Yさんの感想文を読んでみましょう。
 (書かれた作文のうち、書き方が不十分なものをとり 
あげ、全員で評価のし方を学習する。)




 きつねの家族は、小川へ行った。すると、ぼうやぎ
つねが兵隊にうたれてしまった。
 わたしは、ぼうやぎつねがなんにもしていないのに
兵隊にうたれてしまったので、かわいそうだと思った。
お毋さんぎつねたちが待っていたのにとうとう帰って
こなかった。
 キャン、キャンと、ちびこの声がした。
 わたしは、ちびこがどこへも行かなければ、鉄のわ
なにかみつかれることはなかったと思った。 
T さて、この感想文は、書く時の注意に気をつけて書
 いてありますか。みんなで調べてみましょう。(書く
 時の注意をまとめて、チェックリストを作り、黒板に
 掲示した。)









観 点 基       準  評  価
場面と
感想 
 場面の中に、感想が書かれてい
ないか 
 
場面の
書き方 
 読みとったことを、簡単にまと
めて書いているか 
 
感想の
書き方 
 思ったことと、どこからそう思
ったのかが書いてある。
 自分だったらどうするかが。書
いてある。
 相手の気持ちで書いている。 
 

  169
C 場面と感想が分けてありません。
C 場面の中に、感想が入っています。
T そうですね。場面と感想を書き分けるところは×で
 すね。(チェックリストに記入。以下、チェックリス
 トに従って、全員で評価をしていく。)
C 場面が簡単にまとめて書いてありません。
C よく場面の様子がわかりません。
T 感想の書き方はどうですか。
C 思ったことは書いてあります。
C どこからそう思ったのかは、よくわかりません。
C 自分だったら、と書いてありまぜん。
C 他の感想はありません。
T (これらの児童の発言をもとに、チェックリストに 
 ○(あっているもの)△(不十分なもの)をつけてい
 く。)
T では、どう書けばYさんの感想文はもっとよい感想
 文になりますか。(調節の方法を共同学習する。)
C 場面と感想を分けて書きます。
C 場面をもっとまとめて書きます。
C 感想の書き方もふやした方がいいと思います。
T 読んだ時のことを思い出して、感想をつけ加えると
 もっとよい感想文になりそうですね。
T 次の○君の作文はどうでしょうか。
 こうして四ひきのきつねの生活が始まった。ちびこ
は、………(以下、場面を四百字原稿用紙に2/3位だ
らだらと書いてある。)
 ぼくは、きつねがかわいそうだと思った。 
T これも、チェックリストで評価してみましょう。
C 場面と感想は分けて書いてあるから○です。
C 場面はだらだらと書いてあるから×です。
C 場面ばっかりで、感想がちょっとしかありません。 

  170
T 感想の書き方はどうですか。
C 思ったことは書いてありますが、わけがありません。
C 他には感想が書いてありません。
T では、O君の作文はどこはどう直せばいいのでしょ
 うか。
C 場面をもっと簡単に書き直せばいいです。
C むだなところは消します。
T ではやってみましょう。(子供たちと、残すところ
 いらないところを区別し赤ペンで消していく。)
T 場面を長く書いてしまった人は、こんなふうに直せ
 ばいいですね。
T それでは、自分の作文を読み直して、チエックリス
 トに○・×を書きましょう。そのとき×のところには
 あとで直すときのために――を引いておきましょう。
C (各自、作文を読み返し、自己評価をする。)
T 結果を確かめてみましょう。(挙手で確かめる。)
 ┌場面と感情の書き分けができた人……………二二人
 └できてなかった人…………………………………九人 
 ┌場面を短かくまとめられた人……………………五人
 └だらだらと書いてしまった入…………………二九人
 ┌思ったことが書いてあった人…………………三〇人
 │自分だったらどうするか書いてあった人……一五人
 └相手の気持ちを考えて書いてあった人…………二人
T では、それぞれの結果に従って、赤えんぴつで自分
 の作品を直しましょう。
C (評価の結果に従って自己調節する。)
T では、直したところを発表してもらいます。
C 私は、場面と感想がまざっていたので、区別し書き
 かえました。感想も少し書き加えました。(読む。)
T とてもよくなりましたね。
C ぼくは、場面が長かったので大切などころだけ残し
 ました。(読む。)
C 私は、感想が不十分だったので、どうやってかわい
 がったか訳を加えました。
T 直す勉強がとてもよくできたようです。これで今日
 の勉強を終わります。 

171
(参考)調節後の児童作品
  <「チロヌップのきつね」を読んで>
 この話は、北の海にあるチロヌップという島に、春にな
るとやってくるじいさんとばあさん・へいたい・きつねの
一家がおこす話です。この話に出てくるきつねの一家が全
部へいたいに殺されてしまう悲しい話です。
    ―中略―
 ちびこが鉄のわなにかかった。父さんぎつねと母さんぎ
つねは、ちびこを助けようとした。
 ぼくは、自分の命がどうなってもちびこと母さんぎつね
を守ろうとして、人のにおいのする所へ出かけていった父
さんぎつねを、とても勇ましいと思った。ぼくが、この時  






 (6) 授業の考察
 この学習は、@読み手によくわかるように、事実と感
想を区別して感想文を書く、A豊かな感想を持つの二つ
をねらって行った。
 この学習に入る前は、右の表からもわかる通り、事実
と感想を区別して書いているものは少なく、あらすじば
かりで、最後に一言感想を書いているものばかりであっ
た。そこで「ごんぎつね」の感想文を教材化し、叙述法
父さんぎつねだったら、きっと人のにおいのする方へとび
出してはいけなかったと思う。
 また、ちびこは母さんぎつねにだいてもらっている時と
てもしあわせだっただろう。それは、母さんぎつねといた
からです。もう死ぬのはこわくなかったんだろう。だって、
やさしい毋さんぎつねにだいてもらっていたんだから。
 この話を読んで、きつねの一家はかわいそうだと思った。
ぼくは、この話に出てくるへいたいのように、つみもない
生き物を殺さないようにしたいです。じいさんやばあさん
のように、やさしい人になりたいです。 

技     能  診断的評価 作品の評価
 事実と感想を区別
    して書く技能
二人  三〇人 
一〇人  四人 
× 二二人  ○人 
感想
の持
ち方
 
思ったこととその訳
を書いている  
三〇人  三〇人 
自分と比べて書いて
いる 
五人  二四人 
相手の立場に立って
書いている。 
一人  二四人 
         

                                                        172
の学習をしたが、これによって児童は、区別して書く書き方と、区別して書くととてもわかりやすいことがわかった。
ところが実際に書いてみると頭ではわかっていてもなかなかうまく書けなかった。そこでもう一度自分の書いたもの
が、書き方にそって書いてあったか自己評価し、調節した。本時の学習後、作品を分析してみると、三〇人(約九〇%)
の児童が、目的にあった書き方ができた。
 感想の持ち方も収集の時から常にいろいろな方法で考えるように学習したので、思ったことだけでなく、感想の幅
が広がり、多くの感想を持ち、書くことができた。
 今回は、感動の場面三つについて感想を書いたが、次の段階として、クライマックスに対して感想を書けるように
し、五・六年で学習する「主題に対して感想を書く」学習へつなげていきたい。         <藤野敦子>



  3 意見・感想を深める叙述過程の授業

 (1) 単元「六年生に向けて ― 自分を考える」  題材「意見・感想を述べる」(五年)
 (2) 単元構成上の配慮
@ 教材の機能
 五年の三学期は、六年生に代わって委員会活動・クラブ活動を進めたり、六年生を送る会を計画・実践したりする
ことを通して、最高学年への自覚と意欲を育てる大切な時期である。しかし、まだその自覚も責任も感じることなく
自己中心の行動をとることの多い子供達である。この時期をとらえ、現在の自分を見つめ、自分の在り方を自覚し、
                                                        173
                                                       〜174
今後への心構えを考え、それを文章にまとめることによって、ともすれば、感覚的・感情的に判断し、行動しやすい
子供達を自覚をもって責任ある行動をするように育てることができると考えた。
A 児童の実態
 文章を書くことにはそれほど抵抗はなくなっているが、この単元のように心構えを問われるような文章は、とかく
「たてまえ」的な言葉を並べ、きれいごとにまとめてしまう傾向が強く、書くことによって考えが深まり行動が深ま
るというねらいには到達できずに終わることが多い。本単元では、そのことを考察し、自分を見つめ、考えを深める
学習法をシミュレーション学習として、単元の中に位置づけた。
B 指導上の留意点
 固定的・概念的な文章を内容豊かなものにするためには、自分を考える ― 自己の内面化を図る ― ための視点を
はっきりさせると共に、考えたことを文章化する技能を身につけることが大切である。その一連の学習活動をシミュ
レーションとしてまとめ、一時間の学習を設定した。ここで学習した学習法によって、六年生へ向けての自分の考え
を内容ある文章にまとめ、単元のねらいに迫りたい。
 (3)単元のシステム(七時間扱い)

学 習 目 標 学 習 内 容 資 料 学 習 方 法 学 習 評 価 
 よい六年生と
なるために、残
された日々をど
のような心構え
ですごせばよい
かを自覚するた
めに、自分の生
活をふり返って
考えたり、考え
たことを具体的
に表現したりし
て、よりよい六
年生になろうと
する意欲や生活
感情を高めるこ
とができる
△自分を見つめて考えをまとめ、生活
 態度の改善に役立てようとすること
△立場を変えて考えたり具体的に考え
 たりして、考えを深めようとするこ
 と
○要旨のはっきりした表現をするため
 に、文章全体の構成を考えて書くこ
 と
○自分の考えを具体的、論理的に叙述
 し考えを明確にすること
○段落と段落との関係が論理的になる
 ように文章を構成すること
○根拠を押さえて書くこと
・文と文との意味のつながりを考えな
 がら、指示語や接続語を的確に使う
 こと
・文と文との接続の関係に注意して文
 章を構成すること
アウト
ライン
1 自分の生活をふり返って問題点を
 見つけ、根拠となる事柄とそれに対
 する考えを収集してカードに書く
            (一時間)
2 収集した内容を組み立てて、アウ
 トラインをつくる   (一時間)
3 シミュレーション学習によって、
 表現法を理解する   (一時間)
4 アウトラインに従って要旨の明確
 な文章を書く     (二時間)
5 考えが明確に書かれているか評価
 し調節する      (一時間)
6 清書した文章をグループで読み合
 い、寸評を書く    (一時間)
oいろいろな観点か
 ら書く内容を収集
 して、カードに書
 くことができたか
o筋道のとおったア
 ウトラインを作る
 ことができたか
o考えを表現する方
 法を理解すること
 ができたか
oアウトラインに従
 って要旨の明確な
 文章を書くことが
 できたか

 (4) 本時の学習指導のシステム(3/7 シミュレーション)
@ 教材文
 教師の作成した文を用いた。「指導の実際」を参照されたい。
B 行動目標
 ものごとに対する考えを深く確かなものにするために、メモを手がかりに自分の考えを深めたり、具体的に述べた
りする方法を理解し、自分の考えを具体的・論理的に文章にまとめることができる。
                                                        175
B 学習内容
 △自分の考えを論理的に述べようとすること
 O自分の考えを具体的・論理的に叙述し、考えを明確にすること
 ・文と文との接続の関係に注意して文章を構成すること
 ・文と文との意味のつながりを考えながら、指示語や接続語を的確に使うこと
C 本時の学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 授業の実際

@ 学習目標を確認する(学習意欲を喚起すると共に学
 習の方向を定める。)
T 六年生へ向けて残り少なくなった日を、どんなふう
 にすごしたらよいのか考えて、文章にまとめる勉強を
 していますね。
<板書> 
六年生へ向けて ― 自分の考えをまとめる
  どんなことを書くか、それぞれメモをとりましたが
 今日はメモをもとにして、自分の考えをどのように書
 き表したらよいかを学習します。
<板書> 
メモを手がかりにして自分の考えを書く 
A メモをもとに考えを具体的に述べる表現方法を理解 
 する。(A・Bの文を読み比べ理解させる。)
T プリントを配ります。根拠となる事柄を読みなさい。
 山田さんが、市ケ谷小学校に転校することになった。仲
よしだった女の子達が相談して、山田さんのお別れ会をし
ようと学級会に提案した。ところが、女子は全員賛成した
のに、男子は全員反対した。 
C この事実について、それぞれで自分の考えをまとめ
 て書いてもらいます。@のA・Bの文は、上に書いて
 あるメモをもとにして書いたものです。読み比べて気
 がついたことをシートに書きなさい。 

176
   <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  




目標

 
方法


学習






















 
評価
調節

 
獲得

   

  177
             氏名(        )
  ―<考えを述べる根拠となる事柄>―
  山田さんが、市ケ谷小学校に転校することになった。
 仲よしだった女の子達が相談して「山田さんのお別れ
 会」をしようと学級会に提案した。ところが、女子は
 全員賛成したのに、男子は全員反対をした。 
@ 次のA・Bの二つの文章は、同じメモをもとにして書
 かれたものです。読みくらべて、気がついたことを後の
     に書きなさい。 
男子全員が反対した
ことについての考え
・お別れ会をしてあ
 げないと山田さん
 に悪い
・もう一度みんなで
 相談したらよいと
 思う 
Aの文
 転校していくのにお別れ会を
してあげないと、山田さんに惡
いから、もう一度みんなで相談
してみるとよいと思う。
Bの文
 男子が全員反対したので、山
田さんのお別れ会はしないこと
になった。一年近くいっしょに
勉強した友だちが転校していく
のに、最後の思い出となるお別
れ会もしてあげないのは、山田
 

  さんに悪いと思った。
 もう一度みんなでそのことに
ついて話し合ってみたいと思う。
  ―<読みくらべて気がついたこと>―
oAの文は、メモをただまとめただけ、Bの文は、そ
 の時の内容や、山田さんの気持ちなどなって書かれ
 ているので、Bの文の方が良い。
A 次の文章は上に書かれたメモをもとにして書かれたも
 のです。読んで気がついたことを   に書きなさい。
oそのときの山田さ
 んの気持ち……
 自分だったら……
o男子が反対した理
 由
 女子の提案だから

oこれからどうした
 らよいか
 男子と話し合う
 
 男子が全員反対したとき、山
田さんはだまって聞いていた。
 山田さんはどちらかといえば
おとなしい。それに自分のこと
だからだまっていたのだろう。
でも、心の中ではきっと悲しか
ったと思う。もし、わたしが山
田さんの立場だったら、みんな
に無視されたようで泣いたかも
分からない。
 男子は女子が提案したことだ
ったので、反対したのだろう。

178
  でも、後で考え直したかもしれ
ない。
 もう一度、お別れ会のことや
学級会のことについて話し合っ
てみたい。 
   ―<メモ>―
男子全員が反対したことについての考え
・お別れ会をしてあげないと山田さんに悪い
・もう一度みんなと相談したほうがよいと思う。 
   ―<Aの文>―
 転校していくのにお別れ会をしてあげないと、山田さん
に惡いから、もう一度みんなで相談してみるとよいと思う。 
   ―<Bの文>―
 男子が全員反対したので、山田さんのお別れ会はしない
ことになった。一年近くいっしょに勉強した友達が転校し
ていくのに、最後の思い出となるお別れ会をしてあげない
のは、山田さんに悪いと思った。もう一度、みんなでその
ことについて話し合ってみたいと思う。 
T 気がついたことを発表してもらいます。
 (メモを手がかりに、自分の考えを具体的に述べてあ 
 ることに気づかせ、具体的な表現法を理解させる。)
C Aの文は、男子が反対したことについて思ったこと
 を簡単に書いているが、Bの文は、気持ちがくわしく
 書かれているから分かり易い。
C Aはメモをまとめただけだけど、Bの方は、山田さ
 んの気持ちになって書いてあります。
T 書いた人の考えがよく分かるのは、どちらですか。
C Bの方。
T Bの方が分かりやすいのは、自分の考えをどういう
 ふうに表しているからですか。
C くわしく/C 正確に/C ありのままに。
T くわしくとかありのままとかいうことは、自分の考
 えをどういうふうに書き表したことなのかな……。
C 具体的に書いている。
T Bの方が、自分の考えを具体的に書いてあるから分
 かりやすいのですね。では、具体的に書いてあるとこ
 ろはどこですか。(模造紙にA・Bの文を書き、一文
 ずつ切りはなして、改めて別の模造紙に貼ってふつう  

179
 の文章のようにしてあるものを黒板にはる)
C 「一年近く……山田さんに悪いと思った。」
T いいですか。/C はい。
T (前述の掲示物から、該当の文のところを取り外し
 て)
  この文があるのとないのでは、どちらがよく分かり
 ますか。(当てたり外したりして読み比べさせる)
C ある方が分かります。
T そうですね。自分の考えを書くときには、メモのと
 おりに書くのではなく、メモをもとに、自分の考えを
 具体的に書いた方がよいのですね。(カード提示)
 <CD> 具体的に考えを述べる
B メモをもとにいくつかの観点に従って、考えたこと
 の表現法を理解する。(自分の考えを深めたり、具体
 的に述べたりするための観点について理解する)
T 次に、Aの文章を読んで気がついたことをシートに
 書きなさい。(シートは、二枚目のプリントにかかる) 

T 書いたことを発表してください。
C 相手の立場に立って、考えをはっきりさせています。
T どこを読んで、そう思いましたが。
C 山田さんは……。もし、わたしが……泣いたかもわ
 からない。というところ。

180
T 相手の立場に立って考えているところは………。
C 「心の中では、きっと悲しかっただろう」というと
 ころ。
T ほかに気がついたことは。
C 自分がその立場にたったらということが、よく表れ
 ています。
T どこで分かりますか。
C もし、わたしが山田さんの立場だったら……という
 ところです。/C @の文に比べて具体的に述べてい
 ます。もし、わたしが山田さんの立場だったら……と
 いうことで、自分の立場をはっきりさせています。
T シートに「相手の立場に立っている」という言葉が
 入っている人…(2/3が挙手)「自分の立場をはっきり
 させている」ということが入っている人……(少数)
T (Bの文も、前の@の文と同じように書いたものを
 掲示。「でも、心の……泣いたかも分からない」の部
 分を外して)この文があるのと無いのでは、どちらが
 分かりやすいですか。 
C ある方。
T そうですね。自分の立場や相手の立場をはっきりさ
 せると、考えが深まりくわしく述べることができます
 ね。



 
 相手の立場に立って考える。    
 自分の立場をはっきりさせて考える。 
T 相手の立場に立ったり自分の立場をはっきりさせて
 考えを述べるとき、このままだと述べやすいですか。
C ちょっと考えが出にくい。/C 述べにくい。
T そういうとき、どんな言葉をもってくると、次の文
 が続けやすいですか。
C もし/C でも/C しかし
T そういう言葉をもってくると、考えが述べやすいで
 すか。ちょっと心の中で言ってみましょう。いいです
 か。では、今まで勉強したことをまとめてみます。自
 分の考えを述べるときは…(三枚のCDを示しながら)
  具体的に述べる         
  相手の立場に立って考える     

181
  目分の立場をはっきりさせて考える
C 学習した表現法に従って、自分の考えを文章に書く。
 (一連の表現活動を学習することがねらいである)
  Aの文を読んで気がついたこと
 Aの文は、男子が「おわかれ会」に全員反対したこ
とで、山田さんは、口には出さなかったけれど、心の
中で思ったことを「自分だったら」と考えていってい
る。
 相手の心で思っていることをよく考えて、もし自分
が相手の立場になったら………。 
B 今までの学習の中で分かったことをもとにして、今度
 は自分の考えを次にまとめて書いてみましょう。
 (一行おきに書くようにしてください。)
   (                   )
 メモ   
                 _
 o男の子は、どうしてあの時、それも
                 _
 o全員が反対したのだろう? みんな
                 _
 oはずかしがって反対したのか? で
 oも、一人でも勇気を出して賛成してくれなかったのだろ
                          _
 oう? 男の子だって気持はよくなかったと思う。もし、
                          _
 o自分が山田さんの立場だったら、どんな気がするかな?
                          _
 o私だったら悲しくて泣いてしまうと思う。山田さんは、
                          _
 oとっても悲しかっただろうな。かわいそうだな。   
                          _
 oもう一度、五年二組全員で話し合ってみたい。    
                           
こ   と   が   ら 結果
考えを具体的に述べてある   ○
自分の立場をはっきりさせて考えを述べてある   ○
相手の立場に立って考えを述べてある   ○
T この三つのことに気をつけながら、自分の考えをま
 とめて書きましょう。文は、一行おきに書いてくださ
 い。(評価調節の際、書き足したり書き入れたりする
 ため。)

182
 C (書き出す。十分の予定だったが少しのびた。)
D 学習評価をする(評価基準を明らかにして自己評価
 する。)
T チェックリストに従って、自分で評価してみましょ
 う。(観点は前出の三点)
  ただ「悪いと思った。」というふうに書かないで、
 なぜそう思ったのか理由を具体的に書いてある人は○
 書けない人は×、少しは書けてると思う人は△にしま
 しょう。
  「もし、……だ。」というふうに、自分の立場をはっ
 っきりさせて書いてあったら○、書けてなかったら×
 です。
  相手の立場に立って書いてあったら○、書けていな
 かったら×をつけましょう。△のつけ方は、前と同じ
 です。(C 自分で読み直したりとなりと話し合った
 りしながら、評価した結果を記入している。)評価の
 結果は次のとおりである。
 ・具体的に考えを述べる
  ○…一六人  △…十一人  ×…八人
 ・相手の立場に立って考える
  ○… 二三人  △… 八人  ×…四人
 ・自分の立場をはっきりさせて考える
  ○… 二八人  △…一○人  ×…七人
 ・接続語を使って考えを述べている
  でも……9/35   だけど……9/35
  もし……17/35   たぶん……3/35
B 評価の結果に基づいて自己調節をする
T ×のついた人は、そのことについて書き足したり書
 き直したりしましょう。書き足す人は、空いている行
 を使って書き足しなさい。書き直す人は、その部分に
 ―をひいて、その上のあいている行に書きましょう。
 消しゴムは使わないように。
  <Aの文を読んで気がついたこと>
 @のBの文は、山田さんの気持ちだけを考えている
けど、Aの文は、山田さんの気持ちと、自分の立場両
方を考えている。 

183
B 今までの学習の中で分かったことをもとにして、今度
 は自分の考えを次にまとめて書いてみましょう。
 (一行おきに書くようにしてください。)
   (                  )   
 メモ 
 o「山田さんのお別れ会をしよう」と
                  
 o提案した。ところが、女子は、賛成
    
 oしたのに、男子は、全員反対した、
           
oっというのは、おかしい。山田さんが女の子だから、反
              
・対したのだと思う。心の中では男子も、賛成したかった
                          

oと思うのでもう一度、話し合った方がいい。     
こ   と   が   ら  結果
考えを具体的に述べてある  ×
自分の立場をはっきりさせて考えを述べてある  ×
相手の立場に立って考えを述べてある  ×
 【児童は、各自で読み返して書き足したり書き直した
 りしている。左記のは、その一つである。)
F 評価の結果を確認する
T ×のところが○になるように、調節できましたか。
 自分でもう一度読み返してみましょう。
 (各自で、もう一度読み返させ、三つの観点に従って
 書き直せてあることを確かめさせる。)
B 行動目標の基準に達する
T 三つのめあてに注意しながら、自分の考えを文章に
 まとめることが出来ましたか。だれか、読んでみてく
 ださい。
   <K・Kの文>
 山田さんが転校してしまうので、いい思い出を作ってあ
げたいと学級会に提案したことに対して、男子は反対した。
 でも、男子は本当は反対するつもりはなかったと思う。
本当は賛成したかったんだと思う。
 しかし、山田さんにはいやな気分にさせてしまって惡か
ったと思う。山田さんはおとなしいから文句はいわなかっ
たけど、私ならとてもいやな気分になって泣いてしまうか   

184
もしれない。山田さんも心の中では、いやだったと思う。
 でも、最後には賛成してくれたのでよかったと思う。 
   <M・Uの文>
 ぼくは、反対をしてしまった。ぼくは、もし男の子が転
校するのなら、賛成していたかもしれない。
 ぼくは、転校生だ。ぼくが、向こうの学校で転校すると
き、男の子は全員「お別れ会」に賛成してくれた。女子も、
少し賛成してくれたのでうれしかった。
 だから、山田さんのお別れ会もやってあげたいと思っ
た。山田さんも、「みんな賛成してくれたらいい。」と思っ
ただろうな。
 みんなともう一度、話し合ってお別れ会のことを決めよ
 う。 
                   <小畑多恵子>





     四 シミュレーションの完全習得学習はこのようにすすめる

    ミュレーションとはどんな学習か

 シミュレーション(Simulation)というのは、「模擬学習」のことである。以前からよく行われていた「ごっこ遊
び」「ごっこ学習」を科学化し、工学化した新しい国語科学習法である。小学生が糸と竹筒で作った電話器で、電話
での応待の仕方を学ぶ。また、模擬紙幣で売り買いし金銭計算の仕方を学ぶ。これが「模擬学習」である。飛行機の
操縦士は必要な諸計器を備えた模擬操縦機を作り、それによって操縦法を習得することはよく知られている。飛行機
の操縦法を体得することは容易なことではなく、長い期間と多くの努力と十分な思考を必要とする。それらの複雑な
経験や活動についての諸条件をとり除いてはだかにし、基本的な要素だけをとり出して学習の成立する過程に即して
                                                        185
編成したものがシミュレーションである。
 国語科の学習指導の方法は次の三つである。一つは学習指導法の中核をなす「機能的学習(経験学習)」である。
二つはこの「シミュレーション」の方法で学習の経済化、効率化を図っている。三つは、この両者によって学習し習
得した国語の能力を定着、習熟させるためにくり返し行う「練習」の方法である。
 シミュレーション指導も、機能的学習と同じように学習の興味や学習の必要性を自覚させて学習の意欲を喚起し、
活発な学習活動をさせるようにすることは言うまでもない。つまり、主体的に学習に取り組み、主体的に学習活動を
行うよう指導する。その場合、各過程ごとに学習の結果を評価し、調節してすべての児童が完全に習得することをめ
ざして指導する。即ち、シミュレーションでは、完全習得をめざすことを原則としている。


  1 主語・述語の照応に注意して読むシミュレーション


 (1) 単元「ぶんのよみかた」  教材「自作のシミュレーション教材による」(一年)
 (2) 単元構成上の配慮
@ シミュレーション教材の機能
 シミュレーション学習を行うには、シミュレーション過程モデルに従って、各学習過程で行う適切な教材を作成す
る必要がある。大切なことは、教師がいろいろ説明して分からせるのではなく、児童に実際に言語活動を経験させる
ことである。つまり、各過程で指導する事項(技能、知識、用法など)が効果的に学習できるような教材を作成する。
                                                        186
 本時は「主語・述語の照応に注意して読む」活動を通して、主述の照応した文に対する文型感覚を育てることをね
らった。主述の照応した文を読んで、その内容に合う絵を合わせたり、主部と述部を続けたり、分けて書いたりして
各過程で評価調節しながら学習を進める。なお、本時の教材は児童の作文の中から適切な文を選んで教材化した。
A 児童の実態
 文の構成指導では、低学年の単文の文型から、中・高学年の複文・重文など複雑な文型へと段階を経て指導する。
一年生では「何か」に対して述語が続かないことがよく見られる。また、「ぼくはうちへかえって、ぼくは本をよみ
ました。」のように主語が重なっている文、「でんしゃにのって、しゅうてんまでのりました。」のように述語が重な
っている文など、何がどうしたのかよくわからない文を書くことが多い。このような児童の実態の中で、主語と述語
が照応した基本文型の読み書きができるとともに、読み手によく分からない文は自分でもおかしいと感ずるような文
法意識が身につくよう指導する。
B 指導上の留意点
 主語・述語の照応に注意して読んだり書いたりすることは、一年生のうちから自分の考えを確かにして書く、伝え
るという上で大切なことである。指導要領にも一年生の言語事項の内容として「文の中における主語と述語との照応
に注意して読み、また、書くこと」とある。一年生は、作文を書かせると、「何は、何をしました」「だれは、どこへ
いきました」という文型をよく使う。特に、「何がどうする」「何がどんなだ」「何がいる(ある)」の基本文型のうち
本時は「何が、何を、どうした」をとり上げ、主語・述語の照応した文が正しく読めたり書けたりできるように指導
する。
                                                        187
 (3) 単元のシミュレーションシステム(一時間)

学 習 目 標 学 習 内 容 資 料 学習方法 学 習 評 価
 主語と述語の照応した文
型(なにが なににどうし
た)に注意して読み、そ
の意味を正しく理解すると
ともに、文型感覚を育てる
ことができる 
 主語・述語の照応に注
意して読むこと

 主語・述語の照応した
文に対する文型感覚を
育てること 
 「シミ
ュレーシ
ョン教材」

学習シー
卜 
教材文を読
o主語と述語の照応した文型に注意して読む
 ことができたか 
o主語と述語の照応した文の意味を正しく理
 解することができたか
o文型感覚が身についたか

 (4) 本時の学習指導システム
@ 学習単位(自作のシミュレーション教材)
 一年生一学期の児童を対象にした学習である。児童が自己学習できるように問題文にリードをつけて作成した。

  ぶんの よみかた         (教材文 一)
☆ はっきりしたこえでよみましょう。よんでから ぶん
 とおなじえを せんでむすびましょう。
@ ぼくが、ほんを よみました。  ・   ・
B おとうとは、えを かきました。 ・   ・  
B うさぎが、くさを たべました。 ・   ・  
C にわとりは、みずを のみました。・   ・  
                    (教材文 二)
こえをだしてよみましょう。よんだら、なにが(は)
のところを、あかしかく  でかこみましょう。(なに
を どうした。)のところに、―をひきましょう。

 (れい) ぼくは なわとびを しました。

@ わたしは おにごっこを しました。
A おねえさんが うたを うたいました。
B あさがおが めを だしました。
C つばめは そらを とびました。


oおわったら、よみましょう。    (教材文 三)  

188
 まえのぶんをもう一どよみましょう。よんで、かいて
 あることがわかったら、二のうえのことばとしたのこと
 ばをつづけましょう。またよみましょう。
@ ぼくが、  ・    ・ えを かきました。
B おとうとは、・    ・ ほんを よみました。
B うさぎが、 ・    ・ みずを のみました。
C にわとりは、・    ・ くさを たべました。 
のぶんを なにが(は)と、○○ましたの二つにわ
けて、つぎの    にかきましょう。
                       
                       
                       
                       
oおわったら、よみましょう。    (教材文 四) 
 このぶんのことがかいてあるえに、○をつけましょう。かいてあるおはなしとあうえを、せんでむすびましょう。
 うんどうかいを やりました。わたしたちは、たまいれを しました。二ねんせいは、つなひきを しました。三ねんせい
は、おおだまを はこびました。
 みんな、いっしょうけんめい やりました。うちのひとたちが、おうえんを して くれました。
                                   (絵は「授業の実際」参照)  (教材文 五) 

A 学習目標
 主語と述語の照応した文型( 何が  何をどうした )に注意して読み、その意味を正しく理解するとともに文
型感覚を育てることができる。
B 学習内容
                                                        189
 ○主語・述語の照応に注意して読むこと。
 ○主語・述語の照応した文に対する文型感覚を育てること。
C 完全習得をめざすシミュレーション過程モデル
○基本文型を提示する。
 ○基本文型を読んで、意味を理解する。
 ○意味に従って基本文型を組み立てる。
 ○基本文型を主部・述部に分ける。
 ○基本文型に注意して文章を読む。
D 学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 指導の実際

@ 学習の目標と方法を知る
T きょうは、「だれが、何を、どうしたのか」がよく分
 かる文の読み方の勉強をしましょう。
 <板書>  なにが   なにを   どうした
T 先生が学習シートを用意しました。学習シートに書
 いたり、みんなで話し合ったりしながら、楽しく勉強
 していきましょう。(以下、シミュレーション教材を
 使って学習する。経験学習と同じように、学習しよう 
 とする興味や必要性を一年生なりに自覚させ、あとは
 シミュレーション教材に従って進める。)
A 基本文型を提示し、意味を理解する(教材一)
T これは、みんなが書いた絵日記の中から先生が選ん
 だ文です。(教材文一を提示)
@ ぼくが、ほんを よみました。
A おとうとは、えを かきました。
B うさぎが、くさを たべました。
C にわとりは、みずを のみました。
 

  190
    <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  



目的

 ↓
学習

 ↓
評価
調節
 ↓
学習

 ↓
評価
調節
 ↓
学習

 ↓
評価
調節

 ↓
学習

 ↓
評価
調節

 ↓
学習
 
 ↓
評価
調節
 ↓
獲得

  

191
T さあ、読んでみましょう。
C (いっせいに音読する。)
T 本を読んだのは、だれですか。
C ぼくです。/C いいです。
T 本を読んだのは、ぼくですか。
C そうです。/C ぼくです。
T おとうとは、何をしましたか。
C えをかきました。/C いいです。
T (板書) おとうとは、 えを かきました
 (提示した文型に、なにが  なにを どうした に
 分けて、しるしをつける。「何が書いてあるか、わか
 りましたか」「はい、わかりました」というように簡
 単にすませないで、学習シートにしるしをつけさせ、
 具体的に言わせてみることによって意味の理解が深ま
 るのである。)
T では、みんなで読んでみましょう。
C (なにが なにを、どうした に分けて、いっせい 
 に読む。)
T このように分けて読むと、「なにが」「なにを、どう
 した」かがよく分かりますね。
T 何が書いてあるか分かりましたから、文と同じこと
 をしている絵を線で結びましょう。
C (教材文一を読みながら、文と合っている絵を線で
 結ぶ。学習の方法が分かり、興味がもてたらしく、全
 員熱心に学習する。比較的易しいせいか一人も油断す
 る児童はいない。シミュレーションでは内容の理解が
 むずかしいものは適切ではない。児童は学習に成功す
 ることによって、それなりの思考力や認識力が育てら
 れる。)
T 線で結べたら、答合わせをしましょう。(自己学習
 の結果は一年生といえども教師の助言、共同学習によ
 って自己評価させる。)
T この絵は何をしている絵ですか。
C 本を読んでいる絵です。
C うさぎが草を食べている絵です。  

192
T 「ぼくが、ほんをよみました」という文と合ってい
 るのは、この「本を読んでいる絵」ですね。みんな合
 っていますか。(全員、合っていることを確認して)
 みんな合っていてよかったですね。大きな○をつけま
 しょう。(このように、@主述の照応した基本文型を
 提示し、Aその文の意味を理解し、B基本文型の確認
 の過程をたどって学習する。)
B 文の意味を理解し、主語と述語の照応した基本文型
 を組み立てる(教材文二)
T 小さい声で読んでみましょう。
C (いっせいに、意味を理解しながら小さい声で音読
 する。「前と同じだよ」という声。)
T もう何か書いてあるかわかりましたね。先生が、い
 じわるをして文を切ってしまいました。お話がよく分
 かるように続けてください。
C (教材文二を学習する。教師は机間巡視し、方法が
 分からない児童を個別指導する。)
T 「ぼくが、くさをたべました」でいいですか。  
C おかしい。/C うまく続かない。
T 「にわとりは、本を読みました」でいいですか。
C ちがいます。/C 「みずをのみました」です。
T どうして、それが分かりますか。
C 水をのんでいるのは、にわとりだからです。
C 前の文を見て、合っているかどうか確かめました。
T 「なにが」「なにをどうした」が、うまく合っている
 からですね。正しく線が結べたか調べてみましょう。
 (共同学習によって、正しい主述の照応を組み立て、
 各自に自己評価させる。)
T まちがった人はいませんか。この問題も全員できま
 したね。大きな○をつけましょう。
C 基本文型を主部と述部に分ける(教材文三)
T この文も、みんなの書いた作文の中から先生が選ん
 だものです。「なには(が)」のところを赤で囲み、「な
 にを、どうする」のところに線を引く学習です。
C (教材三を使って主部と述部を読み分ける。)
T (新しい学習の方法であるから、例文を使って十分  

  193
 その方法を指導する。なお、学習は全員ができるまで
 待つ。特に時間がかかる児童には個別指導をする。)
T できたら発表してもらいましょう。
C 「わたしは おにごっこをしました。」と書きまし
 た。
C 何がは「わたしは」で、何を、どうしたかというと
 「おにごっこをしました」だからです。(と、それぞれ
 の文について主部と述部を児童に言わぜて、その分け
 方を確認する。)
T 自分の学習シートを見てください。(自己評価させ
 る。四題ともできた児童が二四人(七〇%)であるこ
 とを確認し、学習調節をさせる。)
T まちがった人は、「何々は、何々が」のところはど
 こか考えてもう一度読み直してください。また、「何
 を、どうしたのか」を考えて、分かったらそこに
 を引くのです。(主部と述部を分けることにつまずいた
 一一人には条件を示して調節させる。調節して正しく
 分けたものを発表させて全員を目標に到達させる。)  
T 次の問題をやりましょう。(教材四は基本文型を主
 部と述部に分けて書く問題、教材三の技能をさらに深
 め習熟させる。机間巡視をし、特に教材三でつまずい
 た児童を中心に個別指導をする。)
T 四つともできた人は何人ですか。
C (三一人、八九%の児童が挙手)
T 「なにが(は)」ができなかった人はいませんでし
 た。「なにを、どうした」の「なにを」を忘れた人が四
 人でした。前の文を読んで「なにを」したのか書き加
 えなさい。(調節したものを教師が確認して次へ進む)
D 主語・述語の照応した基本文型を読む(教材文五)
T (教材文五を提示)この作文のことがかいてある絵
 のところに○をつける問題です。
T 次の作文をみんなで読んでみましょう。
  うんどう会をやりました。わたしたちは、たまいれをし
 ました。二ねんせいは、つなひきをしました。三年生は、
 おおだまをはこびました。みんな、いっしょうけんめいや
 りました。うちのひとたちが、おうえんをしてくれまし
 た。 
 

194
C (教材文五をいっせいに音読する。)
T この作文のことが、どの絵にあるか、絵を見て、あ
 ったら○をつけなさい。
C (教材文五の中の基本文型「なには(が)」「なにをど
 うしたか」を読んで、その意味を理解し、文型の確認
 をする。)
T どこに○をつけま
 したか。
C 玉人れの絵です。
C つなひきの絵です。
C 大玉送りの絵です。
T 作文に書いてない
 のは、どの絵ですか。 
C かけっこの絵です。作文には、かけっこのことが書
 いてありません。 
T そうでしたね。(正しく主述が読みとれなかった二
 名の児童には個別指導をする。)
T 今日は、 なには(が) なにを、どうした の文を
 読んだり書いたり、くりかえし勉強しました。これか
 ら教科書のお話を読んだり、作文を書いたりする時に
 は、何が、何を、どうしたのかによく気をつけて読む
 ことができますね。
 (主語・述語の照応に注意して読んだり書いたりする
 ことは、一年生の児童にとって基礎的な言語能力であ
 る。しかし、主述の照応しない、おかしな文を書いて
 も直すことができないのが児童の実態である。本時の
 シミュレーション学習のように、具体的に主語・述語
 の照応した文を読む学習をくり返し経験させることに
 よって、児童の文法感覚を育て、正しい文法意識を高
 めることができる。)        <辰島さよ> 

                                                        195


  2 根拠を明らかにして意見を述べるシミュレーション


 (1) 単元「根拠を明らかにした意見の述べ方」  教材「自作のシミュレーション教材による」(六年)
 (2) 単元構成上の配慮
@ シミュレーション教材の機能
 シミュレーションの指導は、シミュレーション指導過程に従って学習を進めていくが、そのためには、各指導過程
で学習する適切な教材を作成する必要がある。六年生の児童に、説得力のある意見文を書く力をつけるには、根拠を
明らかにし、根拠に基づいて自分の意見や主張を述べる技能を身につけることが大切である。そのため、シミュレー
ション教材として、事実と意見を区別し、根拠の明らかな意見の述べ方を理解する教材、根拠を明らかにした意
見の書き方が分かる教材の二つを用意する。この二つのシミュレーション教材を学習したあと、「忘れ物」について
根拠をはっきりさせた意見文を実際に書かせる。すべて児童の作文を素材に、教師がその目的に合わせて自作した。
A 児童の実態
 高学年になると、意見や主張を述べるためには具体的な事実を見つめ、その根拠に基づいて書いたり話したりする
ことが重視される。しかし、本学級の児童は、いくつかの事実を並べただけで、「…したらよいと思う」という消極
的な意見や一般的な感想で終わってしまうことが多い。対象をしっかり見つめ、自分は、「このようなことから、こ
う考える」という根拠を明らかにして、説得力のある意見文を書く力をすべての児童につけたいと考える。
                                                        196
B 指導上の留意点
 本来ならば、児童が意見文を書く過程で機能的に経験学習として指導すべきであるが、児童の実態の上から学習の
効率化を考えてシミュレーション学習を行う。根拠を明らかにして意見を述べる技能を、経験学習の模擬学習、つま
り、シミュレーションによって機能的学習と同様な、あるいは、それ以上の学習効果をあげようとするものである。
また、技能を完全に習得することによって、認識力や判断力を養い、人間性に培うことをめざすものである。
 (3) 単元のシミュレーションシステム(一時間)

学 習 目 標 学 習 内 容 学習資料 学 習 方 法 学習評価
 「根拠を明らかにした意見
の述べ方」を理解しその技能
を伸ばし、論理的思考力を育
てることができる 
o事実と意見を判別し
 て書くこと
o根拠を明らかにして
 意見を述べること 
シミュレー
ション教材

学習シート 
1 学習の目標を確認する
2 事実と意見の書き分け方を理解する
3 根拠を明らかにした意見の述べ方を理
 解する。
4 根拠を明らかにして意見を書く 
 根拠を明ら
かにして意見
を書くことが
できたか 

 (4) 本時の学習指導システム
@ 学習単位(自作のシミュレーション教材)
<教材文@>(「事実と意見を区別し、根拠の明らかな意見の述べ方を理解する」教材)

 きのうの夕方、お使いに行く途中のことだった。ぼくの後ろから、目にも止まらぬ早さで、ベルも鳴らさずに、追いこして行
った自転車があった。その上、自転車は二人乗りで、しかも、すぐ近くの横断歩道を一時停止もせずにわたってしまった。もの
すごいスピードを出し、その上、二人乗りすることは、バランスもくずれやすく、そのためのけがも大きく危険である。また、
最近、一時停止をしないための自転車による事故も多いと聞いているので、よく気をつけなければいけない。けがをしてからで
は、もうおそいのである。 

                                                        197
<教材文A>(「根拠を明らかにした意見を書く」書き方の教材)

  サッカーゴールのあつかい方について
 わたしはよくサッカーゴールのあみに、ぶらさがっている人を見る。また、あみの上に、わざとボールを乗せて、下からあみ
を引っぱって、ボールを落として遊んでいる子どもも見る。あみによりかかって、話をしている人もいる。こうなったら、シュ
ートをした時、きっとボールがぬけてしまうだろう。だから、あみを引っぱってはいけないのだ。あみで遊んでは絶対いけない
のだ。このようなことをすると、みんなもめいわくする。もっと、サッカーゴールを大事にするべきである。 

A 学習目標
 「根拠を明らかにした意見の述べ方」を理解し、その技能を伸ばし、論理的思考力を育てることができる。
B 学習内容
 ○事実と意見を判別して書くこと
 ○根拠を明らかにして意見を述べること
C 完全習得をめざすシミュレーション指導システム
 ○学習目標を確認する。
 ○学習方法を理解する。
 ○事実と意見の書き分け方を理解する。
 ○根拠を明らかにした意見の述べ方を理解する。
 ○根拠を明らかにして意見を書く。
                                                        198
D 学習指導過程(次ページ参照)
 (5) 指導の実際

@ 学習目標を確認する
T 前に、意見文を書いてもらいましたが、一つだけ十
 分に書けていないところがありました。みなさんが、
 意見文を書く時に、いちばん大切なことは何でしょう。
C 説得力のある文章を書くことです。
T そうですね。(カード提示)
  意見文――→説得力
T 説得力のある意見文を書くには、どんなことが大事
 ですか。
C 文末を強く言い切る形にすることです。
C 文末を、「……したいと思います」ではなく、「……
 したい」とか「……します」のように、はっきりと言
 い切ります。
C 事実と意見をはっきり分けて書くことです。
T それも大事ですが、はっきり言い切るためには、意
 見の根拠が、具体的にはっきりしていなければ、強く 
 言い切れませんね。
  そこで、この時間は、「根拠を明らかにして意見を
 述べる」述べ方を学習します。(カード提示)
 <学習目標> 根拠を明らかにした意見の述べ方
 (よい意見文を書く条件として、@要旨が明確なこと
 B文章構成が論理的なこと B読み手を説得する材料
 があること C根拠に基づいて意見が述べられている
 こと、などが考えられる。本時のシミュレーションは
 そのうち、第六学年の指導要領にある「根拠を明らか
 にし、それに基づいて自分の意見や主張を述べること
 (表現)」の技能の完全習得をめざしている。)
A 学習方法を考える
T 根拠を明らかにした意見の述べ方を勉強するには、
 どんな方法で学習していきますか。
C 事実と意見を書き分けるには、どうしたらよいか考
 えます。 

  199
   <学習指導過程>
過程 指導 学           習  評価・作業・その他  




目標




方法






学習









評価



調節


学習


評価



調節


獲得

  

200
C 根拠を明らかにした意見は、どんな書き方をすれば
 いいのか調べます。
C 実際に意見文を書いてみて、根拠が明らかかどうか
 調べてみます。
T 今日は、教材を二つ用意しました。まず、教材@を
 使って、「事実と意見を区別する」「根拠の明らかな意
 見の述べ方を理解する」勉強をします。次に、教材A
 を使って、「根拠を明らかにした意見を書く」書き方
 を勉強します。最後に、「忘れ物」について、「根拠を
 はっきりさせた意見」を書いてもらいます。
 (学習目標に到達するための学習方法を話し合って、
 次のように板書する。)
 @ 事実と意見を区別する。
 A 根拠を明らかにした意見の述べ方がわかる。
 B 根拠を明らかにした意見に書き直す。
 C 根拠を明らかにして意見を書く。 
B 事実と意見を区別する
T 教材@を読んで、事実と意見を分けてください。 
C (事実と意見を読み分ける自己学習をする。)
T できたようですから、この意見文を事実と意見に分
 けてください。
C 最初の「きのうの夕方」から、「わたってしまった」
 までに事実が書いてあって、そのあとには、全部意見
 が書いてあります。
C 第一段落が事実で、第二と第三の段落は意見です。
T この区別ができた人は? (全員挙手) 

201
C 意見とその根拠を明らかにする
T では、第二・第三段落を読んで、意見の根拠になっ
 ている部分に、波線を引いてください。
C (各自読んで、根拠と意見を区別する。)
T 第二段落をAさん発表してください。
C 「ものすごいスピードを出し、その上二人乗りする
 ことは、バランスもくずれやすく」までが、意見の根
 拠です。「そのため」からあとが、意見です。
C 「バランスもくずれやすく」は、意見ではありませ
 んか。
C わたしもそう思います。「バランスもくずれやすく」
 は根拠ではなく、これは、書き手がそう思った意見だ
 と思います。
T よく気がつきましたね。その通りです。
  それでは、第三段落をBさん発表してください。
C 「一時停止をしないための自転車による事故も多い
 と聞いているので」までが根拠で、あとは意見です。
T それでは、これを基準にして、評価してください。 
C (各自、自己評価。学習調節をする。)
T この教材文は、第一段落が事実、第二・第三段落が
 意見で、事実と意見をはっきりと分けて書いています。
 文末も、はっきり言い切っていますね。
  それから、みなさんは、意見と根拠をはっきり区別
 しましたが、その根拠は、確かな事実に基づいている
 かどうか、もう一度調べてみましょう。根拠としてあ
 げた「ものすごいスピードを出し、その上二人乗りす
 ることは」は、どんな事実に基づいていますか。
C 第一段落の事実の中の「目にも止まらぬ速さで」と
  「二人乗りで」という事実に基づいています。
T 次の「一時停止もしないための……」の事実はどう
 ですか。
C 「一時停止もせずに」と事実のところに書いてあり
 ます。
T そうすると、この意見文は、事実に基づいて意見を
 述べていることが分かりますね。
  これが、根拠を明らかにして意見を述べるというこ 

202
 とです。
B 根拠を明らかにした文章に書き直す
T では、教材文Aをよく読んで、まず、事実を述べて
 いる部分と、意見を述べている部分に分けてください。
 (OHP投映)
C (読んで、事実の部分と意見の部分を□で囲む。)
C 事実は、「わたし」から、「人もいる」までで、あと
 は意見です。
T (全員が読み分けられた。投映した文章について、
 事実は青色、意見は赤色で囲む。)
T それでは、意見のところをよく読んで、意見の根拠
 がはっきり書いてあるかどうか、調べてみましょう。
C 「ボールがぬけてしまうだろう」と書いてあって、
 文末が言い切りになっていません。
C 「こうなったら、シュートをした時、きっとボール
 がぬけてしまうだろう。」という文で、「こうなった
 ら」では、「ボールがぬけてしまう」という意見の根
 拠が何だかはっきりわかりません。だから、どうなっ 
 たかを具体的に書くといいと思います。
T みんなもそう思いますか。では、ここのところを根
 拠を明らかにした意見文に直しましょう。まず、直す
 ところに線を引いておきましょう。
C (各自考えて、書き直す。)
T では、発表してもらいます。
C 「こうなったら」のところを、「サッカーゴールにぶ
 らさがったり、よりかかったり、あみを引っぱったり
 していると」にするといいと思います。
 (教材A、OHPに投映して共同学習。)
  サッカーゴールのあつかいについて
 わたしはよくサ。カーゴールのあみに、ぶらさがって
いる人を見る。また、あみの上に、わざとボールを乗せ
て、下からあみを引っぱって、ボールを落として遊んで
いる子どもも見る。あみによりかかって、遊んでいる人
もいる。 
 こうなったら、シュートをした時、きっとボールがぬ
けてしまうだろう。だから、あみを引っぱってはいけな
いのだ。あみで遊んでは絶対いけないのだ。 

203
 このようなことをすると、みんなもめいわくする。も
っと、サッカーゴールを大事にするべきである。 
   @ 事実と意見……………自己評価      
   A 根拠となる事実………自己評価       
T 「していると」どうなるのか、もう少しくわしく。
C 「あみが破れてしまうので」を入れるとよいと思い
 ます。
T そう書き直すと、どうして根拠が明らかになるので
 すか。
C 「こうなったら」は、その前に書いてある事実をさ
 しているからです。
C 第一段落に書いてある事実に基づいて、それを根拠
 にして意見を書くからです。
T そうすると、前に書いてある事実を取り上げて、そ
 れをそのまま根拠として書けばいいのですね。それで
 は、そのように直して読んでごらん。
C うまく続かないから、やっぱり「このように、サ。
 カーゴールにぶらさがったり、よりかかったり、あみ 
 を引っぱったりしていると」のように、「このように」
 を書き加えたほうがいい。
T いいところに気がつきました。
  では、「このような」のところは、どう直せばいい
 のですか。
C (手があがらない。)
T 「このような」ことをすると、どうなるの?
C みんながめいわくします。
T どうして迷惑するの?
C サッカーができなくなるからです。
T それでは、どう直したらいいですか。
C 「そのようなことをすると、サッカーができなくな
 って、みんなもめいわくする」というように直します。
T そうですね。「みんながめいわくする」という意見
 の根拠を、「サッカーができなくなる」というように
 具体的に書くといいのですね。
E 学習結果の評価と学習調節
T それでは、今まで学習したことで、評価の基準ほど 

204
 うなりますか。
C 意見の根拠が、はっきり書けていることです。
C 意見の根拠となる事実が書けていることです。
C 意見の根拠となる事実が具体的に書けていればいい
 のです。
T そうですね。これが、評価の基準になります。
 <板書> 意見の根拠となる事実を具体的に書く
T では、自己評価をしてください。
C (各自評価する。評価表に記入する。)
T 「こうなったら」のところが書けた人
 Oサッ力ーゴールにぶらさがる┐ の三つが書けたも
 Oよりかかる        ├ の、三〇名中、二
 Oあみを引っぱる      ┘ 五名
T 「このような」のところが書けた人
 O書き直せた人……………………三名
 ○少し足りなかった人…………二五名
 O書き直せなかった人……………二名
T 自己評価して、誤っているところや足りない点のわ 
 かった人は、書き直してください。(それぞれ学習調
 節をし、時間内に九五%の児童が学習目標に到達す
 る。)
F 根拠を明らかにした意見を書く
T 根拠を明らかにした意見の書き方がわかったので、
 今度は、「忘れ物」について意見を書いてください。
 (シミュレーション学習は、このように技能をとり立
 てて学習するわけであるが、根拠を明らかにして意見
 を書くことによって、読み手の心を動かす価値を獲得
 し、内容的価値を表現する技能として機能的に考え
 る。)
 <児童の書いた意見文>
   忘れ物をなくす方法について
 このごろ、忘れ物をする人が多い。多い人になると、
十数個もする人がいる。もちろん、ゼロの人もいる。連
らく帳に書いても、忘れる人がしばしばいる。
 この多い忘れ物をなくすために、方法を考えなければ
ならない。 

205
 なくす方法の一つに、まず、学校では、連らく帳にく
わしく写し、家に帰ったら、そろえた物、やったものの
順に、連らく帳にチェックする。
 二つめに、帰ってからすぐやったり、そろえたものを
夜もう一度見直す。
 こうすれば、忘れ物はなくなる。忘れ物をなくすため
に、方法を考えることも大切である。ぼくも、ここに書
いたことを、実行にうつす覚悟である。 

                   <弓家靖絵> 




                                                        206
   ★この研究をともにした会員(○印は編集委員委員長)

 中 沢 政 雄
○中津留喜美男
 松 本 幸 夫
○藤 倉 文 子
○熊 谷 芳 子
○古 川 良 馨
岸  源 三
〇岡 田  脩
 船 越 コ ト
 堀 口 和 正
 能瀬 外喜男
 安 達  衡
 佐々木 恵子
 花 見 安 憲
 佐々木トシエ
 斎 藤  文
 
相 川 正 志
多田 三重子
佐 藤 久 弥
青 木  勉
磯 部 延 之
伊 藤 英 夫
絲川 佐知子
岩 川 益 子
大 芦 和 子
小野寺侑希子
澤 潟 重 代
小畑 多恵子
加 藤 洋 子
川崎 タヅエ
斎 藤 洋 子
佐々木 史枝
 
佐 藤 典 子
清 水 絢 子
鈴木 美智子
鈴木 千鶴穂
高 橋 深 雪
高 野 厚 夫
瀧澤 八重子
立 尾 保 子
舘 林 静 江
辰 島 さ よ
中田 美枝子
永 田 清 子
根 本 祥 子
長谷川恵美子
長谷川  清
原 田 幸 子
 
藤 井 英 子
藤 野 敦 子
二 村 陽 子
堀 口 由 美
本 間 正 江
御園生 幸子
宮 崎 節 子
宮 田 澄 江
山 崎 玲 子
弓 家 靖 絵
米 村 恵 子
渡 辺  薫
八木 貴美子
三浦 ミ ヨ
真 田 定 子
山 口 幸 枝
 






【著者紹介】
中 沢  政 雄

明治40年群馬県に生まれる。小・中・高校教諭,東京都指
導主事,中学校長等を歴任。主著は,「機能的国語教育」「国
語教育近代化の理論と実践」,「完全習得をめざす読解指導
の展開」、「完全習得をめざす作文指導の展開」などがある。
現在,国語教育科学研究所,国語教育科学研究会主宰。月
刊「国語情報」を編集発行。

国語教育科学研究会

昭和36年創立。国語教育の科学化をめざす研究団体。機関
誌「国語教育科学」(月刊)発行。「機能的作文指導」全三
巻,「読解能力の科学的養成法」,「新国語科のよい授業モデ
ル」等の編著がある。
国語科授業の新展開 20
国語科の完全習得学習−その理論と実践−

1985年8月初版刊     中 沢 政 雄
         著 者
                国語教育科学研究会
          発行者  藤  原  久  雄

          印刷所 藤原印刷株式会社

          発行所  明治図書出版株式会社
              東京都豊島区南大塚2-39-5〒170
*検印省略                振替東京6-151318電話(946) 2221
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            ISBN4-1 8-386309-0