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「入門期の国語指導」 1966年6月   明治図書出版  再販 による
           2013年1月   国語教育科学研究所 



              
入門期の国語指導




                       中沢政雄編著


                                            1
    まえがき

 この本は、私ども国語教育科学研究会の一年グループが研究した、「一年の国語教育の理論
・実態・実践」のうち、入門期の部分を取り出してまとめたものである。
 入門期の国語指導については、戦後その重要性が説かれ、熱心に研究も進められてはきたが、
指導理論の貧困、まだ手のつけられていない分野、研究の足りない面などもあって、依然とし
て多くの問題が残されている。私どもは、それらの問題を解決するために、終始一貫、機能的
国語教育理論にもとづいて、全体構造的に、また、科学的、実証的に研究を進めた。現場の十
一人と私とが一体となって、それこそ骨身をけずるほどの精進努力を重ねた。私は、カリキュ
ラムに従って、入学式の日から教室を訪問して、その指導記録を取った。また、私も六回の実
地授業を試みて、実践理諭を検証した。
 この本に収めたものは、すべてこうしたきびしい研究・実践の結果であって、空理・空論・  2
机上の計画・方法は一つもない。私どもは、このような研究協議によって、入門期における、
(1) 児童の言語生活・言語能力の実態を明らかにし,(2) 国語指導の目標、内容、指導計画等
を明確にし、(3) 国語指導の原理と方法論とを組織し,(4) 国語の指導過程、指導法を確立し
たつもりである。
 これらの研究は、入門期国語指導に、一新生面を開いたもの、その理論・実践をはるかに前
進させたものとあえて自負している。おおかたのご批判とご指導を賜わりたい。
       ×        ×
 この本の出版にあたっては、明治図事の園田種子さんにお世話になった。また、国語教育科
学研究会のみなさんの格別の激励をいただいた。あわせしるして感謝の意を表わしたい。
 最後に、私ども一同謹んで、この本を輿水突先生に捧げ、日ごろの学恩に対し、心からお礼
を申し上げたい。
                昭和三九年一二月二六日伊豆修滞寺の旅舎にて
                                中 沢 政 雄

〔研究者〕国科研一年グループ
              東京都目黒区立宮前小学校教諭    井 上   潤
              〃  港区立芝浦小学校教諭     小 川   勇
              〃  北区立滝野川第一小学校教諭  小 高 偉 子
              〃  北区立赤羽小学校教諭     佐 藤 久 弥
              〃  北区立滝野川第三小学校教諭  鈴 木   博
              〃  江東区立臨海小学校教諭    高 橋 敏 志
              〃  墨田区立菊川小学校教諭    多 田 三重子
              〃  文京区立真砂小学校教諭    伴   定 子
              〃  北区立八幡小学校教諭     藤 倉 文 子
              〃  北区立滝野川第二小学校教諭  古 川 良 馨
              〃  中野区立新山小学校教諭    堀 口 和 正
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                                            3
          もくじ

         まえがき
         はじめに……………………………………………… 7
   第一章 一年生−その発達……………………………………11
       一 身体的発達……………………………………………11
       二 社会的発達……………………………………………13
       三 心理的発達……………………………………………15
            知覚の発達想像の発達思考の発達
       四 言語発達………………………………………………20
            音韻の発達語いの発達文の発達一般的
            な言語発達
   第二章 入門期の国語生活−その実態……………… 27
       一 言語環境はどうなっているか………………………27
            調査対象調査事項調査の結果
       二 言語生活の実態はどうなっているか………………38
            絵本をみている子どもよく泣く子ども/返
            事・応答安定感を求める子ども意志表示                4
            のできない子ども気おくれのする子ども
            欲求不満の子ども指示に適応できない子ど
            
       三 聞く話す能力の実態…………………………………46
            指示を聞く能力の実態はどうなっているか
            発音の実態はどうなっているか話す能力の
            実態はどうなっているか
       四 読字力の実態はどうなっているか…………………61
            調査の結果実態の考察
       五 書字力の実態はどうなっているか…………………71
            清音四五字はどの程度書けるか書字力の実
            態はどうなっているか
   第三章 入門期国語指導の考え方と内容…………83
       一 指導の基礎になる考え方……………………………83
            総合的な生活指導のなかで社会的な言語生
            活への適応を考えて機能的なことばの指導
            を中心に国語の基礎指導を目ざして児童
            の国語生活の実態に即して
       二 指導の方法を規定する考え方………………………92            5
            興味・必要・欲求の上に立って活動の目的
            を明らかにして経験させながら段階を迫
            って教材を作りながら機能的に考えて
            個別指導を目ざして区切りをつけて練習
            を重ねて評価しながら
       三 入門期国語指導の内容…………………………… 102
            集団生活に慣れる学習生活に慣れる言語
            生活に慣れる国語の基礎的な技能・態度を
            育てる基礎訓練
   第四章 人門前期国語指導の実践 ……………………108
       一 入門前期10日間の国語指導計画 ………………108
            入門期国語学習指導計画の立て方入門前期
            10日間の国語学習指導計画
       二 人門前期10日間の国語学習指導の実践 ………122
            入学式あいさつをしましょう校庭めぐり
            絵をかこう歌を歌う楽しい遊び持ち
            物調べきのうのこと時間割きれいな花
       三 入門期10日間に学習する発音・文字・語
         句・文法 ……………………………………………161            6
            文字・語句・文法の系統表(1)学習する(読
            む)語句系統表ことばを読みから文字分析
            への学習の基礎としてのことばの整理話し
            ことばの用法の系統
   第五章 入門期国語指導の理論と実践・…………………169
       一 入門期の読むことの学習指導 ……………………169
            入門期の読むことの学習指導の考え方と方法
            読書の準備はできているか読むことの学
            習指導の実践
       二 入門期聞くこと話すことの学習指導 ……………212
            入門期聞くこと話すことの学習指導の考え方
            と方法入門期の聞くこと話すことの学習指
            導の研究と実践
       三 入門期書写作文の学習指導 ………………………239
            書写の指導の考え方と方法作文指導の考え
            方と方法書写の学習指導の実践作文の学
            習指導の記録
       四 評価のためのテスト ………………………………258

                                            7
    はじめに


 国語の学習指導に当たって、その入門期指導の問題が科学的に研究されるようになったのは
戦後のことである。この入門期指導の諸問題を明らかにするためには、次の観点から接近する
のがよいと思う。
(1) 入門期の時期の問題――入学してから何日間ぐらいを入門期とするか。その時期と期間を
 決定する諸条件とについて考える。また、入門準備期・入門期のように、入門期を前期・後
 期に分ける場合の分け方とその考え方の適否を考える。
(2) 入門期の児童の実態の問題――児童の言語能力・言語生活の実態をどうみるか、児童の心
 理的発達の実態をどうみるか、児童の社会的発達の状態をどう押えるか、児童の生理的発達
 の実態をどうとらえるか、児童の発達の状態と入門期の期間、指導内容との関係をどうする
 か。
(3) 入門期指導の目標の問題――入門期指導は何を目標としたらよいか、その目標の考え方立  8
 て方はどうしたらよいか。
(4) 入門期の学習内容の問題――入門期の学習指導の内容は何か。どんなことを指導すればよ
 いか。
(5) 人門期指導の方法の問題――入門期指導の目標・内容と児童の諸能力の状態とを考えて、
 入門斯指導の方法をどう確立したらよいか。
(6) 入門期指導のカリキキュラムの問題――入門期学習指導の目標に基づいて、その内容をど
 のように配列したらよいか。

 本書に記録し、考察し、研究したところのものは、すべて、機能的国語教育理論を基礎理論
として、前記の諸問題について、研究調査し、実践したものである。その学習指導の体系は次
のようになっている。
(1) 入門期の基礎的な学習として、児童の社会性の発達を願う社会生活訓練、児童の学習態度
 の育成を期する学習生活訓練、児童の国語学習の基礎に培う言語生活訓練、言語要素訓練等
 を行なう。
(2) 入門期指導の内容は次のような構造をもっている。
 ア 児童の関心・興味・必要等に基づく機能的主題が学習の中心課題となっている。 つま
  り、児童が関心・興味を持ち、または学習の必要を感じて、喜んで学習しようとする話題
  ・題材で、しかも児童が学習する内容的な価値を含んでいるものが取り上げられている。
 イ 機能的な主題を中心として、入門期の学習に必要な態度・技能・言語等が効果的に養成
  される機能的な言語経験・学習活動が用意されている。
 ウ 機能的な言語を体系的に学習するようになっている。児童が入門期の諸経験をするのに
  必要な言語のうち、特に基礎的な語や文字・言語の用法等を系統的に学習するように計画
  されている。
 つまり、機能的な活動・題材を中心として、機能的な言語活動を組織し、機能的な言語を学  9
習するような全体構造をもっている。
 そのような全体構造的な国語学習の体系に基づいて、その準備としての諸学習・基礎として
の諸学習・基礎としての諸経験、基礎的な諸経験を処理するのに必要な態度・技能およびその
支持要素としての発音・文字・語い・文法等の学習ができるように考えられている。
 しかもそれらは机上の計画ではなく、一年11学級の実践を通して、記録され、研究された
ものである。
 その研究にあたっては、昭和三八年一月から、同志八人、後に二人が毎週一回研究会を開い
て、次の研究を行なった。
 (1) 入門期国語指導の基礎理論の研究
 (2) 入学当初の一年生の生活の実態の把握
 (3) 幼稚園児の言語生活・言語能力の実態の調査
 (4) 入門期10日間の学習指導計画の作成
 こうして、三月末までには、じゆうぶんな準備を整えた。入門期10日間の基本的な学習指
導計画もできた。
 四月六日、入学式を迎え、各学級では、入門期10日間の基本的指導計画に準拠し、各学級
の実態に即してこれが実践研究を行なった。その間に、次のような実態調査と指導法の研究を
進めた。毎週一回の研究会はまことに楽しく、ついに、年間40回あまりに及んだ。
 (1) 読字力の調査、語、文の読みの調査
 (2) 書字力の調査、書写力の調査                            10
 (3) 音韻の調査、幼児音・方言音等の調査
 (4) 聞く話す能力の調査・幼稚園児の言語能力の調査
 (5) 読書レディネステスト
 (6) 児童の言語環境の調査
 (7) 学校における児童の言語生活の調査
 これらの調査研究を通して児童の理解を深めたが、その間、従来明らかにされていなかった
多くの新しい言語事実を発見した。指導内容の研究も、指導法の研究も、そうした実態調査の
結果に基づきながら的確に、能率的に進めることができた。
 毎週実践の結果を持ちよっては比較検討し、反省しながら、一歩一歩前進した。その間には
何回となく、同志の教室を訪問した。私も数回にわたる実地授業を行なって、児童研究・教材
研究・指導法の研究をした。
 以下述べるところは、そのような実践・研究の結果によるものである。
                                            11

 第一章 一年生−その発達



      一年生! 幼いかわいさ、何か新鮮で、ぴちぴちと元気に溢れている。純粋無邪
     気で希望があり、夢がある。そんな感じのする一年生。こういう見方もできる。
      一年生! 妙にはにかみ、取りすましている。水面の草に止まり集まっている水
     すましのような一年生。広い池に放たれた稚魚のように惑い、ためらい、引込思案
     ではっきり物もいえない一年生! こういう見方もできる。
      一年生! いつも止まることを知らない。手を動かし、足を動かし、目を動かさ
     ないではいられない。活動的でしばらくもじっとしていられない一年生。こんな見
     方もできる。
      いったい一年生とはどんな子どもか。どのように理解したらよいのか。一般的な
     一年生=六歳児の姿をえがいてみよう。

   一 身 体 的 発 達

  (表1)               (表2)                    12     

性別\ 身長(cm) 体重(kg) 胸囲(cm)    性別\  身長(cm) 体重(kg) 胸囲(cm)
113.2 19.4 56.7 114.1 19.7 56.7
112.2 18.7 55.1 113.0 19.1 54.6






1 一年生は、身長の増加のいちじるしい、いわゆる第一伸長期にあたっている。文部省が発
 表した、昭和三九年度一年生の全国平均体位は表1の通りである。
  なお、本書の実験の対象となった東京都内昭和三八年度の一年生一、〇〇〇人についてみ
 ると表2のようになっている。(北区滝野川第一、第二、第三小学校、八幡小学校、文京区
 真砂小学校、目黒区宮前小学校、墨田区菊川小学校、中野区新山小学校の一年生)
2 このような身体の発達にともなって、基本的な運動能力も相当に発達し、走ったり、跳び
 はねたり、よじ登ったりして、じょうずにからだのバランスを取ることができるようになっ
 ている。遊び・運動・ごっこ遊びなどに興味を持ち、喜んで体育的行動に参加する。
3 すでに、身体の諸器官はじゅうぶんな発達をとげ、食事・睡眠・排泄等について、基本的
 な習慣ができている。学校における給食指導・自分で用便を果たす習慣の形成なども可能に
 なっている。
4 健康な児童は、盛んな生活力を持ち、よい姿勢でまっすぐに立ち上がったり、きちんと坐
 ったりすることもできる。またこのころまでには、左ききか、右ききかがはっきりする。よ
 い姿勢で机に向かって坐ることはできるが、それをくずさないで作業することはまだじゅう
 ぶんにはできない。                                  13
5 筋肉の発達は、まだ均衛がとれていないで不完全である。大きな筋肉はよく使えるように
 なるが、小さな筋肉は、それほど自由に使えない。正しい鉛筆の持ち方などはなかなかむず
 かしく、まして、適度な力を用いて一定の方向に直線を描いたり、曲線を描いたりすること
 もなかなか思うようにいかない。
6 目と手との協働連絡が発達する。手先を使って操作する技能が目に見えて上達する。折紙
 ・描画・工作・習字など、見て作る、見て書くことができるし、それに興味を持つ。
7 両手で本をささえ、三〇−三五センチぐらいの距離から、初号活字(ポイント)を読むの
 に必要な視力を持っている。
8 調音器官も発達していて、幼児音はほとんど使わずに発音できるようになっている。

   二 社会的発達

1 五歳前後では、生活の中心は家庭であって、両親・兄弟・姉妹・祖父母等への適応がうま
 くできるようになり、そこからしだいに社会性が発達していく。したがって、その社会環境
 は、家族によって構成され、少数の近所の友だちがこれに加わっている程度である。家族よ
 りもさらに広い社会生活に参加するという欲求は、まったくみられないという。
2 しだいに、集団の中で、動き回る。大声を出す。大げさな身振りをする。世話をやく。先
 生にまつわる。はいはいと手をあげるなど、他人の注意を自分のほうに向けたいという欲求
 が起こってくる。
3 自己主張をしはじめる。自分の考えを持つようになり、自分の存在をはっきりと他人に意  14
 識づけようとする。それがわがままをいったり、意地悪をしたりする形となって現われるこ
 ともある。
4 また、何か思うようにいかないと、すねたり、ぐずったり、何かひっかきまわしたり、あ
 たり散らしたりして、行動に訴える。引っぱったり、押したり、打ったりしてけんかをする
 者が多くなる。
5 集団の遊び、集団の行動に対して興味が増してくる。かくれんぼ・きしゃごっこ・動物ご

年齢
 \
 性別
2.6 3.6 4.6 5.6 6.6
 男 50.0 36.9 35.2 42.8
 女 58.1 53.5 48.0 47.0  ―

 っこなどのごっこ遊びなどを喜ぶようになる。
6 座席の前後左右の子どもを意識し、名まえを覚え、
 仲間意識を持ち始め、学校への往復に同じ方向へ帰
 る者同士がいっしょに帰るようになる。また、いっ
 しょに遊ぶようになる。
7 普通、六、七人の仲間でいっしょに遊ぶことがで

 きるようたなる。しかし、このような集団の遊びも一五分間ぐらいしか続かない。
8 集団の遊びの中でも、他の子どもたちには全くおかまいなく、遊びの順番を無視して自分
 だけがたくさん遊ぼうとする。
9 ジャン・ピアジェは、ふたりの六歳児の談話を記録、分析して、その三七%、三九%は自
 己中心性言語(つまり、自己中心的に思考し、行動する)その六三%、六一%が、社会性言
 語(つまり、社会的・集団的に思考し、行動する)であるとし、言語機能の面から、社会性
 の発達をみている。そして、六歳児の自己中心的性格・行動を説明し、一般化している。   15
10 また、牛島義友・森脇両氏も、子どもの言語を分析して、その自己中心性を前ページの表
 のように示している。

   三 心理的発達

1 知覚の発達
1 一般に五、六歳児の知覚は、その対象を詳細にわたって知覚できるようになっていない。
 知覚の分化がまだじゅうぶんでないといわれている。
2 このころの児童は、対象を全体として把握する。お使いに行った。テレビを見た。汽車ご
 っこをしたなど経験、行動を全体的に総括的に把握する。
3 対象を全体的に把握する場合にも、その全体の形体的特徴・経験的特徴をとらえてそれに
 よって、全体を包括的に知覚する。角があるということで、牛全体を知覚する。木がはえて
 いるということで山を捉える。その場合、知覚した部分は、全体との関連において、全体の
 構成要素として知覚したものではない。それは、偶然の興味にかなったもの、自分の注意を
 自然に引いたものなどであって、児童の興味や感情に左右されるものであるといわれている。
4 知覚された物のさまざまな性質を区別する能力は、構成遊び、集合遊びなどのように、そ
 の構成要素・構成部分を具体的に、手を使って操作し、構成することによって養成される。
 また、対象物を絵に書くことによって、その大小・遠近・構成部分などの性質を知覚するよ
 うになる。しかしながら、一年入学当初は、まだ描画における遠近閲係・大小関係・全体と
 部分との関係などは、あまり問題にしない。おとなが子どもより小さかったり、汽車より人  16
 の方が大きかったり、遠くの物が近くのものより大きかったりすることは、あまり問題にし
 ていない。
  また、ことばを習得することによって、知覚もまた分化され、要素化され、知覚の区分が
 明確になってくる。色についてのさまざまな名まえを覚えると、それだけ色彩を区別し知覚
 することができるようになる。知覚の発達にことばが参与する。
5 聴覚的知覚はよく発達し、その地域の言語音を明確に区別し、使用することができる。幼
 児音や未完成音は、この期間の学習によって、特別な事情のない限りなくなる。また、こと
 ばを構成している音節に分解することもできる。つまり、かな文字の習得とともに、文字と
 音節とを一々対応させることができるようになる。
6 視覚的知覚と運動感覚との関連はよくできるようになっている。文字を見ながら書くこと
 も可能であり、かなり微妙な描線をも描くことができるようになっている。しかしながら、
 視覚的知覚と運動感覚とがじゅうぶんに結びつかないで、約30%ぐらい、いわゆる「さか
 さ文字」を書く児童もいる。
7 知覚の選択作用――たとえば、一年児童に文章を読ませると、しきりに読み誤りをする。
 その読み誤りを分類してみると、(1) 知覚の誤り (2) 知覚の不当脱落 (3) 知覚の不当
 添加の三つに分けられる。こうした知覚の誤りを犯すのは、知覚の対象(文筆)の側にある
 原因と、知覚の主体の側にある原因とによる。前者は客観的原因で後者は主観的原因である。
 それは、主体の対象に立ち向かう構え、目的あるいは、それに対する過去の経験・知識など
 によって引き起こされるものである。こうした知覚の誤りはしばしばくり返されている。   17

2 想像の発達
1 想像は、過去の経験――たとえば、かつて山に登ったこと・かつて見た山の絵・あるいは
 かつてみた岩石、森林など――に基づいてまだ見たことも、登ったこともない「岩山」の表
 象を新しく描き出す。まだ一度も見たこともない、知覚したこともない動物の像を――表象
 をその動物を説明することばに応じて描き出す。その場合、その動物の像を構成するのに役
 だつあらゆる過去の経験・過去に得た知識等を動員する。したがって、想像を働かせるため
 には、できるだけ多くの具体的な経験・知識を持ち合わせているほうがよい。つまり経験の
 発達に応じて想像も豊かになる。想像に参加するものは具体的・経験的現実・知識・すでに
 構成した表象である。
2 幼稚園児の想像の発達には、遊びが大きな役割を演ずる。また、絵を書いたり、ねん土細
 工をしたりする時には、想像力を働かせる。そうして描いた表象を絵や形に具体化する。
3 一年生は、好んで想像を具体化した絵をかく。海上の軍艦が砲火を交えたり、飛行機が空
 中戦を演じたり、百花咲き乱れる野原をかいたり、自動車をかき、電車をかき、赤んほうを
 書いたりもする。しかも、その絵は事物に近く、できるだけ似せてかくように努める。光芒
 を持った赤い顔の太陽が、しだいに、光芒を失い、顔を失っていく。そして、しだいに過去
 の経験や知識をより所として描くようになる。絵を通して、子どもの想像の発達を看取する
 ことができる。
4 よく奇妙な絵をかく。現実離れのした――動物的人間をかいたり、非現実の幻想的な絵を  18
 かいたりもする――想像を絵に具体化する。このような事実から、このころの子どもは、非
 常に豊かな、そして、よく発達した創造的な想像力に富んでいるという見方が多くの人々に
 よってとられた。しかし、このような非現実な想像的映像を描き出すのは、彼らが適当な知
 識や批判力を欠いているしるしであり、したがって、創造的想像力はじゅうぶんに発達して
 いないのであるといわれている。
5 六・七歳の児童は、自分の想像によって作られた表象と、記憶された表象とを区別できな
 い。つまり、自分の想像力で作り上げた表象を、かつて自分が目でみたものだと思い込んで
 しまう傾向があるといわれる。
6 具体的な対象物の刺激によって、想像を働かせるが、ことばの刺激・概念の刺激によって
 も想像が働くようになっている。「頭が白く、からだが黒い小牛」ということばによって、
 得た観念に基づいて、その小牛の映像を描くことができる。もちろん、その場合には、かつ
 て小牛を見たり、小牛の絵を見たりした経験や知識を持っていることを前提としなければな
 らない。「兎がぴょんとはねた。」ということばに基づいて想像力を働かせ、その表象を描
 くこともできるほどになっている。

3 思考の発達
1 子どもの思考の発達は、ことばの習得、つまり、感性的に知覚した事物の概念化、一般化
 と、ことばの操作とに深い関係をもっている。
2 このころの子どもの思考は全体的・包括的である。また、個別的・孤立的である。両親と  19
 ともに夕食後テレビを見た経験を、「テレビを見ました。」と包括的に考える。経験要素を
 分析的に知覚し、それを総合的に、関係的に判断することはむずかしい。「母とデパートへ
 行きました。」「デパートで買い物をしました。」「おかあさんと買物をしました。」とい
 うようにその経験要素を個別的にとらえ、孤立的に考える。これらの諸要素を関係的にとら
 え、総合的に判断することはむずかしい。
3 判断の形式をしだいに身につけていく。概念と概念との関係判断はことばによって表わさ
 れる。そこにことばによる判断の形式が成り立つ。この頃の児童の判断の基本的な形式とそ
 の発達をとらえることによってその思考の発達の一面をみることができる。「テレビを見ま
 した。」「おとうさんとおかあさんとテレビを見ました。」「きのうテレビを見ました。」
 「おかあさんとおとうさんとぼくとテレビを見ました。」「ぼくはおかあさんとおとうさん
 とテレビを見ました。」こうした判断の発達から、このころの児童の思考の発達をみること
 ができる。
4 このころの児童の概念と概念との関係の判断は、これをいわゆる文法的にみれば、「雨が
 降っている。」というような、主語・述語の関係判断、「あかいチューリップ」「みどりの
 はっぱ」「大きい丸」というような修飾・被修飾の関係判断、「ぶらんこに乗りました。」
 「運動場で遊びました。」のような修飾・被修飾の関係判断、「ぼくとあきおくんとはらだ
 くんと本を読みました。」のような並列の関係判断等が可能だということができる。
5 比較の判断、「ぼくのほうが速いよ。」「こっちのほうが大きいよ。」から「それよりこっち
 が小さい。」「おとうさんよりおかあさんのほうが早く起きる。」というような比較の判断もで
 きる。「本を読んだの。本を読んでから遊んだの。」「ご飯を食べて少したってテレビを見ま  20
 した。」「デパートへお使いに行きました。デパートで靴を買いました。デパートでライスカ
 レーを食べました。帰りました。」のような、時間的経過・順序・経験の順序の判断もできる
 ようになる。このような判断は、点的であり、線的である所に特徴がある。このような、直
 線的な一連の判断の中に、それと全く無関係なことがらに対する判断がとびこんでくること
 は珍しくない。

   四 言語発達

1 音韻の発達
1 一年生は、その地域の音韻体系を身につけている。その地域で使われている発音もアクセ
 ントもイントネーションもそのままに身につけているのが普通である。
2 しかしながら、その音韻はまだ変化しやすい。筆者の調査によれば、六歳児では、音韻体
 系の異なった他の地域へ転住した後、三年で、完全にその地域の音韻体系(発音・アクセン
 ト・イントネーションの体系)に同化した。
  筆者の次男(五歳八か月)は、群馬県から東京都に転住したが、一か月めに、ンシャ
 (頭高型)からデンシャ(平板型)になった。次女は一年に転入学したが、たちまち、ガ行
 鼻音を模倣し、アクセントもイントネーションも東京語化した。
3 幼児音・不完全音を使う子どももいるが特別な事情のない限り、入学後半年ぐらいでほと
 んど正常になる。幼児音には、一般的にいって次のようなものが多い。
 (1) サ行音とタ行音との交替……デンシャ(∫a)→デンチャ(t∫a)、センセー(se)→チ  21
  ェンチェー(t∫e)など。
 (2) ラ行音とダ行音との交替……ラジオ(ra)→ダジオ(da)、ジドーシャ(do)→ジロ
  ーシャ(ro)など。
 (3) 直音と拗音との交替……ミズ(zu)→ミジュ(dju)、ミッツ(tsu)→ミッチュ(t∫u)
4 方言音、それぞれの地域の音韻を身につけるから、地域にある独得の方言音をそのまま発
 音する。したがって、方言音と幼児音とを区別しなければならない。方言音は、それに対す
 る標準音を聞くことがないから、そのままでは変化することはない。
5 音韻の違いを聞き分けたり、発音を聞いて模倣したり(調音機関の調節)することは自由
 にできる。しかし、声量や強弱を調節することはむずかしい。一般に改まった場で話すとき
 の声は小さい。

2 語いの発達
1 語い教、これまでに行なわれた小学校一年生の語い調査の結果は次のようになっている。
  (1) 東京成城小学校  6歳5か月  3,500〜5,162 平均4,089
  (2) 千葉県長浜小学校 6歳9か月  3,372〜6,072 平均5,019
  (3) 岡山県師範学校  6歳8か月  3,132(使用語い) 5,230(理解語い)
  (4) 長野県師範学校  一年生    5,135(男)    5,081(女)
  (5) 坂本一郎氏   (6歳)    5,661  (七歳) 6,700

調査  品詞

年齢
 


















岡 山
師 範
6.8 66.1 1.0 18.3 0.8 4.3 5.3 0.6 1.9 0.7
東 京
成城小 
6.5 65.6 0.9 19.2 0.9 4.0 6.3 0.5 1.8 0.7
久保氏  6.0 59.6 1.2 17.6 2.4 5.1 8.0 0.8 3.8 1.5

   これらの調査の結果によって、小学   22
 校一年生の持っている語の数はほぼ推
 定できる。しかし、最近調査の方法が
 くふうされ、調査語の母集団の取り方
 によって、一年生の語い数は、従来の
 調査よりはるかに多いことがわかった
 といわれている。また、その語いの質
 についてもずいぶん変わったと推定さ
 れる。
 2 品詞別語い、一年生の持っている

種別

年齢





















日用

及び
器具











5.0 72 90 56 19 25 93 51 25 134 58 108 82 126 85 214 1,237
6.0 873 100 59 23 32 96 57 30 147 63 115 85 145 97 232 1.364

  語いを品詞別
  に示すと、そ
  の割合は左上
  のようになっ
  ている。
 3 名詞につい
  て、久保長英
  氏が行なった
  分類をあげる
と、前ページ左表のようになっている。                          23

3 文の発達
1 話す文の長さは、一語文から始まって、しだいにその長さを増していくが、牛島義友氏の
 調査によると下表のようになっている。これは、遊戯中に自由に話した語を記録整理したも
 のである。(会話における文の長さ)

性別

年齢 
男  女 
1.6  1.1 1.4
 2.6  3.1  2.8
 3.6  4.0  4.0
 4.6  4.0  4.8
 5.6  4.6  5.5

 2 幼稚園児四人(六歳児)について、六月九日に、10分間の自由遊び
  の間に話した文を記録し、その長さを調べたら、話の長さと平均1文の
  長さは次の通りであった。
  (文京区立柳町幼稚園の園児)
  A児 30センテンス 平均 1文 3.8語
  B児 38  〃   〃  1文 4.5語
  C児 33  〃   〃  1文 3.8語
  D児 31  〃   〃  1文 4.3語
 3 文の構成、ひとりの五歳児が、絵本の絵を見て話した話を記録して、
  その文型をみると次のようであった。
  (センテンスの数は13)
  (1) 人が    手を 広げて    いるの。
  (2) 汽事が   線路の所を 走って いるの。
  (3) 信号の所が 緑色に   なって いるの。
  (4) 向こうに  お月様が      あるの。





  (5) 向こうに       おうちが         あるの。           24
  (6) 上のトンネルの所に  とけいが         あるの。
  (7) 向こうへ行くと    ふたつのおうちが     あるの。
  (8) その向こうへ行くと  丸いみたいな物が     あるの。
  (9) その向こうへ行くと  小さなおうちが      あるの。
  (10) もう少し行くと    大きなおうちが      あるの。
  (11) また向こうへ行くと  同じものが        あるの。
  (12) ずっと向こうへ行くと ずっと高い三つのおうちが あるの。
  (13) もう一つ向こうにも               あるの。
 同じくひとりの六歳児の話を記録して文型をみると次のようになっている。
                        (センテンスの数は8)
  (1) 汽車が  たくさん  ついているの。
  (2) あと、お月様と汽車の煙 がむくむく 出ているの。
  (3) おうちがあって、花火が  あがっている。
  (4) 汽車が来て 駅長さんが敬礼みたいのを やっていて、 人が 手を あげているの。
  (5) 駅があって そのまた向こうに 時計のついたトンネルが あるの。
  (6) おうちの中みたいな所で 楽隊みたいな音楽を やっているの。
  (7) あと線路。
  (8) 汽車の信号みたいの。
4 一般的な言語発達                                 25
l 言語の発達は、環境によって大いに影響される。子どもたちの過去の経験、かつて行った
 ことのある場所、いろいろな物の知識、家庭で聞いたことのあることば、テレビやラジオで
 視聴することば、学校・学級で話すことば、地域の産業・行事・祭礼・学校規模等すべて言
 語の発達を促したり、妨げたりする。
2 女の子のほうが、男の子より言語技術がいくらか進んでいる。
3 たいていの子どもは、自分の年齢、住所、両親の名まえなどをいうことができる。
4 児童が、文字の学習にはいるためには、知能年齢が6,5歳以上となることが望まれてい
 る。読書レディネステストの結果によれば、一年生265人中、読書年齢6年2か月以上の
 者が、225名、それ以下の者が40人もいた。
5 言語の発達は、五歳までに、名詞・代名詞・形容詞あるいは動詞などの活用変化を習得す
 る。「私」という代名詞は比較的おそく現われる。このことは、児童の話しことばの文型を
 発達的に見ていくとその事実が証明される。また、一年生では、自分を環境から引き離して
 客観的にとらえることはむずかしい。
  〔備考〕第一章の記述に当たっては、特に次の図書を参考にし、時に引用した。
    O「児童の言語」 矢田部達郎著
    O「地域に即した言語指導」 東京都文京区立柳町幼稚園
    O「子供たちはどのように発達するか」オハイオ州立大学付属学校編 周郷博訳
    O「発達心理学」 T・ノヴォグロッキイ著                    26
    O「心理学 上」 スミルノフ主監 柴田義松外訳
    O「言語における自己中心性」ジャン・ピアジェ著
                                            27

 第二章 入門期の国語生活――その実態

       ――国語教育は、児童の国語生活の実態の
                                        
         うえに計画、実践されなければならない――

   一 言語環境はどうなっているか

 児童の言語は、児童をめぐる言語環境のなかで、その影響を受けながら自然に、模倣によっ
て育てられる。家庭生活のなかで使われることば、目にふれることば、耳に聞くことば、社会
生活のなかで使われるその地域のことば、目にふれ、耳に聞くことばを習得する。
 したがって、児童がどんな言語環境の中で育ったか、どんな言語を身につけているかを知る
ことは入門期国語指導上きわめてたいせつなことである。
 次にその調査の一例を掲げる。

1 調査対象―― 一年生
1 地域                                        28
 (1) 商業地区の学校     1校┐
 (2) 半商半住地区の学校   2校├計8校
 (3) 半工半住地区の学校   3校|
 (4) 住宅地区の学校     4校┘

2 調査事項
1 児童の出生地、生育地
2 父母の出生地・生育地・職業
3 電話の有無と児童の利用状況
4 テレビの有無と児童の視聴状況(時間・番組・視聴上の注意)
5 ラジオの有無と児童の聴取状況(時間・番組)
6 新聞・雑誌と児童の利用状況
7 読書(家庭の蔵書・児童図書、愛読書、読書時間、購入選択・注意等)
8 ことばづかい(よくないことば、ことばのしつけ)
9 家族構成(家族・同居人・父母の学歴等)

3 調査の結果
  児童の出生地・生育地
                                            29








 

 東京都    87.4%
 埼玉県    2.7
 神奈川県   2.4
 福岡県    1.6
 大阪府    1.1
 その他    4.8
 (長崎,千葉,静岡,
 兵庫,熊本,宮城,鹿
 児島.栃木.茨城.福
 島.新潟.広島,秋田.
 石川.群馬.愛知等)
 







 

 東京都    86.2%
 神奈川県   1.6
 埼玉県    1.43
 大阪府    1.37
 静岡県    1.0
 長崎県    1.0
 その他    7.4
 (北海道.島根.群馬,
 福岡.茨城,栃木,宮
 城.鹿児島.千葉,福
 島,秋田.石川,広島.
 愛知等) 
 






(都



県)

 東京    49.7%.
 長野    5.1
 茨城    4.4
 埼玉    4.3
 千葉    2.27
 栃木    2.17
 群馬    1.97
 鹿児島   1.8
 山梨    1.64
 神奈川   1.3
 その他   29.39 






(都



県)
 

 東京    42.7%
 埼玉    6.94
 静岡    4.23
 千葉    3.5
 新潟    3.4
 長野    3.0
 茨城    2.8
 神奈川   2.2
 群馬    2.1
 大阪    2.0
 その他   27.13
 



 入学前の生育地は、児童の言語形成の上に大きな影響を与える。児童は、普通1,2,3歳で
その地域の言語体系を身につけて固定するといわれている。(言語形成期)一般の児童は、入
学期にはすでに、その地域の音韻(方言音)語い(生活語い――方言語い)文法(方言文法)等
を身につけて、日常の子どもなりの言語生活には、困らないようになっている。
 したがって、児童が、都会で育ったか、農・山村で育ったか、東北で育ったか、関西・九州  30
方面で育ったかによって、発音・アクセント・イントネーション等の音韻から、個々の語やこ
とばの使い方(文法)にいたるまで、それぞれ違いを生ずる。それらの生育地の違なった児童
が集まった教室では、そこに国語指導上いろいろな問題が起こる。個々の児童について、その
音韻上の特徴を知って適切な指導法を老えなければならない。
  父母の出生地(生育地)(前ページの表を参照)
   父母の出生地
  父母とも東京     28.2%   父東京・母他府県     21.7%
  父母とも他府県    32.6%   父他府県・母東京     17.5%
 父母のことばが、幼児に与える影響は大きい。したがって、父母のことばの影響を受けたま
まで入学してくる児童もいる。日常の話の中で、音韻や語句などで、とくに変わった児童を発
見したとき、それが父母の出身地のことばの影響によっている場合のあることに気づく。しか
し、幼稚園へ行ったり、近所の子どもと遊ぶようになったりすると、その土地のことばにすぐ
に同化するのが普通である。また、特別の事情のない限り、入学してくると、比較的簡単にそ
の学級社会のことばに同化する。
  父母の職業                    家具製造業、洋服仕立米、機械製造業、いす
@ 人の出はいりの多い職業――35.0%       製造業、印刷業、造園業、建築業、自転車・
 ア 技術を伴なう職業 37.1%          自動車・修理販売業等


                                            31

 イ 飲食に関係ある職業 27.1%         骨院、仲介業、旅館業、卸売業等。
  肉屋、喫茶店、飲食店、レストラン、すし屋、  A 人の出はいりの少ない職業――65.0%
  果実店、酒・たばこ販売、鮮魚商、やお屋等    ア 会社員 30.3%
 ウ 小売、販売業 10.0%           イ 工員   7.8
  洋品店、電気器具店、靴屋、書籍商、時計屋、   ウ 公務員  4.2
  眼鏡店。                    エ 鉄道員  3.5
 エ その他 25.8%              オ 運転手  2.4
  麻雀グラブ、新聞販売、魚類加工、医師、接    カ その他 51.8

父母の職業に伴なう言語生活が、児童の言語形成に影響を与えることはいうまでもない。
 それは、職業に伴なうことばの習得、そこへ出入りする人々のことばの影響などである。そ
こで、父母の職業をみる場合には、そこに出入りする人の多少や使用人などが問題になる。乱
暴なことばを使う児童がいたり、特殊なおとなのことばを使う児童がいたり、あるいは、専門
的な職業語を使う児童がいたりしてよく驚かされることがある。
 電話の有無と使用状況
(1) 電話の有無と使用状況
 電話の有無は、その家庭の必要度に応じている。繁華な商店街の学校では、100パーセン
トもあり、住宅地にいくにしたがって順次少なくなっている。商店街児童の電話利用率の低い
のは、電話利用の内容が、商用会話などで、児童のこれに参加する――受け答え、取り次ぎな
ど――場がほとんどないためであろう。住宅地での電話利用は、生活的・社交的で、児童もそ

  学 校 名  電話のあ
る家(%) 
電話のかけら
れる児童(%) 
桜 田 小 学 校  100 40 
宮 前 小 学 校  52 38 
赤 羽 小 学 校   45 27 
臨 海 小 学 校   50 50 
滝野川第1小学校  58 56 
滝野川第2小学校  29 21 
貞 砂 小 学 校   76 60 
八 幡 小 学 校   21 21 
  平   均  54 39.1 

  れに参加できるし、また、自分もそれを利  32
  用できるから、自然に使えるようになるも
  のと恩われる。
   なお、児童の電話のかけ方について、親
  がどのような関心を持ち、また、どのよう
  な注意を払っているかを次に示す。
  (2) 電話をかける児童に対する親の関心
   ・注意
  ア 用件をはっきりいうこと    30%
  イ 用件をはっきり聞くこと    21%
  ウ はっきり、ていねいなことば
   を使うこと           10%
  エ 相手の名前をはっきり聞くこと  8%
  オ 自分の名前をはっきりいうこと  6%


 カ その他 25%(わかりやすく、落ち着いて話すこと、「はい」と返事をすること、早く用をす
ますこと、いたずらに電話をかけないこと、「もしもし」といわないようにすること、はじめ
と終わりのあいさつをすること、など)
 児童はテレビをどの程度視聴しているか
(1) テレビが家庭にどのくらいあるか。
  桜田小 100% 滝野川第一小 98%  赤羽小 100%  真 砂 小 100%  33
  宮前小 100% 滝野川第二小 93%  臨海小  97%  八 幡 小  95%
 テレビはほとんど全家庭に普及しており、したがって、全児童がテレビを視聴し、多かれ少
なかれその影響下にあることがわかる。
(2) 児童は一日にどのくらい視聴するか。

分  視聴率(%) 
0    0.25
30    6.02
60   24.55
90   26.96
120   35.68
150    2.56
その他    2.4

 (3) 児童はどんな番組を視聴しているか。
  視聴率の高い順に並べると、次のようになる。
  @ ポパイ A チビッコギャング B 鉄腕
  アトム C ちろりん村とくるみの木 D 名犬
  ラッシー E ディズニーランド F まんが
  G 少年探偵団 H おねえさんといっしょ 
  I 野球中継 J その他(織田信長・ミスタ
  ーエード・宇宙家族・ヘッケルジャッケル・名
  馬フリッカ・とつげきマッキーバ・パパの育児
  手帳・海底8823・ちびっこ大将など)


 視聴する時間は、一時間から二時間が最も多く、特に、ポパイ・鉄腕アトムなどの漫画映画
を好んで視聴している。
 児童は、ラジオをどの程度聞いているか
 テレビの普及によって、ラジオはあるがそれを聴取する児童は、いちじるしく減っている。
特に、ニュースや音楽以外聞いているものはほとんどいない。

学校  ラジオのあ
る家(%) 
ラジオを聞
く児童(%)
桜  田  小 88.5  5.4 
宮  前  小 88.0  29.0 
赤  羽  小 97.0  9.0 
臨  海  小 97.5  22.5 
滝野川第1小 82.0  18.0 
滝野川第2小 83.0  29.0 
真  砂  小 90.0  24.0 
八  幡  小 81.4  9.4 

 児童は、どんな新聞、雑誌を読んでいるか。  34
 (1) どんな子ども向けの新聞を読んでいるか。
  子ども向けの新間をとっているものは、全体
 の四パーセントに過ぎない。
 (2) どんな子ども向けの雄誌を読んでいるか。
  @ 小学一年生  A 一年の学習  B科
  学ブック E 一年の科学 D 少年サンデ
  ー E その他 
  雑誌は、浸画の多い、娯楽性を加味した学習
 雑誌が上位を占めている。親が学習を意識して
 勉強のためにと購読しているものとみられる。
  児童はどんな本を読んでいるか
 (1) 家にどんな本がどのくらいあるか

                      家庭の蔵書を、文学書・非文学書・辞典・事
典類に分けてみると、一家庭あたり、平均文学書は、25.7冊、非文学書は、18.5冊、
辞典・事典類は、14.4冊となっている。
(2) 児童図書はどのくらいあるか。
 家庭の蔵書は、地域によって差があるが、児童用図書の保有量には、あまり地域差が見られ
ない。この中には、絵本は含まれない。ひとり当たり平均冊数は、次ページの表の通りである。

 学校図書 児童読み
もの
児童用事典
辞典
桜  田  小  18  16
宮前小   17  3
赤  羽  小  17  1
臨海小   18.8  2.8
滝野川第1小  29.3  2.1
滝野川第2小  23  6
真砂小   25.8  3.3
八幡小   15.8  2.2
平均   20.6  4.6

 (3) 児童はどんな本を好んで読むか。      35
  入学後間もない児童が読む本を調べてみると
 漫画が圧倒的に多く、読まれている順に示すと
 次のようになる。
  ア 漫画  イ 童話・おとぎ話  ウ 雑
  誌類  工 絵本  オ 動物もの
 (4) 児童が本を読む状態はどんなか
  ア よく読む(12.2%)  イ ときど
  き読む(57.4%)  ウ あまり読まな
  い(20.4%)
  「本を読む」という内容を児童が漫画・絵本
 などを好んで読むということから考えてみると
 「本を見る。絵を見る。」という児童も多いと思
 われる。調査に付記された親の説明に「わたし


どもの子どもは、絵本がたいへん好きなので、よいと思われる絵本を親が選んで与えてやって
います。ところが、子どもは、絵本を読んでいるのでなく、絵本を見ているのです。」という
のがあった。
(5) 本はだれが選んで買うか。
 ア 父          12.7%
 イ 母          14.5%                         36
 ウ 母といっしょ     46.5%
 エ 父といっしょ     10.5%
 オ 自分で         8.2%
 カ その他         6.5%
(6) 児童の読書について親はどう考えているか。
 いろいろな意見が寄せられているが、おもなものを次にあげてみる。
 ア 本を読む習慣をつけたい。
 イ よい内容をもった本を読ませたい。
 ウ 子どもの読みたがるものは、何でも多く読ませたい。
 エ なるべく漫画は避けたい。
 オ 雑誌より、読み返せる名作物を読ませたい。
 カ 自分で本を選ぶ力ができるまで、理想的な本をたくさん与えたい。
 キ 一冊のものをくり返し読ませるようにしている。
 ク 児童向きの文学書をどんどん読ませたい。
 ケ 読書好きの子にしたい。
 コ わがままで、おこりっぽい性質を直すような本を読ませたい。
 サ 本を読んで、思いやりの心ができるように望んでいる。
 シ 図鑑を見て物を覚えさせたい。
 これらのほか多くの意見が寄せられているが、その内容は、児童の読書態度、習慣の形成、  37
図書の選択、人間形成への配慮等にわたっている。
 児童のことばづかいに対して親はどんな関心を示しているか
(1) 児童のことばで、親が悪いことばだと思っているもの
 ア ばかやろう  イ おまえ、おれ  ウ ばか  エ ちきしょう、こんちきしょう
 オ ……だよ  カ うん  キ てめえ  ク このやろう  ケ おいら  コ いい
 からいいから  サ その他
(2) 児童のことばづかいに対して親はどう考えているか。
 ア いまのままでよい。              31.5%
 イ もっとていねいなことばづかいをさせたい。   32.0%
 ウ 子どものことばづかいを直している。      27.0%
 エ あまり気にかけない。              9.5%
 大部分の親は、悪いことばを使わせたくない。もっといいことばを使わせたいと考えている。
親のこの言語意識が児童に大きな影響を与えることは、いろいろな研究や調査によって明らか
である。そこで、親は、次のような態度、方法で児童のことばの指導をする。
 ア 特別聞き苦しい時だけ注意する。
 イ 発音に気をつけている。
 ウ 父母自身がことばづかいに気をつけている。
 エ 不正確なことばを直すようにしている。
 オ 目上の人にはていねいなことばを使うように注意している。              38
 カ 幼児語を使うので直すように注意している。
 以上、児童の言語形成に影響を与える環境についてその実態を明らかにした。なお、地方で
は、それぞれの地域に行なわれている言語体系――発音(音韻)語い、文法等の実態を調べて
おくことがたいせつである。

   二 言語生活の実態はどうなっているか

 入学時における言語生活の実態はどうなっているかを具体的に考察してみる。集団の言語生
活に適応できない子、多くの抵抗を感じている子、生活のための言語の未熟な子、ことばで反
応できない子など複雑な様相を呈している。
 入学当初の児童は、非常に緊張している。幼稚園や保育園で、いちおう集団生活の経験をも
っている児童でも、大集団としての学校生活という新しい環境にはいってくると、何かととま
どうことが多い。新しい先生、新しい友だち、新しい教室、新しい学習、すべて新しい場で行
なわれる言語生活であるから、抵抗も多い。

1 絵本を見ている子ども
 入学式当日、教室に数十冊の絵本をおいて自由に見られるようにしてある。入学式前、何人
かの子どもが絵本をみていた。
1 (男)絵だけ見ている。文字は読まない。どんどんめくっていく。そして、次の絵本と
 交替する。                                      39
2 子(女)まず絵を見る。次に文字を読む。絵1文字、絵1文字と順序よくくり返してい
 た。かなり文字が読めるらしい。
3 (男)文字はもちろん、絵もろくに見ない。パラパラとめくっては、ふと止まるが、す
 ぐに他の本に移る。次から次へと本を取り換えていく。
4 (男)声を出して、ときどき拾い読みをしている。楽しそうである。など、その様相は
 さまざまであるが、絵本に親しんでいる児童が多い。

2 よく泣く子ども
 自分の意志を伝えよう、訴えようとする場合、いおうとすることがうまくいえなかったり、
気おくれがして話せなかったりして、泣く子どもがいる。いかにも悲しそうに、時には大事で
も起きたかのようにわっと大声をあげて、あるいはめそめそとすすり泣く。しかし、意志が通
じたり、欲求が満たされたりすると、とたんにけろりとして楽しそうになる。
 帰る道がわからなくなって――おうちがわからない。
  入学2日め、雨。名札を確かめながらひとりひとりこうもりがさを渡して子どもたちを帰
 す。ところが、今帰したばかりの子が、雨の中に、大きな目から涙をこぼしながら立って
 いる。「どうしたの。」と聞いても返事をしない。「忘れ物をしたの。」「おなかが痛いの。」「お
 友だちがいじめるの。」いろいろ間いてみたがみな違う。最後に「おうちへ帰れないの。」と聞
 くと、こっくりをした。(ことばで反応できない。)家へ送り届ける。この子どもは、祖母育
 ちのひとりっ子、依頼心が強く、その後も涙によって訴えることが続いた。         40
  忘れ物をして――国語の本を忘れました。
  入学7日め、持ち物調べのとき、が急に泣き出す。目に手を当てて、幼い泣き方をして
 いる。よく見ると国語の本がない。「忘れたのでしょう。おうちにありますよ。」といったら
 安心した顔になった。
  同じ日、クレヨンで円や三角に色をぬる時。子が泣き出した。こちらは、クレヨンがな
 いという意味らしい。よく調べたらランドセルから出してないことがわかった。
  体育のしたく――ボタンをはめてください。
  体育。教室へ行くと、みんなしたくに夢中になっているなかで、子が泣きじゃくってい
 る。白い体操着は着ているが、ブルマーは札の上に置かれている。ブルマーのボタンがきつ
 くてはめられず、泣いているのである。授業中はよく発言する子どもであるが、このような
 場になると、ボタンをはめてといえないらしい。
  便所へ行きたい
  入学10日め、子が授業中急に泣き出した。理由を聞いても返事がない。腹痛らしいの
 で保健室へ連れて行こうとすると、途中の便所の前で立ち止まった。便所へ行きたいらしか
 ったので行かせた。しばらくするとはればれした顔でもどってきた。「おなかは」と開くと
 「痛くない。」とけろりとしている。便所へ行きたいといえなかったのである。
  給食――肉が食べられません。
  給食の時、終わりに近づくと子がしくしく泣き出した。給食の豚肉がきらいなのである。
 「残しなさい。」といわれて、ほっとしたように泣き止んだ。               41

3 返事・応答
 出席をとる場合には、呼ばれて「はい」と返事をすることは比較的容易ですぐできるように
なる。しかし、物を問われて応答する場合の返事はなかなかできない。肯定を表わす場合には
こっくりをする。否定を表わす場合には、左右に首を振る。つまり、ことばで反応できない。
応答できない。行動・動作・身振りなどの代わりにことば使うようにする。ことばで反応でき
るようにする。
   こっくりをする子ども
   出席をとる時には、「はい」と返事のできる子どもでも「○○さんは、肉は好きですか。」
  ときくと、首をたてに動かして答える。「はい。」といえない。「好きです。」といえない。言
  語生活の豊かな子どもでも、「はい」「いいえ」の返事はなかなかうまくできない。
   「うん」という返事
   「K子さん、おかあさんといなかへ行ったことがありますか。」と聞くと、「うん」と答え
  る。「うん」と答える子どもはかなりいる。

4 安定感を求める子ども
 教師に触れて物をいう子ども 休み時間。(男)が、そばへ寄ってきてしきりに上着の裾を
引いたり、手に触れたりする。何だろうと思って顔を見ると、何かいいたそうである。「なん
だい。」と聞くと、いっそう固く手を握りながら、小さな声で「体操着を忘れました。」という。  42
先生に面と向かってはいえない。先生に触れながら、すがりながらやっといい出したのである。
 先生の背中をたたいたり、肩にさわったり、時には先生の耳に口を寄せたりして、「先生○○
です。」と用件を話す子どもがいる。話のきっかけをそこに求めているのである。話す時の安
定感を、安心感を得るために、教師のどこかに手を触れ、からだを触れるのである。このこと
は、子どもたちが、みんなに向かって話す場合でも、同じである。教師が話す子どもの背後に
回って肩を押える。そばに寄りそう、背中を軽く押えるなどによって、子どもは安心して話す
ことができる。あるいは、子どもの手を取って話すことも効果的である。

5 意志表示のできない子ども
 意志表示ができないでだまっている子どもがいる。その多くは、話すべきことばがないので
はなく、場に圧倒されてしまったり、自責の念が強すぎたり、あるいは、性格の弱い子であっ
たりするために黙してしまう。
 忘れ物をしてだまっている子ども 四月中旬、理科。春の花の観察で、チューリップの花
をグループで写生している。しばらくして机間を回ってみると、(男)は何も書いていない。
ぼんやりした顔つきで生気がない。聞いてみると、ノートを忘れたのである。ノートを忘れた
ときは、「先生、紙をください。」というように指導してあるが、はどうしても席を立って
それをいうことができなかった。
 ありがとうのいえない子ども 入学式の日、一年二組と書いたぞうり袋の忘れ物が
あった。月曜は、仕事の都合で、用務員に、玄関先で本人を見つけて渡してもらうように依頼  43
した。一時間めに教室へ行くと、は忘れた上ばきをきちんとはいていた。
 用務員の話によると、始業時聞ぎりぎりにかけつけたM・Sに「これ、ほうやのだろう。先
生が拾ってくれたよ。」といって、ぞうり袋を見せると、ひったくるようにして受け取ったそ
うである。「ありがとう。」ということばは出なかったということである。これは、一年生の
大部分の子どもに対してもいえることである。
 さようならをいわない子ども 学校が終わると、帰りの子どもたちを校門まで送り出して、
ひとりひとりについて、さようなら」のあいさつをかわすことにしている。
(1) 入学式の日、「さようなら」を大きな声でいえたものが7名。他の者は、さようならもそ
 こそこに付添いの母の所へ行ってしまった。
(2) 二日め、「さようなら」と声をかけるのは教師の側で、「さようなら」と声を出してこた
 えたのは5名。
(3) 三日め、上着のえりの乱れなどを配しながら、ひとりひとりあいさつをかわす。全体では
 元気よくさようならがいえるのに、一対一になるとなかなかいえない。元気にいえたのは1
 6名。
(4) 四日め、23名が「さようなら」と大きな声であいさつをした。8名が「先生、さような
 ら」と子どものほうからあいさつした。

6 きおくれのするこども

 人のことは気安くいえるが、自分のことになると黙していえない。わかっているようなので  44
指名していわせるといえない。一度発言しても、それを聞き返されると何もいえなくなる、と
いう子どもがいる。
 人のことはいえるが「○○さんが、おなかが痛いんですって。」「○○さんは、国語のノート
を忘れました。」などと、いそいそと教師の所へやってきて話す。代弁する。ところが、いざ、
自分のことをいわなければならない時になると、すっかり元気がなくなってしまって何もいえ
ない。そういう子どもがいる。
  指名されると答えられないA子は、ときどき「はい、はい」と手を上げる。そこで、この
程度のことならわかるだろうと思って、指名して答えさせると、立ち上がったとたん、むっつ
りしてしまって何もいえない。頭の中で、わかったと思うことでも、いざそれをいい表わすと
なるとなかなかむずかしい。
 話のなかまにはいらない きのう、うちで遊んだことを4人のグループで話している。
(男)は、話にいっこう関心を示さず、窓外を見ている。そのうちに、ノートを出して戦争の絵
をかき始めた。他人の話にまったく興味を示さない。このように、話の仲間に加わらない子ど
もがいる。

7 欲求不満の子ども
 突然大きな声を出す子ども (男)は、入学式の日から廊下へ飛び出した子どもである。
皆が静かに聞き入っているような時でも「お静かに」などと大声を出して他の注意を引こうと
する。時には奇声を発して、みんなを驚かしたり、笑わせたりする子どももいる。ひとりっ子  45
で両親にかわいがられていたり、家庭でわがままな生活をしていたりした子どもの中にこの種
に属するものが多い。
 話のこしを折る子ども (男)は、たいへん元気がよい。友だちが「きのう、おとうさんと
おかあさんと妹と動物園へ……」などと話し始めると、すかさず「そういうときは、家族でと
いうんだよ。」と口をはさむ。教師が何か話し始めると、「知っている。知っている。おとうさ
んが教えてくれたもの。」といって、隣りやうしろの者に話しかける。「さんに先生の代わり
に話してもらいましょう。」というと、顔を貞赤にして、今までの元気はどこへいったものかと
思うほど沈黙してしまう。皆の前でうまく話すほどの確実な知識ではなく、ただ聞いたことが
ある。知っているという程度である。しかし、そこに誇りをもち、優越感を抱き、得意になっ
てしゃべる。話したくてたまらない子どもである。

8 指示に適応できない子ども
 指示を聞き返す子ども 子はきちょうめんで神経質である。入学当初から,うるさいくら
い教師の指示をくり返し聞き返す。手紙を渡した後「この手紙にも書いてあるけれど、あした
の工作には、のりとはさみを持っていらっしゃい。」というと、「のりとはさみを持ってくるん
ですか。」と聞き返す。ノートの使い方についても、「、」を打つのか「。」を打つのかと、毎日
同じことでもくり返し聞かないと気がすまない。不安なのである。全体で聞いたのでは、みん
なといっしょに聞いたのでは、納得できないのである。先生と一対一で聞かなければ、話さな
ければ不安でたまらないのである。これは、入学当初、児童一般にみられる傾向、つまり、集  46
団生活に慣れるまで、集団の中での教師と児童がしっかりと結ばれるまで続く傾向である。
 聞かないでいて聞き返す子ども (男)は、教師が全体に向かって話しているときは、い
っこうに開こうとしない。他の者が聞き返している時でも聞いていない。そして、とんでもな
い時に、また、いざ作業を始める時になって、「先生、何するの。」「これでいいの。」など
といい出す。
 指示への反応の遅い子ども (男)は作業が遅い。ほかの子どもが終わるころになってや
っと始める。はいつも、先生の指示を聞かず、まわりの友だちのものまねで仕事を進めてい
く。指示を聞いていないから、何をやっていいのかわからないからなので、鉛筆を出す、クレ
ヨンを持つ、本を開くなどしていて、取りかかりがおくれる。つい、いいかげんな仕事をする
ようになる。
 入学時の児童の言語生活はだいたいこんな様相を呈している。単純だがそれが複雑に入り交
っている。それは単にことばの問題だけではない。学校環境への適応・集団生活への適応・学
習活動への適応の過程に現われる、児童の心理、生理、感情、能力等の赤裸々な姿を背景とす
る言語生活の実態である。われわれは、これら言語生活の実態を確実につかみ、適正に解釈し
判断し、その上に国語教育を考えていかなければならない。

   三 聞く話す能力の実態

1 指示を聞く能力の実態はどうなっているか
 児童の話を聞き取る能力の実態を、「指示を聞いて、それに従って行動する能力」を中心に  47
して調査した。指示を聞き取ることは、入学時の学習の揚において最も大事な活動である。児
童の生活指導も、この先生の指示に従って行動するところから始まる。あとに示す聞き方の指
導も、この調査の結果明らかになった実態に基づいて行なわれている。
 調査の目的 どんな指示への反応が容易で、どんな指示への反応が困難か、その実態を明ら
かにして聞くことの指導法を確立する。
 調査の対象 東京都内の一年生、六学級 265人
 調査期日 昭和三八年五月二八日実施 
 調査の方法 阪本D式標準読書テストA号「読書レディネス診断テスト」を実施し、その中
の「第一テスト、絵の指摘」の部分を取り出し、これを指示への適応という観点に立って考察
した。
 調査の問題 (指示したことば)
   @ 「これは、いなかの絵です。この絵の中に    A 「こんどは物置小屋のまわりに大きな○を
    おうちが一けんあります。おうちのほかに物     書きましょう。」
    置き小屋が一けんありますが、おうちにはえ    B (要約)牛三つのうち、水を飲んでしまっ
    んとつがあって、窓がありますから、すぐわ     た牛に×をつける。
    かります。さあ、どれがおうちでしょう。大    C 「絵の中には馬もいます。おひゃくしょう
    きな.バツを、おうちのやねにかいてごらん     のおじさんが馬に馬車をひかせて、たわらを
    なさい。」                    町へはこんでいこうとしています。さあ、お


                                            48
    ひゃくしょうのおじさんと、馬とを見つけま     きました。さあ、このおじさんが自転車で出
    しょう。そしておひゃくしょうのおじさんの     て行った小道はどれでしょう。おうちからバ
    まわりに○を書いて、馬には×をつけましょ     スの道まで、おじさんが通った道にすじを書
    う。」                      きましょう。それから、飛行機がとんでいま
   D (要約)犬のまわりに○を書いて、あひる     すね。その飛行機とおじさんの自転車とをす
    には一つずつ×を書く。              じでつなぎましょう。」
   E (要約)馬車にのせてある二つのたわらに    I (要約)バスの上に×を一つつける。
    一つずつ×をつける。              J (要約)トラックを○でかこむ。
   F (要約)にわとりをみんなかこむ〇と、や    K (要約)駅のやねに×を二つつける。
    ぎに一つずつ×をつける。            L (要約)おまわりさんに×をつける。
   G 「絵をよくみますと、むこうの道をバスと    M (要的)さかな屋の前に×、本屋の前には
    トラックとが走っているのが見えます。それ     ○をかく。
    から汽車も見えます。汽車はトラックよりも    N (要約)男の子に×を一つ、女の子にも×
    むこうの方に見えます。汽車に×をつけて、     を一つ、店の人に×を二つつける。
    トラックを○でかこんで、バスには×をつけ    O (要約)猫から魚のところまで線をひく。
    ましょう。」                  P (要約)金づちに×を一つ、のこぎりに×
   H 「絵にはおひゃくしょうさんのおうちから     を二つつける。
    むこうのバスの道まで行く小道がかいてあり    Q (要約)卵に×をつけて、だいこんのかご
    ます。おひゃくしょうのおじさんが、自転車     のまわりに○をかく。
    にのって、いま小道から、バスの道へ出て行    R (要約)酒や、しよう油のたなには×を一
                                            49
(1) 一指示一事項(「トラックを○で囲む」のように一度に一つ
           の事項を指示したもの)

問題番号   正答
数    
正答率%
誤答

誤答
率%
誤答の内容(人数)
無答 数の
誤り
記号の
誤り
 @  259 97.7  6  2.3  5    1
 A  254 95.8  11  4.2  4 7  
 B  256 96.6  9  3.4   1  8
 I  260 98.1  5  1.9 1    4
 J  265 100.   0  0       
 K  238 89.8  27  10.2    23  4
 L  260 98.1  5  1.9  1  3  1
 O  263 99.2  2  0.8      2

   つ、やかんやなべのたなには×を二
   つ、茶わんやさらのたなには×を三
   つつける。


   調査の結果 調査の結果を「指示した
 事項の数」別にまとめて、整理すると表
 (1)(2)(3)(4)のようになる。
   結果の考察 この調査の結果をみる
 と簡単な指示であれば、一度に二事項を
 指示しても、だいたいじゅうぶんに聞き
 とることができることがわかる。しかし、
 一度に三事項も指示するのだと、それに
 適応できない子どもが急に増してくる。
 これらの事実から、入学時における指示
 のしかたやそのプログラムがわかる。も
 ちろん、指示に従う場合の抵抗は、指示
 事項 の多少だけでなく、その指示内容
 の難易にもよることはいうまでもない。


(2) 一指示二事項(「犬には○,あひるには×をつける」のように              50
        一度に二つの事項を指示したもの)

問題
番号 
正答
教 
正答
率% 
誤答
数 
誤答
率%
 誤答の内容(人数)  
無答  数の
誤り 
記号の
誤 り 
その他 
 C 256 96.6   9 3.4     2  
 3    2
 D 259 97.7   6 2.3   2      
 3  1  
 E 245 92.5   20 7.5   6  3  3  
 6  1  3
 F 247 93.2   18 6.8   1  1  12  
 5  4  
 H 205 77.4   60 22.7   40    1  
 29    2
 M 244 92.1   21 7.9   8  3  2 つけかたが
反対になっ
た4 
 5  3  2
 P 234 88.3   31 11.7   4  6  1 つけかた反
対 3
のみにもつ
けた 6 
 1  8  2
 Q 254 95.8   11 4.2   5  1  4  
 1    


(3) 一指示三事項(「汽車には×,トラックには○,バスには×をつけ            51
       る」のように一度に三事項を指示したもの)

問題
番号 
正答
数 
正答
率% 
誤答
数 
誤答
率% 
誤答の内容(人数)   
無答  数の
誤り 
記号の
誤り 
その他
  B 184   69.4 81  30.6  16  28  6   
11    
33    2
  N  244   92.1  21   7.0 3    4   
3    8
3  6  
  R  245   51.7  120  45.3 26  9  8 めちゃ
めちゃ
27  
18  38  6
10 30  2
成績 人数  % 
全部できた者
1間 誤 答
2  〃
3  〃
4  〃
5  〃
6  〃
7  〃
8  〃
69
73
51
26
30



22.3
27.5
19.2
9.8
11.3
3.4
1.5
0.4
0.8




 2 発音の実態はどうなっているか

  普通の子どもであれば、小学校入学時には、その地域
 の発音、アクセント、イントネーションなど、音韻体系
 を身につけている。しかし、なかには、まだ、幼児音を
 もっていたり、未熟な発音をしたりする子どももいる。
 また、地域によっては、方言音を身につけている。




                                            52
 調査の目的 児童の発音の実態―
                              
(1) 音韻調査図 @                     

1(サカナ)   2(ウサギ)   3(ハシ)    4(ゾウ) 5(ネズミ) 6(ミズ) 
 
7(ダルマ)8(デンワ)   9(ジドゥシャ)   10(フデ)  11(ローソク)  

12(ラッパ)    13(ラジオ)  14(デンシャ)  15(ジテンシャ)   

16(チャワン)   17(バケツ)      18(ミッツ)

 ―(1) 幼児音はどの程度残っているか。(2) 児童の発音しにくい音はどれか。(3) 未熟音
 はどうなっているか。(4)ヒとシ、シュとシの発音はどうなっているか。(5) 鼻濁音はどう
 なっているか。――を調べて発音指導の基礎にする。
  調査の対象 「東京都内の一年生、 267人(北区八幡小、墨田区菊川小、日累区宮前小、
 北区滝野川第一、第二小、文京区真砂小)
┌サ行音……サ・シ┐
|ザ行音……ゾ・ズ|
|ダ行書……ダ・デ|
|ラ行音……ラ・ロ|
|シャ行書…シャ |
|タ行音……ツ  |
└等についての調査┘
                                            53
(2) 音韻調査図 A

   1(ゲタ) 2(テガミ)(ハガキ))3(メガネ) 4(ハゴイタ)  5(ウサギ)   

 6(テング)    7(ダンゴ)  8(キンギョ) 9(ニンギョウ)10(ナガグツ)

 11(ヒバチ)  12(ヒコーキ)    13(オヒナサマ) 14(アヒル)

   15(マンネンヒツ)  16(ウンテンシュ) 17(センシュ) 18(アクシュ)

 調査期日五月中旬
  調査の方法五、六人のグループを作る。「音韻調査資料」(別に示した絵)を見せて、そ
 の絵について自由に話させる。絵について話している間に発音の大体を観察する。次に、個
 人個人について、教師が絵をさし示しながら「これはなに」「これは」と聞く。子どもは
 「さかな」「うさぎ」と答える。その発音を観察して、個人票(別掲)に記入する。
                 。。。。。
 ┌ ガ行鼻濁音……語間・語尾のカキクケコ
 | ハ行普…………「ヒ」と「シ」の交替
 └ 拗音シュ………「シュ」と「シ」の交替
                                            54
(3) 調査票

               音韻調査個人票
     氏名(    )男・女  生年月日( 年 月 日)
                  満年齢(  年 月)

 調査その1   調査その2 
 1  サ カ ナ    1  ゲ  タ  
 2  ウ サ ギ    2  テ ガ ミ( ハ ガ キ)  
 3  ハ   シ    3  メ ガ ネ  
 4  ゾ   ー    4  ハ ゴ イ タ  
 5  ネ ズ ミ    5  ウ サ ギ  
 6  ミ   ズ    6  テ ン グ  
 7  ダ ル マ    7  ダ ン ゴ  
 8  デ ン ワ    8  キ ン ギ ョ  
 9  ジドーシャ    9  ニ ン ギ ョ ウ  
10 フ   デ    10  ナ ガ グ ツ  
11  ロ ー ソク    11  ヒ バ チ  
12  ラ ッ パ    12  ヒ コ ー キ  
13  ラ ジ オ    13  オ ヒ ナ サ マ  
14  デ ン シャ    14  ア ヒ ル  
15  ジテンシャ    15  マ ン ネ ン ヒ ツ  
16  チ ャ ワン    16  ウ ン テ ンシュ  
17  バ ケ ツ    17  ヤキュウのセンシュ  
18  ミ ッ ツ    18  ア ク シュ  
 備考 (1)発音不明瞭 (2)不明瞭 (3)小声 (4)どもる
    (5)歯がぬけている (6)歯ならびよくない (7)その他 

   調査の結果                                    55
   (1) 幼児音・未熟音

 調査語 正しい発
音 者 数
同 上
百分率
 幼児音、未熟音、その他
 1サカナ 261 97.7  タカナ(2)カカナ(2)カカナ(3)サガナ(1)チャカナ
(1) オシャカナ(1)
 2ウサギ 261 97.7  ウタギ(1)ウサキ(3)ウシャギ(2)ウカキ(2)
 3ハ シ 265 99.2  ハチ(2)
 4ゾ ー 260 97.3  ドー(3)ジョ−(4)
 5ネズミ 262 98.1  ネジュミ(3)ネリュミ(1)ネグミ(1)
 6ミ ズ 264 98.8  ミジュ(2)ミリコ(1)
 7ダルマ 264 98.8  ラルマ(1)ガルマ(2)
 8デンワ 265 99.2  レンワ(1)デンマ(1)
 9ジドー
  シャ
240 90.2  ジローシャ(21)ジドーチャ(2)ジドーハ(1)
ジトーシャ(1)
 10フ デ 266 99.6  フレ(1)
 11ローソク 252 94.4  ローショク(4)ジョ−ショク(1)ド−ソク(10)
 12ラッパ 258 96.6  ダッパ(8)ガヅパ(1)
 13ラジオ 230 86.1  ラショー(7)ラジョー(6)ダジオ(8)ラジョ(3)
ラッジオ(1)その他(3)
 14デンシャ 263 98.4  デンシャー(1)デンチャ(2)
 15ジテン
  シャ
116 43.4  ジデンシャ(57)ジレンシャ(8)ジデンシャ一(1)
 15チャワン 266 96.6  タワン(1)
 17バケツ 261 97.7  バゲズ(2)バケチュ(2)バケス(1)バケク(1)
 18ミッツ 264 98.8  ミッチュ(3)

 ここで調査した発音は、これまでの調査の結果わかっている、東京都の児童のもっている幼  56
児音・方言音・未熟音等である。それは、主として次の音声現象についてである。
(1) サ(sa)→チャ(t∫a)→ シャ(s∫a) (2)シ(∫i)→ チ(t∫i) (3) ゾ(zo)→ド
(do)・ジョ(jo) (4) ズ(zu)→ジュ(ju) (5) ダ(da)→ラ(ra)  (6) デ(de)→レ(re)
(7) ド(DO)→ロ(ro) (8) 口(ro)→ド(do) (9) ラ(ra)→ダ(da) (10) シャ(s∫a)→
チャ(t∫a) (11) テ(te)→デ(de) (12) ツ(tsu)→チュ(t∫u) これらの発音の中には、
学校生活が始まるとやがて消えていくものと、「ジデンシャ」のように、いつまでも残ってい
るものとがある。「デンチャ」「ミッチュ」などは、消えやすい発音である。教師がうっか
り聞きのがしていて、とんでもない時に気がついて驚くことなどがよくある。
(2) 方言音
 この「調査その2」の1〜10は、ガ行鼻音の実態の調査、11〜18は、東京の方言音、ヒとシ
の交替、シュとシの変化の実態の調査である。
 語頭のガ行音を破裂音に、語間・語尾のガ行音を鼻音に発音するのが、東京地方の標準的な
発音だとされていた。が、このうち、語間、語尾のガ行音を語頭と同様に破裂音に発音するの
が最近の子どもたちの傾向である。この傾向はますます強くなって、東京地方のガ行鼻音はし
だいに滅びる運命をたどっている。この調査でも、すでに60パーセント以上の者がガ行鼻音
をもっていないことがわかる。
 ヒをシと発音し、シーをシと発音するのは東京の方言音であるが、この方言音を持っている
児童は、12.3%とみていい。この傾向はしだいに消えていくものと思われる。
                                            57
  (2)方言音(が行鼻音、「ヒ」と「シ」「シュ」と「シ」の交替)

 調査語  鼻濁音  破裂音  備考
 lゲタ  0    
 2テガミ  28.0    テカミ(1)
 3メガネ  35.2    メカネ(3)
 4ハゴイタ  34.8    ハコイタ(1)
 5ウサギ  30.7    ウサキ(1)
 6テング  36.8    テンク(1)
 7ダンゴ  35.2    ダンコ(1)
 8キンギョ  36.8    
 9ニンギョー  34.8    ニンキョー(1)
 10ナガグッ  35.2    ナカクス(1)
 11ヒバチ  84.2  シバチ(41)チバチ(1)
 12ヒコーキ  86.8  シコーキ(33)ヒコーチ(2)
 13オヒナサマ  86.5  オシナサマ(36)
 14アヒル  92.8  アシル(18)アチル(1)
 15マンネンヒツ  78.2  マンネンシツ(57)マンネンヒス(1)
 16ウンテンシュ  81.2  ウンテンシ(33)ウンテンチュ(1)
サンテンサン(1)ウサンテンシャー(1)
 17センシュ  90.2  センシ(18)シュンシュ(1)センチュ(1)
センシイ(4)センス(2)
 18アグシュ  92.5  アクシ(9)アクシュー(3)アクシイ(5)

 これらの調査によって、児童の発音の実態が明らかにされた。幼児音、方言音、未熟音、不  58
正確な音、ガ行鼻音などの実態に基づいて、音声指導のプログラム、方法などを考えた。

3 話す能力の実態はどうなっているか
 幼稚園児の話す能力の実態 次に掲げるのは、東京都文京区立柳町幼稚園児の言語能力の
実態を示す資料である。これは、同園が東京都教育委員会指導部の研究協力園になった昭和三
六年に採録したものである。
(1) 絵本を見ながら話す。(6月19、20日)
          ――この絵を見てお話してごらんなさい。
 ア 絵の内容                  になっているの。向こうにおうちがあるの。上の
  夜空に花火があがり、三日月が出て、おまつ    トンネルの所に時計があるの。向こうへ行くとふ
 りのネオンがかすかに見える。おもちゃを積ん    たつのおうちがあるの。もう少し行くと大きなお
 だ汽事が駅に着くところで、駅長さんといっし    うちがあるの。その向こうへ行くときれいな丸い
 ょに、こどもたちが書んで迎えている。駅を出    みたいなのがあるの。また、向こうへ行くと同じ
 た所に時計台のトンネルがある。線路のそばに    ものがあるの。もう一つ向こうにもあるの。向こ
 あるシグナルは緑を表わしている。         うにお月様があるの。
 イ 絵についての子どもの話           <五歳児B> 夜お月様があるの。花火、汽車、
  <五歳児A> 人が手を広げているの。汽車が線    お友だちが,バイバイといっているの。信号,時計
 路の所を走っているの。信号の所が今みどり色    夜花火がパンパンとなっているの。それをお月様



                                            59
 が見ているの。                  車のことさわがしてっとこ。電車が線路に走って
 <六歳児C> 汽車が来て、駅長さんが敬礼みた   るとこ。ウント――汽車がいっぱい走ってっと
 いのやっていて、人が手をあげているの。駅があ   こ。そこねえ、ウント、ウントー.電車が駅へ着
 ってそのまた向こうに時計のついているトンネル   いたらね、みんな遊んだりすんの。汽車がね、ウ
 があるの。おうちがあって花火があがっている。   ント、ウント、ウント――倒れそうになっちゃっ
 あと線路、あとお月様と汽車の煙がもくもく出て   たの。汽車の中に油がいっぱいだから汽車が動か
 るの。汽車の信号みたいの。汽車がたくさんつい   ないの。ウソト――煙突があったりなんかして、
 ているの、おうちの中みたい所で、楽隊みたいな   うちで遊んでんの。お星様が煙のこと見てんの。
 音楽やってるの。                 ウント――おどってるとこね。あかりみたいとこ
 <六歳児D> 汽車、花火、それからおうち。お   ついてんの。みんなでここんとこで遊んでんの。
 星様、あとはね時計。それからみんな迩んでっと   おうちんとこきてね。遊んでんの。それから、な
 こ。うたってるとこ。時計。それからみんなで汽   い。


 ウ 解説
 絵を見て話す場合には、話すべき材料が明確に示されているから、話す材料を適択する必要
がない。一枚の画面からは、時間的経過を知ることはできない。各材料が同じ空間に、共時的
に存在し、それが全体場面によって有機的関係をもって説明されている。
 このような絵を見て話す場合に、「人が手を広げているの」「汽車が線路のところを走ってい
るの。」「汽車、花火、信号、時計」というように、画面の材料を孤立的に、包括的に、点的に
取り上げて(個別的認識)話すのが一般の傾向である。それが、やや進むと、「汽車がきて駅
長さんが敬礼みたいのやって、人が手をあげているの。」というように、各材料を関係的に把握  60
して(関係的認識)一つのまとまった観念として話すことができるようになってくる。
 このような認識の発達・思考の発達とともに、その話し方、文型の発達がある。(1)「花火、
汽事、お星様」というようないわゆる一語文の文型。(2)「歌ってっとこ。」「たおれそうにな
ったの。」「みんなで遊んでっとこ。」というような述語文の文型 (4)「汽車が通っているの。「お
月様が出ているの。」のような、主語、述語の整った文型。(3)「人が手を広げている。」「汽車が
線路の所を走っているの。」「お星さまが煙のこと見てんの。」のような補語を持つ文型。(5)「お
友だちがばいばいといっているの。」「汽車がいっぱい走っているの。」というような修飾語を持
つ文型、などが使われている。特に、終助詞「の」の使用が目立っている。この「の」を取る
くふうがいる。
 全体として、話がまとまっているというものでなく、孤立的に述べられている個々の文の集
合、それらが、点的に並べられているのがこのころの話である。
(2) 経験したことを話す。(六月一三日)
 ――きょう幼稚園でどんなことをしたか話してちょうだい。
ア 園児が降園した直後、その日に幼稚園でした遊びについて話させる。
イ 幼稚園でしたことの話
 <五歳児A> 砂場、ままごと、積木で遊んだの。   の。お砂場して遊んだの。おままごとでケーキ
 <五歳児B> 軍司先生がおとうさんの名まえな    作ったり、幼稚園ごっこしたり、おすべり台に
  んていうのといったので、近藤幹夫っていった    のった。


 <六歳児C> しゃぼん玉で遊んで、ぶらんこに   ウ 日曜日の話(6月12日)       61
  乗って、おままごとで遊んで、それでおわり。    <六歳児E>きのうテレビ見て、外で遊んだ
 <六歳児D> ぶらんこやったり、おすべりした     の。それでまたうちへ帰ってきてお昼寝した
  り、てつぼう、ジャングル、ちいちゃなおすべ     の。
  り台に乗ったりね。それからね、みんなで遊ん    <六歳児F> きのう、テレビを見て遊んだの。
  だりしたりね。中でね、絵かいたりね。黒板で    <六歳児G> おねえちゃんのうちで、はるの
  絵かいたりね。おべんとうたべたりね。かたづ     りと進んだの。はるのりがね、私のことお馬
  けたり、おぼん洗ったり、しやぼん玉したり、     ひんひんやってねといったの。そしてあたし
  金魚みたりね、うさぎ見たりね、もう一回しゃ     が、パカバカやっててね、はるのりがチャン
  ぼん玉したりね、それからね、あそこにかいて     ネルを回したの。そしたら競馬やってたの。
  ある船あるでしょ、それ見たりね、積木みたい     夜ごはんたべて寝ようとしたら、はるおがあ
  のあるでしょ、それで遊んだり、本みたりした     たしの頭の所を、まくらにしたの。あと忘れ
  の。幼稚園ごっこしたり、学校ごっこしたの。     た。


エ 解説
 絵について話すのとは違って、経験したことを話すのはたいへんにむずかしい。絵の場合に
は話す材料が明確に示されているが、経験を話す場合には、復雑な経験事項の中から材料を選
んで話さなければならない。しかも経験を分析的に、具体的に認識することはできない。経験
したことを、包括的に、孤立的にとらえて話すのが普通である。テレビを見た、学校ごっこを
した、積木をしたというように経験したことを一つのまとまりとして話すことしかできない。
だれと、どんなふうに経験したというように、分析的に説明することはほとんどできない。
                                            62
 入学時の語す能力の実態
(1) 経験したことを話す。(井上学級)
 ア 日曜日のこと(4月15日)           (カ) あのね、きのうね、あさ六時ごろね、白転
  ――きのうの日曜日にどんなことをして遊びま      車に乗ってね、おとうさんとね、とどろきの
  したか。どこかへ連れていってもらったら、       神棚がある所へ行ったの。
  そのことをみんなにお腐してもいいです。−
 イ 日曜日に遊んだ話
  (ア) あのね、ぼくきのうね、おともだちのうち   (2) 経験したことを知らせる(伴学級)
   へ行ってね、戦争ごっこやろうと思ったけど    ア 遠足に行ったこと(4月30日)
   やめてうちで遊んだの。              (ア) 遠足に行かなかった友だちに、遠足の話を
  (イ) きのうさなえちゃんとおかあさんと航空博      してあげ事しょう。
   覧会に行ってね、そのえちゃんちに行こうと      A かめを見ました。
   思ったんだけどね、お人形さんごっこして、      B あのね水上動物園で遊びました。
   何かした。たくさん遊びごっこしたの。        C 水上動物園でとどを見ました。
  (ウ) きのう最初東京タワーへ行って、その次に      D 水族館に行ってへびやいろんなものを見
   バスで日比谷公園へ行って、噴水見てね、そ       てきました。
   れから宮城へ行ったの。              (イ) こんどは、見ない人にさるの様子はどうだ
  (エ) うちでとんとん積木で、おんぼろ自動車作      ったか、かめはどんなふうにしていたかわか
   っておねえさんとぼくで走ったの。          るように話してあげましょう。
  (オ) お人形さんとおうちごっこして遊んだの。      E ビーバーが穴の中にはいっていました。


                                            63
   F おっとせいが水の中で泳いでいました。      L とどが氷の上にあがって、えさを食べて
   G ペンギン鳥が石の家の中にはいっていま       いました。パン、さかなでした。
    した。                      M とどがもぐったり、出てきたりしました。
   H 水上動物園でかめが紙を食べていまし       N あのね、水上動物臓でとどは、ウント――
    た。                        ―すなの上で横になって寝ていました。
  (ウ) 一ばん好きだったものを考えてみましょ      (エ) とどを見ている時にみなさんはどうしてい
   う。みんなの好きなもののうち、一ばんめに      ましたか。
   は、とどの話をしましょう。             O ぼくたちが手をたたいたらはねたりもぐ
   I とどがはねまわっていました。           ったりしました。
   J とどがもぐっておよいでいました。        P とどが、ぼくたちが車をたたいたらとど
   K 中学生みたいな人がとどの写生をしてい       が水の所から顔を出して、ぼくたちのほう
    ました。                      を向きました。


(3) 解説
 ここで特に心にとめておきたいことは、次の点である。
ア 「あのね、ぼくきのうね、おとうさんとね」というような間投助詞「ね」がしだいに消え
 ていくこと。
イ 「おつかいに行ったの、テレビ見たの。」というような終助詞「の」がしだいに消えてい
 くこと。
ウ 「……ました。」という文末のいい方がしだいに固定してくること。(ました型)
エ 「かめを見ました。」「水上動物園でかめを見ました。」というように文型が発達してく  64
 ること。
オ 文型の発達とともに思考(判断)が明確になってくること。
力 関係の判断がしだいに高度になってくること。

   四 読字力の実態はどうなっているか

 入学時に、児童はどの程度文字が読めるかその実態を調べた。結果は次の通りである。
 調査のねらい
 1 一年に入学してくる児童は、どの程度文字が読めるか。(清音、濁音、半濁音、拗音)
 2 語として、語句として、文としてどの程度読めるか。拾い読みをする児童はどのくらい
  いるか。
 調査の対象 調査の対象となった学級は次の通りである。
 1 目黒区立宮前小学校(井上学級)48名
 2 北区立八幡小学校(藤倉学級)46名
 3 北区立沌野川第一小学校(小高学級)51名
 4 文京区立真砂小学校(伴学級)50名
 5 墨田区立菊川小学校(多田学級)33名
               合計228名
 調査の期日 昭和38年4月9日〜12日
 調査のしかた                                     65

 調査用紙         (くみ)     (なまえ)          
 か  し  つ  ね  ほ  あ  き  す  て  の    きゃ  しゅ  ちゅ  みょ  ぴゃ  ぢゅ  
 さ  ち  ぬ  へ  ぱ  い  く  せ  と  た    しゃ  きゅ  ちゅ  ぴゅ  じゅ  ぴょ  
 み  ふ  め  び  う  け  そ  が  じ  ど    ぎゅ  にゃ  びゅ  じょ  ちゃ  びょ  
 え  こ  ぎ  ん  ず  な  ぐ  ぜ  ぴ  む    みゅ  りょ  きょ  みゃ  りゅ  ぢゃ  
 げ  ら  を  ぞ  ご  は  ざ  に  で  ぶ    にょ  りゃ  にゅ  びゅ  じゃ  ひゃ  
 ま  ゆ  べ  わ  ぽ  や  べ  ぼ  ろ  れ    きょ  ぴゃ  しょ  ぎゃ  じょ  ひょ  
 だ  り  ぷ  ば  も  お  よ  る  ぢ  ひ                
 づ                                  
                  (1) いぬ。さる。くり。なし。
                  (2) みかん。ほたる。すずめ。へちま。
                  (3) ばらのはな。ひろい みち。あかい くつ。
                  (4) うたを うたいましょう。
 

  備考
   (1) 清音46字の読み (2) 濁音、半濁音25字の読み (3) 拗音、36字の読み
   (4) 二音節単語の読み (5) 三音節単語の読み (6) 語句の読み (7) 文の読み等
     について調査する。
                                            66
1 調査の結果
                 濁音・半濁音の読  
 清音の読みの実態(46字)   みの実態(25字)   拗音の読みの実態(36字)  


読 字
 率(%)

読 字
 率(%)























 
82.5
91.2
81.6
89.0
85.2
82.0
77.1
92.5
91.2
82.9
88.6
88.0
86.5
89.0
88.2
85.2
86.8
87.3
84.2
85.1
84.2
82.0
87.3
 























 
92.5
91.7
88.6
91.2
91.7
93.4
93.4
91.7
87.7
89.9
87.3
90.3
89.0
86.8
80.3
89.9
89.0
89.5
88.2
89.5
88.2
86.4
74.1
 

読字率(%)
























ぼ 
82.1
74.0
76.8
72.9
82.4
70.3
81.0
81.0
74.0
69.6
81.3
61.5
70.7
76.8
79.9
74.4
78.2
74.4
70.3
66.7
56.0
61.5
59.7
57.9
57.5

読 字
率(%)

読 字
率(%)
りゃ
りゅ
りょ
ぎゃ
ぎゅ
ぎょ
じゃ
じゅ
じょ
ぢゃ
ぢゅ
ぢょ
ぴゃ
ぴゅ
ぴょ
ぴゃ
ぴゅ
ぴょ 
23.8
24.5
24.9
25.6
26.7
26.7
26.7
26.4
27.1
21.6
23.1
23.8
23.4
23.1
24.5
26.0
22.7
23.1 
きゃ
きゅ
きょ
しゃ
しゅ
しょ
ちゃ
ちゅ
ちょ
にゃ
にゅ
にょ
ひゃ
ひゅ
ひょ
みゃ
みゅ
みょ 
27.7
26.0
27.7
32.6
29.3
25.3
28.2
27.1
27.1
24.9
24.5
26.0
23.8
23.8
24.5
23.8
21.8
24.2 































単語・語句・文の読みの実態
(1)単語の読みの実態       (2) 語句・文の読みの実態

単語  語とし
て読む 
拾い
読み 
い ぬ
さ る
く り
な し
みかん
ほたる
すずめ
へちま
 
50.1
50.3
48.7
50.0
50.2
41.5
45.9
43.2
  
30.6
33.2
38.2
35.6
39.3
39.7
36.7
38.4
 
語句・文  語句・文と
して読む 
拾い
読み 
ばらの
は な 
37.6  40.6 
あかい
く つ 
37.6  45.0 
ひろい
み ち 
35.8  38.0 
うたをう
たいまし
ょう 
31.0  46.7 

 読字力の実態
(1) 濁音・半濁音25字が読める児童(一学級)                     〜67

読めた字
数(字)
25 24 23  22  21 20 16 15 12 10 9 5 3 0  計
読めた人
数(人) 
 17 11 4 1 1 2 1 2 1 1 2 2 1 2 48
読めた人
数の百分
比(%) 
 35.4 22.9 8.3 2.1 2.1 4.2 2.1 4.2 2.1 2.1 4.2 4.2 2.1 4.2 100

(2)清音46字が読める児童(四学級平均)

読めた字
数(字) 
 46 45  44  43  42  41  40  39
-30 
29
-20 
19
-10 
9
-0 
計 
読めた人
数(人) 
 98  20  3  8  2  4  2  10  7  10  14 178
読めた人
数の百分
比(%)  
55.5 11.2 1.7 4.5 1.1 2.7 1.1 5.6 3.9 5.6 8.4 100


2 実態の考察
 清音の読み 清音が全体としていちばんよく読める。読字率90%以上の文字は「あ、い、
え、お、か、き、く、の、ま、み、し」読字率80%以下の文字のうち、「そ、ぬ、ほ」は  〜68
最も読字率が低く、「ね、は、へ、を」が、それについでいる。一般によく読めるのは、ア行  69
力行、サ行、マ行等の文字で、これらの文字は、出現率が高く、目に触れる機会が多い。した
がって読字率も高いのであろう。
 読字率の低い、「は、ほ、ね、ぬ」等は、字形の識別がむずかしいため読み誤る傾向がある。
「は」を「わ」と読み誤るのは、助詞の「は」と混同しているので、比較的よく読める児童に
見られる。「を」は、助詞以外に使われないため出現率が低いために読めないのであろう。
 濁音の読み 清音の読字率は、だいたい平均87.8%ぐらいなのに比べて、濁音は70%
から80%の間であり、約10%以上の開きがある。半濁音になると、56%から60%であ
り、濁音との差もいちじるしい。半濁音は、かたかな書きの語以外には、ことばとして出現す
ることが少ないためであろう。
 拗音の読み 拗音の読字率は、20%から27%が大部分であるが、「しゃ」だけが33%
で、目だっている。汽車・電車など、この文字の出現率が高いためであろう。
 読字力 どの文字がどの程度読めるか、どんな文字が読みやすく、どんな文字が読みにくい
か、その理由は何かなどについて考察した。これで個々の読みの実態は明らかになった。そこ
で、こんどは、児童ひとりひとりが、どの程度文字が読めるかについて考察してみる。
 調査4の「読字力の実態」を見ると、清音46字全部読める児童は、55.5%。半数以上
が清音文字全部を読むことができる。40字以上読める者は、77.8%、ほとんど読めない
者は、8.4%である。
 濁音文字になると、ずっと低く、25字全部読める者は17%。20字以上読める者をまと
めても、36%に過ぎない。                               70
 このように、入学時において、すでに読字力に大きな差がある。
 語・文としての読み 文字を読むことから、語をまとまりとして読む、文を意味のまとま
して読むことによって、読字力は機能的になる。一字一字の文字の読みの実態はすでに考察し
りとた通りであるが、それが、語として、文として読めるかどうかを調べたのが、調査5「単
語・語句・文の読みの実態」である。その読み方は、(1) 拾い読みでなく、語や文としてまと
めて読む。(2)拾い読み、(3)読み誤り、読めないの三つに分けている。(3)の読み誤り、読め
ないは、この表では省略してある。
 二音節語では、児童の50%が、語として読め、32.3%が拾い読み、他は誤読、読めな
いといっている。これは、清音46字が仝部読める児童の百分比よりも5.5%低くなってい
る。
 三音節語では、児童の約45%が語として読め、約38が拾い読みとなっている。
 修飾語を含む語では、約37%が拾い読みでなく語句としても読め、約四二%が拾い読みと
なっている。
 文としてまとめて読む児童になるとずっと少なくなって、31%、拾い読みは、46.7%
となっている。このことは、児童の家庭における文字指導の方法、眼球運動(アイ・スパン)
などの問題を物語っている。家庭では、語としてではなく、一字一字の文字の読み方を中心に
して教えており、またいっぽう、二字か三字を眼球が同時的に捕えるのと、五つ以上の文字を
同時的に捕えるのとでは大きな差がある。家庭では、そこまでの訓練はしていない。一年に入
学してきた児童は、一つ一つの文字は読めるが、文字の組み合わされた語や文を、語として、  71
文としてまとめて読むということになると、読むことはむずかしい。入門期国語指導――読む
ことの指導の出発点の一つがここにある。

   五 書字力の実態はどうなっているか

1 清音四五字はどの程度書けるか
 調査のねらい 第一学年に入学してくる児童は、(1) どんな文字がどの程度書けるか、(2)
書きやすい文字 (3) 書きにくい文字、(4) 読字力と書字力の相関などを調べてその実態をつ
かみ、文字指導の能率化・科学化をはかる。
 調査の対象
  (1) 目黒区立宮前小学校(井上学級)      47名
  (2) 北区立赤羽小学校(佐藤学級)       36名
  (3) 北区立滝野川第一小学校(小高学級)    46名
  (4) 北区立八幡小学校(藤倉学級)       46名
  (5) 北区立滝野川第二小学校(古川学級)    43名
  (6) 墨田区立菊川小学校(多田学級)      34名
  (7) 文京区立真砂小学校(伴学級)       50名
                       計306名
 調査の期日  昭和39年4月22日〜5月7日
 調査のしかた                                     72
 (1) 絵(別表)にあたることばを書かせる。

      なまえ(     )       

 (あり) ||| (てぬぐい)   | (うし)    | (おに)


  || (さかな)   (ふえ)   | (ゆき)  ||| (ろうそく)

   |||(たけのこ)   (ほし)     | (ひな)

    || (すもう)      || (すみれ)   (せみ)

  ||| (そらまめ)(はち)      | (わに)   (つる)

  || (とんぼ)  || (へちま)      | (やね)  (むし)

 (2) 清音文字四五字(「を」
  を除く)が、絵の中に含ま
  れるようにする。
 (3) 調査表−左図のとおり、

  調査の結果
 (1) ひらがな清音の書字の
   実態 (表l)


(%)
書字

(%)
書字
率 

(%)
書字
率  














85.6
76.8
83.7
74.5
85.0
80.7
77.2
70.3
73.6
83.4
78.8
87.0
86.6
71.0
59.6















 
81.3
75.2
75.5
79.0
72/2
74.8
81.7
55.5
62.4
75.5
80.4
73.2
64.5
64.1
56.3 















79.8
83.3
55.2
67.0
81.2
69.0
70.0
71.2
67.0
82.4
73.9
67.4
74.0
68.0
77.2





























(2) 書きにくい文字の実態(・印は七学級共通に書きにくい文字)(表2)          73

 井上学級  % 43 53 55 58 66 66 68 68 70 70 70      
 文字 ・そ ・む ・ほ ・ぬ ・ね      
 佐藤学級  % 44 ・50 53 56 56 56 58 61 61 61 64      
 文字 ・む ・ぬ ・そ ・ね ・ふ ・ほ       
 小高学級  % 58 64 64 66 68 68 68 68 70 72 72 72 72 72
文字 ・ね ・ぬ ・む ・ふ ・そ ・ほ
 藤倉学級  % 41 44 45 46 48 50 50 50 50 52 52 52    
 文字 ・ぬ ・ほ ・そ ・む ・ね ・ふ    
 古川学級  % 54 61 63 65 68 68 68 68 70 72 75 75    
 文字 ・む ・ぬ ・そ ・ね ・ほ せ  ・ふ    
 多田学級  % 43 44 44 50 56 56 56 59 59 59 59      
 文字 ・ほ ・む ・ぬ ・そ ・ふ      
 伴学級  % 46 58 66 68 70 70 70 74 74 74        
 文字 ・ほ ・ぬ ・ふ ・ね ・む        
 全体  % 55 56 56 60 62 64 65 67 67 67 68 69  
 文字    
書きにくい順位  8  10 11 12 13  14 

(3) 書けるひらがな字数(45字について)                        74

   (グラフ3)
 上のグラフは、四学級188名について、書ける字数とその人数との関係を示したものであ
る。(昭和38年4月22日〜4月30日に行なった書字力調査による。)
 〔備考〕助詞の「を」は省いてある。(1) 文字を読む力と書く力の相関関係
  (下図参照)

                                            75
 結果の考察
 (1) 入学時にこれだけ文字が書ける。清音45文字(「を」を除く)を、都内四校、四学級
 188名の児童に書かせた。その得点を、分布図に示すと上図(グラフ3)のようになる。
 全部書けるものが、188名中37名(9.7パーセント)40字以上 書ける者を含める
と91名で、48.8パーセントおよそ半数の子どもが、すでに入学時に清音が書けている。
 反対に、全部書けないものが6名で、3.1パーセント。4文字以下が15名で、約8パー
セントとなっている。ただし、「書ける文字なし」の子どもの中には、自分の
名前は書けるが文字のちがった組み合わせだと書けないというものも相当含まれていると思わ
れる。
 (2) どういう文字が書きにくいか
 文字別に、正答率をとってみると、書きやすい文字は「し」「す」「あ」「お」「う」「こ」
「み」「り」「に」「た」「も」「か」などであり、
 書きにくい文字は「む」「ぬ」「ほ」「え」「ね」「へ」「ふ」「め」「ら」「れ」「わ」
「や」「ゆ」などである。(72ページ(表2)を参照されたい。)
 文字習得の難易については、ふつう
 @ 生活の場でよく使われている。
 A 字形が簡単ではっきりしている。
 文字がよく書けると考えられているが、ここでも、それが、ほぼ確認できる。
 「あ」「お」「す」は、形がとりにくい上混同しやすい字形であるのに、よくできるのは、
使用頻度が多いためであろうと考えられる。「し」「う」「こ」「り」「に」などが書きやす  76
いのは、主として字形のわかりやすさによるものと考えられる。「へ」は字形が簡単であるの
に書けないのは、助詞として使われるほかは、あまり頻度が多くないこと、「く」とまちがえ
やすいことなどが原因していると考えられる。
 文字をおぼえるということは、字形の難易もさることながら、使用頻度により多く影響され
るように思われる。字形の実態については、後に述べる。
 (3) 読字力と書字力との関係
 読字力が事字力にまさることは当然のこととみられるが、一つ一つの文字について相対的に
はどんな関係があるかをみてみよう。(75ページ(グラフ4)を参照されたい。)
 ○読みやすく、書きやすい文字「あ」「お」「こ」「み」「た」など
 ○読みやすく、書きにくい文字「き」「く」「え」「の」「ま」など
 ○読みにくく、書きやすい文字「は」
 ○読みにくく、書きにくい文字「ぬ」「ほ」「そ」「ね」「へ」「む」「れ」「わ」など
 読みやすさと書きやすさは、だいたいにているが、書く方は「字形」という要素が加わるの
で、読みやすくても「え」「き」「ま」などは書きにくくなっている。
               77
  「く」は、さかさ文字
 「〉」などに、なりやす
 く、まちがえやすい。
  「は」は「へ」と同様
 「ワ」と二つの音価があ
 ることなどもからんで、
 読みにくくなっていると
 思われる。
  読みにくく、書きにく
 い字はだいたい一致して
 いる。

 2 書字力の実態はど
  なっているか
  児童は、入学前にほと
 んど全部が、自分の名前
 がひらがなで書けるよう
 に指導されている。また、
 約半数の者が清音の大部
 分を書くことができるよ
 うになっている。

 ところで、その書く文字について、次の点を調べた。
 (1) 文字の形はどの程度整っているか。
 (2) 書字力の実態はどうなっているか。
                                            78



 (3) 筆庄はどの程度か。
 (4) さかさ文字はどの程度現われるか。
  文字がどの程度じょうずに書けるか 前ページに掲げたのは、文字力調査の際に、児重
 が書いた文字を一字一字トレースして並べ、同一文字を集めて概観できるようにしたもので
 ある。(目黒区立宮前小学校一年児童、47人についての調査)
  児童の書く文字はどの程度定着しているか 上に掲げたのは、同一児童が同時に書いた
 同一の文字を二つずつ並べて示したものである。たとえば、書字力調査の折に書いた、「す
 もう」「すみれ」の語の中の共通の文字「す」をそれぞれトレースして、並べてある。
  さかさ文字はどの程度現われるか
 児童の書いたさかさ文字
 清音四五文字中現われたさかさ文字およびその出現数は、次の一三字三一回である。
  け……2  ら……1  へ……2  に……1  ほ……2  と……l  き……3
  よ……l  り……2  し……1  せ……2  く……12  ち……l
  (3 図)                                     79



      (4 図)  (文字の形)





    さかさ文字

 解説 (1) 児童の書く文字の形
 児童の書いた同じ文字を(1)図、(4)図のように並べてみると,その文字を書く場合、字形を
整えるのにどこに困難があるか、つまり、書きにくいところはどこかでが明らかになる。それ
に応じて、基礎練習や指導の方法をくふうすることがたいせつである。
 たとえば、(4)図の(1)では、終筆を丸めて左斜め下に向けることかむずかしい。(2)では、
結び方がむずかしい。(3)では、横画に対して斜交する線を引くことがむずかしい。(4)では、 80
第二画を斜め左下に比較的長く引いて、終わりを丸めることがむずかしい。(5)では、縦画と
第二画との交わり、(6)では、結び、(7)では、終わりのはねと止めの曲線、(8)では第一画と
第二画の交わり、(9)では、丸め方、(10)では、文字の斜めの角度、(11)では、たて面の方向
などを正しく書くことがむずかしい。このように、児童の書いた文字の実態を観察して、そこ
に現われる共通的な欠陥を見つける。それに基づいて基本的な、基礎的な練習をする。
 たとえば、下のような線を含む図形や絵などをかかせるとよい。

  1.  2.  3.   
  4.

(2) 児童の文字を書く技能
 前に掲げた(2)図の文字は、同一人が、同時に、二センチ四方の四角の中に書いた、同じ文
字を二字トレースして並べたものである。この二つの文字を並べて、(1)二文字が重ね合わせ
られるほど似ているものに10点をつける。次に,(2)文字の大きさが違うもの、(3)文字の形
が違うもの、(4)筆法の違うものなど、それぞれ違いがあるごとに一点ずつ減点して点をつけ
る。こうして得た点数を平均すると、9.6になる。つまり、二つの文字の相似の度合が9.
6になる。
 このことは、同じ大きさの四角の中に書いた、同じ文字は、文字の大きさも、文字の形も、
筆法もほとんど同じに書いているということである。つまり、児童の文字を書く技能は、入学
前に身につけたふじゅうぶんな、整わぬ字形のままで定着しているのである。このことは、今
度の調査でわかったことであるが、重大なことである。家庭で文字を書くことをいいかげんに  81
教えられては困る。いったん定着した技能を――整わぬ不正な文字のままに――変えることは
容易ではない。なおこの調査は、どのくらいの大きさの文字を書かせるには、どのくらいの大
きさの四角の中に書かせたらよいか,つまり,ノートのます目の大きさを決める上の参考にもな
る。大部分の児童が、同じます目の中に書く文字の大きさはほとんど一定しているからである。
(3) 児童の筆圧
   四月一八日(木)曇。入学後一一日めのTさんの教室を見せてもらった。文字を書く指導の第一
   時。毎日使いなれ、カードで見なれている「はい」という返事を書く指導の時間であった。巧み
   な授業が終わると、Tさんは児童の書いた「名まえ」と「はい」を全部集めて見せてくださった。
   私は細かに観察しながら頭の中でそれを三つに部類分けをした。
    それは、必要以上に力をこめて書いたと思われる文字、過当な力で書いたと思われる文字、形
   の整わない力のはいらない、くにゃくにゃと書かれた文字の三種類であった。力の入れ過ぎ力の
   不足の目立った文字がそれぞれ三分の一近くあったように思う。
    四月一九日(金)雨。私は、小さな台ばかりを持ってきょうもまた一年生の教室をたずねた。
   Kさんの教室である。一年生が文字を書く場合の筆圧はどのくらいなのか、それが知りたかった
   からである。筆圧は、疲労、書く速度、筆勢、字形の取り方などと深い関係をもっている。
    くわしいことはいずれにしても、紙面にどのくらいの筆圧が加わるのか、そのだいたいを知っ
   て、書写の指導をすることはだいじなことであろう。教室では、朝からの雨を話題として、「あ
   め」「かさ」その他の文字を書く学習が行なわれた。私は、熱心に書いている書写の姿を観察し
   た。授業が終わったところで、数人の児童を借り、持っていった台ばかりを利用して筆圧を調べ
   てみた。鉛筆はB紙面に加わる圧力は、起筆、運筆、終肇(とめる・はらう・はねる)等で異な
  82
   るが、だいたい150グラムから200グラム、児童によっては3、400グラムであることが
   わかった。はかりに手をのせると、その圧力は1キロ以上に及ぶものもいた。私はこうして、一
   年生の筆圧の実態の一端を知ることができた。

 そこで、筆圧を適正にするためには、自由な運筆、停滞しないなめらかな運筆ができるよう
にする。鉛筆の選び方、鈴筆の持ち方、――持ち方の正しくない者が非常に多い――などにも
注意し、適度な速さ、自由な線書き――指先、手首のなめらかな運動――ができるように練習
するとよい。
(4) 児童の書くさかさ文字
 書字力調査の資料のうち、一学級47人が書いた清音45字(「を」を省く)についてみる
と、前掲の(3)図のように、さかさ文字は13字で、延べ27例ある。このさかさ文字の数は、
書かせた文字の26.6%にあたる。またさかさ字を書いた児童は、企部で16人、これは調
査人員47人の34%に当たっている。このうち、「さ・き・く」の3字を書いたもの、「ほ
・く・け」の3字を書いたもの1、「き・く・さ」の3字を書いたもの1、「き・り」の2字
を書いたもの2、「く・ぐ」の2字を書いたもの3、他はそれぞれ1字ずつになっている。
 これは、さかさ文字の数といい、さかさ文字を書く人数といい驚くべき事実である。こうし
た文字を書くのは、目の図形の異同の識別・認知と手との協働連絡がじゅうぶんでないうちに、
文字を書くことを指導したためであろう。文字学習の基礎としての、図形の識別練習をするこ
とがたいせつである。
                                            83

  第三章 入門期国語指導の考え方と内容

   一 指導の基礎になる考え方

1 総合的な生活指導のなかで
   ――生活の中に学習がある
   ――生活をことばで処理する
   ――各教科学習の基礎能力をつける
 入学したばかりの児童の生活は、まだ未分化で、総合的、全体的な性格をもっている。学校
生活が、まだ、家庭生活や幼稚園生活のままであったり、遊びがそのまま生活であったり、学
習であったりする。そうした生活に、しだいに学校生活の型を取り入れ、自由奔放な遊びから、
計画的な学習へ、総合的な生活から、しだいに分化された生活へ、アクセントをもった生活へ
と展開していく。そのような特色をもった生活の全休の中で国語の指導を計画する。
 つまり、すべての生活の基礎としてことばの生活の指導が行なわかるようにする。逆にいえ
ば、すべてことばを使う生活を指導することによって、それぞれの生活がうまくいくようにす  84
る。そして、学校に慣れていく。適応していく。
 たとえば、児童たちは、入学してくるとまず、@入学式に臨んで、集団生活、社会生活の第
一歩を踏み出す。A「好きな絵をかく」というような美的生活、表現生活をする。(図画)
「おだんご作り」のような、遊びの生活、空間観念、創作意欲にもとづく、空間的、制作的生
活をする。(工作・算数)B「学校めぐり」のような自然的・社会的な生活をする。(理科・
社会)C「歌を歌う」のような審美的な感覚的な生活をする。(音楽)D「楽しい遊び」のよ
うな団体的な身体的な生活をする。(体育)
 このように、しだいに生活に区切りをつけ、それぞれに特性を持った生活を営むようになる。
しかも、そこにはつねにことばの生活がある。このような特殊な性格を持った生活の中で、そ
れぞれの生活がうまくいくようなことばの指導をする。
 いわば、児童たちの総合的な生活の中で、やがて分化していく各教科等の学習に必要な基礎
的なことばの能力を身につけてやる。話の聞き方、話のしかたから、ことばの理解、ことばの
読み方、書き方などを、さまざまな生活経験をするなかで身につけていく。
 もっと具体的にいえば「おだんご作り」の楽しい作業の中で、だんごの形やだんごの大きさ
を観察して、空間観念に培うとともに、形を表わす、「まるい」「たま」などのことば、「お
おきい」「ちいさい」などの比較のことばと文字の読み方を学習する。だんごの数を数えるこ
とによって数量観念に培うとともに、「おおい」「すくない」「たくさん」「一つ」「ふたつ」
などの数量や数を表わすことばとその読み方、使い方などを学習する。
 このように、さまざまな生活経験、学習活動の中で、その経験や学習活動をするの・に必要  85
なことばの学習をし、それぞれの生活に適応する。

2 社会的な言語生活への適応を考えて
   ――学校生活になれる。
   ――コミュニケーションに慣れる。社会性を増す。
   ――身振りからことばへ
 学級集団の中にはいったばかりの児童たちは、一般にはじめめうちはあまりしゃべらない。
すこぶる緊張している。不安なのである。この不安を去って、精神的な安定が得られるように
ならないと、効果的な学習は困難である。まず、気軽に自由にしゃべれるような雰囲気を作る。
先生と児童とが楽な気持ちで、コミュニケーションできるようにする。始めは、近所の子ども
から、しだいに隣りに並んでいる子どもとの間でコミュニケーションができるようにする。そ
して、その集団をしだいに大きくしていく。ことばを使って、先生や友だちや学級の仲間との
通じ合いができるようになると、学校生活に対する不安も薄らいでしだいにその生活になれて
くる。泣く児童も減ってくる。話さない児童もいなくなる。
 こうした生活の過程で、聞けばわかる、話せば通じることを意識し自覚する。ことばを使わ
ずに泣いて訴えていた児童が、ことばで訴えるようになる。かくして、ことばの働きを、その
社会性を経験的に身につけていく。ことばを使う機会、場面に応じてことばの使い方を身につ
ける。と同時に、児童は学級社会の生活になれ、社会性を増し、精神的安定を得るようになる。
 このような学級社会のことばの生活の中で、先生に問われて、頭を振って答えていた児童が  86
ことばで答える。身振りの代わりにことばを使う。泣いて要求を訴えていた児童、先生に話せ
ないで小便をもらしてしまった児童、自分で直接話さないで、友人を介して先生に意志を伝え
ていた児童たちが、それぞれ、ことばで反応し、ことばで訴え、ことばで伝えることができる
ようになる。
 身振りや表情や行動で先生のことばに反応していた児童たちが、ことばにはことばで反応す
るようになる。
 要するに、学級生活の中で、次のことを指導する。
(1) 先生と児童、次には児童と児童との間にコミュニケーションが成立するようにする。
(2) コミュニケーションにはことばを使うことに気づかせ、身振りや行動で意志表示をするか
 わりにことばを使ってすることをわからせる。
(3) 聞けばわかる、聞いたとおりに行動する。話せば伝えられる。訴えられる。要求できるな
 どのことを具体的に経験させる。
(4) ことばの学習を通して、学級生活、学校生活に慣れ、社会性を増し、精神的安定が得られ
 るようにする。

3 機能的なことばの指導を中心に
   ――働きのあることば
   ――学習に必要なことば                              87
   ――生活に必要なことば
   ――基本語い・学習基本文型
 入門期の国語学習でだいじなことは、児童たちの学級生活・学校生活、あるいは学習に必要
なことば、つまり、それぞれの生活経験をするのに必要な、働きのある、大事なことばを選ん
で学習することである。たとえば、さきに述べたように児童の入門期の学校生活、つまり「歌
を歌う」「学校めぐり」「おだんご作り」「ぶらんこ遊び」「かけっこ」「絵を書く」などさ
まざまな生活をする。これらの生活をするためには、それぞれことばを使う。それは、児童た
ちの学習内容を表わすことば、学習活動をするのに必要なことば、教師の使うことばなどであ
って、それらのことばを使わなければ、それぞれの生活が処理できない。そのような経験、学
習をするのに必要な、しかもしばしば使われる、あるいは経験の中心になる大事なことばを取
り上げて学習する。つまり、機能的なことばを学習する。
 入学第一日の「入学式」についてみると、教室にはいって指名点呼をする。先生の注意や指
示を聞く。そのような経験に適応するためにはたくさんのことばが使われる。それらのことば
のうちで、その生活に適応するために、特に必要な語を運んで、教師は、正確に使う。(指導
語い)さらに、それらの経験の中でも、最も大事なことばを選んで直接学習させる。(学習語
い)たとえば、「○○小学校の一年生」「一年○組」「先生」「教室」「机、いす」「立つ」「名
まえを呼ぶ」「返事をする」その他大事なことばについては、板書したり、あるいは教師は発
音を正し、ゆっくりと正確に、適切に使う。中でも、特に大事なことば「はい」――このこと
ばは、初めて児童と先生とを結びつける、相互に通じあう、社会関係を作る、いわゆるコミュ  88
ニケーションのための最もたいせつなことばである。しかも、短時間に全員が使うことばであ
り、このことばを使わないと、第一日の生活に適応できない、機能的なことばである。この「は
い」のことばカードを作っておいて、はいという返事と(音声言語・話しことば)ともにそれ
を掲示して「はい」という文字言語とを視覚的に結びつける。「はい」という返事を視覚的に
印象づける。文字学習は、機能的に、自然な形で行なわれる。
 また、先生の指示や説明や注意なども、一事一文、一指示一事項で明確に話す。
 このように、その日、その日の経験を処理するのに必要な、最も大事なことば――機能的な
ことばを選んで指導する。それらのことばについては、後の指導計画や実践例を参照されたい。

4 国語の基礎指導を目ざして
   ――発音、発声、発言の基礎指導
   ――ことばの読み書きの基礎指導
   ――ことばへの態度の指導
 学校生活に慣れる。集団生活に慣れる。社会性を育てる。学習の態度を養う。学校生活・学
習に必要なことばやことばの使い方を身につけるなど、ことばの指導を通して生活指導を行な
うことは、入門期の学習指導の基礎である。
 このような基礎的な基盤的な生活を高めるとともに計画的な、児童の言語生活に即した、国
語の基礎指導をしなければならない。
 発音、発声、発言の指導もその一つである。コミュニケーションの基礎、ことばの学習、文  89
字の学習の基礎としての発音、発声、発言の指導を計画する。入学当初は非常に声が低い。か
の鳴くような声でやっと話す児童も多い。幼児音、幼児語を持っている児童も何パーセントか
はいる。方言音を身につけている児童も多い。音韻の固定するこの時期に発音・発声の指導を
積極的、計画的にすることはきわめてたいせつである。発音の指導はこの時期を逸すると、あ
とではなかなか効果があがらない。また、発言の基礎指導は特に大事である、小さな声で話す
習慣がついてしまうとなかなか直らない。はっきりとものをいう態度、憶せずに話す態度の指
導が大事である。話を聞く時には、話し手の顔を見る。物音を立てない。隣りの人と話をしな
い。そういう態度の指導もする。
 ことばの読み書きの基礎指導もその一つである。文字の読み方、ことばの読み方、文字の書
き方、ことばの書き方の基礎を確実に押えて、計画的に指導する。ことばの読み方の基礎とし
ての、図形の異同の識別訓練、語型読み、一目読みの練習、文字の書き方、ことばの書き方の
基礎としての、図形や線の書き方、指先・手首の運動の練習などを計画する。
 文字、ことばの正確な読み方――音声表象を正確に作る――文字、ことばの正確な書き方―
―視覚表象(映像)を正確に作る――を指導する。
 読むこと、書くことに興味を感じ、喜びを持ち、おっくうがらずに読み書きする態度を育て
ることも大事である。自分から読もうとせず、先生や父兄、友人に読んでもらうのを喜び楽し
む児童は案外に多い。
 読めば何かがわかる、文を読んだら、ぶらんこが揺れていることがわかった。つばめは遠い
所から飛んできたことがわかった。書けば役に立つ。明日、学校へ持ってくる物の名をノート  90
に書いておけば忘れずに持ってこられる。書けば、自分の思っていることを、自分が見た物を、
先生に、友だちに、両親に知らせることができる。こうしてことばの働きや役目が具体的にわ
かる。ことばへの関心、意識、ことばへの態度が、自然に育てられる。それを計画しなければ
ならない。

5 児童の国語生活の実態に即して
   ――言語能力の発達に即して
   ――聞く、話す、読む、書く、言語生活の実態のうえに
 入門期の国語指導も、児童の国語能力の発達をよく知って、それに応じた指導をしなければ
ならないことはいうまでもない。
 一般に文字学習が可能になる時期は、知能年齢が、六・五歳に達するころだといわれている。
その時期に達しない児童に、文字学習を強いても、思うように効果の上がらないことは周知の
事実である。入学当初いくら指導してもなかなか文字が読めない、書けない児童が、夏休みが
終わって学校へ出てくると急にじょうずに読めるようになり、書けるようになる事実もしばし
ば経験する。入学当初よく読める児童が、二学期・三学期になるといっこうに振わず、入学当
初読めなかった児童にいつの問にか追い越されている事実もよくある。
 児童の話す能力にも、おのずから発達段階があり、個人差がある。それは、児童たちの話し
ことばの文型をみるとよくわかる。文型にも児童の思考の発達に応じ、認識の発達に応じた発
達段階がある。それを知って話しことばの指導をしないと効果があがらないし、児童の思考力、 91
認識力を高める計画的な指導はできない。
 そこで、児童の国語能力の発達、その具体的な現われ方を知って、つまり、児童の国語生活
の実態とそのささえになっている国語の能力とを知って、それに即し、その発達に応じた指導
をしなければならない。
 その実態については、第二章に、観察や科学的な調査等によって詳細に述べてある。これら
の実態に基づいて指導事項を決め、指導計画を立てて指導をする。たとえば、幼児音、幼児語
とそれを持っている児童がわかっている。どんな方言音をどの程度持っているかもわかってい
る。それらの音韻が将来どんな方向をたどろうとしているか、また、発音しにくい音がどれと
どれかもわかっている。このような実情、実際の上に立って発音、発声指導を計画する。
 入学してくる児童の中には、文字が読めるものが多い。しかしことばが読め、文が読める児
童は少ない。そういう実態の上に立つと文字の読み方指導は何をねらうべきかが明らかになる
拾い読みから一目読み、語形読み、はさみ読みの指導も、そこから当然考えられる。ことばの
意味充実の指導も重要な指導内容として取り上げられる。
 文字が書ける児童も多い。しかし、その筆圧をみると過重のもの、不足のものさまざまであ
り、筆勢のよどみ、停滞も多い。このことはすでに述べた通りであるが、こうした実態に即し
て運筆の基礎練習、指先手首の訓練、さまざまな描線の練習が必要である。また、字形の不整、
筆法の不正等、書字技能がそのままに定着していることもすでに発見した通りである。それに
応じた基礎練習も考えなければならない。
 また、言語生活に適応できないで泣く子、話さない子、話せない子、逆にしゃべり過ぎ、発  92
言しすぎて集団生活を妨害する子、学習の妨げになる子など、いずれもその実態――原因をよ
く洞察して指導する。

   二 指導の方法を規定する考え方

1 興味・必要・欲求の上に立って
 児童の学習内容に対する興味、関心、必要の上に立って指導が行なわれなければ学習は成立
しにくい。しかも、その興味や必要は、児童の内面的な欲求にまで高まらなければ、意欲的な、
積極的な学習は行なわれない。
 したがって、どんな題材・主題について学習するか、どんな言語経験をさせるか、児童の興
味や関心を刺激し、しかも、国語の知識や技能や態度が養なわれ、児童の人聞性に培う何物か
を含むものが選ばれなければならない。学習に対する興味や必要感によって学習の成果が左右
される入門期の学習においては特にそのことがたいせつである。
 さし絵に対する興味は、文章を読もうとする欲求――文章を読むことによって、さし絵の意
味を知ろうとする――を高めるであろう。
 学校めぐりによって見つけた運動場にある運動用具や機械に対する興味は、それを話し伝え
なければいられなくなるであろう。見るもの、聞くものすべてが物珍しい児童は、それを先生
に告げずにはいられない。先生の話すおもしろい童話には、おのずから耳を傾ける。歌を歌う
楽しみは、歌われる情景や心情を想像し、ことばの学習をおのずから深めていく。
 自分の知っていることを、話そうとし、書こうとする表現欲、よく知らないことを知ろうと  93
する求知心、それがわかり、理解された喜び、満足感、そこに学習の基盤がある。

2 活動の目的を明らかにして
 学習においては、どんな活動も目的なしに行なわれることは考えられない。話す場合、聞く
場合でも、読む場合、書く場合でも、およそ目的なしに――それを意識するか、しないかを問
わず――言語浩動が行なわれるということはない。そこで学習活動をかっぱつにし、意欲的に
し、効果的にするためには、なんらかの形で、学習活動のめあてを明らかにする。それは先生
が話してもよい。みんなで話し合ってもよい。衝動的な言語活動から、しだいに目的的な、計
画的な、言語活動へと導いていく。宿題や伝言を忘れないために心おぼえのことばを書く。家
庭や学校での楽しい経験を広げたり、深めたりするために絵やことばを書く。遠足の楽しさ、
運動会のおもしろさを忘れないために、あるいは両親やきょうだいに知らせるために、その様
子を書く。
 文字を練習する場合でも、隣りの人に見てもらいましょう。こんどは先生に見せましょう。
最後には、おとうさんやおかあさんに見てもらう文字を書きましょう。こうしてはっきりと目
的を持たせて事かせると書く興味を失わない。いっしょうけんめいに書く。
 書いてあることを知るために文章を読む。読んでみんなに知らせ、紹介するために声に出し
て読む。すらすらと読めないから練習するために読む。さし絵が何を表わしているかを知るた
めに読む。
 児童の聞く、話す、読む、書く主体的な行動は、つねになんらかの目的をそれ自体持ってい  94
る。行動の過程においては、行動それ自体が目的であるかもしれない。しかし、行動の始めに
当たっては、目的が方法を規定する。目的を達成するための方法が考えられ、それによって技
能や態度が決められる。

3 経験させながら
 入門期児童の学習活動はそれ自体具体的でなければならない。児童は具体的な活動を通し、
作業により、行動、動作によって学習をする。抽象的に頭の中で考えることはむずかしい。興
味が湧かない。持続しない。態度が伴なわない。理解できない。認識されない。手で、足で、
からだで学習する。生活経験を通して学習する。
 たとえば、「だまって読みなさい」「声を出さないで読みなさい」という指示では、全員が
読む活動をするまでに時間がかかる。積極的な読む活動が行なわれにくい。ところが、「いっ
せいに声を出してはっきり読みなさい」という指示では、直ちに読む活動に取りかかる、いっ
せいに、積極的な、意欲的な読む活動が展開される。「書き直す時は消しごむを使わずに、文字
の上に線を引いて、そのそばへ、あるいはその下に書きなさい」という指示では、児童は不安
で書き進めない。消して書き直しなさいといえば、安心して書きもし、よりよいものを、より
すぐれた文字を書こうとして、一生懸命に書く。「ことばカード」を黒板にぶら下げて読ませ
るよりも、めいめいカードを作らせたり、カードを操作させて読ませたほうが効果がある。文
型の練習も、ただ読ませるよりも、書かせたほうがよい。ことばカードを並べさせてやったほ
うがさらによい。問いに答える場合でも、立って答えさせたほうが効果的である。       95
 経験を話す場合、同じことを同じ文型で話していても、代表者二、三人に話させるよりおお
ぜいの者に話させるほうがよい。そこからさらに広い、深い話が出てくる。文型もだんだん発
展してくる。ことばの意味を理解させる場合でも、実物を見せたり、行動化したり、行動とと
もにいわせたり、考えさせたりしたほうが効果的である。意味充実をしやすい。

4 段階を追って――プログラムに従って
        ――発達段階を押えながら
 入門期の学習指導は、易より難へ、単純より複雑へ、思考の発達、認誠の発達に従って、一
歩一歩段階を迫って、学習のプログラムに基づいて行なう。
 話の聞き方の指導に当たっても、たとえば教師の指示は、「一指示一事項」から始め、反応、
適応の様子を見ながら、しだいに「一指示二事項」「一指示三事項」に及ぶ。教師の説明も「一
文一事項」から始める。単純な文型から、しだいに複雑な文型を用いる。それは、児童の認識
の発達に応じなければならない。
 児童に話させる場合も、そこには、文型の発達に応じたプログラムがある。経験情報を伝え
る場合、「テレビを見ました。」から「○と○と○とテレビを見ました。」「ぼくはOと○と
テレビを見ました。」「きのう、ぼくはテレビを見ました。」など、そこには、児童の思考の
発達に応じた話しことばの文型が用いられる。これが、私のいう学習基本文型である。こうし
たプログラムに従って話し方の指導をする。
 文字の学習においても同様である。@ 事物とことばを対応させ,A ことばと文字を対応さ  96
せる。B 文字を読むというプログラムをふむ。
 また、「はい」の次に「はた」を学習する。そこで、「はい」と「はた」のカードを並べて、
「は」を抽象する。というように、語形の学習からはいって、文字を分析して、定着する。
 要するに、学習内容の内部にある易より難への段階、学習事項の多少による少より多への段
階、思考や認識の発達に応じた段階、学習の過程による段階、学習の深浅による段階など、さ
まざまな学習のプログラムを編成し、それにしたがって学習指導をする。ここにほんとうのプ
ログラム学習がある。

5 教材を作りながら
 児童の国語能力の発達・国語生活の実態、学習のプログラム、機能的なことば等に従って、
入門期の国語学習を計画すると、勢い現行の教科書では間に合わない。現行の教科書は、その
ような児童の発達、実態、機能的なことばなどを考慮して編集されていないからである。
 そこで、学校や家庭における児童の言語生活の中から、適切な経験を取りあげて、それを文
章化して教材を作る。たとえば、「学校めぐり」をさせて、そこで見たり、経験させたりした
ことを話題として話させる。また、その経験を話させながら、それを文章化して板書するなり、
短冊カードに作るなりして、読んだり、話したり、書いたりする。
 たとえば、「学校めぐり」のあと、見たものを話させながら、「てつぼうがありました。」
「ぶらんこもありました。」と板書する。それをみんなで読む。改めて庭にあった運動施設を
見直す。短冊カードに、その場で書いて黒板にぶら下げて、読み書きさせてもよい。      97
 このように、入門期の国語指導の教材は、児童と先生とで作っては学習をする。しかし、そ
れはどんな経験を取り上げてもよいのではない。どんなことばを扱ってもよいのではない。す
でに述べたような諸条件を備えていなければならない。プログラムが編成できるものでなけれ
ばならない。しかも機能的に学習できるものを選ばなければならない。

6 機能的に考えて
 国語学習を機能的に考える考え方は、@学習によって価値を生み出す。Aしたがって、学習
活動はつねに目的をもって行なわれる。B内容的価値の学習と技能や態度の学習とを二元的に
考えない。学習活動の中で機能として統一的に学習される。
 たとえば、図工で使う材料をノートにメモさせる。そのメモによって、翌日忘れずに学校へ
持参する。生活の記録を残すために、絵日記を書く。先生の問いに答えるために文章を読んで
内容を理解する。掲示を読んで、その通りに行動する。適応する。昨日したこと、見たことな
どを話して情報を交換する。きのうのことを毎日二、三人ずつ背面黒板に自由に書かせて経験
情報を知らせ合う。
 聞いたり、読んだりすれば、何かがわかる。知識が得られる。情報が得られる。話したり、
書いたりすれば、何かが伝えられる。訴えられる。相手を動かすことができる。あるいは生活
に役だてることができる。
 このような考え方で、学習を指導する。
                                            98
7 個別指導を目ざして
 すでに述べたように、入学したばかりの児童の言語生活、言語能力は実にさまざまである。
その優劣の差もはげしい。個人個人の実態をよく押えて、それぞれに応じた指導をしなければ
ならない。文字が思うように書けないといって泣き出す子もいる。他の子どもがせっせと書き
始めているのにまだ鉛筆さえ持とうとしない子もいる。書くことの速い子、遅い子、じょうず
な子、へたな子、ひとりとして同じ子がいないのが実状である。
 単行本を自由に読む子もいれば、まだほとんど文字の読めない子もいる。絵ばかり見ていて、
いっこうに文字を読もうとしない子もいる。
 いっせい指導をしながらも、つねに子どもの学習の実態をつかむようにする。文字を書いて
いる場合、すばやく机間をめぐって、字形の整わない者、筆順の違っている者、練習を要する
者、りっぱな文字を書いている者などを発見して、その場で個別に指導する。その誤りやうま
く書けない所を板書して、さらに全員に練習させる読めない子には、なるべくやさしい文や、
短い文句を読ませて成功感を味わわせてやる。文字のよく読める子と、まだ文字の読めない子
がいる。読めない子どもには、ことばカードによって、語形読みの指導をする。字の読める子
も語形読みの指導によって、拾い読み、逐字読みを矯正する。いっせい指導の中でも個人個人
に応じた指導ができる。読み取った結果を話させる代わりに、ノートに書かせる。机間をめぐ
って実態をつかむ。ひとりひとりの学習の成功、不成功がよくわかる。そこを指導する。
 入学当初は、グループ指導もなかなかむずかしい。いっせい学習の中の個別指導――つまり、
個個の児童の能力の実態をよく知った上で一斉学習をする。――斉学習をしながら個別指導を  99
する。易より難へのプログラムに従って学習させながら、学習の個別化を図る。学習内容の多
少によって学習を個別化する。
 全児童一斉に読ませること、教師の発問に対して仝児童一斉に答えさせることなど、個々の
児童の実状、能力がわからないような学習のさせ方は極力避ける。
 また、教師はつねに全児童に目を注ぐ。教室の左右のいちばん前にいる児童、教室の両側に
いる児童、教室の正面の教師の目の下にいる児童、だいたい、教室の前から三分の一ぐらいま
での所に坐っている児童などは、教師の目からこぼれやすい。うっかりして見落しがちになる。
ハイ、ハイとよく手をあげる児童は、つい答えさせてしまうが、だまって、手も上げずにいる
児童は見落しやすい。
 要するに、個別指導は、何よりもまず、児童の実態を確実につかむことから始まる。そこに
ある能力差を発見するところから始まることを忘れてはならない。読めない読めないという声
は聞くが、どの児童がどんな所が読めないかということになるとさっぱりわからないのが学級
の実状である。

8 区切りをつけて
 入門期の学習指導のこつは、学習内容を、なるべく小さく区切って学習させるところにある。
文字を五回書きなさいという代わりに一回書きなさい。本を見て書きなさいという代わりに、
先生のいうのを聞いて書きなさい。課題は一度にいくつも課さないで、一つ一つ課題を解決し
ながら学習を進める。何回も読んでごらんなさいという代わりに、一回読んではその結果をま  100
とめ、また課題を与えて読ませてはその結果を処理する。
 このように、学習活動をできるだけ小さく区切って学習させる。そのたびに、すばやく机間
を回って、その結果を見てとり、それに応じて次の指導をする。このすばやく学習の実態をつ
かんで、次の学習を展開することも、入門期指導のこつである。
 学習活動が大きいと、まず時間がかかる。時間がかかるとあきてくる。注意が集中しない。
活動処理の速いものと遅いものとの差が大きくなる。早くできたものはさわざ出す。一つ一つ
の活動を小さくして学習に変化をつけ、学習にスピードを持たせることも入門期指導のこつで
ある。
 学習活動を小さくすると、その結果がすぐ看取できるから、欠点や不じゅうぶんな点の指導
がすぐできる。指導の落ちこぼれが救える。児童に成功感、強化を与えやすい。学習の区切り
がはっきりする。指導のねらいも明確になる。

9 練習を重ねて
 学習事項について、くり返し練習を重ねなければならないことはいうまでもない。特に、入
門期の練習は、それが機械的に流れるとすぐに興味を失って、効果があがらない。できるだけ
練習時間を短くして、くり返しを多くする。一度に多くの練習を課さず、少しずつにして回数
を多くする。できるだけ学習活動の中に位置づけて練習する。
 返事の「はい」の書き方を練習するさいに点呼してめいめい返事をさせる。その返事をじょ
うずに元気よく書きましょう。二度めは隣りの人の返事を書いてあげましょう。三度めは、先  101
生に「はい」と字で書いて返事をしてください。四度めは、きょう学校でした元気な返事を書
いていっておとうさんやおかあさんに見せる返事を書きましょう。といった練習のしかたをす
る。めいめいの名まえをカードに書かせる。二回め、わたしは○○ですといって先生に教える
名まえを書きましょう。書いたら先生の所へ出てきて、私は○○ですと名まえを見せていって
ください。あるいは、先生が回っていったら、カードを見せて、私は○○ですと教えてくださ
い。これで練習ができる。学習した文字を含む物の絵を書き、その絵の名を四角の中に書かせ
る。たとえば、旗、橋、花等の絵,草、さら,かさ等の絵、ねずみ、ねこ、屋根等の絵をかきそ
の横に文字を書く四角を書いたものをプリントして与え、それぞれの物の名を四角の中に書く。
 こうして文字の練習のしかたをくふうする。 @は、は、は、はと、書く練習をする。Aは、
はし、はな、はこと書く練習をする。この二つの練習では、Aのほうが効果的である。文字の
学習、練習はことばとして練習することが原則である。文字、ことばの学習については、「文
字はことばで、ことばは文で」という原則がある。

10 評価しながら
 評価に始まって評価に終わるということは、学習指導の原則である。評価は、観察し記録す
る。測定、テストをするなどの方法によって得た結果によって行なうのが普通である。学習前
に、児童の学習能力の実態をつかむ。それに応じて学習指導をする。その場合、学習の過程に
おいて、あるいは、学習の後において評価する。文字を書かせたら、児童が書いている間に、  102
筆順や字形等について観察し、それに基づいて指導をする。文を読ませたら、それについて観
察評価し、その結果に応じた指導を加える。
 評価は、学習の始めから、学習の過程で、また学習の終わったあとで、つねに正確に、客観
的に行なわれるようにする。評価から学習指導が始まる。学習事項が児童に即して新たに発見
される。学習指導法が考え出される。したがって、評価のないところに進歩はない。発展はな
い。
 以上の十か条に基づいて、学習指導の方法をくふうするとよい。

   三 入門期国語指導の内容

 入門期の指導は、学校生活の全面にわたって行なわれる。社会性の訓練、自主性の訓練など、
集団生活の基礎的な事項について具体的な生活を通して指導する。そうした、学校生治、集団
生活の指導の中で、特に学習生活の訓練、学習の態度、技術の養成等につとめる。そうした生
活の基礎的な指導とともに学校内における言語生活に通応する。他教科の学習においても言語
の役割、機能を果たし得るように指導する。他教科学習の基礎としてのことばの力を身につけ
てやる。このような一般的な言語生活の指導を計画的に行なう必要がある。
 学校、学級の生活に安心してはいることができる。学校学級の生活に慣れる。学習について
の興味、必要性を自覚し、学習態度を身につける。学校学級の言語生活に適応する。しゃべら
ない子を話の仲間に入れる。泣いて意志表示をする子にことばを与える。問われて、身振りや、
からだで答える子を、ことばで反応するようにする。わからないことは人に聞くようにする。
指示を聞いて行動できるようにする。文字のない子に文字を与える。ことばや文の読み書きが  103
できるようにする。ことばの学習の基礎的な諸訓練をする。
 このような学習に必要なおもな内容をあげると次のようになる。

1 集団生活に慣れる
   ――社会性、自主性の訓練。
   ――集団生活における精神的調和・安定を得る。
 (1)  登校、下校する           (2)  教室に出入する
 (3)  学校を回る             (4)  先生と遊ぶ
 (5)  友だちと遊ぶ            (6)  用具を使って遊ぶ
 (7)  並んだり分かれたりする       (8)  朝礼に参加する
 (9)  先生の指示に従う          (10) 先生と話す
 (11) 友だちと話す            (12) 給食を食べる
 (13) 服装をきちんとする         (14) 学用品・持ち物を整理する
 (15) 学用品を扱う            (16) 用便をたす
 (17) 座席に坐ったり立ったりする     (18) わからないことは聞く
 (19) 自分のことは自分でする       (20) 仲よくする
 (21) いじわるをしない          (22) 友だちのじゃまをしない
                                            104
2 学習生活に慣れる
   ――基本的な学習・作業の訓練
   ――学習に対する基本的な構え、処理の力を養う。
   ――学習の基礎的な力としてのことばの学習をする。
 (1)  歌を歌う              (2)  絵をかく
 (3)  折り紙を折る            (4)  ねん土細工をする
 (5)  ごっこ遊びをする          (6)  運動をする
 (7)  絵本を見る             (8)  整列する
 (9)  運動場を回る            (10) 運動場を観察する
 (11) 花を見る              (12) お話を間く
 (13) ノートを使う            (14) 鉛筆で書く
 (15) クレヨンを使う           (16) 教科書を扱う
 (17) 物を集める、配る          (18) 物を整理保存する
 (19) 問いに答える            (20) 返事をする

3 言語生活に慣れる(コミュニケーションの基礎訓練)
   ――ことばによるコミュニケーションの基礎を培う。
   ――聞けば、読めば何かがわかる。
   ――話せば、書けば何かが伝えられる、訴えられる。                 105
 (1)  朝のあいさつをする         (2)  帰りのあいさつをする
 (3)  先生の指示を聞く          (4)  童話を聞く
 (5)  返事をする             (6)  問いに答える
 (7)  会話をする             (8)  経験を話す
 (9)  見聞を話す             (10) 絵本を読む
 (11) 家のことを話す           (12) 掲示を読む
 (13) 時間割を書く            (14) 時間割を読む
 (15) 学校放送を聞く           (16) 名まえを書く
 (17) 伝言を書く             (18) 忘れないために書く

4 国語の基礎的な技能・態度を育てる
   ――国語の基礎技能の訓練
   ――機能的なことばの指導
 (1) 朝のあいさつをすること         (2)  帰りのあいさつをすること
 (3) 呼ばれたら返事をすること        (4)  問いに答えること
 (5) わからないことは聞くこと        (6)  話し手の顔を見ながら聞くこと
 (7) 物音をたてないで聞くこと        (8)  人の話は終わりまで聞くこと
 (9) 話のだいたいを聞きとること       (10) 指示に従うこと
 (11) いおうとすることがわかるように話すこと (12) 続験の順序に従って話すこと     106
 (13) 大きな、はっきりした声で話すこと    (14) ことばの終わりまではっきり話す
                           こと
 (15) 学習基本文型によって話すこと      (16) 掲示を読んで適応すること
 (17) 身の回りの簡単な文を読むこと      (18) 逐字読みでなく語として読むこと
 (19) 逐語読みでなく文として読むこ      (20) はっきりと音読すること
 (21) だいたいを読みとること         (22) 名まえを書くこと
 (23) 心おぼえを書くこと           (24) 簡単な語や文を書くこと
 (25) 経験したことを書くこと         (26) 見たり、聞いたりして書こと
 (27) ことばを作ること            (28) ことばを並べて文を書くこと
 (29) 学習基本文型で書くこと         (30) 幼児音、幼児語を使わないこと
 (31) 正しい発音、発声に慣れること      (32) 学習基本文型を身につけること
 (33) ひらがなを読み、書くこと        (34) 機能的なことばを理解すること

5 基礎訓練
 読むこと
 (1) 図形の異同の識別練習
 (2) 似ている文字・語形の読み分け練習
 (3) 語形読みの練習
 書くこと
 (1) 図形を書く練習                                  107
 (2) 指先、手首の練習
 (3) 種々の描線の練習
 (4) 適正な筆圧の練習
 (5) 視写・聴写の練習
 聞くこと
 (1) 発音の異同の聞き分け練習
 (2) 類似音の聞き分け練習
 話すこと
 (1) 発音、発声の練習
 (2) 発音しにくい音の練習
 (3) 方言音(ヒとシなど)の僑正練習

                                            108

   第四章 入門前期国語指導の実践


 入門期における各教科の学習は、学校の全生活の指導の中で、未分科のまま、総合的、全体
的に行なわれる。しかも、その学習の中には、やがて分科される各教科へと発展する基礎的な
学習が含まれている。
 ここには、総合的な未分科な各教科の学習が行なわれる。入門期の始め10日間の国語指導
の計画と実践について述べることにする。

   一 入門前期10日間の国語指導計画

 この計画は、新年度の一年担当予定者が、その年の一月から毎週一回集まって、研究・討論
した結果をまとめたものである。しかも、四月から11名の者がこの計画に従って、それぞれ
の学校の実情に応じながら、実践を通して実験してみた。その結果についてはあとに述べてあ
る。この指導計画は、特に次の点を考慮して編成した。
                                            109
1 入門期国語学習指導計画の立て方
(1) 各学校・学級の実態に即して計画する。
(2) 10日間の学校生治の中で、学校生活を知るために必要な生活経験(「学校めぐり」など)
 各教科の基礎的な活動(「絵をかく」など)児童の興味を持つ題材(「ぶらんこ」など)特に、
 国語の基礎指導、各教科学習の基礎になることばの使い方の指導等を含む題材、活動(「歌を
 歌う」「きしゃごっこ」など)等を選んで配列する。
(3) それぞれの学習活動、生活指導等に必要な機能的なことばを選んで指導する。
 ア 機能的なことばの中で、特に文字指導のためのことば(指導計画参照)を系統的に指導
  する。
 イ 機能的なことばの中で、特に、教師が意図的・計画的に使って聞かせ、その意味充実を
  はかることば(指導計画参照)をあげる。
(4) 系統的・段階的に指導する。
 ア 機能的なことばの系統・体系を考える。学習させる語は、次の基準で、系統だて、体系
  化している。
  (ア) 「はい」「はた」「はな」のように文字学習の系統を考える。
  (イ) 「なまえ」「へんじ」「はい」、「あかい」「あおい」「くろい」などのように、
    経験処理に必要な語、同類の語など語の体系を考える。
  (ウ) 文字の読み方の学習は、語形法(ことばとして読む)からはいって、文字に分析す
    るための系統を考える。
  (エ) 語の指導は(1)事物と語の対応、(2)語と文字の対応、あるいは(1)文字と語の対応、 110
    (2)語と事物の対応等のプログラムに従って行なう。
 イ 文型の発達(思考の発達)に応じて指導する。
  話しことばの学習は、一語文から、しだいに複雑な文型へと発達的・系統的に指導する。
  (ア) 教師は、指示や説明をする場合に、できるだけ、「一文一事項」で話し、しだいに、
    「一文二事項」「一文三事項」の語へと発達的、段階的に指導する。「みんな立ちな
    さい。」「立ったら、机の下にいすを入れなさい。」「廊下へ出なさい。」というよ
    うに、一文一事項で話す。これはやがて、「みんな立ったら、机の下へいすを入れて、
    廊下へ出て並びなさい。」のように、一指示三事項にまで発達する。
  (イ) ある文型を指導するには、その文型が自然に使われる場面・経験・話題を取り上げ
    る。たとえば「学校めぐり」のあと、「どんな遊ぶ物があったか。」の質問に対し、
    「ぶらんこ」「てつぼう」などの一語文に続けて、「シーソーもあります。」という
    文型が現われるので、それを指導する。また、「楽しい遊び」のあとで「どんな遊び
    をしましたか。」の問いに対し、「すべりだい」「ろくぼく」などの一語文のあと、
    「てつぼうに乗りました。」「ぶらんこに乗りました。」という文型が現われる。ま
    た、「汽草ごっこ」など、ごっこ遊びのあと、「だれと何をしましたか。」という文
    型の指導が行なわれる。
(5) 10日間の学校における全生活の指導計画であること。 ここには全生活の指導の中の特
 に、国語指導の面だけが取り上げてある。
(6) 特に、言語生活、各教科の学習の中のことばを使う面においても,その基礎指導としての
 国語指導が行なわれるように仕組んである。したがって、特に、聞く、話す学習と機能的な   111
 ことばの学習に重点がおかれている。
(7) この指導計画は、それぞれの学校・学級、あるいは個々の児童に即して適宜変更する。個
 人個人のカリキュラムになるよう、指導の際に具体化する。
(8) 指導時間数は、第二日一時間、第三日以後二時間とし、終わりごろに三時間を加えた。

2 入門前期10日間の国語学習指導計画
 この計画表は、次のように構成されている。
(1) 「生活経験」の欄=その日の学習指導の内容として取り上げる生活経験・題材等が書いて
 ある。この生活経験は、すでに述べたように、音楽的経験・理科的経験・国語的経験という
 ようにそれぞれ教科的特色を持っている。
(2) 「目標と内容」の欄=ここには学習の目標とその目標を達成するための内容のうち特に国
 語の技能・態度・知識等があげてある。
(3) 「指導する語句・文型」の欄=ここには、それぞれの生活経験(学習活動)をする上に必
 要な語句・文型のうち特に教師が注意して使う、重要なものがあげてある。
(4) 「読む語句・文型」の欄=ここには、機能的な重要な語句・文型のうち文字で書いて、読
 ませるものがあげてある。そこで新しく指導する文字もあげてある。
(5) 「聞く語句・文型」の欄=ここには、(3)にあげた語句・文型以外の特に教師の使う重要
 な文型があげてある。いわゆる教師の指示が中心になっている。
(6) 「話す語句・文型」の欄=特に指導する話しことばの文型があげてある。

  入門前期10日間の国語指導計画                         112〜122



目標と内容  指導する語
句、文型 
読む文字、
語句文型  
聞く語句、
文型
話す語句、
文型 
















 
(一) 目標
1 一年生になった自
 覚
2 学校生活に慣れる
3 学習の基礎指導
(ニ) 内容
1 入学式
2 教室活動
 (1) 返事をすること
 (2) 指示に従うこと
  (一指示一事項)
 (3) 説明を聞くこと
 (4) あいさつするこ
  と
 (5) 学習に必要なこ
  とばを知ること
 (6) はた、はいの語
  を読むこと 
○○小学校、一
年二組、○○先
生、一年生、先
生、校長先生、
赤い旗、旗、並
ぶ、集まる、名
まえ、返事、は
い、さようなら
席、げたばこ、
机、いす、教室
 
はい
はた


(語形読み)
 





 
・一文一事の
 指示を聞く
・先生の説明
 を聞く
・指導語句を
 聞く
 
さようなら
(返事)「は
い」
(あいさつ)
「さような
ら」 










 







 
(一) 目標
1 学校生活に慣れる
2 学習態度の基礎に
 培う
(ニ) 内容
1 出席をとる
 (1) 返事をすること
2 あいさつをする
 (1) 親しみを増すこ
  と
 (2) あいさつのしか
  たを知ること
 (3) あいさつのこと
  ばを知ること
 (4) あいさつのこと
  ばを読むこと
3 整列する
 (1)指示に従うこと
 (2) 一指示一事項を
  正しく聞きとるこ
  と
4 歌を歌う
 (1) はっきり発音す
  ること
 (2) 幼児音を使わな
  いこと 
れつ、となり、
まえ、うしろ、
いす、つくえ、
たつ、なまえ、
ともだち、ぼう
し、ぞうりぶく
ろ、はながみ、
ハンカチ、ラン
ドセル、みどり
のおばさん、あ
いさつのことば
 
なまえ
いす
つくえ
となり
――○――
おはようご
ざいます
いってまい
ります
ただいま
さようなら
(語形読み)
 















 
・ならびまし
 ょう
・となりの人
 と手をつな
 ぎましょう
・たちなさい
・すわりなさ
 い
・あいさつを
 しましょう
・教師の一事
 一文の発間
 を聞く。
 
(あいさつ)
・おはようご
 ざいます。
・いってまい
 ります
・ただいま
・さようなら
 










 





 
(一) 目標
1 学校生活に慣れる
2 学習生活に慣れる
(二) 内容
l 出席を調べる
 (1) はっきりと返事
  をすること
2 名前を書く
 (1) 用具、用紙の扱
  い方
 (2) 文字を書くこと
 (3) 指示に従うこと
3 校庭を回る
 (1) 見たことを話す
  こと
 (2) 語として読むこ
  と
 (3) 幼児音、幼児語
  を使わないこと 
うさぎ、こと
り、ぶらん
こ,すなば,す
べりだい、てつ
ぼう、ろくぼく
ジャングルジ
ム、プール,さ
くら、はな,か
だん,いけ、チ
ューリップ,お
とこのこ、おん
なのこ、へん
じ,ももいろ、あか,しろ、き
いろ,みどり
 
ことり
はな
さくら
すなば
いけ
おとこ
おんな
へんじ
さくらのは

(語形読み)
 










 
・一事一文の
 指示を聞く。
・「今からこ
 の紙を一枚
 ずつみなさ
 んにあげま
 す。もらっ
 たら、長い
 ほうをたて
 に置いて、
 静かに待っ
 ていてくだ
 さい。」
・「この紙に
 みなさんの
 名まえを書
 いていただ
 きます。」
(その他指
 導例にある
 指示発問等
 参照)
 
・一語文で話
 す。
・あいさつの
 ことばを使
 う。
 「○○があ
 ったの」
 「○○もあ
 ったの」
・「○○した
 の」
・「○○しま
 した」
・「○○があ
 りました」
 


10







 





 
(一) 目標
1 学校生活に慣れる
2 学習態度を養う
(二) 内容
1 出席を調べる
2 校舎を回る
 (1) 生括環境を知る
  こと
 (2) 説明を聞くこと
 (3) 指示に従うこと
3 好きな絵をかく
 (1) 説明を聞くこと
 (2) 指示に従うこと
 (3) 絵をみて話すこ
  と
 (4) 発音に気をつけ
  ること
 (5) 幼児音を使わな
  いこと
 (1) 語句を理解する
  こと
 (7) 名まえをかくこ
  と 
保健室、給食
室、職員室、講
堂、図書館、ろ
うか、かいだ
ん、げんかん、ひこうき、じどうしゃ、うち、
でんしゃ、ふ
ね、うみ、たい
よう、くも、な
み、山、ちょう
ちょ、くさ、さ
かな、ひと、お
とこのこ、おん
なのこ、きんぎ
ょ、その他かい
た絵に現われた
語、色の名、え
をかく、色をぬ
る 
やま
くさ
うち
さかな
ふね
あかい
しろい
きいろい
あおい
くろい
(語形読み)
 










 
・一事一文の
 説明や指示
 を聞く
・すきな絵を
 かきましょ
 う
・この花はど
 んな色をし
 ていますか
・花はどのク
 レヨンで書
 きますか
 
・一語文
・「あかいは
 な」
・「あおいク
 レヨン」
・「○○が○
 ○している
 の」
・「電車の絵」
・「わたしの
 うち」
 


11






 





 
(一) 目標
1 学習生活に慣れる
2 学習の楽しさ、学
 習の態度、学習作業
 等について指導する
(二) 内容
1 歌を歌う
 (1) 発音、発声を正
  しくすること
 (2) 語句を読むこと
2 おだんごを作る
 (1) 指示を聞くこと
 (2) 説明を聞くこと
 (3) 語句を読むこと
 (4) 語句を理解する
  こと
3 童話を聞く
 (1) 童話を聞いて楽
  しむこと
 (2) 話す人の顔を見
  ながら聞くこと
 (3) 静かに聞くこと
さいた、ならん
だ、きれい、あ
か、しろ、きい
ろ、うえ、し
た、まえ、うし
ろ、よこ。
まるいだんご、
おおきいだんご
ちいさいだんご
おおきいおぼん
おおきいおさら
ちいさいおさら
くらべる、かぞ
える。
どっち、こっち
 
うえ
した
まえ
うしろ
まるい
おおきい
ちいさい
(語形読み)
(動作化)
 

 
・指示を聞く
 こと(指導
 の実際参
 照)
・こんどは女
 の子が歌を
 歌いましょ
 う
・おだんごを
 作りましょ
 う
・丸いお盆を
 作って入れ
 ましょう
・どちらのお
 だんごが大
 きいでしょ
 う
・どっちが大
 きいかくら
 べてみまし
 ょう
・いくつでき
 ましたか
 
・こっちが大
 きい
・先生のほう
 が大きい
 (小さい)
・おだんごを
 おさらにの
 せるの
・五つできま
 した
 


12







 





 
(一) 目標
1 学校生活に慣れる
2 学習の態度を育て
 る。興味を増す
(二) 内容
1 運動場で楽しく遊
 ぶ
2 遊んだことを話す
 (1) 思い出して話す
  こと
 (2) 何をしたかがわ
  かるように話すこ
  と
 (3) 話すことに興味
  を持つこと
 (4) 経験したことを
  話す文型を身につ
  けること
3 はりえをする
 (1) 用具の取り扱い
  に惰れること
 (2) 指示に従うこと
 (3) 説明を聞くこと
 (4) 名まえを書くこ
  と 
ころぶ、 すわ
る、たつ、かけ
る、にげる、つ
かまえる、のぼ
る、おりる、な
らぶ、つかむ、
つかまる、すべ
る、ほる、とま
る、はしる、の
る、ねことねず
み、シーソー、
てつぼう、すべ
りだい、すな
ば、ろくぼく、
かくれんぼ、お
にごっこ、きしゃごっこ 
・〇〇にの
 りました
・〇〇をし
 ました
・〇〇です
 べりまし
 た
・〇〇であ
 そびまし
 た 






 
・指示に従う
 こと
・順番に○○
 しなさい
・あとから押
 さないよう
 にしなさい
・終わった人
 はこちらへ
 並びなさい
・〇や○や○
 を机の上に
 並べなさい
・〇〇してか
 ら、○○し
 なさい
・説明を聞く
 こと
・遊び方の説
 明を聞く
・作り方の説
 明を聞く 
・ 〇〇に乗
 りました
・ 〇〇をし
 ました
・ 〇〇です
 べりました
・ 〇〇で遊
 びました
・ 〇〇と○
 ○をしま
 した
・ 〇〇と○
 ○と遊びま
 した
・「…ました
 か」
・発問に対し
 て「…まし
 た」と答え
 る文型。 


13







 



調

 
(一) 目標
1 学習の態度、学習
 の興味、学習作業の
 しかた等について指
 導する
2 学習指導の基礎に
 培う
(二) 内容
1 持ち物を調べる
 (1) 持ち物の名ま
  えを知ること
 (2) 持ち物の扱い
  に慣れること
 (3) 語を読むこと
 (4) 指示に従うこ
  と
2 図形をかく
 (1) 図形の異同を
  識別すること
 (2) 線、図形を書
  くこと
 (3) 運筆の基礎に
  培うこと
 (4) 図形のことば
  を読むこと 
ランドセル、こ
くごの本、算数
の本、クレヨン
ぞうり袋、ちょ
うめん、ノー
ト、えんぴつ、
けしゴム、下
敷、筆入れ、ぼ
うし、ハンカ
チ、はながみ、
計算器、まる、
しかく、さんか
く、これそれ、
どれ・これはな
んですか・〇〇
はどれですかそ
れは何ですか
 
こくごのほ

ふでいれ
えんぴつ
したじき
しかく
さんかく
まる
これ
それ
どれ
てがみ 







み 
指示を聞く
・丸に赤い色
 を塗りなさ
 い
・画用紙に赤
 で三角を書
 きなさい 
問いに答える
・これは何で
 すか
・それは何で
 すか
・〇〇はどれ
 ですか
・〇〇です。
・これです
・それです。
・赤です
伝言
参観日の案内
状を持ち帰っ
て渡す
・一五日は参
観日です 


15








 






 
(一) 目標
1 学校生活に慣れる
2 学習の態度、学習
 の興味、学習作業の
 しかた等を養う
(二) 内容
1 きのうのことを話
 す
 (1) みんなに聞こえ
  るように話すこと
 (2) 経験したことを
  思い出して話すこ
  と
 (3) みんなのほうを
  見て話すこと
 (4) 経験を話す文型
  を身につけること
 (5) 話す語句を身に
  つけること
 (6) 語句を読むこと
2 絵を書く
 (1) 書いた絵につい
  て話すこと
 (2) ことばと事物と
  を結ぶこと
3 歌を歌う
 (1) 発音、発声を正
  しくすること
 (2) 歌のことばを理
  解すること
4 父母の参観
 遊ぶ、見る、行
 く、買う、する
 、 おっかい、
 買物、おてつだ
 い
・〇〇をしました
・〇〇へいきまし
 た
・〇〇と○○をし
 ました
・〇〇と○○と
 ○○と○○を
 しました
・きのう○○を
 しました
・きのう○○へ
 いきました
・きのう○○と
 ○○をしまし
 た
 
・〇〇をし
 ました
・〇〇と○
 ○をしま
 した
・〇〇へい
 きました
・〇〇と○
 ○へいき
 ました
・きのう○
 ○をしま
 した
・きのう○
 ○と○○
 をしまし
 た
・きのう〇
 〇と〇〇
 と○○を
 しました
 

 
指示を聞く
・きのうの日
 曜日に何を
 して遊びま
 したか
・きのうの日
 曜日にはど
 こへいきま
 したか
・画用紙にク
 レヨンで絵
 を書きなさ
 い
。  
問いに答える
・何をして遊
 んだか
・どこへ行っ
 たか
・どんなお手
 伝いしたか
・だれと何を
 したか等の
 問いに答え
 る。
 話す文型
 経験したこ
 とを話す文
 型は、読む
 文型と同じ
 


16







 






 
(一) 目標
1 学習態度、学習
 の興味、学習材料
 の取り扱い等を指
 導する
(二) 内容
1 時間割と合わせる
 (1) 学習生活に役だ
  てること
 (2) 七曜のことばを
  理解すること
 (3) 教科の名を知る
  こと
 (4) 時間割を読むこ
  と
2 おにごっこをする
 (1) おにごっこにつ
  いて話すこと
 (2) 経験したことの
  あらましを話すこ
  と
 
月曜日、火曜日
水曜日、木曜日
金曜日、土曜日
国語、算数、社
会、理科、体育
音楽、図工、道

時間割、合わせ
る、忘れずに持
ってくる
時間割を読む
 
月ようび
火ようび
水ようび
木ようび
金ようび
土ようび
日ようび
こくご
しゃかい
さんすう
りか
たいいく
おんがく
ずこう
どうとく
 










 
指示を聞く
・こくごの本
 を出しなさ
 い
・〇〇ちょう
 めんを出し
 なさい
・時間割を読
 みなさい
・時間割を見
 てあした持
 ってくる本
 やちょうめ
 んを机の上
 に出しなさ
 い
・火曜日は何
 を持ってく
 ればよいか
 調べなさい
 説明を聞く
 
問いに答える
・〇〇と〇〇
 と〇〇を持
 ってきます
・〇〇と〇〇
 です
 


17



 


10

 

時間割に従って各教科
等の学習をする 
         


   二 入門前期10日間の国語学習指導の実践

 ここには、入門期10日間の国語指導の実際について述べてある。
l 入学式
 4月6日(土)晴、児童は父兄同伴、運動場で   イ 一年担任、吉川先生、伴先生を紹介する。
受付をすませ、六年生に案内されて講堂にはい   ウ 教頭・養護教諭、用務員の紹介をする。
る。児童は組別に座席につき、父兄は後方に席   エ 二年生のお祝いの歌
を占める。                   オ 一年生の歌のおけいこ
 入学式            
         カ 担任、父母に対してあいさつをする。
ア 学校長石黒ミナ先生のお話           校庭整列
○はた…校門に掲げてあった日の丸の旗と区旗    入学式を明るい、しかも緊張した雰囲気の
 ついて                    うちにに終わると、児童は運動場に出る。
〇目、耳、口をよく働かすこと。         ア 組別に整列する。
〇区から届いた入学妃念のアザレアの鉢植の話   イ 二列縦体で身長順に並ぶ。
をして、二つの学級に渡す。            六年生が補助する。


                                            123
教室へはいる                   よく返事ができました。もう一度今度は、
ア 身長順に教室の前のほうから座席につく。   おかあさんにじょうずに返事をしてみせまし
イ 名まえを呼んで出欠席を調べる――呼ばれた  よう。カードをさす。
 ら「はい」と返事をする。             ×「はい」
 @ みなさんは、きょうから、「真砂小学校の  D 指名点呼する。――名札を席にはる。「そ
  一年生ですね。みなさんの先生は私です。何   れでは、ひとりひとり先生が名まえを呼びま
  という名まえか知っていますか。」       す。呼ばれたら「はい」と返事をしてくださ
   × ばんせんせい。             い」
 A そうです。私がばんせんせいです。みんな    名まえを呼ぶ。
  の名まえはまだよくわかりませんね。これか   つぎつぎに「はい」と答える。「はい」と
  ら先生がみなさんの名まえをよびます。呼ば   答えた児童の机の上に、用意しておいた名札
  れたら大きな声で「はい」と返事をしましょ   をはる。六年生が手伝う。
  う。                    E 座席を確認する。
 B 「はい」とカードに書いて黒板に掲げる。   いま、名札をはってあげたせきがみなさん
  「はい」と返事をしましょうと言いながら    のせきです。よくおぼえてください。となり
 「はい」とカードに書く所を見せる。カード    の人の顔をよく見てごらんなさい。
 を黒板に掲げる。               F 組を確認する。
 C さあ、一度みんなで「はい」と返事をして    みなさんの組は一年二組です。よくおぼえ
  みましょう。カードをさす。          てください。
  ×「はい」                 G 先生の話を聞く。


                                            124
   みなさんが、うんどうばで遊ぶ時には、     下校する
  この旗の所で遊びます。みなさんが並ぶ時     きょうは、これで学校はおしまいです。みんな
  にもこの旗の所へならぴます。この旗はい    おうちへかえります。おうちへ帰るときは、みん
  つでもみなさんといっしょにいます。      なであいさつをしましょう。何といってあいさつ
   みなさんが教室で勉強する時には、この     しますか。
  旗は、教宅の中に立てておきます。この赤     ×さようなら。先生さようなら。
  い旗を大事にしましょう。            それでは、みんなで「さようなら」をしましょ
 ○登校の時の約束                う。
   きょうは、おかあさんやおねえさんと学     ×さようなら
  校へ来ました。あしたはどうしたらいいで     こんどは、となりの人とさようならをしましょ
  しょう。これから、みんなで約束しましょ    う。
  う。                      ×さようなら
  (1) あしたからひとりで来ます。       玄関まで送り出す。ここでも、さようならのあ
  (2)) 学校へ来たら、げたばこにくつを入れ    いさつをする。
   ます。                    入学第1日の国語指導
  (3) 教室へ来たら自分の席につきます。   (1) この日に教室で行なわれた生活経験は次の通
I げた箱の確認                  りである。。
  昇降口へ行って、自分のくつを入れる所を    ア 指名点呼する
 順次確認させる。(名札がはってある。)げた    イ 定席を決める。
 箱を確認してから教室へもどる。         ウ 話を聞く。


                                            125
 ○ 赤いはた。                旗であること。
   先生のほうをよく見てください。この赤  エ あいさつをすること。
  いはたは、一年二組のはたです。(カード   (ア)「さようなら」と帰りのあいさつをする
  に「はた」と書いて、黒板に掲示する)     こと。
 エ げた箱を確認する。           (2) この日特に注意して教師が話した語句、――
 オ 下校する。                機能的なことば――
 これらの続験を通して次の国語の学習が行なわ ア まさご小学校。一ねん二くみ。ばんせん
れた。                     い。せんせい。一ねんせい。こうちょうせん
 ア 呼ばれたら返事をすること。        せい。
 イ 指示に従うこと――一指示一事項     イ あかいはた、はた、ならぶ、あつまる。
  (ア) 外へ出なさい。            ウ なまえ、へんじ、はい、さようなら。
  (イ) 手をつなぎましょう。         エ せき、げたばこ、つくえ、いす、きょうし
  (ウ) 並びなさい。              つ。
  (エ) 呼ばれたら返事をしなさい。       なお、先生が使った話しの文型は、一文一事
 ウ 説明を聞くこと。            を中心として、簡明なものを用いた。指導例を
  (ア)先生のほうを見て聞くこと。       参照されたい。
  (イ) 静かに、おとなしく聞くこと。     (3) 文字化したことば、
  (エ) 話の大体がわかること。          「はい」「はた」この二語は、文字カードを
 ○ひとりでくること、○くつをげた箱に入れ   作って示した。このことばは、すでに述べたよ
ること、○席につくこと、○赤いはたは二組の   うに機能的な重要なことばでもあるし、また、


                                            126

  語からの文字分析をたやすくするのに適切な語   ○お互いの名まえをおぼえること。
 でもある。                    ○みんなに聞こえるように返事をすること。
                          ○「はい」の語を読むこと。
2 あいさつをしましょう        
        ○「なまえ」の語を読むこと。
                         イ あいさつをする。
  4月8日(月)入学2日め            ○あいさつによってお互いに親しみを増すこ
  学習のねらい 学校生活、学習生活に慣れさせ   と。
 るための基礎的な指導をする。精神的には、学校   ○あいさつのしかたを知ること。
 や友だちに親しみを感じさせ、不安な気持ちを解   ○あいさつができるようになること。
 消する。あいさつを通して、先生とのコミュニケ   ○あいさつの文型を身につけること。
 ーションをする。親しみを持つ。学習生活につい   ○あいさつのことばを語として読むこと。
 ては、一定の規制のもとに学習する態度を育て     ┌―――――――――――――――┐
 る。整列のしかた、教室での行動のしかたなどを    |〇おはようございます。    |
 指導し、一定時間席について、話したり、聞いた    |○いってまいります。     |
 り、歌ったりする学習の形式をしだいに身につけ    |○ただいま。         |
 ていく。                      |○さようなら。        |
  学習の内容 次のような生活経験、学習経験を    └―――――――――――――――┘
 通して、学習の態度や技能や知識を学習する。   ウ 整列する。
 ア 点呼をとる。                 ○指示を聞いてそれに従うこと。
  ○はっきりと元気よく返事をすること。      ○「一指示一事項」を正しく聞きとること。


                                            127
   ┌―――――――――――――――――┐   
   |○ならびましょう。        |     ましたか。
   |○となりの人と手をつなぎましょう。|    C 「いってらっしゃい」ていったの。
   └―――――――――――――――――┘    T それでは、みなさんがおかあさんやおとう
  〇「いす」「つくえ」「まえ」「となり」の語    さんにいったように、いってみてください。
   を読むこと。                  どのくらいじょうずにいえたか先生に教えて
 エ 歌を歌う。                   ください。
  ○はっきり発音すること。            C 行ってまいります。
  ○幼児音を使わないこと。             (なるべく、ひとりひとり大きな声で、いわ
  学習指導の実際                  せる。そのたびに先生も「行ってらっしゃ
  ■あいさつしましょう               い」とあいさつをする。三、四人いわせたと
(1)家を出る時のあいさつ              ころで)
 T みなさんはけさ、学校へ来るときおうちの    T ではそのことばを先生が書いてみます。
  人に何といいましたか。              (いってまいります」と板書する。短冊カー
 C 行ってまいります。               ドに書いて黒板にかけてもよい。」みなさんは
 C 行ってまいりますっていったの。         こういったのですね。さあ、もう少し続けて
 T そう、「行ってまいります」とだれにいい     あいさつしてもらいましょう。今度は、ここ
  ましたか。                    へ出て来てあいさつしてもらいましょう。動
 C おかあさん                   作化して、四、五人練習する。)
 C おかあさんとおとうさん。          (2) 登校した時のあいさつ
 T その時おかあさんやおとうさんは何といい    T それから、学校へ来て、先生に何といいま


                                            128
   したか。                   と板書する。
 C おはようございます。             T さあ、みなさんは何とあいさつしました
 C 先生、おはようございます。           か、いっしょにこれを読んでみましょう。
  (朝のあいさつをした者を調べる。)       C おはようございます。
 T みなさんが、けさはみんな元気に「おはよ    T 先生は、何とあいさつしたか読んでみまし
  うございます。」って発生にあいさつをしま     ょう
  したね。その時、先生は何といいましたか。    C おはようございます。
 C 先生も「おはようございます。」っていっ     (前へ出て来させて、ひとりひとりあいさつ
  たの。                      をする。先生はそれに答える。この時、軽く
 C おはようございます。              おじぎをしながらあいさつをすることを指導
 T それでは、みなさんのあいさつと、先生の     する。)
  あいさつを書いておきましょう。        (3) 帰る時のあいさつ
                      T きのう学校から如る時は何とあいさつをし
  おはようございます。           ましたか。
                      C さようなら。
                      C 先生、さようなら。
  おはようございます。           (前と同様にして、「さようなら」と板書し
                       てから、練習したり読ませたりする。)
                         (4) 帰った時のあいさつ
                          T きょう、先生に「さようなら」とあいさつ


                                            129
  さようなら。                てみてください。
                       C ただいま。
  さようなら。               C ただいま。
  

                          (先生は、「おかえりなさい。」と答える。)
  して、うちへ帰った時、みなさんはおうちの   (5) あいさつをまとめる。
  人に何といいますか。              T 朝、おうちを出てから、学校へ来て、また
 C ただいま。                   ね。学校へ来る時は何とあいさつしますか。
 C ただいまっていうの。              学校へ来て先生に何とあいさつしますか。
 T みなさんが、「ただいま」といっておうち    など一通り復習する。一通り終わったところで
  へ帰って行ったら、おうちの人は何というで   今度は、板書してあるあいさつをさし示しては、
  しょう。                   あいさつをする練習をする。ここで、あいさつの
 C おかえんなさい。              しかたと読み方を練習する。児童の様子を見なが
 T そうですね。きっとおうちの人も「おかえ   ら、適宜、動作化したり、いわせたり、読ませた
  りなさい。」っていうでしょうね。それでは   りする。(この時の読み方は、語として読ませ、
  またみなさんのあいさつを書いておきましょ   一字一字さして読ませる必要はない。)
  う。(「ただいま」と板書する。)       このあいさつは、これ以後、毎日実行するから
 T みんなじょうずにいえますか。先生にいっ   その間に身についていく。

3 校庭めぐり


                                            130
 4月9日(火)入学3日め              と。
 学習のねらい 学校生活、学習生活に慣れるた    B 呼ばれたら返事をすること。
めの基礎的な指導をする。校庭めぐりによって、    C 「はい」「なまえ」「へんじ」の語を読む
学校における生活の場の広がり、校庭の自然、校     こと。
庭の運動用具、遊び等について観察したり、調べ   2 名前を書く。
たり、使ったりあるいはそれらについて話したり    @ 用具等を扱うこと。
して、いっそう学校生活に慣れるようにする。ま    A 名まえの文字を書くこと。
た、名まえを書くことを通して、学習の態度をし    B 名まえの文字を読むこと。
だいに確立していくようにする。用具の取り扱い    C 名まえをおぼえること。
方、座席の取り方学習のしかた等についての基礎    D 「おとこ」「おんな」の語を読むこと。
的な指導をする。こうして、学校への親しみ、学    E 指示に従うこと。
級での学習のしかた、友だちとの親しみ等を増し   3 校庭を回る。
ていくように心がけ、異常な緊張感をほぐし、安    @ 校庭の植物に注意すること。
心して学習できるように仕向ける。          A 校庭の遊び道具を知ること。
 学習の内容 次のような生活続験、学習経験を    B 道具を使って遊ぶこと。
通して、基礎的な理解、技能、態度、ことば等を    C 見たことを話すこと。
学習する。                     D 一語文や「〇〇があった」「○○もあっ
1 出欠席を調べる――指名点呼する。         た」の文型で話すこと。
 @ はっきりと元気よく返事をすること。      E 「ことり、いけ、はな、すなば、さくら、
 A お互いの名まえをおぼえて親しみを増すこ     おとこ、おんな」の語を読むこと。


                                            131

 F 拾い読みでなく語として読むこと         うにはっておきましょう。
 G 幼児音、幼児語を使わないこと。       (2)クレヨンを用意する。両用紙を配る。
  学習指導の実際                 T 書く紙は先生があげますから、クレヨンだ
  ■ぼくのなまえ、わたしのなまえ          け机の上に出してごらんなさい。
(1)学習の目的をはっきりさせる。          (クレヨンを出したのを確認してから、次の


 の なまえ  

 の なまえ 

  このように板    ようにして用紙を配る。)
 書する。児童は   たて三〇センチ、横一センチに切った画用紙を
 何だろうと思い  全児童に示しながら、
 ながら文字の部  「今から、この紙を一まいずつ皆さんにあげま
 分だけを読んで  す。もらったら、長いほうをたてに置いて静かに
 いる。「なまえ」 待っていてください。」

  は前日カードですでに読んでいる。       と、指示を与えてから、わざと長い方を横にして
 T きょうは、この勉強です。(板書をさす。)  全児童のつくえの上に配った。
  何の勉強でしょう。これを読んでごらんなさ   結果は、48名中、指示どおりできた者が39
  い。絵もいっしょに。             名(81・25%)となった。できなかった者
 C おとこのなまえ、おんなのなまえ。      は、先生から自分も貰えたという喜びで画用紙の
 T そうです。ぼくの名まえとわたしの名まえ   長い方を横にしたままで、なでまわしたり、ふり
  です。みなさんの名まえです。きょうはこれ   まわしたりしていて「長い方をたてにおく」とい
  から、みなさんの名まえを書いてもらいま    う指示を聞き落としたか、瑠解しなかったか、忘
  す。じょうずに書いて、教室のうしろのほ    れてしまったかのようであった。


                                            132
「さあ、先生の言ったとおりにできましたか。」   てしまった。しかし最初の指示の時よりは96%
と言うと、できていない児童は、まわりを見まわ   というよい結果となった。これは、始めの「長い
してから指示を思い出して長い方をたてに置く者   方をたてに置く」という指示と比べ、「大きく書
もあったが、そのままの者もあるので、もう一度   く」とか、「白」「黄色」「黒」という語が児童
カードを示しながら、               の生活の中で常に使われていることと、指示を与
 「こうやって、長い方をたてにして、つくえの   える時、教師が実際に書いて徹底させたためでも
上に置くのです。」                ある。書いている間机間を回って指導する。書け
と、具体的に指示を与えると全児童が指示に従え   ない児童は、手伝って書かせる。
えた。そこでつぎの作業に移った。         (4) 書いた名まえを黒板に掲示する。
(3) 各自名まえを書く              T 書けた人は、となりの人と見せ合って、名
 T この紙に、みなさんの自分の名まえをグレ     まえをよく教えてあげなさい。
  ヨンで書いてもらうのです。あんまり小さい     (各自、書いた名まえを読んで、自分の氏名
  とよくわかりません。また、白や黄色で書く     を教え合う。)
  と、よく見えませんね。             T さあ、それでは、書いた名まえを、教室の
   (と言って、黒板に示しておいたカードに     うしろに下げましょう。
   白や黄色で書いて見せ)だから黒で書いて     (後ろの黒板の所へ全員の名まえを下げる。)
   ください。                   名まえを書かせている間に、さかさ文字を書
   (と二つの事項を指示した。)          く子がいるから、それを見つけて指導する。
 結果は、字の大きさについては全児童が指示ど    3 校庭めぐり
おり大きく書けたが、二名の児童は、黄色で書い   (1) 学習の目的をはっきりさせる。


                                            133
 T これから、学校の庭を回ってみましょう。     (「さくら」とカードに書いて、「はな」のカ
 学校の庭には何があるでしょう。よく見てきま     ードの上に、下げ、その間に「の」と板書す
 しょう。                      る。その上に桜の花一輪板書する.)
(2) 運動場を回る                T みんなで読んでごらんなさい。
 (運動場へ出て並ぶ。特に見るべきものは指示    C さくらのはな(語句として読む。)
 して見させる。咲いている桜の花、花壇に咲い    T 桜の花がきれいに咲いていましたね。桜の
 ているチューリップなどの草花。池にいるこい     花はどんな色をしていましたか。
 や金魚、飼育しているうさぎ、にわとり、小鳥    C ももいろ。
 などについて、美しいこと、かわいいことなど    T そうですね、ももいろでしたね。きれいな
 を中心にして、色や形などをよく見させる。運     花は花壇にも咲いていましたね。何が咲いて
 動機械用具などは、鉄棒、すべり台、ジャング     いましたか。
 ルジム、シーソー、かいせん塔、砂場などをよ    C チューリップ。
 く見させ、その遊び方を指導したり、遊ばせた     (チューリップの絵を書きながら)
 りする。)                    T チューリップはどんな色をしていました
(3)運動場で見てきた花について話す。        か。
 T 運動場にきれいな花が咲いていましたね。    C 赤(赤い白墨でチューリップの絵をかく。)
  (といいながら、「はな」とカードに書いて    C 白(白い白墨でチューリップをかく。)
  黒板に下げる。)                C 黄色(黄色い白墨でチューリップをかく。)
 C さくら、 C さくらの花。          T はっばはどんな色でしたか。
 T そう、さくらのはなですね。          C みどり色。


                                            134
  (赤、白、黄色で書いたチューリッブに、み    T 学校にはどんな動物がいましたか。
  どり色の自墨で葉を全部書き添える。)      C うさぎがいた。  (絵を書く。)
(4) 運動場にあった運動機具について話す。    C にわとりもいた。 (絵を書く。)
 T 運動場には遊ぶものがたくさんありました    C ことりもいた。  (絵を招く。)
  ね。何と何があったでしょう。            (ことり」のカードを小鳥の絵の下に下げ
 C シーソー。   (絵を板書する。)        る。)
 C すべりだい。  (絵を板書する。)      T ほかにいませんでしたか。
 T まだあったでしょう。             C 金魚もいたよ。(金魚の絵を書く。)
 C 鉄棒があったよ。(絵を板書する。)      T 金魚はどこにいましたか。
 C 砂場もあったの。(絵を板書する。)      C いけ(池の絵を書く。)
 C かいせんとうもあった。              (「いけ」のカードを池の下に下げる。)
 T みなさんが遊んだのは何でしたか。      (6) まとめる。
 C 鉄棒。                    T 運動場で花や小鳥、遊ぶ物やいろいろのも
 C シーソー。                   のを見てきましたね。もう一度黒板を見てご
 T みなさんは、何で遊びましたか。         らんなさい。
 C すべりだいで遊びました。            (カードの語を読ませ、物の名まえをはっき
 C 砂場で遊びました。(砂場の絵の下に「す     りといわせる。)
  なば」のカードを下げる)            この指導で特に注意することは次の点である。
 C シーソーで遊んだの。             (1)教師の説明や発間は、一文一事項の文で
(5) 飼っているものについて話す。          話すこと。


                                            135

(板書)

 さくらはな  いけ   すなば

 ことり

    その通りに行動するようにしつけること。
 (3) (板書などは特にくふうし、学習の興味
    を起こさせるようにすること。)
 (4)児童の話し方は、一語文からしだいに「〇
   〇があった」「○○もあった」といえるよう
   に
 (5) 新しい文型−「〇〇したの」から「〇〇
    しました」「○○がありました」というよ
    うな文型へと発展させるのであるが、それ
    には、教師の発間の文型に注意する。その
   ような文型で話すような経験を与え、その
    ような文型で話すような発問の文型を使
    う。具体的には指導の例を参照されたい。

(2) 教師の指示や説明、発問を注意深く聞いて  


4 絵をかこう
4月10日(水)入学4日め            での生活のしかたを指導する。絵を書く学習を通
 学習のねらい 学校生活や学習生活に慣れるた   して図面の基礎的な指導をするとともに絵をかく
めの基礎的な指導をする。学校内を回って、学校   学習、あるいはかいた絵について話すことによっ
生活に必要な生活の場や施設を理解させ、その中    て国語の基礎指導をする。


                                            136
 学習の内容 次の生活経験、学習経験を通して    カ 幼児音・幼児語をなくすこと。
学校生活、学習生活に慣れさせるとともに、基礎    学習指導の実際
的な技能、態度、ことばを身につける。        ■絵をかこう
(1)出欠席を調べる――指名点呼         (1)絵をかく用意をする。
   指導事項前日と同じ               ア 画用紙を配布する。
(2)校舎を回る                   イ クレヨンを出す。
 ア 学校の生活環境を知って親しみを持つこ    (2) どんな絵をかくか話す。
  と。                      T きょうは絵をかきましょう。みなさんの好
 イ 施設設備を利用すること。            きな絵をかいてください。どんな絵をかきま
 ウ 説明を聞くこと。                すか。
 エ 指示を聞くこと。               C 電車の絵。
(3)好きな絵を書く。               C 自動車の絵。
 ア 図面の基礎的な技能、用具の扱い方等学習    C お花をかくの。
  する。                     C ちょうちょがとんでいるの。
 イ 説明や指示に従うこと。            C 飛行機かくの。
 ウ 絵を見て話すこと。               (それぞれ、何をかくかをはっきりさせる。」
 エ やま、くさ、うち、さかな、ふね、あかい、   T それではクレヨンを出してごらんなさい。
  しろい、あおい、きいろい等の語を読むこ      お花はどのクレヨンでかきますか。
  と。                      C あかいの(「あかい」のカードをさげる。)
 オ 発音に気をつけること。            C きいろいクレヨン(「きいろい」のカードを


                                            137
  さげる。)                   C 花、(はなと板書、あるいはカード。)
 T ちょうちょはどんな色でかきますか。      T この花はどんな色をしていますか。
 C きいろ。                   C あかいの(あかいはなと板書。)
  (クレヨンの色の名まえを明確にする。      T この花は。
  色の名とクレヨンとを結ぶ。)          C きいろいの(きいろいはなと板書。)
(3)絵をかく。                  T このチューリップは。
 T では自分の好きな絵をかきましょう。      C しろいの(しろいはなと板書。)
  (クレヨンの持ち方、色のぬり方、形のとり    T これは何ですか。
  方などを指導する。内容については問答しな    C おうち(うちと板書。)
  がら、思い出させてかかせる。)         T だれのおうちですか。
(4) かいた絵について話す。           C わたしのうち。
 T これは山下さんのかいた絵です。じょうず    T 空はどんな色をしていますか。
  にかけていますね。山下さんにこの絵の話を    C あおいの(あおいと板書。)
  してもらいましょう。               (このようにして、何枚かの絵についてみん
  (絵をみんなに見せながら。次頁写真参照)     なで話す。話しながらことばの指導をする。
 T これはだれですか。               発音は特に注意して観察し指導する。一枚の
 C わたし                     絵についてあまりたくさんのことを学習させ
 T これはだれですか。               るとあきるから、様子を見ながら絵をかえて
 C あきこちゃん。                 いく。話は、先生が聞いてはそれに答える形
 T 何を持っているのですか。            をとっているが、児童に自由に話させてもよ


                                            138
 い。児童の力に応じて扱う。
 文字で書くことばはその絵に
 よって、適切と思われるもの
 を選んでよい。絵を中心にし
 てたくさんのことばが話され
 るから、それらを確実に身に
 つけるようにする。色の名ま
 えは全部文字で書くと分量が
 多くなるので、適切なものを
 選ぶ)


5 歌 を 歌 う
 4月11日(木)入学5日め           積極的に学習しようとする気持ちを育てる。国語
 学習のねらい 学習生活に慣れるための基礎的   学習としては、学習作業、学習活動の中で自然に
な指導、学習の興味、学習の態度、学習作業等に   ことばを正確に身につけ、まとまった話を聞く楽
ついて指導する。特に学習の楽しさを味わわせ、   しさを味わわせる。


                                            139
 学習の内容 次の学習活動を通して、知識、技   抵抗も少なく、学校に親しみをもたせるようであ
能、態度等を育てる。               る。
1 歌を歌う。                   文字と、歌を結びつけて、文字ことばの定着を
 ア 幼児音をなくす。発音、発声を正しくする   はかるという角度から、歌詞を選んでみると「む
  こと。                    すんで、ひらいて」「チューリップ」などがあげ
 イ 「うえ、した、まえ」を読むこと。      られる。
 ウ 「ヒ」の発音を正しくすること。        「むすんで、ひらいて」では、「その手を〇〇
2 おだんごを作る。               に」の部分をうまく利用すれば、その目的は達せ
 ア 物の形、大小等に関心を持つこと。      られる。「チューリップ」の歌詞は「あか」「し
 イ 指示や説明を聞くこと。           ろ」「きいろ」などの文字ことばを定着させるた
 ウ まるい、おおきい、ちいさい等の語を読む   めに適当である。
  こと。                    1 自由な身体表現をしながら、みんなで歌う。
3 童話を聞く。                  T 歌の勉強をしましょう。この歌を知ってい
 ア 童話を聞いて楽しむこと。            ますか。
 イ 話す人の顔を見ながら聞くこと。         (「むすんでひらいて」の曲を教師がひいて聞
 ウ 静かに聞くこと。                かせる。この歌は幼稚園などでは、よく歌っ
 学習指導の実際                   てきた曲なので、全員知っていた)
  ■歌を歌う――むすんでひらいて――       T 何の歌ですか。
 入学当初の歌は、新しい歌を覚えさせることよ    C むすんで、ひらいて。
りも、今までに知っている歌を歌わせるほうが、    T 一番だけを、みんなで歌いましょう。


                                            140
 C (手をむすんだり、開いたり、打ったりし     さい。
  ながら歌う。)                 C (女の児童歌う)
 T 元気に、じょうずに歌えましたね。今度は    T 女の子も、みんなそろって、じょうずに歌
  立って、もう一度歌いましょう。みんな立ち     えましたね。男の子は手をたたいてあげまし
  なさい。                     ょう。
 C (立つ)                   C (男の児童拍手)
 T 「手をうって」のところでうたなかった人    T 女の子はかけてください。
  も、今度はうって歌ってください。       2 歌詞の内容を動作と結びつけて、みんなで歌
 C (動作化しながら歌う。)           う。
 T よくできました。女の子はかけてくださ     T 今度は、「その手を」のところまで歌ったら、
  い。こんどは男の子だけで歌ってください。     先生がカードを出しますから、それを読んで
  さっきは、だれか、大きな声で、どなって歌     歌ってください。このカード(まえ)を出
  った人がありましたね。今度はみんなといっ     したら「その手をまえに」と、手を前に出し
  しょに、どならないで歌いましょう。        て、歌うのです。いいですか、じょうずに歌
 C (男の児童歌う。)               ってください。
 T 今度は、どならないで歌えました。女の子     (まえ うしろ うえ した よこ などの
  は手をたたきましょう。              カードを用意し、これらのカードを示してそ
 C (女の児童拍手)                の通り動作化しながら歌わせる。また、あら
 T 男の子は、かけてください。女の子は立っ     かじめ順序を変えて黒板に下げておいて、そ
  てください。こんどは、女の子で歌ってくだ     の通り歌わせてもよい。これらのことばは単


                                            141

  に読んで歌うだけでなく動作化して、その意     (教師も前へさし出して見せる。)
  味機能を確実に身につけるようにする。「チ    C 先生の大きいなあ。
  ューリップ」の歌では、あか、しろ、きいろ    C ぼくのより大きい。
  をカードに作っておいて利用するとよい。発    C 大きいなあ。
  音、発声は特に歌唱の際自然に練習する。)    T 先生のおだんごは、みなさんのよりこんな
  ■おだんごや                   に大きい。ほら、(児童のだんごと比べなが
1 おだんご作りの準備をする。            ら)(「おおきい」のカードを黒板に下げる。
 T 机の上にビニールを広げなさい。         その下に大きなだんごの絵をかく。)
 T いちばん前の右側の人、ここへ来て、ねん    T みんなの作っただんごはどんな形をしてい
  土を持って行って配ってください。         ますか。
  (児童、袋入りのねん土を配る。袋からねん    C まんまる。
  土を出させ、袋は机の中に入れさせる。)     C まるいの。
2 おだんごを作る。                T だんごはまるい形をしていますね。
 T きょうはみんなでおだんごを作りましょ       (「まるい」カードを黒板に下げる。その下
  う。さあみんな、ねん土で一つだんごを作っ     にだんごの絵をかく。)
  てみましょう。                 T さあ、これを読んでみましょう。
  (児童、各自ねん土を手で丸める。その間に    C おおきい(だんご)まるい(だんご)
  教師は大きなだんごを作る。)          T みんないっしょに読んでみましょう。
 T さあ、できただんごを持ち上げて見せてく    T 今度は、そのだんごを二つに分けましょ
  ださい。                      う。(大体二分させる。)


                                            142
 T それでは、半分で、小さいだんごを作って     んごをのせましょう。
  みましょう。                 4 おだんごやごっこをする。
  (児童は喜んで小さいだんごを作る。机間を    T できたらおだんごやさんをしましょう。
  回って指導する。)                (四、五人のグループで、おだんごやごっこ
 T どんなだんごができましたか。          をする。しばらく楽しんでやる。)
 C 小さいだんご。               5 好きなものを作る。
 C 小さいだんごがたくさんできました。      T では、だんごむ丸めて一つのだんごにしま
 T では、小さいだんごと書きましょう。       しょう。(先生も大きなたんごを作る。カー
  (「ちいさい」のカードを下げ、その下に小     ドを読ませる。)
  さいだんごの絵をかく。)            T 今度は、なんでもみなさんの好きなものを
 T 読んでごらんなさい。              作りましょう。(机間を回りながら何を作っ
 C ちいさい(だんご)               ているのかを聞きながら指導する。作ったも
 T 小さいだんごがいくつできましたか。       のは、くだもの、おだんご、カメラ、馬、に
  (めいめい数えさせたり、いわせたりする。)    わとり、ふね、自動車、ロボット、飛行機、
3 お皿を作る。                   人工衛星、へびなどが多い。)
 T こんどは、だんだごを入れるものを作りま    T みんなよくできました。自分で作ったもの
  しょう。何を作りますか。             をみんなに見せてお話してごらんなさい。
 C おさら。                    (児童、ぞう、おだんごというように作った
 C おほん                     物を見せて話す。)
 T お皿を作りましょう。お皿ができたら、だ    T 先生は、みなさんの作ったものを書きまし


                                            143
  た。安心してみんないっしょにしてくださ     T (「ちいさい」のカードを示し)、これを先
  い。それから、大きいだんごと小さいだんご     生に見せてください。
  を作ってください。               T 両方いっしょにして、(「まるい」のカー
 T (「おおきい」のカードを示し)これを先     ドを示して)おだんごを作りなさい。
  生に見せてください。              T そのおだんごを袋に入れなさい。




6 楽しい遊び
  4月12日(金)入学6日め            っこ」「すべりだい」など)
  学習のねらい 学校生活に憤れるために運動場    ア 遊び方の説明を聞くこと。
 で楽しく遊ぶ指導をする。その遊び方の説明や指    イ 並びについての指示を聞くこと。
 示、あるいは遊んだことを話すことによって国語  2 遊んだことについて話す。
 学習をする。学習の基礎的な指導として、説明を   ア 何の遊びをしたかわかるように話すこと。
 聞いたり、指示に従って行動したりする。また、   イ だれと何の遊びをしたかがわかるように話
 学習作業に慣れるようにする。さらに学習の楽し    すこと。
 さ、学習に成功した時の者びを味わわせるように   ウ 発問「○○しましたか」の答えとして「〇
 する。                       〇しました」という文型を読んだり使ったり
  学習の内容 次のような生活経験・学習作業等    すること。
 を通して国語学習の態度・技能・知識等の基礎に   エ 幼児音、幼児語を使わないこと。
 培う。                      オ はっきりと大きな声で話すこと。
1 運動場で遊ぶ。(「ねことねずみ」「きしゃご   カ 恥ずかしがらないで話すこと。


                                            144
 キ 話すことに興味を持つこと。          C もっと、遊びたかった。
3 はり絵をする。                 T そう、よかったね。どんな遊びをしてきた
 ア 説明を聞くこと。                か。おぼえていますか。
 イ 指示に従うこと。               C うん、ほくね。
 ウ 色の名などを知ること。             (話しだす児童もある。)
 学習指導の実際                  イ 遊んできたことを話す。
  ■楽しい遊び                  T では、いまどんな遊びをしてきたか、話し
1 運動場で遊ぶ                   てもらいましょう。
  教室で、校庭の施設をつかって遊ぶことを話    C(はい、はい。)
 し校庭にでてから、四つのグループ(教室の座    T 福田くん、話してください。ほかの人は、
 席の一列単位)を作り、一定時間、すべり台、     静かにして聞いてくたさい。
 ジャングルジム、鉄棒などで遊ばせる。グルー    C シーソー
 プを巡回しながら遊び方を指導し、さらに全員    T シーソーで遊びました。
 を集めて、ろくぼくで順番に遊ばせ、手を洗っ      荻原さんは、なにで遊びましたか。
 て教室へ入れる。                 C はい、てつぼうです。
2 遊んだことについて話す。            T てつぼうで遊びました。
 ア どんな遊びをしてきたか思いだす。        では、石川くんは、なにで遊びましたか。
  T 運動場で遊んできましたね。楽しかった。   C すべり台で、遊びました。
  C うん、おもしろかった。           T そう、すべり台で、遊びました。石川く
  C はい、たのしかった。             んは、お話のしかたも、じょうずですね。


                                            145
  (板書)                    T そうですか。すべり台と、ろくぼくで遊び
   すべりだいであそびました            ました。
 T 石川君は何で遊んだか、みんなでこれを読     広田さんは、なにとなにで遊びましたか。
  んでみましょう。(読む練習をする。)      C あのね、てつぼうと、それからろくぼくで
  ――シーソー、てつぼうなどの一語文の話し     遊びました。
  方が、「シーソーで遊びました」「てつぼう    T てつほうと、ろくぼくで遊びました。
  で遊びました」などの、教師の反唱によって    (板書)
  児童が文型に気づきはじめる――          てつぼうと ろくぼくで あそびました。
 T では、安井さんは、なにで遊びましたか。     じょうずにお話ができましたね。広田さんは
  (発間も〜ました型でする。)           なんの遊びをしたか、これを読んでみましょ
 C てつぼうで、遊びました。            う。 (読む練習をする。)
 T はい、よくわかりました。            こんどは、稲森くんに話してもらいましょ
  じょぅずに、お話ができますね。みなさん、     う。ほかの人は静かに聞いていて、じょうず
  ひとつだけしかお話しませんが、ほかにあり     にお話ができたと思ったら、手をたたいてく
  ませんでしたか。                 ださい。
 C (ある、ろくぼくもしたの)          C ぼくは、すべり台と、ろくぼくで遊びまし
 T そう、ありそうですね。では、菅佐原くん     た。
  に話してもらいましょう。             (他の児童、拍手。)
 C はい、すべりだいと、ろくぼくです。      T そうですか。じょうずですね。ほかのみな


                                            146
   さんも、よく聞いていましたね。         (以下略)
 T こんど遊んだら、またお話ししてください。


7 持ち物調べ
  4月13日(土)入学7日め            ア 指示に従うこと
  学習のねらい 学習の態度、学習作業、学習に    イ 説明を聞くこと。
 必要な知識技能等の基礎的な指導をする。学用     ウ 形や色のことばを読むこと。
 品・教科書等の取り扱い、整理のしかたなどを指    エ 書写の基礎練習をすること。
 導する。また、物の形の観察、形や線を書くなど    オ 指や手首の運動に慣れること。
 の作業を通して、空間概念に培う。これらの学習    カ 鉛筆の正しい持ち方に慣れること。
 を通してことばの学習、書写の基礎訓練等をす     学習指導の実際
 る。                         ■学用品凋ペ
  学習の内容 次の学習活動を適して、学習の基  1 学用品を机の上に出す。
 礎になる態度、技能、知識等を養う。        T きのう、みなさんに本をあげましたね。重
 1 学用品調ベ                   かったですか。
  ア 指示に従うこと。              C 重かった。
  イ 学用品、教科書等の取扱いに慣れること。   C ぼく、重かった。
  ウ 学用品等の名まえを読むこと。        T ランドセルを机の上に置いてください。
  エ 拾い読みでなく語として読むこと。      T その中にいろいろなものがたくさんはいっ
 2 形調ベ                     ていますね。きょうは中にある物をみせても


                                            147
  らいます。                    いてください。
  全部机の上に出してください。           (鉛筆入れ、筆箱などの声がかかる。)
  (全部そろえて出す。)             T したじきもおいてください。
 T ランドセルがからっぼになったら、いすに    T 計数器とクレヨンはしたじきの上にのせて
  かけなさい。                   ください。
  (児童、いすにかける。)            T ちょうめんと本をわけてください。
 T みなさんはどこへかけましたか。        T ちょうめんはまん中へおいてください。
 C いす(いすのカードを示して読ませる。)   3 学用品を整理する。
 T 道具はどこの上にありますか。         T こんどは先生のいったものだけ机の中へし
 C 机の上。                    まいます。
 T (つくえを示し)机の上にありますね。     (ほんのカードを示す。読ませる。)
2 学用品を調べる。                T こんどは本のとなりへちょうめんを入れて
 T これはみなさんの机です。            ください。
  (机の形を板書する。)             T まだ残っているものには何がありますか。

 ほん

 T 机のこちらの方に本を       (えんぴつ ふでいれ したじき をのカ
  おいて下さい。           ードを示して読ませる。)
  (ほんとカードに書いて      T 今いれたちょうめんのとなりにいれま
  板書の机の上におく。)       す。
 T こっちのほうにえんぴつ            T したじき これをしまいます。
  のはいったふでいれをお             T ふでいれ これをしまいます。


                                            148
 T あとのこったのは、したじきの上へ入れな     (四枚のカードで何度も練習する。一指示与
  さい。                      えるたびに机間を回って確認する。)
 T 今度はほんこれを出してまん中へおいて下   <参考>翌日次のテストを行なった。

  さい。
 T 本は何冊ありますか。
 C 七さつ。
 T 七冊あるかどうか数えてごらんなさい。
 T みんな同じ本でまちがえると困りますね。
  (名まえが書いてあるからわかります。)
 
<方法>
 ○ここになまえを書
  きなさい。
 〇先生がいったことば
  が書いてあったらそ
  のことばの上に○を

 T 自分の名まえが書いてあるかどうか調べて    つけなさい。わからなくても心配しなくてい
  ごらんなさい。                 いのですよ。
 T 「こくご」のほんというのを出してもらい    「こくごのほん」「えんぴつ」「したじき」
  ます。                     の三つのことばを言って○をつけさせる。
  (ほん のカードの上に こくごの をつけ   <結果>(四四人中、正しく○をつけたも
  る。カードと本の「こくご」を比べさせる。)       の)
 T こくごのほんだけ出してあとはしまいな     こくごのほん  42人  95%
   さい。                    ふでいれ    43人  98%
 T ふでいれ を出してごらんなさい。       えんぴつ    40人  91%
 T したじき とふでいれ を手にもってみせ    したじき    39人  89%
  て下さい。                   完全なもの   38人  86%


                                            149
 不完全なもの   6人  14%         きいろい あおい おおきい ちいさい
 <考察>                     2 児童用の用紙(画用紙)

○はじめてなので指示が徹底しない児童もあっ       
 た。文字一字一字に○をつけたり×をつけたり   
 したものがみられた。              
○隣りの児童のを見る場合も考えられるので、こ   
 の結果のみで断定するわけにはいかない。     
  ■形調べ                   
 
 

 子どもたちは、自分で書いたり、作ったりする   二、指導の実際
ことに興味があり、そうした作業に対してきわめ   1 学習についての指示をきく。
て積極的である。図形に色をぬったり、形をかい    T これから、いろいろな形の勉強をしましょ
たりすることによって、図形に対する理解を深め     う。
るようにした。また、その活動に際しての指示や     紙をわたしますから、もらったら、なにが書
それに伴なう作業を利用して、文字ことばの定着     いてあるか、見ていてください。
を図り、運筆の練習をさせた。「さんかく」「し    (用紙配布)
かく」「まる」などのカードを用意し、しゃ線、   2 名まえを書く。
直交、しゃ交、うずまき線などをかかせた。      T (用紙が逆になっていないかどうか確かめ
一、用意するもの。                  て)
 1 文字カード(  新しい文字カード)       いちばん上に、なんと書いてありますか。
 しかく さんかく まる あかい しろい     C なまえ。


                                            150
 T 名まえのところに、えんぴつで、自分の名     い。
  まえを書きなさい。                (カードおおきいさんかく
 C (なまえを書く。)               (中略)
3 形を見わけて色をぬる。            4 ぬった形について復習する。
 T いろいろな形が書いてありますね。どんな    T これで、全部に色がぬれました。こんどは
  形がありますか。                 先生がきいてみますから、自分でかいたもの
 C まる、さんかく、しかく。            を見ながらこたえなさい。わかったら、だま
 C 大きいのと、小さいのとある。          って手をあげなさい。この色をぬったのは、
 T そう。では、大きいまるに、このいろをぬ     なんですか。
  りなさい。                    (カードあかを示す)
  (カードあかいを示す)             C (紙をみて、挙手)
  (机間を回って確かめる 以下、指示ごとに    T 八巻くん。
  机問を回る。 記録を略す。)          C おおきいまる。
 T まちがいなくきれいにぬれました。こん     C (そうです。そう)
  どは、このさんかくにこのいろをぬりなさ     T そうです。おおきい、まるですね。
  い。                       では、これにはどんな色をぬりました
 (カード ちいさいきいろいを示す。)       か。
 T いまぬったのは、ちいさいこれでしたね。     (カードちいさい さんかく
  (カードさんかくを示す。)           C はい。
  こんどは、これに、あおいいろをぬりなさ     C はい。


                                            151
 T あれ、だまって手をあげるんでしたね。      きなさい。
  杉森さんが、だまって手をあげてましたから     (カード まる を示す)
  杉森さんに答えてもらいましょう。         (机間を回る。)
 C はい。きいろです。              T おしまいが、くっつくまで、つづけて書き
 C (そう、そうです)               なさい。
 T じょうずに、答えられましたね。         (極端に小さく書いた児童には机間を回る
  みんなでいっしょに、これを読んでみましょ     際大きく書きなおさせる)
  う。                      T そのとおりにAには、うずまきを書きなさ
  (カード ちいさい さんかく をさす。)     い。
 T これは、なんと読みますか。           (板書によって、うずまきを確かめさせてか
  (カード しかく をさす。)           ら書かせる。)
 C はい。                     (中略)
 C はい。                   6 書いた形を確かめながら運筆の練習をする。
 T また、声がでましたね。            T いま自分で書いた、これの中に、よこ線を
  文山くんに読んでもらいましょう。         たくさん書きなさい。
 C しかく。                    (カード しかく を示し、横線をなん本も
  (中略)                     板書する)
5 形を書く。                    (机間を回る。)
 (運筆の練習と関連)               T こんどは、これにななめの線をたくさん書
 T 下の@のところに、えんぴつで、これを書      きなさい。


                                            152
  (カード一 さんかく を示し、ななめの線を       (以下略)
  板書する)


8 きのうのこと
  4月15日(月)入学8日め            カ 話しことばの基本的な文型を身につけるこ
  学習のねらい 学校生活、学習生活に慣れるた     と。
 めの基礎的な指導をする。対面式、父母の参観日   2 好きな絵を書く。
 等の経験を経ていっそう学校に対する認識を深め    ア 指示に従うこと。
 上級生を身近かに感じるようになる。また、各教    イ 色の名を読むこと。
 科の基礎指導を通して、学習態度学習興味等がし    ウ 絵について話すこと。
 だいに身についていく。時間をきめ、時間割を決    エ いろいろなことばを理解すること。
 め、規則正しい学習ができるように指導する。    3 歌を歌う。
  学習の内容 次の活動を通して、学習態度・技    ア 発音、発声の練習をすること。
 能・知識等を身につける。              イ ことばを語形に従って読むこと。
 1 きのうのことを話す。               学習指導の実際
  ァ 経験したことを思い出して話すこと。       ■きのう(日曜日)のこと。
  ィ みんなに聞こえるように話すこと。      1 きのう(日曜日)のことを思い出す。
  ウ 恥ずかしがらないで話すこと。         T きのうは日曜でしたね。何をして遊びまし
  エ 正しい発音になれること。            たか。
  オ 何をしたかがわかるように話すこと。       ア 友だちと遊んだもの。


                                            153
   イ 家の中にいたもの。             T テレビをどうしたのですか。
   ウ お使い、お手伝いなどをしたもの。      C テレビを見たの。
   エ 父母と外出したもの。            T だれとテレビを見ましたか。
   オ その他                   C お兄さんとテレビを見ました。
   など、それぞれ思い出させながら、話さず     T 中西君は何をしましたか。
  にはいられないような気持ちを起こさせる。     C 春江さんとたかゆきちゃんとのぼるちゃん
 2 きのうのことを話す。               と本を見ました。
  T 井田さんは何をしましたか。           (「はるえさんと、ほんとよみました」と板
  C お使いに行ったの。               書)
   (一語文で答える児童がいる。そこで問答し    T どこのおうちで本を読みましたか。
   ながら、だんだん経験情報交換のための文型    C ぼくのうち。
   を指導する。)                 T どんな本を読みましたか。
  T お使いに行った。だれと行きましたか。     C まんがの本です。
  C おかあさんと。                 (できる限り多くの児童に発言させる。児童
  T おかあさんとお使いに行きました。        は模倣性が強いから、最初に話した児童のま
   (始めから、無理な指導をしないようにす      ねを次々とする。その場合ちょっとしたヒン
   る。「おかあさんとおっかいにいきました」     トや指導を加えると、話はどんどん発展して
   と板書)                     いく。その中から自然に出る文型を発達的に
  T 春田さんは、何をしましたか。          とらえて、しだいに高めていく。聞き返すと
  C テレビ。                     答えられなくなる児童がいるから注意を要す


                                            154
   る。時には、児童の一語文を教師がまとめて    (絵にかくために、きのうの経験をいっそう
   板書して(カードに書き)それを読ませるよ    はっきりと思い出す。お使いの絵、汽串ごっ
   うにして文型を身につけるようにしてもよ     この絵、お手伝いの絵、本を読んでいる絵、
   い。)                     遊んでいる絵など自由にかかせる。教師は机
 T 大木君は、だれとどこへ行きましたか。      間を回って指導しながら絵について問答す
 C おかあさんとパンを買いに行きました。      る。)
 T 相川さんはだれと何を買いにいきました    4 書いた絵について話す。
  か。                      T かけたら、黒板にはり出しましょう。
 C 春夫とパンを買いにいきました。         (かき上がったものから順に黒板に掲示す
  (発問には特に注意をする。「どこへ行った     る。代表的な絵を取り上げて。)
  の」と聞くと「○○へ行ったの」と答える。    T これはだれがかいた絵ですか。手をあげて
  「どこへ行きましたか」と聞くと「〇〇へ行     ごらんなさい。
  きました」と答える。「だれとお使いに行き    T 松木さんがかいたの、ずいぶんじょうずに
  ましたか」ときくと、「○○とお使いにいき     かけていますね。この絵は何をしているとこ
  ました」と答える。発問が児童の思考の型を     ろかみんなに教えてあげなさい。
  決める。思考を正確にする。思考をはっきり    C なわとびをしているところ。
  させる。)                   T だれとなわとびをしているところですか。
3 きのうのことを絵に書く。            C よっちゃんとなわとびをしているところ。
 T さあ、今度はきのうしたことを絵に書きま    T これは何ですか。
  しょう。                    C ちょうちょが飛んでいるところ。


                                            155
 T この絵のお話はまたあしたしましょう。絵     問し、自然にその文型を使うように仕向け
  は先生のほうへ集めておきましょう。        る。)
  (指導しょうとする文型が使われるように発   



9 時間割
   4月16日(火)入学9日め          イ 時間割を読んで学習の用意をすること。
  学習のねらい 学校生活に慣れる。各教科の学   ウ 七曜を読むこと。
 習の諸準備を整えるための指導をする。10日め   エ 教科名を読むこと。
 ごろからは各教科別の学習が始まる。これまでに   オ 問いに答えること。
 各教科の学習の基礎になる事項とどの教科にも共   カ 指示に従うこと。
 通な学習の態度、学習の興味、学習作業のしかた  2 歌を歌う。
 などについてかなり詳しく具体的に指導が行なわ   ア 発音、発声を正すこと。
 れた。それらの指導の上にたって、各教科の学習   イ ことばを読みながら歌うこと。
 が計画され実践される。時間割の読み方、扱い方   ウ 「まえ」「うえ」「した」「ひだり」
 はそれらの学習の其礎になる事項の一つである。    「みぎ」などの語を読むこと。
 時間割の学習の中にも国語学習が計画されている。 3 遊んだことを話す。
  学習の内容 次の生活経験、学習活動を通して    ア 問いに答えること。
 学習態度、学習能力、学習作業を指導する。     イ 何をしたかがわかるように話すこと。
1 時間割を読む。                 ウ 恥ずかしがらずに話すこと。
 ア 時間割のやくめを知ること。          エ 大きな声で話すこと。


                                            156
 オ 話す文型を身につけること。          T(きのうのカードを示し)きのうのお休みは
 学習指導の実際           
         宇田川さんでしたね。
  ■時間割                    T 字田川さんはきのうはどうして休んだので
1 朝のあいさつをする                すか。
 あいさつの係がでて、その声にあわせて「お     C かぜをひいたの
 はようございます」とあいさつをする。      3 きょうの約束をする
 ・あいさつ係は、名前の順にしている。       T (きょう のカードを示し)きょうの約束
 ・あいさつ係は前へ出て「胸を張って」といい     をしましょう。
  教室のまんなかより前よりの所へさがって      (きのう きょうはカードを見せるだけでわ
  「おはようございます」全体唱和する。       ざわざは読ませない。)
2 出席をとる                   T きょうは雨だからうちあそぴです。ろうか
 T きょうの出席をしらペます。名前をよぴま     を歩く時、よっばらいはだめですよ。スピー
  すから元気よく返事をしてください。(名前     ド違反はだめですよ。(あめ ろうか かさ
  は男も女も○○さんと統一して呼ぶ。一列ご     のカードを話しながら示す。)
  とにじょうずに元気に返事ができたかどうか   4 時間割を読む。
  を評価する。)                 T きょうの勉強はこれです。(時間割表を示
 T (きょうのカードを示し)きょうのお休み     す。―掲示―前日(一五日)の父母会で説明
  は三人ですね。                  をしながら児童用時間割を配布し、きょうは
 T なぜ休んだか知っていますか。          それによって時間割をあわせてきている。)
 C 知らない。                  T 時間割表です。みんなで読んでみましょう


                                            157
  (表題の「じかんわりひょう」ということば     をさす。)火曜日の時間割りの上へきょうの
  をさしながらいう。)               カードをはっておく。
 C じかんわりひょう。              T では先生のカードをきょうの時間割のとお
 T(こくご たいいく しゃかい のカード      りに並べてください。(火ようび こくご
  を一枚ずつ示す)このカードが読めます       たいいく しゃかい)
  か。                     6 時間割ともちものを合わせる
 C こくご。                   T (こくごのカードを示し)この用意をし
 T じかんわりひょうの中のこくごの所をさし     てください。(児童にそれぞれこくごの用意
  てください。(指名して前の掲示の時間割を     をさせる)
  ささせる。こくごがさせたら手をたたいてほ    T できた人のうちだれか、先生のをあわせて
  めてやる。)                   ください。
  (以下「たいいく」「しゃかい」を同じよう    T ではこくごの中でこれを順に重ねてくださ
  に扱う                      い。
5 きょうの時間割表を読む。             (こくごのほん こくごのちょうめん 
 T きょうは何ようびでしょうか。(火ようび     こくごしょしゃ のカードを示す。)
  のカードを作る。)                (カードを見せ現物をとらせ、教師のものと
 C 火よう日。                   くらべて置く。)
 T (火ようびのカードを示し)きょうの時     T つぎはしゃかいです。
  間割はどこですか。                (しゃかいのほん しゃかいのちょうめん
 C (前へ出て時間割の「火ようぴ」のところ     のカードを示す。)


                                            158
 T 時間割とあわせる時は、この時間割表に書    ・カードと本と確実に結びつけることが大切で
  いてないもので忘れてはこまるものがありま    ┌――――――――――┬―┐  ある。
  す。                      |こくごのほん    |〇|8 あした時
  (ふでいれ のカードを示す。)         |しょしゃ      |〇| 間割をしら
7 時間割があっているかどうかを確かめる。     |こくごのちょうめん |×| べることを
 T こんどは紙をあげます。            |しゃかいのほん   |〇| 話し合う。
  (代表者がくばる。)              |しろちょう     |〇| T あした
 T こくごの本を持ってきた人は、その下へ○    |ふでいれ      |〇|  もきょう
  をつけなさい。                 |したじき      |〇|  のように
  (以下次の表について一欄ごとに○×をつけ    └――――――――――┴―┘  して、時
  る。)                      間謝合わせをしましょう。
 T できた人はうしろに名前を書きなさい。      (注)「しろちょう」はけいのないノート
 . カードと本と結びつかないものがいる。         のこと。


10 きれいな花
  四月一七日(水)入学一〇日め         でしばらくの間は、各教科の基礎学習とともに国
  学習のねらい 時間割に従って、各教科の学習  語学習が計画的に行なわれなければならない。
 にはいる。各教科の学習の中で国語の学習の行な   学習の内容
 われる場合が多い。どの教科でもことばを使い文  1 観察したことについて話す。
 字を読むことを前提としているからである。そこ   ア 問いに答えること。


                                            159
 イ ことばの意味を理解すること。         T そのほかにもありましたか。
 ウ ことば読みから文字を分析すること。      C あった。
 エ ことばによって認識を深めること。       T どんなのがありましたか。
 オ 発音を正しくすること。             (見たけれど、名まえはわからない。)
 学習指導の実際                  C わかんない。
  ■きれいな花                 2 草花の葉や花のちがいを意識する。
 テレビで草花の葉や花の形について視聴した。    T そう。それでは、みんなの見てきて知って
それから、校庭に出て、花だんの草花を観察し      いるのを先生がかきますよ。
た。児童は、あれこれと自分の知っている花など     (黒板にチューリップの絵をかく。業の形を
指さしながらみていた。                まちがえておく。)
 教室にもどって、観察したり、テレビで見たり   3 葉の形に注意し、区別する。
したことについて話し合った。            T チューリップをかきました。これでいいで
1 どんな草花を見てきたか話し合う。         すか。
 T テレビでいろいろな花をみましたね。校庭     (見て、じょうずだとか、いろいろ言ってい
  でも見てきましたね。               る。)
   これから校庭でどんな花を見てきたか話し    C なんだか、へんだ。
  てもらいます。どんな花がありましたか。     T どこがへんですか。
 C チューリリップ。               C 葉がちがうみたい。
 C ばら。                    T そう。チューリップの葉は、これとはちが
 C すみれもありました。              った形をしていましたね。では、こんなです


                                            160
  か。                      C みどり。
4 「は」を読むこと。               C あお。
 T これが、チューリップの葉ですね。これが    T この色ですか。この色ですか。
  「は」です。                   (チョークの緑と青を示す。)
  (「は」と書いたカードをそのよこにはる。)   C それです。
 T 読んでみなさい。                (緑色のチョークをさす。)
  (「は」と読む。ここで既習の「はい」から   7 「みどり」を読む。
  「は」を分化させる。)             T そうですね。これは、みどりです。(カー
5 花の形を認識する。「はな」を読むこと。      ドに「みどり」とかいて出す。「は」のよこ
 T チューリップの葉がわかりました。        にはる。)チーーリップの葉は、みどりです
  花はこれでいいですか。              から、このみどり色をぬりましょう。
  (花のところに「はな」のカードをはる。      (絵の葉を緑色にぬる。)
  「は」と「な」の文字を既習のものから分化    T チューリップの葉はなに色ですか。
  させる。)                    (葉をさし、カードをさして読ませる。)
 T 読んでみましょう。              T 花はなに色ですか。
  (絵と文字カードをさして「は」と「はな」    C あか。
  を読ませる。)                 C きいろ。
6 「みどり」の意味充実。             C しろ。
 T このチューリップに色をぬりましょう。     T そんなにいろいろあるんですか。
  葉の色はどんなですか。             C ある。


                                            161
 C 見たもん。                   (色をぬり「しろ」のカードを出す。読ませ
 T では、あと二本かきましょう。          る。)
  (チューリップを二本かく。)          T たしかめてみましょう。
8 「あか」を読むこと。               これが、あか。これが、きいろ。これが、
 T これをあかにしましょうか。           しろ。
  (色をぬって、「あか」のカードをはる。      (絵の花の色と、カードをさして読ませ、事
  読ませる。)                   象と文字ことばとの対応を理解させ読むこと
9 「きいろ」を読むこと。              を指導する。)
 T これはきいろにぬりますよ。          このあと、草花には、葉と花があることを絵と
  (色をぬって「きいろ」のカードをはる。読   文字カードを利用して確実に認識するようにし、
  ませる。)                  あわせて、読むことの練習をした。
10 「しろ」を読むこと。              なお、花の色、葉の色についても同じようにし
 T これはしろですね。             てまとめ、読むことの練習をした。

   三 入門期10日間に学習する発音・文字・語句・文法

 入門期の始め10日間に学習する発音・文字・語句・文法をまとめて、系統化してみると次
のようになる。もちろん、ここで学習するそれらの言語要素は、学校・学級に応じて異なるこ
とは当然である。ここには、特にわれわれが実験を試みたものをあげた。入門期の学習は、未
分科で、総合的に行なわれるものではあるが、そこにはっきりした各教科の学習の目標、学習
の内容を系統的発達的にとらえていかなければならない。特に国語科としてほ、児童に計画的
・系統的に学習させる発音・文字・語句・文法を明らかにしておくことがたいせつである。   162

1 文字・語句・文法の系統表(1)                    162〜164   


読む語句  読む文字 話す文型  聞く語句 



はい、はた、 は、い、
た 
・ はい。
・ さようなら。
 
がっこう、こうちょうせんせい、
せんせい、一ねんせい、一ねん二
くみ、へんじ 



 
まえ、なま
え、となり、
いす、つくえ
 
ま、え、
な、と、
り、す、
つ、く 
・ いってまいります。
・ おはようございます。
・ ただいま。 
ならびましょう、れつ、となり、
まえ、いす、つくえ、たつ、なま
え、おともだち、ぼうし、ぞうり
ぶくろ、はながみ、ハンカチ、ラ
ンドセル 



 
へんじ、おと
こ、おんな、
ことり、は
な、さくら、
いけ、すなば 
へ、ん、
じ、お、
こ、さ、
ら、け、
ば 
・ 〇〇があった(よ)。
・ 〇〇もあった(の)。
 
うさぎ、うさぎごや、ことり、こ
とりごや、ぶらんこ、すなば、て
つぼう、ろくぼく、プール、さく
らの木、ジャングルジム、シーソ
ー、うんどうじょう、かだん、す
みれ、チューリップ、はな、い
け、おとこのこ、おんなのこ 



 
やま、くさ、
うち、さか
な、ふね、
あかい、しろ
い、きいろ
い、あおい、
くろい 
や、う、
ふ、ね、
あ、し、
ろ、き、
あ、か 
  ほけんしつ、きゅうしょくしつ、
しょくいんしつ、こうどう、とし
ょかん、ろうか、かいだん、げん
かん、えをかきましょう、ひこう
き、じどうしゃ、ちょうちょ、お
うち、くさ、でんしゃ、やま、ひ
と、きんぎょ 



 
うえ、した、
まえ、うし
ろ、まるい、
おおきい、ち
いさい 

 
・ まるいだんご。
・ おおきいおぼん。
・ ちいさいだんご。
 
さいた、ならんだ、きれい、は
な、あか、しろ、きいろ、うえ、
した、まえ、うしろ、よこ、かぞ
える、ひとつ、ふたつ、みっつ、
 



 
  の、を、
で、ベ、
そ 
・ (シーソー)にのりま
 した。
・ (てつぼう)をしまし
 た。
・ (すべりだい)ですべ
 りました。
・ (すなば)であそびま
 した。 
ころぶ、すわる、たつ、かける、
にげる、つかまえる、のぼる、お
りる、ならぶ、こぐ、のる、つか
む、つかまる、すべる、はる、と
まる、はしる 



 
こくごのほ
ん、ふでい
れ、えんぴ
つ、したじ
き、しかく、
さんかく、ま
る、これ、そ
れ、どれ、て
がみ 
ご、の、
れ、ぴ、
か、る、
ど、が、
み 
  ランドセル、こくごの本、さんす
うの本、クレヨン、ぞうりぶく
ろ、ちょうめん、えんぴつ、けし
ゴム、したじき、ふでいれ、ぼう
し、ハンカチ、はながみ、けいす
うき、しかく、さんかく、まる、
あか、しろ、きいろ、くろ、もも
いろ、まる
 



 
    ・ 〇〇をしました。
・ 〇〇と〇〇をしま
 した。
・ 〇〇とあそびまし
 た。
・ きのう○○をしま
 した。
・ きのう○○と○○
 をしました。 
ともだち、お使い、お手伝い、遊
び、買物などに関することば。
 



 
月ようび、
火ようび、
水ようび、
木ようび、
金ようび、
土ようび、
こくご、し
ゃかい、り
か、さんす
う、ずこう、
おんがく、
たいいく、
どうとく
 
よ(よ)
う、
しゃ、
ず、が 
  きのう、きょう、あした、やす
む、あめ、ろうか、かさ、じか
んわり 
10


 
(復習)花の
名まえ、色の
なまえ 
    かだん、草花、色などに関する
ことば。 

 上にあげた表の、「読む語句」は、それを文字で書いて読ませる語句である。これらの語句
は基本的なものであるから、学級の実情、取り上げる生活経験・学習活動等によって異なって  165
くるのは当然である。ここには、実際に指導した語句だけがあげてある。「読む文字」は、読
む語句の中に出てくる文字であって、実際には、一字一字教えることはない。ことば全体、つ
まり、ことばとして読んでいる間に分析され、意識され記憶される文字である。「話す文型」
は、児童が話す場合に使う文型であって、指導の結果それが使えるようにするものである。
「聞く語句」は、それぞれの生活経験・学習時動をする場合に使われる重要な語句である。こ
れらは、特に注意して教師が使って聞かせるものである。
 なお、ここにあげてないもので、それぞれの学級によって扱った語句や文型もある。それら
の一部は、実践記録の中に示されているから参考にされたい。

2 学習する(読む)語句の系統表(2)
1 自然
 さくら・ことり・いけ・うち・やま・くさ・さかな・ふね・はな
2 学習
 いす・つくえ・えんぴつ・したじき・こくごのほん・ふでいれ・はた・すなば
 月ようび・火ようび・水ようび・木ようび・金ようび・土ようび
 こくご・さんすう・しゃかい・りか・おんがく・ずこう・たいいく・どうとく
3 色彩
 あかい・あおい・しろい・くろい・きいろい
4 形体                                        166
 まるい・さんかく・しかく・まる
5 位置
 うえ・した・まえ・うしろ・となり
6 此較・指示
 おおきい・ちいさい・これ・それ・どれ
7 生活
 はい・へんじ・なまえ・おとこ・おんな・てがみ
 以上の五六語が・読む語句として提出されている。なお・語句学習の単元的方法の基礎とし
ての語の分類を示すと次のようになる。
l まる・さんかく・しかく 2 うえ・した 3 まえ・うしろ・となり 4 おおきい・
 ちいさい 5 くろい・しろい 6 あかい・あおい・ 7 おとこ・おんな 8 これ・
 それ・どれ 9 はい・へんじ・なまえ 10 いす・つくえ 11 はな・さくら・ことり
 12 さかな・ふね・いけ
などのように、一対あるいは同類の語として学習したり、整理したりする。

3 ことば読みから文字分析への学習の基礎としてのことばの整理
   o  o  o     o  o   o   o    o o     o
 1 はい・はた・はな、 2 うえ・まえ・なまえ・つくえ、 3 はな・なまえ・おんな、
   o  o  o    o   o   o   o  o   o   o
 4 うえ・うち・うしろ 5 いす・はい・しろい・くろい 6 おとこ・おんな・おおきい、
   o    o  o    o   o   o    o  o  o    o
 7 しろい・うしろ・した、 8 まえ・なまえ・やま、9 これ・それ・どれ、 10 くさ・  167
 o    o   o     o   o   o    o o     o
 くろい・つくえ・さくら・さんかく・しかく、11 さくら・くさ・さかな・ちいさい、12
 o   o      o o     o  o   o      o o
 あかい,あおい、13 いす、すなば、14 これ・こくご・ことり、15 うち・ちいさい、16
  o   o    o       o    o   o    o     o
 へんじ・さんかく・おんな・こくごのほん、17 しろい・くろい・うしろ、18 ことり・とな
 o   o    o   o
 り・19となり・ことり・おとこ

4 話しことばの用法(ことばのきまり、文型)の系統
1(1) はい。
 (2) いってまいります。
 (3) さようなら。
 (4) おはようございます。
 (5) ただいま。
2(1) ○○があった(よ)。
 (2) ○○もあった(よ・の)。
3(1) まるいだんご。
 (2) おおきいだんご。
 (2) ちいさいだんご。
4(1) (シーソー)にのりました。
 (2) (てつぼう)をしました。
 (3) (すべりだい)ですべりました。                          168
 (4) (すなば)であそびました。
5(1) (はるこさん)とあそびました。
 (2) (はるこさん)と(ほん)をよみました。
 (3) きのう(テレビ)をみました。
 (4) きのう(はるこさん)と(テレビ)をみました。

                                            169

   第五章 入門期国語指導の理論と実践


   一 入門期の読むことの学習指導

1 入門期の読むことの学習指導の考え方と方法
 機能的な読みをめざして――読めばわかる――入門期の読みの指導は、読みの本質に即して
行なわなければならない。読めば、その結果何かがわかる。何かの知識が得られる。また、読
んだ結果どう考えたらよいか、どう行動したらよいかがわかる。つまり、読みの機能が自然に、
しだいにわかってくるような、読みを指導する。児童の読みに対する構えはそこから育ってく
る。読みの目的の自覚もそこから生まれる。読もうとする意欲も欲求もそこから喚起される。
 たとえば、さし絵はある瞬間を空間的に表現している。時間的経過は説明されていない。ぶ
らんこに子どもが乗っている。それは揺れているのか静止しているのか大きく揺れているのか
わからない。「ぶらんこは、いまどうしているのだろう。」という問いに答えるために文を読む。
「ぶらんこがゆれている。おおきくゆれている。」という文章を読んで、ぶらんこが揺れている
ことを知る。大きく揺れていることがわかる。つまり、文葦を読めば、ぶらんこがどうなって  170
いるかがわかる。子どもがふたり口をあけてこちらを向いているさし絵がある。何をしている
のだろう。話しているのだろうか、歌を歌っているのだろうか。文章を読めばわかる。「はる
おがうたむうたっている。」と書いてある。お話をしているのではない。まさしく歌を歌って
いるのである。それがはっきりとわかる。読めばわかる。
 こうした指導は、児童の文章を読む構えをだんだん作っていく。読もうという意欲が積極的
に湧いてくる。読む目的をしだいに自覚するようになる。文章があるから読ませるのではない
何かを知りたいから読むのである。
 時間表を読む。それを読めば、明日学習することがわかる。掲示を読む。「あしたは、のり
とはさみをもってきなさい。」を読んで、明日何を持参すべきかがわかって、それに適応する。
 こうした機能的な読みの指導から、入門期の読むことの指導は始めるべきである。
 目的的な読みを ――知るために読む――機能的な読みは、当然目的的な読みとなる。読
めば必ず何かがわかる。何かについての知識が得られる。どうすればよいかがわかる。何か心
に感じることがある。こうした、読めば何かがわかる、求められるという意識は、その読めば
わかる何かを、知るために、求めるために読むという目的意識へと発展する。それが読みの主
体的な立場である。主体的な読みである。意識的な読みである。
 「あしたの工作の時間には、何と何を持って来るのですか。」という問いに答えるために掲示
を読む。つまり、持ってくる物を知るために読む。そして、その通りに持って来る。掲示に適
応する。適応するために読むとも言える。
 「花壇にはどんな花が咲いていますか。」という問いに答えるために読む。咲いている花は何  171
だろうと思いながら読む。読んだら、赤いチューリップと白いチューリップが咲いていること
がわかった。
 こうした、目的を持った読みのくり返しは、いつの間にか、児童に読みの構えを作る。読み
の態度を形成する。「Aさん、読んでごらんなさい。」「こんどほBさん読んでごらんなさい。」
というような、児童に何か読む目的を与えないような読ませ方はしない。「どんなチューリッ
プが咲いているのか、みんなにわかるように大きな声で読んであげなさい。」などというように、
読む目的とともに読み方を指示して読ませてもよい。このように課題を与えたり、評価したり
するための発問をくふうすることもたいせつである。
拾い読みからことば読みへ ―― 一字一字の知覚から語の知覚へ――読字調査の結果を見る
と、文字の読める児童は多い。しかし、その大部分は拾い読みをしている。つまり、一字一字
を知覚しながら――逐字知覚をしながら読んでいる。それでは語の認知がうまくできないし、
速く読むこともできない。そこで、語として読む。語のまとまりとして知覚する読みを――逐
語知覚の読み方を指導しなければならない。いわゆる一目読み、語形読みなどというのがそれ
である。「さくら」を「サ・ク・ラ」と読まず「サクラ」というように、一日で、語として読
むようにする。すなわち、語を読む。読むと同時に語として認知する。そういう読みを指導す
る。そして、家庭でつけられた拾い読みの習慣を直す。これが、家庭で文字を覚えてきた児童
に最初に行なうべき指導である。
 また、文字の読めない児童には、最初から語として読む指導をする。すでに述べたように、
言語経験をするのに必要な機能的な語を経験の中で、場面の中で、語として学習することによ  172
って、すでに文字を知っている児童と、文字を知らない児童とをいっしょに学習させることが
可能になる。
 語として読むようにするには、最初はことばカードを使うのがよい。はい さくら のよう
なカードによって、語の一まとまりごとに知覚するように習慣づける。フラッシュカードとし
て使ってもよい。そして、語としてのまとまりとして、はっきりと印象づけ、それが記憶され
るようにくり返し見たり、読んだりする。また、教科書の語や文を読む場合、いわゆるはさみ
読みをさせてもよい。
 ことば読みから文字学習へ――ことばの文字分析――ことばとして読む学習を進めていく
間に、次のようにカードを並べたり、読んだりして、語を音節に分ける、同時にことばを文字
によって分ける、つまり、音節や文字を認知し、分析するように指導する。

 はた  おとこの こ  いす  ま え
 はい  おんなの こ  いけ  なまえ 
 はな          はい  つくえ

 上のようにカードを並べて示せば、あるいは並べさせれば、おのずから音節意識が養なわれ、
一字一字が知覚される。こうして、しだいに音節意識、文字意識をはっきりさせる。
 やがて「はた」というカードを二つに切って、「は」と「た」に分ける。また、それを並べ  173
て、「はた」という語にする。さらに、文字カードを並べてことばを作る練習をする。こうし
て、文字を確実に学習する。語として読みながら、語の音節分析、文字分析を視覚的に、また
は、語の分析作業によって、文字を知覚し、認知するようにする。このことは、拾い読みをさ
せることではなく、文字認知・文字学習を確実にするとともに、語としての知覚をいっそう確
実にするのである。
 語句の学習―単元的・生活的方法・意味充実―入学式に「はい」という語をカードで示して
学習させるのは、単なる「はい」という一語を孤立的に、単語として学習させるのではない。
出席を確認し、そのひとりひとりの児童を確認するために教師が名まえを呼ぶ。それに応じて
児童と教師との間にコミュニケーションが成立する。そのような場において最も大事なことば
「はい」を、それが生きて働く場(文脈)の中で学習させる、つまり、「はい」の意味機能と
その使い方を学習する中で「はい」という文字ことばを学習するのである。つまり、ことばを
つねに、場面、文脈の中での働きとして捉えて学習する。
 したがって、そのような場、経験に必要な重要な語はできるだけいっしょにまとめて学習す
る。たとえば、「なまえを呼ばれたらはいへんじをする。」こういう経験は、入学後毎日くり
返される。そこで、その経験の中で、「はい」「なまえ」「へんじ」という語を有機的に捉え
てその意味・用法とともにその読み方を学習させる。また、工作でねん土のおだんご作りをす
る。そういう経験の中で「まるい」「おおきい」「ちいさい」という語を学習する。その語の
意味を具体的に、その用法とともに読み方を学習する。クレヨンで絵をかく学習の中で、色の
名とその読み方を学習する。                               174
 このように語句は、最も機能的なものを選んで、その意味、機能、用法とともにその読み方
を学習する。
 また、ぶらんこが「おおきくゆれる。」「ちいさくゆれる。」の学習で、「おおきく」「ちいさ
く」の意味がわからない。物の大きい、小さいはもちろんよく理解できるが、振幅の大きい、
小さいはよくわからない。そこで、具体的に説明したり、その状態を具体的に示したりしてそ
の意味を理解させる。いわゆる動作化、行動化してその語句の意味機能を理解させる。
 どんな語句をとくに指導するかは、教材の文章を自由に音読させている間に机間を回りなが
ら、その読み声をす早く聞きとって判断する。拾い読みをしている語、つかえながら読んでい
るところは、大体において、児童に親しみのない語、意味のよく理解されていない語句である。
それらを板書したり、カードに取ったりして特に指導する。その文章の機能的な語、いわゆる
大事な語句について指導することはいうまでもない。
 読みと挿し絵―読みの発達と押し絵の機能―児童の経験の場を選んで、その中に働く語や文
を学習する場合には、もちろん押し絵はないし、その必要もない。語句や文の地としての、背
景としての練験を児童が持っているからである。
 子どもと犬が庭で戯れ遊んでいる挿し絵があって、「いぬ」という語が提出されている。「あ
めがふっている。」という文があって、青葉に雨が降り注ぎ、子どもが学校へ急いでいる絵があ
る。
 このような挿し絵は、「いぬ」「あめがふっている。」という語や文が働いている、説明して
いる場面を写したものである。語や文の背景を、経験、場面を描写し説明しているのである。  175
したがって、学習にあたっては、挿し絵について話し合ったり、時には説明を加えたりしてよ
くその場面や経験を理解させる。その過程で、語や文の学習をする。その語や文の意味機能を
具体的にわからせる。ここでは、挿し絵から語や文の学習へと進行する。
 しかしながら、学習する語の数もまし、文や文章によって、ある場面や経験が叙述されるよ
うになると、挿し絵はしだいに後退する。すなわち、文や文章で叙述できない面や、その叙述
を助けるために挿し絵が存在するようになる。やがては、文章によって、場面や経験が、読み
手にわかる程度に表現されるようになると挿し絵の必要はなくなる。
 そこで、学習に当たっては、はじめは挿し絵に示された場面、情景、経験などにささえられ
て、語や文の学習が行なわれた。が、文や文章がしだいに場面や経験を説明し、表現するよう
になると、文や文章の学習を中心として、その表現されていない面を挿し絵で補うような学習
が進められる。
 やがては、文章を読んでその内容を理解し、挿し絵を説明する。この挿し絵は何を表わして
いるのか。どんな情景を表わしているのか、どんな気持ちを表わしているのか。どんな場面を
表わしているのかを理解する。挿し絵は、場面や情景や心理などについて、その瞬間を空間的
に説明する。心理的に説明している。しかし、ある場面の時間的経過、空間的移動を同時に、
同一挿し絵で説明することはできない。その理解は文章の叙述に頼らなければならない。
 童話には、かなりくわしい挿し絵がついている。挿し絵を見れば、童話の筋やおもしろさが
わかる。そこで、挿し絵を見ながら、児童と問答して、その筋やおもしろさをつかませる。そ
れから、童話を読むというような教室をよく見かける。これでは国語教育にはならない。文章  176
を読んで話の大体がわかる。おもしろさがわかる。それが読みの学習である。挿し絵でわから
せ、問答でわからせてしまったのでは、児童は読む必要を感じない。読もうという欲求が起こ
らない。したがって、読む態度ができない。
 要するに、挿し絵の機能をよく考え、文章と挿し絵との関係をはっきりさせたうえで、その
取り扱い方を考えることがだいじである。
 そら読みをする児童の指導
 一年生の一学期の国語学習の一つの問題点は、そら読みの多いことである。つまり、文字
(語)を知覚して読まないで、記憶に頼ってことばを話すことである。学習する語や文が簡単
であるために児童はすぐにそれをことばとして記憶してしまい、読む時には、その語や文を知
覚しないで(見ないで)、読んでいるような見せかけで、記憶していることばを発する。そこで、
教師は、うっかりしていると、児童が語や文を知覚して読んでいるものと誤認する。これは読
みの遅進児・不振児を作る原因となる。
 そら読みを防ぐには、ただ本をよく見て読みなさいというような注意ではだめである。
 ことばカードを使って読ませる。ことばカードを並べて文を作る。似ていることばや文を読
み此べる。語形の似たことばの識別、似ている文の識別などをさせる。ことばを文字に分析す
る。文字カードを使ってことばを作る。ことばや文をノートに書く。短冊カード(文)を並べ
て文章を作る。行を指でたどりながら読む。はさみ読みをする。このような読み方をくふうす
る。そして、ひとりひとり音読することを原則とする。特別な場合以外は、同時にいっせいに
音読することを避けるようにする。教科書の教材だけでなく、児童の生活の中に取材して教材  177
を作っていく。
 このことは、文字や語の知覚を確実にするだけでなく、正しい眼球運動の訓練にもなる。入
学当初の児童の眼球運動が、正しく行なわれないことは、読書レディネステストの結果が証明
している。
 この指導を怠ると二学期になって、読む教材の文章が長くなるにつれ、急に読めない子ども
が目立ってくる。
 読み誤る児童の指導 ―経験・文型で読む児童―そら読みをするとともに読み誤る児童も多
い。読み誤る場合をあげてみると、
 (1) 「さくら」を「サクラノハナ」と読む。
 (2) 「てるおが……」を「テルオサンガ……」
   と読む。
 (3) 「はいとへんじをしました。」を「ハイトイイマシタ。」と読む。
 (4) 「はんかち」を「ハンケチ」と読む。
 (5) 「こい」を「キンギョ」と読む。
 (6) 「はながさいています。」を「ハナガサイテイマシタ。」と読む。
   などがある。このような誤りを分類してみると、次の三つの型になる。
 (1) 読み誤り、(2) 読み加え (3) 読み落とし
 このような読み誤りが起こるのは文字(語)を知覚する場合に、知覚の誤り(「こい」を「キ
ンギョ」、「はんかち」を「ハンケチ」などと読む。)知覚の不当脱落(「あか・しろ・きいろ」  178
を「アカ・キイロ」、「ごうれいをかけました」を「ゴーレーカケマシタ」などと読む。)知覚の不
当添加(「さくら」を「サクラノハナ」、「てるお」を「テルオサン」などと読む。)が起こるから
である。次にこのような不正な知覚が行なわれるのはどんな時か、なぜかを考えてみよう。
 (1) それについて自分が知っているとおりに読んでしまう。
 (2) 自分がした経験に基づいて読んでしまう。
 (3) 自分の身についている文型で読んでしまう。
 (4) 文脈が児童の思考に合っていない場合自分が作った文脈で読んでしまう。
 (5) 場面に応じて読んでしまう。
 (6) さし絵に引きずられて読んでしまう。
 (7) 読む前の話や話合いに引かれて読んでしまう。
 大体このような場合に誤って読んでしまう。このことは、知覚の誤りを犯したり、知覚の不
当脱落や不当添加を起こすのは、単なる知覚の正誤の問題ではなく、知覚の誤りを犯させる原
因が、知覚以外の他にあることを物語っている。つまり、知覚を誤らせるのは読み手の読む構
え、つまり読み手の心理、知識、経験等にあることがわかる。さらにいえば、読み手の持って
いる文型・判断の型、語い、読む目的等にささえられている読みの構えが、知覚を誤らせてい
る原因である。
 こうした読み誤りを防ぐには、(1)児童の持っている文型を正すこと――正しい文型を指導
すること、(2)読みの正しい構え、態度を育てること、(3)語の知覚(認知)に慣れること、
(一目読みの指導、注意深い読みの指導等)などが大事である。前に述べた、そら読みを正す  179
指導の方法はこの場合にも有効である。
 読みの指導のプログラム 文字ことば(語)の読みの学習は次のプログラムによって行な
われる。
(1) 「事実」と「ことば」の対応「ことば」の意味機能を明らかにする。話しことばとして使
 う。――語の認知
(2) 「ことば」話しことばと文字(文字ことば)とを対応させる。――ことばと文字(語)の
 対応。
(3) 「文字ことば」を読む。――文字ことばの音声化。
(4) 「文字ことば」と「事物」の対応――意味を具体的に示す。
 このプログラムに従って文字ことばの学習を考えてみると、
 「さくらのはな」の指導
(1) 運動場にどんな花が咲いているかを話す。「さくらのはな」が咲いていることを確認する。
 「桜の花が咲いていました。」「桜の花が咲いていたよ。」など話させる。(語の認知)
(2) 「さくらのはな」と板書する。あるいは文字カードを黒板に掲げる。桜の花と文字カード
 とを結びつける。(文字ことばの視覚表象へ)
(3) 「さくらのはな」と読むことを教える。(文字ことばの音声化)
(4) 「さくらのはな」のカード、板書等によって語形読みをする。(逐語知覚)
(5) 「さくらのはな」の意味を具体化する。
このプログラムに従って、語句の学習は行なわれる。                    180


2 読書の準備はできているか
 調査の目的 児童が、どの程度読むことの学習ができる状態にあるか、その成熟の度合を
調べる。  (1)           (2)

偏差値 評価
段階
人数 百分率
65以上  5  3  1.1
55〜64  4  99  37.4
45〜54  3 116  43.8
35〜44  2  39  14.7
34以下  1  8  3.0
能力
段階 
読書年齢  人数  百分率 
A  8歳6月以上 28  10.6 
B  7歳6月以上 41  15.5 
C  6歳7月以上 98  37.0 
D  6歳2月以上 58  21.9 
E  5歳5月以上 33  12.5 
F  4歳11月以上 7  2.6 
G  3歳9月以上

  右表のAGの段階は次
 のようになっている。
  A=漢字まじりの文を
   すらすら読む段階。
  B=ひらがなの文をす
   らすら読む段階。
  C=ひらがなの文をつ
   かえながら読む段階。
  D=一字一字ひろい読
   みする段階。
  E=自分の名まえぐら
   い読める段階。



                 F=教えれば読めると思うが、まだ教えていない段階。
                 G=教えてもまだ読めない段階。

能力\能力段階 G以下




得点 36〜35 34 33 32 3 30〜29 28以下 
人数 113 35 43 11 17 27 19
42.7 13.2 16.2 4.2 6.4 10.2 7.3



合  
得点 14〜13 12〜11 10 9〜8 7〜6 5 4以下
人数 102 76 32 20 18 5 12
38.4 28.7 12.1 7.6 6.8 1.9 4.6



合  
得点 14 13 12 11 10〜8 7 6以下
人数 14  69 27 12 12 2 2
53.2 26.0 10.2 4.5 4.5 0.8 0.8



知  
得点 17 16 15〜14 13〜11 10〜5 4〜  0
人数 35 68 84 55 21 2 0
13.2 25.7 31.7 20.8 8.0 0.8 0



動  
得点 38〜24 23 22〜20 19〜17 16〜14 13〜12 11以下
人数 35 7 34 81 55 25 28
13.2 2.6 12.8 30.6 20.8 9.5 10.7

 (3)         181

 調査の方法
(1) 調査の対象
  東京都内の学
  校の一年生、
  265名
(2) 調査の時期
  昭和38年5
  月28日から
  6月1日の間
(3) 調査の問題
  阪本D式標準
  読書テストA
  号、「読書レ
  ディネス診断
  テスト」
 調査の結果
(1) 読書レディネ
  ス偏差値およ
  び評価段階の










        (4)段階別能力別人数分布図                      182




 分布は180ページの(1)のようになっている。
(1) 読書年齢の分布は(2)のようになっている。
(3) 調査能力別得点
 次に調査能力段階別に得点、人数、百分率を示すと(3)の表のようになる。
(4) 調査能力別、段階別得点分布グラフ
 能力段階、A・B……Gに所属する各能力別の人数を図示すると、上の図表のようになる。
  この図表によって次のことがわかる。
 ア それぞれの能力について、能力段階の分布がわかる。
 イ それぞれの段階の児童の能力のプロフィルがわかる。
 ウ それぞれの段階の児童の能力の実態がわかる。
 調査結果の考察
(1) 読書レディネスは、大多数のものが学習の可能な段階に達していると考えられる。しか
 し、約15%の児童は特に他の児童にくらべておくれていて、おそらく同一歩調で学習する
 のは相当の困難があるものと思われる。
(2) 読書レディネスが相当に進んでいる児童もあるが、これらの児童でも眼球運動はまだあま
 りよくできないものがある。眼球運動の経験がつまれ、訓練がすすんでいれば、読書能力が  183
 AやBになるものが、おそらくもっと多くなっていたことと思われる。この間題は、文章を
 読む経験を重ねていくうちに解決されていくものと思われる。そのころに、行をとばして読
 むとか、一行読んで次にどこを読めばいいかわからないという児童があるとしても、それは
 ごくわずかであるはずで、個別に練習をさせることができるはずである。ひろい読みは、眼
 球運動と関係がある。つまり、一字一字知覚する。一字ごとに眼球が停留しているのである
 から、一目読み、(語形読み)の指導をすることによって、一語一語知覚する。つまり、文
 字のまとまり(語い)ごとに眼球が停留するように指導することが必要である。
(3) 文字認知は、他の種目とちがって、特に進んでいる児童の数が少ないとともに、特におく
 れている児童も少ない。能力段階でB、C、Dに当たる児童が全休の78・2%もあり、ま
 た、得点の平均が14・2である。これは、調査実施までに文字を読むことの学習がある程
 度進んでいること、問題の文字の中に、漢字の数字があることによるものと思われる。なお、
 この場合は文字を一字一字で読ませているのであるが、記憶結合の問題の中に、かなで書い
 たことばを見せるものがあるが、その結果がよいことをみても、文字認知の能力は順調に進
 んでいるといってよいと思う。
(4) 記憶結合は53%が満点をとっている。ごく単純なものであれば、それを認識し記憶して
 おくことができるわけである。

3 読むことの学習指導の実践
 ここに載せたのは、(一)において述べた読むことの学習指導の考え方や方法に基づいて、   184
実践した結果の記録である。したがって、各教室でじゅうぶん実践できるもののみである。
なお、ここには、五月三一日までの指導記録を載せた。

  教科書教材の学習を中心に(1)        四 学習計画
      ――5月9日、鈴木学級―−       1 全文を読む。          一時間
一 単元つばめ                   2 読みとったことを話す。     一時間
二 学習目標 春渡ってくるつばめのむつまじさ    3 読みながら書く。     一時間(本時)
      や驚きを感じてつばめに対する親し    4 全文を読む。練習する。     一時間
      みを増すようにする。          5 話し合ってつばめの文章を書く。 一時聞
三 学習内容                   五 本時の学習指導一時間

                         

学習活動  学習事項 
1 つばめの文章
 を読む。
2 文章を読んで
 話し合ったり、
 絵を見て話した
 りする。
3 短い文を書
 く。 
1 ひろい読みでなく語
 として読むこと。
2 何が書いてあるか考
 えながら読むこと。
3 正しい筆順で書くこ
 と。
4 読みとったことを話
 すこと。
5 指示をよく聞くこ
 と。 

 (1) 目標 つばめがなかよく巣を作ることを知
  ってつばめに対する親しみを増す。
 (2) 学習指導の実際
  1 教材

 
 ふじさん
 ふじさん
 あれが
 ふじさんよ。 (1) 〔備考〕
 はやく        本時は、すでに学習
 いこう。      した1と2についてま

                                            185

                                  2 板書

 …………      とめ、語を書く練習を
 おおきな      してから、3の学習を
 くち。       中心にする。
 わあ    (2)
 おおきな
 め。
 ………
 さあ
 すを
 つくろう。    (さしえ)
 わらを
 くわえて  (3)
 いこう。
 つちを
 くわえて
 いこう。
 
 
 
 ふじさん    つばめ     おおきなくち
                  おおきなくち
すをつくろう     
 わらをくわえていこう。
 つちを        
       くわえていこう。



  (上の図参照)                
 3学習指導の記録                
(1) 教科書を見ながらすでに学習したことを総活   T この前の国語の時間に勉強したのは何のこ
 する。                       とですか。
  −−「つばめ」と書く。(筆順を正す。)     C こいのぼり


                                            186
 C ふじさん                  (2) すでに学習した、つばめが見たものを確認
 C つばめ                    する。
  (みな一語文で答える。)            ――「ふじさん」と書く。(書く姿勢に注意
 T つばめの勉強ですか。(と言いながら、つ     する。)読み取ったことを話す。絵を見て
  ばめの絵をかく。つばめと板書する。)      話す。――
 T では、皆さんもちょうめんに、つばめと書    T そのつばめはどこから来ましたか。
  いてください。                 C ふじさんを目がけて飛んで来ました。
 C めいめいノートに「つばめ」と書く。      T いちばん初めに何を見ましたか。
  (机間を回って、書写の状況をす早く看取す    C ふじさん。
  る。)                     C ふじさんを見ました。
 T みんなじょうずに書けましたね。けれども    T (ふじさんの絵をかく。)また、ノートに
  なかに、こう書いた人がいますよ。         「ふじさん」を書きなさい。
  (「ば」の筆順を誤った児童を見つける。誤     書けない人は本をよく見て書きましょう。
  った通りに書いて見せる。)           C 「ふじさん」とノートに書く。
 Cいけない。                    (教師は机間を回って、書き方を指導したり
 C ちがう。                    書く姿勢の悪い者に注意を与えて指導する。)
 T それでは、こんどはこれを書きましょう。    T つばめは、ふじさんを見て何と言いました
  (小つばめの絵を板書する。)子どものつば     か。
  めを書きなさい。また、見てあげます。      C ふじさん、ふじさん、ふじさんよ。
 C 「つばめ」と書く。              C はやくいこう。


                                            187
 T つばめが育ったことを、指ではさみながら   (3) すでに学習した、つばめが見たものを確認す
  読んでごらんなさい。              る。
 C めいめい自由に音読する。            ――読み取ったことを話す。「くち」「め」
 T どのつばめがそう言ったのでしょう。       を書く。(字形について指導。)
 C これ(児童、それぞれ教科書のつばめ数羽    T その次に、つばめは何を見ましたか。
  の中のものを指さす。)             C ふじさん。
 T どうしてそれがわかりますか。         C こいのぼり。
 C 首を後ろに向けているから。          T 鯉のぼりの絵をかく。(児童、大きいなあ
 C 後ろを見てロを開けているから。         と歓声をあげる。)鯉のぼりを見て何と言い
 T そうですね、みんなのつばめに聞こえるよ     ましたか。
  うに言うにはどうしたらいいでしょう。      C おおきなくち、わあ、おおきなめ。
 C そばへ集まります。              T (「おおきなくち」と板書)おおきなめ
 C 大きな声で言う。                といったのは、どのつばめですか。指で押え
 T それでは、つばめの代わりに大きな声で読     なさい。そのつばめは何といいましたか。読
  んでごらんなさい。                んでごらんなさい。
 C 音読する。(O・K中の下程度の児童)     C おおきなめ。
 T よく閲こえました。もうひとり読んでもら    T (「おおきなめ」と板書)次に、「くち」
  います。                     と「め」をノートに書かせる。「ち」と「め
 C 音読する。(下の上程度の児童、読んでい     の書き方、字形について指導する。選んだ児
  るが後ろのほうにはほとんど聞こえない。)     童に板書させる。)


                                            188
(4) つばめがすを作ることを学習する。       エ 読み取ったことを話しながら、文に即して確
 (この時間の中心になる学習)           認する。
ア 学習の目あてを決める。             T 何をしているのかわかりましたか。
 T こんどは、その次を勉強しましょう。その    C すを作るの。
  次はなんでしたか。(児「すをつくるの。」)   C すを作ろうって言ってる。
  つばめが巣を作るところを勉強しましょう。    T みなさんは、つばめの巣を見たことがあり
イ 読む目的をもつ。                 ますか。(10人ぐらい手があがる。)(確
 T 大きいつばめは何羽いますか。          かめながら、つばめの巣を板書する。)「さ
 C 二羽                      あ、すをつくろう。」と板書する。
 T 飛んでいるのは何羽ですか。          T さあ、巣を作ろうとどこに書いてあります
 C 四羽                      か。指で押えなさい。押えたら読んでごらん
 T つばめたちは何をしていますか。         なさい。
 C うちを作るの。                T このつばめ(絵をさして)は何と言ってい
 C すを作るの。                  ますか。
 T そうですね。つばめたちが何をしているの    C わらをくわえていこう。
  か、本を読んでみるとわかります。読んでご    T (「わらをくわえていこう」と板書。)こ
  らんなさい。                   れを読んでごらんなさい。(児童板書を読む。)
ウ 目的に従って読む。                (わらを見せて理解させる。)
 C 各自、自由に音読する。(はさみ読みと拾    T それが、本のどこに書いてあるか指で押え
  い読みの児童とを指導する。)           てごらんなさい。


                                            189

 C (押える。不正確な児童、まごついている    C いっしょうけんめい巣を作っています。
  児童もいる。)                 T つばめは、何と何で巣を作ったか考えなが
 T 押えたところを読んでごらんなさい。       ら読んでごらんなさい。
 C (金、安井、滝田、いずれも読めない。)    C 各自、自由に読む。
 T では、読める人。(挙手した児童を指名す     (その間机間を回りながら、そら読みをする
  る。)                      児童、拾い読みをする児童などの指導をする。)
 C (斎藤、飯塚、低い声で読む。)        T わかりましたか、言ってごらんなさい。
 T この大きいつばめは何をしていますか。     C わらをくわえていこう。
  (絵を指さして)                C わらでつくったの。
 C つちをくわえているの。            C つちをくわえていきました。
 T (「つちをくわえていこう。」と板書。)    C つちでこしらえました。
  これを読んでみましょう。(数人に読ませる。)    C わらとつちでつくりました。
  (つち(どろ)を理解する。)           (教科書の文をそのまま使って答えるものが
 T それが、どこに書いてありますか。指で押     いる。発間に合った答えはなかなかむずかし
  えてごらんなさい。(まごついている児童が     い。)
  多い。)(それを確認させてから)では読ん    T わらと土をくわえて来て作りましたね。わ
  でごらんなさい。                 らを運んでいるのはどのつばめですか。土を
オ 読み取ったことをまとめる。            運んでいるのはどのつばめですか。(文と絵
 T つばめたちはみんなで何をしていますか。     とを結びつける。)
 C みんなで仲よく巣を作っています。       T それでは、このつばめたちは何と言ってい


                                            190
  るのか、隣りの人に教えてあげましょう。初    教科書教材を中心に(2)
  めは男の子が教えてあげなさい。            ――5月9日(木) 伴学級――
 C 男の子が読んで女の子に教えてやる。(読   一 単元なかよし
  みぶりを聞いて、拾い読みの子、つかえなが   二 目標 遊びの経験を深め楽しさを味わい友だ
  ら読んでいる子、そら読みをしている子ども    ちと仲よくするようにする。
  をす早く見つけて指導する。)         三 学習計画(六時間)
 T こんどは、女の子が男の子に教えてあげな    1 でんしゃごっこ  一時間
  さい。                     2 かくれんぼ    一時間
 C 女の子が読んで男の子に聞かせる。       3 はしれはしれ   一時間
 T 最後にだれか先生に教えてください。      4 そらはたかい   一時間
 C (音読する。数名に読ませる。読みぶりの    5 いいかい、ころがすよ  一時間(本時)
  指導をする。)                 6 テスト、練習
 T きょうはみんな一生懸命に勉強しました。   四 本時の学習
  先生やお友だちの話を聞く時は、どうします    1 目標 遊びの経験について、読んだり、話
  か。                       したり、書いたりして遊びの楽しさを味わっ
 C 静かにします。                 たり経験したりする。
 C 姿勢よくします。               2 本時の教材

 C 顔を見て聞きます。          
 T 先生の顔を見ながらお話を聞くようにしま
  しょう。きょうの勉強はこれで終わりです。
 
いいかい   備考
ころがすよ。  挿し絵はボール遊びを
ほら      しているところ。
 

                                            191〜194
 新出文字 こ・ろ・が・す・よ・ほ          ころがすよ   | | | |
 3 本時の教具                   ほら      |
  語形カード                  
  表 いいかい 裏 | | |    

 4 学習指導の実際

指導過程 学習活動と学習事項  指導(発間と応答)  指導上の留意点、その他 
全体的
な読み
 
1 文章を読む。
○語を読むこと。(音
 声化すること)
○ことばの意味を知
 ること。
 
T (教科膏をひらき)おもしろ
 そうですね。何のことがかいて
 あるか読んでみましょう。
C めいめい読む。
 
・挿し絵は語を読みとるための助
 けとする。
.はじめに、全体で個々に読ませ
 る。
・ひろい読みがあるので二、三名
 指名読みをさせる。
 
分析的
な読み
(意味
充実)
 
2読みとったこと
について話し合う。
〇何が書いてあるか
 がわかること。
3 動作化によって
 語の意味をたしか

 める。
○ことばの意味を理
 解すること。
 (意味充実)
4 カードを使って
 読みをたしかにす
 る。
○語の読みを確かに
 すること。
 
 
T 読んだから、何をしていると
 ころかわかりましたね。
C はい。
C 「いいかい」といってボール
 ころがしをしています。
C いいかい。
 ころがすよ。
 ほら。
 といいました。

T (ポールを示し)だれかにボ
 ールころがしをしてもらいまし
 ょう。(指名三、四名)
T さあ、何といいながらポール
 をころがすか聞いていてくださ
 い。
C (ひとりころがすごとに、何
 といって、ころがしたかをいわ
 せ、そのカードを取らせた)
・文のよみ方がうまいといってほ
 める。
・挿し絵をさしてこの子がいって
 いるんだよという声もあった。
・ふたり組でボールを受けるのも
 こども同士にした。
・いいかいといって、ころがすも
 の、いいかい、ほら、といって
 ころがすものは、どんどん出た
 が、距離が近いので、ころがす
 よ、というのは出にくい。一例
 だけ、相手が照れてなかなかポ
 ールを受ける態勢にならなかっ
 た場合、ころがすよ、が出た。
・いいかい。
 ころがすよ
 ほら 
 と、つづけてい
 う場面がないの
 で、ひとつひと


 つの語について、そのいずれも
 ポールをころがす時に相手に声
 をかけるためのことばであるこ
 とを理解させた。
 
読みを
経験に
よって
うらづ
ける。
 
5 ボール遊びの経
 験について話し合
 う。
〇経験したことを話
 すこと。
○経験したこととこ
 とばを結びつける
 こと。
○話し手のほうを見
 て聞くこと。
6 カードを使って
 経験を話すたすけ
 にする。








7 カードを使って
 文字に親しむ。
○語を分解して文字
 を認知すること。
○文字を組み合わせ
 てことばを作るこ
 と。
T あなたがたもボール遊びをし
 ましたね。その時は何といいま
 したか。
C おーい」といいました。
C 「いくぞ」といいました。
C 「ころがすよ」といいました。
(ころがすよのカードをとる。)
C 「ほらいくぞ」といいました。
 (ほらのカードをとる)
T (カードを示し)おや同じで
 すね。ほかにも、これをいった
 人がいるでしょう。
C 指名して、くりかえしいわせ
 た。児童は「ほら」と、「ころ
 がすよ」の二つを経験と結びつ
 けて選択して答えた。
T このカードが残っています。
 (示して齊読をさせる)
 これをいった人がいますか。
C(三、四名に指名)「いいか
 い」といいました。
T さあ、こんどはカード遊びを
 しましょう。カードをうらの線
 の通りにバラバラに切ります。
T できましたね。読み方のじょ
 うずな人は、これをまたえのよ
 うに並べることができます。
 (教科書と比べてたしかめさせ
 
 る。先生のカードを並べる。
 (指名)
・あらかじめ体育の時間にボール
 遊びをさせておいた。平地でだ
 んだん距離をひろげさせたら、
 近い所ではだまってころがして
 いたが、少しずつ声を出すよう
 になった。
・男子からは比較的いろいろな声
 が出たが女子は少ない。
・「おーい、いくぞ」も、「ほら、
 ころがすよ、いいかい
 も同じ
 役割りを果たすことばであるこ
 とが何となくわかる。
・なるべく多くのものが発言する
 ようにという気持ちで何人も指
 名した。・発言ごとに該当のカ
 ードを持ちあげる。
・いいかいのカードを示す。
・カードを三枚ならべておき、児
 童の発言ごとに、いいかいのカ
 ードを取りあげ、正しくいえた
 ことをほめる。
・隣り同士がボール遊びの経験を
 話し合い、いったことを伝える
 ために各自のカードを示すとい
 うことも考えていたが、話し合
 いが進んだので割愛した。
・話し合いが終わったあと、語カ
 ードを教科書の通りに並べてお
 く
・語カードのうらには一字ずつに
 切りはなすことのできるように
 線をひいておく。
・児童はバラバラ事件といってよ
 ろこぶ。

・はさみは予め用意させておく。
・児童は簡単簡単と口々にいって
 よろこんで並べた。
 
書くこ
とによ
って読
みをた
しかに
する。
8 文字をかく。
○正しい筆順で書く
 こと。
○字形を整えて書く
 こと。
 
T 並べ方がじょうずだから、読
 み方がじょうずなのですね。
 こんどは、じょうずに書いてみ
 ましょう。
 (児童「ほらころがすよ。」を
 書く)
 
・まずはじめに新出文字である
  ヽヽヽヽヽ
 「ころがすよ」を切りはなし組
 み合わせた。
・つぎに同じく新出文字を含む
 「ほら」を扱い、いいかいは最
 後に扱った。
・会体をばらばらにして、組み立
 てるのは時間の都合と不安とで
 次時のれんしゅうに回すことに
 した。
 

 教科書教材を生かして              3 自分の名まえをいう。
  ――5月16日(木) 小川学級――       4 自分を紹介する。
一 単元わたしのなまえ              (ニ) 学習事項
二 目標 名まえを呼び合ったり、読んだり書い    1 語形の異同を識別すること。
 たりしてお互いに親しみを増し、なかよくし、    2 拾い読みでなく語として読むこと。
 学校生活に慣れる。                3 ひらがなを読みまた書くこと。
三 学習内容                    4 自分を紹介すること。
(一) 学習活動                   5 「わたしの名まえは〇〇です。」「きみはだ
 1 名まえを読んだり、呼び合ったりする。      れですか。」「あなたはだれですか。」「わた
 2 各自名まえを書く。               しは○○です。」の文型を身につけること。


                                            195
 6 友だちの名まえを正しく呼ぶこと。       (ニ) 語形カード
 7 友だちと親しむこと。             1 語の異同の識別

四 学習計画 二時間
 1 「わたしのなまえ」を読む。自分の名まえ 
  を書く。自分を紹介する。  一時間(本時) 
 2 「わたしのなまえ」を読む。人の名まえを 
  たずねる。自分を紹介する。 一時間    
五 学習資料(教材)             
(一) 教科書教材               
 

  




                          2 語句の組立

 わたしの なまえ  はやしゆきこ
 あなたの なまえ  うえのせつこ
 ぼ く の なまえ  はたふみお
 き み の なまえ  もりたけし

    


<備考>さし絵                  
 (女の子)…机の上でカードに名まえを書いて   
  いる。                    
 (男の子)…カードを持って見せ合っている。    (三) 板書する語句その他


                                            196


   なかざわまさお。  ┌―わたしの なまえ
 ┌―おとこの こ。   |
 |           └―ぼ く の なまえ
 └―おんなの こ。
   はやしゆきこ    |――――――|

     
 
     
 
  
 
   
(四) 学習する文型
 l わたしのなまえは○○です。
 2 ぼくのなまえは○○です。
 3 わたしは○○です。
 4 ぼくは〇〇です。
六 学習指導の記録(第一時)
 日時 昭和三八年五月十六日(木)小雨
   第二校時
 児童 桜田小学校第一学年四一名(男二二
    名 女 十九名)
 
 
指導過程  学習指導、その他 
1 自己紹介をす
 る。「わたしの
 なまえ」「わた
 しのなまえは○
 ○です。」を印
 象づける。
 板書

 わたしのなま
 え なかざわ
 まさお
 
(黒板の右上のと
 ころに)
 
T こんにちは。
C こんにちは、おはよ
 うございます。
T この先生の名まえを
 知っていますか。
C はい、知っています。
T ほう、知っている。
 それでは「わたしの名
 まえは、何と言います
 か。」
C なかざわ先生です。
T そうです。わたしの
 名まえほ中沢政雄です。
 (といいながら、「わ
 たしのなまえ」「なか
 ざわまさお」と板書す
 る。)
T (板書をさしながら)
 はい、一緒に読んでく
 ださい。
 

                                            197〜204

  C な・か・ざ・わ・ま
 ・さ・お(と拾い読み
 をする。)
T そうでなく、中沢政
 雄と続けて読むので
 す。
Cなかざわまさお(と
 読む。)
 
   ○名まえの勉強
  をすること。
3 学習意欲を盛
 り立てる。






 〇「おとこの
  こ」
  「おんなの
  こ」の語形を
  対比する。



4 「わたしのな
 まえ」を読む。
 〇「うえのせつ
  こ」を読む。
 〇「わたしの名
 
 ように静かになる。や
 がて)
C ああ、女の子だ。
C ひとりは男の子か
 な。
C あ、やっぱり女の子
 だ。(としゃべり出す)
T そうですね、女の子
 です。」といいながら、
 「おんなのこ」と板書)
T (続いて、男の子の
 絵を書く。)
C (口々に)わあ、こ
 んどは男の子だ。(一
 同大書び,活気が出る)
T そら,男の子ですね。
 (といいながら、「お
 とこのこ」と板書)
T (板書した女の子を
 さして)この女の子は
 だれですか。(児童は
 すでに、板書の女の子
 と挿し絵の女の子とを
 
2 学習の目あて
 を決める。




 おんなのこ
 おとこのこ



T 本をあけましょう。
 本をしっかり開きまし
 ょう。このように上か
 ら押えて。(ていねい
 に指導する。」さあ、き
 ょうは何の勉強でしょ
 う。
C なまえの勉強。
T みんなで名まえの勉
 強しましょうね。(と
 言いながら女の子の絵
 を板書し始める。)
C (児童全員、黒板に
 目が集中、水を打った
 
    
  まえは、うえ
  のせつこで
  す。」の文型を
  意識づける。
<坂書>
「わたしのなま
 え」(女の子の
 絵の所に)


○ことばと文字
 を結びつける
 こと。
○そら読みを
 防ぐこと。
 語形カードを
 並べる。
 ぼくの

 わたしの

 はたふみお
 
 一対一で結びつけて
 いる。)
C うえのせつこ。
T だれが「うえのせつ
 こ」さんですか。
C こっちの女の子(と
 左側をさす。)
T 「うえのせつこ」さ
 んは何と言っています
 か
C 自分の名まえは、う
 えのせつこといって
 います。
T 「わたしの名まえは
 うえのせつこです。」と
 言っていますね。(「わ
 たしのなまえ」と坂書)
T 「わたしのなまえ」
 というのは本のどこに
 書いてありますか。指
 で、押えてみてくださ
 い。(机間を囲って、
 
   なまえ
 あなたの


わたしの
 を「わたしの
 なまえ」と読
 んでしまうこ
 とに注意す
 る。
 
 ひとりひとりが正し
 く指示しているかど
 うかを点検、ぼんや
 りしている子に注意
T そこを読んでごら
 んなさい。
 (読み終わると、語形
 カード わたしの
 なまえなどを黒板に
 掲げる。一同何だろう
 と注目する。)
T さあ、こちらをよく
 見てください。この中
 に、わたしのなまえを
 書いてあるカードがあ
 ります。だれか捜して
 ください。
C はい、はい(と手を
 上げる。)(ひとりが、
 「わたし」を指さす。)
T それを読んでごらん
 なさい。
 
    




<板書>
 わたしのなまえ
 わたしの

 前に書いた板書
 とカードを並べ
 て比べる。


 わたしの
 なまえ
 〇そら読みをし
  ないよう特に
  注意して指導
  すること。
 
C 「わたしのなまえ」
T おや、そうですか、
 わたしのなまえと書い
 てありますか。
C ……。(いちばん知
 能の低い子、よくわか
 らない様子)統いて、
 女の子を指名する。
C (「わたしの」を指
 さす。)
T 読んでごらんなさ
 い。
C 「わたしのなまえ」
T なまえとどこに書い
 てありますか。(掲げ
 たカードを右に移動し、
 板書の「わたしの」と
 比べ「わたしの」と読
 むことを確実にする。」
 ここで、わたしの―
 なまえ と続けて読
 ませ、「わたしのなま
 え」は二枚のカードで
 
 






 うえのせつこ
 はたふみお
 うえだせつえ
 〇知覚を正しく
  する。異同を
  識別する。
 
 構成されている。つま
 り「わたしの」と「な
 まえ」と組み立てて、
 「わたしのなまえ」と
 なっていることを明確
 にし、文字を正しく読
 みとることを指導する。
T (語形カードを並べ
 て示し)うえのせつこ
 さんがこの中のどこか
 にいます。だれか、こ
 れですと教えてあげて
 ください。(みんな元
 気よく手をあげる。)
C 三人正しく指示す
 る。
 (児童の学習意欲は充
 実している。全員の視
 力前方に集中)
T 「うえだせつえ」と
 「うえのせつ」の語
 形カードを並べてその
 異同を明確に認識させ
 
    













 はやしゆきえ
 はやしゆきこ
 はたのまきこ
 ○語形の異同を
  識別すること
  
 る。後、教科書の「う
 えのせつこ」を押えさ
 せて読ませる。その間
 机間を回ってひとりひ
 とりす早く確認する。
T それでは、こちらの
 女の子は何をしていま
 すか。(右側の女の子
 を示して)
C 自分で書けないので
 どうやって書くのかな
 あと、隣りの人のを見
 ているのです。
T そう、なかなかよく
 考えましたね。では、
 この女の子の名まえは
 何と言いますか。
C はやしゆきこです。
T (語形カードを掲げ)
 この中に「はやしゆき
 こ」さんがいます。こ
 こへ来て、これですと
  
   〇「ゆきこ」と
  「ゆきえ」の
  異同を明確に
  認識させる。
 はたふみお
 はたふみの
 ○異同を識別す
  ること。
 
 指でさしてください。
C (黒板の前へ出て指
 示する。)
C (誤って)「はやし
 ゆきえ」を指示する。
 さらに二、三名の者に
 指示させる。
T こんどは男の子です。
 こちらの男の子はだれ
 ですか。
C 「はたふみお」です。
T (語形カードを掲げ
 て)はたふみおはどこ
 にいます。
 (前と同様にして、確
 実に読ませる)
 
5 「ぼくのなま
 え」を読む。
<板書>
 ぼくのなまえ
 
T だれの名まえが「は
 たふみお」ですか。
C ぼくの名まえが、は
 たふみおです。
T (「ぼくのなまえ」と
 
    
 (男の子の絵の
 所に)
 
 板書)「ぼくのなまえ」
 というのは本のどこに書
 いてありますか。押えな
 さい。(す早く机間を回
 って、誤っている者を指
 導する。同様にして「も
 りたけし」の読み方を指
 導する。)
    C ぼくのなまえは、も
 りたけしです。
T みなさんは、たいへん
 じょうずに読めました。
 じょうずにおわすること
 もできました。
 今度は、自分の名まえを
 書いてみましょう。
 (カードは事前に配って
 ある。)でそれでは書き
 方をお話します。きょう
 書いた名まえは、おうち
 へ帰って、こんなじょう
 ずに書けましたよと、お
 かあさんに見せて上げま
 しょう。
C (みんなうなづく。)
T (板書して)こんなふ
 うに小さく書いたらどう
 ですか。
 
7 自分の名まえ
 を書く。
 〇字形を整えて
  書くこと。
 〇筆順を正して
  書くこと。
 〇文字の大きさ
  に気をつけて
  書くこと。
 
6 学習したこと
 をまとめる。
 
T それでは、今まで勉
 強したことを、もう一
 度しっかりやってみま
 しょう。「わたしの名
 まえは、うえのせつこ
 です。」というように
 言ってみましょう。
C わたしの名まえは、
 うえのせつこです。
C わたしのなまえは、
 はやしゆきこです。
C ぼくのなまえは、は
 たふみおです。
 
    
<板書>
 はやしゆきこ
  
  
 のような筆順
 の誤りを正す

  
 のように形
 を整えて書く
 
C だめ。
 おかしい。
T カードいっぱいに大
 きく書きましょう。
C (書きたい気持ちが
 湧いてきた様子)書い
 ていいですか。(とさ
 いそくする。一同喜び
 勇んで書き始める。)
T (机間を回って、筆
 順、字形等について個
 別指導する。一般的な
 欠点をす早く看取して
 文字の書き方を指導す
 る。)
T おかあさんに見せる
 のが書けたら、今度は
 おとうさんに見せるの
 を、もう一枚書きまし
 ょう。(机間を回って
 前回同様指導する。)
 
  8 各自、自己紹
 介をする。
 〇「わたしは○
  ○です。」
  「ぼくは〇〇で
  す。」の文型を
  身につけるこ
  と。
 
T みなさん書けました
 ね。では、先生の所へ
 書いたカードを持って
 きて、「わたしは、だ
 れだれです。」「ぼく
 はだれだれです。」と
 教えてください。
C (みんな大喜びで、
 「はい、はい」と手を
 上げる。)
C (教壇の所へ出てき
 て、カードを先生のほ
 うへ向けて)「ぼくの
 名まえは、せきぐちま
 さしです。」C「わた
 しの名まえは、ますや
 まりょうこです。」
T 今度は先生が回って
 いきますから、そばへ
 行ったら、名まえを教
 えてください。
 (言いたくても指名さ
 
    
   れないでうずうずして
 いる児童のために、ま
 た、ひとりひとりに練
 習させるために、机の
 間を通り抜けながら、
 自己紹介を聞く。短時
 間に全部に言わせてし
 まう。)
 (ほとんどの子の顔に
 満足そうな表情が浮か
 んだ。)
 
     いました。
T ずいぶんたくさん勉
 強しましたね。それで
 は、名まえを書いたカ
 ードは、おうちへ帰っ
 ておとうさん、おかあ
 さんに見せてください。
  なくすといけないか
 ら、カードは本の間に
 はさんでおきなさい。
C めいめい本の間には
 さむ。(ところがはさ
 むと教科書を机の中に
 しまい込む子どもが多
 かった)それを見とが
 めて、
T おやおや先生のお話
 をよく聞いていない人
 がいます。いいですか。
 先生は一度だけしかい
 いませんよ。先生は
 
9 学習のまとめ
 ○学習したこと
  を言わせてま
  とめること。
 ○指示を正しく
  聞いて行動す
  ること。
 
T きょう勉強したこと
 は、何と何ですか。
C わたしの名まえを読
 みました。
C ぼくの名まえを読み
 ました。
C 自分の名まえをカー
 ドに書きました。
C わたしの名まえほ、
 上田あき子ですって習
 
         

                                            204

   「カードを本の間には
 さみなさい」といいま
 した。「本をしまいな
 さい」とはいいません
 でした。(ここで、正
 しく聞き取る態度をき
 びしく指導する。改め
 て本を出させてやり直
 す。)
T カードをはさんだら
 本をしまいなさい。そ
 れでは、これで勉強を
 おわります。
  (以上正味四五分)
 

 教材を作りながら
  ――5月31日(金) 多田学級――
 一 単元楽しい遊び
 二 学習の目標 いろいろな遊びの経験を広め、
  遊びの楽しさを味わい、みんなでなかよく楽し
  く遊ぼうとする気持に培う。
 三 学習の内容 この単元では、次に示した学習
  活動を通して、学習事項(態度・披能・ことば
  に閥する事項等)を身につける。
 四 学習資料・教具
  1「しょうがっこうこくご 一ねん上。」
   「ぶらんこ」の作文。
  2 語形カード、短冊カード


学 習 活 動   学   習   事   項 
態 度・技 能  ことばに関する事項 
1 遊びについて話す。
2 遊びについて共同で文章を
 書く。
3 遊びについて書いた文章を
 読む。
 
1 語や文として読むこと。
2 何が書いてあるかを読みと
 ること。
3 共同で文章を書くこと。
4 何を言おうとしているかが
 わかるように話すこと。
 
1 新出文字を読み書きするこ
 と。
2 助詞「へ」拗音「きょ」の
 読み方に憤れること。
3 語の意味を理解すること。
4 基本的な文型を身につける
 こと。
 

五 学習の計画                   5「がっこうごっこ」を読む。   一時聞
 1 いろいろな遊びについて話す。  一時間   六 学習指導
 2 「たまいれ」を読む。      三時閲    1 本時の目標――ぶらんこ遊びの楽しさを味
 3 「ぶらんこ」の文章を作ったり読んだ       わい、ぶらんこ遊びを楽しもうとする気持ち
  りする。         二時間(本時)     に培う。
 4 「てつなぎおに」を読む。    一時間    2 児童とともに作った教材(左掲)


 ぶらんこに のりました。
 えみこさんも のりました。
 ぼくも のりました。
 みんなが のりました。
 いい きもちだった。
     ×
 ぶらんこが ゆれました。
 ちいさく ゆれました。
 だんだんおおき くゆれました。
 まえへ ゆれました。
 うしろへ ゆれました。

   3 教具――語形カード、短冊カード
    ぶらんこ ぶらんこにのりました。
    ぶらんこ えみこさんも のりました。
    ぶらんこに みんなが のりました。
              (以下略す)
   4 教具
         
  
  
                       206

5 学習指導の記録

学習過程
学習事項
 
学習指導       らんなさい。
C (三人読む。)
T これ何と読む字。
 (「ぶ」をさす。)
C ぶ。
C ぶ。
 
1 学習の目的を
 持つ。
 ぶらんこ
 ふらんこ
 ぶらんこに
 ・語の異同を識
  別すること。
 ・語として読む
  こと。

 〇「ぶ」を指導
 する。

T きょうは何の勉強を
 しましょうか。(と言
 いながら、語形カード
 を掲げる。)
C (児童、小声で「ぶ
 らんこ」「ふらんこ」
 「ぶらんこに」などと
 読んで何だろうという
 表情)
T さあ、どの勉強でし
 ょう。あなたここへ来
 てさしてください。
C (N前へ出て「ぶら
 んこ」のカードをさす)
T 読んでみましょう。
 きょうはみんなでぶら
 んこの勉強をしましょ
 うね。さあ、読んでご

 
2 経験を話しな
 がら、文章を作
 る。
 ○経験したこと
  を文に書くこ
  と。
 ○話が文になる
  こと。
 〇「はい」の返
  事の指導をす
  る。

 
T ぶらんこに乗ったこ
 とのある人。
C はい。(と全員挙手
 する。)
T みんな乗りましたね。
 (と言いながら、短冊
 カードに ぶらんこに
 のりました。と書いて
 黒板に下げる。)
T さあ、読んでごらん
 なさい。
C (ふたり読む。)
T いっしょに読んで
 ごらんなさい。(全員
 読む)
                                   207









 ○経験したこと
  を文に書くこ
  と。


 〇語や文として
  読むこと。
 
T 君はぶらんこに乗り
 ましたか。(順に三、
 四人に聞く。)
C うん。はい。などさ
 まざま。(返事のしか
 たを指導する。)
T あなたも乗りました
 か。あなたの名まえは。
C 金津えみこ。
T では、そう書きまし
 ょうね。(えみこさん
 ものりました。
と書い
 て短冊カードを黒板に
 下げる。)
T これが読める人。
C えみこさんものりま
 した。(と読む。語や
 文として読んでいる。
 三人に読ませる。)
T あなたは乗りました
 か。(あなたは、あな
 たは、と順々に聞いて

 
 


 ○経験を文に書
  くこと。
 
 いく)
C 乗った。ぼくも乗
 った。ぼくも乗った。
T みんなが乗ったので
 すね。では、書きまし
 ょうね。(と言って、
 ぼくも のりました。
 みんなが のりました。
 と短冊カードに書いて
 示す。)
T これを読んでごらん
 なさい。どんなことが
 わかりますか。
C みんなぶらんこに乗
 ったの。
T 三人に読ませる。ひ
 とりが、「みんなのり
 ました。」と助詞「が」
 を読み落とす。一字一
 字はっきりと読ませた
 後続けて読ませても相
 変わらず「が」を読み
                                      208
   落とす。   








―――――――――
4 経験したこと
 を文にまとめて
 ノートに書く。
 ○筆順を正しく
  書くこと。
 ○字形を整えて
  書くこと。
 
 て掲示する。)
T では、また始めから
 読んでもらいましょう。
 (三人指名して読ませ
 る。)ぶらんこに乗る
 とどんな気持ちになり
 ますか。
C いい気持ちになりま
 した。
――――――――――――
T では、ノートに書き
 ましょう。わたしもぼ
 くもみんな乗ったので
 すね。だから、「ぼく
 ものりました。」女の
 子は「わたしものりま
 した。」と書きましょ
 う。
C (一生懸命書き始め
 る。)
T (書いている間に机
 間を回ってす早く書写
 の状況をつかむ。」先生
3 文章にまとめ
 る。
 「ぶらんこにの
 りました。
 えみこさんもの
 りました。
 ぼくものりまし
 た。
 みんながのりま
 した。
 いいきもちだっ
 た。」
 ・基本的な文型
  を学習するこ
  と。
 
T 始めからみんな読ん
 でみましょう。どんな
 ことがわかりますか。
 (数人の児童に全体を
 読ませる。)
C えみこさんとみんな
 がぶらんこに乗りまし
 た。
C みんながぶらんこに
 乗りました。
T みんながぶらんこに
 乗りましたね。乗った
 時どんな気持ちでした
 か。
C (みんなが、いい気
 持ちだったと答える。」
T それでは、それも書
 いておきましょう。
 (カードに いいき
 もちだった。と書いて
 
                                   209
 <板書>
 ×
 あたし…わ
 ×
 …も
 
 が回って行ったら、こ
 う書いた人もいます。
 (「あたし」と板書。)
 こう書いた人は「わた
 し」と直してください。
 それから「わたしも」
 の「も」をこう書いた
 人もいます。(筆順の
 指導)
T その次には、「みん
 ながのりました。」と
 書きましょう。書けな
 い人は、これ(カード)
 を見て背きなさい。
 (机間を回りながら書
 き方を指導し、ほめて
 やる。)
 
    を身につける
  こと。
















 ・修飾語を持った
  文型を学習する
  こと。



  
 気持ちがよかったの。
C ゆれている時がいい
 でした。
T ぶらんこが遥れてい
 る時が気持ちがよかっ
 たのですね。ではそう
 書きましょう。(と話
 しながら ぶらんこ
 が ゆれました。 と
 カードに書いて黒板に
 下げる。)
T 読んでみましょう。
C (口々に読んでいる。)
 (三人に読ませてから
 全員に自由に読ませ
 る。)
T 始めはどんなふうに
 遥れましたか。
C 軽く遥れました。
C 少し遥れました。
C ぶらんこは後ろへ前
 へ揺れていい気持ちで

 
5 話し合いなが
 ら経験したこと
 を文章に書く。
 ・基本的な文型
T 次の勉強をしましょ
 う。みんなぶらんこに
 乗って気持ちがよかっ
 たですね。どんな時に
 
                                     210
・「ちいさく」
 の意味を理解
 すること。
   
 した。
T いい気持ちでしたね。
 (ぶらんこに子どもが
  















 〇「だんだん」
  「おおきく」
  を理解する
  こと。
  
 しょう。(ゆっくり少
 し揺れる。そうっと揺
 れたことをこう言いま
 すよ。(ちいさくゆれ
 ました。とカードに書
 いて掲げる。)
T さ、これを読んでご
 らんなさい。(三人ほ
 ど読ませる。)
T ぶらんこは、始め小
 さく遥れましたね、そ
 れからどうなりました。
 (ぶらんこを大きく振
 ってみせる。)
C だんだん速くなって、
 こわくなるの。
T それでは、また書き
 ましょう。( だんだ
 ん おおきく ゆれま
 した。  と書いて掲
 げる。)(数人に読ませ

  
 
   乗っている絵を切り抜
 き、紐を付けたものを
 出して振って見せる。」
 始めこうだったので
 
                                   211
















 〇助詞「へ」
  の読み方を
  指導する。
 
 る。)
T ぶらんこは、始め小
 さく、それからだんだ
 ん大きく揺れました。
 始めはどういうふうに
 揺れましたか。
C 前。
T (まえへゆれまし
 た。と掲げて、数人読
 ませてから)ずっと
 前へ揺れてそれからど
 うしましたか。
C 後ろへ揺れました。
 (うしろへ ゆれまし
 た。と書いて掲げる。
 (読む。)
T こちらを見てくださ
 い。(「へ」をさす。」こ
 の字は前に何と習いま
 したか。へいきだよの
 「へ」と読みましたね。
 ここでは、「マエへ
 
     と読んだのではおかし
 い、へんでしょう。こ
 こでは「まええ」と読
 みましょう。
C (数人読む。)
 
6 文章をまとめ
 て読む。
 ・「おおきくゆ
  れました」と
  書く。
 ・おうきくとお
  おきくを比べ
  て指導する。
 
T それでは、みんなで
 作った作文を、始めか
 ら終わりまで、ずっと
 読んでみましょう。
 (三人に読ませる。読
 んだあとでその読みと
 った内容、確認した内
 容について話し合う。
T ぶらんこが揺れて気
 持ちがよかったのです
 ね。小さく揺れたのと
 大きく揺れたのではど
 ちらが気持ちがよかっ
 たですか。
C 大きく揺れたほうで
 す。
                                   212
  T では、大きく揺れま
 したと書きましょう。
(机間を回りながら個別
 指導をする。
 筆順の違い、かなづか
 いの違いなどをす早く
 見つけて指導する。)
T 大きくを、「おうき
 く」と書いた人がいま
 す。(といいながら板
 書。その違いを発見さ
 せて、さらに正しく書
 せる。)
 
  7 まとめ  T きょうは何の勉強を
 しましたか。
C ぶらんこ。
C ぶらんこの勉強です。
C いい気持ちだった。
C ぶらんこに乗ってい
 い気持ちだった勉強で
 す。
T それではもう一度、
 読んで終わりにしまし
 ょう。
  (以上四〇分間)
 


   二 入門期聞くこと、話すことの学習指導

1 入門期の聞くこと、話すことの学習指導の考え方と方法
 話し、聞く場面を考えて ――話しやすい、間きやすい場――
 気軽に話せる。安心して話せる。楽に話せる。何でも話したくなる。聞いてもらいたくなる。
落ち着いて話を聞くことができる。固くならないで話をきくことができる。つまり、語しやす
い、聞きやすい場を作ることが、入門期の聞く、話す学習指導の基礎である。場の緊張関係が
強すぎると話しができない。そこで次の点に注意する。                   213
(1) 先生の態度――何といっても場の中心は先生であるから、先生はゆったりとした、落着い
 た態度、児童に親しまれるような態度、児童が話しかけたくなるような、先生に近づきたい
 ような気持ちを起こさせる態度をとることが大事である。先生が落着きがなかったり、早口
 だったり、堅い顔をしていたりするといい場面ができない。しかも、児童の不安、落着かな
 い、あるいは、欲求、あせり、いらいらなどを敏感に捉え感ずることがたいせつである。
  また、先生の教室での位置。先生は坐っている。児童の中にいる。先生を中心にして児童
 が集団生活をする。机間を回るなどその時その時に応じて先生の位置を考える。
(2) 先生の話しじょうず、聞きじょうず。――児童を引きつける話、児童の心に訴えることば、
 話の間、速さ、抑揚などに気をつける。話し始めには必ずちょっと間を置く。児童を見渡し
 てから話し始める。児童の注意を集中してから話す。がやがやして落着かない中で話しては
 ならない。児童の注意を一点に集中するくふうをする。先生の顔に、先生の手に、先生の口
 に、黒板の一点に(絵をかく。ことばを書く。黒板に書いてあるものを押える、さすなど)
 児童の注意を集中させておいて話す。聞く態度ができないうちは話さない。
  先生は何でも聞いてやる。児童の話には何でも耳を傾ける。興味を示す。反応してやる。
 取り上げてやる。よくできたものはほめてやる。努力を認めてやる。発言を認めてやる。
  先生の視線は、ひとりひとりの児童に、くまなく絶えず注いでいる。普通、教室の前から
 三分二ぐらいの位置に注がれていることが多い。一ばん前、前の左右、一ばん後ろ、後ろの
 左右などは目が届きにくい。始めのうちは、側へ行って間いてやる。話す児童の両肩を軽く
 押えて話させる。話せない児童は、手を取ってやって話させる。これは効果がある。     214
(3) 小さな場から大きな場へ――教室では、児童は先生に向かって話す。一対一の話である。
 だから、先生と児童との距離が短いほどいい。そのような先生との会話からしだいに、児童
 と児童との会話へと発展させる。始めは、隣りの者と話させる。相談させる。やがて、三、
 四人で相談したり、話したりさせる。始めから学級会体に向かって話すことは無理である。
 教壇の前へ出て全児童に話させようとしても、児童は先生に向かって話す。先生が話し手の
 後ろにいる場合、わざわざ頭だけ後ろへ回して先生に話す。
(4) 楽しい場を――話すことを楽しむ。一般に声が小さい。学級全体に聞こえるような話はな
 かなかできない。また、話し誤ることも多い。先生の問いに正しく答えられない場合もある。
 こんな場合に、大きな声で話すように強調し過ぎたり、誤りをとがめたり、笑ったりしては
 ならない。特に、世話好き、おせっかいな児童がいたりして、話した児童に、引け目を感じ
 させたり、恥ずかしがらせたりすることがよくある。すると、口をつぐんでしまう。口を開
 かない、ますます小さな声で話すようになってしまう。話したがらない児童を作ってしまう。
 特に注意を要する。
 興味ある話題を捉えて ――語したがること、聞きたがること――
 話し、聞く場合に、話したがること、聞きたがることと、話さなければならないこと、聞か
なければならないことがある。いわゆる関心、興味のある話題と、必要な話願である。興味・
関心のない話題では、楽しい活発な聞く話す活動は行なわれない。特に話す話題は、それにつ
いてよく理解しているものを取り上げる。つまり、児童の能力に合った話題が好ましい。聞く
話題は、それについて知りたがっている、何らかの知識情報が得られるものがよい。      215
 動物の話、乗物の話、テレビの話、学校ごっこ、買物ごっこ、電話ごっこ、友だちの話、家
族の話、兄弟の話、おもちゃの話、絵本の語、童話、昔話などの知識、きのうのこと、日曜日
のこと、お使いに行ったこと、動物園へ行ったこと、海へ行ったことなどの経験情報が得られ
るものがよい。
 要するに、児童が一生懸命に聞く話題・話したがる話題を選ぶ。かっぱっな聞く、話す活動
が行なわれる話題、それによって、なんらかの知誠や情報が得られ、児童の人間性を培う内容
を持った話題、聞く態度、技能、話す態度、技能が養われる話題を選ぶとよい。
 児童の実態に即して ――集団生活に適応する――
 児童の聞く、話す生活の実態、間く話す能力の実態については、第二章にくわしく述べてあ
る。人の話を聞こうとしない児童、落ち着いて、静かに話を聞かない児童、すぐに話にあきて
いたずらをする児童、人の話を終わりまで聞けない児童、先生や友だちの話の腰を折る児童、
内気で話せない児童、声の非常に小さい児童、聞かれるとだまってしまい、また、泣き出す児
童、先生の側へ寄って来てすがりつくようにして話す児童、問いに対して身振りや動作で答え、
ことばで反応できない児童、話の仲間にはいれない児童、はいはい手をあげるが聞くと答えら
れない児童など、児童の聞く話す生活はさまざまである。雑多である。こうした実態をじゅう
ぶんに認識し、ひとりひとりの特徴をよく知って指導することがたいせつである。
 話し手の顔を見ながら聞く。物音を立てないようにして聞く。人の話は終わりまで聞く、身
振りや動作のかわりにことばを使う。大きな声で話す。はっきりとした発音で話す。聞かれた
ら答える。人の話のじゃまをしないなど、集団生活に必要な基礎的な聞く話す態度を、実態に  216
即しながら指導する。そして、集団生活に慣れるようにする。
 聞く、話す能力の発達に応じて このころの児童の聞く、話す能力はいろいろな捉え方が
できる。どの程度の長さの話を聞くことができるか。どの程度の話が理解できるか、どの程度
の条件を含んだ話を聞くことができるか、どんな聞き誤りをするか、つまり、話しに対してど
のように反応し行動することができるか、という立場からみる。
 児童の話す文型にはどんなものがあるか、それがどう発達するか、どんな順序、組み立てを
持った話をするか、どんな構えをもって話すか、つまり、児童の思考の発達、認識の発達はど
うなっているか、という立場からみる。児童は、どんな発音をしているか、どんなことばを使
っているか、どんなことばが話せるか、どの程度正確に話せるか。どんな話し誤りをするか、
つまり、言語発達はどうなっているかという立場からみる。
 このような聞く、話す能力の実態を捉え、それに応じた指導をする。その実態については第
二章に述べてある。また、具体的な指導法については後に述べる。
 聞く、話すプログラムに従って ――段階を踏んだ学習を――
 指示に従って行動することは、入門期の聞く学習では特にたいせつである。そこで、指示も
初めから複雑なものを、雑然と系統もなく与えていたのでは、適切な聞く指導はできない。そ
こで、指示も段階的に与えて、それに確実に反応できるようにする。適応できるようにする。
つまり、@一度の指示の内容を一事項に限る。「立ちなさい」「本をしまいなさい」「手をつ
なぎなさい」など。A一度の指示の内容を二事項に限る。「立ったら、いすを机の下に入れな  217
さい」「大きい丸を一つと小さい丸を二つ書きなさい」「本を読んだら、ノートに書きなさい」
など。B一度の指示の内容を三事項に限る。「丸には赤い色、四角には青い色、三角には黄色
を塗りなさい」「自分の絵をここから持っていって、後の黒板にはり、その下に名札をつけな
さい」など。こうした指示に確実に適応できるように段階を迫って指導する。
 話す場合でも、たとえば経験を話す場合には、経験を話す文型の発達に応じたプログラムを
作って話す指導をする。@テレビを見ました。Aおとうさんとおかあさんとテレビを見ました。
Bぼくは、おとうさんとおかあさんとテレビを見ましたのようなプログラム、@動物園へ行き
ました。Aきのう動物園へ行きました。Bきのう、おとうさんと動物園へ行きました。Cきの
う、おとうさんと動物園へ行ってライオンを見ました。のようなプログラム。@鉄棒・ブラン
コ(一語文)Aブランコに乗ったの。Bブランコに乗りました。のようなプログラム。
 このように、話すことがら、経験に応じたプログラムを考え、それに従って指導する。こう
して一歩一歩確実に指導する。つまり、児童の思考の発達、認識の発達に応じたプログラムを
作って指導する。これはことばの形式の指導ではない。ことばによる思考の指導、認識の指導
である。具体的な内容、方法は後に述べてある。
 教師のことば ――発問・指示・説明――
 学習指導の過程で教師は児童に質問をする。課題を与える。指示をする。説明をすることが
多い。これらの語は、まず第一に、これまで述べてきた聞く、話す指導の考え方、条件・方法
等に合っているものでなければならない。その上に立って次の点に注意を払う必要がある。
 @発音、発声を正しくすること。A児童によくわかる適切なことばを使うこと、B正しい文  218
型で話すこと、C短く区切って話すこと、D明確に話すこと。だらだらと長い話、言おうとす
ることがはっきりしない語、まわりくどい話などは極力避ける。親切心からつい長く、くどい
話になりやすいが、児童はそういう話を間き取る能力を持っていないのであるから注意する。
E抽象的なことばや言い方をしないこと。「どう思うか。」「何が書いてあるか。」などには
答えられない。F話すことがらが単純であること、Gゆっくりと話すこと。早口は避ける。落
ち着いた感じを与える。Hあまり大きな声を出さないこと。教室の隅々まではっきり聞こえる
程度などは、一般的に注意すべきことである。
 発問には、児童に課題を与えるために問いかけることば(「きのうはおかあさんとどこへ行き
ましたか」「ぶらんこに乗るとどんな気持ちがしますか、読んでごらんなさい。」など)と、学
習活動をしたあとで、その学習の効果がどうだったかを知ったり、評価したりするために問い
かけることば(「かけっこをして一等になったのはだれですか。」「はるおは何と言ってボールを
投げましたか」など)とがある。
 この発問は、児童の認識、思考と深い関係を持っている。たとえば、「いつ、だれとお使い
に行きましたか」のような問いは、児童にお使いについて考える観点を与える。つまり、お使
いという経験について、いつ、どこという二つの点について考えた上で答えることになる。し
たがって、児童の能力の発達に応じた発問をくふうする。複雑な発問は避ける。始めは一語文
で答えられるものから段々「○○です」「○○と○○です。」「○○したのは、○○です。」とい
うように段階的に指導する。児童は教師の発問に応じた答え方をする。「いつ、どこへ行った
の。」と開けば、児童は「お使いに行ったの。」と答える。「〇〇へ行きましたか。」と問えば「〇  219
〇へ行きました。」と答える。この発間のことばは、児童にわかることを限度として簡潔なほう
がよい。始めのうちは一度にたくさんのことを答える必要のあるような発問は避ける。一問一
答でもよい。児童に答えやすい発問をする。
 特に指示については、実態調査および指導の実際の項を参照されたい。

2 入門期の聞くこと話すことの学習指導の研究と実践
 入門期における話しことばの文型(学習基本文型)の発達とその指導 話すことの指導
に当たっては、@まず話しことばの文型とその発達を知る。A次には、その発達に応じて学習
のプログラムを編成する。Bプログラムに従って、その文型を指導するのに必要な言語経験を
考える。Cその言語経験をさせる機会を作る。そうして、話し方を系統的、段階的に指導する。
 このプログラムは、次のように編成する。
@ 単語(一語文)から文へ。――「きのうどんなことをして遊びましたか。」の問いに対し
 て、「おにごっこ」「学校ごっこ」「なわとび」から、「かけっこしたの」「すもうをとり
 ました。」「○と○と〇とすもうをとりました。」「ぼくと○と○とすもうをとりました。」
 というように、児童が実際に使う文型の発達を押える。
A 文の接続の発達に応じて―関係判断の発達に応じて、文型を指導する。たとえば(1)「本
 を読みました。本を読んでから遊びました。」(2)「朝起きました。すこしたってからご飯を食
 べました。」(3)「学校で電車ごっこをしました。それから、国語の勉強をしました。」というよ
 うに、児童の関係的思考は発達する。これは、文型の発達でもある。こうした発達を見通し   220
 て指導する。
B 児童の自己意識を中心とする認識・思考の発達に応じて、――児童は学校で電車ごっこを
 する。そのあとで、電車ごっこの話をする。「電車ごっこをしました。」「講堂で電車ごっ
 こ をしました。」「春雄さんと電車ごっこをしました。」「春雄さんと秋男君と花子さん
 と電車ごっこをしました。」「春雄さんと花子さんと僕とで電車ごっこをしました。」「僕と
 春雄さんと花子さんと電車ごっこをしました。」「僕は春雄さんと花子さんと電事ごっこを
 しました。」 というような文型の発達・自己意識の発達が見られる。この発達に応じてプロ
 グラムを編成する。
C 生活経験に応じて――学習基本文型は、児童の生活経験とその言語化の目的に応じて変化
 する。児童の話は多くの場合、日曜日には何をした、どこへ行ったという話、動物園へ行っ
 たという話、お花見に行ったという話、買物に行ったという話、おとうさんがどうした、お
 かあさんがどうしたという話など、いわゆる経験情報である。経験情報の交換が中心である。
 したがって、文型も情報を交換するのに必要な文型が発達する。そこで、文型の発達とそれ
 に応ずる生活経験とを系統的発達的にプログラム化する。経験情報の文型は、次の要素を含
 むものである。
 ア だれが行った。だれがした。
 イ どこへ行った。何をした。
 ウ だれと行った。だれとした。
 エ いつ行った。いつした。                              221
 オ それからどうした。どこでした。
 たとえば、「動物園へ行きました。」「おとうさんと動物園へ行きました。」「日曜日にお
 とうさんと動物園へ行きました。」「動物園で、ライオンとぞうときりんを見ました。」「日
 曜日におとうさんと動物園へ行ってライオンを見ました。」「ライオンが寝ていました。」
 というような文型が発達的に現われる。それを整理して、効果的な文型を指導する。
  したがって、どんな生活経験をどんな順序に配列するかが重要な問題である。従来、経験
 中心では系統がない、発達に応じられないなどというのは、こうした児童の思考、認識の発
 達、話す、開く技能の発達を実態的に押えて、それに応ずる経験の配列を考えないからであ
 る。
 入門期における話しことばの文型指導の実践記録(話すこと)
        ―4月9日〜5月30日、伴学級―
 一、四月九日−一語文から文へー          〇「うんていもあったよ。」
 「学校めぐり」のあと              * 一語文から「(なに)もあったよ。」の文型
 〔発開〕「どんな遊び道具がありましたか。」    への発展はごく自然な形で行なわれた。
  〇「ジャングル」               二、四月一二日−過去形の文末−
  〇「鉄棒」                   「楽しい遊び」のあと
  〇「ぶらんこ」                1〔発間〕「どんなことをして遊びましたか。」
  〇「砂場もあったよ。」              ○「ジャングル」


                                            222
 〇「鉄棒」                   〔発聞〕「きのうのことをお友だちに知らせてあ
 〇「あのね、ぶらんこに乗ったの。」        げましょう。どんなことをしたか話してくださ
 〇「ジャングルに乗りました。」          い。」
2〔文型〕                    ○「あのね、ぼくきのうね、おともだちのうちへ
 ア 一語文                    行ってね、戦争ごっこやろうと思ったけどね、
 イ 「あのね、(なに)に(どう)したの。」    やめてうちで遊んだの。」
 ウ 「(なに)に(どう)しました。」      ○「きのう、さいしょ東京タワーへ行って、その
 児童が経験を話す時には、文末は過去形になっ    つぎにバスで日比谷公周へいって噴水見てね、
ているのが普通である。この場合、指導しなけれ    それから宮城にいったの。おわり。」
ば「……したの。」というように語尾に「の」を   ○「きのう、さなえちゃんとおかあさんと航空博
つけるのでこの「の」をとるためには「ました。」    覧会に行ってね、そのえちゃんちに行こうと思
を使わせる。「……した。」という語尾でも、意    ったんだけどね、おにんぎょうさんごっこして
味は十分通じるが、それではこのころの児童とし    何かした。たくさん遊びごっこしたの。」
ては不安定なので、「……したの。」と「の」を   ○「きのう、うちでケーキと紅茶とかしわもちと
つけるのであるから、 そのかわりに「……まし    みかんのかんづめとたべてからね、さかなつり
た。」という文型を与える。             にいきました。」
 この場合、教師の、正しい文型による発問で、   〔文型〕経験を話すことに慣れ、喜んでいろいろ
児童は誘導され、「……ました。」という文型が    なことをたくさん話すようになった。
身につくようになる。                 この文型は「……して、……して、……し
三、4月15日−判断の整理−            たの。」「……して、……してそれから……


                                            223
したの。」のように、「ね」または「それから」で   @ この二つの文型で約三〇名の児童が発言をし
つないだ文型である。                それぞれの経験を話している。児童は、話をす
 このように一つのセンテンスで長く続けて話す    る型がわかったために、安心して発表している。
のはわかりにくいので、「どこできらせるか。」と   A 友だちの発表を聞き、自分の経験と照らし合
いうことを考えなければならない。「少しずつ話    わせて判断し、友だちの経験と異なったもの
してごらん。」という指導により、判断を整理して    を、多くの経験の中から切りとって発表してい
話すようにさせることが必要である。         る。ここに児童の思考が働き、同時に水上動物
「……しました。それから……しました。」とい    園へ行ったことの意味充実がなされている。
うように短く切って話させるのも一つの方法であ   〔発聞〕「こんどは、見ない人にも、さるのよう
る。                        すはどうだったか、かめはどんなふうにしてい
四、5月2日−文型の発連−             たか、わかるように話してあげましょう。」
〔発間〕「遠足に行かなかった友たちに、遠足の    ○「かめが泳いでいました。」
 お話をしてあげましょう。」            ○「水上動物園で黒鳥が泳いでいました。」
 ○「かめを見ました。」              ○「とどが、石の上に寝ていました」
 ○「水上動物園で、とどを見ました。」      〔文型〕
 ○「水上動物園で、海へびを見ました。」      ア 「(なに)が(どう)しました。」(A1)
 ○「水上動物園で、電気うなぎを見ました。」   
〔文型〕                      イ 「(どこ)で(なに)が(どう)しました。」(A2)
 ア 「(なに)を(どう)しました。」      
 イ 「(どこ)で(なに)を(どう)しました。」    ウ 「(なに)が(どこ)で(どう)しました。」(B)


                                            224
(1) 14名の発表の中A1の文型が6名、A2が3名    〇「山を作ります。」
 Bは5名である。                  〇「山を作って、トンネルを作ります。」
(2) A1の文型の発展したものがA2であり、A1で話
   〇「ぼく(わたし)は山を作って道を作ります。」
 していた児童も、すぐ気がついてA2の文型を使う   〇「山を作って、川を作って、橋を作ります。」
 ようになった。                  〇「山と橋を作ります。」
(3) 文型のA2とBを比較すると、BはA2の倒置法  
  〇「山と道と川を作ります。」
 になっている。これは、判断の基準がどこにあ    〇「山を二つ作って橋をかけます。」
 るか、ということの違いであり、何が強く印象   〔文型〕
 づけられているかということがこれによってわ    A1 「(なに)を(どう)します。」
 かる。                      A2 「(なに)を(どう)して、(なに)を
<参考>                         (どう)します。」
 自己意識の発展は、つぎのような文型の発達に    A3 「(なに)を(どう)して、(なに))を
よって明らかになっている。               (どう)して、(なに)を(どう))します。」
 1 だれと何をした。               A4 「ぼく(わたし)は、(なに)を(どう)
 2 だれとだれとぼくと何をした。           して(なに)を(どう)します。」
 3 ぼくとだれとだれと何をした。         B1 「(なに)と(なに)を(どう)します。」
 4 ぼくは、だれとだれと何をした。        B2 「(なに)と(なに)と(なに)を
五、5月30日−文型の整理−              (どう)します。」
〔発閉〕「これから砂場へ遊びに行きましょう。   (1) 文型A1からA3までは、だんだん複雑化し、
 砂場で何を作りますか。」             A4では、他と区別するという気持ちが働いて、自


                                            225
 己意識もはっきり出ている。           4 文型(判断の形式)は、このように発達する。
(2) 文型Aの発表が10数人つづいた後で、    
@ 何をどうした。
 B1、B2の文型による発表がされた。ここでは思    A どこでどうした。
 考が整理され、文型の省略が行なわれている。    B どこで何をどうした。
六、結び                      C どこで何がどうした。
1 ここに引用した話しことばの文型は        D 何がどこでどうした。
 場面―教室                   5 話すことの指導に当たっては、このように判
 対象―先生、友だち                断によって、多くの経験の中から、短いセンテ
 題材―経験したこと、これから経験しよう      ンスであっても、正確にひとつひとつの経験を
    ということ。                きりとってくることが大切である。
 の話し合いの集録である。            6 これと同時に、子どもの豊かな経験を、いく
2 話しことばの文型の指導に当たっては、文型    つもいくつもつなぎあわせながら、話題の内容
 をひき出すための場面構成がまず考えられなけ    をひろげていかせる指導も必要である。それに
 ればならない。                  は、小さなセンテンスをつなぎあわせる。「そ
3 文型は判断の形式である。児童の恩考に即し    して」「それから」「そしたら」などのことば
 た文型を見通して経験を与え、学習活動と文型    を与えることも一つの方法である。
 との結びつきに注目しなければならない。した   7 指導にあたっては、こどもの実態を十分に
 がって、教師の発問は、どういう経験をとりあ    考え、話しあいの中で出てきた、より優れた文
 げるか。ということが、十分考慮されなければ    型をとりあげ、ほめたり、板書したりすること
 ならない。                    によって指導することが望ましい。


                                            226
入門期における教師の指示のプログラムとその指導の記録(聞くこと)
       ――4月6日〜4月15日、 小高学級――
一、4月6日(土)第1日入学式           声、二、三名大きな声の児童をほめたら、大き
〔1 指示〕                    な声がいいとわかった。
(1) 名まえをよばれたら、すわったままで「はい」
 二、4月8日(月)第2日ならびましょう
 とへんじをしなさい。              〔1 指示〕
(2) 名まえをいわれたらなんといいますか。いっ 
 (1) 講堂にいきます。立ったら机の中にいすをい
 しょにいいなさい。                れてとなりの人と手をつなぎなさい。
(3) こんどは、ひとりひとり名まえを呼びます。 
 (2) 一のかわから順に廊下にならぴなさい。
 呼ばれた人はへんじをしなさい。         (3) 男の子は自い旗のところにならぴなさい。
(4) こんどは講堂にいきます。立ったらいすを机
  (4) 女の子は赤い旗のところにならびなさい。
 の中に入れなさい。               〔2 解説〕
(5) となりの人と手をつなぎなさい。     
  一指示一事項
(6) 一のかわの人は、ならんで廊下に出て待って
   前日と同じことなので、すこしもまごつかなか
 いなさい。                   った。
〔2 解説〕                   一指示二事項を加える。
一指示一事項                   三、4月9日(火)第3日なまえをかく
 幼稚園出身者が大部分なので           〔1指示〕
 〔未経験者男3名(6%弱)女1名(2%弱)〕  (1) じぶんの名まえをかきましょう。クレバスを
 へんじはスムースにできた。大きな声、小さな    出して机の右のほうにおきましょう。


                                            227
(2) 名まえをかく紙をいただいたら、机の上にた
  (3) 廊下をあるく時は、静かに右がわをあるきま
 てにおきはさい。                 す。
(3) 男の子は黒で、女の子は赤で、じぶんの名ま
  〔2 解説〕
 えを書きます。小さすぎないように、大きくか   一指示三事項
 きなさい。                    前二回の経験により、まことにスムースにいっ
〔2 解説〕                     た。
一指示二事項                   一指示二事項
 机間を回って指示にしたがって作業したかどう    あるき方の訓練ができていないので、足おとを
 かをみる。                    たてないように注意した。
 (左右のわからない者が一四、五名)       五、4月11日(木)第5日絵に名まえをつける
 たてといっただけで長い方をたてにおいた。    〔1指示〕
 男児に一名ブルーで書いた者あり。         みなさんの名まえが、ここにあります。(前日
 (教師の名ふだを示す。)            書いたもの――黒板の下にとめてある)これを、
 名まえのまわりに花をかざった者も三名いた。   じぶんの絵のところにはりましょう。
四、4月10日(水)第4日学校めぐり       (1) 名まえをよばれたら、はいといって、いすを
〔1指示〕                     机の中にいれて立ちなさい。
(1) これから、学校の中をまわって、どこに何が
  (2) それから、じぶんの名ふだをとって、画びょ
 あるか見てきます。                うを机の上において、じぶんの絵のところへも
(2) 机の中にいすをいれて、となりの人と手をつ
   っていきなさい。
 ないで一のかわから順に廊下にならびなさい。   (3)石坂さんの絵はこれです。こうして名ふだを


                                            228
 さげればすぐ石坂さんの絵だとわかりますね。   (1) やくそくをまもりましょう。
(4) こんどは高橋さんは、名まえをよばれたら、   (2) まわりの人は、しっかり手をつなぎます。
 立っていすを机の中にいれてから、黒板のとこ   (3) ねことねずみは、まわりの人をとびこしては
 ろにいって、名ふだをとります。画びょうはあ    いけません。
 ぶないから、先生の机の上にころがらないよう   (4) つかまったら、ほかの人とかわります。
 において、じぶんの絵のところへ持っていきな   〔2解説〕
 さい。                      一指示一事項をいくつかまとめて一つの行動、
〔2 解説〕                   作業などをするように指示する。
 一指示三事項、一指示四事項、指示がやや複雑   七、4月13日(土) もののかたち
になってくる。教師は明確に、ゆっくり指示す    〔1指示〕
る。児童は、指示を聞いたらすぐ行動を起こさな   (1) さんかくは赤、四かくはきいろ、まるはみど
 いで、行動の順序を具体的に考えさせる。      りにぬりなさい。
六、4月12日(金) 第6日           (2) あしたは日曜日で、学校はおやすみです。に
      たのしくあそぴましょう         ちようびにあったことを、月ようびにおはなし
〔1 指示〕                    してもらいます。
 ○ぶらんこにのりましょう            〔2解説〕
(1) 男の人は右、女の人は左に順番にならぴなさ   一指示三事項
 い。                       全部できた者     40/51 (90%)
(2) 二〇、かぞえたら、かわりなさい。        一つまちがえた者    2/51  (4%)
 ○ねことねずみ                  二つまちがえた者    2/51  (4%)


                                            229
 三つまちがえた者    1/51  (2%)      る。
 大部分の児童は、一指示三事項に従える。      〇ことばは「……しなさい」という。
八、まとめ                     〇指示以外のことをした時はとりあげない。
1 指示にしたがって行動することは、入門期で   5 指示に反応したことを評価する。
 は特にだいじである。               〇指示したとおりか。
2 指示は不安を与えないで反応するように、プ    〇どのくらいの指示に反応するかをたしかめな
 ログラム(系統学習)をくむこと。簡単なもの     がら、しっかり指示にしたがうようにする。
 から徐々に複雑なものへ。             〇反応をみながら、仕事を進めていくこと。
3 全体をはっきりさせて指示する(しごとの全      (作業差が大きくならないよう)
 貌を知らせることがだいじである。)       6 一年は同時に三つぐらいの指示にも反応でき
4 指示は的確に。                 る。
 ○ことばと、あらわす意味とを的確に結びつけ   

     話すことの学習指導記録(1)――井上学級――
一 4月30日――経験情報             に着替えた。
(一) 話題(お休みにしたこと)と目的       G(男) 朝ご飯を食べてちょっと休んで、ふす
  きのうのお休みにはどんなことをしましたか    ま公園へ行って遊びました。帰って自由が丘へ
 みんなでお話しましょう。             行って、模型屋へ行って、飛行機の模型を買っ
(二) 児童の話                  て、それから模型屋から帰ってタクシーに乗っ
O(男) 朝ご飯を食べて、お庭で遊んで、出か    て帰りました。そいでお夕飯を食べて寝ました。
 けて、ケーキを食べて、夜帰ってきて、寝まき   S(女) おとというちの鳥が狭い鳥籠にはいっ


                                            230
 て卵を六つ産んだので、下に落っこったりする   報事項を)述べていること (3) 事象を包括
 ので、大きいのを買いました。一〇時ごろ八王   的に捉えていること (4) 判断が明確でない
 子へ行きました。それで野原へ行ってれんげ草   こと (5) 連続的な事象を要素的に捉えるこ
 をつみました。                 とができないこと (6) 関係判断が明確に表
K(男) きのうお友だちと自動車に乗って、牛   現できないこと――判断のしかたがよくわから
 車に乗って、モーターボートに乗って遊びまし   ないこと。
 た。モーターボートがこわれたので違うモータ   二 5月2日――伝達
 ーボートに引っぱってもらいました。そして帰   (一) 話題(遠足のこと)と目的
 りました。                    きのうの遠足のことを、行けなかった浦辺君に
H(男) 朝の一〇時ごろ、おかあさんが、ピア   話してあげましょう。
 ノのおけいこに行く時、二時ごろピアノの先生   (2)児童の話
 の所へ来てねと言って、そして二時になるのを   T(男 )バスに乗って速足に行って、いろいろ
 待つて二時になったので、ピアノの先生の所へ    な花を見て、お弁当を食べて、バスに乗って歌
 行って、東横線に発って日本橋のデパートへ行    を歌って帰って来ました。
 くとおばあさんがいたので屋上に行きました.   W(男) 速足に行ったらば、木を見たらば、変
(三) 児童の話の特徴               な英語が書いてありました。
 これらの話は、このころの児童の語の特徴をよ   K(女) お弁当を食べてみんなと遊びました。
 く表わしている。(1) だらだらと線粂的に話  
 l(女) 最初、洋子ちゃんときり馬をして遊び
 が続いていくこと (2) 衝動的に印象を(情  
  ました。かつ木さんともう一回きり馬をして遊
                          びました。
                         S(男) バスに乗ってお歌を歌ったりして行き


                                            231
 ました。それから原っぱに行ってお弁当食べま   の話は、遠足という特定の話題について経験を話
 した。                     している。しかも、特定の人に話してやる、つま
H(男) きのう遠足に行ってお弁当を食べて終   り伝達である。そこで話す材料の選択が行なわれ
 わってから、佐野君が先生がベンチの所にいる   ている。つまり、一ばん印象に残っていることを
 というので行って先生とおすもうとりました。   話している。そこで、判断がやや明確になってい
(3) 児童の話の特徴              る。話が整理されている。思考が整えられている。
 4月30日の話は、情報交換である。したがっ   また包括的な認識であることは前と同じである。
て、あれをした、これをしたと思い出したことを   
羅列的に線条的に述べている。それに対して、こ   

      話すことの学習指導記録(2)―伴学級―
一5月2日−伝達                 N(女) とどがとってもおもしろかったです。
(1) 話題(遠足のこと)と目的         H(女) 水族館へ行って、へびやいろんなもの
 「えんそく」と板書、児童は口々に読む。みな    を見てきました。
さんは遠足に行きましたか。行きました、行きま   (2) 話題の深化
せんと答える。遠足に行かなかった友だちに、速    ずいぶんたくさん見ましたね。水上動物園で何
足のお話をしてあげましょう。だれか、お話して   を見てきたか、行かなかった人にもよくわかりま
あげられる人はいませんか。            したね。こんどは、見ない人にも、さるの様子は
K(女) かめを見ました。            どうだつたか、かめはどんなふうにしていたか、
O(女) 水上動物園でとどを見ました。      よくわかるように話してあげましょう。
M(女) 水上動物園でかばを見てきました。    N(男) ビーバーが穴の中にはいっていまし


                                            232
た。                        いました。
T(男) 大白鳥が鳴いているとこを見ました。   T(男) とどが氷の上に上がってえさを食べて
S(男) オットセイが水の中で泳いでいまし     いました。パン、さかなでした。
 た。                      M(女) とどがもぐったりでてきたりしまし
O(男)ペンギン鳥が石の家の中にはいってい     た。
 ました。                    A(男) あのね、水上動物園でとどは砂の上で
O(女) 水上動物園でとどが水の中で泳いでい    横になって寝ていました。
 ました。                    (4)話題の立体化――場面化
S(女) 水上動物園で、かめが紙を食べていま     こんどは、とどを見ている時、みなさんはど
 した。                      うしていたかお話してあげましょう。
(3) 話題の集的                T(男) ぼくたちが手をたたいたら、はねたり
  水上動物園で見たもののうちで一ばん好きだ    もぐったりしました。
 ったものは何ですか。              M(女) みんなで「とどさん」と呼びました。
  みんなの好きなもののうちから、一ばんめに   K(男) ぼくたちが手をたたいたら、とどが水
 は、とどのお話をしてあげましょう。        のとこから顔を出して、ぼくたちのほうを向き
I(男) とどは石の上にいました。         ました。
K(女) とどがはね回っていました。       
K(女) とどが石の上に上がってきました。     この時期の指導過程は、全体的な包括的な認識
S(男) とどがもぐって泳いでいました。     から、分析的認識へ、さらに総合的認識へと発展
N(男) 中学生みたいな人がとどの写生をして   する認識過程の上に編成されている。


                                            233
 したがって、児童の認識、思考が、しだいに深    してくる。(全体的な認識の明確化)
まっていく過程が明確にわかる。さらに、認識、   (3) 様子がわかるように話すことから、児童各自
思考の深化につれて、それを表わす文型も正確に    に残っている印象がはっきりした。その上に立
また、しだいに発達していく。つまり、文型と認    って、好きな動物という点から話題をしぼる。
識、思考との一体的な関係もよくわかる。       集約する。今まで、水上動物全体に向けられて
 具体的にいえば、児童の動物を見る態度、構え    いた視線が特定の動物に集中する。認識、思考
が、しだいに整えられ、明確にされていくに従っ    の対象が一点にしぼられて明確になる。それに
て、その観察眼もまた、しだいに焦点化され、深    つれて、児童の目は、恩考は、認識は、深く、
く、鋭く対象を捉えていく。認識を深めていく。    正確になって、対象の特徴を、生命を確実に、
(1) まず水上動物園で見たいろいろな動物が取り    客観的に描き出す。自分が観察したことを、こ
 上げられる。――全体的な包括的な認識、見方    とばで表わすことによってはっきりと認識され
 である。児童は、全体的に、あれを見てこれを    る。(分析的な認識)
 見たとぼんやりした認識を述べている。(全体   (4) 動物たちとそれに対する自分たちとを総合的
 的な認識)                    に捉える。つまり、客観的なものと主観的なも
(2) 全体的に包括的に捉えたものをしだいに注意    のとの関連、統合、すなわち、場面として統一
 深く、詳しく再生する。様子がわかるように話    的に認識する総合的な認識が行なわれる。ここ
 すことによって、興味を持って観察し、印象に    で初めて経験の全一的な相が確実に捉えられて
 残っているものをはっきりと捉えさせる。つま    児童の認識は一段と深化する。
 り、詳しくという点から動物を捉える。ぱくぜ   二 5月6日――経験したことを話す
 んとした、ぼんやりした認識がかなりはっきり   (一) 話題 運動会


                                            234
 5月6日「運動会」について、したこと、おも   C 玉入れをして、最初に赤が勝って、二ばんめ
しろかったこと、思ったこと、気持ちなどを思い    にも赤が勝ちました。
出して話させた。                 C はとぽっぽをやりました。
(2) 学習指導の実際              T だれが。
T きょうは運動会のお話をしましょう。運動会   C 二年生が。
 はいつあったのですか。             T 何を。
C きのうです。                 C はとぽっぽ。
C おとといです。                T では、初めから続けて言ってごらんなさい。
T おととい、どこでありましたか。        C 二年生がはとぽっぽをやりました。
C 運動場でやりました。                      ×
T そうでしたね。では、運動会のお話をしまし   T つぎに、いちばんおもしろかったことをお話
 ょう。だれか遊動会のお話のできる人から話し    しましょう。
 てください。                    宇田川さんは、玉入れをしなかったでしょ
C 玉なげをやりました。              う。だから、どんなにおもしろかったかむ教え
 (以下六人、同じ発言がつづく。)         てあげましょう。
C つなひきをやりました。            C 玉入れでね、白も赤も五対五になりました。
C 競走をやりました。              C 玉入れの前は、みんなが玉を一つずつ持っ
C 運動会で玉入れをやりました。          て、笛が鳴ったら玉を投げて、笛がまた鳴った
C 運動会で玉投げをやったら、赤が二回勝ちま    ら、元の所へ戻って、玉を拾って元の所へ戻っ
 した。                      て、きをつけをしました。


                                            235
C みんなで玉を入れましたが、四対二で自のほ   C どのくらい力出せばはいるかなと思ったの。
 うが負けました。                C 何もいわないで投げた。
T あのね。玉がいくつはいったか数えたでしょ   T 何か思って投げた人。
 う。その時、二組が一組に勝ってしまいました   C 赤勝つようにと思いました。
 ね。その時、みんなはどう思いましたか。     C どうぞ神様、はいるようにといいました。
T そして、どうしました?            C かあぜの玉ならえいこうらと言ったの。
C ばんざいをやりました。(以下略)       C 胸がどきどきしました。
T そうでしたね。みんなでばんざいをしたので   C 負けるかもしれない、といいました。
 すね。その時どんな気がしましたか。       C こんどこそはいりますように、と思ったらは
C うれしかったです。(以下略)          いりました。
T ではね、玉入れの時、投げた玉が、うまくは   C 負けると思って一生懸命やったら勝ちまし
 いったかどうか、宇田川さんに話してあげまし    た。
 ょう。                     
C 何回やってもはいらなかった。          この授業では、特に教師の発問に注意された
C 六回はいりました。              い。発問は、児童に考える課題を与え、考える観
C 一個もはいりませんでした。(以下略)     点を与えるものである。したがって、児童の思考
T はいった時、みんなどんな気がしたの。     を発展させたり、整理させたり、深めたりする。
C えい。と思ったの。              この発問が悪いと思考は深まらない。ここにあげ
T 投げる時、どう思ったの。           た一つ一つの発問について、それがどんな役割を
C もうちょっと、もうちょっとと思ったの。    果たしているか考えてみるとよい。また、発問は


                                            236
具体的でなければならない。「その時どんな気が   どう思ったか。」というように、発問が具体的にな
しましたか。」という発問では、答えは、「うれし   って、児童の考える点が明確になると児童の思考
かったです。」というような観念的なもので、児童   は急にかっぱっになった。ついに児童の内心をひ
の認識を深め広げることはできなかった。ところ   らくことができた。認識を深めることができた。
が、「玉入れの時、玉がはいったかどうか。」「玉   これは注意すべきことである。
がはいった時どんな気持ちがしたか。」「投げる時   

     話すことの学習指導記録(3)―小高学級―
一 5月13日――経験情報            M(男) ぼくは、きのうおかあさんにお金をも
(一) 話題――きのうのこと            らって遊びに行きました。
  きのう学校から帰って何をして遊びました    T(男) きのうぼくはおかあさんのお手伝いを
 か。                       しました。そうして、そのお金で自分の好きな
(2) 児童の話                  おせんべいを買って食べました。
〔1 文型〕                   S(男) きのうぼくはおすしやごっこをして遊
     「わたしは……しました。」        びました。
     「きのう……しました。」        〔2 文型〕
     「わたしは、きのう……しました。」      ア 「わたしは……と……しました。」
     「きのう、ぼくは……して……しまし      イ 「わたしは……と……して……まし
     た。」                      た。」
K(男) ぼくは戦争ごっこをしました。         ウ 「わたしは、きのう……と……しま
S(女) きのう、わたしはいなかへ行きました。       した。」


                                            237
   エ 「わたしは、きのう……と……と……    きました。
     しました。」              Y(女) あたしは、栗原美枝子ちゃんのうちで
U(男) ぼくはなかちゃんと電車ごっこをして    ままごとをして遊びました。
 遊びました。                  S(男) ぼくはきのう二年生の女の子の家へ行
H(女) わたしはうちへ帰ってから、おかあさ    って遊びました。
 んとあかちゃんと三輪車で遊びました。      O(女) わたしはきのう直子ちゃんのうちへ行
T(女) 陽子はきのうていちゃんといっしょに    って庭で遊びました。とてもおもしろかったで
 遊びました。公園に行って、まあちゃんが来た    す。
 から、まあちゃんもいっしょに遊びました。    〔4 文型〕
I(女) きのうわたしは礼子ちゃんという子と        だらだら文型
 本を読んで遊びました。             I(女) きのう学校から帰ってきてオルガンを
S(男) きのうぼくは、義則君と高志君と高谷    習いに行ってから、うちへ帰って来てオルガン
 君といっしょに野球をして遊びました。       のピアノをひいたら表で鬼ごっこをしたりして
〔3 文型〕                    遊びました。それからお花屋さん、お花を取っ
   ア 「……で……をしました。」        てきて、お花屋さんごっこをしました。
   イ 「わたしは……で……して……しまし   T(女) おかあさんのお手伝いをして、おかあ
     た。」                  さんがお薬をまいたから、あとでお外にまいた
   ウ 「わたしは、きのう……で……して…    から、うちへはいってきて、お薬まいたから、
     …ました。」               くさいくさいって、それから向こうのみえ子ち
I(男) デパートの屋上で金魚を買って帰って    ゃんちに、それから遊びに行って、犬がいたか


                                            238
 ら、犬も仲間に入れちゃって遊びました。     り発達している。こうした話の中に現われる文型
                         を発達的に捉えて、それを基準とした系統を立て
 これらの児童の話を分類してみると、経験を話   て学習させることがたいせつである。4のような
すのに必要な基本的な文型がはっきりわかる。そ   明碓な判断を欠いた話が多いが、これを放置して
れらの文型は、認識、思考の発達に応じて、やは   おいては児童の思考は進みにくい。

    話すことの学習指導紀緑(4) ―藤倉学級―
一 5月1日――伝達                もの子が小さい時は変な顔していて大きくなっ
(一) 話題 映画                 たら白鳥になったの。
  漫画「みにくいかもの子」「ニュース」「せ   Y(男) うんとね、みにくいかもの子が、だれ
 っちゃん」「ひまわり」を見て教室へ帰って話    もいない所に行って、池にはいって、だんだん
 す。                       大きくなって白鳥になって、友だちができて、
  きょう映画を見ましたが、うちへ帰って、お    そして七面鳥のおかあさんにさようならと言っ
 かあさんにどんなことを話して上げましょう     たの。
 か、おかあさんに話すように話してごらんなさ   A(男) みにくいあひるの子がみんなに嫌われ
 い。                       ちゃったの。そして、みにくいあひるの子が白
(二) 児童の話                  鳥になったの。そしてみにくいあひるの子がさ
O(女) 最初小さい子どもの時は、形が変だっ    ようならと言ったの。
 たけど、大きくなったら白鳥になってさような   二 五月六日――経験したことを話す。
 らして帰っちゃったの。             (一) 話題 子どもの日
A(女) あのね、みにくいあひるの子が、こが     きのうは子どもの日でしたね。どんなことを


                                            239
 したか話してください。             (一) 話題 母の日
(二) 児童の話                   きのうは母の日でしたね。どんなことをした
 (女) きのうおとうさんとおかあさんと、池    かみんなに話してください。
 袋のデパートへ行って遠足のまほうぴんを買っ   (二) 児童の話
 てきたの。                   O(女) おかあさんにお金でカーネーションを
N(女) きのう、うちでケーキと紅茶とかしわ    買ってあげたの。
 もちとみかんのかんづめと食べてからね、さか   A(女) きのうおかあさんにお手紙と絵をあげ
 な釣りに行ったの。                たの。
H(男) あのね、きのうね、ピアノの発表会に   O(女) あのね、きのうね、おねえちゃまとぼ
 行ってきて帰ってきてテレビを見てから寝まし    くとサンドイッチを作ってママにあげたの。
 た。                      T(男) ねえ、おかあさんと、ぼくとおとうさ
O(女) きのう絵をかきに行って、赤羽幼稚園    んとね、おねえさんと赤羽へ行ってね、何か買
 へお絵かきに行ったの。              ったの、それから大福やで食べたの。おかあさ
三 五月六日――経験したことを話す。        んに好きなもの僕が買ってあげたの。


   三 入門期書写・作文の学習指導

1 書写の指導の考え方と方法
 書写の基本になる考え方
 (1) 文字が書けるようになるまで
 文字を事くためには、鉛筆を持つ(持ち方)ことができる、自由な描線ができる(運筆)、
過当な圧力で紙面を圧することができる(筆圧)。等の手指の発達、運動感覚、運動神経が発  240
達していなければならない。第二章に述べた書くことの実態調査によって、特別な児童でない
限り文字を書くのに必要な程度に筋肉、運動感覚、運動神経は発達しているものと考えられる。
実際には、新入児は、入学前にすでに自分の名まえを書き、多少の差はあるが文字を書くこと
ができるようになっている。
 次には、文字を自由に書くためには、その文字の形が記憶される、つまり文字表象(視覚表
象)ができていなければならない。ことばとそのことばを表記する文字が結合し、そのことば
を表わす文字表現が固定する必要がある。そこで、ことばが自由に読めるようになり、文字表
現が描かれるようになった時が文字学習を始める時期だと考えられる。したがって、読む学習
より書く学習のほうが少しおくれる。
 ところが、文字表象は、視覚によって作られるだけでなく、運動感覚を通して、つまり文字
を書くことによって、文字の形を記憶し、表象を作ることができる。視覚と運動感覚を通した
ほうが記憶されやすく、表象を作りやすい。つまり、読むことと書くことを併用したほうが効
果的である。
 そこで、私どもは、従来考えられていたよりもずっと早く習写の指導を行なった。すでに書
ける児童のことも考えると、早くから書写指導するほうがよい。また、学習に当たっても、聞
く、話す、読む、書く活動を自由に取り入れ組み合わせることができて便利であり能率的であ
る。
 図形の異同の識別認知を正しく 文字を書くためには、その文字独得の形体(字形)が正
しく知覚、認知されなければならない。そのためには、文字相互の間の形の異同を明らかにす  241
る。文字の形を全体図形、ゲシタルトとして認知するとともに、細部の相違でも識別、認知す
る必要がある。とめる、はねる、まるめる、曲げる、返す、伸ばす、長い、短い、太い、細い
など線の実相を明確に認知する。また、力の加減(筆圧)、速く、ゆっくり、急に、ゆるやか
に(筆勢)などについても、しだいに理解するようにする。
 このような細かい点になるとただ見るだけでは、読んでいるだけでは、じゆうぶんに認知で
きない。前に述べたように、書くことによって初めてそれらを確かに認知するのである。運動
感覚を通して正しく認知するのである。
 逆さ文字を書く児童が想像以上に多いことも実態調査の項で詳しく述べた。これは、視知覚
と運動感覚との間に隙間があるためであろう。点線文字の上をたどらせる。あるいは、文字を
写し書きさせるなどの方法によって矯正する。
 描線の基本練習の上に――筆圧を適正に 文字を書くための描線の基本練習をじゅうぶん
にする。自由に、円・渦線・直線・曲線・螺線等を描く。それらの線を含む描画も効果がある。
特に大事なことは、児童の文字を書く上の欠陥を分析して練習の内容を決める。このことにつ
いては、実態調査の項に詳しく述べてある。参照されたい。
 この練習は、ただ字形を整えるだけでなく、書く速さの調節・筆勢の付与にも効果がある。
特に描線に自信を持たせ筆圧を適正にする上に効果的である。この点についても実態調査の項
を参照されたい。
 筆順を正しく 筆順を正しく書くことは、@ 字形を整えやすい。A 速く書ける。B  字
形を記憶しやすいという効果がある。いったん誤った筆順を覚え込んでしまうと容易に矯正で  242
きない。児童に文字を書かせる時には、す早く机間を回ってその実態を捉え、見のがすことの
ないようにし、その折々に指導する。筆順は正しく、確実に記憶させる。
 実態に応じて  児童の書写の実態については、かなり詳しく実態調査の項に述べてある。
筆順・逆さ文字・筆圧の不正・字形の不正とその定着等問題が多い。それらの実態に即して指
導を適切にすべきである。特に矯正する面と学習する面とを明確にする。
 練習のしかた  児童は、「たこ」の「た」「はた」の「は」というように、ある語を書く
文字として理解する。したがって、「文字はことばで」の合ことばのように、語の中で読み、
書くようにする。 つまり、 文字一字一字を取り出して書くのでなく、「はた」「はし」「は
る」、「たこ」「たいこ」「いた」「かた」というように語として練習する。
 練習は機械的にならないよう、練習の興味を失わないように注意する。一度に長い時間、た
くさんの文字について練習するよりも、僅かの文字を短時間ずつくり返し練習したほうが効果
的である。練習させようとすることばを表わす絵を書きその名まえを書く。犬が走っている絵、
字を書いている絵、手をあげている絵などを書いて、それについて、「はしる」「じをかく」
「てをあげる」というように書く。同じ仲間の語、一対になっている語、反対の意味の語など
をまとめて事く、「あか、しろ、きいろ」「あかい、しろい、あおい、くろい」「おおきい、
ちいさい」「うえ、した」のように書く。また、文を見て書く。文を聞いて書く。ことばカー
ド作りをする。しりとり遊びを書く。文字カードでことば作りをしてはそれをノートに書く。
ことばを思い出して書く。
 鉛筆の持ち方を正しく  鉛筆の正しい持ち方を指導する。一年の時に妙なくせがついてし  243
まうとなかなか直らない。確実に指導する。特に鉛筆を正面に向けずに、横に向けて持つ児童
が多い。それでは筆圧が加わらない。自信のない、弱々しい、くにゃくにゃした文字を書く児
童はだいたい鉛筆を横に向けて持っている児童に多い。
 あまり力を入れて固く握ってしまうと、すらすらと文字が書けない。鉛筆を持った内側のた
なごころの所がじゅうぶんあきができるように持たせるとよい。
 書く場合、ノートに目を近づけ過ぎて、姿勢が悪くなることも多い。基礎的な技能や態度を
しっかりと身につけるようにする。

2 作文指導の考え方と方法
 作文の機能を考えて  文や文章を書くことは、なんらかの意味で役に立つことをしだいに
自覚させる。たとえば、明日の図工で持ってくる物をノートに書いて帰る。「のり、はさみ、
しんぶんし」と書くことによって忘れず持って来られる。先生から両親への伝言をノートに書
いて持って帰る。それを見て先生の伝言を両親に伝える。花壇に人がはいらないように、「は
いってはいけません。」と書いて立てておく。それで人がはいらない。黒板のはしや背面黒板
に先生の書く掲示によって、先生の考えを児童に伝えることができる。
 また、うれしかった。楽しかった。おもしろかったことを文章に書いておけばおおぜいの人
に知らせ、訴えることができる。作文指導は、児童がこうしたことを自覚するところから始ま
る。
 書く必要、目的の自覚の上に立って 作文は、それを書く目的によってその後の作文活動  244
のすべてが規定される。作文を書く構え、態度も、どんな形態の文象を書くかも、書く材料の
選択も、書く内容の選択、構成も、叙述も、書き上げたあとの推考も、書いた後の処理もすべ
てが、書く目的に規定される。
 このことは入門期作文指導においても同じである。何のために、何の必要があって文章を書
くのか、それをはっきりさせることが第一である。学校へ持っていく物を忘れないためにそれ
をノートに書く。遠足で見て来たことを友だちや両親に教えてやるために書く。日曜日にはど
んなことをしたか、お互いに知らせ合うために文章を書く。花壇を守るために立て札を書く。
花壇にきれいな花が咲いたことを知らせるために掲示をする。楽しかったお花見の様子をみん
なに知らせるために文章を書く。
 作文は、児童の作文を書く必要感・目的意識の上に築き上げなければならない。
 表現の喜びを 自分の喜び、楽しみがことばになる。桜の花、チューリップの花の美しさへ
の感動がことばになる。この喜びを、この楽しさを何だかみんなに知らせたい、訴えたい。そ
れがことばとなって現われる。この自分たちのことばが文になる、文章になる。表現の喜びは
そこから生まれる。自分たちのことばがそのまま文になることの発見、これも作文指導の第一
歩である。書きたくなる気持ち、書かずにはいられない気持ちを育てる。進んで書こうとする
態度を育てる。入門期の作文指導はここからも始まる。話し合いながら文章を書く。それはや
がて自分から進んで文を書こうとする態度へと発展する。
 口頭表現から作文へ 話すことの指導については、前に述べてあるが、それは口頭による、
話しことばによる表現である。経験したことを、訴えたり、伝えたり、話し合ったりする場合、 245
つまり話しことばで経験を説明したり、表わしたりする場合には、それによって思考を正した
り、認識を深めたりした。まだ、文字ことばをじゅうぶんに持っていない時には、話しことば
によって思想、心情を表現する。入門期の表現活動は、話しことばを中心として行なわれてい
るが(いわゆる口頭作文)、書きことばを習得するに従って、作文へと発展する。すでに述べ
たような話すことの指導は、そのまま作文指導の基礎となっている。経験したことを話す。そ
れをそのまま文字化すれば作文となる。ただ、話しことばは、ある場面の中で、その場面にさ
さえられて表現効果をあげている。場面そのものについての記述は必要としない。ところが、
一般に、文章に書く場合には、場面にたよることはできない。場面を書くことによって文章を
組み立てる必要がある。そこに文章のむずかしい一面がある。しかし、入門期においては、話
すことも、作文も指導の内容や方法についてはほとんど区別がない。
 書きことばの文型と作文 文章を書くことは、複雑な思想、心情や複雑な事象に対して、こ
とばのわくはめをすることである。複雑なもののうちから、表現すべきことがらを必要に応じ
て切り取って組み立てることでもある。そこに文型の問題がある。ある事象はこういうことば
の枠はめをする。ある現象については、このようなことばで浮き立たせる。要するに作文とい
うのは、表現対象に反映する自己を表現するものである。したがって入門期の作文指導も、そ
の基礎の上に立たなければならない。表現内容の書き表わし方は、取りもなおさす、表現内容
に対する認識、思考の方法、過程と一致するものである。つまり、一定の表現内容の表現には、
一定の形式がともなっている。それが文型である。そこに、正しい文型を正しく使う意義があ
る。                                          246
 そこで指導に当たっては、表現のしかたを文型として与える必要がある。児童はそれによっ
て表現のしかたを知る。認識のしかた、判断のしかたを知るのである。
 このことについては、話すことの、学習指導の項に詳細に述べてある。
 作文と文字の抵抗 作文を書く場合の、文字の抵抗は予想以上に大きい。まして、まだじゅ
うぶんに文字を身につけていない入門期においては、さらにいっそうの抵抗が予想される。そ
こで、おっくうがらずに書けるように、文字を書く練習を積む必要がある。文や文章を見て書
く、聞いて書くことは、学習に必要な文型を身につける一方法であるとともに、おっくうがら
ずに文字が書けるようにするための方法でもある。


3 書写の学習指導の実践
書写の学習指導記録(1)――多田学級――
(1) 学習内容                   (2) 学習指導

 ア ことばカードを作る
 イ ことばカード遊びをする
 ウ 文字の形を整えて書くこと
 エ 正しい筆順で書くこと
 オ 鉛筆を正しく持つこと
 カ 等圧を適正にすること
 
 
指導過程
学習事項
 
学習指導・方法 
1 目的を持つ。
 
1 きのうはカードを作
 りましたね。きょうも
 続けてもっとたくさん
 カードを作って、あと
 

                                            247


2 ことばの絵を
 板書する。
 
 でカード遊びをしまし
 ょう。
2 黒板に絵を書く。
 
    の書き方。





5 く|り
  う|し
 を書く。








6 つくし、すい
 かの書き方。
 
(2) 字形を説明し、注
 意するところに関心
 を向けながらさらに
 板書する。くと、し
 のさかさ文字を板書
 して注意する。
(3) 鉛筆で各自くり、
 うしをカードに書か
 せる。
(4) 机間を回って指導
 する。
 〉と書いた児童四
 名、新しいカードを
 渡して書かせる。
5 つくし、すいか、
 すみれと絵のそばに
 板書する。
(1) つくし、すいか、
 すみれを読む。
(2) 黒板につ 〉しと書
 いて読ませる。くが
 反対であることを指
 摘させる。
  


  くり   うし   つくし


 すみれ   すいか    とけい
 
3 ことばを読む


4 く|り
  う|し
 
3 黒板の絵をさして、
 一つずつ正確に発音し
 て名まえを言わせる。
4 教師が絵のそばにく
 り、うしと名まえを板
 書する。
(1) くり、うしを読む。
 
                                      248

















7 つ|く|し
  す|い|か
 と書く。
 
 (3) すの字の書き方を
  解説する。



  筆順をはっきりする。
 (4) どの「す」がよい
  か、違っている点を
  見つけさせる。
 (5) 最後は止めないで
  軽く流すことに注意
  する。
 (6) まるめの手首の運
  動を机の上でする。
6 カードに書かせる。
 (1) 正しく、「つくし」
   正しく、「すいか」
  と書きましょう。
 (2) 書けた人はとなり
 
 




8 すみれの書き
 方。
 
  の子とくらべてさか
  さのつくしや、変な
  すいかになっていな
  いか、よく見てくだ
  さい。
7 もう一枚カードが残
 っています。それにす
 みれを書きましょう。
 @ 「み」で気をつける
  のはどこでしたか、
  思い出してくださ
  い。
 A 黒板に大きく説明
  しながら書く。

 B 要所を、気をつけ
  るところは、ここ、
  といいながら赤丸を
  つける。
 
                                       249
9 す|み|れ
 と書く。
 
8 さあ、カードに書い
 てください。
9 先生がカードをなら
 べます。それと同じも
 のを皆さんも順に絵の
 上のほうにかきなさい。
 @ 机間を回ってみる。
 A 先生がいうカード
  を押えてください。
  (順序不同に読み、
  押えさせる)
10 今度は、先生が読む
 カードを持って、見せ
 てください。
 すいかと読む。
 @  こんな人
  はいませんか。どこ
  がいけないのでしょ
  う。
 A こんどは、すみれ
  のカードで、みの字
  形を再度、正しいの
 
  10 ノートに書く    とじょうずでないの
  を認知する。
11 おしまいに、ノート
 に鉛筆で書きます。
 ・むずかしかった字に
  とくによく気をつけ
  て一度ずつ、じょう
  ずに書きましょう。
 ・机間を回りながら、
  ひとりずつに、よく
  書けた字に赤丸をつ
  け、鉛筆の持ち方の
  正しくないものを正
  しくする。
 ・カードはきのうのと
  いっしょにしてくだ
  さい。一の列の人か
  らどうぞ。
 ・おしまいにします。
 

                                            250
書写の学習指導記録――古川学級――
一 単元 あめ                    G 助詞「は」のかなづかいに気をつけるこ
二 目標 雨の降る日の生活について、経験を話      と。
 し合ったり、文章や掲示を読んだりすることに     H 促音の読み書きに気をつけること。
 ょって、雨の日の生活に適応しようとする気持   四 教材
 ちや態度を育てる。                「あめふり」「がっこう」「みずたまり」
三 学習内容                   五 学習計画
 1 学習活動                   1 雨降りの日の経験を話し合う。┐
  @ 雨の日の経験を話し合う。                          ├二時間
  A 雨の日について書かれた文章を読む。     2 「あめふり」を読む。」   ┘
  B 雨の日の生活に必要な掲示を読む。      3「がっこう」(掲示)を読む。 −二時間
 2 学習事項                   4「みずたまり」を読む。    −二時間
  @ 相手にきこえるような声で話すこと。     5練習をする。
  A 何が書いてあるか考えて読むこと。     六 本時の学習
  B 指示を読んでそれに従うこと。        1 本時の目標
  C 音読ができること。              「あめふり」をはっきり読みとり、読みとっ
  D 文字の形に注意し、筆順に従って書くこ      たことを書くことによっていっそう読みを
   と。                       確実にする。
  E 基本的な文型に注意すること。        2 本時の学習過程。
  F 新出のひらがなが読め、書けること。    

                                            251

〇学習活動
・学習事項
 
発問・指示・板書・反応   
・新山文字「め
 ・ふ」を書く
 こと。
2 はっきり読み
 とるために、音
 読する。
 ・語や文として
  読むこと。
 
 り書いたりしましょう。
T まず、「あめがふる。」
 をちょうめんに書いてお
 きましょう。(準備させ
 る。)
T 用意ができたら、先生
 がもう一度書いてみせま
 すから、よく見ていなさ
 い。(あめがふる。とゆ
 っくり板書。特に「め・
 ふ」の筆順と字形に注意
 させる。)
T では、ちょうめんに書
 きなさい。
 (書く。「ふ」がよくで
 きない。)
T では、あめはどこにふ
 るのか読んでみなさい。
 (各自読む。)
 (指名して読ませる。や
 やつかえる
。) 
1 全文を読み、
 だいたいを思い
 出す。きょうの
 学習のめあてを
 はっきりもつ。
 
T きのう、ここを読みま
 したね。だいたいなんの
 ことが書いてあったか読
 んで思いだしましょう。
 (読む。音読している。)
T なんのことが書いてあ
 りますか。
C あめ。
T あめが、どうなんです
 か。
C あめがふることです。
 あめがふる。と板書。
 読ませる。
T ここは「あめがふる。」
 ということが書いてある
 のですね。では、あめは
 どこに、降るのでしょう
 か。きょうはそれがはっ
 きりわかるように読んだ
 
                                      252
3 読み取ったこ
 とを話し合いち
 ょうめんに書
 く。
 ・「○○にふ
  る。」の文型
  に注意するこ
  と
 ・文字の形に注
  意し筆順に従
  って書くこと
 
 (もう一名指名。よくわ
 かる読み方ができる。)
T あめはどこにふるので
 すか。
C かさにふる。
T それは、どこに書いて
 ありますか。
 (ゆびさす。)
T 「かさにふる。」と書
 きなさい。
 (板書して、ちょうめん
 に書かせる。「ふ」の字
 形に注意させる。)
T ほかに、どこにふりま
 すか。
C はなにふります。
T それは、どこに書いて
 ありますか。ゆびさして
 ごらん。
 (みなゆびさす。)
T そこには、「はなにふ
 ります。」と書いてありま
 
     すか。
C 「はなにふる。」です。
T そうですね。では「は
 なにふる。」と書きなさ
 い。
 (書く。「は」の筆順を
 あやまるものがある。黒
 板にもう一ど「は」を書
 いてみせて書きなおさせ
 る。)
T さあ、それから、どこ
 にふると書いてあります
 か。さしてごらん。
 (五名に指名して次々に
 読ませる。)
T 「くさにふる。」とあ
 りますがこの草はどこに
 あると思いますか。
C のはらにあります。
C みちばたにある。
T これは、きっと道ばた
 にあるのですよ。
 
                                      253
 ・「ふ」の字が
  正しく書ける
  こと。
 
 「くさにふる。」と書き
 なさい。さっきまで書い
 たのをみましたが、
 「ふ」の字がむずかしい
 ようですね。どう書いた
 らいいのかな。
  (例をいくつか書いて
  それをよい字形とくら
  べさせ、字形について
  意識させる。)
T ここに気をつけて書き
 なさい。
 (書く。「ふ」の字形を
 意識しているようす。)
T それから、どこにふる
 のですか。
C やねにふる。
 (「やねにふる。」と板書。)
T 「や」の字はここを書
 くとき気をつけなさい。
「や」とくらべる。)
T では、「やねにふ
 
 












4全文を読む。
 
 る。」と書きなさい。
(書く。)
T それから、どこにふる
 のでしょう。
C みちにふる。
T それもちょうめんに書
 きなさい。
 (板書してちょうめんに
 書かせる。)
T ずいぶんたくさん書き
 ましたね。よく書けまし
 たか。
(ずっとみなおさせる。)
T 読むのもよくできるよ
 うになったはずです。読
 んでもらいましょう。
 (指名して四名に音読さ
 せる。)
T よく読めましたね。あ
 めはどこにふると書いて
 あるかよくわかりました
 ね。
 

4 作文の学習指導の記録                               254
 作文の学習指導については、話すことの学習指導の項、読むことの学習指導の「教材を作り
ながら」の項を参照されたい。話すことや読むことの学習の中に、作文の学習が随所に含まれ
ている。

作文の学習指導の記録 (1) 5月14日――佐藤学級――

一 単元 えんそく
二 目標 遠足の経験を深め、その楽しさを味わ
 う。
三 学習内容
 (一) 学習活動
  1 えんそくの絵について話す。
  2 絵を見て共同で文章を作る。
  3 経験したことを文章に書く。
 (二) 学習事項
  l 見たことを書くこと。
  2 経験を書く文型を身につけること。
  3 共同で文章を書くこと。
四 学習指導
 
指導過捏  学習指導 
1 目的を持つ。
2 遠足の絵を見
 て話す。
 
T 遠足に行ってお弁当は
 どこで食べましたか。
C 山の上で食べました。
T 山の上から何が見えま
 したか。
C うちが見えます。
C はたけも見えます。
C バスが見えます。
C 畑で働いている人も見
 えます。
C あひるが、泳いでいま
 す。
C にわとりも見えます。
 

                                            255











3 文章を作る。
 
C 木が見えます。
C 電信柱が見えます。
T 近くには何が見えます
 か。
C お百姓さんのうちが見
 えます。
C 池も見えます。
T 遠くのほうには何が見
 えますか。
C 山が見えます。
T いろいろな物が見えま
 したね。それでは、山の
 上から見えたものを書い
 てみましょう。
 (再び話し合いながら板
 書する。)
<板書>
 
 うちが みえます。
 はたけが みえます。
 はたらいて いる
 ひとも みえます。
 


4 文章を読む。


5 読み取った
 ことを話す。
6 目的を達成
 する。
 ○ノートに書
 く。



7 発展。

 
 とおくに やまが
 みえます。
 
T さあ、みんなで読んで
 みましょう。(六、七人
 に読ませる。)
T 何と何が見えたと書い
 てありますか。
C うちが見えます。
C うちと畑と鋤いている
 人が見えます。
C 山も見えます。
T それでは、これをノー
 トに書きましょう。
 (ノートに書く。)
T こんどは、学校の屋上
 に上って、何が見えるか
 見えたものをおうちの人
 に教えてあげましょう。
 おうちの人に教えるため
 に、作文に書いてみまし
 ょう。
 

                                            256

作文の学習指導の記録 (2) ――5月28日 鈴木学級――
一、書かせるようになった経過            (一・五センチ方眼の用紙を渡して書かせる)
1 きのうは日曜日でしたね。みなさんはどんな   二、児童作品
 ことをしましたか。先生におしえてください。   文山 ぼくはあさはやくおきておにさんとてつだ
 (数人挙手)ちょっとまってください、考えて    いおしました。
 いる人がいますから。しばらく、どんなことを   渡辺 おにいちゃんとにかいですもうおとってな
 したか思い出してください。(なにしたかわか    げとはさました。
 らないという児童数人)「その人は、うちにい   佐藤 おはさんとええがおみにいきました。
 たのか、どうか、それだけでもいいから思い出   拝崎 うちでてれびきのうで
 してください。」                浅野 おねえさんとじてんしゃでのってあそぴま
2 では、話してもらいましょう。(数人、挙手    した。
 しない児童がある。「わかんない」といった児   菅佐原 きのう。うちでつかうちょうめんでよく
 童が大部分)五人指名して話させる。        かんがえてあさがをのたねをまいたひにちをか
3 みなさん全部に話してもらっていると、一時    きました。
 間で終わりそうもないね。(児童、肯定)みん   渋谷 やきゅうおしました。ぴんぽんだまでめち
 なの人におしえてもらいたいから、書いてくだ    ゃぶすけおしてあそぴました。
 さい。先生が紙をあげます。それで、休み時間   菅野 にちようびにおおみやにいきました。
 に読ませてもらいます。そうすると、どの人の   福田 うちでてれびおみました。
 こともわかります。(あっけにとられたような   稲森 そとでまりであそぴました。
 顔をしている児童もあったが、大半は大喜び)   率田 きのう ゆかりちゃんのおにいさんとさえ


                                            257
 きくんとちゃんばらごっこしました。       竹森 きのう おかあさんとおばちゃんとはたし
石川 あすかやまでやきゅをしました。        とこくさいにいてきました。
中野 きのう ぼくとおにいちゃんとすがさわら   飯塚 うちでてれびおみました。
 あきらくんとあそびました。           八巻 かぜおしいていました。
更家 ようこちゃんとあそびました。        小野 きのうてれびおみました。
平野 こやたけえこちゃんとあそびました。     塚本 びょういんへいってけっちんとれんとうげ
小山 あさおきゃくさまがきました。         んおとりました。
滝田 きのう ともこしゃんとまさこしゃんとあ   菅原 くるまだひろゆきくんとあそびました。
 そびました。                  佐伯 きのう くるまだくんと ゆかりちゃんの
広田 おねえさんとまりぶつけおしてあそぴまし    おにいさんとあそびました。
 た。うちのあかんぼところげこおしてあそまし   諸沢 きのううちでうちのいもうととあいておし
 た。かにしぼいおみました。            ててつかれたからねてました。ごはんのときお
大平 うちのちかくでかおるちゃんとあそびまし    こしてもらいました。
 た。                      千葉 あさぱじゃまをぬいでときこちゃんちであ
斎藤 おねえさんとままごとであそびました。     そびましたでもすぐかえりました。
守島 きょうこちゃんとせっこちゃんとあそびま   
 した。                     
井上 ひとりであそびました。           
中泉 そとでおだんごをつくてあそびました。    
石塚 きのう とこやにいきました。        


                                            258
   四 評価のためのテスト

 ここでは、主として、読むこと、書くことの測定をどのようにしたらよいかということを考
えてみることにした。そこで、一応考えられるテストの内容ないし観点として、つぎのような
ことを設定し、これに従って問題を作成し、実施した。

 一、読むことのテスト ・ことばを読むこと。 ・文を読むこと。 ・文章を読むこと。
 二、書くことのテスト ・ことばを書くこと。 ・文を書くこと。 ・文章を書くこと。
 

一、読むことのテスト
 ことばを読むこと。
(1) 二音節から三音節のことばを選んで絵と結ぶ。

○えとことばを、せんでつなぎなさい。 
   ●  はさみ



 
  かみ



 
  いし  
 
 
  いぬ



 
  せみ


 
  からす  

                                            259

○えとあうことばむさがして―でつ
なぎなさい。
 

  
 くち 

 ●やま 

 ●はと 

 ●
ほん 

 ●
ふね 

 ●
うし  
 これらはテストとしては、初歩的段階の
ものに属する。テストになれていない児童
にとって、いちばん抵抗になることは、ど
のように答えたらよいかということである。
 ○えとことばを―でつなぎなさい。    

いぬ
いね
いめ

るうそく
ろうそく
そうろく

めこ
ぬこ
ねこ
 
やわ
やね
やま


ぬりえ
ぬいえ
ねりえ


ねだん
れだん
わだん
 



                                            260

○えとあうことばに○をつけなさい。
( )がっそう
( )ざっこう
( )がっこう

( )べんきょう
( )てっきょう
( )らっきょう

( )ちょうめん
( )ちょうちん
( )きょうしつ

 

( )ちゅういんがむ 
( )しゅうりっぷ
( )ちゅうりっぷ

( )へんとうむし
( )てんとうむし
( )てんこうむし


 このテストは、文字と絵を線で
 つなぐ方法をとっている。黒い
 点をよりどころとして、線をひ
 かせる。線は少しぐらいまがっ
 てもよいから、点と点とをしっ
 かりむすぶことを約束させる。
 できれば、板書し他の例で示し
 てやるとよい。
 (2) 字形、語形、発音などが互
 いに似ていて、まざらわしい文
 字(選択肢)をならべ、その中
 から、正しいことばを読みとる。
  ア ものの名まえで、字形、
   語形の似ているものを読み
  とる。
 イ 右の場合と同じねらいであるが、長音、促音、よう音のあることばを読みとらせる。
  この方法は、文字の知覚がどの程度できているかを測定するには、かなり効果的である。
  応答している過程を細かく観察してみると、児童は、                 261
 @まず絵を見る。
 Aつぎに、文字を読む。
 B絵と合うことばが最初に出ていると、ただちに○をつける。(○をつける場所は児童によ
  って違うが、かまわない。).
 Cその後、他の選択肢も全部読む。
  このとき、おかしなことばがあると、「ハハハ……」と笑声を発する子も出てくる。
 右のことから、正しいことばを見つけたのちでも、一応は全部目を通し、一文字一文字を、
ていねいにたどって読み、やがて、語として認識するという過程をとっているということがい
える。
 つまり、文字の知覚と、語としての認識とが密接に締びついた測定方法である。
(3) 同質のことばをいくつかならべ、その中に異質のことばを一つ挿入する。それを読むこと
 によって見つけ出させる。
 上の方法で測定する以前に、ことばの読みを助けるために絵をそえて出題してみたところ、
これは大失敗であった。というのは、字を見ないで、絵で判断したものがほとんどといってよ
かった。かなり優秀だと思われる児童について、応答の過程を観察したところ、文字をまった
く見ないで、絵だけにたよって解答を出していることを発見した。入門期だからということで、
不用意に、絵をそえたりすることは禁物である。
                      ●●
 ここでのねらいは、児童が、既習のことばを、語いとしてどの程度理解したかを、質のちが

○ちがうなかまに×をつけなさい。
り ん ご
ば な な
い   ぬ
み か ん 
つ く え
おとうさん
おかあさん
おにいさん 
う さ ぎ
さ   る
ぼ う し
や   ぎ 
ほ う き
つ ば め
は た き
ば け つ 
あ  し
く  ち
は  な
ひこうき 
や   ま
か ば ん
か   わ
は た け 

 うことばを見つけ出さすことによって、たしかめよ  262
 うとしたものである。
  つまり、読めるだけでなく、そのことばが、どう
 いう性質の意味機能をもっているか、という理解程
 度を測定しょうとしたものである。












 文を読むこと                                     263
(1) あらかじめ、文を切り離しておいて、上と下を、線で結んで、文として接着させる。

○うえとしたでつながることばをせんでむすびなさい。
こ ま が・       ・ひらひら おちてきます。
か み が・       ・くるくる まわります。
は な が・       ・わんわん ほえています。
い ぬ が・       ・きれいに さきました。 
         ・さようなら
ま た・     ・きてね
         ・かわいいね 
         ・おつかいにいきます。
よいこはすぐ・     
         ・おつかいにいきません。
                 ・くるまが きます。
あとから あとから・       
                 ・うれしく なります。
                 ・とおってい ます。 
やねから ひとが・
                 ・おちそうに なって います。 

(2) 絵とあう文を、いくつかの選択肢の中から読みとる。                  264

 ○えと ぶんを せんで むすびなさい
・おりがみをしました。
・きりがみをしました。
・ほうきをかいました。
・はたきをかいました。 
 
 えと くらべて あっている ぶんに ○を、まちがって いる ぶんに ×を つけなさい。
りんごは200えんです。
りんごは120えんです。

ばななは80えんです。
ばななは150えんです。

さくらんぼは350えんです。
さくらんぼは180えんです。 

                                             265          

 ○えと あって いる ぶんに ○を つけなさい。
      くつは そろえてあります。

      ほんは だしてあります。

      かさは たててあります。 
        あめがふっています。

 
        ゆきがふっています。

 
        あめがやみました。 
      わたしは おとうとを つれていきました。

      わたしは いぬを つれていきました。

      おかあさんは いもうとを つれていきました。 

                                            266

○えをみてあっているのに○をつけなさい。

   ( )こどもがろくにんいます。

   ( )くもがみえます。

   ( )しまがみえません。

   ( )いわがあります。

   ( )うみがみえます。 

                                            267

○つぎの ぶんしょうに
 かいてある いろを
 みぎの えに ぬりな
 さい。

 おひさま あかい。
 きらきら あかい。

 はなが さいた。
 きれいに さいた。
 きいろに さいた。
 むらさき にさいた。

 おうむが ないた。
 くびを かしげた。
 みどりの おうむ。

 そらが あおい。
 くもが しろい。
 
 



   出題の文型は、さまざまなも
  のとなっているが、指導の系統
  の中で、文型が、どのように発
  達していっているかを、じゆう
  ぶん見きわめながら、提出する
  必要がある。選択肢が2本のも
  のもあるが、文を注意深く読ま
  せるためには、やはり、3本か
  ら5本ぐらいまでが適当と思わ
  れる。
   応答している過程を観察して
  みると、児童の多くは、選択肢
  を一つ一つていねいに読んでい
  た。ただ、絵と文の関係のはっ
  きりしないものに、とまどって
  いたので、これには、出題者が
  大いに反省させられた。
   文章を読むこと
  (1) 文章を読んで、そこに書か
  れてあるとおりの色を絵にぬる。


                                            268
 文章といっても、詩に近い形のものだが、その中に書かれてあることばどおりの色を、絵の
ほうにぬるわけである。ことばの認識がはじめにあって、つぎに、そのとおり行動にうつす仕
組みのテストである。
 応答の過程を観察すると、つぎのような特徴に気づいた。
 ァ 全文を読み通してから作業にかかる、というものが少ないのにおどろいた。一文を読ん
  では作業にかかり、また、つぎの文を読み進めては、色をぬるというやり方をするのであ
  る。
   そのために、どこまで読み進んでいったかをさぐるのに、かなり手間どっていたし、ま
  た読み落として彩色をまちがえたものもいた。
 ィ 文章の中に示されていない葉の色を緑色に全員がぬった。厳密にいえば、これは、ぬら
  ないほうが正しい。
   また、おうむのとまり木もほとんどのものが茶色にぬっていた。これも文章の中で一言
  もふれていない。
 ゥ 黙読で作業するものが少なく、声を出して読むものが多かった。
 ェ 文章を無視して、着色してしまったものが、六人ほどいた。
(2) 文章を読んで、問いに答える方法。                          269

 ○ぶんしょうを よんで こたえなさい。
 がっこうから かえって よしこさんの うちへ あそびに いきました。よしこ
さんと、ままごとあそびを しました。
 あとから、あきらさんが きました。さんにんで かくれんぼを しました。 
 @ あとから きたのは だれですか。( )になまえをかきなさい。(     )
 A だれの うちで あそびましたか。ただしいのに ○を つけなさい。
  ( )あきらさんのうち ( )わたしのうち
  ( )よしこさんのうち
 H はじめに どんな あそびを しましたか。( )に かきなさい。(     ) 

二 書くことのテスト
 ここでは、絵に示したとおりのことばを文字に書くという方法だけについて突施した。当然、
出題の内容も、易から難へ、小量から大量へというようにした。
 なお、書くことのテストのねらいとしては、つぎの三点にしぼった。
 @正しく文字が書ける。
 Aことばとして書ける。
 Bことばのはたらきがわかる。
 ことばを書くこと
(1) 清音で表現できるもの。(2) 濁音・半濁音のまじるもの。                270

(A) ○えをみてなまえをかきな
   さい。

  | |     | | 

  |       | | |

  | |     | | | 

  |      | | | |

  | | |    | | 
 
(B) ○えをみてなまえをかきなさい。

  | | |    | | | | 
                
    
  | |      | | | |
               

  | | |    | | |   


  |    | | | | | |







 (C) ○えをみてなまえをかきなさい

  |||       

  |||||   

  ||||   

      

     
                 

                        271


 (A)のテストの中で、「とけい」という解答が
あるが、そこで、児童のもち合わせていた語い
は、「めざましどけい」あるいは、絵が「めざ
ましどけい」であった。それで、その児童は、
「めざ・…」と書きすすんだところで、ますが、
三個しかないことに気づき、しばらく考えこん
でいたが、やがて、「とけい」と書いた。
 これと同じことがもうひとつあった。(A)のテ
ストのところで、「かたつむり」と答えるべき
ところ、児童の持ち合わせの語いが、たまたま
「でんでんむし」だったので、「でんでん……」
と書き進むうちにますのたりないのに気づいた。
「かたつむり」は5文字、「でんでんむし」は
6文字。「そうか」とつぶやきながら、「かた
つむり」となおしていた。
 つまり、ここで言いたいことは、解答欄の四
  ●●
角いますの効用のことである。入門期の児童は、
もののなまえでも、その地方特有の語いをもっ
ている。いわゆる標準的な語いも知らないこと




○えを みて ことばを あいている とこ
ろに かきなさい。
 
                 

                 

                 

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 はないが……という状態であったのだ。解答欄
     ●●
 の四角いますの規制に助けられて、求める解答
 を得たのである。
  書くことのテストで、初歩の段階では、案外、
  ●●
 ますの助けが大きい。
                    ●●
 (4) とくに、よう音、長音などの表記がますの
  助けを借りないでできるかどうかをためすも
 の。












著者紹介
明治40年郡馬県生まれ
小・中・高校教諭
東京都指導主事等を歴任
現在/東京都中央区立文海中学校長
主な著書/
「小学校学習指導要領の展開国語科編」
「機能的国語教育一理諭とその展開」
「機能的作文指導・三巻」
「国語科の発問」(以上明治図書)


入門期の国語指導
編著者/中沢政雄
発行者/藤原政雄
印刷所/新興印刷製本株式会社
発行所/明治図書出版株式会社
東京都中央区入船町3−3
振替/東京151318番
電話/(551)8266〜8番
1966年6月再版刊
○検印省略いたします
定価/680円