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                    国語科授業の新展開 8


                   新国語科のよい授業モデル






                       中沢政雄編著

                        明治図書










                                                        1
     はしがき


 わたくしどもの国語教育科学研究会は、創立以来二十年、一貫して、人間性を開発伸長する国語能力の養成をめが
けた「機能的国語教育」の科学的・工学的研究を続けてきました。
 単元の構成およびその展開の科学的研究、国語科のカリキュラム編成の研究、学習指導過程の科学的編成、児童の
国語能力の発達の調査・研究、新教材研究法の開発、表現・理解・言語事項の学習指導法の開発、学習評価法・学習
調節法の研究、学習目標としての価値目標・行動目標の研究、学習法としての学習技術の研究、国語科・国語科学習
のシステム化、学習指導過程のフローチャート化など、その理論と実践の両面にわたって、日夜を分かたぬ研究に精
進努力を重ねてきました。
 これらの研究成果は、その折々に著書を通し、発表会を通して世に問うてきました。特にここ数年は、これまでの
研究を集大成した国語科の授業モデルの編成に、実践的努力を積み重ねました。本書に収めた「新国語科のよい授業
モデル」は、いずれも、その実験・研究の成果であります。
 これは、本会創立以来の宿願である「いつでも、どこでも、だれでもできる客観性・普遍性をもった国語科学習指
導法」の研究を、いちおうわたくしどもなりに完成したものであります。
 この授業モデルは、理解力・表現力・言語事項のそれぞれについて、その「学習過程モデル」を中心とし、行動目
標のシステムモデル、学習内容のシステムモデル、学習活動のシステムモデル、学習の評価・調節のシステムモデル
                                                        2
などを組織し、システム化した総合的な「学習指導過程モデル」によって展開されています。
 したがって、このモデルによれば、だれでも筋道のたった、むだのない、学習の目標・中心の明確な、しかも、生
産性の高い授業を進めることができます。もちろん、これは客観性・普遍性をもった授業モデルでありますから、教
師は、教育的経験・教育技術・教育的教養を積むにしたがって、それぞれ自分の肉を付け、血を通わせ、個性的な授
業として展開する創意と工夫を必要とすることは言うまでもありません。どうか、じゅうぶんにご理解の上実験して
みてください。その上で、大方のご批判とご指導をお願いいたします。
 わたくしどもは、人間性を開発伸長する機能的国語教育の普遍的方法を求めて二十年、今ようやくにしてその授業
モデルを編成することができました。それは、それを必要とする時勢とは言いながら、與水実先生の先導なくしては、
成し得なかったことであります。ここに、この本を先生に捧げるとともに、深い学恩に感謝いたします。
 また、本書を明治図書から出版することができましたのは、江部満・間瀬季夫・松本幸子のみなさんのご配慮とお
ほねおりによるものであります。ここに記して感謝の意を表します。

  昭和五十五年五月五日
                                端午の日に   中 沢  歇 雄

                                                        3


     目   次

   はしがき

第I章 国語科授業の新しい方向
    一 戦後国語科の授業はどう変わったか……………………………………………………11
      1 言語経験中心―授業から経験学習へ………………………………………………11
      2 教科書中心−経験学習から技能学習へ……………………………………………12
      3 授業中心―学習の多様化からモデル化へ…………………………………………14
    二 どんな授業がよい授業か…………………………………………………………………15
      1 よい授業はどんなシステムをもっているか………………………………………15
      2 よい授業の条件は何か………………………………………………………………16
      3 これからの授業のもつべき性格は何か……………………………………………21

第U章 だれでもできる新国語科の授業設計
        −そのシステム化とモデル化
                                                        4
    一 単元のシステム設計はどのようにするか………………………………………………23
    二 単元展開のシステム設計はどのようにするか…………………………………………25
    三 よい授業のシステム設計はどのようにするか…………………………………………26
      1 よい授業のシステムを規定する「学習単位」の確認……………………………26
      2 主体的な授業を保証する「行動目標」の設定とそのシステム…………………27
      3 確実な授業を保証する「態度・技能・言語事項」の設定とそのシステム……30
      4 生産的な授業を保証する「基本的学習活動」の設定とそのシステム…………33
      5 完全学習を保証する「学習評価・学習調節」過程の設定とそのシステム……35
      6 確実に能力を伸ばす「学習過程(思考・認識の過程)」の編成とそのモデル…41
      7 創造的な授業を保証する「学習指導過程」の編成とそのシステム……………46

第V章 だれでもできる新しい教材研究の方法
    一 教材研究の新しい考え方と方法…………………………………………………………58
      1 基本的な考え方………………………………………………………………………58
      2 教材研究の方法………………………………………………………………………59
    二 基本的説明教材の研究とそのモデル化…………………………………………………60
                                                        5
    三 基本的文学教材の研究とそのモデル化…………………………………………………65

第W章 理解の学習指導モデル
    一 読解の学習指導過程モデル………………………………………………………………69
    二 説明(知識・情報)の読解授業モデル…………………………………………………74
      1 文章の内容の大体を理解する授業…………………………………………………74
           教材「はたらく自動車」
      2 事柄の順序を考えながら読む授業…………………………………………………77
           教材「山のぼり人形」
      3 文章の要点を理解するために読む授業……………………………………………82
           教材「色とくらし」
      4 段落相互の関係・段落と文章全体との関係を考えながら読む授業……………86
           教材「動物のへんそう」
      5 要旨を理解する授業…………………………………………………………………91
           教材「動物の能力」
      6 事実と感想・意見とを読み分ける授業……………………………………………96
           教材「生きている土」
                                                        6
    三 文学(物語・童話)の読解授業モデル……………………………………………… 101
      1 場面の様子を想像しながら読む授業…………………………………………… 101
           教材「ふしぎなたけのこ」
      2 心情を想像しながら読む授業…………………………………………………… 105
           教材「はまひるがおの『小さな海』」
      3 場面の情景や人物の気持ちを想像しながら読む授業………………………… 110
           教材「手ぶくろを買いに」
      4 主題を読みとる授業……………………………………………………………… 115
           教材「大造じいさんとがん」

第V章 表現の学習指導モデル
    一 作文の学習指導過程モデル…………………………………………………………… 120
      1 作文の学習指導過程モデルの必要性…………………………………………… 120
      2 作文の学習指導過程モデルの編成……………………………………………… 121
      3 作文の学習指導過程モデル…………一………………………………………… 123
    二 題材・内容を選択・収集する授業モデル…………………………………………… 125
      1 書く事柄を思い出して収集する授業…………………………………………… 125
                                                        7
           題材「身近な人」
      2 よく観察して、書く事柄を収集する授業……………………………………… 128
           題材「パンジー」
      3 よく考えて書く事柄を収集する授業…………………………………………… 132
           題材「きまりを破ったわたし」
    三 文章を構成する授業モデル…………………………………………………………… 136
      1 作り方の順序をたどって文章を構成する授業………………………………… 136
           題材「でんでんだいこ」
      2 順序を整理して文章を構成する授業…………………………………………… 139
           題材「いろいろな顔」
      3 書く事柄を選び整理して文章を構成する授業………………………………… 143
           題材「お見舞の手紙」
      4 中心点が明確な文章を構成する授業…………………………………………… 146
           題材「やっとできた」
      5 段落の構成、段落相互の関係に注意して文章を構成する授業……………… 150
           題材「いろいろな国旗」
    四 文章を表現する授業モデル…………………………………………………………… 154
                                                        8
      1 学習基本文型を使って書く授業………………………………………………… 154
          題材「がっこうのにわで」
      2 文と文との続き方を考えて書く授業…………………………………………… 157
          題材「冬休みのこと」
      3 書こうとするものをよく観察して正確に書く授業…………………………… 161
          題材「生きもの」
      4 経験にまつわる生活感情を表現する授業……………………………………… 166
          題材「生活経験を書く」
      5 事象を客観的に文章に書き表す授業…………………………………………… 170
          題材「小さな生きもの」
      6 事実と感想・意見を書き分ける授業…………………………………………… 174
          題材「考えを深める」
    五 文章を修正する授業モデル…………………………………………………………… 177
      1 一層よい表現に直す授業………………………………………………………… 177
          題材「ふうせんあげ」
      2 叙述の仕方を工夫して修正する授業…………………………………………… 181
          題材「読書感想文」
                                                        9
    六 書いた作文を機能的に処理する方法………………………………………………… 185

第Y章 関連学習の授業モデル
    一 関連学習の指導過程モデル…………………………………………………………… 189
      1 関連学習の基本的な考え方……………………………………………………… 189
      2 関連学習の指導過程モデル編成の方法………………………………………… 190
      3 関連学習の指導過程モデル……………………………………一……………… 192
    二 関連学習の授業モデル………………………………………………………………… 194
      1 読み取ったことの概略を書く授業……………………………………………… 194
          教材「自然を守る」
      2 読んで理解した内容を組み立てて書く授業…………………………………… 197
          教材「植物も動く」
      3 読んで理解した内容を構造変換して書く授業………………………………… 202
          教材「外来語について」

第Z章 シミュレーションの指導モデル
    一 シミュレーションの指導過程モデル………………………………………………… 208
                                                       10
      1 文法学習のシミュレーションモデル…………………………………………… 208
      2 語句理解のシミュレーションモデル…………………………………………… 210
    二 シミュレーションの指導モデル …………………………………………………… 212
      1 学習基本文型のシミュレーション指導………………………………………… 212
      2 言語的文脈における語句理解技能のシミュレーション指導………………… 215
      3 漢字を読むことのシミュレーション指導……………………………………… 219
      4 段落相互の関係を考えて文章を構成するシミュレーション指導…………… 222

    会員名簿……………………………………………………………………………………… 228

                                                       11




 第I章 国語科授業の新しい方向


     一 戦後国語科の授業はどう変わったか


  1 言語経験中心――授業から経験学習へ

 戦前の国語の授業は、全国どこでも同じ国定教科書を使って、一課一課、課を追って、教師がその内容を教授する、
理解させるというものであった。ところが、戦後は、単元による学習の導入とともに、学習理論が脚光を浴びて、
「教授」から「学習」へという方向に拍車をかけた。学習の主体者は児童である。児童が主体的に学習するのを、教
師が助言し指導するというのがたてまえになった。
 その結果いろいろ変わった。まず、「授業」ということばが消えて「学習指導」となった。「教授」という教師の仕
事が「指導、助言」に変わった。戦前書いた「教授案」は、「学習指導案」と書くようになった。授業を進める過程「教
順・教式・教授過程」は、「学習指導過程」になった。「教材」も「資料」に変わった。その結果、戦前の「教科書を
教える」が、「教科書で教える」という考え方になった。このように国語学習の考え方が変わると同時に、用語もす
                                                       12
っかり変わった。それだけでも、新しい国語学習の誕生という印象を与えた。
 こうした戦後の新しい国語教育の実践は、単元による学習指導から始まった。戦前の一課一課の代わりに、「運動
会」「学級新聞を作る」「動物の愛情」というような、話題や題材や主題を中心とした単元が構成されて、それについ
て、聞く・話す・読む・書くなどの言語活動が、有機的・総合的に展開されるようになった。
 その結果、授業は狭い教室から、校内へ校外へと解放された。見学記録を書くために、メモを手にした工場見学が
始まった。工場見学を依頼する手紙も書いた。豆記者が活躍して学級新聞・学校新聞も編集された。学級会議を開い
て、遠足の実施を議題に、かっぱつな話し合い・協議も行われた。読書の結果は読書会を開いて発表し合った。
 こうして、国語の学習は、学校生活全体の中で行われるようになった。当時の国語科の目標は、豊かな言語経験を
与えること、言語経験を適切に処理できる児童を育てることという点にあったからである。だから、読解活動や読書
活動、自主的な話し合いや会議、研究の発表や報告、手紙や記録を書くなどという言語経験がかっぱつに行われるよ
うにするのがいい指導であり、よい授業であった。

  2 教科書中心――経験学習から技能学習へ

 ところが、豊かな言語経験を与え、かっぱつに学習活動を展開させても、その学習を通して、どんな国語の能力が
伸ばされるのか、どんな言語の学習が行われるのかが、はっきり押さえられていなかった。そこから、はい回る単元
学習とか、基礎学力が低下したとかいう批判を受けた。
 そこで、これまでは、単元をどう構成するか、どんな言語経験をどう組織するかが中心問題になっていたが、今度
は、言語活動をどのように系統立てるか、指導する国語の能力や発音・文字・語い・文法などの言語要素を、どのよ
                                                       13
うに系統的に指導するかという間題、系統的指導ということが間題になってきた。
 その言語活動や言語能力を系統的に現場に示すのは、国語教科書である。そこで、これまでの総合単元は解体され
て、読解単元・作文単元・聞く話す単元・言語単元など、単独の言語活動単元によって教科書は編集された。文字・
語い・文法などは、教科書の文章や作品の中に具体的に位置づけられるようになった。文章・作品の内容的価値や国
語の技能、言語要素の系統などを明らかにするための教材研究が盛んになったのはこれからであった。
 このことから、国語科の学習指導は、また、大きく変わった。学習の場は再び狭い教室に閉じ込められ、教科書中
心の指導が行われるようになった。その結果、これまでの導入・展開・終末という単元展開の学習指導過程では、も
はや文章や作品の学習を適切に進めることはできなくなった。そこへ、当時、要請されていた思考の養成の問題もあ
って、さまざまな新しい学習指導過程編成の試みがなされた。当時わたしどもも、@学習の目的をもつ、A学習の計
画・方法を考える、B目標追求の学習活動をする、C学習活動の結果を評価する、D学習目標を獲得するというモデ
ル学習指導過程を編成して、実験授業をくり返した。
 このような過程をたどって、文章や作品の内容的価値――知識や情報、思想や心情などを学習する中で、読解技能
やことばに関する事項を学習するのが本体、たてまえになった。したがって、教室では、教科書に載せられた知識や
情報を与える説明や解説を読んだり、経験を広め、心情を豊かにする童話・物語・伝記・詩・脚本などを読んだりし
て、読解力を伸ばし、文字や語句や文法の学習をする方向へと変わった。また、作文では、経験・手紙・感想や意見
・詩などを書いて認識を深めたり、作文力を伸ばしたりする授業が行われるようになった。
 しかし、一般にはなかなか読解技能や文字・語い・文法などことばに関する事項の系統的学習ということが理解さ
れなかった。たとえば、読解技能を育てる学習でも、読み方の学習をしないで、読みとった内容について話し合い、
                                                       14
意見を述べ合うことに大部分の時間をとるというような授業が多かった。こうしてかっぱつな活動が行われれば、そ
れがりっぱなよい授業であるという錯覚からなかなか抜けきれないでいる。

  3 授業中心――学習の多様化からモデル化へ

 学習指導が、教科書中心・教材中心に行われるようになると、教師の指導を主とした授業の形態をとるようになっ
てきた。と同時に、学習内容(基本的技能・基礎的技能)を先に出し、それをめがけて学習活動をさせるというよう
に変わってきた。が、いっぽうでは、自己学習・個別学習・発見学習・完全学習・システム学習、人間尊重の学習な
ど、さまざまな指導上の要請があった。主体的学習・プログラム学習・一人一人を生かす学習、学習スタイルを大事
にする学習・診断的・形成的評価を取り入れた学習、到達目標を具体化した学習などがそれである。
 こうして、学習指導上の要請が多様化すると、それらを適切にシステム化しなければならなくなる。その具体化は
日々の授業によっで実現される。そこで、授業における指導法の研究から、授業の組織・設計の研究、授業分析の研
究という方向をたどり始めた。そして、どんな授業がよい授業か、生産性の高い授業か、人間性を育てる授業かなど
が、盛んに論議されるようになった。
 また、学習内容の精選が言われ、基本的技能、基礎的技能の学習が強調され、それは、どの児童も落ちこぼれなく
身につけなければならないものとされてきた。が他方また指導する教師の側では、経験に乏しい、技術的にも若い教
師でも、豊かな経験をもち、技術的にもすぐれた教師でも、とにかく安心しで行える授業が要求されるようになった。
いわゆる基準的な授業、授業モデルの組織が要請されるようになった。
 こうして、日々の授業も、授業研究も、新しい方向をたどり始めた。
                                                       15

     二 どんな授業がよい授業か

  1 よい授業はどんなシステムをもっているか

 システムというのは、単なる構造や仕組ではない。ある目的を獲得するために必要なすべての要素が、目的を追求
する過程にそって、有機的に科学的に組織された全体、つまり、目的を追求するための方法を、有機的、科学的に組
織した過程をさしている。授業もまた学習の目標を追求するためのシステムである。
 普通、国語科の授業は教室で行われる。ときには、図書室や教育機器・学習資料の整備された特別教室で行われる
こともある。いずれにしても、いろいろな掲示物などがあって、言語環境も整えられ、教育的に整備されて、何かと
児童にいい刺激を与えるように工夫されている。
 その教室には、何十人かの能力の差。性格の差、からだの違い、男女の違いのある個性的な児童たちが、学習集団
を作っている。それがみんな、教材・資料を仲だちとする学習内容の獲得をめがけて、つまり、学習の目標をめがけ
て意欲を燃やし、ありったけの能力を働かせ、集団の中で相互に刺激し合い、協力し合いながら学習を進めている。
 これらの児童を覆い包むように、教育力・指導技術と教育的教養とを身につけた人格、教師がいる。教師は、みず
からの人柄を背景にして、児童の学習を指導したり教えたりする。
 このように、学習は教室環境・学習内容・児童・教師の四つの要素から成り立っている。この四者がそれぞれ相互
に有機的関係を保ちながら、目標を追求する児童の学習が成り立つように、成功するように、充分の力を出し合って
                                                       16
目標獲得への過程、歩みをたどっている。
 ここに学習の場が成り立つ。四つのものがばらばらでなく、互いに結び合い補い合って、つねに緊張関係を成り立
たせている。これが学習の場のゲシュタルトであり、授業の活気である。この活気を盛り上げながら学習目標を追求
し獲得する過程が学習であり、そこに進歩があり、創造がある。授業・学習の場はこのようにシステム化されている。
それがよい授業である。

  2 よい授業の条件は何か

 (1) 授業の条件五か条
 @ 学習目標が到達できるものとして、具体的に明確に立てられていること(行動目標・到達目標)
 授業の中でいちばん大事なことは、学習の目標が、ここまで到達できるというように、具体的に、行動的に、明確
に立てられていることである。このように立てられた目標を行動目標、あるいは到達目標と呼んでいる。従来学習目
標は、心情を豊かにするとか、要点を読みとる能力を育てるとかいうように抽象的であり、あいまいであり、高いも
のであって、一時間の学習の終わりに、どこまで到達できたのか、教師にも児童にもはっきり分からなかった。
 ところが、行動目標は「○○段落の要点を理解して『ことば以外に身振りで伝える方法がある。』と書くことがで
きる。」というように、具体的に、行動的に、明確に記述される。だから、学習の終わりに、そこまで到達できたか
どうかを、自分で判断し評価することができる。
 このように到達できる目標が、明確に立てられていると、児童もそれをめがける学習課題を設定し、学習意欲に燃
え、学習の努力をし、学習方法を工夫したりして、主体的な学習がしやすくなる。また、行動目標は評価の基準をも
                                                       17
含んでいるから、学習の結果は自分で評価することもできるようになっている。
 学習目標を行動目標として、具体的に行動的に立てることは、よい授業を実現する第一の条件である。
 A 学習内容が明確に押さえられシステム化されていること(基礎的技能・基本的技能)
 学習内容というのは、学習目標に到達するために、その時間に学習する国語の技能と言語事項のことで、文章や作
品の内容ではない。学習指導要領の各学年の「内容」のところに示されている「言語事項」と、「表現・理解の技能」
である。具体的に言えば、その時間に、文章や作品を理解したり、経験・情報・知識・感情・感想や意見などを表現
したりして、身につける理解・表現の態度・技能と、言語事項(発音・文字・語句・文法・表記)などである。
 よく、きょうは活発に学習したが、何を学習させたのか分からないなどと評される授業は、すべて、その時間に児
童が身につけるこれらの基本的技能や基礎的技能としての言語事項が、はっきり押さえられていないものである。こ
のような学習する技能・言語事項を明確に押さえて指導することが、よい授業を実現する第二の条件である。
 B 学習方法として生産的な学習活動がシステム化されていること(基本的言語活動――学習活動)
 学習方法というのは、明確に押さえられた基本的技能や言語事項を学習する方法で、学習活動そのものをさしてい
る。たとえば、「要点を理解する技能」を学習するためには、@文章の要旨に照らして段落ごとに要点を読みとる、
A段落ごとに要点と細部との関係を考えながら読むなどの学習活動を行う。その場合、@とAは別々ではなく、相互
に関連し合って「要点を理解する技能」をいっそう確かに伸ばしていく。このように、基本的技能を学習するための
言語活動が、基本的学習活動である。
 よく、何のために読むのか、書くのか、話し合うのかはっきりしない、むだな意味のない活動をさせる授業がある。
そういう意味のない活動・むだな活動を省いて基本的な学習活動を適切に組織し、効果的、生産的な技能の学習が行
                                                       18
われるようにするのがよい授業である。このような機能的基本的な学習活動を組織するのがよい授業の第三の条件で
ある。
 C 学習目標に到達するための学習指導の過程がシステム化されていること(学習指導過程)
 普通の授業では、児童は何のために何を学習するのか、学習の目標を自覚し、意欲的に目標を追求するための学習
活動を行う。教師は、その学習が成功するように指導助言をしたり教えたりする。そして一つの学習活動が終わると、
どのくらい目標に近づけたかその結果を評価する。児童は、その評価の結果を自覚し、その状況によっては学習のや
り直しをする。それから次の学習活動へと進んでいく。こうして最後に学習目標に到達すると、児童は成功の喜びを
味わって授業は終わる。
 この継時的な一連の児童の学習の過程にそって、教師が指導助言して学習を成功させる過程が、いわゆる学習指導
過程である。だから、学習指導過程は、児童の学習の過程。または、児童の思考の過程、あるいは、児童の認識の過
程を中心にして、そこに評価・調節の過程を加えて編成する。したがってその過程をたどっで授業を進めれば、だれ
でも、筋道のたった、生産的・主体的な学習、一人一人を生かし伸ばす学習を指導することができる。このようにシ
ステム化された学習指導過程をたどって行われる授業がよい授業である。このシステム化された学習指導過程に従っ
て学習を進めるというのが、よい授業を実現する第四の条件である。
 D 適切な題材・教材が用意されていること(基本的教材)
 読解の授業は、普通、教材としての文章や作品を読んで、知識・情報・思想・心情などを理解したり享受したりす
るとともに、読解技能や文字・語句・文法などの言語事項を学習することができるように仕組まれている。
 したがって、教材は。その時間に学習する目標を具体的に含み、その時間に学習する技能や言語事項が、適切に学
                                                       19
習できる内容と構造をもっていなければならない。たとえば「要点を理解する技能」を学習するための文章は、各段
落が、要点と要点を説明・解説する細部とによって構成されていなければならない。そうでないと、要点を理解する
技能の学習が成り立たない。そのような基本的技能が適切に学習できる教材が、基本的教材である。
 また、文章や作品の内容が、児童の関心・興味を喚起し、学習の必要を自覚させ、しかも、その能力に合ったもの、
児童の人間性の開発伸長に役だつものであることが、児童の意欲的な自主的な学習を促すものである。このような機
能的な基本的教材が選ばれていることが、よい授業実現の第五の条件である。
 (2) 児童の条件三か条
 授業の中心は児童であるから、児童のもつ条件は、授業をいきいきと展開する上に重要である。
 @ 学習の目標を自覚し、学習意欲に燃えていること(学習態度)
 知的好奇心が旺盛で、つねに疑問をもち、問題を作り、それを積極的に追求し解決しようとする態度が身について
いること。
 A 自分の学習技術・学習法を使って自主的に学習すること(学習法の学習)
 学習意欲に燃えていても、学習の仕方・学習技術が身についていないと、学習の抵抗が大きくなかなか成功しない。
学習に成功しないと学習意欲も失われる。それぞれ個性的な自分の学習法を学習して、自主的に学習が進められるこ
と。
 B 工夫し創造する力を働かせること(人間性の開発)
 学習の課題を作ったり、学習に工夫を加えたり、理解の結果を表解したり、発想転換をして再構成したりするなど、
自分で考え、自主的に行動すること。話を聞き、文章を読む場合でも、話をし、文章を書く場合でも、問題に即し、
                                                       20
事柄に即して、筋道を立てて考え学習すること。いつでも自分自身の考え、独自の考えをもっていること。
 (3) 教師の条件三か条
 教師は、児童の学習を指導して、よい授業を実現する総括的な責任者である。
 @ 児童一人一人の実態を知りつくしている(児童理解)
 児童を確かに見る目を身につけていて、児童一人一人の表現力・理解力の実態はどうか、どんな学習スタイルをも
っているか、学習態度はどうか、どこにどんなつまずきをもっているかなどを詳しく知っていること。また、それぞ
れの児童について、学習指導上のポイントを確実に押さえていること。
 A その時間に、何を、どのように、どこまで学習するかを明確に押さえていること(学習指導システムの理解)
 学習目標、学習する技能・言語事項などの学習内容と、それをどのように学習させるか、また、どこでどのように
評価し調節するかなど、学習指導の全般、つまり、学習指導システムを十分に理解していること。
 B 学習指導の機会と方法とを十分に心得ていること(指導助言の機会と方法)
 学習の各過程で、何を、どのように、どこまで学習させるかをよく心得ていて、学習の抵抗、つまずき、指導の適
時を的確にとらえ、有効適切に指導することができること。
 (4) 学習の場の条件
 学習の場は、教室と、児童の学習と、教師の指導とが、有機的に関連し合って醸成されるゲシュタルトであるから、
相互に緊密に結び合って緊張と活気に満ちていること。
 このように、授業の五条件・児童の三条件・教師の三条件と、それらを包む学習の場の条件がシステム化されて、
そこにかもし出される活気が、授業を決定づけるものである。
                                                       21
  3 これからの授業のもつべき性格は何か

 (1) 単純化された授業であること
 豊かな経験者だけが実践できるというような複雑な授業は、必ずしもよい授業ではない。授業は、本来児童が中心
になって教師とともに作り出していくものである。それだけに、よい授業は、授業そのものが、モデル化された学習
指導過程を中心にして、むだな活動を省き、根拠のない思い付き的な方法を排し、筋道の通った単純化されたもので
なければならない。それは、教師にとって指導しやすいだけでなく、児童にとっても、学習法の学習として、学習過
程を利用する技能を身につけることができる。単純化されているから、児童と教師が話し合いの上で、あるいは、児
童が自分で学習の過程をパターン化して、学習のフローチャートを作ることも容易である。したがって、児童がフロ
ーチャートに従って自己学習、共同学習を進めることも可能になってくる。
 (2) システム化された授業であること
 授業が思うように進まないというのは、学習目標とそれを追求する学習活動が結びつかない。学習する基本的技能
と、それを学習するための学習活動とが一致しない。学習過程と児童の思考・認識の過程が一致しない。教材の内容
や表現・叙述が、児童の興味や必要や能力と合っていないなどという場合である。授業を組み立てる要素がばらばら
になっている場合である。
 もともと授業は、教師の指導助言を受け、学習指導過程をたどり、基本的教材を理解する、基本的な学習活動を通
して、基本的技能・基礎的技能を学習しながら、学習目標に到達する一連の流れとして実現されるものである。した
がって、学習に参加する基本的教材、それによる基本的学習活動、学習活動を通して学習される基本的技能・基礎的
                                                       22
技能、開発される人間性などの諸要素が、それぞれ有機的に結合し統制されている。つまり、学習に参加する諸要素
が、目標を追求する過程としてシステム化されていなければならない。
 (3) モデル化された授業であること
 授業に対する社会的な、学習理論的な、教育工学的な、人間教育的な諸要請が、今日ほどたくさん出されている時
代はかつてなかった。それだけに授業はいよいよ複雑な、むずかしいものになってきて、経験豊かな教師でも、自信
をもって授業を進めにくくなっている。何を捨て、何を取り入れたらよいのか、どんな考えに立ち、どのように指導
したらよいのか、将来を見通して授業をどう組織し、どう進めたらよいのか判断に迷っている。
 そこで、熟練した教師も、経験の少ない教師も、これに従ってやれば、要請された諸条件のいくつかは満たされ、
必要な国語の技能も育てられ、人間性の開発にも役だつ授業が成り立つ、そういう安心してやれる基本的な授業の進
め方を望んでいる。もちろん、そのような基本的な授業の進め方、モデル化された授業は、授業に必要な諸条件をシ
ステム化しモデル化した骨組みであるから、教師は、その経験・教養・技術の多少に応じた肉づけ、心づけをし、自
分のもの、個性的なものとする必要がある。                         (中沢 政雄)
                                                       23


  第U章 だれでもできる新国語科の授業設計
           ――そのシステム化とモデル化――


     一 単元のシステム設計はどのようにするか

 どの教科書でも、その教科書を中心としたカリキュラムが編成されているはずである。それを参考にして、各単元
ごとに、次の点について考えてみる。
 @ 単元の学習目標――この単元の学習を通して、どんな人間性を育てるのかを教材に即して考えて、いわゆる価
  値目標をできるだけ具体的に設定する。(技能目標を併記する向きもあるが、ここではとらない。)
 A 単元の学習内容――価値目標をめがける過程で学習する基本的態度・基本的技能・基礎的技能としての発音・
  文字・語句・文法・表記などを、教材に即して具体的に明確に押さえる。
 B 単元の学習活動――学習内容としての基本的態度・基本的技能・基礎的技能などを身につけるための適切な学
  習活動・基本的学習活動を選んで組織する。
 C 単元の資料・教材――単元の目標を達成し、学習内容を学習するための教材として適切かどうかを考えてみる。
 D 単元の評価――単元の評価・単元の目標に照らして学習を評価する観点を具体的にあげる。
                                                       24
 この場合、単元のシステム要素としての、目標・内容・方法・資料・評価の五つがばらばらにならないように、相
互に有機的な関連をもつようにシステム化することが重要である。そのためには、次のように「単元のシステム」を
編成してみると、要素相互の関係を明らかにすることができる。また、その適否を検討修正するのに便利である。
 次に、東京都小平市立第九小学校能瀬外喜雄教諭の編成した、単元「山のぼり人形」のシステムをあげてみる。

学 習 目 標 学  習  内  容 学習資料 学習方法(学習活動) 学習評価
 「山のぼり人形」
を読んで、山のぼ
り人形を作る順序
や遊ぶ楽しさを理
解するとともに、
物事を順序だてて
考える力を伸ばす
ことができる。 
△興味をもって進んで読もうと
 すること
△順序を押さえて理解しようと
 すること
O事柄の順序を考えながら理解
 すること
O文章に書いてあるとおりに正
 しく理解すること
・指示語と接統語の役割と使い
 方に気付くこと
・新出漢字・読替漢字を読み必
 要な語句を理解すること 
・教材「山
 のぼり人
 形」
・学習シー
 ト
・絵
・〇HP
・山のぼり
 人形を作
 る材料 
1 山のぼり人形の製作過程を理
  解するために全文を直観的に
  読む
2 山のぼり人形の作り方と動か
  し方、のぼるわけを分析的に
  読んで理解し、山のぼり人形
  を作る
3 山のぼり人形の作り方、動か
  し方、のぼるわけを確認する
  ために全文を体制的に読み、
  山のぼり人形を作って遊んだ
  ことを話し合う 
O直観的に山のぼり
 人形の製作過程が
 押さえられたか
O書いてある事柄の
 まとまりごとに作
 る順序、動かし
 方、のぼるわけが
 理解できたか
O山のぼり人形の作
 り方を理解し、大
 体を説明すること
 ができたか 

                                                       25



     二 単元展開のシステム設計はどのようにするか

 単元はカリキュラム編成の単位であって、七時間なり十時間なりかけて学習する一まとまりになっている。そこで、
これを授業にのせて学習する場合には、単元を、いくつかの小さい部分のまとまりに分けて学習する。この小さく分
けた部分、一時間か二時間で学習できるくらいのまとまりに分けた部分が、学習単位である。
 たとえば、読解単元で、全文を直観的に読む(一単位)、全文六段落を三段落ずつに分けて読む(二単位)、全文を体
制的に読む(一単位)、というように、単元を四つの学習単位に分けて学習する。また、作文単元だと、学年によって
違いはあるが、題材を選択する過程と書く内容を収集する過程で一単位、書く内容を整理して文章を構成する過程を
一単位、文章構成に従って表現・叙述する過程を一単位、書いた文章を修正する過程を一単位というように、作文学
習を四単位に区分して学習する。
 このように、単元を何単位かに区分して、単元の展開計画・指導計画を立てる。その学習単位ごとに、次の点につ
いて考え、「単元展開のシステム」を編成し、あとに示す形式に従って指導計画表を作成する。
 @ 行動目標を設定する――その単位の学習は、ここまで到達できるという目標を、教材・題材に即して、具体的
  に行動的に記述する。
 A 学習する基本的技能・言語事項を押さえる――行動目標に到達するのに必要な基本的技能と、発音・文字・語
  句・文法・表記などを、教材に即して具体的に設定する。(これは世に言う「指導事項」である)
                                                       26
 B 基本的な学習活動を組織する――その教材によって、どんな順序で、どんな学習活動を組み立てて学習すれば
  行動目標に到達し、基本的技能と言語事項の学習ができるかを考えて、学習活動を配列する。
 C 教材の内容、構造を明らかにする――その教材のどこでどうすれば基本的技能が身につくか、また、どの漢字、
  どの語句、どんな文法について指導するかをチェックする。
 D 学習結果の評価の観点・基準・方法を考える――学習の評価は行動目標に照らして行う。評価の観点は、行動
  目標に示されている基本的技能、基準は行動目標に示された内容的事項、方法は自己評価、相互評価その他。
 学習単位ごとに以上の事項を考えて指導のシステムを編成する。その場合・単元と同様に行動目標・基本的技能・
学習活動・教材・評価は互いに有機的関連をもたせてシステム化し、次の形式によって表示する。

過程・時間 行動目標 △態度・O技能・言語事項 教材範囲 学習活動 評価の観点・基準・方法
           


    三 よい授業のシステム設計はどのようにするか

 1 よい授業のシステムを規定する「学習単位」の確認

 学習単位は、一時間、あるいは二時間の授業の内容を規定するもので、次のようなシステムをもっている。
 @ 学習範囲を限定する――読解の場合は、その時間に学習する教材の範囲、たとえば、全文・何段落、どんな場
                                                       27
  面、どこからどこまでというように具体的に限定する。作文の場合だと、その時間に指導する過程、たとえば、
  題材選択・書く内容収集の過程とか、文章を構成するアウトライン作りの過程とか、文章の表現・叙述の過程と
  かいうように限定する。
 A 学習目標を内包する――学習範囲内には、学習の目標として追求するに足る内容的価値と技能とが含まれてい
  る。
 B 学習内容を限定する――そこで学習できる基本的技能・言語事項が具体的に設定される。
 このように「学習単位」は、学習の範囲・学習の目標・学習の内容によって構成されている一まとまりである。こ
の学習単位は、単元全体の指導計画を立てる際に設定され、そのシステムも編成されているものであるが、授業を計
画設計する場合には、まず、この学習単位とそのシステムを再確認する必要がある。

  2 主体的な授業を保証する「行動目標」の設定とそのシステム

 単元の学習目標は、何時間かの学習の結果到達するものであるから、具体的に行動的に記述すると言っても、まだ
抽象的なところが残る。しかし、一時間の授業の学習目標は、学習範囲も狭く、使う技能も具体的にはっきりしてい
るから、できるだけ具体的に行動的に、一時間の学習の終わりには、そこまで到達できるものとして設定する。しか
も、その目標に到達できたかどうかが、教師にも児童にも、観察したり測定したりして判断できる、評価できるよう
に記述する必要がある。
 そのためには、児童が学習した結果、理解した知識や身につけた技能――それはいわゆる内部行動で、だれにもう
かがい知ることはできない――それを話したり、説明したり、書いたり、表解したりして外部行動として表す。つま
                                                       28
り、学習したままでは、観察も測定もできない技能や内部の知識・情報・思想・心情などを、説明する・書くなどの
言語行動として表に表す。そうすれば、その説明や文章を観察したり、その内容を調べたりして、学習の結果や状況
を判断して評価することができる。
 たとえば、段落の要点を確実に理解する授業の場合を考えてみると、学習範囲は、一つの段落、学習する技能は、
 「段落の要点を理解する技能」と、「要点と細部との関係を理解する技能」とである。そこで行動目標は、「段落の要
点と細部との関係を理解して次のように書き、要点は細部を総括していることを理解することができる。」
                ┌―あたたかい感じやつめたい感じ
  色はさまざまな感じをあたえる┼―目のつかれを休め気持ちをやわらげる
                └―よく目だつと目だたない
というように書く。学習の結果、児童が、上のように書くことができれば、それを観察して学習目標に到達したと、
教師も児童も判断することができる。それは、要点と細部との関係を理解する技能が働いて、要点をいっそう正確に
深く理解したことを意味している。あとで述べることであるが、行動目標は、評価の観点(段落の要点を理解する技
能)、評価の基準(書き出した事項――内容的価値)から成り立っているというのはこのことである。
 ところで、この行動目標の成り立つ過程を考えてみると、次のようになる。
 @ 学習する対象の範囲を決める(学習教材)
 A その範囲の学習に必要な読解技能を働かせて学習活動をする(学習技能)
 B その学習の結果、知識や情報、思想や心情などが理解され享受される(内容的価値)
 C 得られた内容的価値について説明したり書いたりする(言語行動)
                                                       29
 これをさらに整理してみると、@学習範囲を決める、A学習技能を使う、B内容的価値を理解する、C言語行動化
する、ということになる。したがっで、行動目標は、この過程、手順をたどれば容易に設定される。
 そこで、行動目標を設定するには、@読む対象、A読む技能、B読みとるべき内容、Cその外部行動化(説明する、
書く、絵や図に書く、表解する、行動するなど)の方法を含めて記述すればよい。次に例をあげてみる。
 (1) 文章を要約して概略を理解する学習の行動目標
    「○○の文章」を読んで、その概略を次の事項を含めて四百字ぐらいに要約して書くことができる。
   @………。A………。B………。C………。D………。
 (2) 人物の性格を理解する学習の行動目標
    「太郎こおろぎ」の太郎の紹介の部分を想像しながら読んで、その行動から性格を次のように想定して書く
   (話す)ことができる。
   太郎はいたずらっ子で、がきだいしょうでこわがられているが、なんとなく親切なところがある。
 (3) 場面の様子を想像しながら読む学習の行動目標
    「レナドと姉弟がしだいになかよしになっていく場面」の様子を想像しながら読んで、いっしょに遊ぶレナド
  のかわいくも美しい姿をイメージに描くとともに、いかにもなかよく楽しそうな、平和な情調を感じたと話す
   (書く・絵にかいて説明する)ことができる。
 (4) 細部との関係を考えて段落の要点を理解する学習の行動目標
   「段落○○」の細部を抽象化してまとめその要点を理解して次のように書くことができる。
  ひとで、いもむし、こうもりがさなどは、ものの形によってつけた名まえである。
                                                       30
 (5) 段落の要点を理解する学習の行動目標
   段落の要点を「漢字は意味を表す文字なので、漢字を組み合わせれば自由にことばを作ることができる」と理
  解して、その例を三つあげることができる。
 これらの行動目標は、前に述べたように、@読む対象、A読む技能、B読みとるべき内容的価値、Cその外部行動
化の方法によってシステム化されている。このように行動目標のシステムモデルを作っておくと、容易に行動目標を
設定することができる。

  3 確実な授業を保証する「態度・技能・言語事項」の設定とそのシステム

 一時間の授業で児童が学習する内容(俗に指導事項あるいは学習事項と呼んでいる)は、基本的態度・基本的技能
・言語事項であって、これも学習単位によって限定されている。
 具体的に言ってみれば、その時間の行動目標を達成するために必要で、しかも、目標を追求する過程で理解する内
容的価値と、身につける学習態度・基本的技能・言語事項などで、それぞれ教材に即して具体的に設定する。したが
って、その時間の学習内容(学習事項)は、
 @ 教材の範囲内で学習する文字・語句・文法・表記などの言語事項(基礎的技能)
 A その教材の内容を理解するために必要な読解技能(基本的技能)
 B 読解技能の働きをかっぱつにする言語態度(方法的態度)
ということになる。これらは、ばらばらに並立的に、時間を追って働くのではなく、@の基礎的技能は、Aの基本的
技能の働きを裏からささえ、Bの方法的態度は、Aの基本的技能のかっぱつな、積極的な働きを保証する。このよう
                                                       31
に三者は、有機的関係を保ちながら一体となって働いて、行動目標に示されている内容的価値を理解し獲得する。
 だから、その時間の学習内容(学習事項)を設定する場合には、このように、学習態度・基本的技能・言語事項を、
システマティックに配列することが大事である。次にその例をあげてみる。
 (1) 文章を要約して概略を理解する授業の学習内容(学習事項)(◎態度・O技能・言語事項)
  ◎文章の概略を理解しようとすること
  O文章の要点を押さえて要約すること
  O段落ごとの要点を理解すること
  文章における段落相互の関係を理解すること
  接続語の働きを理解すること
 (2) 場面の気分や情調を味わいながら読む授業の学習内容(学習事項)
  ◎場面の様子や人物の気持ちを味わいながら読もうとすること
  O場面の様子や人物の気持ちを想像しながら読むこと
  O場面の気分や情調を味わいながら読むこと
  読むために必要な感性的な語句を増すこと
  語感を育てること
 以上二例を示した。便宜上並べて書いてあるが、その技能の内容をみると、三者が有機的に結合し、一体となって
働くことがわかる。なお、(1)は、「文章の要点を押さえて要約すること」が、そこで指導する基本的技能であるが、
その下位技能「段落ごとの要点を理解すること」が添えてある。(2)は、「場面の気分や情調を味わいながら読むこと」
                                                       32
がそこで指導する基本的技能であるが、これも、その下位技能「場面の様子や人物の気持ちを想像しながら読むこと」
が添えてある。
 また、これらの技能は、それぞれ前述のように印で示した言語事項にささえられ、◎印で示した態度に保証され
ている。このように、態度・技能・言語事項は、相互に関係しながら有機的に結びついている。次に作文の例を示す。
 (1) 文章構成のアウトラインを作る授業の学習内容(学習事項)
  ◎筋道を立てて文章を構成しようとすること
  O書く事柄を構成して段落にまとめること
  O段落相互の関係を考え筋道を立てて文章を構成すること
  段落は要点と細部とによって構成されていること
  文章は段落と段落とが相互に関係し合って構成されていること
  接続語・指示語の役割を理解すること
 (2) 文章を正確に客観的に書く授業の学習内容(学習事項)
  ◎観察したことを正確に客観的に書こうとすること
  O観察したことを正確に書くこと
  O観察したことを客観的に書くこと
  事象の静態・状態・動態を表す語や修飾語を使って書くこと
  数量を表す語や図や表などを使って書くこと
  学習した漢字を正しく使って書くこと
                                                       33
 作文も読解も変わりはない。やはり、態度と技能と言語事項は、有機的関係を保ってシステム化されていなければ
ならない。と言うのは、この学習内容がばらばらだと、それらを身につける学習活動もまたばらばらになって、学習
目標を達成することができなくなるし、国語の技能を的確に身につけることもむずかしくなる。

  4 生産的な授業を保証する「基本的学習活動」の設定とそのシステム

 授業の中で実施される読む・話す・書くなどの学習活動は、行動目標に示されている内容的価値や人間性を追求し
獲得するために児童が行う計画的・意図的な活動である。それは同時に、学習内容(学習事項)としての基本的態度
・基本的技能・基礎的技能を学習する、身につける活動でもある。したがって、どんな学習活動を設定するかは、そ
の時間の行動目標と、その時間に学習する基本的技能によって決められる。原則としては、一つの基本的技能に対し
て、一つの基本的学習活動を設定する。
 たとえば、行動目標が「文章全体を読んでその内容を要約し、次の事項を含めて二百字ぐらいにまとめることがで
きる。@………A…… B……」で、そこで学習する基本的技能が「要点を押さえて文章を要約すること」である場
合、どんな学習活動をさせればよいか考えてみる。
 まず、「全文を読んで、直観的に理解した大事なことを押さえて要約を書く」ことにすれば、基本的な学習活動は、
 「文章全体を読んで要約(概略)を書く」という活動一つになる。しかし、一回の読みでは、完全な要約を書くこと
は困難である。それを評価してみれば、大事なことが落ちていたり、余分なことが書いてあったりする。そこで、さ
らに足りないところを補い、余分なことを削るために、調節読み(読み直し)をして、条件に合った要約を書く。そ
こで、@基本的な学習活動と、A読み直して書くという補助的な学習活動とを組み合わせて、行動目標に到達するこ
                                                       34
とになる。
 あるいはまた、この基本的技能を分析して、「段落ごとの要点を理解する技能」と、「要点を押さえて要約を書く技
能」とに分けて、下位技能を設定すれば、@段落の要点を理解するために読む学習活動と、A理解した要点を押さ
えて要約を書く学習活動の二つを組織することになる。この場合も@は補助的学習活動で、Aが基本的学習活動であ
る。
 このように、行動目標を追求する基本的学習活動を中心にして補助的学習活動を組み合わせる場合には、次のよう
にシステム化する。
 (1) @ 全文を読んで要約を書く  (2) @ 全文を読んで要点を書く  (3) @ 要点に傍線を引く
    A 読み直して要約を書き直す    A 要点をまとめて要約を書く。   A 要点を書き出す
                                       B 要点をまとめて要約を書く
 このように、実際の学習指導では、基本的学習活動を中心にして、補助的学習活動を組織することになる。これら
の学習活動は、行動目標を追求するためのものであるから、学習指導過程の重要な中心部分になって、その生産性を
発揮する。だから、学習活動は、行動目標を達成し、同時に基本的技能を身につけるための最適の学習活動を設定し
なければならない。
 ともすると、この学習する基本的技能と学習活動とがぴったり合わなかったり、あるいは、意味のないむだな学習
活動をさせたりすることがある。たとえば、基本的な読解技能の学習をめがける授業でありながら、一度読んだだけ
で、あとはもっぱら理解した事柄について話し合う活動をさせて終わるというような授業がそれである。
                                                       35
  5 完全学習を保証する「学習評価・学習調節」過程の設定とそのシステム

 授業中、文章を組み立てたり、文章を読んだりすれば、当然その結果うまくできたかどうかを評価する。学習の結
果を評価しないで、学習を進めることは考えられない。評価の結果、学習に成功していれば学習を進めるし、つまず
いていれば、つまずきの要因を調べて学習のやり直し、学習調節を行う。この学習評価と学習調節は、学習指導をす
る場合に欠くことのできない大事な手順である。
 (1) 授業中の学習評価のシステム
 ところで、授業中の評価は、行動目標をめがけて学習活動をした結果、目標に到達できたかどうか、その状況を判
断するために行われる。このような学習過程における評価を、学習中の評価、あるいは、形成的評価とよんでいる。
 その学習評価は、普通学習目標に照らして行われる。たとえば、ある授業の学習目標が、
  「太郎こおろぎ」の太郎の紹介の部分を想像しながら読んで、太郎の行動から性格を次のように想定して書くこ
  とができる。
   太郎はいたずらっ子で、がきだいしょうでこわがられているが、たんとなく親切なところがある。
というように、行動目標として立てられている。この目標を追求するために児童が行う学習活動は、@「太郎の性格
を理解するために読む」であり、それによって学習する技能は、A「人物の性格を想像しながら読むこと」である。
また、児童に読みとらせ理解させる性格は、B「太郎はいたずらっ子で、がきだいしょうでこわがられているが、な
んとなく親切なところがある。」である。
 そこで、児童が@の学習活動を行ったあと、その結果を評価するのであるが、評価の対象となるのは、Aの学習す
                                                       36
る技能で、「太郎の性格が想像できたかどうか」ということである。したがって、このAの技能が、評価の対象、「評
価の観点」となる。
 次に、その技能が働いたかどうか、学習されたかどうか、その技能が働いて行動目標に到達できたかどうかを判断
しなければならない。その判断をする場合の基準、どこまでできればいいとするか、そのものさしが「評価の基準
 (到達基準)」である。この例の場合は、Bの「太郎の性格」についての記述である。児童が読んで書いた太郎の性
格がBと同じであれば、児童はできた、学習に成功したと言える。それは、「性格を想像しながら読む技能」が働い
た、学習されたと判断できるからである。
 このように、学習評価の観点(学習する技能)、評価の基準(理解した内容的価値・内容的事項)は、その時間の行
動目標によって規定されている。
 ところで、その評価はどのようにするか、評価の方法、形態は、「評価基準の提示の仕方」と、「だれが評価する
か」によって決められる。次に評価基準の示し方をあげてみる。
 @ 見本法――評価基準を、行動目標に、ここまで到達すべきものとして示された内容的事項を、そのまま見本と
  して提示し、児童が理解して書いたものと比べて、その正誤・適否を判断する。前の例で言えば、「太郎はいた
  ずらっ子で……親切なところがある」をそのまま、板書・カード・OHPなどで提示して、児童の書いたものと
  比べ、同じか、足りないこと・余分なこと・不適当なことはないかなどを判断し評価する。
   このように、評価基準を評価見本として提示して評価する方法が「見本法」である。
 A 条件法――行動目標に示されている内容的事項、つまり、評価の基準をいくつかの要素に分析し、それらを
  「判断の条件」として提示する。児童は自分が書いたものの中に、それらの条件が含まれているか、それらの条
                                                       37
  件に合っているかどうか、過不足・適否を判断して評価する。
   たとえば、前にあげた評価の基準「太郎はいたずらっ子で、がきだいしょうでこわがられているが、なんとな
  く親切なところがある」の内容を、要素的に分析すると、@いたずらっ子、Aがきだいしょうでこわい、B親切
  なところの三つの要素になる。そこで、この三つの要素を条件として提示し、児童の書いた太郎の性格の中に、
  これらの条件が含まれているかどうか、また、余分のことが入っているかどうかを判断して評価する。
   このように、評価基準を、チェックする条件として提示する方法が「条件法」である。
   なお、作文学習で、行動目標が「『小さい生き物』をよく観察し、次の書き表し方に従って、その静態・状態・
  動態を正確に客観的に叙述することができる。@具体的に書く、A動きを表す修飾語を使って書く、B測定値を
  使って書く、C図や表をかいて説明する」というように設定されている場合の評価基準は、@〜Cまでの叙述
  法、書き表し方である。そこで、児童が観察したことを客観的に、正確に書いた文章を評価する場合には、@具
  体的に書けたか、A動きを表すことばを適切に使っているか、B数量を表すことばが使われでいるか、C図や表
  を使って説明しているかの四つの条件を示し、この条件に照らして評価する。
 B 選択法――評価基準を、段階づけ、重みづけをした選択肢として提示し、それと自分のと同じもの、あるいは、
  それにいちばん近いものを選ばせる評価法である。これを「選択法」と呼んでいる。
 このように、評価基準の提示の仕方によって評価法は異なってくる。
 このような評価法を使ってだれが評価するかによって、「評価の形態」が異なってくる。たとえば、教師が主とな
ってする教師評価、児童自身がする自己評価、児童が相互に行う相互評価、グループでするグループ評価、児童の話
し合いによる共同評価など、さまざまな評価形態がある。が、自己評価ができるようになるのが理想である。
                                                       38
 以上をまとめてみると次のようになる。
 (1) 行動目標を追求する学習活動をする。
 (2) 学習活動の結果を目標に照らして、目標に到達できたかどうかを評価する。
  @ 評価の観点は、目標・内容に提示されている基本的技能・基礎的技能である。
  A 評価の基準は、行動目標に示されている内容的事項である。
  B 評価の方法は、評価基準の提示の仕方による。
  C 評価の形態は評価者によってきまる。
 (2) 授業中の学習調節のシステム
 @ 学習調節ということ
 前に述べたように、授業ではいつも学習の目標(行動目標)を追求するための学習活動を行う。学習活動が終われ
ば必ずその結果を、行動目標に照らして、どれだけ目標に近づけたか、目標に到達できたかを評価する。評価の結果、
目標に到達できたかどうか、その状況を明らかにする。目標に到達できなかった場合には、その状況に応じて、学習
の仕方を考えて、学習を仕直し、だんだん目標に近づき、やがて目標に到達するという過程をたどる。
 このように、学習の結果を評価し、その状況に応じて学習の仕方を工夫し調節して、再び学習の原点にもどって学
習を仕直す学習方法、学習過程が、学習調節であり、学習調節過程である。これをフィードバック、フィードバック
回路などとも言う。
 A 学習結果の知識・状況
 ところで、学習活動の結果を評価すると、学習に成功したか失敗したか、どれだけ目標に近づけたか、あるいは、
                                                       39
どこは正しく、どこは誤っているか、まだ、どれだけのことを学習しなければならないかなど、学習の結果の状況が
明らかになる。これがいわゆる学習の結果の知識・KR(Knowledge of result)である、この評価の結果わかった
学習結果の知識・状況は、児童によく知らせ、自覚させる必要がある。しかも、それは学習後早いほうがいいと言わ
れている。と言うのは、児童は学習の結果、目標に到達していないことを自覚すると、「よし、今度こそ成功するた
めに努力をしよう。」という「自我発展の意欲」が喚起されるものだと学習心理学が教えているからである。つまり、
学習動機が新たに、いっそう喚起されて、学習活動が、かっぱつに行われるようになる。
 B 調節条件の設定と学習調節
 このように、児童が学習評価の結果を知って、自我発展の意欲に燃えるところを押さえて、学習に不適応・不成功
の原因はどこにあったか、どんな学習法の誤りがあったかなどを発見させる。それにもとづいて、今度は、どんな方
法で、どんな点に注意して、どのように学習すれば、学習に成功するかを考えて決める。この学習の仕直し、再学習
をするときの条件が「学習調節の条件」である。この調節条件は、原則としてそこで働かせる技能の学習に強化を与
えるものでなければならない。
 たとえば、@課題・技能を再確認して、A不足の事項を捜して、B前後の関係を考えて、C筋道を立て直して、D
事件の展開を考えて、E気持ちの変化をたどり直して、F技能の使い方を明確にして、G学習法を再確認して、H指
示語・接続語などに注意してなどのように、学習結果の状況に応じて、その技能の働かせ方を、しだいに正しくし、
適切にし、確実にするための条件を設定する。
 ところで、この調節条件は、自己学習・自己評価の上に立って、自分で設定するのが原則であるから、能力の差に
よって違いができる。これが調節条件の個別化である。しかし、現在の一般の授業では、同じ教材、同じ課題、同じ
                                                       40
学習法、同じ学習活動で一斉に学習を進めているから、学習の結果・学習反応の型には同じようなものが現れる。い
くつかの類型、パターンができる可能性がある。同じような誤りをおかしたもの、同じように足りないところのある
もの、同じようなつまずきをしているものなど、いくつかのグループに分け、同類のものはそれに応じた調節条件を
グループごとに設定することができる。これは、調節条件の類型化である。アナライザーの用意のあるところでは、
これは容易にできる。
 このようにして、調節条件が決まったら、その条件に従って、読み直し、書き直し、学習の仕直しをする。これが
学習調節である。読解におけるその概要をあげると、
 (1) 自己評価・自己調節をする場合(評価・調節を計画した学習シートを用いる)
  @ 各自調節条件に従って読む。
  A 調節読みに基づいて既習事項の加除修正をする。
  B 一度でじゅうぶん調節できない場合は、さらに調節条件を考えて調節読みをする。
  C 学習目標に到達する。
 (2) グループで学習調節をする場合
  @ グループごとに、同じ調節条件で調節読みをする。
  A 調節読みにもとづいて、前に学習した事項について加除修正する。
  B 修正したものを発表し合って検討し評価する。
  C 正確な読みの結果を確認し修正する。
ということになる。
                                                       41
 C 学習過程における評価・調節過程の位置づけ
 このように学習の評価が行われると、すぐそのあとに続けて学習調節を行う。いくら学習の過程で評価しても、そ
の直後に調節を行わないのでは評価をしても、あまり意味がない。この評価・調節をくり返しながら行動目標に到達
するのであるから、どの児童もそれぞれ確実に国語の能力を身につけ、落ちこぼれを救い、完全学習への道を開くこ
とができる。従来、評価はもっぱら教師の手によって主観的に行われ、評価の結果にもとづいて学習の仕直し、調節
をすることがなかった。だから、一部の児童だけの学習に終わって、大多数の児童は、十分理解をしないままに学習
が進められることが多かった。また、評価・調節ということが、授業の中に、一つの大事な過程として定着しなかっ
た。これからの授業では、一人一人の児童を生かし、だれもみな完全学習が行えるように、学習指導過程の中に、学
習の評価・調節の過程をはっきりと位置づけて、学習を進めるべきである。次にその学習指導過程をあげてみる。
 1 学習目標を立てる         A 評価し結果の状況を知る    C 学習の結果を修正する
 2 学習方法を考える        5 学習の調節をする        D 学習の仕直しの結果を確認す
 3 学習活動をする          @ つまずきの要因を知る      る
 4 学習活動の結果を評価する     A 調節条件を決める      6 学習目標に到達する
  @ 観点・基準・方法を決める    B 学習の仕直しをする     7 学習を総括する

  6 確実に能力を伸ばす「学習過程(思考・認識の過程)」の編成とそのモデル

 これまで、授業設計に必要な事項について、それぞれの設計の手順・方法・システムについで詳細に述べでてきた。
そこで、最後に授業の中軸になる学習指導過程の編成になるのが順序であるが、その前に、学習指導過程の中心にな
                                                       42
る、基本的技能の「学習過程」を編成しておくと便利である。
 どの授業でも、内容の学習、人間性の開発をめがける学習の過程で学習する基本的技能がある。その技能は、どん
な過程をたどって学習されるか、身についていくか、その順序・過程をたどってみる。すると、この技能は、いつも
こんな過程をたどって身についていく、学習されるという筋道と順序が明確になる。そこで、その筋道・順序をたど
って学習を進めれば、その技能は無理なく、しかも効率的に身につくと考えられる。このようにして設定した、技能
の学習の過程が、ここでいう「学習過程」である。
 この学習過程は、読解学習では、文章に述べられている書き手の思考のあとをたどりながら、児童がまた、それに
ついて考えながら理解していく過程である。作文学習では、何かについて、児童が考えたこと、認識したことを、筋
道を立てて表現していく過程でもある。したがって、学習過程は、児童の「思考過程」でもあり、「認識過程」でも
ある。
 授業は、この学習過程が中核になって進められ、流されていく。だから、だれでもこの過程、流れにそって、授業
を進めていけば、確実に国語の力のつく、しかも効率的に身につく、自然な授業を展開することができる。次にいく
つかの技能の学習過程モデルをあげてみる。
 (1) 文章の概略を理解する技能の学習過程モデル
  @ 概略を理解する必要性を自覚する。(学習課題の設定)
  A 概略を理解する方法を考える。(学習法の理解)
    ・要点を押さえる ・要点をまとめる
  B 全文を読んで要点を押さえる。(学習活動@――評価)
                                                       43
  C 要点をまとめて概略を書く。(学習活動A――評価)
  D 概略を確認する。(評定)
 (2) 要点を理解する技能の学習過程モデル
  @ 要点を理解する必要性を自覚する。(学習課題の設定)
  A 要点理解の方法を考える。(学習法の理解)
    ・要旨の理解 ・要旨に基づく要点の理解・細部との関係による要点の理解
  B 全文を読んで要旨を押さえる。(学習活動@――評価)
  C 要旨に基づく要点を押さえる。(学習活動A――評価)
  D 細部との関係を考えて要点を理解する。(学習活動B――評価)
  E 要点を確実に理解する。(評定)
 (3) 場面の様子や人物の気持ちを想像しながら読む技能の学習過程モデル
  @ 場面の様子や人物の気持ちを読もうとする意識をもつ。(学習課題の設定)
  A 場面の様子や気持ちの読み味わい方を考える。(学習法の理解)
    ・全体の印象・印象による場面分け・場面ごとに想像表象を描く
  B 全文を読んで印象(気分・情調)を押さえる。(学習活動@)
    ・印象ごとに場面分けをする
  C 場面ごとに様子や気持ちの想像表象を描く。(学習活動A)
  D 描いた想像表象を、話す・書く・絵にかく、動作化などをする。(学習活動B――評価)
                                                       44
  E 感じたこと、感動したことなどを話す。(学習活動C)
  F 朗読する。(評定)
 (4) 順序を理解する技能の学習過程モデル
  @ 順序を理解する必要性を自覚する。(学習課題の設定)
  A 順序を理解する方法を考える。(学習法の理解)
     ・全文を読む ・行動・作業・事柄の順序 ・順序を示す語
  B 全文を読んで順序を押さえる。(学習活動@――評価)
  C 順序に従って事柄を書き出す。(学習活動A――評価)
  D 順序を整えて理解する。(学習活動B――評価)
  E 順序を確認する。(評定)
 (5) 叙述の仕方を工夫し修正する技能の学習過程モデル(石井郁子教諭編成)
  @ 修正の必要性を自覚する。(学習課題の設定)
     ・書いた文章の叙述の適切でないことを自覚する
  A 修正の仕方を発見する。(学習法の発見)
     ・抽象的叙述 ・あいまい叙述 ・不正確な叙述
  B 修正の仕方を理解する。(学習法の理解)
     ・具体的叙述 ・文脈を正す ・叙述加除
  C 理解した方法で修正する。(学習活動)
                                                       45
  D 修正の結果を検討し確認する。(評定)
 (6) 基本文型のシミュレーション過程モデル(高橋深雪教諭編成)
  @ 文型感覚を確かめる。
     ・よい文と悪い文を区別する
  A 文型意識を確かにする。
  B 新しい文型@を構成する。
     ・だれは、どこで、なにをしました。
  C 新しい文型Aを構成する。
     ・だれは、だれと、なにをしました。
  D 新しい文型を使って短い文を書く。
  E 新しい文型感覚を確認する。
 (7) 段落を構成する技能のシミュレーションモデル(藤倉文子教諭編成)
  @ 段落意識の確認
     ・文章は段落によって構成されていること
  A 段落構成の必要性の自覚
  B 段落構成の発見
     ・要点と細部の関係で構成されていること
  C 段落構成法の理解
                                                       46
  D 段落構成法の適用
     ・段落を要点と細部の関係で構成すること
  E 段落構成の確認
 以上七つの学習過程モデルを編成した。これらの学習過程に共通しているところは、@学習の必要性を自覚する
 (学習意識)、A学習の方法を理解する(学習法)、B学習活動をする(学習法の適用)、C学習結果を評価する(評
価)という過程である。これは、学習技能を身につける過程で、最も一般的なだれでも理解できる過程である。
 このようなモデル学習過程を編成しておけば、学習指導過程の編成が非常にやさしくなる。この本の第V章以下に
たくさんの学習過程モデルが編成されていて、それにもとづく学習指導過程の実践が載せてある。

  7 創造的な授業を保証する「学習指導過程」の編成とそのシステム

 (1) 学習指導過程とは何か
 @ 学習目標を追求する科学的・過程的システム
 従来、学習指導過程というのは、児童の学習活動を、活動の順序に従って編成したものというように、静的・構造
的なものと考えていた。が、それは古い。現在ではシステム研究が進んできて、学習指導過程も、学習の目標を追求
し獲得するために必要な基本的事項(教材・能力・活動・児童・教師など)を、科学的に究明し、それらを科学的・
過程的に編成したシステム、学習目標を追求する科学的・過程的方法のシステムと考えるようになった。
 この考えは、言ってみれば、授業を組み立てているすべての要素が、みんなありったけの力を出し合い、それぞれ
有機的関連をもちながら、ひたすら学習目標の追求・獲得をめがけて、学習を展開しようというものである。だから
                                                       47
授業のあり方としてはまことに好ましいものである。これまで、目標・内容・方法・評価・調節など、学習指導過程
の要素について、その実状・実態を究明してきたのもそのためである。
 わたしどもの学習指導過程は、このような考えで編成されている。
 A 主体性を育てる
 学習の主体者は児童であるから、児童が主体的・自主的に学習できるように、学習指導過程自体も編成されなけれ
ばならない。児童が主体的に学習するというのは、@自分たちで学習目標を立てる、A目標を達成するための計画を
立て、学習の方法を考える、B方法に従って学習活動をする、C学習の結果は自分たちで評価する、D評価の結果を
反省し、方法を改善してさらに学習を進めるというようにすることである。そのためには、学習指導過程自体を、そ
のような学習ができるように編成する。わたしどもの編成した学習指導過程は、目標・方法・学習・評価・調節、獲
得(達成)という過程になっている。
 B 認識・思考の力を伸ばす
 学習指導過程の中心は、何といっても、前に述べた学習過程である。この学習過程を、どのような過程として編成
するかが重要になってくる。わたしどもの学習指導過程では、すべて前述のように児童の思考の過程、認識の過程に
従って編成されている。したがって、この学習指導過程に従って学習を進めれば、思考・認識の力を伸ばすことがで
きるようになっている。
 また、学習指導全体を通して、直観読み・分析読み・体制読みという、直観的思考・分析的思考・体制的思考にさ
さえられた過程をとっている。また、認識の過程でも、直観的認識・分析的認識・体制的認識の過程をたどって表現
学習を行うように編成されている。作文では、題材は直観的に選択される。表現内容の収集は分析的に行われる。そ
                                                       48
の内容の組織・表現は体制的に行われる。
 このようにわたしどもの学習指導過程は、そのまま認識・思考の力を伸ばしやすいように編成されている。
 C 創造性を開発する
 学習指導過程は、主体的学習が進められるように編成すべきであるということは前に述べたが、その基本は、「計
画・行動・評価(plan do see)」の過程で、それはそのまま新しいものを産み出す創造への道である。つねに自分の行
動をチェックし、より新しいもの、より価値のあるものを産み出していく。学習指導過程はそれができるように編成
されるべきである。そのためには、学習のコントロールシステムを備える必要がある。この学習指導過程はコントロ
ールシステムとしての評価・調節過程を、その中に組織していて、創造性の開発が行われやすいようになっている。
また、このことは、一人一人を生かし、完全学習へ進む道であることに注意したい。
 D 技能性を伸ばす
 国語科の学習指導過程は、言ってみれば、国語の能力の学習を中心にして組織されている。したがって、この学習
指導過程をたどって学習を進めれば、人間性が開発されるとともに、国語の技能が身につく過程でなければならな
い。戦後しばらくの間の学習指導過程は、「導入・展開・終末」といった単元展開の過程になっていて、言語経験を処
理できる人間の育成をめがけていたから、今日要請されているような国語の能力を育てることを中心としたものでは
なかった。この学習指導過程では、どんな技能をどこまで伸ばすか、行動目標を立てて、計画的に的確に指導するよ
うになっている。しかも、どんな技能は、どんな学習活動によっで伸ばすか、最適の学習活動を設定するように考え
ている。
 しかし、一般の学習指導過程では、いわゆる技能目標を掲げて指導するようになっているが、それは児童の学習の
                                                       49
実際に合わない。児童が学習の際にめがけるのは、それを目がけて活発な学習活動を展開するのは、内容的価値であ
り、人間性を育てる内容である。けっして形式的な技能ではない。したがってわたしどもの学習指導過程では、児童
が目がける目標は、内容的価値をあげて価値目標とし、それを目がけて学習活動をする場合に児童が身につける技能
は、すべて内容として位置づけている。つまり目標(価値目標―内容的価値)、内容(基本的技能・言語事項)、方法
(学習活動)の三者を有機的に関連づけたシステムとして編成している。
 (2) 授業のシステムと学習指導過程
 授業を始めてから終わるまでの一連の流れを決めるのは、言うまでもなく学習指導過程である。この学習指導過程
を中心として授業はシステム化される。そのシステムは複雑で、過程的に流れているから、容易にその実相をとらえ
ることはできなかった。
 ところが、戦後教育工学の研究が進んで、学習指導過程を、一種の流れ図、作業工程図として示すことが工夫され
た。いわゆる学習のフローチャート(flow chart)である。しかし、一般に流布しているものは、フローチャートそれ
自身が複雑で、その作成も困難である。そこで、わたしどもは、国語科の学習指導用のフローチャートとして、独自
のものを工夫した。それは、視覚的にも分かりやすく、単純明快で、学習指導のシステム、授業のシステムが、一目
で分かるように工夫されている。
 フローチャートの中央には、始めから終わりまで一貫して「児童の主要な学習活動の流れ」学習過程が示されてい
る。これには、学習活動ごとに、評価の観点・基準・方法が示され、調節条件にもとづくフィードバック回路が添え
てある。その右側には、学習活動ごとに、児童が行う作業(ノートに書く、カードを作るなど)が示されている。
 学習過程を中心にして左方には、学習活動ごとに教師の行う指導助言の方法が過程的に示されている。さらにその
                                                       50

過 程 指 導   学習活動    作  業   備  考  

 
目 標
 |
 |
方 法
 |
学 習
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
評 価
調 節
 |
 |
 |
 |
 |
獲 得

 























                                                                  51

左には、学習指導過程が、目標――方法――学習――評価・調節――獲得というように示されている。
 このように、中央に児童の「学習活動の流れ」、その右方に学習活動ごとの「児童の作業」、中央に対して左側には、
教師の、「学習についての指導助言の流れ」が示され、さらにその左側には、「学習指導過程」が示されている。さら
にこの三者の間には、相互の関係を示す線が引かれている。
 そこで、このフローチャートを見ると、授業がどのように流れ、それがどのようなシステムで展開されているか、
授業のシステムが手にとるように分かってくる。
 (3) 授業を貫く学習指導過程の編成
 いよいよ授業を貫く学習指導過程を編成することになる。まず、初めに基準学習指導過程をあげてみる。
  ア 読解の基準学習指導過程         イ 一時間の学習指導過程
 @ 学習の目標を立てる           @ 行動目標を立てる――学習課題を設定する
 A 学習の計画・方法を考える        A 学習の方法を考える――学習法を決める
 B 学習活動を行う             B 学習課題に従って読む――基本的技能を使う
  直観的に読む              C 学習の結果を評価する――基準・方法を設定する
  分析的に読む              D 学習の調節をする――調節条件を設定する
  体制的に読む              E 行動目標に到達する――課題を解決する
 C 学習評価・学習調節を行う
 D 学習目標に到達する
 アは、読解の基準学習指導過程で、イは、アに基づいて編成した一時間の基準学習指導過程である。この基準学習指
                                                       52
導過程と、前にあげた学習過程モデルとを組み合わせると、具体的な一時間の学習指導過程を編成することができる。
  ウ 作文の基準学習指導過程         工 一時間の学習指導過程
 @ 学習の目標を立てる           @ 行動目標を立てる――――――――――学習課題を設定する
 A 学習の計画を立てる           A 学習方法を考える――――――――――文章構成法を考える
 B 書く題材を選ぶ             B 表現内容を整理して段落を構成する――段落を構成する
 C 書く内容を収集する           C 段落を組み立てて文章を構成する―――文章を構成する
 D 書く内容を整理して文章を構成する    D 文章の構成について評価する―――――評価する
 E 文章構成に従って表現・叙述する     E 文章構成を調節する―――――――――調節する
 F 目標に照らして評価・調節する      F 行動目標に到達する―――――――――課題を解決する
 G 書いた文章を修正する
 H 書いた文章を処理する
 ウは、作文の基準学習指導過程で、エは、ウにもとづいて編成した一時間の学習指導過程である。これは、学習単
位「文章の構成過程」の学習指導過程である。
 上の学習指導過程のうち、読解の一時間の授業の学習指導過程(学習指導案)の編成の仕方について考えてみる。
 (4) 一時間の読解学習指導過程(学習指導案)の編成の仕方
 @ 「学習単位」を調べる
 学習単位を確認し調べる手順をあげてみる。本時に学習する教材の範囲を、全文とか、何段落とか、どんな場面
とかいうように学習範囲を押さえる。教材の範囲内で指導する技能(基本的技能)を押さえる。要点を理解する技
                                                       53
能、場面の様子や人物の気持ちを想像する技能などのように。また、そこで指導する漢字・語句・文法などを具体的
に押さえる。これが、本時の「学習内容(学習事項・指導事項)」になる。教材の範囲内で押さえた基本的技能を
働かせて、どんな知識・情報・思想・心情を理解し享受するかを考える。「こんな技能を働かせて、こんな内容的価
値を読みとらせる」というように、人間性の開発につながる事項を具体的に考えておく。これが本時の「行動目標」
になる。押さえた言語事項は、どんな学習活動を通して、いつ、どこで指導するかを考えておく。段落はどのよ
うに構成されているか、サマリーとシーンはどのようになっているかを押さえておく。
 A 本時の「行動目標」を立てる
 本時の学習目標は、行動目標(到達目標)として、学習の終わりには到達できるものとして、具体的・行動的に記
述する。記述の仕方は、「教材の範囲――使う基本的技能――その結果身につく知識・情報・思想・心情―その言
語行動化(外部行動化)」のパターンモデルに従って行う。
 B 本時の「学習内容(学習事項・指導事項)」を決める
 「学習内容」は、基本的態度・基本的技能・言語事項である。教材の範囲内から選んだ基本的技能を原則とし
て一つ(上に○の印をつける)と、言語事項(上に印をつける)と、基本的技能を保証する基本的態度(方法的態
度、上に△印をつける)とを選んで、態度・技能・言語事項の順にシステマティックに記述する。特に言語事項は、
行動目標に入れて記述するのはわずらわしいので、学習事項のところに明確に書き出しておく。行動目標と並べて書
いてもよい。
 C 本時の基本的技能の学習過程を設定する
 本時に学習する基本的技能の学習過程モデルを作る。これは、次に編成する学習指導過程の中心部分になるから、
                                                       54
その過程を確実に押さえておくと、学習指導過程が編成しやすい。このモデル学習過程の例は、本書の授業実践の中
に数多くあげてある。
 D 本時の学習指導過程を作る
 次に、本時の学習指導過程編成の手順・方法について、その概要を述べることにする。
 学習の目標を立てる(目標過程)
  本時の学習目標は、行動目標としてすでに設定されている。しかし、この行動目標は、直接児童に提示するもの
 ではない。この時間に、児童が身につけるべき技能と内容的事項の基準を示したものである。だから学習を始める
 前に、児童が行動目標に示された基本的技能を使って学習活動を行うような学習課題を設定すればよい。その学習
 課題を追求して読む活動をすれば、当然基本的技能が使われ、行動目標に示された内容的事項が習得される。
  この学習課題が設定されると同時に、児童の学習の構え、いわゆる学習態度が確立され、学習意欲が喚起される。
 ところで、この学習課題は原則として、児童が設定すべきもので、その方法には、ァ文章・作品の標題について
 考えて設定する、ィ文章の第一段落(話題提示・問題提示の段落)、作品の紹介語りの部分を読んで設定する、ゥ文
 章・作品全体を通読して、必要な課題を設定する、ェ前時までの学習との関連において設定するなどの方法がある。
 この課題は、板書なりカードに書くなりして提示しておく。
  なお、学習過程モデルの「学習の必要性を自覚する」などはこの過程で指導する。
 学習の方法を考える(方法過程)
  学習課題が決まったら、どのようにして学習を進めるか、児童たちが自分で学習法を考え、基本的技能を自覚す
 る。一度学習した方法は記憶され、プールされているから、必要な学習法を想起する。新しい学習法を必要とする
                                                       55
 場合には、話し合って考えたり、教師が教えたりする。たとえば、要点を理解する技能の学習では、全文を読んで
 段落の要点文に傍線を引く。課題に即して、傍線を引いた部分を要約して要点を書く。要点と細部との関係を考え
 るというように。
  学習方法が決まったら、箇条書きにして、板書・カードなどで提示する。学習過程モデルで「学習法の発見」
  「学習法の理解」などというのは、この過程で指導する。
 学習法に従って学習活動を展開する(学習過程・能力過程)
  授業の中心は、行動目標をめがける基本的学習活動で、それは学習課題に答えると同時に、基本的技能を身につ
 けるために行われる。そこで、まず、ァ学習の終わりに課題が解決されるためには、どんな活動を、どんな順序で
 行うかを考えて、それを段階的・過程的に設定し配列する。ィそれぞれの学習活動ごとに、どんな方法で実施する
 かを確認する。ゥその学習活動ごとに、児童が行う学習作業――ノートに書く、学習シートに書く、カードに書く、
 説明する、話し合う、表解する、図示するなど――を設定する。ェ学習活動を通して学習する言語事項の指導の機
 会と指導の方法を考える。ォ学習活動ごとに課題のための発問と、学習の結果を想定しておくとよい。
  学習過程モデルの「技能の適用」はこの過程で行われる。なお、学習活動の結果は、単なる発表や話し合いによ
 る処理をせず、ノートに書く、カードに書く、学習シートに書くなどして、全児童が記録するように工夫する。ま
 た、学習活動がこまぎれにならないように注意する。基本的学習活動一つか、補助的学習活動一つを添えるくらい
 にする。
 学習活動の結果を評価する(評価過程)
  学習活動ごとに学習の結果を評価する。その場合、中心的学習活動について行うのが原則であるが、補助的学習
                                                       56
 活動のある場合にはそれについても行う。補助的活動の場合の評価の観点・基準は、行動目標によって規定されて
 いないから、あらかじめ想定した補助的活動の目標に照らして評価する。
  評価する場合、評価の基準を教師が提示し(見本法・条件法)、児童はそれによって自分の学習の結果を自己評価
 する方法と、児童の学習の結果を、OHPで投影し、それについて話し合って、児童たちが評価基準を決める。そ
 の話し合いの過程で、評価の仕方を理解する。その上で、板書、あるいはOHPで投影した基準にもとづいて、児
 童が自己評価をする方法などがある。
  学習の結果の評価ができたら、必ずその評価の結果を、教師は全体の傾向、児童は自分の状況を明確にする。ま
 た、教師は全体の結果を見通して、誤りのパターンを考えて対策を立て、児童は、各自の結果の状況について、ど
 こが誤っているか、何が足りないか、何が不必要なことか、どの程度できているかなどをはっきりさせる。
 評価の結果にもとづいて調節する(調節過程)
  学習の評価の結果が明らかになったら、それにもとづいて、学習を調節する。そのためには、評価の結果を考え
 てどのような読み方をすれば、読み誤りを正すことができるか、どんな点に注意して読み直せば、足りないところ
 を補うことができるかとか、課題意識を確かめて読み直すとか、それぞれ自分の結果の状況をよく観察して読み直
 しの条件を考える。
  各自調節条件を決めて調節読みをする。読み直しをして、誤りを正したり、不足を補ったりする。前に述べたよ
 うに、同じパターンの誤りは、同じ調節条件によって読み直す。調節条件の設定できない児童には教師が設定して
 やる。また、条件を提示する場合にも、板書、OHPで投影、カードで提示などさまざまな方法が工夫される。
 行動目標に到達する
                                                       57
  学習の結果を評価し、調節して、行動目標に到達する。つまり、学習課題が解決されれば、それで学習は完結す
 る。そこで、一時間の学習を総括する。きょうの学習では、こんなことが分かった、こんな学習法を理解した、学
 習についてのこんな満足感・成功感が得られた、新たに学習意欲が喚起されたなど、学習についての総括をして終
 わる。                                 (中沢 政雄・佐々木 トシヱ)



                                                       58



  第V章 だれでもできる新しい教材研究の方法


     一 教材研究の新しい考え方と方法


  1 基本的な考え方

 読解教材には、児童の思想・心情や知識・情報を豊かにするいわゆる内容的な価値と、それを読みとっていくのに
必要な言語能力とが含まれている。しかもこの二つは、個々ばらばらのものではない。読解という行動のなかで一体
化される。
 たとえば、自然のふしぎを説きあかした教材を読んで新たな知識を得、自然への理解や関心を深めていく過程で、
児童は、要点だの段落だのの技能を働かせている。言いかえれば、児童は、教材のもつ内容的価値を読みとって自分
自身の人間形成をしながら、同時に一方で、技能を働かせ使いこなして自身の言語能力をいっそう高め、確かなもの
にしているのである。つまり、教材は、人間形成と能力養成という二つの機能をあわせもっている。教材研究とは、
教材のもつこの二つの機能を研究することである。
                                                       59
 ただ、教材を読むのは、眼前の児童である。人間形成の機能といい能力養成の機能といっても、それらの機能が働
きかける対象は児童である。どんなかたちでどのように働きかけるかは、読み手である児童によっで条件づけられる。
したがって、児童との関係を考えることなしに、人間形成・能力養成の研究はあり得ない。
 その教材に含まれている内容や技能が、児童にどんな興味や関心、必要をよびさますか。いま持っている能力との
関係はどうか。どんな点で児童の人間形成・能力養成をすることができるか。こういうように考えていかなければな
らない。そこが、教材研究が一般の文章研究や作品研究と大きくちがうところである。
 ところで、上のような研究をすすめるには、その教材の構造過程を調べると便利である。本来、文章は、内容的価
値が継時的に構造化された、いわば過程的な構造体である。したがって、その教材の主題なり要旨なり情報なりが、
どのような過程をたどって組み立てられ、構造化されているかを調べてみる。そうすることによって、読解の過程が
明確になり、そのどこでどのように人間形成・能力養成が行われていくのかも、はっきりするのである。

  2 教材研究の方法

 (1) 人間形成の機能を調べる――学習目標の設定
 ある教材は、動くおもちゃの仕掛けの中にもすばらしい工夫がしてあることを知らせ、科学的な興味関心を喚起す
る働きをもっている。また別の教材は、死によってしか通じ合えなかった愛すべききつねの運命にしみじみと感動さ
せ、生けるものへの想いを豊かにする力をもっている。このように教材は、事実を説きあかすことによって、知識を
与え情報を伝えている。あるいは、できごとを描いたり物語ったりすることによって、感動を与え情感を豊かにする。
あるいはまた、考えを筋道たてて論証することによって、児童の思想を深める役割をする。
                                                       60
 ではこの教材は、読み手にどんな知識や情報を知らせるのか。どんな感情や思想を育てるのか。こういうように、
教材の内容的な価値を具体的にとらえることが、人間形成の機能を明らかにする第一歩である。
 次に、それを児童との関係において考えてみる。児童は教材の内容に対して、どのような興味関心をもつか。どれ
ほど、どんな読む必要を感じるか。どこまで理解できるか。どんな感動をもつか、というように考えてみる。こうし
て、児童との関係を考えながら、教材のもつ内容的価値を具体的に表したものが、その教材、または単元の学習目標
である。
 (2) 能力養成の機能を調べる――学習内容の設定
 前項で明らかにした教材の内容的価値を読みとっていくために、どんな言語能力が働くのかを調べるのである。
 たとえば、教材『ありの行列』から、ありの行列に見られる生きものの知恵を読みとっていくとする。そのために
は、文字・語句の力、接続語や指示語の働きをおさえる文法力が必要であろう。要点を落とさずに読みとる技能も必
要である。これらの言語能力が内容に即して総合的に使われていって、はじめて、ありの行列についての知識が得ら
れ、自然界へのふしぎに目が開かれていく。
 このように、その教材の内容を追求し獲得していくのに必要な文字・語句や文法、技能・態度を考えてみる。
 もちろんここでも、児童との関係を頭において考えていく。その教材において、文字抵抗は何か、語い抵抗はどれ
か。とくに必要な文法力は何か、どんな技能・態度がとりわけ必要か。これらのことを、児童の実態と照らし合わせ
て決めていくと、その教材でとくに育て、とくに身につけさせるべき言語能力が決められる。
 これが、その教材または単元の学習内容、ふつうに言われる指導事項である。
 (3) 構造化の過程を調べる――授業展開の見とおし
                                                       61
 さきに明らかにした教材の内容的価値、つまり、その教材に含まれている知識・情報や心情・思想は、ひとまとま
りの文の連統として構造化されている。それが文章である。
 説明し伝達したい知識とか情報とかを、書き手は、論の運びに意を配りながら筋道たてて書き表す。問題を投げか
け、実例をあげ、推論し反論し、根拠をあげ、解説しまとめたりなどしながら、知識とか情報とかを読み手に説明し
たり伝達したりしようとする。その筋道に従って、読み手は内容を読みとっていくのである。
 あるいはまた、表現したい心情や主題を、書き手は、筋の展開によって書き表す。紹介したり説明したり、描写し
たり、クライマックスを設定したりして、読み手をひき込み、読み手の心に訴えようとする。その展開に従って、読
み手はひき込まれ、想像し、心を動かされ、豊かな感情にひたされるのである。
 したがっで、その教材の要旨なり中心的事項なり主題なりが、どのような筋道や展開をたどって組み立てられてい
るかを調べれば、読み手である児童がそれを獲得していく過程、つまり、児童の認知過程や感動過程が明らかになる。
そして同時に、その過程のどこで、その教材のどの部分で、どんな言語能力を育てることができるのかも明らかにな
る。つまり、教材の人間形成の機能・能力養成の機能が、どんな過程をたどって達成されていくのかが、具体的に明
らかになるのである。言いかえればこれは、授業展開の見とおしをたてることである。学習活動・評価活動のすすめ
方を大まかに描きだすことである。以下具体的に、その手順・方法について述べる。         (近藤章)
                                                       62
     二 基本的説明教材の研究とそのモデル化

 説明文と呼ばれている教材の中には、知識や情報、感想や意見などを説明したり、解説したりした文章が含まれて
いる。ここでは、そのうちの知識教材「いろいろなつたえ方(東書三年上)」をとりあげて、説明教材は、何について、
どのように研究したらいいか、その手順と方法について具体的に述べる。
 (1) どんな人間性を育てるかを考える――人間形成の機能を調べる
 まず、この文章は、読み手にどんな知識を与えようとしているかを考える。と、標題が示すように「ことばの代わ
りをするいろいろな伝え方」についての知識を理解させようとしていることがわかる。これが、この文章の要旨であ
り、内容的価値(人間性の開発伸長に役立つもの)である。
 (2) 児童との関連を考える――児童の興味・関心、必要、能力を調べる
 次に、児童が、この要旨に対して、どんな興味・関心を示すか、どのように学習の必要性を感じるか、あるいは、
理解できるかなどを調べる。診断テストをすればなおよい。ところで、この文章は、「ことば以外のいろいろな伝え
方」について、身近な具体例をあげて説明しているので、児童は非常に興味・関心を示す。その上、内容もやさしく、
難解な文字や語句も少なく、要点も段落の初めにあって理解しやすいので、意欲的、積極的な児童の活動が期待でき
る。そこで、要旨と児童の関係を考えながら、次のように単元の学習目標を設定する。
 「ことばのほかに、身ぶり、音、色、記号による伝え方が、生活の中でどのように使われているか理解し、進んで
                                                       63
知識を求めようとする意欲を育てる。」
 (3) どんな言語能力を育てるか――能力形成の機能を調べる
 次に、内容的価値を理解する過程で育てる読解技能を明らかにする。文章に即して、どんな漢字、どんな語句、ど
んな文法、つまり、どんな言語事項の学習ができるか、また、文章や段落の内容を理解する過程で、要点を理解する
技能、要点と細部の関係を理解し、段落の構成に気づく技能などが学習できることも押さえる。このことは、基礎的
技能、基本的技能を明確に押さえることであり、これが学習内容(技能、態度、言語事項)となる。
 (4) 文章の構造過程を明らかにする――いつ、どこで、何を指導したらいいかを明らかにする
 @ 要旨を明らかにし、それが、どのように筋道を立てて説明されているか、そのパターンを押さえる。
  この文章は「話題――説明――総括」というパターンになっている。
 A 要旨を支えている段落の要点を押さえる――ことば以外にもいろいろな伝え方がある ・身ぶりで伝える。
  ・音で伝える ・色を使いわけて伝える ・記号で伝える など。
 B 各段落の構成――要点と細部の関係――を押さえる――例えば、第二段落の要点「身ぶりで伝える」と細部「首
  をたて、横にふる。手をふる。手まねきをする。」との関係は、抽象と具体の関係になっているなど。
 C ここで学習する技能・態度を押さえる。――段落の要点を理解すること、段落の要点と細部の関係を理解する
  こと、段落の構成に気づくこと、進んで知識を求めようとすることなど。
 D 学習する言語事項を押さえる――新出漢字、読み替え漢字、指導する語句や文法など。
 これらの要素を、文章のパターンに従ってシステム化する。この場合、段落相互の関係を示す記号を、その段落の
初めに書く。記号は、「」起こす、「=」並べる、「」まとめる、「↓」受ける、「」広げるなどとする。これら
                                                       64


                                                       65
の記号は、段落の係り受け、展開、総括など形式的機能を示している。このようにして、前ページのように文章の構
造過程を作成する。なお、この文章は、要素型の文章で、しかも、要点を含む文(要点文)が、いずれも段落の初め
にある。要素型というのは、文章を組み立てている要素(段落)が並立しているもので、中学年までの説明教材に多
く見られる型である。
 このほかに、条件型と呼ばれる説明の型もある。段落が互いにある条件によって結びついていて、要素型のように
段落の順序をかえることができない。「しかし、……だから、……つまり、」というように、各段落が係り受けの関係
でつながっている型である。説明教材の多くは、この二つの型が組み合わされて構成されている。
 また、段落も、要点と細部が「総括個々のことがら」「全体分析」の関係で構成されているものもあるし、
要点の位置も、段落の中ほどにあるもの、終わりにあるもの、要点を示す文がないものなどもあるので、以上のよう
に詳しく教材研究をし、その結果をまとめて、文章の構造過程を明らかにする必要がある。     (熊谷 芳子)


     三 基本的文学教材の研究とそのモデル化

 文学教材は、文学経験――@作品を読んで言語刺激を受けて、A表象を描き、B感情状態になり、C同感、共鳴し、
Dなるほどとわかり、E自分の生き方、考え方、身の処し方に変容を起こしたり、批判感想を持ったりする。――
をする読みのための教材である。したがって、読み手に訴える主題と、それを展開しているパターンにそった場面や、
                                                       66
思想・心情と、それらを表現していることばについて研究し、児童にどう働きかけ得るかを考える必要がある。
 以下に、レフ=トルストイ作、西郷竹彦訳「とびこめ」を例として、文学教材の研究の仕方について述べる。
 (1) 主題を押さえる――作品をすなおに読んで的確に押さえるようにする。
  この作品では「むすこの危機に直面した父親船長の機敏な判断とその裏にかくされた強い愛情」である。
 (2) 作品のパターンを押さえる――主題がどのように展開されているか、そのパターンを押さえる。
  これは「紹介――発端――クライマックス――結末」というパターンになっている。
 (3) 各場面の中心になっている思想・心情を押さえる――主題がどのように展開されているかを明らかにする。
  たとえば、「紹介」――船上のこと、さるの様子の紹介。おだやかで楽しいふんいき。
   「発端」――とつ然、事件が起こった。船の人々のはじめは笑い、一転しての不安。
   「クライマックス」――極度の不安。その中での船長の処置。
   「結末」――解決・愛情のあらわれ。
 (4) 事件の展開の事実関係を押さえる――文章に即して、場所、時間、人物の動き、心情などの重要な事実を、心
  理心情のからまり合いを含めて、記号を使って明らかにしていく。次に「紹介」の部分について示す。

 一そうの船、帰りの旅、おだやかな天気
 船じゅうの人――かんぱんに
 大きなさる――ふざけ回る―┬―体をよじる
              ├―とびはねる
              └―顔をこっけいにしかめる 


  他の場面についても、このようにして、事実関係を
 押さえる。
  楽しい、なごやかな気分の場面であることが読みと
 れることばが、この場面では重要である。

                                                       67
 (5) 想像の単位を明らかにする――物語は、サマリーとシーンによって語られでいる。シーンは、想像表象を描き
  ながら読むところである。そこで、サマリーとシーンを明らかにし、どの程度の範囲なら想像できるか想像の単
  位を押さえておく。想像の単位の大きさは、児童の想像力の発達を考えて決めなければならない。

  そのとき、少年の父親である船長が、船室から上がってきま
 した。船長は、かもめをうつために鉄ぽうを持っていましたが
 マストの上のむすこを見ると、いきなりむすこに鉄ぽうを向け
 てさけびました。
 「海へ、海へすぐとびこむんだ。うつぞ。」
  少年は。ふらふらと足元をふらつかせました。なんのことや
 ら分からないのです。 

 ここでは、はじめと最後の文が、物語を展開し
 たり説明したりするサマリーである。
  船長がむすこに鉄ぽうを向けてさけんでいる場
 面を読んで、行動表象と音声表象とを描くことが
 できるはずだということを押さえる。「海へ、海
 へ……。」の叫び声が聞こえてくるように読むこ
 とが大事である。

 (6) たいせつなことばを押さえる――想像表象を描くのに落としてはならない重要なことばを書き出す。たとえば、
  右にあげた文では、「船長は」「むすこに鉄ぽうを向けて」「さけびました。」や「海へ、海へすぐとびこむんだ。
  うつぞ。」がたいせつなことばである。
  そのほか、そこで新たに学習することばがあれば、それも書き出しておく。文字についても同様である。
 以上の手順によって教材を研究し、それを、次。ページのようにシステム化する。ここでは、紙数がないので、「と
びこめ」の実例ははぶいて、システムモデルだけをのせる。
 ここには、物語のうち、最も典型的な「語り型」のシステムモデルをあげた。同じく「語り型」でも「結末」の後
に「後日談」がついたり、「世評」「縁起」がついたりすることもある。
                                                       68

主題 パター
ン 
中心に
なる思想
心情 
事 実 関 係 の 展 開  想像の単位とその種類・技能・語句・
漢字・文法その他 
主題を書く  紹 介
発 端

クライ
マック


結末
(後日談) 
性格状況
動機など
主題展開
上重要な
中心思想
満足感 
@ 人物やその性格・生活・環境などを紹介する
A ある日・ある年、突然――事件が起こる
B 事件は主人公を中心にして展開する
C クライマックスにいたり、最も感動的な場
 面が展開される
D 事件は終る
E その後のことなどが語られる 
 (人物表象)(場面表象)
 (場面表象)「語句」「漢字」
 (場面・行動表象)「重要語句」
 (場面・行動・心情表象)
  「重要語句」「文法など」
 (ここは、読み手である児童の側から
 も見て考えることがだいじである。) 

 また、このほかにも、次のようなパターンのものがある。「くり返し型」「三びきの子ぶた」など)、「だんだん型」
(「大きなかぶ」など)、「くさり型」(「ねずみのよめいり」など)、「くらべ型」(「百しょうとてんぐ」など)。
 さらに、これらの型にとらわれずに展開される小説もある。文章をすなおに読んでとらえることがだいじである。
 なお、文学教材としては、「童話」「物語」のほかに、「詩」「伝記物語」「脚本」などがある。これらの文学教材で
も、このシステムモデルを適用できるものがある。教材によって活用していきたい。
 いずれにしても、文学教材は、主題を中心にして、場面や情景、思想や心情などが、一つの流れとなって表現され
ているものなので、読み手である児童の人間性の開発伸長に働きかけ、そのうらで、読む力、技能・態度を養ってく
れるものである。よりよい読み手を作るために、このシステムモデルを活用し、さらによいシステムモデルの完成を
進めていきたいと考える。                                  (古川良馨)
                                                       69



  第W章 理解の学習指導モデル


     一 読解の学習指導過程モデル

 文章を読んで理解するということは、単に文字の上を眼球運動することではなく、そこに書かれていることがらに
ついて思考し、判断し、ある観念を形成していくことによって知識・理解を深めたり、情報に適応していくことであ
る。これが「読解する」ということである。そこには、自然考える筋道・順序がある。過程がある。これが読解過程
であり、思考・認識の過程に沿っている。
 また、文学作品を読んで味わうということは、そこに書かれていることがらに対して想像を働かせ、感動し、新し
い世界を創造していくことである。これが「鑑賞する」ということである。鑑賞には、鑑賞の順序・過程がある。こ
れは、感動過程に沿っている。
 ところが、教室で読解・鑑賞の学習指導をするには、読解・鑑賞過程のほかに、学習指導として成立させるための
いくつかの条件を具備していなければならない。
 @ 一人一人が目的をもって、主体的に学習に取り組むようにすること
                                                       70
 A 学習の方法が理解され、工夫されながら学習が進められること
 B 内容が理解され、人間性が啓発されると同時に、発達段階に即した読解・鑑賞技能が働くこと
 C 学習の到達度が評価されること
 D 評価の結果、一人一人の読み方が調節されること
 E 目的を達成した、獲得したという成就感・充実感が味わえるようにすること
 F 身についた読解・鑑賞能力が適用され、さらに発展させるようにすること
などである。
 これまで「読解指導の神様」とか、「読解指導の名人」と言われるすぐれた指導者が数多くいた。それぞれ個性が違
い持ち味が違い、方法や技術も違っていた。しかし、すぐれた指導者と言われる人の学習指導について分析してみる
と、共通して前記のような条件が備わっていた。また、一般の教師であっても、この@〜Fの条件をふまえて学習指
導すれば、確実に読解力・鑑賞力は身につくのである。
 国語科の学習指導にたずさわる人にはさまざまな人がいる。特に小学校では、他教科を得意とする人もいるので、
いつ・どこで・だれがやっても、こういう順序で、こういう過程をたどって学習指導を進めていけば、落ち度なく、
確実に読解力・鑑賞力が身につくという、読解の学習指導過程のモデルを作成しておくことが必要とされる。それに
は、前述の条件を満たす学習指導過程の要素を抽出し、それを、学習者の思考・認識の過程に即して再編成していけ
ばよい。
 (1) 目的をもち、読みの構えを確立する(目的過程)
 ここでは、@読みの課題を設定する、A興味・意欲を喚起する、B読もうとする態度をもつ、などの指導をする。
                                                       71
たとえば、情報教材「さるのほおぶくろ」を読むに当っては、動物のくらし方への関心から、「さるのほおぶくろは
さるの生活にどう役立っているか知りたい」という目的をもって読むように指導する。この目的と構えが、読み手で
ある学習者の活動を主体的なものにし、目的達成までの学習活動を活発にするのである。
 (2) 方法を考える(方法過程)
 ここでは、@読みの範囲を決める、A計画を立てる、B読み方を決める、C読解技能の使い方を知る、などの指導
をする。「さるのほおぶくろ」の場合、八時間を予定するとして、最初の一時間には、全文を直観的に読んで、概略を
読み取る。次から五時間には、分析的に読んで、どこがどうなっていて、どんなに役立っているかを詳細に読み取っ
て確認する。次の一時間には、全文を体制的に読んで、知的情報を自分のものとし、目的を達成する。あとの一時間
には、練習と評価をする。このような理解をもって、目的追求の学習活動に入るように指導する。必要に応じて、O
HPなどの機器を活用できるような準備もしておく。
 (3) 目的追求のために読む(読解過程・鑑賞過程)
 目的を追求する読解活動をする過程であるが、ここでは、直観→分析→体制の三過程にそって読解・鑑賞能力を身
につける。
 @ 直観読み
 文章全体を読んで、筆者が訴えようとし、知らせようとしたことを理解する。あるいは感じさせようとしたものに
深い感動を覚える。強い印象を受ける。――本質直観――、この読みが、これからあとの読みの方向を決定する。た
とえば「レナド」であれば、文章全体を読んで最も感動したことから、「レナドを心から愛しているけれども、レナ
ドのしあわせのために毋じかの元へかえしてあげた姉弟のやさしい思やり」を感じとり主題範囲に接近するような指
                                                       72
導をする。
 発達段階の上から、低学年では、このような本質直観(文章の要旨や主題に迫る)は無理なので、全容直観の読み
をする。「さるのほおぶくろ」であれば、その文章の概略、「さるのほおぶくろは、食べものをためておいて、あとで
ゆっくり食べることができることに役立っでいること」を読み取るような指導をする。
 A 分析読み
 文学の読みであれば、直観的に読み取った主題を、場面ごとに様子を想像し、人物の気持ちを考えながら読んでい
く過程である。「レナド」の場合、姉弟のレナドに対するやさしい心情が、場面ごとにどのように展開しているかを
考えながら読む。場面をいきいきと思い浮かべ、そこに生きている人物の思いに感情移入して、文学経験をさせる。
直観的に読んで得た感動を、文章表現の上で確認し、言語感覚が身につくような指導・助言をする。
 「さるのほおぶくろ」なら、直観読みによって読み取った概略を、計画に従って、段落ごとにくわしく読み、確認
していく過程である。「さるは、どんなときどうするか。それはどうしてか、ほおぶくろはどうなっているか。」を課
題として、文章から正確に読み取って、カードに書きとりながら読みを進めるような指導が考えられる。
 B 体制読み
 全文を読み、知識を身につけたり、感想をもったりする過程である。
 文学の読みでは、感動の反省、分析を経て、はっきりしてきた主題について、感想をもつ過程である。中心人物へ
の同感・反感など、感想・意見・批判などが生まれてくる。それを通して自己の生き方を考えることを指導していく。
 知識・情報を読む場合は、全文を読み、自分の知識体系の中に新たな知識を組み込むことになる。自分の必要や、
自分の思考にあわせて、構造変換して、身につけ易くしていくことを指導する。発想をかえ、必要でない部分を省い
                                                       73
て、新たに組み立てるように指導していくことになる。
 (4) 評価する(評価過程)
 学習活動が進められ、一定のまとまりまで進んだ段階で、その結果を評価し、学習が完全であったかを検討する。
 @ 読み取った結果を話す、書く、絵にかく、行動に移すなどして外部行動化する
 A 評価の観点を明確にする
 B 評価の基準を示す
 C 評価の方法は、見本法・条件法・選択法・比較法などによる自己評価、グループ評価、教師の評価、などによ
  る。
 D 評価の結果は学習者に知らせる
 などの指導が考えられる。
 (5) 調節する(調節過程)
 評価の結果を自覚して、学習を完全にするために、再び読む過程である。調節条件を明らかにして再読させる。
 (6) 獲得する(獲得過程)
 目標を達成する過程である。@朗読する、A感想をまとめる、B構造変換する、C総括する、などの指導が考えら
れる。                                           (岡田 脩)
                                                       74
     二 説明(知識・情報)の読解授業モデル



  1 教材「はたらく自動車  

 (1) 解 説
 文章の内容の大体を理解する技能は、内容を断片的に読みとるのではなく、「何についてどんなことが書いてある
か」「何がどうした話か」をまとめて構造的に理解する技能である。といっても、一年で学習する知識や情報はごく
簡単なことである。そこで、「はたらく自動車にはどんなものがある」「ヘリコプターはどんなはたらきをする」とい
うように、話題を中心にしてその大体を読みとればいい。本時は、第一時の指導で、全文を直観的に読んで、話題に
ついての大体、つまり、「はたらく自動車にはこんなものがある」と理解させる。
 (2) 学習単位
 教材「はたらくじどう車」(教出一年下)(「__」は指導する言語事項)

  じどうには、いろいろなものがあります。人やもの
 をはこぶじどう車、こうじにつかうじどう車、じけんが
 おきたときにつかうじどう車などがあります。どのじど
 う車も、つかいみちにあわせてつくってあります。
  バスは、おおぜいの人をはこぶじどう車です。バスに
  は、ざせきがたくさんあります。また、立っている人が
たおれないように、つりかわもついています。おきゃく
をのせて、きまったじこくにきまったみちをはしります。
 キャリアカーは、車をはこぶじどう車ですこのじど
う車は、車をつむところがたいてい二だんになっていま
                                                           75  
 す。こうじょうでつくったあたらしい車をなんだいもの
 せてはしります。
  ロードローラーは、じめんをたいらにかためるじどう
 車です。車は、てつでできているので、たいへんおもい
 のですですから、どうろなどをたいらにかためること
  ができます。
 ポンプ車は、火じをけすときにつかうじどう車です
火じのしらせがあると、サイレンやかねをならしながら
火じばむかいます。火じばにつくと、いけやしょう火
せんから水をすい上げて火をけします。 

 (3) 学習目標(行動目標)
 はたらく自動車にはどんなものがあるかを話題を中心にして読みとり、次のように大体を書くことができる。
 人をはこぶじどう車はバスです。車をはこぶじどう車はキャリアカーです。じめんをたいらにかためるじどう車は
ロードローラーです。火じをけすじどう車はポンプ車です。
 (4) 「文章の内容の大体を理解する技能」の学習過程モデル
 @ 大体を読みとる課題をもつ
 A 課題に即して全文を読む――大体をワークシートに書く
 B 読みとった大体を確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

  @ 学習の目標・課題・範囲を決める
 T はたらく自動車ってどんな自動車かな。初めの一行
  を読んでみましょう。
 C じどう車にはいろいろなものがあります。
 板書 じどう車にはいろいろなものがあります
T (車の指導後、「いろいろなもの」にサイドライン
 を引いて)それでは、どんな自勵車がありますか。……
 つくってありますまで読んでみましょう。読むとき、
                                                           76  
 どんな自動車の、どんなにあたるところに線を引きまし
 しょう。
  A 読んで理解した自動車を学習シートに書く
 T 線を引いたところを発表してもらいます。
 C 人やものをはこぶじどう車/ C こうじにつかう
  じどう車/ C じけんがおきたときにつかうじどう
  車。
 T 最初だけいい方がちがいますね。同じいい方にする
  とどういえばいいでしょう。
 C 人やものをはこぶのにつかうじどう車です。
 T どんな自動車があるか、線を引いたところを書きま
  しょう。なおしたいい方で書きなさい。
  B はたらく自動車にはどんな自動車があるかを理解
  する
 T 人やものを運ぶ自動車のあることがわかりましたが
  それは、どんな自動車でしょう。それがわかる文に線
  を引きながら終わりまで読んでみましょう。
  C 線を引いた文を、課題に応じて発表させ確認する
T どんな自動車は、何という自動車ですか。(この課
 題に応じた答え方を指導する)
C 人をはこぶじどう車はバスです。/C 車をはこぶ
 じどう車はキャリアカーです。/C じめんをかため
 るじどう車はロードローラーです。/C 火じをけす
 じどう車はポンプ車です。
 D 理解したことを学習シートに書く
T では、今話したように学習シートに書きましょう。
C (学習シートに、課題に応じて書く)
 E 学習結果を評価し、調節する
T 人をはこぶじどう車は何ですか。
C 人をはこぶじどう車はバスです。
  (以下、同じようにキャリアカー、ロードローラー、
 ポンプ車について確かめる。その際、この文章ではも
 の→車、こうじ→じめんをかためるこうじ、じけん→
 火じを指していることを理解させ、いいかえができる
 ように評価し、調節する)
 F 学習シートを見ながら大体を話し、学習目標獲得
77  
   とする
 T この文章にはどんなことが書いでありましたか。
C 四つのこと(具体的に)が書いてありました。(学
 習シート下段のことがいえればよい)
 〔どんなじどう車がありますか〕―┬2で読んで理解┐   [どんなじどう車は、なんというじどう車ですか]
                 └した自動車  ┘
 1 人やものをはこぶのにつかうじどう車―――――――人をはこぶじどう車はバスです。
                           車をはこぶじどう車はキャリアカーです。
 2 こうじにつかうじどう車―――――――――――――じめんをたいらにかためるじどう車はロードローラー
                           です。
 3 じけんがおきたときにつかうじどう車―――――――火じをけすじどう車はポンプ車です。 

                                             (立尾 保子)
  2 教材「山のぼり人形」  

 (1) 解 説
 事柄の順序を考えながら読むというのは、文章に書かれている順序、経過、変化、移動などを叙述に即して正確に
読みとっていく技能である。第一学年の「文章の内容の大体を理解すること」の基礎の上に立って、第二学年では、
 「時間的順序・事柄の順序を考えながら読む技能」へと発達する。これは、叙述に即して文章を筋道を立てて理解す
る上に必要な技能である。また、この技能は、やがて、第三学年の「文章の要点を理解する技能」へと発展する。事
柄の順序を考えながら読む学習は、物の作り方、実験の仕方、遊び方などを書いた指示文によって、その手順や方法
を正しく理解し、その通りに作業し、行動することを通して行うのが効果的である。さらに、この技能は、点的な思
                                                       78
考から線条的、関係的思考へと発達する二年生の頃に学習するよう計画するとよい。なお、この技能の指導は、文章
全体を直観的に読んで理解する場合に行うのが原則である。
 本時は、第二時間目の学習である。一時間目には、教材の文章全体を直観的に読んで、@山のぼり人形とはどんな
人形か、A用意するもの、B作り方と動かし方、Cのぼるわけ、が書いてあることを確認し、山のぼり人形を作るた
めには、どんな材料が必要か、用意するものは何かについて理解した。本時は、次の教材の部分を直観的に読んで、
山のぼり人形を作る順序を理解する学習である。
 (2) 学習単位
 教材「山のぼり人形」(教出二年下)(「__」は指導する言語事項)
 @ 人形を作る

  はじめに、@のしゃしんのように、一本のモールをま
 げて、人形の頭と足を作ります。足の長さは、右と左を
 同じにします。足の先は、円いわにします。
  つぎに、Aのしゃしんのように、もう一本のモールを
 まきつけて、人形のどう体を作ります。このとき、手の
 長さをのこしておきます。
 こんどは、人形の手を作ります。手の長さは、足の長
 さよりみじかくします。また、左右の手の長さは同じに
して、その先を円いわにします。人形は、Bのしやしん
のようになります。
 A 糸にとりつける
 人形に糸をとりつけましょう。
 人形の手と足の円いわに、糸を通します。そして、C
のしやしんのように、上はわりばしに、下はくぎにむす
びつけます。
 これで、山のぼり人形は、できあがりです。)

 (3) 学習目標(行動目標)

                                                       79
 山のぼり人形を作るために、全文を読んで作る順序を理解し、次のように学習シートに書くことができる。
 @ はじめに 一本のモールで、人形の頭と足を作る。   B こんどは 人形の手を作る。
 A つぎに もう一本のモールで、人形のどう体を作る。  C (さいごに) 人形を糸にとりつける。
 (4) 「事柄の順序を理解する技能」の学習過程モデル
 @ 順序を読みとる必要性を自覚する
 A 順序を読みとる課題を設定する――課題「何を使って、どんな順序で、山のぼり人形を作りますか」
 B 全体を読んで順序を理解する――全体を読んで作る順序を読みとり、学習シートに書く
 C 押さえた順序を確認する――――順序を表すことばを押さえて、順序を確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際(第二時扱い)

  @ 学習意欲を喚起する
 T (山のぼり人形を見せながら)みなさん、これを作
  ってみたいと思いますか。
 C (全員挙手)
 T この文章には、作り方が書いてありましたね。一に
  はどんなことが書いてありますか。
 C 用意するものが書いてあります。
 T 二にはどんなことが書いてありますか。
 C 山のぼり人形の作り方と動かし方が書いてあります。
T 三にはどんなことが書いてありますか。
C のぼるわけが書いてあります。
 A 学習目標を確認する
T 材料は用意してあるけれど、これで山のぼり人形を
 作るには、どうしたらいいでしょうか。
C 作り方を調べて作ればいい。
C 初めにこれを作って、次にこれを作るって、作る順
 序を調べてその通りに作ればいい。
 B 学習範囲を決める
80   
 T それでは、山のぼり人形を作る順序は、どこからど
  こまでを読めばわかりますか。
 C 二十ページの初めから、二十二ページの五行目まで
  に作り方が書いてあるからそこを読みます。
 T そこまで読んで調べれば山のぼり人形は作れますか。
 C 「ここで、山のぼり人形はできあがりです」と書い
  てあるから、そこまで読めば作れます。
  C 山のぼり人形を作る順序を読みとって、学習シー
   トに書く
 T さあ、どんな順序で作ったらいいか考えながら、一
  まとまりごとに読んでもらいましょう。
 C (第一段落を音読する。)
 T ここでは、何を作るのかな。
 C (第二段落を音読する。)
 T ここでは、何を作るのかな。
   (以下同様にしで、第四段落まで読む。)
 T 最後に「これで山のぼり人形はできあがりです」と
  書いてあるから、ここに書いてある順に作れば、山の 
  ぼり人形はできますね。
 T それでは、自分で初めから終わりまで読んで、何を
  使って、人形のどこを作るか、作る順に、シートに書
  きましょう。初めに読みながら、どこを作るか、作る
  ところに線を引いてから書きましょう。(板書「何を
  つかって、どんなじゅんじょで作りますか。」)
 C (読みながら要点にサイドラインを引く。引き終わ
  ったものから学習シートに書く。)
    山のぼり人形の作り方   (名前)
    〔山のぼり人形を作るじゅんじょ〕
    一本のモールで、人形の頭と足を
     作ります。 
    もう一本のモールで、人形のどう
     体を作ります。 
    人形の手を作ります。 
    人形を糸にとりつけます。 
   〔これで、山のぼり人形はできあがりです。 
81   
  D 学習の結果を評価し、調節する
 T できたら調べてみましょう。(OHP投影)
    「何を使って、人形のどこを作るか」を調べて順に
  書くのでしたね。これでいいですか。
 C 一本のモールで、人形の頭と足を作るのだから、そ
  れでいいです。
 T 回ってみたら、「足の長さは、右と左を同じにしま
  す」と書いた人がいます。それはどうですか。
 C それは、作り方だからいらない。何を使って、どこ
  を作るというのだから。
 T それでは、自分と比べて、いらないことが書いてあ
  る人は、正しく直しましょう。
 C (各自、書き直す。)
   (以下同様にしで評価・調節する。)
 T 今度は作る順序はこれでいいか調べてみましょう。
  初めに、自分の書いた順でいいと思う人は○の中に番
  号を書いてください。
 C (各自、@ABCと書きこむ。)    
   T では、その順でまちがいありませんか。なぜ?
 C 作る前に、「はじめに」「つぎに」「こんどは」と書
  いてあるからです。
 T それで、作る順序がはっきりわかりますね。では、
     の中にそのことばを書きましょう。
 C (各自、書き入れる。)
 T 最後に残ったじには何と書きますか。
 C 「人形ができたら」と書きます。
 C 「さいごに」と書きます。
 T そうですね。そこに終わりのことばを書きます。
 C (各自、書き入れる。)
  E 作る順序を確認する
 T それでは、自分で書いたのを読んでみましょう。
 C (各自読む。)
 C (学習シートを音読する。)
 T その順序で山のぼり人形を作っていけばできますね。
  次の時間は、作り方を調べて、山のぼり人形を作って
  みましょう。           (能瀬 外喜雄) 

                                                       82
   3 教材「色とくらし」  
 (1) 解 説
 文章の要点を理解するというのは、叙述を手がかりにして、文章の要旨を考えながら内容を理解する上での重要な
事柄をおさえる技能である。第三学年の「内容の要点を正しく理解しながら」、第四学年の「段落ごとの内容の要点
相互の関係や内容の中心点を把握しながら」読む技能は、第二学年の「事柄の順序や場面の移り変わりを中心にして」
を受け、第五学年の「主題や要旨を理解しながら」読む技能へと発展する。
 とかく、「要点」という言葉が「だいじなこと(ところ)」と言いかえられ、「何のために」「何を理解する上で」と
いうような目的なり価値観なりが置きざりにされて、一つの形式段落の中だけで要点さがしを行いがちである、が、こ
れは誤りである。内容理解のための要点というのは、書き手が述べようとしていること(要旨) に照らし合わせた
場合の重要な叙述であって、ここには、読み手側の自由な発想による「だいじなこと(ところ)」という判断は許さ
れない。同じ文章でも、読み手側の読みの目的に沿って読む場合には、要点となるべき叙述は異なってくるはずであ
る。ここを明確にして指導しないと、要点を理解する技能は高まらないし、定着もしない。
 本時は、第二時間の学習である。一時間目は、文章全体を直観的に読んで概略をつかみ、特に第一段落について
「書き手は何を説明しようとしているか」をおさえた。本時は、第二〜五段落の要点をおさえる学習である。
 (2) 学習単位
 教材「色とくらし」(教出三年下)(○内の数字は段落番号を示す)
                                                       83

  A
  赤や黄色やオレンジ色を見ると、あたたかい感じを受
 けます。反対に、青や白からは、すずしい感じを受けま
 す。
   B        じっけん
  このことを、次のような実験でたしかめた人がいます。
 まず、すきとおっていて、大きさも形も同じガラスのコ
 ップを二つ用意します。そして、一方のコップには赤い
 色をつけたお湯を入れ、もう一方のコップには青い色を
 つけたお湯を入れます。温度は、両方とも同じにしてお
 きます。
  C
  さて、この両方のコップを見つめさせながら、同時に
 指を入れ、どちらがあたたかく感じるかを、多くの人に
 言ってもらいました。すると、たいていの人は、赤いお
 湯のほうがあたたかい、と答えたということです。
  D
  このように、色によってあたたかく感じたり、すずし
 く感じたりすることを利用したものが、わたしたちの身
 のまわりにはたくさんあります。

 (3) 学習目標(行動目標)
 文章の要旨に照らして段落ごとの要点を示す文をさがし、要点として書き出すことができる。
 (4) 「文章の要点を理解する技能」の学習過程モデル
 @ 読みの目的意識――「この文章をどう読んでいけば、書き手が説明しようとしていることがわかるだろう。」
 A 学習課題意識――課題「この文章で読み落としてはならないところはどこだろう。」
 B 要点の指摘――叙述から要点を見つけ、サイドラインを引く。
 C 要点の確認――指摘した要点が「色とくらし」全文の中で要点となっているかどうかを確かめる。
 D 要点の認識――要点を文の形で、段落ごとにノートに書く。
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際(主な学習活動のみ)

 @ 読みの目的意識をもつ  T 「色とくらし」の文章で、書き手がみんなに説明し
84   
  ようとしでいるのは、どんなことですか。
 C @段落では「色は、わたしたちにさまざまな感じを
  あたえるから、くらしの中で、これを上手に生かして
  いるものがたくさんある」ということを考えました。
 C だから、どんな色が、どんな感じをあたえるかを考
  えて読めばいいと思います。
 C それだけでなく、その色を、くらしの中でどう生か
  しているかを考えて読むこともだいじです。
 T そうですね。題名にもあるように、「色」と「くら
  し」を結びつけて読むことが必要ですね。………板書
  A 学習課題意識をもつ
 T では、ここの文章で読み落としてならないのは、ど
  んなことですか。読んで考えてみましょう。
   (各自、サイドラインや○印をつけながら黙読する)
 C ここには、あたたかい感じの色とすずしい感じの色
 のことが書いてあるから、このことがはっきりわかるよ
 うに読めばいいと思います。…………………………板書
 C 「くらし」のことは、D段落にまとめて書いてある
  から、ここはA段落の「色の感じがどうか」というこ
  とに注意して細かく読めばいいと思います。……板書
  B 要点を指摘する
 T そうですね。では、「色の感じが、どうだ」と書い
  てあるところをさがしてみましょう。
 C Aの段落に、「赤や黄色やオレンジ色を見ると、あ
  たたかい感じを受けます。反対に、青や白からは、す
  ずしい感じを受けます」と書いてあります。
 C それを簡単にいうと、「赤や黄色やオレンジ色は、
  あたたかい感じの色。青や白は、すずしい感じの色。」
  ということになります。(「同じです」の声)……板書
 T では、Bの段落の要点は、どうなりますか。
 C ここでは、実験のしかたのことを言っているから、
  大きさも形も同じガラスのコップを二つ用意して、赤
  と青の色をつけた同じ温度のお湯を入れて調べるとい
  うことだと思います。
 C ここのところは、「こうすれば、Aの段落のことが
  確かめられる」ということで、「色の感じがどうだ」
85   
  ということとは直接につながりません。だから、要点
  はないと思います。
 C わたしも、要点はないと思います。もし、要点とし
  てあげるなら、Bの段落をまとめて、「赤と青の色を
  つけた同じ温度のお湯で、ほんとうにあたたかく感じ
  たりすずしく感じたりするかどうかが調べられる」と
  すればよいと思います。(うなずく子多数) ……板書
 T なるほど、よく考えたね。「色の感じがどうか」と
  いうことは、ここには出ていないということですね。
  では、Cの段落はどうかな。
 C ここには要点があります。「すると」という言葉の
  あとに、「たいていの人は、赤いお湯のほうがあたた
  かい、と答えたということです」と書いてあります。
   (「そうです」の声)
 T どうして、そこが要点になるの。
 C 「すると」という言葉は、「両方のコップに同時に
  指を入れ、どちらがあたたかく感じるかを、多くの人
  に言ってもらったら」ということだからです。
 C それもあるけど、今、考えているのは、「色の感じ
  が、赤いお湯と青いお湯ではちがうかどうか」という
  ことだから、それについてはっきり書いてあるところ
  が要点になります。だから、「すると」からあとのと
  ころでいいと思います。(「同じです」の声)……板書
 T いいところに気がついたね。では、次のDの段落の
  要点をみつけましょう。
 C ここは、一つの文だけど、中身は二つあります。一
  つは、「色によってあたたかく感じたりすずしく感じ
  たりする」ということで、もう一つは「それを利用し
  たものが、わたしたちの身のまわりにはたくさんある」
  ということです。
 T どうして、そう考えたの。
 C 「このように」という言葉は、さっきの実験からわ
  かったことでしょ。それから、身のまわりにあるもの
  というのは、そうした色の感じのちがいの利用のこと
  をいっているから、別のことだと思います。
 T では、この段落には二つの要点があるということで
86   
  すか。
 C そうです。
 C ぼくは、こう考えます。前の方は、「色の感じがど
  うか」と考えたときの要点。あとの方は、「色の感じ
  のちがいが、くらしとどうつながっているか」と考え
  たときの要点だと思います。
 T みんな、今、言ってくれたことの意味がわかるかな。
  それでは、これまであげてくれたことが、たしかに要
  点となるかどうか、調べてみようね。
  C 要点を確認する
   題名と@段落とから、書き手の意図をふりかえる。
   学習課題の再確認をする。
 T さあ、みんながあげた要点は、ほんとうに要点だと
  言えるかな。
 C この文章を書いた人は、「色」は「くらし」にとて
  も関係があると言いたいんだから、Dの段落のおしま
  いのところが最もだいじな要点になります。
 C その中でも、A〜C段落では、「色の感じがどうだ」
  といっているんだから、A段落の全部とC段落のおし
  まいに書いてあることが、要点になります。
   (板書事項を要点文の形に改め、色チョークで結線)
 C そうすると、みんながあげてくれた要点は、書き手
  が説明しようとしていることがらのだいじな柱になっ
  ているということですね。(「ハイ」の声)
 D 要点を認識させる。板書を写す。  (安達衡)



  4 教材「動物のへんそう」   
 (1) 解 説 
 第四学年の「段落相互の関係を理解する技能」というのは、段落の個々の内容(要点)の相互の関係を理解するこ
とである。「段落と文章全体との関係を考えながら読む技能」というのは、文章全体の中で、この段落は、話題や問題
                                                       87
を提示する段落だ、この段落は、話題を説明する段落だ、この段落はまとめの段落だというように、文章全体の中で、

それぞれの段落はどんな働きを持っているかを理解する技能である。
  「動物のへんそう」を次のように七時間で扱った。
 @ 文章全体を直観的に読んで、要点をとらえ、概略をつかむ。この時、大段落ご
  との要点をレンガ色のカードに書き出す。(一時間)
 A 各大段落ごとに分析的に読んで、小段落の実例を白カードに書き出す。大段落
  を示す黄緑色のカードに、要点と実例のカードをはり、下の図のように大段落を
  構成する。さらに、その段落の働きを考える。(五時間)
 B 本時は、体制的に全文を読んで、文章を再構成することを通して、段落相互の
  関係を理解する学習をする。(Aで作った段落ごとのカードを児童自身で操作して)
 

 (2) 学習単位
 教材「動物のへんそう」(学図四年上)

 右の図は、「動物のへんそう」の大段落ごとに、段落
相互の関係を示した文章の構造過程である。
 第一段落は、文章を起こす機能をもつ段落、話題を提
示する段落。
 第二大段落から第四大段落までは、第一段落の話題を
受けて、「動物の身を守るしくみ」の例をあげて説明し
ている段落。
 第五段落は、まとめる機能をもつ段落であり、「動物
のんへそう」の文章全体の要旨を述べる段落である。
 展開のパターンは、「話題――説明――総括」となっ
ている。
  (起こす)

  ↓(受ける)

  =(並べる)

  =(並べる)

  (まとめる)





   88






88   

 (3) 学習目標(行動目標)
 「動物のへんそう」を読んで、段落相互の関係を考えながら、段落カードを操作することによって、文章を次の図
のように理解することができる。(九〇ページ左段の図参照)
 (4)「段落相互の関係・段落と文章全体との関係を考えながら読む技能」の学習過程モデル
 @ 全文と段落カードを読んで、文章構成を確認する
 A 段落カードを操作して、文章を再構成する
 B 再構成した文章の構成を説明することによって、理解を確かにする
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を確認する
 学習計画表(OHP)をもとに、前時までの学習と関
連させながら、本時の学習目標を確認する。 
 
OHP
・段落と段落がどういう関係になっているか。
・文章全体の組み立てはどうなっているか。 
89   
  A 学習方法を確認する
 T どんな学習の仕方がよいでしょう。
 C よく文章を読む
 C カードを読む
 C カードを組み立てる は短冊黒板)
 C まとめる。
  B 文章全体の意味の構造を確認する
 T 全文を、大段落の組み立てと、大段落と大段落の関
  係がどうなっているかを考えながら読みましょう。
 C 各自が文章を黙読する。
 T 次は、文章を読んだ時と同じ方法で段落カードを読
  みましょう。
 C 各自が大段落カードを黙読する。
  C 大段落の構造を再確認する
 T これは、第四段落の細部です。共通点は何ですか。
OHP
Cの1 たつのおとしごは、海草におでまきつ
    いてすがたをくらます。 
Cの2 へらやがらは、かいめんのそばでさか
    さになって、てきをかわす。

 C 「すがたをくらます」と「てきをかわす」というの
  は、「身を守る」ということで同じです。
 C たつのおとしごは、海草に、へらやがらは、かいめ
  んに似ているということ。
 C それは「色と形」ということで共通している。
 C 「おでまきつく」と「そばでさかさになる」
 T それはどうして共通しているか。
 C 「動作」ということで共通している。
 T まとめて言ってください。
 C 色と形と動作で身を守ることで、共通点が大段落の
  要点になります。
  OHPC色と形と動作で身を守る。(赤【カラー】シート)
 T これで大段落のCの組み立てがはっきりしました。
  ほかの段落の組み立ても確かめてください。
  D 各自、段落カードを操作して文章を構成する
90   
 T それでは、五枚の段落カードを動かしで、台紙の上
  に、文章の組み立てがわかるように並べましょう。
 C 各自カードを並べる(小声で説明しながら)
 T では、OHPで説明しながら並べてください。
 C @は、これから
  説明することは何
  かということです。
  ABCは、みんな
  その例だから同じ
  にならべました。
  Dは、全体のまと
  めだから@と同じ
  高さにしました。
  (右図参照)
  E 評価基準をつ
   くり、調節する
 T 今までのことを
  まとめてみます。 
  @とDは、全体にかかわるので、少し上で同じ高さ、
  ABCは、@の例を同じようにあげているのだから、
  少し下げで、同じ高さに並べる。
 T これによって、各自、自分のを正しく並べて、今度
  はのりでつけましょう。段落と段落をつなぐことばや
  線も書き入れましょう。
 C 基準にそってのりづけし、ことばや線を書き込む。
  つなぐことばの例
 @これから説明するのは A最初の例は B二つめの
 例は C次は少しふくざつで D以上をまとめて、E
 これらのことから F――とわかります 
 F 文章構成の理解を深めるために説明する
 T できた図をみんなに見せ
  で、文章の組み立てがどう
  なっているか説明してくだ
  さい。
 C (右の図を示して)
   まず、@でだいたいの説 
 
91   
  明をして、話題をあげます。
   次に、その例をあげます。Aは色で身を守る例、B
  は色と形で身を守る例、Cは色と形と動作で身を守る
  例です。Dはまとめで、自然のしくみは、「動物のへ
  んそう」ということで、全体と結びつきます。
 C この文章は、「動物のへんそう」について説明して
  います。五段落でできています。
   一段落は、動物は、身を守る自然のしくみをもって
  いることが書いてあります。二段落は、例えば、色で
  身を守る動物がいることが書いてあります。三段落は
  例えば、色と形で身を守る動物がいることが書いてあ
  ります。四段落は、例えば、色と形と動作で身を守る
  動物がいることが書いてあります。五段落は、これか
  らわかるように、動物は、生命や種族を守るための自
  然のしくみをもっていることが書いてあります。
   以上のように、一段落で話題をあげ、二段落から四
  段落で実例をあげ、五段落でまとめています。
 T みなさんの説明を聞くと、文章がどういう関係で組
  み立てられているか、よく理解できていますね。
                    (青木 勉)



  5 教材「動物の能力」   
                
 (1) 解 説

 要旨とは、書かれた文章が、読み手に理解させようとする中心思想であり、文学作品における主題に対応する。
 要旨を理解する技能は、低学年での、文章の大体や順序を読みとる技能、中学年での、文章の中心的事柄を理解し
たり、要点や段落相互の関係を理解する技能などが基礎になって発達する技能である。この技能は、一般的に四、五
年生の頃から特に発達するといわれている。
 要旨を理解する技能は、文章全体を読むときに、直観的にはたらく。また、段落の要点をおさえて、要約して要旨
                                                       92
をまとめるときにもはたらく。要旨をとらえるには、@文題や、話題についてまとめている文をさがす A文章の構
成を考え、段落相互の関係や段落の役割を考えるなどの方法を用いる。
 「動物の能力」の本時に至るまでの授業は、次のようである。@全文を直観的に読んで、話題をとらえる。A直観
的に読みとった要旨を書く。B読みとった要旨を確認するために、分析的に読む。ア 文章全体をいくつかの大股落
(意味段落)にまとめる。イ 各段落ごとの話題(または要点)を書く。ウ 段落の役割を考え、段落相互の関係を
図式化する。本時は、分析的に読みとったことをもとにして要旨をまとめ、文章化する学習である。
 (2) 学習単位
 教材「動物の能力」(東書五年上)
 「もし、オリンピックに、動物が選手として参加したら、金メダルは、みんな取られてしまうだろう」という友達
のじょうだんをとりあげ、「なるほど、そうかも知れない。……しかし、考えてみると、かれらがこのような実力を発
きするのは、必要にせまられた場合にかぎるのである」と筆者の意見を述べた文章である。文章は、このあと、「チ
ーターが時速百二十キロメートルもの速さで走るのは、えものを追うときで」あり、「カンガルーが、高いしょう害
物をジャンプするのは、きけんを感じてにげるときである」と例証している。そして、最後に、友達のじょうだんを
受けて、「このようにみてくると、動物をオリンピックに出場させても、えさを目の前に見せて走らせるとか、ある
いは、後ろからおどかして追い立てるとかしないと、本気にならないにちがいない」と結んでいる。
 (3) 学習目標(行動目標)
 前時までの学習結果の知識(KR)をふまえて、「動物の能力」の全文を読み、要旨をまとめ、次のように文章化
することができる。
                                                       93
 「動物は、すばらしい能力をもっているが、その能力を発きするのは、必要にせまられた場合に限られる。」
 (4) 「要旨を理解する技能」の学習過程モデル
 @ 要旨を理解する必要性を自覚する――要旨を理解するための課題を設定する
 A 要旨の理解の仕方を理解する――――段落相互の関係、各段落の役割、キーワードなどから、要旨の表れてい
                    る段落をさがす
 B 要旨を理解する――――――――――理解した要旨をノートに書く
 C 要旨を評価し、確認する――――――基準に合わせて評価し、調節する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 要旨を正確に読みとる必要性を自覚する
T 前の時間に、「動物の能力」を大きな段落にわけて
 文章構成をくわしく調べました。きょうは、それをも
 とにして、最初の時間に書いた「要旨」をもう一度見
 直すのでしたね。くわしく読んで、最初に書いた要旨
 が大きく変わりそうな人は、手をあげてごらん。
C (十名くらい挙手)
T では、最初にみなさんが書いたものの中から、代表
 的なものをあげでみましょう。(OHPで投影)
 〔例1〕 チーターは、カモシカを食べることと、カ
    ンガルーは、三メートルもとぶことを言おう
    とした。
 [例2〕 動物は人よりすごい能力をもっている。
 〔例3〕 いろいろなくふうをしなければ、オリンピ
     ックで金メダルはとれない。
 〔例4〕 動物をオリソンピックやなにかに出させて
     も、おどかしたりなにか特別なことをしなけ
     れば、動物は本気にならない。
 [例5〕 動物をオリンピックに出せば、金メダルは
     みんなとられてしまうだろう。しかし、本当
94   
     は動物は必要にせまられた場合にしかすばら
     しい能力を発きしないのだから、とてもオリ
     ンピックには出せないだろう。
T ずいぶんいろいろありますね。これでよいと思う人
 も、もう一度文章にあたって、見直しましょう。
 A 要旨の理解の仕方を理解する
T どうしてこんなにいろいろできたのでしょう。
C 大事なところのとらえ方がちがうから。
C くわしく読まないで、ざっと読んだから。
T どのような読み方をすれば、正しく要旨がとらえら
 れるでしょうか。
C きのうやった段落の中から、中心になるところをさ
 がせばよい。
C 例が書いてあるところをどんどんとっていってしま
 えば、大事なところが残ります。
T そうですね。
段落相互の関係、それぞれの段落のはたらきから要旨
の表れているところをさがす。 
 では、この方法で、要旨をさぐってみましょう。
C (文章を読む)
 A 要旨を理解する
T 要旨が表れているところがみつかりましたか。発表
 してください。
C @とAの段落です。
 @もし、オリンピックに、動物が選手として参加し
たら、金メダルは。みんな取られてしまうだろうと友
達がじょうだんを言った。………
 Aしかし、考えてみると、かれらがこのような実力
を発きするのは、必要にせまられたときにかぎるので
ある。 

C @は、書き出し(前書き)だから入れない方がいい
 と思います。
C でも、おしまいのAの段落にも、オリンピックのこ
 とがでてくるから、大事なのではないですか。
C Aは、「しかし」から始まっているし、「このよう
95   
 な」ということも、Aの段落だけではわからないから
 @も入れるべきだと思います。
C 今は、要旨を読みとるのだから、例の部分は、みな
 けずって、必要なところ(「このような実力」の内容
 など)は補えばいいと思います。
T なかなかいい意見が出ていますね。@段落とA段落
 が同じ重さでなかったら、重い方をとって、足りない
 ところを補うようにしましょう。
 (挙手させたところ、同じとしたもの四、五名、他は
 A段落を重要とした。)
T ほかに、要旨が表れている部分はないだろうか。
C (十数名挙手)最後のA段落です。
 Gこのようにみてくると、動物をオリンピックに出
場させても、えさを目の前に見せて走らせるとか、あ
るいは、後ろからおどかして追い立てるとかしない
と、本気にならないにちがいない。 
T だいぶおおぜいいますね。ここを選んだ人の中で、
 このG段落だけを選んだ人は、どれくらいいますか。
  (十一名挙手)選んだわけを言ってください。
C 「このように」ということばがあるから、まとめで
 す。それに、一番終わりにまとめがくることが多い。
T たしかに、「このように」というのは、前に言った
 ことをまとめるときに使うことばだけれど、文章全体
 のまとめに使うとはかぎらないから、機械的にきめて
 はだめだよ。
C オリンピックのことがはじめにもあったから、ここ
 でまとめることになります。
C 「えさを目の前に見せて走らせるとか、後ろからお
 どかして追い立てるとか」は、A段落の「必要にせま
 られた場合」の例とみていいから、やっぱり、筆者の
 一番いいたかったことは、A段落の内容だと思う。
C 賛成です。オリンピックのことは話のきっかけで、
 終わりのところは、それに合わせて書いただけで、や
 っぱり中心になるのはA段落です。
 (議論の末、A段落がもっとも要旨に近いものという
  ことに落ち着いた。)
96   
 C 要旨を評価し確認する
 Aの段落を中心にして、要旨を文章化させ、その文章
を次のように評価した。
〔観点〕動物はすぐれた能力をもっているが、その能力
    を発きするのは、必要にせまられた場合に限ら
    れる。
〔基準〕A 観点がすべて満たされているもの、B 動
    物の能力が優れているという記述のないもの、
    C オリンピックのことだけ書いてあるもの。
〔方法〕児童には、基準により自己評価させ、教師は、
    机間巡視して確認する。B、Cの者は訂正させ、
    提出させる。         (堀口 和正)



  6 教材「生きている土」  

 (1) 解 説
 事実と感想・意見を読み分けるというのは、知識・情報の読解技術の中の文章を批判的に読む学習技術の一つであ
る。この技術は、客観的叙述と主観的叙述を区別して読む技術である。どんな事実が書いてあるか。事実が成り立つ
わけはどうなっているか。どんな事実について、どんな考え・判断・感想を述べているか。根拠は何かを注意して読
むように指導することがねらいである。
 この種の文章には、事実を直接叙述した部分、事実について説明を加えた部分、また解説や筆者の感想・意見を述
べた部分が複雑にからんでいて、明白な区別がつきにくいものが多い。しかし、正確な知識・情報を得るためには、
この事実と感想・意見を読み分ける技能は欠くことのできないものである。
 本時は三時間目。一時間目は全文を読んで概略をつかみ、学習の課題作りをし、第二時間目は課題@に従って学習
し、土は何によってできているかを理解した。第三時間目の本時は、課題A土の中にすんでいる生物はどんなはたら
                                                       97
きをするのか。課題Aの土の中にすむ生物がいなかったらどうなるだろうかに従って読んでいく学習である。
 (2) 学習単位
 教材「生きている土」(教出六年下)の次の部分
 @ では、こうした土の中にすんで。いる生物は、どんなはたらきをしているのだろうか。
   みみずは、やわらかくなった落ち葉を穴の中に引きこんで食べては、土の表面に出てきて多くのふんをします。
  こうしたことをくり返すことによって、土を肥やすはたらきや土を耕すのと同じようなはたらきをしています。
 A とびむしやだにの消化管を拡大してみると……。これらの虫も、落ち葉を食べてはそれをふんにし、土を肥や
  しているのです。
 A 数多くのバクテリアは、動植物の遺体をくさらせるはたらきをしています。
 C このように、地中の生物は、土を肥やしたり、土を耕したりする大事な仕事をしているのです。もし、こうし
  た土の中にすむ生物がいなかったとしたら、いったいどうなるのでしょうか。
 A 落ち葉は食べられもしないし、くさりもしないので、森林は落ち葉でうまり、動物の死体もくさらずに積もる
  ことでしょう。
 E ともかく、土の中にすむ生物に代わって、こうした作業を営む工場を建設することは全くゆめのような話です。
 (3) 学習目標(行動目標)
 「土の中の生物はどんなはたらきをするか」「土の中に生物がいなかったらどうなるか」について正しい知識を得
るために、それについての説明・解説と筆者の感想・意見とを区別して次のように書き出すことができる。
 @ みみずは落ち葉を食べ地面に出てふんをする(事実))。土を肥やし、土を耕すのと同じはたらきをする(解説)。
                                                       98
 A とびむしやだにの消化管に落ち葉が入っている(事実)。これらの虫も土を肥やしている(解説)。
 B 数多くのバクテリアは……植物の養分になり、土を肥やしている(解説)。
 C 森林は落ち葉でうまり、動物の死体もくさらずに積もる(意見)。二酸化炭素を必要とする植物の成長にえいき
  ょうをおよぼす(意見)。土の中の生物に代わる作業を営む工場を建設することは全くゆめのような話です(感想)。
 (4) 「事実と感想・意見とを読み分ける技能」の学習過程モデル
 @ 事実と意見とを読み分ける必要性を自覚する―――――――正しい知識を求めようとする
 A 事実と意見との読み分け方を理解する――――――――――客観的叙述と主観的叙述の区別を理解する
 B 事実と意見・感想とを読み分ける――――――――――――事実と意見・感想とを読み分けてカードに書く
 C 読み分けた事実と意見とを確認する―――――――――――書いた事実と意見とを評価し確認する
 (5) 学習指導過程―――学習指導の実際

 @ 学習目標を確認する
T きょうは、どんな課題について何を学習するのです
 か。
C 課題Aで、土の中にすんでいる生物は、どんなはた
 らきをするか、課題Bで、土の中にすむ生物がいなか
 ったらどうなるかを学習します。
 A 学習方法を決める
T 課題ABを解決するには、どんな読み方をしますか。
C 正確な答えを出すために、事実の説明や解説と筆者
 の感想や意見とを区別して読みます。
T 答えになる所にサイドラインを引きながら読んでい
 き、一つの事柄を一枚のカードに書きます。
 B 事実と意見・感想とを読みける
課題A
  土の中にすんでいる生物はどんなはたらきをし
 ているのだろうか。 
99   
C 事実の説明・解説・意見・感想を読み分けて書く。



 
 みみずは、落ち葉を穴の中に引きこんで食べ、
土の表面でふんをする(事実の説明)。土を肥やす
はたらきや土を耕すのと同じようなはたらきをし
ている(事実の解説)。 

 
 みみずが通ったすきまには、水や空気がたくわ
えられるので、植物の成長に都合がよい(解説)。 

 
 とびむしやだには、落ち葉を食べる(事実)。そ
れをふんにし、土を肥やしている(解説)。 

 数多くのバクテリアは、動植物の遺体をくさら
せるはたらきをしている(解説)。 
遺体がくさって植物の養分にする(解説)。 


 
 マメ科の植物の根にすみついているバクテリア
は、空気中の窒素を固定し、それによって土を肥
やしている(解説)。 
 このように、

地中の生物は、土を肥やしたり、土を耕したり
する大事な仕事をしている(解説)。 
課題B
 土の中にすむ生物がいなかったとしたら、どう
なるだろうか。 


 森林は落ち葉でうまり、動物の死体もくさらず
に積もることでしょう(意見)。 

 二酸化炭素が放出されなくなるので、それを必
要とする植物の成長にもえいきょうをおよぼすこ
とになるでしょう(意見)。 
 土の中の生物に代わる作業をする工場を作るこ
とは、ゆめのような話です(感想)。 

 C 学習の結果を評価・調節する
T 課題Aから調べていきましょう。
C 課題は「生物のはたらき」だから、適切な答えは
 で、事実の説明と解説になっています。
C は、をまとめているので、この段
 落の要点になっています。これも解説だと思います。
100   
T は、何になりますか。まちがいですか。
C まちがいではないが、課題に対しての適切な答えに
 なっていません。前のことについて解説を加えている
 と思います。
T 次に、課題Bについて調べてみましょう。
C 課題Aの答え方と違います。
T どのように違うのですか。
C 課題Aの場合は、「……はたらきをしている」「土を
 肥やしている」と言うように事実を言っているが、B
 の場合は「でしょう」と言う表現をしています。
T どうしてこのような表現をしているのでしょうか。
C 筆者の予想、意見だから。
C 事実ではなくで、筆者の考えだから。
C は、筆者の感想だと思います。
T きょう勉強したように、このような文章では、事実
 を書いている部分と事実に説明を加えて解説している
 部分と、事実について筆者が意見や感想を述べている
 部分とがありますから、このことをよく考えながら読
 むことが大切です。これらのことを通して、筆者が一
 番言いたいことを事実と意見を区別して正確に読み取
 っていくのです。
T 自分のカードを読み返して、課題に合った答えかど
 うかを確かめてください。
 D 確認をする
T 課題Aに対する適切な答えはどれですか。
C です。
T は、何ですか。
C 説明を加えている部分で、解説です。
T は、何ですか。
C まとめで、やはり解説です。
T 課題Bの答えは?
C 筆者の意見がで、は感想です。
                   (岩川 益子)

                                                       101

      三 文学(物語・童話)の読解授業モデル


  1 教材「ふしぎな たけのこ」   

 (1) 解 説
 場面の様子を想像しながら読むというのは、場面についての視覚的な想像表象を描きながら場面を読みとっていく
技能である。昔話・民話・物語などは、想像による創造の世界を描いたものである。従って、それを読むということ
は、想像によって、まだ見ない、経験もない、感じたこともない新しい世界を生み出していく活動である。
 場面の様子を想像しながら読む学習は、昔話・民話・物語などの文学作品によって、場面の様子をことばをとおし
て想像させ、その結果を動作化や絵画化させる活動を取り入れると効果的である。
 本時は、「たろ」が、空高くあがってしまったいきさつを、場面の様子を想像しながら読みとる指導である。
 (2) 学習単位
 教材「ふしぎな たけのこ」(学図一年下)(「__」は指導する言語事項)

 山の、おくの おくの 村の、むかし むかしの お
はなし。
 「たろや、たけのこを ほって きて おくれ。こん
やは ごちそうしよう。おまえの、たんじょう日だ。」
 かあさんに、いわれて、たろは、うらの たけやぶに
いった。たけのこは、いちばんの、ごちそうだ。山の
おくの、おくの、村には、さかなも、こんぶも、ない。
 「これに するか。」
102  
 たろは、くろい 土を、もっくり、もちあげているた
けのこを みつけて、ほりはじめた。
 すこし ほると、あつく なって、うわぎを ぬいだ。
たろは、うわぎを、すぐそばの たけのこに、ひょいと
かけた。
 と、その とたん。
 その たけのこが、ぐぐぐっと のびた。
  「おっ。」
 たろは、あわてて うわぎを とろうと した。
 たけのこに とびついた。
 たけのこは、また、ぐぐぐっと のびた。
 たろが、のぼる。たけのこが、のびる
 たろが、のぼる。たけのこが、のびる
 たろは、いつのまにか、目も くらむほど、たかい
ところに、きて、しまった。

 (3) 学習目標(行動目標)
 「たろ」が、空高くあがってしまったいきさつを、場面の様子を想像しながら理解し、それに基づいて動作化をす
ることができる。
 (4) 「場面の様子を想像しながら読む技能」の学習過程モデル
 @ 場面の様子を読みとる必要性の自覚
 A 場面の様子の想像のしかたを理解する――さし絵や、動作化を利用する。
 B 場面の様子を想像しながら読む―――――場面の様子を表現することばから場面を想像する。
 C 場面の様子を話したり、書いたり、動作化したりする――場面の様子を、動作化する。
 (5)学習指導過程――学習指導の実際   板書事項)

 @ 学習目標の確認と意欲の喚起 T きょうの勉強は、第一の場面の様子を想像しながら
103   
 詳しく読む学習をします。勉強の終わりに、劇にして
 みましょう。
C (全員ワーと歓声)
T この場面を劇にするには、どんなことに気をつけて
 勉強したらいいですか。
C さし絵をみて、「たろ」が何をしたかを気をつけな
 がら読みます。
             「たろ」が何をしたか。
C 「 」のことばです。
T そうですね。さし絵や「 」のことばに注意して、
 たろが何をしたかを想像しながら読めばいいですね。
 A 村の様子の理解
T 「たろ」は、どんな村に住んでいましたか。
C 山のずっとおくにある村です。(全員賛成)
T なぜ、わかりますか。
C 「山のおくのおくの村」と書いてある。(全員賛成)
T 「山のおくのおくの村」は、どんな所にある村でしょ
 う。もう少し考えてみましょう。まわりは、どんな山
 に囲まれていますか。
C 高い山があります。
C 低い山もあります。
C 竹やぶや松やすぎの木もあります。
  (発表を聞きながら、色チョークで書きこむ)
T このような山に囲まれた村に、たろの家もあるので
 すね。
 B たろの家の生活の理解
T こんな山奥にあるたろの家は、どんな生活をしてい
 ましたか。
C とても貧しい生活をしていました。
T なぜ、わかりますか。
C 「たけのこが、いちばんのごちそうだ」と、書いて
 あります。
T そうですね。あなた達は、たけのこをごちそうだと
 思いますか。
C (口々に、ごちそうでないと答える)
T では、なぜ「たろ」にとってごちそうなのですか。
C 山のおくの村に住んでいて、町へ買い物にも行けな
104   
 いから。
C 村には、さかなもこんぶもないからです。
T 山のおくに住んでいるたろの家は、どんな生活をし
 ていたでしょうね
C とても貧しい生活をしていたと思います。
T そうですね。たけのこをごちそうだと思うくらい、
 とても貧しい生活をしていたのですね。
  とても、まずしい せいかつ
 C たろの行動を想像する
T 「たろ」がたけのこをほりに行った様子を、読みま
 しょう。どんなたけのこをみつけましたか。
C くろい土をもっくりもちあげているたけのこです。
T もっくりとは、どんなようにですか。もっくり
C 土の中から顔をだしているように。
C 土を持ちあげているようにです。(賛成)
T たろは、上着をどうしましたか。
C すぐそばのたけのこにかけました。
T どのようにかけましたか。
C ひょいとかけた。
C (動作化。上着を腰掛けにかける)
T そしたら、たけのこはどうなりましたか。
C ぐぐぐっとのびた。
T 「と、その とたん。」とありますが、せつめいで
 きる人いますか。
C (二、三人挙手)
C かけたら、すぐだと思います。(賛成)
T そうですね。上着をかけたらすぐに、たけのこが、
 ぐぐぐっとのびたのですね。では、「ぐぐぐっ」とは、
 どんなふうにのびたのですか。前で実演できる人いま
 すか。
C (動作化。両手を上に合わせて、尻を振りながら伸
 びる)
T みなさん どうですか。
C (全員賛成)
T そこで「たろ」は、どうしましたか。
C あわてて、上着を取ろうとしました。
105  
C たけのこに、とびつきました。
T どんなかっこうで、とびつきましたか。
C けって。(動作。両足をそろえてとび上がる)
C しがみつくように。
T そうですね。しがみついたたろは、どうなりました
 か。
C 空高く上がっていった。
C 雲の上までのぼっていった。
C 目もくらむほど高い所まで上がっていった。
T どうしてわかりましたか。
C 「たろがのぼる。たけのこがのびる」と、くり返し
 書いてあります。
T そうですね。このくり返しから、どんどんたろもた
 けのこも、空高く上がっていく様子がわかりますね。
 D 場面の様子を動作化する
T きょう、勉強した場面を、劇にしてみましょう。ど
 んな役がありますか。
C たろ。
C たけのこ。
 (「たろ」が、たけのこをほっている場面から空高く上
 がってしまう場面。地の文は、全員で読む)
T 楽しい勉強ができましたね。次の時間も、劇にしな
 がら勉強しましょう。         (戸田 治)



  2 教材「はまひるがおの『小さな海』」    

 (1) 解 説
 心情を想像しながら読む技能は、文学の読みの最も基本的なもので、学習指導要領には、一〜四年までに想像の読
みが、五〜六年に機能的な読みがあげられている。
 文学の読みとか、文学を経験するとかいうことは、作者が創造した文学の世界を、読み手が想像によって自分自身
                                                       106
の中に再生産することである。いいかえれば、文学作品の中の感動を、読み手の中に生み出す読みである。
 ところで、作品を読む場合には、場面表象・情景表象・心情表象・性格表象・人物表象・行動表象など想像表象を
描きながら読むのが普通である。また、こうして読んで描いた想像は、そのまま話したり書いたりする、図や絵にか
き表す、動作化してみるなどの方法によって外部行動化させて、評価・指導の手がかりとする。
 ここでは、特に三年の「人物の気持ち(心情)を想像しながら読む技能」について指導する。
 (2) 学習単位
 教材「はまひるがおの『小さな海』」(教出三年上)(「__」は指導する言語事項)

 ――その岩のくぼみに、小さな水たまりがあるでしょ
う。そこをごらんなさい。かわいいお魚が一ぴきいるで
しょう。
 もう何日も、そこにいるのです。
 この前のあらしの夜、波がここまで来たのです。そし
て、このお魚をのこして、波は引いてしまったのです。
 それから、わたしたちは、なかよしになりました。
 お魚は、めずらしそうにわたしを見上げて、きれいだ
ね、きれいだねって、何度も言ってくれました。
 それから、深い深い海のそこにも、やっぱり、きれい
な花のようなさんごや海草がたくさんある、というお話
をしてくれました。遠い外国に行ったことのある父さん
魚から聞いためずらしいお話も、いっぱいしてくれまし
た。
 わたしは、はじめ、こんなさびしい所にたった一人で
いるので、きっと、お魚が遊びに来でくれたのだ、と思
いました。お友だちができて、どんなにうれしかったか
しれません。
 わたしは、この水たまりを、「小さな海」とよんでい
ました。
 でも、一日たち、二日たちするうちに、わたしの「小
さな海」は、だんだんかわいて、本当に、こんな小さ
107  
な海になってしまったのです。
 波をよんでくださいって、お魚は言うのです。でも、
こんなに小さなわたしに、どうしてあの大きな波を引
きよせることができましょう
 ぼくの体は、もう、にえてしまいそうだ。太陽が強す
ぎる。くもらせてくださいって、お魚は言うのです。
「そうねえ、だれか人が来たら、わたしをつんでもらう
 わ。わたしの花をつみ取ると、空がくもるというのよ。
 でも、こんなりくのはしっぽに、なかなか人なんか来
 そうにないわ。もう少し、がまんしなさいね。」
わたしは今、お魚にそう言っていたところだったのです
………。

 (3) 学習目標(行動目標)
 はまひるがおが、自分をつんでもらってまで、小さなさかなを助けようと思うようになるまでの、いきさつを話す
場面を、はまひるがおの心情を想像しながら読んで、感じたことを話したり書いたりすることができる。
 (4) 「心情を想像しながら読む技能」の学習過程モデル
 @ 言語刺激を受ける――場面を読む
 A 心情表象を描く ――気持ちを想像する
 A 感情状態になる ――同感・共鳴する
 C 心情を理解する ――感想をもつ
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 前時の学習との関連
T 前の時間に読んだことを思い出してみましょう。
 OHP投影(前時に書いた「はまひるがお」の絵)
T はまひるがおはどんな様子で咲いていますか。
C たった一つだけ咲いていて、さびしそうで、ふるえ
 ています。/ C ぶるぶるふるえています。
108   
T きょうは、そのはまひるがおが、どうするところを
 読むのですか。
C 自分をつんでもらってでも、空をくもらせたいと思
 う気持ちを、はまひるがおがぼくに話すところを読み
 ます。
 A 学習の範囲、目あてを決める
T それは、どこからどこまでに書いてありますか。
C 五十六ページの最後の行から、五十九ページの終わ
 りまでに書いてあります。
T そこをどのように読みますか。
C はまひるがおの気持ちや場面の様子を想像しながら
 読みます。
CD
  自分をつんでもらってまでも、空をくもらせた
 い「はまひるがお」の気持ち。 
T では、はまひるがおのこの気持ちを、想像しながら
 読んでください。そして、気持ちのよくわかるところ
 に傍線を引いてください。
 B 気持ちを想像しながら読み感じたことを話し合う
C 各自黙読。
  (大多数の児童が次に傍線を引く)
 Oお友だちができで、どんなにうれしかったかしれま
  せん。
 O「波をよんでください。」って、お魚は言うのです。
 O「ぼくの体は、もう、にえてしまいそうだ。太陽が
  強すぎる。くもらせてください。」って、お魚が言
  うのです。
CD
  お友だちができて、どんなにうれしかったかし
 れません。 
T お友だちができてうれしいはまひるがおの気持ちを
 想像しながら、五十八ページの八行めまでを読んでご
 らんなさい。想像したはまひるがおの気持ちを、学習
 シートに書いてください。
C 各自黙読して、想像した気持ちを書く。
 OHP投影(はまひるがおの気持ち)――評価する。
109  
C 「きれいだね、きれいだね。」と言ってくれたとき、
 私ってそんなにきれいなのかな、お魚さんはやさしい
 なあと思いました。
C 深い深い海のそこのお話や、外国のめずらしいお話
 を聞いたとき、私もいってみたいな。でも、お魚から
 お話がきけてよかったと心の中でいいました。
 OHP投影(前時に書いた「はまひるがお」の絵)
T お友だちができる前のはまひるがおは、どんな様子
 だったか思い出して、はまひるがおの気持ちを想像し
 ながら、今のところを読み直してごらんなさい。
C だれも来ないようなさびしい所で、一人ぽっちでい
 たのに、友だちが来てうれしくってたまりません。
C お魚さんはたった一人の親友だ。
CD
「波をよんでください。」って、お魚は言うのです。 
「ぼくの体は、もう、にえてしまいそうだ。太陽
 が強すぎる。くもらせてください。」ってお魚
 は言うのです。 
T そんなに大切な友だちが、こんなに言った時のはま
 ひるがおの気持ちを想像しながら、次を読んでくださ
 い。行間にはまひるがおが心の中で言ったことばを書
 き入れながらね。
  〔例〕「波をよんでください」のところで。
  O「こまった。私にはできない。どうしよう。」
  O「やってあげたいけれど、どうしようもない。」
T(想像を話す中で接続詞、強調表現に注意させる)
板書
でも、一日たち、二……たってしまったのです。
どうして………ことができましょう。 

 〔例〕「ぼくの体は、もうにえて……。」のところで。
  O私をつんでもらおう、私をつんだら空がくもると
   いうことだから。
T それで、はまひるがおはお魚さんに何と言いました
 か。はまひるがおになって言ってあげてください。
C 各自「そうねえ……がまんしなさいね。」と言う。
T きょう想像したことや話し合ったことを思い出しな
110   
 がら、ずっと読み通してみましょう。
C 各自じっと黙読する。
 C 感想を話したり優れている表現に気づいたりする
T きょうのはまひるがおの気持ちを読んで、どんなこ
 とを感じましたか。
C 友だちを助けるために、自分をつんでもらおうと思
 うはまひるがおは、友だちおもいでやさしいけれど、
 かわいそう。
C はまひるがおもお魚もいっしょに、これからも友だ
 ちでいられるようにしてあげたい。
T 書き表し方のじょうずなところに、線を引いてみま
 しょう。
  (多数の児童が次に傍線を引く)
 Oでも、こんな小さな私にどうして……できましょう。
C 朗読する。             (斎藤文)



  3 教材「手ぶくろを買いに」   

 (1) 解 説
 場面の情景や人物の気持ちを想像しながら読む技能は、文学作品の読みの最も基本的なもので、学習指導要領には、
一〜四年までに想像読みとしてあげられ、五、六年の鑑賞の読みへと発展する。
 ところで、文学作品を読み、想像を描く場合、人物表象、性格表象、心情表象、場面表象、行動表象などの技能が
使われる。そして、これらの技能を適切に使い分けて、文学作品を読むことになる。ところが、想像は、いつ、どこ
でもできるが、輪郭がなく漠然としているので、他から知ることはできない。
 そこで、ことばや表現を通して描かれた想像は、話させたり書かせたり、絵や図に示させたりする。また、具体的
に行動化させたりすることもある。このような外部行動化を手がかりに、評価・指導をしていく。
                                                       111
 ここでとりあげる場面の背景中人物の気持ちを想像しながら読む技能の指導は、場面表象や心情表象を描きながら
読む技能である。場面表象の特徴は「視覚的表象」で、したがって、その場面の様子をさながらに目に見えるように
写生的に描き出されることが多い。心情表象は場面表象と違って、視覚的に描かれることはない。そこに大きな違い
がある。それは、想像することによって描き出される心情表象であって、「こんな気持ち」の表象である。
 本時は、分析過程の七時間目の学習である。一時間の学習の組み立ては、読書(場面全体の感じ)、読解(小さな場
面ごとに気分、情調をたどる)、読書(気分、情調にひたる)の三段階から構成されている。
 (2) 学習単位
 教材「手ぶくろを買いに」(日書三年下)

 子ぎつねは、教えられたとおり、トントンと戸をたた
きました。
 「こんばんは。」
 すると、中では、なにかコトコト音がしていましたが、
やがて、戸が一すんほどゴロリと開いて、光のおびが、
道の白い雪の上に長くのびました。
 子ぎつねは、その光がまばゆかったので、めんくらっ
て、まちがったほうの手を、――お母さんが出しちゃい
けないとよく言って聞かせたほうの手を、すきまからさ
しこんでしまいました。
「このおててにちょうどいい手ぶくろください。」
 ぼうし屋さんは、おやおやと思いました。きつねの手
です。きつねの手が、手ぶくろをくれというのです。こ
れはきっと、木の葉で買いにきたんだなと思いました。
そこで。
 「さきにお金をください。」
と言いました。子ぎつねはすなおに、にぎってきた銀貨
を二つ、ぼうし屋さんにわたしました。ぼうし屋さんは
それを、人さし指にのっけて、かち合わせてみると、
チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じやな
112   
い、ほんとのお金だと思いました。そこで、たなから、
子ども用の毛糸の手ぶくろを取り出してきて、子ぎつね
の手に持たせてやりました。子ぎつねは、お礼を言って、
また、もと来た道を帰り始めました。
「お母さんは、人間はおそろしいものだって言ったけど、
 ちっともおそろしくないや。だって、ぼくの手を見て
 も、どうもしなかったもの。」
と思いました。けれど、子ぎつねは、いったい人間なん
てどんなものか見たいと思いました。

 (3) 学習目標(行動目標)
 まばゆい光にびっくりして、まちがった手を出してしまうが、手ぶくろを買うことができ、人間をおそろしくない
と思う子ぎつねの様子・気持ちや手ぶくろを売ってやるぼうし屋の行動・心情を想像しながら読んで、感じたことを
話したり書いたりすることができる。
 (4) 「場面の情景や気持ちを想像しながら読む」技能の学習過程モデル
 @ 場面全体を直観的に読んで気分、情調を感じとる
 A 場面ごとに、場面、行動、心情表象を描いて感情状態になる
 A 場面全体を読んで、気分情調にひたる
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習の目あてをはっきりさせる
O前時の学習場面を読んで思い出す
O本時の学習目的、範囲を確認する
 A 学習方法を考える
 (前時の学習を確認した結果、次のように決まる)
Oぼうし屋を見つけた子ぎつねがどうなったか読む
 全文(本時学習分)を読んで、場面全体の感じを話
  し合う
113  
 三つの場面に分け、場面、場面を想像しながら読む
 この時間の勉強を思い出しながら読む
 B 学習する
O場面全体の感じをとらえながら黙読する
 (発表をもとに全体の感じを次のように板書)
 はらはらした
 どきどきした
 まばゆかったろうな
 びっくりしただろう
 やさしい
 手ぶくろを買えてうれしい
 買えてよかったな
 (場面全体の感じの話し合いから、手ぶくろを買う前、
 買う、買った後の三場面に分け読むことを確認)
O場面ごとに子ぎつねやぼうし屋の心情を想像しながら
 読む
 子ぎつねがまちがって手を出してしまう場面の範読
  を目をつむってイメージを思いうかべながら聞く
T 「こんばんは」――子ぎつねになったつもりで、「こ
 んばんは」と言った時の気持ちを考えて言ってみる。
C おじさんがこわくなければいいな。
C 早く手ぶくろを買いたいな。
C 売ってくれなかったらお母さんがっかりするな。
  (光のおび――児童の見た経験、OHPに影絵投影)
C 信号から出た光のすじがのびたりちぢんだりした。
C 鏡を見ていたら光のおびが長くのびていた。
 (OHPに影絵を投影し、光のおびが細く長くのびてい
 る様子を見せて、説明、指導する)
 子ぎつねが手ぶくろを買う場面を想像しながら読ん
  で、子ぎつねやぼうし屋の気持ちを読みとる
T おやおやの次にぼうし屋の内言を入れて話す。
C おやおや、きつねさんよくここまでこられたね。
C おやおや、人間の手じゃないぞ。
C おやおや、きつねにだまされるものか。
T ぼうし屋さんは、それを――なにをさすかおさえる。
  人さし指にのっけてかち合わせてみる――動作化。
114  
  (手ぶくろを買う場面全体を 子ぎつね、ぼうし屋、
  《児童》と教師の三人で、動作化を入れ、場面全体を
 読む。他の児童は場面の様子を思い出しながら聞く)
 子ぎつねが手ぶくろを買った後の場面を想像しなが
  ら読み、子ぎつねが人間をどう思ったか話し合う
T 子ぎつねが帰りながら思ったことをふき出しに書
 く。(ふき出し三例をOHPに投影)
C どうして母ちゃんは、人間はおそろしいって言った
 んだろう。人間がこんなにやさしいなら、人間の手に
 ならなくてよかったじゃないか。でも、こわい人間も
 いるかもしれないなあ。それでも手ぶくろを買えてよ
 かったな。
C よかったなあ。手ぶくろが買えて。人間の手を出し
 ちゃった時、びくびくしたよ。でも、これでお母さん
 喜ぶだろうなあ。うちに帰ったら、まっ先に手ぶくろ
 をはめるんだ。あったかいだろうな。
C お母ちゃん、手ぶくろ買えたよ。こんなにあったか
 いのだぞ。それに、お母さんは、人間はこわいものだ
 と言っていたが、ちっともこわくないや。きっとこの
 話をしたら、びっくりするにちがいないぞ。それに、
 こんないい手ぶくろだから、じまんしようかな。
T ほっとした、おそろしくない、うれしい気持ちが、
 ふき出しのどんなところに出ているか話し合う。
C まっ先に手にはめるんだというところがうれしい気
 持ちが出ている。
C 人間はちっともこわくないやというところが、おそ
 ろしくないということをあらわしている。
C よかったなあ、手ぶくろが買えて、というところに
 ほっとした気持ちが出ている。
Oそれぞれ書いたものを、評価基準にてらして、不足し
 ているところを赤で補い書きしたり訂正したりする。
 修正した文を発表する。
C 手ぶくろを買えてよかった。お母さんは、人間はこ
 わいと言っていたけどこわくなかった。つかまらなか
 ったもの。でも、一度人間を見てみたいな。
T 人間を子ぎつねは、どう思ったの。
115   
C 人間はおそろしくない。
C 人間はどんなものかみたい。
C 本時の学習を思い出しながら、全文を朗読する
                (小野寺 侑希子)



  4 教材「大造じいさんとがん」  

 (1) 解 説
 主題を読みとるというのは、文学的文章の場合、述べられていることの中心となる思想は何かということを理解す
る技能である。学習指導要領では、五年の理解の基本的技能としてあげてある。それは、第四学年の「要点や中心点
を正確に理解すること」の基礎の上に成り立っている。したがって、主題を読みとる技能は、それが急速に発達する
と言われている四年の後期から五年にかけて指導するのが原則である。その学習の指導法としては、直観的に主題を
理解する学習から、場面ごとにくわしく読む分析的な学習を経て、最終的に主題を獲得する体制的な学習に到るまで
を通して行うのが効果的である。
 本時は第八時間目の学習である。一時間目には、作品の全体を直観的に読んで大造じいさんと残雪の戦いの中に生
まれる心のふれあいについて理解した。二時間目には、物語のあらすじを理解し、三〜七時間目には、場面ごとに大
造じいさんの計画や残雪の戦いぶりについて理解した。本時は、全文を読み返して主題を読みとる学習である。
 (2) 学習単位
 教材「大造じいさんとがん」(学図五年下)(「__」は指導する言語事項)
 @
 大造じいさんの計略と残雪との知恵くらべ(残雪がやって来たと知ると、大造じいさんは、今年こそは・と思わず
                                              A
かんたんの声を・夏のうちから心がけて、たにしを五俵・広いぬま地のむこうをじっとみつめたまま)なかまを救う
                                                       116
ための残雪の戦いぶり(今年はひとつ、これを使ってみるかな・ぎゅっとにぎりしめました・じゅうをおろしてしま
いました・いきなり敵に・むねのあたりをくれないにそめて・ぐっと、。長い首をもちあげ・手をのばしても・ただ
       B 
の鳥に対して)残雪を大空へ放つ大造じいさん(おりのふたを、いっぱい一直線に空に飛び上がり・おまえみたい

えらぶつを・なあおいおれたちはまた、堂々と戦おうじゃあないか・ほれぼれとした顔つき・いつまでもいつ

までも見守っていました。)
 (3) 学習目標(行動目標)
 全文を読んで主題を理解し、次のように学習シートに書くことができる。
 狩を仕事としている大造じいさんと、仲間を救おうと自らはやぶさにいどみ、そして傷つく残雪との戦いの中に流
れるあたたかい心のかよいあい。
 (4) 「主題を読みとる技能」の学習過程モデル
 @ 主題を読みとろうとする
 A 主題理解の課題意識をもつ――課題「どんな状況に置かれている大造じいさんと残雪のかかわりなのか」
 B 主題を理解する―――――――全文を読んで主題を読みとり学習シートに書く
 C 主題を確認する―――――――主題を椎成するとばを押さえて主題を確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 前時の学習を想起し、学習意欲をもつ
T 前の時間はどんなことを勉強しましたか。
C 大造じいさんが春になって残雪の傷も直ったとき、
 おりのふたをいっぱいにあけ残雪を放し、いつまでも
 見送っている場面です。
T 今までは場面ごとにくわしく読みとってきましたね。
117  
 これからはどんな学習をするのですか。
C この「大造じいさんとがん」が何を言おうとしてい
 るかということをつかむことです。
C この作品の中心になっていることを全文をふり返っ
 てつかむことです。
T 作品の中心をなしていることを主題といいます。
 A 学習目標を確認する
T 「大造じいさんとがん」の主題を読みとりましょう。
 B 学習範囲を決める
T それでは、「大造じいさんとがん」の主題は、どこ
 からどこまで読めばわかりますか。
C 全文です。
 C 読みのめあてをもつ
T どんな状況に置かれている大造じいさんと残雪のか
 かわりなのかを考えながら全文を読みましょう。(全
 員黙読)
 D 主題を読みとり学習シートに書く
T それでは読みとったことを学習シートの中に書きこ
んでください。(学習シート配布)
  大造じいさんと
  残雪との 

T では、自分で書いたのを発表しましょう。
C がんをつかまえる仕事をしでいる大造じいさんとお
 とりのがんを救おうとする残雪との心のかよいあい。
 E 主題を構成することばを押さえて、主題を確認す
  る
T 大造じいさんはがんをつかまえる仕事をしていたわ
 けですがそのようすは?
C がんをつかまえて生活を立てていたのです。
C その生活を支えるがんも、残雪が来るようになって
 から手に入れることができなくなったのです。
T 手に入れることのできなくなった大造じいさんはど
 んだことをしましたか。
C うなぎばりの工夫をした。
118   
C たにしを毎日まいておいて引きつけてじゅうで撃と
 うとしていた。
 板書 かりで生活を立てている大造じいさん
T いろいろな方法を考えてしたのだけれで、成功した
 かな。
C いつも残雪にしてやられた。
C また別の方法を考えた。それは前つかまえておいた
 おとりのがんを使って、口ぶえで呼びもどすときに飛
 びあがったがんを撃とうとしたんだ。
T そのときどんなことがおこりましたか。
C はやぶさが、がんを襲ってきた。
C がんたちは残雪に導かれて飛び上がったけれど、お
 とりのがんは取り残された。
C おとりのがんにはやぶさがむかっていったのです。
T 残雪はどうしたの。
C おとりのがんを助けようとはやぶさの前にふさがっ
 たんだ。
 板書 はやぶさと残雪との戦い
T 大造じいさんはそのときどうしましたか。
C いったんはじゅうをかまえたけれどおろしてしまっ
 た。
T どうしてかな。
C 前に発表してくれた残雪がおとりのがんを救おうと
 しているのがわかったからだと思います。
C だから、かけよっていったんです。
T 大造じいさんがかけよったとき残雪はどんなようす
 でしたか。
C 真赤な血にそまっていた。
C ぐったりしていたけれど堂々としていた。
T どこに書いてありますか。
C 正面からにらみつけました。
C 残雪はもう、じたばたさわぎませんでした。
T そんな残雪に大造じいさんは心うたれたんですね。
 大造じいさんはそのあとどんなことをしましたか。
C 傷が直るまで残雪を自分のもとに置いてやった。
C 傷が直ったら思いきり空に放った。
119  
C 飛び去る残雪に長いこと呼びかけて見送ってやった。
T 残雪に対してどんな言い方をしていますか。
C おまえ、なあおいやって来いよ。おれたちは。
T おれたちというのは。
C 普通おれたちというのは人間同士が使うのだけれど
 残雪はがんなのだけれど、友達みたいな気持ちができ
 てきたから。
C 大造じいさんは残雪に対して友達みたいに思ってる。
 F 主題を自分のことばでまとめる
T きょう勉強してきたことをもとに主題を学習シート
 にまとめてください。
C (児童の発表を板書する)
 かりを自分の仕事として、初めは残雪のことをいま
いましく思っていた大造じいさんと、仲間のがんを救
おうとはやぶさに立ち向かい傷つく勇ましい残雪との
戦いの中に流れるあたたかい心のかよいあい。 
T 主題がうまく表現されていますか。
C 大造じいさんのくらしぶり、残雪とはやぶさとの戦
 い、大造じいさんと残雪とのかかわりについて全部の
 せてあるのでいいと思います。
C 前に発表した主題はただの心のかよいあいだけだっ
 たけれど、今のは、両者が戦いの中にある、しかもそ
 の中にあたたかいものが流れていると書いであるので
 いいと思います。
T 主題をとらえるには、主題にかかわることがらを落
 ちなく書き表さないといけませんね。
T それではもう一度全文を味わって読みましょう。
                   (中村 泰夫)

                                                       120


  第V章 表現の学習指導モデル


     一 作文の学習指導過程モデル


  1 作文の学習指導過程モデルの必要性

 「きょうの国語の時間は作文を書きます。題は○○です。では、よく考えて書き始めなさい。」このような指示で
作文を書かせる教師はいないだろうか。児童は、作文を書けと指示され、何の目的もなく書かされていく。書き上げ
た作文は、教師が評価して児童に返す。これでは、作文の時間を増やしても、児童の作文能力は高まらない。
 作文指導は、文章を書く過程に従って指導していかなければ能力は高まらない。そこで、どんな手順で指導してい
ったらよいか、即ち作文の学習指導過程を明確にする必要がある。さらに、それをモデル化することによって、それ
に従って指導すれば、誰にでも容易に指導ができ、児童の作文能力を高めるとともに、文化性・社会性・思想性・心
情性・感受性・審美性などの人間性を開発伸長することができる。また、このモデルを活用することによって、児童
が自主的に作文学習を進めることができる。
                                                       121

  2 作文の学習指導過程モデルの編成

 作文の学習指導過程モデルを編成するには、まず、文章が一般的にどのような過程をたどっで書かれていくかを考
えてみることが必要である。
 私たちが文章を書くとき、どのような過程をたどって書いているだろうか。研究集録の原稿を依頼された場合を例
に取って考えてみょう。この場合、研究集録の原稿を書くのだという目的がはっきりしている。文章を書くときは、
まず目的によって活動が始まる。その目的に沿って、調査した事項、研究内容・結果等と、書く事柄が決まってくる。
 書く事柄が決まると、その事柄に適した内容を選ばなければならない。調査した内容を調べたり、学習指導の実践
記録を読み返したり、研究協議で話し合った事柄を思い出したりして、必要な内容を選択していく。
 次には書く順序を決める。研究の経過に従って書くか、研究の結果を書いて、その結果が導き出された過程を述べ
るかなど、文章の構成を考える。
 構成ができると文章を書き始めるわけであるが、どのように書き始めるか、どのように表現するか、どんな語句を
使うかを目的に照らして工夫して叙述していく。文章を書き上げるとまず読み返す。文字や語句の間違いはないか。
文と文の続き具合はおかしくないか。自分の意図したことが十分表現されているか等を考え、読み返しながら手を加
えていく。即ち文章を推考していく。
 推考が終わると目的によっては清書をする。特に提出する研究集録の原稿や、報告の文章などは清書しなければな
らない。清書ができると目的によって処理する。研究集録の原稿なら提出して目的が達成できる。書き上げた文章は
目的によって処理することによって、文章を書いた目的が達成できるのである。
                                                       122
 この一連の流れが、私たちが文章を書くときたどる過程である。この過程を分析すると、文章を書くのに必要な手
順・基本的な活動が導き出される。その過程ごとに、それを指導する方法・手段を講じ、シスアム化すると作文の学
習指導過程を編成することができる。

  3 作文の学習指導過程モデル

 (1) 作文を書く目的を設定する
 観察してわかったことを忘れないように記録しておくために観察記録の文章を書く。自分の学校の様子を他校の児
童に紹介するために手紙文を書く。卒業文集に載せるために学校生活の思い出を作文に書く等々と、まず作文を書く
目的を決める。この目的は、児童の必要感に根差し、文章の機能に応じたものでなければならない。児童に書く必要
を強く感じさせる目的であれば、これ以下の活動が主体的に展開されていく。
 (2) 目的に従って書く方法を決める
 目的が設定されたら、その目的を達成させるために、どのような計画・方法で作文を書くかを決める。これが単元
の学習計画ともなる。
 (3) 題材を選択する
 書く目的に応じた題材を選ぶ過程である。例えば「ひめだか」の観察記録を書く場合、卵から成魚になるまでの成
長過程の記録を書くのか、ひめだかの泳ぎ方を観察して書くのか、書く目的によって適切な題材を選ぶ。生活経験か
ら取材して文章を書く場合、単に「遠足」とか「臨海学園のこと」という素材ではなく、「遠足で高尾山に登って頂
上から見た景色の美しさ」とか、「臨海学園で千メートル泳いだときの苦しさと、泳ぎ切ったときの喜び」という点
                                                       123
まではっきりと決める。
 (4) 表現事項を収集する
 題材に即した書く事柄を収集する過程である。表現事項の収集の方法にはいろいろある。生活経験を書く場合には、
よく思い出しで書く事柄を収集する。よく考えて収集する。観察記録を書く場合は、観察しながら書く事柄を収集し
ていく。収集した事柄はノートかカードに書き出しておく。このような活動を展開するため、この過程で、思い出し
方(想起法)、考え方(思考法)、想像のし方(想像法)などを指導しなければならない。
 (5) 文章の構成を考える
 収集した事柄を選別し、必要な事柄を組み立ててアウトラインを作る過程である。
 学習指導要領の内容には、段落ごとの構成、段落相互の関係、全体の構成を考えて文章を書く技能の指導は、四年
生からとされている。児童の発達段階から考えても、本格的な文章構成の指導は四年生ごろからである。四年生以下
の学年においては、書く順序を考えさせる程度の指導である。一・二年生では、文章全体を見渡す能力がないのでこ
の過程を省略する。
 アウトラインとは、収集過程で、書く事柄を、大見出しカード、小見出しカード、内容カード等に分けて書いたも
のを、書く順序を考えて並べ、それに書き出しの文、結びの文を加えた文章の骨組みのことである。
 (6) 文章を書く
 アウトラインに従って、文章を書き表す過程である。実際に指導する場合は、叙述する前に、教材によって表現方
法を学習する活動を設定する。表現方法を学習する場合は、観点を明確にして学習する。例えば、正確に表現する方
法、具体的に表現する方法、心情を表現する方法等と、観点を決めて教材文を調べ、表現方法を学習する。その後に
                                                       124
アウトラインに従って文章の記述に入る。
 (7) 書いた文章を評価し調節する
 書いた文章を目標・内容に照らして評価する過程である。評価の結果によって十分でないところは書き直す。なお、
この評価・調節は、この過程だけでなく、題材選択、表現事項の収集、文章構成の過程においても行う。
 (8) 書いた文章の表現・叙述を修正する
 文章が一応書き終わったあとで、さらに表記・叙述・表現について適切に修正する。叙述・表現を修正する場合に
は、間題・事件・行動・経験などの原点に立ち返って、その状況・情景・場面・心情などを具体的に想起し、あるい
は、原点にもどって考え直して行う。
 (9) 文章を完成させ、目的に従って処理する
 修正した文章は清書し、目的によって処理していく。忘れないために書いた観察記録ならば、綴じて保存する。自
分の学校を紹介する手紙文ならば、相手に郵送する等、このように書いた目的によって処理することにより、書いた
目的が達成されるのである。
 作文単元の指導計画は、以上述べた作文の学習指導過程モデルに即して立案すれば、だれにでも容易にできるであ
ろう。                                         (中津留 喜美男)
                                                       125

     二 題材・内容を選択・収集する授業モデル



  1 題材「身近な人」   

 (1) 解 説
 文章を書く時、書く目的に合った適切な題材が選択されると、次は書く内容を収集する。書く内容を収集する場合
特に経験したことを書く、行事を書く、経験にまつわる心情を書く、などという場合には、それらの経験・行動・事
実・心情などを、思い出して書くというのが普通である。そこで、この思い出すという技能、つまり経験を想起する
技能は、経験そのもの、経験の手がかり、経験の一部などを示す資料などによって、具体的に経験を再構成し、再認
して、そこから経験の細部を思い出して、書く内容を収集する技能である。それは、具体的な経験を再びしてみるわ
けにはいかないから、経験を追認・追体験しようというわけである。
 この想起法には、@記憶していることを、あれこれ思い出す方法(記憶想起法)、A記憶の原点にもどって、その
行動・状況・心情などを思い出す方法(記憶の原点想起法)、B経験の原点にもどって思い出す方法(写真・地図・
その他経験を示す資料によって)(経験の原点想起法)、などがある。ここでは二年であるから題材にまつわる絵を線
がきで簡単にかいて経験の周辺記憶をあれこれと思い出す。その思い出した事柄を時間的順序や、場面ごとに整理し
て構成し、文章を書くことにした。
 本時は、第二時間目の学習である。一時間目には、題材を選び、題材にまつわる絵(似顔絵や事柄の絵)をかいた。
書く事柄を思い出して収集する授業
                                                       126
本時は、かいた絵にもとづいて、思い出したことをカードに書いていく学習である。
 (2) 学習単位
 @ 書く事柄を思い出して収集する過程
  ・思い出し方を理解すること ・思い出したことをカードに書くこと
 (3) 学習目標(行動目標)
 身近な人について、したことや様子がよくわかる文を書く目的を明確にし、経験の絵をもとにして書こうとする
事柄を想起して、カードに書き出すことができる。
 (4) 「書く事柄を思い出して収集する技能」の学習過程モデル
 @ 題材にまつわる経験の絵をかく
 B かいた絵をもとにして、思い出した事柄を書く
 A 書き出した事柄を見直して、書き加えたり削ったりする
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を立てる
T この前は、自分が書きたい人についでて、書くことを思
 い出すために、したことやその人のことについて絵を
 かきましたね。きょうは、その絵を見ながら書くこと
 を思い出す勉強です。勉強はどんなふうにしますか。
C 絵を見て思い出したことをカードに書きます。
T きょうの勉強は、これですね。読んでみましょう。
C 
 作文に書きたい人について、どんなことを書く
か、絵を見ながら思い出してカードに書く。 
 B 思い出し方、カードの使い方(方法)を理解する
T 絵を見ながら思い出したことを、どんどんカードに
127  
 書いていきましょう。思い出し方は。
  @ どんなことがあったか→白いカード
  A どんなことをしたか →白いカード
  B だれとだれがいたか →白いカード
  C だれが何といったか →青いカード
  D そのとき、どう思ったか→黄色のカード
T 思ったことは黄色のカード、話したことは青いカー
 ドに書きます。書く時、一枚のカードに詳しく書くと
 書ききれないから、何々をした・何々があったのよう
 に簡単に書いて、実際に作文を書く時、詳しくふくら
 ませます。青は話したことばだけ、黄は思ったことだ
 けでいいのです。
 A 各自思い出してカードに書く
T どう書いてよいか、わからない人は先生に聞いてく
ださい。(机間を回って個別指導をする)
C (挙手して)どう書いてよいかわかりません。
T 「わすれんぼのお父さん」て、何を忘れたのですか。
C 約束したケーキを買ってくるのを忘れたんです。
T それでは、「ケーキをわすれた」と書けばいいので
 す。この絵は何を忘れたのですか。
C 煙草に火をつけるのを忘れてすってる絵です。
T それでは「火を忘れてすった」と書いたら……。
 C 書き出した事柄について評価し調節する
T それでは、みんなよく書けたようですが、初めの約
 束通り書けているか、調べてみましょう。
T Aさんのです。題と比べて考えてみましょう。
128  

T 新聞好きのお父さんという題に関係のないことはあ
 りませんか。
C 「テレビの番組」のことは関係ありません。
T このカードは、はぶいでいいですね。あとのはみん
 ないいですね。
T 自分のを見直して、題に関係のないカードをはぶい
 たり、書き加えたいことを追記させる。
 D 学習の確認をする(題に関係のないカードがあっ
  た人、書き加えのあった人を挙手させ発表させる)
 E 次時の学習の確認
T この次はカードを、場面ごとや、順番に並べてはり、
 組立表を作りましょう。      (川崎 タヅヱ)



  2 題材「パンジー」   

 (1) 解 説
 書こうとするものをよく観察して書く事柄を収集する学習では、その対象を観察しながらメモをとるのがふつうで
ある。そこで、観察することとメモすることは密接に結びついていて切り離すことができない。したがって、観察の
仕方とメモする態度・技能とを同時に指導する必要がある。観察する場合には、観察の観点を明確にし、観察しては
メモし、メモしては観察することが大切である。観察の順序は、全体を見て特徴・特性を押さえる。次に、部分的に
                                                       129
細かいところを見るようにする。メモは簡潔に、時には詳しく書く。必要に応じて表や絵を入れる。
 (2) 学習単位
 観察の観点を決め、観察しながら書く事柄を収集する過程
 O書こうとするものをよく観察した上で書くこと
 ・全体の特徴・特性を押さえること・箇条書きにすること・簡潔に短く書くこと・測定値を書くこと・必要に応じ
  て絵を入れること
 (3) 学習目標(行動目標)
 観察の仕方、メモのとり方を理解し、パンジーの特徴や花の色、形などを正確に詳しく観察してメモし、次のよう
に表にまとめたり絵にかいたりして、書く事柄を収集することができる。(以下略・学習指導の項参照)
 (4) 「観察しながら書く事柄を収集する技能」の学習過程モデル
 @ 収集意識――――よく観察して書く事柄を収集しようとする意識をもつ
 B 収集法の発見――全体から部分へと観察しながらメモすることを発見する
 A 収集法の理解――観察しながらメモして表にしたり、絵にかいたりすることを理解する
 C 収集法の適用――観察しながらメモして書く事柄を収集し整理する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を設定する(収集意識をもつ)
T きょうから、正確に詳しく観察して説明する文章を
 書く勉強です。それできょうは、みなさんの目の前に
あるパンジーを正確に詳しく観察しながらメモをとっ
て書く事柄を集める勉強をします。
130   
パンジ――正かくに、くわしくかんさつしなが
らメモをとる。 
 B 観察のしかたを考えて決める
T メモをとるためには、正確に詳しく観察しなければ
 なりませんね。どうしたら、正確に詳しく観察できる
 でしょう。
C 机の上に置いてある花を、ずうっとよく見ます。
C よく見てそのまま書きます。
T 見るだけで観察になりますか。
C 見たことをよく調べます。
T どういうことを調べるのですか。
C 葉の大きさや茎の長さです。(観点としで、花や葉
 や茎の色、形、大きさを押さえる)
T 調べるときは、見るだけで調べられますか。
C 定木などを当てて正確にはかります。
C においをかぎます。
C 手ざわりを調べます。(それは大事なことであるが、
 花にさわると痛むので注意するように助言)
T どこから観察したらよいか。
C 全体を見る。(植木鉢は対象からはずすと助言)
C 花を見る。/C 葉を見る。/C 茎を見る。
T つぼみはどうですか。
  (児童の発言を整理して、次のように板書する)
ぜんたい

つぼみ

くき 


大きさ
 (長さなど)
におい 
Oよく見る Oよくしらべる
O手でさわってみる
Oものさしではかる

Oにおいをかぐ 
 A メモのとり方を決める
T それでは、メモはどのように書いたらよいでしょう。
C かんたんに書きます。(短いことばで簡潔に書くよ
 うに助言する)
C ぴったりしたことばを使います。
C 絵もかきたいです。(必要なら絵もかくように助言
 する)
131  
C 定木ではかったら、何センチ何ミリと書きます。
  (話し合いの後で観察メモの書き方を指導する)
 C 観察しながら収集する
  机上のパンジー(四、五人で一鉢)を観察しながら
 全体の様子、花の様子、葉の様子、茎の様子の順にメ
 モする。
 D メモについて評価する
  早く終えた児童の作品をOHPに投影し、話し合う。
全体のようす 全体の
感じ 
花だけきれい。 
大きさ  高さ十センチメートルぐらい。 
そのほか  つぼみが一つある。 
T これはMさんのメモですが、これで全体の様子が書
 けますか。
C もっと全体の様子が分かるようにメモするといい。
C 全体に小がらで、花だけ目立っています。
C 花が外がわに広がっていて、少し平べったい感じが
 します。
T そうですね。もう少し全体の特徴を押さえるとよい
 でしょう。





色  花びら、むらさき色。中は黄色。 
形  丸に近い(花全体)(花の絵がある) 
大きさ  長さ、約六センチメートル
はば、約五センチメートル 
におい  くさい 
そのほか  花びらの数、五まい 
T これは、Aさんのメモです。これで花について正確
 に説明が書けますか。
C 詳しく書けると思います。
C 色や形や大きさを並べるとばらばらになってしまい
 ます。/C 観察したことはいいです。
C 花の長さ、はばというのはおかしいです。
T 花の絵を中心にして書けば大体説明が書けそうです
 が、もう少しよく観察してみるといいでし。う。
132   
 E メモを見て補ったり直したりする
T それでは、みなさんの書いたメモとパンジーとを見
 比べながら、パンジー全体の特徴や、花や葉や茎など
 について正確に書けるか考えてみましょう。そして、
 足りないところは書き足し、正確でないところは正確
 に書き直しましょう。
C (各自見直して書き足し、書き直しをする。絵をか
 き足す児童もいる。測り直している児童もいる)
 F メモを完成する         (加藤譲治)



  3 題材「きまりを破ったわたし」   

 (1) 解 説
 三年の「読みとったことについて感想をもつ」というのは、主として物語などを読んで心情的・感覚的に受けとめ
たことを、思ったこと・感じたこととして書き表す活動が中心となっていた。ところが、高学年になるに従って、対
象が文学作品から伝記・論説文、さらに身近なできごとや社会事象などへ範囲が広がると共に、内容も思ったこと・
感じたことから、考えたこと、それに対する意見を書き表す活動へと高まりをみせてくる。
 考えたこと・感じたことを書き表す活動について、今までは「もっと考えなさい」「ほかに感じたことはありませ
んか」というような発問をくり返すだけで、実態は子供の自然的な発達に依存していた傾向が多かった。しかし、そ
れでは、自分の考えをはっきりもった文章を書くことはむずかしい。
 そこで、ものの見方・とらえ方・考え方の指導が必要となってくる。感想をもつ・考えを深めるといった内面的活
動を主とした学習は具体化しにくく、また具体的に見えにくいということで敬遠されがちであるが、人間の感じ方・
考え方の経過をたどる中で、次のような見方・考え方に立って、書く問題をとらえたり、書く内容・事柄を収集した
                                                       133
りすることを指導することによって、ねらいを達することができると考える。
 @問題に対する自分の立場を明確にする(当事者か、第三者か、そんな経験があるか・ないかなど、問題との関わ
り合いを明確にする)、A問題状況を客観的にとらえる(それはどんな考え方か、生き方か、どんな問題か、どんな
事件か。その状況を客観的に詳細に押さえる)、Bいつごろから、どうして起こった間題かを考える(間題・事件・
生き方などの背景を考える。問題・事件の起こった原因・条件などを考える。どうして生きられたかも考える)、C
どんな経過をたどってきたかを考える(問題・事件などに対してこれまでどんな対策を講じてきたかを考える。ま
た、間題・事件などについて、これまでどんな意見や感想が述べられてきたかを考える)、D問題に対する対策・方
法を考える(事件・問題の解決の方法を考える。自分の考え方・生き方にもとづいて考える。感想の対象、意見の根
拠を明らかにして考える。事件や間題で自分はどのようにして心や目を開かれたかを考える)。感想や意見は、生き
方・事件・問題などに対する十分な認識・理解の上に生まれ成り立つものであり、読み手の共感を得ると共に説得力
をもつと考えられる。以上のことを指導して表現事項を収集させるようにする。
 (2) 学習単位 
 身近な問題について自分の考えや感想を書くために必要な事柄を収集する過程
 (3) 本時の学習目標(行動目標)
 身近に起こった問題を取り上げ、自分の考えや感想を書くために間題の経過をたどる中で、自分の立場やその時に
考えたこと・自分のとった行動について客観的にとらえ、シートに事柄とそれに対する考えや感想を項目別にメモす
ることによって、書く事柄を収集することができる。
 (4) 「よく考えて書く事柄を収集する技能」の学習過程モデル
                                                       134
 @ 収集のねらいをもつ―――――――収集する対象をはっきりさせる・対象に対する自分の立場を明確にする
 A 収集の仕方について理解する―――経過をたどりながら自分の考えや行動について必要なことをメモする
 B 書く事柄を収集する―――――――カードまたはシートを使って収集したことをメモする
 C 収集した事柄を整理する―――――収集した事柄を評価の観点に照らして評価する
 D 評価の結果に照らして修正する――評価に従って収集した事柄を取捨選択する
 E 収集を完了する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 収集のねらいをもつ
 板書「きまりを守らなかった自分について」書く
T このことについてどんなことを書けばよいか、書く
 事柄を考えて集めます。
 A 書く事柄の収集の仕方について理解する
T きまりを破って悪かったとか、これからはきちんと
 守りますというような決まり文句ではなく、自分がど
 う考えたか、どうしてこんな行動をしたか、そのこと
 についてどう考え、どう感じたかを書いてほしい。そ
 のためには、どんなことについで何を書きますか。
C 自分がいつどんなことできまりを破ったかなどを考
 えて書くといい。
C 自分がどっちにしようか迷った時のことを書く。
C 自分がなぜこっちを選んだか、その時の気持ちや考
 えも書く。
 板書 きまりを破ったこと その時の考え・気持ち
T 何か行動をする時には、どうしたらいいか、その考
 え方や方法について考えて行動しますが、このことに
 ついて考えたり迷ったりしたのはどんな時ですか。
C 「歩く会」があると聞いた時。
C 友だちからおやつをもっていこうと言われた時。
 板書 「歩く会」があった時――おやつをもっていく
135  
T その時、どう考えたのですか。
C どうせ班行動だから自由だと思った。
C 新宿御苑は、物陰があるから見つからないと思った。
 板書 自由だ。見つからないと思ったこと
T もって行った時の気持ちは?
C 先生は知らない。何だかえらくなったように思った。
C ぼくはちょっと恥ずかしかった。
C 先生がこっちばかり見ているようで気になった。
 板書 えらい・恥ずかしい・不安だ
T おやつを食べている時は。
C 初めは不安だったけど一つ食べたら、もうどうでも
 いいと思って食べた。
C こそこそ食べないで、堂々とみんなと食べたほうが
 おいしいだろうと思った。
 板書 みんなといっしょに堂々と食べる
T 見つかったあとの気持ちは?
C 何だかほっとした。
C 落ち着かなかった気持ちが、落ち着けたと思った。
 A よく考えて書く事柄を収集する
T 今までの話で、書く事柄と、どんなことを書くかが
 よくわかりましたね。では、書く事柄を学習シートに
 書き出しましょう。
題 材  書く事柄  考 え  感じたこと 

〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜〜
 C 収集した事柄を評価し調節する
T 書こうとする事柄をみんなメモしましたね。もう一
 度考えて、要らないものは消し、足りないものは書き
 足しましょう。          (小畑 多恵子)

                                                       136
     三 文章を構成する授業モデル


  1 題材「でんでんだいこ」   

 (1) 解説
 一年の「順序をたどって書く技能」は経験の順序を正しく認識し、その順序をたどって文を続けて書く技能である。
一年生は、物事の順序などを、正しく認識したり思考したりする力が、まだ、じゅうぶんに発達していない。そこで、
文章を書く前に、書く事柄を正しく押さえて、事柄と事柄の順序をはっきりさせる。そのうえで、事柄の順序をたど
って書かせる必要がある。つまり、経験や行動の順序を示すアウトラインを作って書く。
 と言っても、アウトラインをことばで書くことは、無理である。そこで、経験や行動や製作などの過程を示す絵を
かいたり、絵プリントを操作したりして、絵によるアウトラインを作るとよい。この絵プリントを見ながら順序をた
どって話す学習をすれば、順序がことばで認識され、より確かになる。さらに、それを書く学習をすれば順序が文字
で記録され、一層確実になる。また、絵プリントを見ながら話すには、絵から絵へ移る時、話を続けることばを使わ
なければならないので、自然に、順序を示すことばの学習にもなる。
 本時は、図工で作った「でんでんだいこ」の製作過程を書いて、家族に教える作文の第一時の指導である。
 (2) 学習単位
  「でんでんだいこ」の製作過程を想起し、アウトラインを作る過程
                                                       137
  ・製作過程を絵によって示すこと
 (3) 学習目標(行動目標)
 「でんでんだいこ」の製作過程をたどって、話したり書いたりするためのアウトラインを、絵プリントによって次
のように作ることができる。(次ページのアウトライン参照)
 (4) 「経験の順序をたどって文章を構成する技能」の学習過程モデル
 @ 経験したことの順序をたどる必要性の自覚――作り方がわかるように順序よく書こうとする
 B 経験を想起し、その順序を押さえる―――――どんな順序で作ったか、思い出して話す
 A 経験の順序を理解する―――――――――――絵プリントを切って、順序よく並べる
 C 順序を確認する――――――――――――――絵プリントの順序に従い、どうやって作ったのか話す
 (5) 学習指導過程―学習指導の実際

 @ 目的をもつ
T 「でんでんだいこ」の作り方を、お友だちやおうち
 の人に教えてあげるには、どうしたらいいでしょう。
C お話して教えてあげます。
C 作文に書いて教えてあげます。
 B 方法を考える
T お話したり作文に書いたりする時、どんにことに気
 をつけると、作り方がよくわかるでしょう。
C やったことをぬかさないで書きます。
C やった通りに順序よく書きます。
 A 学習する
T きょうは、どんなことを、どんな順序でやったのか、
 作り方の順序をよく思い出す勉強をします。初めに、
 できた「でんでんだいこ」を見ながら、グループの友
 だちと、どうやって作ったのかお話してみましょう。
1 何を作りましたか。C2 わたしは、うさぎの形の「で
138   
 んでんだいこ」を作りました。C1 どうやって作りま
 したか。C2 箱に穴をあけで、わりばしをさして作り
 ました。あと、うさぎの絵をかいて、はりました。(グ
 ループの児童が、交替しながら全員話し終えたら)
T どうやって作ったか、作る時にどんなことをしたの
 か思い出せましたね。発表してください。
C 箱の上と下に、穴をあけました。C わりばしをさ
 して、セロテープでとめました。C 絵を二つ同じに
 かきました。C 絵を切って、のりで箱にはりつけま
 した。C ぼたんに糸を通しました。それを二つ作り
 ました。C 箱の横に、セロテープで糸をつけました。
                


T みんなが発表してくれたことを絵でかいてみました。
  (六工程の絵をかいたもぞう紙を黒板に貼る。順不同)
139   
C 先生、絵の順番がちがっています。
T そうですね。切って正しい順番に並べかえましょう。
  (児童にもぞう紙と同じ絵プリントを配り、各自の机
 上に正しく並べさせる。一名の児童を指名し、黒板の
 絵を正しい順序に直させる。それを、全員で、順序が
 正しいか評価する。――前ページ絵参照。その後、各
 自机上の絵を自己評価する)
T では、絵の順序の通りに初めから終わりまでお話し
 てください。(二名の児童が前に出て話をする)
T 今、絵と絵の間で、はじめに、つぎに、こんどは、
 そのあと、おしまいに(板書)という文を続けること
 ばを使いましたね。それで、順序のよくわかるお話に
 なりました。今度は一人でシートに絵を並べながらお
 話します。続けることばを( )の中に書きながらお
 話しましょう。名前と書き出し文の所から書きましょ
 (できたアウトラインをOHPで投影し、順序や続け
 ることばについて話し合う)   (渡辺 志げ子)



  2 題材「いろいろな顔」   


 (1) 解 説
 「順序を整理して書くこと」という技能は、一年の「順序をたどって書く技能」の上に成り立つ技能であって、い
わゆる文章構成の技能の一つである。
 この「事柄の順序を整理して書く」ということは、ただ単に、経験した通りに順序をたどって書くということでは
なく、作業や経験や行動などのまとまりをとらえて、そのまとまりごとに順序を立てて書くことである。ここでは、
工作の時間に作った「いろいろな顔」の製作過程、「形を作る」「鼻を作る」「口を作る」「目を作る」などを整理して
 「形を作る過程」「表面を作る過程」「色をぬる過程」というように、作業をまとめて、その順序をはっきりさせた。
                                                       140
この順序を「たどる」と「整える」の区別をはっきりさせて指導することが大切である。
 また、順序を示す語を使って書くということは、「はじめに」「つぎに」「おわりに」などという言葉を形式的に使
わせることではなく、児童が順序を認識したり、考えたりした結果、自然に出てきた言葉――前をうけて、次に続け
る言葉――を使うようにすることである。このことは、児童の順序意識を高め、順序思考を育てる上に、重要なこと
である。
 (2) 学習単位
 @ 学習範囲
  文章を組み立てる過程、つまり、アウトラインを作る過程
 A 学習する技能
   「書く事柄を選び、順序を整理すること」「順序を示す語を適切に使うこと」
 (3) 学習目標(行動目標)
 粘土で「いろいろな顔」を作る過程を知らせるために、知らせる事柄を整理し、その順序をはっきりさせて、次の
ようなアウトラインを作ることができる。
 はじめの文――「形を作る」――「表面を作る」(目・鼻・口)――「色をぬる」――「ニスをぬる」
 (4) 「順序を整理して文章を構成する技能」の学習過程モデル(アウトラインを作る学習過程モデル)
 @ 「いろいろな顔」の製作過程を思い出す
 A 製作過程に従って書く事柄を収集する
 B 収集した事柄を整理してまとまりを作る
                                                       141
 C 収集した事柄のまとまりを整理して、組み立てる
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 目的をもつ
T 図工の時間にいろいろな顔を作りましたね。みんな
 とでもじょうずにできましたね。その顔をだれにあげ
 るのでしたか。
C お母さん。
T その時に、一緒に上げるものがありましたね。
C この顔をどのように作ったか、作る順序を教える作
 文です。

 (板) 
 どのように作ったか、作る順序を教える作文
 を書く 

 A 書く事柄を収集する
T それではきょうは、いろいろな顔の作り方をよく思
 い出して、どんなことをお母さんに知らせたらよいか
 考えてみましょう。
 (板) 
 作り方を思い出して、知らせることを決める 
T どんなことをしましたか。
C 顔の形を作りました。
 (板) 
 かおの形を作りました 
C 鼻を作りました。
 (板) 
 はなを作りました 
C 口を作りました。
 (板) 
 口を作りました 
C 目を作りました。
 (板) 
 目を作りました 
T 鼻や目や口を作ったことは、まとめることができま
 すね。何といいますか。
C 顔の表面を作ったです。
T そうですね。鼻や目、口を作ったことは、表面を作
 ったということにまとめられますね。
 (板) 
 表面を作りました 
T それから何をしましたか。

                                                      142

C 色をぬりました。
 (板)
 色を塗りました
C ニスをぬりました。
 (板) 
 ニスをぬりました 
 B 収集したことを整理する
T 書くことは決まりましたね。今度はこれをカードに
 書いて作った順番に並べてみましょう。最初に何をし
 ましたか。
C 顔の形を作りました。〈緑のカードに書く〉
T 顔の形ができたら次は何をしましたか。
C 顔の表面を作りました。(緑のカードに書く〉
T 表面の中には、細かいことがありましたね。
C 目や耳、鼻、口などを作ったことです。
T そうですね。細かいことの順番を思い出して黄色の
 カードに書いてください。
T その次は何をしましたか。
C 色をぬりました。〈緑カード〉
T さいごに何をしましたか。
は じ め の 文 
 ○ □ △  顔の形を作りました 
顔の表面を作りました
鼻を作りました
目を作りました
口を作りました 
  色をぬりました 
  ニスをぬりました 
お わ り の 文 
 C ニスを
  ぬりまし
  た。(緑)
 T 今書い
  たカード
  を絵シー
  トにはっ
  でくださ
  い。
 T このよ
  うなアウ
  トライン
  ができま
  したか。
  では、こ

の次の時間に今作ったアウトラインをもとにして作文
を書きましょう。          (御園生 幸子)

                                                       143

  3 題材「お見舞の手紙」    

 (1) 解 説
 文章構成の本格的な学習は、四年からになっている。それは文章構成の単位は段落であり、段落意識が明確になり
その構成がわかるようになるのは四年生頃からだからである。しかし四年生になったから急に文章構成の指導をする
というわけにはいかない。段落意識や文章構成の意識が伸び始める三年生頃から文章構成の初歩的な指導をする。こ
の三年の「書く事柄を整理して文章を構成する技能」は、二年生の「経験や行動の順序を整理して文章を組み立てる
技能」の上に成り立っでいる。
 ところで、書く文章をどのように組み立てるか、どのように筋道を立てて構成するかは、文章を書く目的、発想、
文章の形態によって決まってくる。ここでは、三年の初めなので、まず一応形態のきまっている手紙のわくの中で、
お見舞とともに近況として知らせる事柄を整理して文章を構成する指導を行うことにした。本時は第一時で、収集し
た書く事柄を整理して手紙文を構成する授業である。
 (2) 学習単位
 @ 書く事柄を整理して文章を構成する過程――手紙文のアウトラインを作る過程
  ・簡単な文章を構成すること
  ・手紙の形式を理解すること
 (3) 学習目標(行動目標)
                                                       144
  書く事柄を収集し整理して、次のように手紙文を構成することができる。
  前書き――本文(知らせる事柄を段落に分けて組み立てる)――あと書き
 (4) 「書く事柄を選び整理して文章を構成する技能」の学習過程モデル
 @ 「お見舞と近況を知らせる手紙」を書く目的をもつ…………………目的
 A 書く目的に応じて書く事柄を収集する…………………………………収集
 B 収集した事柄を整理して段落にまとめる………………………………整理
 C 手紙文の形式を理解し、段落を組み立てて本文を構成する…………組立(本文)
 D 手紙文のアウトラインを作る……………………………………………構成(手紙)
 E 手紙文の構成を評価し確認する…………………………………………評価
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 目標を確認する
T きょうは、病気のAさんのお見舞と、Aさんが知り
 たがっていると思うことを手紙に書く勉強でしたね。
 A 学習方法を考える
T どんな順序で書きますか。
C 最初、知らせたいことを考えてカードに書きます。
C お見舞のことと、知らせたいことをメモします。
T はじめに、知らせたいと思うことをカードに書いて、
 そのカードを整理してアウトラインを作りましょう。
 B 知らせたい事柄をカードに書いて整理する
C (各自、カードに書きたいことを書いていく)
T やめてください。手紙に書きたいことが たくさん
 書けましたね。そのカードを整理しましょう。
  何枚もあるカードのうち、同じ仲間のカードを集め
 ましょう。
C (各自、書いたカードを分類する)
145   
T カードのまとまりがいくつありましたか。
C 五つ。/C 四つ。
T いくつもあるまとまりの中から一番知らせたいこと
 を二つ選んでください。まとまりの中で書く順序に並
 べてみましょう。
T 鈴木さんの知らせたいことについて調べてみましょ
 う。(OHP投影)/C(鈴木、カードを読む)
T 鈴木さんは何と何を知らせたいのですか。
C 遠藤さんの詩が佳作に入ったことと、掃除の仕方が
 上手になって、教室がとてもきれいになったことです。
T 今の鈴木さんの知らせたいことを聞いていてまとま
 りに関係のないものはないでしょうか。確かめてみま
 しょう。
C ゼラニュウムの花のことは関係ないので抜いておき
 ます。
T めいめい、自分のカードを見て、余分なものがあっ
 たらけずりましょう。書き加えることがあったらたし
 ましょう。
 C 本文に書くことを確認する
T これで、手紙に書く中身をはっきりさせることがで
 きました。自分のカードを確かめて、まとまりはよい
 か、関係のないものが混じっていないかどうか見てみ
 ましょう。混じっていたらけずりましょう。足りない
 ものがあったら、たしましょう。
C (各自評価・調節する)
 D 前書きに書くことを考える(お見舞のこと)
T 知らせたいことがはっきりしました。このまますぐ
 に手紙が書けるでしょうか。
C すぐに書いたら、これを受けとった岩本さんが、読
 んでも意味がよくわかりません。
C 前書きがないとわかりません。
C お見舞の手紙だからお見舞のことばを書きます。
C 具合いをたずねることばを書きます。
T では 前書きに書きたいことを カードに書いてお
 きましょう。
C (各自前書きに書くこと、お見舞のことばを書く)
146  
 E あと書きに書くことを考える
T 前書き、本文ができました。これで手紙を書くした
 くができ上がったでしょうか。
C あと書きをつけます。
T あと書きには、どんなことを書きたいですか。
C 早く病気が直って学校へ来てくださいと書きます。
T それを書いたら、岩本さんもよろこぶでしょうね。
C (各自、後書きをカードに書く)
 F 手紙のアウトラインを作る
T 前書き、本文、あと書きに書きたいことが書けました。
 書きたい順にカードを並べてごらんなさい。そのよう
 に並べた訳を言ってみましょう。
C お見舞の手紙だから前書きにどんな具合かおたずね
 をします。そして岩本さんが知りたがっていると思う
 ことを二つえらんで書きます。おわりに早くよくなっ
 てもらいたいと思っていることを書きます。
 A 評価・調節をする
T 自分のアウトラインを見直し、手紙に書く順はこれ
 でいいか確かめ、いけないと思ったら直しましょう。
C (各自アウトラインを見直す)   (三浦 ミヨ)



  4 題材「やっとできた」    

 (1) 解 説
 中心点の明確な文章を構成するには、書く目的、選んだ題材に即して書く事柄を選んで整理し、それを書こうとす
る要旨、中心点にしたがって組み立てる。それは、書こうとする、中心点の明確な文章のアウトラインを作ることで
ある。これは、三年生の「書く事柄ごとの区切りや中心を考えること」を受け、五年生の「主題や要旨の明確な文章
を書く」に発展していく。

 本時は二時間目の学習である。一時間目には、書く目的に従って、題材を選び、何を中心にして書くかを考えて、
                                                       147
書く事柄を収集してカードに書く。本時は、収集した書く事柄を整理して、中心点の明確な文章を構成する。そのア
ウトラインを作る指導である。
 (2) 学習単位
 中心点の明確な文章を構成する過程
  ・中心点の明確な文章のアウトラインを作ること
  ・書く事柄を整理して中心点を明確にすること
 (3) 学習目標(行動目標)
 自分のいちばん書きたいことを明らかにし、それを中心にして、次のような骨格をもった文章を構成するアウトラ
インをつくることができる。
 @ 書き出し段落(事件に至る経過)
 A 中心段落(事件の中心となること)
 B むすびの段落(事件後の結末)
 (4) 「中心点が明確な文章を構成する技能」の学習過程モデル
 @ 自分の書きたいことの中心をおさえる
 B 書きたいことにそって書く事柄を選ぶ
 A 書く事柄を中心点を明確にして組み立てる
 C 組み立てた文章構成を評価し確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際
                                                       148

 @ 学習目標を確認する
T きょうは、書きたいことの中心のよく分かるアウト
 ラインを作ります。アウトラインを作っておくとなぜ
 いいのですか。
C 自分の書きたいことがよくわかります。
C 書くときに文章全体の見通しが立ちます。
C 安心して書けます。
T そうですね。今日は、前の時間に集めた事柄をもと
 にして、中心をはっきりさせ、それから文章全体を考
 えて組み立てていきましょう。
 B 自分の書きたいことの中心をおさえる
T カードを選ぶときもとにした自分の作文の題と書く
 事柄の中心を確認しておきましょう。
C 題は「やっと上がったたこ」で、中心は、なかなか
 上がらなかったたこが上がったことです。
 A 書きたいことにそって書く事柄を選ぶ
T 今の発言のように確認できましたね。では、そのい
 ちばん書きたいできごとが書いてあるカードを一枚選
 んでシートの真中に置いてみましょう。
C ぼくは。「たこが上がった」です。
C 「手がようやく届いた」です。
T みな、中心のできごとを書いたカードが選べました
 ね。では、残りのカードから、書き出しとむすびの骨
 になるカードをみつけて並べてください。
C 書き出しは「自分のばかり失敗した」、むすびは「兄
 がほめてくれた」です。
T 並んだ三枚のカードは真中のカードを盛り上げるよ
 うにたってますか、確認してください。
 C 書く事柄を中心点を明確にして組み立てる
T では、三枚のカードのうち中心段落のカードを赤で
 囲ってください。次にそれぞれのカードを、間をあけ
 てシートの上段に貼ってください。これが、あなたた
 ちの書く作文の大まかなアウトラインです。
C わたしは、「頭がひざにつかないので練習を始めた」
 「かたかった体なのに、頭がひざについた」「おかあさ
 んに見てもらった」の三つです。
149  
C ぼくのは、「おとうさんはこまをじょうずに回した」
 「ぼくも回るようになった」「弟に教えてやった」の三
 つの段落です。
T では、残っでいるカードの中で、中心段落に関係の
 あるのを集めて並べてください。並べながら、気がつ
 いたことがあったら、「会話カード」や「気持ちカー
 ド」にして付け加えていってもよろしい。
C (各自カードを並べる)
T 作文の中心ははっきりしてきましたか。
C (全員挙手)
T それでは、今並べた中心部分が、読み手にいっそう
 よく伝わるように考えて、書き出しとむすびの段落の
 カードを並べてみましょう。中心部分と重なったり、
 無関係だったりするカードは除いておきましょう。
C (各自カードを並べる)
 D 組み立てた文章構成を評価し確認する
T できたようですので、次のことに気をつけてアウト
 ライン全体を読み返してみましょう。
 @ 記述する順序にカードが並んでいるか。
 A よぶんなカード、足りないカードはないか。
 B 中心部分には、会話カード、気持ちカードが十分
  含まれているか。
 C 書き出し、中心、むすびの区切り方はよいか。 
C (評価の結杲にもとづいて自己調節する)
T では、アウトラインを友だちと見せ合って自分の直
 したところを中心に話し合いなさい。話し合っている
 うちに気づいたことがあったらさらに直してよい。
C (相互評価・調節をする)
T できたらカードをシートに貼りつけでください。そ
 して、もう一度全体を読み通してください。自分の書
 きたい作文の内容ははっきりしてきましたか。
C (気がついたことを話し合う)
 E 次時への意欲づけ
T 次の時間は、このアウトラインをもとに作文を書い
 てみましょう。            (山本 静夫)

                                                       150
  5 題材「いろいろな国旗」   

 (1) 解 説
 六年の「段落にまとめ、段落と段落との続き方に注意して文章を構成する技能」は、「段落を構成する技能」、「段
落と段落との関係を考えて文章を構成する技能」の上に成り立っている。したがって、書く事柄を収集したら、それ
を整理していくつかの段落にまとめる。その際、段落の構成の仕方を指導する。こうして構成された段落相互の関係
を考えて文章を構成する指導をする。
 本時は、調べたいろいろな国旗について、筋道を立てて説明する文章の構成の仕方を学習する。前時までに、各国
の国旗について、@どこの国旗か(話題)、Aどんな国旗か(説明)、B図柄や色などの意味(解説)、C国旗の成立
過程や歴史(解説)などを調べて、それぞれ四枚のカードに書き出してある。
 (2) 学習単位
 @ 段落と段落との続き方に注意して文章を構成する過程
  ・段落を話題・説明・解説のように組み立てること
  ・段落と段落との関係を考えて文章を組み立てること
 (3) 学習目標(行動目標)
 段落の構成や段落相互の関係を考えて次のように文章を構成することができる。
 書き出しの段落  説明の段落@(話題十説明十解説)  A(話題十説明十解説)  まとめの段落
 (4) 「段落の構成、段落相互の関係に注意して文章を構成する技能」の学習過程モデル
                                                       151
 @ 文章構成の必要性を自覚する
 A 文章構成の仕方を発見する
 B 文章構成の仕方を理解する
 C 理解に基づいで文章構成する
 D 文章構成の結果を検討し確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を立て、方法を考える
T 各国の国旗について調べたことがカードに書いてあ
 りますね。きょうは、それを使ってアウトラインを作
 りましょう。どんな手順を踏みますか。
C カードを整理して国旗ごとに段落に組み立てます。
C 組み立てた段落を使って文章を組み立てます。
T それでは、国旗についてどのように説明すればわか
 りやすいかを考えて、カードを使って段落の組み立て
 を考えてみなさい。一つの国旗について一つの段落を
 組み立てるようにします。
 A 段落の構成の仕方を発見する
C (各自で四枚のカードを並べながら考える)
T 段落の中をどのように組み立てたらいいか発表して
 ください。
C 初めに、「どこの国旗」、次に、「どんな意味」、最後
 に、「どんな国旗」という順に説明します。
C 二番目に「どんな意味」をもってきたが、「どんな
 国旗」が先にないと説明できない。
C 初めに、「どこの国旗」、次に、「成立や歴史」、三番
 目に、「どんな国旗」、最後に、「どんな意味」という
 順に説明したい。
C それでは文章に書く場合にはむずかしくなる。「成
 立や歴史」は最後にもってきた方がよいと思う。
C 賛成です。国旗についての説明文を書くのだから、
152   
 国旗そのものの説明が先にあった方がいい。
C 最初に「どこの国旗」、次に「どんな国旗」、三番目
 に「どんな意味」、最後に「成立や歴史」がいい。
 A 段落の構成の仕方を理解する
T 最後によくまとめてくれました。話題となる「どこ
 の国旗」が初めで、どんな図柄や色かという「どんな
 国旗」が説明として二番目にくる。そしで、その図柄
 や色には意味があるんだという「どんな意味」が解説
 として三番目になる。最後に、国旗にまつわる「成立
 や歴史」も解説として加える。
 C 理解に基づいて段落を構成する
T では、各自でカードをアウトライン用紙に並べてみ
 よう。そのとき、今学習したことを考えて、カードを
 読みながらやるようにしよう。
C (段落を右図    
 のように構成す    
 る)         
 D 段落相互の関係を考えて文章構成のアウトライン
 を作る
T では、次は、組み立てた段落を使って文章全体を組
 み立てるわけですね。どんなことを頭において組み立
 てていったらいいでしょうか。
C よくわかる説明になるように考える。
T だから、筋道の立っている説明になるように組み立
 てていけばいいのですね。
T まず、書き出しの段落を書くのですが、どんなこと
 を書けばいいですか。
C 僕の場合は、東京サミッ卜があって、世界の国に興
 味をもったので調べたということを書きたい。
C 私は、アメリカの国旗の星には意味があることを知
 っていたので、外の国旗にも何か意味があるだろうと
 思って調べたのだ、ということを書きたい。
C (各自で書き出しの段落を書く)
T 次に、国旗の説明に入っていくわけですが、どのよ
 うに一つの段落(国旗)と次の段落(国旗)を続けて
153  
 いったらいいですか。
C 「はじめに」、「つぎに」などの決まりきったことば
 ではうまく続いていかない。
C 同じ意見です。そして、うまく続けるためには、最
 初に国旗を選んだときの理由を使っていきたいです。
T それはいい考えです。例えばC君の場合はどう?
C イタリヤとメキシコを選んだのは、両方とも二色旗
 で、色が全く同じだったからです。
C だから、イタリヤの説明の段落からメキシコの段落
 へ移るときには、「国旗は同じ色を使っているものが
 多いが、メキシコの国旗は、イタリヤの国旗に紋章を
 入れただけのものである。」というような続け方がい
 い。
C 例えば、「私は、動物の絵の入っている国旗がほか
 にもあるのではないかと思って調べてみると、○○が
 あった。」という続け方も考えられる。
T そのほかにも、どの国旗の段落を先に書くかという
 順序も考えて説明する必要があると思います。
C 私は、イタリヤの国旗を先に説明しないとうまく続
 かないのです。
T では、書き出しの段落から国旗の説明の段落までの
 続け方を考えて、続ける文をアウトラインに書いてお
 こう。最後に、まとめの段落を書きなさい。
C (各自でアウトラインを作る。結果を検討し確認)
                  (長谷川 清)

                                                       154
     四 文章を表現する授業モデル


  1 題材「がっこうのにわで」   

 (1) 解 説
 主語・述語の照応した文を書く学習は、主語・述語の照応した文に対する感覚(文型感覚、文法感覚)を育てるた
めに行われる。この場合の主述の照応は、行動認識の基本文型「ぼくは、テレビを見ました」、状態認識の基本文型「は
ながさいています」、事実認識の基本文型「これはつくえです」、存在認識の基本文型「きがあります」などの基本文
型の学習を通して行う。基本文型の感覚を育てる学習は、一年生から二年生にかけて学習するように計画するとよい。
なお、この技能の指導は、見たものを話させ・書かせ、読ませるという活動を、興味をもってやれるような場を設定
し、短時間にたびたびくり返し指導するのが原則である。
 (2) 学習単位
  「存在認識」の学習基本文型(@「何がある。」の文型  A「どこに何がある。」の文型)
 (3) 学習目標(行動目標)
 見たことを「何がある(いる)。」「どこに、何がある。」の存在認識の基本文型で話したり、書いたりすることがで
きる。(二時間)
 (4) 「学習基本文型を使って書く技能」の学習過程モデル
                                                       155
 @ 何かを見つける……………………………(事物の存在を認識する)
 A 見つけたことを基本文型で話す…………(存在認識の基本文型で話す「何がある」「どこに何がある」)
 B 話したことを基本文型で書く……………(存在認識の基本文型で書く「何がある」「どこに何がある」)
 C 書いた基本文型を読む……………………(存在認識の基本文型で読む「何がある」「どこに何がある」)
 D 「文型感覚」にもとづいて文を書く……(存在認識の基本文型で文を書く)
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習の目標と方法を確認する
T きょうは、見つけたことを話したり書いたりするこ
 とができるようにしましょう。(カード提示)
CD 
〇〇が  あります。 

  このカードのように、話したり書いたりする勉強で
 すよ。できますか。
C できます。/C かんたんです。
  (目で見たこと、見つけたことを、他の児童に正しく
 話したり書いたりすることを、はっきり意識づける)
 B 基本文型「何があります。」で話す
T この教室の中には、何がありますか。
C テレビ/C つくえ /C こくばん。(板書する)
T みんなに教えるには、何と言ってやればいいですか。
C テレビがあります。(板書する)
C つくえがあります。/C こくばんがあります。
T もっと、たくさん見つけて話してください。
C ボールがあります。/C 男の子がいます。
C 女の子もいます。(板書する)
T たくさん見つけましたね。さあ、だれが何と言った
 かわかりますか。
C  ………。
T わからなくなりましたね。どうすればいいでしょう。
C ノートに書く。/C 黒板に書く。
156  
T それでは、一人で五つぐらい見つけてノートに書き
 ましょう。(教師も模造紙などに五つ書いておく)
C 書けました。/C 五つより多く書けました。
C まだ、三つしか書けません。(活発に発言する)
 B 書いた文を読む
T みんなたくさん書きましたね。では、読んで教えて
 あげましょう。(できるだけ多くの児童に発表させ
 る)
 C 基本文型「何があります。」を確認する
T 先生も紙に書いておきましたよ。読んでみましょう。
  (読みながら、「何が」「あります」を線で囲む)
CD
 ボールが   あります。 

CD
 オルガンが   あります。 

T このカードと、今読んだ文と比べて、気がついたこ
 とはありませんか。
C 同じです。/C ……。/C ありません。
T 何があるか教えるには、「何があります。」と言った
 り書いたりすればいいのですね。
 D 「どこに、何があります。」の文型で話す
T 教室にいるみんなに教えるのには、「テレビがあり
 ます。」と話してもわかりますが、おうちの人に話す
 ときは、テレビがどこにあるのかわかりませんね。何
 と言って教えたらいいでしょう。
C 「きょうしつに、テレビがあります。」と教えます。
T そうですね。どこにあるのか、あるところを教えて
 やればいいですね。
CD
 〇〇に   〇〇が   あります。 

T それでは、話してください。
C 教室には、机があります。/C 教室には、黒板が
 あります。/C 教室には、水道があります。
T そうです。どこにを入れて話せばよくわかりますね。
C 校庭に登り棒があります。/C 校庭に小鳥がいま
す。/C 教室に先生がいます。(板書する)
157   
T 小鳥や人のときは、「います。」と言うんですね。
 E 基本文型「どこに、何があります。」「どこに、何
  がいます。」を使って書く
T 今度は、教室の中で見つけたものを三つ、ノートに
 書きましょう。
C きょうしつに、とだながあります。
C きょうしつに、とけいがあります。
C きょうしつに、きんぎょがいます。
 F 書いた文を読みあう
T それでは、みんなの見つけたものを教えてあげまし
 ょう。
C 各自読んで知らせる。(発表を板書する)
 A 「どこに、何があります。」の基本文型を確認する
T 黒板に書いたものをみんなで読みましょう。
C (読みながら、文型を確認する)
T これは、「どこに何があります。」の書き方ですね。
                    (金子 伸子)



  2 題材「冬休みのこと」   

 (1) 解 説
 文と文との続き方について二年では、「事柄が読み手によく理解できるように、文と文との続き方を考えて書くこ
と」を指導する。この時期の児童の作文をみると、@長すぎる文(だらだら文)、A点的な文章(ポツリポツリ文)、
B同じ接続語で続けている文章(そしてそして文)などを書く傾向があることがわかる。そこで、事柄と事柄との関
係や順序が読み手によく分かるようにするために、文と文との続き方を考えて書く学習が必要となる。
 本時は、第二時間目の授業である。前時には、題材を選び、アウトラインを作ったあとで、だらだら文の修正をし
て、適切な長さの文で書くことがだいじなのを知った。本時は、ポツリポツリ文の修正から、文と文との続き方を考
                                                       158
えながら書くことがだいじであると、はっきり理解し、冬休みの経験を文章に書く学習をする。
 (2) 学習単位
 @ 文章を書く過程(叙述過程)
 A 文と文との続き方の関係を考えながら書くこと
 (3) 学習目標(行動目標)
 経験したことを、次の事柄に注意して書くことができる。
 @ 適切な長さの文で書く
 A 接統語を使わないで意味を考えて文と文とを続ける。
 B 接続語(そして、それから、しばらくするとなど)を適切に使って文と文とを続ける
 (4) 「文と文との続き方を考えて書く技能」の学習過程モデル
 @ 文と文とを続けて書こうとする意識をもつ
 A 文と文とを続けて書く方法を発見する
 B 文と文とを続けて書く方法を理解する
 C 文と文とを続けて書く方法に従って文章を書く
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 前時の学習との関連
T 前の時間の終わりに、A君の長すぎる文をいくつか
 に切って、このようになおしましたね。
159   

T 長すぎる文を、どんな文になおしたのですか。
C ちょうどよい長さの文です。
 (板)  
 ちょうどよい長さの文で書く。 
 A 学習目標をたてる
T これで、長い文の時よりわかりやすくなりましたが、
 @の文とAの文との続き方はどうでしょう。このまま
 すぐに続けて書いていいですか。
C 「そしたら」と書いて続けます。
C 「しばらくすると」ダンプが、と書きます。
T このままでは、文と文とがポツリポツリと切れてし
 まいます。でも、「そしたら」とか、「しばらくすると」
 で、うまく続けることができそうですね。そこで、こ
 の時間は、文と文とがうまく続くように工夫して書く
 勉強をしましょう。
 (板) 
 文と文とがうまく続くようにくふうする。 

 B 文と文とを続けて書く方法を理解する
T それでは、みんなで@からAまでの文がうまく続く
 ようにしてみましょう。(話し合いの結果、次のこと
 ばを間に入れる)
 @―A そしたら、しばらくすると
 AーB (何もなくても続く)
 B―C そして、それで
 C―D そのあと、しごとがおわると
T これで、うまく続いて、よくわかる文章になりまし
 た。ところで、続けることばがなくても、文と文とが
 うまく続いた所があります。どこですか。
C AとBの間です。
C みんな、こんなのならいいのに。
T 本当は、続けることばがなくても、うまく続いてい
 る方がよいのです。でも、そうではない場合は、間に
 ことばを入れて、続けなくてはなりませんね。
160  
 (板) 
 続けることばを入れて書く。 
 C 冬休みのできごとを文章に書く
T それでは、これから冬休みのできごとを作文に書い
 てもらいます。まず、ちょうどよい長さの文で書くこ
 と。それから、ここは何か続けることばを入れないと、
 意味がわからなくなるという所は、ぴったりの続ける
 ことばを使って書いてください。
C (各自書き始める)
T (机間を回って個別指導)
 D 記述の結果について評価する
T まだ途中ですが、今まで書いた所までの文と文との
 続き方を見てみましょう。これはBさんのです。
  (OHP投影)

T 初めの文と次の文は、うまく続いていますか。
C 続いていません。
T Bさん、どうして外へあそびに行ったのですか。
C じやまになると思ったので、外へ行きました。
T (わたしは、の次に  の部分を書き加えて)これ
 で、続けることばを使わなくても、前の文とうまく続
 くようになりました。あそびに行ったことと家に帰っ
 てみたことは、どんなことばで続けでいますか。
C 「少したって」です。(T 赤で◎をつける)
T うまく続いていますね。たこができていた所と、た
 こを上げに行った所は、どう続けていますか。
C 「だから」で続けています。(T ◎をつける)
T その次はどうでしょう。
C 何もなくても続いています。(T ◎をつける)
T そして、たこは、の所は、これでいいですか。
161   
C 「でも、」たこは、と書いて統けます。(「そして」
 を消して、「でも」になおす)
T 今度は、自分のを読んでごらんなさい。よく書けて
 いると思ったら、◎をつけましょう。うまく続かない
 所は、つけたしたり、なおしたりしましょう。
C (各自読み返し評価する)    (丸西 美佐子)



  3 題材「生きもの」   

 (1) 解 説
 書こうとするものをよく観察して、正確に詳しく書くためには、その表現対象を、まず正確に詳細に観察し、認識
しなければならない。そのうえにたって書かなければ、正確な詳細な叙述とならない。つまり、観察の仕方と表現叙
述の仕方は、たがいに作用しあって、しだいに深まっていくものである。
 新指導要領には、三年に「書こうとするものをよく観察した上で書くこと」、四年で「事象を客観的に文章に書き表
すこと」とあって、正確に書く技能から客観的に書く技能へと発展的に考えられている。このように、観察して正確
に客観的に書く技能は、三年ごろからしだいに発達していく。したがって、この基本的な表現技能を「生きもの」と
いう具体的、動的な対象を書くことをとおして指導するのが、もっとも効果的である。
 そこで、この「観察したことを書く」学習は、次の過程をたどって指導してきた。
 @ 観察する計画をたて、観察する対象をきめる
 A 観察の観点を含め、観察しながらメモをとったり、図・絵・表などにまとめたりする
 B 観察収集した事項(メモ・図・絵・表)を整理して、中心のはっきりしたアウトラインを作る
 このアウトラインをたどって、正確に詳しく叙述するのが本時の指導である。
                                                      162
 (2) 学習単位
 @ 学習範囲
  アウトラインにしたがって、正確に詳しく叙述する過程
 A 学習技能
 O観察したことを正確に詳しく書くこと        様態を表す適切な比喩を使って書くこと
  様態・動態を表す修飾語を使って書くこと     数量を表すことばを使って書くこと
  文と文との接続の関係に注意して書くこと    O必要に応じて、絵・図・表などをいれて書くこと
 (3) 学習目標(行動目標)
 生きものをよく観察して、その形や色や動き(静態・様態・動態)などを、適切な修飾語・比喩、図や表を使って、
正確に詳しく書くことができる。
 (4) 「正確に詳しく書く技能」の学習過程モデル
 @ 表現意識――――正確に詳しく書こうとする意識をもつ
 A 表現法の発見――正確に詳しく書く書き方を発見する
 B 表現法の理解――正確に詳しく書く書き方を理解する
 C 表現法の適用――正確に詳しく書く表現法にしたがって書く
 D 表現結果の評価――評価基準にてらして、評価・調節する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を確認する(表現意識をもつ) T これまでに、生きものをよく観察してメモをとり、
163   
 それを整理して、中心のはっきりしたアウトラインを
 作りました。きょうは、アウトラインをたどって、メ
 モや生きものをみながら、観察したことを正確に詳し
 く書いていきましょう。
 板書 いきもののかんさつ――正かくに、くわしく書く
 A 書き表し方を考える(表現法を発見する)
T では、どのように書いたらいいでしょう。書き表し
 方を考えてみましょう。
CD
 かまきりは、なにかにとびつくように体をひき、
はねをパラパラとひらいて一メートルぐらいとぶ。 
T これは、どんなことに気をつけて書いていますか。
C 「一メートルぐらいとぶ」と、はっきり書いてある。
C かまきりがとぶ長さをきちんと測っているからいい。
 板書 一メートルぐらいとぶ。
T みんなもメモに詳しく書いてありますね。ただ「足
 は長い」より、きちんと測って「足の長さは五センチ」
 のほうが正確です。測ったり数えたりしたことをその
 まま書くとよくわかります。ほかにないでしょうか。
C はねをひらく様子が「パラパラ」でよくわかります。
 板書  はねをパラパラとひらく
T そうですね。はねをひらく様子を詳しく書いていま
 す。まだ、よい書き表し方はないでしょうか。
T 「かまきりは、なにかにとびつくように体をひき」
 のところはどうでしょう。かまきりが体をひいている
 のを「なにかにとびつくように」と、この絵のように、
 とびかかるかっこうのようだとよく観察しています。
 なになにのようにと、たとえを使って書いていますね。
 板書  なにかにとびつくように体をひく
T 次の文では、どんな書き表し方をしていますか。
CD
 前足をなめる時は、だいだいっぽい赤いしたをく
るくるまわしながらなめて、ひざのあたりから先の
ほうまでなめます。
 しょっ角をなめる時は、しょっ角をゆみなりにま
げ口にもってきて、まん中あたりまでなめます。 
C 「だいだいっぽい赤いした」と色をよくみています。
164   
C 「くるくるまわしながら」で、したをくるくると動
 かしている様子がよくわかります。
 板書 だいだいっぽい赤   くるくるまわしながら
T そうですね。色を「だいだいっぽい赤」と詳しくみ
 ているし、「くるくるまわしながら」と、動く様子も
 よく観察して書いています。まだありますか。
C 前足をなめる時と、しょっ角をなめる時と、順番に
 詳しく書いてあるからいいと思います。
T 「ひざのあたりから先のほうまで」「ゆみなりにま
 げ口にもってきて、まん中あたりまで」と、なめてい
 る様子をみたとおりに書いていますね。
 A 書き表し方をまとめる(表現法を理解する)
T 生きものの様子がよくわかる書き表し方がわかりま


板書
 したね。まとめてみましょう。(左段板書参照)
T このほかに、まだありますか。
C 絵や図をいれて書きます。
C 表にまとめて書くとよくわかります。
T メモに書いてある絵や図や表もいれるといいです。
 C 正確に詳しく書く書き表し方にしたがって文章を
  書く(表現法を適用する)
T それでは、観察したことを、アウトラインをたどっ
 て、正確に詳しく書いていきましょう。メモや、生き
 ものをよくみて書くのです。書き表し方は、いま勉強
 したように書きましょう。
C (文章を書く)
T (個別指導をする)
 D 書いた文章を評価する(表現結果を評価する)
T これから、友達の書いた文章をうつします。正確に
 詳しく書けていますか。
OHP
 くもの糸は、べたべたとくっつきます。その糸
にからませて虫をとります。 
165   
C どんな糸か、もっと詳しく書くといい。
T では、どのように書きますか。
C 「くもの糸は(ねずみ色で)べたべたとくっつきま
 す。」と書きます。
C まだあります。「その糸に(ごちゃごちゃに)から
 ませて、虫を(動けないようにして)とります。」
T そうすると、観察したことが正確に詳しく書けます。
OHP
 起き上がるとき、右の図のように、前の二
本の足を上に向けて、ぐにゃぐにゃと動かし 
て、あとの六本の足は下にやったり 上にや
ったりして動かしていました。 
T これは、ざりがにを書いた文章です。どうですか。
C 下に図がはいっていて、足の動く順番がよくわかり
 ます。それから、「ぐにゃぐにゃと動かして」のとこ
 ろで、足の動いている様子が詳しいです。
OHP
 おこるときは、はさみを持ち上げながらひらき、
また、どうたいもいっしょに持ち上げる。そしてし
よっかくを横にまげ、ひげをつり上げる。 
T これはどうですか。
C ざりがにが怒っているのがよくわかります。
C はさみや、しょっかくやひげを動かしているのが、
 目にみえるように書いてあります。
T このように、書き表し方に気をつけて書くと、ほん
 とうに目の前に、生きものが動いているように、詳し
 く書けますね。
T では、自分の書いたのを読みかえしで、その様子や
 動きが目にみえるように書けているか考えながら、書
 きなおしたり、書きたしたりしましょう。いいと思う
 ところは、サイドラインをひいておきましょう。
C (書いた文章を読んで、サイドラインをひいたり、
 書きたしや書きなおしをする)    (斉藤 洋子)

                                                       166


  4 題材「生活経験を書く」   

 (1) 解 説
 日常の生活経験にまつわる感情、感覚を書くことを通して、子どもの感受性を育てたり、心情を育てたり、審美性
を育てたりする。それとともに、感覚や感情を書き表す技能を伸ばしていく。そのためには、場面・情景・状況・行
動・生活などをじゅうぶん認識させた上で、そこから誘発される感覚・感情を書かせることがだいじである。
 三年の「生活経験を書く」指導は、@教材「さびしかったるすばん」により、アウトラインの作り方と書く事柄の
想起のしかたを理解させる。A想起法によって書く事柄を収集する。B書く事柄を整理しでアウトラインを作る過程
をたどって、本時は生活感情を表現する方法を理解して書く指導である。
 (2) 学習単位
 @ アウトラインに従って心情を表現する過程
  会話・行動・様子を通して気持ちを書き表すこと
  書く事柄に区切りをつけて書くこと
 (3) 教 材

    「さびしかったるすばん」 三年 木村 春男
 この間の日曜に、お父さんとお母さんと弟が、立川の
親るいへ行ったので、ぼくは、るすばんをすることにな
った。
 その日は、十時ごろみんな出かけて行った。ぼくは一
人でテレビを見ていたが、三十分ぐらいで、すぐあきて
しまった。一人で見ているのでつまらなかった。
 それからこんどは、マンガの本を読み始めたけれど、
167  
マンガもすぐあきてしまった。ふだんは、お母さんが
「春男やごはんですよ。」と言っても、「もう少し、もう
少し。」と言って、なかなかやめないのにへんだなあと
思った。
 すると、急にペリーが、ワンワンほえだした。ぼくは
だれか知らない人が来たんだなと思って、むねがドキド
キしたが、道を通る人にほえたことがわかって安心した。
けれども、それからは、急に家の中が広く見えたり、し
ずかになったりした気がして、何だか気味が悪くなって
きた。
 まだ、二時間もたっていないのに、早くみんな帰って
来ればいいなあと心の中で思った。すると、「ガタン。」
と音がしたので、げんかんに出てみたらだれもいなかっ
た。また、気味が悪くなった。
 夕方、五時ごろみんな帰って来た。お母さんが
 「おそくなってごめんね。」
と、言った。ぼくは、ほっと安心したが急になみだが出
そうになってしまった。
 あとで、みんないっしょにいて、にぎやかなほうがい
いと思った。やっぱりるすばんは、さびしいんだなあ。

 (4) 学習目標(行動目標)
 生活感情がよく表れるように、次の点について、書き表し方をくふうして書くことができる。
 場面・情景・行動・状況などをじゅうぶん表現した上で感覚、感情を書き表す。
 (5) 「心情がよくわかるように文章を書く技能」の学習過程モデル
 @ 表現意識―――――――――心情を書こうとする意識を高める
 A 表現法の発見―――――――教材により心情の書き表し方を発見する
 B 表現法の理解―――――――心情の書き表し方をまとめて理解する
 C 表現法の適用―――――――理解した表現法を使って文章を書く
                                                       168
 (6) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標をたてる(表現意欲を喚起する)
T 身の回りのことを題材にして、この前の時間は書き
 たいことの中心がはっきりわかるアウトライン作りを
 しました。今日は、気持ちがよく表れるようにくふう
 して、文章を書きます。
CD
  読む人に、その時の気持ちがよくわかるよ
 うに書こう 
 まず、書き表し方の勉強をしましょう。みなさんに配
った木村さんの作文「さびしかったるすばん」を黙読し
 てください。
C (黙読)ノートに感じたことを書く。
T では、読んで感じたことを発表してもらいます。
C るすばんをしている時のさびしいような、こわいよ
 うな感じがよく出ています。
C 早くお母さんが帰ってこないかなあと思っています。
C 落ち着かない不安ないつもと違うようすが感じられ
 ます。
板書
@ さびしくて気味が悪い。こわい。
A 落ちつかない。不安。
B お母さんが早く帰って来てほしい。 
 A 表現法を発見する(心情の書き表し方を発見する)
T そうですね。それでは、この文章を読んでなぜこの
 ような気持ちが私達に伝わってくるのかを考えてみま
 しょう。
C ぼくは、テレビを見ていたが、三十分ぐらいで、す
 ぐあきてしまった。こんどは、マンガの本を読み始め
 たけれどマンガもすぐあきてしまった。ふだんは、お
 母さんが「春男やごはんですよ。」と言っても、「もう
 少し、もう少し」と言ってなかなかやめないのにへん
 だなあと思った。でAの気持ちがわかります。
T 自分がその時何をしたのか、どんな様子だったのか
 をよく思い出して書いていますね。
C 急にペリーが、ワンワンほえだした。ぼくは、だれ
169  
 か知らない人が来たんだなと思って、むねがドキドキ
 したが、道を通る人にほえたことがわかって安心した。
 けれども、それからは、急に家の中が広く見えたり、
 しずかになったりした気がして、何だか気味が悪くな
 ってきた。ここに@の気持ちがよく出ています。
T どんなことがあったか、あたりのようすはどんなだ
 ったかをよく思い出していますね。そして、その状態
 の中で、どんな気持ちがしたかを書いています。
C まだ、二時間もたっていないのに、早くみんな帰っ
 て来ればいいなあと心の中で思った。お母さんが「お
 そくなってごめんね。」と言った。ぼくは、ほっと安
 心したが急になみだが出そうになってしまった、とい
 うところで@やBの気持ちが、よくわかります。
T そうですね。心の中で思ったことや、人の言ったこ
 と、その時の気持ちをよく思い出していますね。
 B 表現法を理解する(書き表し方をまとめる)
T では、どう書けば気持ちをよく書き表せますか。
C どうして、そのような気持ちになったのか、そのわ
 けをくわしく書きます。
T そのわけというのは、どういうことですか。
C 自分のしたことです。/C あったことです。
C あたりのようすやありさまです。
T そうですね。ただ、さびしいとか、気味が悪いとか
 気持ちを表すことばだけの表現では、本当の気持ちは
 伝わりません。
CD
 自分のしたこと
 あったこと
 あたりのようすやありさま 
  このようなことをくわしく細かく思い出しながら、
 よみがえってきた気持ちを結びつけて書きます。思い
 出すための資料をもって来ている人は、それを使って
 よく思い出して書きましょう。
 C 表現法を適用して書く
C (アウトラインをもとに、加除修正しながら書く)
 D 評価・調節をする
T グループの中で交換して読み合いましょう。よく書
170   
 けているところにはいつもの記号()を、もっと
 くわしく書いた方がよいと思うところには記号()
 をつけてあげましょう。
C (交換して読み合った後で、書き直す)

C 「後に行くので」がくわしく書き直してあります。
C 終わりのところは、気持ちと様子がよく書けていま
 す。
T の印がついたところは、もう一度前後を読み直
 して、みなさんもこのようにようす・ありさま・気持
 ちなどを細かく思い出して書き足しましょう。
                   (永田 清子)



  5 題材「小さな生きもの」   

 (1) 解説
 「事象を客観的に文章に書き表す技能」は、第三学年の「よく観察した上で正確に書く技能」を受けて、事柄・現
象・行動・動作などの動態・様態・静態・状態を、客観的に認識し、それをそのままに説明したり描写したりする技能
である。そこで、観察し認識したことについて、「おもしろい」「とても美しい」「気持ちがいい」「こちらのほうがい
                                                       171
い」など、自分の感情や感覚や思想・意見などをまじえないで、見たこと、調べたことを、そのまま読み手に知らせ
ることができるように、書き表す指導をすることが大切である。
 本時は、@観察する対象を決める(あり、かたつむり、えびがになど)。A観察の観点を決め、観察しながらメモ
をとる。Bメモを整理してアウトラインを作る。Cアウトラインにしたがって形態・様態・動態などを正確に客観的
に書く。D書いた文章の中から主観的叙述、あいまいな叙述、不正確な叙述を見つけて適切に書き直す。E作品と観
察した生き物と対照してみる。以上の過程をたどって指導するうちの「C」の指導である。
 (2) 学習単位
 叙述過程――アウトラインにしたがって客観的に書く過程
  正確に書くこと 形態・様態・動態を客観的に書くこと 修飾語を適切に使って書くこと
 (3) 学習目標(行動目標)
 観察したり測定したりした形態・動態などを修飾語を使って、正確に客観的に書き表すことができる。
 (4) 「事象を客観的に書き表す技能」の学習過程モデル
 @ 正確に客観的に書き表そうとする意欲をもつ
 A 様態・動態などの客観的な書き表し方を発見し理解する
 B 資料やメモを生かして正確に客観的に書く
 C 書いた文章を目標に照らして評価して書き直す
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 本時の学習目標をもつ T これまでに生き物の観察メモを整理して、アウトラ
172   
 インを作りました。きょうは、それをもとにして生き
 物の様子を観察した通りに書きましょう。
 CD  観察したとおりに書く
 A 書き表し方を理解する
T では、見たまま、見た通りの書き方を考えましょう。
C 測ったり、数えたりした通り正確に書きます。
C 「前足も後ろ足も曲げています」を「前足を九〇度
 に曲げて、後ろ足は九〇度以上に曲げています」と書
 きます。
 CD  測ったり、数えたりした通り正確に書く
C 形や色や動きなどを、詳しくその通り書きます。
C 様子がよくわかるように書きます。
C 歩くようすは、「のそり、のそり」と、泳ぐようす
 は「口をパクパクさせながら」のように書きます。
 CD  観察したとおり、くわしく書く
C 自分の気持ちや思ったことを入れないで書きます。
 CD 気持ち、感じたこと、思ったことを入れずに書く
T この他、いろいろな書き表し方がありますね、どう
 書いたらよくわかるか工夫しながら書きましょう。ま
 た図で表してもいいですね。自分の思ったこと、考え
 たことは後でまとめて書くようにしましょう。
 ※以上が後で評価の観点ともなる。また正確に客観的
  に叙述するためにも重要なポイントとなる。
 B アウトラインに従って客観的に書く
C アウトライン・メモを見ながら書きはじめる。
 ※アウトラインだけでは正確にくわしく叙述できない
  のでメモも手許に置き参考にしながら書く。観察し
  た物があればそれを見るのも一つの手だてとなる。
T 児童の書いている様子を見、あいまいな叙述をして
 いる児童に対して個別に指導する。
 C 書いた文章を評価して書き直す
T これはお友達の書いた「かたつむりの観察」です。
 書き表し方はどうでしょう。
OHP
 かたつむりには角が二本あります。角を左右に動
 かし。さわるとすぐにひっこめてしまいます。 
173  
C 何本と数は、はっきりしています。
C 角を左右に動かすようすがわかる言葉が書いてある
 といいと思います。
T そうですね、ではそこを工夫してみてください。み
 なさんも、自分の書いたのを読み返し、正確に書けて
 いるか、ようすがわかる言葉が使われているか調べ、
 書きたりないところはなおしましょう。
 ※書き表し方を再確認させで書き直させ。前記児童の
  を再度取り上げ、どのように書き直したかを見る。
T では、かたつむりの角のところはどうでしょう。
 OHP  角を左右にピクピクと動かし 
T 「ピクピク」と動かしているそうです。
C いいと思います。
 ※見本を通して、さらに各自読み返して書き直す。
 D 書いた文章を読み合う
  
  
T えさのなめ方についてはどうですか。
C ようすがよくわかります。
C 形・色・動きなどが細かく、くわしく書けています。
T 正確に、細かく、くわしく見た通りに書くと読んだ
 人もそのようすがよくわかりますね。
  
174   
     
                  (根本 祥子)  


  6 題材「考えを深める」   

 (1) 解 説
 事実と感想・意見を書き分けるということは、知識や情報と、それについての感想・意見を、正確に、客観的に伝
えるための技能である。この技能は、第四学年の「事実を客観的に書き表すこと」の基礎の上に成り立っている。ま
た、この技能は、第六学年の「目的に応じて、事象と感想・意見などとを区別して文章に書き表すこと」「根拠を明
らかにし、それに基づいて自分の意見や主張を述べること」へと発展する。
 事実と感想・意見を区別して書く学習は、価値のある、真実の、正確な情報を伝えたり、説明や報告、観察したこ
となどを書いたり、何かの事柄や問題について感想や意見を書いたりする場合に行うのが原則である。
 本時までに、@毎日のくらしの中で、すぐその場で解決できないような困ったこと、悩んでいることを文章に書い
て考えを確かめ、さらに深めるために教材文を読んで、事実と意見の書き方を理解する。A題材を選び、書く事柄を
収集する。Bアウトラインを作って文章を構成する学習を行った。本時は、その上に立って、事実と感想・意見を書
き分ける学習である。
 (2) 学習単位
 @ 事実と感想・意見を区別して叙述する過程
                                                       175
  見たこと、したことと、感じたり、考えたりしたことを区別して叙述する技能
 (3) 学習目標(行動目標)
 事実と感想・意見を書き分けるために、事実については、正確に客観的に、事実に対する感想や意見については文
末に注意して、感じたこと、思ったことを、できるだけ具体的に書くことができる。
 (4) 「事実と感想・意見を書き分ける技能」の学習過程モデル
 @ 事実と感想・意見とを書き分けることの必要性を自覚する
 A 事実と感想・意見とを書き分ける方法を理解する
 B 理解した方法に基づいて書き分ける
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を立てる
T 前の時間に、いろいろな問題について、自分の考え
 をはっきりさせるために文章を書くことにして、次の
 ように文章を組み立てましたね。
 掲示  問題――原因・理由――解決力法――結論 
T きょうは、そのアウトラインに従って、間題につい
 ての考えをはっきり書いてもらいます。今まで学習し
 たことを生かして、事実と意見をはっきり書き分けて
 自分の考えをまとめましょう。
 A 書きわける方法を理解する
T それでは、事実と自分の考えを、どのように書き分
 けるといいか考えてみましょう。事実を書くのは、文
 章の組み立てのどの部分になりますか。
C どんな問題かを書くところです。
C 原因・理由にも書けます。
T 書く内容によっては、原因・理由にも事実を書く時
 がありますが、まず、「こんな事実がある、こんな事件
 もある」と問題となる事実を初めに書くのでしたね。
176  
  では、その事実とはどんなことですか、取材メモか
 ら、前の時間に決めた事実を発表しましょう。
C バス停や歩道橋にタバコのすいがらが落ちていたこ
 と。
C 兄弟げんかすると自分だけがしかられること。
C 自転車に乗っていたら、曲がり角で自転車とぶつか
 りそうになったこと。
C そうじ時間に先生にしかられたこと。
  (それぞれの発表を板書する)
T そのような事実は、どうやって集めたのですか。
C 生活の中で困ったことやいやだと思った間題です。
C 困ったりいやだと思ったできごとです。
T 大事なことですね。感じたり思ったりしたことなの
 か、できごとなのか、どちらでしょう。
 (板書の「落ちていたこと」「しかられたこと」「ぶつ
 かりそうになったこと」にサイドラインを引く)
C 落ちていたとか、しかられたとかいうできごとです。
T そうですね。事実というのは、自分が見たり、した
 り、あるいは直接聞いたりしたことなのです。
 掲示  事実……見たこと、したこと。聞いたこと 
T では、感想や意見というのはどのようなものですか。
C 先生にしかられて、くやしいと思ったことです。
C 兄弟げんかをして、あとで後悔したことです。
C 自分でこうしたほうがいいと思ったことです。
C 何でも進んでやるべきだということです。
T そうですね。見たり、したり、聞いたりしたことに
 対して、感じたり、考えたりしたことなのです。

掲示
 感想・意見……亊実に対して感じたり考えたり
        したこと 
T 書き方については、どんな違いがありますか。
C 見たり、聞いたりしたことは、「……でした」とか、
  「……した」と書きます。
C 感想・意見は、「……と思う。」とか「……と感じた。」
 と書きます。
T 感想や意見を書くのは組み立てのどの部分ですか。
177   
C 解決の方法や結論のところ。です。
T そうでしたね。では、ほかの書き方はありませんか。
C 「……はずである」とか「しなければならない」
 とかいう書き方もあります。
 B 間題について感想・意見を書く
T 今、発表してもらったように、事実と感想・意見は
 内容だけでなく、文末のことば遣いにも違いがありま
 す。では、自分の問題について組み立てに従って書い
 てみましょう。
C (各自、自分の問題について書く)
 C 評価し調節する
T (児童の作品をOHP投影)このA君の作品を読ん
 で、事実と意見を区別して書いてあるか調べてみまし
 ょう。
C 掃除の仕方を書いたところに、こうすればきれいに
 なるというように意見が入っています。
C 自分の考えを書くときに、早く掃除するには、役割
 を決めて、自分でやり方を工夫するほうがいいと具体
 的に考えを書いたところがいいと思います。
T みんな、今までのところを読み返して、よく直して
 から、さらに書き続けましょう。    (高木 晃)



   五 文章を修正する授業モデル

 1 題材「ふうせんあげ」    

 (1) 解 説
 第四学年の段階で「一層よい表現に直す」というのは、抽象的な表現を具体化することや、表現しにくいものを例
                                                      178
を作って書くことがあげられる。この技能は、客観的に書く、正確に書く、叙述の仕方について工夫する(五年)へ
と発展する。
 一層よい表現に直す学習は、自分の書いた文章を読み直して、悪いところをみつけ出し、どのように直せばよいか、
よい表現の仕方を理解し、一層よい表現に直すことによって、よい文章を書く力をのばすようにする。そのために、
児童の作品の一つを提示し(プリント)、共同学習で、@よい表現に直す、Aよい表現のしかたを理解する、活動を
し、個人学習で、B各自の作品について、一層よい表現に直す活動をするのが原則である。
 (2) 学習単位
 @ 書いた文章を一層よい表現に修正する過程
 A 教材(児童作文)@ぼくのようす Aふうせんのようす Bぼくのいったこと

   ぼくのふうせん
   @
   ぼくはふうせんをあげる前、今にも手からふうせ
  んがはなれるようで心配だったので、ぼくはふうせ
  んをしっかりにぎっていた。胸がドキドキしていた。
  ぼくは、「早くとばしたいな」といった。
   A
   あいずがあったので、ふうせんを手からはなした
  ら、七色のふうせんが みるみるうちに上がってい
  った。そして、どんどん小さくなっていった。ぼく
  は、まぶしかった。
   B
   ぼくは「ぼくのふうせん、だれに拾われるのかな
  あ」といった。

 (3) 学習目標(行動目標)
 様子や気持ちを表現した文章について、一層よい表現に書き直す方法を理解し、自分の書いた文章の様子や気持ち
が一層よく表現できるように、詳しく書き直したり、比喩を使って書き直したりすることができる。
                                                       179
 (4) 「一層よい表現に直す技能」の学習過程モデル
 @ 文章を読んで、修正しようとする意欲をもつ―提示された作品を読んで、直すところのあることに気づく
 A 修正のしかたを発見する――――――――――どのように直したらよいか、直し方を発見する
 B 修正のしかたを理解する――――――――――直し方についてまとめて、理解する
 C 修正のしかたを適用して直す――――――――自分の作文を読み直して、一層よい表現に直す
 D 結果を評価する――――――――――――――自己評価、相互評価する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 作品を読んで直すところのあることに気づく
T 
読みかえしたら楽しい思い出が 
うかんでくる 

 提 示

 五十周年記念のこども祭りで、いちばん楽しかったの
 は?
C ふうせんあげです。
T A君の作文「ぼくのふうせん」(プリント)を配りま
 す。楽しい思い出がうかんでくるように書けているか、
 直すところはないか読んでみましょう。
C ――チェックしながら読む――
T 直すところはありましたか。
C ふうせんをあげる前の所の文章がごちゃごちゃして
 いる。わかりやすくする方がいい。
C どんどん小さくなって行ったところを、もっとくわ
 しくする方がいい。
 A どのように直したらよいか考える
T ――作品の@の部分を掲示する――ここはわかりや
 すくするのですね。何について書いたのか、作者のA
 君に聞いてみましょう。
C(A) ふうせんをあげる前の、ぼくのようすです。
T A君、カードは?――A君の発言に従って TPの
180  
 色短冊に書きこむ――
 (A) ふうせんが 手から はなれそうで心配だった
    ので、ぼくは、しっかりにぎっていた 
 (B) 胸が ドキドキしていた
 (C) 「早くとばしたいな」といった 
T よくわからないところを直すための、質間や意見を
 いってください。A君は答えてあげましょう。
C 胸がドキドキしていた時、思ったことはありました
 か。
C(A) 胸がドキドキしてたまらないと思いました。
T ああ、なるほど、(B)は、くわしくするように直すの。
 ですね――。TP操作。「いた」を=で消す。「たまら
 ない」を加える――
C (A)は、「心配だったので」を、「心配だった」に直す
 といいと思います。
 
 提示。
 (A)1 ふうせんが 手からはなれそうで 心配だった
 (A)2 ぼくは、ふうせんをしっかりにぎっていた
T どんどん小さくなって行ったところをくわしくする
 のは、この「ふうせんのようす」の文ですね。――作
 品の、Aの部分を提示する――
C 「くだものくらいになった」をつけ加えます。
C 「豆つぶぐちいになった」の方がいいと思います。
C 「ビーズみたいに小さくなった」と私は思います。
C 順々小さくなっていったから、三つとも書き加えた
 ら、よくわかると思います。

 B 直し方についてまとめる
T 前述 を板書し、直し方を確認する
 C 自分の作文を読み返して、一層よい表現に直す
181   
T 自分のようすを書いたところ、ふうせんのようすを
 書いたところを、一層よい表現に直しなさい。
 D 自己評価、相互評価をする
 具体化の例――( )は後から書き加えたもの――
 「あ、はなしちゃった」
(なぜかさびしくなり、おいかけて行きたくなった。)
(空とふうせんを見ていると、うっとりしてきた。)
自分も空にすいこまれそうになった。
                  (真田 定子)



  2 題材「読書感想文」   

 (1) 解 説
 叙述の仕方を工夫するというのは、書いた文章について、@主観的な叙述を客観的な叙述にする。A抽象的な叙述・
観念的な叙述を具体的な叙述にする。B略叙を精叙にする。Cごたごたした叙述を簡潔にする、などのように書き直
す技能である。この技能は、第三学年の、「自分の書いた文章を読み返して、間違いなどを正すこと」の技能、第四
学年の、「間違いを正したり、一層よい表現に書き改めたりすること」の技能へとつながり、第五学年の「自分の書
いた文章を読み返して、叙述の仕方について一層工夫するようにすること」へと発展する。これらは、一応書き終わ
った文章について、表記や叙述を正したり、よりよい叙述をするために必要な技能である。また、この技能は、やが
て、第六学年の「自分の書いた文章を読み返して、一層効果的な叙述の仕方について工夫する技能」へと発展する。
なお、叙述の仕方について工夫する内容は、前にあげた@〜Cのような観点で、児童の文章を分析してみると、児童
の実態にあった適切なものが求められる。
 本時は、第五時間目の学習で、すでに書きあげた感想文について、叙述の仕方を工夫して一層よい文章に書き直す
                                                       182
授業である。
 (2) 学習単位
 @ 書き上げた感想文について叙述を修正する過程
  文章を読み返して叙述を工夫する技能――抽象的・観念的な叙述を具体的な叙述にする
                      叙述のじゅうぶんでないところを補う
 (3) 学習目標(行動目標)
 書いた文章を読み返して、次の点について叙述の仕方を工夫し、読み手にわかるように修正することができる。
 @ 抽象的な叙述を具体的にする。
 A ことばの足りないところを補う。
 (4) 「叙述を修正する技能」の学習過程モデル
 @ 修正の必要性を自覚する
 A 修正の仕方を発見する
 B 修正の仕方を理解する
 C 理解に基づいて修正する
 D 修正の結果を検討し確認する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標を立てる(修正意識を喚起する)
T 皆さんの感想文を全部読んでみましたが、よく書け
ているのに感心しました。けれども、どんなことを言お
うとしているのかわからないところもあります。Aさ
183  
んの感想文を読みますから、どんなところがはっきり
 わからないか、考えながら聞いてください。(児童の
 感想文を朗読する)
C どんなことかわからないところがあった。
C やさしいと言ってもどんなやさしさかわからない。
T そこで、この時間はみんなの感想文をだれが読んで
 もはっきりわかる書き表し方を工夫する勉強をします。 
CD
 感想文が読み手によくわかるようにもっとはっき
 り書く工夫をしよう。 
 A 修正法を発見する(修正の仕方を考える)
T どのように直したらよいか、皆さんの書いた感想文
 を読んで考えてみましょう。

CD
 夜ねむるときに寒いと外に出てまきをもやしてま
 どろむだけだったというところを読んで、光次郎
 は人に対してやさしいと思いました。 
T これを読んで、どこがはっきりしませんか。
C 「やさしい」と言っても、どんなにやさしいのかわ
 からないのでどんなことをやさしいと思ったか、それ
 を書けばいいと思います。
T みんなで工夫して、次のように書き加える。
板書
 なぜかというと、光次郎は登山者がよく眠れるよ
 うにと考えて、一晩じゅう暖めていたのだろうと
 思ったからです。 
T こんなふうに、やさしいことを具体的にはっきり書
 くとよくわかる文になりますね。
(板)
 やさしいことを具体的に書く。 
T 今度はどこをどのように直したらいいでしょう。
CD
光次郎は登山者がかぜを引いたら、自分がガイド
だからかぜをひかせないんだと思ったんだと思う。 
C なにか文が足りなくて、意味がよくわからない。
C 登山者がかぜをひいたら、自分がガイドだからのと
 ころが変だと思います。
T この人はどんなことが言いたかったのか、考えてみ
 ましょう。B君はどんなことを書きたかったのですか。
184  
C 登山者にかぜをひかせたらたいへんだから、かぜを
 ひかせないようにしようと思ったのです。それを書き
 たかったのです。
T B君の考えを考えながら、次のように書き直す。
板書
光次郎はきっと登山者がかぜをひいたらたいへん
だと思ったにちがいない。自分はガイドだから登
山者のI人にでもかぜをひかせたくないと思った
のだろう。 
T 言い足りないところはもっとことばをつけたしてよ
 くわかる文に直します。
(板)
 言い足りないところはことばをつけ足す。 
 B 修正の仕方を理解する
T 書いた文章が読み手によくわかる文の書き直し方の
 二つの方法がわかりましたね。文章を読み返してもっ
 とよく直すにはどんなことに気をつけますか。
C 最初に書いた時の気持ちや様子や考えをもう一度思
 いうかべて、その時のように書き直します。
T 伝記をもう一度読み直したり、アウトラインを見直
 すことも大切ですね。
 C 各自の文章を読み返して書き直す
T 皆さんの文章の直したらいいところにしるしをつけ
 ました。何の線があるか確かめて書き直しましょう。
 青線――具体的に、できるだけくわし書くところ
 緑線――書き足りないところ
C 各自、修正する。
T 机間を回りながら個別に指導する。
 D 修正の結果について評価する
T それでは、Cさんがたいへんよく工夫して書き直し
 ましたからみんなで、直し方を考えてみましょう。
 OHP 投影1 具体的に叙述した例
 OHP 投影2 書き足してわかりやすくした例
  それぞれ修正した箇所について、児童が説明し、そ
 の適否について話し合って、修正法を確認する。
 E 自己修正の結果を確認する
  児童は、各自文章全体を読み返して、修正できたか
 どうかを確かめる。        (石井 郁子)

                                                       185

     六 書いた作文を機能的に処理する方法

 (1) 解 説
 ここでいう処理は、児童の作文に教師が評語を書いたり、朱を入れたり、評点をつけたりして処理することではな
い。作文の学習指導過程の中に位置づけた最後の処理過程の指導法である。どんな作文でも、みんなある目的をもっ
て書くから、書いた作文はそれぞれその目的を果たすような働き、機能をもっている。その働き、機能がじゅうぶん
に果たせるように処理するのが、ここでいう機能的な処理法である。
 (2) 情報を伝える作文の処理法
 情報は、できるだけ正確に客観的に書いて、読み手に反応を迫るという機能をもっている。だから、書いた作文を
読み手に送って、読み手がどんな反応を示すか、その反応を見届けるまでが処理である。つまり、書いた作文につい
て社会的に機能の評価をしてもらい、それを児童に自覚させるまでの指導になる。次は、工作で作った人形を、毋の
日に、毋に送るのに添えてやる「人形の作り方」を書いた作文処理の方法である。
 @ 清書した作文を封筒に入れる
 教師は、この作文を書いた目的、その取り扱い方、評価の仕方をプリントして同封させる。つまり、○人形の作り
方がよくわかったかどうか、○まだくわしく教えてほしいところは何か……などを子どもに分かるように書いてやっ
てほしいこと、また、これを参考にして、家でも人形作りをしてほしいことなどを依頼する。
                                                       186
 A 工作した人形とともに、封筒を持ち帰って母に渡す
 B 「母の返事」をもちより、グループで読み合う
 母の、「作り方がよくわかった」という返事、「こんど、おうちでも作ろうね」という言葉を読むことで、子ども
は作文が役目を果たしたという満足感を味わう。これが次の作文を書く意欲にもつながることになる。
 (3) 記録の処理法
 記録は、事実を正確に客観的に記録して、自分の知識を整理したり、相手に知識を与えたりするという機能をもつ。
従って、「どのくらい知識を与えることができたか」で機能評価することになる。「記録を読んだおかげでよくわかっ
た」という相手の反応が得られるように処理する必要がある。次は、星座の研究記録の処理の例である。
 @ 清書した研究記録をグループで読み合う
 このとき、教師は評価項目を書いたプリントを渡す。○研究記録のテーマがよくわかったか。○内容、方法、結論
など、どんな点でどんな知識が得られたかなどを記入させる。ここで。記録の機能がどの程度果たせたかが、友達の
評価によって自覚できるわけである。これを各自の作文といっしょに綴じて保存する。
 A グループの代表を決める
 どの記録を代表に決めるかを話し合う過程で、「最も目的に合った作文」とはどういうものか、一層鮮明になって
くる。代表に選ばれなかった作文は何が不備であるのかも、客観的に明らかにされてくるわげである。
 B グループ代表の作文を学級全体に発表し、展示する
 他のグループの作文を読むことによって、さらに別の知識が得られることになる。「作文を読んで、どんな知識を
得たか」を互いに発表し合うことで、記録の機能を確認したとき、一連の学習が終わることになる。
                                                       187
 (4) 意見の処理法
 意見は、ある事象に対して、感想意見を述べる文であるから、実生活に生かされるように処理する。つまり、意見
を発表し、それを生かす機会を作ってやる。次は、「能率的な掃除への改善」という、意見の処理過程である。
 @ 清書した意見を読み合い、その意見に対する反応を書く
 グループ内で意見を読み、共鳴する点、補足する点、反論、よくわからない点……などを書いて本人に渡
す。本人はそれについてさらに説明すべき点は書き足す。
 A グループごとに、生かせる意見、対応策をまとめて大きなカードに書き出す
 B 学級会でカードを出し合い、採用できる対応策を検討する
 自分の意見に共鳴する友達が多いとき、子どもは満足する。さらに全体討議にかけて対応策として採用され、掃除
の効率化がはかられたとき、意見文は機能を果たしたことになるわけである。また、間題にされなかった場合、意見
のもち方、書き方の不備を自己評価することになる。
 (5) 自己表現の作文の処理法
 自己表現の作文は、自分に向けて書く作文である。己れの考えを伸ばす、自己形成の機能をもっている。すなわち、
書いた作文を自分で読んで、「自分の気持ちが表れているか」、「考えが深まったか」、「ものをよく見ることができる
ようになったか」を見ること自体が処理といえる。書くたびに自分の伸びが自覚できていくような処理方法を考える
ことが大切である。次は、「近ごろのできごと」についての生活感情を書いた作文の処理過程である。
 @ 修正した作文を自分で読み返す
 このとき、教師は読む観点を与える。自分の気持ちが表れているかどうか。自分の考えが深まったかどうか。
                                                       188
ものをよく見つめているかどうか。……という観点である。それぞれ記号を決めておき、その表れの箇所に記入す
るとともに、末尾に上記を総合した自己批評を書かせる。
 A 個人文集に綴じる
 日付を書き、個人文集に綴じこむ。このとき、友だちの文集と交換したりして意見を述べあうこともよい。
 B 後に書いたものと比べてみる
 この後に自己表現の作文を書いたとき、新たに読み比べてみる。すると、自分の考えの深まり具合が自覚されるし、
前に気付かなかった不備が客観的に見えてくる。こうして、作文を書くことが、自分の考えを伸ばすことになること
を自覚したとき、自己表現の作文はその機能を果たしたということになる。           (二村 陽子)
                                                       189


  第Y章 関連学習の授業モデル


     一 関連学習の指導過程モデル

  1 関連学習の基本的な考え方

 新学習指導要領では「第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」で次のように述べられている。
 「各学年の内容のA及びBについては、適切な話題や題材を選定し、A及びBに示す事項が関連的に指導されるよ
うに考慮するとともに、表現力と理解力とが偏りなく養われるようにすること」
 この提言が契機となっで、今日、国語科学習指導法の研究では「関連学習」が大きく脚光をあびて取り上げられて
いる。しかし、関連的指導の原則は示されたものの、A(表現)とB(理解)の間にはどんな関連のしかたがあるのか、
また、どのように指導したらよいのかは、すべで現場の実践に任されている。そのために、物語を読んで登場人物に
手紙を書く、説明文を読んで感想文をまとめる、文章構成を理解し、それを適用して身辺から取材した説明の文章を
書くなど、多様な実践が関連学習の名でまかり通っているのが現状である。
                                                       190
 学習指導要領に示された関連学習では、「適切な話題や題材を選定し」、その話題や題材について聞いたり読んだり
して、理解の側面から言語能力を育てる。また、同じ話題や題材について理解したことを素材に、話したり書いたり
して、表現の側面からも言語能力を育てる。このようにして、理解と表現の両面から、相互補充的に言語能力を育て
て、いっそう効率のよい学習ができるようにすることをねらっている。したがって、単に話題や題材の関連、活動だ
けの関連では関連学習のねらいを達成することはできない。指導要領の提言の意義を生かすためには、どのような表
現技能と理解技能を、どのように関連させて学習していくか、また、それらの表現・理解の技能の学習と関連させて、
どんな言語事項を学習するかも併せておさえておくことが必要である。

 2 関連学習の指導過程モデル編成の方法

 では、実際に関連学習を展開していくにはどのようにしたらよいであろうか。ここでは学習指導要領の「聞いたり
読んだりして理解した事柄から素材を求めて書くこと」を中心にその具体的な方法を述べる。
 (1) 関連して育てる技能を明確にする
 「聞いたり読んだりして理解した事柄から素材を求めて書くこと」といっても、抽象的で関連して育てる技能が明
確でない。そこで学年の発達を考え、具体的に次のようにおさえる。
 O文章の概略を読んで理解する技能と関連させて、理解した概略を書く技能を育てる。(一年)
 O要点を押さえて理解する技能と関連させて、要点を押さえて書く技能を育てる。(三年)
 O要旨や主題を読んで理解する技能と関連させて、主題や要旨を書く技能を育てる。(五年)
 O文の中における主語と述語の関係、修飾と被修飾の関係をはっきりさせて読む技能と関連させて、文の中におけ
                                                      191
  る主語と述語の関係、修飾と被修飾の関係をはっきりさせて書く技能を育てる。(三年)等
 これらは、読解と作文の技能、言語事項の関連の例であるが、聴解と作文について同様に学年の発達に応じておさ
えることが必要である。
 (2) 関連して技能を伸ばす学習活動を決める
 関連して育てる技能を明らかにしたら、その技能が働く学習活動を決定する。例えば、
 O概略の技能――文章全体を読んで概略を理解する学習活動をした後、理解した概略を書く学習活動をする。
 O要点の技能――文章を段落ごとに読んで、要点を理解する学習活動をした後、理解した段落の内容をもとに要点
  の明確な文章を書く学習活動をする。
 O要旨や主題の技能――文章全体を読んで要旨や主題を理解する。次に、理解した内容を素材として発想転換した
  上で、要旨や主題の明確な文章を書く学習活動をする。
 O主語・述語の照応、修飾・被修飾の言語事項――文章を読んで、主語・述語の照応、修飾・被修飾の関係を理解
  する。次に、理解した内容を再構成して書く中で、主語・述語の照応した文、修飾・被修飾の関係の明確な文の
  書き方を学習する。
 (3) 学習活動を、単元の学習過程の中に位置づける
 学習活動の位置づけ方には、読解学習の各過程に組み込む場合と、読解学習が終わったあとに設定する場合の二通
りがある。概略の技能、要旨や主題の技能は、全文を読む過程で学習し、要点の技能は、分析的に段落ごとに読む過
程で学習する。また、主語、述語の照応、修飾、被修飾の関係は、分析的な読みの過程と、読解学習が終わったあと、
文章を読んで理解した内容を再構成して書く過程で学習する、などのように位置づける。
                                                       192
 このようにして「聞いたり読んだりして理解した事柄から素材を求めて書くこと」について どんな技能や言語事
項を、どのように関連させて学習するかが明らかになると、次のモデルに従って学習指導過程を編成する。

  3 関連学習の指導過程モデル

 関連学習の指導過程には、作文を中心にしてねらいに応じて読解を関連させる場合と、読解を中心にしてねらいに
応じて作文を関連させる場合があるが、それぞれ次のように編成する。
 (1) 表現を中心にして理解を関連させる学習指導過程モデル
 @ 目的過程――書くために読んで、調べたことを書くなどの学習目標を設定する。
 A 計画・方法過程――目的を達成するための作文・読解の計画と方法を決める。
 B 学習過程
  ア 表現事項を収集するために読む。――概略、要点と細部などを読みとり、収集カードに書く。段落の構成や
   叙述の仕方等について具体的に理解する。
  イ 収集した事柄を選択し、組織してアウトラインを作る。――収集した内容を段落の構成法を基にまとめる。
   文章の構成法を適用して前書き・中心・後書き、または、話題・説明・まとめ等、文章の目的にあったアウト
   ラインを作る。
  ウ 叙述する――理解した漢字や語句、文章表現法を使い、アウトラインに従って書く。
  エ 書いた文章を修正する――文章の内容や、表現、記述の適否を検討し、修正する。
 C 評価・処理過程――作文の目的に沿って評価し、処理する。
                                                       193
 (2) 理解を中心にして表現を関連させる学習指導過程モデル
 @ 目的過程――読みの意図や課題を明らかにして目的をもつ。
 A 計画・方法過程――読解と作文の関連した学習計画と方法を決め、見通しをたてる。
 B 学習過程
  ア 直観過程――全文を直観的に読んで概略・あらすじ等を理解する。理解した概略・あらすじ等を書く。
  イ 分析過程――分析的に段落・場面を読んで内容を理解し、理解した内容を組み立て直したり要約したり、ふ
   えんしたりして書く。
  ウ 体制過程――全文を体制的に読んで内容を理解する。理解した内容を自分の発想で構造変換して書いたり、
   主人公の行動、生き方、考えに対して感想を書いたりする。
 C 評価・調節過程――各過程ごとに観点、基準に照らして評価・調節する。
 D 獲得過程――学習結果を確認しまとめる。朗読したり作文を読み合ったりする。
 以上が単元と一時間の学習指導過程のモデルである。表現を中心にする一時間の学習指導過程では、@・Aの過程
を踏んでBの各過程ごとに評価・調節の過程を設定し、学習目標への確実な達成を図るよう配慮する。理解を中心に
する一時間の学習指導過程においても、@・Aの過程を踏んで、Bの各学習過程にそれぞれ評価・調節過程を設定し
Dの過程につなげていけばよい。                               (岸 源三)
                                                       194
     二 関連学習の授業モデル


  1 教材「自然を守る」   

 (1) 解 説
 読みとったことの概略を書くことは、理解学習の側からいえば、直観的にとらえた要旨に即して、文章のあらまし
をまとめて構造的に理解することである。また、一方、文章表現させていく過程で、直観的に要約する技能を育てる
ことでもある。読みとったことの概略を書く学習は、知識、情報の文章を読みとることを通して行うことが効果的で
ある。
 第一時には、教材全体を読んで、@筆者の問題のとらえ方、A読んで納得したこと、の二つを確認し、「自然を守
る」とは、どんな話題について、筆者のどんな考え方を書いた文章かをつかむ。第二時は、文章全体を読んで直観的
に概略を理解し、理解したことと、書くことを通して、要約力を伸ばす学習である。
 この学習のあと、段落ごとに分析的に読ませ、要点と細部との関係を理解させれば、内容の理解をいっそう深める
ことができる。
 (2) 学習単位
 教材「自然を守る」(光村六年上)――全文――
  (文章の構成)
                                                       195
 この文章は、三つの章に分けられる。第一章は、「自然と人間生活との関係」について述べ、自然の利用、改造の
あり方についての問題提示をしている。第二章は、「自然のすがた」を、生物と環境との関係や生活相互の関係を示
す具体例、および、それらの関係のつり合いが破れた場合に起こるさまざまな出来事を、実例によって説明している。
 第三章は、第二章の具体例に基づいて、「自然を守る」ことの意義について、結論的に筆者の考えを述べている。
 (3) 学習目標(行動目標)
  「自然を守る」を読んで、直観的に理解した内容をもとに、次の事項を含めて、概略を二百字ぐらいに学習シート
に書くことができる。
 @ 人間にとって、自然は、限りない資源の宝庫なのだ。
 A 人間は、いろいろな方法で自然に手を加えている。
 B さまざまな種類の生物たちが、それぞれの環境に応じて生きている。
 C 人間も地球上の生物の一員として、自然にたよらなければ、決して生き続けることはできない。
 D 人間が末永く栄えていくためには、手当たりしだいに自然をこわし、自然をむしばんではならない。
 (4) 「読みとったことの概略を書く技能」の学習過程モデル
 @ 概略を書く必要性を自覚する――読みの方向をは握する
 A 概略の書き方を理解する――――各章の要点をおさえてまとめる
 B 概略を書く――――――――――要旨をおさえて書く
 C 概略を確認する――――――――概略を発表し内容を評価する
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際
                                                       196

 @ 概略を書く必要性を自覚する
T あらましを書いておくとなぜよいのでしょう。
C この文章は長いので、筆者がどんな考えで、文章を
 書いているか、まとめておくと便利です。
C 三つの章からできているので、どんな事柄が書いて
 あるか、まとめておくと都合がいいです。
  (この発言に同感の児童多数)
T では、筆者は、それぞれの章で、どんな問題につい
 て述べでいるか考えて、学習シートに書いてください。
 A 概略の書き方を理解する
T 第一章では、どんな考えを述べていますか。
C 人間にとって、自然は、限りない資源の宝庫なのだ。
C 人間は、いろいろな方法で自然に手を加えている。
C 自然を改造する知恵と力を人間は備えている。
T 第一章は、全文から考えて、どんな役割をしていま
 すか。
C 疑問を投げかけている。
C 間題を提起している。
 (児童の発言を整理して板書し、あとで概略を書かせ
 る柱とする)
T 第二章の書き方は、第一章と比べて、どんなところ
 が違いますか。第二章を読んで考えてみなさい。
  (読みとった内容を学習シートに書かせる)
C 森という環境について説明している。
C 実際にあった事柄について……。
C 目先きの利益だけにとらわれていると、自然から思
 わぬしっぺ返しを食うこともあるということを事実を
 あげて説明している。
 (第三章も同様の指示に従って、学習シートへ書かせ
 ていく)
 B 概略を書く
T それでは、今までの学習でまとめた「筆者の考え」
 を中心にして、つなぎ合わせて、二百宇ぐらいにまと
 めて、学習シートに書いてみよう。
 (児童は、各章の要旨を組み合わせ、適切な接続語を
 使用して、概略文を書く)
197   
T それでは、発表してください。
 (二、三名の児童に発表させ、ひとまとまりの文章に
 なっているかを視点にして評価する)
C 概略の文章を確認する
T では、今の発表を聞いていて、どんなことに気づき
 ましたか。
C それぞれの章でまとめた筆者の考えを落とさずに、
 正しく書いています。
C 章ごとに、つなぎのことばを使って、正確に文章を
 書いています。
T そのとおりですね。それでは、それぞれの章でまと
 めた事柄が、あらましの文章に落とさず書けているか
 を頭において、自分の文章を見直してみましょう。
 (各自、自己修正の作業をする)
   学習シート ―六年「自然を守る」―
 一 この文章を読んで、同感したことを書きなさい。
 二 筆者の考えを各章ごとにまとめなさい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
                    (石黒 勝)


  2 教材「植物も動く」   

 (1) 解 説
 三年の「読んで理解した内容から素材を見つけて書く技能」は、四年の「理解した内容の中から書く必要のある事
柄を選んで再構成して書く技能」へと発展する。ここでは「植物も動く」を読んで理解した内容を選んで組み立てて
書く指導をした。
 その際、読解の際に主として指導した「段落の要点を押さえ要点と細部との関係を理解する技能」と関連づけて
「大事なことを落とさずに書く技能」「書く必要のある事柄を整理し、区切りをつけて書く技能」とを関連的に指導
した。また、「理解した語句、使い方を理解した接続語や指示語を使って書くこと」もあわせて指導した。
                                                       198
 これまでに、読んで理解した内容を学習シートに書き、そこから書く内容を選んで組み立てた次のようなアウトラ
インを作った。

     学 習 シ ー ト(読 解)
 〔読む課題〕
  一 どんな植物が動くのでしょう。
  二 なぜ動くのでしょう。
植物の名  どんな作り  どこがどんなふうに  動くわけ 
       

  

 なお、アウトラインは、この学習シートを切り取って四枚のカードとし、台紙にはって作らせた。
 本時は、このアウトラインに従って、読んで理解した内容がわかるように組み立てて叙述する指導である。
 (2) 学習単位
 教材「植物も動く」(教出三上)は、四種類の植物「おじぎそう」「ねむのき」「クローバー」「たんぽぽ」について、
その作り、動く部分、動く理由・動機などについて説明した文章である。次に「ねむのき」について説明した部分を
あげてみる。
 ……おじぎそうと同じように、光や温度がかわるにつれて、葉をとじたり開いたりする木があります。それは「ね
むのき」です。ねむのきの葉、小さな葉がたくさんならんで、鳥のはねのような形をしています。夜になると、
小さな葉の一つ一つをとじて、たれ下がります。そのようすが、まるでねむっているように見えるので、ねむのき
                                                       199
という名まえがついたともいわれています。……
 (3) 学習目標(行動目標)
 アウトラインをもとにして、どのような植物がなぜ動くのかがわかるように文章を組み立てて書くことができる。
 (4) 「読んで理解した内容を組み立てて書く技能」の学習過程モデル
 @ 理解した内容を組み立てて書こうとする意識をもつ(表現意識)
 A 理解した内容を組み立てて書く書き方に気づく  (表現法発見)
 B 理解した内容を組み立てて書く書き方を理解する (表現法理解)
 C 理解した内容を組み立てて書く表現法に従って書く(表現法適用)
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 学習目標と方法を確認する(表現意識をもつ)
T きょうは、今まで調べ読みしてわかったこと「どの
 ような植物が、なぜ動くのか」を作文に書いていきま
 しょう。アウトラインをもとにして、よくわかるよう
 に書いてください。
 板書  調べてわかったことをよくわかるように書く。
 A 書き表し方を検討する(表現法発見)
T 作文を書く前にカードにまとめたことが、そのまま
 でも文になるかどうか考えてみてください。
OHP
 クローバー
 三まいの葉
 葉がとじたり開いたり
 光や温度がかわるから 
T これを文に直すには、どうしたらいいでしょう。
1 まず最初にクローバーの説明をします。クローバー
 には三枚の葉があります。葉がとじたり、開いたりし
 ます。そのわけは、光や温度がかわるからです。
2 次はクローバーの説明です。クローバーには、葉が
200  
 三枚あって…(途中で詰まる)葉がとじたり、開いた
 りします。そのわけは、光や温度がかわるからです。
 ほかにも夜やどんよりとくもっている日などです。
3 クローバーは葉が三枚あって、葉がとじたり、開い
 たりします。そのわけは、光や温度がかわるからです。
 B 書き表し方を理解する(表現法理解)
T (C3の発表した文章をOHPで投影)文の終わり方
 は、どうなっていますか。(文末にサイドラインを引
 きながら)ていねいな言い方になっていますね。
 このように文の終わりは、ていねいな言い方にしま
 しょう。また、続ける言葉が出てきませんでしたが、
 作文を書く時は文の続け方を考えて書きましょう。
  では、今のようにしてアウトラインを見ながら、書
 いていきましょう。
 C 理解した内容を組み立てて書く表現法に従って文
  章を書く(表現法適用)
C 作文を書く。
T 机間巡視して、個別指導する。
 D 書いた文章を評価・調節する
T (児童の作文をOHPで投影)それでは、読んでみ
 ましょう。その時、調べてわかったことがよくわかる
 ように書いてあるか考えてください。
T おじぎそうの動くわけが書いてありますか。
C はい。(その部分を読む)
  以下ねむのき、クローバー、たんぽぽの動くわけが
 書いてあるところを調べ、読む。
T (他の児童の作文もOHPで投影)こんどは、作り
 のところを調べてみましょう。書いてありますか。
C はい。(作りの部分を読む)
 以下同様にして調べ、読む。
T たんぽぽはどうでしょう。
C ありません。
T たんぽぽの作りについては、本に書いてないので、
 書かなくてもよいでしょう。
  (次時の予告をして終わる)
 (6) 児童の作品
201   
   動く植物について        大橋 仲恵
 私はどのような植物がなぜ動くのかということを、本
で調べてみると、四つの動く植物のことが分かりました。
これからその動く植物四つについて書きます。
 動く植物のことを、動く部分で分けて書き始めること
にすると、葉の部分が動く植物から書きます。初めは、
ねむのきです。ねむのきの葉は、小さな葉がたくさんな
らんでいて鳥のはねのような形をしています。この葉が
一つ一つとじてたれ下がったり、また開いたりします。
なぜこのような動きをするかというと、光や温度がかわ
るからなのです。だから、夜葉をとじてたれ下がり、朝
になると開くのです。
 次に、クローバーのことを書きます。クローバーの葉
は三まいあります。そしてこの葉がとじたり開いたりし
ます。この葉がとじる時は夜とどんよりくもった日で、
開いている時は晴れている日や昼間です。つまり、クロ
ーバーの葉がとじたり開いたりするのは、光や温度がか
わるからなのです。
 それからおじぎそうについてです。おじぎそうの一つ
のえに四まいついている葉は、鳥のはねのように左右に
向き合っている小さな葉が集まって出来ています。この
葉の動き方は、葉がとじたり開いたりします。でも強く
さわると葉全体をとじてえのつけねからたれ下がって、
ちょっとさわるとじゅんじゅんに葉をとじていきます。
おじぎそうがこのように動くわけは、二つあります。一
つは人々がさわるからで、もう一つは光や温度が変わる
からです。
 今度は、動く部分が、花の植物です。たんぽぽは、花
がとじたり開いたりします。たんぽぽがとじるのは雨の
日や夜で、開くのは朝です。つまりたんぽぽは、光や温
度が変わるから動くのです。
 私は読む前植物は動かないと思っていたけど、調べて
みて植物は動くということがわかりました。ねむのきや
おじぎそうを私が見ることは少ないけど、たんぽぽやク
ローバーを私はよく見かけるので、たんぽぽやクローバ
ーを見るのが楽しくなりました。   (堀口 由美)

                                                       202


  3 教材「外来語について」    
 (1) 解 説
 構造変換というのは聞いたり読んだりして理解した内容を、自分の発想によって再構成することである。つまり新
しい文章の構造を作ることであるから創造的思考力を伸ばすいい方法だと考えられている。構造変換の指導をするに
は、文章の内容を正確に詳しく理解するだけでなく、その内容が、どんな考えで、どのように構成されているかを明
確に知らなければならない。それがじゅうぶんに理解されると、そこから発想の転換も容易に行われ、新しい文章構
成を創造することができる。したがって、五・六年の高学年で指導することが望ましい。
 本時は第七時の学習で「外来語について」理解した内容を自分の発想に従って文章を再構成する授業である。
 (2) 学習単位
 教材「外来語について」(教出六年下)――全文の構造過程を示す――
 @ 日本語には、和語・漢語・外来語があり、外来語がふえている
  (ア) 外来語は西洋から入ってきて日本語になりきったことば
  (イ) 漢語は中国から入ってきて日本語になりきっだことば
  (ウ) 和語は日本本来のことば
  (エ) 明治以後に外来語が七倍にもふえた
 A 外来語によって日本語が豊かになった
                                                       203
  (オ) 同じことがらを表す和語・漢語・外来語の例
  (カ) 投手→ピッチャー打者→バッターの例の説明
  (キ) 宿屋→旅館→ホテルの例の説明
  (ク) 昼飯→昼食→ランチの例の説明
  (ケ) ひま→余暇→レジャーの例の説明
  (コ) 外来語によって意味をいっそう細かく分けて表せるようになった
 A 外国語の表すことがらや考え方を取り入れる時の解決法はいろいろある
  (サ) 外国語の表すことがらや考え方を取り入れる時の解決法にはいろいろある
  (シ) 同じ意味を表すことばがある時意味を広げて使う
  (ス) 新しい訳語を作り出す
  (セ) 原語をそのまま使う
  (ソ) 和製英語について
  (タ) 和製漢語について
 C 外来語受け入れの歴史は文化の受け入れの歴史である
  (チ) 日本の文化が低かったから十六世紀以後二万五千語も外来語が入った
  (ツ) 近世初期に入ってきたスペイン語、ポルトガル語の例と分野
  (テ) 鎖国以後に入ってきたオランダ語の例と分野
  (ト) 明治以後に入ってきた英語、ドイツ語.フランス語、イタリア語の例とその分野
                                                       204
  (ナ) 外来語受け入れの歴史は、そのまま文化の受け入れの歴史である
 (3) 学習目標(行動目標)
 「外来語について」の要旨と要点、段落相互の関係などを考えて読みとった内容を整理し、自分の論理で構造変換
して文章を書くことができる。
 (4) 「理解した内容を構造変換して書く技能」の学習過程モデル
 @ 構造変換して書く必要性を自覚する
 A 構造変換の論理を発見する(全文を読んで直観的にまとめの論理をみつける)
 B 構造変換して文章を構成する
 C 変換した構造に従って文章を書く
 (5) 学習指導過程――学習指導の実際

 @ 目的をもつ
T 「外来語について」わかった内容をわかりやすく組
 み立てて文章を書きましょう。
 A 組み立て方を考える(構成法を考える)
T 話し合ってまとめる順序を決めましょう。
C 全文を読んで自分にいちばんわかりいいまとめ方を
 みつけます。
C まとめることがらを選んで書き出します。
C 自分の見つけたまとめ方に従ってまとめます。
 B 自分のまとめ方を考える(発想転換をする)
T 外来語が入ってきたこと、どう受け入れたか、外来
 語と文化の受け入れとの関係などをよく考えて読むと
 まとめ方がわかってきます。
 (全文を黙読し各自能力に応じてまとめの論理を発見
 する)
T どんなまとめをするか、いい考えがありましたか。
205   
C 和語、漢語、外来語に分けてまとめます。
C 外来語をどのように受け入れたかまとめます。
C 外来語の受け入れと文化の受け入れについてまとめ
 ます。
C 外来語によって日本語が豊かになったことについて
 まとめます。
C 外来語の働きについてまとめます。
T どんな形にまとめますか。
C 一目でわかるように表にします。
C  で囲ったり、線で結んだりして表にします。
 C 自分の発想に従って文章を組み立てる
T それでは文章をみながらわかったことを組み立てて
 みましょう。自分のまとめ方に必要なものだけ選んで
 組み立ててみましょう。
  (各自読みとった内容を組み立てる)
T できあがったら、次のことがきちんとできているか
 考えてもう一度調べてみましょう。(自己評価)
  O大事なことはもれていないか
  O自分の発想でまとめられたか
  O組み立て方はこれでいいか
 D 変換した構造に従って文章を書く
T Fさんは次のような構造変換をした表を作りました。
 よく見てください。
外来語の働き
 ┌―外来語とは―中国以外の国から入ってきたことば
 ├―外国語の受 ┌同じ意味があれば広げて使う
 | け入方―――┼訳語を新しく作る(和製漢語)
 |       └原語をそのまま使う―外来語
 |_外来語を受け_┌―日本語が豊かになった
   入れた利点  └―それぞれの分野の文化が入っ
            てきた
T これだけですぐ作文が書けるでしょうか。
C 例が入っていないから例を下に書いていった方がい
 いと思います。
C 初めに書き出し文をつけ、終わりにまとめの文をつ
 けた方がいいと思います。
T では、それぞれの作った組み立てをもう一度読んで、
 例の入っていない人は例をつけ、書き出し文とまとめ
206  
 の文はみんながつけましょう。
 (各自例をつけたり、書き出し文とまとめの文をつけ
 たりする)
T では、もう一度組み立てを読んでから、作文を書き
 だしましょう。途中でも表を見ながら自分の考えが、
 はっきりわかるように書いてください。
 (6) 児童作品
   外来語の働き            F 児
 外来語とは中国以外の国から入ってきて日本語になり
きった西洋のことばです。
 ふつう外国語が入ってきた時それと同じ意味のことば
があれば訳して使います。例えば「グリーン」を「緑」
と訳すようにです。しかし、同じ意味がない時には漢語
を組み合わせて新しい訳語を作ります。「演説」「委員」
などがその例です。
 訳語を作れない時は原語をそのまま使います。その原
語で長い年月に日本語になりきったものが外来語です。
例えば「パン」「タバコ」「ノート」などがそうです。
 日本語の中に外来語がどんどん入ってくるようになる
と、二つの利点がでてきました。
 一つは日本語が豊かになったことです。例えば宿屋は
和語で旅館は漢語でホテルは外来語です、同じように宿
泊する所を表すことばですが、宿屋というと和風の木造
の建物を想像しますし、ホテルというと洋風の鉄筋の建
物を想像します、旅館はその中間の感じです。このよう
に外来語が入ったり、漢語で表したりすることによって
日本語が豊かになったといえるのだと思います。
 二つめは外来語が入ってくる時、それぞれの分野の文
化が日本に入ってきたということです。日本が西洋の国
々と初めて接したのは近世初期です。主にポルトガルと
スペインの人がキリスト教を伝え、西洋の品物を持って
きました。そのため、「キリシタン」「メリヤス」などの
ことばは今でも使われています。鎖国以後はオランダが
貿易を独占していましたので、オランダ語である「ガラ
ス」「メス」などの工業製品名、医学用語が今でも使わ
れています。そして明治以後、英語はあらゆる分野でいち
207   
ばん多く使われています。ドイツ語は医学用語、スキー
用語に使われでいますし、フランス語は芸術、料理など
の面で使われています。またイタリア語は音楽用語に使
われています。このことは、日本がその分野でそれぞれ
の国に学んだことを示しています。
 このように外来語は日本語になりきって、日本語を豊
かにし、日本の文化を高める働きをしてきたのです。
                 (鈴木 美智子)

                                                       208
  第Z章 シミュレーションの指導モデル


     一 シミュレーションの指導過程モデル

 シミュレーション(simulation)というのは、模擬学習である。いわゆる「ごっこ遊び」「ごっこ学習」を科学化
し、工学化した新しい国語科学習法である。従来、基礎的技能、基本的技能の学習は、機能的方法、練習的方法の二
つを一体的に組織して行われてきた。しかし、機能的方法は大へん複雑な学習行動なので、学習の焦点がぼけてしま
うおそれがある。また、出たとこ学習であるから段階的・系統的学習を計画することがむずかしい。そこで複雑な学
習行動の中から学習の要素と学習の過程を抽出して組織し、単純化・科学化し、学習目標・内容・方法を明確にする
のがシミュレーションである。この方法は、学習のモデル化が容易であり、学習の生産性を高める新しい学習法であ
る。このシミュレーションには、シミュレーションプログラムにより自己学習をする方法と、モデル教材により教師
がモデル過程をふんで指導していく二つの方法がある。

  1 文法学習のシミュレーションモデル
                                                      209
 読解学習の過程で行う文法学習を分析してみると、
 @ 内容を理解するために文章を読む。
 A その内容を理解する過程で、いろいろな文法事実に出会う。
 B その文法事実を支えている法則性(文法)に気づく。
 C 法則性を文法感覚として具体的に身につける。
という過程をたどって文法学習は行われる。この過程を要素的に分析してみると次のようになる。
 @文法事実を経験する。A文法事実を支えている法則性を発見する。B法則性を文法として意識化する。
 シミュレーションモデルは、この三つのシステム要素を含めて編成する。次に、接続語の指導を例にシミュレーシ
ョンの指導過程モデルをあげる。
 (1) 接続語を含む文を読む(文法事実を経験する)
   (例)Oテレビを見た。それから、本を読んだ。O友だちを迎えに行った。けれども、友だちはいなかった。
 (2) 接続語を含む文の共通点に気づく(文法事実の共通点に気づく)
   (例)文と文の間にことばがあって、文と文を続けている。「それから」と「けれども」
 (3) 接続語――文と文とを続けることばのはたらきに気付く(接続語の機能に気付く)
   (例)「続けることば」は、どれも前の文を受けてあとの文を続ける働きをする。その続け方は語によって異
      なる。
 (4) 接続語の法則性(文法)に気づく(法則性を意識化する)
   (例)「それから」は、前の文を受けてあとの文に順に続ける。「けれども」は、前の文の意味を受けてあとの文
                                                       210
   に逆に続ける働きをする。これらを「続けることば」「接続語」などとよぶ。
 (5) 接続語の法則性(文法)を、感覚的に記憶する(文法感覚を育てる)
   (例)「続けることば」の「働き」と「続け方」に対する感覚(文型感覚・文法感覚)を育てる。接統語のある
   文を読むこと、また、接続語を含む話を話すことを通して。
 (6) 接続語の法則性(文法)を言語行動に適用する(文法感覚を働かせる)
   (例)接統語を使って文と文とを続けて書いたり、話したりする。
 以上の過程をたどって学習すると、接続語の働き、文型感覚・文法感覚が確実に能率的に身についていく。

  2 語句理解のシミュレーションモデル

 文章を読む中で、語句の意味をどのような過程をたどって理解されるかを考えてみると、次のようになる。
 @文の中で語句を読む。A文脈の中で意味を考える。B文脈の中での意味の決め方を知る。C文脈の中で意味を決
める法則を理解する。D意味を決める法則によって語句を理解する。
 このように、語句の意味を限定する文脈には、定義型文脈、抽象型文脈、限定文脈、社会的文脈などがある。次に
 「び生物」という語を定義型文脈の中で理解させるモデル過程をあげてみる。
 (1) 定義型文脈の中で語句を読む(意味のわからないことばに出あう。経験をする)
  (例)「わたしたちのまわりには、目に見えないような小さな生物がたくさんいます。この小さな生物のことを
   び生物といいます。」という文章を読む。
 (2) 定義型文脈の中で語句の意味を考える(意味のわからないことばを推定する)
                                                       211
  (例)さきの例文から「び生物」とは、「小さな生物」「目に見えないような小さな生物」というように推定する。
   二つの意味が推定されたので(児童達で評価・調節をする。「小さな生物」というだけでは、目に見えるか、
   見えないか、はっきりわからないから適切でないという意見が出る。
 (3) 定義型文脈の中で語句を理解する方法を考える(どこに注意して読めばよいか、手がかりを考える)
  (例)目に見えないような小さな生物の文を手がかりにし、意味を再度考える。そして最後に、「び生物」とは、
   目に見えないような小さな生物であることを確認する。
 (4) 定義型文脈における意味限定の法則を発見する(意味を考える手だてを抽象化し、法則化する)
  (例)「び生物」という語句を理解するためには、わからないことばの前の文を読めばわかることに気づく。
   「○○を△△という」の○○に注意するというように、定義型文脈での意味を推定する方法をまとめる。
 (5) 法則の適用学習をする(他の定義型文脈の中で意味を決める法則によって語句を理解する)
  (例)物をすてるのように、日本全国どこにでも適用することばを、共通語といいます。
 上の文を読んで、共通語のことばの意味を法則にしたがって、日本全国どこにでも適用することばと理解する。
このような学習を積んでいくと、辞書に頼らず自分で語句を理解していく方法が身についていく。 (藤倉文子)
                                                       212
     二 シミュレーションの指導モデル

  一 学習基本文型のシミュレーション指導

 (1) 解説
 シミュレーションによって、学習基本文型を指導する。ふだんの作文学習の中では、主述の照応した文を書かせる
ことがなかなか出来ない。そこで、それだけをとりあげて指導する必要がある。特に入門期の作文指導では、このよ
うな基礎的な指導を計画的に行うことがたいせつである。
 (2) 教 材

 教材(一) 「ぶんのかたち」
 1 よい文には○、わるい文には×をつけましょう。
 ( )┌―ぶらんこがありました。
 ( )└―ぶらんこにありました。
 ( )┌―ぼくは おにごっこでしました。
 ( )└―あきらくんが おにになりました。
 ( )┌―めいしゃさんが めのけんさをしました。
 ( )└―いぬに わんわんと ほえました。
   2  の中に入れて よい文にしましょう。
 (1) はいしやさん はのけんさ うしました。
 (2) ぼく こうえん おにごっこをしました。
      教材(二) (一)えをみて文をかきましょう。

 (1) だれはなにをしましたか。( )
 (2) どこでしましたか。   ( )
 (3) だれはどこでなにをしましたか。
                ( )
213  
 (1) だれはなにをしましたか。( )
 (2) だれとしましたか。   ( )
 (3) だれはだれとなにをしましたか。
                ( )
 
 教材(三) じぶんのしたことをえをみてかきましょう。
 
生活経験の絵  
  

 (3) 学習目標
 主語と述語の照応した学習基本文型で話したり書いたりすることができる。
 (4) 「学習基本文型の学習過程モデル」
 @ 文型感覚を確かめる ――よい文と悪い文の区別をする(評価する)
 A 文型意識を確かにする ――助詞を補う(法則性に気づく)
 B 新しい文型(1)を構成する ――「だれは、どこで、なにをしました」………新しい文型感覚
 C 新しい文型(2)を構成する ――「だれは、だれと、なにをしました」………新しい文型感覚
 D 新しい文型を使って短い文を書く――文型の適用
 (5) シミュレーション指導過程――シミュレーション指導の実際

 @ 本時の学習の目的を知らせる
T クイズを出します。「水をかけてきました。」
C だれが、何にかけたのですか。
T わたしは、アサガオに水をかけてきました。
T これでお話がよくわかったでしょう。きょうは、お
 話がよくわかるような文を書く勉強をします。
 (板書) おはなしが、よく わかる文をかく 
 A 教材(一)を使って、主語と述語の照応している文と
  照応していない文を話し合いにより選び出す
T (一)の問題を読んでみましょう。ぶらんこの文に○と
214   
 ×をつけましょう。
T どちらがよい文でしょうか。
C 右側です。
  (よい文を全員で読む。以下二問を学習する)
T 次は二番にいきます。 の中にいれて、よい文にし
 てください。
  ( の中に入れて読み返す)
T 答えあわせをしましょう。(評価・調節)
 A 教材(二)を使って基本文型の組み立てをする
T こんどは絵をみてお話をかくのです。
T はるおさんは、何をしていますか。
C 鉄棒です。
T (1)に書くことを言ってみましょう。
 (板書)  ぼくは てつぼうを しました。
T 終わりに○をつけるのを忘れないでください。(句
 点の指導をする)
T 次は、(2)のどこでしましたか。
C がっこうでしました。
 (板書)  がっこうで しました
がこう と、なっている人は、 がっこう となおし
 ましょう。(促音の指導をする)
T (1)と(2)だけではよくわかりませんから、(1)と(2)
 をうまくつなげて(3)の文にしましょう。
 (板書) だれは  どこで  なにをしましたか
     ぼくは がっこうで てつぼうをしました。
T 次の絵も はるおさんです。何をしていますか。
C ボールけりです。
T だれとしていますか。
C 本田くんです。
T (1)と(2)をつなげて、よくわかる文にしましょう。
 (板書) だれは  だれと なにをしましたか。
     ぼくは  本田くんと さっかあをしました。
 C 基本文型をつかって、自分の絵について話したり
  書いたりする
T こんどは、自分の絵を見て文を書いてもらいます。
T その絵についてお話がよくわかるように書いてもら
215  
 います。先生にもよくわかるように書いてください。
T その前に、渡辺君に絵のお話をしてもらいましょう。
  (児童の絵を提示する)
C  ぼくは おにいちゃんとベースボールをしました。
 (板書) だれは だれと なにをしましたか
   ぼくは おにいちゃんと べえすぼうるをしました。
T それでは、自分の絵を見て書いてください。
  (各自、自分の絵について文を書く)
T (OHPでうつす) 寺崎くんのをみましょう。読
 んでください。
C1 ぼくは、おねえちゃんと、ともだちのちえちゃんと
 うみであそびました。
C2 わたしは、ふうせんかずらのたねをまいてから、ず
 っとかんさつしてました。それで、やっとふうせんが
 できました。うれしいです。
T 時間がないので、あとで映してあげます。
T 自分のを、みんな一緒に読んでください。(読む)
 D 基本文型のまとめをする     (高橋深雪)


  2 言語的文脈における語句理解技能のシミュレーション指導

 (1) 解 説
 学習指導要領に、四、五、六年の語句理解の技能として、「語句の意味を文脈に沿って理解すること」があげられ
ている。この語句理解の技能というのは、文の脈絡、前後の関係、場面の中で、そこに使われている語句の意味の限
定の仕方を理解して、その意味を推定する技能のととである。普通、「語句学習法」あるいは「語句攻略法」と呼ば
れている。これは、児童が主体的に文脈の中で語句を理解する技能を身につけることをねらっている。
 古くから、「語句の意味は文脈が限定する」と言われている。そこで、文脈がどのように語句の意味を限定してい
るかを具体的に考えさせる。そこから意味を限定する方法を発見、理解させる。その文脈の意味の限定の仕方によっ
                                                       216
て、(1)定義型文脈、(2)抽象型文脈、(3)限定型文脈、(4)場面的文脈などに分類される。この学習では、文章の中で
多くみられる(2)と(3)の文脈をとり上げて学習する。
 (2) モデル教材

  その一 抽象型文脈  「ききん」「ひき合わない」
ア 浅間山の噴火のあと、しばらくの間は作物も実らず
 毎日の食べ物も手に入れることができなくなった。噴
 火は、おそろしいききんをもたらしたのである。
イ おれが、くりやまつたけを持って行ってやるのにそ
 のおれにはお礼も言わないで、神様にお礼をいうんじ
 や、おれは、ひき合わないなあ
  その二 限定型文脈 「あらかた」「やさきに」
ウ 「お母さん、わたしのスキーぐつかわいている。あ
 したは、学校でスキーの日だよ。」
 「おや、あしただったの。それじゃ、もう一度見てご
 らん。さっき新聞紙をまるめて入れておいたから、
 らかたかわいたと思うけど。」
エ 友だちから預っていたたいせつなものをなくして、
 いくらさがしても見つからず、あきらめかけていた
 さきにひょっこりそれが見つかった。
  その三 適用教材
ア 朝夕の駅のこう内はこんざつしている。この雑とう
 のかたすみに植えられている花をみると心がなごむ
 ふしぎと一秒でも早く、人よりも先へという気持ちが
 やわらいでしまう。
イ はちが、ちくりとさすやいなやすばやくブウンと飛
 びさりました。
ウ 湖のまわりにある木々の緑が、周りの森よりは、
 ときわあざやかに見える。
エ あの美しかった景色が、まるで絵のようにありあり
 と目に浮かびました。

                                                       217
 (3) 学習目標
 抽象型文脈、限定型文脈から語句の意味を推定する方法を理解し、さらに、その方法を使って語句の意味を限定し
理解することができる。
 (4) 「語句理解技能」の学習過程モデル
 の 文脈の中で語句を理解する
 A 文脈の中で語句理解の方法を発見する
 B 文脈の中で語句理解する
 C 語句理解の方法に従って、語句を理解する
 (5) シミュレーション指導過程――シミュレーション指導の実際

 @ 学習も目的をもつ
T 文章を読んでいるとき、意味のわからない語句に出
 会ったことがありますか。そのときは、どうしますか。
C 文章を読んで意味を考えます/C 辞書を引きます。
T きょうは、辞書を使わないで、語句の意味を理解す
 る方法を勉強しましょう。
 (板書) 文みゃくの中で語句の意味を調べる学習
 A 教材その一を読んで、ア「ききん」イ「ひき合わ
  ない」のことばの意味を推定する
T ア・イの文を読んで、アンダーラインが引いてあるこ
 とばの意味を考えて、ワークシートに書きましょう。
 C 損害を受けること/C ひ害/C 人々の生活
 が不便なこと/C 作物が手に入らないこと、など。
 C 不公平なこと/C おれには礼を言わないで、
 神様にお礼を言うこと/C つり合わないこと、など。
T 何を手がかりとして、その意味を考えましたか。
C 「ききん」は、作物も実らず人々は毎日の食べ物も
 手に入れることができなくなった、というところです。
C 「ひき合わない」の方は、おれにはお礼を言わない
 で、神様にお礼を言うんじゃ、という部分です。
218   
T では、ことばの意味を知る手がかりになった部分に
 線を引いてから、もう一度読んで、ことばの意味を考
 えてみましょう。
ききん=作物が実らず、全く食べ物がなくなること
ひき合わない=いいことをした人にお礼を言わないで
他の人にお礼を言うこと。割に合わないこと。 
 B 意味の決め方を理解する
T わからないことばの意味と、手がかりとなった部分
 の意味との関係を考えてみましょう。
C 「ききん」ということばの前に、作物が噴火のため
 にとれなくなり、そのため、人々は、食べ物を手に入
 れることができなくなってしまった、という説明が書
 かれています。
C 具体的な意味が、前に書かれています。
  具体的に書いてある部分の意味を考えて決める
 C 教材その二を読んで、「あらかた」「やさきに」の
  ことばの意味を推定する
  手ががりとなる部分に線を引き、それを手がかり
  にして、ことばの意味を推定する
  各自評価し修正する
  ウ、エの語句の意味の決め方の共通点を見つけ、
  短いことばでまとめる
 C わたしが、かわいていると聞いたのに対して、
                    、、、
 お母さんが、新聞紙を入れておいたから、たぶん、だ
 いたいかわいていると思うけどということからです。
  C それに、さっきということばから時間がたって
 いるから、あらかたかわいたとなると思います。
  C 前後のことばから意味が決まってきます。
   前後の文やことばからことばの意味を決める
 D 語句の意味を知る二つの方法を使って教材三のア
  ンダーラインのある語句の意味を推定する
 C 「なごむ」という意味は、いらだっている気持
 ちが落ちつくこと、心が休まることだと思います。そ
 れは、あとの文を読むとわかります。
 C 周りの森よりはあざやかに見えると、いう文か
219  
ら、「ひときわ」という意味が、一段ととか、いっそ
うという意味だとわかります。
E 学習のまとめをする
C 意味のとらえ方がわかった/C これから文章を読
 むときにこの方法を使いたい。 (長谷川 恵美子)


  3.漢字を読むことのシミュレーション指導

 (1) 解 説
 漢字の学習指導は、漢字の形(字形の認知――筆順と形――書き方)・音(音・訓の理解――読み方)・義(意味
――語義の理解)について行われる。したがって、@漢字を読むこと、A漢字を書くこと、B漢字を使うことに必要
な知識と技能を学習することになる。
 漢字の学習では、漢字表などによるはだか漢字やことばを離れた一字一字の練習では効果があがりにくい。漢字は
読解や作文の学習の過程で、機能的に学習すると身につきやすい。このような機能的な学習方法が漢字学習の原則で
ある。
 しかし、機能的な指導、つまり読解学習の過程、作文学習の過程で行う漢字学習は、機会的、機能的で、いわゆる
 「出たとこ学習」で、孤立学習に終わるおそれがある。したがって、現状では、効率化、能率化を求められながら、
漢字学習に必要な、児童の漢字力の発達に応じた段階的・系統的な学習を計画することはほとんどできない。
 そこで、漢字学習の原則と考えられる読解・作文を通して行う機能的方法より、はるかに生産性が高く、しかも、
段階的・系統的学習を可能にするのが、このシミュレーションによる漢字学習法である。
 このシミュレーションによる漢字学習法では、漢字の読み書きについての指導、一年の漢字学習、筆順指導、漢字
                                                       220
の組み立てについての指導、漢語の構成についての指導等について、生産性の高い、効果的な指導ができる。
 ここでは、漢字を読む技能の中から、漢字の構成の知識による「推読の技能」を取り上げてみる。
 漢字の構成の知識による「推読の技能」とは、漢字は、つくり(旁)が同じだと同じ読み方になることが多いこと
から、つくりの同じ漢字の読み方をもとにして、新しい漢字の読み方を推定していくという技能である。この技能は
漢字の構成についての認識が深まり、漢字学習に能率化が求め始められる四年生ごろに計画するのがよい。
 (2) 教材(シミュレーションモデル教材)
  次の文を読んで、__線のついている漢字に読みがなをつけてみましょう。
  @駅前公園のわきに、通安全のしきが立っています。Aおとうさんは、七月七日に学のこうどうへ選挙
  の投に行きました。B会は、中山君に決まりました。 Cきのう、日記を買ってきました。
  で読みがなをつけた漢字の中で、同じ部分のある漢字に印をつけて、なかまにしましょう。印がついたら、
  なかまごとに表にまとめてみましょう。
  で気づいたことをもとにして次の文を読み、__線の漢字に読みがなをつけてみましょう。
  @九分ほど歩いて行くと、ゆりの花があります。赤い花粉がつきました。 Aその意見には、反対です。ぼくた
  ちは、教室で版画をほりました。おかあさんは、電気すいきのスイッチを入れました。スピードのおそい車は、
  登坂車線を通ります。 B京都府は、しが県のとなりです。弟は、帰るとちゅうで、プラモデルのぞく品を落
  としてしまいました。きのう、音楽ノートに音符を書いて練習しました。 Cわたしは、不思議なゆめを見まし
  た。オリンピックを始める儀式が始まりました。ぜい金をおさめるのは、国民のむです。このダムをつくるの
  には、たくさんのせいがありました。
                                                       221
 (3) 学習目標
 漢字の構成のしかたと読みの関係に気づき、漢字の構成の知識によって初めて出会った漢字を読むことができる。
 (4) 「漢字を推読する技能」の学習過程モデル
 @ 推読の必要性を自覚する――より能率的に未習の漢字を読むことの必要性に気づく
 A 同じ部首をもつ漢字を提示する――既習の漢字で、同じ部分をもった漢字を文章の中で読む
 B 推読の方法を理解する――漢字の構成と読みの関係に気づく
 C 推読の方法を適用する――漢字を推読する技能によって、初めて出会った漢字を読む
 D 推読の技能を確認する――漢字を推読する技能によって推読できることを確認する
 (5) シミュレーション指導過程――シミュレーション指導の実際

 @ 学習の目あてを知る
T 最近、新しい漢字が大変多く出てくるようになりま
 した。きょうは、新しい漢字が出てきても、いちいち
 調べなくても読む方法を勉強しましょう。
 A 漢字を提出する
T (教材)の文章を意味を考えながら読んで、__
 線の漢字に読みがなをつけてみましょう。
T みんなで読み方を確かめてみましょう。まちがえて
 いたら、正しく直しておきましょう。
 B 推読の方法を理解する
T 今度は、漢字をなかま分けしてみましょう。の読
 みかたをつけた漢字の中で、同じ部分のある漢字に印
 をつけてみましょう。印がついたら、次の表にまとめ
同じ部分のある漢字  同じ部分 読み方
交 ・ 校  交  こう 
長 ・ 帳  長  ちょう 
標 ・ 票  票  ひょう 
222   
 てみましょう。
T 同じ部分のある漢字は見つかりましたか。
C 「交通安全」の「交」と「学校」の「校」に、同じ
 部分があります。
C 「標しき」の「標」と「投票」の「票」にも同じ部
 分があります。
T 同じ部分のある漢字とその読み方を比べて、何か気
 づいたことはありませんか。
C 「交」も「校」も「こう」と読みます。
C 同じ部分がある漢字は、同じ読み方をしています。
T そうですね。漢字に同じ部分があると、同じ読み方
 をしていますね。新しい漢字が出てきても、すでに知
 っている読み方の漢字の中に同じ部分をもっている漢
 字があれば、その漢字をもとにして、新しい漢字の読
 み方もわかりそうですね。
 C 適用する
T それでは、今のことを使って、の文章の中の漢字
 を読んでみましょう。
T 読み方を確かめてみましょう。
 D 技能を確認する
T 新しい、まだ勉強していない漢字でも、まちがえず
 に読むことができましたね。このことから、新しい漢
 字でも、すでに読み方を知っている漢字に同じ部分が
 あれば、その漢字をもとにして読むことができること
 がわかりましたね。         (高野 厚夫)



  4 段落相互の関係を考えて文章を構成するシミュレーション指導

 (1) 解 説
 「書く事柄を段落にまとめ、段落相互の関係を考えて文章を構成すること」は、六年の表現の基本的な知識・技能
である。ここでは、その知識・技能をシミュレーションによって効果的、能率的に学習させる方法を試みた。
                                                       223
 (2) 教材 モデル教材 1

   飯ごうすいさんを楽しくするために
 わたしたちが夏休み中に行った林間学校で、一番楽し
かったのは飯ごうすいさんである。そこでこの飯ごうす
いさんについてもっとよく改善するには、どうしたらよ
いか反省しながら考えてみよう。
 A
 まず、ご飯をたくとき一番大事なのは、水の量である。
みんな先生の話をよく聞いてやったが、やわらかすぎた
のもあれば、固いのもあった。水の量を正確にするには、
飯ごうを水平にし、目の高さにもってきて見ることが大
切である。
 B
 次に火をつけてご飯をたいたが、ここで大事なことは、
まきの組み方である。まきをただぽんぽん投げ入れるの
はよくない。一本ずつたがいちがいに積む。こうすると
火の通りもよくなりよく燃える。それは酸素の出入がよ
くなるからである。こうして火力を調節しながらたく。
 C
 ご飯がたけたら、すぐ火からおろしてよくむらした。
せっかくよくたけてもむらし方が悪いとおいしくない。
だからあせらず時間をかけるとよい。
 D
 こうしてご飯が出来ると、食事の用意をしてみんなで
楽しく食べた。しかし、少しおしゃべりが多すぎた。中
には、口をもぐもぐさせながら話をするものもいた。こ
れはよくない。それから食事の作法があるのだからそれ
をよく守る必要がある。少しかたくるしくなるように思
うけれど、その方がかえって楽しい食事になる。
 E
 考えてみるとこのように飯ごうすいさんがうまくいっ
たのは、一人一人が要領よく手早くやったからだと思う。
また、自分のする仕事は完全にやって協力したからだと
思う。この協力と自分の仕事を手早くやる事が飯ごうす
いさんを上手にするひけつだと思う。
 モデル教材 2

給食は食事マナーも守ることがだいじである。
 ・配繕する間さわがしい。
 ・大声でしゃべり、ふざけながら食べる。 
224   
これらのことを守るだけでいい学級になる。
 ・それにはお互いに注意し合う。
 ・いつまでも続けてやる。 

学習態度は、まじめにやることがだいじだ。
 ・友だちの意見をよく聞かない。
 ・発言が少なく声が小さい。
 ・姿勢の悪い人がいる。 
掃除当番は 責任を果たすことがだいじである。
 ・自分の仕事をなまけるものがいる
 ・時間がかかりすぎる。
 ・何をやるかがはっきりしない。
学級をよくするために改善しなければならない問題が
ある。
 @掃除当番のこと  A給食の時間のこと
 B学習態度のこと


 (3) 学習目標(行動目標)
 書く事柄を段落にまとめ、段落相互の関係を考えて文章を構成する方法を理解し、次のような並立型の文章を構成
することができる。――@書き出し段落 A要点段落1 B要点段落2 C要点段落3 Dまとめ段落
 (4) 「文章を構成する知識・技能」の学習過程モデル
 @ 文章の構成を理解する――「教材 1」を読んで文章の構成を理解する
 A 文章構成の方法を発見する――「教材 1」の段落カードを作って操作し、文章構成法を発見する
 B 文章構成の方法を理解する――並列型の文章構成法を理解する
 C 文章構成の方法を適用する――「教材 2」の段落カードを操作して並立型の文章を構成する
 (5) シミュレーション指導過程――シミュレーション指導の実際
                                                       225

 @ 学習の目標を確認する
T きょうは、実際に作文を書かないで、文章の組み立
 て方を勉強します。シミュレーションです。
 A 学習の方法を決める
T 作文「飯ごうすいさんを楽しくするために」を調べ
 て、みなさんに作者にかわってアウトラインを作って
 もらいます。それで、文章の組み立て方がわかったら、
 今度は、段落カードを使って、「学級をよくするため
 に」の意見文のアウトラインを作って、文章を組み立
 ててもらいます。
 A 「飯ごうすいさんを楽しくするために」の文章の
  構成を理解する
T この文章はどのように組み立てられていますか。
C 六つの段落で組み立てられています。@は、書き出
 しの段落、Aは、たく時の水の量と意見、Bは、火の
 燃やし方と意見、Cは、むらし方と意見、Dは、食べ
 方と意見、Dは、飯ごうすいさんをうまくやるひけつ
 が書いてあって、まとめの段落です。
 C 段落カードを作って操作し文章構成法を発見する
T なかなか上手に組み立てていますね。それでは、み
 なさんが、この文章の書き手になったつもりで段落カ
 ードを作って、アウトラインを組み立ててみましょう。
C 各自、作文を読みながら、段落ごとに、段落カード
  (要点と意見を書く)を作る。
T 段落カードができたら、それを組み立ててアウトラ
 インを作ってください。
T できましたか。AさんOHPで映して説明してくだ
 さい。

                                                       226


C @の段落は問題を出した段落、だから初めに、Dの
 段落は、自分の意見をまとめてるから終わりに、AB
 CDの段落は、飯ごうすいさんを始めてから、食べる
 までの間の問題を順に出しては意見を書いた段落、だ
 から問題の順に組み立ててみました。
 D 段落相互の関係を考えた文章構成法を理解する
T みなさんは、自分で作った段落カードで文章を組み
 立てるアウトラインを作りましたので、文章はどのよ
 うに組み立てたらいいかよくわかりましたね。
 E 段落相互の関係を考えて意見文を構成する
T 「学級をよくするために」の意見を書くための段落
 カードが五枚あります。これをよく読むと、どんな問
 題について、どんな意見を述べようとしているかがわ
 かります。この意見をどのように組み立てたらまとま
 ったいい意見文になるでしょう。よく考えてアウトラ
 インを作ってみましょう。
C 各自カードを読む。何についてどんな意見を書こう
 としているかを理解する。
C 各自よく考えて文章を組み立てる。
T できたら、OHPに映して説明してください。

C ぼくはこのように組み立てました。@は問題の段落
 だから初めに、Dは全体をまとめた段落だから最後に
 しました。ABCは、違った問題で、またその間に特
 別の関係はありません。だからどれから先に書いても
 あと先はありません。けれども、ぼくは、自分が大事
 だと思う順に並べました。それで、学習態度が一ばん
227   
 大事だから最後にしました。
T 大へんよく組み立てられました。ABCの段落は、
 B君の言うように独立した問題で、お互いに関係があ
 りません。こういうときには、段落の組み立てのあと
先は、自分の考えで決めます。こういう組み立ての文
章を「並立型(ならべ型)」の文章といいます。
                  (飯塚 米子)









                                                       228
     O中津留 喜美男   O丸 西 美佐子
      長 岡 真知子   O三 浦 ミ ヨ
     O永 田 清 子    三 角 ス ミ
  東京会員     O金 于 仲 子   O鈴 木 美智子    酉 鵑 和 美   ○御園生 幸 子
           O川 崎 タヅヱ    高 田 ひろみ    西 村・成 子    山 口 幸 枝
 相 川 正 志    川 村 幸 子   O高 野 厚 夫   O根 本 祥 子    弓 家 靖 絵
O青 木   勉   O岸   源 三    高 橋 貞 子   O能 瀬 外喜雄   O渡 辺 志げ子
O安 達   衡   O熊 谷 芳 子   O高 橋 深 雪    橋 詰 洋 子    渡 辺   正
O飯 塚 米 子    剣 菱 美智子    武 田 美 子   O長谷川 恵美子
O石 井 郁 子    後 藤 治 司    多 田 三重子   O長谷川   清     名古屋会員
 稲 葉 光 子   O佐々木 トシヱ   O立 尾 保 子    八 田 洋 弥    青 山 喜久男
 今 井 志保子    佐 藤 久 弥    辰 嶋 さ よ    花 見 安 憲    青 山 清 和
O岩 川 益 子    佐 藤 とし子    館 林 静 江   O藤 倉 文 子   O石 黒   勝
 大 竹   敏    佐 藤 典 子    田 村 祐 子   O二 村 陽 子    伊 藤 圭 子
O岡 田  脩    O斎 藤  文     塚 田 正 宏    船 越 コ ト    伊 藤   隆
O小野寺 侑希子   O斎 藤 洋 子    津 波 清 子   O古 川 良 馨    伊 藤 美佐子
O小 畑 多恵子   ○真 田 定 子    遠 山 静 子    星 野 典 子    伊 藤 美奈子
 笠 原 慎太郎    佐 野 哲 也    中 沢 昭 子   O堀 口 和 正    稲 垣 雪 子
O加 藤 譲 治    白 鳥 工 恵   O中 沢 政 雄   O堀 口 由 美    宇佐美 幸 男
 金 杉 育 子    杉 元 了 子    中 島 紀 子    松 本 幸 夫    小 倉 博 治
                                                       229
 鍛 治 多美代        高 岡 弘 之        樋 口 俊 雄
 梶 山 考 雄       O高 木   晃        平 野 三枝子
 梶 原 弥 生        高 橋 敏 明        福 島 恵 子
 金 子 良 子        竹 田   巌        藤 田 真寿美
 久 保 禎 子        武 田 清 次        前 野 宗 之
 久 米 稔 彦        竹 田   弘        松 山 勇 夫
 小 柳 一 達        竹 中 亮 子        水 野 修 一
 小 山 剛 司        築 山   潔        水 向 真 美
 後 藤 茂 男       O戸 田   治        宮 崎 広 子
 後 藤 昌 司        中 村 光 男        宮 田 陽 子
O近 藤   章        中 村 元 彦        森   映 子
 佐 藤   敬       O中 村 泰 夫        山 下 順 子
 佐 藤 恒 雄        永 井 正 昭        山 口 恵 子
 斎 藤 洋 子        長 坂 哲 夫        山 田 明 夫
 榊 原 初 美        野 田 衛 三        山 田 洋 三
 篠 辺 考 雄        野 田 和 義        山 本 静 夫
 清 水 稼 吉        野 村 尚 文        山 本 晴 夫
 鈴 木 和 人        橋 口 弘 通        横 地 鈴 也
 鈴 木 博 志        八 田 俊 明          (五十音順)
 多 門 三喜子        林   幸 江




[編著者紹介]
中 沢 政 雄(なかざわ まさお)
明治40年群馬県に生まれる。小・中・高校教諭,東京都指導主
事,中学校長,等を歴任。現在,国語教育科学研究所長。
主著は,『機能的国語教育』(明治図書),『国語教育近代化の理
論と実践』(三省堂),『国語科の発問』『国語科読解の学習技術』
 『小学校基本的文法事項の指導』(明治図書)『中学校新文法指
導の開発』(東京書籍)などがある。
現住所(〒154)東京都世田谷区梅ヶ丘1−26-12






<国語科授業の新展開・8>

新国語科のよい授業モデル
1980年8月初版刊

        編著者  中  沢  政  雄
         発行者  藤  原  政  雄
         印刷所 高長印刷株式会社
         発行所 明治図書出版株式会社
           東京都中央区入船3−3−11〒104
*検印省略       電話03(551)8266振替東京6-151318
            (分)3337(製)3 506 07(出)8308