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               中学校新文法指導法の開発




                     中 沢 政 雄  著




                                                      1
  は し が き

 この本は、昨年の夏出した拙著「小学校基本的文法事項の指導(明治図書刊)」の姉妹編で、中学校にお
ける新文法指導の体系――目標・内容・方法について、その考え方と実践の工夫を述べたものである。
 戦後の新しい文法指導の研究は、昭和二十六年度「中学校・高等学校学習指導要領国語科編」の編成に
あたって、アメリカから伝えられた「機能文法の機能的指導」を取り入れたところから始まっている。そ
れは、戦前の形式文法の体系的指導を根底からくつがえしたもので、文法指導の大変革であった。そのた
め教育現場では、少なからぬとまどいと混乱を招いたが、いっぽう、戦後の教育文法・学校文法の研究を
進める契機ともなった。
 この機能文法の機能的指導の研究は、一般的には、昭和三十年の初めを頂点としてしだいに下火になっ
て、いつの間にか、再び戦前とあまり変わらない形式文法の指導が、現場の大勢を占めるようになった。
 そこで、とくにこの本では、戦後の文法指導研究の歴史のあとを、綿密・詳細にたどって、その実状、
その研究の成果を明らかにした。その上に立って、学校教育における文法、文法指導の本質を究明し、そ
こから新しい文法指導のあり方を追求した。ここに述べた中学校の文法指導の体系とその構想がそれであ
る。
 その体系、構想の中核となっているのは、「機能文法の機能的指導」にもとづく「機能文法の体系的指
                                                       2
導」のシステムで、次のように編成されている。
  読解における機能文法の機能的指導┐
                  ├──シミュレーションによる機能文法の体系的指導
  作文における機能文法の機能的指導┘
 この「機能文法の体系的指導」は、シミュレーションによって行うことを原則としているが、シミュレ
ーションメソッドは、新しく開発した文法指導法で、七、八年来、多くの実験を重ねている。どうか実験
を試みられたうえ、おおかたのご批判を仰ぎたい。
 終わりの第五章は実践編であるが、これは国語教育科学研究会名古屋支部の伊藤美佐子・稲垣雪子・佐
藤敬・野田和義・松山勇夫・山田洋三・横地鈴也のみなさんに、実験授業をしたうえで、原稿を書いてい
ただいた。まことにありがたいことで、感謝このうえもない。
 また。この本をまとめるように勧めてくださった東京書籍の安池正雄氏、山本正夫氏、何かとお世話に
なった井上浩一郎氏に厚くお礼を申し上げたい。
 この本は、このようにしてできあがったが、文法指導のあり方を考えるとき、いつもわたしの後ろには
與水実先生がおられる。ここにこの一本を捧げて、深い学恩に感謝いたしたい。
   一九八〇年二月五日 春立つ日に
                                         中沢 政雄
                                                       3
 目 次


 はしがき…………………………………………………………………………………………………………… 1
第一章 中学校新文法指導のあり方  
 一 戦後文法指導はどう変わったか…………………………………………………………………………… 8
  1 戦前の文法指導はどのように行われていたか………………………………………………………… 8
  2 戦後文法指導はどのように変わったか…………………………………………………………………13
 ニ 中学校の新文法指導はどうあるべきか……………………………………………………………………33
  1 読解のための文法か、読解における文法か……………………………………………………………34
  2 表現のための文法か、表現における表現文法の学習か………………………………………………36
  3 形式文法の体系か、機能文法の体系か…………………………………………………………………37
 三 中学校新文法指導の体系……………………………………………………………………………………43
  1 機能文法の機能的指導……………………………………………………………………………………43
  2 機能文法の知識の体系的指導……………………………………………………………………………44
  3 中学校文法指導のシステム………………………………………………………………………………45
 四 新文法指導の目標は何か……………………………………………………………………………………51
  1 戦前の文法指導の目標……………………………………………………………………………………51
                                                      4
  2 戦後の文法指導の目標……………………………………………………………………………………53
第二章 新文法指導の内容とそのシステム  
 一 中学校における文法指導内容の精選の歴史………………………………………………………………62
 二 中学校の基本的文法事項の設定……………………………………………………………………………72
 三 中学校の基本的文法事項の内容……………………………………………………………………………75
  1 文章論的事項について……………………………………………………………………………………75
  2 文論的事項について………………………………………………………………………………………88
  3 語論的事項について………………………………………………………………………………………95
第三章 文法指導の原則  
 一 文法指導とは何か……………………………………………………………………………………………98
  1 文法事実の認識……………………………………………………………………………………………99
  2 文法感覚の形成………………………………………………………………………………………… 100
  3 文法意識の強化………………………………………………………………………………………… 101
  4 文法能力の養成………………………………………………………………………………………… 103
  5 文法知識・文法体系への志向………………………………………………………………………… 104
 二 文法指導の原則は何か…………………………………………………………………………………… 105
                                                      5
第四章 新文法指導法の開発  
 一 機能文法の機能的指導の考え方………………………………………………………………………… 112
 二 理解(読解)における機能文法の機能的指導の方法………………………………………………… 115
  1 読解における文法学習の契機と場…………………………………………………………………… 115
  2 読解における文法指導の機能的方法………………………………………………………………… 118
 三 表現における機能文法の機能的指導の方法…………………………………………………………… 145
  1 表現における文法学習の契機と場…………………………………………………………………… 145
  2 表現における文法指導の内容―誤用の文法………………………………………………………… 147
  3 表現における文法学習指導の方法…………………………………………………………………… 152
 四 シミュレーションによる文法指導の方法……………………………………………………………… 159
  1 シミュレーションとは何か…………………………………………………………………………… 159
  2 シミュレーションのモデル学習指導過程…………………………………………………………… 161
  3 シミュレーションによる文法学習01機会と方法…………………………………………………… 163
第五章 新文法指導の実践  
 一 読解における機能文法の機能的指導の実践…………………………………………………………… 170
  1 読解における助動詞「れる・られる」の機能的指導……………………………………………… 170
  2 読解における「文と文との接続関係」を理解する機能的指導…………………………………… 175
                                                      6
  3 読解における段落の構成・機能の指導……………………………………………………………… 181
 二 シミュレーションによる文法指導の実践……………………………………………………………… 186
  1 指示語のシミュレーション指導モデル……………………………………………………………… 186
  2 助動詞「そうだ」のシミュレーション指導モデル………………………………………………… 198
  3 助動詞「れる・られる」のシミュレーション指導モデル………………………………………… 207












                                装幀  勝井 三雄
                                カッ卜 篠崎 三朗
                                                       7
         第一章 中学校新文法指導のあり方



                                                      8
     一 戦後文法指導はどう変わったか

 

①戦前の文法指導の規
 定
 O国語の科目



 O文法教科書
 
  1 戦前の文法指導はどのように行われていたか

 中学校の文法指導は、太平洋戦争を境にして大きく変わった。
 戦前の「国語」は、「講読」「文法」「作文」の三科目、あるいは、「習字」を加えて四科目の編
成になっていた。したがって「文法」は、「国語」の中の一科目とは言いながら、きわめて独立
性の強いものであった。それというのは、「毎週一時」時間を特設して課することが義務づけら
れていたし、(「中等学校改正教授要目〔昭和十二年文部省訓令〕」「〔中学校規程〔昭和十八年文
部省令〕」)そのうえ、科目教科書としての文法教科書をも、もっていたからである。
 もちろん、教科書には、国語の教科書、作文の教科書もあったが、文法教科書は特に、当時の
文法学者が、きそって自分の学説にもとづいた文法教科書を出していた。文部省でも、いわゆる
橋本文法による『中等文法口語(文語)』を発行した。昭和十八年の『国民科国語』のころは、
ほとんどの中学校が、この文部省版『中等文法口語』を使っていたのではないかと思う。ついで
に書くと。国語教科書のほうでは、岩波書店の『国語』(西尾実編)の採用が圧倒的に多かった。
 

9
 O文法指導の規定








 O文語文法と口語文
  法
 
 戦前の文法指導は、このような状況の中で行われていた。使った文法教科書は言うまでもなく
それぞれの文法学説にもとづく文法体系を説明解説したものであって、どれも品詞論を中心にし
て、それに文論を添えたというほどのものであった。もちろん、文章論にはふれていない。とい
うのは、それが当時の文法研究の大勢であったし、「中学校教授要目改正(昭和六年。文部省訓令)」
の「第一学年」にある「文法 毎週一時。品詞ノ大要ヲ授ケ、口語・文語ノ異同ヲ知シラシメ用言
ノ活用二練熟セシムベシ」とあるのに準拠したものと思われる。
 この「口語・文語ノ異同ヲ知ラシメ」は、当時すでに無理であることが、わかっていたものと
みえて、「中等学校改正教授要目の趣旨(昭和十二年文部省解説)」の中に、次のような解説が
載っている。
   従来の要目では、「文語口語ノ異同ヲ知ラシメ」といふのであつたが、実際上之は甚だ具
  合が惡かったのである。最初から異同を知らせるといふ事は、反って両者を混雑させる結果
  になって、甚だ効果が挙らなかった。そこで今回は、第一学年で先づ口語法を教へ、第三
  学年に文語法を課することとした。現在の教育者の大部分は、文語法を基礎に学んだ人々で
  あるから、実際問題として、口語法を教へるのに多少難色があるかも知れぬが、現在の生徒
  は、殆んど口語文のみで育って来たのであって、文語文に対する素養は極めて低い。今日の
  文語法は中古文の語法を根幹としたものであつて、現在の生徒に向つて最初から文語法を教
  へねばならぬ理由がない。文法は語句解釈の為の文法とのみ解すべきではなく、文法によつ
  て国語の性質を会得させ、国語愛護の念を培ふ所に国体明徴の実も挙るのである。改正要目
  はここに理論的な新しい道を開いて、教育者、文法家の努力に期待している。(かなづかいは
 
     10







②戦前の文法指導の実
 状
 O文法知識の体系



 O品詞論
 
   原文のまま)
これは余談であるが、「文法家」と言ったところがおもしろい。また、「文法によって国語の性
質を会得させ、国語愛護の念を培ふ所に国体明徴の実も挙るのである。」というところに、当時の
文法教育の目標や、文法家の意気込みをも想定することもできる。なお、国家主義の教育に奉仕
した、戦前の国語教育の姿をも明らかにみることができるであろう。
 ところで、現場の文法指導は、どのように行われていたであろうか。一般には、文法教科書を
たよりにして、ページを追って細かい文法知識の体系を教え込んで、形式的に暗記させていたと
いうのが実状であった。まず、品詞論の学習は、品詞分類から始めて、その形態・機能・活用を
中心にし、最後には、次のようにまとめることに終始した。
                                      ┌動  詞
      ┌活用のあるもの――単独で述語となるもの―――――――――用言┤形 容 詞
      |                              └形容動詞
  ┌自立語┤       ┌─主語となるもの――――――――――――体言…名  詞
  |   └活用のないもの┤        ┌修飾語と─┬用言を修飾する…副  詞
単語┤           |        |なるもの └体言を修飾する…連 体 詞
  |           └─主語とならない┤修飾語・ ┌続く………………接 続 詞
  |             もの     └述語にな─┤ 
  |                     らないもの└切れる……………感 動 詞
  └付属語┬活用のあるもの………………………………………………………………助 動 詞
      └活用のないもの………………………………………………………………助  詞
  11
 O文章論









 O文法指導の工夫














 O文法指導の開発的
  な方法
 品詞論の学習が終わると、文章論の学習に入った。文章論といっても、今の文論・構文論のこ
とで、今日の語論・文論・文章論という場合の文章論ではない。つまり、文の構成要素としての
成分(主語・述語・修飾語など)文節を押さえ、その相互の関係、切れ続きの関係を、次のよう
にまとめていた。
 ① 主語・述語の関係   ② 修飾・被修飾の関係  ② 接続の関係
 ④ 対等の関係      ⑤ 独立の関係      ⑥ 従属の関係
 要するに文法知識の体系を、かなり細かい点にいたるまで教え込んでいたように思う。
 それでも、何とかして、生徒に興味をもたせ、積極的に、自発的に学習させようと苦心もした。
たとえば、「動詞の活用」の学習では、わたしはこんなふうに指導してみた。
 ① 国語教科書の教材の中から、それぞれの動詞の用例を採集させる。
 ② 採集した用例を分類整理して、語尾が変化していることに気づかせる。
 ③ 同類の語を集めて、語尾変化に法則のあることを発見させる。
 ④ 発見した法則を適用して、他の語の活用形を理解させる。
 ⑤ こうして、発見し理解した動詞の活用の法則を抽象化し、文法知識として暗記させる。
という過程をたどらせて文法指導をしてみた。こうして、苦心して指導はしたものの、生徒が身
につけたものは、やはり、動詞の活用についての知識だけであった。しかし、こうした学習で、
国語に存在するさまざまな法則性を発見する喜びを味わい、国語に対する強い関心・興味を示し
たことは言うまでもない。
 ところで、今思えばこのような指導上の工夫は、橋本進吉博士の「国文法の教授は、開発的な
  12










  ・文法指導の結果






  ・「中等学校改正
   教授要目」の「注
   意」
 
方法をもってしなければならない。研究せられた結果だけを、そのまま教えるのでなく、出来る
だけ自ら観察して見出さしめるという方法をとらなければならない。この方法は、単に文法の知
識を授けるのを目的とした場合においても有益なものであって、文法上のきまりは多くの場合の
例から帰納せられた比較的抽象的なものであるが……(「国語学と国語教育」〔『岩波講座国語教
育』昭和十二年九月刊の中の一篇〕による)」を、実践的に追求したものであったろうと思う。
 それからもう四十年、今わたしが提唱している「シミュレーションによる文法指導」のモデル
は、その原点をここに求めている。
 こうして熱心に指導しても、それが読解学習によい影響を与えることもなかったし、あいかわ
らず生徒は主語・述語の照応しない文を書いたり、筋道の通らない文章を書いたりしていた。そ
れを気にしながらも、文法指導は、国語の中にあるいろいろな法則性を発見し、それを知識とし
て体系化し、国語の特性を理解することによって、国語愛護の精神を培うことができるものと考
えていた。
 昭和十二年の「中等学校改正教授要目」の「注意」事項に「文法(平易ナル実例二就キテ之ヲ
理解セシムベシ。尚特二文法ノ時間ヲ設ケザル学年ニアリテモ常ニ講読・作文等ニ付帯シテ之ヲ
授ケ、正確ナル語法ニ練達セシムベシ」とあったが、わたしなどのように、特別に文法指導に関
心を示すことのなかったものは、「講読・作文ニ付帯シテ文法ヲ授ケル」ことは、ほとんどなか
ったように思う。
 戦前の文法指導は、おおむねこのようなものだったと思う。 
  13



①戦後の文法指導の規
 定とその歴史
 O昭和二二年度「学
  習指導要領国語」
  の文法指導の規定


  ・範囲
  ・目標







  ・文法事項の六項
   目
 
  2 戦後文法指導はどのように変わったか

 戦後、教育改革が行われ、戦前の「教授要目」に代わって、この国の教育課程として「学習指
導要領国語科編(昭和二十二年度試案)」が作られた。戦前の「国語」が、「講読・文法・作文(話
し方)」の三科目構成になっていたのに対して、この学習指導要領では、「国語」を「国語科」と
し、その学習を「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」の二対四面の四領域として規
定している。
 それとともに、特に「文法」の学習の項を設け、その「範囲(口語文法と文語文法との組織的
な学習)」を定め、「目標( 国語のきまりを経験的に知って、正しく美しく思想を表現すると
ともに、的確に他人の思想を理解する能力を得さしめる。 国語の構造を知る。 国語の特
質をさとらせて国語に興味を持たせる。」を規定し、文法教科書は、中学校になって現れること
を述べ、さらに「文法」については、六項目にわたる文法事項をあげている。その六項目という
のは、
 (一) 国語・ことばと文字・敬語・かなづかい。
 (二) 文・文節・単語。(自立語と独立語)
 (三) 文の構造。(主語と述語・修飾語・独立語)
 (四) 文節と文節との関係。
 (五) 品詞分類。 
  14


  ・解脱






 O昭和二六年度「中
  学校・高等学校学
  習指導要領国語科
  編」の文法規定
  ・国語科における
   文法の学習指導





  ・概要
 
 (六) 動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の活用、動詞の種類と用法等。
という筒略なものであった。文法の目標には、今日の文法指導の方向への示唆が見られるが、現
場ではまだこれといった文法指導の動きはなかったように思う。
 というのは、当時は、教育改革のさなかでもあったし、初めて導入された単元・単元の学習に
ついての啓蒙期でもあったから、国語科における文法の位置づけも明確さを欠き、その指導内容
も、必ずしも適切とは言えなかったからであろう。
 ところが。四年後の昭和二十六年には、改訂版の「中学校・高等学校学習指導要領国語科編
(試案)」が編成され、その第六章に「国語科における文法の学習指導」というのがあった。そ
の内容項目は、次のとおりで、まことによく整えられ、システム化されたものであった。
 一 文法学習指導の意義
 二 文法学習指導の目標
 三 文法学習指導の内容
 四 文法学習指導の段階
 五 文法学習指導上の注意
 次にその概要を述べてみる。
 言語の最も重要な機能は、思想・感情を伝達することであり、そのためには、物の考え方を明
確にするとともに、一般の慣用に従ったことばづかい、つまり、ことばのきまりに従って表現す
る必要がある。このことばのきまりは、日常の言語生活の中でも、自然に学習されるが、生徒が
ことばにきまりのあることを自覚し、計画的に言語活動をするときに、有効な文法学習が行われ 
  15













  ・機能文法の機能
   的指導




 O文法学習指導の目
  標
 
るものである。
 しかし、従来文法規則は習っても、正しく書いたり、話したりできないものは、ずいぶん多い。
それは、文法を記憶しても、実際のことばづかいに適用して、正しいことばづかいができるよう
になるとは限らないからである。
 文法学習の目的は、実生活に必要なことばの機能を身につけることである。いくら文法上の用
語や規則を学んでも、それが、理解や表現に役立たないならば、その価値はない。文法の学習指
導の意義は、ことばのきまり自身を知ることではなく、日常生活におけることばのはたらきを、
いっそう正しく効果的にすることである。つまり、文法の学習は、自分の言語生活を反省する能
力を養い、同時にことばの選択のこつを学習させるという実際的意義をもつものである。
 こうして、文法指導の考え方は一変した。言語のコミュニケーションの機能を重視し、理解・
表現に役立て、言語生活を改善する、いわゆる実用文法としての「機能文法の機能的指導」が、
これからの文法指導の方向であることを強調している。従来形式文法の体系的指導に明け暮れて
いた文法家・文法指導者にとっては、まさに青天のへきれきであった。
 このように文法の学習指導の意義を考えてくると、文法学習の目標もまた、それに応じなけれ
ばならない。「文法学習指導の目標」には、次のように述べてある。
 文法の学習は、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの学習の中でいつも行われている。
したがって、国語教育の目標がそのまま文法教育の旧標となる。しかし、特に、文法学習がどの
ような面から教育的機能を果たすかと言えば、次のように言うことができる。
   社会的にきまっている正しいことばづかいをしようとする習慣・態度を養う。 
  16





  ・解説



 O中学校文法指導の
  内容
  ・中学校初級
 
  ことばの使い方についての知識と理解と鑑賞とを確かなものとする。
  ことばをいっそう正しく効果的に使う技術と能力とを高める。
  ことばに対する自覚を高め、ことばに対する愛護の心を養う。
 このように、文法の学習指導の考え方も、その目標も、従来の面目を一新したというものであ
ったが、文法学習の内容になると、あまりはっきりしたものではなかったように思う。ただ、従
来の形式文法の体系とは異なった、きわめて実用的、機能的なもので、従来の文法家たちは、こ
れが文法かと、半信半疑であったように思う。次に、その中学校の文法指導の内容をあげてみる。
 中学校初級では、
  文の組み立て。
  首尾の整わない文、断続のはっきりしない文を見分ける。
  文は部分に分けられるということがわかり、文の成分としての主語と述語とを見分ける。
  こみいった主語と述語とを見分ける。主語を用いない文があることに注意する。
  主部と述部、それぞれの中心語・修飾語、接続する語などに分けて、文の意味をはっきりさ
  せる。
  ひとつづきのこみいった考えをまとめ、二つ三つの文をつないで一つの長い文とする。
  適当に句を結びつけて一つの文とする。
  いろいろの接続語を使う。
  単文と重文・複文などを見分ける。
  節と句の構造をさとる。 
  17






  ・中学校上級





  ・解説






 O機能文法の機能的
  指導の導入
 
  くぎり符号を使って、わかりやすくする。
  語の用法と意味。
  語の使い方を分類組織し、各品詞の役目を見分ける。
  むだなくり返しを省き、紛れやすいことばを除く。
 中学校上級では、
  筋のとおった話の進め方。
  ことばの効果的な使い方。
  わかち書きをしたり、段落のくぎりを示すような書き表わし方に注意する。
 このように、中学校の文法指導の内容は簡単なものであった。しかし、中学校初級での内容、
は、読むことの学習の過程で学習する文法事項で、機能的な扱いになっている。
は、書くことの学習の過程で学習する文法事項で、これも機能的に扱うようになっている。中学
校上級でのは、話すことの学習の過程において、機能的に学習する文法事項、は書くことの
学習の過程で学習する修辞法(レトリック)に関する事項である。
 こうして、機能文法の目標と内容は提示されたものの、直ちに実践に移すところまではいかな
かった。なお、この「機能文法の機能的指導」が、この国の文法指導に取り入れられた事情は、
次の與水実氏の「機能文法とは何か」 (続日本文法講座・短信No1所載・昭和三十三年四月二十
五日発行)の前半が如実に物語っている。
   教育上の「機能文法」が広く認識されるようになったのは、戦後、文部省で「昭和二六年
  試案 中学校・高等学校学習指導要領国語科編」の編集が始まった時からである。編集委員 
18
















 O文法学習指導上の
  注意
 
  会は昭和二三年の秋に発足した。二四年、二五年ごろの委員会で合言葉になっていたことは、
  「文法の帰納的にして機能的な学習」ということであった。「帰納的」のほうは、実例を多
  くするとか、実例から出発するということで、全委員ほとんど異論のないことであった。し
  かし「機能的」というのはどういうことなのかはっきりしない面があった。
   それにもかかわらず「機能的」でなければならない、「機能文法」でなければならないと
  考えられたことは、当時、国語教育全般が機能的に再編成されなければならないと考えられ
  ていたことと、占領軍総司令部のC・I・Eから貸してもらった、アメリカの各州各都市の
  国語のコースーオブースタディに「機能文法」という用語が出ていてそれが非常に魅力的だ
  ったこと、委員の中にそうした新しい立場、新しい考え方の感受性の強い人がいたことなど、
  いろいろの理由が考えられる。
   ただし、現実には、昭和二六年試案に、この「機能文法」の立場、その内容が、それほど
  充実した形で出ていない。それどころか、文法の章は他と比べて。要項書きで、説明不十分
  である。このことは、当時編集委員長として全体のまとめとアメリカさんとの交渉とにあた
  った私の責任である。文法の章の小委員会では、実はもっとずっとくわしいものを書いてき
  た。それを私が、問題のない、要点的なものに削ってしまった。
と、いうことで、機能文法の内容はごく簡単なものであった。が、そのあとに「五 文法学習指
導上の注意」として二項目あげてある。次にその要点を書いてみる。
 法則を法則として覚えても、具体的・経験的な手がかりとして実例を伴わないときは、こ
  とばの正しい使用には役立たない。また、それを実際の生活経験に実践するようにならなけ 
19












②戦後の中学校文法指
 導の実際








 O国語教科書と機能
  文法の機能的指導
 
  れば文法学習の価値はない。文法事項は、相互に関連をもっていることを理解させる必要が
  あるから、指導者は、あらかじめ系統を立て、組織を作っておく心要がある。と言っても、
  文法を独立教科として学習させたのでは、実際の言語使用に役立たない。実際の生活経験か
  ら実例を求め、それを手がかりとしで、文法を理解させたほうがいい。文法は話す・聞く・
  読む・書く日常の言語生活の場面に関係づけて習得させなければならない。
 文法規則や用語をあげ、用例を作って反覆練習させるのは適当な方法とはいえない。生徒
  が正しいことばづかいの実際例を集め、それを分類組織して、普遍的な規則にまとめあげる
  ように指導する。
 こうして「機能文法の機能的指導」は教育現場に提示された。しかし、何と言っても、戦後の
文法指導の現場では、まだ戦前の形式文法の体系的指導の考え方にこだわっていたから、この新
しい文法指導の考え方や方法は、そうやすやすと教室に浸透するというわけにはいかなかった。
 そんな状況の中で、機能文法の機能的指導の研究や普及の「翼をになったのは、当時の中学校
の国語教科書であった。その中での文法の取り扱い方であった。いつの時代でもそうであるが、
教育現場の間題は、たとえば、文法について言えば、文法論、文法学説そのものではなく、その
指導をどうしたらいいかという指導法だからである。
 そこで、当時、全国で最も採用部数の多かったX堂発行の教科書『中等国語』では、この「機
能文法の機能的指導」を、どのように受け止め、どのように取り入れたかを見てみよう。
 この教科書では、文法学習の機会を二つに分けている。一つは、読解の過程における文法指導
である。それは、内容を理解する過程で、それに必要な文法事実を押さえ、その理解を正しくし 
20



O読解過程における
 .「ことばの学習」





   語句の用法









   接続語の機能




   連用修飾語の
   位置 
深くすることをとおして、文法事実をささえている法則性を発見し、意識化し、一般化しようと
するものである。つまり、感覚的に身につけている文法事実をささえる法則性を、改めて発見し
意識化する学習の機会を「ことばの学習」として提示している。例をあげてみる。

     8 文学の味わい
  一 トロッコ (芥川龍之介)
 〔ことばの学習〕
 一 次の線を引いた部分の意味は、(イ)(ロ)(ハ)のうちのどれですか。
  1 工事を――といったところが、ただトロッコで土を運搬する――それがおもしろさに、
   見に行ったのである。
     (イ)というのは   (ロ)といったのは   (ハ)といっても
  2 良平はその時、乗れないまでも、押すことさえできたらと思うのである。
     (イ)乗れないので   (ロ)乗れないのはがまんするとしても
     (ハ)乗れないけれども
 二 「トロッコ」には、文を続けることばが、いろいろたくみに用いてあります。たとえば、
    と同時に  そのとたんに  すると  それから
   などです。これらを互いに置きかえてみて、原文のたくみな用い方を味わってごらんなさ
   い。
 三 トロッコは、三人の力がそろうと、とつぜん、ごろりと車輪を回した。 
21


   指示語の指示
   機能



   動詞の活用






   「ことばの学
   習」の内容





 O独立した文法学習
  「ことばの研究」
  上の文で「とつぜん」を、「トロッコは」の次に入れると、どういう意味になりますか。
 四 次の文の線が引いてあることばは、何をさしますか。
    もうかれこれ暗くなること、去年のくれ、母と岩村まで来たが、きょうの道はその三、
   四倍もあること、それを今からたったひとり、歩いて帰らなければならないこと、――
   ういうことが一時にわかったのである。
 五 「トロッコ」の終わりの方に、「泣く」という語がいろいろな形で出ています。集めて研
  究しましょう。
   泣きそうになった。 泣いても。 泣いている。 泣き声。 泣き続けた。 泣くわけを。
   泣き立てるより。 泣きたくなった。 泣かずにかけ続けた。 泣き出さずには。

 このように「ことばの学習」で取り上げる事項は、当時の「ことばに関する事項」で、尊敬の
言い方、ていねいな言い方、普通の言い方、形容詞や副詞の使い方、接続詞の使い方、助動詞の
使い方、微妙な助詞の使い方など、敬語や文体や語論に関する事項と、長い主語・長い修飾語、
小さな主語・小さな述語など構文に関する事項と、意見の述べ方、倒置法の使い方、効果的な表
現の仕方など、いわゆるレトリックに関する事項などであった。
 しかし、それらの学習は、教材の中にたまたま現れる文法事実、文法事項を取り上げて、機会
的に学習する――いわゆるでたとこ学習になっていた。それは。機能文法の機能的指導というこ
とに、いちおう理解を示しながらも、機能文法の内容を体系的に示すことができなかったからで
ある。そこで現場の不安をやわらげ、また、形式文法の体系的指導に郷愁を感じている教師のた 
  22



「ことばの研
究」の内容





読解指導との
関連




文法の適用



主語節と述語


主語・述語の
関係
 
めに考えたのが、二つめの「ことばの研究」である。次に「ことばの研究」に取り上げた文法事
項について、その例をあげでみる。
 たとえば、一年では、「文とその長さ」「単語とその種類」「文語文と古典かなづかい」「単語の
いろいろ」「動詞・形容詞」「助詞・助動詞」「正しい発音」、二年では、「名詞のいろいろ」「動詞
の活用」「形容詞の活用」「副詞・接続詞の使い方」「助詞の使い方」「助動詞の用法」、三年では、
「文節」「長い主語・長い修飾語」「接続語」「小さな主語・小さな述語」「並立の関係にあること
ば」「文の分類」などとなっている。
 このような文法事項を随所に配置して、独立した文法学習を計画している。これらは「ことば
の学習」と、密接な関連を考えている。たとえば、読解の学習過程で、何回も助詞の使い方の学
習をした後(「ことばの学習」として)、それと関連させて総括的に「助詞の使い方」の学習を系
統的に行うようになっている。
 また、これらの文法事項は。いわゆる文法知識として、形式的に暗記させるという方法をとら
ないで、文法の法則を理解させた上で、その法則性を具体的に適用する方法をとっている。
 たとえば「主語・述語・修飾語」の指導では、
  次の文を「何が(は)」の部分と、「どうする」の部分に分けて( )でくくりなさい。
   やまゆりの大きな花が咲いている。  短い夏の夜は明け方近かった。(以下略す)
  上の文の主語・述語はどれか考える。また、述語の部分の言い方を、次の三つに分けると、
  どうなるかを考える。
   (何が)どうする。  (何が)どんなだ。  (何が)なんだ。 
  23






   修飾語節






 O解説
   文法感覚・文
   法意識



   「ことばの研
   究」の内容と
   「ことばの学
   習」の内容と
   の関連
 
  次の文の主語には__、述語にはをつけなさい。
   田の草取りは、ぼくのからだの二倍もある田の草車をおして行く仕事です。
   ぼくもこの時間に、風通しのいいうらのへやで学習します。
   夜は昼の暑さを忘れるほど涼しいのです。  卓球大会組み合わせ決まる。
 次の文で、いつ、どこで、何を、どのようになど、述語を詳しく説明していることばの下
  側に__を引きなさい。
   私はまだ暗いうちにこの本栖の宿を出た。 富士宮へ着くと町は登山客で、まるで
  祭のようににぎわっていた。 私は帰る前、八人の友だちといっしょに、わり当てられ
  た所の草を抜いた。
 このように、文法用語やその機能を、形式的に知識として理解し記憶させることをしないで、
読解教材の中から、具体的な文法事実を取り上げて、それをささえる法則性を発見し、適用する
ことを通して、文法感覚・文法意識を高めるように工夫されている。これは、文法指導の進歩で
あった。
 ところで、この文法指導の内容――「ことばの研究」で取り上げる内容は、従来の形式文法の
内容を、三学年に分けて配当したものである。そこには、特別な内容の整理は行われていなかっ
た。一、二年では品詞論(語論)を中心に、三年では文論(構文)を中心にして、独立した文法
時間をとり、読解とは別個に指導した。(読解教材から必要な文法事実は選んだが)
 もちろん、これらの「ことばの研究」は、読解の過程で学習する「ことばの学習」で学習した
ことを基礎として、帰納的・発展的に学習するように工夫されている。が、学習指導要領で強調 
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    読解における
    文法指導




③戦後の中学校文法指
 導の問題点






 O機能文法への理解
  が乏しい 
した「機能文法の機能的指導」というは、この「ことばの学習」によって学習する面である。
 「ことばの研究」で学習する面は、教科書編修者が、現場の実状を考慮して、妥協的に取り入
れたものである。そのことは、昭和二十九年に発行された文部省の「中学校・高等学校学習指導
書」に「文法は本来体系的なものであるから、生徒が文法一覧表などをかたわらに置いて学習す
ることをさまたげない。」とあるによっても理解される。また、昭和三十七年に文部省が出した、
「中学校国語科指導法(ことばのきまり編)」に示された、「ことばのきまりに関する学習指導の
事例」を見ても明らかである。
 こうして、比較的早く実践された「機能文法の機能的指導」は、「読解における文法学習」で
あった。聴解における文法指導、談話における文法指導、作文における文法指導などについては
当然考えるべきことであったし、また、それを説く指導者も論文もあったが、現場にはなかなか
浸透していかなかった。
 いっぽう、国語教育研究の場では、この学習指導要領の提唱を契機として、文法・文法指導研
究が盛んに興って、昭和三十年前後は、いわゆる文法ブームを引き起こしたほどであった。しか
し、昭和二十九年に出した「文法の学習指導」(全国大学国語教育学会編)のはしがきに、「学習指
導要領によって、機能的に文法指導を行うということが説かれておりながら、その指導に問題点
と、困難性とがあったために、文法学習指導は、効果をあげているとは言われないのが現状では
なかろうか。」と述べでいるのは、適切に現場の実状を物語っているように思う。
 ところで、この「問題点と困難性」とは何であったろうか。
 一つは、当時国語教育が機能的に再編成される機運にあった中で、文法指導もまた機能的に編 
25



 O機能文法の内容が
  示されない


 O文法の孤立的・機
  会的学習
 O形式文法の考え方
  が止揚されない









 〇作文における文法
  指導の問題
  ・表現における文
   法指導
 
成されるべきだという考え方は、時代思潮的・歴史的要請の結果であるとして理解することがで
きなかったこと。
 二つには、機能文法として学習する内容が、明確に示されていなかったこと。従来の形式文法
の体系から、何と何を除き、何と何を中心に指導するかが、具体的に示されなかったこと。つま
り、読解において、指導すべき機能文法の内容が、組織的・体系的に示されなかったこと。
 三つには、機能文法の機能的指導は、文法の孤立的・機会的学習になって、学習した文法事項
を関連的・関係的に組織したり、体系化したりすることが困難であったこと。
 四つには、教師の中にある形式文法の体系指導の考え方がなかなか止揚されず、したがって、
読解教材の中から、必要な文法事実を選択することに抵抗があったこと。
 五つには、機能的指導法は、それぞれの文法事実に即した具体的なものであるため、指導法の
パターン化が行われなかったこと。つまり、客観性・普遍性をもった学習指導法が開発されなか
ったこと。
 こうした事情が、「読解における文法指導」を、機能的なものとして定位することをむずかし
くしたのだと思う。
 読解における機能文法の機能的指導の実践は、これまでに述べたとおりであるが、作文指導に
おける文法指導はどのように行われていたであろうか。昭和三十三年度学習指導要領国語では、
「ことばに関する事項」として、各学年別に「指導事項(文法事項)」が、あげてある。その一年
の文法事項アを見ると、「ことばの正しい使い方を知り、それによって、理解と表現を確かめ、
誤りを正すこと。」とある。このように、作文、談話においては、「ことばの正しい使い方」の学 
26


    機能文法










    誤用の文法










    誤用の判断の
    基準 
習と、「誤りを正すこと」の指導とが規定されている。
 そもそも、機能文法は、本来読解や作文・話し方に役立つ文法であった。作文や話し方、つま
り表現に役立つ文法は、消極的には、誤った文や誤った話し方を正しくするのに役立つ文法であ
り、積極的に表現に役立つのは「ことばの正しい使い方」「ことばの正しい用法」であって、そ
れをささえる文法が、いわゆる表現文法である。
 生徒の書いた文章や話し方の中には、いろいろな誤りがある。主語・述語の照応しない文、修
飾語の位置が適切でないために意味のあいまいな文、意味を誤解される文、助詞の使い方を誤っ
ている文、語句の使い方が適切でなかったり、誤ったりした文など、ことばの使い方、用法を誤
ったり、文法的に誤ったりしている場合が多い。
 このようなことばの使い方、用法の誤りを正す基礎になる文法が機能文法である。これを「誤
用の文法」とも呼んでいる。誤用の文法は、実際の話し誤り、書き誤りを正す文法であるから、
どんな誤りがあるか、どのように誤るか、その実態を調べ、それを分類・整理して、どんな誤用
の文法が必要か、その組織・体系を作る必要がある。そのために、児童、生徒の談話や作文を分
析して、誤用集め、誤用分類の仕事が行われ、その業績の発表もあった。
 しかし。このような誤用の文法は、戦前の形式文法指導の中心であった、品詞分類の知識や、
用言の活用の知識や文法用語の知識などを必要としない。文章表現も、談話表現も、ともに文や
文章によって行われるから、語論よりも、文論(構文)・文章論に関する事項が、誤用の文法の
中心になることは明らかである。
 しかし、この場合間題になるのは、誤りとする判断の基準である。もともと、ことばの使い方 
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    方言的差異

    共時的混乱




    通時的変化








    正・誤の判断
    の困難・ 
は、地域の社会的習慣として決まっている。したがって地域的な差がある。
 関西の「買うてくる」が、関東では「買ってくる」になることはよく知られている。同じ関東
でも「むちゅうでかけて行った」と言う所もあればい「むちゅうでとんで行った」と言う所もあ
る。同じ言語社会でも、「山へ登った」とも言えば、「山に登った」とも言う。「へ」と「に」は、
その用法が混乱している。「雨が降ってきたから教室へ入った」という言い方もあれば、「雨が降
っできたので教室へ入った」という言い方もする。「ので」と「から」の使い分けは、今ではほ
とんどできない。こういう共時的な用法の違いは、どっちを正、どっちを誤りと判断することは
むずかしいし、間題がある。
 いっぽう、ことばの使い方は絶えず変化している。「とても」は、本来「とても行けない」と
いうように、否定的な判断を伴う、いわゆる陳述の副詞、呼応の副詞とされているが、今はもう
「とても大きい」「とてもきれいだ」という使い方をして怪しまない。「全然」も、「たぶん」も、
「おそらく」も同じである。これもその正誤の判断は容易にくだせない。
 また、「この服は、わたしにも着られる」とも言えば、「この服はわたしにも著れる」とも言う。
この可能の助動詞「られる」は、「見れる・出れる・著れる・越えれる」となって、すでに可能
動詞を誕生させている。これも「読める・書ける」の可能動詞を生んだ歴史的過程をたどった変
化であるから、今はもう誤りとばかりは言えない。
 このように、共時的に見ても、通時的に見ても、その正誤の判断に苦しむ例にしばしば出会っ
てしまう。誤用の文法の判定には、このような困難を伴うことを承知しておく必要がある。
 こうしてみると、誤用を正す文法の指導は、それが機能文法の典型ではあるが、誤りを正すと 
28

 O中学生の作文の欠
  陥の傾向
 
いう消極的なものであるし、誤りやすい点にのみ集中するので、その適用の範囲も狭い。
 ところで、中学生の作文について、「中学校国語科学習指導法(ことばのきまり編)」(昭和三十
七年版・文部省)に「生徒の作文には、次のようなことばの組み立てやはたらきに関する欠陥が
指摘されている。」として、次の事項が列挙されている。
 (1) 主題や要旨がはっきりしていない。したがって、その割りふりや強調のしかたがふじゅう
  ぶんで、首尾の整わない文章が多い。
 (2) 段落の意識が少なく、段落の切り方ができず、また、段落を切ってあっても、統一がとれ
  ていない。
 (3) 文の中の文と文とのつなぎ方、接続する語句、指示する語句の置き方などがあやふやであ
  る。 
 (4) 文の成分の置き方が惡く、その照応や統一がとれていないものが多い。ことに副詞の使い
  方に欠陥があり、また、主語・述語等にむだなくり返しがある。
 (5) 用語の点では、語句が貧弱であること。次に、語句の意味をじゅうぶんに理解していない
  ことが目だつ。
 (6) ことばの使い方や使い分けが理解されていない。
  ア コ・ソ・ア・ドの使い方があいまいである。
  イ 連用修飾語・連体修飾語の区別ができない。
  ウ 形容詞のいろいろな活用形が使いこなせない。
  エ 助詞、ことに「は」と「が」の区別、「には」の使い方などがわかりにくい。 
29















④戦後の表現文法の発
 展
 O誤用の文法から表
  現文法へ 
  オ 助動詞の使い方に誤りが多い。
  カ 形容動詞と「そうだ」「そうです」との接続のしかた(様態の場合と伝聞の場合との区
   別)が誤りやすい。
  キ 敬語の用法に誤りが多い。
  ク 場面に応じたことばの使い分けがじゅうぶんでない。
 (7) 時制の誤りがある。
 (8) 表記法の誤りは特に多い。漢字、送りがな、かなづかいの誤りのほか、脱字、句読点、改
  行の不備などが目だつ。
 このあとに、「生徒の上のような欠陥を発見し、これを治療するために心を傾けているものが
あるけれども、一般には、このような指導への関心がまだ乏しいようである。」と述べてある。
 ここで注目すべきことは、「ことばの使い方の誤り」としないで、「欠陥」としたことである。
「誤り」より「欠陥」のほうが、ゆるやかであり、範囲も広い。したがって、「ことばの使い誤
り」の訂正、誤用の文法という狭い領域だけでなく、段落の構成、文章の構成にまで内容を広げ
ている。
 こうして、誤用の文法は、しだいにその領域・内容を広げて、いわゆる表現文法(コンポジシ
ョンをも含めて) へと発展する。その過程をしばらくたどってみよう。
 まず。消極的に話し誤りや書き誤りを正すことを通して、ことばの誤用をなくし、社会的に定
められたことばの使い方に習熟させようとする、いわゆる誤用の文法から、積極的にことばの用
法を学習させようとする方向に進んできた。このことばの使い方、ことばの用法が、社会的な習 
30





 O文法指導としての
  文型指導
  ・文型












   ・基本文型
 
慣としてパターン化したものがいわゆる文型である。したがって、この文型は、社会的に決まっ
ていることばの使い方、用法をささえる文法が、具体化し、パターン化したものであるから、文
型はそのまま文法事実として押さえることができる。
 筆者は、この文型について、当時「国語構座5・文法の理論と教育」(昭和三十三年刊・朝倉書店)
所載の「文法教育の体系と方法(小学校)」の中で、次のように述べている。
  「読解活動・表現活動の基礎に文型がある。その文型に対する感覚を正しくし、鋭くするこ
  とが、小学校の文法教育の基礎であり、本質である。」
  「文型というのは、何かをことばによって表現しようとするとき、その何かを限定し、規制
  する言語表現(言い表わし方)の一般形式である。したがって、この表現の形式は、次の点
  によって規定される。
   1 言語活動の場――話し手と聞き手、書き手と読み手の関係、言語表現の対象など。
   2 話し手と書き手の意図。
   3 言語表現に対する社会的習慣(ことばのきまり)――ことばの切れ続き、係り受けな
    ど文の一般的構造。」
  「わたしが、国語教育の上で取り上げようとする基本文型は、次のようなものである。
   1 ある場面で、あることがらを表現する場合、一般的に用いられる文。
   2 正しいことばのきまりに従って構成されている文。
   3 構造の上でも基本的な文であり、その使用範囲、使用頻度の上でも基本的な文。言い
    換えれば、構造的にも、社会的にも基本的な型の文。 
31
  ・学習基本文型
   学習基本文型
   の体系









 O表現文法
    ことばの用法
    学習基本文型
    文と文との連
    接法
    段落構成法
    文章構成法
    効果的表現法
 O表現文法の体系 
   上のような条件を備えた文型を「学習基本文型」と考える。」
 このようにして選定した学習基本文型は、小学校の一年から六年までの作文を分析して、発達
的に、場面別、経験別、意図別に抽出し組織したものである。発達的にということは、児童の認
識・思考・感情の発達に応じたことばの用法を押さえることである。
 このような学習基本文型の中の基本的なものは、小学校の二、三年までに、ほとんど読書や社
会的習慣によって、感覚的に身につけている。もっと複雑な思想表現、微妙な文末表現を含む学
習基本文型にしても、いわゆる十三、四歳の言語形成期までには、それぞれの言語社会での、言
語形式、言語体系として習得している。
 しかし、それは時にあいまいであったり、不正確であったり、未熟であったり、整えられてい
なかったりするから、文章を書くときになると、さまざまな不備、欠陥が目立つ。そこに改めて
学習基本文型の学習指導の必要性がある。
 このことばの用法から、さらに広く、文と文との接続の仕方、段落の構成の仕方、文章の構成
の仕方など、語論・文論・文章論にわたって広がっていくと、もはや、ことばの用法の概念では、
それらを包み込むことはできなくなった。そこから、表現文法の構想が立てられるようになった。
 この表現文法の内容は、ことばの用法(学習基本文型)、文と文との続き方・段落の構成法・
文章の構成法などのコンポジション、効果的な表現法のレトリックにいたるまで、広い範囲にわ
たるべきものと思う。それらを組織すれば、表現文法の体系は整うであろう。 
 昭和三十三年に出た明治書院の文法講座の第五巻は『表現文法』になっている。その中に、松
井利男氏の「表現文法の体系」の試案が提示されている。 
32



⑤戦後の文法指導の変
 遷の総括
 O文法の位置づけの
  変化




 O考え方・内容・方
  法の変化










 O内容の変化
 しかし、これらの表現文法は、ようやく研究の緒についたばかりであって、現場では実践にう
つすところまではいかなかったように思う。
 以上、戦後の文法指導の変遷のあとをたどってみた。総括すると次のようになる。
1 国語科における文法の位置づけの変遷――戦前の「文法」は「講読」「作文」とともに、独
 立した国語の一科目であって、そのように扱われていたが。戦後の「文法」は、「ことばに関
 する事項」として、「聞く・話す・読む・書く言語活動」に従属するものになった。つまり、
 言語活動を支持する言語要素としで位置づけられ、言語活動を通して学習することを原則とす
 るようになった。
2 文法指導の考え方・内容・方法の変遷――戦前は、一年に「口語文法」、三年に「文語文法」
 を課した。文法教科書を使って、各品詞の形態・機能・活用などの知識(語論)を中心とし、
 文の諸成分の切れ続き、係り受けの関係の理解(文章論―今の文論)を含めた形式文法の体系
 的知識を教えていた。しかし、戦後は、文法を「ことばに関する事項」の一要素として「こと
 ばのきまり」と規定し、機能文法の機能的指導という考え方が、文法指導界を支配した。
  その結果、読解における文法指導、表現における文法指導(話しことばの文法・書きことば
 の文法)の研究が進んだいことばの用法の指導、基本文型ご指導、コンポジションの指導、レ
 トリックの指導をも含めた表現文法の指導へと発展していった。
3 その結果、文法の内容も、すっかり変わった。語論としての品詞の分類・機能・活用などは
 影をひそめ、主語・述語・修飾語・接続語・並立語・独立語などの切れ続き、係り受けの関係
 を追求する文諭が中心になった。それに段落の構成、文章の構成などの文章論を加えた。
33
 O現場の実状     4 しかし、それは文法指導研究の上のことであって、一般の現場では、なお形式文法の体系的
 指導の考え方が止揚しきれず、したがって機能文法の機能的指導に徹しきれず、文法指導に対
 する不安と不信とをぬぐい去ることはできなかった。そのため、国語教科書の随所に配当され
 ている文法事項を説明、解説するか、文法の参考書によって文法知識を教え込むというのが実
 状であったように思う。    


 
     二 中学校の新文法指導はどうあるべきか

 O機能文法の機能的
  指導への抵抗
  ・形式文法の体系
   的指導への回帰
  ・機能文法の機能
   的指導への不安
   と不信 
 戦後の中学校の文法指導は、前に述べたように、機能文法の機能的指導の考え方と方法を中心
にして展開されてきた。しかし、現場は、表向きはそれを承認し、納得したかに見えながら、背
後には、形式文法の体系的指導への回帰を願う心が、長く巣くっていたことは否定できない。
 この形式文法への回帰志向は、形式文法の体系的指導への郷愁だけではなく、機能文法の機能
的指導への不安と不信から生まれたものである。この不安・不信をどのように処理したらいいか、
その処理の仕方の中に、これからの新文法指導のあり方や内容や方法を考える、だいじな契機が
織り込まれている。その不安・不信は何であったろうか。
34



①新学習指導要領にお
 ける文法事項の「目
 標」
 O表現・理解に役立
  つ文法








 O文法の知識を表
  現・理解の活動に
  生かす

 
  1 読解のための文法か、読解における文法か

 新学習指導要領に、第一学年の言語事項の「目標」として、「国語に対する基礎的な知識を得
させて表現と理解に役立てるようにさせる。」とある。これを受けて、「内容」としての〔言語事
項]については、「国語の表現と理解に役立てるため、次の事項(筆者注・言語事項)について指導
する。」ともある。さらに、「第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」の4に「各
学年の内容の〔言語事項〕については、A及びBの指導を通して身につけさせるとともに、ある
程度まとまった知識を得させるための指導も必要である。」と書いてある。
 ここで「言語事項」と言っているのは、①文法に関する事項(文章論・文論・語論) ②語句・
語いに関する事項 ③国語に関する要説的な事項(音声言語と文字言語、共通語と方言、音声と
文字、表記法、敬語) ④漢字に関する事項などである。
 してみると、文法についても、「文法の知識を得させて、表現と理解に役立てる」ということ
になるであろう。このことについて、山本稔氏(学習指導要領作成協力者)は、『中学校学習指導要
領の展開国語科編』(明治図書)の一九二ページに、
   表現及び理解の学習に役立つとは、まとまった知識として得た言語の能力が、表現及び理
  解の活動に生きて働くことをめざした姿を言いあてており、まとまった文法知識を生かすこ
  とにより、表現及び理解の活動が、更に一層推進されることを期待しているわけである。
と述べている。 
35
 〇文法は表現・理解
  の学習の中で学習
  される
 O文法知識は表現・
  理解に役立だない






 O文法学習は文法感
  覚を強化し意識化
  するはたらきであ
  る


 O文法は表現・理解
  の学習を通して身
  につける




O読解学習における
  文法学習
 ところが、この「理解に役立てるため」の文法知識は、それ自体「表現・理解の指導を通して
身につけさせる」ものであり、また、「ある程度まとまった知識を得させるための指導」を通し
てはじめて身につくものである。であるから、文法は、表現・理解の学習をする中で、学習され
るものであって、表現・理解の学習を助ける、それに役立つというものではない。
 そのようにして、ようやく身についたとして、果たしてその文法知識が表現・理解に役立つも
のであろうか。いや、文法知識は、文章理解に役立たないからこそ、役立つほどにみがかれた文
法知識を身につけられたいからこそ、実践家は、理解のための、理解に役立つ文法の指導に不安
を感じたり、不信をいだいたりするのであろう。
 確かに古典文法、文語文法は、古典の解釈・理解に役立つ。解釈文法としての機能を発揮する。
しかし、口語文法は、特別に学習しなくても、すでに経験的に、感覚的に、無意識のうちに身に
つけている。読解はむしろ、その感覚的に身につけていることばの用法、法則性を、いっそう確
かに、正確に身につける、意識化するはたらきをするものと考えられる。
 このことは、学習指導要領でも「表現・理解の指導を通して身につけさせる」と、明らかに述
べている。たとえば「やっとすわれる席を見つけてすわった。」という文の意味を理解するために
は、文法知識の必要はない。「やっとすわれる席」か、「やっと見つけて」か、「やっとすわった」
かなど、あれこれと考えて、正しく意味を理解する過程を通して、「やっと」の副詞の意味や機
能や文の中での位置(係り受けの関係)などが、明らかに意識化される。いわゆる文法意識が育
てられる。
 したがって、「読解に役立てるため」に文法を学習すると考えるのは適切ではない。「読解の過 
  36












①表現と文法感覚
 〇文法感覚



 〇表現と文法感覚



 〇ことばの用法・学
  習基本文型・誤用
  の文法
 〇表現活動を通して
  文法学習をする
程」で、すでに身についている文法感覚を意識化する。文法意識を育てる。つまり、読解のため
に文法学習をするのでなく、読解学習の中で、文法学習をすると考えるべきだろうと思う。
 ところで、読解学習での文法学習は、機会的であり、その内容は断片的であり、相互に関連を
もたせにくい。したがって、これまでその内容を構造的に示すことができなかった。読解におけ
る文法学習への不安はこの点にあった。
 
  2 表現のための文法か、表現における表現文法の学習か

 表現は、思想・感情を表現者の意図に従って、談話・文章として具体的に実現する道である。
その表現の形式、表現形式は社会的慣習として決まっている。その形式を統制しているのが、い
わゆる文法である。人々はそれを文法感覚として身につけている。それは、ことばの使い方、用
法であり、文型である。
 ところで、文章を書く場合、文法知識に導かれて文章を書くということはない。が、実際に中
学生に文章を書かせると、書き誤ったり、不適当なことばの使い方をすることが多い。それは、
社会的習慣としてのことばの使い方、用法、文型が、確かに感覚的に育てられていないからであ
って、文法知識の欠除によるものではない。また、それを誤りと気づくのも、文法感覚によるも
のであって、文法知識によって識別するものではない。だからこそ、文法知識の指導よりも、こ
とばの使い方、用法の指導、学習基本文型の指導、誤用の文法指導の必要を痛感する。
 こう考えてくると、「表現に役立てるため」に文法学習を進めるのでなく、談話・作文などの 
 37





②表現文法の内容
 Oことばの用法に関
  する事項


 Oコンポジションに
  関する事項




 Oレトリックに関す
  る事項







①機能文法への不安 
表現活動を通して文法学習をすることになる。言ってみれば、読解学習を通して育てたことばの
用法に対する感覚、文法感覚、文法意識にもとづいて文章を書く。その文章を書くことを通して
表現文法を身につけるということになる。
 ところで、表現を通して学習する文章の書き方には、どんな基礎的な能力が必要であろうか。
 それは、①ことばの用法に関する事項、②コンポジションに関する事項、③レトリックに関す
る事項によって組織される。
 ①の「ことばの用法」については、すでに述べたので省略する。
 ②の「コンポジション」は、作文法、文章構成法である。文章構成の単位は段落であるから、
段落の構成(話題と説明・解説の関係、要点と細部の諸関係)に関する事項、文章の構成(段落
相互の関係、文章構成の論理)に関する事項が、コンポジションの中心になっている。この文章
構成に関する研究はしだいに進んで、学校文法では、文章論として文法の一分野となってきた。
 ②のレトリック(修辞法)は、日常の表現の中で、必要に応じ、場面に応じて、ほとんど無意
識のうちに身につけている。倒置法などはその一つである。比喩法、漸層法、反復法など、さま
ざまなレトリックが考えられる。
 これらを総合した表現法、表現文法が、これからの文法指導の中核となることを期待したい。

  3 形式文法の体系か、機能文法の体系か

 機能文法の機能的指導が、文法指導の中心問題として踊り出てきたとき、最も根強く抵抗した
 38






②昭和二六年度学習指
 導要領

 O機能文法の機能的
  指導の提唱









③昭和二九年度学習指
 導法
 O文法便覧の使用を
  避ける必要はない

④昭和四三年教育課程 
のは、たびたび述べたように、従来の形式文法の体系的指導が壊されはしないかという危惧であ
った。従来、科目として独立していた文法が、聞く・話す・読む・書く言語活動に従属するもの
となった。しかも、具体的な言語経験を通して、機会的・断片的に学習することを原則とする。
これでは不安を感じるのも無理はない。しかし、この不安はしだいに解消されていく。
 昭和二十六年度の「中学校・高等学校学習指導要領国語科編」の「国語科における文法の学習
指導」に、
   文法をそれだけ取り出して、一個の独立した教科としで学習させたのでは、実際のことば
  の使用の上には、あまり役立たないであろう。むしろ、話したり、聞いたり、読んだり、書
  いたりする実際の生活経験から実例を求め、それを手がかりとして正しいことばづかいの基
  準を与え、文法の規則を理解させるようにしたほうが、はるかにすぐれた方法である。文法
  は、話すとか、聞くとか、読むとか、書くとかという日常の言語生活の場面に関係づけて習
  得させなければならない。
と述べてある。これは「実生活に必要なことばのはたらきを身につけることが、文法学習の目
的」であるとする機能文法の機能的指導の方法を示したものである。
 ところが、昭和二十九年度の「中学校・高等学校学習指導法国語科編」では、「文法の学習指
導」の中で、次のように述べている。
   文法の学習指導に際し、これらの法則を体系的にまとめたものを参考とし、法則のあらま
  しが示されている便覧の類を使うことを必ずしも避ける必要はない。
 さらに、昭和四十三年の教育課程審議会の答申には、
 39
 審議会答申
 〇ある程度まとまっ
  た知識の指導
 〇形式文法の指導へ


⑤「中学生の文法の学
 習」の内容



 〇形式文法の体系
 
   ことばに関する事項(ことばのきまりなど)については、具体的な活動を通して指導する
  とともに、精選した事項について、ある程度まとまった知識を得させる指導もできるように
  すること。
と、あって、しだいに形式文法の指導へと傾いていった。ここで特に注意すべきことは、「精選
した事項についてまとまった知識を得させる」ということである。が、この「精選」を現場では
どのように受け止めていたであろうか。
 ここに『中学生の文法の学習』(全日本中学校国語教育研究協議会編)という本がある。これは、
全国組織の同協議会が作成したものであるから、中学校の現場の文法指導を代弁していると考え
ていいであろう。この本のはしがきに、「この本は中学生が[ことばのきまり][ことばのはたらき]
を学習するものとして作りました。」「文法に関する基本的な知識を系統的に得させるということ
を、終始念頭におきました。」という記述がある。
 そこで、その内容を見ると、「基本編」として、従来の形式文法の体系が、文章論をも加えて
詳細に記述されている。「動詞」を例にとってみると、①動詞の活用形(語幹・語尾)②活用の
種類(五段活用・上一段活用・下一段活用・力行変格活用・サ行変格活用)②自動詞と他動詞④
可能動詞⑤形式動詞(補助動詞)などについて解説されている。「助動詞」については、①受け
身・可能・自発・尊敬 ②使役 ②意志・推量・推定・断定 ④希望 ⑤否定 ⑥過去・完了・
存続 ⑦丁寧 ③助動詞相当語などがあげてあって、それぞれについて活用表が添えられている。
 こうして見てくると、戦前の形式文法の内容となんら異なるところはない。「精選」など、ど
こにも考えた形跡はない。 
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⑥昭和五二年度学習指
 導要領
 ある程度まとまっ
  た文法の知識の指
  導

 ある程度まとまっ
  た文法知識の内容

  ・文法事項の精選





  ・言語事項の中の
   文法事項の知識
   の体系
  ・文法知識の指導 
 ところで、新指導要領では、前にも引用したが、「指導計画の作成と各学年にわたる内容の取
扱い」の項に「〔言語事項〕については、A及びBの指導を通して身につけさせるとともに、あ
る程度まとまった知識を得させるための指導もできるように配慮する必要がある。その場合、内
容の取り扱いが必要以上に細部にわたったり、形式的になったりしないように注意する必要があ
る。」と述べてある。これは、「機能文法の機能的指導」とともに「ある程度まとまった文法知識」
の学習の必要性を説いたものである。
 この「ある程度まとまった知識」は、学習指導要領に示されている言語事項についてである。
それは、文章論・文論・語論についての知識であって、特に「精選」した文法事項ではないよう
である。
 考えてみれば、理解・表現に必要な文法事項は、従来の形式文法の内容とは違うはずである。
そこに精選の必要性がある。たとえば、前記の『中学生の文法の学習』の中にある「用言の活用
形の名前や種類」「助動詞の活用形」「助詞の種類」などについての知識は、必要ないであろう。
この文法の学習内容の精選のよりどころは、本質的には機能的な文法事項を選ぶことと、形式的
には、国語の学習時間が一・二・三年それぞれ週五・四・四時間に短縮された厳しい現実とにあ
る。
 そこで、「ある程度まとまった知識」の内容と、その体系・組織をどうするかが大きな問題に
なる。学習指導要領の記述によれば、「言語事項の中の文法事項(文章論・文論・語論)の知識
の体系」になるであろう。したがって、それは形式文法の体系化につながっていく。
 このことについて、『中学校学習指導要領の展開国語科編』(明治図書)に、「[ある程度まとま 
 41








 機能文法と形式文
  法の二本立て指導
 
つた知識〕について言えば、〔言語事項〕の知識の断片を累積するのではなくて。全体として、
またそれぞれの段階で、ある程度まとまった知識を与えることは、表現・理解への有効な貢献の
ために、当然必要なことだと言える。」(一三六ページ・市川孝)また、「ある程度まとまった知識を
得させるために行う取り立て指導においては、文章・文・語の指導事項を系統的に指導すること
が基本となるが、この三つの指導事項を、三か年にわたって繰り返し螺旋的に指導することによ
り、確かな文法的知識を得させ、その定着を図り、生徒自身のうちに、体系的にまとまった知識
として確立させ、表現と理解に役立たせようとするものである。」(一九七ページ・山本稔)とあ
るのでも明らかであろう。
 これでは、どんなに工夫しても、「機能文法の機能的指導」と、「形式文法の体系的指導」の二
本立て指導にならざるを得ないであろう。でなければ。従来の「形式文法の体系的指導」中心に
なってしまうであろう。
 というのは、「表現・理解の過程で学習する機能文法」の内容は、前にもふれたように、従来
の「形式文法の体系」そのものではない。当然その内容も異なってくるし、指導の重点も異なっ
てくる。
 そのうえ、文法知識の体系的指導ということになれば、内容的価値の学習を離れた、形式的な
文例による法則の抽象に頼る以外に方法はないであろう。しかも、定期的に時間をとって、継続
的に学習するか、あるいは、適宜時間を設けて断続的に学習するか、学期の終わりにまとめて指
導するかしなければならないであろう。
 とすれば、いやでも機能文法と形式文法の二本立ての学習にならざるを得ない。そこで、機能 
 42







 機能文法の体系的
  知識
 
文法の学習と、学習指導要領でいう、ある程度まとまった文法知識の学習とを一本化する。一元
的に指導するためには、別の角度・立場から考えてみなければならない。
 しかし、学習指導要領では、「言語事項」として示した「文法事項」を、いっぽうでは、表現・
理解の学習過程で指導し、他方では、その同じ「文法事項」を知識として体系的に指導しようと
している。それは、実際には不可能に近い。
 であるから、表現・理解学習を通して指導する機能文法、表現文法を機能的に学習したあとで、
それらを整理して、そこに内在する法則性、文法を抽出して、文法知識として、具体的に学習す
ることを工夫する必要がある。言ってみれば、機能文法、表現文法を、知識化し、体系化すると
いうことになる。
 このように、学習する文法知識の体系は、形式文法の体系的知識ではなく、機能文法の体系的
知識として学習する。こうすれば、機能文法の機能的指導と、それを抽象化した文法知識の指導
とを、一体的にすることができる 
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     三 中学校新文法指導の体系
 
 










①新文法指導の構想
 機能文法の機能的
  指導と機能文法の
  知識の体系的指導
  ・理解における文
   法指導
  ・表現における文
   法指導 
  1 機能文法の機能的指導

 これまで、戦後の文法指導はどのように移り変わってきたか、その歴史的変遷のあとを、かな
り詳細にわたって記述してきた。と、同時に、そこに横たわる問題点についても、細かく検討を
加えてきた。その結果これからの文法指導のあり方を考える基礎が得られたように思う。そのよ
うな文法指導の認識の上に立って、新しい文法指導のあり方、文法指導の構想について述べるこ
とにする。
 新文法指導の構想は、まず「機能文法の機能的指導」と「機能文法の知識の体系的指導」とを
一体的に指導するところから始まる。機能文法の機能的指導はさらにこれを二つに分ける。その
一つは、「理解(聴解・読解)における文法学習」である。その内容は後に詳説するが、文章の
機能・構成、段落の機能・構成。文と文との接続、文の構成、語の機能・用法などである。
 他の一つは、「表現(談話・作文)における文法学習」で、その内容は、文章・段落の構成、
文と文の接続、文の構成、学習基本文型、語の用法などである。 
 44
 表現・理解におけ
  る文法の相関















①読解における文法指
 導
 文法事実
 文法感覚
 文法意識


 文法事実―法則性
  ―知識 
 この理解における文法指導と、表現における文法指導とは、表裏一体の関係に立っている。理
解学習の過程で行う、前記の文法事項の指導を通して、すでに身についている文法感覚を。文法
意識にまで高めたり、まだじゅうぶんでない文法感覚を、いっそう確かにしたりする、どちらか
といえば、消極的な文法学習が中心になる。
 表現学習の過程で行う、いわゆる表現文法の指導では、文法感覚・文法意識にもとづいて文章
を書くことを通して、文法力、文法技能を高めたり、未熟な文法感覚によって誤用された文法を
正すことを通して、文法感覚、文法技能を高めたりする積極的な表現文法の指導が中心になる。
 要するに、機能文法の機能的指導は、文法感覚を育て、文法意識を高め、文法力、文法技能を
開発することをめがけて行う。

  2 機能文法の知識の体系的指導

 文章理解を正しくし、深める過程で、生徒はさまざまな文法事実を経験して、文法感覚をはた
らかせたり、磨いたり、また、それを意識化したりする。
 たとえば、文章の理解を正しくし深める過程で、文と文との接続の関係を明らかに知ることを
通して、接続語の機能を意識化したり、その機能は、接続語によって違いのあることを発見した
り、接続語にはいろいろな種類のあることを理解したりする。
 こうして、経験したたくさんの文法事項(文法経験)を収集して分類・整理し、その間にある
法則性――前の文を受けて、あとの文に続ける機能、接続語による機能の違い(順接・逆接・相
 45



③表現における文法指
 導















①文法感覚を矯正し強
 化する
 o文法感覚の経験
  的・社会的学習
 
即・累加・因果・選択など)のあることなどを発見し、組織すれば、接続語についての文法的知
識が得られる。
 また、文章構成・文章表現を正しくし、適切にする過程で、表現意図を展開し表現するために
文章の構成・段落の構成・文と文との接続・学習基本文型・語の用法などを学習した。これらの
さまざまな文法事実、文法経験に出会うことによって、表現文法についての感覚・意識を高める
とともに、文法的に処理する技能を身につけてきた。
 そうした文法事実・文法経験を収集整理し、そこに内在する法則性を抽出し、概念化し、組織
すれば、表現文法の知識を組織し体系化することができる。

   3 中学校文法指導のシステム

 以上のように、中学校の新文法指導は、「機能文法の機能的指導」と「機能文法の知識の体系
的指導」とによって組織し体系化する。その新文法指導のシステムをささえている、基本的な考
え方を、発達的・段階的に述べてみる。
 日常話したり、書いたり、聞いたり、読んだりする言語生活の中で、お互いに意志を的確に通
じ合うことができるのは、すでに社会的慣習として定着している話しことば、書きことばのきま
り(話しことば、書きことばの用法・文型)に従って、ことばを使っているからである。
 この話しことば、書きことばを使う上のきまり、つまり「文法」は、日常の言語生活の中で、
経験的、社会的に模倣し学習するもので、いわゆる文法感覚として、自然に感覚的に身について 
 46


 O文法感覚の強化・
  矯正



 O文法指導の第一段
  階



②文法意識を確かにし
 高める
 O文法感覚から文法
  意識へ
 
いる。したがって、話したり書いたりする上の基礎、原動力で、この文法感覚にささえられるか
らこそ、自由に正しく話したり書いたりすることができる。
 ところが、この文法感覚は、自然的・経験的に習得するものであるから、欠陥があったり。誤
りがあったり、不確実であったり、方言的特色をもっていたりすることがある。そのことは、話
をしたり、文章を書いたりしてみると、話し誤りや書き誤り、不適当な話し方や書き方が現れる
からすぐわかる。
 これらの不正不備の文法感覚は、表現・理解の学習の過程で、社会的に決まっていることばの
用法、文法、つまり、叙述されている文型やことばの用法に従って矯正・強化し、正しい文法感
覚に育てあげる必要がある。ここに最も基礎的・原点的な文法学習のねらいがある。これを文法
指導の第一段階とする。
 ところで、その文法感覚は、前に述べたように、無意識に模倣することによって身につけてい
る。したがって、ふだんは眠っているように見えるが、いったん誤った表現、不適切な表現など
に出会うと、たちまちはたらき出して、違和感を覚えさせたり、不安を感じさせたりして、その
誤りに気づかせる。そういうはたらきをもっている。
 そこで、文章読解の過程で、文章を正確に深く理解することを通して、感覚的に身につけてい
る文法を意識化する。つまり、感覚的な文法を、意識的な文法、文法意識へと高めることかだい
じになってくる。
 たとえば、助詞「わたくしが」と「わたくしは」を、生徒は無意識に自由に使い分けて、ほと
んど誤ることがない。それは、「が」と「は」の用法を感覚的に身につけているからである。別 
 47









 O文法学習の第二段
  階


③文法技能を養成する
 O文法感覚から文法
  技能へ 
にその用法の違いを理解していて使い分けているわけではない。
 しかし、「だれがやりましたか。」の間いに対して、「わたくしはやりました。」という答えには、
だれしも違和感を覚える。それに対して「だれがやりましたか。」に対しては、「わたくしがやり
ました。」という答えが、問いに応じた適切な答え方であることを、はっきりと自覚する。
 その上で、助詞「が」と「は」の間には、使い方の上で違いがあること、その違いの間には法
則があることを、多くの文法事実を通してはっきりと意識化する。
 こうして、感覚的な文法(用法)を、意識的な文法(用法)へと高める。つまり、文法感覚を
文法意識にまで高める。それは、コミュニケーションをなめらかにする上にもだいじなことであ
る。
 このように感覚として身につけている文法を、文法事実の学習を通して、そこに法則性のある
ことを発見し、意識化することが、読解学習における文法学習である。ここに、文法学習の第二
段階がある。
 ところで、自然的・感覚的に身につけている法則性(文法感覚)を、矯正し、強化し、意識化
するだけではじゅうぶんではない。その法則性を適用して、自由に正しく話したり、書いたりし
て、コミュニケーションができるようにすることが大切である。この法則性に従って、つまり、
文法に従って話す、書く力が、文法力・文法技能である。
 たとえば、主語・述語の照応した文を書く技能、接続語を使って文と文とを続けて書く技能、
副詞の呼応を正しくして文を書く技能、文の構成要素(成分)の関係を正しくして文を書く技能、
要点と細部との関係を考えて段落を構成する技能、段落相互の関係を考えて文章を構成する技能 
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 O文法学習の第三段
  階
④文法知識を体系化す
 る
 O文法の知識化



 O文法は体系をもっ
  ている



 O指示語





  ・指示語の類別と
   指示機能
  ・指示語の指す事
   項
  ・指示語の法則性 
など、文法に従って表現する技能が、文法力・文法技能である。
 このような文法技能の養成は、いわゆる表現文法として、表現学習を通して行われる。表現に
おける文法指導がそれである。これは、文法学習の第三段階である。
 次は、文法の概念化、知識化である。文法感覚の養成にしろ、文法意識の強化にしろ。あるい
は、文法技能の適用にしろ、すべて表現・理解における文法事実・文法経験を通して学習される。
したがって、それは機会的・断片的・孤立的な学習になりやすいし、学習の機会も、文法事項の
軽重に応じて適切に調節することは困難である。
 もともと文法はばらばらに、弧立的にあるものではなく、整然とした組織・体系をもっている。
機能的に学習した文法にしても、それなりの体系をもっている。機能的に学習した、つまり、さ
まざまな文法経験を通して、随時学習し、積み上げてきた文法感覚・文法意識・文法技能につい
ても、それぞれ相互に関連をもち、系統立っていて、文法全体としての体系をもっている。
 たとえば、指示語についてみると、表現・理解の学習の過程で、随時いろいろな指示語のある
こと、指示する機能をもっていること、指示語ごとに指示する事項に違いのあることなどを学習
する。こうして、随時個々に学習してきた指示語を含む文法事実を収集・整理して、そこにある
法則性を発見し概念化し整理すれば、指示語についての体系的知識をまとめることができる。
 もっと、具体的に言ってみれば、それは①指示語をその職能によって分類・整理すると、代名
詞・連体詞・ある種の副詞があって、それぞれ近・中・遠・不定を指示する機能をもっているこ
と。②指示語はその類別によって、指示する事項に、事物・所・方角・人・様態・状況などの別
のあることなど、指示語の内にある法則性を、概念化し知識化するということになる。こうして、 
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  ・指示語の体系
  ・文法知識の新し
   い意味


 O文法知識の体系



⑤文法指導の基本的構
 想
 O文法指導の段階
 
いわゆる「こ・そ・あ・どことば」についての体系的知識を身につけることができる。しかも、
その知識は単なる知識ではなく、多くの文法事実・文法経験をささえる文法感覚・文法意識・文
法技能に内在する法則性を抽出し発見し習得した知識であって、既成の知識を暗記し記憶したも
のではない。生徒みずからが発見し創造するところに新しい意味がある。
 このようにして、語の用法上の法則、文の構成上の法則、文と文とを接続する上の法則、段落
構成・文章構成上の法則などを、それぞれ発見し、知識化すれば、語・文・文章についての文法
知識を、文法体系として組織することができる。
 4上の文法指導の段階を踏まえて整理してみると、次のようになる。
 ① 第一段階―文法感覚→法則性の感覚化
 ② 第二段階―文法意識→法則性の意識化
 ③ 第三段階―文法技能→法則性の技能化
 ④ 第四段階―文法知識→法則性の概念化
 ①は、自然的・経験的に身につけた文法感覚を矯正したり、強化したりする段階。表現・理解
のあらゆる学習の機会をとらえて矯正したり強化したり、広げたりする。
 ②は、感覚的に身につけている法則性を自覚したり、意識化したりする段階。日常の表現・理
解の社会慣習的なことばの使用の中に、ことばを使う上の法則のあることを自覚し、意識化する。
そうして、ことばの使い方の正否を判断し、意識的に法則に従った正しいことばを使うようにす
る。
 ③は、法則性に従って、法則性を適用して正しいことばを使う段階。ことばのきまりに従って

 
 50







 O文法指導のシステ
  ム
 
正しく表現したり、理解したりする技能、つまり、文法技能・文法力を育て伸ばすようにする。
 ④は、法則性を概念化し、知識として理解する段階。表現・理解を通して経験した多種多様な
文法事実を整理し分析して発見した法則性を概念化し、知識化する。じゅうぶんな文法経験を経
ないうちに、法則性の概念化を急いではならない。文法知識の体系化はこの段階で行う。
 このように文法指導は、段階をたどって行うのであるが、さらにそれをシステム化してみると
次のようになる。
    ┌―理解学習─文法経験─文法事実─文法感覚─文法意識の学習─┐
機能文法┼────―――――――――――――――――――――――――┼─文法知識の学習
    └─表現学習―文法経験―文法事実―文法技能の学習―─────┘
 要するに、小学校の文法指導では、表現・理解の学習を通して、最も基本的な文法事実にもと
づいて、文法感覚を矯正し、強化して正しい文法感覚を習得する。文法意識を高め、ことばの用
法や文と文との続け方に習熟する。簡単な段落の構成、文章の構成を考えて文章を書くことに慣
れる。こうして、文法力・文法能力を養成する。これに対して、中学校では、小学校で学習した
文法について、さらに螺旋的に、くり返し学習し強化するとともに、基本的な文法事項の範囲を
広げ、内容を高めて、文法事項を体系的に組織する。その上に立って、学習した機能文法に対す
る必要な知識の学習を加えていく。ここに中学校の文法指導の前進がある。
 
 51
         四 新文法指導の目標は何か

 

①昭和一八年「中学校
 規程」の「目標規定」
 

   ― 戦前の文法指導の目標

 昭和十八年に制定された「中学校規程」の「国民科国語」の「教授要旨」の最後に「国民科国
語ハ、講読、文法。作文及話方ヲ課スベシ。」とある。それを受けて「教授要項」に
  二 文法(口語法・文語法ノ大要卜、国語ニ関スル基本的事項トヲ授ケテ、国語ノ正確ナル
   理解、発表ノ能力ヲ修練シ、国語ノ構造及ビ特質ヲ会得セシメ国語意識ノ確立ニ資スベシ。
という規定がある。
 この要項では、文法指導の内容を、
 ① 口語法と文語法の大要  ② 国語に関する基本的事項
とし、その学習の目標を
 ① 国語の正確な理解・発表の能力を修練する。
 ② 国語の構造及び特質を会得する。
 ③ 国語意識を確立する。
 52










②橋本進吉博士の目標
 論
 O国民的思考法の訓
  練

 O精神・文化の科学
  的認識法の訓練

 
と規定している。この規定は
 ① 「口語法と文語法の大要」を授け、「国語の正確な理解・発表の能力」を修練する。
 ② 「(口語法と文語法の大要)国語に関する基本的事項」を授け、「国語の構造及び特質」を
  会得する。
 ③ ①と②の指導を通して「国語意識」を確立する。
というシステムになっている。①は言語能力(文法能力)、②は言語知識(文法知識)、③は言語
意識(文法意識)と考えてよいであろう。
 これは、文法指導の要項であるから、文法指導の内容と、その学習の結果、言語的に養成され
る意識・能力・知識とをあげていて、すべて言語内の問題としてとらえている。したがって、文
法指導の目標として、もっと高い立場・別の立場に立って考える向きもあった。
 たとえば、橋本進吉博士は、「国語学と国語教育」(昭和十二年九月、「岩波講座国語教育」)の中で、
文法は、広く国語教育の立場から見れば、文法の知識は、わが国語の構造を明らかにし、国語の
特色を知らしめ、又、文法の上にあらわれた国民の思考法を知らしめるのに必要であるとし、文
法指導を通して、「国民の思考法」を訓練することの必要を述べている。
 また、われわれ自身の心理的現象や身近に接する文化的現象を観察し、その中に存在する規則
を見出すような観察法の修練をする学科は、文法以外に見出しがたいとして、「精神や文化現象
を観察する方法の一端」を会得することの必要を説いている。
 このように、文法の学習を通して、国民的思考法の養成と、精神・文化の科学的認識法を身に
つけることを主張している。 
 53




  




①昭和二二年度学習指
 導要領の文法学習指
 導の目標 
 いずれにしても、このような目標観の違いは、既成の文法知識の大要を授けるという立場と、
言語の中に存在する法則、規則を発見し組織するという立場、つまり、方法的立場の違いによる
ものである。

  2 戦後の文法指導の目標

 戦後、文法指導の内容も方法も一変した。いわゆる「機能文法の機能的指導」が中心になって
いた。が、やがて機会的指導から、系統的指導への方向をたどって、再び文法知識の系統的指導
が間題になるようになった。
 このような文法指導の考え方、内容、方法が変わるにつれて、その目標規定も変わってきた。昭
和二十二年度「学習指導要領国語科編」の、文法の学習指導の目標では、次のように規定している。
 1 国語のきまりを経験的に知って、正しく美しく思想を表現するとともに、的確に他人の思
  想を理解する能力を得させる。
 2 国語の構造を知る。
 3 国語の特質をさとらせて、国語に興味を持たせる。
 まだ、国語科における文法指導の位置づけも考え方も明確にされてはいない。しかし、「こと
ばのきまりを経験的に知って」とか、「表現・理解の能力を得させる」とかあって、文法指導が、
文法知識の指導ではなく、言語経験を通して、ことばの用法を身につける方向への発展を示唆し
ている。 
 54
②昭和二六年度学習指
 導要領の文法学習指
 導の目標










 〇ことば・を使う態
  度・習慣


 〇ことばの用法の知
  識・理解・鑑賞




 Oことばを使う技
  術・能力
 この後改訂された昭和二十六年度の「中学校・高等学校学習指導要領国語科編」になると、文
法学習指導の目標は、
 (一) 社会的にきまっている正しいととばづかいをしようとする習慣・態度を養う。
 (ニ) ことばの使い方についての知識と理解と鑑賞とを確かなものとする。
 (三) ことばをいっそう正しく効果的に使う技術と能力とを高める。
 (四) ことばに対する自覚を高め、ことばに対する愛護の心を養う。
となっている。これは、当時学習指導要領での目標規定の仕方が、「ことばについての知識・理
解、技術・能力、態度・習慣、理想」というように、国語科の目標を、分析的に、具体的に記述
するようになっていた。文法指導の目標規定もこれに従ったのである。
 (一)は、「ことばを使う態度・習慣」――文法は社会的に決まっていることばの使い方・用法の
中に存在していてそれを規定する法則性、きまりである。そのきまりに従って、ことばを正しく
使おうとする態度・習慣は、ことばを使う技術・能力を保証する。
 (二)は、「ことばの使い方の知識・理解・鑑賞」――ことばの使い方の知識は、ことばの使い方
の正否、適否についての知識、理解は、それを正しく使い分ける深い知識で、ともにことばを正
しく使う技能をささえるものである。また、鑑賞というのは、感覚的に正しいことばの使い方を
正しいと認めて、それに親しみあこがれることである。
 (三)は、「ことばを使う技術・能力」――ことばを場に応じ、内容に従い、きまりに従って正し
く使う使い方が技術、その技術がくり返し訓練されて身につく、体制化されたものが能力。正し
くは文法的に正しいことであり、効果的は、正否を越えてより効果のあることで、いわゆる修辞 
 55


 Oことばの自覚と愛
  護






 O戦前の目標との違
  い 
法(レトリック)の間題である。
 (四)は、「ことばの自覚と愛護」――ことばを使うことを通して、ことばに対する自覚・意識を
高め、つねにことばの使い方を正しくし、適切に使っていこうとする心を育てることである。
 これらの目標は、並列的なものではなく、相互に関連をもっていて、次のようにシステム化さ
れている。①「ことばの用法の知識・理解・鑑賞」と、②「ことばの用法の技術・能力・態度・
習慣」とが、相互補完的に学習され、さらにその学習を通して③「ことばの自覚・愛護の心」が
養成される。
 このように、文法指導の目標は、「ことばの使い方・用法」を理解し、使用し、習慣化して、
ことばの意識を高め、ことばを尊重し愛護する心を育てるところに置かれていた。
 これは、戦前の文法指導の目標とは大きく変わっている。戦前の文法指導は、形式文法の形式
的指導であったが、戦後の文法指導は、機能文法の機能的指導が強調され、その中心として、こ
とばの使い方、ことばの用法指導を行おうとしていたからである。
 ところが、国語科教育の単元学習が批判され系統的指導が打ち出された昭和三十三年度の学習
指導要領になると、文法指導の目標の考え方も、その記述の方法も大きく変わってきた。それま
で、分析的で、具体的だった目標が、総合的な一般的な高度な目標記述に変わった。それに従っ
て、この一般的な目標を分析して、各学年に配当し、やや具体的な目標を記述するようになった。
この方法、システムは、それ以後踏襲されている。次に、昭和三十三年度、昭和四十四年度、今
回新しく実施される昭和五十二年度の学習指導要領国語に規定されている、文法の学習指導の目
標を並記してみる。
 56

③昭和三三年・四四年・
 五二年度学習指導要
 領の文法学習指導の
 目標の比較 
昭和33年度 学習指導要領 昭和44年度 学習指導要領 昭和52年度 学習指導要領
① ことばのはたらきを理
 解させ
② 国語に対する関心や自
 覚を深め
③ 国語を尊重する態度や
 習慣を養う
① 国語の特質を理解させ

② 言語感覚を豊かにし

③ 国語を愛護してその向
 上を図る態度を養う
① 国語に対する認識を深め

② 言語感覚を豊かにし

③ 国語を尊重する態度を育
 てる
 これを見ると、ことばに関する事項、言語事項(文法)の学習目標の記述は、①言語知識 ②
言語感覚 ③言語態度とシステム化されている。この三者の関係は、「○○を理解させ―→○
○を深め―→○○を養う」「○○を理解させ―→○○を豊かにし―→○○を養う」、「○○
を深め―→○○を豊かにし―→○○を育てる」というように過程的・一体的にとらえられている。
 この点では、全く同じパターンになっているが、子細に見ると、その間にしだいに整理され、
合理化されていく姿を見ることができる。
 たとえば、言語知識の押さえ方にしても、ことばの用法の学習を通して、一般的な「ことば
の機能」を理解させる。文法学習の所産として、知的・価値的にとらえた「国語の特質」を理
解させる。文法学習を機能的にとらえて「国語の認識」を深めるなど、微妙な発展を見せてい
る。
 57








④新学習指導要領の文
 法学習の目標





 O国語に対する認識







 O言語感覚を豊かに
  する
 
 また、そのような言語の理解を通して、「国語に対する関心・自覚」を高めるという、経験的
態度的なとらえ方から、「ことばの理解表現」、つまり、言語使用上の原点・原動力としての「言
語感覚」を豊かにするという本質的なとらえ方へと進んでいる。こうして、文法指導の目標は、
究極において、「国語を尊重する態度・習慣」「国語を愛護し向上する態度」「国語を尊重する態
度」など、言語態度の育成に落ち着いている。
 ところで、新学習指導要領の文法学習(言語事項)の目標は、
 ① 国語に対する認識を深め
 ② 言語感覚を豊かにし
 ③ 国語を尊重する態度を育てる
というシステムになっているが、果たしてこれでいいのであろうか。
 「国語に対する認識」というのは、表現・理解の過程で行う文法の学習を通して、国語の構成、
国語の使用上には一定の法則があること、文を構成する上にも、それを続ける上にも、一定の法
則があること、段落や文章を構成する上にも、明確ではないにしても、法則的なものがあること
などを理解する。つまり、ことばの使用上、構造上の特質・特性を知的に理解する。
 このような国語の機能、特質・特性を理解すること、つまり、国語を正しく認識することを通
して、国語を尊重し愛護する態度を育てることをねらっている。
 ところで、言語感覚というのは、本来、日常の言語使用――話す・書く・聞く・読むなどの活
動――を通して、自然的に、経験的に、社会的習慣として形成されるものである。が、前に述べ
たように、まだじゅうぶんに熟していない言語感覚については、これも正しい言語使用を通して、
 
 58



 o言語感覚は言語活
  動の原動力


 o言語感覚と言語能
  力








 o言語感覚から言語
  態度まで
 
矯正し、是正して、より確かな言語感覚に育てあげる。それは、けっして言語知識・文法知識に
よって育成されるものではない。
 したがって、言語感覚は、表現活動・理解活動の基礎、原動力となるもので、その点から言語
使用を法則的に規制するものである。と同時に、その活動を通して、言語感覚をいっそう正しく
し、豊かにしていくものである。
 この正され、豊かになった言語感覚にもとづいて、正しく効果的に表現し理解する能力が、基
礎的な言語能力・文法能力である。それは、正しい表現、適切な表現を選んだり、誤った表現を
正したりする能力である。
 こうして、経験的・社会慣習的に、また、学習によって育てられた言語感覚、基礎言語能力を
はっきりと自覚し、意識化するところに、文法学習は成り立つものと考えられる。つまり、感覚
的、能力的に身につけていることばのきまり、ことばの法則を、明確に意識化する。そこから、
形式的ではない、機能的な言語知識(文法知識)の学習が期待される。
 要するに、「国語に対する認識を深める」ためには、言語感覚(文法感覚)の意識化、言語意
識(文法意識)の喚起が前提になる。その過程をたどってみると、
 ① 言語感覚を豊かにする(文法感覚の経験的学習)
 ② 基礎言語能力を育てる(文法能力の行動的学習)
 ③ 言語意識を喚起する(文法意識の法則的学習)
 ④ 言語知識を習得する(文法知識の理解学習)
 ⑤ 国語に対する認識を深める(国語の特質・特性の理解学習)
 
 59



 o文法感覚から文法
  態度へ







⑤文法学習指導の目標
 の設定とその記述 
 ⑥ 国語に対する態度を養成する(国語を尊重し理想を追求する態度の学習)
となる。これを特に文法指導という点から整理してみると、
 ① 文法感覚を豊かにする(言語に対する感覚を豊かにする)
 ② 文法能力を育てる(言語感覚にもとづいて正しく表現し理解する能力を育てる)
 ③ 文法意識を高める(言語に対する自覚・意識を高める)
 ④ 文法知識を習得する(国語の法則的知識、国語の構造・特質を理解する)
 ⑤ 文法態度を身につける(国語に対する関心・興味を増し、国語を尊重する態度を育てる)
ということになる。
 このように考えてみると、学習指導要領の目標の記述の仕方では、文法指導の目標を論理的に、
的確に言い表していないように思われる。もっと、文法指導の本質を明らかにし、文法学習の成
り立つ過程を押さえ、その過程ごとの学習目標を確認した上で、それらをシステム化して設定す
べきであろう。
 試みに記述してみると、次のようになる。
  O言語感覚を養い、言語能力・言語意識を高め、国語に対する認識を深めて、国語を尊重す
  る態度を育てる。
 あるいはまた、次のようにも記述できる。
  O言語に対する感覚を養い、能力・意識を高め、知識を求めて、国語を尊重する態度を育て
  る。
 文法学習の目標を、このように考えないと、表現・理解を通して文法学習をするという考え方
 
 60
  は出てこない。そればかりでなく、表現・理解に役立てるための文法学習という考え方には、矛
盾があることが理解されるであろう。
 文法学習の目標は、本質的立場に立って設定する必要があるし、そこから文法指導の考え方も
方法も出発しなければならないと思う。
 
 61
      第二章 新文法指導の内容とそのシステム
 62
    一 中学校における文法指導内容の精選の歴史 
①戦前の文法指導の内
 容




②昭和二二年度学習指
 導要領の文法指導の
 内容
 
 戦前の文法指導の内容は、文法の学的研究の成果として提示された形式文法の全体系で、いわ
ゆる文法知識の体系そのものであった。それが、戦後機能文法の機能的指導ということが言われ
て、文法指導の考え方が一変し、したがって、その内容も、いわゆる教育文法、学校文法という
立場に立って、機能的に考えられるようになった。
 以下、戦後つねに先導的役割を果たしてきた学習指導要領にそって、文法指導の内容が、しだ
いに精選されてきた状況、歴史のあとをたどってみることにする。
 戦後間もない昭和二十二年度に出た学習指導要領の「文法の学習指導」の中には、小学校・中
学校の文法指導の内容が次のように記載されている。
 (一) 国語・ことばと文字・敬語・かなづかい。
 (二) 文・文節・単語。(自立語と独立語)  (注・独立語は付属語の誤りか。)
 (三) 文の構造。(主語と述語・修飾語・独立語)
 (四) 文節と文節との関係。
 (五) 品詞分類。
 (六) 動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の活用、動詞の種類と用法。 
63

③昭和二六年度学習指
 導要領の文法指導の
 内容
 O中学校・高等学校
  の文法指導の内容 
 ごく簡単なものであるが、戦前の形式文法の域を脱しきれないでいる。それが、機能文法の機
能的指導が提唱された昭和二十六年度の学習指導要領になると。こんどは、中学校・高等学校の
文法指導の内容として、次のように示されている。

 (一) 文。
  表現の単位としての文と、その成分や組み立てを明らかにすること。
  イ 文のいろいろな型。
  口 文の成分。
   主語と述語、修飾語および接続する語などに分けて意味をはっきりさせること。
  ハ 文の組み立て。
   句と節、ひとつづきのこみいった考えをまとめ、二つ三つの文をつないで一つの長い文と
   すること。
 (二) 語の使い方を明らかにすること。
  イ 語の用法と意味。
  ロ 助詞・助動詞の類。
  ハ 語形の変化と接尾辞・接頭辞・語根。
   なお、語の音変化や、複合語・同意語・反対語にふれること。
  ニ 連語・慣用語など。
 (三) くぎり。 
 64
    話す場合には、ことばの調子や態度などによって、その表現を助ける。しかし、書くときに
  はこんな手段がないから、正しい書き表わし方は、相手によくわからせるために必要である
  こと。
 (四) 文章。
  イ 文と文との間のつながり。
  ロ 文の並べ方。
   考えていることを整理して段落をくぎり、話の運び方がよくわかるように順序よく並べる
   こと。
 (五) 効果的なことば。
  イ 相手と時と場所とに応じた適切な表現。
   その場にぴったりあてはまった、相手にもそれとはっきりわかるようなことばを選ぶこと。
  ロ はっきりしたことば。
   単語や言いまわしが、自分の思うところにぴったりとはまっていないときは、たとえその
   形が整っていても、すぐれたことばづかいとはいえないこと。
  ハ 美しいことば、力のこもったことば、韻律・修辞など。たとえば、文の構造に変化を与
   え、人をひきつけるようなことばづかいをすること。
 (六) 進んで文法体系を授けて、ことばの構造を明らかにし、また、古典を理解するために文語
   法の大要を学ばせる。言語の変遷、日本語と外国語との比較、言語と思考、言語と文化、言
   語と文学、国語表記上の特殊性、ことばのもつ使命などについても、適当な機会を求めて理
 65


 O中学校の文法指導
  の内容







  ・中学校初級の文
   法指導の内容
 
  解させるように配慮する。

 このうち、中学校では、すでに小学校で習得してきた知識と能力とを整理しながら、次のよう
な事項について基礎的理解をもたせるとしている。
 (一) 地域と言語。
 (二) 社会と言語。
 (三) ことばの移り変り。
 (四) 言語表現のいろいろ。
 なお、中学校の初級では、文法指導の次の内容について理解させ、能力を増すようにするとあ
 る。

 (一) 文の組み立て。
  首尾の整わない文、断続のはっきりしない文を見分ける。
  文は部分に分けられるということがわかり、文の成分としての主部と述部とを見分ける。
  こみいった主語と述語を見分ける。主語を用いない文があることに注意する。
  主部と述部、それぞれの中心語、修飾語、接続する語などに分けて、文の意味をはっきりさ
  せる。
 (二) ひとつづきのこみいった考えをまとめ、二つ三つの文をつないで、一つの長い文とする。
  適当に句を結びつけて一つの文とする。
  いろいろの接続語を使う。 
 66






  ・中学校上級の文
   法指導の内容
 
  単文と重文・複文などを見分ける。
  節と句の構造をさとる。
  くぎり符号を使って、わかりやすくする。
  語の用法と意味。
  語の使い方を分類組織し、各品詞の役目を見分ける。
  むだなくり返しを省き、紛れやすいことばを除く。
 中学校上級では、特に次のような事項を理解させ、その能力をさらに増す。
  筋の通った話の進め方。
  一つの文章には、何か一つの主題が述べられている。その主題を中心として、話の進め方、
  文章の骨組、文章の段落などを明らかにする。
  ことばの効果的な使い方。
  意味を強めるために、口調をかえたり、また、文の構造に変化を与えて、人をひきつけるよ
  うなことばづかいとする。特に話のきっかけに注意する。
  わかち書きをしたり、段落のくぎりを示すような書き表わし方に注意する。

 上のように、中学校の文法指導の内容を
  文の組み立て、 文の続き方、 語の用法と意味。 筋の通った話の進め方、
ことばの効果的な使い方などとし、戦前の形式文法の体系から脱け出し、修辞法をも加えて新し
い機能文法を組織した。その上、文法指導を、従来の狭い文法教室から、広く読む・書く・話す
 67





④昭和三三年度学習指
 導要領の文法指導の
 内容

 O一年の「ことばに
  関する事項」 
経験、学習の中へと解放した。したがって文法指導は形式文法(文法知識)の体系的指導から、
ことばの正しい用法、ことばの効果的な使用へという方向をたどるようになった。それが、機能
文法の機能的指導というものであった。
 ところが、昭和三十三年度の学習指導要領になると、系統学習、系統的指導ということが言わ
れて、文法指導の内容も、次のように整理されて、学年ごとに配当された。

 一年「B ことばに関する事項」
 (1) 次のような事項を指導する。
  ア ことばの正しい使い方を知り、それによって理解と表現を確かめ、誤りを正すこと。
  イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し、文の成分の順序や、その間の照応の統一を考
   えて、理解し表現すること。
  ウ 文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し、段落を考えて理解し表現すること。
  エ 語句をできるだけ豊かにし、その意味と用法を身につけて、適切に用いること。
    (備考)1 イ・ウおよびエの事項は、それぞれアの事項と関連させて指導するものとす。
        2 イ・ウおよびエの事項は、第一学年および第二学年を通して指導するもので
         あるが、第一学年または第二学年のいずれかの学年に重点をおいて指導しても
         よい。
 (2) 指導にあたっては、具体的な言語経験を通して、ことばのきまりの基本的なものに気づき
  それらに基づいて、正しい表現と理解を得るようにさせる。
 
 68
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 O二年の「ことばに
  関する事項」
 
 (3) なお、指導にあたっては、次のような点に留意する。
  ア 文の成分の順序、句読点、抑揚などによって、意味の変化することに気づかせる。
  イ 文の組立や文章の組立に関連して、接続する語句(接続詞などをいう。)の用法に慣れ
   させる。
  ウ 指示する語句(代名詞などをいう。)のはたらき、また、活用の性質などを具体的な用
   例を通して確かめるとともに、助詞・助動詞およびこれらと同じようなはたらきをもつ語
   句による各種の表現形式(たとえば、断定・推量・伝聞などをいう。)の用法に慣れさせ
   る。
  エ 一つの語句がいろいろの意味や用法をもち、一つの意味がいろいろの語句で表わされる
   ことに気づかせる。また、語感の違いに気づかせ、敬語の用法に慣れさせ、語句の組立や
   接続語、接尾語のはたらきなどをわからせる。
  オ 話しことばと書きことば、共通語と方言などのそれぞれの違いを考えさせる。
 二年 「B ことばに関する事項」
 (1) 次のような事項を指導する。
  ア ことばの正しい使い分けを考えて、明確に理解し表現すること。
  イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し、文の成分の順序や、その間の照応の統一を考
   えて理解し表現すること。
  ウ 語句をできるだけ豊かにし、その意味と用法を身につけて、適切に用いること。
 (2) 指導にあたっては、ことばの使い方の相違に気づき、さらにことばの使い方を類別整理し
 
 69


 O三年の「ことばに
  関する事項」




 




⑥昭和四四年度学習指
 導要領の文法指導の
 内容
 O第一学年の内容
  ・文章の組み立て 
  それらに基づいて、理解を深め、表現を正すようにさせる。
  なお、指導にあたって留意する点については、第一学年の内容のBの(3)に同じとする。
 三年 「B ことばに関する事項」
 (1) 次のような事項を指導する。
  ア ことばのきまりをよりどころにして、的確に理解し表現するくふうをすること。
  イ ことばの使いわけについて考え、相手と時と場所に応じて、適切に理解し表現するくふ
   うをすること。
  ウ 国語は、国民の思考や心情と深い関連をもち、生活の充実や文化の発展に欠くことので
   きないものであることを自覚し、国語の特質とその問題点に触れること。
 (2) 指導にあたっては、常に国語の能力を高め、国語を愛護し、発展させていこうとする態度
  を養うようにさせる。
 (3) なお、指導にあたって留意する点については、第一学年の内容のBの(3)に同じとする。

 昭和四十四年度の学習指導要領になると、この学年別に指導内容を配列する方法を引き継ぎな
がらさらに、簡明に整理して次のように示した。
 第一学年「D ことばに関する事項」
 (1) 次の事項について指導する。
  ア 文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し、文章の組み立てを考えて、理解し表現する 
 70
 ・文の組み立て
 ・語句の意味・用
  法
















 O第二、第三学年の
  内容


 O機能文法の内容
  ・文章論
  ・文 論 
  イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し、その組み立てを考えて、理解し表現すること。
  ウ 語句の意味と用法を確実にとらえて理解し、表現すること。
 (2) 上記(1)の指導に当たっては、次の事項を理解させるようにする。
  ア 文章の組み立て
   文章全体における段落の役割、段落と段落との接続関係、文と文との接続関係など。
  イ 文の組み立て
   文の中における語句のはたらき、文の成分の順序、照応、文末の表現、抑揚など。
  ウ 語句の用法
  語句の組み立て、単語の類別、活用、指示する語句、助詞・助動詞・接続詞およびこれら
   と同じようなはたらきをもつ語句のはたらきなど。
  エ 語句の辞書的な意味と文脈上の意味との関係、同義語の使い分け、敬語の使い方など。
  オ 話しことばと書きことばとの関係、共通語と方言との関係など。
  カ 音声と文字、表記のしかたなど。
 以上が、第一学年の文法指導の内容のすべてであるが、第二学年、第三学年の内容も、これと
全く同じで。ただ、両学年ともそれぞれ「国語の特質について気づくこと」「国語の特質につい
て理解すること」という一項目が加えられている。
 こうして、戦後提唱された機能文法の内容を
  1 文章論――文章の組み立てを考えて理解し表現すること
  2 文 論――文の組み立てを考えて理解し表現すること 
 71
  ・語 論
 
 
⑥戦後の文法指導の内
 容の精選 
  3 語 論――語句の機能・用法を考えて理解し表現すること
とし、これまで多少明確さを欠いていた機能文法の内容を整理して示した。なお、その細部につ
いては、(2)に具体的に示されている。
 戦後、機能文法の機能的指導ということが提唱されてから十五、六年、複雑でわかりにくかっ
たその考え方も内容も、しだいに整えられてようやくここまでたどり着いた。その歴史のあとを
学習指導要領に示された文法指導の内容を中心にしてたどってみた。
 しかし、この整備された内容は、従来の形式文法の体系を離れて、全く新しく組織し体系化し
たものではない。旧来の形式文法をご破算にして、すべて文章や談話の中にもどしてやる。その
上で、表現・理解の学習活動を通して学習できる文法事項を取り上げる。しかも、取り上げる文
法事項は、表現・理解の学習活動を保証する、成立させる上に必要な事項に限られる。
 こうして取り上げた文法事項を整理し、全く新しい機能文法として体系化したものではない。
したがって、従来の形式文法の内容の中から、何を取り上げ、何を捨てるか。何を中心にし、何
を従属させるか。何を詳しくし何を簡略にするかなどという問題として整理してきたもののよう
に思われる。
 そこに、これが機能文法の内容だと言い切れないもどかしさを感じるのは、筆者ばかりではな
いであろう。というのは、そうしようとさえ思えば、直ちに従来の形式文法の体系に復元し得る
ものだからである。 
72
    二 中学校の基本的文法事項の設定 
①昭和五二年度学習指
 導要領の文法指導の
 内容

 O言語事項の中の文
  法事項










 O昭和四四年度学習
  指導要領の内容の
  記述の仕方 
 昭和五十二年度の学習指導要領の文法指導の内容は、いわゆる「言語事項」の中に示されてい
る。その学年別提示の仕方も、その内容も、昭和四十四年度の学習指導要領に準じている。ただ
し。内容の記述の仕方が異なっている。次に、その文法事項だけをあげてみる。
  〔言語事項〕
  (1) 国語の表現と理解に役立てるため、次の事項について指導する。
   ア 文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し、文章の組立て、段落の役割、段落と段落
    との接続関係、文と文との接続関係などを考えること。
   イ 文の中の意味の切れ目と続き方に注意し、文の組立て、文の成分の順序や照応、文末
    の表現などを考えること。
   ウ 語句の組立て、単語の類別、活用などについて理解するとともに、指示する語句、助
    詞、助動詞・接続詞及びこれらと同じようなはたらきをもつ語句などのはたらきに注意
    すること。
 この文法指導の内容は、昭和四十四年度の学習指導要領に示された内容の(1)と、その内容を具
体的に示した(2)とを合わせて記述してある。ここで特に注意すべきことは、前の学習指導要領で 
73


  ・文法事項と指導
   法と指導上の注
   意
  ・機能文法の本質
   的記述


 O新学習指導要領の
  内容の記述の仕方







 ・「表現・理解に役
  立てるために」 
は、「(1) 次の事項について指導する。」とあって、次にその指導事項があげてある。その指導事
項は、たとえば、「文章の中の意味の切れ目と続き方に注意し」と、指導上の注意事項をあげ、
次に「文章の組み立て」を考えてと文法事項をあげ、続けて「理解し表現すること」と、文法能
力を行使する理解活動・表現活動をあげ、この三者を統一体としてあげてある。ここに機能文法
の本質を含めた記述の仕方がある。このシステムは、文法指導の、内容と方法と指導上の注意と
から成り立っている。
 ところが。新学習指導要領では、この記述の仕方を変えている。それは、次の理由によるもの
である。従来。中学校では、国語科の内容を「言語活動」とし、その言語活動を要素的に分析し
て「言語能力+言語事項+言語活動」として記述してきた。が、新学習指導要領では、国語科の
学習指導のシステムを「目標―内容―方法―資料―評価」とした。その考え方に従って、国語科
の内容を、従来の「言語活動+言語能力+言語要素(言語事項)」というシステムのうち、「言語
活動」を方法とし、「言語能力+言語事項」を内容と考えるようになった。
 したがって、文法指導の内容も、従来の「注意事項+文法事項+言語活動(理解・表現)」と
いうシステムのうち、「注意事項+文法事項」を内容とし、「言語活動(理解・表現)」を方法と
考えるようになった。その結果、前記のように、方法としての言語活動を前に出して「国語の表
現と理解に役立てるため」とし、内容としての言語事項を「次の事項について指導する」として、
ア・イ・ウの文法事項をあげたのである。
 こうして、文法学習そのものが合理化されたのは、一つの進歩であるが、機能文法の考え方、
というよりは文法学習の本質から考えても、「国語の表現と理解に役立てるため、次の事項につ 
 74




 O文法指導の内容の
  システム
  ・文章論
  ・文 論
  ・語 論


  ・文章論





  ・文の成分・順序・    照応等の押さえ
   方
 
いて指導する。」という記述は、大きな間題を残した。というよりは、従来の文法指導の研究成果
を無視し、 文法指導の進歩の方向のとらえ方を誤ったと言うべきであろう。この記述は、当然
 「国語の表現と理解の学習を通して、次の事項について指導する。」と、すべきであろう。
 いずれにしても、文法指導の内容は。次のようにシステム化された。
 1 文章論――文章の構成・段落の機能・段落と段落との接続関係・文と文との接続関係
 2 文 論――文の構成・成分の順序や照応・文末の表現
 3 語 論――語の構成・語の用法・単語の類別・活用・指示する語句、助詞、助動詞・接続
       詞・これらと同じようなはたらきをもつ語句
 この文法指導の内容の中で間題になるのは、文章論に関する事項である。文法論としての文章
論は、まだ研究の緒についたばかりで、その考え方も、内容も明確になっていない。
 したがって、ここでいう文章論は、国語科教育の中の表現法・理解法の学習の中で学習できる、
文章理解、文章表現上の法則性の認識と使用についての考え方と方法である。
 次に間題になるのは、文の成分の押さえ方やその順序・照応の型の押さえ方、また、単語の類
別・活用や助詞・助動詞などの扱い方である。従前の形式文法的な指導になるかならないかは、
これらの取り扱いのいかんによる。あまり細部にわたり、詳細に走れば、語の用法としながらも、
勢い知的な学習になりかねない。
 また、機能文法の機能的指導として、読解における文法学習、作文における文法学習というこ
とになると、勢い細かい点の学習に走りやすい。たとえば、語の用法のうち、助詞一つとってみ
ても、格助詞の「が」と副助詞の「は」の使い分けや、現在用法が動いている、「へ」と「に」 
 75



  ・文章構成の内容



の使い分け、「ので」と「から」の使い分け、「見られる」と「見れる」の正否などのような細か
い点に入らざるを得なくなる。そうでないと、表現や理解の学習の中での、語の用法を学習する
機会がなかなか得られない。
 さらに、段落の機能、段落と段落との接続関係の理解といっても、その具体的な内容になると
容易にとらえがたい。したがって、戦後の新しい学校文法の体系として、文章論・文論・語論と
いうシステムをとったけれど、実践的には、まだ文章論は、理解法・表現法として、理解・表現
学習の中に位置づけておいたほうが便利であり、より本質的な扱いになると思う。まだ、段落構
成、文章構成の法則性も明らかにはなっていない現状であるから。
    三 中学校の基本的文法事項の内容 




①文章論 
 前節にあげた基本的文法事項の内容について、もうすこし具体的に検討してみることにする。

  ― 文章論的事項について

 文章論として指導する事項は、①文章の組立て ②段落の役割 ③段落と段落との接続関係
④文と文との接続関係の四つの事項になっている。これらの相互関係は、①文章の構成要素(シ 
 76






 Oコンポジション











②段落の構成





 O段落構成のパター
  ン 
ステム要素)は段落、②段落の構成要素(システム要素)は文というシステムの上に成り立って
いる。しかし、文章の構成・段落の機能・段落相互の関係・文相互の関係については、文法とし
て学習すべき法則性、きまりが、まだ明らかになっていない。そこに、文論・語論のように、文
法としての法則性、きまりの明らかになっている事項の学習との違いがある。また、それが、文
法としてではなく、コンポジション(作文法・文章構成法)の間題として扱われるゆえんでもあ
る。
 この文章論については、『学校文法 文章論(永野賢著)』(昭三四・朝倉書店)がある。氏の「わ
たしは、文法論のための文法研究、文章論のための文章研究にのみとどまることを不足とする。
実用のための文法論、実践に役だてるための文章を考えていきたい。」(同書三七ページ)という立
場から、第一章「文章論と国語教育」第二章「文章論概説」第三章「文章論的分析の可能性と限
界」第四章「国語学習指導における文章論」を展開している。
 わたしもまた、前に述べた国語科学習指導における表現法、理解法としての文章論について、
すでに実験し得た事項の概要を紹介してみる。
 一般に文章の要旨は、いくつかの段落に分けて展開される。したがって、それぞれの段落はそ
の要旨の分節としての要点を中心として構成されている。つまり、段落は、その中心である要点
と、要点を説明したり、解説したり、また、要点をさらにいくつかの要素に分析して提示したり
する細部との関係において構成されている。そこで、その要点と細部との関係を押さえて図示し
てみると、段落内の構成が明らかになる。こうして、段落構成のパターンを抽象することができ
る。次にそのパターンをあげてみる 
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  ・要点と細部との
   関係
  ・抽象と具体の関
   係
  ・総括と個の関係



  ・具体・抽象・具
   体の関係
  ・要点と説明

  ・話題と説明







③段落の機能

 O形式的機能

   ・起こす 
 ① 要点と細部との関係が、「抽象と具体の関係」によって構成されている段落。その逆に、
   「具体と抽象の関係」によって構成されている段落。この場合、細部と細部は並立の関係で
  連接する。
 ② 要点と細部との関係が、「総括と個の関係」によって構成されている段落。その逆に、「個
  と総括の関係」によって構成されている段落。この場合も、細部と細部は並立の関係で連接
  する。
 ③ 要点と細部との関係が、「具体―抽象―具体の関係」で構成されている段落。この場合、
  細部と細部は並立の関係で連接する。
 ④ 要点と細部との関係が、「要点とその説明の関係」で構成されている段落。細部と細部は
  係り受け、慚層などの関係で連接する。
 ⑤ 要点と細部との関係が。「話題―説明―要点」の関係で構成されている段落。
 これらのパターンを図示してみると、次ページのようになる。
 図のアは。具体と抽象の関係を表す記号、イは、並立の関係を表す記号。ウは、個と総括の関
係を表す記号。エは、連接を表す記号である。
 図のように構成された段落は、それぞれ独自の役割・機能をもっていて、相互に関係し合いな
がら連接して、文章を構成する。ところで、段落はどんな機能をもっているであろうか。段落は
文章を構成するに当たって、形式的な係る、受ける、まとめるなどの機能によって、次々に連接
していく。その形式的な機能をあげてみると、
 ① 文章を書き起こす機能――この機能を記号「●」で表す。 
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 O段落構成のパター
  ン














   ・受ける
   ・並べる
   ・展開する
   ・まとめる
 O文章構成のパター
  ン
 
      ①具体と抽象との関係        ②個と総括の関係

     

      ③抽象と具体との関係        ④要点とその説明の関係

     
 ② 前の段落を受ける機能――この機能を記号「→」で表す。
 ③ 前の段落と並べる機能――この機能を記号「=」で表す。
 ④ 前の段落を受廿て展開する機能――この機能を記号「→<」で表す。
 ⑤ 前の段落を受けてまとめる機能――この機能を記号「>」で表す。
の五つの機能に類別することができる。この機能を表す記号を段落の前につけると、文章構成の
論理を視覚的に、明確に認識することができる。たとえば、起・承・転・結の論理によって構成
されている文章は、(1)のように、あとで詳しく述べるが、いわゆる要素型の文章は、(2)のように 
79
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  ・文章構成の論理
 
 条件型の文章は、(3)のように。それぞれ図示することができる。
 (1)              (2)              (3)
 

 このように、段落の形式的機能によって段落相互の関係、段落の連接関係を記号化すると。文
章構成の論理を明らかにすることができる。
 かつて、五十嵐力が、「文章講話」の中にあげた、頭括式の文章、尾括式の文章、両括式の文
章、散叙式の文章などの文章構成の論理なども、この方法によって明確に図式化することが可能
である。
 80
 O価値的機能
 
 以上は、段落の形式的機能に着目して、文章構成の論理を見たのであるが、段落の内容的・価
値的機能によって、文章構成の論理を追求することもできる。次に、段落の内容的機能について
その類型をあげてみる。
 ① 課題・問題・話題等を提示する段落――――――提示機能
 ② 課題・問題・話題等を説明・解説する段落―――説明機能
 ③ 事例・実験・引用等を提示する段落――――――例示機能
 ④ 事例・実験等によって解説・証明する段落―――例証機能
 ⑤ 論理を展開する段落―――――――――――――展開機能
 ⑥ 要旨・趣旨・結論・結末等を述べる段落――――総括機能
 このように、各段落の内容的機能を押さえて、段落相互の関係、段落と段落との連接関係を考
えることによって、文章構成の論理を明確にすることができる。
 要するに、文章構成の単位としての段落について、
 ① 段落構成をパターン化して、そこに内在する法則性を抽出する。――段落構成の法則
 ② 段落の形式的機能にもとづいて、段落と段落との連接関係を規定
  する法則性を抽出する。                ―――――段落連接の法則
 ③ 段落の内容的機能にもとづいて、段落と段落との連接関係を考え
  て文章を構成する。その連接関係設定の法則性を抽象する。―――――段落連接の法則
などの操作を経て、学校文法としての文章論に接近しようとするものである。つまりそれは理解
法・表現法としての、段落構成の法則、段落連接の法則を発見し、理解指導・表現指導に役立て 
 81


④文章の構成









 O要素型の文章 
ようとする試みである。
 ところで、文章は構造的全体(ゲシュタルト)である。きわめておおまかな押さえ方をすれば、
いわゆる説明文は、要旨・話題を中心として、意味を段落的に構造化し展開するゲシュタルトで
あるし、文学的文章は、主題を構想として、サマリーとシーンによって展開するゲシュタルトで
あると考えられる。
 このような文章の構成をパターン化してみると、次の三つの基本的な型が得られる。一つは、
要素型の文章、二つは、条件型の文章。三つは、要素型と条件型の入りまじった複合型の文章で
ある。
 要素型の文章というのは、文章の内容を分析して、いくつかの構成要素を抽出することのでき
る文章である。たとえば、「動物の護身法」という文章の内容を分析してみると、段落ごとに、
 ① ある動物は護身法をもっている。
 ② 保護色による護身法とその例
 ③ 保護色と擬態による護身法とその例
 ④ 保護色と擬態と動作による護身法とその例
 ⑤ 生命の保持・種族の保存のための自然の護身法
となる。これは、護身法の内容を分析して。三つの型を抽出したものである。このように。内容
の要素分析をしだ結果得た構成要素を組織し配列した文章が、要素型の文章である。
 この場合、これらの要素は、すべて対等の資格をもっているから、文章構成に当たっては、同
等の立場で配列される。したがって、その前後関係を規定する条件も必然性もない。全く筆者の 
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O要素型の文章のパ
 ターン















O条件型の文章
 
 
    自由である。これを。並立型の文章とも言うのはそのためであ
る。この要素型の文章の構成論理は簡潔で、理解しやすく。表
現しやすいところに特徴がある。
 前記の文章を図示してみる。
 こうして図示してみると、各段落の構成を明確に理解するこ
とができる。また、各段落の形式的機能も、内容的機能も、視
覚的直観的に容易に把握される。
 したがって、段落と段落の連接関係も全体的・直観的に押さ
えられるから、この文章の展開の論理、文章の構成論理をも明
確に理解することができる。
 この図示の方法は、文章構成の理解法として有効であるばか
りでなく、文章の構成法、表現法として活用すれば、いっそう 
学習を有効に導くことができるであろう。
 このように、要素型という文章構成のパターンを形成してみると。複雑多岐にわたる文章構成
の中に、一法則性を見出すことができて、文法としての文章論への接近を図ることができるよう
に思う。
 条件型の文章というのは、段落や場面が、ある筋道・論理に従って、段階的・線条的に展開し
ている文章である。つまり、要旨や主題が、段階的・過程的・線条的に展開されている文章である。
 このような文章では、段落はつねにその前の段落に書かれている内容を受けて、それに規定さ 
 83
 
 
 
 
 
 
 
 O条件型の文章構成
  のパターン
れ、条件づけられて展開する。次の段落もまた、直前の段落に書かれている内容に何らかの規定
を受け、条件に従って展開する。こうして、要旨がじゅうぶんに叙述されるまで、段落は、順次
ある条件に規定されながら展開する。この段落の係り受け、連接の関係を規定する条件が、文章
構成の契機になっている文章が基本的な条件型の文章である。
 ところで、この条件型の文章の構成を理解するためには、その文章の構造化の過程(構造過程)
を分析して、その段落と段落との連接・展開を規定している諸条件を抽出し、それに従って文章
構成の論理を理解する。
 この段落の係り受け、連接を規定する諸条件をパターン化して、その点から条件型の文章構成
の型をみると、次のような基本的な型を求めることができる。
 ① 比較・対照型――比較・対照的に筋道を立てていく構成
 ② 慚層型――段落ごとにしだいに詳しく、しだいに広げ、しだいに深めて叙述していく、し
  り上がり的な構成 
 ③ 連鎖型――前の段落を受けては、それと関係づけながら、次の段落を起こす、いわば、く
  さりのように結び合わせながら展開する構成
 ④ 因果型――原因・結果の関係によって文章を展開する構成
 ⑤ 起・承・転・結型――本来漢詩の修辞法であるが、文学作品にも一般の文章にも適用され
  ている構成
 ⑥ 論文型――序論・本論・結論のように展開する構成
 ⑦ 経験型――時間や経験の過程に従って展開する構成 
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 O条件型の文章構成
  図
  ・漸層型
  ・連鎖型
  ・事件型












 O童話・物語の文章
  構成のパターン 
 ⑧ 事件型――事件の展開に応じて展開する構成
など、多くのパターンをあげることができる。それほど複雑多岐にわたっている。上の中から二、
三例図示してみる。
 ①漸層型            ②連鎖型           ⑧事件型
 

 以上は、いわゆる論文・論説・説明・解説などの文章構成について、その構成のパターンにつ
いて考察した。文学的文章としての童話・物語・小説などについても、そこにいくつかの基本的
な構成のパターンを見出すことができる。それらについて詳説する余裕はないが、パターンだけ 
 85

















 O語り型の文章構成
  のパターン 
をあげてみる。
 ① 反復型(くりかえし型)――単純なくり返し表現によって主題を展開する型
 ② 連鎖型(くさり型)――直前の条件と結び合わせてくり返して表現しては主題を展開する
  型
 ③ 対比型(くらべ型)――善悪・優劣・強弱などを対比しながら表現して主題を展開する型
 ④。慚層型(だんだん型)――しだいに数を増す、しだいに力を増す、しだいに詳しくする、
  しだいに意味を強めるなどの表現を通して主題を展開する型
 ⑤ 物語型(語り型)――物語の語り口、語り方に従って表現して主題を展開する型
 ⑥ 事件型(なりゆき型)――事件の発端から解決まで、そのなりゆきに任せて表して主題を
  展開する型
 このような基本的なパターンによって構成されている作品は、短いものであって、長編は含ま
れない。
〈上のうち物語型(語り型)については。その成立は古く。口承文芸として語られた時代にさか
のぼる。記録されるようになっても、その型は固く守られ、さらに創作されるようになってもま
だ、このパターンを踏襲している。次にその概要を述べてみる。そのパターンは、
 ① 紹介語り――紹介……人物の性格・生活・時・所などを紹介する。物語の構成を語る。
 ② 発端語り――発端……事件などの発端を語る。事件の起こる時、季節など背景を語る。
 ③ 展開語り――展開……事件展開の筋道・状況・人物の行動などを語る。
 ④ 最高潮語り―最高潮……クライマックスの状況・心情・行動などを語る。主題を語る。 
 86






⑤文と文との連接








 O意味的連接と形式
  的連接
 
 ⑤ 結末語り――結末……事件の結末・縁起・世間の批判などを簡潔に、余情的に語る。
 ⑥ 後目語り――後日談……その後の主人公、事件などについて語る。
 これは、物語や小説の基本的な型であって、それぞれの過程では、それ独得の語り口を用いて
いる。
 段落を構成する単位は文である。文は、それぞれの意味を表しながら、前後に、時には他の文
を越えて、係る・受ける・展開する・まとめるなどの関係を保ちながら、次々に連接して文脈を
作り、しだいに大きな意味のまとまりを構成する。その意味の一まとまりが段落である。
 そこで、文と文とが、さまざまな関係で連接する、その連接の契機となるさまざまな関係を、
抽出し、そこにある法則性を意識し、認識しようとするのが、文と文との連接関係を理解する学
習である。
 ところで、文と文とが連接するのに、文の意味と意味との直接のかかわり合いによって、つま
り、意味的に連接する場合と、連接の関係を示す語句を介して連接する場合とがある。
  ①読解活動は、表現面から意味を読みとる活動である。②それは本来心理的なもの、生理的
  なものであって、過去に積み重ねられた知識や経験などの助けによって行われる。③過去に
  おける言語経験によって磨かれた、言語感覚・文法感覚が、意識化されぬままに、内面的に
  理解を助けている。④しかし、一見、眠っているかに見える言語感覚・文法感覚も、いった
  ん「誤っている文」に出会うと。たちまち頭をもたげて、不自然・不快・違和感を抱かせる。
  ⑤誤っている文という自覚はそこから生まれる。[「文法指導の方法(中学校)」(中沢政雄「日本
  文法講座・文法論と文法教育」)から〕 
 87



  ・意味的連接
  ・接続語による連
   接
  ・指示語による連
   接





 O文脈の構成







O接続語の機能
 
 上の段落は、五つの文の連接によって構成されている。その連接の状況を見ると、②の文は、
指示語「それ」によって、①の意味をさして、さらにそれを詳しく解説している。③の文は、②
の文の意味との直接のかかわり合いによって叙述している。④の文は、③の文の意味を受け、そ
れとは逆な関係において意味を展開するために、その関係を示す接続詞「しかし」を介して、叙
述している。⑤の文は、④の文の意味を、指示語「そこ」によって指示し、それとのかかわり合
いにもとづいて叙述している。
 このように見てくると、文と文との連接は、③のように、文脈の中で、意味的に連接する場合
と、④のように逆接の関係を示す接続詞を介して連接する場合と、②⑤のように、指示語によっ
て前文の意味を指示して、前の文に続ける場合などがあることがわかる。
 こうして、五つの文は、相互に係り受けの関係を保ちながら、次々に連接して。筋道の通った
文脈を構成している。この文脈をたどりながら、意味を理解するのが読解である。この読解の過
程で、そこで生き生きとはたらいている指示語や接続語(接続詞)の機能を意識化し、その用法
を理解するのが、いわゆる読解における文法学習である。
 ところで、この文脈をたどりながら、つまり、文と文との連接関係を考えながら文章を読んで
いく場合、その筋道・論理の展開を理解する上に重要なはたらきをするのが、接続詞や接続詞と
同じような機能をもった語句である。そこで、指導に当たっては、指導すべき基本的な接続詞と、
その機能、用法について考えておく必要がある。次にその基本的なものをあげてみる。
 ① 順接を示す接続詞など――そして・それから・そこで・したがって
 ② 逆接を示す接続詞など――しかし・けれども・だが・ところが 
 88







 O指示語の機能 
 ③ 累加を示す接続詞など――しかも・さらに・そのうえ・それどころか・また
 ④ 相即を示す接続詞など――すなわち・とりもなおさず
 ⑤ 因果を示す接続詞など――だから・ですから・それだから・それゆえ
 ⑥ 対比を示す接続詞など――ところで・それはさておき
 また、これらの接続詞や接続詞と同じようなはたらきをする語句とともに、文と文とを連接す
る上に大きな役割を果たしているのが、指示語や指示語と同じようなはたらきをする語句である。
次にその基本的なものをあげてみる。
 ① 前の文の中の事柄を指示して文を展開するはたらきをする指示語
  ・そこから歩いて……・それがなぜ……・どれでもいいのを……
 ② 前の文の中の事柄を指定して文を展開するはたらきをする指示語
  ・この二つの山が……・その村に……・あの愛らしいのが……
 ③ 前の文・文章に示されている状況・状態・様態などを指示して文を展開する指示語
  ・こうしてできたのが……・そうすれば何でも……・どうしたか……
  ・こんなことでは……・そんなわけなど……・あんな人でも……

  2 文論的事項について

 文論については、①文の構成、②文の成分の順序、③文の成分の照応、④文末の表現について 
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①文の構成


 〇文の成分(構成要
  素)



 〇文節相互の関係













 O連文節
  ・主語節(主部) 
指導することになっている。
 文の構成について考えるには、文の構成要素をどうとらえ、どんな手順でその構成を理解させ
るかが問題である。
 戦前のように、文法を文法知識として形式的に、体系的に理解させようとしたころには、まず、
文を構成する要素(単位)を分析して文節とした。そこで、文を文節に分ける学習を通して文節
意識を高め、文節の構成を明らかにして、それそれの文節の機能に対して、主語・述語・修飾語・
並立語・独立語・付属語と名づけた。
 その上で、文節と文節との関係を押さえて。主語・述語の関係、修飾・被修飾の関係、並立の
関係、独立の関係、従属の関係とした。しかし、実際の文では、その構成はもっと複雑である。
  あまり健康でないわたしは、毎朝のように散歩をしますが、かわいい犬を連れた人に、よく
  出会います。
というような文では、その構成は、こうなっている。①「あまり」「健康でない」「わたしは」と、
三文節で一まとまりの意味を表している。②「毎朝のように」「散歩を」「しますが」と、これも
三文節で一まとまりの意味を表している。③「かわいい」「犬を」「連れた」「人に」とこれは、
四文節で一まとまりの意味を表している。④「よく」「出会います」と、これは、二文節で一まと
まりの意味を表している。
 このように、上の文は、文の中が四つの意味のまとまりに分かれていて、それぞれ相互に関係
をもちながら構成されている。これらの意味のまとまりを表す二文節以上のまとまりを、連文節
と考え、①は、主語のまとまりで、これを主語節(主部)、②は接続語のまとまりで、これを接 
 90
   ・述語節(述部)
   ・修飾語節
   ・接続語節



 O文節→連文節→文
  へ
 O文→連文節→文節
  へ










②文の成分の順序
 O語順
  ・主語は述語の前
   に
  ・修飾語は被修飾
   語の前に 
続語節(接続部)、③は、修飾語のまとまりで、修飾語節(修飾部)、④は、述語のまとまりで、
これを述語節(述部)と言っている。
 これらの、主語節・接続語節・修飾語節・述語節が、主語・述語の関係、接続の関係、修飾・
被修飾の関係で相互に関係しながら文を構成して文脈を作っている。
 この過程を整理してみると、①単語、②文節、③連文節、④文というように、分析的に部分か
ら全体へという論理的な手順をとって、文の構成を理解させようとしてきた。
 ところが、機能文法の機能的指導として、読解学習・表現学習の過程で、文法学習をする。つ
まり、読解における文法、表現における文法の学習指導を行うようになったから、前記のような
文法学習の手順はとれない。読解は、もっと直観的で、全体的な活動である。文を分析しながら
理解するというようなものではない。短い文では、直観的に文意を理解する。長い文では、直観
的に、文の中の意味のまとまり――連文節を、単位として、文脈をたどって、文全体の意味を理
解する。さらに、文意を正確に理解しようとする場合にのみ連文節内の文節相互の関係を押さえ、
それぞれの文節相互の関係、文節の機能等を理解することになる。
 したがって、文――連文節――文節というように、全体から部分へ、直観から分析へという手
順をとることが、文の構成の学習の原則とならなければならない。
 文の成分の順序というのは、いわゆる語順である。典型的な国語の表現では、たとえば、「風
が吹いてきた。」という文のように、主語は述語の前に、述語は主語のあとにくるのが原則である。
 また、「涼しい風が、そよそよと吹いてきた。」「早く起きなさい。」のように、連体修飾語も、
連用修飾語も、被修飾語の直前にくるのが原則である。 
 91
  ・倒置法



 O連用修飾語の位置









 O成分の位置と文意
  の変化
 
 しかし、これらの原則は、筆者の意図によって、容易に「吹いてきた、風が。」「起きなさい、
早く。」というように、語順を前後に入れ替えることができる。これは、倒置法と呼ばれるレトリ
ックで、それだけ意味が強調される。
 特に、連用修飾語では、その位置が、被修飾語の直前にこない場合は、その意味があいまいに
なりやすいから注意をする。たとえば、
  やっとすわれる席を見つけてすわった。
という文では、「やっとすわれる席」とも、「やっと見つけて」の意味とも、「やっとすわった」
の意味ともとれる。そこで、「やっと」が、「すわれる席」をへだてて、「見つけて」を修飾する
場合には、「やっと」の次に読点を打つか、「やっと」を「見つけて」の直前に置くかしなければ
ならない。読点や修飾語の位置が文意の変化・決定にだいじな役割を果たしている。
 その他一般に文の中での成分の位置を替えると、微妙な文意の変化を起こすことを理解させる
必要がある。たとえば、
  春夫は弱虫なので、外出するたびに泣かされてくる。
という文は、次のように、成分の位置を替えて書くことができる。
 ① 弱虫なので、春夫は外出するたびに泣かされてくる。
 ② 弱虫なので、外出するたびに春夫は泣かされてくる。
 ③ 外出するたびに、春夫は弱虫なので泣かされてくる。
 ④ 春夫は、外出するたびに、弱虫なので泣かされてくる。
このように、同じ文でも、その成分の位置を替えて五通りの文を書くことができる。これらの文 
 92




 O独立語の位置








③文の成分の照応





 O主語・述語の照応
 
は、それぞれ筆者の意図に応じて、意味の微妙な違い、強調するところの違いを表している。
 ところで、文の中でその位置を替えることができる成分は、接続語(節)や修飾語(節)で、
その他の成分は。接続語や修飾語の位置を替えることによって、随伴的に替わるものである。
  ある夕方、――それは二月の初旬だった。
  よく晴れた秋の日、くもは空へ向かって飛び出した。
のように、独立語は、その位置を替えることはない。
 このような文の成分の順序についての学習は、読解学習や表現学習の中で、機能的に、具体的
に指導すべきものである。例文による学習は、機能的に学習した結果を整理しまとめる場合にの
み行うようにする。
 文の成分の照応は、主語・述語の照応、修飾語・被修飾語の照応などの問題である。これらは
文脈をたどり、文章の論理をたどって文意を理解する読解学習や、読み手に理解しやすいように
事象を客観的に正確に表現したり、思想を整理し、筋道を立てて表現したりする表現学習では、
特にだいじな文法事項である。
 主語・述語の照応は、主語・述語の関係を示す次の基本文型についての文型感覚・文法感覚を
確実に育てることがだいじである。
 ① 「何が――どうする」の文型  ――「水が流れる」型
 ② 「何が――どんなだ」の文型  ――「さくらが美しい」「波が静かだ」型
 ③ 「何が――なんだ」の文型   ――「赤いのがチューリップだ」型
 ④ 「何が――いる(ある)」の文型――「犬がいる」「池がある」型 
 93
 O文型感覚―文法感
  覚







  ・文の成分の照応
   の感覚



 O並立語の照応 
 これらの文型に対する感覚(文法感覚)が、その力を発揮するのは、長い複雑な文脈の文や、
照応の正しくない文などに出会ったときである。たとえば、次のような長い文がある。
   言葉の使い方の規則にはたくさんあって、ていねいな使い方、乱暴な使い方、他人を怒ら
  せるような使い方や、他人を喜ばせるような使い方、そのほかいろいろありますが、考える
  というだけのためには、ごくおおざっぱな、しかし、いちばん骨組になるような規則だけで
  いいのです。このような規則が、言い換えれば論理的な規則なのです。
 この文は、百三十字余りの長い文で、主語・述語が照応していないばかりでなく、修飾節相互
の関係もはっきりせず、筋道をたどって正確に意味を理解しようとする読み手を悩ませる。
 このような筋道の通らない文に出会ったときには、これを主語・述語の照応した文に書き直さ
せて、文の成分の照応についての正しい感覚や意識を育てるといい。
 また、並立語相互の照応を明確に示している文もある。
   「危険だからでしょう? 特急はスピードを上げて走るから、うっかり窓を開けて首を出
  したり、手を出したりすれば、けがをするかもしれないし、風でよその人に迷惑をかけるか
  もしれないし……。」
  などと教えていた妻も、それが毎度のことだから、今ではもう「また、始まった。」と笑う
  だけだ。(三浦哲郎「春は夜汽車の窓から」)
 この文の中には、並立語の照応関係を示す二つの例がある。一つは、「…たり、…たり」で。
他の一つは、「…かもしれないし、……かもしれないし」である。一般にはよく、「首を出した
り、手を出せば」「けがをするかもしれないし、風でよその人に迷惑をかける」というように並 
 94



 O副詞などの照応






   ・陳述の副詞



④文末の表現
 
立語を照応させない文を書くことが多い。そこで、このようないろいろな並立語の照応感覚を正
しく育てる必要がある。
 ① 二度と乗ってみようと思ったことはない。
 ② 彼は、けっしていたずらはしないぞと、心に決めた。
 ③ 明目は、たぶん、いい天気になるだろうと、思いながら寝た。
 上の文のような、連用修飾語は、「二度と……思ったことはない」「けっして……しない」「た
ぶん……なるだろう」というように、それぞれに照応した受け方がある。これらの修飾語は、副
詞や副詞的修飾語で、いわゆる陳述の副詞の類である。この修飾語の照応は、副詞の呼応とも呼
ばれている。この照応は、しだいに減っていく傾向にあるが、これも注意しておくべき照応であ
ろう。
 文末表現の学習の中心は、「国語の表現では、事象に対する判断は、文末表現の状況によって
決まる。」ということである。これは「文の意味は文末の表現で決まる」ということで国語の基本
的な特色である。
 ところで、文末にはさまざまな表現の仕方があって、それぞれに応じた、書き手の意志、考え
方、判断の仕方、微妙な心理・心情などを感じたり、理解したりすることができる。
 この文末表現を規定するのは、動詞・形容詞・形容動詞・助動詞・終助詞などである。したが
って、それらの語の意味機能が、書き手の判断や微妙な感情を表現することになる。
 肯定・否定・疑問・時・断定・推定・推量・様態・伝聞・意志・受身・可能・自発・尊敬・使
役・願望・感動・念押し・勧誘・親しみ・質問・強調・命令等々、あげてみれば実に多くの判断・ 
95




①語論の内容 
微妙な感覚・感情が表現される。

  3 語論的事項について

 語論的事項についての学習内容は、次のようになっている。
 ① 語句の構成――複合語・接頭語・接尾語のついた語、漢語の構成、漢語の接尾語
 ② 単語の類別――品詞の機能・品詞と文の成分
 ③ 単語の活用――用言の活用・用言の機能・用法
 ④ 指示する語句――コ・ソ・ア・ド系の指示語、指示語と同様のはたらきをする語などの機
           能・用法
 ⑤ 助詞・助動詞――機能的な助詞・助動詞の機能・用法、誤りやすい助詞・助動詞の用法、
           これらと同様のはたらきをする語句
 ⑥ 接続詞――順接・逆接・累加・相即・因果・対比・転換などを示す接続詞、接続詞と同様
           のはたらきをする語句などの機能・用法
 語論的事項の指導は、読解学習、表現学習の過程で。機能的に行うことを原則とする。これら
の学習は、詳細にわたりすぎたり、細部に入りすぎたり、機械的に文法知識として教えたりする
傾向があるから、その機能・用法を中心にして具体的に、機能的に指導するように注意する。 
96
 97
      第三章 文法指導の原則 
 98
    一 文法指導とは何か 
①文法指導の目標
 
 文法指導の目標は、究極において、「国語に対する認識を深め、言語感覚を豊かにし、国語を
尊重する態度を育てる」ことに、文法独自の学習を通して、参与することにほかならない。
 ところで、文法を通して国語を認識するためには、文法を含む言語事実、文法事実の認識から
出発しなければならない。この文法事実の中に含まれている文法――法則性は、文法感覚として、
言語環境の中で、自然的に習慣的に身につけている。文章を読んで理解したり、文章を書いたり
することができるのは、この文法感覚によるものである。
 それが、自然的・習慣的に身につけている文法感覚であり、文法力・文法能力である。文法学
習は、これらの文法感覚・文法技能を、理解・表現の学習を通して意識化したり、正したりする
はたらきだと考えられている。
 こうした文法の意識化、文法の適用を通して、文法の理解を深めたり、文法感覚をいっそう確
かにしたりする。その結果、国語に対する認識が深まり、国語を尊重する態度が育てられるとい
うことになる。
 要するに、文法学習は、文法感覚から文法能力・文法意識へ、さらに文法感覚を強化するとい
う過程をとって行われる。以下、この過程をたどって考察することにする。 
 99

 
①文法事実







 O文型―基本文型 
  1 文法事実の認識

 「村の人たちが、ぞろぞろ歩いています」「三人の子供は、おそるおそるトロッコを押した」
という文は、主語・述語の関係、修飾語・被修飾語の関係によって構成されている。しかも、そ
の構成に当たっては、主語は述語の前に、述語は主語のあとに立つという原則、修飾語は被修飾
語の前に、被修飾語は修飾語のあとに立つという原則にささえられている。
 これらの表現、文は「どんな――何が――どのように――どうする」という判断の形式、思考
の形式でもある。このように、文の中に存在する法則が、文法であり、そのような法則・文法に
よって規定されている文の存在が、「文法事実」である。文法学習は、この文法事実の認識から
始まる。
 この文法事実を「文型」と呼んでいる。その中でも、特に基本的で、広く社会に通用している
文型を「基本文型」と言う。それは、ことばによってお互いに意志を伝え合う社会、いわゆる言
語社会における共通の、一般化したパターンとして流通している。
 読解学習の過程で文法学習を指導する場合には、教師はまず、この指導すべき文法事実を的確
に把握し、そこに内在する文法を明確にする必要がある。また、生徒も、この文法事実を、感覚
的に押さえるとともに、その意味を文脈にそって考えることを通して、文法を意識化するように
する。文法学習はここから始まる。
 
 100



①文型感覚・文法感覚





 O文法感覚は言語活
  動の原動力





 O文法感覚の機能
 
  2 文法感覚の形成

 わたしどもは、日常話をしたり、文章を書いたりする時に、特別に文法を意識して、正しく話
したり書いたりしようと思わなくても、また、文法知識を適用して書こうとしなくても、正しい
文型で話したり書いたりすることができる。つまり、文法に合った文で話したり、書いたりする
ことができる。
 それは、わたしどもが、日常の言語生活――話を聞いたり、本を読んだり、話をしたり、文章
を書いたりする中で、自然に、習慣的に、感覚的に身につけた、文型感覚・文法感覚によるもの
と考えられている。
 このように、文法感覚は、話す・書く表現活動をする場合でも、聞く・読む理解活動をする場
合でも、その原動力、根底となっている。
 このような文法感覚は、ある事実、ある考え、ある感情などを示したり、伝えたり、表したり
する場合、いつも社会的に決まっている言い表し方、つまり文型を使って行われる。その文型は
直観的に、感覚的に体得されたものである。
 したがって、この文法感覚は、自然に、社会的に、習慣として身につくものであるが、同時に
その後の表現・理解の学習を通しても、いっそう確かに、いっそう広く体得されるものである。
 ところで、この文法感覚は。正しい文法事実に対しては、正しいと感じ、誤った文法事実には
違和感を覚え、不安を感じる。つまり、感覚的に、文型の正否、適否を判断する機能をもってい
 
 101



















①文法意識 
る。たとえば、
  「切符は、めいめい一列にご順にお入り願います。」
というのは、よく聞く例であるが、だれしも何か変な言い方だと感じる。舌足らずで、ていねい
すぎるいい方だからである。そう感じるのは文法感覚のはたらきによるものである。
 ① 三人の子供ではおそるおそる車を押した。
 ② 三人の子供はおそるおそる車を押した。
 ③ 三人の子供はおそるおそる車で押した。
という三つの文を読んで、②を正しい文と感じ。①③の文に違和感を覚えたとすれば、②を正し
いとする文法感覚が形成されたと判断される。
 ところで、正しい文法感覚が形成されないと、主語・述語の照応しない文を書いたり、助詞の
用法を誤った文を書いたりする。また、正しくない文法感覚で文章を読むと、読み誤ったり、読
み落としたり、読み加えたりして、正しい理解への妨げになることが明らかになっている。
 要するに、読解における文法学習、表現における文法学習は、このように、すでに身について
いる文法感覚を。読解学習、表現学習を通して意識化したり、いっそう確かなものにしたり、広
げたりする役割を果たすことになる。

  3 文法意識の強化

 文法事実の内にあって、それをささえている法則性、つまり文法を、全体的感覚的に身につけ
 
 102













 O文法意識の指導
 
たのが文法感覚である。その感覚として身につけている法則性を、はっきりと意識にのぼせると、
それが文法意識になる。それは文法事実に内在する法則性――文法を意識し、自覚することにほ
かならない。たとえば、
 Oなるべくその植物の特徴のはっきりしたものを摘むなり、あるいは根から掘るなりして、大
  切に持ち帰る。
 O自分の家族の顔なり、親しい友人の顔なりを紙に向かって書いてみようとすると、………。
という文を読んで、その内容を理解する過程で、「……はっきりしたものを摘むなり、……根か
ら掘るなりして」「家族の顔なり、親しい友人の顔なりを」という文法事実・表現の仕方に出会

 そこで、その意味を文脈にそってよく考えてみると、「摘むなり、掘るなり」「家族の顔なり、
友人の顔なり」という表現は、二つのものを並べて、そのどちらか一つを選ぶ意味を表している
ことが理解される。
 こうして、内容の理解を確かにし深めていく中で、「……なり……なり」という言い方は、「い
くつかを並べ立てて、そのうちのどれか一つを選ぶ」機能をもっていることを意識し自覚する。
と同時に、そのような意味を表すには、「……なり……なり」という言い方(書き方)をするよ
うに社会的なきまりとして、約束されていることを理解する。文法意識はこのようにして、しだ
いに育て上げられるものである。
 このように、文法事実に内在する法則性を意識化すると同時に、このような文型を感覚的に身
につけて、文章を書く時に使えるようになることが期待される。
 
 103












①文法能力





 O表現における文法
  学習


 O表現文法技能 
 このことは、読解における文法学習のあり方と方法を示唆している。

  4 文法能力の養成

 わたしどもが、日常、ことばを続けて話をしたり、文章を書いたりする場合には、その根底
基礎に表現の原動力としての文法感覚がはたらいている。この文法感覚というのは、社会的に決
まっている正しいことばの使い方(用法)、正しい文型を感覚的に身につけたものであることは、
前にたびたび述べたとおりである。
 この文法感覚にもとづいて、話したり、書いたりする力が文法力であり文法技能である。し
たがって、文法学習では、談話や作文――表現の基礎技能としての、ことばの法則的な使い方、
用法を身につけることが重要になってくる。それが、表現文法の技能で、リンデの言う「母国語
の正しい使用」の技能である。
 そこで文法感覚を育て、文法意識を高める中で、この基礎技能としての表現文法技能を育て
るには、話す・書く表現活動を通して、機能的に行うのが最も有効である。それが、表現(話す・
書く)における文法学習である。
 この表現文法技能には、たとえば、主語・述語の照応した文を書く(話す)技能」「修飾語・
被修飾語の関係の正しい文を書く(話す)技能」「接続語を使って文を続けて書く技能」「段落相
互の関係を考えて文章を書く技能」「論理的に文章を構成する技能」「イントネーション・プロミ
ネンスの技能」「ポーズ(pause)を適切に使って話す技能」のような技能がある。
 
 104








①文法能力




②文法知識





 O文法体系
 
 これらの文法技能は、段階的に系統的に学習させる必要がある。そのためには、理解学習で意
識化した文法を、表現学習で、具体的に技能化する工夫をするといいと思う。

  5 文法知識・文法体系への志向

 ことばの使い方、文の組み立て方などを具体化したものが文であり、文法事実である。この文
法事実をささえている法則性を、感覚として身につけたものが文法感覚である。この文法感覚に
もとづいて、その法則性を意識化すると文法意識になり、その法則性に従って行動化すると、文
法力・文法技能になる。
 文法知識というのは、このような文法感覚・文法意識・文法技能をささえ、統制している法則
性を抽出して、一般的・客観的に説明したものである。したがって、前にも述べたように、この
文法によって規正された言語表現が、文法事実であり、文法であり、ことばの用法そのものであ
る。
 この文法知識を体系化したものが、いわゆる文法体系で、世に形式文法とか、体系文法とか呼
ばれるものである。従来の文法学習は、これらの文法知識を知識として、読解学習・作文学習と
全く離れて体系的に指導したものである。それは、いろいろな語や文や文章をささえている一般
的法則を取り出して、整理し説明して記憶させたものであるから、文法的法則の認知・認識は、
本来、構造的・体系的でなければならない。
 ところで、文法知識はそのようなものであるが、中学校の文法指導は、すでにたびたび述べて
 
 105
  きたように、読解や作文の中で、生きてはたらいている文法を、ことばの用法、文章の書き方と
して機能的に学習するのが原則になっている。
 しかし、新学習指導要領では、「第3 指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱い」の「4」
に「第2の各学年の内容の〔言語事項〕については、A及びBの指導を通して身につけさせると
ともに、ある程度まとまった知識を得させるための指導もできるように配慮する必要がある。そ
の場合、内容の取り扱いが必要以上に細部にわたったり形式的になったりしないように注意する
必要がある。」と記載されている。一度道が開かれると、どっと旧来にもどって安きにつくのが現
場の常である。この注意書きは、特に重く受け止めて、かりにも、文法知識の学習中心に走らな
いよう注意すべきである。
 

     二 文法指導の原則は何か 




①リンデの文法指導の
 考え方 
 小学校の文法教育に対する、ドイツの言語学者エルンスト・リンデの発言には傾聴すべきもの
が多い。その著『国語教育方法論』(熊沢龍訳・リンデ言語教育論・昭一六・育英書院発行)に、
次の記述がある。
   「小学校における文法授業の主要目的は、実際的な目的、すなわち母国語の正しい使用を助
  成することである。」 
 106
 O母国語の正しい使
  用
 〇機能文法の機能的
  指導
 〇文法指導教師の資
  質


 〇文法は言語感情の
  育成


 〇文法は母国語の使
  用に役だつ







 O文法を指導する教
  師 
   「文法授業は則席的授業でなければならぬ。機会を逸しないようにしなければならぬ。すな
  わち、児童の誤れる表現とか、標準語に対する方言的妨害とか。語構成に現れてくる不確実
  とか、ある読み物、詩歌における流暢ならざる文の結合とか、または、児童の作文練習の時
  の誤りとか、これらすべてのことは、文法の時間を有効にするために妨害となるものである。
   この場合に前提となるのは教師が文法的諸材料の総体を概観することができるというこ
  と、および、教師が一定の組織を頭の中に有していることである。」
   「文法は、言語についての知識を伝達すべきではない。その最も大切な任務は、言語感情を
  育成するという点に求むべきである。それゆえにあらゆる概念の説明や分類なんかは不用で
  ある。」
   「文法は、母国語の実際的使用に役だつ、口述に役だつものである。」
リンデのこれらの発言は、ずいぶん古いものであるが、現在のこの国の文法指導の進歩のため
に、生き生きとはたらきかけている。①機能文法の機能的指導、②文法学習はことばの用法の学
習、③文法学習の任務は文法知識の学習ではなく言語感覚の育成である、④文法授業は機会的・
機能的でなければならないなど、どれ一つとってみても、みな現代のこの国の文法学習のあるべ
き姿への示唆を含んでいる。
 もう一つ前記のリンデの発言の中で見落としてはならないことがある。それは、文法の学習を
指導する教師の資格についての発言である。この教師は、戦前の文部省の文法指導の解説の中に
出てくる「文法家」、文法学者である必要はない。しかし「文法的諸材料の総体を概観すること
ができる」だけの「文法の組織」を体得していなければならない。 
 107
 O文法学習指導の計
  画





②機能文法指導の原則





 O理解における文法
  学習
  ・文法
  ・レトリック
  ・コンポジション 
 文法学習は、臨機に、機会的に指導することが大切だといっても、出たとこ学習の、無秩序な、
組織をもたない学習に終始しては、効果的には進められない。教師は教材を見通し、教科書を見
渡して、また、作文学習の計画を見通して、どこで、どのような文法事項を指導するか、その全
体を組織しておく必要がある。それができるだけの文法の知識を教師はもっていなければならな
い。
 すでに述べたことであるが、中学校の文法指導もまた、機能文法の機能的指導を原則とする。
学習指導要領には、言語事項の指導については「A(表現)及びB(理解)の指導を通して身に
つけさせる」と書いてある。つまり、「理解学習」「表現学習」を通して文法事項を学習すること
を原則としている。
 理解(読解)における文法学習は、文章の内容を正確に、深く理解する過程で、ことばの機能・
用法、文の構成などについての文法事項を学習する。また、知識や情報の構成、筆者の論理の展
開などを理解する過程で、文と文との連接・段落の構成・文章の構成・段落と段落との連接関係
などの文法事項(コンポジションに関する事項)を学習する。
 ところで、現在の教科書では、読解教材を通して文法事項が、段階的・系統的に提出されてい
ない。したがって、文法学習は、機会的学習、出たとこ学習になって、系統性、段階性をもつこ
とができない。そこで、前述のように。教師は、教材研究、教科書研究を通して、文法学習の前
提となる文法事実・文法事項の総体を概観し、それらを系統立てて、段階的に学習できるように
計画を立てることが望まれる。
 このように、文法学習が設計されたとき、初めて「読解を通して行う文法学習」「読解におけ 
 108
 O表現における文法
  学習
  ・文法
  ・レトリック
  ・コンポジション





  ・誤用の文法


  ・表現文法






③文法技能の系統的段
 階的指導
 
る文法学習」を原則とすることができる。
 表現(作文)における文法学習には二つの面がある。一つは、生徒の書いた作文の中から、主
語・述語の照応しない文などのような文法的に誤っている事例、修飾語の位置が適切でないため
文意があいまいになるなど、レトリックに間題のある事例、段落の構成や文章の構成などが適切
でないなど、コンポジションに間題のある事例などを取り出して整理し、それを正しく、適切に
書くことを指導する。それを通して、ことばの用法を正しくし、文と文との連接関係を正しくす
る。レトリック、コンポジションの学習をする。
 これが、これまで「誤用の文法」と言われたもので、機能文法の機能的方法による学習である。
 この誤用の文法の指導は、どちらかと言えば消極的な学習になるが、他の一つは、文章を書く
ための基礎的な技能としての文法技能を設定して、表現(作文)学習の中に位置づけ積極的に、
系統的・段階的に学習する面である。
 修飾語や接続語の用法、長くて複雑な文での主語・述語の照応、段落の構成法、文章の構成法
などを、具体的に文章を書く段階で指導する。これがいわゆる表現文法である。
 要するに、文法の学習は、表現・理解の学習の過程で、機会的・機能的に行うことを原則とする。
 ところで、前述のような、特に読解における文法学習は、たとえ計画的に行ったとしても、断
片的で、しかも機会的で、系統性や段階性をもたせにくい。そこで、具体的な内容の理解・表現
の学習を離れて、これまでに随所で機会的に学習した同類の文法事項を取り出して、系統的に、
段階的に学習させる必要がある。
 たとえば、指示語や接続語の機能や用法を、随時随所で、断片的に学習してきたものを、いち
 
 109









④文法学習はことばの
 はたらきに即して行
 う

   ・機能的な文例






   ・形式的な文例 
おう必要な事項の学習を終わった段階で、内容の理解学習から離れて、それらを取り出して、系
統的に、総合的に学習する。
 それは、文法技能は段階的に発達するものであるから、生徒の文法能力の発達に応じることに
なる。たとえば、生徒の談話・作文を分析してみると、文型の発達、段落の発達、文章構成の発
達、文末表現の発達、接続詞・接続法の発達、修飾語の発達、指示語の発達など、それぞれ、段
階的に押さえることが可能である。
 また、文法学習は、ことばが具体的に生き生きとはたらいている文法事実――何かについて具
休的に書いてある文や文章、あるいは、何かについて具体的に表現しようとする談話や文章――
に即して行うことを原則とする。
 それが、機能文法を、機能的な場で、機能的に指導することである。抽象化した言語形式、形
式だけの文例を取り上げて、機械的に学習しても、生きた文法技能の学習にはなりにくい。具体
的な事実・現象・感覚・感情・思想などを具体的に表現している文や文章をもとにして、学習す
るのでなければ、つい知的に走ったり、文法知識の詰め込みになったりして、真の文法力にはな
らない。
 これは、実際にラジオの国語教室でかつて放送された例であるが、「にわとりがころんだ」「春
が泣いた」という文は、形式的には、主語・述語の照応した文であるから、文法的に誤ってはい
ない。しかし、たとえ、それは正しい文であっても、概念的・意味的には妥当ではない。
 とかく、こういう形式だけの文による文法知識の学習が行われがちであるが、これは否定され
なければならない。 
 110
⑤文法感党は言語社会
 で形成される
 
 さて、文法学習の原則的な事項について考察してきたが、最後に、文法感覚・言語感覚の問題
について考えておきたい。
 児童・生徒の言語感覚が固定する、いわゆる言語形成期は、小学校の五、六年から、中学一年
生ごろだと考えられている。つまり、生育した地域の発音や語いや文法などを習得して、それが
固定する時期である。
 したがって、児童生徒が、感覚として身につけている文法は、それぞれの地域の方言文法であ
る。こうして、いったん形成された文法感覚を、変えることは容易なことではない。
 いっぽう、小学校に入学して以来、読解学習の過程で身につける文法感覚は、共通語の書きこ
とばの文法である。そこで、ふだんは方言文法に従って話し、改まった場では、共通語の文法で
話し書くという、いわゆる二重言語制を取らざるを得なくなっている。
 共通語で自由に話すことができるようになり、さらに共通語で自由に書くことができるように
なるためには、この方言文法の感覚を、共通語でのことばの使い方、共通語の文法感覚に変えて
いかなければならない。
 そのような方言文法の感覚を、共通語の文法感覚にまで高めていくのは、聴解学習・読解学習
過程での仕事である。方言地域では、改まった場で共通語を使うという機会は、非常に少ない。
したがって、共通語の文法感覚を育てることは容易でない。ラジオ、テレビなどに頼ることも相
当多いであろう。しかし、何と言っても、共通語で書かれている文章を読む過程で、文法感覚を
育てるようになる。また、共通語の文法技能によって文章を書く過程で、共通語の文法感覚を、
確実に育てていくようにもなる。 
 111

    第四章 新文法指導法の開発
 112
    一 機能文法の機能的指導の考え方 
①機能文法の機能的指
 導
 O理解における機能
  文法の機能的指導
  法

  ・文章の理解



  ・文法感覚


  ・文構成の法則 
 機能文法の機能的指導については、これまでたびたびふれてきたが、ここで改めてまた考察し
てみることにする。
   ともかくも三年生になれた私は、新しい教科書を買ってもらって登校した。ひばりは空で
  嗚いているし、桃のつぼみは丘の畑でふくらんでいるし、私の心はぴちぴちはねていた。
                               (木山撻平「尋三の春」)
 この文章を読むと、ともかくも、やっと三年生になれた――なったではない、なれたのである
――私が喜びに心をはずませている様子が目に浮かんでくる。空には、ひばりが明るい声でさえ
ずっているし、地上には、桃のつぼみが丘の畑で今にもはちきれそうに丸くふくらんでいるし、
私の心は、うれしさに明るくぴちぴちとはずんでいる。そんな心と姿がありありと想像される。
 それができるのは、「ともかくも」「なれる」というようなことばの意味や用法、あるいは、
 「……鳴いているし、……ふくらんでいるし」というような並立の関係にある意味の表し方を感
覚的に身につけているからである。
 また、「[ともかくも三年生になれた+私は]+[新しい教科書を買ってもらって+登校した]」、
「〔ひばりは空で鳴いているし+桃のつぼみは丘の畑でふくらんでいるし〕+〔私の+心は〕+
 113









  ・語順の変更



  ・違和感
  ・文法感覚の形成








  ・文法学習の第一
   歩
 
〔ぴちぴち+はねていた〕」というように、「連体修飾語+主語+連用修飾語+述語」「並立語+
主語+述語」という、文の成分の係り受け、連接の関係――文構成の法則をこれもまた感覚的に
身につけているからである。
 この法則というのは、社会的に、習慣的に決まっているもので、それに従った文構成・文型に
よって表現されている。つまり、この表現――文章の裏には、社会的に決まっている、したがっ
てだれでも感覚的にもっている法則性・文法が生き生きとはたらいている。
 もし、この文の構成を「新しい教科書を買ってもらって(連用修飾語)+ともかくも三年生にな
れた(連体修飾語)+登校した(述語)+私は(主語)」というように語順を変えると、読み手は、文の
脈絡・文脈に対して違和感を覚え、変だと思い、同時にその表す意味が理解できなくなる。
 このように違和感を覚えるのは、読み手の中に「主語のあとに述語がくる。修飾語は被修飾語
の前にくる」、つまり、「連体修飾語+主語+連用修飾語+述語」という法則的な構成に対する文
型感覚・文法感覚が形成されているからである。そして、それは、読み手の認識・思考のパター
ンでもある。
 このように、文法感覚としてもっている、語の用法・機能、文の構成をささえている法則性を、
前述のように、文章の意味を正確に、深く理解する学習を通して、意識化する学習が、文法学習
の第一歩であり、文法学習の基本でもある。
 このように、文や文章の中に、具体的に、したがって機能的に、生き生きと機能している文法
――機能文法を、その文や文章の表す意味を、正確に深く理解する過程で、意識化し、理解する
学習の方法が、「機能文法の機能的指導の方法」である。 
 114
 O表現における機能
  文法の機能的指導
  法


  ・文法感覚と表現



  ・文法感覚と文の
   誤り




  ・ことばの用法の
   学習


  ・誤用の文法
 
 また、「海はしけていて、大きな波が押し寄せては白くくだける情景」を見て、それを表現す
る場合には、その認識の結果を表現するのに必要な文型・文法をすでに感覚的にもっていて、た
とえば、次のように書いたり話したりする。
   沖の方から、大波が寄せてきたかと思うと、たちまちさか巻く白波に変わる。変わったと
  たん、どどどうっという音とともに、波は白く砕けて砂浜に押し寄せる。
 この場合、書き手、話し手は、いちいち文法を考えて、文法知識をたよって話したり書いたり
はしない。潜在的に、感覚的にもっている文法感覚に従って、それに内面的にささえられて、書
いたり話したりする。文法感覚にたよって文脈を作っていく。それが自然な表現である。
 ところで、もし、その場合の書き表し方・話し方――表現の仕方(文型)が、文型感覚・文法
感覚としてじゅうぶんに育てられていなかったり、誤ったまま感覚的に身についていたりすると、
つまり、不確実なあやふやな文法感覚や誤った文法感覚を身につけていると、誤った文、不適切
な文で書いたり、話したりすることになる。
 たとえば、「沖の方から大波が寄せてくるかと思うと、たちまちさか巻く白波に変わる」「どど
どうっという音がすると、波は白く砕けて砂浜に押し寄せる」などと、誤った文を書くかもしれ
ない。そんな場合には、この誤った文を正しく直すことによって、文法に従った正しいことばの
使い方・用法を学習させる。この学習を通して、文法感覚を正しくしたり、いっそう確かにした
り、また、文法意識を高めたりする。
 これが、生徒の表現上の誤りや不適当なものを押さえ、それを正しく直すことを通して、語の
用法、文の連接法、文章の構成法などの文法事項を学習する、いわゆる「誤用の文法」と言われ 
 115
るもので、典型的な機能文法の機能的指導法である。
 また、実際に文章を書いたり、話したりする中に、生き生きと機能している文法を、書こうと
する事柄、話そうとする事柄を適切に表現する過程で指導する方法もまた「機能文法の機能的指
導の方法」である。
 以上二つの指導の方法のうち、前者が「理解(読解)における機能文法の機能的指導法」であ
り、後者が、「表現(作文)における機能文法の機能的指導法」である。
    二 理解(読解)における機能文法の機能的指導の方法



①読解における文法感
 覚 
  ― 読解における文法学習の契機と場

 文章を読んでその内容を理解する活動は、文章の文字面、表現面からその意味を読みとる活動
である。それは、本来心理的なもの、生理的なもの、経験的なものであるから、過去に積み重ね
られた知識や経験の助けによって行われる。が、その最も根底となるところ、読む活動――表現
の認識・思考の原点においては、過去における言語経験によって学習され磨かれた言語感覚・文
法感覚が、意識化されぬままに理解を助けている。 
 116



②読解に・おける文法学
 習の契機
 
 一見、眠っているかに見える言語感覚・文法感覚も、いったん文法的に正しくない文に出会う
と、たちまち、頭をもたげて、不自然・不快・不審の感、違和感を抱かせる。誤っている文とい
う自覚は、そこから生まれる。
 一体、読解の過程において、このような文法感覚がはたらいて、文法的自覚が高められ、文法
意識が喚起されるのはどんな場合であろうか。教師はそれを、文章に即して具体的に知らなけれ
ば、読解における文法指導は行われないであろう。いわゆる文法指導の出発点である指導すべき
文法事実とそれによって指導する文法事項を明確にすることが、何よりも重要である。次にその
主な事項をあげてみる。
(1) 理解が困難な場合
  ① 文が長くて複雑で、文脈の筋道が通っていない場合、あるいは、文脈が容易に正しく押
   さえられない場合。
  ② 文と文との係り受け、展開の関係が複雑で、筋道が立ちにくい場合。
(2) 理解があいまいになる場合
  ① 修飾・被修飾の関係がどのようにもとれるため意味があいまいになる場合。
  ② 主語を省略し、簡潔な文にしたためにかえって文脈が正しくつかめない場合。
  ③ 陳述の副詞(呼応の副詞・予測の副詞)の呼応が明確でないために、理解があいまいに
   なる場合。
  ④ 並立語が正しく照応していないために、文意があいまいになる場合。
(3) 文末の微妙な心理・心情、判断の表現が理解しにくい場合 
 117










③読解における文法学
 習の場 
  ① 助詞・終助詞による微妙な表現がわかりにくい場合。
  ② 文末のことばによる事実と感想・意見等の区別、否定の状況などが明確に押さえられな
   い場合。
(4) 段落構成・文章構成が明確でないため、文章の論理がとらえにくい場合
  ① 段落の構成が明確でない場合。
  ② 条件型の文章で、段落相互の関係が明確でない場合。
  ③ 文章展開の論理が複雑で明確でない場合。
 以上のように生徒が。理解に困難を感じたり、意味を取り誤ったり、意味の理解があいまいで
あったり、つまずきを起こしたりするときが、最も文法感覚がはたらき、文法意識が喚起され、
高められていくときである。こういう機会こそ文法指導の得がたい好機である。
 従来、文法指導の契機も場も、その設定はすべて指導者側にあった。生徒が、その必要を感じ
ようが感じまいが、関心を示そうが示すまいが、それはたいした関心事ではなかった。一方的に
教師が、文法学習の場を設定し、教師の説明・解説を中心にして文法学習は展開された。
 それは好ましいことではない。文法学習の契機は、まず、生徒の文法的関心、自覚に求めなけ
ればならない。それを文法学習の出発点とすべきである。
 文法指導の場は、複雑な表現、誤られやすい表現、(誤った表現)微妙な表現など、生徒が、 
文法的抵抗を感ずるところに設定されなければならない。
 このような、機会と場を押さえた機能的な学習こそ、文法指導を前進させるとともに、生徒が
文法学習に意欲を示し、その上好きになることを保証するものである。 
 118



①文の構成の指導







 O文脈が通っていな
  い文
 
  2 読解における文法指導の機能的方法

 文を正しく理解するためには、文脈を正しく押さえて、文の成分の係り受け、連接の関係を明
らかにし、その意味を理解することが第一である。ことに成分の係り受け展開の関係が複雑にな
っていて、理解が妨げられる場合には、これを基本的な文型――①何がどうする、②何がどんな
だ、③何が何だ、④何がある(いる)――に照らして、筒潔な文脈に置き換えた上で、修飾・被
修飾の関係、接続の関係、その他を押さえて理解させる。
 そのような操作を通して、主・述の関係、修飾・被修飾の関係、接続の関係など、文の成分の
係り受けの関係を意識化し、文法感覚をいっそう強化する。
 例― 文脈が適切に通っていない文、したがって意味が正しく理解できない場合
   言葉の使い方の規則にはたくさんあって、ていねいな使い方、乱暴な使い方、他人を怒ら
  せるような使い方や、他人を喜ばせるような使い方、そのほかいろいろありますが、考える
  というだけのためには、ごくおおざっぱな、しかし、いちばん骨組みになるような規則だけ
  でいいのです。このような規則が、言い換えれば論理的な規則なのです。
 これは、ある教科書の一年の教材の中の一段落である。二文から成り立っているが、最初の文
は、約一三〇字の長い文で、しかも、文脈が適切に通っていないから、生徒には一読して直ちに
正確に理解できない。悪文の典型のような文である。したがって生徒は、直観的に文法的抵抗、
違和感を覚える。 
 119














O文脈が複雑で長い
 文 
 そこで、文脈をたどりながら意味を確かめていく。すると「言葉の使い方の規則にはたくさん
あって」と「ていねいな使い方……そのほかいろいろありますが」とが照応しないことがわかる。
それは。「たくさんあって」「いろいろありますが」と重複している。これは、「言葉の使い方の
規則には」で切り「たくさんあって」を削る。そして「いろいろありますが」に続ける。しかし、
 「考えるというだけのためには」の連用修飾語の被修飾語が明確でない。「考えるというだけの
ためならば」とすれば「骨組みになるような規則だけでいいのです」に連接する。
 いずれにしても、この文脈は、「言葉の使い方の規則には」「ていねいな使い方、乱暴な使い方、
他人を怒らせるような使い方や、他人を喜ばせるような使い方、そのほかいろいろありますが」
 「考えるというだけのためならば」「ごくおおざっぱな、しかしいちばん骨組になるような規則
だけがあればいいのです」ということになる。
 このように、文脈をたどり、筋道をたどってその意味を正しく理解する過程で、主語・述語の
照応、修飾・被修飾の正しい照応、並立関係に立つ意味の書き表し方、逆接の接続詞の用法など
についての感覚、文法感覚が養われ、文法意識が高められる。
 例2 文脈が複雑な長い文で、筋道を立てて理解しにくい場合
   「太郎君は何か探しているよ。」と言うとき、実際に太郎君のやっている一つ一つのことは、
  机の引き出しを開けること、かばんの中をのぞくこと、本の間を見ること、ポケッ卜に手を
  入れることなどですが、このような動作が別々のものでなくて、何か、あるものを手に入れ
  るためにやっている一連の行動だと分かったとき、わたしたちは。このような太郎君の動作
  を一まとめにして、「探す」という動詞でまとめあげているのです。
 
 120













 O文脈が誤っている
 
 この文も長くて、その構成が複雑で、しかも回りくどい叙述の仕方をしているので、文脈を押
さえて意味を正しくとらえるのに困難を感じる。
 まず、文脈を押さえ、筋道をたどりながら、①「「太郎君は何か探しているよ。」と言うとき」
―②「太郎君のやっている一つ一つのことは……ポケッ卜に手を入れることなどですが」―③
 「このような動作が……一連の行動だと分かったとき」―④「わたしたちは―このような太郎君
の動作を一まとめにして―「探す」という動詞で―まとめあげているのです」というように大ま
かに文全体の構成を押さえて、意味の筋道を明らかにする。その上で、それぞれの関係を明確に
する。
 ①は②の修飾語節、②は③に対する接続語節、③は②を受けて④に続く修飾語節、④は、「主
語+修飾語節+修飾語節+述語」で。この文の中心となる部分である。
 こうして、文脈をたどりながら、意味を明確にしていく過程で、さらに「このような」の指示
するものと、その機能とを明らかにする。
 例3 文脈が通っていないために、意味が明確に理解できにくい場合
  O美しい新緑が見られるのを楽しみにして行ったが、新緑はもちろん美しかったし、また、
  夏には知られずにいることが分かったりもした。
  O見なれない人の目には、海の水は、まるで生きているもののような気がすると言います。
 このような文脈のすっきりしない文に出会うと生徒たちは違和感を覚える。そこで、なぜ違和
感を覚えるのかを考えさせて、文脈の通るように、文を書き直させてみるといい。それによって、
文法感覚を確かにし、文法意識を高めることができるであろう。 
 121
②修飾語と被修飾語と
 の関係があいまいな
 文の指導

 〇連用修飾語と被修
  飾語




 〇連体修飾語と被修
  飾語




 O「ように+ない」
  の文型 
 文の中には、修飾・被修飾の関係があいまいなため、文の意味を取り違えたり、理解があいま
いになったりする場合がある。修飾語は、被修飾語の前に、できるかぎり近く置くのが原則であ
るが、それでもなお意味があいまいになる場合が多い。
 例― 連用修飾語と被修飾語との関係があいまいなもの
   ふたりの間にやっと自分の腰掛けられるだけの空間を見つけて腰を下ろす。
 このままだと、「やっと……腰掛けられる」とも、「やっと……見つけて」とも、「やっと……
腰を下ろす」とも理解される。「やっと」の次に読点を打つか、「やっと」を、「見つけて」ある
いは、「腰を下ろす」の直前に置くかして、修飾語と被修飾語との関係を明確にする。
 例2 連体修飾語と被修飾語との関係があいまいなもの
   砂の上にきれいなさざ波のような模様が現れた。
 これも、このままだと、「きれいなさざ波」の意味にも、「きれいな模様」の意味にもとれる。
もし、模様を修飾するのであったら、「さざなみのようなきれいな模様」と、被修飾語の直前に
置く。
 例3 「○○のように○○しない」の文型
   やまどりは、ほかの小鳥たちのようにあわてて飛び立つようなことはしない
 この文例のような、「OOのように○○しない」という文型は、注意しないと誤って解釈する。
このままだと、「小鳥たちも、あわてて飛び立つようなことはしない」という意味に解される。
この文は、「ほかの小鳥たちが、あわてて飛び立つように」「やまどりはあわてて飛び立つような
ことはしない」という意味を表そうとしたものである。したがって、「ほかの小鳥たちとちがって 
 122

③文の構成が明確でな
 い文の指導
 O文の成分の関係が
  明確でない文
 
……」「ほかの小鳥たちが飛び立つように……」とすれば、誤解される心配はなくなる。
 また、主語やそれに当たる語句が省略されているために、文脈が正しくつかめない場合がある。
その場合には、主語を補うか、主語を作って完全な文型にするか工夫する。
 例1 主語が明確でないために意味が明確に理解されない場合
   四角の信号機に赤い電気がついていると、止まれということを示す記号で、通行人がみん
  な止まるのと同じように、あなたたちが食堂に入って「カレーライスをください。」と言えば、
  どんな食堂へ行っても同じ食べ物を持ってくるでしょう。
 上の文の「四角の信号機に……止まるのと同じように」は、文脈が通っていない。「止まれと
いうことを示す記号で」を省くと、文意は通じる。しかし、それでは筆者の言おうとする意味が
表せない。そこで、筆者の言おうとすることを忠実に表現しようとすれば、「四角の信号機に赤
い電気がついていると」「それは」「止まれということを示す記号で」というように、「それは」
を補う。あるいは、「四角の信号機に赤い電気がついていると」を「四角の信号機についている
赤い電気は」「止まれということを示す記号だから」というように、最初の接続語節を、主語節
に書き替えると文意が通じる。
 このように。主語を示す語を補ったり。主語を作ったりして文脈が通じるようにすると、正し
く意味を理解することができるとともに、文の成分の係り受けの関係を明確にすることができる。
 例2 主語が省略されているために意味が明確に理解されない場合
   しかし、川床や運河や水道になるものは、だいたいきまったものですし、もし新しい運河
  をつくるにしても、ひとりの人のつごうでつくられるのではなくて、大ぜいの人の話合いの 
 123




④語句の呼応関係につ
 いての指導





 O陳述の副詞を補っ
  て呼応関係を明確
  にする
  ・あたかも……よ
   うだ 
  うえでつくられるような性質のものです。
 この文も文脈が通りにくくなっている。したがって筋道を立てて意味を理解しようとすると、
いろいろな抵抗にぶつかる。この文は、「もし……ても」では呼応しないから、「もし」を「たとえ」
とし、「ひとりの」の前に「それは」を補うと、文脈が通じ、その意味も明確に理解される。
 副詞や副助詞、または、それと同じような意味を表す語句の中には、副詞本来の程度や状態を
表す機能以外に、特別の機能をもつ語がある。いわゆる陳述の副詞とか、呼応の副詞とか、ある
いは、予測の副詞とか言われる語がそれである。
 これらの語は、いずれもその語のあとに、一定の語を取って、互いに呼応して所定の意味を表
すようになっている。そこで、その呼応関係を正しく押さえたり、あるいは、欠けている一方を
補ったりすることによって、正しく、深く、適切に文の意味を理解するとともに、その過程で呼
応の意識を明確にすることができる。
 例1 陳述の副詞を補って文の意味を正確に理解する場合
   ほろよいきげんのその顔には、「今すぐ、きさまの指をちぎってやるわ、野良犬め!」と
  書いてあるかのようだ。(チェホフ 原卓也訳「カメレオン」)
 この文の文脈は、何となく落ち着かない。違和感を覚える。それは、文末が「書いてあるかの
ようだ」と、比喩的表現をとっているが、それに呼応する副詞が欠落している、省略されている
からである。そこで、「その顔には」の次に「あたかも」「まるで」「さながら」などのいずれか
の副詞を補うと、文脈が適切に通るとともにその意味も正確に理解することができる。こうし
て副詞の呼応関係を明確に意識化する。 
 124
 O仮定形の呼応関係
  を押さえる
  ・ならば……だろ
   う








 Oことばの呼応関係
  ・仮定の呼応

  ・陳述の副詞の呼
   応
  ・いくら……も…
   …ない
  ・あたかも……よ
   うだ 
 例2 仮定形の呼応関係を明確に押さえて理解を正しくする場合
  良平は彼らを見たときから、なんだか親しみやすいような気がした。「この人たちならば、
  しかられない。」――彼はそう思いながら、トロッコのそばへ駆けて行った。(芥川龍之介「卜
  ロッコ」)
 この文脈の中で「この人たちならば」と仮定形をとっているのに対して、「しかられない」と
いう断定は、何となく気持ちが落ち着かない。そこで、この仮定に対して、「しかられないだろ
う」「しかられないに違いない」というように呼応させる。そして、「この人たちならば、(きっ
と)しかられない(だろう)」と、推定させれば、「彼はそう思いながら、トロッコのそばへ駆け
て行った」とぴったり合うように思う。
 このように、ことばの呼応関係を明確に押さえることで、理解がいっそう確かになるとともに
ことばの呼応関係の意識化を図ることができる。
 これらの二、三の例をあげてみると。
 ① 二つの山の頂から頂へ、十何里の間、といをかけわたして水を流したら、水はきっとこち
  らからあちらへ流れるだろうと思われた。宋下順二「山の背くらべ」)
 ② たくさんの男兄弟のいちばん下で、じやまものあつかいに毎日ただこき使われるばかり、
  いくら働いてどれほどもない田畑を、さきざき少しでも分けてもらえるあては全くなか
  った。木下順二「山の背くらべ」)
 ③ 東を背にして、光はあたかも姫の体から飛び散っているかのようであった
 ④ その人は、自分の生活をそれによって合理化しているつもりかもしれませんが、恐らく、 
 125
  ・恐らく……あり
   ません
  ・全然……ない
  ・たぶん……あっ
   たろう











⑤修飾語のついた並立
 語の指導 
  あくせくと一日一日を過ごして、そのことをどこかでなげいたりこぼしたりしているにちが
  いありません。(串田孫一「見ることについて」)
 ⑤ 彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、そのときの彼を思い出すことがある。
 ⑥ ある日、それは筆筒も鉛筆も机の上に出していなかったから、たぶん修身の時間であった
  ろう。これより、たぶん一週聞か十日か後のことであったろう。(木山捷平「尋三の春」)
などのような例が、このほかにもたくさんある。
 国語の表現では、文の意味は文末までだどらないと確定しない。この「判断は文末において行
われる(決まる)」という言語形式は、国語の特色の一つである。そういう中にあって、陳述の
副詞は、その呼応関係によって、文末までたどらないうちに、どう判断するか、判断の結果の状
況を予測することができる。これは、国語の中では貴重な機能である。
 ところが、この陳述の副詞の呼応関係は、「とても」「全然」が代表しているように、しだいに
衰え滅びる方向をたどっている。現在、副詞によってはかなり乱れている。こういう予測の機能
こそ、もっと重視して指導すべきであろう。
 読解指導中、並立語を含んだ文で、一般に読み誤られるのは、並立語に修飾語のついた文であ
る。
 例1
   まして「日本は民主主義的な国家だ。」などということを考えるときには、目に見えたり
  手にさわったりすることのできる 日本も民主主義も、わたしたちの目の前にないのですか
  ら、このような言葉があなたたちの頭の中になければ……。 
 126
   例2
   また、このまとめ方は非常にたくさんあって、ただ形の似たもの色の似たものというよ
  うな目で見たり手でふれたりするものの共通点をまとめるだけでなくて……。
 例3
   それぞれの人間が他人の自由を侵さない限り、みんな自由に物を考え自由にその考えを
  述べ自由に行動する権利を持っていて王様だろうが大臣だろうが、かってにこれをお
  さえつける権利はありません。
 例4
   これほど広くこれほど大きな不幸があるということには、それだけの原因が、社会のし
  くみの中かあるいはその動き方の中にあると考えなければなりません。
 これらの例のように、並立語に修飾語のついている場合は、修飾語+(並立語+並立語)と考
えるのが原則である。したがって、(修飾語+並立語)+(修飾語+並立語)ということになる。
ところが、これは解釈する場合、(修飾語+並立語)+並立語のように誤られやすい。
 たとえば。例1は、〔(目に見えたり+手にさわったりすることのできる)+日本も〕+〔民主
主義も〕と誤ることが多い。これは、〔(目に見えたり+手にさわったりすることのできる)+日
本も〕+〔(目に見えたり+手にさわったりすることのできる)+民主主義も〕の意味であること
を確認する。つまり、この場合の修飾語は、並立語のすべてに係っていくのが原則である。
 ところが、例2は少し違う。例1と同じように考えれば、連体修飾語節〔ただ形の似たもの、
色の似たものというような〕は、並立語、(目で見たり―するもの)(手でふれたり―するもの)
 
 127











⑥指示語の指導 
の両方を修飾することになる。それでは筋道が通らないが、うっかりすると、そのように理解し
てしまうのが普通である。
 そこで、この場合は、修飾語と並立語との関係を考えて、次のように修飾・被修飾の関係を明
らかにすれば、その意味を正確に理解することができる。
  〔(ただ形の似たものというような)+(手でふれたり))+〔(色の似たものというような)+
 (目で見たりするものの)〕+共通点を……というように、文脈を正しくすると、その意味もお
のずから正確に理解できるようになる。
 例3・4のように、並立語が修飾の機能をもっている場合には、また、いちだんと複雑な文脈
になっていて、よほど、文脈をたどって意味を確かめていかないと、理解しにくい。
 こうして、正確に理解する過程で、並立語の機能・用法を正しく理解することができる。
 これまでみてきたように、文は、筆者の認識・思考を叙述し展開する過程を組織し構成したも
のである。したがって、基本的には、主語―→述語の関係を中心とした文脈にそって、修飾語、
接続語、並立語、指示語などが、係る・受ける・並べる・指すなどの関係でかかわりあい、結び
あっている。そこで、文を正しく理解するためには、その筋道・文脈をたどりながら、それらの
語の相互の関係を正しく押さえる必要がある。

 例1                      ①
   その小学生は、アリジゴクと俗に言われている、あの軒下や縁の下のような乾いた土のと
                               ②
  ころに見られるろうと状の小さい穴――ウスバカゲロウの幼虫がその中にいて、アリなどが
           ③          ④
  すべり落ちてくるとそれを食べて育っているあの、アリジゴクを見ているうちに、ふと気が 
 128
    つきました。(串田孫一「見ることについて」)
 この文の意味を正確に理解するためには、そこに使われている指示語――あの・その・それの
指示するものを明確にするとともに、その指示機能を明らかにしなければならない。
 ①の「あの」は、「あの軒下や縁の下」と誤られやすい。「あの……ろうと状の小さい穴」のよ
うに穴へかかっていく連体詞、指示語である。この場合の「あの」は、読み手も知っている、一
般に知られている事物を指すはたらきをしている。ここでは、「みなさんもよく知っている、あ
のろうと状の小さい穴――アリジゴク」という意味である。
 ②の「その」は言うまでもなく。「ろうと状の小さい穴」を指定している。③の「それ」は、
「すべり落ちてくるアリ」を指示している。これも注意しないと、一般的な「アリ」を指示して
いると形式的に受け止めてしまう。
 ④の「あの」は、①の「あの」と全く同じ用法で、「あなたも知っているあの○○」というよ
うに親しみをもった表現になる。
 例2
   頂上へ着けば、晴れた昼間なら南に例の隣の山、少し東へ大きな沼、ぐるりと回って北西
  にはあの川と、それを越して自分の村が見わたせるはずのこの山も、今はまだ薄暗く霧のみ
  が深い。(木下順二「山の背くらべ」)
 この文では、うっかり読んだのでは「それ」の指示するものを限定することが困難である。指
示語は、一般にその直前か、なるべくそれに近いところにある事物を指示するのが原則である。
そこで、この文の脈絡をたどってみると、「頂上へ着けば――○○○○と――それを越して自分
 
 129



⑦接続詞の指導 
の村が――見わたせるはずのこの山も――今はまだ薄暗く霧のみが深い」ということになる。こ
の文脈の中で「それ」の指示するものを考えてみる。すると、直前の「あの川」を指すことになる。
 例3
   子供たちは、春休みで、そろそろ七か月ぶりで岩手の祖母のところへ顔を見せに行く旅の
  仕度に取りかかっている。宿題もなく、それに今年は、三人ともそろって卒業も入学もなく
  て、ただ四月の進級を待つだけの気軽な春休みだから、一週間ほどの岩手の旅も、存分に手
  足を伸ばして楽しむことができる。(三浦哲郎「春は夜汽車の窓から」)
 この文章を読み味わう上に「それに」はだいじなはたらきをしている。この接続詞の機能を、
文脈をたどって考えることによって、この文章が表現しようとしている、子供たちの気軽な旅の
楽しみを味わうことができる。この接続詞「それに」は、その前の表現、ここでは「宿題もなく」
を受けて、さらにその上に、そのあとに続く表現、「卒業も入学もなく」を積み重ねる機能、関
係を示している。つまり「それに」は「宿題もなく+それに+卒業も入学もなく」というように、
「その上に積み重ねる関係を示す語」で、そのような機能をもっている。
 こうして、文章を深く読み味わう過程で、接続詞の機能・用法を理解させる。
 例4
   ただ、そのときの土工の姿は、今でも良平の頭のどこかに、はっきりした記憶を残してい
  る。薄明かりの中にほのめいた、小さい黄色の麦わら帽、――しかし、その記憶さえも、年
  ごとに色彩は薄れるらしい。(芥川龍之介(トロッコ)
 この文章を読み味わう場合、逆接の接続詞、「しかし」の微妙な用法に注意を向けるべきであ
 
 130
  る。本来ならば、「はっきりした記憶を残している」「しかし」と続けるべきところである。それ
では全く平凡な、力のない表現になってしまう。「はっきりした記憶」を「薄明かりの中にほの
めいた、小さい黄色の麦わら帽」として受け、それを指定して「その記憶さえも」「年ごとに色
彩は薄れるらしい」と続ける。この文脈をたち切って、「……麦わら帽、――しかし、」と、ダッ
シュで受け、「しかし」と屈折させた巧みな表現に気づかせる。
 以上あげた例のように、文脈をささえている、指示語の指示機能、接続語の連接機能を、表現
に即して具体的に、文法感覚として、また、文法意識として、さらにその用法として身につける
ようにする。
 筆者(話者)の微妙な心理は、助詞、特に終助詞によって表現されている場合が多い。禁止・
命令・誘い・疑問・強制・親しみ・確信・感動・詠嘆・断定・否定など、文末の一助詞によって、
他のことばでは表現のしようのない微妙な心理を、的確に表現する。これらの終助詞を、読解の
過程で具体的に学習し、その語感を身につけるようにする。次に「ウミヒコ、ヤマヒコ」(山本有
三)の中に使われている終助詞を書き出してみる。
 ① しかでも追いかけたの。(疑いの意)
 ② そんな言いぐさってある。(反語・ないの意)
 ③ おまえに針なんかできるものか。(強い打ち消しの意)
 ④ 謝るもんか。(強い打ち消しの決意を表す・謝らないの意)
 ⑤ おまえ出さないのかい。(親しみをもってたずねる意)
 ⑥ 今夜は早く寝るかな。(ごく軽い疑問の意)
 
 131
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
⑨副助詞・副詞の指導 
 ⑦ もう一日これでやってみないかね。(念を押す意)
 ⑧ おまえは妙なところに意地をはる。(念を押したり強めたりする意)
 ⑨ よくもあんなこと言えたものだ。(感動を強めていう意)
 ⑩ 寒くなった。(感動を強めていう意)
 ⑪ おい、今日はひどいめにあった。(強めていう意)
 ⑫ そんなやくざな針は、何千本こしらえたって受け取りやしない。(言い聞かせる意)
 ⑬ そんなことはどうだっていい。(強めていう意)
 ⑭ おまえも早く起きろ。(言い聞かせる意)
 ⑮ こっちは海の人間だからたちまち踏みはずしてしまったの。(断定の気持ちを軽く表す)
 ⑯ 持ってくるとも。(受け合う意)
 これらの終助詞を取り上げて、その意味機能を知的に理解させても学習の意味はない。作品を
読み味わう中で 文脈を通して、具体的に、感覚的に身につけ、語感を正しく、豊かにするよう
にする。
 また、文の中には、副詞や副助詞によって、その意味を強調しているものがある。これらにつ
いては、一般的な表現と比較して、その機能と語感を身につけるとともに。文法意識を培う。
 例1
   それから、今度はトロッコを押し押し、もと来た山のほうへ登り始める。良平は、そのと
  き、乗れないまでも、押すことさえできたらと思うのである。(芥川龍之介「トロッコ」
 例2
 
 132
     みかん畑へ来るころには、辺りは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば――。」良平はそ
  う思いながら、すべって、つまずいて走って行った。(芥川龍之介(トロッコ)
 例3
   「なあ、チャボの件はどうする……。」と、父は今日こそはとばかりに言った。(生徒作品)
 例4
   そのとき、わたしは正直いって、ちょっと胸を突かれたような思いがした。次女の悩みが
  それほど深刻なものになっていると思いしなかったからである。(三浦哲郎「春は夜汽車の
  窓から」)
 例5
   名字は大倉ですが、家には大きい倉小さい倉ありはしません、小さな木小屋のような
  わら屋があるきりです。(木山捷平「尋三の春」)
 例6
   今でこそ米を売りに行ったり肥料や日用品を買いに行ったり、つい隣のように思っている
  が、私はその年になるまで町を知らなかった。木山捷平「尋三の春」)
 例7
    「もう帰ってくれればいい。」――彼はそう念じてみた。が、行く所まで行き着かなけれ
  ば、トロッコも彼らも帰れないことは、もちろん彼にも分かりきっていた。
   トロッコは、最初おもむろに、それからみるみる勢いよく、一息に線路を下り出した。そ
  のとたんに突き当たりの風景は、たちまち両倒へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開し
 
 133
⑩文と文との連接関係
 の指導
 O文と文との連接・
 O段落




 O文と文との連接関
  係1
  ・ところが
  ・しかも
  ・とすると
  ・これは 
  てくる。(芥川龍之介「トロッコ」)
 文章を組み立てている文は、相互に意味的に、あるいは形式的に係り受け連接の関係を保ちな
がら、文脈を構成し、より大きな意味をまとめていく。その意味的に、形式的にまとまった大き
なまとまりが段落である。
 そこで、この文の係り受け連接の関係、文脈をたどって意味を理解していくと、筆者が、どの
ように思想を展開しているか、その展開の筋道・論理を明確に知ることができる。この筆者の思
想展開の論理を理解する過程、読解学習の過程で、文と文との係り受け連接の関係、それをささ
える法則性――文法を意識し理解する。それが、文法としての文と文との連接関係の学習である。
 例1①                          ②
   人口が倍になると。当然倍の食糧が生産されねばならない。ところが、地球の陸地の全面
  積のうち。食糧生産に利用できるのはせいぜい四分の一強で、しかもそのおよそ半分は、す
                   ③
  でに現在農耕地として使われている。とすると、残り半分を開拓しつくして、やっと三十年
                    ④
  後の世界人口が養える勘定ではないか。これは。ぎょっとさせるような数字である。(吉良
   竜夫「地球に定員はあるか」)
 上の文章は一段落であるが、四つの文で構成されている。これらの文の係り受け連接の関係を
たどってその意味がどのように構成されているかを考えてみる。
 まず、①で、「人口が倍になると、当然倍の食糧が生産されねばならない」と、この段落の
「話題」を提示する。②で、接続詞「ところが」で①を受け、次に思いがけない事実を引き出す。
「地球の陸地の全面積のうち食糧生産に利用できるのは四分の一強、しかもその半分は現在農耕
 
 134





  ・段落の構成










 O文と文との連接関
  係2
  ・しかし
  ・だから
  ・そこで
  ・ところが
  ・それも


  ・段落の構成
 
地として使われている」。③で、接続詞「とすると」によって②を、そのまま受けて、話題につ
いての判断、結論を導く。④で指示語「これ」によって。③を受け、それに対する感想を述べて
いる。
 このように、四つの文が。二つの接続詞と一つの指示語によって連接関係の明らかな文脈を形
成し、段落を構成している。その構成は次のようになっている。
 ① 話題の提示………………………………………………話題を提示する機能
 ② ところが――話題に対する意外な実状を示す………前を受けて意外な事実を導き出す機能
 ③ とすると――実状を受けて結論を導く………………前をそのまま受けてあとに続ける機能
 ④ これは――結論を受けて感想を述べる………………前の事実を指示する機能
 こうして、筆者の思想展開の論理をたどって理解する中で、接続詞・指示語の機能・用法を意
識化し、理解することができる。
 例2
  ①
   しかし、学問の世界では、"こう思う" "こういう話がある"では、だれからも相手にされ
    ②
  ない。だから、私の確信を分かってもらうためには、確かな証拠をつきつけなければならな
                                  ③
  い。できうれば山ネコを生け捕りにしたかったが、もう時間がなかった。そこで、私は骨と
                ④ 
  皮とを収集することに努力した。ところが、食糧の不足しているこの島では、ネコでも食べ
      ⑤
  てしまう。それも、皮のまま焼いて食べる習慣があるので、皮も骨もほとんど入手できなか

  った。(戸川幸夫「イリオモテヤマネコ追跡」)

 これも一段落で、五つの文から成り立っている。文章は四つの接続詞と。一つの指示語によっ
 
 135
 
 
 
 
⑩段落構成の指導
 O段落の構成の規定
  ・要点・小話題
  ・論理的展開 
て展開されている。意味をたどって理解しながら、その筋道をたどってみる。
 「しかし」……相手にされない。「だから」……確かな証拠を……。「そこで」……骨と皮を収
集する。「ところが」……ネコでも食べてしまう。「それも」……皮のまま焼いて食べる……入手
できなかった。
 こうして文脈をたどって筆者の思考の過程を押さえながら文意を理解する。その過程で、接続
詞のそれぞれの機能を感覚的に、意識的に学習する。
 一般に文章は、その中核となっている話題(問題)や主題(要旨)をいくつかに分節し、それ
らを段落として相互関係的に組み立てた構造的全体である。したがって、各段落には、題材・要
旨の分節としての小話題、あるいは要点を含んでいるのが普通である。
 そこで、段落の構成は、その小話題や要点について、どのように筋道を立てて考えていくか、
その論理の展開のパターンによって規定される。その構成の最も基本的なパターンは次ページに
例示した。
 例1
 ①目本には四つの季節があります。
  ②四つの季節に従って自然の景色も変化を見せます。富士の姿が変わり、春は桜が、秋には
  紅葉が、目を楽しませてくれます。一年のあいだを四つの季節がゆっくりうつろっていくと
  いうこの繊細な変化に応じて、私どもには季節感というものが身についています。
  ③歴史的にも季節に結びついた文化が発展してきたのです。なにより和歌・俳句がそうです。
  絵、陶・漆器、着物、からかみ、びょうぶ、欄間などに自然が写されています。庭造りや建
 
 136




 〇話題提示
 〇話題と要点







 〇話題から要点への
  論理
 〇段落構成のパター
  ン①
  ・話題
  ・細部
  ・要点
  ・意味構造 
  築もそうです。そのようなものを生み出してきたのは、日本に四季があり、日本人に季節感
  があるからです。季節によって、生業も左右されてくるし、季節と人間の生活や文化とのあ
  いだには、実に密接な関係があることが分かります。
 この文章は、「季節感」(葉山茂)の冒頭の三段落である。第一段落は、「四季の話題提示」、第
二段落は、「四季による景色の変化」を「話題」として、それによって導かれた「要点」「四季に
応じた季節感が身についていること」、第三段落は、[季節による文化の発展・生業」を「話題」
として、それによって導かれた「要点」「季節と文化や生活とは密接な関係があること」などを
述べて、主題「季節感」を叙述する素材(題材)と要旨とを分節して段落にまとめ、主題展開の
初めの部分を示している。
 ところで、その小話題から、どのような過程をたどって(筋道をたどって)要点を導き出して
いるか、その論理をたどりながら段落の構成を考えてみると、次のようになる。
 (1) 第二段落の構成              (2) 第三段落の構成
                 
 137










 O段落構成のパター
  ン③
 O要点と細部の関係
  ・要点
  ・細部
  ・意味構造 
 第二段落も第三段落も全く同じパターンで構成されている。そこには両者に共通の法則性を抽
象することができる。このようにこれらの段落は論理的に構成されている。この論理をたどるこ
とによって、これらの段落の意味構造を明確に理解することができる。
 例2
   人間はみな顔形が違うように、それぞれ独特の個性を持っている。体つきも性格も、そし
  て、ものの言い方や行動の仕方も、みんなそれぞれ個性的である。個性というのは、そうし
  た人間それぞれの特性と言われるものである。(丸木政臣「個性的に生きる」)
 これは「個性的に生きる」の最初の段落である。その文脈をたどってみると、次のような意味
構造に規定されて段落は構成されていることがわかる。
 
 例3
   では、ほんものの個性とはなんだろう。ぼくは考える。自分にうそのない生き方こそが真
  に個性的と呼べるように思う。人間というものは、集団に属し、社会的に生きている。そう
  した生き方の中で、全体の中に埋没しないで、自分の目標やテーマを持ち、それにまっすぐ
 
 138





 O段落構成のパター
  ン③
 O問題解決の論理
  ・問題
  ・想定
  ・検証
  ・確定
  ・意味構造









 O文と文との連接関
  係
 
  に迫っていく真剣な生き方が、正に個性ではないかと思う。(丸木政臣「個性的に生きる」)
 これは、同じ文章の第七段落である。例1とはその構成が異なっている。それは、間題提示・
問題に対する想定・検証・確定という思考過程をたどって論述している。この論理をたどってみ
ると、次のような意味構造によって規定された段落構成になっている。
 
 以上例示したように、段落内の文と文とが、相互に意味的にもあるいは形式的にも、係り受け
連接の関係を保ちながら論理的にまとまった意味を構成している。その意味構造に規定されてい
るのが段落の構成であることはしばしば述べた。しかも、段落の構成は、その内面にある法則性、
論理性にささえられている。
 その筋道をたどって、意味を正確に理解する過程で、それらの法則性、論理性を発見し、意識
 
 139



⑩文章構成の指導

 O文章論とコンポジ
  ション









 O文章構成のパター
  ン①
  ・段落の連接関係
  ・段落の要点 
化し、理解へと導くことが、読解学習における段落構成の理解指導である。なお、段落構成の指
導に当たっては、その学習が可能な基本的な教材を選んで行う必要がある。
 文章は、主題や要旨を中心として、いくつかの段落によって構成されている。だから、段落は
文章の分節で、その構成単位、構成要素である。
 その構成は、普通、段落と段落とが、どんな関係で結び合っているか、その係り受け展関のパ
ターンによって示されるが、そのパターンは文章の形態・様式によってさまざまである。したが
って、文章構成を法則的に明らかにして、文法の中の文章論として定位するには、なお、多くの
問題が残されている。
 段落構成の指導もそうであったが、この文章構成の理解指導もまた、実際にはコンポジション
の間題として処理すべきところが多い。なお、最も一般的なパターンについては一四二ページに
述べてある。
 ところで、「カブトムシ」(小西正泰)という科学的な文章がある。全体で八段落の構成になっ
ている。それらの段落が、相互にどのように関係し合って文章を構成しているか、まず、各段落
の要点を書き出して考えてみる。
 ① カブトムシは、日本の虫の王者であるが、子供たちの人気のもとは雄の頭に生えている長
  い角である
 ② このりっぱな角は、どうしてできたのか、専門家の意見もまちまちである
 ③ いずれにしても、雄どうしの恋のさやあての武器に使われているのは間違いない。
 ④ カブトムシが飛び立つときは。固い前羽を広げ、後ろ羽を広げ、激しく動かし音をたてて
 
 140












 O段落の形式的・意
  味的連接
  ・論理の展開
  ・話題の転換









 O文章の構造化過程 
   まいあがる……。
 ⑤ カブトムシは、容易に手に入らなくなって、カブトムシの養殖が、動物産業のニューフェ
  ースとして登場してきた。
 ⑥ 養殖業者のある挑の農家は、桃の落ち葉で積み肥を作ってカブトムシを養殖している
 ⑦ 聞くところによると、一九七三年一年間に八百万匹ものカブトムシが売られたそうだが。
  四月末には、初もののカブトムシがお目見えした。
 ⑧ 日本人は季節感に鋭敏なはずであるが、野菜や草花やカブトムシにまで、季節感をくるわ
  され、自然との断絶がひどくなったことは考えさせられる。
 この八段落が。相互に形式的に、あるいは、意味的に結び合って文章全体を構成している。そ
の関係を考えてみると、①は、「話題を提示している段落(提示機能)」、②は、①の中心的な事
項「長い角」を指定して「このりっぱな角は」と「前を受けてあとを起こす段落(展開機能)」、
③は、前の段落の「意見もまちまちで」を受けて、「いずれにしても」と、さらに話を展開する。
ここまでは。一貫して論理的に文章が展開されている。
 ④は、前の段落とは関係なく、また、そのあとに来る段落とも関係なく。挿入されている段落
で、遊びの段落ともいうべきものである。したがって、この段落によって、前後二つの部分に分
けられているようで、その内容も全く異なっている。
 ⑤は、新しく話題を提示している。⑧は、意味的に⑤を受け、さらに、⑦へと展開して結んで
いる。⑧は、まとめの段落で、それ以前の段落を総括して、感想を述べているところである。
 文章全体をこのようにみて、文章構成の状況を調べてみよう。 
 141
     
 142



 O文章構成のパター
  ン②


 O段落の要点
 O段落と段落との連
  接関係
  ・接続語
  ・指示語
 
  このように、段落相互の関係を考えて組み立ててみると、文章がどのように構成されているか
を容易に理解することができる。
 次に、「見ることについて」(串田孫一)という文章がある。十一段落で構成されている。今、
この文章の文脈をたどりながら、段落ごとに「段落の最初のセンテンス」と「段落の終わりのセ
ンテンス」を書き出して、筆者の言おうとするところをたどってみる。
 ① わたしは野原や山を歩いているときに、名前を知らない植物によく出会います。……持ち
  帰って植物図鑑だのその他のわたしが持っている書物を頼りに調べてみます

 ② ところが、持ち帰ることができない場合がおうおうにしてあるわけです。……あまり不思
  議なものならばその特徴をノートに書いてくることもあります

 ③ ところが、特徴をノートに書いてきても、いざ植物図鑑などで調べ出すと、すぐそれと分
  かることは実に少ないのでして、たいがいのときは何か見落としています。……近い所なら
  ……確かめに出かけてもいいという気持ちにさえなります
 143
   ④ このことは、昆虫や小鳥の場合でも同様で、ずいぶん注意をはらって見たつもりでも、……
  必ずといってよいくらいあいまいなところが出てきます

 ⑤ ところが、ふつうわたしたちがものを見るというときには、もっとはるかにあいまいな見
  方をしています。……そしてよく見ることはむしろ際限がないことを考えていただきたいの
  です

 ⑥ 以前、わたしはある地方を旅行したときに、その地方の小学校の児童たちの観察記録が、
  展覧されているのを見ました。……そこでさらにその土をよく見るとそれは土の粒の粗い
  細かいによることが分かったというのです。

 ⑦ これはなんでもないことですが、やはり大きな発見だと思います。……大人はむしろたく
  さんのものを見慣れてしまっているため。必要であるものしか本気で見ないような、一種の
  怠けぐせができてしまっているのです。

 ⑧ 今「必要」ということを申しましたが(中略)すべての行為は、「必要」といういわばむち
  でたたかれて、それをしているようなところが多分にあります。……特に空を見る必要がな
  ければ、わざわざ注意深く観察することはありません。 
 144
   ⑨ そんなぐあいに、全く理由もないのに、あるいは何かの必要にせまられることもなしに、
  わたしたちが何かをするということは、考えてみますと、実際には少ないのです。……なん
  の拘束も受けずにものを見ることのできる人が芸術家だと言っています

 ⑩ だからといって、わたしたちがみな芸術家になったほうがいいというのではありません。
  ……必要なものと不必要なものとを見分けることが、賢明であるように思いこんでしまうこ
  とは実は非常におろかなことなのではないかと思います。

 ⑪ いったい、見てもしかたがないという判断は、それほど的確なものなのでしょうか。……
  不必要を切り捨て、必要なものだけ見ていけばいいという態度も味けない。必要という鎖を
  解いて見れば、どこにも見るべきものはたくさんあると思います。

 このように筋道を立てて読むと、内容が正確に理解できるとともに、筆者の考えの進め方、ま
た、言いたいことなどが明確に理解できる。
 また、こうして段落ごとに書いてみると、段落相互の関係、連接の関係が、接続語、指示語な
どのはたらきによって明確にされていることがわかり、同時に文章全体の構成が確実に理解でき
る。
 
 145
     三 表現における機能文法の機能的指導の方法


①文法学習の契機
 O表現の基底-
  文法感覚



 O文法感覚と表現
 
  1 表現における文法学習の契機と場

 文法学習が、最も効果的、機能的に行われるのは表現においてである。一般に文章を書いたり
話をしたりする場合、その表現をささえる最も根元的なものは、生徒の場合、文法感覚であって
文法知識ではない。
 その文法感覚は、経験的・社会的に、習慣として身についているもので、普段は意識に上って
くることはない。眠っている。しかし、話すにしろ、書くにしろ、いったん表現しようとすると、
いつも、その背後、内面にあって、いわば原動力となって、そのまま文として実現される。
 ところで、その文型感覚・文法感覚が正しくないと、話も正しく話せないし、文も正しくは書
けない。そこで、表現における文法学習は、話し誤り、書き誤りに対して違和感を覚えること、
気がつくことが、その契機となる。出発点となる。そして、その誤りを正すことによって、文法
感覚を正しくするとともにことばの用法を身につける、文法学習が行われる。それが「誤用の文
法」と言われたものである。
 
 146
  ・文法感覚の形成





  ・文法学習の契機



②文法学習の機会
 O作文の学習過程





 O文法学習の第一の
  機会
  ・アウトラインを
   作る過程 
 いっぽう、まだ、形成されていない新しい文法感覚・文型感覚を、積極的に育てようとすると
きは、生徒が新しい表現法、ことばの用法の学習の必要性を自覚することが、文法学習の契機と
なる。この場合は、新しいことばの用法を理解し、それにもとづいて文章を書く。書くことを通
して文法感覚を育て、文法意識を高め、文法力を育てていく。
 要するに、表現における文法学習の契機は、一つは話し誤り、書き誤りに気づき、それを正す
ところにある。他の一つは、積極的に表現・叙述の仕方(ことばの用法)を求めたり、表現・叙
述の工夫(修正)をしたりする必要を自覚し、意欲をもつ場合である。
 では、それらの契機にもとづいて文法学習の行われる機会と場について考えてみる。一般に作
文学習は、①題材(主題)を選択する。②表現事項を収集する。③表現事項を組織してアウトラ
インを作る。④アウトラインをたどって表現・叙述する。⑤表現・叙述を修正するという、文章
の制作過程(作文過程)をたどって指導するのが普通である。この作文の制作過程の中で、文法
学習の指導をする。
 その第一の機会は、③の「表現事項を組織してアウトラインを作る」過程である。このアウト
ラインを作るには、書こうとする題材(主題)を中心として、書く内容(表現事項)をいくつか
の段落にまとめ、それらの段落相互の関係、連接関係を明らかにして、筋道のとおった文章全体
の骨組みを作る。こうして作った文章構成の骨組みがアウトラインである。
 この過程でできる文法学習(主としてコンポジション)は、段落の構成に関する事項、段落相
互の連接関係など文章構成に関する事項である。この学習を通して、段落の構成・文章の構成に
関する理解力、構成力を伸ばすとともに、そこにはたらく法則性、論理性に対する感覚・意識を 
 147


 O文法学習の第二の
  機会
  ・文章の表現過程









 O文法学習の第三の
  機会
  ・表現・叙述の修
   正過程







①誤用の文法 
高めることができる。
 第二の機会は、④の、「アウトラインをたどって表現・叙述する」過程である。ここで学習で
きる文法事項は、主語・述語の照応した文の書き方、修飾語・接続語の用法、指示語の用法、連
用修飾語(副詞の呼応、位置など)の用法、それらと結びついた助詞の用法、助動詞の用法など、
語の用法に関する事項、文の構成に関する事項、文と文との連接に関する事項、段落の構成に関
する事項などである。
 これらの事項を指導するに当たっては、あらかじめどのような文章を書くか、その書き表し方
について、たとえば。正確に表現する、精叙したり叙述したりする、客観的に表現する、描写す
る、心情を表現するなど、その表現法を理解させた上で文章を書く指導をする。それに応じて文
法学習が行われるようにする。
 第三の機会は、⑤の「表現・叙述を修正する」過程である。この過程では、すでに書いた文章
について、書き誤り、不適当な表現、あいまいな表現、筋道の通らない表現、呼応・照応の正し
くない表現などを修正する。この修正を通して文法感覚を育てたり、文法意識を培ったりする。
 以上。三つの機会は、作文の制作過程における文法指導の好機であり、効果的・生産的な文法
指導が期待される。

  2 表現における文法指導の内容―誤用の文法

 表現(作文)における文法指導の内容は、二面的である。一つは、先に述べたような積極的に 
148






②誤用の文法の体系
 O文章論的事項
  文章構成











  ・段落構成
文章構成の過程、文章表現の過程で指導する文法事項、他の一つは、生徒の作文を分析して、誤
った、あるいは不適当な語の用法、不適当な文と文との係り受け連接の仕方、不適当な段落の構
成、不適当な文章の構成などを明らかにし、表現過程・修正過程で修正する。あるいは、それら
をまとめて系統的に指導する。
 次に中学生の書く文章を、文法指導の立場から分析して、その誤り、不適当なもの、つまり欠
陥を抽出してみる。
① 文章構成に関する事項
 ア 主題・要旨を中心として文章が構成されていない。
  ㋐ 文章の構成意識が薄い。
  ㋑ だらだらと書き流した文章が多く、段落ごとにまとめて文章を構成していない。
  ㋒ 段落と段落との連接関係は、必ずしも筋道が通っていない。線条的な文章が多い。
  ㋓ 書き出しの段落(話題・間題提示の段落)へ中心の段落(主題・要旨を示す段落)、事例
   の段落、説明の段落、総括の段落などが、表現の目的・意図に応じて構成されていない。
 イ 主題・要旨の明確でない、つまり、何を言おうとしているのかはっきりしない文章が多い。
② 段落構成に関する事項
 ア 段落が適切にまとめられていない。段落の切れ目が明確でない。
 イ 段落内の話題・要点など、その中心がはっきりしていない。書き流しているのが目立つ。
 ウ 段落内の構成意識が薄く、話題と説明・解説、要点と細部との関係などを考えて構成して
  いない。
149
  ・文と文との連接






 O文論的事項
  ・主語・述語



  ・接続語



  ・並立語



  ・修飾語



  ・接続語・修飾語 
③ 文と文との連接に関する事項
 ア 文と文との連接関係が適切でない文章
  ・これを聞くとぼくはすぐに反抗的になって、「日曜日だからこそ本を読んだり、テープを聞
   いたり、遊び回っているんだ。」とぼくはいう。毋はぼくのことを思ってそう言ってくれる
   のだろうと思うけど、毎日勉強していてもつまらなかったからです。
④ 文の構成に関する事
 ア 主語・述語が照応していない文
   ・三、四十分かかってやっと決まった場所は、南校舎と北校舎の間からななめ上を見て体育
   館をかいた。
 イ 接続語が重なっている文
   ・運動場でやる練習と体育館でやる練習と違っているので、体育館の練習の時はその時でわ
   からないことをやるので、頭がこんがらかってしまいました。
 ウ 並立語の表現が適切でない文
   ・その理由は、知能検査をやるときえんぴつのしんが折れたらどうしよう、筆箱から出すの
   にも少し時間がかかってしまうという考えがあったからだ。
 エ 修飾語と被修飾語との関係が適切でない文
   ・先生が二人ペアーになたりなさいと言われ、一しょにいたTさんとなると、先生が決められ
   て私たちは四ぱんになりました。
 オ 接続語・修飾語が複雑にからみ合っていて文意が通じにくい文
 
 150



  O語論的事項
  ・助詞の用法








  ・副詞の用法




  ・助動詞の用法
  ・私はまだ一度も同じ名字の人にあったことがなかったからわかりませんが、ただ何となく
   他の名字の人で同じ人が二人いた時でしたけれども、よくまちがえてみんなに顔を見られ
   たりして、はずかしそうだったので、私はそんな思いはしたくありません。
⑤ 語の用法に関する事項
 ア 助詞の用法の適切でない文
  ・私ボールペンを取りに行ったら、毋は掃除がやっと終わったらしくかたづけていた。(が)
  ・そのよい例として中区の百メートル道路ではたくさんの緑があり、その実現が表されてい
   る。(には)
  ・その場その場で使い分けるのはいいが、日常生活使えるようにしたい。(でも)
  ・一生けんめいに本読む練習をしなくてはいけないと思った。(を)
  ・わたしたちもみんなじろじろ見られるなり、先生に大声でしかられるなりまた顔を赤ら
   めました。(に、たり)
 イ 副詞の用法の適切でない文
  ・先生もいくらか 少し表情がやさしくなった。(重なり)
  ・わたしの足はいつも動かない時は、いつもあとにはびりびりする。(重なり)
  ・どうしても一度はやってみろと言われてもできなかった。(位置)
  ・たぶんはいると思ったが、手がふるえて心配だった。(呼応・だろう)
 ウ 助動詞の用法の適切でない文
  ・教科書は見れないし心配だった。(られ) 
 151


  ・動詞の活用



  ・語の呼応


  ・その他
  ・五時間めは体育でいつも延長してクラブ教室へ行くのがおそくなる。(延長されて)
  ・手が痛くて動かないので着がえてもらった。(着がえさせて)
 エ 動詞の活用を誤っている文(接続の誤り)
  ・うまくごまかせれたときはきげんがいい。(ごまかせた……「ごまかせる」十「た」)
  ・何とかして直せれないだろうか。(直せない……「直せる」十「ない」)
  ・人間は人間でも生きていけれない。(いけない……「いける」十「ない」)
 オ 語の呼応の適切でない文
  ・一人としてきちんとすわってしゃべっていない子はない。(いない……いる)
  ・ちょっと見ただけでも、とても力が強かった。(強そうだった)
 カ その他の文
  ・わたしは取りに行こうかと迷っていたけど、取りに行こうと決心した。
  ・わたしが初めて男子と練習をやったのは、体育館でやったときです。
  ・わたしがクラブであみ物をしていて思うことは「今日もおくれて来てしまった。今度のと
   きはおくれないように来よう。」と心の中で反省している。
  ・君は一ばん大きくて二十点ぐらいの差がある。
 以上、生徒の作文を分析して誤用の文法の体系を立てた。文例は一部しかあげなかったので、
足りないところは補ってほしい。あまりに細部にわたりすぎるのもどうかと思う。作文学習の中
で学習指導ができるというところに限界を置きたい。
152




 〇原則①






 〇原則②






 〇原則③
 
  3 表現における文法学習指導の方法

 (1) 表現における文法学習指導の原則
① 表現における文法学習は、文章表現指導の全過程において行う
 ア 表現前に、文章の制作過程のそれぞれの場で、文章構成法、段落構成法、文と文の接続法、
  文の構成法、語の用法などについて理解し、それにもとづいて表現する。
 イ 学習後は、それぞれの過程で、それぞれ学習した文法事項について評価し修正することを
  通して文法感覚を確かにし、文法意識を高める。
② 文法学習は、文章表現学習を通して行う
 ア よりよい文章構成、よりよい文章表現を求める中で、文法感覚を確かにし、文法意識を高
  める。
 イ 形式的な文法知識の学習に走らず、文章の構成法、文章表現法、語の用法として学習する。
 ウ 学習は機会的であるが、学習内容は、誤用の文法の体系にもとづいて系統的・計画的に行
  う。
③ 文法学習は、生徒が表現学習の中で、その必要性を自覚し、進んでよりよい文章を書こうと
 する意欲の上にだけ成り立つ
 ア 文法学習は形式的な押しつけではできない。
 イ 文法学習は、生徒のよい文章を書こうとする意欲と、書いた文章をよりよい文章に直そう 
 153




①文章構成指導の場
 Oアウトライン
②表現と言語事項との
 関連



③文章構成の方法過程
 ①







④文章構成の方法過程
 ② 
  とする意欲とを喚起するところから出発する。
 ウ 生徒の文法感覚やよい文・美しい文・筋の通った文などに対する感覚が、文法学習の原動
  力となる。
 (2) 文章構成指導の方法
 文章の構成指導は、題材を決め、主題・要旨に従って表現事項を収集し、それをいくつかの段
落にまとめて文章を構成する、いわゆる「アウトライン」を作る過程で行われる。
 それは、表現指導の「主題や要旨に沿って構想を立て、必要な材料を整え、組立と段落を考え
て全体をまとめること(学習指導要領)」と、文法事項「文章の組立、段落の役割、段落と段落と
の接続関係、文と文との接続関係を考えること」との関連において行われる。
 したがって、その指導に当たっては、次の過程をとる。
 1 題材・主題を決める――何について何を書くか。
 2 題材・主題の展開の大体を決める――何について何をどのように書くか。
 3 題材・主題の展開に応じて書こうとする事柄を収集する。
 4 書こうとする事柄を整理して段落にまとめる。
 5 主題・要旨展開の論理に従って段落を配列する。
 6 書き出しの段落、まとめの段落を考えて前後につける。
 こうして、文章構成のあらまし、アウトラインを作る。また、次の方法も考えられる。
 1 題材・主題を決める。
 2 主題・要旨に照らして書こうとする要点・小話題を段落カードに書く。
 
 154




⑤文章構成のパターン








⑥文章構成意識・段落
 構成意識




⑦文章構成と生徒の発
 想
  ・読解における理
   解
  ・生徒の発想
 3 各要点・小話題ごとに、書く事柄を収集して段落カードに書き添える。
 4 段落カードを主題・要旨展開の論理に従って組み立てる。
 5 書き出しの段落、まとめの段落を作って前後につける。
 これは、文章構成の一般的な方法過程であって、どのような構成の文章を書くかは、表現の目
的、表現の内容によって変わってくる。つまり、書く文章の機能によって異なった構成になる。
 たとえば、その目的、内容によって、経験・説明・記録・報告・論説・感想意見・随筆など、
その形態が変わってくる。形態が変われば、当然それに応じた文章構成を考えなければならない。
また、表現事項を収集する方法も、想起法・観察法・思考法・想像法・調査法(よく思い出して、
よく見て、よく考えて、よく想像して、よく調べて)と、変わらなければならないし、その整理
の方法も異ならなければならない。
 いずれにしても、この方法によれば、文章を段落にまとめて書くことも、段落をその要点、話
題と細部との関係を考えて組み立てることも、段落を筋道を立てて連接することも、段落の役割・
機能を明確にすることも、段落を文章の形態・機能に応じて組み立てることも容易である。
 容易であるばかりでなく、このような表現学習を通して、いわゆる段落意識を明確にし、文章
構成意識を強化し、その構成力を育てることができる。
 ところで、その場合本質的には生徒の発想、思考過程によって文章構成は決まるものであるが、
読解学習で理解した段落構成、文章構成の方法が(文章表現の方法も)大いに役立つことを忘れ
てはならない。そうかと言って、専門家の書いた文章の構成をそのまま模倣すればいいと言うの
ではない。表現は生徒自身の発想にもとづく自己創造の過程だからである。あくまでも、生徒自
 155

  ・文章構成と段落
   カード



⑧文章構成の例

 O文章構成と論理の
  展開





 O文章構成――アウ
   トライン
 
身の発想による文章構成を考えさせるべきである。
 この場合、さきにも述べたように段落カードを使うと便利である。段落の構成指導をする場合
でも、文章構成の指導をする場合でも、操作しやすく、その上、段落や文章の構成を視覚化・具
体化することができ、書こうとする文章全体のイメージもとらえやすい。つまり、書く文章全体
の見通しが容易にできて、安心して書くことができ、記述中はアウトラインを特に意識しなくて
もいいようになる。
 次に、一生徒の「みんなの庭」という意見を書いた文章のアウトライン、文章構成をあげてみ
る。
 第一段落で間題を提示し。第二段落で事例をあげている。第三段落では、その事例を受けて自
分の意見を述べている。第四段落では、その意見の実践は自分から進んでやるべきだと考え、そ
のためには、もっとごみ箱をたくさん設置すべきだと、意見に対する具体策を述べている。第五
段落は結論の段落。まとめの段落で、この問題解決の近道は、結局、一人一人が、道路も自分の
家の庭の延長と考えて汚さないようにすることが第一だと結んでいる。つまり、間題提示の段落、
事例の段落、意見の段落、具体策の段落、結論の段落を構成し、間題・事例・意見・対策・結論
という一貫した論理をたどって構成している。

  
 156


















①中学生の作文と段落
 構成
 
  

 (3) 段落構成指導の方法
 一般に中学『二年生では、段落に区切ってまとめて書くことができるようになっても、段落
の内容を組み立てて書こうとはしない。それは、「要点を明らかにして書く」指導が徹底してい
ないからであろう。すでに読解学習でみてきたように、文章の段落は、要点あるいは小話題を中
 157



②段落構成の方法過程
 ①
 Oカード操作







③段落構成の方法過程
 ② 
心にして、それについての説明・解説、つまり細部を組織したものである。
 そこで、文章を段落に区切って書くことができるようになった段階で(小学校ですでに学習し
ている)、段落の構成を考えて書く指導をする。そのためには、いろいろな方法が考えられる。
次にその一方法をあげてみる。
 ① 観点ごとに書く必要のある事柄を収集してメモする。――細部カードに書く。
 ② 収集した事柄をまとまりごとに整理する。
 ③ 整理したまとまりごとに小見出しをつける――要点あるいは小話題――要点カードに書く。
 ④ 段落カードに要点カードをはる。(要点を書く)要点との関係を考えて細部カードをはる。
   (細部を書く)
 ⑤ 段落内の構成を完成する。
 一見煩わしいようであるが、これを一、二回くり返すと、段落意識も明確になり、段落構成の
技能も育てられる。それは文章構成の場合と同じである。
 また、生徒たちが書いた作文にもとづいて指導する方法もある。その場合には、表現・叙述の
もとになったアウトラインを復元して、再構成する学習を通して、段落意識・段落の機能・段落
構成の指導をする。その過程をあげてみる。
 ① 各自の書いた文章の段落を確認して段落番号をつける。
   O白紙にその数だけ段落の区画を作る。段落番号をつける。段落と段落は少しあける。
 ② 段落の機能を考える。(間題・話題提示、事例、説明解説、感想意見、結論総括など)
   O各段落の前にその機能を書く。 
 158







O段落構成指導のモ
 デル過程
 
 ③ 各段落の構成を考える。(要点・小話題と細部との関係を具体的に考える)
   O各段落の内容を箇条的に書き出してみる。
 ④ 段落の組み立て方にはいろいろなパターンがあることを理解する。
 ⑤ 段落の構成を理解する。(要点と細部、話題と説明、意見と説明など)
 ⑥ 各自の段落のうち二、三の段落を再構成してみる。
   O書き出した内容を補って再構成してみる。
 ⑦ 再構成した段落について文章を書いてみる。
 この方法は、①段落意識を確かにする、②段落構成のパターンを発見する、③段落構成法を理
解する、④段落構成の方法を適用して段落を書くという過程をたどっている。こうして、段落意
識、段落の機能、段落の構成の学習を指導する。
 このように段落構成の学習も、文章構成の学習も、学校文法の中の文章論に属するものである
が、実際の学習では。いわゆるコンポジション(作文法)の学習として指導するのが普通である。 
 159
     四 シミュレーションによる文法指導の方法



①一般の文法指導




②シミュレーションに
 よる文法指導

 Oシミュレーション
  学習法 
  1 シミュレーションとは何か

 一般の教室での文法指導は、国語教科書に収載されている文法教材を頼りにして行われている。
その教材は、文法体系を文章論的事項・文論的事項・語論的事項などに分けたものである。指導
に当たっては、たとえば「文の組み立て」では、文の成分、構成要素としての主語・述語・修飾
語・接続語・並立語・独立語などを取り上げ、文構成上の法則を説明し、理解させ、記憶させる
という方法をとっている。
 このやり方では、戦前の文法教育と同じように、体系文法を形式的に記憶させる、いわゆる文
法知識の詰め込み指導になりかねない。「シミュレーションによる文法指導」は、そういう弊害
を取り除くために工夫された、新しい科学的な文法指導の方法である。
 シミュレーション(simulation)というのは、「模擬学習」である。古くから行われていた「ご
っこ学習」を、科学化し工学化したもので、学習の生産性を高めようとするものである。この方
法は、七、八年前から、新しい学習法として国語科学習に取り入れられている。 
 160




 O知識の学習とシミ
  ュレーション


 Oシミュレーション
  モデルの編成
 
 これまで述べてきた、読解学習の中での文法学習の指導、作文学習の中での文法学習の指導は、
機能文法の機能的指導の方法で、いわゆる「読解における文法学習」「作文における文法学習」
であった。このような機能文法の機能的指導は、読解・作文の学習に即して行われるから、勢い
孤立的・機会的学習に終わるおそれがある。
 そのため、「ある程度まとまった文法知識」の学習、系統的・体系的な文法の学習は困難であ
る。そこで、文法知識の形式的な学習にならないで、しかも、読解・作文を通して行う機能的方
法よりはるかに生産性が高く、段階的・系統的学習のできる学習法、それがシミュレーションに
よる文法学習法である。
 この方法では、まず。機能文法の機能的指導のような、複雑な経験的文法学習の過程を分册し
て、その要素(システム要素)を抽出する。抽出した要素をシステム化して、文法学習の過程を
編成する。読解学習の過程で行われる文法学習の過程を分析してみると、
 ① 内容を理解するために文章を読む
 ② 内容を理解する過程でいろいろな文法事実に出会う
 ③ 文法事実に即して文の構成・語の用法などを理解する
 ④ 文の構成・語の用法をささえる法則性を発見し意識する
 ⑤ 文の構成・語の用法をささえる法則を理解する
という過程をたどって文法学習は行われる。この過程をさらに要素的に分析してみると、
 ① 文法事実を経験する
 ② 文法事実をささえる法則性を発見する 
 161
   ③ 法則性を文法として意識化する
 ④ 文法事実をささえる法則を理解する
ということになる。これらの要素をシステム化すると、シミュレーションモデルを編成すること
ができる。

  2 シミュレーションのモデル学習指導過程

 前記のように、シミュレーションモデルは、経験的、機能的に行う文法学習の過程を要素的に
分析して得た、その学習過程を成り立たせている要素をシステム化したものである。したがって、
シミュレーションモデルによって行う文法学習は、読解や作文を通して行う文法学習より、はる
かにむだがなく、簡明で筋道が通っていて、しかも、だれでもまちがいなく指導できる、科学性、
経済性、したがって生産性の高いものである。
 また、従来、取り出して行う、あるいは系統的に行う文法学習の多くが、形式的な文法知識の
詰め込み指導に終わっていて、生徒に文法学習の興味を失わせている。それに対してこの方法の
よさの第一は、生徒が自分で、文法事実の中にある法則性を発見し、自分で組織することができ
る驚きと喜びとを味わわせる点にある。したがって文法の自己学習ができて、生きた文法の力を
身につけることができる。
 次に、そのシミュレーションのモデル学習指導過程をあげてみる。
 ① 文法的事実を経験する。――接続詞(しかも・しかし)
 
 162















 Oシミュレーション
  指導モデル
 
 (例) Oその点についての観察が不完全で分からなくなってしまう。しかも、それが名前を
      見分ける決め手であることが分かったときにはほんとうに残念である。
     Oずいぶん注意をして虫をさがした。しかし、どこにもいなかった。
 ② 文法的事実をささえる法則性に気づく――接続詞の機能の意識化
     O文と文とを接続するはたらき……接続語(接続詞)
 ③ 文法事実をささえる法則を発見する――接続語の法則の発見
     Oしかも……累加――かさねてあとに続ける
     Oしかし……逆接――逆にあとへ続ける
 ④ 文法事実をささえる法則を理解する――接続語の法則の組織
                       ┌―しかも――前文を受けてかさねて続ける
     O接続語―前文を受けて後文に続ける―┤ 
                       └―しかし――前文を受けて逆に続ける
 ⑤ 言語行動に法則を適用する――法則の適用
     O接続語を使って文と文とを続ける
 要するに、この学習指導過程は、細かく区切って示してあるが、大きくまとめると、次のよう
な四つの過程となる。
 ① 文法事実を経験する…………経験過程
 ② 法則(文法)を発見する……発見過程
 ③ 法則を組織し理解する………理解過程
 ④ 法則を適用する………………適用過程 
 163


①文法学習の機会



  ・機会①

  ・機会③

  ・機会③

  ・機会④


②文法学習の方法

  ・モデル学習指導
    過程
  ・学習シート 
  3 シミュレーションによる文法学習の機会と方法

 シミュレーションによる文法指導は、読解学習、作文学習の中で、機能的に、機会的に、孤立
的に学習した文法事項を、総括して体系的、系統的に学習する場合に行うのが原則である。した
がって、次のような場合に計画するのが適切である。
 ① 読解学習において、随時随所で学習した文法事項、主として、文論的事項、語論的事項に
  ついて、総括的、系統的に学習する必要を認めたとき。
 ② 読解教材の中に同じ文法事項(たとえば、指示語・接続語、助動詞・助詞、副詞など)が
  しばしば提出されていて、それを体系的、系統的に学習するのに都合のよいとき。
 ③ 国語教科書に収載されている文法教材を、シミュレーションモデル教材に作りかえ、シミ
  ュレーション指導過程モデルに乗せて学習するとき。
 ④ 作文学習において、文章構成法、段落構成法、文と文との連接法、語の用法などを学習す
  るとき。
 これらは、読解教材、作文教材、文法教材を見通して年間の指導計画を立てておくようにする。
 ところで、シミュレーションによって文法指導をする場合にだいじなことは、
 ① それぞれの文法事項について、シミュレーション指導過程モデルを編成すること。これが
  適切でないと、生産的な文法学習は行われない。
 ② そのシミュレーション指導過程モデルに従って学習できるような学習資料(学習シート) 
 164

  ・モデル教材





 Oモデル教材例
  ・敬語意識






  ・法則の発見
 
  を作ること。これは、文法の自己学習ができるようにプログラム化したものを作成する。
 ③ また、シミュレーション指導過程モデルに従って学習ができるようなモデル教材を作成す
  ること。
 学習単位は原則として一文法事項とし、一時間ぐらいで学習が終わるように計画する。次に参
考に、「尊敬の助動詞『れる・られる』のシミュレーションモデル教材」をあげてみる。
  (一) (敬語感覚・敬語意識)(意識)
 先生が運動場へ出て来られたのを目ざとく見つけて、
 「先生が来たぞ。」
 「ほんとうだ。先生が来られた。」
 「えっ。先生がお出になった?」
 「暖かいから、先生だって外へ出たいよ。」
 「そんなこと言って、おこられるぞ。」
  (二) (敬語の助動詞の発見) (発見)
 展覧会が開かれている。
「この山の写真、だれが写したんだろう。」
「校長先生が写されたんだって。」
「先生は山を越えて写しに行かれるんだって。」
「先生にあの山が越えられるかしら。」
「先生は、足をきたえるためにいつも散歩に出かけられるそうよ。」 
 165
  ・法則の理解






  ’法則の適用



  ・法則の使用

 O学習シート例
  ・接続語意識の確
   認 
  (三) (尊敬の助動詞の理解) (理解)
① きょうは先生が写真を写される。
② あしたは学校を休まれるそうだ。
③ ひるごろ、先生は山を越えられる。
④ 先生は、朝六時に散歩に出かけられる。
  (四) (尊敬の助動詞の適用)(適用)
 先生は、朝五時に起き   けれど、夜は九時には休ま   そうだ。
 市長さんは初めフランスへ行か   てからドイツ、イギリスを回ら   そうだ。
  (五) (尊敬の助動詞を使って文章を書く)(使用)

 次には、「シミュレーションによる文と文との接続」のための学習シートをあげてみる。
一 次の①~⑨で、文と文とを接続していることばに線を引きなさい。(接続語意識の確認)
 ① 梅が咲きました。そして、うぐいすも鳴き始めました。          ( )
 ② 雪が一メートルも積もった。だから、スキーができる。          ( )
 ③ 桜の花の咲く暖かい春がきた。しかし、北国ではまだまだ寒さが続いている。( )
 ④ 人間は考える葦である。つまり、考えるところに人間の価値があるのである。( )
 ⑤ 毎朝ぼくは散歩する。というのは、規則正しい習慣をつけたいからである。 ( )
 ⑥ 日本を愛した外国人は少なくない。例えば、小泉八雲などもその一人である。( )
 ⑦ Aはよく働く。それに対し、Bは怠けてばかりいる。    ( ) 
 166


  ・接続語の機能に
   気づく










  ・接続語の機能の
   理解
 
 ⑧ スキーに行こうか。それとも、スケートに行こうか。    ( )
 ⑨ 落成式はこれで終わりました。では、記念の催しに移ります。( )
二 ①~⑨のそれぞれの文と文との続き方は、次のア~力のどの型になりますか。一の文の( )
 の中に記号で書き入れなさい。               (接続語の機能に気づく)
 ア 前の文の内容を、後の文で言い換え、要約したり、理由を述べ、言い足りないところを補
  い、例を挙げなどしたりして説明する型。
 イ 前の文から当然予想されることと、逆の内容を後の文で述べる型。
 ウ 前の文の内容はそこで打ち切って、異なった内容を後の文で続ける型で、話題を変えると
  きの続け方である。
 エ 前の文の内容を受けて、後の文でその当然の結果を述べたり発展させたりする型。
 オ 前の文の内容に後の文の内容を並べたり加えたりする型。
 カ 前の文の内容と、後の文の内容とを比較したり、対立させたり、あるいは、どちらかを選
  択させたりする型。
三 次の①~⑦の接続語の続き方は、二のア~力のどれですか。( )の中に記号で記入しなさい。
                                (接続語の機能の理解)
 ① 兩が激しかった。それに、風も強かった。( )
 ② 酪農という仕事は、楽なものではなかった。だが、彼は楽しそうに働いた。( )
 ③ 熱が高かった。それで、欠席してしまった。( )
 ④ 家でテレビを見ようか。それとも、外で友だちと野球をしようか。( )
 
 167




  ・接続語の適用











  ・接続語の使用 
 ⑤ ぼくは出席することにした。なお、ほかにも三人ほど出席するそうだ。( )
 ⑥ 展覧会は、予定どおり行われた。ところで、音楽会はいつ行われるだろう。( )
 ⑦ わたしの学級には絵のうまい人がいる。事実、AさんやBさんがそうだ。( )
四 次の①~⑤は、二つの文から成っている。適切な接続語を  の中から選んで( )の中に
 入れ、意味のよく通じる文にしなさい。               (接続語の適用)
 ① 彼とはいっしょに山登りをしたこともあった。( )海へ泳ぎに行ったこともあった。
そして・また・同時に・そのうえ・それに・なお・次に・さらに
② 途中のつり橋がくちかかっていた。( )残念だが引き返すことにした。
だから・したがって・それで・すると・かくて・その結果・そこで
③ 廊下で騒がないことに皆で決めた。( )何人かの人が約束を守らない。
しかし・だが・けれども・ところが・とはいうものの・でも・それなのに
④ 打ち合わせ会は午後三時から行います。( )幹事は三十分前に集まってください。
つまり・要するに・言い換えれば・すなわち・なぜなら・ただし・例えば・事実
⑤ 兄はがんこでいったん言い出したらきかない。( )弟は考え方に柔軟性がある。
それに対し・その代わり・一方・むしろ・あるいは・または・それとも・それより
五 次の①~④は、二つの文から成っている。適切な接続語を使って意味のよく通じる文にしな 
168
  さい。                                 (接続語の使用)
 ① 管弦楽を聴く方は十時までに会場へお出でください。( )上履きは各自ご用意ください。
 ② 畑の中の道を歩いていった。( )足下からバッ夕が飛び立った。
 ③ これをしとげるには、多少の摩擦はやむを得ない。( )摩擦が少ないに越したことはな
  い。
 ④ 彼のしたことは、あまり歓迎されなかった。( )非難する者のほうが多かった。
                       (名古屋市立守山北中学校野田和義教諭作成)
 
169
         第五章 新文法指導の実践
170
     一 読解における機能文法の機能的指導の実践
   1 読解における助動詞「れる・られる」の機能的指導


一 教材「サーカスの馬」(安岡章太郎)の「ぼく、馬についての受け身の表現の部分」
 O朝礼の朝などに、時々服装検査というものが行われ、ポヶッ卜の中味を担任の先生に調べら
  れるのだが、ほかの連中は、たばこの粉や喫茶店のマッチや、けんかの武器になる竹刀のつ
  ばを削った道具や、そんなものが見つかりはしないかと心配するのに、ぼくときたら、同じ
  びくびくするのでも、全くたねが違うのだ。
 Oしかし、たまに当てられると、ぼくは必ず立たされた。
 O教室には邪魔だというわけか、しばしば廊下に出され立たされることもあった。
 Oいつかぼくは、目立って大きいサーカス団のテントの陰に、一匹の赤茶色い馬がつながれ
  いるのを目に留めた。
 O自分一人廊下に立たされているぼくは、その馬についていろいろ考えることが好きになった。
 O彼は多分ぼくのように怠けてなにもできないものだから、曲馬団の親方にひどく殴られたの 
171
    だろうか。
 
 Oそんなことを考えていると、ぼくは黙って時々自分のつながれたくりの木のこずえの葉を、
  首をあげてくいちぎったりしている馬がやっぱり(まあいいや、どうだって)とつぶやいて
  いるような気がした。
 O学校では時々生徒を郊外へ連れていき、そこで木の根を掘ったり、もっこをかついだりする
  ことを教えられたが、そんな時でもぼくは、我知らず赤土の上に腰を下ろしてほおづえをつ
  きながら、遠くを流れている大きな川の背にちかちかと日を反射させている有様を、いつま
  でもながめているというふうだった。
 O「おい、ヤスオカー」と名前を呼ばれて、清川先生から「おまえはいったい……それでいい
  のか。」と、そんなふうに言われても、ぼくは何も答えることができなかった。
 Oけれども、ぼくはなんということもなしに、境内をあちらこちら人波にもまれながら歩いた。
 O……あの馬が、見物席の真ん中に引っぱり出されてくるのだ。
 O馬は、ビロード金モールの縫い取りのある服を着た男にくつわを引かれながら申し訳なさそ
  うに下を向いて、あの曲がった背骨をがくがく揺すぶりながらやってくる。
 Oあまりのことに、ぼくはしばらくあっけにとられていた。
二 学習目標
  「ぼく」の無気力で消極的な性格が、受け身の表現にも表れていることを知り、それが「馬」
 を見る目にもつながっていることを知ることによって「ぼく」が、どう変容していくかをつか
 むとともに、助動詞「れる」「られる」に対する意識化を図ることができる。  
172
 
三 学習指導の実際
1三学習課題の設定
 「ぼく」は。サーカスの馬に何を見出したか
 ということについて、「ぼく」や「馬」につ
 いての表現の特徴について考えてみよう。
2 「ぼく」は、自分をどのように認識してい
 たかのまとめ
 T 「ぼく」は自分自身をどんな生徙だとと
  らえていたか。
 P (今まで読みとった「ぼく」の性格を発表す
  る)
3 受け身の表現に気づく
 T この小説は、何事に対しても積極的にな
  れない「ぼく」の立場で描いていましたね。
  馬についても、そういう「ぼく」の立場を
  通して見ています。それが表現の上にも工
  夫されています。「ぼく」や「馬」の動作
  を、他のものから何かされるという形で表
  現した部分がたくさんあります。それを見
 
   つけなさい。
 P(全文に目を通し、その箇所に傍線を引く)
 T 他から何かされるという形の表現を、受
  け身の表現と言います。皆の指摘した部分
  を言い切りの形で発表してください。(板書)
  「受け身」の表現
 「ぼく」自身について
  ・調べられる・当てられる・立たされる
  ・出される ・教えられる・呼ばれる
  ・言われる ・もまれる ・あっけにと
   られる
 「馬」について
  ・つながれる・殴られる ・出される
  ・引かれる
 
4 「受け身」の表現「れる・られる」の理解
 T 受け身の表現に共通して用いられている
  部分はどんなことばですか。

173
 
 P 「れる」ということばです。
 T それでは「調べられる」「当てられる」
  について考えてみよう。
 P 「調べ・ない」「当て・ない」というよ
  うに「調べ」「当て」は一つの単語です。
  だから、「調べ」「当て」に「られる」がつ
  いて、「調べ・られる」「当て・られる」に
  なります。
 T そうですね。「調べ」「当て」に「られる」
  がついて、受け身を表すことになります。
  それでは、「呼ばれる」「出される」につい
  ても考えてみましょう。
 P 前と同じで、「呼ば・ない」「出さ・ない」
  で、「呼ば」「出さ」は一つの単語だから、
  これも「呼ば」「出さ」に「れる」がつい
  て、「呼ば・れる」「出さ・れる」となりま
  す。
 T そうですね、このほうは。「れる」がつ
  いて受け身を表すことになります。そうす 
  ると、動詞に「れる」と「られる」のどち
  らかがつくと、消極的な受け身の意味を表
  すことになります。では、板書の受け身の
  表現を「れる」と「られる」に分けてノー
  トに書いて傍線を引きなさい。
 「受け身」の表現
「られる」
 ・調べられる・当てられる・教えられる
「れる」
 ・立たされる・出される・呼ばれる・言
 われる・もまれる・つながれる・殴られ
 ・出される・引かれる 
 5 受け身の表現の機能の理解
 T さて、自分自身が、物事に対して積極的
  になれない「ぼく」は、自分をも馬をも受
  け身で表現しているのですが、「馬」につ
  いて受け身の表現をしなくなるのはどこか
  らですか。
 
174
 
 P 急に楽隊の音が大きく鳴り出して、馬が
  トコトコ走り出すところから。
 T 受け身の表現をしなくなったことで、馬
  に対する見方がどう変わったとわかります
  か。
 P 今までの見方と違っていた。
 P サーカス一座の花形だとわかった。
 P 馬が自分の意志で動いているのだとわか
  った。
 T では、「ぼく」自身について受け身の表
  現をしているのはどこまでですか。
 P 思い違いがはっきりするまでです。
6 積極的になった自分と表現の理解
 T そうですね、では、今までは受け身の表
  現をたくさん使って「ぼく」自身が描かれ
  ていたのですが、そういうことを踏まえて
  最後の表現「ぼくは我にかえって、一生懸
  命手をたたいている自分に気がついた。」と
  いう部分について考えてみましょう。「一
 
  生懸命手をたたいていた。」という言い方と
  比べてみましょう。
 P 手をたたいている自分、そういう自分の
  姿に気がついたのです。
 T サーカスの馬との出会いを通して「自分」
  に気がついたと言うのですね。ここでは、
   「手をたたいている自分に気がついた」と
  いう表現がしてあるのですが。「ぼく」は、
  今まで気がつかなかった、どんな自分に気
  づいたのでしょう。それぞれ想像してノー
  トに書いてみましょう。
  次にその例をあげてみる。
 O馬でも、やれば芸ができるのだ。「ぼく」
  がそれに気づかなかっただけだから、自分
  にもやれば何かできるのではないかという
  こと。
 〇取り柄のない自分にも、人にできないこと
  ができるのではないかということ。
 〇自分に対する希望のようなもの。 
 
175
 

O他のものに積極的になれる面があること。
(注「れる・られる」の他の用法は別の機会に指
  導する。)
   (名古屋市立山田中学校佐藤敬教諭指導)  

  2 読解における「文と文との接続関係」を理解する機能的指導

一 教材「カブトムシ」(小西正粱)(1)
  「事実と報道」(樺島忠夫「中等新国語二」光村図書)―(1)・(2)
二 学習目標
  説明文の意味を、筋道をたどって正確に理解するとともに、文と文との接続の関係には、意
 味上の接続、指示語による接続、接続語による接続などのあることを理解し、文と文との連接
 意識を高めることができる。

 
  三 学習指導の実際

 教材 (1)
①造形の妙と重厚さからいって、カブトム
シは目本の虫の王者である。②子供たちの
人気をさらうのも無理はない。③その人気
のもとは、雄の頭に生えている、先が二ま
たに分かれた長い角にある。④だから角の
 
  ない雌はあまり歓迎されないで、商品とし
  ても雄よりかなり安く値ぶみされている。

1 筋道をたどって内容を正確に理解する
 T 筆者が、何について、どんなことを言お
  うとしているかは、一つ一つの文の意味を
  たどっていくと、正しく理解できます。こ

 
 176




















 O文章の意味のたど
  リ方の三つの方法
  ・意味上の接続
  ・指示語による接
   続
  ・接続語による接   続 
  の文章で、文の意味のたどり方を考えなが
  ら読んでみましょう。
 T どんなことがわかりましたか。
 P ①の文で、カブトムシは、日本の虫の王
  者であること、②の文で子供たちの人気が
  あること、③の文で、その人気のもとは雄
  の頭にある長い角にあること、④の文から、
  だから角のない雌は雄より値が安いことが
  わかりました。
 T では、どんなふうに文の意味をたどって
  いきましたか。
 P 初めは、カブトムシは日本の虫の王者、
  王者だから子供たちの人気をさらう。その
  人気のもとは、長い角にある。だから雌は
  歓迎されないというようにたどりました。
2 文の意味のたどり方を理解する
 T そうすると、①と②は、文の意味で続い
  ている。それから、②と③は「その人気」
  と「指示語」で続いている。③と④とは、
  「だから」といって「接続語」で続いてい
  ますね。(板書する)
① 文と文が意味の上で接続している。
② 文と文を指示語で接続している。
③ 文と文を接続語で接続している。
3 文と文との意味の続き方を理解する
 教材 (2)
①後に掲げる新聞記事は、見出し(タイト
ル)、前書き(リード)、本文の三つの部分
から成っている。②本文は、報道と解説の
両方を含んでいて、「星の名は……」以下
が解説である。③このように、解説は報道
記事の中に含められることもあるが、それ
とは別に解説記事として独立させることも
多い。④解説記事は、事典等から引用する
場合には、解説者の名前を出さないことも
あるが、解説者の独自のものの見方や考え 
 
177




 O文と文との意味の
  接続(1)
  ・ことばのくリ返
   しによる接続
  ・指示語による接
   続
 
方が出てくるような解説については、名前
をはっきりと出すのが普通である。
(1) 文をたどって意味を理解する
 T 新聞記事はどんな構成になっています
  か。
 P 見出し、前書き、木文の三つの部分で構
  成されています。
 T ①は、そのことを説明していますね。②
  は、その中の何を取り上げていますか。
 P 「本文」です。
 T 「本文」を取り上げてどんなことを述べ
  ていますか。
 P 「本文」は報道と解説の両方を含んでい
  ることです。
(2) 文と文との意味の続き方を考える
 T では、①と②の文を関係づけているの
  はどのことばですか。
 P 「本文」です。
 
 T ①の「見出し・前書き・本文」とある中
  の「本文」ですね。このように、接続語や
  指示語でなく、前の文の中のことばをくり
  返して文と文とを続けることもあります。
 T それでは、②と③の文はどのことばで続
  けていますか。
 P 「このように」という指示語です。
 T この指示語は、②の文のどんなことを指
  していますか。
 P 「報道と解説の両方を含んでいる」とい
  うことです。
 T このように指示語も文と文とを続けるは
  たらきをしています。
 T それでは、③と④とは、どのように続け
  ているか考えてみましょう。
 P ①と②の文の続け方と同じです。
 P ③の文の「解説記事」を、④の文でくり
  返して続けています。
(3) 文と文の意味の続き方を整理する 
178
 
T それでは、文と文との続き方がわかるよ
 うにノートに書いてみましょう。(板書)
 文と文との続き方
①後に掲げる新聞記事は、見出し・前書き
 本文の三つの部分から成っている。
  
本文報道と解説の両方を含んでいる
    
このように解説は報道記事の中に含め
 られることもあるが、解説記事
    
解説記事は、事典等から引用する 
T このようにまとめると、文と文との続き
 方がよくわかると同時に、この文章の意味
 の組み立てもはっきりして、正しく理解す
 ることができます。
4 指示語・接続語による文と文の続き方を理
 解する
  教材 (3)
①毎日世界じゅうの至る所で、いろいろな
出来事が起きている。②その中には、わた
したちにかかわりの少ないものもあるが、
大きなかかわりをもつものもある。③とこ
ろが、それらの出来事のうち、わたしたち
が、直接に自分の目で見、耳で聞くことが
できる範囲は極めて狭い。④そこで、第三
者の報告を仲立ちとしてどんな出来事があ
ったかを知ることになる。⑤新聞・ラジオ
・テレビなどの報道がそれである。 
(1) 文をたどって意味を理解する
 T 文をたどっていくとどんなことがわかり
  ますか。
 P 毎日、世界じゅうでいろいろな出来事が
  ある。その中にはわたしたちと関係の少な
  いものも大きいものもある。ところが、そ
  れらのうち直接見たり聞いたりできる範囲
179
 O文と文との意味の
  接続(2)
  ・指示語による接
   続
  ・接続語による接
   続(逆接)
  ・接続語による接
   続(順接) 
  は極めて狭い。そこで第三者の報告を聞く
  ということです。
(2) 文と文との接続を考える
 T ①と②はどんな内容でしたか。
 P ①の文は、毎日、世界じゅうの至る所で
  いろいろな出来事が起きているということ
  で、②の文は、出来事の中には、わたした
  ちに関係の少ないものも多いものもあると
  いうことです。
 P 指示語の「その」は「出来事」をさして
  います。
 T ③はどんなことを説明していますか。
 P それらの出来事のうち、わたしたちが、
  直接に自分の目で見、耳で聞くことができ
  る範囲は極めて狭い。
 T 「それらの出来事」というのはどんな出
  来事ですか。
 P わたしたちに関係の少ないものも、大き
  なものもあるが、毎日、世界じゅうで起き
   ているいろいろな出来事です。
 T それに対して、③では何と言っています
   か。
 P そんなに出来事はたくさんあるが、わた
  したちが直接見たり聞いたりできる範囲は
  極めて狭いと書いてあります。
 T そうすると、①②と③の内容の関係はど
  うなっていますか。
 P 出来事は多いけれど、直接見たり聞いた
  りできるものは少ないというように反対に
  なっています。
 T その反対の意味をどのように続けていま
  すか。
 P 「ところが」という接続語で続けていま
  す。
 T 「ところが」という接続語はどんなはた
  らきをしていますか。
 P 前の文とあとの文とを逆の意味で続ける
  はたらきをします。
 T それでは、①②③と続いて、④にはどの
180












 O文と文との接続の
  関係の整理
   ように続いていきますか。
 P 出来事はたくさんあるけれど、直接見た
  り聞いたりする出来事は少ない。そういう
  わけで、第三者の報告を仲立ちにして知る
  というように続いていきます。
 P「そこで」という接続語で続いています。
 P 前に理由が書いてあって、だから、こう
  するというように続けています。
 T そのように筋道を立てて意味を続けると
  き「そこで」という接続語を使っているの
  です。
 T では、④から⑤への続き方を考えてみま
  しょう。ここには、文と文との間に接続語
  がありませんね。
 P ⑤の文の中の「それ」で続けています。
 P この場合は、前の文の中のことばをくり
  返して使って続けるのと似ていますが少し
  違います。
 P ④の文の内容を「それにでさして、④と
   ⑤を意味の上で続けています。
(3) 文と文とのいろいろな続け方をまとめる
 T それでは。この文章の文をたどりながら
  読んで、意味を正確に理解してから、文と
  文の続き方をまとめてみましょう。
 P 一つは、指示語「その」を使って続けて
  います。
 P 接続語の「ところが」「そこで」を使っ
  て続けています。
 P 前の文の意味を「それ」でさして続けて
  います。
5 文と文との接続の仕方を整理する
 T それでは、これまで学習したことを表に
  して整理してみましょう。(ノート・板書)
 O文と文との続き方
① 前・後の文を意味の上で続ける
  │┌─前の文のことばをくり返して
  └├─前の文の内容をさして
   └─前・後の意味の関係で 
181










①教材
 O第三段落
 
 
 
 
 
 O第四段落
 
② 指示語で続ける
   └─その・このように
③ 接続語で続ける
   └─だから・そこで・ところが 
 T この文章の中にまだ、接続語を使ったい
  ろいろな続け方がある。調べてみよう。
   (名古屋市立円上中学校稲垣雪子教諭指導)

  3 読解における段落の構成・機能の指導

一 教材 「情報時代と情報公害」(樺島忠夫・「中等新国語三」光村図書)(抜粋)
  ③情報についてよく指摘されることは、情報過多という現象である。わたしたちが受け取る
  情報は、年々増え続けている。例えば、新聞の朝刊は二十数ページもあり、ラジオ・テレビ
  は、早朝から深夜まで、絶えず電波を流し続けている。マス-コミュニケーションは、読者
  を増やし、視聴率を高めるために努力しており、報道面でも、次々と新しい事件を追い求め
  て報道している。社会間題でも、一時期には水銀汚染の間題、次には光化学スモッグ、次に
  は石油危機と、ニュースがめまぐるしく移り変わっていく。
  ④新たに生じた重要な間題は取り上げざるを得ないし、社会や生活を守るためのキャンペー
  ンを次々と行うことも必要である。しかし、ニュースやキャンペーンのこのように急激な移
  り変わりの中では、受け手は。報道されなくなった問題は存在しなくなったものと思い込み
  がちである。例えば、水銀汚染の問題が姿を消して新しい間題が報道されると、水銀汚染に
182
    ついて考えたり注意したりする必要を忘れてしまうことになる。新しい間題は、古い問題を
  考えさせなくする力を持つのである。
  ⑤同様に、ラジオやテレビが休むことなく、次々と内容の異なる番組を流し続けることも、
  人々を考えることから遠ざける働きをする。一つの番組が終わり、人々がそれによって感銘
  を受け、問題意識を持ったとしても、すぐに次の、全く内容が異なる番組が始まる。そこで、
  スイッチを切ろうと決断することがないと、知識は頭の中に蓄積されるにしても、考える余
  裕は得られない。また、そうした状況に慣れると、一つの問題について、じっくり考え、追
  求する態度は失われてしまうことになる。(以下三段落省略)
二 学習目標
  段落③~⑧を読んで、各段落の要点とその関連を次のように書くことができる。

  
183









③学習指導
 O段落の要点の理解

  
  ・第三段落の宴点

 

  ・第四段落の要点 
  

三 学習指導の実際
1 段落ごとに要点を読みとってカードに書く
 (1) ③~⑧段落を読んで、要点と細部とを区別して、サイドラインを引く
 (2) 読み終わったら段落ごとにカードに書く 
  
   この段落の要点は、段落の冒頭にある。そのすぐあとに「例えば」という接続詞が置かれ、
   要点をささえる具体的な説明がある。そのため、全員容易にとらえることができた。
  
   この段落の要点は、段落の中ほどにある。その前には、③の情報過多の具体例を受けて、
   それも必要だと述べ、「しかし」とひるがえしている。要点の後には、「例えば」と例が示
   され、さらにその後に要点を言い換えた部分がある。そのため中位以下の生徒は、ややて
184
 
  ・第五段落の要点
 
 
 
 
 
  ・第六段落の要点




  ・第七段落の要点
 
 ・第八段落の要点

 O段落相互の関係

 
   こずった
  
   この段落の要点は、「同様に」で④と並べて冒頭に出されている。そのすぐ後で、「次々に」
   の部分を詳しく説明する一文があり、「そこで」によって悪影響(要点をふくらませたも
   の)を述べた文が続く。そのため段落の初めと終わりをつないでまとめる必要がある。尾
   括型に慣れている生徒は。冒頭を読み落としがちである。
  
   この段落は初めに情報公害の「現象」があげてあり、最後にその「影響」が書かれている。
   中ほどは十行もの細部となっている。以下⑦⑧段落ともに、ほぼ同じような組み立てにな
   っている。しかも、それぞれの段落ごとに「現象」と「影響」で一つのセッ卜になっている。
  
  
2 要点を書いたカードを操作して段落相互の関連を読みとり表に示す
 (1) まず、自分の考えで読みとり表の上にカードを関係づける
 (2) OHPのステージ上で、TP化したカードを動かして共同批正する
185
  ・③④⑤段落の関
   係










  ・⑥⑦⑧段落の関
   係
 
  ③④⑤の関連についててこずった生徒がいた。この部分は段落相互の関連を意識していない
 と、先の(1)「要点の読みとり」もしにくい所であったのである。
  つまり、④の「情報の急激な変移」と⑤の「次々と番組を流し続けること」とが、③の「情
 報過多」の側面を詳述し直している。③が現象で、④⑤はそれを受けて、その影響を述べる役
 割である。③と④⑤がひとまとまりの段落を構成し、他の⑥⑦⑧と並んで、情報公害による問
 題の一つを述べる機能を果たしているのである――ことに気づかせるのがポイントであった。
 
  また、⑥と⑦の影響面が似ているということで、この二つの段落を一まとまりにしたいとい
 う考えの者もいた。しかし、現象面の違いに着目させることで解決できた。
  以上、「要点は要旨が決定する」というよい例であった。段落内の一文一文の関係を指示語
 や接続語に注意したり、内容を比較したりして押さえることと、他との関連の中で、その段落
186
   の構成や機能を理解させることを試みてみた。
  こうして指導した結果、結局行動目標にあげてあるように、段落の構成、組立を完成した。
                        (名古屋市立大高中学校山田洋三教諭指導)
     二 シミュレーションによる文法指導の実践 
   一 指示語のシミュレーション指導モデル

一 学習単位 「指示語の学習」
二 学習目標
  文脈における指示語のはたらきを自覚し、指示語の対象を正しく把握するとともに、指示語
 の適切な使い方を身につけることができる。
三 学習事項(文法事項)
 一 指示語は、前に述べた事柄をくり返さずに、簡潔に述べるはたらきを持っていて、文と文、
  段落と段落とをつなぐこともできること
 2 前のものを指示する場合と、後で述べる事柄を指示する場合とがあること 
187
   3 指示する事柄を正しく把握すること
 4 指示語を適切に使って文章を書くこと
四 学習過程モデル
 1 指示語の連接機能を理解する
 2 指示語の指示機能を理解する
 3 指示語には「事柄」を指示するもの「様態」を指示するものの別のあることを理解する
 4 指示語の指示する事柄を正しく把握する
 5 指示語を適切に使う
五 モデル教材
   A
  ①どこかへ旅行がしてみたくなる。②しかし、別にどこという決まった当てがない。③そう
  いうときに、旅行案内記のたぐいをあけてみると、あるいは海浜、あるいは山間の湖水、あ
  るいは温泉といったように、行くべきところがさまざまありすぎるほどである。④そこで、
  まず仮に温泉なら温泉と決めて、温泉の部を少し詳しく見ていくと、各温泉の水質や効能、
  周囲の形勝、名所旧跡など大体がざっとわかる。⑤しかし、もう少し詳しく具体的なことが
  知りたくなって、今度は温泉専門の案内書を捜し出して読んでみる。⑥そうすると。まず、
  ぼんやりとおおよその見当はついてくるが、いくら詳細な案内記を丁寧に読んでみたところ
  で、結局本当のところは、自分で行ってみなければ分かるはずはない。⑦もしもそれが分か
  るようならば、うちで書物だけ読んでいれば、わざわざ出かける必要はないといってもいい。
 188
   ⑧次には、念のためにいろいろの人の話を聞いてみても、人によってかなり言うことが違っ
 ていて、だれのオーソリティを信じていいか分からなくなってしまう。⑨それで、さんざん
 調べた最後には、つまりいい加減に賽でも投げると同じような偶然な機縁によって目的の地
 をどうにか決めるほかはない。⑩こういうやり方は、いわばアカデミックなオーソドックス
 なやり方であるといわれる。⑪これは多くの人々にとって最も安全な方法であって、⑫こう
 すればめったに大きな失望やとんでもない違算を生ずる心配が少ない。⑬そうして主要な名
 所・旧跡をうっかり見落とす気遣いもない。(寺田寅彦「案内者」より)

 ①どこかへ旅行がしてみたくなる。②しかし、別にどこという決まった当てがない。③別に
 どこという決まった当てがないときに旅行案内記のたぐいをあけてみると、(中略)⑤しかし、
 もう少し詳しく具体的なことが知りたくなって、今度は温泉専門の案内書を捜し出して読ん
 でみる。⑥温泉専門の案内書を捜し出して読んでみると、まず、ぼんやりとおおよその見当
 はついてくるが。いくら詳細な案内記を丁寧に読んでみたところで、結局本当のところは、
 自分で行ってみなければ分かるはずはない。⑦もしも本当のところが分かるようならば、う
 ちで書物だけ読んでいれば、わざわざ出かける必要はないといってもいい。(中略)⑩どこか
 へ旅行してみたくなったとき、旅行案内記を調べたり、人の話を聞いたりして行き先を決め
 るやり方は、いわばアカデミックなオーソドックスなやり方であるといわれる。(後略)
  C
  わたしの覚えている故郷は、まるでこんなふうではなかった。わたしの故郷は。もっとず
 
189
   っとよかった。その美しさを思い浮かべ、その長所を言葉に表そうとすると、しかし、その
 影は、かき消され、言葉は失われてしまう。やはりこんなふうだったかもしれないという気
 がしてくる。そこで、わたしは、こう自分に言い聞かせた。もともと故郷はこんなふうなの
 だ――進歩もない代わりに、わたしが感じるような寂寥もありはしない。そう感じるのは、
 自分の心境が変わっただけだ。なぜなら、今度の帰郷は、決して楽しいものではないのだか
 ら。(魯迅「故郷」より)
  D
  人間の幸福とはいったい何であるか、これに対して的確に答えることは実にむずかしい。
 人間の幸福というものは、いつまでたっても直接学問の対象とはなりえないものではないか
 とさえ思われる。人間の喜怒哀楽とは、人間の心の奥深くから発するところのものである。
 それはしばしば、人間の意識、人間の反省を越えた、どうすることもできないところから発
 する場合が多い。人間は自分で気がつくと、つかないとにかかわらず、そうした面を今もな
 お多くもっているのである。人間の喜怒哀楽とは、そういうものと深く結びついている。し
 たがって、人間の幸福ということを問題にする場合、そういうものを離れて科学で割り切る
 ことは実に困難である。
     線部の理由を考えてみよう。
(1) 幸福は近い将来において、直接学問の対象となる可能性を持つと考えられるから。
(2) 幸福は人間がどうすることもできないもので、これを獲得することは困難であるから。
(3) 幸福は喜怒哀楽といった心の奥深くひそんでいるものと深いかかわりをもっているから。 
 190



















①文と文とを連接する
 語
 (4) 幸福は、自分で気づくと気づかないとにかかわらず、だれでももっているものであるから。
   E
  次の文を、それぞれ指示語を使って二つの文に書き直そう。
 ① 一度北海道を旅行するのが、ぼくの最大の希望です。
 ② わたしはするだけのことをすればよいと思っている。
 ③ 窓から見える森のかげの赤い屋根の家が、Kさんの家です。
 ④ 彼から承諾の返事を聞いてぼくは安心した。
 ⑤ 先生や友だちと学び合い、他の人の異質な見方や考え方にふれ、それに触発されて、それ
  までの自分の考えを変更するところに、学校での学習の意味がある。
 ⑥ 向こうに見える開墾地の右手にあるのが、村の共同作業場だ。
六 シミュレーション指導の実際
 ― 教材のプリント配布
 2 学習目標を確認する
T きょうは、「指示語」が、もともともっている指示するはたらきと、そのはたらきによって、
 文と文とを続けたり、段落と段落とを続けたりすることを勉強しましょう。
 3 文と文とを連接する語を発見する
T Aの文章は、①~⑬まで、全部で十三の文からできています。どのように話が展開されてい
 るか。①から⑬まで筋道をたどりながら読んでみましょう。読みながら、文と文とを続けてい
 ることばにサイドラインを引きなさい。
 191









 O接続語
T どんなことばを見つけましたか。
P ②の「しかし」、③の「そういうときに」、④の「そこで」、⑤の「しかし」、⑥の「そうする
 と」、⑦の「もしも」、⑧の「次には」、⑨の「それで」、⑩の「こういう」、⑪の「これは」、⑫
 の「こうすれば」、⑬の「そうして」を見つけました。
P ⑦は、「もしも」でなく、「それ」にしました。

 4 連接する語には、接続語と指示語のあることを理解する
T こういうことばを押さえながら、筋道をたどって続んでいくと、文章の意味を正しく理解す
 ることができますね。ところで、これらのことばのはたらきを考えてみると、大きく二つの仲
 間に分けられます。どのことばが、どんなはたらきをしますか。考えてみましょう。
P 「しかし」「そこで」「次には」「それで」「そうして」は、同じ仲間で、文と文とを接続して
 います。
T (板書して)こういうことばの仲間を何と言いますか。
P 接続詞と接続詞と同じようなはたらきをすることばです。
P こういうことばの仲間を「接続語」と言います。(板書する)
   しかし  そこで  次には  それで  そうして――接続語
192
 O指示語



  ・指示語の連接機
   能






②指示語の指示機能
 
T このほかのことばはどうなりますか。
P 「そういう」「そうする」「それ」「こういう」「これ」「こうする」は。同じ仲間で、やはり、
 文と文とを続けるはたらきをしています。しかし、接続語とは少し続け方が違っています。
P これは「指示語」の仲間です。(板書する)
   そういう  そうする  それ  こういう  これ  こうする――指示語
T きょう勉強するのは、この「指示語」のはたらきでしたね。指示語について、これまでに分
 かったことをまとめてみましょう。
P 指示語も接続語と同じように、文と文とを続けるはたらきをします。
P 指示語の文の続け方は、前の文に書いてある事柄を、はっきり受けて、それを次の文に続け
 ています。
T まとめてみましょう。(板書する)
   指示語のはたらき――指示語も前の文に書いてある事柄を受けて後の文に続ける
 5 指示語の指示機能を理解する
T Bの文章は、Aの文章の意味を変えないようにして、指示語を使わないで、書き替えた文章
 です。Aの文章と比べて、表現の上でどんな違いがあるか考えてみましょう。
P Aの文章の指示語が、正しいことばで置き替えてあります。
P Aと比べて、Bの方は、同じことが、そのままくり返されて書いてあるのでくどくなってい
193









 O前文の事柄を指示
  する 
 る。
P Aの方は。同じことばを二度くり返して書かないで、指示語で表しているが.Bの方は。指
 示語を使わないで、同じことばを二度くり返して書いているからかえってわかりにくくなって
 います。
T それでは、二度同じことがくり返し書いてある部分にサイドラインを引いた上で、そこを指
 示語で書いてください。
P (それぞれ指示語を使って書き替える)
  ⑤ しかし、もう少し詳しく具体的なことが知りたくなって、今度は温泉専門の案内書を捜
   し出して読んでみる
  ⑥ 温泉専門の案内書を捜し出して読んでみると、まず、ぼんやりとおおよその見当は……
                  そうすると
  ⑩ どこかへ旅行してみたくなったとき、旅行案内記を調べたり、人の話を聞いたりして行
   き先を決めるやり方は、いわばアカデミックなオーソドックスなやり方であると……
   こういう
T できたらまとめてみよう。⑥の「そうする」の「そう」は、何を指示していますか。
P すぐ前の文の「温泉専門の案内書を捜し出して読んでみる」ことをさしています。
T ⑩の「こういう」の「こう」は、何を指示していますか。
P こういうやり方というように、この文章に書いてある「旅行の行き先を決めるやり方」をさ
 しています。
194
 〇前段の内容をまと
  めて指示する












 O 「これ」「それ」
  の指示する事柄
 O 「こう」「そう」
  の指示する様態
 
P 第一段落全体に書いてある、案内書を読んだり、人の話を聞いたりして、旅行の行き先を決
 めるやり方をさしています。第一段落全体を受けて、第二段落に続けています。
T それでは、Aの文章の、⑦の「それ」と、⑪の「これ」は何を指示していますか。
P ⑦の「それ」は、前の文の「本当のところ」をさしています。
P ⑪の「これ」は、前の文の「アカデミックなオーソドックスなやり方」をさしています。
T では、指示語の指示するはたらきについて分かったことをまとめてみましょう。(板書)
   これ――「本当のところ」……(前の文)
   それ――「アカデミックなオーソドックスなやり方」……(前の文)
   こう――「旅行案内記を調べたり、人の話を聞いたりして行き先を決める」……(前の段
       落)
   そう――「温泉専門の案内書を捜し出して読んでみる」……(前の文)
T このように。「これ」「それ」の指示するものと、「こう」「そう」の指示するものとは、さし
 方に違いがあることがわかります。「これ」「それ」は、前の文に書いてある「事柄」をさして
 います。「こう」「そう」は、前の文、あるいは段落に書いてある「何かをする状態(様態)」を
 さしています。
T それでは、今度は、Cの文章を筋道をたどりながら読んで、指示語があったら、何をさして
 いるかを考えてみましょう。
P 「わたしはこう自分に言い聞かせた」の「こう」の指示語は、「自分に言い聞かせた」こと
 をさしています。

195





 O後で述べることを
  指示する場合







③文章の理解と指示語
 の機能の理解 
T すると、「こう」に続いている「自分に言い聞かせた」ことですか。
P 違います。言い聞かせた内容をさして「こう」と言ったのです。ですから「もともと故郷は」
 から、終わりの「楽しいものではないのだから」までの様態を「こう」と言ったのです。
T それでは、前の指示語と違う点をまとめてみましょう。
P 指示語は、前に書いてあるのを指示するのが普通であるが、「こう」のように後に書いてあ
 ることを指示することもあります。
T 指示語は。前に書いてあることを指示する場合と、後でこれから述べることを指示する場合
 とがあります。
  O「それよりもこのほうがいい。」と言って、大きな赤い球を出した。
  Oこれを見なさいとばかり、釣り上げた大きなこいを差し上げた。
 もちろん、前の文に書いてあることを受ける場合がずっと多い。
 6 指示語の機能・用法を理解する
T それでは、Dの文章を読んでみましょう。指示語がたくさん使われているから、それぞれど
 んなことをさしているかを考えてみましょう。
T 指示語の指示するものを考えるときどのようにしましたか。
P 指示語のところに、指示する事柄を考えて当てはめてみました。
T 指示語の代わりに、具体的にさし示していることを入れてみて、文脈が通るかどうか考えて
 みるとよい。「これ」は何をさしていますか。
P 「人間の幸福とはいったい何であるか」ということを指示しています。
196
   (以下同様にして扱う)
T では、最後に「科学で割り切ることは実に困難である」というのは、どういう理解からか、
 文章をよく読んで考えてみましょう。(1)~(4)のどれが正しいですか。(教材D参照)
 (1)を正しいとしたもの………一名  (四三名中)
 (2)を正しいとしたもの………五名
 (3)を正しいとしたもの……三六名
 (4)を正しいとしたもの………一名
T (3)を正しいと考えたものが三六名いるが、どのことばに注意して考えましたか。
P 「そういうものを離れて科学で割り切ることは実に困難である」から、「何を離れて」かを
 考えてみました。
P 「そういうもの」というのは、どんなことをさしているかを考えました。
P 「そう」の指示しているものは何かを考えました。
P 「そう」がさしているのは、その前の方に書いてあることで、前のほうに書いてあるのは、
  「幸福は、喜怒哀楽といった心の奥深くひそんでいるものと深いかかわりがある」ということ
 だから、(3)だと考えました。
T そうすると、みんな「そういうものを離れて」の「そう」がさしていることをはっきりさせ
 てみたのですね。つまり、指示語のさしているものをはっきりさせたら、文の意味がよく理解
 されたのですね。それでは。誤ったものは、指示語のさすものを考えながらもう一度読んでみ
 なさい。(全員納得する)
 197


④指示語の用法と使用 
T 文章の意味を理解する場合、指示語に出会ったら、それは何を指示しているかを明らかにす
 ることがだいじだということがよくわかりましたね。
 7 指示語を適切に使って文章を書く
T 今までの学習で、指示語のはたらきと指示語の使い方がよくわかりました。今度は、その指
 示語を使って文章を書いてみましょう。それでは、Eの間題をやってみましょう。①~⑥まで、
 六つの文があります。どの文も、指示語を使って、それぞれ二つの文に書き直してみよう。
P (各自、自由に二つの文に書き替えていく)
 ① 一度北海道を旅行するのが、ぼくの最大の希望です。
  ・一度北海道を旅行する。それがぼくの最大の希望です。
 ② わたしはするだけのことをすればよいと思っている。
  ・するだけのことをすればよい。わたしはそう思っている。
  ・わたしはするだけのことをする。そうすればよいと思っている。
  ・わたしはこう思っている。するだけのことをすればよいのだ。
 ③ 窓から見える森のかげの赤い屋根の家が、Kさんの家です。
  ・窓から森のかげの赤い屋根の家が見えます。それがKさんの家です。
  ・窓からKさんの家が見えます。森のかげの赤い屋根の家がそれです。
 ④ 彼から承諾の返事を聞いてぼくは安心した。
  ・彼からの承諾の返事。それを聞いてぼくは安心した。
  ・彼から承諾の返事がきた。それを聞いてぼくは安心した。
 
 198
    ・彼から承諾の返事があった。それを聞いてぼくは安心した。
 ⑤ 先生や友だちと学び合い、他の人の異質な見方や考え方にふれ、それに触発されて、それ
  までの自分の考えを変更するところに、学校での学習の意味がある。
  ・先生や友だちと学び合い……それまでの自分の考えを変更する。そういうところに学校で
   の学習の意味がある。
  ・先生や友だちと学び合い……それまでの自分の考えを変更する。そこに学校での学習の意
   味がある。
 ⑥ 向こうに見える開墾地の右手にあるのが、村の共同作業場だ。
  ・向こうに見えるのが開墾地だ。その右手にあるのが村の共同作業場だ。
  ・向こうの開墾地の右手に見えるものがある。それが村の共同作業場だ。
T みんな適切に指示語を使って文章を書くことができました。きょう、指示語について学習し
 たことを整理して、ノートにまとめておきましょう。
                      (名古屋市立千種台中学校松山勇夫教諭指導)

  2 助動詞「そうだ」のシミュレーション指導モデル

一 学習単位  助動詞「そうだ」の学習
二 学習目標
  助動詞「そうだの機能・用法を理解するとともに、それを適切に使って文を書くことがで
 
 199

















①教材のカードを作る 
 きる。
三 学習事項(文法事項)
 1 「そうだ」は「伝聞」「様態」の意味を表すこと
 2 「そうだ」と他の語との接続の関係を理解すること
 3 「そうだ」の用法を理解すること
 4 「そうだ」を正しく使って文を書くこと
四 学習過程モデル
 1 「そうだ」の機能を知る
 2 「そうだ」の意味機能の違いを発見する
 3 「そうだ」の用法を理解する
 4 「そうだ」の用法を規定する法則を発見する
 5 「そうだ」を適切に使って文を書く
五 シミュレーション指導の実際
 ― 学習目標を確認する
T きょうは助動詞「そうだ」は、どんなはたらきをするか、どのように使えばいいかを調べ
 てみましょう。
 2 教材を作る
T そこで。「そうだ」の学習に使う文法カードを作りましょう。次の①~⑥の文を書いた六枚
 のカードを作りましょう。
 
200











②「そうだ」の機能



 O機能の分類
 
 ① 今にも雨が降りそうだ。
 ② あしたは雨が降るそうだ。
 ③ みんなで歌を歌っているが、いかにも楽しそうだ。
 ④ キャンプファイヤーをたいて踊ったり歌ったりするのは楽しいそうだ。
 ⑤ 入り江はいつもおだやかだそうだ。
 ⑥ 風はなし、このぶんでは海はおだやかそうだ。
 3 「そうだ」の意味機能の違いを発見する
T それぞれの文の意味を考えながら読んでみよう。
P 同じ「そうだ」という助動詞だけれど。様子とか状態とかを表すのと、人から聞いたという
 意味を表すのとあります。
P ①の「今にも兩が降りそうだ」と、③の「みんなで歌を歌っているが、いかにも楽しそうだ」
 と、⑥の「風はなし、このぶんでは海はおだやかそうだ」の三つの文の意味は同じです。あと
 の三つの文は、みんな人から聞いたことを表しています。
T ではそのように分けてみましょう。(板書)(生徒はカード操作)
  ① 降りそうだ──┐           ② 降るそうだ───┐
  ③ 楽しそうだ──┼─A         ④ 楽しいそうで──┼─B
  ⑥ おだやかそうだ┘           ⑤ おだやかだそうだ┘
  このようにA・Bのグループに分かれましたが、それぞれどんな意味を表しているかまとめ
 てください。
201



  ・「様態」の「そ
   うだ」
  ・「伝聞」の「そ
   うだ」












③「様態」の形態と
  「伝聞」の形態 
P Aは、「降るような様子」「楽しい様子」「おだやかな様子」を表しています。
P Bは、「降ると言っている」「楽しいと言っている」「おだやかだと言っている」そういう、
 人が言っているのを聞いたことを表しています。
T そうですね、Aのように使われているのを「様態」を表す「そうだ」と言います。Bのよう
 に使われているのを「伝聞」を表す「そうだ」と言います。
 4 「そうだ」の用法を感覚的に身につける(文法感覚を養成する)
T それでは、「様態」の「そうだ」と「伝聞」の「そうだ」を使い分けて短文を書いてみよう。
P 赤ちゃんが笑いそうだ。もう、赤ちゃんが笑うそうだ。
P 棚からはこが落ちそうだ。気をつけないとすぐ川へ落ちるそうだ。
P きょうは風が吹かないので静かそうだ。子どもがいないから家の中はいつも静かだそうだ。
P この本はおもしろそうだ。「坊っちゃん」はいつ読んでもおもしろいそうだ。
P 裏の山はさびしそうだ。裏の山を一人で歩くのはやはりさびしいそうだ。
  (以下省略)
T こうして自由に書いてみると。「様態」と「伝聞」の言い方の違いがはっきり区別できます
 ね。それでは、今度は、どうしてこのような違いができるのか、そのわけを考えてみよう。
 5 「そうだ」の用法を規定する法則を発見する.
T まず。両方の使い方を比べて考えてみましょう。(板書)
   様 態               伝 聞
① 降りそうだ――降り+そうだ……………降るそうだ――降る+そうだ
202














 O「伝聞」の「用言」
  と「そうだ」の続
  き方

 O「様態」の「用言」
  と「そうだ」の続
  き方 
② 笑いそうだ――笑い+そうだ……………笑うそうだ――笑う+そうだ
③ 落ちそうだ――落ち+そうだ……………落ちるそうだ――落ちる+そうだ
④・楽しそうだ――楽し+そうだ……………楽しいそうだ――楽しい+そうだ
⑤ おもしろそうだ――おもしろ+そうだ………おもしろいそうだ――おもしろい+そうだ
⑥ さびしそうだ――さびし+そうだ…………さびしいそうだ――さびしい+そうだ
⑦ おだやかそうだ――おだやか+そうだ………おだやかだそうだ――だやかだ+そうだ
⑧ 静かそうだ――静か+そうだ……………静かだそうだ――静かだ+そうだ
T これを見て、「様態」と「伝聞」の違いの起こる理由を考えてみよう。
P ほかのことばと、「そうだ」の続き方が違うからです。
P 様態の意味になっているときは、「兩が降りそうだ」というように「降り」と「そうだ」を
 続けたけれど、伝聞のときは、「兩が降るそうだ」というように、「降る」と「そうだ」を続け
 ています。「降り」と「降る」というように「そうだ」に続けるときの形が違うからです。
T いいところに気がつきました。ほかのことばもそのように考えてみるとどうなりますか。
P 伝聞の方は。「降る」「笑う」「落ちる」「楽しい」「おもしろい」「さびしい」「おだやかだ」
  「静かだ」というように。どのことばも「言い切る形」で「そうだ」に続いています。
T みなさんは、そのことを知らずに使ってきましたが。「伝聞」のときには。「ことばの『言い
 切りの形』に『そうだ』を続けて使う」ということばのきまりに従って使ってきたのです。そ
 れでは様態のほうはどうなっていますか。こちらは、少し複雑なようです。
P ぼくは、黒板を見て、「降り」「笑い」「落ち」のグループと、「楽し」「おもしろ」「おだやか」
203
  ・動詞の続ける
   形、形容詞・形
   容動詞の語幹十
   そうだ
  ・用言の言い切り
   の形十そうだ






④「様態」のいろいろ
 な用法 
 「静か」のグループに分けてみました。「降り」「笑い」「落ち」は動詞の「続ける形」に「そ
 うだ」が続いています。「楽し」「おもしろ」「おだやか」「静か」などの形容詞や形容動詞は。
 語幹に「そうだ」が続いています。
T 様態のほうも、「動詞の「続ける形」、形容詞・形容動詞の『語幹』に『そうだ』を続けて使
 う」ということばのきまりに従ってわたしたちは使ってきたのです。それでは、これをまとめ
 てください。
P 「動詞・形容詞・形容動詞の言い切りの形に『そうだ』を続けると、『伝聞』の意味」にな
 ります。「動詞の『続ける形』と形容詞・形容動詞の『語幹』に「そうだ」を続けると、『様態』
 の意味」になります。(板書)
  
T みなさんが。ふだん気にもとめず使い分けていた、様態と伝聞のことばの使い方の裏には、
 こんなにはっきりした、ことばの法則・文法があるのです。
  今まで学習したのは「そうだ」の基本的な使い方です。もっといろいろな使い方があります。
 今度はその学習をします。
 6 「そうだ」のいろいろな用法を理解する
T それでは、様態のいろいろな言い方をカードに書き出してみよう。
P 今にもたおれそうな家だ。しかられて泣きそうな顔をしている。
P 石につまずいてころびそうになった。彼はたおれそうになった。
204








 O「様態」の「そう
  だ」の活用形







⑤「伝聞」のいろいろ
 な用法 
P 雨が降りそうなら行くのをやめる。できそうならやってみなさい。
P スケートをはいたら、ころびそうでこわかった。毛筆ではじょうずに書けそうでなかなか書
 けない。
P 雨がやみそうだったら外へ出なさい。何となくできそうだったから作ってみたができなかっ
 た。
T もっとほかに使い方はありませんか。
T 「この竹とんぼは簡単にできそうだろう。しかし。よく飛ぶように作るのはむずかしいよ。」
 こんな言い方もある。
T それでは、今までに学習したことをまとめてみましょう。(板書)
 ① 雨が降りそうだ。     (くりが落ちそうだ。)
 ② 雨が降りそうだろう。   (くりが落ちそうだろう。)
 ③ 雨が降りそうだった。   (くりが落ちそうだった。)
 ④ 兩が降りそうで心配だ。  (くりが落ちそうで落ちない。)
 ⑤ 雨が降りそうになってきた。(くりが落ちそうになっている。)
 ⑥ 雨が降りそうな空模様だ。 (くりが落ちそうな感じだ。)
 ⑦ 雨が降りそうなら中止する。(くりが落ちそうなら待ってる。)
T 「様態」を表す「そうだ」は、このようにいろいろな使い方があります。「伝聞」のそうだ
 はどうでしょう。言ってみてください。
P 雨が降るそうだ。風が吹くそうだ。 
205



 O「伝聞」の「そう
  だ」の活用形 
P あしたは雨がやむそうで、安心しました。
P 十月には、こちらへ帰るそうで、その時は駅へ迎えに行きます。
P そのほかには使い方がないと思います。
T 「伝聞」は、「様態」と違って、「雨が降るそうだ」と「雨が降るそうで、心配しています」
 の二通りの使い方しかありません。
T それでは、助動詞「そうだ」について学習したことをまとめてみましょう。わたしたちは、
 ふだん「そうだ」を、特別に意識せず、自由自在に使っていますが、その使い方の裏には、い
 ろいろなことばを使う上のきまり、つまり、文法があることを学習しました。それをまとめて
 整理してみましょう。学習した順に言ってください。
P 一番めは、「そうだ」には「様態」を表すものと、「伝聞」を表すものがあります。
   伝聞―そうだ   様態―そうだ
P 二番めは、「そうだ」と他のことばとの続き方の違いによって、伝聞と様態の違いができま
 す。
P 動詞・形容詞・形容動詞などの「言い切りの形」に「そうだ」が続く場合は「伝聞」の意味
 になります。
P 動詞の「続く形」、形容詞・形容動詞の語幹に「そうだ」が続く場合は「様態」の意味を表
 します。
P わたしたちは、ふだんは、習慣で使い分けています。
 206
   
T わたしたちは、実際ことばを使う時には、こういうきまりを、意識しないでも、正しく使う
 ことができますが、時には、ことばの使い方を決めているきまりがあることを知ることは、だ
 いじなことです。最後に、みなさんが使っている、「そうだ」のいろいろな使い方をまとめて
 もらいましたが、まとめながら何か気がついたことはありませんでしたか。
P 「様態」の「そうだ」には、七つの違った使い方があるのに、「伝聞」の「そうだ」には。
 二通りの使い方しかないのが不思議でした。
P 言い切る形はいつも「そうだ」、あとへ続ける時は、「そうだっ」「そうで」「そうに」という
 形になる。同じ「続ける形」でも、「降りそうな空」「悲しそうな顔」というように、体言に続
 ける場合は。例外なしに「そうな」という形になる。「もし」というときには「雨が降りそう
 ならやめる」というように「そうなら」という形になります。
  このように、「そうだ」の使い方はちゃんと決まっていて、ほかの使い方をしないのに感心
 しました。
P 「雨が降りそうだ」と「兩が降るそうだ」は、意味が全く違うけれど、「降り」と「降る」
 と続ける形と言い切りの形の違いだけで、そんなに変わるのかと思いました。
T では、これで助動詞「そうだ」の勉強を終わります。
                         (名古屋市立若葉中学校横地鈴也教諭指導)
207
    3 助動詞「れる・られる」のシミュレーション指導モデル

一 学習単位  助動詞「れる・られる」の学習
二 学習目標
  助動詞「れる・られる」の用法に対する感覚を育て、その機能を意識化するとともに、その
 用法を理解し。適切に使い分けることができる。
三 学習事項(文法事項)
 1 「れる・られる」の文法感覚を育てること
 2 「れる・られる」の文法意識を高めること
 3 「れる・られる」の可能・受身・自発・尊敬の機能を理解すること
 4 「れる・られる」を適切に使うこと
四 学習過程モデル
 1 「れる・られる」の文法経験をする
 2 「れる・られる」の機能を意識化する
 3 「れる・られる」の可能・自発・尊敬・受身の機能を理解する
 4 「れる・られる」の用法を理解する
 5 「れる・られる」を使って文を書く
五 学習教材モデル
208
   A  (可能・受身の識別)
① どんな山だって越えようと思えば越えられる
② 人にそう言われてみると、私も気にかかり出した。
③ 突然、だれかに声をかけられたので振り返ってみた。
④ 美しい新緑が見られるのを楽しみにして行った。
 B (自発・尊敬の識別)
⑤ 級友は、みんな私の味方になったように思われた
⑥ 先生は、号令台にあがってていねいにおじぎをされた
⑦ それが、まるできのうのことのように思い出される
⑧ 王様は、民の忠誠をさえ疑っておられる
 C (可能・受身・自発・尊敬の機能の意識化) 
① どんな山だって越えようと思えば越えられる。
④ 美しい新緑が見られるのを楽しみにして行った。
○ 
 b ② 人にそう言われてみると、私も気にかかり出した。
③ 突然、だれかに声をかけられたので振り返ってみた。
○ 
 c ⑤ 級友は、みんな私の味方になったように思われた。
⑦ それが。まるできのうのことのように思い出される。
○ 
 d ⑥ 先生は、号令台にあがってていねいにおじぎをされた。
⑧ 王様は、民の忠誠をさえ疑っておられる。
○ 








              209
209
     ア 王はそのまま台上に登られた。
   イ こんなところを人に見られるのが何よりもつらい思いであった。
   ウ 世の中のことは、当てはめようと思えば、何でも当てはめて考えられるものだ。
   エ 奈良の街を歩いていると、古い歴史のあとがしのばれる。
 D (動詞と「れる」「られる」の接続)
⑨ 先生はとてもやさしい宇を書かれる。  ⑩ 人に笑われるのはだれだっていやだ。
⑪ 去年の春のことが思い出される。    ⑫ 岩は一日じゅう波に洗われていた。
⑬ この服はぼくにも着られる。      ⑭ 伸びられるだけ伸ばしてやりたい。
⑮ だれでもほめられるとつい得意になる。
⑯ 人は、その存在を忘れられるのはさびしいことだという。
 E (「れる・られる」の用法の理解)
⑰ 尊敬の気持ちを表すためには尊敬の言い方を使う。  (受身)
⑱ 発見ということばは、このような場合に用いる。   (受身)
⑲ 平均0.一パーセントを保つことは困難なように思う。(自発)
⑳ 町長さんが、町をきれいにしてくださいと話した。  (尊敬)
㉑ きのう町長さんが学校へ来た。           (尊敬)
210








①「可能」の言い方と
  「受身」の言い方
 
   何匹でもつかまえることができるだけつかまえなさい。 (可能)
   手をあげて伸びることができるだけ伸びてごらん。  (可能)
  F
  (受身)     (可能)     (自発)     (尊敬)
  〈備考〉この教材を使って教師が指導する場合には、プリントして配布する。生徒に自己学習
 をさせ、それを指導する場合には、学習方法の指示と、評価の基準とを示した学習のプログラ
 ムを作成して与える。
六 シミュレーション指導の実際
 1 「れる・られる」について、可能の言い方と受身の言い方のあることを意識する
T きょうは、助動詞「れる・られる」のいろいろなはたらきについて、また、その正しい使い
 方について学習しましょう。そのプリントについて順次学習していきます。
  Aの傍線のあることばのはたらきに注意して読んでください。どんなことに気づきましたか。
P ①は、「越えることができる」というように「できる」ということを表しています。②は、
 人から何か「言われた」というように「された」ということを表しています。③も人から声を
  「かけられた」というように「された」ことを表しています。④は新緑を「見ることができる」
 というように「できる」という意味を表しています。
P ①と④、それから②と③とは、それぞれ同じはたらきで、①と④は、「できる」という意味
 を表しています。②と③は、人から「そうされた」ということを表しています。
T そうですね。①の「越えられる」と、④の「見られる」は、「そうすることができる」という
211



②「自発」の言い方と
 「尊敬」の言い方










③可能・受身・自発・
 尊敬の理解
  

 意味、つまり、「可能」の意味を表すはたらきをします。また、②の「言われ」と、③の「かけ
 られ」は、ほかから「そうされる」という意味、つまり「受身」の意味を表すはたらきをします。
 2 「れる・られる」について「自発」の言い方と「尊敬」の言い方のあることを意識する
T それでは。今度は.Aと同じようにBの文を読んで考えてみましょう。
P ⑤と⑦は同じ、⑥と⑧も同じ意味を表しています。
P ⑤と⑦は、「思われた」「思い出される」で、両方とも、自分で思おう、思い出そうとしなく
 ても、「自然に思われる」「自然に思い出されてしまう」という意味を表しています。
P ⑥と⑧は、先生がおじぎをしたというのを「された」と言い、王様が疑っているというのを
  「おられる」と言って、「敬う気持ち」を表しています。
T そうです。⑤と⑦のように、「自然にそうなる」という意味を表すはたらきを「自発」、⑥と
 ⑧のように、「敬う気持ち」を表すはたらきを「尊敬」と言います。
 3 「れる・られる」の四機能を理解する
  それでは.AとBでわかったことをまとめてみましょう。(板書)

① 越えられる・見られる………可能
② 言われる・かけられる………受身
③ 思われる・思い出される……自発
④ される・おられる……………尊敬 






4 「れる・られる」の文法感覚・文法意識を確かにする
212
④「れる・られる」の
 文法感覚・文法意識







⑥動詞と「れる・られ
 る」の接続
 
T 次はCについて勉強しましょう。ア~エの文を読んでその意味をよく考えて、a~dのそれ
 ぞれと同類の文を選んで、○のところに書きましょう。
P (各自選択して記入する)
T (学習の結果を評価し、不適応のものについて学習調節をする。その際、生徒に学習の結果を説明させる)
a ウ 世の中のことは、当てはめようと思えば、何でも当てはめて考えられるものだ。
b イ こんなところを人に見られるのが何よりもつらい思いであった。
c エ 奈良の街を歩いていると、古い歴史のあとがしのばれる。
d ア 王はそのまま台上に登られた。 
 5 「れる・られる」に接続する動詞の違いを理解する
T 今まで、「れる」と「られる」を特に区別せずに勉強してきましたが、ここで、「れる」はど
 んな語について使われるか、「られる」はどんな語について使われるかを考えてみましょう。
 Dを読んでみよう。
P ⑨と⑩と⑪と⑫は、「れる」が続けてあります。⑬⑭⑮⑯には「られる」が続いています。
P ⑨から⑫までは、「書か(書か)」「笑わ(笑う)」「思い出さ(思い出す)」「洗わ(洗う)」とい
 うような動詞に続いています。⑬~⑯までは、「着(着る)」「伸び(伸びる)」「ほめ(ほめる)」
  「忘れ(忘れる)」というような動詞に続いています。
T そうですね。書く・笑う・思い出す・洗うなどの動詞には「れる」がつく。着る・伸びる・
 ほめる・忘れるなどの動詞には「られる」がつきます。このように、「れる」と「られる」が
213


〇五段活用と「れる」
 の接続


〇上一段活用と「ら
 れる」の接続
〇下一段活用と「ら
 れる」の接続 
 つく動詞にははっきりと区別があって、両方が入りまじることはありません。
  それでは「れる」のつく動詞を言ってみよう。
P 笑われる・泣かれる・書かれる。 P よろこばれる・立たれる・思われる。
P 足を踏まれる・雨に降られる・犬にかまれる。 P 先生に呼ばれる。
P 先生にしかられる・風に吹かれる。 P ぼうで突かれる・はちにさされる。
T 今度は「られる」をつけて言ってみよう。
P どこまでも伸びられる・大きい服でも着られる・いつまでも生きられる。
P さかでも越えられる・先生にほめられる。
P 犬にほえられる・すえられる。 P 木が植えられる。
P くつをとりかえられる・水がかえられる。
T では、それをまとめて整理してみよう。ローマ字で書いてみると、どんなきまりがあるかが
 わかる。
 ~ reru (れる)
① nak
areru
② waraw
areru
③ tat
areru
④ fuk
areru
⑤ yob
areru
~ rareru(られる)
⑥ nob
irareru
⑦ k
irareru
⑧ ik
irareru
⑨ m
irareru
⑩ ho
erareru
⑪ hom
erareru
⑫ u
erareru
⑬ ho
erareru
 
214




⑥「れる・られる」の
 用法
T これをよく見るといろいろなきまりがあることがわかります。「れる」と「られる」と、動
 詞との続き方の間には、どんなきまりがあるか、話し合ってまとめてみよう。(以下省略)
T これまでの学習で、「れる・られる」のはたらきや使い方がよくわかりました。最後に、E
 の⑰~ の文を、それぞれその下に書いてあるはたらきをするように、文を書き替えてみよう。
P ⑰ 尊敬の気持ちを表すためには尊敬の言い方が使われる。
  ⑱ 発見ということばは、このような場合に用いられる。
  ⑲ 平均〇.一パーセントを保つことは困難なように思われる。
  ⑳ 町長さんが、町をきれいにしてくださいと話された。
  ㉑ きのう町長さんが学校へ来られた。
  ㉒ 何匹でもつかまえられるだけつかまえなさい。
  ㉓ 手をあげて伸られるだけ伸びてごらん。
T (それぞれ発表させて評価し調節する)
 〈備考〉 以上、学習の筋道だけを示した。なお.Eの学習を略して、自由に短文を作るFの学
 習をさせてもよい。また、E・Fと続けてもよい。
                       (名古屋市立富田中学校伊藤美佐子教諭指導)
215
 
奥付
中沢政雄(なおざわ・まさお)

明治四十年群馬県に生まれる。小・中・高
 校教諭、都教委指導主事、中学校長を経て、
 現在国語教育科学研究会主宰、国語教育科
 学研究所長、月刊誌「国語教育科学」「国
 語情報」編集発行
おもな著書 機能的国語教育/国語科の発
 問/国語科読解の学習技術/実践国語科教
 育工学入門/小学校基本的文法事項の指導
 (以上明治図書)/国語教育近代化の理論と
 実践(三省堂)
現住所 東京都世田谷区梅丘1-26-12
     〒154
 
 中学校新文法指導法の開発
 昭和五十五年四月一日 第一刷発行
 定価  一、六〇〇円
 著 者 中沢政雄
 発行者 東京書籍株式会社
      代表者 鈴木和夫
 印刷・製本 図書印刷株式会社
 発行所 東京書籍株式会社
     東京都台東区台東1-5-18 〒110
  3337-592013-5313
      乱丁・落丁の場合はお取り替えいたします。